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特許拒絶査定不服審判

2024-019805

放射性物質の拡散状況予測装置および方法並びにプログラム

審判番号
2024-019805
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2021-202858
請求日
2024年12月10日
審決日
2026年04月13日
公報発行日
2026年06月26日
結論
請求不成立
当事者
  • 【請求人】三菱重工業株式会社
  • 【請求人代理人】弁理士法人酒井国際特許事務所
審判長/審判官
  • 審判長 波多江 進
  • 審判官 横井 亜矢子
  • 審判官 東松 修太郎
分類
P18 .121-Z (G21C) / P18 .575-Z (G21C)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条、特許法第17条の2第5項、特許法第17条の2第6項
データ出所
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特願2021-202858「放射性物質の拡散状況予測装置および方法並びにプログラム」拒絶査定不服審判事件〔令和5年6月26日出願公開、特開2023-88164〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

理 由 第1 手続の経緯 本願は、令和3年12月14日の出願であって、その手続の経緯の概略は、次のとおりである。 令和6年 7月12日付け:拒絶理由通知書 同年 9月18日 :意見書、手続補正書の提出 同月27日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。) (同年10月 8日 :原査定の謄本の送達) 同年12月10日 :審判請求書、手続補正書の提出 第2 令和6年12月10日にされた手続補正についての補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 令和6年12月10日にされた手続補正を却下する。 [補正の却下の決定の理由] 1 本件補正の内容 令和6年12月10日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)は、特許請求の範囲の補正をするものであり、本件補正により、次の(1)に示す本件補正前(令和6年9月18日にされた手続補正後のものをいう。以下同じ。)の特許請求の範囲の請求項1の記載は、後記(2)に示す本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載に補正された。下線は補正箇所を示す。 (1) 本件補正前 「【請求項1】 気象データに基づいて放出源からの放射性物質の単位放出量当たりの拡散分布を表すデータベースを生成するデータベース生成部と、 前記データベース生成部により生成された拡散分布を放射性物質の放出シナリオに応じて補正する拡散分布補正部と、 前記拡散分布補正部により補正された補正拡散分布に基づいて評価位置における線量を算出する線量算出部と、 を備え、 前記データベース生成部は、前記放出源から規定放出時間にわたって放射性物質が放出されたとき、前記放出源からの放射性物質の放出時から予め設定された所定の経過時間ごとの放射性物質の拡散分布の変化を表す拡散分布変動マップを生成すると共に、前記放出源からの放射性物質の放出時期を予め設定された所定の放出遅延時間だけずらした複数の放出時期変動マップを生成し、 前記拡散分布補正部は、前記拡散分布変動マップと前記放出時期変動マップを用いて、放射性物質の放出時期から所定の経過時間を経過した評価時刻における前記評価位置での放射性物質の濃度を、放射性物質の異なる複数の放出時期における前記評価時刻での放射性物質の複数の濃度を加算して算出する、 放射性物質の拡散状況予測装置。」 (2) 本件補正後 「【請求項1】 気象データに基づいて放出源からの放射性物質の単位放出量と気流データに基づいて気流解析処理と拡散計算処理と濃度計算処理を行うことで、計算メッシュ内の気流を作成し、所定の気流に則った地形影響を考慮したパフの移流・拡散を模擬し、放射性物質の単位放出量当たりの拡散分布を表すデータベースを生成するデータベース生成部と、 前記データベース生成部により生成された拡散分布を放射性物質の放出シナリオに応じて補正する拡散分布補正部と、 前記拡散分布補正部により補正された補正拡散分布に基づいて評価位置における線量を算出する線量算出部と、 を備え、 前記データベース生成部は、前記放出源から規定放出時間にわたって放射性物質が放出されたとき、前記放出源からの放射性物質の放出時から予め設定された所定の経過時間ごとの放射性物質の拡散分布の変化を表す拡散分布変動マップを生成すると共に、前記放出源からの放射性物質の放出時期を予め設定された所定の放出遅延時間だけずらした複数の放出時期変動マップを生成し、 前記拡散分布補正部は、前記拡散分布変動マップと前記放出時期変動マップを用いて、放射性物質の放出時期から所定の経過時間を経過した評価時刻における前記評価位置での放射性物質の濃度を、放射性物質の異なる複数の放出時期における前記評価時刻での放射性物質の複数の濃度を加算して算出する、 放射性物質の拡散状況予測装置。」 2 本件補正の目的 本件補正のうち請求項1についてする補正は、本件補正前の請求項1に記載された「気象データに基づいて放出源からの放射性物質の単位放出量当たりの拡散分布を表すデータベースを生成するデータベース生成部」について、「放射性物質の単位放出量と気流データに基づいて気流解析処理と拡散計算処理と濃度計算処理を行うことで、計算メッシュ内の気流を作成し、所定の気流に則った地形影響を考慮したパフの移流・拡散を模擬[する]」ものに限定するものである。 そして、本件補正前の請求項1に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載される発明は、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一である。 したがって、本件補正により請求項1についてする補正は、特許法17条の2第5項2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とする補正に該当する。 3 独立特許要件の判断 本件補正は、前記2のとおり、特許法17条の2第5項2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とする補正に該当するから、本件補正後の請求項1に記載されている事項により特定される発明(以下「本件補正発明」という。)が、同条6項において準用する同法126条7項の規定に適合するか、すなわち、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて、以下検討する。 (1) 本件補正発明 本件補正発明は、前記1(2)に摘記した本件補正後の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものと認める。 ここで、検討の便宜上、本件補正発明の構成を次のとおり構成Xと構成A1、A2、B1、B2、Cに分説する。 <本件補正発明の分説> A1 気象データに基づいて放出源からの放射性物質の単位放出量と気流データに基づいて気流解析処理と拡散計算処理と濃度計算処理を行うことで、計算メッシュ内の気流を作成し、所定の気流に則った地形影響を考慮したパフの移流・拡散を模擬し、放射性物質の単位放出量当たりの拡散分布を表すデータベースを生成するデータベース生成部と、 B1 前記データベース生成部により生成された拡散分布を放射性物質の放出シナリオに応じて補正する拡散分布補正部と、 C 前記拡散分布補正部により補正された補正拡散分布に基づいて評価位置における線量を算出する線量算出部と、 を備え、 A2 前記データベース生成部は、前記放出源から規定放出時間にわたって放射性物質が放出されたとき、前記放出源からの放射性物質の放出時から予め設定された所定の経過時間ごとの放射性物質の拡散分布の変化を表す拡散分布変動マップを生成すると共に、前記放出源からの放射性物質の放出時期を予め設定された所定の放出遅延時間だけずらした複数の放出時期変動マップを生成し、 B2 前記拡散分布補正部は、前記拡散分布変動マップと前記放出時期変動マップを用いて、放射性物質の放出時期から所定の経過時間を経過した評価時刻における前記評価位置での放射性物質の濃度を、放射性物質の異なる複数の放出時期における前記評価時刻での放射性物質の複数の濃度を加算して算出する、 X 放射性物質の拡散状況予測装置。 (2) 各引用文献に記載された事項及び引用発明等の認定 ア 引用文献1に記載された事項及び引用発明の認定 (ア) 引用文献1に記載された事項 原査定の拒絶の理由において引用された、本願の出願前に発行された文献である特開2003-196574号公報(以下「引用文献1」という。)には、次の記載がある(なお、当合議体により、後記(ウ)の引用発明の認定に用いる記載に下線を付した。)。 a 【0001】~【0014】 「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は拡散物質の拡散状況予測方法に関するものである。本発明は、拡散源(例えば放射性物質使用施設や煙突)から大気中に排出された物質(例えば放射性物質や煙)が、大気中にどのように拡散していくかを予測して、各地点で時々刻々変化していく物質の濃度を予測するようにしたものである。 【0002】 【従来の技術】放射性物質を扱う施設から、事故により放射性物質が外部に排出された場合には、放射性物質の拡散範囲や各地点での放射性物質の濃度を予測し、放射性物質による危険を受ける恐れがある地域を予測する拡散状況予測方法が開発されつつある。 【0003】この拡散状況予測方法は、放射性物質の拡散状況を予測する場合のみならず、例えば工場の煙突から排出されたガス体(煙)が大気中を拡散した場合において、各地点におけるガス体濃度を計算する場合や、環境アセスメントの解析における、拡散物質の拡散状況を解析する場合にも適用することができる。 【0004】大気中に排出された物質の拡散状況を、演算により予測するには、次の2つの演算をする必要がある。 (1)気体状況予測演算 (2)拡散状況予測演算 【0005】上記(1)の気体状況予測演算とは、気象GPV(Grid Point Value)データやAMEDAS等の気象観測データを基にして、大気現象を解析する偏微分方程式を演算することにより、事象発生(例えば放射性物質の外部排出)時点から所定時間先の時点まで、一定時間刻み毎の時点における、多数の評価地点(格子点位置)の風向・風速を演算により求める、つまり、一定時間刻み毎の風速場データを表す気体状況を求める演算をいう。 【0006】また、上記(2)の拡散状況予測演算とは、放出された拡散物質の濃度や性状ならびに前記風速場データを、物質(粒子)の拡散状態を演算する拡散方程式に代入することにより、各時間刻み毎の各格子点位置における拡散物質の濃度を求める演算をいう。 【0007】<気体状況予測演算の説明>まず、気体状況予測演算の概略を説明する。気象観測データ、例えば気象GPVデータは、気象業務支援センターから12時間ごとに配信される。