特許拒絶査定不服審判
2024-014470
プロセス制御システムの情報をグラフィカルに表示する方法及び装置
- 審判番号
- 2024-014470
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2022-013308
- 請求日
- 2024年09月09日
- 審決日
- 2026年03月17日
- 公報発行日
- 2026年08月28日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】フィッシャー-ローズマウント システムズ,インコーポレイテッド
- 【請求人代理人】加藤 和詳
- 審判長/審判官
- 審判長 鈴木 貴雄
- 審判官 田々井 正吾
- 審判官 塩澤 如正
- 分類
- P18 .121-WZ (G05B)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2022- 13308「プロセス制御システムの情報をグラフィカルに表示する方法及び装置」拒絶査定不服審判事件〔令和 4年 4月 1日出願公開、特開2022- 51805〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、2014年(平成26年)3月13日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理2013年3月15日(US)アメリカ合衆国、2013年4月9日(US)アメリカ合衆国、2014年3月12日(US)アメリカ合衆国)を国際出願日とする国際特許出願である特願2016-502019の一部を、令和2年5月14日に新たな特許出願とした特願2020-85124の一部を、さらに令和4年1月31日に新たな特許出願としたものであって、その手続の経緯は、概略、以下のとおりである。
令和 4年 1月31日 :上申書の提出
同年11月22日付け:拒絶の理由の通知
令和 5年 2月13日 :意見書、手続補正書の提出
同年 5月10日付け:最後の拒絶の理由の通知
同年 8月15日 :意見書の提出
同年 9月27日付け:最後の拒絶の理由の通知
令和 6年 1月10日 :意見書の提出
同年 4月30日付け:拒絶をすべき旨の査定
(拒絶査定、以下「原査定」という。)
同年 9月 9日 :本件審判(拒絶査定不服審判)の請求
令和 7年10月22日付け:当審における拒絶の理由の通知
(以下「当審拒絶理由通知」という。)
令和 8年 1月23日 :意見書の提出
第2 本件発明
本件出願の請求項1~24に係る発明は、令和5年2月13日提出の手続補正書により補正がされた特許請求の範囲の請求項1~24に記載された事項により特定されるものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下「本件発明」という。)は、次のとおりのものである。
「 【請求項1】
プロセス制御システムのプロセス変数を監視することと、
前記監視されたプロセス変数の現在の状態を決定することと、
前記プロセス変数に関連付けられる傾向を決定することと、
前記プロセス変数に関連付けられる情報であって、前記プロセス変数の前記現在の状態、設定点に対する前記プロセス変数の相対位置、及び前記プロセス変数の前記傾向を含む情報を表す第1のアイコンを生成することと、
前記第1のアイコンを、表示器を介してレンダリングすることと、を含み、
前記プロセス変数の前記現在の状態は、前記第1のアイコンの輪郭の形状によって表され、且つ前記設定点に対する前記プロセス変数の相対位置は、設定点インジケータに対するプロセス変数インジケータの相対位置に基づいて前記第1のアイコンによって表される
方法。」
第3 当審拒絶理由通知
本件発明に対し、当審拒絶理由通知において通知した拒絶の理由は、概略、次のとおりである。
(進歩性)請求項1に係る発明は、その優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった、次の引用文献1に記載された発明、及び、引用文献2又は3に記載された技術的事項に基づいて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献1:特開平8-106321号公報
引用文献2:特表2003-504712号公報
引用文献3:特開平2-1516号公報
第4 引用文献1の記載及び引用発明
1 引用文献1に記載された事項
引用文献1には、以下の事項が記載されている(下線は当審にて付した。以下同様。)。
「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、液位を監視するプラント監視装置に関する。
【0002】
【従来の技術】図14は、従来のプラント監視装置10のブロック図である。監視対象の複数のタンク101には、タンク101の液位(水位)の検出手段であるセンサ2がそれぞれ設置されている。プロセス計算機1のプロセス入力手段3は、各センサ2からの信号を周期的に入力している。表示制御手段5は、プロセス入力手段3が入力した信号レベルの大きさにより、表示装置であるCRT6へ表示させる棒グラフやデジタル量の大きさを変化させて表示している。
【0003】プラント監視装置10によりプラントの状態監視を行なう場合、CRT6には図15に示すプラント系統図100を絵図表示し、これを運転員が監視することによりプラントの運転状態を把握している。プラントに存在する各種監視対象のタンク101をプラント系統図100として表示する場合、タンク内の液位を棒グラフ102で表すか、あるいは数値103で表すか、もしくはその両方の組み合わせで表示しており、運転員はこの表示を目視することによりタンク液位の監視を行なっている。
