2023-005014
電子機器
- 審判番号
- 2023-005014
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2018-178115外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2023年03月28日
- 審決日
- 2024年07月31日
- 公報発行日
- 2024年10月25日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】ブラザー工業株式会社
- 分類
- P18 .121-WZ (B41J)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 行政事件訴訟法46条特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
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結論
理由
目次 ▾ 7項目
第1 手続の経緯
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本願は、平成30年9月21日の出願であって、令和4年6月23日付けの拒絶理由の通知に対し、同年8月26日に意見書及び手続補正書が提出され、同年9月22日に拒絶理由が通知され、同年11月22日に意見書及び手続補正書が提出されたが、同年12月22日付けで拒絶査定がなされ、これに対して令和5年3月28日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正書が提出され、その後、当審において、令和6年3月12日付けで拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という。)が通知され、同年5月14日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。
第2 本願発明について
本願の請求項1-6に係る発明は、令和6年5月14日に提出された手続補正書の特許請求の範囲の請求項1-6に記載された事項により特定されるものであり、そのうち請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は次のとおりのものである。
「少なくとも1つの動作機構と、無線通信により操作端末と情報送受信を行う通信手段と、前記動作機構及び前記通信手段を制御する制御手段と、を有し、続きを表示(全13行)前記通信手段は、接触又は近接した前記操作端末からの情報要求操作に応じた信号を前記制御手段に送信し、前記制御手段は、前記通信手段から前記情報要求操作に応じた信号を受信したか否かに基づいて、前記情報要求操作があったか否かを判定する操作判定処理と、前記情報要求操作があったと判定された場合に、前記少なくとも1つの動作機構それぞれ及び前記制御手段において発生しているエラー事象を収集するエラー収集処理と、前記エラー収集処理により収集された前記エラー事象をまとめたエラー報告を、前記通信手段を介して前記操作端末へ送信するエラー報告送信処理と、前記エラー報告送信処理を実行したことを条件として、前記エラー報告の内容を消去する第1消去処理と、を実行し、前記通信手段は、前記情報要求操作に応じた信号を前記制御手段に送信した後、前記制御手段から前記エラー報告を受信しない場合に、前記制御手段の動作にエラーが生じていることを示す情報を操作端末に送信することを特徴とする電子機器。」
第3 当審拒絶理由の概要
令和6年3月12日付け当審拒絶理由において通知した理由は、次に概略を記した理由を含むものである。
理由1(進歩性)この出願の令和5年3月28日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された引用文献1に記載の発明に記載の発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
第4 当審の判断
1 引用文献
(1)引用文献1に記載された事項
本願の出願前である平成20年8月14日に頒布された刊行物である特開2008-186403号公報(以下、「引用文献1」という。)には、以下の事項が記載されている(下線は当審で付した。以下同じ。)。
