特許拒絶査定不服審判
2024-013824
照明装置および測距装置
- 審判番号
- 2024-013824
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2021-552354
- 請求日
- 2024年08月28日
- 審決日
- 2026年02月16日
- 公報発行日
- 2026年05月29日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】ソニーセミコンダクタソリューションズ株式会社
- 【請求人代理人】弁理士法人つばさ国際特許事務所
- 審判長/審判官
- 審判長 藤田 年彦
- 審判官 小澤 尚由
- 審判官 東松 修太郎
- 分類
- P18 .121-Z (H01S) / P18 .575-Z (H01S)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条、特許法第17条の2第5項、特許法第17条の2第6項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2021-552354「照明装置および測距装置」拒絶査定不服審判事件〔令和3年4月22日国際公開、WO2021/075340〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、2020年(令和2年)10月8日を国際出願日とする日本語特許出願であって(優先権主張 令和元年10月15日)、その手続の経緯の概略は、次のとおりである。
令和6年 1月29日付け:拒絶理由通知書
同年 4月 1日 :意見書、手続補正書の提出
同年 5月15日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)
(同月28日 :原査定の謄本の送達)
同年 8月28日 :審判請求書、手続補正書の提出
以下、2019年(令和元年)10月15日を「優先日」という。
第2 令和6年8月28日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和6年8月28日にされた手続補正を却下する。
[補正の却下の決定の理由]
1 補正の内容
令和6年8月28日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)は、特許請求の範囲の補正を含むものであり、本件補正により、次の(1)に示す本件補正前(令和6年4月1日にされた手続補正後のものをいう。以下同じ。)の特許請求の範囲の請求項1の記載は、後記(2)に示す本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載に補正された。下線は補正箇所を示す。
(1) 本件補正前
「【請求項1】
複数の第1の発光部および複数の第2の発光部を有する発光素子と、
前記複数の第1の発光部から出射された複数の第1の光および前記複数の第2の発光部から出射された複数の第2の光をそれぞれ略平行にして出射する第1の光学部材と、
面内に前記複数の第1の発光部と正対配置される1または複数の第1領域および前記複数の第2の発光部と正対配置される1または複数の第2領域を有し、前記複数の第1の光および前記複数の第2の光のうちの少なくとも一方のビーム形状を成形し、互いに異なるビーム形状を有する光として、前記複数の第1の光および前記複数の第2の光を出射する第2の光学部材と
を備えた照明装置。」
(2) 本件補正後
「【請求項1】
複数の第1の発光部および複数の第2の発光部を有する発光素子と、
前記複数の第1の発光部から出射された複数の第1の光および前記複数の第2の発光部から出射された複数の第2の光をそれぞれ略平行にして出射する第1の光学部材と、
面内に前記複数の第1の発光部と正対配置される1または複数の第1領域および前記複数の第2の発光部と正対配置される1または複数の第2領域を有し、前記複数の第1の光および前記複数の第2の光のうちの少なくとも一方のビーム形状を成形し、互いに異なるビーム形状を有する光として、前記複数の第1の光および前記複数の第2の光を出射する、1つの部材からなる第2の光学部材と
を備えた照明装置。」
2 補正の目的
本件補正のうち請求項1についてする補正は、本件補正前の請求項1に記載された「第2の光学部材」について、「1つの部材からなる」ものに限定するものである。
そして、本件補正前の請求項1に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載される発明は、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一である。
したがって、本件補正により請求項1についてする補正は、特許法17条の2第5項2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とする補正に該当する。
