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特許拒絶査定不服審判

2023-002451

印刷装置

審判番号
2023-002451
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2018-171254外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2023年02月13日
審決日
2024年04月16日
公報発行日
2024年07月26日
結論
請求不成立
当事者
審判長/審判官
分類
P18 .121-WZ (B41J)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
行政事件訴訟法46条特許法29条2項
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2018-171254「印刷装置」拒絶査定不服審判事件〔令和 2年 3月19日出願公開、特開2020- 40353〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論
本件審判の請求は、成り立たない。

理由

目次 ▾ 7項目
理 由

第1 手続の経緯

折りたたみ中(クリックで表示)

本願は、平成30年9月13日の出願であって、令和4年6月3日付けの拒絶理由の通知に対し、同年8月9日に意見書及び手続補正書が提出され、同年8月19日に最後の拒絶理由が通知され、同年10月26日に意見書が提出されたが、同年11月8日付けで拒絶査定がなされ、これに対して令和5年2月13日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正書が提出され、その後、当審において、同年12月19日付けで拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という。)が通知され、令和6年2月22日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。

第2 本願発明について

本願の請求項1-8に係る発明は、令和6年2月22日に提出された手続補正書の特許請求の範囲の請求項1-8に記載された事項により特定されるものであり、そのうち請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は次のとおりのものである。

「所定の方向に回転する回転軸を有し、長尺状の被印刷物の裏面を支持しながら搬送する回転支持体と、
前記回転支持体上に支持された長尺状の被印刷物の表面に対向するように配置され、前記長尺状の被印刷物の表面上に複数のインクのそれぞれを塗布して印刷を行う複数のインクジェットヘッドと、
前記長尺状の被印刷物の搬送方向に対して前記複数のインクジェットヘッドの各々の下流側に配置され、前記長尺状の被印刷物の表面を乾燥させる複数の乾燥部と、
前記搬送方向に対して、前記回転支持体の上流側であって、前記回転支持体と前記長尺状の被印刷物が挟持されるような位置または前記回転支持体へ搬送される前記長尺状の被印刷物が直ちに搬送される位置に配置され、前記長尺状の被印刷物の表面を支持しながら搬送する第1搬送ローラと、
前記搬送方向に対して、前記回転支持体の下流側でかつ下方に前記回転支持体と接触しないように配置されており、前記回転支持体から搬送されてきた前記長尺状の被印刷物を直ちに支持できるように配置され、前記長尺状の被印刷物の裏面を支持しながら搬送する第2搬送ローラと、を備える印刷装置。」

第3 当審拒絶理由の概要

令和5年12月19日付け当審拒絶理由において通知した理由は、次に概略を記した理由を含むものである。

理由2(進歩性)

2-1 この出願の令和5年2月13日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された引用文献1に記載の発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

2-2 この出願の令和5年2月13日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された引用文献2及び引用文献3記載の技術的事項に記載の発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献1:特開2011-16313号公報
引用文献2:米国特許出願公開第2018/0056650号明細書
引用文献3:国際公開第2017/110441号

第4 当審の判断

1 引用文献

(1)引用文献1

ア 引用文献1に記載された事項

本願の出願前である平成23年1月27日に頒布された刊行物である特開2011-16313号公報(以下、「引用文献1」という。)には、以下の事項が記載されている(下線は当審で付した。以下同じ。)。