ア 「【技術分野】【0001】本発明は、処理装置および処理プログラムに関し、特に所定の通信手段を介して処理データを入力する処理装置および処理プログラムに関する。【背景技術】続きを表示(全13行)【0002】プリンタの動作状態が適正か否かを判断するために、印刷指令に含まれる印刷枚数とプリンタが行った印刷動作回数とを比較するプリンタ検証システムが提案されている(特許文献1、参照。)。かかる構成によれば、印刷の完了後に、指令した印刷枚数とプリンタが行った印刷動作回数とが一致することをもって印刷が問題なく完了したことを判断することができる。一方、近年の携帯電話には、赤外線通信やBluetooth(Bluetooth SIG社の登録商標)通信を行う通信インターフェイスが備えられており、このような通信インターフェイスを利用して携帯電話からプリンタに印刷データを出力することが行われている。【特許文献1】特開2004-310211号公報【発明の開示】【発明が解決しようとする課題】【0003】このような無線通信の場合、常に携帯電話とプリンタとが通信可能な状況にあるとは限らない。すなわち、印刷開始時には携帯電話とプリンタとが通信可能であるものの、印刷終了時には携帯電話とプリンタとが通信不能となってしまう場合がある。携帯電話の場合、常にユーザーが携帯するため、印刷開始後ユーザーがプリンタから離れることによって、プリンタと通信できなくなる可能性が高い。このような場合、確実に携帯電話がプリンタの行った印刷動作回数を印刷終了時に取得することができず、プリンタが正常に印刷を完了させたか否かの検証ができないという問題があった。上記課題を解決するために、本発明は、処理が正常に完了したか否かを確実に外部装置に伝達可能な処理装置および処理プログラムを提供することを目的とする。」
イ 「【0013】図3は、プリンタ30の概略構成を示している。同図に示すようにプリンタ30は、制御部31と操作部32と赤外線I/F33と不揮発性メモリ34とコントロール回路35aとインクカートリッジ35bと印刷ヘッドユニット35cとASIC36aとヘッド駆動部36bとI/F37aとキャリッジ機構37bと紙送り機構37cとディスプレイ38を備えている。制御部31はCPU31aとROM31bとRAM31cとを備えており、ROM31bに記録された図示しないOSおよび制御プログラムPPにしたがってCPU31aがRAM31cをワークエリアとしてプリンタ30全体を制御する。・・・プリンタ30を構成する各部31,32,33,34,35a,36a,37aはシステムバスを介して相互に通信可能に接続されている。【0014】キャリッジ機構37bにて主走査方向に往復動するキャリッジには、各インクカートリッジ35bを装着したカートリッジホルダが設けられるとともに、印刷ヘッドを備える印刷ヘッドユニット35cが搭載されている。ヘッド駆動部36bは、ASIC36aから印刷データに対応する印加電圧データを入力されてピエゾ素子への印加電圧パターンを生成し、該素子を内蔵する印刷ヘッドに4色のインク滴をドット単位で吐出させる。インターフェイス(I/F)37aに接続されたキャリッジ機構37bや紙送り機構37cは、印刷ヘッドユニット35cを主走査させたり、適宜改ページ動作を行いながらシート状の印刷媒体を順次送り出して副走査を行ったりする。続きを表示(全13行)【0015】本実施形態のプリンタ30は、CMYK(シアン、マゼンタ、イエロー、ブラック)の各インクを印刷ヘッドから吐出して印刷媒体にインクのドットを形成して印刷するインクジェットプリンタであるものとする。・・・赤外線I/F33は赤外線の送信を行う発光ダイオードと受信を行うフォトダイオードとを有しており、例えばIrDA1.0~1.4やFIRやUFIRやIr-Simple等の赤外線通信規格が使用可能とされている。これらの通信規格において、赤外線が無線通信の通信媒体として使用され、通信可能な距離が30cmから1m程度となっている。・・・【0016】制御部31が実行する制御プログラムPPは、内部モジュールとして赤外線通信部PP1と印刷実行部PP2と要求受理部PP3とステータス取得部PP4とオブジェクト生成部PP5と初期ステータス送信部PP6と終了ステータス送信部PP7と通知部PP8と印刷禁止部PP9を備えている。赤外線通信部PP1は、赤外線I/F33にて受信した赤外線信号から各種の電子ファイルを復調し、各モジュールPP2~PP4に出力する。・・・【0018】要求受理部PP3は、赤外線通信部PP1からステータ要求を受け付けるとともに、当該ステータス要求をステータス取得部PP4に送出する。ステータス取得部PP4は、上記システムバスを介して各部31,32,33,34,35a,36a,37aにステータス情報を問い合わせ、ステータス情報を収集する。