特許拒絶査定不服審判
2022-000438
包装材
- 審判番号
- 2022-000438
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2017-114437外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2022年01月12日
- 審決日
- 2024年01月24日
- 公報発行日
- 2024年04月26日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】大阪シーリング印刷株式会社
- 【請求人代理人】岡田 和秀
- 分類
- P18 .121-WZ (B41J)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 行政事件訴訟法46条特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2017-114437「包装材」拒絶査定不服審判事件〔平成30年12月27日出願公開、特開2018-202831〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、平成29年6月9日の出願であって、令和3年3月10日付けで拒絶理由が通知され、同年5月14日に意見書及び手続補正書が提出されたが、同年10月1日付けで拒絶査定がされ、これに対して、令和4年1月12日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正書が提出され、その後、当審において、令和5年3月14日付けで拒絶理由が通知され、同年5月16日に意見書及び手続補正書が提出され、同年9月29日付けで拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という。)が通知され、同年11月28日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。
第2 本願発明
本願の請求項1乃至3に係る発明は、令和5年11月28日付けで提出された手続補正書の特許請求の範囲の請求項1乃至3に記載された事項により特定されるとおりのものであって、そのうち請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は次のとおりのものである。
「物品を包装する包装材であって、
シート状の基材と、前記基材の一方の面に形成されて、情報が印刷されているレーザー印刷層と、前記基材の他方の面に形成された粘着剤層と、前記粘着剤層を覆う包装シートとが積層されており、
前記包装シートが、段ボールシートであり、
前記レーザー印刷層には、前記物品が配送される配送先の宛名を含む前記情報がレーザー装置から照射されるレーザー光によって印刷されており、
前記包装シートは、前記物品を包装するのに必要なサイズに前記レーザー装置から照射されるレーザー光によってカット処理されている、
ことを特徴とする包装材。」
第3 当審拒絶理由の概要
当審拒絶理由において通知した理由は、次に概略を記した理由を含むものである。
(進歩性)この出願の令和5年5月16日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された特開2017-87594号公報に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
第4 当審の判断
1 引用例
当審拒絶理由で引用された、本願の出願日前である平成29年5月25日に頒布された刊行物である特開2017-87594号公報(以下「引用例」という。)には、次の事項が記載されている。
(1)「【技術分野】
【0001】
本発明は、配送物を梱包する梱包材及びこれを用いた配送方法に関する。」
(2)「【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、以上の点に鑑み、配送物の配送コストの低コスト化を図ることができ、配送先に関する情報を配送先にて確実に確認することができる梱包材及び配送方法を提供することを課題とする。」
(3)「【0010】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態の梱包材について、段ボール及び段ボール箱を例に説明する。図1及び図2に示すように、段ボール1は、例えば、表ライナ12Aと、裏ライナ12Bと、これら両ライナ12A,12B間に介設される、波状に成形された中しん13とで構成される。このような段ボール1の基本的な構成は、公知のものが利用できるため、これ以上の詳細な説明を省略する。そして、段ボール1は、内部に配送物の収容空間が形成されるように箱状に組み立てられる。以下では、箱状に組み立てられた段ボールを段ボール箱という。
【0011】