【0004】このような装置により、液位等のプロセスデータの値は棒グラフ表示や数値表示を参照することにより確認できる。さらに、プロセスデータがある値を越えた、または、下回った場合に警報を発生させることや、あるいは棒グラフ表示や数値表示の表示色を警報状態であることを示す色に変化させることにより、運転員に注意を促すことも行なわれている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】このような装置を用いた場合、前述のような警報状態監視を行なうことは容易であるが、これはある任意時刻の瞬時値が監視可能であるだけでありプロセスデータが変動しているか否かのプロセスデータの挙動までは監視できない。したがって、プロセスデータの挙動を表そうとする場合は、棒グラフ表示や数値表示を高速で表示更新する手法がとられている。高速で表示更新が行なえない装置の場合は、運転員が表示を注視して挙動が有るか否かを判定しなければならなかった。その場合、表示が更新されるまではプロセスデータの挙動に関しては有効な監視が行なえないので、緊急を要する場合には不都合があった。また、監視対象が複数存在する場合は、その複数の表示を全て注視しなければ挙動は確認できないので、運転員の負担が大きくなり十分な監視が行なえない問題があった。さらに、表示装置に表示されたものを記録として残すための手段としては、ハードコピーと呼ばれる表示装置上の表示イメージでの印刷物が使用されるが、この記録も任意時刻のプラント状態が記録されるだけであるので、プロセスデータの挙動を記録することはできず、挙動を確認するためには複数のハードコピーを採取し、その内容を比較して挙動を確認しなければならないという問題があった。本発明の目的は、運転員の液位のプロセス量の変化に対する判断が容易かつ敏速に行なえるプラント監視装置を得ることにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、本発明においては、プラントの液位を検出する検出手段と、この検出手段からの信号を入力するプロセス入力手段と、このプロセス入力手段からの信号の変動量を検出する変化検出手段と、前記信号レベルに応じた大きさの棒グラフを表示させるとともに、前記変化検出手段が検出した変動量に応じて表示出力する棒グラフの形状を変化させる表示制御手段とを有することを特徴とするプラント監視装置を提供する。
【0007】
【作用】このように構成された装置においては、プラントの液位が検出手段で検出され、この検出手段で検出されたプロセス量の信号がプロセス入力手段によって入力され、このプロセス入力手段で入力された信号の変動量が変化検出手段によって検出される。表示制御手段は、プロセス入力手段で入力された信号の大きさに応じて棒グラフを作成するとともに、この棒グラフの形状を変化検出手段によって検出された変動量に応じて変化させる。
【0008】
【実施例】以下、本発明の実施例を図1から図13を参照して説明する。図1は、本発明の第1実施例のプラント監視装置20のブロック図である。監視対象の複数のタンク201には、タンク201の液位(水位)の検出手段であるセンサ22がそれぞれ設置されている。プロセス計算機21のプロセス入力手段23は、各センサ22を含むプラントからのプロセス量信号を周期的に入力している。変化検出手段24の構成要素である変化判定部27は、入力されたプロセス量が変動しているか否かを判定する。表示制御手段25は、変化判定部27により判定されたプロセス量の変動の有無と、前記プロセス量をもとに棒グラフ表示を行なうためのデータを作成する。表示装置であるCRT26は、表示制御手段25で作成された棒グラフデータを表示する。
【0009】プロセス入力手段23は、センサ22で測定したプラントのプロセス量の信号をある任意の周期で入力している。変化判定部27は、任意時刻でのプロセス量入力値をv(t-1)として記憶する。また、次の周期でのプロセス量の入力値を同様にしてv(t)として記憶する。変化判定部27は、これら2つの入力値を比較し、v(t-1)=v(t)ならプロセス量に変動は無しと判断し、v(t-1)≠v(t)ならばプロセス量に変動があると判断する。
【0010】表示制御手段25は、変化判定部27で判断されたプロセス量の変動の有無の結果と、今回の入力値であるv(t)をもとに棒グラフデータを作成しCRT26に表示する。表示制御手段25で作成される棒グラフデータは、変化判定部27で変動があると判断された場合は図2の波形の形状Bのデータとなり、変動無しと判断された場合は形状Aのデータとなる。」
「【0013】図5は、変化判定部27のフローチャートである。変化判定部27は図5に示す手順により、過去の当該水位信号と現在の当該水位信号の変動の有無が検出される。
【0014】すなわち、保存されている過去の水位信号(1021)と入力されてきた現在の水位信号(1022)とが比較され(1023)、変化有(1024)、変化無し(1025)が判定される。そして、次回の処理のために、現在の水位信号を保存する(1026)。
【0015】このようにして変化判定部27で検出された水位信号の変動の有無、および現在の水位は表示制御手段25へ送られ、図4に示す棒グラフ表示210 としてプラント系統図200 へ表示される。図4は、水位信号に変動が無いと検出されている場合の表示例であり、棒グラフ210 の先端形状220 は、直線で構成されている。
【0016】水位信号に変動が有ると検出されている場合は、図6のように表示され、棒グラフ210 の先端形状221 は、波形で構成されている。図6の波形は、正弦波形で描かれ、両端分は直線で描かれ、直線部分は水位の50cmを指している。」
「【0019】また、先端形状を変化させるのが、運転員の感覚として自然であるが、棒グラフ全体の輪郭がゆらぐように、側部を波形で表現してもよい。図7は、本発明の第2実施例のプラント監視装置30のブロック図である。
【0020】この第2実施例のプロセス計算機31は、図1に示した第1実施例のプロセス入力手段23と同様の構成作用のプロセス入力手段33を備えている。変化検出手段34は、図1に示した第1実施例の変化判定部27と同様の作用の変化判定部37に加えて、プロセス量の変動量を判定する変動量判定部38を備えている。表示制御手段35は、プロセス量と、プロセス量の変動の有無、およびプロセス量の変動量も含む棒グラフ表示を行なうためのデータを作成する。」
「【0022】変化判定部37でプロセス量に変動有りと判断された場合、変動量検出部38は、図8に示すように、プロセス量v(t-1)とv(t)を演算しプロセス量の変動量dvを算出し(1031、1032、1033、1034)、dvからプロセス量の「変動量が大」(1034、1037)、あるいは「変動量が小」(1035、1036)、を判定する。