3 独立特許要件の判断
本件補正は、前記2のとおり、特許法17条の2第5項2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とする補正に該当するから、本件補正後の請求項1に記載されている事項により特定される発明(以下「本件補正発明」という。)が、同法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に適合するか、すなわち、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて、以下検討する。
(1) 本件補正発明の認定と分説
本件補正発明は、前記1(2)に摘記した本件補正後の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものと認める。
ここで、検討の便宜上、本件補正発明の構成を次のとおり構成Xと構成Aから構成Cまでに分説する。
<本件補正発明の分説>
A 複数の第1の発光部および複数の第2の発光部を有する発光素子と、
B 前記複数の第1の発光部から出射された複数の第1の光および前記複数の第2の発光部から出射された複数の第2の光をそれぞれ略平行にして出射する第1の光学部材と、
C 面内に前記複数の第1の発光部と正対配置される1または複数の第1領域および前記複数の第2の発光部と正対配置される1または複数の第2領域を有し、前記複数の第1の光および前記複数の第2の光のうちの少なくとも一方のビーム形状を成形し、互いに異なるビーム形状を有する光として、前記複数の第1の光および前記複数の第2の光を出射する、1つの部材からなる第2の光学部材とを備えた
X 照明装置。
(2) 各引用文献の記載事項及び引用発明等の認定
ア 引用文献1の記載事項及び引用発明の認定
(ア) 引用文献1に記載された事項
原査定の拒絶の理由において引用された、本願の優先日前に発行された文献である特表2018-511785号公報(以下「引用文献1」という。)には、次の記載がある(なお、当合議体により、後記(ウ)の引用発明の認定に直接用いる記載に下線を付した。)。
a 特許請求の範囲
「【請求項1】
赤外波長スペクトラムにおいて三次元配置を照明するための照明装置であって、
少なくとも1つのレーザ装置を含むレーザ装置の少なくとも第1のグループと、少なくとも1つのレーザ装置を含むレーザ装置の少なくとも第2のグループと、
を有し、
レーザ装置の前記第1および第2のグループは、互いに対して独立して動作し、
レーザ装置の前記第1のグループは、第1の放射特性でレーザ光を放射し、レーザ装置の前記第2のグループは、前記第1の放射特性と異なる第2の放射特性でレーザ光を放射し、
当該照明装置は、レーザ装置の前記第1のグループのレーザ装置が第1の発散角でレーザ光を放射するように前記第1の放射特性を変更する第1の光学装置を有し、
レーザ装置の前記第2のグループのレーザ装置は、前記第1の発散角とは異なる第2の発散角でレーザ光を放射し、
前記第1および第2の放射特性は、前記三次元配置の異なる部分を異なって照明するように前記第1および第2の発散角により適合される、照明装置。」
b 【0045】、【図6】
「【0045】
図6は、照明装置100の第6の実施形態の側面原理図を示す。照明装置100は、レーザ装置105を備えたレーザ装置の第1のグループ110と、レーザ装置105を備えたレーザ装置の第2のグループ120とを有する。レーザ装置の第1および第2のグループ110,120は、共通のチップ上に配置されている。レーザ装置の第1および第2のグループ110,120のレーザ装置105は、メサの直径が異なるVCSELである。レーザ装置の第1および第2のグループ110,120のレーザ装置105は、レーザ装置のそれぞれのグループ110,120の隣接するレーザ装置105が互いに対して同じ距離(ピッチ)を有するように配置される。レーザ装置の第1および第2のグループ110,120のレーザ装置105は、異なる発散角でレーザ光を放射する。レーザ装置の第1のグループ110の発散角は、第1の光学装置112(マイクロレンズのアレイ)によって変更され、レーザ装置105は狭い発散角でレーザ光を放射する。レーザ装置の第2のグループ120の発散角は、第2の光学装置122(マイクロレンズのアレイ)によって変更され、レーザ装置105は広い発散角でレーザ光を放射する。レーザ装置の第1および第2のグループ110,120には、レーザ装置の第1および第2のグループ110,120の共通チップと共に搭載構造200上に配置された駆動回路140によって、第1および第2の駆動電流が個別に供給される。第1および第2の駆動電流は、レーザ装置の第1および第2のグループ110,120の共通電極(図示せず)ならびに別個の第1および第2の電気接点(図示せず)を介して供給される。」
