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特許拒絶査定不服審判

2023-010360

ループインターフェース

審判番号
2023-010360
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2018-115334外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2023年06月22日
審決日
2025年01月09日
公報発行日
2025年07月25日
結論
請求不成立
審判長/審判官
分類
P18 .113-WZ (G05B) / P18 .121-WZ (G05B)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条1項3号特許法29条2項
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2018-115334「ループインターフェース」拒絶査定不服審判事件〔平成31年 1月17日出願公開、特開2019- 8790〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論
本件審判の請求は、成り立たない。

理由

目次 ▾ 15項目
理 由

第1 手続の経緯

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本件審判に係る出願は、平成30年6月18日(パリ優先権主張 2017年(平成29年)6月21日 (US)アメリカ合衆国)にされた特許出願(外国語書面出願)であって、その手続の経緯は、概略、以下のとおりである。

平成30年 7月27日 :翻訳文の提出
令和 4年 7月13日付け:拒絶の理由の通知
令和 5年 1月19日 :意見書、手続補正書の提出

同年 2月27日付け:拒絶査定

同年 6月22日 :本件審判(拒絶査定不服審判)の請求

令和 6年 6月18日付け:当審による拒絶の理由の通知
同年10月25日 :意見書、手続補正書の提出

第2 本件発明

本件審判に係る特許出願の請求項1に係る発明(以下「本件発明」という。)は、令和6年10月25日提出の手続補正書により補正がされた特許請求の範囲の請求項1~18のうち請求項1に記載された、次の事項により特定されるとおりのものである。

「 【請求項1】
方法であって、
プロセスプラントの複数の制御ループ用のループマップをディスプレイに表示することであって、前記ループマップは第1制御ループの第1の複数の制御ループ要素と第2制御ループの第2の複数の制御ループ要素とを描写し、
(i)前記第1の複数の制御ループ要素の少なくとも1つが前記第2の複数の制御ループ要素に含まれ、
(ii)前記ループマップは、(a)前記第1及び第2制御ループの少なくともいずれかを制御するための1つ以上の制御ルーチン、(b)前記1つ以上の制御ルーチンを実装する1つ以上のプロセスコントローラ、および(c)前記1つ以上のプロセスコントローラと、前記第1及び第2制御ループの少なくともいずれかに含まれる1つ以上のフィールドデバイスとの間の1つ以上の通信リンク、を描写する、
前記ディスプレイに表示することと、
制御ループパラメータに対する修正または前記複数の制御ループ内の制御ループ状態を有する制御ループに対応する特定の状態の修正を含むユーザの対話に応答して前記ループマップを更新することと、
所与の要素が前記制御ループの他の要素にどのように関係するかを前記ユーザが迅速に理解できるようにすることで、前記制御ループに関する状況認識を前記ユーザに提供することと、
前記ユーザが、前記制御ループ内のパラメータまたはデバイスを変更してプロセスの制御に影響を及ぼすことを可能にすることと、
を含む、方法。」

第3 拒絶の理由

令和6年6月18日付けで当審より通知した、請求項1に係る発明に対する拒絶の理由は、次のとおりのものである。

理由1(新規性)請求項1に係る発明は、その優先日の前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明(引用文献1に記載された発明)であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。

理由2(進歩性)請求項1に係る発明は、その優先日の前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明(引用文献1に記載された発明)に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献1:特許第2538069号公報(発行日:平成8年9月25日)

第4 引用文献1の記載及び引用発明

1 引用文献1に記載された事項

引用文献1には、以下の事項が記載されている(下線は当審にて付した、以下同様。なお、半角英数字は全角にて表記し、「ハードウエア/ソフトウエア」と「ハードウェア/ソフトウェア」の表記ゆれは、前者の記載に統一した。)。

(1)特許請求の範囲の請求項1、7(第1欄第2~14行、第3欄第22~36行)

「【請求項1】マイクロコンピュータを応用したコントローラによりプラントを制御するプラント制御システムの制御回路を表示画面に表示する制御回路表示方法であって、
上記表示画面をソフトウエア領域と他の表示領域とに区分し、上記表示画面上に表示される制御回路のうち、上記マイクロコンピュータが実行する機能に対応するソフトウエア回路部分を上記ソフトウエア領域内にグラフィック表示すると共に、該ソフトウエア回路部分以外の回路部分を上記他の表示領域にグラフィック表示し、上記ソフトウエア領域と上記他の表示領域との入出力関係をそれぞれ対応させて表示することを特徴とするプラント制御システムの制御回路表示方法。
・・・
【請求項7】マイクロコンピュータを応用したコントローラによりプラントを制御するプラント制御システムに対して使用され、上記コントローラに制御プログラムを転送しうる保守装置であって、
上記制御プログラムに対応するソフトウエア制御回路と該ソフトウエア制御回路の周辺に接続されるハードウエア制御回路とを表示画面上に同時にグラフィック表示する表示手段と、
該表示手段により表示画面上に表示される上記ハードウエア制御回路に関する作画情報を予め記憶した記憶手段とを備え、
上記表示手段は、上記ソフトウエア制御回路の表示領域と上記ハードウエア制御回路の表示領域とを区分すると共に、両者の入出力関係をそれぞれ対応させて表示する
ことを特徴とするプラント制御システムの保守装置。」

(2)従来の技術:第2~4図の説明(第4欄第17行~第5欄第42行)