【0023】表示制御手段35は、プロセス量の変動の有無、変動量、および今回の入力値であるv(t)をもとに棒グラフデータを作成し、CRT26に表示する。表示制御手段35で作成される棒グラフデータは、プロセス量の変動量が大の場合は図2に示す形状Cのデータとなり、変動量が小の場合は形状Dのデータとなり、変動無しの場合は形状Aのデータとなる。」
「【0026】・・・図10は、本発明の第3実施例のプラント監視装置40のブロック図である。
【0027】この第3実施例のプロセス計算機41は、図1に示した第1実施例のプロセス入力手段23と同様の構成作用のプロセス入力手段43を備えている。変化検出手段44は、図1に示した第1実施例の変化判定部27と同様の作用の変化判定部47に加えて、プロセス量の増減の変化方向を判定する変化方向判定部49を備えている。表示制御手段45は、プロセス量と、プロセス量の変動の有無、およびプロセス量の変化方向も含む棒グラフ表示を行なうためのデータを作成する。」
「【0029】変化判定部47でプロセス量に変動有りと判断された場合、変化方向判定部49は、2つのプロセス量v(t-1)とv(t)とを比較し、v(t-1)>v(t)ならプロセス量は「減少」していると判断し、v(t-1)<v(t)ならプロセス量は「増加」していると判断する。
【0030】表示制御手段45は、プロセス量の変動の有無、変化方向が増加、あるいは減少かの判断結果、および今回の入力値であるv(t)をもとに棒グラフデータを作成し、CRT26に表示する。前記表示制御手段45で作成される棒グラフデータは、プロセス量が増加の場合は図2に示す略凸状の波形の形状Eのデータとなり、同様に減少の場合は略凹状の波形の形状Fのデータとなり、変動無しの場合は、形状Aのデータとなる。」
「【0033】図12は、本発明の第4実施例のプラント監視装置50のブロック図である。この第2実施例(当審注:「第4実施例」の誤記と認められる。)のプロセス計算機51は、図1に示した第1実施例のプロセス入力手段23と同様の構成作用のプロセス入力手段53を備えている。変化検出手段54は、図1に示した第1実施例の変化判定部27と同様の作用の変化判定部57と、図7に示した第2実施例の変動量判定部38と同様の作用の変動量判定部58と、図10に示した第3実施例の変化方向判定部49と同様の作用の変化方向判定部59とを備えている。表示制御手段55は、プロセス量と、プロセス量の変動の有無、プロセス量の変動量、およびプロセス量の変化方向を含む棒グラフ表示を行なうためのデータを作成する。
【0034】プラント監視装置50は、センサ22で測定したプラントのプロセス量の信号をプロセス入力手段53で入力する。プロセス量はある任意の周期で入力されており、変化判定部57は、第1実施例で示した作用により、プロセス量の変動の有無を判断する。変化判定部57でプロセス量に変動有りと判断された場合、変動量判定部58は、第2実施例で示した作用により、変動量の大小を判定する。また、変化方向判定部59は、第3実施例で示した作用により、プロセス量の変化方向を判定する。
【0035】表示制御手段55は、プロセス量の変動量の大小、変化方向、および今回のプロセス量の入力値をもとに棒グラフデータを作成し、CRT26に表示する。表示制御手段55で作成される棒グラフデータは、プロセス量が変化無しの場合は図2の形状A、変動量が大でかつ変化方向が増加の場合は形状G、変動量が小でかつ変化方向が増加の場合は形状G’、変動量が大でかつ変化方向が減少の場合は形状H、変動量が小で変化方向が減少の場合は形状H’となる。
【0036】次に、図3の第1実施例のプロセス計算機21を、図12の第4実施例のプロセス計算機51へ置き換えた場合を例にとり説明する。入力された貯水タンク201 の現在の水位を50cmとし、また、変化判定部3で記憶されている過去の水位を30cmとする。変化判定部57は、「現在の水位≠過去の水位」であるため変動有りと検出する。変動量判定部58は、現在の水位と過去の水位から、変動量が大と判定される。なお、変動量の大小の判定を行なうためのしきい値はここでは10cmとする。変化方向判定部59は現在の水位と過去の水位から「過去の水位<現在の水位」の関係が成立しているものと判断し、その結果、水位は増加していると判定する。
【0037】これらの判定結果をもとに表示制御手段55は図13に示すプラント系統図のデータを作成しCRT26へ表示する。棒グラフ210 の先端形状224 は、現在の水位50cmを両端の直線部分で示し、この直線部分より高い位置で大きな波形が形成されている。したがって、運転員は貯水タンク201 の水位が上昇中であり、かつ、その上昇量が大きいことを容易に判断できる。」
「【0039】
【発明の効果】本発明によれば、運転員は、表示されたプロセス量を注視することなくプラントの液位の変化状態が容易に把握できるようになる。また、監視対象が複数存在するような複雑な系統においても監視すべき対象が容易に選別できるので、運転員の負荷を軽減させることができる。さらに、ハードコピーを採取する場合においても棒グラフの形状でプラントの状態が把握できるようになるので、プラント運転の履歴管理においてもハードコピーが有効な記録として利用できる。」
「【図2】
[図:0001437813000001.jpg]
」
「【図5】
[図:0001437813000002.jpg]
」
「【図12】
[図:0001437813000003.jpg]
【図13】
[図:0001437813000004.jpg]
」
2 引用文献1に記載されているといえる事項
上記1から、引用文献1には、次の事項が記載されているといえる。
(1)引用文献1の段落【0008】、【0033】の記載から、プラントの監視対象の複数のタンク201の液位(水位)をプロセス量として監視する(以下、このプロセス量をプロセス量(液位)と表記する。)ことが示されているといえる。
