特許拒絶査定不服審判
2022-020983
基板処理装置及び基板搬送装置
- 審判番号
- 2022-020983
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2020-155790
- 請求日
- 2022年12月23日
- 審決日
- 2024年04月26日
- 公報発行日
- 2024年10月25日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】ブルックス オートメーション ユーエス、エルエルシー
- 【請求人代理人】弁理士法人朝日奈特許事務所
- 審判長/審判官
- 審判長 河本 充雄
- 審判官 松永 稔
- 審判官 中野 浩昌
- 分類
- P18 .113-WZ (H01L) / P18 .121-WZ (H01L)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条1項3号特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第29条第1項第3号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2020-155790「基板処理装置及び基板搬送装置」拒絶査定不服審判事件〔令和 2年12月24日出願公開、特開2020-205450〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、2011年(平成23年)11月10日(パリ条約に基づく優先権主張 外国庁受理 2010年11月10日 米国、2011年3月11日 米国、2011年11月10日 米国)を国際出願日とする特願2013-538886号の一部を、平成28年12月26日に新たな特許出願(特願2016-251575号)とし、更にその一部を令和1年6月26日に新たな特許出願(特願2019-118908号)とし、更にその一部を令和2年9月16日に新たな特許出願としたものであって、その手続の経緯は以下のとおりである。
令和3年10月20日付け :拒絶理由通知書
令和4年 4月26日 :意見書、手続補正書の提出
令和4年 8月16日付け :拒絶査定
令和4年12月23日 :審判請求書、手続補正書の提出
令和5年 8月 2日付け :拒絶理由通知書
令和6年 2月 7日 :意見書、手続補正書の提出
第2 本願発明
本願の請求項1~6に係る発明は、令和6年2月7日提出の手続補正書の請求項1~6に記載された事項により特定されるものであって、その請求項1の記載は次のとおりである。(以下、本願の請求項1に係る発明を「本願発明」という。)
「 【請求項1】
複数のポートを有する搬送室であって、それぞれのポートが、それぞれの基板保持ステーションに結合するように構成されている、搬送室と、
少なくとも部分的に前記搬送室内に取り付けられた基板搬送装置と
を備える基板処理装置であって、
前記基板搬送装置は、
フレームと、
互いに回転可能および直列に結合された第一の上腕リンク、第一の前腕リンク及び少なくとも一つの基板ホルダを有する第一のスカラアームと、
互いに回転可能および直列に結合された第二の上腕リンク、第二の前腕リンク及び少なくとも一つの基板ホルダを有する第二のスカラアームであって、前記第一及び第二のスカラアームは、共通の肩軸を共有するように前記フレームに取り付けられている、第二のスカラアームと、
前記第一及び第二のスカラアームのそれぞれが、前記共通の肩軸を中心にユニットとしてそれぞれ独立した回転が可能であり、前記第一及び第二のスカラアームのうちの別のスカラアームから独立した伸長が可能であるように、前記第一及び第二のスカラアームに接続された同軸の駆動セクションであって、前記第一及び第二のスカラアームのそれぞれが、前記共通の肩軸を中心に異なる角度位置で伸長可能であり、それぞれの角度位置は、それぞれのポートが前記第一及び第二のスカラアームのそれぞれによってアクセス可能であるように、前記搬送室のそれぞれのポートに対応している、同軸の駆動セクションと
を含み、
前記第一及び第二のスカラアームは、
前記第二のスカラアームが前記共通の肩軸を中心に前記第二のスカラアームのそれぞれの異なる角度位置で持続された状態で、前記共通の肩軸を中心とした前記第一のスカラアームの伸長軸の回転が、前記第二のスカラアームによる前記第一のスカラアームと前記第二のスカラアームとの間の相対移動の妨げにより制約され、前記共通の肩軸を中心とした前記第一のスカラアームの伸長軸の回転が、前記第二のスカラアームの伸長軸に対して非ゼロ角度で角度が付けられたままであり、前記駆動セクションとは無関係に前記第二のスカラアームの前記角度位置により画定される角度範囲内で制約され、前記同軸の駆動セクションが前記第一及び第二のスカラアームのうちの少なくとも1つを前記第一及び第二のスカラアームのうちの別のスカラアームに対して回転させることで、前記非ゼロ角度が可変であるように、
互いに対して配置される、
基板処理装置。」
第3 当審における拒絶の理由
当審において、令和5年8月2日付けで通知した拒絶の理由2、3は、以下のとおりである。
理由2(新規性) この出願の請求項1~6に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
理由3(進歩性) この出願の請求項1~6に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
記
<引用文献等一覧>
2 特開2008-272864号公報
第4 引用文献2、引用発明
1 引用文献2の記載
当審において、令和5年8月2日付けで通知した拒絶の理由で引用した特開2008-272864号公報(以下「引用文献2」という。)には次の記載がある。(下線は当審において付した。)
「【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記特許文献1,2に記載のロボットは、ダブルアームを駆動させることによってスループットの向上を図っているが、その駆動はいずれもリンク機構となっており、一方のアームがワークを搬入/搬出している間、他方のアームは後方で待機状態となっていることから、搬送時間短縮の観点からは不十分である。
【0011】
また、上記特許文献1,2においては、ワークを載置する搬送台(ハンド部材)の座標位置が上下方向にずれているものが記載されているが、こうしたずれは、上記のように、プロセスチャンバ内のワークを一方の搬送台で搬出した後に他方の搬送台で別のワークを搬入する場合、搬送台の駆動軸等を上下方向に大きく移動させて搬送台の上下方向の座標位置をプロセスチャンバの座標位置と一致させるという動作を加えなければならず、動作機構が煩雑となり、搬送時間短縮の観点からは不十分である。