「第2図にこのようなプラント制御システムのシステム構成の一例を示す。
同図において、コントローラ1は、CPU2、デジタル入力カード(以下DIカード)3、デジタル出力カード(DOカード)4、アナログ入力カード(AIカード)5、アナログ出力カード(AOカード)6、およびPI/Oバス7より構成される。手動バックアップ回路8は、手動操作用指示器および操作スイッチからなる操作盤9からの指令によりコントローラ故障等による異常時にも手動にて操作器を調整し、プラント10の運転を継続可能ならしめるものである。プラント10は、通常、複数個の機器11により構成される。
第3図に、第2図のコントローラの1機器分を更に詳細に示す。
同図中、回路20は第2図のCPU2のメモリに記憶されたソフトウエアにより実行される機能を回路として表わしたものである。この回路中の回路要素21,24,25,27,31,33はマクロ言語により記述される。回路要素21は入力信号診断マクロであり、プロセス状態をAIカード5で取り込んだ信号22の合理性診断を行い、異常と判定されたときには、論理信号23を出力する。回路要素24は比較器であり、制御目標設定器(SET)25の出力とプロセス状態量とを比較して偏差信号26を出力する。この偏差信号26は、比例積分調節器(P+I)27に入力されると共に、AOカード6から出力され、操作盤9に設けられた偏差指示器28に表示される。比例積分器27は、DIカード3から入力される自動/手動論理信号29により制御モードを切り換えられ、自動モードでは、偏差信号26に応じた比例積分演算を行い、手動モードでは、AIカード5から取り込んだ操作器への指令信号30にトラッキングする。回路要素31は、出力信号診断マクロであり、比例積分器27の出力と信号30とを比較し、信号突変、断線等の合理性チェックを行い、異常と判定されたときには、論理信号32を出力する。回路要素33は、論理和マクロであり、診断マクロ21および31により当該機器の制御が異常状態であることをDOカード4を介して出力する。
手動バックアップ回路8内の電流/電圧変換器40は、プロセス状態量を検出するセンサ41の電流出力を電圧に変換する。この電流/電圧変換器40の出力は、AIカード5に入力されるとともに、操作盤9に設けられた指示器42に表示される。信号切換器43は、自動/手動切換ロジック44の出力に応じて、自動時にはAIカード6(当審注:「AOカード6」の誤記と認める。)の出力であるコントローラからの自動操作出力を選択し、手動時には手動操作用アナログメモリ(AM)45の出力を選択する。信号切換器43の出力は、電圧/電流変換器46に入力され、機器の操作器を操作する信号となる一方、AIカード5に入力され、また、操作盤9に設けられた指示器47に表示される。電/空変換器48は、電圧/電流変換器46の出力を空気圧に変換し、操作器49を制御する。アナログメモリ45は、自動/手動切換ロジック44の出力によりモードを切換えられる。すなわち、自動時には、切換器43の出力に追従し、手動時には、操作盤9に設けられた操作スイッチ50によりその出力を増減される。自動/手動切換ロジック44は、操作盤9に設けられた自動/手動切換スイッチ51およびDOカード4から出力される制御異常信号等により操作器の制御の自動/手動モードを決定するものである。
第4図に、第3図中の自動/手動切換ロジック44の一例を示す。このロジック44は、論理和回路70、論理否定回路71、および論理積回路72により構成される。これらの回路はハードワイヤードロジックにより構成される。
以上の例に示したように、マイクロコンピュータを応用したコントローラによるプラント制御システムにおいては、そのシステムは単にコントローラにより処理されるソフトウエアロジックだけでなく、第3図中、ハードウエアにより構成される手動バックアップ回路8、手動操作用指示器および操作スイッチからなる操作盤9、機器11等の種々のハードウエアがソフトウエアと組み合わせて構成されている。
また、プラントの規模や性質によっては、故障の局所化および保守の容易化等のため、第2図に示すコントローラ1が複数台からなる分散システムとなることも多い。
このようなプラント制御システムでは、コントローラのソフトウエアのプログラミングや動作モニタ、パラメータチューニングのために保守装置を使用する。」

第2図

「
[図:0001423944000001.jpg]
」

第3図

「
[図:0001423944000002.jpg]
」

第4図

「
[図:0001423944000003.jpg]
」

(3)従来の技術:第5~6図の説明(第5欄第43行~第6欄第9行)

「第5図に、プラント制御システムに対する保守装置の接続例を示す。
同図に示すように、複数台のコントローラ1a~1nを相互に接続した通信路100に、保守装置101を接続している。コントローラは1台でもよく、保守装置とコントローラの接続は通信路以外の手段によってもよい。保守装置101は、処理部102、表示部103および対話操作部104からなる。
従来の保守装置は、その表示部103に、第6図に示すように、ソフトウエア回路20のみを表示しながら保守を実行していた。外部ハードウエア等との接続関係は、表示部103の表示画面からは、入出力信号線に付随して表示されるコメント等によって認識されるだけであった。
また、表示部103の画面に同時に表示できるのは、CRTを利用した表示部の解像度等の制約から、1台のコントローラの実行できる最小のプログラム単位である、いわゆる1シートのみであった。」

第5図

「
[図:0001423944000004.jpg]
」

第6図

「
[図:0001423944000005.jpg]
」

(4)発明が解決しようとする課題(第6欄第11~42行)

「上記従来の技術においては、前述のように、保守装置の表示部にコントローラのソフトウエアによる回路のみ表示していたが、ソフトウエア以外のハードウエアにより構成される部分も多く、システム全体を把握するためには、これらのソフトウエアおよびハードウエアを包含して記述した製作図やマニュアル等のドキュメントが必要となる。
したがって、従来、システムの保守を行うためには、このドキュメントを見ながらシステム全体を把握し、その後に該当するソフトウエア部分を保守装置により表示部に表示させて保守を行わなければならず、従来の保守装置により迅速、かつ確実な保守を行うことは必ずしも容易ではなかった。
・・・
本発明の目的は、ドキュメント参照を要することなく、表示画面だけでシステム全体を容易に把握しながら適切な保守を行えるプロセス制御システム、その制御回路表示方法および保守装置を提供することにある。」

(5)作用(第8欄第9行~第9欄第6行)