オブジェクト生成部PP5は、ステータス取得部PP4が印刷前において収集したステータス情報を初期ステータスとして取得するとともに、当該初期ステータスを赤外線通信部PP1は送信可能なオブジェクトとしての電子ファイルに変換する。【0019】この電子ファイルは初期ステータスファイルISFとしてRAM31cに記憶され、例えば各初期ステータスがTXT形式やHTML形式やXML形式等のファイルにテキストとして記述される。初期ステータス送信部PP6は、初期ステータスファイルISFをRAM31cから取得するとともに、当該初期ステータスファイルISFを赤外線通信部PP1に送出する。これにより、初期ステータスファイルISFが赤外線を介して外部に送信されることとなる。初期ステータスファイルISFが送信されると、初期ステータス送信部PP6はRAM31cから初期ステータスファイルISFを削除する。」
ウ 「【0028】図6は、印刷処理の全体の流れを示している。同図において、印刷処理はサーバ10と携帯電話50とプリンタ30との間で行われ、その際にサーバ10と携帯電話50とプリンタ30が備える制御部11,31,52においては印刷課金プログラムSPと印刷中継プログラムCPと制御プログラムPPがそれぞれ実行されている。ステップS01においてはサーバ10が実行する印刷データ配信部SP1が各コンテンツ12cのサムネイルを生成し、その一覧を無線通信を介して携帯電話20に送信する。一方、携帯電話20においてはコンテンツ指定部CP1が実行されており、コンテンツ指定部CP1が上記サムネイルの一覧を操作部56の操作に応じてブランジングさせる。コンテンツ指定部CP1は、ステップC02にてユーザーが購入するコンテンツ指定部CP1の指定を受け付けており、当該指定が無線通信にてサーバ10に伝達される。【0029】サーバ10の印刷データ配信部SP1は、ステップS02にて購入するコンテンツ12cの指定を受理し、当該コンテンツ12cを印刷するための印刷データPDをHDD12上に作成する。・・・続きを表示(全24行)【0030】ステップS04においては印刷データ配信部SP1が無線通信によってサーバ10から携帯電話50に対して印刷データPDを送信する。一方、携帯電話50においては印刷データ受信部CP2がステップC03にて印刷データPDを受信し、メモリ51に記憶する。印刷データPDの受信が完了すると、ステップC04においては初期ステータス要求部CP4がステータス要求を行う。具体的には、プリンタ30のRAM31cに記憶された初期ステータスファイルISFを赤外線通信を介して取得する(get)コマンドを生成する。【0031】プリンタ30におけるRAM31cのパスはプリンタ30が実行するOSが割り当てられており、当該パスと、初期ステータスファイルISFのファイル名をコマンドに付記することにより、初期ステータスファイルISFを取得するコマンドを生成することができる。ステータス要求のコマンドは赤外線通信部CP3にて赤外線信号に変調され、プリンタ30に送信される。なお、ファイル名とパスを指定して電子ファイルをオブジェクトとして赤外線を介して取得する(get)コマンドは、OBEXの規格にて使用可能なコマンドである。【0032】ステップP01にてプリンタ30にて実行中の要求受理部PP3が赤外線通信部PP1を介して上記コマンドを受け付けると、ステップP02にてステータス取得部PP4がシステムバスを介して各部31,32,33,34,35a,36a,37aにステータス情報を問い合わせる。プリンタ30の機種に応じて問い合わせ可能なステータスは異なるが、例えばROM31bからは機種名や累積印刷枚数を取得することができ、インクカートリッジ35bからはインク搭載の有無やインク残量を取得することができ、また紙送り機構37cからはセットされた印刷用紙サイズや用紙枚数や用紙種別(光沢紙or普通紙等)や紙詰まりの有無等を取得することができる。その他、プリンタ30の実行すべき残りのジョブ数やヘッド温度等を取得するようにしてもよい。【0033】以上のような初期ステータスがステータス取得部PP4によって収集されると、さらに収集した初期ステータスを記述した初期ステータスファイルISFをオブジェクト生成部PP5が生成し、RAM31cに記憶する。ここで、オブジェクト生成部PP5が生成する初期ステータスファイルISFのファイル名およびRAM31c内のパスは常に一定とするように規定されている。この規定は、上述した携帯電話50の初期ステータス要求部CP4にも登録されており、ステップC04において初期ステータスファイルISFを取得する(get)コマンドを生成するにあたっては、規定されたパスとファイル名を付記することが可能となっている。