【0012】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その目的は、各アームを独立して動作させるとともに、各アームの上下方向の座標位置を同じにして、ワークの搬送時間等を短縮することができる産業用ロボットを提供することにある。また、本発明の他の目的は、そうした産業用ロボットを備えた集合処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するための本発明の産業用ロボットは、基台部側からアーム部及びハンド部の順で連結され、当該ハンド部を所定方向に向けながら伸縮自在に動作するアームを2つ以上有する産業用ロボットであって、前記アームそれぞれは、アーム伸縮軸を回動中心として前記アームを伸縮させるアーム伸縮用駆動源と、アーム旋回軸を回動中心として前記アームを旋回させるアーム旋回用駆動源と、前記ハンド部の上下方向の座標位置をほぼ同じにする連結部材と、を備えることを特徴とする。
【0014】
この発明によれば、アームそれぞれが、アーム伸縮軸を回動中心としてアームを伸縮させるアーム伸縮用駆動源と、アーム旋回軸を回動中心としてアームを旋回させるアーム旋回用駆動源とを備えるので、それぞれのアームが、その伸縮と旋回を独自に行うことができる。また、この発明によれば、ハンド部の上下方向の座標位置をほぼ同じにする連結部材を備えるので、それぞれのアームが、例えばプロセスチャンバ内のワークの搬出と搬入を駆動軸等の大きな上下移動をさせずに行うことができる。したがって、本発明によれば、ワークの搬送時間やサイクルタイム等を短縮でき、作業性を高めることができる。
【0015】
本発明の産業用ロボットの好ましい態様は、前記アームのうちの1つのアームを動作させるアーム伸縮軸が中実軸であり、それ以外の軸である前記アーム旋回軸及び他のアームのアーム伸縮軸が前記中実軸と同心になるように設けられた中空軸であるように構成する。
【0016】
この発明によれば、アーム伸縮軸とアーム旋回軸とが同心となるように構成されるので、一つの同心軸を有するコンパクトな構造となるとともに、例えば減圧環境下に設置した際の密封性を高めることができる。
・・・<中略>・・・
【0021】
上記課題を解決するための本発明の集合処理装置は、上記本発明の産業用ロボットと、当該産業用ロボットが設置されるトランスファチャンバと、当該トランスファチャンバの周囲に配置され、前記産業用ロボットが備える2つ以上のアームによってワークの搬入/搬出が行われる複数のプロセスチャンバと、を備えることを特徴とする。なお、「集合」とは、プロセス装置が多く、そうしたプロセス装置をプロセスチャンバとしてトランスファチャンバの周りに配置した状態を示す。
【0022】
この発明によれば、産業用ロボットが備える2つ以上のアームは、それぞれがアーム伸縮用駆動源とアーム旋回用駆動源とを備えて独立に動作し、それぞれが備えるハンド部に載置されるワークの高さがほぼ同じであるように構成されているので、トランスファチャンバの周囲に配置されたプロセスチャンバに対するワークの搬入/搬出等の時間を短縮することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明の産業用ロボットによれば、それぞれのアームが、その伸縮と旋回を独自に行うことができるとともに例えばプロセスチャンバ内のワークの搬出と搬入を駆動軸等の大きな上下移動をさせることなく行うことができるので、ワークの搬送時間やサイクルタイム等を短縮でき、作業性を高めることができる。さらに、本発明の産業用ロボットによれば、それぞれのアームの旋回と伸縮は、アーム旋回軸とアーム伸縮軸それぞれを個別に回転させて行うことができるので、制御する軸数が少なく、コストメリットのある装置構造となっている。
【0024】
また、本発明の集合処理装置によれば、トランスファチャンバの周囲に配置されたプロセスチャンバに対するワークの搬入/搬出等の時間を短縮することができる。
・・・<中略>・・・
【0027】
図1には2つのアーム10A,10Bを有するロボット1が例示されており、アーム10A,10Bそれぞれは、アーム伸縮軸2A,2Bを回動中心としてアーム10A,10Bを伸縮させるアーム伸縮用駆動源4A,4Bと、アーム旋回軸3A,3Bを回動中心としてアーム10A,10Bを旋回させるアーム旋回用駆動源5A,5Bと、ハンド部12の上下方向の座標位置P1,P2をほぼ同じにする連結部材と、を備えている。そして、2つのアーム10A,10Bのうちの1つのアーム10Aを動作させるアーム伸縮軸2Aが中実軸であり、それ以外の軸であるアーム旋回軸3A,3B及び他のアーム10Bのアーム伸縮軸2Bが前記の中実軸と同心になるように設けられた中空軸であるように構成されている。
【0028】
なお、本願の説明及び図中の符号において、数字符号に続く「A」「B」の符号は、そうした2つのアーム10A,10Bに対応した構成要素であることを表している。本願発明の各構成要素について、それぞれのアーム10A,10Bに対応して説明するときは数字の後に「A」「B」を付すが、それぞれのアーム10A,10Bに対応しないで説明するときは数字の後に「A」「B」を付さないこととする。以下、本発明の産業用ロボット1を、構成要素ごとに詳しく説明する。
【0029】
(アーム)
先ず、アーム10(10A,10B)について説明する。図2は、図1に示す2つのアームのうちの1つのアームを構成する第1アーム部材の内部構造を示す透視平面図(A)及びB-B断面図(B)であり、図3は、図1に示す2つのアームのうちの1つのアームを構成する第2アーム部材の内部構造を示す透視平面図(A)及びC-C断面図(C)である。本発明に係るロボット1は、2以上のアーム10を有している。それぞれのアーム10は、基台部100側からアーム部11及びハンド部12の順で連結され、ハンド部12を所定方向に向けながら伸縮自在に動作する。アーム部11とハンド部12は、基台部100側から、第1アーム部材20、第2アーム部材30及びハンド部材40の順で連結されて構成されている。
【0030】
アーム部11を構成する第1アーム部材20は、基台部100側にあってアーム伸縮軸2に連結する第1プーリ21と、第2アーム部材30側にあって第2アーム部材30に連結する第2プーリ22と、第1プーリ21及び第2プーリ22間に掛かる第1ベルト23とを有している。また、アーム部11を構成する第2アーム部材30は、第2プーリ22と同心となるように設けられた第3プーリ31と、ハンド部材40側にあってハンド部材40に連結する第4プーリ32と、第3プーリ31及び第4プーリ32間に掛かる第2ベルト33とを有している。また、ハンド部12を構成するハンド部材40は、図1中に平面図として示したが、ウエハ等のワークを搭載して搬送するための搭載部41を有する部材である。アーム部11とハンド部12のこうした構成により、2つのアーム10A,10Bそれぞれは、アーム伸縮用駆動源4A,4Bとアーム旋回用駆動源5A,5Bとを備えて独立に動作することができるので、後述するように、トランスファチャンバの周囲に配置されたプロセスチャンバに対するワークの搬入/搬出等の時間を短縮することができる。