(ア)「【請求項1】
媒体を周面にて搬送する円筒形状の搬送部材と、
前記搬送部材の前記周面に対向して設けられたヘッドであって、電磁波が照射されることによって硬化する液体を噴射して前記搬送部材上の前記媒体にドットを形成するヘッドと、
ドット形成後の前記媒体が前記搬送部材から離れた後、前記媒体のドットに電磁波を照射する照射部と、
続きを表示(全13行)
を備えたことを特徴とする液体噴射装置。
・・・
【請求項5】
請求項1~4に記載の液体噴射装置であって、
前記ヘッドは、
画像を印刷するための液体を噴射する第1ヘッドと、
前記第1ヘッドよりも前記媒体の搬送方向の下流側で、前記媒体の表面を加工する加工液を噴射する第2ヘッドと、
を含み、
前記第1ヘッドと前記第2ヘッドとの間に、前記照射部よりも照射強度の弱い電磁波を照射する仮硬化用照射部を有することを特徴とする液体噴射装置。」
(イ)「【技術分野】
【0001】
本発明は、液体噴射装置に関する。」
(ウ)「【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したような液体吐出装置において、円筒形状の搬送部材(例えば搬送ドラム)と、その搬送部材の周面に対向して設けられたヘッドとを有し、媒体を搬送部材の周面にて搬送しつつヘッドからインクを吐出することによって媒体に画像を印刷するものがある。この場合、搬送部材の周面上においてドットを完全に固化させると、媒体がカールするおそれがある。
本発明は、媒体のカールを防止することを目的とする。」
(エ)「【0014】
===第1実施形態===
<プリンターの構成について>
図1は、プリンター1の全体構成のブロック図である。また、図2は、印刷領域周辺の概略図である。・・・
続きを表示(全20行)
【0016】
プリンター1は、搬送ユニット20、ヘッドユニット30、照射ユニット40、検出器群50、及びコントローラー60を有する。外部装置であるコンピューター110から印刷データを受信したプリンター1は、コントローラー60によって各ユニット(搬送ユニット20、ヘッドユニット30、照射ユニット40)を制御して、印刷データに従って媒体に画像を印刷する。
・・・
【0017】
搬送ユニット20は、媒体(例えば、紙Sなど)を所定の方向(以下、搬送方向という)に搬送させるためのものである。この搬送ユニット20は、上流側搬送ローラー21A、下流側搬送ローラー21B、及び、搬送ドラム22を有する。
上流側搬送ローラー21Aは、搬送ドラム22の図中左下の位置に設けられている。また、下流側搬送ローラー21Bは、搬送ドラム22よりも重力方向の下方向に、搬送ドラム22から離れて設けられている。上流側搬送ローラー21A及び下流側搬送ローラー21Bが回転することによって、媒体が搬送されるとともに搬送ドラム22が回転する。
搬送ドラム22は、円筒形状の搬送部材であり、ロール状に巻かれた長尺の紙Sを周面にて搬送する。本実施形態では、図2に示すように、搬送ドラム22の半径をRとし、下流側搬送ローラー21Bの半径をr(<R)とする。
なお、紙Sは上流側の給紙ロール(不図示)から供給され、下流側の巻き取りローラー(不図示)によって巻き取られる。また、紙Sは所定の張力で搬送ドラム22に密着するように搬送される。
【0018】
ヘッドユニット30は、媒体にUVインクを噴射するためのものである。ヘッドユニット30は、搬送中の媒体に対して各ヘッドからインクを噴射することによって、媒体にドットを形成し、画像を媒体に印刷する。なお、本実施形態のプリンター1のヘッドユニット30の各ヘッドは媒体幅分のドットを一度に形成することができる。また、本実施形態では、UVインクとして、画像を形成するための4色のカラーインクを用いる。図2に示すように、搬送方向の上流側から順に、ブラックのUVインクを噴射するブラックインクヘッドK、シアンのUVインクを噴射するシアンインクヘッドC、マゼンダのUVインクを噴射するマゼンダインクヘッドM、イエローのUVインクを噴射するイエローインクヘッドYの各ヘッドが、搬送ドラム22の周面と対向するように設けられている。以下、カラーインク(ブラック、シアン、マゼンダ、イエロー)を噴射する各ヘッドのことをカラーインク用ヘッドともいう。また、カラーインク用ヘッドによって形成されたドットのことをカラードットともいう。
