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特許拒絶査定不服審判

2023-005883

燃料-クラッド化学的相互作用耐性核燃料要素およびその製造方法

審判番号
2023-005883
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2020-502578
請求日
2023年04月11日
審決日
2024年05月09日
公報発行日
2024年10月25日
結論
請求不成立
当事者
  • 【請求人】テラパワー, エルエルシー
  • 【請求人代理人】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
審判長/審判官
  • 審判長 波多江 進
  • 審判官 松川 直樹
  • 審判官 山村 浩
分類
P18 .121-Z (G21C) / P18 .575-Z (G21C)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条2項
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第17条の2第6項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2020-502578号「燃料-クラッド化学的相互作用耐性核燃料要素およびその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成31年1月24日国際公開、WO2019/018643号、令和2年9月10日国内公表、特表2020-527722号〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

理 由 第1 手続の経緯 本願は、2018年(平成30年)7月19日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理 2017年(平成29年)7月19日(以下、この日付を「優先日」という。) 米国)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯の概略は次のとおりである。 令和4年 7月 8日付け:拒絶理由通知書 同年10月12日 :意見書、手続補正書の提出 同年12月 9日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。) 令和5年 4月11日 :審判請求書、手続補正書の提出 第2 令和5年4月11日にされた手続補正についての補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 令和5年4月11日にされた手続補正を却下する。 [補正の却下の決定の理由] 1 本件補正の内容 令和5年4月11日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)は、特許請求の範囲についての補正を含むものであって、本件補正前(令和4年10月12日にされた手続補正後をいう。)の特許請求の範囲の請求項23及びそれに対応する本件補正後の特許請求の範囲の請求項22の記載は、それぞれ次の(1)及び(2)に示すとおりである。下線は補正箇所を示す。 (1) 本件補正前 「【請求項23】 核物質を保持するための二重障壁装備クラッドであって、 ステンレス鋼、FeCrAl合金、HT9鋼、酸化物分散強化鋼、T91鋼、T92鋼、316鋼、304鋼、APMT鋼、合金33鋼、モリブデン、モリブデン合金、ジルコニウム、ジルコニウム合金、ニオブ、ニオブ合金、ジルコニウム-ニオブ合金、ニッケル、またはニッケル合金から選択されたクラッド材料からなるクラッドと、 燃料側障壁と、 上記燃料側障壁と上記クラッドとの間のクラッド側障壁とを備え、 上記燃料側障壁は第1の材料であり、上記クラッド側障壁は、第1の材料とは基礎化学元素が異なる第2の材料であり、 上記クラッド材料が、上記核物質と2ヶ月間接触して配置され、650℃に保持される場合に、上記核物質は、上記クラッド材料内への第1の相互拡散距離を示し、 上記第1の材料が、上記核物質と2ヶ月間接触して配置され、650℃に保持される場合に、上記核物質は、上記第1の材料内への第2の相互拡散距離を示し、第2の相互拡散距離は第1の相互拡散距離よりも短い、核物質を保持するための二重障壁装備クラッド。」 (2) 本件補正後 「【請求項22】 核物質を保持するための二重障壁装備クラッドであって、 ステンレス鋼、FeCrAl合金、HT9鋼、酸化物分散強化鋼、T91鋼、T92鋼、316鋼、304鋼、APMT鋼、合金33鋼、モリブデン、モリブデン合金、ジルコニウム、ジルコニウム合金、ニオブ、ニオブ合金、ジルコニウム-ニオブ合金、ニッケル、またはニッケル合金から選択されたクラッド材料からなるクラッドと、 燃料側障壁と、 上記燃料側障壁と上記クラッドとの間のクラッド側障壁とを備え、 上記燃料側障壁は第1の材料であり、上記クラッド側障壁は、第1の材料とは基礎化学元素が異なる第2の材料であり、 上記クラッド材料が、上記核物質と2ヶ月間接触して配置され、650℃に保持される場合に、上記核物質は、上記クラッド材料内への第1の相互拡散距離を示し、 上記第1の材料が、上記核物質と2ヶ月間接触して配置され、650℃に保持される場合に、上記核物質は、上記第1の材料内への第2の相互拡散距離を示し、第2の相互拡散距離は第1の相互拡散距離よりも短く、 上記第1の材料中の少なくとも1つの化学元素は、上記クラッド材料と2ヶ月間接触して配置され、650℃に保持された場合に、上記クラッド材料内への第3の相互拡散距離を示し、 上記第2の材料中の少なくとも1つの化学元素は、上記クラッド材料と2ヶ月間接触して配置され、650℃に保持された場合に、上記クラッド材料内への第4の相互拡散距離を示し、第3の相互拡散距離は第4の相互拡散距離よりも長い、核物質を保持するための二重障壁装備クラッド。」 