特許拒絶査定不服審判
2023-012186
キャスクの設計方法
- 審判番号
- 2023-012186
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2019-120051
- 請求日
- 2023年07月20日
- 審決日
- 2024年05月27日
- 公報発行日
- 2024年08月30日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】三菱重工業株式会社
- 【請求人代理人】弁理士法人酒井国際特許事務所
- 審判長/審判官
- 審判長 秋田 将行
- 審判官 後藤 孝平
- 審判官 松川 直樹
- 分類
- P18 .121-Z (G21C) / P18 .575-Z (G21C)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第17条の2第6項、特許法第159条第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2019-120051「キャスクの設計方法」拒絶査定不服審判事件〔令和 3年 1月14日出願公開、特開2021- 4853〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯の概要
本願は、令和元年(2019年)6月27日の出願であって、その手続の経緯の概要は以下のとおりである。
令和5年1月19日付け:拒絶理由通知書
同年3月24日 :意見書・手続補正書の提出
同年4月17日付け:拒絶査定
同年7月20日 :審判請求書・手続補正書の提出
第2 令和5年7月20日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和5年7月20日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 本件補正の内容
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正されることになる(下線部は、補正箇所である。)。
「使用済燃料集合体のスペックを3つ以上の複数のクラスに分ける第1ステップと、
前記使用済燃料集合体を収容するキャスクの複数のセルに対して、前記使用済燃料集合体を前記複数のクラスごとに割り付けた配置パターンを設定する第2ステップと、
設定された前記配置パターンで前記使用済燃料集合体が前記キャスクに収容される場合に、前記キャスクの外表面に漏洩する線量分布を算出する第3ステップと、
を備え、
前記配置パターンを変更しながら、少なくとも前記第2ステップおよび前記第3ステップを繰り返し実行して、前記配置パターンごとに対応した前記線量分布と前記スペックとに基づいて、複数の前記配置パターンのなかから解となる配置パターンを決定し、
前記線量分布は、使用済燃料集合体の軸方向に直交する方向である前記キャスクの外表面の周方向の分布であるキャスクの設計方法。」
(2)本件補正前の特許請求の範囲の記載
本件補正前の、令和5年3月24日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。
「使用済燃料集合体のスペックを3つ以上の複数のクラスに分ける第1ステップと、
前記使用済燃料集合体を収容するキャスクの複数のセルに対して、前記使用済燃料集合体を前記複数のクラスごとに割り付けた配置パターンを設定する第2ステップと、
設定された前記配置パターンで前記使用済燃料集合体が前記キャスクに収容される場合に、前記キャスクの外表面に漏洩する線量分布を算出する第3ステップと、
を備え、
前記配置パターンを変更しながら、少なくとも前記第2ステップおよび前記第3ステップを繰り返し実行して、前記配置パターンごとに対応した前記線量分布と前記スペックとに基づいて、複数の前記配置パターンのなかから解となる配置パターンを決定し、
前記線量分布は、前記キャスクの外表面の周方向の分布であるキャスクの設計方法。」
2 本件補正の適否
本件補正で請求項1についてする補正は、本件補正前の請求項1の「キャスクの外表面に漏洩する線量分布」について、「前記線量分布は、前記キャスクの外表面の周方向の分布である」とあったのを「前記線量分布は、使用済燃料集合体の軸方向に直交する方向である前記キャスクの外表面の周方向の分布である」として、前記キャスクの周方向の分布が、前記キャスクの軸方向に直交する方向であることを限定するものである。そして、本件補正前の請求項1に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、本件補正で請求項1についてする補正は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。
(1)本件補正発明の認定
本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本件補正発明」という。)は、前記1(1)に記載された事項により特定されるとおりのものと認められる。
(2)本件補正発明の技術的意義
本件補正発明は、キャスクの設計方法に関する発明であるところ(【0001】)、
原子力発電で使用された使用済燃料集合体を貯蔵、輸送するために、専用のキャスクに収容する技術において(【0002】)、
線源強度が強い使用済燃料集合体をキャスクに多く収容しつつ、キャスクの外表面へと漏洩する放射線量が規定の上限値を超えないようにするために、(ア)キャスクに含まれる放射線の遮蔽体の厚みを厚くすると、外表面における放射線量を低減させることができるが、キャスク全体の大型化、重量化を招いてしまうこと、(イ)使用済燃料集合体の線源強度を小さくするために、燃焼度が低いか、冷却期間が長い使用済燃料集合体を多くすると、スペックが高い(燃焼度が高い、冷却期間が短い)使用済燃料集合体の収容数が減ってしまうことから、使用済燃料集合体の貯蔵または輸送に関して効率的な運用が妨げる可能性があり、より適切な配置パターンで使用済燃料集合体をキャスクに収容することが求められており(【0004】)、
また、従来のキャスクの設計手法では、キャスク10の外表面25aにおける線量分布等を算出するための数値解析において、バスケット14を円筒状の2領域(例えば図4の破線円の内側と外側の2領域)にわけ、高クラスまたは低クラスの使用済燃料集合体5を配置する解析モデルを用いていたことにより、高クラスの使用済燃料集合体5Aと低クラスの使用済燃料集合体5Cとの2クラスに区分した配置パターンを設定することが一般的であったことから(【0026】)、
本件補正発明は、キャスクに収容される使用済燃料集合体のスペックの向上、キャスクの小型化を図ることが可能なキャスクの設計方法の提供を目的とするものである(【0005】)。
そして、本件補正発明のこの目的は本件補正発明の構成を採用することによって達成されるものであり、
本件補正発明は、キャスクに収容される使用済燃料集合体のスペックの向上、キャスクの小型化を図ることができるという効果を奏するものである(【0007】)。
また、本件補正発明におけるキャスクの設計方法によって、使用済燃料集合体5のスペックを3つ以上の複数のクラスに分け、複数の配置パターンを設定するため、複数のセル14Bに対して、使用済燃料集合体5のスペックをより細分化して割り付けることが可能となる結果、複数のセル14Bに対して、使用済燃料集合体5の配置の自由度を高める(柔軟に配置する)ことが可能となり、したがって、キャスク10に収容される使用済燃料集合体5のスペックの向上、キャスク10の小型化を図ることが可能となり(【0037】)、