この気象GPVデータは、地球の表面を南北方向に沿い伸びると共に東西方向の相互の離間距離が規定距離(2Km)となっている複数の緯度仮想線と、地球の表面を東西方向に沿い伸びると共に南北方向の相互の離間距離が規定距離(2Km)となっている複数の経度仮想線とが交差する地点(これを「親格子点位置」と称する)における、気象データ(風速ベクトル(風向,風速),気圧,温度,水分量)を示すものである。しかも、気象GPVデータは、各親格子点位置の気象データとして、配信時点,配信時点から3時間先、6時間先,9時間先,というように3時間間隔の51時間分のデータが一括して配信される。 【0008】上述した気象GPVデータの親格子点位置の気象データは、空間的には親格子点位置の相互間距離が2Kmと広く、しかも、時間的には3時間間隔と長いため、この親格子点位置の気象データにより示される気体状況(風向,風速)データ即ち風速場データのみでは、拡散物質の拡散濃度を演算することはできない。 【0009】このため、空間的に粗く、且つ、時間的にも粗い気象観測データから、空間的にも時間的にも密な気体状況(風向,風速等)を、大気現象を解析する偏微分方程式を演算することにより求める必要がある。 【0010】そこで、計算すべき計算領域(地球の表面のなかで予め設定した特定領域)に設定された親格子点位置の間に、子格子点位置を設定する。子格子点位置は、地球の表面を南北方向に沿い伸びると共に東西方向の相互の離間距離が一定距離(50m)となっている複数の緯度仮想線と、地球の表面を東西方向に沿い伸びると共に南北方向の相互の離間距離が一定距離(50m)となっている複数の経度仮想線とが交差する地点に配置されている。 【0011】そして、演算開始から一定時間刻み毎(例えば20秒間隔毎)の子格子点位置及び親格子点位置の気象データを、大気現象を解析する偏微分方程式を差分解析演算することにより求める。大気現象を解析する偏微分方程式としては、コロラド州立大学とMission Research社で開発されたRAMS(Regional AtmosphericModeling System)コードで示されている、風速場解析の基本方程式を用いることができる。 【0012】このRAMSコードで示されている風速場解析の基本方程式は、運動方程式,熱エネルギ方程式,水分の拡散方程式及び連続の式からなり、次のような式(1)~(6)で表される。 【0013】 【数1】 [図:0001435798000001.jpg] 【0014】このようにRAMS(Regional Atmospheric Modeling System)コードで示されている風速場解析の基本方程式を演算して、演算開始から一定時間刻み毎(例えば20秒間隔毎)の、各親格子点位置における気象データと、各子格子点位置における気象データを示す風向ベクトルデータ(風速場データ)が得られる。」 b 【0044】~【0075】 「【0044】<第1の実施の形態(排出源が1つの場合)>本発明の第1の実施の形態にかかる拡散物質の拡散状況予測方法を、図1~図10を参照しつつ説明する。 【0045】第1の実施の形態での第1ステップ(計算フロー図である図1参照)では次のような処理をする。即ち、排出源S(粒子の拡散状況を示す図2~図4参照)から実際に排出される物質の排出量が一定であっても、時間経過に沿い排出量が変化する場合であっても、まずは物質の排出量Q(m3/sec)を一定値(=1.0)として、従来のLagrangian粒子拡散モデルを使用して、粒子の挙動を数値計算する。更に、各粒子が有する情報である空間座標(xi(t),yi(t),zi(t))の他に、粒子を最初に発生させた時点からの経過時間である排出後経過時間Ti(t)を、各演算周期Δt毎に、データ記録装置1に記録する。」 「【図1】 [図:0001435798000002.jpg] 」 「【0046】この第1ステップの処理を、具体的に説明すると次のようになる。この演算では、演算周期Δt(ここではΔt=20秒)毎に、20個の粒子を発生させると共に、演算周期Δt(20秒)毎に粒子Pの位置(空間座標)を演算する。 【0047】まず、演算開始時点においては、排出源Sから20個の粒子P0001,P0002,P0003,P0004,P0005,P0006,P0007,P0008,P0009,P0010,P0011,P0012,P0013,P0014,P0015,P0016,P0017,P0018,P0019,P0020が発生する。 【0048】演算開始時点から20秒後においては、図2に示す排出源Sから新たに20個の粒子P2001,P2002,P2003,P2004,P2005,P2006,P2007,P2008,P2009,P2010,P2011,P2012,P2013,P2014,P2015,P2016,P2017,P2018,P2019,P2020が発生する。このとき、演算開始時点にて発生した粒子P0001,P0002,P0003,P0004,P0005,P0006,P0007,P0008,P0009,P0010,P0011,P0012,P0013,P0014,P0015,P0016,P0017,P0018,P0019,P0020は、排出源Sから離れた位置にまで達すると共に拡散している。各粒子P0001~P0020の位置は、RAMS(Regional Atmospheric ModelingSystem)コードにより求めた20秒刻み毎の風速場データを用いて、Lagrangian粒子拡散モデルにおける各粒子P0001~P0020の拡散速度(u’,v’,w’)を計算し、各粒子を移動させることにより求める。」 「【図2】 [図:0001435798000003.jpg] 」 「【0049】更に、演算開始時点にて発生した粒子P0001~P0020は、演算開始時点(粒子を最初に発生させた時点)から20秒が経過している。そこで、各粒子P0001~P0020の各空間座標(xi(t=20),yi(t=20),zi(t=20))に、排出後経過時間Ti(t)=20秒をそれぞれ対応させてデータ記録装置1に記録する(図1,図2参照)。 【0050】演算開始時点から40秒後においては、図3に示す排出源Sから新たに20個の粒子P4001,P4002,P4003,P4004,P4005,P4006,P4007,P4008,P4009,P4010,P4011,P4012,P4013,P4014,P4015,P4016,P4017,P4018,P4019,P4020が発生する。このとき、演算開始時点にて発生した粒子P0001,P0002,P0003,P0004,P0005,P0006,P0007,P0008,P0009,P0010,P0011,P0012,P0013,P0014,P0015,P0016,P0017,P0018,P0019,P0020は、排出源Sから更に離れた位置にまで達すると共に更に拡散している。また、演算開始時点から20秒後において発生した20個の粒子P2001,P2002,P2003,P2004,P2005,P2006,P2007,P2008,P2009,P2010,P2011,P2012,P2013,P2014,P2015,P2016,P2017,P2018,P2019,P2020は、排出源Sから離れた位置にまで達すると共に拡散している。各粒子P0001~P0020,P2001~P2020の位置は、RAMS(Regional Atmospheric Modeling System)コードにより求めた20秒刻み毎の風速場データを用いて、Lagrangian粒子拡散モデルにおける各粒子P0001~P0020,P2001~P2020の拡散速度(u’,v’,w’)を計算し、各粒子を移動させることにより求める。」 「【図3】 [図:0001435798000004.jpg] 」 「【0051】更に、演算開始時点にて発生した粒子P0001~P0020は、演算開始時点(粒子を最初に発生させた時点)から40秒が経過している。そこで、各粒子P0001~P0020の各空間座標(xi(t=40),yi(t=40),zi(t=40))に、排出後経過時間Ti(t)=40秒をそれぞれ対応させてデータ記録装置1に記録する(図1,図3参照)。また、演算開始時点から20秒後に発生した粒子P2001~P2020は、演算開始時点(粒子を最初に発生させた時点)から20秒が経過している。そこで、各粒子P2001~P2020の各空間座標(xi(t=40),yi(t=40),zi(t=40))に、排出後経過時間Ti(t)=20秒をそれぞれ対応させてデータ記録装置1に記録する(図1,図3参照)。 【0052】演算開始時点から60秒後においては、図4に示す排出源Sから新たに20個の粒子P6001,P6002,P6003,P6004,P6005,P6006,P6007,P6008,P6009,P6010,P6011,P6012,P6013,P6014,P6015,P6016,P6017,P6018,P6019,P6020が発生する。このとき、演算開始時点にて発生した粒子P0001,P0002,P0003,P0004,P0005,P0006,P0007,P0008,P0009,P0010,P0011,P0012,P0013,P0014,P0015,P0016,P0017,P0018,P0019,P0020は、排出源Sから更に離れた位置にまで達すると共に更に拡散している。また、演算開始時点から20秒後において発生した20個の粒子P2001,P2002,P2003,P2004,P2005,P2006,P2007,P2008,P2009,P2010,P2011,P2012,P2013,P2014,P2015,P2016,P2017,P2018,P2019,P2020は、排出源Sから更に離れた位置にまで達すると共に更に拡散している。また、演算開始時点から40秒後において発生した20個の粒子P4001,P4002,P4003,P4004,P4005,P4006,P4007,P4008,P4009,P4010,P4011,P4012,P4013,P4014,P4015,P4016,P4017,P4018,P4019,P4020は、排出源Sから離れた位置に達すると共に拡散している。各粒子P0001~P0020,P2001~P2020,P4001~P4020の位置は、RAMS(Regional Atmospheric Modeling System)コードにより求めた20秒刻み毎の風速場データを用いて、Lagrangian粒子拡散モデルにおける各粒子P0001~P0020,P2001~P2020,P4001~P4020の拡散速度(u’,v’,w’)を計算し、各粒子を移動させることにより求める。」 「【図4】 [図:0001435798000005.jpg] 」 「【0053】更に、演算開始時点にて発生した粒子P0001~P0020は、演算開始時点(粒子を最初に発生させた時点)から60秒が経過している。そこで、各粒子P0001~P0020の各空間座標(xi(t=60),yi(t=60),zi(t=60))に、排出後経過時間Ti(t)=60秒をそれぞれ対応させてデータ記録装置1に記録する(図1,図4参照)。また、演算開始時点から20秒後に発生した粒子P2001~P2020は、演算開始時点(粒子を最初に発生させた時点)から40秒が経過している。そこで、各粒子P2001~P2020の各空間座標(xi(t=60),yi(t=60),zi(t=60))に、排出後経過時間Ti(t)=40秒をそれぞれ対応させてデータ記録装置1に記録する(図1,図4参照)。