2 本件補正の適否についての当審の判断 (1) 本件補正の目的について ア 本件補正のうち、本件補正前の請求項23を、その項番号を22に改めつつ、その内容についてする補正は、以下の補正事項を含むものである。 本件補正前の請求項23における「第1の材料」及び「第2の材料」に関して、それぞれ、「第1の材料」が「上記第1の材料中の少なくとも1つの化学元素は、上記クラッド材料と2ヶ月間接触して配置され、650℃に保持された場合に、上記クラッド材料内への第3の相互拡散距離を示」すものであり、及び「第2の材料」が「上記第2の材料中の少なくとも1つの化学元素は、上記クラッド材料と2ヶ月間接触して配置され、650℃に保持された場合に、上記クラッド材料内への第4の相互拡散距離を示し、第3の相互拡散距離は第4の相互拡散距離よりも長い」ものであることを限定する事項。 イ そして、本件補正前の請求項23に記載された発明と本件補正後の請求項22に記載される発明は、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一である。 ウ したがって、本件補正のうち、本件補正前の請求項23についてする補正は、特許法第17条の2第5項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とする補正に該当する。 (2) 独立特許要件について 本件補正のうち、本件補正前の請求項23についてする補正は、前記(1)のとおり、特許法第17条の2第5項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とする補正である。そこで、本件補正前の請求項23を補正してその項番号を改めた本件補正後の請求項22に係る発明(以下「本件補正発明」という。)が、同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか、すなわち、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて、以下検討する。 ア 本件補正発明 本件補正発明は、前記1(2)の本件補正後の請求項22に記載された事項により特定されるとおりのものと認める。 イ 引用文献に記載された事項及び引用発明の認定 (ア) 引用文献に記載された事項 原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先日前に発行された特表2016-502115号公報(以下「引用文献」という。)には、以下の事項が記載されている(下線は当合議体が付したものである。以下同じ。)。 「【0030】 (燃料要素) 「燃料要素」は、例えば図1a・図1bに示される要素10であり、発電炉の燃料集合体の中にある。「燃料要素」は、一般的に円柱の棒の形状をとってよい。燃料要素は、発電炉の一部であってよい。発電炉は、原子力発電所の一部である。本願の燃料要素は、長さと直径とについて任意の適切な寸法を有してよい。図2a・図2bは、異なる外観の燃料要素の模式図を示す。燃料要素は、被覆層21と、被覆層の内側に配された燃料22とを備えてよい。原子炉の場合には、燃料は、核燃料を含んでよい(または、核燃料であってよい)。一実施形態では、核燃料は、環状の核燃料であってよい。図2a・図2bに示されるように、一実施形態では、燃料要素は、核燃料22と被覆層21との間に配されたライナー23を備えてよい。ライナーは、多段の層を含んでよい(例えば、231および232)。 (・・・途中省略・・・) 【0032】 被覆層の被覆材料は、本願の任意の好適な材料を含んでよい。一実施形態では、被覆層は、金属・合金・セラミックから選ばれる少なくとも一つの材料を含んでよい。一実施形態では、被覆は、耐火物を含んでよい。このような耐火金属は、Nb・Mo・Ta・W・Re・Zr・V・Ti・Cr・Ru・Rh・Os・Ir・Nd・Hfから選ばれる少なくとも一つの元素を含んでよい。 【0033】 被覆層が含む合金は、例えば鋼鉄であってよい。鋼鉄は、マルテンサイト鋼・オーステナイト鋼・フェライト鋼・酸化物分散鋼・T91鋼・T92鋼・HT9鋼・316鋼・304鋼から選ばれてよい。鋼鉄は、任意の種類の微細構造を有してよい。例えば、鋼鉄は、マルテンサイト相・フェライト相・オーステナイト相の少なくとも一つを含んでよい。一実施形態では、鋼鉄の実質的にすべての部分は、マルテンサイト相・フェライト相・オーステナイト相から選ばれる少なくとも一つの相をもつ。 【0034】 場合によっては、特に燃焼度が高いときには、好ましくない合金化と、これによる燃料および被覆の材料の劣化とにより、燃料および被覆の元素は、拡散する傾向になり得る(例えば、燃料および/もしくは被覆層の非合金化または機械的特性が劣化した新しい合金の形成による)。ライナーは、燃料と被覆材料との間の障壁層として機能できる。障壁層は、元素間におけるこのような原子間の拡散を緩和する。例えば、ライナーは、外部の(および、ときには好ましくない)元素による燃料および/または被覆材料の劣化などを回避するために、燃料および被覆材料の元素間における原子間の拡散の緩和に用いられてよい。ライナーは、一層または例えば2・3・4・5・6・もしくはそれ以上の層数の多段の層を含んでよい。ライナーが多段の層を含むときには、これらの層は、同一のもしくは異なる材料を含んでよい、および/または、同一のもしくは異なる特性を有してよい。例えば、一実施形態では、いくつかの層が異なる材料を含む一方で、少なくともいくつかの層は同一の材料を含み得る。 【0035】 一実施形態では、ライナーは、燃料のとなりに配された第一の領域と、被覆材料のとなりに配された第二の領域とを含んでよい。