「【図6】
[図:0001434753000001.jpg]
」
なお、【0045】の記載等に照らすと、
(a)【図6】における符号「12」は「120」の誤記であると認められ、
(b)また、【図6】における符号112が指し示す線は、正しくは符号「105」が指し示す部材の上部の部材まで延長されるものと認められる。
(イ) 引用発明の認定
前記(ア)に摘記した引用文献1の記載事項から、引用文献1には、第6の実施形態に係る次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。なお、認定の根拠となる記載箇所を括弧内に示した。
<引用発明>
「赤外波長スペクトラムにおいて三次元配置を照明するための照明装置100であって、(【請求項1】)
照明装置100は、レーザ装置105を備えたレーザ装置の第1のグループ110と、レーザ装置105を備えたレーザ装置の第2のグループ120とを有し、レーザ装置の第1および第2のグループ110,120は、共通のチップ上に配置されており、レーザ装置の第1および第2のグループ110,120のレーザ装置105は、メサの直径が異なるVCSELであり、レーザ装置の第1および第2のグループ110,120のレーザ装置105は、レーザ装置のそれぞれのグループ110,120の隣接するレーザ装置105が互いに対して同じ距離(ピッチ)を有するように配置され、レーザ装置の第1および第2のグループ110,120のレーザ装置105は、異なる発散角でレーザ光を放射し、レーザ装置の第1のグループ110の発散角は、第1の光学装置112(マイクロレンズのアレイ)によって変更され、レーザ装置105は狭い発散角でレーザ光を放射し、レーザ装置の第2のグループ120の発散角は、第2の光学装置122(マイクロレンズのアレイ)によって変更され、レーザ装置105は広い発散角でレーザ光を放射する、(【0045】)
照明装置100」
イ 引用文献2、10~12に記載された事項及び周知技術Aの認定
(ア) 引用文献2に記載された事項
原査定の拒絶の理由において引用された、米国特許出願公開第2019/0258134号明細書(以下「引用文献2」という。)には、次の記載がある。当合議体による翻訳を括弧内に示した。また、下線は当合議体が付したものであり、以下の引用文献についても同様である。
「[0047] FIG. 3A-3C show schematic cross-sectional views of variations of structured light projectors 200a-200c according to some embodiments of the invention. …(後略)…
([0047] FIG. 3A-3Cは、本発明のいくつかの実施形態に係る構造化光プロジェクタ200a~200cの変形例の模式的な断面図を示している。…(後略)…)
[0048] …(中略)…In FIG. 3C, the solid lens 124 is disposed on the path of the light beam LB between the diffractive optical element 130 and the light source 110, and the liquid crystal lens cell 122 is disposed on the path of the light beam LB between solid lens 124 and light source 110.
([0048] …(中略)…FIG. 3Cにおいて、固体レンズ124は、回折光学素子130と光源110との間の光ビームLBの経路上に配置され、液晶レンズセル122は、固体レンズ124と光源110との間の光ビームLBの経路上に配置されている。)
[0049] …(中略)…In some embodiments, solid lens 124 collimates the light beam LB before light beam LB enters liquid crystal lens cell 122 or diffractive optical element.…(後略)
([0049]…(中略)…いくつかの実施形態において、固体レンズ124は、光ビームLBが液晶レンズセル122又は回折光学素子に入る前に光ビームLBを平行光にする。…(後略)…)」
「FIG. 3C
[図:0001434753000002.jpg]
」
(イ) 引用文献10に記載された事項
当審で新たに引用する、本願の優先日前に発行された文献である特表2018-534592号公報(以下「引用文献10」という。)には、次の記載がある。
「【0061】