また、演算開始時点から40秒後に発生した粒子P4001~P4020は、演算開始時点(粒子を最初に発生させた時点)から20秒が経過している。そこで、各粒子P4001~P4020の各空間座標(xi(t=60),yi(t=60),zi(t=60))に、排出後経過時間Ti(t)=20秒をそれぞれ対応させてデータ記録装置1に記録する(図1,図4参照)。 【0054】上述したように、演算周期Δt(20秒)毎に20個の粒子を次々と発生させていくと共に、各演算周期Δt(20秒)毎における粒子の位置つまり空間座標(xi(t),yi(t),zi(t))を求めていく。また、各演算周期Δtにおける排出後経過時間Ti(t)を計測しておき、各演算周期における各粒子の空間座標と各粒子の排出後経過時間を対応させて、データ記録装置1に次々と記録していく。 【0055】次に第2ステップ(図1参照)の処理を、具体的に説明する。前述した第1ステップでは、物質の排出量Q(m3/sec)を一定値(=1.0)として数値計算を進めていた。しかし、実際の排出源Sから排出される物質の排出量は、図5に示すように排出後経過時間Ti(t)の経過と共に変化することが多い。そこで、このように排出量が時間と共に変化する場合には、この図5に示す物質の排出量変化に応じた、図6に示すような、排出後経過時間Ti(t)の時間経過に沿う粒子に対する排出源強度を示すデータを設定する。」 「【図5】 [図:0001435798000006.jpg] 【図6】 [図:0001435798000007.jpg] 」 「【0056】図6における排出源強度データでは、例えば、排出後経過時間Ti(t)が0秒,20秒,60秒では、排出源強度はそれぞれ0.3,0.9,0.6となる。 【0057】次に、データ記録装置1に記録している、各演算周期毎の、各粒子の空間座標と各粒子の排出後経過時間Ti(t)を読み出すと共に、各粒子毎にその排出後経過時間Ti(t)を参照してその粒子が発生した時点を求め、この時点における各粒子の排出源強度を図6に示す排出源強度データから求める。更に、各演算周期毎に、各粒子の空間座標と各粒子の排出後経過時間Ti(t)と排出源強度とを対応させて、データ記録装置1に再記録する。(当合議体注:「データ記憶装置1」は、「データ記録装置1」の誤記であることが明らかであるから、誤記を正して摘記した。) 【0058】具体的に説明すると、排出後経過時間Ti(t)が20秒のとき(第1回目の演算周期)のときのデータとしては、各粒子P0001~P0020の各空間座標(xi(t=20),yi(t=20),zi(t=20))と、排出後経過時間Ti(t)=20秒が対応してデータ記録装置1に記録されている(図2参照)。 【0059】そこで、この各粒子P0001~P0020の各空間座標(xi(t=20),yi(t=20),zi(t=20))と、排出後経過時間Ti(t)=20秒を読み出し、現在の時刻t=20秒から排出後経過時間Ti(t)=20秒を減算することにより、各粒子P0001~P0020が発生した時点である排出後経過時間Ti(t)=0秒を求める。そして、図6に示す排出強度データから、粒子P0001~P0020が発生したときの排出後経過時間Ti(t)=0秒のときの排出源強度0.3を求める。 【0060】そして、各粒子P0001~P0020の各空間座標(xi(t=20),yi(t=20),zi(t=20))と、排出後経過時間Ti(t)=20秒と、各粒子P0001~P0020の排出源強度0.3とを対応させて、データ記録装置1に再記録する。 【0061】また、排出後経過時間Ti(t)が40秒のとき(第2回目の演算周期)のときのデータとしては、各粒子P0001~P0020の各空間座標(xi(t=40),yi(t=40),zi(t=40))と、排出後経過時間Ti(t)=40秒、並びに、各粒子P2001~P2020の各空間座標(xi(t=40),yi(t=40),zi(t=40))と、排出後経過時間Ti(t)=20秒が対応してデータ記録装置1に記録されている(図3参照)。 【0062】そこで、各粒子P0001~P0020の各空間座標(xi(t=40),yi(t=40),zi(t=40))と、排出後経過時間Ti(t)=40秒を読み出し、現在の時刻t=40秒から排出後経過時間Ti(t)=40秒を減算することにより、各粒子P0001~P0020が発生した時点である排出後経過時間Ti(t)=0秒を求める。そして、図6に示す排出強度データから、粒子P0001~P0020が発生したときの排出後経過時間Ti(t)=0秒のときの排出源強度0.3を求める。同様に、各粒子P2001~P2020の各空間座標(xi(t=40),yi(t=40),zi(t=40))と、排出後経過時間Ti(t)=20秒を読み出し、現在の時刻t=40秒から排出後経過時間Ti(t)=20秒を減算することにより、各粒子P2001~P2020が発生した時点である排出後経過時間Ti(t)=20秒を求める。そして、図6に示す排出強度データから、粒子P2001~P2020が発生したときの排出後経過時間Ti(t)=20秒のときの排出源強度0.5を求める。 【0063】そして、各粒子P0001~P0020の各空間座標(xi(t=40),yi(t=40),zi(t=40))と、排出後経過時間Ti(t)=40秒と、各粒子P0001~P0020の排出源強度0.3とを対応させて、データ記録装置1に再記録する。また各粒子P2001~P2020の各空間座標(xi(t=40),yi(t=40),zi(t=40))と、排出後経過時間Ti(t)=20秒と、各粒子P2001~P2020の排出源強度0.5とを対応させて、データ記録装置1に再記録する。 【0064】また、排出後経過時間Ti(t)が60秒のとき(第3回目の演算周期)のときのデータとしては、各粒子P0001~P0020の各空間座標(xi(t=60),yi(t=60),zi(t=60))と、排出後経過時間Ti(t)=60秒、及び、各粒子P2001~P2020の各空間座標(xi(t=60),yi(t=60),zi(t=60))と、排出後経過時間Ti(t)=40秒、並びに、各粒子P4001~P4020の各空間座標(xi(t=60),yi(t=60),zi(t=60))と、排出後経過時間Ti(t)=20秒、が対応してデータ記録装置1に記録されている(図4参照)。 【0065】そこで、各粒子P0001~P0020の各空間座標(xi(t=60),yi(t=60),zi(t=60))と、排出後経過時間Ti(t)=60秒を読み出し、現在の時刻t=60秒から排出後経過時間Ti(t)=60秒を減算することにより、各粒子P0001~P0020が発生した時点である排出後経過時間Ti(t)=0秒を求める。そして、図6に示す排出強度データから、粒子P0001~P0020が発生したときの排出後経過時間Ti(t)=0秒のときの排出源強度0.3を求める。同様に、各粒子P2001~P2020の各空間座標(xi(t=60),yi(t=60),zi(t=60))と、排出後経過時間Ti(t)=40秒を読み出し、現在の時刻t=60秒から排出後経過時間Ti(t)=40秒を減算することにより、各粒子P2001~P2020が発生した時点である排出後経過時間Ti(t)=20秒を求める。そして、図6に示す排出強度データから、粒子P2001~P2020が発生したときの排出後経過時間Ti(t)=20秒のときの排出源強度0.5を求める。同様に、各粒子P4001~P4020の各空間座標(xi(t=60),yi(t=60),zi(t=60))と、排出後経過時間Ti(t)=20秒を読み出し、現在の時刻t=60秒から排出後経過時間Ti(t)=20秒を減算することにより、各粒子P4001~P4020が発生した時点である排出後経過時間Ti(t)=40秒を求める。そして、図6に示す排出強度データから、粒子P4001~P4020が発生したときの排出後経過時間Ti(t)=40秒のときの排出源強度0.9を求める。 【0066】そして、各粒子P0001~P0020の各空間座標(xi(t=60),yi(t=60),zi(t=60))と、排出後経過時間Ti(t)=60秒と、各粒子P0001~P0020の排出源強度0.3とを対応させて、データ記録装置1に再記録する。また各粒子P2001~P2020の各空間座標(xi(t=60),yi(t=60),zi(t=60))と、排出後経過時間Ti(t)=40秒と、各粒子P2001~P2020の排出源強度0.5とを対応させて、データ記録装置1に再記録する。また各粒子P4001~P4020の各空間座標(xi(t=60),yi(t=60),zi(t=60))と、排出後経過時間Ti(t)=20秒と、各粒子P4001~P4020の排出源強度0.9とを対応させて、データ記録装置1に再記録する。 【0067】以降の演算周期においても、同様な処理演算をして、各粒子の各空間座標と、排出後経過時間Ti(t)と、各粒子の排出源強度を対応させて、データ記録装置に再記録する。 【0068】次に第3ステップ(図1参照)の処理を、具体的に説明する。例えば、排出後経過時間Ti(t)=120秒のときにおいて、図7に示すような排出源Sから所定距離離れた所定の格子領域(単位体積となっている単位空間)I,J,Kでの、物質の濃度を計算するには、データ記録装置1から、排出後経過時間Ti(t)=120秒における、この格子領域に存在する粒子を読み出す。読み出したところ、図7に示すように粒子が存在していた場合、これら各粒子が有している排出源強度を積算することにより、この単位空間における物質の濃度を計算することができる。」 「【図7】 [図:0001435798000008.jpg] 」 「【0069】つまり、図7に示す格子領域には、強度が0.3となっている4つの粒子P0001,P0005,P0010,P0020と、強度が0.5となっている3つの粒子P2001,P2007,P2017と強度が0.9となっている2つの粒子P4008,P4010と、強度が0.6となっている1つの粒子P6017とが存在している。このため、これら粒子の排出源強度を次のように積算することにより、この単位空間における物質の濃度を5.1と計算することができる。 (0.3×4)+(0.5×3)+(0.9×2)+(0.6×1)=5.1 【0070】前述した第1の実施の形態を一般的(数学的)に説明すると次のようになる。第1の実施の形態では、図8に示すように、排出源Sから物質(ガス体等)が排出されているときに、排出源Sの風下のある格子領域I,J,Kにおける物質濃度(ガス濃度)を、時間変化に応じて予測するものである。しかも、図9(a)に示すように物質の排出量Qが一定の場合において、図9(b)に示すように格子領域I,J,Kの濃度時間変化を予測演算することができることは勿論、図10(a)に示すように物質の排出量が時間変化する排出量q(t)であっても、図10(b)に示すように格子領域の濃度時間変化を予測演算することができるようにしたものである。 「【図8】 [図:0001435798000009.jpg] 【図9】 [図:0001435798000010.jpg] 【図10】 [図:0001435798000011.jpg] 」 「【0071】第1の実施の形態ではまず、排出源Sから実際に排出される物質の排出量が一定であっても、時間経過に沿い排出量が変化する場合であっても、まずは物質の排出量Q(m3/sec)を一定値(=1.0)として、従来のLagrangian粒子拡散モデルを使用して、物質を粒子に置換し、排出源Sから毎秒N個の粒子を発生させ、各粒子の挙動を数値計算して粒子の位置を示す空間座標(xi(t),yi(t),zi(t))を求める。