一実施形態において、領域は、下層の材料を部分的に覆う層または層の一部であってよい。図2a・図2bに示されるように、一実施形態では、ライナー23は、少なくとも二つの層231および232を含んでよい。ライナーの第一の領域は、第一の層231の中に配されてよいとともに、ライナーの第二の領域は、第二の層232の中に配されてよい。第一の領域は、第一の材料を含んでよいとともに、第二の領域は、第二の材料を含んでよい。第一の材料は、第二の材料と同一でまたは異なってよい。 (・・・途中省略・・・) 【0038】 (層の)領域の個々の材料は、特定の特性をもつように選ばれてよい。例えば、第一の材料(第一の領域が燃料のとなりにあるときに)は、第一の材料と核燃料との間における原子間の拡散を緩和するようになされるように選ばれてよい。図4に示されるように、核燃料41の原子411と、被覆層42の原子421とは、外部へ拡散する傾向にあってよい(矢印参照)。同様に、(ライナー43の)第一の層431の原子4311と、第二の層432の原子4321とは、外部へ拡散する傾向にあってよい(矢印参照)。 【0039】 本実施形態の緩和の結果、非常にまれであって、もしあれば、第一の層と燃料とに由来する元素があわさって化合物が形成され得る。要するに、図4に示されるように原子411および4311を含む領域44は、少しもなくてよい。また、もしあれば、領域44の厚さは、非常に小さくて核燃料および/または層の厚さの20パーセント以下であろう。例えば、領域44のの厚さは、核燃料および/または層の厚さの10パーセント・5パーセント・2パーセント・1パーセント・0.5パーセント・またはより小さい値以下である。他の実施形態では、第一の材料と、第二の材料とは、第一の層431と第二の層432との間における原子間の拡散を緩和するようになされるよう選ばれてよい。要するに、図4に示されるように、原子4311および4321を含む領域45は、少しもなくてよい。また、もしあれば、領域45の厚さは、非常に小さくて上述の領域44の範囲になるだろう。他の実施形態では、第二の材料は、第二の層432と被覆層42との間における原子間の拡散を緩和するようになされるように選ばれてよい。要するに、図4に示されるように、原子4321および421を含む領域46は、少しもなくてよい。また、もしあれば、領域46の厚さは、非常に小さくて上述の領域44の範囲になるだろう。 (・・・途中省略・・・) 【0041】 本願明細書に記載された燃料要素により、燃料要素の異なる構成要素間における原子間の拡散が緩和される。図4に示されるように、一実施形態では、(i)第一の層431の第一の材料および第二の層432の第二の材料と、(ii)(第一の層431の中の)第一の材料および核燃料41と、(iii)(第二の層432の中の)第二の材料および被覆層42と、の少なくとも一つについて両者間には、原子間の拡散が実質的にない。一実施形態では、(i)燃料41および第一の層431と、(ii)被覆層42および第二の層432と、の少なくとも一方について両者間には、原子間の拡散が実質的にない。本願明細書に記載された燃料要素には、広範囲の温度で原子間の拡散が実質的になくてよい。例えば、このことは、室温以上の温度で観測され得る。そして、例えば、この温度は、少なくとも50℃・95℃・100℃・150℃・200℃・250℃・300℃・350℃・400℃・450℃・500℃・550℃・600℃・650℃・700℃・750℃・800℃・またはより高い温度である。 【0042】 第一の層431の第一の材料と、第二の層432の第二の材料と(または、他の材料がある場合には、さらにその材料と)は、それぞれ特有の材料特性をもってよい。この材料特性は、例えば、化学的な特性・温度的な特性などである。例えば、材料は、その材料を含むもののとなりの構成要素(燃料または被覆)に対し不活性であることに基づき選ばれてよい。例えば、これらの材料のすべては、少なくとも一つの耐火物を含んでよい。耐火物は、耐火金属または合金を含んでよい。これは、Nb・Mo・Ta・W・Re・Zr・V・Ti・Cr・Ru・Rh・Os・Ir・Nd・Hfから選ばれる少なくとも一つの元素を含む材料を含む。一実施形態では、第一の材料は、V・Crから選ばれる少なくとも一つの元素を含む。一実施形態では、第一の材料は、Vを含む。他の実施形態では、第二の材料は、元素Zrを含む。」 「【0050】 別の処理方法をさらに用いてもよい。図6bに示されるように、処理方法は、ライナーの第一の層の一面に第二の層を配するステップ(ステップ604)をさらに含んでよい。図6cに示されるように、処理方法は、ライナーの第一の層と第二の層とを接合するステップ(ステップ605)をさらに含んでよい。一実施形態では、燃料要素の他の構成要素だけでなく、ライナーの第一および第二の層が、上述のように接合されてよい。この接合は、化学的または物理的な接合であってよい。物理的な接合の例として、機械的な接合をあげることができる。一実施形態では、機械的な接合は、スエージ加工を含んでよい。図6dに示されるように、スエージ加工は、環状の核燃料・ライナー・被覆層の少なくとも二つに行われてよい(ステップ606)。一実施形態では、スエージ加工は、燃料要素のこれらの構成要素のすべてに適用される。一実施形態では、例えば環状である燃料は、例えば蒸着(物理または化学蒸着)を用いてライナーにより覆われてよい。ライナーは、その一面にスエージ加工された被覆層を有する。図6eに示されるように、一実施形態では、本願の方法は、鋳造・押し出し加工・ピルガーリング(pilgering)・チューブ溶接(tube welding)・シームレス溶接(seamless-welding)から選ばれる少なくとも一つの加工を、核燃料に行うステップ(ステップ607)をさらに含んでよい。