(2)引用文献1の段落【0033】~【0035】の記載から、第4実施例のプラント監視装置のプロセス計算機51は、図12に示される、第1実施例のプロセス入力手段23と同様の構成作用のプロセス入力手段53、第1実施例の変化判定部27と同様の作用の変化判定部57と、第2実施例の変動量判定部38と同様の作用の変動量判定部58、第3実施例の変化方向判定部49と同様の作用の変化方向判定部59とを備えるとともに、第1~第3実施例の表示制御手段25、35、45(段落【0015】~【0016】、【0023】、【0030】)の機能を兼ねた表示制御手段55を備えるものであるといえる。すなわち、当該表示制御手段55は、プロセス量(液位)と、プロセス量(液位)の変動の有無、プロセス量(液位)の変動量の大小、およびプロセス量(液位)の変化方向を含む棒グラフ表示を行なうためのデータを作成するものであるといえる。
(3)引用文献1の段落【0010】、【0015】~【0016】、【0019】、【0033】~【0037】の記載及び図2、図13の図示内容から、上記(2)の表示制御手段55は、棒グラフ210 の先端形状224 について、プロセス量(液位)の変動量の大小、変化方向、および今回のプロセス量(液位)の入力値をもとに棒グラフデータを作成してCRT26に表示するものである。具体的には、当該表示制御手段55で作成される棒グラフデータは、プロセス量(液位)が変化無しの場合は図2の形状Aのように棒グラフ210 の先端形状224 が直線で構成され(段落【0015】、【0035】)、プロセス量(液位)に変化がある場合には図2の形状G、G’、H又はH’のように棒グラフ210 の先端形状224 が波形で構成される(段落【0016】、【0035】)。そして、プロセス量(液位)に変化がある場合に、棒グラフデータは、変動量が大でかつ変化方向が増加のときは、形状Gのように、棒グラフの先端が上に向いた波形で構成され、変動量が小でかつ変化方向が増加のときは、形状G’のように、棒グラフの先端が形状Gよりも小さい上に向いた波形で構成される。また、変動量が大でかつ変化方向が減少のときは、形状Hのように、棒グラフの先端が下に向いた波形で構成され、変動量が小で変化方向が減少のときは、形状H’のように、棒グラフの先端が形状Hよりも小さい下に向いた波形で構成される。すなわち、プロセス量(液位)の変動の有無、変動量の大小、変化方向(増加/減少等の方向)が、棒グラフの先端の形状でそれぞれ表されるものといえる。また、段落【0015】~【0016】、【0036】の記載、及び、図12の図示内容から、上記(2)の表示制御手段55は、プロセス量(液位)を、棒グラフ210 の先端形状224 の直線部分の位置に基づいて表すものといえる。
(4)引用文献1の段落【0001】~【0004】、【0008】~【0010】、【0013】~【0016】、【0019】~【0020】、【0026】~【0027】、【0033】~【0037】、【0039】の記載及び図2、図5の図示内容から、引用文献1には、プラント監視装置についての発明とともに、プラントを監視する運転員に対し当該プラント監視装置によりプロセス量の挙動を表示するための方法についての発明も示されているといえる。
3 引用文献1に記載された発明
上記1~2から、引用文献1に記載された事項を本件発明の発明特定事項に合わせて整理すると、引用文献1には、主に第4実施例の内容から、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「プラントの監視対象の複数のタンク201 のプロセス量(液位)を監視することと、
前記監視されたプロセス量(液位)の変動の有無を変化判定部57で判定することと、
前記プロセス量(液位)の変動量の大小を変動量判定部58で判定することと、
前記プロセス量(液位)の変化方向を変化方向判定部59で判定することと、
前記プロセス量(液位)、前記プロセス量(液位)の変動の有無、変動量の大小、及び、変化方向を含む情報を表す棒グラフ210 を表示制御装置55で作成することと、
表示制御装置55により、前記棒グラフ210 を、CRT26を介して表示出力することと、を含み、
前記プロセス量(液位)の変動の有無、変動量の大小、及び、変化方向を含む情報は、棒グラフ210 の先端形状224 によって表され、且つ前記プロセス量(液位)は、先端形状224 の直線部分の位置に基づいて前記棒グラフ210によって表される
方法。」
第5 引用文献2に記載された技術的事項の認定
1 引用文献2に記載された事項
引用文献2には、以下の事項が記載されている。
「 【0032】
(実施形態の詳細な説明)
図1はプロセスシステム10を示すブロック図であり、これには、プロセスプラント12が実行するプロセスを制御することができる、コントローラ14に含まれる1つまたは複数のプロセス変数の監視および操作においてユーザを支援するグラフィカルユーザインタフェース50が含まれる。プロセスシステム10は、プロセスプラント12を含み、これは、コントローラ14および1つまたは複数の任意選択のサブコントローラ16の制御下でプロセスを実行する。」
「 【0037】
一般に、モデルに基づく予測コントローラ14は3種の変数を含む。すなわち、制御変数(CV)、操作変数(MV)、および外乱変数(DV)(フィードフォワード変数(FF)と呼ぶこともある)である。ただし他のコントローラは他種の変数を含むこともある。本発明で使用する場合、制御変数とは、コントローラが制約内に維持しようとする変数である。さらに、制御変数の一部を最小にする、最大にする、あるいは目標値に維持する(例えば、フィードスループットプロセス変数を最大にする)ことも望ましい。・・・」
「 【0121】
図10に、サマリーグラフィカルデバイス452の説明用のセットを示す。このサマリーグラフィカルデバイス452のセット、例えば、バブルゲージは、プロセス変数の様々な状態を示すものである。一般に、サマリーグラフィカルデバイス452はそれぞれ、軸501と、ゲージ軸に表示される、対応するプロセス変数のユーザ定義のプロセス制限値を表す少なくとも1対の上限要素及び下限要素(例えば500、502)とを含む。グラフィック形状504(例えば、バブルゲージタイプのサマリーグラフィカルデバイスの場合は小さな中空の円)は、そのプロセス変数のユーザ定義のプロセス制限値に対しての、例えば現在値などのような、プロセス変数の状態をゲージ軸501上に表すのに使用される。すなわち、グラフィック形状504は、軸501上の、そのプロセス変数の現在値を示す位置に示される。プロセス変数の現在値を表すことが好ましい。しかし、現在値に加えて、あるいは現在値の代わりに、予測される将来の値および/または履歴の値を示してもよい。