また、キャスク10の外表面25aに漏洩する線量分布が規定の上限値を超えず、かつ、キャスク10に収容される使用済燃料集合体5のうち、より外側に使用済燃料集合体5が配置されていない範囲のセル14B2に配置されるもののスペックの総量が最大値となる配置パターンを解となる配置パターンとして決定する構成により、特にキャスク10の外表面25aの線量分布への影響が大きく、スペックが低い使用済燃料集合体5を配置しがちな範囲であるセル14B2について、使用済燃料集合体5のスペックの低下を抑制することができ、結果的にキャスク10に収容される使用済燃料集合体5のスペックを向上させるができ、使用済燃料集合体5の貯蔵または輸送について、より効率的な運用を図ることが可能となるという効果を奏する(【0040】)。
(3)引用文献の記載事項及び引用発明等の認定
ア 引用文献1
(ア)引用文献1の記載事項
原査定の拒絶の理由で引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である特開2012-18023号公報(以下「引用文献1」という。)には、次の事項が記載されている(下線は当審が付した。)。
【0001】
本発明は、使用済燃料集合体の収納支援方法、使用済燃料集合体の収納支援装置及びキャスクへの使用済燃料集合体の収納方法に係り、特に、沸騰水型原子力発電プラント及び加圧水型原子力発電プラントから発生する使用済燃料集合体をキャスクに収納するのに好適な使用済燃料集合体の収納支援方法、使用済燃料集合体の収納支援装置及びキャスクへの使用済燃料集合体の収納方法に関する。
【0014】
本発明の目的は、複数のキャスクへの使用済燃料集合体の収納計画に要する時間をさらに短縮でき、かつ使用済燃料集合体のキャスクへの収納効率を向上できる使用済燃料集合体の収納支援方法、使用済燃料集合体の収納支援装置及びキャスクへの使用済燃料集合体の収納方法を提供することにある。
【0019】
発明者らは、燃料貯蔵プールに保管されている使用済燃料集合体の燃焼度及び冷却期間に着目して、燃焼度、冷却期間及び燃料集合体の発熱量の関係、及び燃焼度、冷却期間及び燃料集合体の放射能の関係について検討を行った。使用済燃料集合体の燃焼度は、運転を停止した原子炉の炉心から取り出した時点での燃焼度である。燃料集合体の冷却期間は、炉心から取り出されて燃料貯蔵プールに搬入されて保管が開始された時点からの経過期間であり、使用済燃料集合体が燃料貯蔵プールに保管されている期間である。燃料集合体の発熱量及び放射能は、キャスクに収納するために燃料貯蔵プールから取り出された時点でのそれぞれの値である。
【0020】
使用済燃料集合体の発熱量、燃焼度及び冷却期間の関係を図8に示す。さらに、使用済燃料集合体の放射能、燃焼度及び冷却期間の関係を図9に示す。図8及び図9によれば、使用済燃料集合体の放射能及び発熱量は、使用済燃料集合体の燃焼度が大きくなるほど、大きくなる傾向がある。使用済燃料集合体の冷却期間が長くなるほど、使用済燃料集合体の放射能及び発熱量が減少する。
【0021】
膨大な体数の使用済燃料集合体を所定基数のキャスクへの収納対象にする場合,幾つかのグループに分類された使用済燃料集合体は各々のグループにおいて最大の燃焼条件(燃焼度)を有する。図8及び図9に示すように、発熱量及び放射能は燃焼度に依存して増減する。燃焼度が2000MWd/t程度増加したとき、発熱量及び放射能は約7%増加する。このため,同じグループにおいても、例えば、最大すなわち代表値、最小値、及び代表値と最小値の中間の値のように燃焼度が異なる各使用済燃料集合体が存在し、これらの使用済燃料集合体では放射能及び発熱量の差異が大きくなる傾向にある。
【実施例1】
【0038】
本発明の好適な一実施例である使用済燃料集合体の収納支援装置を、図1を用いて説明する。本実施例の使用済燃料集合体収納支援装置1は、データ処理装置2、表示装置6、及びキーボード及びマウス等の入力装置7を有する。データ処理装置2は、電子計算機であり、中央処理装置(CPU)3、メモリ4及び入出力インタフェース5を有する。
CPU3及びメモリ4が入出力インタフェース5に接続され、入力装置7及び表示装置6も入出力インタフェース5に接続される。図2に示す処理を実行するプログラムが、メモリ4に記憶されている。このプログラムによる処理はデータ処理装置2のCPU3で実行される。
【0039】
使用済燃料集合体収納支援装置1を用いた、使用済燃料集合体の収納支援方法を、以下に説明する。ある原子力発電所には、複数基、例えば、2基の原子力プラントが設置されている。2基の原子力プラントのそれぞれの燃料貯蔵プールに保管されている複数の使用済燃料集合体を複数のキャスク内に収納して、原子力発電所外の中間貯蔵施設内で、複数の使用済燃料集合体の収納した複数のキャスクを保管することを想定する。この場合には、2基の原子力プラントの各燃料貯蔵プールに保管されている使用済燃料集合体を原子力発電所内で複数のキャスク内に収納する必要がある。使用済燃料集合体収納支援装置1は、各キャスクごとに、収納する複数の使用済燃料集合体を決定するために用いられる。ここでは、各燃料貯蔵プールに保管されている、例えば、5175体の8×8BJタイプの使用済燃料集合体を、75基のキャスクに収納するものとする。
【0040】
使用済燃料集合体収納支援装置1を用いた、使用済燃料集合体の収納支援方法を、図2に示す処理手順に基づいて、説明する。
【0041】
オペレータは、使用済燃料集合体収納支援装置1を起動し、入力装置7から処理開始指令を入力する。この処理開始指令を入力したとき、CPU3は、図2に示す各処理を実行するプログラムをメモリ4から読み込み、それらの処理を順次実行する。メモリ4には、(3)式、(4)式、(5)式及び(6)式等の使用済燃料集合体の型式に対応した放射能及び発熱量の演算式が記憶されている。
【0042】
キャスクに収納すべき各使用済燃料集合体の燃焼度及び冷却期間の情報を入力する(ステップS1)。CD-ROMに登録された、複数基(例えば、75基)のキャスク内に収納する対象となる、例えば、5175体の8×8BJタイプの使用済燃料集合体の燃焼度及び冷却期間のデータを、読取装置(図示せず)で読み取り、入出力インタフェース5を介してメモリ4に格納する。複数基のキャスク内に収納するこれらの使用済燃料集合体は、原子力発電所の上記した各原子力プラントの燃料貯蔵プールにそれぞれ保管されている。使用済燃料集合体の燃焼度は、原子力プラントの炉心から取り出された時点の燃焼度であり、冷却期間は燃料貯蔵プール内の冷却水中での保管が開始された時点以降の期間である。ステップS1において、図3に示された、各使用済燃料集合体の識別番号(ID)、各使用済燃料集合体の燃焼度(BU)及び冷却期間(CT)のそれぞれのデータが、メモリ4に記憶される。その識別番号を燃料IDと称する。
【0043】
キャスクに収納すべき使用済燃料集合体の種類及び体数、及びキャスクの基数を入力する(ステップS2)。オペレータは、入力装置7から、キャスクに収納すべき使用済燃料集合体の種類(例えば、8×8BJタイプの使用済燃料集合体)、キャスク1基当たりに収納する使用済燃料集合体の体数(例えば、69体)、及び対象となる全使用済燃料集合体を収納する、キャスクの基数(例えば、75基)を入力する。これらのデータは、CPU3によって、メモリ4に記憶される。
【0044】
使用済燃料集合体の放射能を算出する(ステップS3)。(1)式、具体的には、8×8BJタイプの使用済燃料集合体を対象とする(3)式を用いて、5175体の使用済燃料集合体の放射能Aがそれぞれ算出される。例えば、燃料IDが「2」である使用済燃料集合体においては、(3)式において、BUにBU2、CTにCT2をそれぞれ代入して放射能A2が算出される。得られた放射能A2はメモリ4に記憶される。
【0045】
使用済燃料集合体の発熱量を算出する(ステップS4)。(2)式、具体的には、8×8BJタイプの使用済燃料集合体を対象とする(4)式を用いて、5175体の使用済燃料集合体の発熱量H(例えば、図3に示されたH1,H2,……,HN)がそれぞれ算出される。算出された各発熱量Hがメモリ4に記憶される。
【0046】
対象となるキャスクの仕様(放射能設定値、発熱量設定値、及び使用済燃料集合体の収納体数)を入力する(ステップS5)。オペレータが、入力装置7から、使用するキャスクの種類を入力する。すなわち、使用するキャスクの種類を指定する。CPU3は、指定されたキャスクの種類の情報に基づいて、このキャスクの、放射能設定値、発熱量設定値、及び使用済燃料集合体の収納体数を、メモリ4から読み取る。これらのデータはCPU3内に入力される。
