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特許拒絶査定不服審判

2024-002156

水と蒸気による酸化への高い耐性を有する被膜を施されたU3Si2ペレット

審判番号
2024-002156
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2022-152997
請求日
2024年02月07日
審決日
2025年07月25日
公報発行日
2026年01月30日
結論
請求不成立
当事者
  • 【請求人】ウエスチングハウス・エレクトリック・カンパニー・エルエルシー
  • 【請求人代理人】市位 嘉宏
審判長/審判官
  • 審判長 波多江 進
  • 審判官 吉野 三寛
  • 審判官 野村 伸雄
分類
P18 .121-Z (G21C) / P18 .575-Z (G21C)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条2項
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第17条の2第6項、特許法第17条の2第5項第2号
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2022-152997「水と蒸気による酸化への高い耐性を有する被膜を施されたU3Si2ペレット」拒絶査定不服審判事件〔令和 4年11月30日出願公開、特開2022-177239〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

理 由 第1 手続の経緯 本願は、平成30年2月19日に出願した特願2019-548646号(パリ条約による優先権主張外国庁受理2017年3月17日(以下「優先日」という。)、アメリカ合衆国、2018年2月16日、アメリカ合衆国)の一部を令和4年9月26日に新たな特許出願としたものであって、その手続の経緯の概要は、以下のとおりである。 令和 5年 5月26日付け:拒絶理由通知書 同年 8月20日 :意見書、手続補正書の提出 同年10月 5日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。) (同月11日 :原査定の謄本の送達) 令和 6年 2月 7日 :審判請求書、手続補正書の提出 第2 令和6年2月7日にされた手続補正についての補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 令和6年2月7日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1 本件補正について (1) 本件補正後の特許請求の範囲の請求項14の記載 本件補正により、特許請求の範囲の請求項14の記載は、次のとおり補正された(下線部は、補正箇所である。)。 「耐水性層の被膜が施されたU3Si2の表面を有する核分裂性物質を具備し、当該耐水性層は当該核分裂性物質とは反応しないものである、原子炉で使用する燃料であって、 当該核分裂性物質はペレット状のU3Si2であり、当該耐水性層は原子層堆積法、溶射法、化学蒸着法、またはそれらの組み合わせにより、当該U3Si2の表面に直接付着されていることを特徴とする、燃料。」 (2) 本件補正前の特許請求の範囲の請求項15の記載 本件補正後の特許請求の範囲の請求項14は、本件補正前の特許請求の範囲の請求項15を補正したものであり、本件補正前の、特許請求の範囲の請求項15の記載は次のとおりである。 「耐水性層の被膜が施された核分裂性物質を具備し、当該耐水性層は当該核分裂性物質とは反応しないものである、原子炉で使用する燃料であって、 当該核分裂性物質はU3Si2であり、当該耐水性層は原子層堆積法、溶射法、化学蒸着法、またはそれらの組み合わせにより、当該核分裂性物質の表面に直接付着されていることを特徴とする、燃料。」 2 本件補正の適否 本件補正のうち請求項14についての補正は、本件補正前の請求項15に記載された発明を特定するために必要な事項である「耐水性層」の被膜を施すのが「核分裂性物質」であったものを「U3Si2の表面」と限定し、「核分裂性物質」について「ペレット状」と限定し、「耐水性層」を付着させるのが「核分裂性物質の表面」であったものを「U3Si2の表面」と限定したものであって、本件補正前の請求項15に記載された発明と本件補正後の請求項14に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、本件補正のうち請求項14についての補正は、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、本件補正後の請求項14に係る発明(以下「本件補正発明」という。)が特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下に検討する。 (1) 本件補正発明 本件補正発明は、上記1(1)に記載した事項により特定されるとおりのものであると認める。 (2) 引用文献1の記載事項並びに引用発明及び引用文献1技術的事項の認定 ア 引用文献1の記載事項 原査定の拒絶の理由で引用され、本願の優先日前に発行された特表2013-531246号公報(以下「引用文献1」という。)には、次の記載がある(下線は、当合議体が付した。以下同じ。)。 「【請求項1】 ウラン-235を含むウラン成分を有するトリウラン・ジシリサイドを含み、ウラン-235がトリウラン・ジシリサイドのウラン成分の総重量の約0.7乃至約20重量%の割合で存在する原子燃料組成物。」 「【請求項4】 トリウラン・ジシリサイドが燃料組成物の総重量の約80乃至約100重量%を占める請求項1に記載の原子燃料組成物。」 「【0012】 本発明は軽水炉(LWR)において使用されるトリウラン・ジシリサイドなどの原子燃料組成物に関わる。本発明は加圧水型原子炉(PWR)、沸騰水型原子炉など種々のLWRに利用できる。但し、発明を詳細に説明する便宜上、ここではPWRを例に取り、図面を参照しながら説明する。」 「【0021】 上述のように、従来型LWR用原子燃料組成物は二酸化ウランを含む。二酸化ウランは多量のウラン-238と少量のウラン-235を含有する。これも既に述べたことであるが、原子燃料組成物中のウラン-235の含有率を高めることによって得られる経済的な利益がある。この様な利益には燃料サイクルの長期化及び小さなバッチの使用可能性が含まれる。さらに、熱伝導率を高めることができれば、熱効率を高めることにもなる。そこで、原子燃料組成物中のウラン-235の量を増大させるべく、本発明はトリウラン・ジシリサイドを採用する。一般に、トリウラン・ジシリサイドの密度は12.2g/cm3であり、二酸化ウランの密度は10.96g/cm3である。特定の理論によって裏付けられなくても、従来の燃料ペレットに典型的に使用される二酸化ウランの全部または一部に代えてトリウラン・ジシリサイドを使用することにより密度を増加させると、燃料サイクルの長期化および/または出力定格の増加が可能になるため原子力発電所の性能が改善すると思われる。例えば、原子燃料組成物にトリウラン・ジシリサイドを使用すれば、二酸化ウランを使用する場合との比較において、原子燃料集合体中のウラン-235の含有率を約17重量%増大させ、熱伝導率を3乃至5倍に高めることができる」 「【0026】 本発明の原子燃料組成物は例えば、原子燃料ペレットのように種々の形態を取ることができるが、これに限定されない。原子燃料ペレットは加圧水型原子炉の燃料集合体の一部である燃料棒(図4に示す)内に垂直に積層することができる。 【0027】 粉末状トリウラン・ジシリサイドは約100°C未満の温度で作動する試験用原子炉において使用されているが、その際、燃料を比較的低温に維持し、燃料が冷却材に露出しないように粉末状のトリウラン・ジシリサイドをアルミニウム金属中に分散させている。しかし、トリウラン・ジシリサイドは、(例えば、炉心内の冷却材のような)水と反応する可能性があり、また、融点が比較的低い(二酸化ウランの融点が約2847°Cであるのに対してトリウラン・ジシリサイドの融点は約1662°C)ことから、これまで、PWRのようなLWRの商業運転に適した燃料とは考えられなかった。」 イ 引用文献1の記載事項から当業者が把握できる事項 引用文献1の【0026】の「本発明の原子燃料組成物は例えば、原子燃料ペレットのように種々の形態を取ることができる。」との記載から、当業者は、原子燃料組成物からなる原子燃料ペレットを把握することができる。 ウ 引用発明及び引用文献1技術的事項の認定 前記アで摘記した引用文献1の記載事項及び前記イの引用文献1の記載事項から当業者が把握できる事項から、引用文献1には、請求項4に係る原子燃料組成物として、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。また、引用文献1の【0027】から、引用文献1には、次の技術的事項(以下「引用文献1技術的事項」という。)が記載されていると認められる(引用発明等の認定に用いた箇所の段落番号等を参考までに括弧内に付した。)。 <引用発明> 「原子燃料組成物からなる原子燃料ペレットであって、(前記イ) 原子燃料組成物は、ウラン-235を含むウラン成分を有するトリウラン・ジシリサイドを含み、ウラン-235がトリウラン・ジシリサイドのウラン成分の総重量の約0.7乃至約20重量%の割合で存在し、(請求項1) 原子燃料組成物は、トリウラン・ジシリサイドが燃料組成物の総重量の約80乃至約100重量%を占め、(請求項4) 原子燃料組成物は、軽水炉(LWR)において使用される(【0012】) 原子燃料ペレット。」 <引用文献1技術的事項> 「トリウラン・ジシリサイドは、(例えば、炉心内の冷却材のような)水と反応する可能性があること(【0027】)」 (3) 本件補正発明と引用発明の対比・判断 ア 対比分析 (ア) 本件補正発明の「耐水性層の被膜が施されたU3Si2の表面を有する核分裂性物質を具備し、当該耐水性層は当該核分裂性物質とは反応しないものである、原子炉で使用する燃料であって、」及び「燃料」の発明特定事項について a 引用発明の「原子燃料ペレット」は、本件補正発明の「燃料」に相当する。 