更に、各粒子が有する情報である空間座標(xi(t),yi(t),zi(t))の他に、粒子を最初に発生させた時点からの経過時間である排出後経過時間Ti(t)を、各演算周期Δt毎に、データ記録装置に記録する。これにより、従来のLagrangian粒子拡散モデルを利用して、時間変化するあらゆる排出量q(t)に対応した濃度分布の時間変化を計測することができる。 【0072】そのためには、時間変化する物質の排出量q(t)に比例した、排出後経過時間Ti(t)の時間経過に沿う粒子に対する排出源強度を示すデータを設定する。そして、ある時刻(t)において、各粒子の位置を示す空間座標(xi(t),yi(t),zi(t))と排出後経過時間Ti(t)をデータ記憶装置から読み出す。 【0073】一定排出量(Q=1.0)の場合には、各粒子の排出源強度はQ/N(m3)=1/Nであるが、時間変化する排出量q(t)の場合には、各粒子の排出源強度はq(t-Ti)/N(m3)となる。 【0074】再度、各粒子が有する情報である空間座標(xi(t),yi(t),zi(t))の他に、排出後経過時間Ti(t)および各粒子の排出源強度qi(t-Ti)/N(m3)を、各時刻(t)毎に、データ記録装置に再記録させる。 【0075】Lagrangian粒子モデルと、排出後経過時間と、時間変化する排出量q(t)に対応させた排出源強度q(t-Ti)/N(m3)を利用した本実施例では、空間中の単位体積中(=空気1m3)の各粒子が有する排出源強度が異なるので、各粒子の排出源強度qi(t-Ti)/N(m3)を積算したΣqi(t-Ti)/N(m3)がこの単位体積中に存在するガス量となる。したがって、この空間中ガス濃度はΣqi(t-Ti)/N(m3)/N(ガスm3/空気m3)となる。」 (イ) 引用文献1に記載された事項から当業者が把握できる事項 a 認定事項1 引用文献1の第1の実施形態に係る拡散物質の拡散状況予測方法が何らかの装置により実施されることは、技術常識に照らして当業者に自明であるから、当業者は、引用文献1の記載から、拡散物質の拡散状況予測方法を実施する装置を把握することができる。 b 認定事項2 引用文献1の【0048】、【0050】及び【0052】には、各粒子の位置を、RAMS(Regional Atmospheric Modeling System)コードにより求めた20秒刻み毎の風速場データを用いて求めることが記載されているから、大気中に排出された物質の拡散状況を演算により予測する引用文献1の第1の実施の形態では、明記はないものの、【0004】、【0005】、【0007】~【0014】に記載される方法により物質の拡散状況の演算による予測を行っているものと認められる。 (ウ) 引用発明の認定 前記(イ)において認定した事項及び前記(ア)に摘記した引用文献1に記載された事項を総合すると、引用文献1には、第1の実施の形態に係る次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。なお、認定の根拠となる記載箇所を括弧内に示した。 <引用発明> 「拡散物質の拡散状況予測方法を実施する装置であって、(認定事項1) 拡散物質の拡散状況予測方法は、拡散源から大気中に排出された放射性物質が、大気中にどのように拡散していくかを予測して、各地点で時々刻々変化していく放射性物質の濃度を予測するようにしたものであり、(【0001】) 大気中に排出された物質の拡散状況を、演算により予測するには、次の2つの演算をする必要があり、 (1)気体状況予測演算 (2)拡散状況予測演算 (【0004】、認定事項2) 気体状況予測演算とは、気象GPV(Grid Point Value)データやAMEDAS等の気象観測データを基にして、大気現象を解析する偏微分方程式を演算することにより、事象発生(例えば放射性物質の外部排出)時点から所定時間先の時点まで、一定時間刻み毎の時点における、多数の評価地点(格子点位置)の風向・風速を演算により求める、つまり、一定時間刻み毎の風速場データを表す気体状況を求める演算をいい、(【0005】、認定事項2) 気体状況予測演算では、気象観測データ、例えば気象GPVデータは、気象業務支援センターから配信され、気象GPVデータは、地球の表面を南北方向に沿い伸びると共に東西方向の相互の離間距離が規定距離(2Km)となっている複数の緯度仮想線と、地球の表面を東西方向に沿い伸びると共に南北方向の相互の離間距離が規定距離(2Km)となっている複数の経度仮想線とが交差する地点(これを「親格子点位置」と称する)における、気象データ(風速ベクトル(風向,風速),気圧,温度,水分量)を示すものであり、(【0007】、認定事項2) 計算すべき計算領域(地球の表面のなかで予め設定した特定領域)に設定された親格子点位置の間に、子格子点位置を設定し、子格子点位置は、地球の表面を南北方向に沿い伸びると共に東西方向の相互の離間距離が一定距離(50m)となっている複数の緯度仮想線と、地球の表面を東西方向に沿い伸びると共に南北方向の相互の離間距離が一定距離(50m)となっている複数の経度仮想線とが交差する地点に配置されており、(【0010】、認定事項2) 演算開始から一定時間刻み毎(例えば20秒間隔毎)の子格子点位置及び親格子点位置の気象データを、大気現象を解析する偏微分方程式を差分解析演算することにより求め、大気現象を解析する偏微分方程式としては、RAMS(Regional Atmospheric Modeling System)コードで示されている、風速場解析の基本方程式を用いることができ、(【0011】、認定事項2) RAMS(Regional Atmospheric Modeling System)コードで示されている風速場解析の基本方程式を演算して、演算開始から一定時間刻み毎(例えば20秒間隔毎)の、各親格子点位置における気象データと、各子格子点位置における気象データを示す風向ベクトルデータ(風速場データ)が得られ、(【0014】、認定事項2) 拡散物質の拡散状況予測方法は、(【0044】) 第1ステップでは、排出源Sから実際に排出される物質の排出量が一定であっても、時間経過に沿い排出量が変化する場合であっても、まずは物質の排出量Q(m3/sec)を一定値(=1.0)として、従来のLagrangian粒子拡散モデルを使用して、粒子の挙動を数値計算し、更に、各粒子が有する情報である空間座標(xi(t),yi(t),zi(t))の他に、粒子を最初に発生させた時点からの経過時間である排出後経過時間Ti(t)を、各演算周期Δt毎に、データ記録装置1に記録し、(【0045】) 演算周期Δt(ここではΔt=20秒)毎に、20個の粒子を発生させると共に、演算周期Δt(20秒)毎に粒子Pの位置(空間座標)を演算し、(【0046】) 演算開始時点においては、排出源Sから20個の粒子P0001,P0002,P0003,P0004,P0005,P0006,P0007,P0008,P0009,P0010,P0011,P0012,P0013,P0014,P0015,P0016,P0017,P0018,P0019,P0020が発生し、(【0047】) 演算開始時点から20秒後においては、排出源Sから新たに20個の粒子P2001,P2002,P2003,P2004,P2005,P2006,P2007,P2008,P2009,P2010,P2011,P2012,P2013,P2014,P2015,P2016,P2017,P2018,P2019,P2020が発生し、演算開始時点にて発生した各粒子P0001~P0020の位置は、RAMS(Regional Atmospheric Modeling System)コードにより求めた20秒刻み毎の風速場データを用いて、Lagrangian粒子拡散モデルにおける各粒子P0001~P0020の拡散速度(u’,v’,w’)を計算し、各粒子を移動させることにより求め、(【0048】) 演算開始時点から40秒後においては、排出源Sから新たに20個の粒子P4001,P4002,P4003,P4004,P4005,P4006,P4007,P4008,P4009,P4010,P4011,P4012,P4013,P4014,P4015,P4016,P4017,P4018,P4019,P4020が発生し、演算開始時点にて発生した各粒子P0001~P0020,演算開始時点から20秒後において発生した各粒子P2001~P2020の位置は、RAMS(Regional Atmospheric Modeling System)コードにより求めた20秒刻み毎の風速場データを用いて、Lagrangian粒子拡散モデルにおける各粒子P0001~P0020,P2001~P2020の拡散速度(u’,v’,w’)を計算し、各粒子を移動させることにより求め、(【0050】) 演算開始時点から60秒後においては、排出源Sから新たに20個の粒子P6001,P6002,P6003,P6004,P6005,P6006,P6007,P6008,P6009,P6010,P6011,P6012,P6013,P6014,P6015,P6016,P6017,P6018,P6019,P6020が発生し、演算開始時点にて発生した各粒子P0001~P0020,演算開始時点から20秒後において発生した各粒子P2001~P2020,演算開始時点から40秒後において発生した各粒子P4001~P4020の位置は、RAMS(Regional Atmospheric Modeling System)コードにより求めた20秒刻み毎の風速場データを用いて、Lagrangian粒子拡散モデルにおける各粒子P0001~P0020,P2001~P2020,P4001~P4020の拡散速度(u’,v’,w’)を計算し、各粒子を移動させることにより求め、(【0052】) 演算周期Δt(20秒)毎に20個の粒子を次々と発生させていくと共に、各演算周期Δt(20秒)毎における粒子の位置つまり空間座標(xi(t),yi(t),zi(t))を求めていき、各演算周期Δtにおける排出後経過時間Ti(t)を計測しておき、各演算周期における各粒子の空間座標と各粒子の排出後経過時間を対応させて、データ記録装置1に次々と記録していき、(【0054】) 第2ステップの処理は、排出量が時間と共に変化する場合には、物質の排出量変化に応じた、排出後経過時間Ti(t)の時間経過に沿う粒子に対する排出源強度を示すデータを設定し、(【0055】) 次に、データ記録装置1に記録している、各演算周期毎の、各粒子の空間座標と各粒子の排出後経過時間Ti(t)を読み出すと共に、各粒子毎にその排出後経過時間Ti(t)を参照してその粒子が発生した時点を求め、この時点における各粒子の排出源強度を排出源強度データから求め、更に、各演算周期毎に、各粒子の空間座標と各粒子の排出後経過時間Ti(t)と排出源強度とを対応させて、データ記録装置1に再記録し、(【0057】) 第3ステップの処理は、例えば、排出後経過時間Ti(t)=120秒のときにおいて、排出源Sから所定距離離れた所定の格子領域(単位体積となっている単位空間)I,J,Kでの、物質の濃度を計算するには、データ記録装置1から、排出後経過時間Ti(t)=120秒における、この格子領域に存在する粒子を読み出し、これら各粒子が有している排出源強度を積算することにより、この単位空間における物質の濃度を計算し、(【0068】) つまり、格子領域には、強度が0.3となっている4つの粒子P0001,P0005,P0010,P0020と、強度が0.5となっている3つの粒子P2001,P2007,P2017と強度が0.9となっている2つの粒子P4008,P4010と、強度が0.6となっている1つの粒子P6017とが存在しており、このため、これら粒子の排出源強度を次のように積算することにより、この単位空間における物質の濃度を5.1と計算することができる、 (0.3×4)+(0.5×3)+(0.9×2)+(0.6×1)=5.1、(【0069】) 拡散物質の拡散状況予測方法を実施する装置」 イ 引用文献2、3に記載された事項並びに周知技術A及び技術常識Bの認定 (ア) 引用文献2に記載された事項 本審決において新たに引用する、本願の出願前に発行された文献である韓国登録特許第10-2037204号公報(以下「引用文献2」という。)