すなわち、ステップC04においては、ステップP02にて初期ステータスファイルISFが作成されるであろうパスとファイル名が予め指定されていることとなる。【0034】図7は、初期ステータスファイルISFに記述された内容の一例を示している。ステータスとして検知可能な項目は機種等によって大きく異なるため、ここではあくまで一例を挙げて説明する。・・・【0035】インク残量を初期ステータスとして記述することにより、印刷データPDを送信するにあたり、当該印刷データPDの印刷に十分なインク量が残存にしているか否かを判断することができる。また、複数種類のインクセットをセット可能なプリンタ30において、印刷データPDの印刷につき適正なインクセットがセットされているか否かを判定することができる。また、初期の累積給紙枚数も初期ステータスとして記述される。さらに、セットされた印刷用紙サイズや用紙枚数を初期ステータスとして記述することにより、印刷データPDが印刷可能なサイズの印刷用紙が必要な枚数セットされているか否かを判定することができる。むろん、他の初期ステータスを初期ステータスファイルISFに記述することも可能である。【0036】ステップP03においては初期ステータス送信部PP6が初期ステータスファイルISFを携帯電話50に送信する。ここでも赤外線が通信媒体として使用されるが電子ファイルをオブジェクトとして赤外線を介して送信する(put)コマンドもOBEXの規格にて使用可能である。このように、プリンタのステータスを単体で送受信する仕組みがない赤外線通信等の通信媒体においても、当該通信媒体において交換プロトコルが規定されている汎用的な電子ファイルに初期ステータスを格納することにより、初期ステータスの円滑なやりとりを実現することができる。【0037】ステップC05においては、携帯電話50における初期ステータス解析部CP5が赤外線通信部CP3を介して初期ステータスファイルISFを受信し、例えばTXT形式の初期ステータスファイルISFが携帯電話50の不揮発性のメモリ51に記憶される。不揮発性のメモリ51に記憶された初期ステータスファイルISFは後述する課金処理が行われるまでは、メモリ51に保持される。初期ステータスファイルISFの受信が完了すると、プリンタ30においてはステップP04にて初期ステータスファイルISFがRAM31cから削除される。上述したとおりRAM31cは制御プログラムPPを実行する際のワークエリアとして使用されるため、より多くの空き容量を確保するためにRAM31cから削除しておくことが望ましい。さらに、古い初期ステータスが記述された初期ステータスファイルISFがRAM52cに残存することが防止でき、常に最新の初期ステータスのみを携帯電話50に送信することができる。【0038】一方、メモリ51に初期ステータスファイルISFが記憶された携帯電話50においては、初期ステータス解析部CP5が初期ステータスファイルISFを展開するとともに、初期ステータスファイルISFに記述された各初期ステータスを読み出して解析を行う。携帯電話50においてはメモリ51に印刷データPDが記憶されており、ここではこの印刷データPDに添付された印刷条件と各初期ステータスとの比較を行い、現在のステータスにて当該印刷データPDを印刷して問題があるか否かが判定される。例えば、印刷データPDに印刷条件として指定されたサイズの印刷用紙がプリンタ30にセットされていない場合には問題ありと判定される。この印刷データPDによれば、印刷枚数や消費インク量を推定することができ、初期ステータスとして取得された用紙枚数やインク残量に問題がないかを判定することができる。【0039】ステップC07にて、問題があると判定されるとステップC12にて初期ステータス解析部CP5が液晶ディスプレイ55にてエラー表示を表示させる。これにより、ユーザーはプリンタ30やその設定に問題があったこと、および、印刷がされないことを認知することができる。エラー表示を行うと、ステップC13にて印刷データPDを携帯電話50のメモリ51から削除する。これにより、印刷データPDが携帯電話50に残存することが防止でき、印刷データPDおよびコンテンツ12cの不正な複製を防止することができる。以上の処理において、印刷が実行できなかった場合には課金がされることはない。従って、不当に課金されることが防止できる。」