【0047】
キャスク内における、使用済燃料集合体の収納パターンを選択する(ステップS6)。オペレータが、入力装置7から、使用済燃料集合体の収納パターンの選択情報を入力する。
【0048】
メモリ4には、図4、図5及び図6に示す使用済燃料集合体の収納パターン情報がそれぞれ記憶されている。図4に示された収納パターンは、二領域に使用済燃料集合体を収納するパターンである。この収納パターン(以下、二領域パターンという)は、キャスクの横断面において、中央部に領域R2を、領域R2を取り囲んで周縁部に領域R1を、それぞれ配置している。領域R1には、例えば、燃焼度BUが30000MWd/t以下の使用済燃料集合体(以下、第1燃料集合体という)が32体配置され、領域R2には、30000MWd/t<BU≦35000MWd/tを満足する使用済燃料集合体(以下、第2燃料集合体という)が37体配置される。そのキャスクは69体の使用済燃料集合体を収納できる。
【0049】
図5に示された収納パターンは、三領域に使用済燃料集合体を収納するパターンである。この収納パターン(以下、三領域パターンという)は、キャスクの横断面において、中央部に領域R3を、領域R3を取り囲んで環状に領域R2を、領域R2を取り囲んで周縁部に領域R1を、それぞれ配置している。三領域パターンの領域R1には二領域パターンの領域R1に配置される第1燃料集合体が24体配置され、三領域パターンの領域R2には二領域パターンの領域R2に配置される第2燃料集合体が32体配置される。三領域パターンの領域R3には、例えば、燃焼度BUが35000MWd/t<BU≦38000MWd/tを満足する使用済燃料集合体(以下、第3燃料集合体という)が13体配置される。このキャスクも69体の使用済燃料集合体を収納できる。
【0050】
図6に示された収納パターンは、四領域に使用済燃料集合体を収納するパターンである。この収納パターン(以下、四領域パターンという)は、キャスクの横断面において、中央部に領域R4を、領域R4を取り囲んで環状に領域R2を、領域R2を取り囲んで周縁部に領域R2を、領域R4と領域R2の間に領域R3を、それぞれ配置している。四領域パターンの領域R1には二領域パターンの領域R1に配置される第1燃料集合体が24体配置され、四領域パターンの領域R2には二領域パターンの領域R2に配置される第2燃料集合体が24体配置される。四領域パターンの領域R3には、三領域パターンの領域R3に配置される第3燃料集合体が8体配置される。四領域パターンの領域R4には、例えば、燃焼度BUが38000MWd/t<BU≦41000MWd/tを満足する使用済燃料集合体(以下、第4燃料集合体という)が13体配置される。このキャスクも69体の使用済燃料集合体を収納できる。
【0051】
二領域パターン、三領域パターン及び四領域パターン等の使用済燃料集合体の収納パターンの情報は、メモリ4に記憶されている。これらの収納パターン情報以外の他の収納パターンの情報も、メモリ4に記憶されている。
【0052】
ステップS5において対象となるキャスクの仕様の入力が終了した後、CPU3がメモリ4から使用済燃料集合体の各収納パターンの情報を読み出し、表示装置6に出力する。オペレータは、マウスを用いて、表示装置6に表示された各収納パターンのうち、例えば、1つの収納パターンを指定する。オペレータは、指定した収納パターンを適用するキャスクの基数(例えば、75基)も併せて入力装置7から入力する。CPU3は、指定された収納パターン、例えば、二領域パターンを選択し、メモリ4から図4に示す各情報を入力する。二領域パターンに関する情報は表示装置6に表示される。以上により、ステップS6の処理が終了する。
【0053】
キャスクに収納する使用済燃料集合体を抽出する(ステップS7)。CPU3は、二領域パターンでの領域R1に配置される32体の第1使用済燃料集合体、及び領域R2に配置される37体の第2使用済燃料集合体を、メモリ4に記憶されている収納対象の5175体の使用済燃料集合体(図3参照)から抽出する。この使用済燃料集合体の抽出は、第1使用済燃料集合体としては燃焼度がBU≦30000MWd/tを満足している使用済燃料集合体を、第2使用済燃料集合体としては燃焼度が30000MWd/t<BU≦35000MWd/tを満足している使用済燃料集合体を、収納対象の各使用済燃料集合体の燃焼度を考慮して、収納対象の複数の使用済燃料集合体からそれぞれ所定体数だけ抽出する。
【0054】
抽出した複数の使用済燃料集合体が収納されたときにおけるキャスクの放射能を算出する(ステップS8)。CPU3が、ステップS7で抽出された全使用済燃料集合体(例えば、32体の第1使用済燃料集合体、及び37体の第2使用済燃料集合体)を、指定した1つのキャスクに収納したときにおける、キャスクの放射能を算出する。キャスクの放射能Aallは、抽出された各使用済燃料集合体(例えば、69体の使用済燃料集合体)の放射能Ai(ステップS3で算出)を合計して求められる。すなわち、Aall=ΣAiで算出される。
【0055】
抽出した複数の使用済燃料集合体が収納されたときにおけるキャスクの発熱量を算出する(ステップS9)。CPU3が、ステップS7で抽出された全使用済燃料集合体(例えば、32体の第1使用済燃料集合体、及び37体の第2使用済燃料集合体)を、指定した1つのキャスクに収納したときにおける、キャスクの発熱量を算出する。キャスクの発熱量Hallは、抽出された各使用済燃料集合体(例えば、69体の使用済燃料集合体)の発熱量Hi(ステップS4で算出)を合計して求められる。すなわち、Hall=ΣHiで算出される。
【0056】
キャスクの仕様である放射能設定値及び発熱量設定値を満足するかを判定する(ステップS10)。CPU3がステップS10の判定を行う。ステップS8で算出されたキャスクの放射能Aallとキャスクの仕様である放射能設定値Asetを比較し、Aall≦Asetが満足されるかを判定する。また、ステップS9で算出されたキャスクの発熱量Hallとキャスクの仕様である発熱量設定値Hsetを比較し、Hall≦Hsetが満足されるかを判定する。Aall≦Aset及びHall≦Hsetの少なくとも1つが満足されないとき、ステップS10の判定が「No」になる。このときには、ステップS7で抽出されてステップS10の判定が「No」になった複数の使用済燃料集合体のキャスク内への収納は不可能であり、再度、ステップS7で1つのキャスクに収納する使用済燃料集合体を抽出する。
【0057】
Aall≦Aset及びHall≦Hsetを満足してステップS10の判定が「Yes」になったとき、1つのキャスクに収納すべき複数(例えば、69体)の使用済燃料集合体が決定される。これらの使用済燃料集合体は、1つのグループとして、例えば、キャスクのある識別番号を付してメモリ4に格納される。
【0058】
収納対象の使用済燃料集合体のキャスクへの収納計画が終了したかを判定する(ステップS11)。CPU3において、メモリ4に記憶されている収納対象の使用済燃料集合体のうち、ステップS6で選択した収納パターンが対象とする燃焼度の範囲(例えば、二領域パターンではBU≦35000MWd/t)に含まれる全ての使用済燃料集合体が、ステップS10の判定が「Yes」となるように、ステップS7の処理でグループ化されたかを判定する。その燃焼度の範囲も含まれる全ての使用済燃料集合体のうち、
Aall≦Aset及びHall≦Hsetを満足するようにステップS7の処理が行われていない使用済燃料集合体が存在するとき、ステップS11の判定は「No」になり、それらの使用済燃料集合体を対象にステップS7~S11の処理が行われる。対象となる燃焼度範囲に含まれる全ての使用済燃料集合体が、Aall≦Aset及びHall≦Hsetを満足するように複数基のキャスク内に収納可能になったとき、ステップS11の判定が「Yes」になる。