「保守装置の表示部の表示画面は、ソフトウエア回路の表示領域とハードウエア回路の表示領域とが区分される。そのためには、例えば、表示画面上にソフトウエア枠が設定され、その内部がソフトウエア領域であり、外部がハードウエア領域であることが示される。
ソフトウエア領域にはソフトウエアの情報を作画入力し、ハードウエア領域にはハードウエア回路を作画入力する。保守装置は、作画された情報がソフトウエア領域内にあればその情報がソフトウエアに関するものであり、ハードウエア領域内にあればその情報がハードウエアに関するものであることを認識することができる。これにより、ソフトウエア領域にある作画情報から自動的にコントローラの制御プログラムを生成する「プログラミング」が可能になる。既に作成されたソフトウエア回路の作画を修正することにより、コントローラのソフトウエアを変更することもできる。
制御プログラム実行中のコントローラからプラントの動作データを収集し、この動作データを表示画面上の対応する画面情報に付随して表示することもできる。これにより、コントローラの現在の制御動作状況を監視する「モニタ」機能が実現される。本発明ではハードウエア回路も表示されるので、このモニタは、ソフトウエア回路部分に限らず、ハードウエア回路部分についても可能である。
また、ソフトウエア回路については、表示画面情報から任意の回路要素(マクロ)を選択し、そのパラメータを変更する「チューニング」も可能である。
これらの保守操作は、同一画面上に表示された関連するハードウエア回路の構成を視覚的に認識しながら実行することができるので、他のドキュメントを参照しなくても、制御システム全体を把握した迅速かつ確実な保守を実行することができる。
保守装置の表示画面のソフトウエア領域内にコントローラ枠およびシート枠を設けることにより、作画された情報が特定のコントローラの特定のシートに属することが認識できる。したがって、特定のシートについて、別個にプログラミング、チューニング、モニタが可能になる。この場合も、関連するハードウエア、関連するコントローラの構成を視覚的に認識しながら保守を実行できるので、ドキュメントの参照は不要である。
また、本発明によれば、表示画面のソフトウエア領域以外の領域はハードウエア領域と認識でき、このハードウエア領域にはハードウエア情報が表示されてる(当審注:「されている」の誤記と認める。)ので、これらのハードウエアに関する画面情報からハードウエアの実装図や接続図等の各種ハードウエアドキュメントを自動生成することも可能となり、ソフトウエアの生産・保守とハードウエアの生産システムを統合化することができる。」

(6)実施例:第8図の説明(第9欄第9行~第10欄第10行)

「まず、プラント制御システムの保守装置(第5図101に相当)の構成例を第8図に示す。
この保守装置101の要部は、処理部102の構成にあり、その詳細を同図に示している。すなわち、処理部102は、入力解析部1001、対話処理部1002、表示制御部1003、図形データベース記憶部1004、ドキュメント出力部1005、コントローラソフトウエア情報抽出部1007、コンパイル部1008、コントローラプログラム1009、コントローラ動作データ収集部1010、コントローラ動作データ1011、および通信制御部1012からなる。
入力解析部1001は、キーボード等の入力装置からなる対話操作部104に対する操作者の入力情報を解析し、対話処理部1002に解析結果に応じたコマンドを出力する。対話操作部104では、上述したプログラミング、チューニング、ドキュメント出力指示等の操作が行われる。
対話処理部1002では、入力解析部1001からのコマンドにより、その指示に応じて保守装置101の動作を制御する。例えば、入力解析部1001からのコマンドに応じて、ハードウエア回路およびソフトウエア回路の図形データベースに作成し、図形データベース記憶部1004に格納する。また、この図形データベース記憶部1004に格納された図形データベースを読出してその修正を行う。
図形データベース記憶部1004には、ハードウエア回路およびソフトウエア回路の図形データベースが格納される他、ソフトウエア回路のロジックシンボル、画面の背景情報等が予め格納されている。
表示制御部1003は、対話処理部1002を介して図形データベース記憶部1004の内容を受け取り、表示部1003(当審注:「表示部103」の誤記と認める。)にソフトウエア回路およびハードウエア回路を表示する。また、モニタ機能として、コントローラ動作データ収集部1010からコントローラ動作データ1011を受け取り、コントローラ動作に応じた表示を行う。コントローラ動作データ1011は、コントローラ内の演算結果、パラメータ等の現在値のデータであり、このデータは、コントローラ動作データ収集部1010により通信制御部1012を介して収集される。コントローラ動作データの表示としては、例えば、ソフトウエア回路の信号線の側に数値を周期的に更新表示し、あるいはデジタル信号線については“0”、“1”に応じて信号線の表示色を変化させる。なお、本実施例では、表示部103として高解像度のCRTを用いる。
コントローラソフトウエア情報抽出部1007は、図形データベース記憶部1004からソフトウエア枠内のコントローラソフトウエア情報をハードウエア情報から切り離して抽出する。このソフトウエア情報は、コンパイル部1008により、コントローラにローディングされるべきコントローラプログラム1009に変換される。このコントローラプログラム1009は、通信制御部1012を介して目的のコントローラにロードされ、そのコントローラで実行されてコントローラ動作を制御する。すなわち、対話操作部104でソフトウエアのロジック図を作成、修正したあと、ソフトウエア情報抽出、コンパイルすることにより、前記プログラミング機能が実現される。」

第8図

「
[図:0001423944000006.jpg]
」

(7)実施例:第1図の説明(第10欄第16行~第11欄第13行)