b 引用発明の「原子燃料組成物」は、「ウラン-235を含むウラン成分を有するトリウラン・ジシリサイドを含[む]」ものであるから、本件補正発明の「核分裂性物質」に相当し、引用発明の「原子燃料ペレット」は、本件補正発明でいう「核分裂性物質を具備[する]」ものであるといえる。 c 引用発明の「トリウラン・ジシリサイド」は、本件補正発明の「U3Si2」に相当し、引用発明の「原子燃料組成物」は、「ウラン-235を含むウラン成分を有するトリウラン・ジシリサイドを含[む]」ものであるから、本件補正発明でいう「U3Si2」「を有する」ものであるといえる。 d 引用発明は、「原子燃料組成物は、軽水炉(LWR)において使用される」ものであるから、引用発明の「原子燃料ペレット」は、本件補正発明でいう「原子炉で使用する」ものであるといえる。 e 前記a~dをまとめると、本件補正発明と引用発明は、「U3Si2」「を有する核分裂性物質を具備し、」「原子炉で使用する燃料であ[る]」「燃料」の発明である点で共通する。 f 一方で、核分裂性物質について、本件補正発明は、U3Si2「の表面を有する」ものであり、当該表面が「耐水性層の被膜が施された」ものであり、当該耐水性層は、「当該核分裂性物質とは反応しないものである」のに対し、引用発明は、トリウラン・ジシリサイドを含むものであるものの、トリウラン・ジシリサイドの表面に耐水性層の被膜が施されたものではない点で相違する。 (イ) 本件補正発明の「当該核分裂性物質はペレット状のU3Si2であり、当該耐水性層は原子層堆積法、溶射法、化学蒸着法、またはそれらの組み合わせにより、当該U3Si2の表面に直接付着されていることを特徴とする、」の発明特定事項について a 引用発明は、「原子燃料組成物からなる原子燃料ペレット」であるから、引用発明の「原子燃料組成物」は、本件補正発明でいう「ペレット状」であるといえる。また、引用発明の「原子燃料組成物」は、「トリウラン・ジシリサイドを含[む]」ものである。 b したがって、本件補正発明と引用発明は、「当該核分裂性物質はペレット状のU3Si2であ[る]」点で一致する。 c 一方で、本件補正発明は、「当該耐水性層は原子層堆積法、溶射法、化学蒸着法、またはそれらの組み合わせにより、当該U3Si2の表面に直接付着されている」のに対し、引用発明は、前記(ア)のとおり核分裂性物質の表面に耐水性層の被膜が施されたものではない点で相違する。 イ 一致点及び相違点 以上のことから、本件補正発明と引用発明の一致点及び相違点は、次のとおりである。 (ア) 一致点 【一致点】 「U3Si2を有する核分裂性物質を具備し、原子炉で使用する燃料であって、 当該核分裂性物質はペレット状のU3Si2である、燃料」である点。 (イ) 相違点 【相違点1】 核分裂性物質について、本件補正発明は、U3Si2「の表面を有する」ものであり、当該表面が「耐水性層の被膜が施された」ものであり、当該耐水性層は、「当該核分裂性物質とは反応しないものである」のに対し、引用発明は、トリウラン・ジシリサイドを含むものであるものの、トリウラン・ジシリサイドの表面に当該耐水性層の被膜が施されたものではない点。 【相違点2】 本件補正発明は、「当該耐水性層は原子層堆積法、溶射法、化学蒸着法、またはそれらの組み合わせにより、当該U3Si2の表面に直接付着されている」のに対し、引用発明は、核分裂性物質の表面に当該耐水性層の被膜が施されたものではない点。 ウ 相違点に対する判断 以下、上記相違点について検討する。 (ア) 相違点1及び2について 事案に鑑み、相違点1及び2を合わせて検討する。 a(a) まず、引用発明は、「トリウラン・ジシリサイドが燃料組成物の総重量の約80乃至約100重量%を占め[る]」ものであるから、引用発明の「トリウラン・ジシリサイド」は、「原子燃料組成物からなる原子燃料ペレット」の「原子燃料組成物」の表面にも存在していると考えるのが自然である。そうすると、相違点1に係る本件補正発明のU3Si2「の表面を有する」ものであるとの構成において、本件補正発明と引用発明は実質的に相違しない。 (b) 仮に引用発明において「トリウラン・ジシリサイド」が、「原子燃料組成物からなる原子燃料ペレット」の「原子燃料組成物」の表面にも存在しているとまではいえないとしても、引用発明において、「トリウラン・ジシリサイドが燃料組成物の総重量の」「約100重量%を占め[る]」ものとすることにより、「トリウラン・ジシリサイド」が、「原子燃料組成物からなる原子燃料ペレット」の「原子燃料組成物」の表面に存在するようにすることは、当業者が容易になし得たことである。 b(a) 次に、引用発明を開示する引用文献1には、「トリウラン・ジシリサイドは、(例えば、炉心内の冷却材のような)水と反応する可能性があること」(引用文献1技術的事項)が開示されているのであるから、当業者は、引用発明のトリウラン・ジシリサイドが水と反応する可能性があるものであることを認識すると共に、トリウラン・ジシリサイドを水に反応させないようにするという課題を認識するといえる。 (b) ところで、核燃料に関する技術分野において、核燃料を含有するペレットの表面に、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化シリコン、グラファイト、SiCなどの水との接触を防止する被膜を有する核燃料ペレットは、原査定で引用された引用文献2である特開平11―202072号公報(特に、【0018】の「窒化物核燃料を含有するペレットの表面に水との接触を防止する被覆を有する核燃料ペレット」及び【0019】の「ペレット表面の被覆には、…(中略)…酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化シリコンなどの酸化物をコーティングした被膜、グラファイトなどの炭素被膜、SiCなどの炭素化合物を含む被膜、さらには金属の被膜が含まれる」との記載を参照。)に見られるように、周知技術、又は少なくとも前記引用文献2に記載された技術的事項である。 (c) しかるに、上記(a)の課題を認識している当業者は、前記周知技術又は引用文献2に記載された技術的事項に接することができるところ、前記当業者は、前記周知技術又は引用文献2に記載された技術的事項のごとく核燃料を含有するペレットの表面に水との接触を防止する被膜を設けることは、前記(a)のトリウラン・ジシリサイドを水に反応させないようにするという前記課題の解決に役立つことを認識できるといえる。 このように、引用発明から出発した当業者は、前記課題を認識できるところ、前記周知技術又は引用文献2に記載された技術的事項が、前記周知の課題を解決するために役立つことも認識できることから、引用発明において、当該課題を解決するために前記周知技術又は引用文献2に記載された技術的事項を採用して、トリウラン・ジシリサイドを含有するペレットの表面に、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化シリコン、グラファイト、SiCなどの水との接触を防止する被膜を設ける構成(以下「被膜形成構成」という。)とすることは、当業者が容易になし得たことである。このとき、被膜形成構成の「酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化シリコン、グラファイト、SiCなどの水との接触を防止する被膜」は、水との接触を防止するという機能からみて、本件補正発明の「耐水性層の被膜」に相当するといえる。 c また、前記被膜形成構成の酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化シリコン、グラファイト、SiCは、技術常識からみて、「ウラン-235を含むウラン成分を有するトリウラン・ジシリサイドを含[む]」「原子燃料組成物」とは反応しない物質であると認められる。このことは、これらの物質が本件補正後の特許請求の範囲の請求項15にも挙げられている物質であることからも首肯できる。 d(a) 次に、相違点2に係る本件補正発明の「当該耐水性層は原子層堆積法、溶射法、化学蒸着法、またはそれらの組み合わせにより、」「付着されている」との発明特定事項(以下「製造方法特定事項」という。)について検討すると、当該製造方法特定事項は製造方法によって燃料(生産物)を特定しようとするものであり、最終的に得られた燃料(生産物)自体を意味している解するのが相当である。そうすると、前記cで説示した被膜形成構成と、本件補正発明の「燃料」は、最終的に得られた燃料自体が相違するものとは認められず、本件補正発明と被膜形成構成は製造方法特定事項において相違しない。 (b) 仮に、本件補正発明と被膜形成構成が製造方法特定事項において相違するとして以下検討すると、当業者は、トリウラン・ジシリサイドを含有するペレットの表面に、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化シリコン、グラファイト、SiCなどの水との接触を防止する被膜を設ける際(前記b(c))に、前記被膜を設ける方法を決定する必要がある。 ここで、核燃料に関する技術分野において、核燃料ペレットをコーティングする手段として、溶射法、化学蒸着法を用いることは、周知技術(必要ならば、原査定で引用された引用文献6(特開平6-342091号公報、特に、【0084】の燃料ペレット表面に可燃性毒物をコーティングする旨及び【0085】の可燃性毒物コーティングとしては溶射等が考えられる旨の記載を参照。)、原査定で引用された引用文献7(特開平5-281385号公報、特に、【0004】のコーティングによる可燃性毒物入り燃料ペレットの製造方法としては、プラズマスプレー法(当合議体注:すなわち、溶射法)や熱還元法(当合議体注:すなわち、化学蒸着法)によるものが周知である旨の記載を参照。)を参照されたい。)