なお、ヘッドユニット30の構成の詳細については、後で説明する。
【0019】
照射ユニット40は、媒体に着弾したUVインクに向けてUVを照射するものである。媒体上に形成されたドットは、照射ユニット40からのUVの照射を受けることにより、硬化する。本実施形態の照射ユニット40は、仮硬化用照射部42a~42e、及び本硬化用照射部44を備えている。
【0020】
仮硬化用照射部42a~42eは、媒体に形成されたドットを仮硬化させるためのUVを照射する。仮硬化用照射部42aは、ブラックインクヘッドKの搬送方向下流側に設けられており、仮硬化用照射部42bは、シアンインクヘッドCの搬送方向下流側に設けられている。また、仮硬化用照射部42cは、マゼンダインクヘッドMの搬送方向下流側に設けられており、仮硬化用照射部42dは、イエローインクヘッドYの搬送方向下流側に設けられている。また、仮硬化用照射部42eは、クリアインクヘッドCLの搬送方向下流側に設けられている。
これらの仮硬化用照射部42a~42eの媒体幅方向の長さは媒体幅以上であり、各ヘッドによって媒体に形成されたドットに仮硬化のためのUV光を照射することができる。本実施形態において、仮硬化とは、インク間の滲みやドットの広がりを抑制するために行う硬化のことである。」
(オ)「【0025】
<ヘッドの構成について>
本実施形態のプリンター1は、前述したように4つのカラーインク用ヘッド(ブラックインクヘッドK、シアンインクヘッドC、マゼンダインクヘッドM、イエローインクヘッドY)を備えている。これらの各ヘッドは、画像を印刷するためのUVインク(カラーインク)をインク色毎に噴射する。」
(カ)「【0039】
<印刷処理について>
プリンター1が印刷を開始する際には、予め紙Sが搬送ドラム22の周面に沿わされた状態で、上流側搬送ローラー21A、下流側搬送ローラー21Bにて支持されている。
プリンター1がコンピューター110から印刷データを受信すると、コントローラー60は、不図示の搬送モーターを一定速度で回転させる。これにより、上流側搬送ローラー21A及び下流側搬送ローラー21Bが図の矢印方向に一定速度で回転する。また、この回転によって、搬送ドラム22が矢印方向(搬送方向)に回転する。搬送ドラム22の周面に沿わされて上流側搬送ローラー21A及び下流側搬送ローラー21Bにて支持された紙Sは、搬送ドラム22の回転に応じて搬送方向に搬送される。なお、搬送中の紙Sは、搬送ドラム22に静電吸着又はバキューム吸着されている。」
(キ)「【0053】
<インクについて>
前述の実施形態は、紫外線(UV)の照射を受けることによって硬化するインク(UVインク)をノズルから噴射していた。しかし、ノズルから噴射する液体は、このようなインクに限られるものではなく、UV以外の他の電磁波(例えば可視光線など)の照射を受けることによって硬化する液体をノズルから噴射しても良い。この場合、仮硬化用照射部及び本硬化用照射部から、その液体を硬化させるための電磁波(可視光線など)を照射するようにすればよい。」
(ク)「【0057】
<下流側搬送ローラーについて>
前述の実施形態では、下流側搬送ローラー21Bが、紙Sの印刷面と接していたが、下流側搬送ローラー21Bが紙Sの印刷面と接しないようにしても良い。
図10は、下流側搬送ローラー21Bの配置を変えた一例を示す図である。
なお、図において、下流側搬送ローラー21B及び本硬化用照射部44の配置以外の構成は図2と同じである。
この場合、紙Sが搬送ドラム22上から離れる位置を搬送ドラム22の中心よりも重力方向の上側になるようにしており、また、下流側搬送ローラー21Bを、搬送ドラム22の右端よりも右側で、且つ、搬送ドラム22の中心よりも重力方向の下側に設けている。
そして、下流側搬送ローラー21Bは、図2の場合と逆側方向に回転することにより、紙Sの印刷面と逆側の面(裏面)と接して紙Sを搬送する。なお、この場合においても、下流側搬送ローラー21Bを通過する際に、曲率半径が印刷時よりも小さくなる。よって、図のように本硬化用照射部44を下流側搬送ローラー21Bの手前に配置して、紙Sが搬送ローラー21Bに到達する前に本硬化を行うことが望ましい。」
(ケ)「【図10】
[図:0001411856000001.jpg]
」