エ 「【0055】(3)変形例以上においては、サーバ10から送信された印刷データPDをプリンタ30にて印刷する実施形態を説明したが、本発明において印刷データPDが必ずしもサーバ10から送信されたものである必要はない。すなわち、処理装置(プリンタ30)と、当該処理装置に対して所定の通信媒体を介して接続した外部装置(携帯電話50)との間において本発明が実現可能であり、外部装置(携帯電話50)にて作成した印刷データPDをプリンタ30にて印刷させる場合においても本発明の手法によって通信を促したり、印刷を禁止したりすることができる。また、処理装置(プリンタ30)と外部装置(携帯電話50)とが赤外線によって通信可能とされた例を挙げたが、他の通信媒体上にて本発発明のオブジェクトを伝送するようにしてもよい。例えば、Bluetooth等の無線通信を採用してもよいし、有線であってもよい。」
オ 「【図6】[図:0001414707000001.jpg]【図7】[図:0001414707000002.jpg]」
(2)引用文献1の記載から把握できる事項
ア 前記(1)オの【図7】と前記(1)ウの【0034】から、初期ステータスファイルISFに記述されるステータス情報には、エラー情報の有無が含まれることが看取できる。また、前記(1)ウの【0032】、【0033】から、初期ステータスファイルISFに記述されるステータス情報の一つである紙送り機構37cから取得することができる紙詰まりが、エラー情報の一つであることは技術常識である。
イ 前記(1)ウの【0029】の「ステップS02にて購入するコンテンツ12cの指定を受理」との記載と前記(1)オの【図6】からすると、前記(1)ウの【0028】に記載の携帯電話20において実行される「ステップC02にて」ユーザが購入するコンテンツ12cの指定がされていると認められる。
ウ 前記(1)ウの【0030】、【0031】から、携帯電話50からプリンタ30に送信される「初期ステータスファイルISFを赤外線通信を介して取得する(get)コマンド」と「ステータス要求のコマンド」は同義と解され、前記(1)イの【0018】、前記(1)ウの【0032】及び前記(1)オ【図6】から、ステップP01にて、プリンタ30の要求受理部PP3は、赤外線通信部PP1を介して携帯電話50からステータス要求のコマンドを受信すると、当該ステータス要求をステータス取得部PP4に送出すると認められる。
エ (1)ウの【0032】に記載のように、ステータス取得部PP4がシステムバスを介して各部31,32,33,34,35a,36a,37aにステータス情報を問い合わせて、紙送り機構37cからセットされた印刷用紙サイズや用紙枚数や用紙種別(光沢紙or普通紙等)や紙詰まりの有無等を取得することができるからには、要求受理部PP3が、ステータス情報を問い合わせるステータス要求を受け付けると、ステータス取得部PP4が紙送り機構37cまでステータス情報を問い合わせるものと認められる。
(3)引用文献1に記載された発明等
上記(1)及び(2)から、引用文献1には、次の発明等が記載されていると認められる。
<引用発明1>
「印刷媒体を順次送り出す紙送り機構37cと印刷媒体にインクのドットを形成して印刷する印刷ヘッドと、赤外線の送信を行う発光ダイオードと受信を行うフォトダイオードとを有しており、通信可能な距離が30cmから1m程度の赤外線通信が可能な赤外線I/F33と、プリンタ30全体を制御する制御部31とを有するプリンタ30において、制御部31は、CPU31aとROM31bとRAM31cとを備え、続きを表示(全12行)ROM31bに記録されたOSおよび制御プログラムPPにしたがってCPU31aがRAM31cをワークエリアとしてプリンタ30全体を制御し、制御プログラムPPは、内部モジュールとして赤外線通信部PP1と印刷実行部PP2と要求受理部PP3とステータス取得部PP4とオブジェクト生成部PP5と初期ステータス送信部PP6と終了ステータス送信部PP7と通知部PP8と印刷禁止部PP9を備え、赤外線通信部PP1は、赤外線I/F33にて受信した赤外線信号から各種の電子ファイルを復調し、各モジュールPP2~PP4に出力し、要求受理部PP3が、赤外線通信部PP1を介して、ユーザが購入するコンテンツ12cの指定があった携帯電話50から、ステータス要求のコマンドを受信すると、当該ステータス要求をステータス取得部PP4に送出し、ステータス取得部PP4が制御部31や紙送り機構37c等にステータス情報を問い合わせ、少なくとも紙送り機構37cからは紙詰まりの有無を取得し、ROM31bからは機種名や累積印刷枚数を取得し、オブジェクト生成部PP5が、ステータス取得部PP4によって収集された初期ステータスを記述した初期ステータスファイルISFを生成してRAM31cに記憶し、初期ステータス送信部PP6が、初期ステータスファイルISFを赤外線を介して携帯電話50に送信し、携帯電話50における初期ステータスファイルISFの受信が完了すると、初期ステータスファイルISFをRAM31cから削除するプリンタ30であって、前記初期ステータスファイルISFに記述されるステータス情報には、紙詰まり等のエラー情報の有無や機種名や累積印刷枚数等が含まれていて、常に最新の初期ステータスのみを携帯電話50に送信することができるプリンタ30。」