【0031】
図1に示す例では、それぞれのアーム10A,10Bは、例えば、一方のアーム10Aが有する第1アーム部材20Aが、他方のアーム10Bが有する第1アーム部材20Bの上に重なるように設けられている。そして、それぞれの第1アーム部材20A,20Bに第2アーム部材30A,30B及びハンド部材40A,40Bが連結してアーム10A,10Bを構成している。
【0032】
図7は、ハンド部の上下方向の座標位置を同じにする連結部材の透視正面図であるが、アーム10Bを構成する第1アーム部材20Bと第2アーム部材30Bとは、図示のように、連結部材28で連結されている。この連結部材28は、両アーム10A,10Bが備えるハンド部12A,12Bの上下方向の座標位置PA,PBをほぼ同じにするように、上下方向に延びる連結部材28の高さhが調整されている。この連結部材28によって、図1等に示すように、第1アーム部材20Bが第1アーム部材20Aの下に配置されても、ハンド部12A,12Bの上下方向の座標位置PA,PBを同じにすることができる。こうしたことは、 例えばプロセスチャンバ内のワークの搬出と搬入を、それぞれのアーム10A,10Bの駆動軸を大きく上下動させずに行うことができるので、ワークの搬送時間やサイクルタイム等を著しく短縮でき、作業性を格段に向上させることができる。
・・・<中略>・・・
【0038】
各プーリの径比については、第1プーリ21の径R1と第2プーリ22の径R2とはR1:R2=2:1の関係であり、第3プーリ31の径R3と第4プーリ32の径R4とはR3:R4=1:2の関係となっている。したがって、第1プーリ21、第2プーリ22(第3プーリ31)及び第4プーリ32の回転角比は1:2:1となるので、第1プーリ21と第2プーリ22(第3プーリ31)と第4プーリ32との回転角度比は、1:2:1となる。その結果、後述の図8に示すように、第1プーリ21を回動させて図8(A)の状態から図8(B)及び図8(C)の状態に変化させると、第1アーム部材20と第2アーム部材30との角度が変化するが、ハンド部材40は、第1アーム部材20の第1プーリ21の中心点Pと第2アーム部材30の第4プーリ32の中心点Rとを結んだ直線(仮想線X)上を、向きを一定にしながら伸縮するように移動することとなる。
【0039】
本発明においては、アーム伸縮用駆動源4によってアーム伸縮軸2を回転させることにより、ハンド部40を所定方向に向けた状態下で、第1アーム部材20と第2アーム部材30とハンド部40とからなるアーム10の伸縮動作が行われる。他方、アーム旋回用駆動源5によってアーム旋回軸3を回転させることにより、第1アーム部材20を旋回し、アーム10全体の旋回動作が行われる。なお、こうした伸縮動作及び旋回動作については後で詳述する。
【0040】
(基台部)
次に、基台部100について説明する。図4は、図1に示す基台部100の透視断面の拡大図である。基台部100は、図4に示すように、アーム10Aの伸縮動作を行うアーム伸縮軸2Aと、アーム10Aの旋回動作を行うアーム旋回軸3Aと、アーム10Bの伸縮動作を行うアーム伸縮軸2Bと、アーム10Bの旋回動作を行うアーム旋回軸3Bとを備えている。そして、各アーム10A,10Bは、図1及び図5に示すアーム伸縮用駆動源4A,4Bによってアーム伸縮軸2A,2Bを回動中心として伸縮し、また、アーム旋回用駆動源5A,5Bによってアーム旋回軸3A,3Bを回動中心として旋回するように動作する。本発明においては、アームの伸縮と旋回それぞれについての軸と駆動源を有するので、各アームの旋回と伸縮を独自に行うことができるという効果がある。
・・・<中略>・・・
【0060】
(アームの動作)
次に、アーム10の動作を以下に説明する。図8は、アーム部の伸縮動作の説明図である。アーム10は、第1アーム部材20と第2アーム部材30とが同じ長さとなっており、そのため、図8(A)に示すように、初期状態では第1アーム部材20と第2アーム部材30とが折れて縮んだ状態になる。ここで、「同じ長さ」とは、アームの両端に位置するプーリの中心間の長さ(図8において、PとQとの間隔、QとRとの間隔)が同じという意味である。なお、初期状態では、ハンド部材40は第2アーム部材30にほぼ直交するように設けられており、第1アーム部材20及び第2アーム部材30の略長手方向の仮想線Yと、ハンド部材40の長手方向の仮想線Xとは直交している。
【0061】
次に、アーム伸縮軸2を仮想線Yに対して角度θ1となるまで回転させると、第1アーム部材20も第1プーリ21の中心点Pを中心にして仮想線Yに対して角度θ1となるまで回転する。本発明では、第1プーリ21と第2プーリ22の径比が2:1であるので、第2アーム部材30は、図8(B)に示すように、第1アーム部材20の2倍の速さで第1アーム部材20の回転方向の逆方向に回転する。したがって、第1アーム部材20と第2アーム部材30との角度θ2は、第1アーム部材20の回転角度θ1の2倍となる。
【0062】
また、本発明では、第3プーリ31と第4プーリ32の径比が1:2であるので、ハンド部材40は、図8(C)に示すように、第2アーム部材30の1/2倍の速さで第2アーム部材30の回転方向の逆方向に回転する。したがって、第2アーム部材30とハンド部材40との角度θ3は、第1アーム部材20と第2アーム部材30との角度θ2の1/2倍になる。
【0063】
さらにその後、アーム伸縮軸2を逆回転させると、アーム10は、図8(C)の伸長状態から図8(B)の状態を経て図8(A)の状態に戻る。
【0064】
以上のように、第1アーム部材20の回転角θ1とハンド部材40の回転角θ3の変化が同じになり、しかも第1アーム部材20と第2アーム部材30の長さが同じであるので、第2アーム部材30とハンド部材40とが連結する第4プーリ32の中心点Rは、上記仮想線X上を伸縮するように変化し、ハンド部材40は、上記仮想線X上を長手方向を変えずに変化する。したがって、アーム伸縮用駆動源4の回転によって、ハンド部材40は、一定方向に伸縮運動するように変位する。
【0065】
図9は、2つのアームの伸縮形態及び旋回形態の例を示す説明図である。図9において、(A)は、アーム10AがポジションSに伸縮し、アーム10BがポジションUに伸縮する態様であり、(B)は、アーム10AがポジションSに伸縮し、アーム10BがポジションVに伸縮する態様であり、(C)は、アーム10AがポジションTに伸縮し、アーム10BがポジションVに伸縮する態様であり、(D)は、アーム10AがポジションTに伸縮し、アーム10BがポジションUに伸縮する態様である。本発明のロボット1は、図9に示すように、2つのアーム10A,10Bをそれぞれ独立して伸縮させ、旋回させることができる。
【0066】