本実施形態では、段ボール1の表ライナ12Aを、2層以上の積層体たる疑似接着シートで構成している。表ライナ12Aは、基材シート121と、基材シート121の裏面に設けられた疑似接着層122とで構成されている。疑似接着層122は、基材シート121側の第1層122aと中しん13側の第2層122bとで構成され、これら第1層122aと第2層122bとの界面で基材シート121を剥離できるようになっている。すなわち、積層体の少なくとも最外層たる基材シート121が段ボール箱1から分離可能となっている。ここで、基材シート121の上面側から第1層122aと第2層122bとの界面に到達する深さの切り込み10aが形成され、この切り込み10aで囲まれる分離部10を容易に分離できる。本実施形態においては、分離部10は四角形で形成されているが、分離部10の形状は、三角形、五角形などの多角形や円形(図4(c)参照)、楕円形、星形、不定形など特に限定されるものではない。図4(a)に示すように、切り込み10aは、切断部10a-1と非切断部10a-2とで構成される。1つの切断部10a-1の長さは、2mm以上30mm以下が好ましく、3mm以上20mm以下がさらに好ましく、5mm以上10mm以下がより好ましい。切断部10a-1の長さが2mm未満であると部分抜き加工の精度が不足するおそれがあり、30mmを超えると段ボール箱1の上面1aにおける分離部10の保持性が不安定になる場合がある。図4(b)に示すように、切断部10a-1が多角形の頂点に設けられる場合には、その頂点の両方の辺10a-11,12の長さは、分離部10の保持性を考慮すると各々10mm以下であることが好ましい。また、1つの非切断部10a-2の長さは、1mm以上5mm以下が好ましく、2mm以上3mm以下がさらに好ましい。非切断部10a-2の長さが1mm未満であると部分抜き加工の精度が不足するおそれがあるばかりか、わずかな衝撃で切断されてしまうおそれがあり、5mmを超えると分離する際に容易に分離できなくなる場合がある。切断部10a-1は、本実施形態においては直線形状で示されているが、図4(c)に示すような円形や楕円形などのドット形状でもよい。尚、切断部10a-1と非切断部10a-2の形状や長さは、これらに特に限定されるものではない。また、切り込み10aは、例えば、後述する抜き型30を段ボール箱1に押し付ける部分抜き加工やミシン目加工により形成することができる。」
(4)「【0014】
段ボール箱1の上面1aには、受領票印字部11A及び配達票印字部11Bが設けられ、これらの印字部11A,11Bに、配送業者が配送物を配送するために必要な配送先に関する情報(配送先の住所・氏名等)の印字P1,P2を印字する。これと共に、受領票印字部11Aの切り込み10aで囲まれた分離部10に、受領印欄11aの印字P1が印字される。
…
【0016】
印字手段2としては、上下動自在な印字ヘッド20を有するインクジェットプリンタ等の公知のものを用いることができ、また、分離部形成手段3としては、段ボール箱1の上面1aに抜き型(刃)30を押圧する上下動自在な移動部(駆動手段を含む)31を有する公知のプレス機やレーザ加工機などを用いることができるため、ここでは詳細な説明を省略する。…」
(5)「【0026】
また、上記実施形態では、基材シート121の切り込み10aで囲まれた分離部10を分離しているが、例えば、段ボール箱1のサイズが小さい場合には、切り込み10aを形成せず、段ボール箱1の上面1aの基材シート121全体を分離部として分離するようにしてもよい。」
上記(1)乃至(5)の記載事項から、引用例には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。
「段ボール1からなる梱包材であって、
段ボール1は、表ライナ12Aと、裏ライナ12Bと、これら両ライナ12A,12B間に介設される、波状に成形された中しん13とで構成され、
表ライナ12Aは、基材シート121と、基材シート121の裏面に設けられた疑似接着層122とで構成され、疑似接着層122は、基材シート121側の第1層122aと中しん13側の第2層122bとで構成され、これら第1層122aと第2層122bとの界面で基材シート121を剥離できるようになっており、
段ボール1の上面1aには、インクジェットプリンタ等の公知のもので印字された受領票印字部11A及び配達票印字部11Bが設けられ、これらの印字部11A,11Bに、配送業者が配送物を配送するために必要な配送先に関する情報(配送先の住所・氏名等)の印字がなされており、
段ボール1にはサイズがある、
梱包材。」
2 対比
本願発明と引用発明とを対比する。
引用発明の「梱包材」、「基材シート121」、「『基材シート121側の第1層122aと中しん13側の第2層122b』とで構成された『疑似接着層122』」は、それぞれ、本願発明の「物品を包装する包装材」、「シート状の基材」、「基材の他方の面に形成された粘着剤層」に相当する。
引用発明の段ボール1の上面1aには、受領票印字部11A及び配達票印字部11Bが設けられているところ、段ボール1は、表ライナ12Aと、裏ライナ12Bと、これら両ライナ12A,12B間に介設される、波状に成形された中しん13とで構成され、表ライナ12Aは、基材シート121と、基材シート121の裏面に設けられた疑似接着層122とで構成されているから、「受領票印字部11A及び配達票印字部11B」は、段ボール1の上面1a上に設けられているといえる。してみると、本願発明の「情報が印刷されているレーザー印刷層」と、引用発明の「受領票印字部11A及び配達票印字部11B」とは、「基材の一方の面に形成されて、情報が印刷されている印刷層」との概念で一致する。
さらに、引用発明の「印字部11A,11B」には、配送業者が配送物を配送するために必要な配送先に関する情報(配送先の住所・氏名等)の印字がなされているから、本願発明の「レーザー印刷層」と、引用発明の「受領票印字部11A及び配達票印字部11B」とは、「物品が配送される配送先の宛名を含む情報が印刷されて」いるものとの概念で一致する。
引用発明の段ボール1は、表ライナ12Aと、裏ライナ12Bと、これら両ライナ12A,12B間に介設される、波状に成形された中しん13とで構成され、表ライナ12Aに、疑似接着層122が設けられているところ、裏ライナ12Bと、波状に成形された中しん13とは、段ボール1を構成するものであるから、引用発明の「裏ライナ12Bと、波状に成形された中しん13」は、本願発明の「包装シート」に相当し、両者は、段ボールシートを構成する点で一致する。