2 対比・判断
ア 対比
本願発明と引用発明1とを対比する。
(ア)引用発明1の「シート状の印刷媒体を順次送り出す紙送り機構37c」、「携帯電話50」及び「プリンタ30」は、本願発明の「1つの動作機構」、「操作端末」及び「電子機器」に相当する。
(イ)引用発明1の「赤外線通信部PP1は、赤外線I/F33にて受信した赤外線信号から各種の電子ファイルを復調し、各モジュールPP2~PP4に出力し、要求受理部PP3が、赤外線通信部PP1を介して、ユーザが購入するコンテンツ12cの指定があった携帯電話50から、ステータス要求のコマンドを受信」し、「赤外線I/F33」は「赤外線の送信を行う発光ダイオードと受信を行うフォトダイオードとを有しており」「赤外線通信が可能」であるから、引用発明1の「『赤外線通信部PP1』、『要求受理部PP3』と『赤外線I/F33』」は、本願発明の「無線通信により操作端末と情報送受信を行う通信手段」に相当する。
(ウ)引用発明1のプリンタ30」は、「紙送り機構37c」や「赤外線I/F33」を備え、「制御部31は」「プリンタ30全体を制御」するから、本願発明の「制御手段」と引用発明1の「制御部31」とは、「動作機構及び通信手段を制御する」ものとの概念で一致する。
(エ)引用発明1の「赤外線I/F33」の「通信可能な距離」は「30cmから1m程度」であるから、「要求受理部PP3が、赤外線通信部PP1を介して、ユーザが購入するコンテンツ12cの指定があった携帯電話50から、ステータス要求のコマンドを受信」するには、「赤外線通信部PP1」を備える「プリンタ30」に、「携帯電話50」が接触又は近接する必要がある。そして、前記「ステータス要求のコマンド」は、「携帯電話50」における「ユーザが購入するコンテンツ12cの指定」を行う操作に起因するものであるから、「携帯電話50」における「ユーザが購入するコンテンツ12cの指定」を行う操作はステータス要求の操作ともいえる。してみると、引用発明1の「要求受理部PP3が」「ステータス取得部PP4に送出」する「ステータス要求」は、本願発明の「通信手段」が「制御手段に送信」する「接触又は近接した前記操作端末からの情報要求操作に応じた信号」に相当する。
(オ)引用発明1の「要求受理部PP3が」「ステータス要求をステータス取得部PP4に送出し、ステータス取得部PP4が制御部31や紙送り機構37c等にステータス情報を問い合わせ」るから、前記(エ)を踏まえると、本願発明の「通信手段」と引用発明1の「要求受理部PP3」は、「接触又は近接した前記操作端末からの情報要求操作に応じた信号を前記制御手段に送信」するものとの概念で一致する。
(カ)引用発明1の「要求受理部PP3が」「ステータス要求をステータス取得部PP4に送出」した後に、「ステータス取得部PP4が制御部31や紙送り機構37c等にステータス情報を問い合わせ」るから、「ステータス取得部PP4」が、「要求受理部PP3」からステータス要求を受信したか否かに基づいて、ステータス要求があったか否かを判定していることは明らかである。引用発明1の「制御部31は」「制御プログラムPPにしたがって」「プリンタ30全体を制御」するから、本願発明の「制御手段」と引用発明1の「制御部31」とは、「前記通信手段から前記情報要求操作に応じた信号を受信したか否かに基づいて、前記情報要求操作があったか否かを判定する操作判定処理」を実行するものとの概念で一致する。
(キ)引用発明1の「ステータス情報」に含まれる「紙詰まり等のエラー情報の有無」は、本願発明における「エラー事象」に相当する。
(ク)引用発明1の「ステータス取得部PP4が制御部31や紙送り機構37c等にステータス情報を問い合わせ、少なくとも紙送り機構37cからは紙詰まりの有無を取得し、ROM31bからは機種名や累積印刷枚数を取得し、オブジェクト生成部PP5は、ステータス取得部PP4によって収集された初期ステータスを記述した初期ステータスファイルISFを生成してRAM31cに記憶」することにおいて、紙送り機構37c等にステータス情報を問い合わせて、紙詰まり有無を取得することは、前記(ア)及び(キ)を踏まえれば、本願発明の、「動作機構」において発生している「エラー事象」を収集することに相当し、制御部31にもステータス情報を問い合わせるから、制御部31において発生している「エラー事象」も収集していることは明らかである。