なお、各アーム10A,10Bの旋回は、例えばアーム旋回駆動源にステッピングモータを用いた場合には、初期位置からの回転数を制御することにより、旋回位置を制御することができる。一方、例えばアーム旋回駆動源にサーボモータを用いた場合には、各アーム等の回転位置を検出するセンサやロータリエンコーダ等を用いて旋回位置を検出し、制御するようにしてもよい。
【0067】
(半導体製造プロセスへの適用例)
図10は、本発明の産業用ロボット1が半導体の製造プロセスに用いられる一例を示す概略平面図であり、図11は、図10の概略側面図である。図10に示す装置は、半導体の製造プロセスにおける処理集合装置150であり、上記本発明のロボット1と、そのロボット1が設置されるトランスファチャンバ209と、トランスファチャンバ209の周囲に配置され、ロボット1が備える2つ以上のアーム10A,10Bによってワークの搬入搬出が行われる複数のプロセスチャンバ210,220,230,240とを備える例である。なお、装置中央に設けられたトランスファチャンバ209は、減圧可能になっている。
【0068】
このトランスファチャンバ209の周りには、例えば図10の例では、その周方向に6分割された処理室が配置されている。このうち、符号210,220,230,240の4室は、プロセスチャンバであり、符号203,203の2室は、その集合処理装置150外からウエハの受け渡しを行う収容室である。また、符号201は、集合処理装置外からウエハ304の受け渡し行うロボットである。こうした集合処理装置150では、各室の入り口にゲートベン202,204,205が設けられ、そのゲートベン202,204,205の開閉により処理室への出し入れが行われる。」
「【図1】
[図:0001414600000001.jpg]
」
「【図7】
[図:0001414600000002.jpg]
【図8】
[図:0001414600000003.jpg]
【図9】
[図:0001414600000004.jpg]
【図10】
[図:0001414600000005.jpg]
」
2 引用発明
(1) 処理集合装置150について
段落0068記載の「各室」の「室」が、同段落に記載の「処理室」を意味することは明らかである。
そうすると、図10についての段落0067、0068の記載によると、引用文献2には、
「ロボット1と、そのロボット1が設置されるトランスファチャンバ209と、トランスファチャンバ209の周囲に配置され、ロボット1が備える2つのアーム10A、10Bによってワークの搬入搬出が行われる複数のプロセスチャンバ210、220、230、240とを備える半導体の製造プロセスにおける処理集合装置150であって、
このトランスファチャンバ209の周りには、その周方向に6分割された処理室が配置され、このうち、4室は、プロセスチャンバ210、220、230、240であり、2室は、その集合処理装置150外からウエハの受け渡しを行う収容室203、203であり、各処理室の入り口にゲートベン204、205が設けられ、そのゲートベン204、205の開閉により処理室への出し入れが行われる処理集合装置150」が記載されているといえる。
また、図10から、トランスファチャンバ209は、各処理室(プロセスチャンバ210、220、230、240及び収容室203、203)に結合するように構成されているゲートベン204、205を有していることが見て取れる。
(2) アーム10A、10Bの構成について
段落0028には「本願の説明及び図中の符号において、数字符号に続く「A」「B」の符号は、そうした2つのアーム10A、10Bに対応した構成要素であることを表している。」と記載されている。
そして、段落0029、0031の記載によると、引用文献2記載の「ロボット1」が備える2つのアーム10A、10Bは、「基台部100側からアーム部11及びハンド部12の順で連結され、ハンド部12を所定方向に向けながら伸縮自在に動作し、
アーム部11とハンド部12は、基台部100側から、第1アーム部材20A、20B、第2アーム部材30A、30B及びハンド部材40A、40Bの順で連結されて構成されている」といえる。
また、図8からは、第1アーム部材20、第2アーム部材30及びハンド部材40が、それぞれ、点P、Q、Rを中心に回転可能に連結されていることが見て取れる。
そうすると、引用文献2記載のロボット1は、
「基台部100側から、第1アーム部材20A、第2アーム部材30A及びハンド部材40Aの順で回転可能に連結されて構成されているアーム10Aと、
第1アーム部材20B、第2アーム部材30B及びハンド部材40Bの順で回転可能に連結されて構成されているアーム10Bと」を備えているといえる。
(3) 異なる角度位置について
段落0027の記載から、アーム10A、10Bは、それぞれアーム旋回軸3A、3Bを回動中心として旋回する。
そして、段落0065の記載の記載を踏まえると、図9から、アーム10Aは、異なる角度位置といえるポジションSとポジションTでと伸縮し、アーム10Bは、異なる角度位置といえるポジションUとポジションVとで伸縮することが見て取れる。
(4) 引用発明
以上を踏まえると、引用文献2には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているといえる。
「ロボット1と、そのロボット1が設置されるトランスファチャンバ209と、トランスファチャンバ209の周囲に配置され、ロボット1が備える2つのアーム10A、10Bによってワークの搬入搬出が行われる複数のプロセスチャンバ210、220、230、240とを備える半導体の製造プロセスにおける処理集合装置150であって、
このトランスファチャンバ209の周りには、その周方向に6分割された処理室が配置され、このうち、4室は、プロセスチャンバ210、220、230、240であり、2室は、その集合処理装置150外からウエハの受け渡しを行う収容室203、203であり、各処理室の入り口にゲートベン204、205が設けられ、そのゲートベン204、205の開閉により処理室への出し入れが行われ、
トランスファチャンバ209は、各処理室に結合するように構成されているゲートベン204、205を有し(上記(1))、
ロボット1は、
基台部100側から、第1アーム部材20A、第2アーム部材30A及びハンド部材40Aの順で回転可能に連結されて構成されているアーム10Aと、
第1アーム部材20B、第2アーム部材30B及びハンド部材40Bの順で回転可能に連結されて構成されているアーム10Bと(上記(2))を備え、
アーム10A、10Bそれぞれは、アーム伸縮軸2A、2Bを回動中心としてアーム10A、10Bを伸縮させるアーム伸縮用駆動源4A、4Bと、アーム旋回軸3A、3Bを回動中心としてアーム10A、10Bを旋回させるアーム旋回用駆動源5A、5Bと、を備え、
2つのアーム10A、10Bのうちの1つのアーム10Aを動作させるアーム伸縮軸2Aが中実軸であり、それ以外の軸であるアーム旋回軸3A、3B及び他のアーム10Bのアーム伸縮軸2Bが前記の中実軸と同心になるように設けられた中空軸であるように構成され(段落0027)、