イ 引用文献1の記載から把握できる事項

(ア)段落【0017】の「搬送ユニット20は、媒体(例えば、紙Sなど)を所定の方向(以下、搬送方向という)に搬送させるためのものである。・・・搬送ドラム22は、円筒形状の搬送部材であり、ロール状に巻かれた長尺の紙Sを周面にて搬送する。」との記載から、紙Sは媒体の一実施形態として記載されているものであるから、搬送部材は長尺の媒体を搬送していると認められる。

(イ)段落【0018】と【図10】から、カラーインク用ヘッドは、長尺の媒体のカラーインク用ヘッドと対向する面(以下、「表面」という。)にインクを噴射することによって、媒体の表面に画像を印刷すると認められる。

(ウ)段落【0017】の「搬送ドラム22は、円筒形状の搬送部材であり、」との記載から、搬送ドラム22と円筒形状の搬送部材は同義であり、【図10】から、円筒形状の搬送部材は、円筒の中心を軸として、媒体の搬送方向に回転していることと、長尺の媒体の表面と逆側の裏面と接していることが看取できる。そして段落【0017】の記載も踏まえると、円筒形状の搬送部材が長尺の媒体の裏面を支持していることは明らかである。

(エ)【図10】から、上流側搬送ローラー21Aは、円筒形状の搬送部材との間で長尺の媒体を挟持する位置に設けられ、前記長尺の媒体の表面と接していることが看取できる。このような配置でもって、上流側搬送ローラー21Aが回転することにより媒体が搬送されるのであるから、上流側搬送ローラー21Aが長尺の媒体の表面を支持していることは明らかである。

(オ)段落【0057】の、「下流側搬送ローラー21Bは」「印刷面と逆側の面(裏面)と接して紙Sを搬送」するとの記載から、下流側搬送ローラー21Bが長尺の媒体の裏面(前記(ウ)に示した「表面と逆側の裏面」と同じ)を支持していることは明らかである。また、【図10】から、媒体は、下流側搬送ローラー21Bと搬送ドラム22との間を直線状に搬送されることが看取できる。

ウ 引用文献1に記載された発明

上記ア及びイから、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。

「円筒形状の搬送部材であり、円筒の中心を軸として、搬送方向に回転して、長尺の媒体の裏面を周面にて支持しながら搬送し、搬送中の前記媒体を吸着する搬送部材と、
前記搬送部材の前記周面に対向して設けられ、電磁波が照射されることによって硬化する液体を噴射して前記搬送部材上の前記媒体の表面にドットを形成して画像を印刷する4つのカラーインク用ヘッドと、
前記カラーインク用ヘッドよりも搬送方向下流側に設けられ、各カラーインク用ヘッドによって前記媒体に形成されたドットに電磁波を照射して前記液体を硬化させる仮硬化用照射部と、
前記搬送部材の上流側であって、前記搬送部材との間で長尺の媒体が挟持される位置に設けられ、前記媒体の表面を支持しながら回転することによって搬送する上流側搬送ローラー21Aと、
前記搬送部材の下流側で前記搬送部材よりも重力方向の下方向に、前記搬送部材から離れて設けられ、前記搬送部材から直線状に搬送されてきた前記媒体の裏面を支持して回転することによって前記媒体を搬送する下流側搬送ローラー21Bと、を備える、
プリンタ。」

(2)引用文献2

ア 引用文献2に記載された事項

本願の出願前である2018年(平成30年)3月1日に頒布された刊行物である米国特許出願公開第2018/0056650号明細書(以下、「引用文献2」という。)には、以下の事項が記載されている。なお、括弧内の日本語訳は当審で作成した。

(ア)「[0002] The present disclosure relates to printing systems, including a method for controlling actuators of an ink printing system in a printing operation.
」
(日本語訳:【0002】 本発明は印刷システムに関し、特に、印刷動作中のインク印刷システムのアクチュエータを制御するための方法に関する。)
(イ)「[0019] FIG. 1 illustrates an example print group 10 of an ink printing system. Example printing systems are also described in DE 10 2014 106 424 A1 and U.S. Pat. No. 9,302,474 B2, each of which is incorporated herein by reference in its entirety. A print group 10 can include at least one print bar 11 per color, having one or more print heads that are arranged transversal to the transport direction (represented by corresponding arrows in FIG. 1) of a recording medium 12. The recording medium 12 may thereby be printed to line by line with the desired fluids (inks/colors).
[0020] Four primary colors, such as YMCK (Yellow, Magenta, Cyan and Black=K) or RBG (Red, Blue, Yellow) and black (K), are typically necessary for a color printing, but or not limited thereto. Moreover, additional customer-specific colors or special inks such as Magnetic Ink Character Recognition (MICR) ink (e.g. magnetically readable ink) may be included and printed with a separate print bar 11. It is likewise possible that transparent special fluids, such as primer or drying promoters, are likewise applied digitally with a separate print bar 11, before or after the printing of the print image, in order to improve the print quality or the adhesion of the ink on the recording medium 12.」