【0122】
このように非常に簡潔な形態で、1つまたは複数の制限のセットに対してのプロセス変数の状態、例えば、現在値、を表すことにより、ユーザは、特定のプロセス変数を迅速に評価することができる。さらに、プロセス変数の現在値を表すグラフィック形状に加えて、説明用のサマリーグラフィカルデバイス452h、452i、および452jに示すようなグラフィック記号を使用して、そのグラフィカルデバイスに対応するプロセス変数と関連付けられた最適化情報を表してもよい。」
「 【0128】
サマリーグラフィックデバイス452fは、設定値に制約されたプロセス変数の通常の現在値を表す。そのような構成では、グラフィック形状504は、技術上のハードの制限500の間に設定され、そこに設定値の位置を示すために描かれるウィングチップ506のついた1本の接線がある。グラフィック形状504とともに任意の追加のグラフィック記号を使用して、設定値の位置を示してもよいことは認識されよう。例えば、ウィングチップ506のついた1本の接線ではなく、ゲージ軸501を指すポインタを使用してもよい。」
「 【0135】
サマリーグラフィックデバイス452を使用することにより、プロセス変数の挙動を、その制御の制限やその最適化の目的値の観点から監視することができる。ユーザは、例えば、技術上のハードの制限またはオペレータ設定の制限などのような制限に関して、例えば、バブルなどのようなグラフィック形状の位置を認識することによって、これを行うことができる。さらに、ユーザは、2セットの制限値の間の関係を、それぞれの高い値と低い値の間のスペースを見ることにより、認識することができる。さらに、ユーザは、最適化キューおよび現在値の表示を使用して、例えば、変数がその最適化の目標値を与えられて予想通りに作用しているか否かを判定するなどのような、変数の最適化性能を評価することができる。ここでも、予測される動きと観察される動きとの不一致があると、ユーザはさらに調査をすることができる。」
「【図10】
[図:0001437813000005.jpg]
」
2 引用文献2に記載されているといえる事項
上記1から、引用文献2には、次の事項が記載されているといえる。
(1)引用文献2の段落【0032】、【0037】、【0135】の記載から、引用文献2には、プロセスプラント12が実行するプロセスのプロセス変数を、制限値又は目標値である設定値と比較して監視することが示されているものといえる。
(2)引用文献2の段落【0121】、【0128】の記載及び図10のfの図示内容から、引用文献2には、サマリーグラフィックデバイス452fにおいて、グラフィック形状504の中空の円によりプロセス変数の現在値を表し、ウイングチップ506により設定値の位置を示すことが示されているものといえる。
3 引用文献2に記載された技術的事項
上記1~2から、引用文献2には、次の技術的事項(以下「引用文献2記載の技術的事項」という。)が記載されていると認められる。
「プロセスプラント12が実行するプロセスのプロセス変数を監視するために、サマリーグラフィックデバイス452において、グラフィック形状504の中空の円によりプロセス変数の現在値を表し、ウイングチップ506により設定値の位置を示すこと。」
第6 引用文献3に記載された技術的事項の認定
1 引用文献3に記載された事項
引用文献3には、以下の事項が記載されている。
(1)「プラント状態量の表示に適用した本発明の好適な一実施例である状態量表示装置を第5図及び第6図に基づいて以下に説明する。
本実施例の状態量表示装置1は、第5図に示すように、コンピユータ(例えばマイクロプロセツサ)2及び表示手段3(例えばCRT)を備えている。コンピユータ2は、第6図に示す処理手順に基づいて表示手段3に表示される図形データ等の表示情報を作成する。」(第2ページ右上欄6~14行)
(2)「以下に、第6図に基づいたコンピユータ2による表示情報の作成について説明する。各状態量Xiに対する基準値XiN、許容上限値δXiUL、及び許容下限値δXiLLは、コンピユータ2のメモリ(図示せず)に記憶されている。
プラント(またはシミュレータ)10から出力された各状態量Xiの現在値(プラントの場合は測定値)が、コンピユータ2に入力される(ステツプ5)。」(第2ページ右上欄第14行~左下欄第2行)
(3)「ステツプ8では、ずれδXiが算出される。ずれδXiは、入力した状態量Xiの現在値Xi1とメモリから呼び出した対応する状態量Xiの基準値XiNとの差である。更に、ステツプ8では、求められたずれδXiに対応する長さを有する直線l(当審注:原文は筆記体小文字のエル。以下同じ。)、及びステツプ7で得られた図形で|dXi/dt|に対応した大きさを有する図形(三角形12)を示す図形データに基づいて、直線lの先端にその図形の中心を位置させるように直線lと三角形12とを組合せた図形データであつて該当する状態量と対応する位置に配置した図形データを作成する。」(第2ページ右下欄第7~18行)
「
[図:0001437813000006.jpg]
」
2 引用文献3に記載されているといえる事項
上記1から、引用文献3には、次の事項が記載されているといえる。
(1)上記1(1)及び(3)の記載から、引用文献3には、図形データが、プラント状態量の表示のためのものであることが示されているといえる。
(2)上記1(2)及び(3)の記載、並びに、第7図の図示内容から、引用文献3には、図形データにおいて、状態量の現在値と状態量の基準値との差であるずれに対応する長さを有する直線lを含むことが示されているといえる。
3 引用文献3に記載された技術的事項
上記1~2から、引用文献3には、次の技術的事項(以下「引用文献3記載の技術的事項」という。)が記載されていると認められる。
「プラント状態量の表示のための図形データにおいて、状態量の現在値(プロセス変数インジケータ)と状態量の基準値(設定点インジケータ)との差であるずれに対応する長さを有する直線lを含むこと。」
第7 本件発明と引用発明との対比
1 本件発明と引用発明とを対比すると、以下のことがいえる。