アーム10A及びアーム10Bのそれぞれが、アーム旋回軸3A、3Bを回動中心として異なる角度位置で伸縮し(上記(3))、
第1アーム部材20は、基台部100側にあってアーム伸縮軸2に連結する第1プーリ21を有し、
第2アーム部材30は、ハンド部材40側にあってハンド部材40に連結する第4プーリ32を有し、
2つのアーム10A、10Bそれぞれは、アーム伸縮用駆動源4A、4Bとアーム旋回用駆動源5A、5Bとを備えて独立に動作することができ(段落0030)、
アーム10Bを構成する第1アーム部材20Bと第2アーム部材30Bとは、連結部材28で連結され、
この連結部材28は、両アーム10A、10Bが備えるハンド部12A、12Bの上下方向の座標位置PA、PBをほぼ同じにするように、上下方向に延びる連結部材28の高さhが調整され(段落0032)、
ハンド部材40は、第1アーム部材20の第1プーリ21の中心点Pと第2アーム部材30の第4プーリ32の中心点Rとを結んだ直線(仮想線X)上を、向きを一定にしながら伸縮するように移動し(段落0038)、
基台部100は、アーム10Aの伸縮動作を行うアーム伸縮軸2Aと、アーム10Aの旋回動作を行うアーム旋回軸3Aと、アーム10Bの伸縮動作を行うアーム伸縮軸2Bと、アーム10Bの旋回動作を行うアーム旋回軸3Bとを備え(段落0040)、
2つのアーム10A,10Bをそれぞれ独立して伸縮させ、旋回させることができる(段落0065)、
処理集合装置150。」
第5 当審の判断
1 対比
本願発明と引用発明とを対比する。
(1) 基板処理装置について
ア 基板処理装置について
「半導体の製造プロセスにおける処理集合装置150」である引用発明における「ワーク」及び「ウエハ」は、処理対象である「基板」といえるから、引用発明は「基板処理装置」といえる点で本願発明と共通する。
イ 搬送室について
本願明細書の「処理モジュール76125、ロードロック76135、76140及びカセット76115のような、基板保持ステーション」(段落0062)との記載によると、本願発明の「基板保持ステーション」は、「処理モジュール」及び「ロードロック」を含むものである。
そして、引用発明の「処理室」である「プロセスチャンバ210、220、230、240」及び「収容室203、203」は、それぞれ、「処理モジュール」及び「ロードロック」といえるから、引用発明の「処理室」は、本願発明の「基板保持ステーション」に相当する。
また、引用発明の「ゲートベン204、205」は、各処理室の入り口に設けられ、その開閉により処理室への出し入れが行われ、各処理室に結合するように構成されているから、本願発明の、それぞれの基板保持ステーションに結合するように構成されている「複数のポート」に相当する。
そして、引用発明の「トランスファチャンバ209」は、「搬送室」といえ、かつ、「各処理室に結合するように構成されているゲートベン204、205を有」するものであるから、本願発明の「複数のポートを有する搬送室であって、それぞれのポートが、それぞれの基板保持ステーションに結合するように構成されている、搬送室」に相当する。
ウ 基板搬送装置について
引用発明の「ロボット1」は、「2つのアーム10A、10Bによってワークの搬入搬出」を行うものであるから、「基板搬送装置」といえる。
そして、引用発明において「ロボット1」は、「トランスファチャンバ209」に設置されるから、引用発明は、「少なくとも部分的に前記搬送室内に取り付けられた基板搬送装置」を備える点で本願発明と一致する。
エ 小括
以上によれば、引用発明は、
「複数のポートを有する搬送室であって、それぞれのポートが、それぞれの基板保持ステーションに結合するように構成されている、搬送室と、
少なくとも部分的に前記搬送室内に取り付けられた基板搬送装置と
を備える基板処理装置」といえる点で、本願発明と一致する。
(2) 基板搬送装置について
ア フレーム、第一及び第二のスカラアームについて
(ア) 第一のスカラアーム
引用発明の「基台部100側から、第1アーム部材20A、第2アーム部材30A及びハンド部材40Aの順で回転可能に連結されて構成されているアーム10A」の、「第1アーム部材20A」、「第2アーム部材30A」及び「ハンド部材40A」は、本願発明の「第一の上腕リンク」、「第一の前腕リンク」及び「基板ホルダ」にそれぞれ相当する。
そして、引用発明の「基台部100側から、第1アーム部材20A、第2アーム部材30A及びハンド部材40Aの順で回転可能に連結されて構成されているアーム10A」は、本願発明の「互いに回転可能および直列に結合された第一の上腕リンク、第一の前腕リンク及び少なくとも一つの基板ホルダを有する第一のスカラアーム」に相当する。
(イ) 第二のスカラアームについて
a 引用発明の「第1アーム部材20B、第2アーム部材30B及びハンド部材40Bの順で回転可能に連結されて構成されているアーム10B」の、「第1アーム部材20B」、「第2アーム部材30B」及び「ハンド部材40B」は、本願発明の「第二の上腕リンク」、「第二の前腕リンク」及び「基板ホルダ」にそれぞれ相当する。
そして、引用発明の「第1アーム部材20B、第2アーム部材30B及びハンド部材40Bの順で回転可能に連結されて構成されているアーム10B」は、本願発明の「互いに回転可能および直列に結合された第二の上腕リンク、第二の前腕リンク及び少なくとも一つの基板ホルダを有する第二のスカラアーム」に相当する。
b 「前記第一及び第二のスカラアームは、共通の肩軸を共有するように前記フレームに取り付けられている」について
(a) 共通の肩軸
本願明細書の、「ここに記載される、本発明の実施形態において、一方のアームは他方のアームに対しておよそ180度回転する(例えば、他方のアームが固定され、一方のアームの回転が他方のアームの回転を妨げるように、端部作動体が実質的に同一平面上又は実質的に隣接する基板搬送面にある場合)ものの、アーム組立部品全体(例えばすべてのアームを一体として)は、アームが一体として肩軸の軸周りで同時に回転されると、肩軸の軸周りで少なくとも約360度の回転が可能であることに留意されたい。」(段落0066)との記載によると、本願発明の「肩軸」とは、アームが一体として回転する際の軸といえる。
一方、引用発明において、アーム10Bは、アーム旋回軸3Bを回動中心として旋回するから、引用発明の「アーム旋回軸3B」は、本願発明の「肩軸」に相当し、同様に、アーム10Aについての、「アーム旋回軸3A」も、本願発明の「肩軸」に相当する。
そして、引用発明の「アーム旋回軸3A、3B」は、いずれも、アーム10Aを動作させるアーム伸縮軸2Aと同心であるから、「アーム旋回軸3A、3B」も同心であり、旋回軸として共通する軸といえる。
そうすると、引用発明の「アーム旋回軸3A、3B」は、本願発明の「共通の肩軸」に相当する。
(b) フレーム