には、次の記載がある。なお、原文では、段落番号と文章が同じ段に記載されているが、異なる段に記載した。また、括弧内に、当合議体が作成した翻訳を示し、以下の文献でも同様である。また、下線は当合議体が付したものであり、以下の文献でも同様である。 「[0042] [図:0001435798000012.jpg] ([0042] 大気情報処理部(10)は、大気拡散情報を利用して時間帯別指定空間の放射能濃度を検出するものであり、大気拡散モジュール(11)を含んで構成される。) [0044] [図:0001435798000013.jpg] ([0044] 大気拡散モジュール(11)は、CALMETモデル(診断3次元気象モデル)、CALPUFFモデル(空気品質分散モデル)及びCALPOSTモデル(後処理パッケージ)を含んで構成されるものであって、気象情報を処理するためのモデルとして、WRF(ペンシルベニア州/NCARメソスケール)モデル、NCEP(National Center for Environmental Prediction)モデル、WRF(weather research and forecasting)モデル及びRAMS(Regional Atmospheric Meteorological System)気象モデルのうち選択された一つ以上のモデルを利用して、時間帯別指定空間の放射能濃度を検出する機能を遂行する。) [0045] [図:0001435798000014.jpg] ([0045] このような大気拡散モジュール(11)に含まれるCALMETモデル、CALPUFFモデル及びCALPOST各プログラムには、グラフィック使用者インターフェース(GUI)が構成され得るものであり、上記構成以外にも、気象データ(地表面、上空大気、降水量及びブイデータ)及び地球物理学(土地利用及び地形)データを処理することができるプロセッサがさらに構成され得ることはもちろんである。(当合議体注:[0044]、[0047]等の記載からみて、「CAKPUFF」は「CALPUFF」の誤記であることが明らかであるから、誤記を正して翻訳した。)) [0047] [図:0001435798000015.jpg] ([0047] ここで、CALPUFFモデルは、浮力、パフ又は連続点及び地域汚染源の分散のみならず、浮力を有する連続線源の分散をシミュレーションするように設計されたモデルであり、このモデルには、汚染プルームの経路にある近接建物のダウンウォッシュ効果を処理するアルゴリズムが含まれている。) [0048] [図:0001435798000016.jpg] ([0048] このようなCALPUFFモデルは、排出されたパフの塊が空間的に生成された風場に従って移動及び拡散される際に、パフが及ぼす影響を累積して濃度を計算するモデルであり、CALPUFFモデルにおいて風場が占める比重は相当に大きいといえる。) [0049] [図:0001435798000017.jpg] ([0049] すなわち、CALPUFFは、パフの移動において時間及び空間に従った風場の変化を考慮することができるため、一般的な正常状態モデルよりも時間に従った風向及び風速の変化を拡散に反映することができ、また、大韓民国国家の場合は海に囲まれている典型的な海陸風の影響を受ける地形であるので、海岸付近での閉鎖的な局地循環により大気拡散が困難であるため発生し得る大気汚染物質の蓄積現象を、より正確に模写することができる利点がある。このような利点のために、米国EPAでは、CALPUFFモデリングシステムを、非正常状態の効果(気象場の空間変化や無風(calm winds)、煙の沈降(Fumigation)、再循環(recirculation)及び停滞現象(stagnation)、地形又は海岸効果)が大きく現れ得る場所に対する事例研究を行うに当たり、規制用基本モデルとして提案している。)」 「[0055] [図:0001435798000018.jpg] ([0055] 上記表1で示されているように、CALPUFFモデルは、他のモデルに比べて複雑な地形において山谷風、海岸付近の海陸風循環などの急激な風場変化を示す地域に有用に適用することが可能であり、時間及び空間に対する制約が低く、建物を含む複雑な地形においても模写が可能であるため、山岳地帯が多い大韓民国国家の環境に有利な利点がある。)」 (イ) 引用文献3に記載された事項 本審決において新たに引用する、本願の出願前に発行された文献である、Geun-Sik Choi, et.al,”Characteristics of regional scale atmospheric dispersion around Ki-Jang research reactor using the Lagrangian Gaussian puff dispersion model”, Nuclear Engineering and Technology,2018,Vol.50,p68~79(以下「引用文献3」という。)には、次の記載がある。 「1. Introduction (1.イントロダクション) …(中略)… The CALPUFF model is a regulatory model defined by the United States Environmental Protection Agency (US EPA) that can be used to model complex wind regimes at local scale, as well as for modeling the regional transport of various pollutants [11]. Based on a tracer study, Rood (2014) pointed out that Lagrangian puff models such as CALPUFF may be preferably used for dose reconstruction for a large model domain [12]. The CALPUFF system can also be successfully used to evaluate dispersion characteristics for both realtime emergency response plans and long-term simulations. CALPUFF can be used with three-dimensional gridded meteorological fields to simulate mesoscale transport, dryewet deposition, simple trajectories, and the decay of radioactive materials released from various types of time-integrated source terms (e.g., point, volume, area, and line). It has been used to estimate the dispersion of radioactive materials in several studies [13-15]. (CALPUFFモデルは、複雑な風況を局地規模でモデル化するため、並びに各種汚染物質の広域輸送をモデル化するために使用することができる、米国環境保護庁(US EPA)によって定義された規制モデルである[11]。トレーサー試験に基づき、Rood(2014)は、CALPUFFのようなラグランジアンパフモデルは、大規模なモデル領域における線量再構築のために好ましく使用され得ると指摘した[12]。CALPUFFシステムはまた、実時間の緊急対応計画及び長期シミュレーションの双方において、拡散特性を評価するために有効に使用することができる。CALPUFFは、三次元格子気象場を用いて、中規模輸送、乾性/湿性沈着、単純な軌跡、並びに各種時間積分型発生源項(例えば、点、体積、面及び線)から放出される放射性物質の減衰をシミュレートすることができる。また、複数の研究において、放射性物質の拡散を推定するために使用されている[13-15]。)」 「2.4. CALPUFF model simulation The CALPUFF modeling system is a multilayer, multispecies nonesteady state Lagrangian Gaussian puff dispersion model that simulates the three-dimensional spatial and temporal transport, transformation, and deposition of a species [21]. The modeling system is currently the US EPA's preferred long-range dispersion model and is composed of three main modules: CALMET, CALPUFF, and CALPOST. CALMET, the meteorological module, generates geophysical data and a three-dimensional hourly gridded wind field and meteorological data. CALPUFF is the main module for simulating complex terrain effects, overwater transport, coastal interaction effects, building downwash, wet and dry removal, simple chemical transformation, and the decay of radionuclides. CALPOST is a postprocessing module that display the CALPUFF output in graphical form [11]. (2.4 CALPUFFモデルシミュレーション CALPUFFモデリングシステムは、多層・多種の非定常状態ラグランジアン・ガウシアンパフ拡散モデルであり、種(species)の三次元空間的及び時間的な輸送、変換及び沈着をシミュレートする[21]。