また、引用発明1の「ステータス取得部PP4が制御部31や紙送り機構37c等にステータス情報を問い合わせ」ることは、「要求受理部PP3が」「ステータス要求をステータス取得部PP4に送出」した後に行われるから、前記(カ)を踏まえると、「ステータス取得部PP4」が、「要求受理部PP3」からステータス要求があったと判定した場合に行われているものと認める。してみると、引用発明1の「制御部31は」「制御プログラムPPにしたがって」「プリンタ30全体を制御」するから、本願発明の「制御手段」と引用発明1の「制御部31」とは、「前記情報要求操作があったと判定された場合に、前記少なくとも1つの動作機構それぞれ及び前記制御手段において発生しているエラー事象を収集するエラー収集処理」を実行するものとの概念で一致する。
(ケ)引用発明1の「ステータス取得部PP4」は「制御部31や紙送り機構37c」等の複数の対象に対してステータス情報を問い合わせ、「オブジェクト生成部PP5が、ステータス取得部PP4によって収集された初期ステータスを記述した」一つの「初期ステータスファイルISF」を生成するので、引用発明1の「初期ステータスファイルISF」は、本願発明の「前記エラー収集処理により収集された前記エラー事象をまとめたエラー報告」に相当する。
(コ)引用発明1の初期ステータス送信部PP6が、初期ステータスファイルISFを「赤外線を介して携帯電話50に送信」することは、前記(ア)、(イ)を踏まえれば、本願発明の「通信手段を介して「操作端末へ送信」することに相当するので、前記(ケ)を踏まえれば、引用発明1の「初期ステータス送信部PP6が、初期ステータスファイルISFを赤外線を介して携帯電話50に送信」することは、本願発明の「エラー収集処理により収集されたエラー事象をまとめたエラー報告を、」「通信手段を介して」「操作端末へ送信」することに相当する。そうすると、引用発明1の「制御部31は」「制御プログラムPPにしたがって」「プリンタ30全体を制御」するから、本願発明の「制御手段」と引用発明1の「制御部31」とは、「前記エラー収集処理により収集された前記エラー事象をまとめたエラー報告を、前記通信手段を介して前記操作端末へ送信するエラー報告送信処理」を実行するものとの概念で一致する。
(サ)引用発明1の「初期ステータス送信部PP6が、初期ステータスファイルISFを赤外線を介して携帯電話50に送信し、携帯電話50における初期ステータスファイルISFの受信が完了すると、初期ステータスファイルISFをRAM31cから削除する」ところ、当該「初期ステータスファイルISF」は、前記(ケ)に示したとおり、本願発明の「前記エラー収集処理により収集された前記エラー事象をまとめたエラー報告」に相当するから、引用発明1の「初期ステータスファイルISFをRAM31cから削除する」ことは、本願発明の「エラー報告の内容を消去」することに相当する。引用発明1の「制御部31は」「制御プログラムPPにしたがって」「プリンタ30全体を制御」するから、前記(コ)を踏まえると、本願発明の「制御手段」と引用発明1の「制御部31」とは、「前記エラー報告送信処理を実行したことを条件として、前記エラー報告の内容を消去する第1消去処理」を実行するものとの概念で一致する。
したがって、本願発明と引用発明1を対比すると、両者は、
<一致点>
「少なくとも1つの動作機構と、無線通信により操作端末と情報送受信を行う通信手段と、前記動作機構及び前記通信手段を制御する制御手段と、を有し、続きを表示(全11行)前記通信手段は、接触又は近接した前記操作端末からの情報要求操作に応じた信号を前記制御手段に送信し、前記制御手段は、前記通信手段から前記情報要求操作に応じた信号を受信したか否かに基づいて、前記情報要求操作があったか否かを判定する操作判定処理と、前記情報要求操作があったと判定された場合に、前記少なくとも1つの動作機構それぞれ及び前記制御手段において発生しているエラー事象を収集するエラー収集処理と、前記エラー収集処理により収集された前記エラー事象をまとめたエラー報告を、前記通信手段を介して前記操作端末へ送信するエラー報告送信処理と、前記エラー報告送信処理を実行したことを条件として、前記エラー報告の内容を消去する第1消去処理と、を実行する画像形成装置。」
である点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点1>