本願発明の「フレーム」は、基板搬送装置が含む部材であって、第一及び第二のスカラアームが、共通の肩軸を共有するように取り付けられる部材である。
一方、引用発明においては、「アーム伸縮軸2A、2B」についても、共通の肩軸といえる「アーム旋回軸3A、3B」と同心であり、共通する軸といえる。
そして、引用発明は、「基台部100は、アーム10Aの伸縮動作を行うアーム伸縮軸2Aと、アーム10Aの旋回動作を行うアーム旋回軸3Aと、アーム10Bの伸縮動作を行うアーム伸縮軸2Bと、アーム10Bの旋回動作を行うアーム旋回軸3Bとを備え」るものであるから、引用発明の「アーム10A、10B」は、アーム伸縮軸2A、2B、アーム旋回軸3A、3Bを介して基台部100に取り付けられているといえる。
そうすると、引用発明のロボット1の「基台部100」は、引用発明において、アーム10A、10Bが、共通の肩軸といえる「アーム旋回軸3A、3B」を共有するように取り付けられるから、本願発明の「フレーム」に相当する。
c 上記a、bから、引用発明の「アーム10B」は、本願発明の「互いに回転可能および直列に結合された第二の上腕リンク、第二の前腕リンク及び少なくとも一つの基板ホルダを有する第二のスカラアームであって、前記第一及び第二のスカラアームは、共通の肩軸を共有するように前記フレームに取り付けられている、第二のスカラアーム」に相当する。
(ウ) 小括
以上によれば、引用発明のロボット1は、
「フレームと、
互いに回転可能および直列に結合された第一の上腕リンク、第一の前腕リンク及び少なくとも一つの基板ホルダを有する第一のスカラアームと、
互いに回転可能および直列に結合された第二の上腕リンク、第二の前腕リンク及び少なくとも一つの基板ホルダを有する第二のスカラアームであって、前記第一及び第二のスカラアームは、共通の肩軸を共有するように前記フレームに取り付けられている、第二のスカラアームと、」を含む点で、本願発明の基板搬送装置と一致する。
イ 同軸の駆動セクションについて
(ア) 上記ア(イ)b(b)のとおり、引用発明の「アーム伸縮軸2A、2B」は、共通の肩軸といえる「アーム旋回軸3A、3B」と同心であるから、同軸といえる。
そして、引用発明の「アーム伸縮軸2A、2B」及び「アーム旋回軸3A、3B」は、アーム伸縮用駆動源4A、4Bとアーム旋回用駆動源5A、5Bによりアーム10A、10Bの伸縮、旋回、すなわち駆動を行うものであるから、アーム10A、10Bに接続された「同軸の駆動セクション」といえ、また、アーム10A、10Bの旋回は、「第1アーム部材20A、第2アーム部材30A及びハンド部材40A」と、「第1アーム部材20B、第2アーム部材30B及びハンド部材40B」とが、それぞれユニットとして行われるといえ、加えて、引用発明は「2つのアーム10A,10Bをそれぞれ独立して伸縮させ、旋回させることができる」ものである。
そうすると、引用発明の「アーム伸縮軸2A、2B」及び「アーム旋回軸3A、3B」は、本願発明の「前記第一及び第二のスカラアームのそれぞれが、前記共通の肩軸を中心にユニットとしてそれぞれ独立した回転が可能であり、前記第一及び第二のスカラアームのうちの別のスカラアームから独立した伸長が可能であるように、前記第一及び第二のスカラアームに接続された同軸の駆動セクション」に相当する。
(イ) 上記ア(イ)b(a)のとおり、引用発明の「アーム旋回軸3A、3B」は、共通の肩軸といえ、また、引用発明は「アーム10A及びアーム10Bのそれぞれが、アーム旋回軸3A、3Bを回動中心として異なる角度位置で伸縮」するから、引用発明は「前記第一及び第二のスカラアームのそれぞれが、前記共通の肩軸を中心に異なる角度位置で伸長可能」である点で本願発明と一致する。
また、引用発明は「各処理室の入り口にゲートベン204、205が設けられ、そのゲートベン204、205の開閉により処理室への出し入れが行われ、トランスファチャンバ209は、各処理室に結合するように構成されているゲートベン204、205を有」するから、引用発明において、各処理室の入り口に設けられたゲートベン204、205のそれぞれは、アーム10A、10Bのそれぞれによってアクセス可能であるといえる。
そうすると、引用発明のアーム10A,10Bのそれぞれが伸縮する際の角度位置は、それぞれのゲートベン204、205がアーム10A,10Bのそれぞれによってアクセス可能であるように、トランスファチャンバ209が有するそれぞれのゲートベン204、205に対応している、といえる。
(ウ) 小括
以上のとおり、引用発明のロボット1は、
「前記第一及び第二のスカラアームのそれぞれが、前記共通の肩軸を中心にユニットとしてそれぞれ独立した回転が可能であり、前記第一及び第二のスカラアームのうちの別のスカラアームから独立した伸長が可能であるように、前記第一及び第二のスカラアームに接続された同軸の駆動セクションであって、前記第一及び第二のスカラアームのそれぞれが、前記共通の肩軸を中心に異なる角度位置で伸長可能であり、それぞれの角度位置は、それぞれのポートが前記第一及び第二のスカラアームのそれぞれによってアクセス可能であるように、前記搬送室のそれぞれのポートに対応している、同軸の駆動セクション」を含む点で、本願発明の基板搬送装置と一致する。
(3) 第一及び第二のスカラアームの配置について
ア 引用発明において、「ハンド部材40は、第1アーム部材20の第1プーリ21の中心点Pと第2アーム部材30の第4プーリ32の中心点Rとを結んだ直線(仮想線X)上を、向きを一定にしながら伸縮するように移動」するから、引用発明の「仮想線X」は、アームの「伸長軸」といえる。
そして、引用発明は、アーム10A、10Bそれぞれについて「第1アーム部材20は、基台部100側にあってアーム伸縮軸2に連結する第1プーリ21を有し」、「2つのアーム10A、10Bのうちの1つのアーム10Aを動作させるアーム伸縮軸2Aが中実軸であり、それ以外の軸であるアーム旋回軸3A、3B及び他のアーム10Bのアーム伸縮軸2Bが前記の中実軸と同心になるように設けられた中空軸であるように構成され」るから、引用発明の、アーム10Aについての仮想線Xと、アーム10Bについての仮想線Xとは、同軸の駆動セクションといえる伸縮軸2A、2B、及びアーム旋回軸3A、3Bの中心で交わり、それぞれ、共通の肩軸といえるアーム旋回軸3A、3Bを中心として回転する。
ここで、引用発明は、「両アーム10A、10Bが備えるハンド部12A、12Bの上下方向の座標位置PA、PB」がほぼ同じである。
そうすると、引用発明において、アーム10Aの仮想線Xのアーム旋回軸3Aを中心とする角度位置を、アーム10Bの仮想線Xのアーム旋回軸3Bを中心とする角度位置と同じ角度位置、すなわちゼロ角度にしようとした場合、アーム10Aが備えるハンド部12Aが、上下方向の座標位置がほぼ同じである、アーム10Bが備えるハンド部12Bとぶつかり、干渉してしまうから、引用発明において、アーム10Bが任意の角度位置で持続された状態で、アーム10Aの仮想線Xの回転は、アーム10Aとアーム10Bとの間の相対移動の妨げにより制約されているといえる。