【0059】
その後、収納対象の全ての使用済燃料集合体を収納したときのキャスクの基数を把握する(ステップS12)。CPU3が、メモリ4に格納した、ステップS10でキャスクの識別番号を付した使用済燃料集合体のグループの数を求める。このグループの数がキャスクの基数である。キャスクの搬出基数を満足しているかを判定する(ステップS13)。
【0060】
ステップS12で求めたキャスクの基数が、ステップS2で入力したキャスクの搬出基数になっているかを判定する。ステップS13の判定が満足している(Yes)、になったとき、キャスクの基数、及びキャスクごとに収納する使用済燃料集合体が決定される(ステップS14)。CPU3は、複数の使用済燃料集合体を収納してAall≦Aset及び
Hall≦Hsetを満足したキャスクの基数が、所定の搬出基数を満足したとき、収納対象の使用済燃料集合体を収納するために必要なキャスクの基数、及びそれぞれのキャスクごとに収納する使用済燃料集合体を決定する。これにより、CPU3は、キャスクの識別番号とこの識別番号のキャスクに収納する複数の使用済燃料集合体の燃料IDを関連付けてメモリ4に格納する。さらに、各使用済燃料集合体の燃料IDは、それぞれが配置される、キャスク内の領域R1またはR2の領域コードとも関連付けられてメモリ4に格納される。
【0061】
以上により、収納対象の使用済燃料集合体のキャスクへの収納を対象にした、使用済燃料集合体の収納支援が終了する。
【0062】
ステップS13の判定は、ステップS12で求めたキャスクの基数が、ステップS2で入力したキャスクの搬出基数よりも少ないとき、または、前者の基数が後者の基数よりも多いとき、ステップS13の判定が「No」になる。ステップS13の判定が「No」になったとき、ステップS6~S13の処理が繰り返して行われる。さらに、ステップS13の判定が「No」になったとき、CPU3は、キャスクごとに収納される複数の使用済燃料集合体、及びキャスクに収納できない、燃焼度を有する使用済燃料集合体の各情報を、メモリ4から入力し、表示装置6に出力する。キャスクに収納できない、燃焼度を有する使用済燃料集合体とは、二領域収納パターンを選択した場合は、BU>35000MWd/tを満足する燃焼度を有する使用済燃料集合体である。
【0063】
ステップS12で求めたキャスクの基数がキャスクの搬出基数に一致しない場合が生じる。このため、ステップS13では、ステップS12で求めたキャスクの基数がキャスクの搬出基数-1基のとき、及び搬出基数+1基の場合には収納される使用済燃料集合体の体数が最も少ないキャスクでその体数が第1設定体数以下になっているときでも、ステップS12で求めたキャスクの基数が搬出基数を満足すると判定する。
【0064】
オペレータは、表示装置6に表示されたそれらの情報を参考にして、繰り返されるステップS6で、入力装置7から、使用済燃料集合体の収納パターンの選択情報を再度入力する。燃焼度が35000MWd/tを超える使用済燃料集合体が存在する場合には、三領域パターンの選択情報も入力する。この場合には、「二領域パターンを適用するキャスクを○○基、及び三領域パターンを適用するキャスクを△△基」のように、複数の収納パターン、及びこれらの収納パターンを適用するそれぞれのキャスクの基数をCPU3に入力してもよい。
【0065】
ステップS7における使用済燃料集合体の抽出処理が再度行われる。三領域パターンを適用するキャスクにおいては、キャスク1基当たり、34体の第1使用済燃料集合体、32体の第2燃料集合体、及び13体の第3燃料集合体を、メモリ4に記憶している収納対象の使用済燃料集合体からそれぞれ抽出する。この抽出後、ステップS10の判定が行われ、この判定が「Yes」でステップS11の判定が「No」のとき、ステップS7~S11の処理が繰り返される。三領域パターンを適用するキャスクでは、キャスクの放射能のAall及び発熱量のHallは、二領域パターンを適用するキャスクでのそれらよりも大きくなっている。
【0066】
その後、ステップS13の判定が「Yes」になったとき、ステップS14で、CPU3は、二領域パターンを適用した基数分に対して、キャスクの識別番号とこの識別番号のキャスクに収納する複数の使用済燃料集合体の燃料IDを関連付け、及び三領域パターンを適用した基数分に対して、三領域パターンを適用したキャスクの識別番号とこの識別番号のキャスクに収納する複数の使用済燃料集合体の燃料IDを関連付けてメモリ4に格納する。さらに、二領域パターンの場合には、各使用済燃料集合体の燃料IDは、前述の領域コードに関連付けられてメモリ4に格納される。三領域パターンの場合には、各使用済燃料集合体の燃料IDは、それぞれが配置される、キャスク内の領域R1,R2またはR3の領域コードに関連付けられてメモリ4に格納される。
【0069】
本実施例は、1つのキャスクに収納するために抽出された所定体数の使用済燃料集合体の、算出したそれぞれの放射能及び発熱量を用いて、そのキャスクの仕様である放射能設定値及び発熱量設定値が満足されるかを判定し、さらに、収納すべき複数の使用済燃料集合体が抽出されて放射能設定値及び発熱量設定値を満足したキャスクの基数が、搬出に要するキャスクの所定基数を満足するかを判定する。このような判定を行う本実施例は、所定基数のそれぞれのキャスク内に収納する複数の使用済燃料集合体を決定する収納計画に要する時間を、短縮することができる。この収納計画を実施するために必要な工数も低減することができる。
【0073】
本実施例では、燃焼度の範囲が異なる使用済燃料集合体がそれぞれ配置される複数の収納領域を有して収納領域の数が異なる複数の使用済燃料集合体収納パターンの情報が準備されており、これらの使用済燃料集合体収納パターンのうちから1つの使用済燃料集合体収納パターンを選択できるので、燃焼度の高い使用済燃料集合体があってもキャスク内に収納できる使用済燃料集合体の収納計画を立てることができる。したがって、収納対象とする使用済燃料集合体をより多くキャスク内に収納することができ、キャスク内に収納できない使用済燃料集合体の体数を減らすことができる。
【図1】
[図:0001413044000001.jpg]
【図2】
[図:0001413044000002.jpg]
【図3】
[図:0001413044000003.jpg]
【図4】
[図:0001413044000004.jpg]
【図5】
[図:0001413044000005.jpg]
【図6】
[図:0001413044000006.jpg]
【図7】
[図:0001413044000007.jpg]
(イ)引用文献1から当業者が把握できる事項
a 【0048】~【0050】、図4~6から、使用済燃料集合体は、燃焼度BUによって、第1燃料集合体、第2燃料集合体、第3燃料集合体及び第4燃料集合体に分けられていると認められる。
すなわち、引用文献1には「燃焼度BUによって使用済燃料集合体は、燃焼度BUが、30000MWd/t以下の第1燃料集合体、30000MWd/t<BU≦35000MWd/tを満足する第2燃料集合体、35000MWd/t<BU≦38000MWd/tを満足する第3燃料集合体、38000MWd/t<BU≦41000MWd/tを満足する第4燃料集合体に分けられ」ていることが記載されていると認められる。
b 【0048】~【0050】、図4~6から、引用文献1には、「収納パターン」として、「二領域パターン」、「三領域パターン」及び「四領域パターン」があることが記載されている。
そして、それぞれ、「二領域パターン」が「キャスクの横断面において、中央部に領域R2を、領域R2を取り囲んで周縁部に領域R1を、それぞれ配置している。領域R1には、例えば、燃焼度BUが30000MWd/t以下の使用済燃料集合体(以下、第1燃料集合体という)が32体配置され、領域R2には、30000MWd/t<BU≦35000MWd/tを満足する使用済燃料集合体(以下、第2燃料集合体という)が37体配置される」ものであり、