図7は、均一のストライプまたはフリンジパターンを発生させてそれを領域内に投影する本教示のコード化パターンプロジェクタ装置の実施形態を示す。線形アレイとして構成された複数のVCSELを用いることによって、より均一のストライプが発生する。VCSELアレイ735は複数の平行ビームを放射し、これがレンズ731によってコリメートされてDOE732に誘導される。いくつかの実施形態では、1行の3つ以上のVCSEL発光体を用いて均一のストライプを発生させる。DOEは複数のストライプを発生させ、これらが重畳されて単一のより均一のストライプ736を形成する。このようにして生成された実際のストライプの像737を図7に示す。当該ストライプは均一のストライプパターンを示す。」
「【図7】
[図:0001434753000003.jpg]
」
(ウ) 引用文献11に記載された事項
当審で新たに引用する、本願の優先日前に発行された文献である特開2018-55875号公報(以下「引用文献11という。)には、次の記載がある。
「【0012】
図1(A)に示されるように、本発明の蛍光光源装置10は、励起光を出射する複数の半導体レーザ(LD)1と、各半導体レーザ1に対応して複数設けられ、該半導体レーザ1(1a,1b,1c)からのレーザ光(励起光)を平行光とするコリメートレンズ2(2a,2b,2c)と、当該コリメートレンズ2からの光を集光する集光レンズ3と、集光レンズ3の焦点に位置する反射型蛍光板4とからなる。
そして、前記コリメートレンズ2と集光レンズ3の間には、各コリメートレンズ2に対応して複数のデフォーカスレンズ5(5a,5b,5c)が配置されている。このデフォーカスレンズ5は、コリメートレンズ2からのレーザ光の光路を曲げるためのものであり、当該コリメートレンズ2の少なくとも一部は、その中心軸Bが、前記コリメートレンズ2の中心軸Aと平行状態で偏位している。」
「【図1】
[図:0001434753000004.jpg]
」
(エ) 引用文献12に記載された事項
当審で新たに引用する、本願の優先日前に発行された文献である特開2015-230378号公報(以下「引用文献12」という。)には、次の記載がある。
「【0015】
結像部20は、複数の半導体レーザ素子11から出射されたレーザ光を、光ファイバ30の端面に結像(集光)させる結像光学部である。結像部20は、複数のコリメートレンズ21、および集光レンズ22を備える。コリメートレンズ21は、対応する半導体レーザ素子11から出射されたレーザ光を平行光に変換する。集光レンズ22は、複数のコリメートレンズ21からのレーザ光を、光ファイバ30の端面に集光し、結像させる。ここでは、結像部20としてコリメートレンズ21と集光レンズ22とを用いているが、これに限らず、結像部20は、複数の半導体レーザ素子11のレーザ光を光ファイバ30の端面に結像させるために、複数の集光レンズを用いてもよいし、他の任意の光学部材を利用することができる。」
「【図1】
[図:0001434753000005.jpg]
」
(オ) 周知技術Aの認定
前記(ア)~(エ)に示した引用文献2、10~12に記載された事項を踏まえると、次の技術事項は、当業者にとって周知技術(以下「周知技術A」という。)であったと認められる。
<周知技術Aの認定>
「レーザ光がレンズや回折光学素子に入る前に、コリメートレンズにより平行光にされること。」
ウ 引用文献13、14に記載された事項等及び周知技術Bの認定
(ア) 引用文献13に記載された事項
当審で新たに引用する、本願の優先日前に発行された文献である特表2014-523650号公報(以下「引用文献13」という。)には、次の記載がある。
「【0071】
図4A及び図4Bには、図3A及び図3Bに類似の描写でレンズ124の指向性の変化の影響が示されている。ここではレンズアレイの内部に示されているレンズ124は、放射特性aを有しており、場合によっては関連する光電子部品118ないし発光ダイオード120と協働している。それに対して光電子シースルーモジュール112のレンズシステム122の縁部にあるレンズ124は、放射特性bを有している。例えば放射特性aは、放射角αを有しており、それに対して放射特性bは、放射角βを有している。これらの異なる放射特性a,bは、例えばレンズ形状の変化によって、及び/又は、レンズの高さの変化によって、及び/又は、関連する光電子部品118に対するレンズ124の配向の変化によって、達成され得る。例えば配列方向におけるレンズ124のレンズ形状の変化は、ピッチを維持しない配列の場合でも、所定の間隔において十分に均質な照射強度を生成することができる。…(後略)…」
「【図4A】
[図:0001434753000006.jpg]
」
(イ) 引用文献14に記載された事項等
当審で新たに引用する、本願の優先日前に発行された文献である特開2014-521227号公報(以下「引用文献14」という。)には、次の記載がある。