本モデリングシステムは現在、米国EPAが推奨する長距離拡散モデルであり、CALMET、CALPUFF及びCALPOSTという三つの主要モジュールで構成されている。気象モジュールであるCALMETは、地球物理データ及び三次元の1時間ごとの格子風場と気象データを生成する。CALPUFFは、複雑地形効果、水域上の輸送、海岸相互作用効果、建物ダウンウォッシュ、湿性及び乾性除去、簡易化学変換並びに放射性核種の減衰をシミュレートするための主要モジュールである。CALPOSTは、CALPUFFの出力を図形形式で表示する後処理モジュールである[11]。)」 (ウ) 周知技術A及び技術常識Bの認定 前記(ア)に示した引用文献2の摘記事項及び前記(イ)に示した引用文献3の摘記事項に例示されているように、次の技術事項は、本願の出願前に当業者にとって周知技術(以下「周知技術A」という。)及び技術常識(以下「技術常識B」という。)であったと認められる。 <周知技術A> 「排出されたパフの塊が空間的に生成された風場に従って移動及び拡散される際に、パフが及ぼす影響を累積して濃度を計算するモデルであるCALPUFFモデルにより、放射性物質の拡散を推定すること。」 <技術常識B> 「CALPUFFモデルが地形の影響を考慮したモデルであること。」 ウ 引用文献4、5に記載された事項及び周知技術Cの認定 (ア) 引用文献4に記載された事項 本審決において新たに引用する、本願の出願前に発行された文献である特開2003-215246号公報(以下「引用文献4」という。)には、次の記載がある。 「【0043】 拡散状態解析部8は、ソースターム判定部6から出力されたソースターム情報と、気流分布解析部7によって解析されたこの原子力施設周辺の3次元気流分布とに基づいて、起因事象同定部3によって同定された起因事象において放出される放射能の、原子力施設周辺における3次元大気拡散状態を解析し、解析結果を線量分布計算部9に出力する。このような3次元大気拡散状態の解析には、公開された計算コードである例えばHYPACT(Hybrid Particle and Concentration Transport Model)を用いて行うことができる。このHYPACTは、粒子群の重力による沈降(乾式沈着)、降雨による沈降(湿式沈着)、放射能の減衰、熱・運動エネルギーによる排気上昇をリアルタイムに計算し、空間濃度分布を求める。 【0044】 線量分布計算部9は、拡散状態解析部8によって解析された放射能の3次元大気拡散状態の解析結果である粒子の位置情報に基づいて、この粒子状の放射能から放出される放射線の線量分布を計算し、計算結果を被ばく量予測評価部10に出力する。」 (イ) 引用文献5に記載された事項 本審決において新たに引用する、本願の出願前に発行された文献である特許第4334374号公報(以下「引用文献5」という。)には、次の記載がある。 「【0002】 一般に、クラウドシャイン被ばく線量評価方法においては、大気中に分布するすべての放射性物質から、被ばく線量を評価しようとする位置への被ばく線量の寄与をすべて足し合わせ計算を行なっている。 【0003】 このようなクラウドシャイン被ばく線量評価方法の例としてSPEEDI(非特許文献1参照)がある。 【0004】 大気中に拡散分布した放射性核種(あるいは放射性物質)iによる地表面位置座標(x0,y0,z0)におけるクラウドシャイン被ばく線量Di(x0,y0,z0)は、放射性核種iの空間濃度分布χi(x,y,z)から評価することができる。 【数1】 [図:0001435798000019.jpg] 【0005】 ここで、 Di(x0,y0,z0): 核種iの評価点(x0,y0,z0)における被ばく線量[mS/hr] K0: 放射能から被ばく線量への換算係数 [(dis・m3・mS)/(MeV・Bq・hr)] Ei: 核種iのγ線エネルギー[MeV] μai: 核種iの吸収係数[m-1] 吸収係数は、核種iから放出されるγ線エネルギーEiに依存する。 【0006】 r: 被ばく線量評価点(x0,y0,z0)と着目点(x,y,z)間の距離[m] μi: 核種iの減衰係数[m-1] Bi(Ei,r): 核種iのビルドアップ係数[-] 核種iのビルドアップ係数Bi(Ei,r)は、核種iから放出されるγ線エネルギーに依存する減衰係数μiと距離rに依存する。 【0007】 ただし、式(1)のr,θ,φについての3重積分は、被ばく線量評価点(x0,y0,z0)を原点として全空間に張り出した極座標系での全空間積分であり、実際の評価においては離散化した空間メッシュ点で数値積分することになる。」 (ウ) 周知技術Cの認定 前記(ア)に示した引用文献4の摘記事項及び前記(イ)に示した引用文献5の摘記事項に例示されているように、次の技術事項は、本願の出願前に当業者にとって周知技術(以下「周知技術C」という。)であったと認められる。 <周知技術C> 「大気中に拡散した放射性核種の位置情報や空間濃度分布に基づいて、放射性核種による線量分布を計算すること。」 (3) 本件補正発明と引用発明の対比 ア 対比分析 本件補正発明と引用発明を対比する。 (ア) 構成Xの観点 a 構成Xは、「放射性物質の拡散状況予測装置」の発明であることを特定するものである。 b 引用発明は、「拡散物質の拡散状況予測方法は、拡散源から大気中に排出された放射性物質が、大気中にどのように拡散していくかを予測して、各地点で時々刻々変化していく放射性物質の濃度を予測するようにしたものであ[る]」から、引用発明の「拡散物質」及び「物質」は、いずれも「放射性物質」であると理解され、これらはいずれも、本件補正発明の「放射性物質」に相当する。 c 前記bも踏まえると、引用発明の「放射性物質」である「拡散物質」の「拡散状況予測方法を実施する装置」は、本件補正発明の「放射性物質の拡散状況予測装置」に相当する。 d したがって、本件補正発明と引用発明は、「放射性物質の拡散状況予測装置」の発明である点で一致する。 (イ) 構成A1、A2の観点(データベース生成部) a 構成A1、A2は、「気象データに基づいて放出源からの放射性物質の単位放出量と気流データに基づいて気流解析処理と拡散計算処理と濃度計算処理を行うことで、計算メッシュ内の気流を作成し、所定の気流に則った地形影響を考慮したパフの移流・拡散を模擬し、放射性物質の単位放出量当たりの拡散分布を表すデータベースを生成するデータベース生成部」を備え、「前記データベース生成部は、前記放出源から規定放出時間にわたって放射性物質が放出されたとき、前記放出源からの放射性物質の放出時から予め設定された所定の経過時間ごとの放射性物質の拡散分布の変化を表す拡散分布変動マップを生成すると共に、前記放出源からの放射性物質の放出時期を予め設定された所定の放出遅延時間だけずらした複数の放出時期変動マップを生成[する]」ことである。 b 引用発明の「気象GPVデータ」は、本件補正発明の「気象データ」に相当する。 c 引用発明の「排出源S」及び「拡散源」は、本件補正発明の「放出源」に相当する。 d 本願明細書の【0018】に「ここで、単位放出量とは、例えば、1ベクレル(Bq)当たりの放射性物質の放出量である。」(下線は合議体が付した。)と記載されてることを参酌すると、構成A1における「単位放出量」とは、「1ベクレル(Bq)当たりの放射性物質の放出量」に限らず、放射性物質の所定の単位となる放出量であれば足りると解するのが相当である。 そして、引用発明は、「排出源Sから実際に排出される物質の排出量が一定であっても、時間経過に沿い排出量が変化する場合であっても、まずは物質の排出量Q(m3/sec)を一定値(=1.0)と[する]」ものであるところ、引用発明の「物質の排出量Q(m3/sec)」の「一定値(=1.0)」は、物質の所定の単位となる放出量であるといえるから、本件補正発明の「単位放出量」に相当するとともに、前記(ア)bでの説示も踏まえると、本件補正発明でいう「放射性物質の」ものであるといえる。 e 引用発明における「各演算周期Δt(20秒)毎における粒子の位置つまり空間座標(xi(t),yi(t),zi(t))」は、「RAMS(Regional Atmospheric ModelingSystem)コードにより求めた20秒刻み毎の風速場データを用いて、Lagrangian粒子拡散モデルにおける各粒子の拡散速度(u’,v’,w’)を計算し、各粒子を移動させることにより求め[る]」ものであるから、本件補正発明の「拡散分布」に相当する。また、引用発明の「空間座標(xi(t),yi(t),zi(t))」は、「排出源Sから実際に排出される物質の排出量が一定であっても、時間経過に沿い排出量が変化する場合であっても、まずは物質の排出量Q(m3/sec)を一定値(=1.0)として、従来のLagrangian粒子拡散モデルを使用して、粒子の挙動を数値計算[する]」ことにより求められることが理解されるから、前記dでの検討も踏まえると、本件補正発明でいう「放射性物質の単位放出量当たりの」ものであるといえる。 f 引用発明において、「各粒子が有する情報である空間座標(xi(t),yi(t),zi(t))の他に、粒子を最初に発生させた時点からの経過時間である排出後経過時間Ti(t)を、各演算周期Δt毎に、データ記録装置1に記録[する]」ことは、各粒子の空間座標と排出後経過時間を各演算周期Δt毎に記録したデータベースを生成しているといえるから、引用発明の「拡散物質の拡散状況予測方法を実施する装置」が、本件補正発明の「データベース生成部」に相当する構成を備えることは明らかであるとともに、前記eでの検討も踏まえれば、本件補正発明にいう「放射性物質の単位放出量当たりの拡散分布を表すデータベースを生成する」ものであるといえる。 g 引用発明は、「各粒子の位置は、RAMS(Regional Atmospheric Modeling System)コードにより求めた20秒刻み毎の風速場データを用いて、Lagrangian粒子拡散モデルにおける各粒子の拡散速度(u’,v’,w’)を計算し、各粒子を移動させることにより求め[る]」ものであるところ、RAMS(Regional Atmospheric Modeling System)コードにより求めた20秒間隔毎の風速場データを求める気体状況予測演算は、「気象GPVデータ(Grid Point Value)やAMEDAS等の気象観測データに基にして」演算されるから、引用発明における「各粒子が有する情報である空間座標(xi(t),yi(t),zi(t))の他に、粒子を最初に発生させた時点からの経過時間である排出後経過時間Ti(t)を、各演算周期Δt毎に、データ記録装置1に記録[する]」ことは、本件補正発明でいう「気象データに基づいて」されるものである。 h 引用発明の「気象GPVデータ」の「親格子地点における、気象データ」は、「風速ベクトル(風向,風速)」を含むから、本件補正発明の「気流データ」に相当する。 i 引用発明の「親格子点位置」及び「子格子点位置」は、共に、本件補正発明の「計算メッシュ」に相当する。 そして、引用発明の「RAMS(Regional Atmospheric Modeling System)コードで示されている風速場解析の基本方程式を演算して、演算開始から一定時間刻み毎(例えば20秒間隔毎)の、各親格子点位置における気象データと、各子格子点位置における気象データを示す風向ベクトルデータ(風速場データ)」を得る「気体状況予測演算」は、「気象GPVデータ(Grid Point Value)やAMEDAS等の気象観測データに基にして」演算されるから、本件補正発明にいう「気流データに基づいて気流解析処理」を行うものであるといえるとともに、本件補正発明にいう「計算メッシュ内の気流を作成[する]」ものであるともいえる。 