「三領域パターン」が「キャスクの横断面において、中央部に領域R3を、領域R3を取り囲んで環状に領域R2を、領域R2を取り囲んで周縁部に領域R1を、それぞれ配置している。三領域パターンの領域R1には二領域パターンの領域R1に配置される第1燃料集合体が24体配置され、三領域パターンの領域R2には二領域パターンの領域R2に配置される第2燃料集合体が32体配置される。三領域パターンの領域R3には、例えば、燃焼度BUが35000MWd/t<BU≦38000MWd/tを満足する使用済燃料集合体(以下、第3燃料集合体という)が13体配置される」ものであり、
「四領域パターン」が「キャスクの横断面において、中央部に領域R4を、領域R4を取り囲んで環状に領域R2を、領域R2を取り囲んで周縁部に領域R2を、領域R4と領域R2の間に領域R3を、それぞれ配置している。四領域パターンの領域R1には二領域パターンの領域R1に配置される第1燃料集合体が24体配置され、四領域パターンの領域R2には二領域パターンの領域R2に配置される第2燃料集合体が24体配置される。四領域パターンの領域R3には、三領域パターンの領域R3に配置される第3燃料集合体が8体配置される。四領域パターンの領域R4には、例えば、燃焼度BUが38000MWd/t<BU≦41000MWd/tを満足する使用済燃料集合体(以下、第4燃料集合体という)が13体配置される」ものである。
これらの記載及び前記aから、引用文献1には、使用済燃料集合体の収納パターンが「領域R1、R2を有する二領域パターン、領域R1~R3を有する三領域パターン、領域R1~R4を有する四領域パターン」であり、「各収納パターンにおける領域R1、R2、R3、R4には、それぞれ、第1燃料集合体、第2燃料集合体、第3燃料集合体、第4燃料集合体が収納される」ことが記載されていると認められる。
(ウ)引用発明の認定
上記(ア)及び(イ)によれば、引用文献1には、実施例1に係る使用済燃料集合体の収納方法について、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる(引用発明等の認定に用いた段落番号等を参考までに括弧内に付してある。以下同じ。)。
「使用済燃料集合体のキャスクへの収納効率を向上できる使用済燃料集合体の収納支援方法であって、(【0014】)
使用済燃料集合体収納支援装置1を用いた、使用済燃料集合体の収納支援方法であり、(【0040】)
キャスクに収納すべき各使用済燃料集合体の燃焼度及び冷却期間の情報を入力し、(【0042】)
キャスクに収納すべき使用済燃料集合体の種類及び体数、及びキャスクの基数を入力し、(【0043】)
使用済燃料集合体の放射能を算出し、(【0044】)
使用済燃料集合体の発熱量を算出し、(【0045】)
対象となるキャスクの仕様(放射能設定値、発熱量設定値、及び使用済燃料集合体の収納体数)を入力し、(【0046】)
キャスク内における、使用済燃料集合体の収納パターンを選択し、(【0047】)
キャスクに収納する使用済燃料集合体を抽出し、(【0053】)
抽出した複数の使用済燃料集合体が収納されたときにおけるキャスクの放射能を算出し、(【0055】)
キャスクの仕様である放射能設定値及び発熱量設定値を満足するかを判定し、満足されないとき、再度、1つのキャスクに収納する使用済燃料集合体を抽出し、(【0056】)
満足したとき、1つのキャスクに収納すべき複数の使用済燃料集合体が決定され、これらの使用済燃料集合体は、1つのグループとして、キャスクのある識別番号を付してメモリ4に格納され、(【0057】)
収納対象の使用済燃料集合体のキャスクへの収納計画が終了したかを判定する方法であって、(【0058】)
燃焼度の範囲が異なる使用済燃料集合体がそれぞれ配置される複数の収納領域を有して収納領域の数が異なる複数の使用済燃料集合体収納パターンの情報が準備されており、これらの使用済燃料集合体収納パターンのうちから1つの使用済燃料集合体収納パターンを選択でき、(【0073】)
燃焼度BUによって使用済燃料集合体は、燃焼度BUが、30000MWd/t以下の第1燃料集合体、30000MWd/t<BU≦35000MWd/tを満足する第2燃料集合体、35000MWd/t<BU≦38000MWd/tを満足する第3燃料集合体、38000MWd/t<BU≦41000MWd/tを満足する第4燃料集合体に分けられ、(前記(イ)a)
前記使用済燃料集合体収納パターンは、領域R1、R2を有する二領域パターン、領域R1~R3を有する三領域パターン、領域R1~R4を有する四領域パターンであり、各収納パターンにおける領域R1、R2、R3、R4には、それぞれ、第1燃料集合体、第2燃料集合体、第3燃料集合体、第4燃料集合体が収納される、(前記(イ)b)
使用済燃料集合体の収納支援方法」
イ 引用文献2
(ア)引用文献2の記載事項
原査定の拒絶の理由で引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である特開2008-232718号公報(以下「引用文献2」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。
【0001】
本発明は、燃料収納容器への使用済燃料集合体の装荷方法及び燃料集合体装荷装置に係り、特に、沸騰水型原子力発電プラント及び加圧水型原子力発電プラントから発生する使用済燃料集合体を装荷するのに好適な燃料収納容器への使用済燃料集合体の装荷方法及び燃料集合体装荷装置に関する。
【0009】
本発明の目的は、より高い燃焼度の使用済燃料集合体を燃料収納容器における線量率の制限値を満足させてより短時間に燃料収納容器内に装荷することができる燃料収納容器への使用済燃料集合体の装荷方法及び燃料集合体装荷装置を提供することにある。
【0028】
キャスク内での使用済燃料集合体の収納位置を決定する(ステップ5)。メモリ30に格納された各使用済燃料集合体39の平均燃焼度の情報を用いて、仮設定された使用済燃料集合体39毎に、挿入する、バスケット42内の収納空間43を決定する。この決定は、CPU29が行う以下に示す処理によりなされる。まず、それらの使用済燃料集合体39を、平均燃焼度に基づいて、中央領域45内の各収納空間43にそれぞれ収納する使用済燃料集合体、及び周辺領域46内の各収納空間43にそれぞれ収納する使用済燃料集合体に分類する。この分類は、各使用済燃料集合体39の平均燃焼度と平均燃焼度設定値を比較することによって行われる。すなわち、平均燃焼度が平均燃焼度設定値以上の使用済燃料集合体39Aを中央領域45に収納し、平均燃焼度が平均燃焼度設定値未満の使用済燃料集合体39Bを周辺領域46に収納するものとする。すなわち、表示装置31に表示された図4(A)に示す画像情報を基に金属キャスク40内に収納する使用済燃料集合体を選定する際に、中央領域45内の収納空間43の数だけ燃焼度の高い使用済燃料集合体39を選定し、また、周辺領域46内の収納空間43の数だけ燃焼度の低い使用済燃料集合体39を選定する。前者の使用済燃料集合体39は平均燃焼度が平均燃焼度設定値以上になり、後者の使用済燃料集合体39は平均燃焼度が平均燃焼度設定値未満となる。
【0029】
CPU29は、中央領域45に存在する各収納空間43を対象に、使用済燃料集合体39A毎に収納空間43を決める。例えば、金属キャスク40の中心軸付近に位置する一つの収納空間43を基点に時計回りに螺旋状に外側へ向かって、平均燃焼度の大きい使用済燃料集合体39Aの順に中央領域45に存在する収納空間43を決定する。周辺領域46内に位置する各収納空間43に対しても、同様に、収納する使用済燃料集合体39Bをそれぞれ決定する。例えば、中央領域45の収納空間43と隣り合う周辺領域46内の一つの収納空間43を基点に時計回りに螺旋状に外側へ向かって、平均燃焼度の大きい使用済燃料集合体39Bの順に周辺領域46に存在する収納空間43を決定する。収納位置が決定された後、中央領域45内の収納空間43毎に、その収納空間43の位置情報と使用済燃料集合体39Aの燃料ID情報を対応付けてメモリ30に記憶する。また、周辺領域46内の収納空間43毎に、その収納空間43の位置情報と使用済燃料集合体39Bの燃料ID情報を対応付けてメモリ30に記憶する。