(1)引用発明における「プラントの監視対象の複数のタンク201 のプロセス量(液位)を監視すること」における「プラントの監視対象・・・を監視すること」は、プラントについての「プロセス制御システム」の一部をなすものといえる。また、引用発明の「複数のタンク201のプロセス量(液位)」は、プロセスに係るパラメータであるから、本件発明の「プロセス変数」に相当する。
そうすると、引用発明における「プラントの監視対象の複数のタンク201 のプロセス量(液位)を監視すること」は、本件発明の「プロセス制御システムのプロセス変数を監視すること」に相当する。
(2)引用発明の「前記監視されたプロセス量(液位)の変動の有無を変化判定部57で判定すること」、「前記プロセス量(液位)の変動量の大小を変動量判定部58で判定すること」、及び、「前記プロセス量(液位)の変化方向を変化方向判定部59で判定すること」における、「プロセス量(液位)の変動の有無」、「プロセス量(液位)の変動量の大小」及び「プロセス量(液位)の変化方向」に関して、本件発明の発明特定事項との相当関係は次のとおりである。
ア 「プロセス量(液位)の変動の有無」は、変化判定部57において、保存されている過去の水位信号(1021)と入力されてきた現在の水位信号(1022)とが比較され(1023)、変化有(1024)、変化無し(1025)が判定される(段落【0014】、【0033】、【0036】)ものであって、現在の時点において、プロセス量(液位)に変動が有る状態なのか、無い状態なのかを示す情報であるから、本件発明における「プロセス変数の現在の状態」に少なくとも相当する。
イ また、「プロセス量(液位)の変動量の大小」は、変動量判定部58において、プロセス量v(t-1)とv(t)を演算しプロセス量の変動量dvを算出し(1031、1032、1033、1034)、dvからプロセス量の「変動量が大」(1034、1037)、あるいは「変動量が小」(1035、1036)、を判定する(段落【0022】、【0033】、【0036】)ことを表し、現在の時点においてプロセス量(液位)が大きく変動した状態であるのか、小さく変動した状態であるのかを示す情報であるから、本件発明における「プロセス変数の現在の状態」に少なくとも相当する。
ウ さらに、「プロセス量(液位)の変化方向」は、変化方向判定部59において、過去のプロセス量v(t-1)と現在のプロセス量v(t)とを比較し、v(t-1)>v(t)ならプロセス量は「減少」していると判断し、v(t-1)<v(t)ならプロセス量は「増加」していると判断する(段落【0029】、【0033】、【0036】)ことを表し、現在の時点においてプロセス量(液位)が減少する状態であったのか、増加する状態であったのかを示す情報であるから、本件発明における「プロセス変数の現在の状態」に相当する。また、現在の時点から将来に向けて、プロセス量(液位)が減少する傾向にあるのか、増加する傾向にあるのかを示す情報でもあるから、本件発明における「プロセス変数に関連付けられる傾向」にも相当する。
(3)引用発明の「判定する」ことは本件発明の「決定すること」に相当する。そして、上記(2)ア~ウを踏まえると、引用発明の「監視されたプロセス量(液位)の変動の有無を変化判定部57で判定すること」、「前記プロセス量(液位)の変動量の大小を変動量判定部58で判定すること」及び「プロセス量(液位)の変化方向を変化方向判定部59により判定すること」は、本件発明の「監視されたプロセス変数の現在の状態を決定すること」に相当し、引用発明の「プロセス量(液位)の変化方向を変化方向判定部59により判定すること」は、本件発明の「プロセス変数に関連付けられる傾向を決定すること」に少なくとも相当する。
(4)引用発明の「プロセス量(液位)の変動の有無、変動量の大小、及び、変化方向を含む情報を表す棒グラフ210 を表示制御装置55で作成すること」における「棒グラフ210 」は、情報を表す図形であることから、本件発明の「第1のアイコン」に相当し、引用発明の「プロセス量(液位)の変動の有無、変動量の大小、及び、変化方向を含む情報」は、本件発明の「プロセス変数に関連付けられる情報であって、前記プロセス変数の前記現在の状態及び前記プロセス変数の前記傾向を含む情報」に相当するといえる。
また、引用発明の「プロセス量(液位)」は、プロセス変数の値を意味するから、本件発明における「設定点に対する前記プロセス変数の相対位置」とは、「プロセス変数の位置」の限りで共通する。
そうすると、引用発明の「前記プロセス量(液位)、前記プロセス量(液位)の変動の有無、変動量の大小、及び、変化方向を含む情報を表す棒グラフ210 を表示制御装置55で作成すること」と、本件発明の「前記プロセス変数に関連付けられる情報であって、前記プロセス変数の前記現在の状態、設定点に対する前記プロセス変数の相対位置、及び前記プロセス変数の前記傾向を含む情報を表す第1のアイコンを生成すること」とは、「プロセス変数に関連付けられる情報であって、前記プロセス変数の前記現在の状態、前記プロセス変数の位置、及び前記プロセス変数の前記傾向を含む情報を表す第1のアイコンを生成すること」の限りで共通する。
(5)一般的に、「レンダリング」とは、データの集合を元に一定の処理や演算を行って画像や映像、音声等を生成することを意味するところ、引用発明における、プロセス量(液位)の状態から、プロセス量(液位)の変動の有無、変動量の大小、及び、変化方向を含む情報を表す棒グラフ210 を表示するためのデータを生成し、当該生成された棒グラフ210 をCRT26に表示出力する処理は、プロセス量(液位)という(時系列で得られる)データの集合を元に、処理・演算を行って棒グラフ210 という画像を生成するものであり、棒グラフ210 を、CRT26を介してレンダリングするものといえる。
そうすると、引用発明の「前記棒グラフ210 をCRT26に表示出力すること」は、本件発明の「前記第1のアイコンを、表示器を介してレンダリングすること」に相当する。