本願発明の「前記通信手段は、前記情報要求操作に応じた信号を前記制御手段に送信した後、前記制御手段から前記エラー報告を受信しない場合に、前記制御手段の動作にエラーが生じていることを示す情報を操作端末に送信する」のに対し、引用発明1の「要求受理部PP3が、赤外線通信部PP1を介して、ユーザが購入するコンテンツ12cの指定があった携帯電話50から、ステータス要求のコマンドを受信すると、当該ステータス要求をステータス取得部PP4に送出し」た後に、初期ステータス送信部PP6が、初期ステータスファイルISFを赤外線を介して携帯電話50に送信しない場合の制御が不明である点。
イ 判断
(ア)本願発明の「前記通信手段は、前記情報要求操作に応じた信号を前記制御手段に送信した後、前記制御手段から前記エラー報告を受信しない場合に、前記制御手段の動作にエラーが生じていることを示す情報を操作端末に送信する」との事項は、令和6年5月14日に提出された手続補正書により補正された事項であり、当該補正は、同日付け意見書に記載のとおり、発明の詳細な説明の【0081】を根拠としている。この【0081】の「なお、難易度大のエラー事象の一例として挙げた「システム異常(#01SystemError01)」は、制御回路143の起動不能やハングアップ等が生じた場合に発生する。この場合、ステップSP20における制御回路143によるプリンタ1内部の情報収集が正常には実行できない。これに対して、操作端末200からのNFC通信によって、プリンタ1のNFC通信部TのNFC制御部157には、起電力が生じるため、このNFC制御部157がステップSP20を処理する制御手段として機能してもよい。つまり、NFC制御部157は、制御回路143にかざし操作に応じた信号を送った後、制御回路143からのエラー報告送信等のステップS40、ステップS50の情報が送られてこない場合、そのことを検出して、制御回路143の動作に難易度大のエラーが生じているとして、ステップSP40を処理し、上記「システム異常(#01SystemError01)」を操作端末200に送信してもよい。」との記載と、【0057】の「ステップSP40は、エラー報告送信処理と動作情報送信処理の一例である。ステップSP50は、動作情報送信処理の一例である。」との記載を踏まえると、本願発明の前記事項中の「前記制御手段から前記エラー報告を受信しない場合」とは、通信手段が情報要求操作に応じた信号を制御手段に送信した後に、前記制御手段から動作情報のみを受信した(「動作情報のみを受信」するということは、当然に「エラー報告を受信」しないこととなる)場合とは解されず、前記制御手段から要求に対する応答がない場合を意味すると解される。
(イ)電子機器において、ハングアップの回避は、例えば特開2012-8661号公報の【0004】、【0005】や特開2006-308946号公報の【0107】に記載のとおり周知の課題であり、電子機器内でAからBに応答要求(コマンド)を送信すると、正常であればBが応答(レスポンス)するところ、許容時間(所定時間)内に応答(レスポンス)がない場合に、異常(エラー)と判断することも、例えば特開2012-8661号公報の【0057】や特開2006-308946号公報の【0081】、【0107】に記載のとおり周知技術である。
(ウ)引用発明1のプリンタ30は、赤外線通信部PP1を介して、携帯電話50から、ステータス要求のコマンドを受信した要求受理部PP3が、ステータス要求をステータス取得部PP4に送出した後、ステータス取得部PP4が制御部31等にステータス情報を問い合わせて、ROM31b等から機種名や累積印刷枚数等のステータス情報を取得するので、正常であれば、制御部31がステータス要求に対して応答していると認められる。引用発明1のプリンタ30において、電子機器で周知の課題であるハングアップへの対策として、前記周知技術を適用して、要求受理部PP3が、ステータス要求をステータス取得部PP4に送出した後、制御部31がステータス要求に対して応答しない場合に、異常(エラー)と判断して、ステータス要求元である携帯電話50に当該異常(エラー)情報を送信することは、当業者が容易になし得ることである。
(エ)したがって、本願発明は、引用発明1及び周知技術に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものである。
第5 むすび
前記第4のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、その他の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、上記の結論のとおり審決する。
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2023-005014