(日本語訳:【0019】 図1は、インク印刷システムの印刷グループ10を示している。例の印刷システムは、独国特許出願公開第102014106424号、米国特許第9,302,474号にも記載されている(各文献は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。印刷グループ10は、色毎に設けられた少なくとも1つのプリントバー11を含み、該プリントバー11は記録媒体12の搬送方向(図1において対応する矢印で示される)に対して横断方向に配置された1つ又は2つ以上のプリントヘッドを含む。それにより、記録媒体12は所望の流体(インク/カラー)を用いてライン毎に印刷され得る。

【0020】 YMCK(イエロー、マゼンダ、シアン、ブラック=K)又はRGB(赤、青、黄)と黒(K)のような4原色は、カラー印刷に典型的に必要であるが、これに限定されるものではない。また、ユーザーにより追加される特色または磁気インク文字認識(MICR)用のインク(例えば、磁気的に読み取り可能なインク)のような特殊インキが、個々のプリントバー11に含まれ、印刷されてもよい。また、記録媒体12上の印刷品質またはインクの接着性を向上させるために、印刷画像の印刷の前または後に、プライマーまたは乾燥促進剤のような透明な特殊流体を、個々のプリントバー11にデジタル的に適用してもよい。)

(ウ)「[0022] A web-shaped recording medium 12 is directed, via an infeed roller 13 and multiple deflection rollers 14, below the print bars 11 with the printing elements 20. Via a print head controller 15, the individual printing elements 20 are activated with a complex control signal corresponding to the desired image data in order to eject corresponding ink droplets 26 onto corresponding image positions of the recording medium 12. In an exemplary embodiment, the print head controller 15 includes processor circuitry that is configured to perform one or more functions and/or operations of the print head controller 15, such as generating one or more control signals to activate one or more printing elements 20.
[0023] The recording medium 12 is directed through the print group 10 with a predetermined and controllable web tension so that the individual ink droplets 26 may respectively be printed exactly at the desired image position on the recording medium 12 (this is also designated as being in register). With a take-up roller 16, the recording medium 12 is directed further to a drying (not shown) and possibly to a following print group in which the back side of the recording medium 12 may then be printed to.」

(日本語訳:【0022】 ウェブ状の記録媒体12は、供給ローラ13及び複数の偏向ローラ14を介して、印刷要素20を有するプリントバー11の下方に方向付けられる。プリントヘッドコントローラ15を介して、個々の印刷要素20は、記録媒体12の対応する画像位置に、対応するインク滴26を吐出するために、所望の画像データに対応する複雑な制御信号で活性化される。例示的な実施形態では、プリントヘッドコントローラ15は、1つまたは複数の印刷要素20を活性化するための1つまたは複数の制御信号を生成するなど、プリントヘッドコントローラ15の1つまたは複数の機能及び/又は動作を実行するように構成された制御回路を含む。

【0023】 記録媒体12は、個々のインク滴26がそれぞれ記録媒体12上の所望の画像位置に正確に印刷されるように(これは、「レジスタ」に指定される)、所定の制御可能なウェブテンションで印刷グループ10に方向付けられる。巻取ローラ16により、記録媒体12は、さらに乾燥(図示せず)へ、場合によっては、記録媒体12の裏面を印刷する次の印刷機構へ、方向付けられる。)

(エ)「[0061]・・・After the print group 10, a drying of the ink on the recording medium 12 with subsequent cooling is provided so that the recording medium 12 may be supplied to the second print group 10 under the same conditions or also may be processed accordingly (cutting, scoring, folding, stacking etc.) in a post-processing without liquid ink or damp ink being smeared, and the print image 30 thus being damaged.」

(日本語訳:【0061】・・・印刷グループ10の後、記録媒体12が同じ条件で第2のプリントグループ10に供給されるか、または、液体インクや湿ったインクが滲んだり、プリント画像30が損傷したりすることなく、後処理で適宜処理(切断、筋付け、折り畳み、積層など)されるよう、記録媒体12上のインクの乾燥とその後の冷却が行われる。)