(6)「輪郭」とは、物の外形を形作っている線を意味する語であるところ、引用発明の棒グラフ210 の先端は、棒グラフ210 という物の外形の一部である上辺をなすものであり、その外形を形作るものである。そして、引用発明は、プロセス量(液位)の変動の有無、変動量の大小、及び、変化方向を含む情報に基づいて、プロセス量(液位)が変化無しの場合は図2の形状Aのように棒グラフ210 の先端形状224 が「直線」で構成され(段落【0015】、【0035】)、プロセス量(液位)に変化がある場合には図2の形状G、G’、H又はH’のように棒グラフ210 の先端形状224 が「波形」で構成される(上記第4の2(3))ものであって、棒グラフ210 の輪郭をなす棒グラフ210 の先端形状224 により、プロセス量(液位)の現在の状態が表されるものといえるから、引用発明の「前記プロセス量(液位)の変動の有無、変動量の大小、及び、変化方向を含む情報は、棒グラフ210 の先端形状224 によって表され」ることは、本件発明における「前記プロセス変数の前記現在の状態は、前記第1のアイコンの輪郭の形状によって表され」ることに相当するといえる。さらに補足すれば、引用文献1には、棒グラフ210 の先端形状224 によってプロセス量(液位)の変動の有無を表す(段落【0015】~【0016】、【0033】)ほか、段落【0019】には、棒グラフ全体の輪郭を揺らぐよう、側部を波形で表現して表示することについて示唆もされている。
(7)引用発明の棒グラフ210 の先端形状224 の直線部分は、プロセス量(液位)の値を示すインジケータの機能を有することから、本件発明における「プロセス変数インジケータ」に相当する。
そうすると、上記(4)も踏まえると、引用発明の「前記プロセス量(液位)は、先端形状224 の直線部分の位置に基づいて前記棒グラフ210 によって表される」ことと、本件発明の「前記設定点に対する前記プロセス変数の相対位置は、設定点インジケータに対するプロセス変数インジケータの相対位置に基づいて前記第1のアイコンによって表される」こととは、「前記プロセス変数の位置は、プロセス変数インジケータの位置に基づいて前記第1のアイコンによって表される」ことの限りで共通する。
2 一致点
上記1から、本件発明と引用発明とは、次の点で一致する。
「プロセス制御システムのプロセス変数を監視することと、
前記監視されたプロセス変数の現在の状態を決定することと、
前記プロセス変数に関連付けられる傾向を決定することと、
前記プロセス変数に関連付けられる情報であって、前記プロセス変数の前記現在の状態、前記プロセス変数の位置、及び前記プロセス変数の前記傾向を含む情報を表す第1のアイコンを生成することと、
前記第1のアイコンを、表示器を介してレンダリングすることと、を含み、
前記プロセス変数の前記現在の状態は、前記第1のアイコンの輪郭の形状によって表され、且つ前記プロセス変数の位置は、プロセス変数インジケータの位置に基づいて前記第1のアイコンによって表される
方法。」
3 相違点
他方、本件発明と引用発明とは、次の相違点で相違する。
・相違点
第1のアイコンに関して、本件発明においては、「設定点に対する前記プロセス変数の相対位置」をも表し、当該「相対位置」が「設定点インジケータに対するプロセス変数インジケータの相対位置に基づいて」表されるのに対し、引用発明においては、棒グラフ210 (第1のアイコン)が「プロセス変数の位置(プロセス量(液位))」をも表し、当該プロセス量(液位)が「プロセス変数インジケータ(棒グラフ210 の先端形状224 の直線部分)の位置に基づいて」表されるものの、「設定点に対する前記プロセス変数の相対位置」を表しておらず、したがって、「プロセス変数の相対位置」が「設定点インジケータに対するプロセス変数インジケータの相対位置に基づいて」表されるものでもない点。
第8 相違点についての判断
上記相違点について検討する。
1 引用発明と引用文献2記載の技術的事項に基づく容易想到性の判断
引用発明と上記第5の3で示した引用文献2記載の技術的事項とは、いずれも、プラントにおけるプロセスの状態量を表示する点で技術分野が関連し、機能・作用が共通する。また、引用文献1の段落【0003】~【0004】の記載から、引用発明は、プロセス量(液位)がある値を越えたり下回ったりすることを運転員が監視することを前提とする技術であるところ、引用文献2には、制限値又は目標値である設定値と比較して監視することについても示されているといえる(上記第5の2(1))ことから、引用発明に引用文献2記載の技術的事項を適用することには十分な動機が存在する。そして、引用発明において、プロセス量(液位)の値を示す、棒グラフ210 における先端形状224 の直線部分の位置を運転員が監視するにあたり、より視認しやすくしたいという、プラントにおけるプロセスの状態量を表示することにおいては、例示するまでもなく周知の課題を解決するために、引用文献2記載の技術的事項を適用し、引用発明において先端形状224 の直線部分が設定値と比較して適切であるかを確認できるよう、引用文献2記載の技術的事項にウイングチップ506として示されるような設定点インジケータを付加して表示することで、上記相違点に係る本件発明のように設定点に対するプロセス変数の相対位置をアイコン(棒グラフ210 )によって表すことは、当業者が容易に想到し得たことである。
2 引用発明と引用文献3記載の技術的事項に基づく容易想到性の判断
引用発明と上記第6の3で示した引用文献3記載の技術的事項とは、いずれも、プラントにおけるプロセスの状態量を表示する点で技術分野が関連し、機能・作用が共通する。さらに、上記1で説示したとおり、引用発明はプロセス量(液位)がある値を超えたり下回ったりすることを運転員が監視することを前提としており、引用文献3記載の技術的事項も同様に、現在値と基準値とのずれをオペレータに把握させるものであることから、引用発明に引用文献3記載の技術的事項を適用することには十分な動機が存在する。そして、引用発明に引用文献3記載の技術的事項を適用し、引用文献3記載の技術的事項に基準値からのずれを表す直線lとして示されるような設定点インジケータを付加して表示することで、上記相違点に係る本件発明のように設定点に対するプロセス変数の相対位置をアイコン(棒グラフ210 )によって表すことも当業者が容易に想到し得たことである。
3 相違点についての判断のまとめ
したがって、本件発明は、引用発明に引用文献2又は3記載の技術的事項を適用することで、当業者が容易に発明をすることができたものである。
第9 請求人の主張について
1 請求人の主張
請求人は、令和8年1月23日提出の意見書において、概略、次の点を主張する。