「【請求項1】
オプトエレクトロニクスモジュール(110)、特にオプトエレクトロニクス・チップ・オン・ボード・モジュールにおいて、
前記オプトエレクトロニクスモジュール(110)は、支持体(114)と、該支持体(114)上に配置されている複数のオプトエレクトロニクスコンポーネント(116)と、前記支持体(114)上に被着されている少なくとも一つの光学系(120)、特に複数のマイクロ光学素子を備えているマイクロ光学系とを含み、
前記支持体(114)は面状に形成されており、
前記光学系(120)は、前記オプトエレクトロニクスコンポーネント(116)に隣接している少なくとも一つの一次光学系(124)及び少なくとも一つの二次光学系(138)を有することを特徴とする、オプトエレクトロニクスモジュール(110)。」
「【0036】
特に、一次光学素子のアレイは、方向特性が相互に異なっている少なくとも二つの一次光学素子を有することができる。方向特性が相互に異なっている少なくとも二つの一次光学素子を例えば、アレイの内部、例えば一次光学系のレンズアレイの内部、及び、アレイの縁部、例えばレンズアレイの縁部に配置することができる。つまり例えば一次光学系は、レンズ、例えばマイクロレンズの一次元又は二次元のマトリクスの形態のレンズアレイ、また特にマイクロレンズアレイを含むことができる。例えば、レンズアレイの縁部に配置されているレンズは、レンズアレイの内部に配置されているレンズの方向特性とは異なる方向特性を有することができる。例えば、この縁部を線形のマトリクスではそれぞれ最も外側のレンズから構成することができる。二次元のマトリクスでは、縁部は、レンズアレイの縁部に配置されている複数のレンズから成る直線又はフレームを含むことができる。それらの縁部の方向特性を、レンズアレイの内部、即ち縁部から離れた個所に配置されている少なくとも一つのレンズの方向特性とは異ならせることができる。その場合、複数のレンズから成る少なくとも二つのグループが設けられているようにレンズアレイのレンズを構成することができ、少なくとも一つの第1のグループのレンズは第1の方向特性を有し、また少なくとも一つの第2のグループのレンズは、第1の方向特性とは異なっている、少なくとも一つの第2の方向特性を有している。レンズシステムの方向特性を段階的に変化させることができるので、例えば方向特性はレンズシステムの内部からレンズシステムの縁部に向かって連続的に又は断続的に変化する。変化の二つ以上の段階を設けることができる。」
「【0061】
本発明によれば、一次光学系及び/又は二次光学系の光学素子として、光学的に機能する多数の幾何学的配置、例えばレンズ形態及び/又は散乱形態を実現することができる。それらの幾何学的配置を、各用途に必要とされる照射強度プロフィールを形成するための幾何学的配置に適合させることができる。単純に、顕著なアンダーカットを有している形態を注型方法で実現することは通常の場合は困難である。何故ならば、この方法は通常の場合、鋳造方法だからである。しかしながら、例えば以下のものから選択された形態を良好に実現することができ、また本発明に従い使用することができる:対称的又は非対称的な形態の球面状のレンズ光学系、特に円筒状及び/又は回転対称の光学系の形態の球面状のレンズ光学系;対称的又は非対称的な形態の非球面状の光学系、特に円筒状及び/又は回転対称の光学系の形態の非球面状のレンズ光学系、対称的又は非対称的な形態の自由形状光学系、特に円筒状及び/又は回転対称の光学系の形態の自由形状光学系、対称的又は非対称的な形態のフレネル光学系、特に円筒状及び/又は回転対称の光学系の形態のフレネル光学系;対称的又は非対称的な形態の多角形及び/又はカット面の付けられた光学系、特に円筒状及び/又は回転対称の光学系の形態の多角形及び/又はカット面の付けられた光学系;例えば光を散乱させるため、又は統計的に分散されて光を回折させるための粗い構造;構造化された表面を備えている構造。上述の形態及び/又は他の形態の組み合わせも可能である。」
「【0119】
図10には、例示的に、ここでもレンズ128の形態の一次光学素子126が設けられている実施例が示されている。しかしながらこの実施例では、レンズ128が必ずしも球面状の表面を有している必要はなく、例えば種々の湾曲した領域を備えている非球面状の表面を有していても良いことが示されている。つまり、一次光学素子126及び/又は二次光学素子140は、種々の湾曲した領域を備えているレンズ128を有することもでき、例えば凸状に湾曲した一つ又は複数の領域と凹状に湾曲した一つ又は複数の領域とを組み合わせたものを使用することもできる。一次光学系124又は二次光学系138の全てのレンズ128を同じように湾曲させて構成することができるか、又は図10に例示的に示唆されているように、種々のやり方で、例えば、異なるように湾曲している表面を有している少なくとも二つのレンズ128を設けることができる。」