(オ)「Figure 1
[図:0001411856000002.jpg]
」

イ 引用文献2の記載から把握できる事項

(ア)段落【0022】から、記録媒体12は、プリントバー11の下方に配置されているといえるから、Figure 1は、印刷グループ10の縦断面図であると認められる。Figure 1から、巻取ローラ16は、供給ローラ13の下流側に配置された偏向ローラ14に対して下方に、偏向ローラ14と接触しないように配置されていることが看取できる。

(イ)Figure 1から、最上流に配置される偏向ローラ14と前記供給ローラ13との間、また最下流の偏向ローラ14と巻取ローラ16との間、を記録媒体12が直線状に搬送されることが看取できる。

(ウ)Figure 1から、供給ローラ13と複数の偏向ローラ14は断面円状であることが看取でき、これらのローラが一定の幅のある記録媒体12を搬送することから、供給ローラ13と複数の偏向ローラ14は円筒状であると認められる。

ウ 引用文献2に記載された発明

上記ア及びイから、引用文献2には、次の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。

「円筒状の供給ローラ13と、前記供給ローラ13の下流側に配置されて長尺状の記録媒体12の裏面を支持しながら搬送する複数の円筒状の偏向ローラ14と、
前記複数の偏向ローラ14上に支持された長尺状の記録媒体12の表面に対向するように配置され、前記長尺状の記録媒体12の表面上に複数のインク滴26を吐出して印刷を行う複数のプリントバー11に含まれるプリントヘッドと、
前記長尺状の記録媒体12の搬送方向に対して、前記供給ローラ13の上流側に配置され、前記長尺状の記録媒体12の表面を支持しながら搬送する偏向ローラ14(前出の「複数の偏向ローラ14」と区別するため、以下、「上流側偏向ローラ14」という。)と、
前記搬送方向に対して、前記複数の偏向ローラ14の下流側かつ下方に偏向ローラ14と接触しないように配置され、前記長尺状の記録媒体12の裏面を支持しながら搬送する巻取ローラ16と、を備え、
前記上流側偏向ローラ14と前記供給ローラ13の間、また最下流の偏向ローラ14と巻取ローラ16の間、を前記記録媒体12が直線状に搬送される印刷グループ10。」

(3)引用文献3

ア 引用文献3に記載された事項

本願の出願前である2017年(平成29年)6月29日に頒布された刊行物である国際公開第2017/110441号(以下、「引用文献3」という。)には、以下の事項が記載されている。

(ア)「[0001] 本発明は、ウェブ状印刷基材に対して水性インクでシングルパス方式の画像形成をするためのインクジェットプリンタ及びそれを用いたインクジェット印刷方法に関する。」

(イ)「[0019]・・・また、前記インクジェットヘッド16a~16eよりも搬送の下流側には表面事後加温部18b~18fが設けられており、前記インクジェットヘッド16a~16eによって吐出された水性インクの乾燥をさらに促進させる構成となっている。
・・・
[0022] 搬送機構14もウェブ状印刷基材12が搬送できるものであれば公知の機構がいずれも適用できるが、図示したように、駆動ベルト20,34と、ウェブ状印刷基材12を巻いておく原反ローラ22と、ウェブ状印刷基材12を搬送するための種々のローラ24,26,28,30と、印刷されたウェブ状印刷基材12を巻き取る巻き取りローラ32と、を含む構成が採用できる。」

(ウ)「[0027] さらに、図1の例では、ウェブ状印刷基材12を裏面から加温するための、裏面加温部38を設けた例を示した。裏面加温部38としては、公知のホットプレートを用いることができ、例えば、セラミック板にフィラメントを配設した電熱ヒータなどを使用することができる。」

(エ)「[0031] 図5において、符号10Bは本発明のインクジェットプリンタの他の実施の形態である。インクジェットプリンタ10Bは、さらなる表面事後加温部として、レーザー照射装置40a~40eが、前記インクジェットヘッド16a~16eよりも搬送の下流側に設けられている。かかるレーザー照射装置40a~40eが設けられている以外は、上述したインクジェットプリンタ10Aと同様の構成である。
[0032] このように構成されたインクジェットプリンタ10A,10Bを用い、前記インクジェットプリンタ10A,10Bの前記表面事前加温部18aで加温されたウェブ状印刷基材12に対して、水性インクを用いて前記インクジェットヘッド16a~16eによるインク吐出を行うようにすれば、ウェブ状印刷基材として透明なPETフィルムに対して15m/分の印刷速度でもインク流れや色のにじみ、及び多色印刷の際の色の混色などがなく好適に印刷ができる。また、インクジェットプリンタ10A,10Bで示したように、表面事後加温部や裏面加温部と組み合わせることでインク流れや色のにじみ、及び多色印刷の際の色の混色などがさらになくなり好適に印刷できる。」
(オ)「[図5]
[図:0001411856000003.jpg]
」