したがって、引用発明のアーム10A、10Bは、
「前記第一及び第二のスカラアームは、
前記第二のスカラアームが前記共通の肩軸を中心に前記第二のスカラアームのそれぞれの異なる角度位置で持続された状態で、前記共通の肩軸を中心とした前記第一のスカラアームの伸長軸の回転が、前記第二のスカラアームによる前記第一のスカラアームと前記第二のスカラアームとの間の相対移動の妨げにより制約され」るように「互いに対して配置され」る点で、本願発明と一致する。
イ 上記アのとおり、引用発明において、アーム10Aの仮想線Xのアーム旋回軸3Aを中心とする角度位置は、アーム10Bの仮想線Xのアーム旋回軸3Bを中心とする角度位置と同じ角度位置、すなわちゼロ角度にできないから、引用発明のアーム10A、10Bは、「前記第一及び第二のスカラアームは、」「前記共通の肩軸を中心とした前記第一のスカラアームの伸長軸の回転が、前記第二のスカラアームの伸長軸に対して非ゼロ角度で角度が付けられたままであり」といえる点で、本願発明と一致する。
ウ 上記アのとおり、引用発明のアーム10A、10Bは、本願発明の「同軸の駆動セクション」に相当する「アーム伸縮軸2A、2B」及び「アーム旋回軸3A、3B」とは無関係に、「両アーム10A、10Bが備えるハンド部12A、12Bの上下方向の座標位置PA、PB」がほぼ同じであることによって、干渉することにより、アーム10Aの仮想線Xのアーム旋回軸3Aを中心とする角度位置を、アーム10Bの仮想線Xのアーム旋回軸3Bを中心とする角度位置と同じ角度位置、すなわちゼロ角度にできないから、「前記第一及び第二のスカラアームは、」「前記駆動セクションとは無関係に前記第二のスカラアームの前記角度位置により画定される角度範囲内で制約され」といえる点で、本願発明と一致する。
エ 引用発明は、「アーム10A及びアーム10Bのそれぞれが、アーム旋回軸3A、3Bを回動中心として異なる角度位置で伸縮」するものであって、「アーム旋回軸3A、3Bを回動中心としてアーム10A、10Bを旋回させるアーム旋回用駆動源5A、5B」を備え、2つのアーム10A、10Bをそれぞれ独立して旋回させることができるから、引用発明において、「アーム旋回軸3A、3B」を回動中心とした、アーム10Aの仮想線Xの、アーム10Bの仮想線Xに対する角度は、少なくとも1つのアームを他のアームに対して回転させることで可変であるといえる。
また、上記(2)イ(ア)のとおり、引用発明の「アーム旋回軸3A、3B」は、同軸の駆動セクションといえる。
そうすると、引用発明のアーム10A、10Bは、「前記第一及び第二のスカラアームは、」「前記同軸の駆動セクションが前記第一及び第二のスカラアームのうちの少なくとも1つを前記第一及び第二のスカラアームのうちの別のスカラアームに対して回転させることで、前記非ゼロ角度が可変であるように、
互いに対して配置される」点で、本願発明と一致する。
オ 小括
以上によれば、引用発明の2つのアーム10A、10Bは、
「前記第一及び第二のスカラアームは、
前記第二のスカラアームが前記共通の肩軸を中心に前記第二のスカラアームのそれぞれの異なる角度位置で持続された状態で、前記共通の肩軸を中心とした前記第一のスカラアームの伸長軸の回転が、前記第二のスカラアームによる前記第一のスカラアームと前記第二のスカラアームとの間の相対移動の妨げにより制約され、前記共通の肩軸を中心とした前記第一のスカラアームの伸長軸の回転が、前記第二のスカラアームの伸長軸に対して非ゼロ角度で角度が付けられたままであり、前記駆動セクションとは無関係に前記第二のスカラアームの前記角度位置により画定される角度範囲内で制約され、前記同軸の駆動セクションが前記第一及び第二のスカラアームのうちの少なくとも1つを前記第一及び第二のスカラアームのうちの別のスカラアームに対して回転させることで、前記非ゼロ角度が可変であるように、
互いに対して配置される」点で、本願発明の「第一及び第二のスカラアーム」と一致する。
(4) まとめ
以上のとおりであるから、本願発明は引用発明と一致し、相違しない。
したがって、本願発明は引用発明であるから、令和5年8月2日付けで当審において通知した拒絶の理由2(新規性)は解消していない。
2 請求人の主張について
(1) 請求人の主張
請求人は、令和6年2月7日提出の意見書(以下「意見書」という。)で、当審における拒絶の理由2、3(新規性、進歩性)について次の主張をした。(下線は意見書の記載のとおり。)
「引用文献2は、同一平面上に配置されたハンド部材40A、40Bを有する2つのアーム10A、10Bを有し、アーム10A、10Bがそれぞれの駆動モータによって互いに独立して伸長および回転可能なロボット1を開示しているかもしれませんが、引用文献2に開示されているものは、審査段階で引用された特開2005-19960号公報に開示されているものと実質的に類似しているように思われます。引用文献2では、アーム10A、10Bは、処理レシピに基づいて動作され、各アームの動作は、一方のアームが他方のアームの動作スペース内に侵入しないように、トランスファチャンバ内の所定のスペースに制限されます。
引用文献2の図9(A)~図9(D)を参照しますと、アーム10Aが位置S、Tにのみアクセスし、アーム10Bが位置U、Vにのみアクセスするように、2つのアーム10A、10Bの動作が記述されています。ここで、アームが動作するトランスファチャンバの内部は2つの半分に分割され、アーム10Aはトランスファチャンバの一方の半分で動作し、アーム10Bはトランスファチャンバの他方の半分で動作します。このように、アーム10A、10Bの肩軸回りの回転を制約し、アーム間の干渉を回避するのは、駆動部の動作(すなわち、各アームがトランスファチャンバの半分の範囲内でのみ動作するような動作)です。
上記点と、各アーム10A、10Bがトランスファチャンバのそれぞれの半分の範囲内でのみ動作するという例示(引用文献2には、そうでないことを示すものは何もない)とを考慮しますと、引用文献2には、本願の請求項1に記載されるように、「前記第二のスカラアームが前記共通の肩軸を中心に前記第二のスカラアームのそれぞれの異なる角度位置で持続された状態で、前記共通の肩軸を中心とした前記第一のスカラアームの伸長軸の回転が、前記第二のスカラアームによる前記第一のスカラアームと前記第二のスカラアームとの間の相対移動の妨げにより制約され、前記共通の肩軸を中心とした前記第一のスカラアームの伸長軸の回転が、前記第二のスカラアームの伸長軸に対して非ゼロ角度で角度が付けられたままであり、前記駆動セクションとは無関係に前記第二のスカラアームの前記角度位置により画定される角度範囲内で制約され、前記同軸の駆動セクションが前記第一及び第二のスカラアームのうちの少なくとも1つを前記第一及び第二のスカラアームのうちの別のスカラアームに対して回転させることで、前記非ゼロ角度が可変である」(下線は強調)ように、各アーム10A、10Bが各位置S、T、U、Vにアクセスすることを明示的にも本質的にも開示するものは何もありません。