j 引用発明の「物質の排出量Q(m3/sec)を一定値(=1.0)として、従来のLagrangian粒子拡散モデルを使用して、粒子の挙動を数値計算[する]」ことは、本件補正発明にいう「放射性物質の単位放出量」「に基づいて」「拡散計算処理」「を行う」ことに相当する。 k 引用発明における「単位空間における物質の濃度を計算[する]」ことは、本件補正発明の「濃度計算処理を行う」ことに相当する。 l 本件補正発明における「所定の気流に則った地形影響を考慮したパフの移流・拡散を模擬」することと、引用発明における「従来のLagrangian粒子拡散モデルを使用して、粒子の挙動を数値計算」することは、「所定の気流に則った、」エレメントの「移流・拡散を模擬する」点で共通する。 一方、所定の気流に則った、エレメントの移流・拡散を模擬する際に、本件補正発明は、エレメントが「パフ」であり、「地形影響を考慮した」ものであるのに対して、引用発明は、エレメントが「粒子」であり、地形影響を考慮したものでない。 m(a) 引用発明は、「演算周期Δt(20秒)毎に20個の粒子を次々と発生させていくと共に、各演算周期Δt(20秒)毎における粒子の位置つまり空間座標(xi(t),yi(t),zi(t))を求めてい[く]」ものであり、「演算周期Δt(20秒)」のある特定の時点に、「20個の粒子を」「発生させ」、その粒子について「各演算周期Δt(20秒)毎における粒子の位置つまり空間座標(xi(t),yi(t),zi(t))を求め[る]」ものである。 これについて、 (i)引用発明の当該「20個の粒子を次々と発生させていく」「演算周期Δt(20秒)毎」における「20秒」は本件補正発明の「規定放出時間」に相当するとともに、引用発明において当該「20個の粒子を」「発生させ[た]」ときは、本件補正発明にいう「前記放出源から規定時間にわたって放射性物質が放出されたとき」であるといえる。 (ii)引用発明の当該「20個の粒子を」「発生させ」たある特定の「演算周期Δt(20秒)毎」の時点は、本件補正発明の「前記放出源からの放射性物質の放出時」に相当する。 (iii)引用発明の「各演算周期Δt(20秒)」における「20秒」は、本件補正発明の「予め設定された所定の経過時間」に相当する。 (iv)引用発明の「粒子の位置つまり空間座標(xi(t),yi(t),zi(t))」は、本件補正発明の「放射性物質の拡散分布」に相当するとともに、引用発明における「各演算周期Δt(20秒)毎における粒子の位置つまり空間座標(xi(t),yi(t),zi(t))を求め[る]」ことは、すなわち、「各演算周期Δt(20秒)毎」の「粒子の位置つまり空間座標(xi(t),yi(t),zi(t))」の変化を求めることにほかならないから、「放射性物質の拡散分布の変化を表す」ものであるともいえる。そうすると、引用発明の「各演算周期Δt(20秒)毎における粒子の位置つまり空間座標(xi(t),yi(t),zi(t))」は、本件補正発明の「拡散分布変動マップ」に相当する。 以上(i)~(iv)をまとめると、引用発明において「各演算周期Δt(20秒)毎における粒子の位置つまり空間座標(xi(t),yi(t),zi(t))を求め[る]」ことは、本件補正発明にいう「前記放出源から規定時間にわたって放射性物質が放出されたとき、前記放出源からの放射性物質の放出時から予め設定された所定の経過時間ごとの放射性物質の拡散分布の変化を表す拡散分布変動マップを生成する」ことであるといえる。 (b) 引用発明は、前記(a)(ii)で説示した、当該「20個の粒子を」「発生させ」たある特定の「演算周期Δt(20秒)毎」の時点の後にも、「演算周期Δt(20秒)毎に20個の粒子を次々と発生させていくと共に、各演算周期Δt(20秒)毎における粒子の位置つまり空間座標(xi(t),yi(t),zi(t))を求めてい[く]」ものであるところ、この際のある特定の「演算周期Δt(20秒)毎」の時点と、その後の「20個の粒子を次々と発生させていく」各々の「演算周期Δt(20秒)毎」の時点との時間差である20秒は、本件補正発明にいう「予め設定された放出遅延時間」である。そして、引用発明の「各演算周期Δt(20秒)毎における粒子の位置つまり空間座標(xi(t),yi(t),zi(t))」は、本件補正発明の「放出時期変動マップ」にも相当し、引用発明において「演算周期Δt(20秒)毎に20個の粒子を次々と発生させていくと共に、各演算周期Δt(20秒)毎における粒子の位置つまり空間座標(xi(t),yi(t),zi(t))を求め[る]」ことは、本件補正発明にいう「前記放出源からの放射性物質の放出時期を予め設定された所定の放出遅延時間だけずらした複数の放出時期変動マップを生成[する]」ことであるといえる。 (c) 前記(a)及び(b)を総合すると、引用発明における「拡散物質の拡散状況予測方法を実施する装置」が「演算周期Δt(20秒)毎に20個の粒子を次々と発生させていくと共に、各演算周期Δt(20秒)毎における粒子の位置つまり空間座標(xi(t),yi(t),zi(t))を求めてい[く]」ことは、本件補正発明にいう「前記データベース生成部は、前記放出源から規定放出時間にわたって放射性物質が放出されたとき、前記放出源からの放射性物質の放出時から予め設定された所定の経過時間ごとの放射性物質の拡散分布の変化を表す拡散分布変動マップを生成すると共に、前記放出源からの放射性物質の放出時期を予め設定された所定の放出遅延時間だけずらした複数の放出時期変動マップを生成[する]」ことに相当するといえる。 n 以上の検討結果を踏まえると、本件補正発明と引用発明は、構成A1、A2の観点において次の(a)の点において一致し、後記(b)の点において相違する。 (a) 構成A1、A2の観点での一致点 「気象データに基づいて放出源からの放射性物質の単位放出量と気流データに基づいて気流解析処理と拡散計算処理と濃度計算処理を行うことで、計算メッシュ内の気流を作成し、所定の気流に則ったエレメントの移流・拡散を模擬し、放射性物質の単位放出量当たりの拡散分布を表すデータベースを生成するデータベース生成部」を備え、 「前記データベース生成部は、前記放出源から規定放出時間にわたって放射性物質が放出されたとき、前記放出源からの放射性物質の放出時から予め設定された所定の経過時間ごとの放射性物質の拡散分布の変化を表す拡散分布変動マップを生成すると共に、前記放出源からの放射性物質の放出時期を予め設定された所定の放出遅延時間だけずらした複数の放出時期変動マップを生成[する]」点。 (b) 構成A1、A2の観点での相違点 「所定の気流に則った移流・拡散を模擬するエレメント」が、 本件補正発明においては、 「パフ」であり、「地形影響を考慮した」ものであるのに対して、 引用発明においては、 「粒子」であり、地形影響を考慮したものか不明である点。 (ウ) 構成B1、B2の観点(拡散分布補正部) a 構成B1、B2は、「前記データベース生成部により生成された拡散分布を放射性物質の放出シナリオに応じて補正する拡散分布補正部」を備え、「前記拡散分布補正部は、前記拡散分布変動マップと前記放出時期変動マップを用いて、放射性物質の放出時期から所定の経過時間を経過した評価時刻における前記評価位置での放射性物質の濃度を、放射性物質の異なる複数の放出時期における前記評価時刻での放射性物質の複数の濃度を加算して算出する」ことである。 b 前記(イ)fの認定を踏まえると、引用発明の「データ記録装置1に記録している、各演算周期毎の、各粒子の空間座標」は、本件補正発明の「前記データベース生成部により生成された拡散分布」に相当する。 c 引用発明の「排出量が時間と共に変化する場合」の「物質の排出量変化に応じた、排出後経過時間Ti(t)の時間経過に沿う粒子に対する排出源強度を示すデータ」は、排出源Sにおける物質の排出時期と排出量の情報を含むから、本件補正発明の「放射性物質の放出シナリオ」に相当する。 そして、引用発明において、「データ記録装置1に記録している、各演算周期毎の、各粒子の空間座標と各粒子の排出後経過時間Ti(t)を読み出すと共に、各粒子毎にその排出後経過時間Ti(t)を参照してその粒子が発生した時点を求め、この時点における各粒子の排出源強度を排出源強度データから求め、更に、各演算周期毎に、各粒子の空間座標と各粒子の排出後経過時間Ti(t)と排出源強度とを対応させて、データ記憶装置1に再記録」し、「単位空間における物質の濃度を計算する」際に「この格子領域に存在する粒子を読み出し、これら各粒子が有している排出源強度を積算する」ことは、引用発明の「各粒子が有している排出源強度」を「物質の排出量変化に応じた、排出後経過時間Ti(t)の時間経過に沿う粒子に対する排出源強度を示すデータ」により補正しているといえ、これは本件補正発明にいう「前記データベース生成部により生成された拡散分布を放射性物質の放出シナリオに応じて補正する」ものであるといえるとともに、引用発明は、本件補正発明でいう「拡散分布補正部」「を備え[る]」ものであるといえる。 e 引用発明の「排出後経過時間Ti(t)=120秒」は、本件補正発明の「放射性物質の放出時期から所定の経過時間を経過した評価時刻」に相当する。 f 引用発明の「排出源Sから所定距離離れた所定の格子領域(単位体積となっている単位空間)I,J,K」は、「この単位空間における物質の濃度を計算[する]」ことを踏まえると、本件補正発明の「評価位置」に相当する。 g 引用発明の「排出後経過時間Ti(t)=120秒」における「単位空間における物質の濃度」は、本件補正発明の「放射性物質の濃度」に相当するとともに、前記e及びfも踏まえると、本件補正発明にいう「放射性物質の放出時期から所定の経過時間を経過した評価時刻における前記評価位置での」ものであるといえる。 h 引用発明における「(0.3×4)」、「(0.5×3)」、「(0.9×2)」「(0.6×1)」は、各々、排出後経過時間Ti(t)=120秒において、単位空間における「強度が0.3となっている4つの粒子P0001,P0005,P0010,P0020」、「強度が0.5となっている3つの粒子P2001,P2007,P2017」及び「強度が0.9となっている2つの粒子P4008,P4010」及び「強度が0.6となっている1つの粒子P6017」による各粒子の排出源強度であるから、これらの排出源強度は、本件補正発明における「放射性物質の異なる複数の放出時期における前記評価時刻での放射性物質の複数の濃度」に相当する。 i 前記e~hを踏まえると、引用発明における「強度が0.3となっている4つの粒子P0001,P0005,P0010,P0020と、強度が0.5となっている3つの粒子P2001,P2007,P2017と強度が0.9となっている2つの粒子P4008,P4010と、強度が0.6となっている1つの粒子P6017とが存在しており、このため、これら粒子のの排出源強度を次のように積算することにより、この単位空間における物質の濃度を5.1と計算すること」「(0.3×4)+(0.5×3)+(0.9×2)+(0.6×1)=5.1」は、本件補正発明にいう「放射性物質の放出時期から所定の経過時間を経過した評価時刻における前記評価位置での放射性物質の濃度を、放射性物質の異なる複数の放出時期における前記評価時刻での放射性物質の複数の濃度を加算して算出する」ものであるといえる。 