一実施形態では、ライナーの層は、燃料の一面とともに押し出し加工されてよい。他の実施形態では、ライナー(複数のライナー)および/または燃料は、接触させるためにかつ燃料を製造するために、被覆層の空洞内へスライドさせてよい。」 図2 「 [図:0001414730000001.jpg] 」 図4 「【図4】 [図:0001414730000002.jpg] 」 (イ) 引用文献1に記載された事項から認定できる事項 a(a) 前記(ア)で摘記した【0030】の、「燃料要素は、核燃料22と被覆層21との間に配されたライナー23を備えてよい」、「ライナーは、多段の層を含んでよい(例えば、231および232)」との記載に照らして、当該「燃料要素」は、被覆層と、前記被覆層の内側に配された核燃料と、前記核燃料と前記被覆層との間に配された層231および層232の二つの層からなるライナーを備えるものであるといえる。 (b) また、前記(ア)で摘記した【0050】の、「他の実施形態では、ライナー(複数のライナー)および/または燃料は、接触させるためにかつ燃料を製造するために、被覆層の空洞内へスライドさせてよい。」との記載から、当業者は、被覆層の空洞内へ複数のライナーをスライドさせた構造を観念できるといえる。 (c) 前記(a)及び(b)から、当業者は、被覆層の空洞内へ二つの層からなるライナーをスライドさせた構造を読み取ることができる。 b 前記(ア)で摘記した【0035】の、「ライナーは、燃料のとなりに配された第一の領域と、被覆材料のとなりに配された第二の領域とを含んでよい」、「ライナー23は、少なくとも二つの層231および232を含んでよい。ライナーの第一の領域は、第一の層231の中に配されてよいとともに、ライナーの第二の領域は、第二の層232の中に配されてよい」、「第一の領域は、第一の材料を含んでよいとともに、第二の領域は、第二の材料を含んでよい」及び「第一の材料は、第二の材料と同一でまたは異なってよい」との記載に照らして、当業者は、ライナーは、燃料のとなりに配された第一の領域と、被覆材料のとなりに配された第二の領域とを含み、ライナーは、前記aの二つの層を含み、ライナーの第一の領域が第一の層の中に配され、ライナーの第二の領域が第二の層の中に配され、第一の領域は第一の材料を含み、第二の領域は第二の材料を含み、第一の材料は第二の材料と異なる構成を読み取ることができる。 (ウ) 引用発明の認定 前記(ア)に摘記した引用文献1の記載事項及び前記(イ)で認定した事項を総合すると、引用文献には、【0050】でいう他の実施形態に係る被覆層の空洞内へ第一の層231および第二の層232の二つの層からなるライナーをスライドさせた構造の発明として、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる(なお、認定の根拠となる段落を参考までに括弧内に付してある。)。 <引用発明> 「被覆層の空洞内へ二つの層からなるライナーをスライドさせた構造であって、(上記(イ)a) 前記被覆層及び前記ライナーは、核燃料と被覆層との間に配されたライナーを備えた燃料要素の被覆層及びライナーであり、(【0030】) 被覆層の被覆材料は、耐火金属又は合金を含み、前記耐火金属は、Nb・Mo・Ta・W・Re・Zr・V・Ti・Cr・Ru・Rh・Os・Ir・Nd・Hfから選ばれ、(【0032】) 前記被覆層が含む合金は鋼鉄であって、前記鋼鉄は、マルテンサイト鋼・オーステナイト鋼・フェライト鋼・酸化物分散鋼・T91鋼・T92鋼・HT9鋼・316鋼・304鋼から選ばれ、(【0033】) 前記ライナーは、核燃料と被覆層との間の障壁層として機能し、障壁層は、元素間におけるこのような原子間の拡散を緩和し、前記ライナーは、外部の元素による核燃料および/または被覆材料の劣化などを回避するために、核燃料および被覆材料の元素間における原子間の拡散の緩和に用いられ、(【0034】) 前記ライナーは、核燃料のとなりに配された第一の領域と、被覆材料のとなりに配された第二の領域とを含み、前記ライナーは、二つの層を含み、前記ライナーの第一の領域が第一の層の中に配され、前記ライナーの第二の領域が第二の層の中に配され、第一の領域は第一の材料を含み、第二の領域は第二の材料を含み、第一の材料は第二の材料と異なり、(上記(イ)b) 前記第一の材料は、第一の材料と核燃料との間における原子間の拡散を緩和するようになされるように選ばれ、(【0038】) 前記第二の材料は、前記第二の層と前記被覆層との間における原子間の拡散を緩和するようになされるように選ばれ、(【0039】) (i)核燃料および第一の層と、(ii)被覆層および第二の層と、の両者間には、例えば650℃で原子間の拡散が実質的にない、(【0041】) 構造。」 ウ 対比 (ア) 対比分析 a 本件補正発明の「核物質を保持するための二重障壁装備クラッド」との発明特定事項について (a) 引用発明の「核燃料」及び「被覆層」は、それぞれ、本件補正発明の「核物質」及び「クラッド」に相当する。 (b) 引用発明の「ライナー」は、「核燃料と被覆層との間の障壁層として機能」するものであるから、本件補正発明の「障壁」に相当する。さらに、引用発明の「二つの層からなるライナー」は、本件補正発明の「二重障壁」に相当する。 (c) 前記(b)を踏まえると、引用発明の「被覆層の空洞内へ二つの層からなるライナーをスライドさせた構造」は、本件補正発明の「二重障壁装備クラッド」に相当する。 (d) 引用発明は、「前記被覆層及び前記ライナーは、核燃料と被覆層との間に配されたライナーを備えた燃料要素の被覆層及びライナー」であるものであるから、引用発明の「被覆層の空洞内へ二つの層からなるライナーをスライドさせた構造」は、本件補正発明でいう「核物質を保持するための」ものであるといえる。 (e) したがって、引用発明は、本件補正発明の「核物質を保持するための二重障壁装備クラッド」との発明特定事項を満たす。 