「第1図に、本実施例による保守装置101の表示部103の表示例を示す。
表示部103の表示内容は第3図に示した制御内容に対応したものである。
・・・
200は、ソフトウエア枠であり表示画面上のハードウエア回路による領域とソフトウエア回路による領域を区分するものである。ソフトウエア枠200に囲まれた内側がソフトウエア領域を示す。
201はコントローラ名称であり、この名称が付されたソフトウエア領域内の回路が「CPU1」という名称のコントローラの中で実現されるものであることを示す。
202はシート名称であり、このソフトウエア回路が「CPU1」の「SH1」に属することを示す。保守装置の処理部は、上記画面情報からソフトウエア枠内の要素を取り出し、該当するコントローラの該当するシートのプログラミングを実行することができる。生成されたプログラムは保守装置からコントローラへダウンロードされてコントローラ上にて実行され、実際の制御が行われる。
また、保守装置はソフトウエア枠内にあるマクロの入力信号や出力信号をコントローラから読出して表示部103の画面のソフトウエア回路上に逐次更新表示することによりコントローラの動作をモニタすることができる。ハードウエア回路についても、動作データに対応するものについては動作データの表示を行うことが可能である。更に、表示部103の画面表示上でソフトウエア枠内にあるマクロを指定しそのマクロのパラメータをコントローラから読出して表示したり、保守装置で入力したパラメータ値に書替えるチューニングを行ったりすることができる。保守員は、表示部103に表示された、ソフトウエア回路、ハードウエア回路を同時に見ながら保守を行えるので、他のドキュメントを見ないでシステム全体を迅速に把握することができる。
例えば、制御目標設定器25の制御設定値を変更する場合に、自動の状態で設定を変更すると操作器49が突変しプラントに外乱を与えるが、もしソフトウェア枠内の情報しか表示部103に表示されていなければ、どのような外乱が発生し、それを防ぐにはどうしたら良いかが不明な為、システム全体を記述した別のドキュメントを併用して保守を行なう必要がある。一方、本発明の実施例では、関係する制御システムの全体を表示部103で確認可能な為、必要に応じて、自動/手動切替スイッチ51により当該制御を手動とし、かつ、手動時に手動操作を行う為には手動増/減スイッチ50を操作し、開度指示器47やプラント状態量の指示器42により確認を行えばよいことが、他のドキュメント等を必要としないで認識できる。」

第1図

「
[図:0001423944000007.jpg]
」

(8)実施例:第7図の説明(第11欄第14行~第12欄第26行)

「第7図に、第3図に示した制御内容をカスケード制御とし、そのマスター制御ループをマイナー制御ループとは別のコントローラ「CPU2」で実現した場合の保守装置の表示部103の表示例を示す。マイナー制御ループは、第1図同様「CPU1」で実現し、変更点は、制御設定値が一定値ではなく、「CPU2」から与えられるようになったことである。
第7図中、ソフトウエア枠200内のコントローラ枠300は、ソフトウエア枠内でのコントローラの区分を示す。201、301は各々コントローラ名称でありコントローラ枠で区分された領域が各々「CPU1」、「CPU2」に属することを示す。302はシート枠であり、コントローラ枠内でのシート区分を示す。
303、304は各々シート名称であり、シート枠で区分された領域が各々「SH1」、「SH2」に属することを示す。図左上の350はマスター制御ループのプロセスの状態量を検出するセンサであり、351は電流/電圧変換器であり、センサ350からの電流信号を電圧に変換する。352は入力信号診断用マクロであり、プロセス状態量の取込み量の合理性チェックを行ない、異常時には論理信号353を出力する。355は比較器であり、マスター制御ループの制御目標設定器354の出力とプロセス状態量を比較して偏差信号356を出力する。偏差信号356は比例積分器357に入力されるとともにコントローラ外部に出力され偏差指示器358に表示される。比例積分器357は「SH2」から与えられる制御自動モード信号359により制御モードを切替られ、自動モードでは、偏差信号356に応じた比例積分演算を行い、手動モードでは「CPU1」から取込んだマイナー制御ループのプロセス状態量360にトラッキングする。比例積分演算器357の出力は「CPU1」の比較器24に出力される。
マスター制御ループの自動/手動切替スイッチ361は、コントローラ「CPU2」に接続され、シート「SH2」で論理否定マクロ362、364、論理和マクロ363、論理積マクロ365とともにマスター制御ループの自動/手動切替インターロック回路を構成する。
本実施例においても、保守装置の表示部103に作画された各要素は、ソフトウエア枠、コントローラ枠、シート枠により区分されたどの領域に存在するかを識別することにより、どのコントローラのどのシートに属するかを判定でき、そのマクロ名や、相互の接続情報から上記の実施例同様「プログラミング」、「モニタ」、「チューニング」を実施することが可能である。またシステムの動作状態は表示部103の表示画面上に同時に、かつ相互の機能的な接続関係が、複数コントローラの複数シート及びハードウエア回路にわたって、他のドキュメント等の補助手段を利用することなく容易に把握できる形で表示される。従って本実施例によれば、保守装置は、システム内のコントローラのソフトウエアの極く一部を見るのではなく、システム全体を機能面から容易に把握し全体の動き確認しながら信頼性の高い効率の良い保守を可能とする効果がある。
また、前述のように、第1図、第7図の表示例において、保守装置の表示部のソフトウエア枠外の領域に存在する素子はハードウエアにより回路を構成しているものであり、これらのハードウエア回路の素子についても、その相互の接続関係や実装情報からハードウエアを操作する為の接続図、実装図を自動的に生産することができ、保守と生産システムの統合化を実現できる。
従来これらの処理は各々ハードウエア、ソフトウエアの生産設備としてメーカの大型計算機で処理していたものが、小型の保守装置として制御装置とともに現場に設置することができるという効果がある。」

第7図

「
[図:0001423944000008.jpg]
」

(9)発明の効果(第12欄第28~50行)

「本発明によれば、保守装置の表示部にコントローラのソフトウエア回路部だけでなく当該ソフトウエア回路に関係する入出力ハードウエア回路や、信号取合い先ハードウエアも表示することができ、他のドキュメントの補助を必要としないで、システム全体を把握しながら、適切な保守を行える。
また、コントローラのソフトウエア回路部も、複数のコントローラに分割したものを同時に表示でき、更に同一コントローラ内も複数のシートに分割したものを同時に表示できるので、大規模なシステムや、複雑なシステムに於いて、コントローラが分散化されたプラント制御方法及び装置に於いても、他のドキュメントの補助を必要としないでシステム全体を把握しながら適切な保守が行える。
また、本発明によれば、保守装置の表示部に対話作画された、ソフトウエア情報、ハードウエア情報をソフトウエア枠、コントローラ枠、シート枠により分割処理することにより複数コントローラのプログラム生産・ハードウエア生産ドキュメントの自動生成の統合化が可能となる効果がある。
さらに、従来メーカの大型計算機にてハード、ソフト別々に処理していたこれらの作業が、制御装置の現地据付後も、現地にて速やかに実施できる。」