さらに、引用文献2の目的は、トランスファチャンバの周囲に配置されたプロセスチャンバへの/からのワークの搬入/搬出に要する時間を短縮すること(引用文献2の段落[0022]を参照)であることに留意が必要です。(引用文献2の図9(A)~図9(D)に関して説明したように)(駆動部を介する)各アーム10A、10Bの移動をトランスファチャンバのそれぞれの半分の範囲内に制限することは、この目的に合致します。(駆動部を介する)各アーム10A、10Bの移動をトランスファチャンバのそれぞれの半分の範囲内に制限することは、アーム10A、10Bによって取り扱われるワークの移動/搬送時間を減少させます。引用文献2には、各アーム10A、10Bの範囲をトランスファチャンバの全体まで拡張することを示唆するものはありません(そのような示唆は、本願の開示から、許されない後知恵を用いて得られるだけです)。」(令和6年2月7日提出の意見書4ページ6~45行)
(2) 請求人の主張の検討
ア 上記1(2)イ(イ)のとおり、引用発明は「各処理室の入り口にゲートベン204、205が設けられ、そのゲートベン204、205の開閉により処理室への出し入れが行われ、トランスファチャンバ209は、各処理室に結合するように構成されているゲートベン204、205を有」するから、引用発明において、各処理室の入り口に設けられたゲートベン204、205のそれぞれは、アーム10A、10Bのそれぞれによってアクセス可能であるといえる。
そして、引用文献2には、図10に示される処理集合装置150について、「ワーク」や「ウエハ」に対する処理が、例えば、左方に位置する収容室203、及びプロセスチャンバ210、220と、右方に位置する収容室203、及びプロセスチャンバ230、240とで、別々に行われ、かつ、アーム10A、10Bの動作について、一方のアームが他方のアームの動作スペース内に侵入しないように制限されるとの記載も示唆もない。
加えて、段落0065の記載によると、引用文献2の図9は、引用発明のロボット1が、2つのアーム10A、10Bをそれぞれ独立して伸縮させ、旋回させることができることについて、2つのアームの伸縮形態及び旋回形態の例を示す説明図であって、図10に示される処理集合装置150の2つのアームについて、全ての伸縮形態及び旋回形態を示すものではない。
そうすると、引用発明のアーム10A、10Bの動作は、一方のアームが他方のアームの動作スペース内に侵入しないように、トランスファチャンバ内の所定のスペースに制限されているとはいえない。
したがって、請求人の「引用文献2では、アーム10A、10Bは、処理レシピに基づいて動作され、各アームの動作は、一方のアームが他方のアームの動作スペース内に侵入しないように、トランスファチャンバ内の所定のスペースに制限されます。」、「アームが動作するトランスファチャンバの内部は2つの半分に分割され、アーム10Aはトランスファチャンバの一方の半分で動作し、アーム10Bはトランスファチャンバの他方の半分で動作します。」、「各アーム10A、10Bが各位置S、T、U、Vにアクセスすることを明示的にも本質的にも開示するものは何もありません。」との主張は、引用文献2の記載に基づくものではないから、採用できない。
イ 引用文献2の段落0014の記載によると、引用発明は、従来のロボットについての「一方のアームがワークを搬入/搬出している間、他方のアームは後方で待機状態となっていることから、搬送時間短縮の観点からは不十分である。」(段落0010)、「ワークを載置する搬送台(ハンド部材)の座標位置が上下方向にずれているものが記載されているが、こうしたずれは、上記のように、プロセスチャンバ内のワークを一方の搬送台で搬出した後に他方の搬送台で別のワークを搬入する場合、搬送台の駆動軸等を上下方向に大きく移動させて搬送台の上下方向の座標位置をプロセスチャンバの座標位置と一致させるという動作を加えなければならず、動作機構が煩雑となり、搬送時間短縮の観点からは不十分である。」(段落0011)との課題を、「アームそれぞれが、アーム伸縮軸を回動中心としてアームを伸縮させるアーム伸縮用駆動源と、アーム旋回軸を回動中心としてアームを旋回させるアーム旋回用駆動源とを備える」ことにより、「それぞれのアームが、その伸縮と旋回を独自に行うことができる」ようにし、また、「ハンド部の上下方向の座標位置をほぼ同じにする連結部材を備える」ことにより、「それぞれのアームが、例えばプロセスチャンバ内のワークの搬出と搬入を駆動軸等の大きな上下移動をさせずに行うことができる」ようにすることによって解決するものといえ、「各アーム10A、10Bの移動をトランスファチャンバのそれぞれの半分の範囲内に制限すること」により上記課題を解決するものではない。
また、引用文献2の段落0022の記載によれば、引用発明の「トランスファチャンバの周囲に配置されたプロセスチャンバに対するワークの搬入/搬出等の時間を短縮することができる」との課題は、「産業用ロボットが備える2つ以上のアームは、それぞれがアーム伸縮用駆動源とアーム旋回用駆動源とを備えて独立に動作し、それぞれが備えるハンド部に載置されるワークの高さがほぼ同じであるように構成」することによって解決するものであり、請求人が主張するように「各アーム10A、10Bの移動をトランスファチャンバのそれぞれの半分の範囲内に制限すること」により解決するものではない。
したがって、引用文献2の段落0022の記載に基づく「引用文献2の目的」についての、請求人の主張は採用できない。
ウ 仮に、請求人が主張するように本願発明が、「前記第一及び第二のスカラアームのそれぞれが、前記共通の肩軸を中心に異なる角度位置で伸長可能であり、それぞれの角度位置は、それぞれのポートが前記第一及び第二のスカラアームのそれぞれによってアクセス可能であるように、前記搬送室のそれぞれのポートに対応している」のに対し、引用発明が、各アームがトランスファチャンバの半分の範囲内でのみ動作する点で相違するとしても、引用発明は、「2つのアーム10A,10Bをそれぞれ独立して伸縮させ、旋回させることができる」ものであるから、引用発明において、2つのアーム10A,10Bのそれぞれを、すべての処理室にアクセス可能とすることに何ら困難性は見いだせない。
そうすると、本願発明は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものといえるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
第6 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができず、また、上記第5の2(2)ウのとおり、仮に相違点が存在するとしても、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2022-020983