「【図10】
[図:0001434753000007.jpg]
」
ここで、図10に記載される一次光学系124における、異なるように湾曲している表面を有しているレンズ128は、互いに光学特性が異なるものと認められる。
(ウ) 周知技術Bの認定
前記(ア)で記載した引用文献13に記載された事項及び前記(イ)で記載した引用文献14に記載された事項等から、以下の技術事項は周知技術(以下「周知技術B」という。)であると認められる。
<周知技術Bの認定>
「光学特性が異なる複数の領域を設けた単体のレンズアレイ。」
(3) 本件補正発明と引用発明の対比
ア 対比分析
本件補正発明と引用発明を対比する。
(ア) 構成Xの観点
a 構成Xは、「照明装置」の発明であることを特定するものである。
b 引用発明の「照明装置100」は、本件補正発明の「照明装置」に相当する。
c したがって、本件補正発明と引用発明は、次の点において一致する。
「照明装置」の発明である点。
(イ) 構成Aの観点
a 構成Aは、「複数の第1の発光部および複数の第2の発光部を有する発光素子」を備えることである。
b 引用発明における「レーザ装置の第1のグループ110」の「レーザ装置105」及び「レーザ装置の第2のグループ120」の「レーザ装置105」は、メサの直径が異なるVCSELであるから、各々、本件補正発明の「第1の発光部」及び「第2の発光部」に相当すると共に、それらを合わせた構成が本件補正発明の「発光素子」に相当する。
c 引用発明における「レーザ装置の第1のグループ110」及び「レーザ装置の第2のグループ120」は、各々、複数のレーザ装置105を含むから、各々、本件補正発明でいう「複数の第1の発光部」及び「複数の第2発光部」を有するものといえる。
d したがって、本件補正発明と引用発明は、次の点において一致する。
「複数の第1の発光部および複数の第2の発光部を有する発光素子」を備える点。
(ウ) 構成Bの観点
a 構成Bは、「前記複数の第1の発光部から出射された複数の第1の光および前記複数の第2の発光部から出射された複数の第2の光をそれぞれ略平行にして出射する第1の光学部材」を備えることである。
b 引用発明は、構成Bに相当する構成を備えていないから、本件補正発明と引用発明は、次の点において相違する。
本件補正発明は「前記複数の第1の発光部から出射された複数の第1の光および前記複数の第2の発光部から出射された複数の第2の光をそれぞれ略平行にして出射する第1の光学部材」を備えるのに対して、引用発明は「第1の光学部材」に相当する構成を備えていない点。
(エ) 構成Cの観点
a 構成Cは、「面内に前記複数の第1の発光部と正対配置される1または複数の第1領域および前記複数の第2の発光部と正対配置される1または複数の第2領域を有し、前記複数の第1の光および前記複数の第2の光のうちの少なくとも一方のビーム形状を成形し、互いに異なるビーム形状を有する光として、前記複数の第1の光および前記複数の第2の光を出射する、1つの部材からなる第2の光学部材」を備えることである。
b 引用発明の「レーザ装置の第1および第2のグループ110,120のレーザ装置105」から「異なる発散角で」「放射」される「レーザ光」は、各々、本件補正発明の「複数の第1の光」及び「複数の第2の光」に相当する。
c 引用発明の「第1の光学装置112(マイクロレンズのアレイ)」及び「第2の光学装置122(マイクロレンズのアレイ)」を併せた構成は、本件補正発明の「第2の光学部材」に相当する。
一方、「第2の光学部材」が、本件補正発明では「1つの部材からなる」のに対して、引用発明では「第1の光学装置112(マイクロレンズのアレイ)」及び「第2の光学装置122(マイクロレンズのアレイ)」の2つの部材からなる点で相違する。
d 引用発明における「第1の光学装置112(マイクロレンズのアレイ)」及び「第2の光学装置122(マイクロレンズのアレイ)」は、各々、「レーザ装置の第1のグループ110の発散角」及び「レーザ装置の第2のグループ120の発散角」を「変更」するものであるから、各々、「レーザ装置の第1のグループ110」の「レーザ装置105」及び「レーザ装置の第1のグループ120」の「レーザ装置105」と正対配置されていることは明らかである。そうすると、引用発明の「第1の光学装置112(マイクロレンズのアレイ)」及び「第2の光学装置122(マイクロレンズのアレイ)」を併せた構成における「第1の光学装置112(マイクロレンズのアレイ)」の部分及び「第2の光学装置122(マイクロレンズのアレイ)」の部分は、各々、本件補正発明おける「複数の第1の発光部と正対配置される1または複数の第1の領域」及び「複数の第1の発光部と正対配置される1または複数の第1の領域」に相当するとともに、引用発明における「第1の光学装置112(マイクロレンズのアレイ)」及び「第2の光学装置122(マイクロレンズのアレイ)」を併せた構成は、本件補正発明でいう「面内に前記複数の第1の発光部と正対配置される1または複数の第1領域および前記複数の第2の発光部と正対配置される1または複数の第2領域を有[する]」ものであるといえる。