j 前記(イ)mで説示したとおり、引用発明の「データ記録装置1から、」「読み出」される「各演算周期毎の、各粒子の空間座標」は、本件補正発明における「拡散分布変動マップ」及び「放出時期変動マップ」であるから、引用発明における前記iの「この単位空間における物質の濃度を5.1と計算すること」は、本件補正発明でいう「前記拡散分布変動マップと前記放出時期変動マップを用いて、」放射性物質の濃度を算出するものであるといえる。 k 以上を総合すると、本件補正発明と引用発明は、構成B1、B2の観点において次の点において一致する。 「前記データベース生成部により生成された拡散分布を放射性物質の放出シナリオに応じて補正する拡散分布補正部」を備え、「前記拡散分布補正部は、前記拡散分布変動マップと前記放出時期変動マップを用いて、放射性物質の放出時期から所定の経過時間を経過した評価時刻における前記評価位置での放射性物質の濃度を、放射性物質の異なる複数の放出時期における前記評価時刻での放射性物質の複数の濃度を加算して算出する」点。 (エ) 構成Cの観点(線量算出部) a 構成Cは、「前記拡散分布補正部により補正された補正拡散分布に基づいて評価位置における線量を算出する線量算出部」を備えることである。 b 引用発明は、当該線量算出部を備えていない。 したがって、本件補正発明と引用発明は、構成Cの観点において次の点において相違する。 構成Cの観点での相違点 本件補正発明においては、 「前記拡散分布補正部により補正された補正拡散分布に基づいて評価位置における線量を算出する線量算出部」を備えるのに対して、 引用発明においては、 当該線量算出部を備えていない点。 イ 一致点及び相違点 前記アの対比分析の結果をまとめると、本件補正発明と引用発明は、次の(ア)に示す一致点において一致し、後記(イ)に示す相違点において相違すると認められる。 (ア) 一致点 「気象データに基づいて放出源からの放射性物質の単位放出量と気流データに基づいて気流解析処理と拡散計算処理と濃度計算処理を行うことで、計算メッシュ内の気流を作成し、所定の気流に則ったエレメントの移流・拡散を模擬し、放射性物質の単位放出量当たりの拡散分布を表すデータベースを生成するデータベース生成部と、 前記データベース生成部により生成された拡散分布を放射性物質の放出シナリオに応じて補正する拡散分布補正部と、 を備え、 前記データベース生成部は、前記放出源から規定放出時間にわたって放射性物質が放出されたとき、前記放出源からの放射性物質の放出時から予め設定された所定の経過時間ごとの放射性物質の拡散分布の変化を表す拡散分布変動マップを生成すると共に、前記放出源からの放射性物質の放出時期を予め設定された所定の放出遅延時間だけずらした複数の放出時期変動マップを生成し、 前記拡散分布補正部は、前記拡散分布変動マップと前記放出時期変動マップを用いて、放射性物質の放出時期から所定の経過時間を経過した評価時刻における前記評価位置での放射性物質の濃度を、放射性物質の異なる複数の放出時期における前記評価時刻での放射性物質の複数の濃度を加算して算出する、 放射性物質の拡散状況予測装置」 である点。 (イ) 相違点 a 相違点1(構成A1の観点) 「所定の気流に則った移流・拡散を模擬するエレメント」が、 本件補正発明においては、 「パフ」であり、「地形影響を考慮した」ものであるのに対して、 引用発明においては、 「粒子」であり、地形影響を考慮したものか不明である点。 b 相違点2(構成Cの観点) 本件補正発明においては、 「前記拡散分布補正部により補正された補正拡散分布に基づいて評価位置における線量を算出する線量算出部」を備えるのに対して、 引用発明においては、 当該線量算出部を備えていない点。 (4) 判断 ア 相違点1について 引用発明において、従来のLagrangian粒子拡散モデルを使用して「粒子」の挙動を数値計算することに替えて、前記(2)イ(ウ)で周知技術Aとして示したCALPUFFモデルにより「パフ」の移動及び拡散によりパフが及ぼす影響を累積して濃度を計算するようにすることは、当業者であれば適宜なし得る設計変更にすぎない。そして、CALPUFFモデルが地形の影響を考慮したモデルであることは技術常識(前記(2)イ(ウ)の技術常識B)である点も踏まえると、引用発明において技術常識Bを参照しつつ周知技術Aを適用することにより、相違点1に係る本件補正発明の構成とすることは、当業者であれば容易に想到し得ることである。 イ 相違点2について 大気中に拡散した放射性核種の位置情報や空間濃度分布に基づいて、放射性核種による線量分布を計算することは周知技術(前記(2)ウで認定した周知技術C)である。そして、放射性物質が外部に排出された場合、その被害を推定するためには、単に放射性物質の濃度を予測するのみでは足りず、線量分布を求める必要があることは、当業者であれば当然に認識することであり、そのようなことも踏まえて引用発明において周知技術Cを適用することは、当業者であれば適宜なし得たことである。 このとき、計算される線量分布を、「データ記録装置1から、排出後経過時間Ti(t)=120秒における、この格子領域に存在する粒子を読み出し、これら各粒子が有している排出源強度を積算することにより」「計算」された「単位空間における物質の濃度」に基づいて、「単位空間」、すなわち、相違点2に係る本件補正発明でいう「評価位置」(前記(3)ア(ウ)f参照)における線量を計算することにより得ることは、ごく自然なことであり、当該「単位空間における物質の濃度」は、前記(3)ア(ウ)cでの検討も踏まえると、相違点2に係る本件補正発明の「前記拡散分布補正部により補正された補正拡散分布」に相当する。 したがって、引用発明に周知技術Cを適用することにより、相違点2に係る本件補正発明の構成とすることは、当業者であれば適宜なし得たことである。 ウ 総合評価 前記ア及び前記イにおいて検討したとおり、引用発明において、前記相違点1及び相違点2に係る本件補正発明の構成を備えるようにすることは、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に想到し得たことである。 そして、本件補正発明が奏する効果としては、当該構成のものとして当業者が予測・発見困難であり、かつ、格別顕著な効果を認めることはできない。 したがって、本件補正発明は、引用発明、技術常識及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 エ 請求人の主張について (ア) 請求人の主張の内容 a 構成について 放射性物質の拡散をパフで扱い、空間メッシュに濃度情報を持たせる本件補正発明と、粒子モデルであり、粒子に位置情報を持たせる引用発明は、処理方法が相違する。 b 効果について 本件補正発明は、パフモデルであるために濃度分布は連続しており、遠方できわめて濃度が低下したエリアにおいても大きくばらつくことなく評価することができるのに対して、引用発明は、遠方では粒子がまばらに分布することから、濃度のばらつきが大きくなる。 大量に放出された放射性物質が遠方に拡散する場合、本件補正発明では、排出量の大小による濃度分布のばらつきがなく、さらに空間メッシュに濃度情報を持たせているため、放出量を増加させても情報量は増加しない。一方、引用発明では、計算に用いる排出量Qを大きくすることでばらつきを抑制することができるが、排出量Qを増加させることは、計算負荷の増加に直結し、さらに解析結果の容量が大きくなってしまう。 (イ) 請求人の主張についての検討 a 構成について 前記アで説示したとおり、引用発明において、Lagrangian粒子拡散モデルを使用して「粒子」の挙動を数値計算することに替えて、周知技術Aとして示したCALPUFFモデルにより「パフ」の移動及び拡散によりパフが及ぼす影響を累積して濃度を計算するようにすることは、当業者であれば適宜なし得ることである。 b 効果について 本願の明細書には、所定の気流に則った移流・拡散を模擬するエレメントを「パフ」とすることによる有利な効果は何ら記載されておらず、請求人が主張する効果は明細書に記載されたものでないが、当該効果は周知技術AのようなCALPUFFモデルにより「パフ」の移動及び拡散によりパフが及ぼす影響を累積して濃度を計算することの一般的な効果としてよく知られたものにすぎない (ウ) 小括 したがって、請求人の主張は採用することができない。 オ 独立特許要件の判断のまとめ 以上検討のとおり、本件補正発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 したがって、本件補正により請求項1についてする補正は、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反している。 4 本件補正の却下の決定の理由のむすび 前記3(4)オのとおり、本件補正は、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反しているから、同法159条1項において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。 よって、前記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。 第3 本願発明について 1 本願発明について 本件補正は、前記第2のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1(前記第2の1(1)参照)に記載された事項により特定されるとおりのものである。 2 原査定における拒絶の理由の概要 原査定の本願発明に対する拒絶の理由である理由2(進歩性の欠如)の概要は、次のとおりである。 理由2(進歩性の欠如) 本願発明は、その出願前に発行された下記の引用文献1に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。 記 引用文献1.特開2003-196574号公報(主たる引用文献) 3 各引用文献に記載された事項等及び引用発明等の認定 各引用文献に記載された事項及び引用発明等の認定は、前記第2の3(2)において示したとおりである。 4 対比・判断 本願発明は、前記第2の2において検討したとおり、本件補正発明から、「気象データに基づいて放出源からの放射性物質の単位放出量当たりの拡散分布を表すデータベースを生成するデータベース生成部」についての「放射性物質の単位放出量と気流データに基づいて気流解析処理と拡散計算処理と濃度計算処理を行うことで、計算メッシュ内の気流を作成し、所定の気流に則った地形影響を考慮したパフの移流・拡散を模擬[する]」との限定を省いたものである。 そうすると、本願発明の構成を全て含み、その構成の一部を限定したものに相当する本件補正発明が、前記第2の3(4)において説示したとおり、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 第4 むすび 以上検討のとおり、本願発明は、特許法29条2項の規定により、特許をすることができない。 したがって、本願は、同法49条2号に該当するから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

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2024-019805

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