b 本件補正発明の「ステンレス鋼、FeCrAl合金、HT9鋼、酸化物分散強化鋼、T91鋼、T92鋼、316鋼、304鋼、APMT鋼、合金33鋼、モリブデン、モリブデン合金、ジルコニウム、ジルコニウム合金、ニオブ、ニオブ合金、ジルコニウム-ニオブ合金、ニッケル、またはニッケル合金から選択されたクラッド材料からなるクラッド」との発明特定事項について 引用発明の「被覆層」は、「被覆層の被覆材料は、耐火金属又は合金を含み、前記耐火金属は、Nb・Mo・Ta・W・Re・Zr・V・Ti・Cr・Ru・Rh・Os・Ir・Nd・Hfから選ばれ、被覆層が含む合金は鋼鉄であって、前記鋼鉄は、マルテンサイト鋼・オーステナイト鋼・フェライト鋼・酸化物分散鋼・T91鋼・T92鋼・HT9鋼・316鋼・304鋼から選ばれ[る]」から、本件補正発明の「ステンレス鋼、FeCrAl合金、HT9鋼、酸化物分散強化鋼、T91鋼、T92鋼、316鋼、304鋼、APMT鋼、合金33鋼、モリブデン、モリブデン合金、ジルコニウム、ジルコニウム合金、ニオブ、ニオブ合金、ジルコニウム-ニオブ合金、ニッケル、またはニッケル合金から選択されたクラッド材料からなるクラッド」と、金属又は合金からなる「クラッド」である点で共通する。 c 本件補正発明の「燃料側障壁と、上記燃料側障壁と上記クラッドとの間のクラッド側障壁とを備え、上記燃料側障壁は第1の材料であり、上記クラッド側障壁は、第1の材料とは基礎化学元素が異なる第2の材料であ[る]」との発明特定事項について (a) 引用発明は「前記被覆層及び前記ライナーは、核燃料と被覆層との間に配されたライナーを備えた燃料要素の被覆層及びライナーであり、」「前記ライナーは、核燃料のとなりに配された第一の領域と、被覆材料のとなりに配された第二の領域とを含み、前記ライナーは、二つの層を含み、前記ライナーの第一の領域が第一の層の中に配され、前記ライナーの第二の領域が第二の層の中に配され[る]」ものであるから、核燃料側から、核燃料、ライナーの第一の層、ライナーの第二の層及び被覆層がこの順に配された構造であるといえる。 (b) また、引用発明の「核燃料と被覆層との間に配されたライナー」は、「核燃料と被覆層との間の障壁層として機能[する]」から、当該ライナーの第一の層及びライナーの第二の層は障壁層であるといえる。 (c) 前記(a)及び(b)によれば、引用発明の「ライナーの」「第一の層」は、本件補正発明の「燃料側障壁」に相当する。また、引用発明の「ライナーの」「第二の層」は、本件補正発明の「上記燃料側障壁と上記クラッドとの間のクラッド側障壁」に相当する。 (d) 引用発明は、「前記ライナーの第一の領域が第一の層の中に配され、」「第一の領域は第一の材料を含[む]」ものであるから、前記(c)も踏まえると、引用発明の「第一の材料」は、本件補正発明の「第1の材料」に相当する。よって、本件補正発明と引用発明は、「燃料側障壁は第1の材料であ[る]」点で一致する。 (e) 引用発明は、「前記ライナーの第二の領域が第二の層の中に配され、」「第二の領域は第二の材料を含[む]」ものであるから、前記(c)も踏まえると、引用発明の「第二の材料」は、本件補正発明の「第2の材料」に相当する。また、引用発明は、「第一の材料は第二の材料と異な[る]」ものであるから、本件補正発明と引用発明は、「クラッド側障壁は、第1の材料とは異なる第2の材料であ[る]」点で共通する。 一方、本願の明細書【0031】の「基礎材料」または「基礎化学元素」とは、材料中の重量で最大の化学元素を意味する。」との記載を踏まえると、引用発明の第二の材料が第一の材料と基礎化学元素が異なるかどうかは不明である。 (f) 前記(a)~(e)をまとめると、本件補正発明と引用発明は、「燃料側障壁と、上記燃料側障壁と上記クラッドとの間のクラッド側障壁とを備え、上記燃料側障壁は第1の材料であり、上記クラッド側障壁は、第1の材料とは異なる第2の材料であ[る]」点で共通する。 d 本件補正発明の「上記クラッド材料が、上記核物質と2ヶ月間接触して配置され、650℃に保持される場合に、上記核物質は、上記クラッド材料内への第1の相互拡散距離を示し、上記第1の材料が、上記核物質と2ヶ月間接触して配置され、650℃に保持される場合に、上記核物質は、上記第1の材料内への第2の相互拡散距離を示し、第2の相互拡散距離は第1の相互拡散距離よりも短く、上記第1の材料中の少なくとも1つの化学元素は、上記クラッド材料と2ヶ月間接触して配置され、650℃に保持された場合に、上記クラッド材料内への第3の相互拡散距離を示し、上記第2の材料中の少なくとも1つの化学元素は、上記クラッド材料と2ヶ月間接触して配置され、650℃に保持された場合に、上記クラッド材料内への第4の相互拡散距離を示し、第3の相互拡散距離は第4の相互拡散距離よりも長い」との発明特定事項について (a) まず、本件補正発明の「上記クラッド材料が、上記核物質と2ヶ月間接触して配置され、650℃に保持される場合に、上記核物質は、上記クラッド材料内への第1の相互拡散距離を示し」との発明特定事項について検討すると、当該発明特定事項は、「2ヶ月間接触して配置され、650℃に保持される場合」(以下「本件所定条件」という。)の核物質のクラッド材料内への第1の相互拡散距離の具体的な値を特定するものではない。そして、任意の核物質及びクラッド材料の組み合わせが、本件所定条件においてある相互拡散距離を示すことは、例えば「被覆材料は第1の融点を示す」といった技術事項と同様に、自明な技術事項にすぎない。そうすると、引用発明についても、本件所定条件において、核燃料は被覆材料内への「所定の相互拡散距離1」を示すといえるから、当該「所定の相互拡散距離1」が本件補正発明の「第1の相互拡散距離」に相当することとなる。 (b)本件補正発明の第2~第4の相互拡散距離に関する発明特定事項についても同様であり、引用発明は、本件所定条件において、核物質は第一の材料内への「所定の相互拡散距離2」を示し、第一の材料中の少なくとも1つの化学元素は被覆層内への「所定の相互拡散距離3」を示し、第二の材料中の少なくとも1つの化学元素は被覆層内への「所定の相互拡散距離4」を示すといえる。そして、当該「所定の相互拡散距離2」、「所定の相互拡散距離3」及び「所定の相互拡散距離4」はそれぞれ、本件補正発明の「第2の相互拡散距離」、「第3の相互拡散距離」及び「第4の相互拡散距離」に相当することとなる。 (c) したがって、本件補正発明と引用発明は、「上記クラッド材料が、上記核物質と2ヶ月間接触して配置され、650℃に保持される場合に、上記核物質は、上記クラッド材料内への第1の相互拡散距離を示し、上記第1の材料が、上記核物質と2ヶ月間接触して配置され、650℃に保持される場合に、上記核物質は、上記第1の材料内への第2の相互拡散距離を示し、」「上記第1の材料中の少なくとも1つの化学元素は、上記クラッド材料と2ヶ月間接触して配置され、650℃に保持された場合に、上記クラッド材料内への第3の相互拡散距離を示し、上記第2の材料中の少なくとも1つの化学元素は、上記クラッド材料と2ヶ月間接触して配置され、650℃に保持された場合に、上記クラッド材料内への第4の相互拡散距離を示[す]」点で共通する。 一方で、引用発明は、核燃料の被覆材料内への「所定の相互拡散距離1」と、核物質の第一の材料内への「所定の相互拡散距離2」との長短の関係、及び、第一の材料中の少なくとも1つの化学元素の被覆層内への「所定の相互拡散距離3」と、第二の材料中の少なくとも1つの化学元素の被覆層内への「所定の相互拡散距離4」との長短の関係が明らかではない。 (イ) 一致点及び相違点 前記(ア)の対比分析の結果をまとめると、本件補正発明と引用発明の一致点及び相違点は、それぞれ次のa及びbに示すとおりである。 a 一致点 「核物質を保持するための二重障壁装備クラッドであって、 金属又は合金からなるクラッドと、 燃料側障壁と、 上記燃料側障壁と上記クラッドとの間のクラッド側障壁とを備え、 上記燃料側障壁は第1の材料であり、上記クラッド側障壁は、第1の材料とは異なる第2の材料であり、 上記クラッド材料が、上記核物質と2ヶ月間接触して配置され、650℃に保持される場合に、上記核物質は、上記クラッド材料内への第1の相互拡散距離を示し、 上記第1の材料が、上記核物質と2ヶ月間接触して配置され、650℃に保持される場合に、上記核物質は、上記第1の材料内への第2の相互拡散距離を示し、 上記第1の材料中の少なくとも1つの化学元素は、上記クラッド材料と2ヶ月間接触して配置され、650℃に保持された場合に、上記クラッド材料内への第3の相互拡散距離を示し、 上記第2の材料中の少なくとも1つの化学元素は、上記クラッド材料と2ヶ月間接触して配置され、650℃に保持された場合に、上記クラッド材料内への第4の相互拡散距離を示す、 核物質を保持するための二重障壁装備クラッド。」 b 相違点 (a) 相違点1 クラッドを構成するクラッド材料が、本件補正発明は、「ステンレス鋼、FeCrAl合金、HT9鋼、酸化物分散強化鋼、T91鋼、T92鋼、316鋼、304鋼、APMT鋼、合金33鋼、モリブデン、モリブデン合金、ジルコニウム、ジルコニウム合金、ニオブ、ニオブ合金、ジルコニウム-ニオブ合金、ニッケル、またはニッケル合金から選択された」ものであるのに対して、引用発明は、「被覆層の被覆材料は、耐火金属又は合金を含み、前記耐火金属は、Nb・Mo・Ta・W・Re・Zr・V・Ti・Cr・Ru・Rh・Os・Ir・Nd・Hfから選ばれ、合金は鋼鉄であって、前記鋼鉄は、マルテンサイト鋼・オーステナイト鋼・フェライト鋼・酸化物分散鋼・T91鋼・T92鋼・HT9鋼・316鋼・304鋼から選ばれ[る]」点。 (b) 相違点2 燃料側障壁を構成する第1の材料とクラッド側障壁を構成する第2の材料について、本件補正発明では、「基礎化学元素が異なる」のに対して、引用発明は、第一の材料は、第一の材料と核燃料との間における原子間の拡散を緩和するようになされるように選ばれ、第二の材料は、第二の層と被覆層との間における原子間の拡散を緩和するようになされるように選ばれ、第一の材料は第二の材料と異なるものの、基礎化学元素が異なるかどうかは不明である点。 (c) 相違点3 本件補正発明は、「第2の相互拡散距離は第1の相互拡散距離よりも短[い]」のに対して、引用発明は、「前記ライナーは、核燃料および被覆材料の元素間における原子間の拡散の緩和に用いられ」、「前記第一の材料と前記核燃料との間における原子間の拡散を緩和するようになされるように選ばれ」、「(i)核燃料および第一の層」の間には「例えば650℃で原子間の拡散が実質的にない」ものであるが、核燃料の被覆材料内への「所定の相互拡散距離1」と、核物質の第一の材料内への「所定の相互拡散距離2」との長短の関係は明示されていない点。 (d) 相違点4 本件補正発明は、「第3の相互拡散距離は第4の相互拡散距離よりも長い」のに対して、引用発明は、「前記ライナーは、核燃料および被覆材料の元素間における原子間の拡散の緩和に用いられ」「前記第二の材料は、前記第二の層と前記被覆層との間における原子間の拡散を緩和するようになされるように選ばれ」、「(ii)被覆層および第二の層」の間には「例えば650℃で原子間の拡散が実質的にない」ものであるが、第一の材料中の少なくとも1つの化学元素の被覆層内への「所定の相互拡散距離3」と、第二の材料中の少なくとも1つの化学元素の被覆層内への「所定の相互拡散距離4」との長短の関係は明示されていない点。 