e 引用発明の「狭い発散角」の「レーザ光」と「広い発散角」の「レーザ光」は、それらのビーム形状が異なることは明らかであるから、本件補正発明の「互いに異なるビーム形状を有する光」に相当する。
f 引用発明における「第1の光学装置112(マイクロレンズのアレイ)」は、「レーザ装置の第1のグループ110の発散角」を「変更」し、「レーザ装置105は狭い発散角でレーザ光を放射」されるから、本件補正発明における「前記複数の第1の光」「のビーム形状を成形し」、「前記複数の第1の光」「を出射する」ものであるといえる。
また、引用発明における「第2の光学装置122(マイクロレンズのアレイ)」は、「レーザ装置の第2のグループ120の発散角」を「変更」し、「レーザ装置105は広い発散角でレーザ光を放射」されるから、本件補正発明における「前記複数の第2の光」「のビーム形状を成形し」、「前記複数の第2の光」「を出射する」ものであるといえる。
g 前記e及び前記fで説示したことを総合すると、引用発明における「第1の光学装置112(マイクロレンズのアレイ)」及び「第2の光学装置122(マイクロレンズのアレイ)」を併せた構成は、本件補正発明でいう「前記複数の第1の光および前記複数の第2の光」「のビーム形状を成形し、互いに異なるビーム形状を有する光として、前記複数の第1の光および前記複数の第2の光を出射する」ものであるといえる。
h 以上の検討結果を踏まえると、本件補正発明と引用発明は、構成Cの観点において次の(a)の点において一致し、後記(b)の点において相違する。
(a) 構成Cの観点での一致点
「面内に前記複数の第1の発光部と正対配置される1または複数の第1領域および前記複数の第2の発光部と正対配置される1または複数の第2領域を有し、前記複数の第1の光および前記複数の第2の光のうちの少なくとも一方のビーム形状を成形し、互いに異なるビーム形状を有する光として、前記複数の第1の光および前記複数の第2の光を出射する、第2の光学部材」を備える点。
(b) 構成Cの観点での相違点
「第2の光学部材」が、
本件補正発明においては、「1つの部材からなる」のに対して、
引用発明においては、「第1の光学装置112(マイクロレンズのアレイ)」及び「第2の光学装置122(マイクロレンズのアレイ)」の2つの部材からなる点。
イ 一致点及び相違点
前記アの対比分析の結果をまとめると、本件補正発明と引用発明は、次の(ア)に示す一致点において一致し、後記(イ)に示す相違点において相違すると認められる。
(ア) 一致点
「複数の第1の発光部および複数の第2の発光部を有する発光素子と、
面内に前記複数の第1の発光部と正対配置される1または複数の第1領域および前記複数の第2の発光部と正対配置される1または複数の第2領域を有し、前記複数の第1の光および前記複数の第2の光のうちの少なくとも一方のビーム形状を成形し、互いに異なるビーム形状を有する光として、前記複数の第1の光および前記複数の第2の光を出射する、第2の光学部材とを備えた照明装置」である点。
(イ) 相違点
a 相違点1
本件補正発明は「前記複数の第1の発光部から出射された複数の第1の光および前記複数の第2の発光部から出射された複数の第2の光をそれぞれ略平行にして出射する第1の光学部材」を備えるのに対して、
引用発明は「第1の光学部材」に相当する構成を備えていない点。
b 相違点2
「第2の光学部材」が、
本件補正発明においては、「1つの部材からなる」のに対して、
引用発明においては、「第1の光学装置112(マイクロレンズのアレイ)」及び「第2の光学装置122(マイクロレンズのアレイ)」の2つの部材からなる点。
(4) 判断
ア 相違点1について
レンズや回折光学素子等の光学素子が、平行光の入射を前提に設計されていることが多いとの技術常識に鑑みれば、引用発明において、第1および第2のグループ110,120のレーザ装置105のレーザ光を、それぞれ第1及び第2の光学素子112,122(マイクロレンズのアレイ)に入射させる際に、当該光学素子の特性が十分発揮されるように、前記(2)イ(オ)で示した周知技術Aを適用して、レーザ光を平行光にするコリメートレンズを設けることにより、相違点1に係る本件補正発明の構成とすることは、当業者であれば容易に想到し得ることである。
イ 相違点2について