であるし、これらの方法は、前記周知技術又は引用文献2に記載された技術的事項における酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化シリコン、グラファイト、SiCの被膜を設ける手段としても、文献を例示するまでもない周知技術である。 そうすると、当業者が、ペレットの表面に前記被膜を設けるに際して、前記被膜を設ける方法として前記引用文献6~7に例示される周知技術を採用することは、当業者が容易になし得たことである。このとき、被膜形成構成における酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化シリコン、グラファイト、SiCなどの水との接触を防止する被膜を溶射法、化学蒸着法を用いてペレットの表面に設けることとなる。 (c) さらに、相違点2に係る「当該耐水性層は」「当該U3Si2の表面に直接付着されている」との発明特定事項について検討すると、前記aで説示したように、引用発明においても「トリウラン・ジシリサイド」が、「原子燃料組成物からなる原子燃料ペレット」の「原子燃料組成物」の表面にも存在しているか、又は、そのようにすることは当業者が容易になし得たことであるから、当業者は、相違点2に係る本件補正発明の「当該耐水性層は」「当該U3Si2の表面に直接付着されている」との構成に至ることとなる。 e 以上のとおりであるから、当業者は、引用発明及び引用文献1技術的事項並びに周知技術又は引用文献2に記載された技術的事項に基づいて、相違点1及び2に係る本願発明の構成に容易に至るといえる。 (イ) 総合検討 そして、相違点1~2を総合的に勘案しても、本件補正発明の作用効果は、本件補正発明の構成が奏するものとして、引用発明及び引用文献1技術的事項並びに周知技術又は引用文献2に記載された技術的事項の奏する作用効果から予測される範囲のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。 エ 審判請求人の主張について (ア) 審判請求人の主張内容 審判請求人は、以下の旨を主張している。 a 引用発明及び引用文献2に記載の発明は、ともに核燃料(原子燃料)の熱伝導率の向上を志向するものであり、引用発明のトリウラン・ジシリサイドをベースとする燃料よりも、周知技術を示す文献として例示した引用文献2に記載の窒化物核燃料の方が熱伝導度及び出力密度の特性が有意に優れ、特に熱伝導度の改善度合いは顕著に高いのであるから、引用文献2の記載の中から、「核燃料要素に耐水性層の被膜を施す」ことだけを切り出し、熱伝導率の点で劣るトリウラン・ジシリサイド核燃料に関する主引例発明の改変を想起するとは考え難い。 b 引用文献2で開示される被膜形成技術は、窒化物核燃料粒子を酸化させて酸化物被膜を形成するという技術に限定されており、これは、耐水性の被膜を窒化物核燃料の表面に直接付着させる技術とはいえず、引用文献2の【0017】における、窒化物核燃料を含有する粒子として、請求項1の表面に水との接触を防止するための被覆を設けたもの(窒化物核燃料を酸化させて被膜を形成したもの)を用いれば、窒化物核燃料と水との接触に対し二重の防御ができる、との記載に照らせば、引用文献2の「酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化シリコンなどの酸化物をコーティングした被膜」は、窒化物核燃料を酸化させて形成した被覆の上に形成されるものであり、当該被膜は、窒化物核燃料の表面に直接付着されるものであると解することはできない。 (イ) 審判請求人の主張についての検討 審判請求人の前記主張は、以下に説示するとおり、前記ウ(ア)の判断を左右するものではない。 a 引用発明においてトリウラン・ジシリサイドを採用する技術上の意義は、審判請求人の主張する熱伝導度のみならず、原子燃料組成物中のウラン-235の量を増大させることにもあり(【0021】)、また一般に、原力燃料組成物に求められる特性は熱伝導度のみならず、例えば燃焼度や融点、化学的な安定性など種々の観点から選択されるものであるから、引用発明から出発した当業者が引用文献2に接したときに、熱伝導度のみに着目して必然的に窒化物核燃料を選択するとはいえない。 b 請求人の主張する【0017】の「二重の防御」は、【0017】に記載の酸化物核燃料粒子と窒化物核燃料粒子とを含む核燃料ペレットについて説明するものであり、前記ウ(ア)b(b)で説示した【0018】~【0019】の窒化物核燃料を含有するペレットの表面に水との接触を防止する被覆を有する核燃料ペレットについて説明するものではない。また、両者が互いに独立した形態であることは、引用文献2において、これらの形態に対応する請求項1、3がいわゆる独立請求項として記載されていることからも明らかである。したがって、請求人の主張は【0017】の「二重の防御」が【0018】~【0019】のペレットの被覆についても該当するという前提において誤っており、失当である。 以上のとおりであるから、審判請求人の上記主張は、いずれも採用することができない。 