エ 判断 (ア) 相違点についての判断 a 相違点1について 引用発明の「被覆層」の「金属又は合金」に関して、引用発明は、「耐火金属は、Nb・Mo・Ta・W・Re・Zr・V・Ti・Cr・Ru・Rh・Os・Ir・Nd・Hfから選ばれ」、「合金は鋼鉄であって、前記鋼鉄は、マルテンサイト鋼・オーステナイト鋼・フェライト鋼・酸化物分散鋼・T91鋼・T92鋼・HT9鋼・316鋼・304鋼から選ばれ[る]」ものである。 したがって、引用発明において、金属あるいは合金として、上記の具体的な材料のうち、例えばNbやHT9綱などを適宜選択して、相違点1に係る本件補正発明の構成を得ることは当業者が適宜なし得たことである。 b 相違点2について 「基礎化学元素」との発明特定事項に関しては、本願の発明の詳細な説明には、「「基礎材料」または「基礎化学元素」とは、材料中の重量で最大の化学元素を意味する。例えば、1つの化学元素が50%を超える合金の場合、基礎材料は、合金の50重量%を超える化学元素である。V、Zr、Moなどの元素材料の場合、基礎材料はその化学元素である。」(【0031】)と記載されている。 そこで、引用発明の「第一の材料」(本件補正発明の「第1の材料」)及び「第二の材料」(本件補正発明の「第2の材料」)についてみると、引用発明は、「第一の材料は、第一の材料と核燃料との間における原子間の拡散を緩和するようになされるように選ばれ、第二の材料は、前記第二の層と前記被覆層との間における原子間の拡散を緩和するようになされるように選ばれ[る]」ものであって、さらに、「第一の材料は第二の材料と異な[る]」ものであるとされる。 そして、核燃料と被覆層の材料は異なることが技術常識であり、当業者は、引用発明の「第一の材料は第二の材料と異な[る]」ことの技術上の意義は、核燃料又は被覆層それぞれとの間で原子間の拡散を緩和するのに適した「異なる材料」であることを理解する。よって、このような観点で第一の材料と第二の材料として具体的にどのような材料を選択するかは当業者が適宜なし得る設計事項であり、この結果、これらの材料中の重量で最大の化学元素、すなわち基礎化学元素が異なるものを選択することも、ごく自然な設計事項にすぎない。このことは、引用文献1には、第一の材料はVを含み、第二の材料は元素Zrを含むことが例示されている(【0042】)ことからも首肯できる。 したがって、引用発明において、上記相違点2に係る本件補正発明の構成となすことは当業者が容易になし得たことである。 c 相違点3について 引用発明の「ライナー」の「第一の材料」は、「第一の材料と核燃料との間における原子間の拡散を緩和するようになされるように選ばれ[る]」ものであるところ、「第一の材料」が何と比較して「核燃料との間における原子間の拡散を緩和する」のかについては、「ライナー」が「核燃料および被覆材料の元素間における原子間の拡散の緩和に用いられ[る]」ことに照らせば、「被覆材料」が核燃料のとなりに配されるときに比較して「核燃料との間における原子間の拡散を緩和する」ものであるといえる。 そして、「ライナー」の「第一の材料」が、「被覆材料」と比較して「核燃料との間における原子間の拡散を緩和する」材料であり、「(i)核燃料および第一の層」間には、「例えば650℃で原子間の拡散が実質的にない」ことは、650℃での核燃料の「第一の材料」への相互拡散距離が、650℃での核燃料の「被覆材料」への相互拡散距離より短いことと同義であるといえる。 さらに、相互拡散距離を定義する接触して配置される期間について検討すると、引用発明の「燃料および被覆材料の元素間における原子間の拡散の緩和」や、「(i)燃料および第一の層」間には、「例えば650℃で原子間の拡散が実質的にない」ことは、任意の期間で満たされるのが望ましいことは当業者には明らかであるから、この結果、相違点3に係る本願発明のように「2ヶ月間接触して配置」された場合にも、650℃での核燃料の「第一の材料」への相互拡散距離、すなわち、前記ウ(ア)d(c)で説示した核物質の第一の材料内への「所定の相互拡散距離2」が、650℃での核燃料の「被覆材料」への相互拡散距離、すなわち、前記ウ(ア)d(c)で説示した核燃料の被覆材料内への「所定の相互拡散距離1」より短いとの構成に至ることとなる。 したがって、引用発明において、相違点3に係る本件補正発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。 d 相違点4について (a) 引用発明の「ライナー」の「第二の材料」は、「前記第二の層と前記被覆層との間における原子間の拡散を緩和するようになされるように選ばれ[る]」ものであるところ、「第二の材料」が何と比較して「被覆層との間における原子間の拡散を緩和する」のかについては、「ライナー」が「核燃料および被覆材料の元素間における原子間の拡散の緩和に用いられ[る]」ことに照らせば、「核燃料」が被覆層のとなりに配されるときに比較して「被覆層との間における原子間の拡散を緩和する」ものであると解される。加えて、核燃料のとなりには第一の材料を含む第一の領域が配されることを勘案すれば、「第二の材料」は、「第一の材料」が被覆層のとなりに配されるときに比較して「被覆層との間における原子間の拡散を緩和する」ものであることも要するというべきである(さもなければ、第二の材料を含む第二の領域を配する技術上の意義が失われることから、そのようにいえる。)。 そして、「ライナー」の「第二の材料」が、「第一の材料」と比較して「被覆層との間における原子間の拡散を緩和する」材料であり、「(ii)被覆層および第二の層」間には、「例えば650℃で原子間の拡散が実質的にない」ことは、650℃での「第二の材料」の「被覆材料」への相互拡散距離が、650℃での「第一の材料」の「被覆材料」への相互拡散距離より短いことと同義であるといえる。 