【0030】
線源強度分布を算出する(ステップ6)。仮設定された各使用済燃料集合体39のそれぞれの軸方向の燃焼度分布データを用いて各使用済燃料集合体39における軸方向の線源強度分布を算出する。ここで、線源とは、使用済燃料集合体内の核燃料物質に含まれている核分裂生成物、及びPu,Am,Cm等の重元素から放出される放射線(ガンマ線及び中性子線)及び崩壊熱を意味している。算出された軸方向の線源強度分布の情報は、メモリ30に記憶される。
【0031】
キャスクの線量分布を算出する(ステップ7)。メモリ30は、線量分布計算プログラム及び金属キャスク40の構造や部材の密度などを定義した入力データを記憶している。CPU29は、収納される各使用済燃料集合体39A,39Bの線源強度分布の情報及び上記入力データを用いて、線量分布計算プログラムにより、放射線、すなわち中性子及びγ線のフラックス分布を計算する。さらに、CPU29は、放射線のエネルギーに依存するフラックス分布を基に金属キャスク40周りの実効当量線量(線量)の空間分布(線量率分布)を、線量分布計算プログラムを用いて計算する。CPU29は、算出された線量率分布の情報に基づいて表示画像情報を作成する。この画像情報は表示装置31に表示される。その画像情報の表示例が図4(C)に示される。この画像情報は金属キャスク40の画像情報も含んでいる。図4(C)に示す画像情報は、金属キャスク40の側部表面から1m離れた位置における、軸方向(Z座標方向)の線量率分布を示している。図4(C)の「R」は金属キャスクの半径方向を示している。本表示例では、金属キャスク40の側部の上記位置での線量率の最大値が、90マイクロ・シーベルト毎時(μSv/h)であり、線量率の制限値(100μSv/h)を下回っている。
【0032】
線量率計算値が第1線量率設定値未満であるかを判定する(ステップ8)。CPU29は、算出された線量率分布の情報に含まれる最大線量率(線量率計算値C)が第1線量率設定値(線量率の制限値)未満であるかを判定する。この最大線量率は、金属キャスク40の側部表面から1m離れた位置において算出された値である。キャスクの表面から1m離れた位置での線量率制限値は100μSv/hである。ステップ8の判定が「No」の場合、線量率計算値Cが100μSv/h以上である場合には、金属キャスク40に収納する使用済燃料集合体39を再選定し、ステップ3で再選定された各使用済燃料集合体39の燃料ID情報を入力する。再選定された各使用済燃料集合体39を基にしたステップ4~8の前述の各処理が、ステップ8の判定が「Yes」になるまで繰り返される。
【0033】
ステップ8の判定が「Yes」になったとき、線量率計算値が第2線量率設定値以上であるかを判定する(ステップ9)。第2線量率設定値は第1線量率設定値よりも小さな値である。例えば、第2線量率設定値は第1線量率設定値の90%に設定される。本実施例では、第2線量率設定値は90μSv/hである。線量率計算値Cが第2線量率設定値よりも小さい場合、すなわち、ステップ9の判定が「No」である場合には、金属キャスク40の側部表面から1m離れた位置における線量率に余裕があることを示しており、平均燃焼度がより高い、すなわち、線源強度がより強い使用済燃料集合体39を収納することができる。ステップ9の判定が「No」であるとき、仮設定した使用済燃料集合体39の一部を燃焼度のより高い使用済燃料集合体に再設定するステップ3~9の処理が繰り返される。その再設定は、表示装置31に例えば図4(A)に示す画像情報が表示される。燃料貯蔵ラック38内の収納位置情報と併せて燃焼度情報分布の情報を表示することによって、燃焼度の高い使用済燃料集合体を選定することが容易になる。
【0044】
本実施例は、金属キャスク40内に装荷するために仮設定された複数の使用済燃料集合体のそれぞれの線源強度を用いて、それらの使用済燃料集合体39を定められたそれぞれの位置に装荷した状態で金属キャスク40の周囲(例えば、金属キャスク40の側部表面から1m離れた位置)での線量率を算出している。このため、より高い精度の線量率を算出することができ、金属キャスク40内に装荷する使用済燃料集合体39の選定、及びこれらの使用済燃料集合体39の金属キャスク40内での装荷位置の決定をより正確に行うことができる。これによって、金属キャスク40内に装荷した使用済燃料集合体39の装荷し直しの頻度を著しく低減できる。このような本実施例は、金属キャスク40への使用済燃料集合体39の装荷開始から、使用済燃料集合体39が装荷された金属キャスク40の搬出までに要する時間をより短縮することができる。また、金属キャスク40内に装荷する使用済燃料集合体39の選定、及びこれらの使用済燃料集合体39の金属キャスク40内での装荷位置の決定に要する演算時間を、それらの選定し直し等の頻度が減少するので、短縮させることができる。本実施例は、より高い燃焼度の選択された複数の使用済燃料集合体39を、金属キャスク40に対する線量率の制限値を満足させて、金属キャスク40内により短時間に装荷することができる。
【図1】
[図:0001413044000008.jpg]
【図3】
[図:0001413044000009.jpg]
【図4】
[図:0001413044000010.jpg]
【図5】
[図:0001413044000011.jpg]
(イ)引用文献2に記載された技術的事項の認定
上記(ア)によれば、引用文献2には、燃料収納容器への使用済燃料集合体の装荷方法について、次の技術的事項(以下「引用文献2に記載された技術的事項」という。)が記載されていると認められる。
「より高い燃焼度の使用済燃料集合体を燃料収納容器における線量率の制限値を満足させてより短時間に燃料収納容器内に装荷することができる燃料収納容器への使用済燃料集合体の装荷方法であって、(【0009】)
当該装荷方法は、金属キャスク40内に装荷するために仮設定された複数の使用済燃料集合体のそれぞれの線源強度を用いて、それらの使用済燃料集合体39を定められたそれぞれの位置に装荷した状態で金属キャスク40の周囲(例えば、金属キャスク40の側部表面から1m離れた位置)での線量率を算出しており、(【0044】)
線量率計算値が第1線量率設定値未満であるかを判定する(ステップ8)際に、CPU29は、算出された線量率分布の情報に含まれる最大線量率(線量率計算値C)が第1線量率設定値(線量率の制限値)未満であるかを判定し、ステップ8の判定が「No」の場合、すなわち、線量率計算値Cが100μSv/h以上である場合には、金属キャスク40に収納する使用済燃料集合体39を再選定し、ステップ3で再選定された各使用済燃料集合体39の燃料ID情報を入力し、再選定された各使用済燃料集合体39を基にしたステップ4~8の前述の各処理が、ステップ8の判定が「Yes」になるまで繰り返され、(【0032】)
ステップ8の判定が「Yes」になったとき、線量率計算値が第2線量率設定値以上であるかを判定し(ステップ9)、線量率計算値Cが第2線量率設定値よりも小さい場合、すなわち、ステップ9の判定が「No」である場合には、金属キャスク40の側部表面から1m離れた位置における線量率に余裕があることを示しており、平均燃焼度がより高い、すなわち、線源強度がより強い使用済燃料集合体39を収納することができるため、ステップ9の判定が「No」であるとき、仮設定した使用済燃料集合体39の一部を燃焼度のより高い使用済燃料集合体に再設定するステップ3~9の処理が繰り返される、(【0033】)
という技術的事項。」
(4)本件補正発明と引用発明との対比
本件補正発明と引用発明を対比すると、以下のとおりである。