2 引用文献1に記載されているに等しい事項

上記1から、引用文献1には、次の事項が記載されている、といえる。

(1)上記1(1)、(7)、(8)から、引用文献1には、プロセス制御システムにおいて、保守装置101の表示部103に、例えば第7図に示される、ソフトウエア回路の表示領域のみならずハードウエアの表示領域を含めた制御回路をグラフィック表示し、システム全体を容易に把握しながら保守を行うことができる「制御回路表示方法」に関する発明が記載されている、といえる。

(2)上記1(1)、(7)、(8)から、引用文献1に記載の「制御回路表示方法」は、第1図や第7図のように、プラント制御システムのソフトウエア回路部分とハードウエア回路部分とを含む制御回路を、表示部103にグラフィック表示するものである、といえる。また、第7図に示される実施形態では、カスケード制御におけるマスター制御ループとマイナー制御ループの2つの制御ループについてグラフィック表示するものである。そして、第7図に示される実施形態におけるカスケード制御では、マイナー制御ループが第1図に示される実施形態と同様にコントローラ「CPU1」201で実現され、かつ、制御設定値が、第1図に示される実施形態での制御目標設定器(SET)25による設定に代えて、マスター制御ループのコントローラ「CPU2」301から与えられる(より具体的には、コントローラ「CPU2」301のシート「SH1」303の比例積分器357から出力され、コントローラ「CPU1」201のシート「SH1」202の比較器24に入力される)ものであることがわかる。

(3)上記1(1)、(2)、(7)、(8)から、引用文献1に記載の「制御回路表示方法」によって、第1図や第7図のようにグラフィック表示される制御回路は、第3図に示された制御内容に対応したものである。そして、第7図に示される実施形態の場合、マスター制御ループとマイナー制御ループのそれぞれが、ソフトウエア回路部分とハードウエア回路部分とを含み、各回路部分の各回路要素を、対応した作画情報にて描画することで、それぞれグラフィック表示されるものである。

ここで、マスター制御ループは、ソフトウエア回路部分の回路要素としてコントローラ「CPU2」301のシート「SH1」303に属する、入力信号診断用マクロ352、比較器355、比例積分器357と、コントローラ「CPU2」301のシート「SH2」304に属する、論理否定マクロ362、364、論理和マクロ363、論理積マクロ365とを含み、また、ハードウエア回路部分の回路要素として、プロセスの状態量を検出するセンサ350、電流/電圧変換器351、自動/手動切替スイッチ361、偏差指示器358を含む(各回路要素を以下「マスター制御回路要素」という。また、各回路要素を総じて以下「複数のマスター制御回路要素」ということがある。)ことがわかる。

また、マイナー制御ループは、第1図に示される実施形態と同様に、ソフトウエア回路部分の回路要素としてコントローラ「CPU1」201のシート「SH1」202に属する、入力信号診断マクロ21、比較器24、比例積分器(P+I)27、出力信号診断マクロ31を含み、ハードウエア回路部分の回路要素として、プロセス状態量を検出するセンサ41、電流/電圧変換器40、信号切換器43、電圧/電流変換器46、電/空変換器48、操作器49を含む(各回路要素を以下「マイナー制御回路要素」という。また、各回路要素を総じて以下「複数のマイナー制御回路要素」ということがある。)ことがわかる。

ここで、引用文献1における「シート」とは、最小のプログラム単位である(上記1(3)参照。)から、コントローラ「CPU2」301のシート「SH1」303及びシート「SH2」304、並びに、コントローラ「CPU1」201のシート「SH1」202は、それぞれが最小のプログラム単位であり、コントローラ「CPU2」301又はコントローラ「CPU1」201にてそれぞれ実行される(上記1(7)参照。)ことがわかる。また、上記1(6)の「対話操作部104でソフトウエアのロジック図を作成、修正したあと、ソフトウエア情報抽出、コンパイルすることにより、前記プログラミング機能が実現される。」等の記載から、各「シート」は、操作者の対話操作部104による操作により、作成や修正がされるものであるといえる。

(4)上記1(6)~(8)から、引用文献1に記載の「制御回路表示方法」によってグラフィック表示される制御回路は、第7図に示される実施形態の場合、上記(3)の複数のマスター制御回路要素、複数のマイナー制御回路要素のほか、複数のマスター制御回路要素のソフトウエア回路部分を実行するコントローラ「CPU2」301、及び、複数のマイナー制御回路要素のソフトウエア回路部分を実行するコントローラ「CPU1」201、並びに、マスター制御ループにおけるコントローラ「CPU2」301と複数のマスター制御回路要素のハードウエア回路部分とをつなぐ信号線(例えば、第7図における、電流/電圧変換器351を介してセンサ350と「CPU2」301の入力信号診断用マクロ352とを接続する矢印線を参照。)、及び、マイナー制御ループにおけるコントローラ「CPU1」201と、複数のマイナー制御回路要素のハードウエア回路部分とをつなぐ信号線(例えば、第7図における、電流/電圧変換器40を介してセンサ41と「CPU1」201の入力信号診断マクロ21とを接続する矢印線、並びに、電圧/電流変換器46及び電/空変換器48を介して操作器49と「CPU1」201の入力信号診断マクロ31とを接続する矢印線を参照。)を含み、対応した作画情報にて描画することで、それぞれグラフィック表示されるものである、といえる。

(5)上記1(5)~(6)から、引用文献1に記載の「制御回路表示方法」では、上記1(6)の「ソフトウエア回路の信号線の側に数値を周期的に更新表示し、あるいはデジタル信号線については“0”、“1”に応じて信号線の表示色を変化させる。」との記載、及び、上記1(7)の「保守装置はソフトウエア枠内にあるマクロの入力信号や出力信号をコントローラから読出して表示部103の画面のソフトウエア回路上に逐次更新表示することによりコントローラの動作をモニタすることができる。ハードウエア回路についても、動作データに対応するものについては動作データの表示を行うことが可能である。」との記載から、制御プログラム実行中のコントローラからプラントの「動作データ」を収集し、この動作データを表示画面上の対応する画面情報に付随して逐次更新表示することで、ソフトウエア回路部分に限らず、ハードウエア回路部分についてもコントローラの現在の制御動作状況を監視することが可能なものであるといえる。