さらに、相互拡散距離を定義する接触して配置される期間について検討すると、前記cで相違点3について検討したのと同様であり、この結果、相違点4に係る本願発明のように「2ヶ月間接触して配置」された場合にも、650℃での「第二の材料」の「被覆材料」への相互拡散距離、すなわち、前記ウ(ア)d(c)で説示した第二の材料中の少なくとも1つの化学元素の被覆層内への「所定の相互拡散距離4」が、650℃での「第一の材料」の「被覆材料」への相互拡散距離、すなわち、前記ウ(ア)d(c)で説示した第一の材料中の少なくとも1つの化学元素の被覆層内への「所定の相互拡散距離3」より短いとの構成に至ることとなる。 したがって、引用発明において、相違点4に係る本件補正発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。 e 効果について 本件補正発明の奏する効果としては、本件補正発明の構成が奏するものとして、引用発明に基づいて当業者が予測し得ないものとはいえず、顕著なものともいえない。 したがって、本件補正発明は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 (イ) 請求人の主張について a 請求人の主張内容 請求人は、隣り合わない核物質及びクラッドの材料に関する相互拡散距離を利用しており、核物質及びクラッド材料を選択すれば、第1の相互拡散距離と第2の相互拡散距離との関係から、燃料側障壁材料に適合する材料を限定でき、燃料側障壁材料を容易に選択できるという効果を奏する旨、及び、クラッド側障壁である第2の材料におけるクラッドの相互拡散距離を、燃料側障壁である第1の材料におけるクラッドの相互拡散距離よりも小さくなるような第2の材料を選択しているため、選択可能な第2の材料を限定することができ、その結果、第2の材料を容易に選択できる効果を奏する旨を主張している。 b 請求人の主張についての検討 請求人の主張について検討するに、第1の相互拡散距離と第2の相互拡散距離の長短関係及び第3の相互拡散距離と第4の相互拡散距離の長短関係については、上記(ア)c及びdで検討したとおりである。 また、本件補正発明は、核物質を保持するための二重障壁装備クラッドという物の発明であり、物の構成として第1の相互拡散距離と第2の相互拡散距離の長短関係及び第3の相互拡散距離と第4の相互拡散距離の長短関係を発明特定事項とするにとどまるのであって、「核物質」、「クラッド材料」、「第1の材料」及び「第2の材料」の材料の選択順を発明特定事項とするものではない。よって、材料の選択順に関する請求人の主張は、本件補正発明に係る請求項の記載に基づくものではないから、採用できない。 したがって、上記aの請求人の主張は採用できない。 オ 独立特許要件についての当審の判断のまとめ 以上検討のとおり、本件補正発明は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。 (3) 本件補正の適否についての当審の判断のまとめ 前記(2)に示したとおり、本件補正発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、本件補正は、特許法第17条の2第6項で準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであり、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。 よって、前記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。 第3 本願発明について 1 本願発明 本件補正は、前記第2のとおり却下されたので、本願の請求項23に係る発明(以下「本願発明」という。)は、本件補正前の特許請求の範囲の請求項23(前記第2の1(1)参照)に記載された事項により特定されるとおりのものである。 2 原査定における拒絶の理由の概要 原査定の拒絶の理由のうち、本願発明についての理由(進歩性の欠如)の概要は、次のとおりである。 理由(進歩性) 本願の請求項23に係る発明は、その優先日前に日本国内又は外国において発行された下記の引用文献1に記載された発明に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 記 1.特表2016-502115号公報 3 引用文献に記載された事項及び引用発明の認定 引用文献に記載された事項及び引用発明の認定は、前記第2の2(2)イにおいて示したとおりである。 4 対比・判断 本願発明は、本件補正発明から「上記第1の材料中の少なくとも1つの化学元素は、上記クラッド材料と2ヶ月間接触して配置され、650℃に保持された場合に、上記クラッド材料内への第3の相互拡散距離を示し、上記第2の材料中の少なくとも1つの化学元素は、上記クラッド材料と2ヶ月間接触して配置され、650℃に保持された場合に、上記クラッド材料内への第4の相互拡散距離を示し、第3の相互拡散距離は第4の相互拡散距離よりも長い」(相違点3)との限定を除いたものである。 そして、本願発明の発明特定事項を全て含み、当該発明特定事項の一部を限定したものに相当する本件補正発明が、前記第2の2(2)において説示したとおり、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、同様の理由により、本願発明も、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 第4 むすび 以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。 したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

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2023-005883

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