オ 小括 以上によれば、本件補正発明は、引用発明及び引用文献1技術的事項並びに周知技術又は引用文献2に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 3 本件補正の却下の決定についてのむすび したがって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。 第3 本願発明について 1 本願発明 本件補正は、上記第2のとおり却下されたので、本願の請求項15に係る発明(以下「本願発明」という。)は、本件補正前の特許請求の範囲の請求項15に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、当該請求項15の記載は前記第2の[理由]1(2)に示したとおりである。 2 原査定の拒絶の理由 原査定の本願発明に対する拒絶の理由は、以下に概略を示す理由を含むものである。 理由1.(進歩性)本願発明は、その優先日前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明である下記の引用文献1に記載された発明及び引用文献2、4~7に例示される周知技術に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 記 引用文献1.特表2013-531246号公報 引用文献2.特開平11-202072号公報(周知技術を示す文献) 引用文献4.特開2003-4882号公報(周知技術を示す文献) 引用文献5.米国特許出願公開第2015/0063524号明細書(周知技術を示す文献) 引用文献6.特開平6-342091号公報(周知技術を示す文献) 引用文献7.特開平5-281385号公報(周知技術を示す文献) 3 引用文献の記載事項並びに引用発明及び引用文献1技術的事項の認定 引用文献1の記載事項並びに引用発明及び引用文献1技術的事項の認定は、前記第2の[理由]2(2)イで記載したとおりである。 4 対比・判断 本願発明は、本件補正発明において、「耐水性層」の被膜を施すのが「核分裂性物質」のうち「U3Si2の表面」との限定を削除し、「核分裂性物質」について「ペレット状」との限定を削除し、「耐水性層」を付着させるのが「核分裂性物質の表面」のうち「U3Si2の表面」との限定を削除したものである。 そうすると、本願発明の発明特定事項をすべて含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が、前記第2[理由]2(3)ウに記載したとおり、引用発明及び引用文献1技術的事項並びに周知技術又は引用文献2に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用発明及び引用文献1技術的事項並びに周知技術又は引用文献2に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。 第4 むすび 以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

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2024-002156

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  • 2017-013819拒絶査定不服審判 / 2018-08-14 / 原査定取消(特許/登録すべき)原子炉の燃料交換方法
    同じ当事者: ウエスチングハウス・エレクトリック・カンパニー・エルエルシー
  • 2024-700021異議申立 / 2025-03-27 / 訂正認容未臨界炉心反応度バイアスを予想する方法
    同じ当事者: ウエスチングハウス・エレクトリック・カンパニー・エルエルシー
同じ論点・分野の審決(審決分類)42件(121・G21C、575・G21C)
  • 2024-019805拒絶査定不服審判 / 2026-04-13 / 請求不成立放射性物質の拡散状況予測装置および方法並びにプログラム
    共通の審決分類: 121・G21C、575・G21C
  • 2024-018347拒絶査定不服審判 / 2026-02-09 / 請求不成立コンパクトな容器、長寿命な炉心、及びPOOL型原子炉における燃料補給の容易化を支…
    共通の審決分類: 121・G21C、575・G21C
  • 2023-013402拒絶査定不服審判 / 2024-09-30 / 請求不成立ジェネレータとその使用方法
    共通の審決分類: 121・G21C、575・G21C
  • 2023-012186拒絶査定不服審判 / 2024-05-27 / 請求不成立キャスクの設計方法
    共通の審決分類: 121・G21C、575・G21C
  • 2023-005883拒絶査定不服審判 / 2024-05-09 / 請求不成立燃料-クラッド化学的相互作用耐性核燃料要素およびその製造方法
    共通の審決分類: 121・G21C、575・G21C

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