引用文献1の図2に示された棒グラフ形状は、プロセス量の変動の大小や変化方向を表しているのであり、プロセスの現在の状態を表しているわけではないから、引用発明は、「前記プロセス変数の前記現在の状態は、前記第1のアイコンの輪郭の形状によって表され」るという構成を開示しない。
2 請求人の主張の検討
しかしながら、次のとおり、上記1の主張には首肯できない。
上記第7の1(2)ア~ウで示したとおり、引用発明の「プロセス量(液位)の変動の有無、変動量の大小、及び、変化方向」は、本件発明の「プロセス変数の現在の状態」に相当するから、上記第7の1(6)で示したとおり、引用発明の「前記プロセス量(液位)の変動の有無、変動量の大小、及び、変化方向を含む情報は、棒グラフ210の先端形状224によって表される」ことは、本件発明における「前記プロセス変数の前記現在の状態は、前記第1のアイコンの輪郭の形状によって表され」ることに相当するといえる。
したがって、引用発明は「前記プロセス変数の前記現在の状態は、前記第1のアイコンの輪郭の形状によって表され」るという構成を含むものであるといえる。
なお、補足すれば、本件発明の「プロセス変数の現在の状態」及び「プロセス変数に関連付けられる傾向」に関し、本願の明細書等を参酌すると、段落【0052】~【0053】には、図7Aに関し、上向きのピーク408を備える形状の三角形のアイコン402は、プロセス変数の上昇傾向を視覚的に示し、下向きのピーク410を備えるアイコン406は、プロセス変数の下降傾向を視覚的に示す一方、概してダイヤモンドまたは菱形の形状のアイコン404は、プロセス変数がその現在の状態を維持していることをアイコン402、406の三角形の形状から区別されることで視覚的に示すものであることが示される。
そして、段落【0060】~【0061】にも、図7B~7Cに関し、三角形の形状を有するアイコン502、504と八角形の形状を有するアイコン602とにより、プロセス変数の現在の状態及び傾向を示すことが示される。
また、段落【0065】にも、図10に関し、エッジ1008の傾斜を有するアイコン1002、1006と、エッジ1008の傾斜を有しないアイコン1004との、概して長方形の形状によって、現在の状態が示されることが示される。
してみると、引用発明における「プロセス量(液位)の変動の有無」は、本件発明における「プロセス変数の現在の状態」に少なくとも相当し、引用発明における「プロセス量(液位)の変化方向」は、本件発明における「プロセス変数に関連付けられる傾向」に少なくとも相当するとの上記第7の1(2)ア~ウでの判断は、本願の明細書等の記載にも整合するものであるといえる。
さらに補足すれば、段落【0053】には、「プロセス変数の「状態」という用語は、その設定点及び/または任意の警報限界に対する変数の動作状態に対応する。」と記載されている。ただし、本件発明における「現在の状態」が仮にこのような意味のみを示すものと限定して解するならば、本件発明の「前記プロセス変数の前記現在の状態は、前記第1のアイコンの輪郭の形状によって表され」ることについては、本願の明細書等において具体的に開示されているとはいえない。確かに、段落【0057】には、「アイコン502、504の現在及び予測された状態は、対応する現在及び予測された状態のセクションの陰影付け(例えば、塗りつぶし)によって表される。異なるパターン、色、陰影付け、形状、サイズ、輪郭、テキストまたは記号表記、艶むら、強調表示等を含むプロセス変数の動作状態を示す他の方法は、代わりに使用することができる。」とは記載される。しかしながら、具体例としては、色(図7B、C等)、印影付け、記号表記(感嘆符、図7A)により、設定点及び/または任意の警報限界に対する現在の状態を示すことが開示されるにとどまり、設定点及び/または任意の警報限界に対する現在の状態をアイコンの輪郭の「形状」によってどのように表すのかについて、本願の明細書等には具体的な開示がなく、この点からも引用発明は「前記プロセス変数の前記現在の状態は、前記第1のアイコンの輪郭の形状によって表され」るという構成を含むものであるといえる。
そして仮に、本件発明における「現在の状態」が、その設定点及び/または任意の警報限界に対する変数の現在の動作状態に限定して解釈されるとして、引用発明の「プロセス量(液位)の変動の有無、変動量の大小、及び、変化方向」が本件発明の「現在の状態」に相当しない点(以下「相違点A」という。)で相違するとしても、次のとおり、引用発明に引用文献2又は3記載の技術的事項を適用することで上記相違点Aに係る本件発明のように構成することは当業者が容易になし得たことである。
すなわち、引用発明は、引用文献1の段落【0004】の「プロセスデータがある値を越えた、または、下回った場合に警報を発生させることや、あるいは棒グラフ表示や数値表示の表示色を警報状態であることを示す色に変化させることにより、運転員に注意を促す」との記載から、設定点及び/または任意の警報限界に対する現在の状態を運転員に認識させることを前提技術としたものである。これを踏まえると、上記第8の1~2で示した、引用発明に引用文献2又は3記載の技術的事項を適用したものは、設定点に対するプロセス変数の相対位置をアイコン(棒グラフ210 )により表すものとなるところ、棒グラフ210の先端形状224の直線部分が設定値と比較して正常であるか異常であるかを、設定点に対するプロセス変数の相対位置が近いか遠いかにより確認することで、設定点に対するプロセス変数の状態を理解することができるものになるといえる。
したがって、上記相違点Aに係る本件発明の構成とすることは、引用発明及び引用文献2又は3記載の技術的事項に基づいて当業者が容易になし得たことであって、また、引用発明に引用文献2又は3記載の技術的事項を適用したことと比して顕著な効果を奏するともいえない。
したがって、上記1の主張を採用することはできない。
第10 むすび
以上のとおり、本件発明は、引用発明、及び、引用文献2又は3記載の技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶をされるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2024-014470