ア 本件補正発明における「スペック」は、本願明細書の発明の詳細な説明の【0018】に照らせば、「使用済燃料集合体5の線源強度」のことである一方で、「使用済燃料集合体5の線源強度は、炉心での燃焼度および冷却期間に基づいて(燃焼度および冷却期間を主だったパラメータとして)算出される」ものであり「燃焼度と冷却期間とのいずれか一方を固定値とした場合、他方が使用済燃料集合体5のスペックと考えることができる」ものである。よって、引用発明の「使用済燃料集合体」の「燃焼度BU」は、冷却期間を固定値とした場合の使用済燃料集合体のスペックといえるため、本件補正発明の「使用済燃料集合体のスペック」に相当する。
イ 引用発明の「燃焼度BUによって使用済燃料集合体は、燃焼度BUが、30000MWd/t以下の第1燃料集合体、30000MWd/t<BU≦35000MWd/tを満足する第2燃料集合体、35000MWd/t<BU≦38000MWd/tを満足する第3燃料集合体、38000MWd/t<BU≦41000MWd/tを満足する第4燃料集合体に分けられ」ることは、前記アも踏まえると、使用済燃料集合体のスペックを4つのクラスに分けているため、本件補正発明の「使用済燃料集合体のスペックを3つ以上の複数のクラスに分ける第1ステップ」に相当する。
ウ 引用発明の「使用済燃料集合体がそれぞれ配置される複数の収納領域」は、本件補正発明の「使用済燃料集合体を収容するキャスクの複数のセル」に相当する。
エ 引用発明の「前記使用済燃料集合体収納パターンは、領域R1、R2を有する二領域パターン、領域R1~R3を有する三領域パターン、領域R1~R4を有する四領域パターンであり、各収納パターンにおける領域R1、R2、R3、R4には、それぞれ、第1燃料集合体、第2燃料集合体、第3燃料集合体、第4燃料集合体が収納される」ことは、前記ウを踏まえると、本件補正発明の「前記使用済燃料集合体を収容するキャスクの複数のセルに対して、前記使用済燃料集合体を前記複数のクラスごとに割り付けた配置パターンを設定する第2ステップ」を備えることに相当する。
オ 本件補正発明における「キャスクの設計方法」は、本願明細書の発明の詳細な説明の【0016】に照らせば、次の2通りの「設計」を含むものである。すなわち、「キャスク10の中性子遮蔽体であるレジン26の厚みを厚く」することに代表されるようなキャスク10の構造に関する設計と、「より適切な配置パターンで使用済燃料集合体5をキャスク10に収容する」ための使用済燃料集合体のキャスク内での配置に関する設計である。よって、引用発明の「使用済燃料集合体の収納支援方法」は、使用済燃料集合体のキャスク内での配置に関する設計を行うものであるため、本件補正発明の「キャスクの設計方法」に相当する。
カ 引用発明の「キャスク内における、使用済燃料集合体の収納パターンを選択し、キャスクに収納する使用済燃料集合体を抽出し、抽出した複数の使用済燃料集合体が収納されたときにおけるキャスクの放射能を算出し、キャスクの仕様である放射能設定値及び発熱量設定値を満足するかを判定」することは、本件補正発明の「設定された前記配置パターンで前記使用済燃料集合体が前記キャスクに収容される場合に、前記キャスクの外表面に漏洩する線量分布を算出する」ことと、「設定された前記配置パターンで前記使用済燃料集合体が前記キャスクに収容される場合に、前記キャスクの放射能を算出する」点で共通する。
キ 引用発明の「キャスクの仕様である放射能設定値及び発熱量設定値を満足するかを判定し、満足されないとき、再度、1つのキャスクに収納する使用済燃料集合体を抽出し、満足したとき、1つのキャスクに収納すべき複数の使用済燃料集合体が決定され、これらの使用済燃料集合体は、1つのグループとして、キャスクのある識別番号を付してメモリ4に格納され、収納対象の使用済燃料集合体のキャスクへの収納計画が終了したかを判定する」点は、本件補正発明の「前記配置パターンを変更しながら、少なくとも前記第2ステップおよび前記第3ステップを繰り返し実行して、前記配置パターンごとに対応した前記線量分布と前記スペックとに基づいて、複数の前記配置パターンのなかから解となる配置パターンを決定」することと、「前記配置パターンを変更して、少なくとも前記第2ステップおよび前記第3ステップを繰り返し実行して、前記配置パターンごとに対応した前記放射能に基づいて、複数の前記配置パターンのなかから解となる配置パターンを決定」する点で共通する。
(5)本件補正発明と引用発明の一致点及び相違点
上記(4)によれば、本件補正発明と引用発明との一致点及び相違点は以下のとおりとなる。
<一致点>
「使用済燃料集合体のスペックを3つ以上の複数のクラスに分ける第1ステップと、
前記使用済燃料集合体を収容するキャスクの複数のセルに対して、前記使用済燃料集合体を前記複数のクラスごとに割り付けた配置パターンを設定する第2ステップと、
設定された前記配置パターンで前記使用済燃料集合体が前記キャスクに収容される場合に、前記キャスクの放射能を算出する第3ステップと、
を備え、
前記配置パターンを変更して、少なくとも前記第2ステップおよび前記第3ステップを繰り返し実行して、前記配置パターンごとに対応した前記放射能に基づいて、複数の前記配置パターンのなかから解となる配置パターンを決定する、
キャスクの設計方法。」
<相違点1>
解となる配置パターンを決定するために、本件補正発明が、キャスクの放射能として「キャスクの外表面に漏洩する線量分布」であって「前記線量分布は、使用済燃料集合体の軸方向に直交する方向である前記キャスクの外表面の周方向の分布」を用い、また、使用済燃料集合体のスペックを用いているのに対して、引用発明では「キャスクの放射能」を用いるものの、当該「キャスクの放射能」がキャスクの外表面に漏洩するものか、及び周方向の分布なのかが不明であるとともに、使用済燃料集合体のスペックを用いているかどうか不明である点。
<相違点2>
第2ステップ及び第3ステップを繰り返し実行して解となる配置パターンを決定することについて、本件補正発明が「配置パターンを変更しながら」前記第2ステップおよび前記第3ステップを繰り返し実行して、「前記線量分布と前記スペック」とに基づいて、複数の前記配置パターンのなかから解となる配置パターンを決定するものであるのに対して、引用発明では、キャスクの仕様である放射能設定値及び発熱量設定値を満足するかを判定し、満足されないとき、再度、1つのキャスクに収納する使用済燃料集合体を抽出しており、配置パターンを変更しながら第2ステップ及び第3ステップを実行するものではなく、また、キャスクの仕様である放射能設定値及び発熱量設定値を満足する場合にキャスクの配置を決定している点。
(6)検討
上記相違点1、2について以下で検討する。
ア 相違点1について
引用発明は、「使用済燃料集合体の収納支援方法であって、1つのキャスクに収納するために抽出された所定体数の使用済燃料集合体の、算出したそれぞれの放射能及び発熱量を用いて、そのキャスクの仕様である放射能設定値及び発熱量設定値が満足されるかを判定」するものであって、当該方法を用いて使用済燃料集合体を収納したキャスクは、収納された使用済燃料集合体の放射能や発熱量がキャスクの仕様を満たすものであるが、当該キャスクを実際に搬送あるいは保管するために、キャスクの周囲に対する安全性や法的に定められた安全基準などを考慮することは当業者であれば把握し得る課題であると認められる。
そのため、引用発明から出発した当業者は、想定されるキャスク周囲の線量率が規定値を満たすように設計するという動機を持つと言える。
一方、引用文献2に記載された技術的事項は、より高い燃焼度の使用済燃料集合体を燃料収納容器における線量率の制限値を満足させて燃料収容容器収納する際に、金属キャスク40内に装荷するための仮設定された複数の使用済燃料集合体のそれぞれの線源強度を用いて、それらの使用済燃料集合体39を定められたそれぞれの位置に装荷した状態で金属キャスク40の周囲(例えば、金属キャスク40の側部表面から1m離れた位置)での線量率を算出するものである。