また、保守装置101の、キーボード等の入力装置からなる対話操作部104に対する操作者の入力情報に応じて、例えば、ソフトウエアのロジック図を作成、修正したあと、ソフトウエア情報抽出、コンパイルする「プログラミング」や、表示画面情報から任意の回路要素(マクロ)を選択し、そのパラメータ値を書替える「チューニング」をすることができると理解できる。

さらに、上記1(2)から、引用文献1に記載の「制御回路表示方法」では、入力信号診断マクロ21により、センサ41が検出したプロセス状態量に基づく信号22の合理性診断により異常と判定されたとき、又は、出力信号診断マクロ31により、比例積分器27の出力と信号30とを比較し、信号突変、断線等の合理性チェックにより異常と判定されたときには、論理和マクロ33により当該機器の制御が異常状態であることを自動/手動切換ロジック44に出力し、当該機器の制御を手動モードに切り換えるものであることがわかる。そして、上記1(7)から、関係する制御システムの全体を表示部103で確認可能であるため、手動モード時に、開度指示器47やプラント状態量の指示器42により確認を行いながら、手動増/減スイッチ50を手動操作できることがわかる。

してみると、引用文献1に記載の「制御回路表示方法」は、制御回路をグラフィック表示するにあたり、操作者の対話操作部104による「チューニング」によりパラメータ値を書き換えること、又は、制御異常信号による手動モード時に手動増/減スイッチ50を手動操作することにより操作器49の開度を増減させることに応答して変更される「動作データ」を表示画面上の対応する画面情報に付随して逐次更新表示するものであることがわかる。

(6)上記1(7)の「保守員は、表示部103に表示された、ソフトウエア回路、ハードウエア回路を同時に見ながら保守を行えるので、他のドキュメントを見ないでシステム全体を迅速に把握することができる」との記載、上記1(8)の「システムの動作状態は表示部103の表示画面上に同時に、かつ相互の機能的な接続関係が、複数コントローラの複数シート及びハードウエア回路にわたって、他のドキュメント等の補助手段を利用することなく容易に把握できる形で表示される。」及び「第1図、第7図の表示例において、保守装置の表示部のソフトウエア枠外の領域に存在する素子はハードウエアにより回路を構成しているものであり、これらのハードウエア回路の素子についても、その相互の接続関係や実装情報からハードウエアを操作する為の接続図、実装図を自動的に生産することができ、保守と生産システムの統合化を実現できる」との記載、上記1(9)の「保守装置の表示部にコントローラのソフトウエア回路部だけでなく当該ソフトウエア回路に関係する入出力ハードウエア回路や、信号取合い先ハードウエアも表示することができ、他のドキュメントの補助を必要としないで、システム全体を把握しながら、適切な保守を行える」との記載、並びに、第1図や第7図の図示内容からみて、引用文献1に記載の「制御回路表示方法」によれば、「マスター制御回路要素」や「マイナー制御回路要素」が、マスター制御ループ内やマイナー制御ループ内の他の回路要素とどのような接続関係があるかを、他のドキュメントの補助手段を必要としないで、システム全体を把握することができ、マスター制御ループやマイナー制御ループに関する状況認識(例えば、上記(5)に示した、信号線の側に数値を周期的に更新表示すること、信号線の表示色を変化させること、画面情報に付随して動作データを逐次更新表示することなど)を操作者に提供するものといえる。

(7)上記(5)のとおり、引用文献1に記載の「制御回路表示方法」では、保守装置101の、キーボード等の入力装置からなる対話操作部104に対する操作者の入力情報に応じて、例えば、ソフトウエアのロジック図を作成、修正したあと、ソフトウエア情報抽出、コンパイルする「プログラミング」や、表示画面情報から任意の回路要素(マクロ)を選択し、そのパラメータ値を書替える「チューニング」を行ったりすることができ、その結果、プロセスの制御に影響を及ぼすことを可能にするものといえる。

3 引用発明

上記1及び2から、引用文献1に記載された事項を本件発明の発明特定事項に合わせて整理すると、引用文献1には、第7図に示される実施形態として、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている、といえる。

「プラント制御システムの制御回路表示方法であって、
プラント制御システムの、カスケード制御におけるマスター制御ループとマイナー制御ループの2つの制御ループ用の、ソフトウエア回路部分とハードウエア回路部分とを含むグラフィック表示される制御回路を表示部103に表示することであって、前記グラフィック表示される制御回路は、マスター制御ループの複数のマスター制御回路要素と、マイナー制御ループの複数のマイナー制御回路要素とを描写し、
(i)前記複数のマスター制御回路要素のうち、コントローラ「CPU2」301のシート「SH1」303の比例積分器357の出力が、前記マイナー制御回路要素であるコントローラ「CPU1」201のシート「SH1」202の比較器24に入力され、
(ii)前記グラフィック表示される制御回路は、(a)マスター制御ループを制御するためのシート「SH1」303及びシート「SH2」304、並びに、マイナー制御ループを制御するためのシート「SH1」202、(b)前記シート「SH1」303及び前記シート「SH2」304を実行するコントローラ「CPU2」301、並びに、前記シート「SH1」202を実行するコントローラ「CPU1」201、および(c)前記コントローラ「CPU2」301と複数のマスター制御回路要素のハードウエア回路部分とをつなぐ信号線、及び、マイナー制御ループにおけるコントローラ「CPU1」201と複数のマイナー制御回路要素のハードウエア回路部分とをつなぐ信号線、を描写する、
前記表示部103に表示することと、
制御回路をグラフィック表示するにあたり、操作者の対話操作部104によるチューニングによりパラメータ値を書き換えること、または、制御異常信号による手動モード時に手動増/減スイッチ50を手動操作することにより操作器49の開度を増減させることを含む操作者の操作に応答して変更される動作データを表示画面上の対応する画面情報に付随して逐次更新表示することと、
前記マスター制御回路要素及び前記マイナー制御回路要素が、前記マスター制御ループ内及び前記マイナー制御ループ内の他の回路要素とどのような接続関係があるかを、他のドキュメントの補助手段を必要としないで、システム全体を把握することができることで、前記マスター制御ループや前記マイナー制御ループに関する状況認識を前記操作者に提供することと、
前記操作者が、前記マスター制御ループ内や前記マイナー制御ループ内のパラメータ値を書き換えてプロセスの制御に影響を及ぼすことを可能にすることと、
を含む、制御回路表示方法。」