イ 引用文献3に記載された技術的事項

上記アから、引用文献3には、次の技術的事項(以下、「引用文献3記載の技術的事項」という。)と効果が記載されていると認められる。

「ウェブ状印刷基材に対して水性インクで画像形成をするためのインクジェットプリンタにおいて、インクジェットヘッド16a~16eよりも搬送の下流側に設けられ前記インクジェットヘッド16a~16eによって吐出された水性インクの乾燥を促進する表面事後加温部18b~18fと、ローラ26とローラ28の間に設けられた前記ローラ26とローラ28の間に架け渡された前記ウェブ状印刷基材12を裏面から加温するための裏面加温部38」

「前記表面事後加温部18b~18fと前記裏面加温部38により、前記インクジェットヘッド16a~16eによって、前記ウェブ状印刷基材上に吐出された水性インクの乾燥を促進させ、インク流れや色のにじみ、及び多色印刷の際の色の混色などがなく好適に印刷する効果」

2 対比・判断

2-1 引用発明1を主引用発明とした場合

(1)本願発明と引用発明1との対比

本願発明と引用発明1とを対比する。

ア 引用発明1の「円筒形状の搬送部材であり、円筒の中心を軸として、搬送方向に回転して、長尺の媒体の裏面を周面にて支持しながら搬送し、搬送中の前記媒体を吸着する搬送部材」は、本願発明の「所定の方向に回転する回転軸を有し、長尺状の被印刷物の裏面を支持しながら搬送する回転支持体」に相当する。

イ 引用発明1の「前記搬送部材の前記周面に対向して設けられ、電磁波が照射されることによって硬化する液体を噴射して前記搬送部材上の前記媒体の表面にドットを形成して画像を印刷する4つのカラーインク用ヘッド」は、前記媒体が「長尺の媒体」であることを踏まえると、本願発明の「前記回転支持体上に支持された長尺状の被印刷物の表面に対向するように配置され、前記長尺状の被印刷物の表面上に複数のインクのそれぞれを塗布して印刷を行う複数のインクジェットヘッド」に相当する。

ウ 引用発明1の「搬送部材の上流側であって、前記搬送部材との間で長尺の媒体が挟持される位置に設けられ、前記媒体の表面を支持しながら回転することによって搬送する上流側搬送ローラー21A」は、本願発明の「『前記搬送方向に対して、前記回転支持体の上流側であって、前記回転支持体と前記長尺状の被印刷物が挟持されるような位置』『に配置され、前記長尺状の被印刷物の表面を支持しながら搬送する第1搬送ローラ』」に相当する。

エ 引用発明1の「前記搬送部材の下流側で前記搬送部材よりも重力方向の下方向に、前記搬送部材から離れて設けられ、直線状に搬送されてきた前記媒体の裏面を支持して回転することによって前記媒体を搬送する下流側搬送ローラー21B」は、本願発明の「『前記搬送方向に対して、前記回転支持体の下流側でかつ下方に前記回転支持体と接触しないように配置されており、』『前記長尺状の被印刷物の裏面を支持しながら搬送する第2搬送ローラ』」に相当する。

オ 引用発明1の「プリンタ」は、本願発明の「印刷装置」に対応する。

したがって、本願発明と引用発明1を対比すると、両者は、

<一致点>

「所定の方向に回転する回転軸を有し、長尺状の被印刷物の裏面を支持しながら搬送する回転支持体と、
前記回転支持体上に支持された長尺状の被印刷物の表面に対向するように配置され、前記長尺状の被印刷物の表面上に複数のインクのそれぞれを塗布して印刷を行う複数のインクジェットヘッドと、
前記搬送方向に対して、前記回転支持体の上流側であって、前記回転支持体と前記長尺状の被印刷物が挟持されるような位置に配置され、前記長尺状の被印刷物の表面を支持しながら搬送する第1搬送ローラと、
前記搬送方向に対して、前記回転支持体の下流側でかつ下方に前記回転支持体と接触しないように配置されており、前記長尺状の被印刷物の裏面を支持しながら搬送する第2搬送ローラと、を備える印刷装置。」