ここで、引用文献2に記載された技術的事項では、金属キャスク40の周囲での線量率の一例として、金属キャスク40の側部表面から1m離れた位置での線量率を算出することとしているが、「キャスクの表面から1m離れた位置」に加えて「キャスクの表面」での線量率が法令・規則等によって制限されていることは技術常識である(必要であれば、「実用発電用原子炉及びその附属施設の技術基準に関する規則」第26条第1項第6号、「工場又は事業所における核燃料物質等の運搬に関する措置に係る技術的細目等を定める告示」第4条、「原子力発電所敷地内での輸送・貯蔵兼用乾式キャスクによる使用済燃料の貯蔵に関する審査ガイド(原子力規制委員会、平成31年3月13日制定)」の「2.2 遮蔽機能」等を参照。)。
また、引用文献2に記載された技術的事項では、軸方向の線量分布を測定することとしており、当該測定した線量分布が周方向のどの方向のものであるかが不明であるものの、前記技術常識を踏まえればキャスク周方向のどの位置であっても法令・規則等で定められている制限値(「運搬する物の表面における線量当量率については、二ミリシーベルト毎時」及び「運搬する物の表面から一メートルの距離における線量当量率については、百マイクロシーベルト毎時」)を満たさなくてはいけないところ、キャスク周方向のどの位置における線量もこのような規定値を満たすことを確認するようにすることは、キャスクに収容する使用済燃料集合体の配置が円対称性を有さずキャスク周囲の線量分布が周方向によって異なることが自明であるため、当業者が当然になし得る事項であると認められる。
さらに、引用文献2に記載された技術的事項の、算出した線量率計算値Cが第2線量率設定値よりも小さい場合には、線量率の制限値に対して余裕があるため、仮設定した使用済み燃料集合体39の一部を燃焼度のより高い使用済燃料集合体に再設定する処理を繰り返すことは、線量率と使用済み燃料集合体の燃焼度(本件補正発明における「スペック」)に基づいて解となる配置パターンを決定していると認められる。
そして、引用発明と引用文献2に記載された技術的事項は、キャスクに使用済燃料集合体を収納するための方法であって共通の技術分野に属するとともに、使用済燃料集合体のキャスクへの収納効率を向上する、という共通の課題を有している。
したがって、引用発明においてキャスク周囲の線量率が規定値を満たすようにするために、前記技術常識を考慮した上で引用文献2に記載された技術的事項を適用し、相違点1に係る本件補正発明の構成とすることは当業者が容易に想到し得るものである。
イ 相違点2について
引用発明は、キャスクの放射能を算出し、所定の放射能設定値及び発熱量設定値を設けて、最初に抽出された複数の使用済燃料集合体が当該設定値を満足すれば、1つのキャスクに収納すべき複数の使用済燃料集合体が決定されるから、必ずしも使用済燃料集合体の配置パターンを変更しながら、複数の配置パターンの中から解となる配置パターンを決定しているものではないが、抽出した使用済燃料集合体には設定値を満足するものと満足しないものがあることを前提とし、設定値を満足するものを探求しているものといえる。
そして、設定値を満足する使用済燃料集合体がたった一つである可能性が小さいことは明らかであり、当業者であれば、設定値を満足する複数の使用済燃料集合体のうち、安全基準上、より有利な使用済燃料集合体を選択しようと動機づけられるといえる。
一方、引用文献2に記載された技術的事項の、算出した線量率計算値Cが第2線量率設定値よりも小さい場合には、線量率の制限値に対して余裕があるため、仮設定した使用済み燃料集合体39の一部を燃焼度のより高い使用済燃料集合体に再設定する処理を繰り返すことは、設定値を満足する複数の使用済燃料集合体のうち、安全基準上、より有利な使用済燃料集合体を選択することに相当し、また、線量率計算値と使用済燃料集合体の燃焼度(本件補正発明における「スペック」)とに基づいて解となる配置パターンを決定することに相当する。
そして、引用発明と引用文献2に記載された技術的事項は、使用済燃料集合体のキャスクへの収納効率を向上する、という共通の課題を有するものであるため、引用発明において安全基準上、より有利な使用済燃料集合体を選択するように、引用文献2に記載された技術的事項を適用して、複数の収納パターンにおける線量率を算出して比較できるようにすることは当業者が適宜なし得ることであると言える。
したがって、引用発明において引用文献2に記載された技術的事項を適用し、相違点2に係る本件補正発明の構成とすることは当業者が容易に想到し得るものである。
(7)本件補正発明の効果について
前記(6)のとおり、相違点に係る本件補正発明の構成は当業者が容易に想到し得たものであり、当該相違点を備える本件補正発明の効果は、本件補正発明の構成が奏するものとして、引用発明、引用文献2に記載された技術的事項に基づいて予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。
(8)請求人の主張について
請求人は、引用文献2に記載された技術的事項は、燃料棒の軸方向の分布を評価するものであり、使用済燃料の軸方向に直交する方向であるキャスクの外表面の周方向の線量分布については開示も示唆もなく、引用発明に引用文献2に記載された技術的事項を適用しても本件補正発明を想到することは容易でないことを主張するが、技術常識を踏まえれば引用発明に引用文献2に記載された技術的事項を適用して相違点に係る本件補正発明の構成とすることは当業者が容易に想到し得ることは前記(6)で説示したとおりである。
(9)小括
したがって、本件補正発明は、引用発明、引用文献2に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
よって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するものである。
3 本件補正についてのむすび
以上のとおりであるから、本件補正は、特許法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明の認定
本件補正は、上記第2のとおり却下されたので、本願の請求項1~8に係る発明は、令和5年3月24日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1~8に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、上記第2の[理由]1(2)において本件補正前の請求項1として記載された事項により特定されるとおりのものである。
2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、本願発明は、本願の出願前に頒布された刊行物である又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である引用文献1に記載された引用発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、という理由を含むものである。
3 引用文献の記載事項及び引用発明等の認定
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1、引用文献2の記載事項及び引用発明、引用文献2に記載された技術的事項の認定は、上記第2の[理由]2(3)に記載したとおりである。
4 対比・判断
本願発明は、上記第2の[理由]2で検討した本件補正発明から、「キャスクの外表面に漏洩する線量分布」について、「前記線量分布は、使用済燃料集合体の軸方向に直交する方向である前記キャスクの外表面の周方向の分布である」とあったのを「前記線量分布は、前記キャスクの外表面の周方向の分布である」として、前記キャスクの周方向の分布が、前記キャスクの軸方向に直交する方向であるという限定事項を削除したものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が、前記第2の[理由]2(6)に記載したとおり、引用発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるところ、同様の理由により、本願発明は、引用発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
J-PlatPat 審決検索を開く
2023-012186