前記(2)ウ(ウ)で説示したように、光学特性が異なる複数の領域を設けた単体のレンズアレイは、周知技術(周知技術B)である。そして、引用発明において、部品点数を削減して構成を単純化することは、当業者であれば当然に検討する一般的な課題であるところ、引用発明における「第1の光学装置112(マイクロレンズのアレイ)」と「第2の光学装置122(マイクロレンズのアレイ)」を周知技術Bのように、第1光学装置に対応する領域と第2光学装置に対応する領域を設けた単体のマイクロレンズアレイとすることにより、「第1の光学装置112(マイクロレンズのアレイ)」と「第2の光学装置122(マイクロレンズのアレイ)」が「1つの部材からなる」ようにすることは、当業者であれば容易に想到し得ることである。
ウ 総合評価
前記ア及びイにおいて検討したとおり、引用発明において、前記相違点1、2に係る本件補正発明の構成を備えるようにすることは、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に想到し得たことである。
そして、前記相違点1、2を総合的に勘案しても、本件補正発明が奏する効果としては、当該構成のものとして当業者が予測・発見困難であり、かつ、格別顕著な効果を認めることはできない。
したがって、本件補正発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
エ 請求人の主張について
(ア) 請求人の主張の内容
本件補正発明の照明装置は、複数の第1の発光部および複数の第2の発光部からそれぞれ出射される複数の第1の光および複数の第2の光のビーム形状が1つの光学部材(第2の光学部材)によって任意に成形されるため、2つの部材(第1の光学装置および第2の光学装置)によって成形される引用文献1に記載の赤外線レーザ照明装置と比較して、照明装置を構成する部品点数が削減される分、照明装置を構成する各部材の位置合わせ等の製造プロセスが簡素化や製造コストを低減できる。
(イ) 請求人の主張についての検討
前記イで説示したとおり、部品点数の削減は、当業者であれば当然に検討する一般的な課題にすぎないし、引用発明に周知技術Bを適用して部品点数が削減されれば製造プロセスが簡素化することは、当業者であれば当然予測できる効果にすぎないから、前記ウの結論を左右するものではない。
オ 独立特許要件の判断のまとめ
以上検討のとおり、本願補正発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
したがって、本件補正により請求項1についてする補正は、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に適合しない。
4 本件補正の却下の決定の理由のむすび
前記3(4)オのとおり、本件補正は、同法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するから、同法159条1項において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。
よって、前記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明について
本件補正は、前記第2のとおり却下したので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1(前記第2の1(1)参照)に記載された事項により特定されるとおりのものである。
2 原査定における拒絶の理由の概要
原査定の本願発明に対する拒絶の理由1(進歩性の欠如)の概要は、次のとおりである。
理由1(進歩性の欠如) 本願発明は、優先日前に発行された下記の引用文献に記載された発明に基づいて、優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
記
<主たる引用文献>
引用文献1.特表2018-511785号公報
<周知技術を示す引用文献>
引用文献2.米国特許出願公開第2019/0258134号明細書
引用文献3.米国特許出願公開第2014/0376092号明細書
3 各引用文献に記載された事項及び引用発明の認定等
各引用文献に記載された事項、引用発明及び周知技術A、Bは、前記第2の前記3(2)において示したとおりである。
4 対比・判断
本願発明は、前記第2の2において検討したとおり、本件補正発明から「第2の光学部材」が「1つの部材からなる」ものであるとの限定を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成を全て含み、その構成の一部を限定したものに相当する本件補正発明が、前記第2の3(4)において説示したとおり、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
第4 むすび
以上検討のとおり、本願発明は、特許法29条2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
J-PlatPat 審決検索を開く
2024-013824