第5 対比・判断

1 相当関係

本件発明と引用発明とを対比すると、次の相当関係がある。

(1)引用発明における「プラント制御システムの制御回路表示方法」は、本件発明における「方法」に相当する。

(2)引用発明における「プラント制御システムの、カスケード制御におけるマスター制御ループとマイナー制御ループの2つの制御ループ」は、本件発明における「プロセスプラントの複数の制御ループ」に相当する。また、引用発明における「グラフィック表示される制御回路」は、本件発明における「ループマップ」に相当し、以下同様に、「表示部103」は「ディスプレイ」に、「マスター制御ループ」は「第1制御ループ」に、「複数のマスター制御回路要素」は「第1の複数の制御ループ要素」に、「マイナー制御ループ」は「第2制御ループ」に、「複数のマイナー制御回路要素」は「第2の複数の制御ループ要素」に、それぞれ相当する。

(3)引用発明における「前記複数のマスター制御回路要素のうち、コントローラ「CPU2」301のシート「SH1」303の比例積分器357の出力が、前記マイナー制御回路要素であるコントローラ「CPU1」201のシート「SH1」202の比較器24に入力され」る点は、

比例積分器357と比較器24とが通信可能に接続され、比例積分器357からの出力を制御設定値として比較器24へと入力する(上記第4の2(2)を参照。)ことから、「比例積分器357」はマイナー制御ループの「複数のマイナー制御回路要素」としての機能も有しているといえるため、

本件発明における「前記第1の複数の制御ループ要素の少なくとも1つが前記第2の複数の制御ループ要素に含まれ」ることに相当する。

(4)引用発明における「シート「SH1」303」及び「シート「SH2」304」並びに「シート「SH1」202」は、マスター制御ループ又はマイナー制御ループを制御するためのシート、すなわち最小のプログラム単位である(上記第4の2(3)を参照。)ことから、

本件発明における「前記第1及び第2制御ループの少なくともいずれかを制御するための1つ以上の制御ルーチン」に相当する。

(5)引用発明における「コントローラ「CPU2」301」及び「コントローラ「CPU1」201」は、それぞれ、シート「SH1」303及びシート「SH2」304、並びに、シート「SH1」202を実行するコントローラであることから、

本件発明における「前記1つ以上の制御ルーチンを実装する1つ以上のプロセスコントローラ」に相当する。

(6)引用発明における「マスター制御回路要素のハードウエア回路部分」及び「マイナー制御回路要素のハードウエア回路部分」は、センサ350、センサ41、操作器49を含む(上記第4の2(4)を参照。)ことから、本件発明における「フィールドデバイス」に相当する。

また、引用発明における「信号線」は、コントローラ「CPU2」301と複数のマスター制御回路要素のハードウエア回路部分とを、又は、マイナー制御ループにおけるコントローラ「CPU1」201と複数のマイナー制御回路要素のハードウエア回路部分とを、通信可能につなぐ機能を有するものであるから、

本件発明における「前記1つ以上のプロセスコントローラと、前記第1及び第2制御ループの少なくともいずれかに含まれる1つ以上のフィールドデバイスとの間の1つ以上の通信リンク」に相当する。

(7)引用発明における「操作者の対話操作部104によるチューニングによりパラメータ値を書き換えること」は、その機能・作用から、本件発明における「制御ループパラメータに対する修正」に相当する。

また、本件発明における「前記複数の制御ループ内の制御ループ状態を有する制御ループに対応する特定の状態の修正」とは、発明の詳細な説明の記載、例えば、段落【0013】の「ユーザは、制御ループに関して生じる特定の状態(例えば、異常な状態)を容易に修正することができる」との記載、又は、段落【0042】の「状態251は、制御ループに関連付けられた状態である。場合によっては、状態251は、制御ループの特定の要素に関連付けられた状態であってもよい。例えば、状態251は、正常状態、警告、または異常な状態であってもよい。」との記載を参酌すれば、制御ループに生じた異常な状態を修正することを意味すると解されることから、

引用発明における「制御異常信号による手動モード時に手動増/減スイッチ50を手動操作することにより操作器49の開度を増減させること」は、本件発明における「前記複数の制御ループ内の制御ループ状態を有する制御ループに対応する特定の状態の修正」に相当する。

また、引用発明における「操作者の対話操作部104によるチューニング」及び「手動増/減スイッチ50を手動操作すること」は、上記第4の2(5)のとおり、制御動作状況を表示部103で監視しながら、操作者が対話操作部104又は手動増/減スイッチ50を操作することを意味するから、いずれも本件発明における「ユーザの対話」に相当する。

してみると、引用発明における「制御回路をグラフィック表示するにあたり、操作者の対話操作部104によるチューニングによりパラメータ値を書き換えること、または、制御異常信号による手動モード時に手動増/減スイッチ50を手動操作することにより操作器49の開度を増減させることを含む操作者の操作に応答して変更される動作データを表示画面上の対応する画面情報に付随して逐次更新表示すること」は、

本件発明における「制御ループパラメータに対する修正または前記複数の制御ループ内の制御ループ状態を有する制御ループに対応する特定の状態の修正を含むユーザの対話に応答して前記ループマップを更新すること」に相当する。

(8)引用発明における「前記マスター制御回路要素及び前記マイナー制御回路要素が、前記マスター制御ループ内及び前記マイナー制御ループ内の他の回路要素とどのような接続関係があるかを、他のドキュメントの補助手段を必要としないで、システム全体を把握することができることで、前記マスター制御ループや前記マイナー制御ループに関する状況認識を前記操作者に提供すること」は、例えば、グラフィック表示される制御回路を確認すれば、他のドキュメントの補助手段を必要とすることなく、迅速に接続関係を理解できることを意味するから、その機能、作用からみて、