引用発明の段ボール1には、サイズがあって、配送物を梱包するものであるから、当該サイズは、物品を包装するのに必要なサイズであることは明らかである。
そうすると、本願発明と引用発明とは、
[一致点]
「物品を包装する包装材であって、
シート状の基材と、前記基材の一方の面に形成されて、情報が印刷されている印刷層と、前記基材の他方の面に形成された粘着剤層と、前記粘着剤層を覆う包装シートとが積層されており、
前記包装シートが、段ボールシートであり、
前記印刷層には、前記物品が配送される配送先の宛名を含む前記情報が印刷されており、
前記包装シートは、前記物品を包装するのに必要なサイズである、
ことを特徴とする包装材。」
で一致し、以下の点で相違する。
[相違点1]
印刷層が、本願発明は、「レーザー」印刷層であって、「レーザー装置から照射されるレーザー光によって」印刷されるものであるのに対し、引用発明は、「インクジェットプリンタ等の公知のもの」で印字されている点。
[相違点2]
本願発明の包装シートは、物品を包装するのに必要なサイズに「前記レーザー装置から照射されるレーザー光によって」カット処理されているのに対し、引用発明は、サイズを規定する手段が明らかでない点。
3 判断
(1)相違点1について
段ボールに貼付するラベルの印字手段としてのレーザー装置は、当該技術分野において周知の技術手段である(例えば、特開2011-25508号公報(【0021】、【0022】、【0042】等参照。)、特開2008-179132号公報(【0105】等参照。)、特開2004-195751号公報(【0004】等参照。)。以下「周知技術1」という。)。 引用発明は、インクジェットプリンタ等の公知のもので印字していることからすると、引用発明に、同様に印刷技術である前記周知技術1を適用する動機付けはあるといえるから、引用発明の印字に、前記周知技術1を適用し、相違点1に係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得るものである。
(2)相違点2について
段ボールの切断手段としてのレーザー装置は、周知の技術手段である(例えば、特開2008-81164号公報(【0026】等参照。)、特開2002-1835号公報(【0004】等参照。)。以下「周知技術2」という。)。
引用発明は、サイズがある段ボール1を梱包材としていることからすると、原反等の段ボールから所望のサイズに加工していることは自明といえ、引用発明に、前記周知技術2を適用する動機付けはあるといえるから、引用発明の段ボールを所望のサイズに加工する際に、前記周知技術2を適用し、相違点2に係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得るものである。
(3)レーザー装置を共用することについて
請求人は、“レーザー印刷層に印刷するための装置と包装材をカット処理するための装置とを別々に設置すると、それだけコストが掛かり、また、装置を設置するための場所を確保する必要があります。これに対し、本願発明は、印刷とカット処理とが同じレーザー装置で行われています。このため、レーザー印刷層に印刷するための装置と包装材をカット処理するための装置とを別々に設置する場合に比べて、コスト面で有利になり、また、装置の設置場所を省スペース化することが可能です。 さらに、上記の構成を備えるため、物品と、配送されるその物品の配送先等のデータとを確実に対応させることが可能です。配送先等のデータと配送されるその物品とは、誤配送を防止するため、確実に対応させなければなりません。この点、例えば、配送先等の情報の印字と、包装シートのカット処理とを別々の装置で行う場合であって、包装シートのカット処理を行った後に印字を行う場合を検討します。このような場合、包装シートのカット処理と印字との間で何らかのトラブルが生じて、カット処理された包装シートに、その包装シートに印字すべきでない情報が印字される可能性があります。つまり、本来、包装シートに包装される物品の情報とは異なる情報が包装シートに印字されるため、誤配送の原因となります。これに対し、本願発明は、印刷とカット処理とが同じレーザー装置で行われるため、物品と、配送されるその物品の配送先等のデータとを確実に対応させることが可能となり、上記したような誤配送を未然に防ぐことが可能です。”旨、主張する。
しかし、一般に、装置内に、同じ機能を有する手段が複数ある場合に、当該手段を共用することは、当業者であれば、コスト、装置の規模等を勘案すれば、当然採用する事項である。
してみれば、引用発明において、前記周知技術1及び2を適用する際に、両者を共通のレーザー装置とし、以て、本願発明とすることは、当業者が適宜なし得る程度のことである。
そして、本願発明の効果も、引用発明、上記周知技術1及び2から、当業者が予測し得る程度のものといえる。
よって、本願発明は、引用発明及び上記周知技術1及び2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることが出来ない。
第5 むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、引用発明及び上記周知技術1及び2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
したがって、結論のとおり審決する。
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