本件発明における「所与の要素が前記制御ループの他の要素にどのように関係するかを前記ユーザが迅速に理解できるようにすることで、前記制御ループに関する状況認識を前記ユーザに提供すること」に相当する。

(9)引用発明における「前記操作者が、前記マスター制御ループ内や前記マイナー制御ループ内のパラメータ値を書き換えてプロセスの制御に影響を及ぼすことを可能にすること」は、その作用・機能からみて、

本件発明における「前記ユーザが、前記制御ループ内のパラメータまたはデバイスを変更してプロセスの制御に影響を及ぼすことを可能にすること」と、選択的に特定された事項のうち、「前記ユーザが、前記制御ループ内のパラメータを変更してプロセスの制御に影響を及ぼすことを可能にすること」に相当する。

2 一致点

上記1を踏まえると、本件発明と引用発明とは、次の点で一致する。

「方法であって、
プロセスプラントの複数の制御ループ用のループマップをディスプレイに表示することであって、前記ループマップは第1制御ループの第1の複数の制御ループ要素と第2制御ループの第2の複数の制御ループ要素とを描写し、
(i)前記第1の複数の制御ループ要素の少なくとも1つが前記第2の複数の制御ループ要素に含まれ、
(ii)前記ループマップは、(a)前記第1及び第2制御ループの少なくともいずれかを制御するための1つ以上の制御ルーチン、(b)前記1つ以上の制御ルーチンを実装する1つ以上のプロセスコントローラ、および(c)前記1つ以上のプロセスコントローラと、前記第1及び第2制御ループの少なくともいずれかに含まれる1つ以上のフィールドデバイスとの間の1つ以上の通信リンク、を描写する、
前記ディスプレイに表示することと、
制御ループパラメータに対する修正または前記複数の制御ループ内の制御ループ状態を有する制御ループに対応する特定の状態の修正を含むユーザの対話に応答して前記ループマップを更新することと、
所与の要素が前記制御ループの他の要素にどのように関係するかを前記ユーザが迅速に理解できるようにすることで、前記制御ループに関する状況認識を前記ユーザに提供することと、
前記ユーザが、前記制御ループ内のパラメータを変更してプロセスの制御に影響を及ぼすことを可能にすることと、
を含む、方法。」

3 相違点

他方、本件発明と引用発明とは、次の点で一応相違する(以下「相違点」という。)。

プロセスの制御に影響を及ぼすことを可能にするために、ユーザが変更する制御ループ内の要素が、

本件発明においては、「制御ループ内のパラメータまたはデバイス」であるのに対して、

引用発明においては、「マスター制御ループ内やマイナー制御ループ内のパラメータ値」であって、センサ350、センサ41、操作器49等(上記1(6))の「デバイスを変更する」ものであるかについては不明である点。

4 新規性についての判断

上記相違点について検討する。

上記相違点に係る本件発明の事項は、「パラメータまたはデバイス」と、選択肢を有する記載によって発明を特定するものであって、本件発明と引用発明とは、前者の「パラメータ」の限りにおいては、差異がない。

したがって、本件発明は引用発明である。

5 進歩性についての判断

仮に、上記相違点に係る本件発明の「パラメータまたはデバイス」との事項が、「デバイス」を必須の事項とする場合についても予備的に検討する。

引用発明は、上記第4の2(5)に示したように、機器の制御が異常状態であることを出力し、手動モードに切り換えて、開度指示器47やプラント状態量の指示器42により確認を行いながら、手動増/減スイッチ50を手動操作可能なものであるところ、手動操作によっても当該異常状態を解消することができない場合に、異常・故障を有するデバイスを特定し、交換を行うことは、例示するまでもなく当業者が普通に行う慣用手段である。そして、当該デバイスを正常なものに交換することは、プロセスの制御を正常な状態に復帰させること、すなわち「プロセスの制御に影響を及ぼすことを可能にする」ことに、ほかならない。

してみれば、本件発明は、引用発明及び慣用手段に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第6 請求人の主張

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請求人は、令和6年10月25日提出の意見書において、次の点を主張する。

「請求項1に係る発明と対比すると、引用文献1は、プロセスプラントの複数の制御ループ用のループマップの概念を開示も示唆もしていません。引用文献1には、第1制御ループの第1の複数の制御ループ要素と第2制御ループの第2の複数の制御ループ要素とを描写するループマップを表示すること、第1の複数の制御ループ要素の少なくとも1つが第2の複数の制御ループ要素に含まれることは記載されていません。さらに、引用文献1には、制御ルーチン、制御ルーチンを実装するプロセスコントローラ、およびプロセスコントローラと制御ループに含まれるフィールドデバイスとの間の通信リンクを描写するループマップについては記載されていません。さらに、引用文献1は、ユーザの対話に応答してループマップを更新して制御ループに関する状況認識をユーザに提供すること、またはユーザが制御ループ内のパラメータまたはデバイスを変更してプロセスの制御に影響を及ぼすことを可能にすることを開示していません。
・・・
引用文献1に記載の発明は、プラント制御システムの制御回路を表示し、制御回路と対話をするためのシステムを提供します。しかし、引用文献1は、所与の要素が前記制御ループの他の要素にどのように関係するかを示すループマップを表示すること、ユーザの対話に基づいてループマップを更新すること、およびユーザに状況認識と修正能力を与えること、という技術的特徴を開示も示唆もしていません。」

しかしながら、上記第4に示したように、引用文献1に記載された事項から上記第4の3に示した引用発明が認定され、上記第5に示したように、引用文献1は、請求人が主張する上記の点を含む引用発明を開示するものであるから、当該意見を採用することはできない。

第7 むすび

以上のとおり、本件発明は引用発明であるから、特許法第29条第1項第3号の発明に該当し、特許を受けることができないものであり、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

または、本件発明は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものであり、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。

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2023-010360

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