である点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点1>

本願発明が、「前記長尺状の被印刷物の搬送方向に対して前記複数のインクジェットヘッドの各々の下流側に配置され、前記長尺状の被印刷物の表面を乾燥させる複数の乾燥部」を備えるのに対し、引用発明1はそのような乾燥部を備えてなく、その代わりに「前記カラーインク用ヘッドよりも搬送方向下流側に設けられ、各カラーインク用ヘッドによって前記媒体に形成されたドット(各カラーインク用ヘッドが噴射した液体)に電磁波を照射して前記液体を硬化させる仮硬化用照射部」を備えている点。

<相違点2>

本願発明の前記「第2搬送ローラ」は「前記回転支持体から搬送されてきた前記長尺状の被印刷物を直ちに支持できるように配置され」ているのに対し、引用発明1の前記「下流側搬送ローラー21B」は前記「円筒形状の搬送部材」から搬送されてきた「長尺の媒体」を直ちに支持できるように配置されているか否か明らかでない点

(2)判断

ア 相違点1について

前記1(1)ア(キ)に示した引用文献1の段落【0053】の「ノズルから噴射する液体は、このようなインクに限られるものではなく、UV以外の他の電磁波(例えば可視光線など)の照射を受けることによって硬化する液体をノズルから噴射しても良い。この場合、仮硬化用照射部及び本硬化用照射部から、その液体を硬化させるための電磁波(可視光線など)を照射するようにすればよい。」との示唆から、引用発明1においてノズルから噴射する液体を水性インクとすることは当業者が容易に想到し得ることである。そして、水性インクとした場合、水性インクを液体状態から硬化させるために仮硬化用照射部から照射する電磁波を赤外線にすること、つまり引用発明1の「電磁波を照射して前記液体を硬化させる仮硬化用照射部」を赤外線による加熱で水性インクを乾燥させる手段とすることは当業者が当然に採用する事項である。

イ 相違点2について

(ア)本願の発明の詳細な説明には、本願発明の「第2搬送ローラ」の例である「支持ローラ14」と「引出ローラ18」について、本願発明の「回転支持体」の例である「ドラム10」と「支持ローラ70a~70e」から搬送されてきた長尺状の被印刷物を「直ちに支持できる」との明記はないが、本願の発明の詳細な説明の【0026】には「被印刷物100は、上述の支持ローラ12、ドラム10および支持ローラ14の間に接触した状態で架け渡されている。そして、被印刷物100は、張力が付与された状態で支持ローラ12からドラム10を介して支持ローラ14へ搬送される。」、【0044】には「被印刷物100は、送出ローラ16、支持ローラ70a~70eおよび引出ローラ18の間に接触した状態で架け渡されている。そして、被印刷物100は、張力が付与された状態で送出ローラ16から支持ローラ70a~70eを介して引出ローラ18へ搬送される。」と記載されている。これら記載からして、本願の請求項1の「第2搬送ローラ」に関する「前記回転支持体から搬送されてきた前記長尺状の被印刷物を直ちに支持できるように配置され」という発明特定事項は、回転支持体から搬送されてきた長尺状の被印刷物を張力が付与された状態で支持できる距離内に配置されることを含むと解される。

(イ)引用発明1の前記「下流側搬送ローラー21B」は、「前記搬送部材から直線状に搬送されてきた前記媒体の裏面を支持」するので、前記搬送部材から張力が付与された状態で搬送されてきた前記媒体の裏面を支持するものと認められる。前記(ア)を踏まえると、引用発明1の前記「下流側搬送ローラー21B」も前記「円筒形状の搬送部材」から搬送されてきた「長尺の媒体」を直ちに支持できるように配置されているといえるので、相違点2は実質的な相違点とは認められない。

(ウ)仮に、引用発明1の前記「下流側搬送ローラー21B」が前記「円筒形状の搬送部材」から搬送されてきた「長尺の媒体」を直ちに支持できるように配置されているといえないとしても、引用発明1において、搬送ドラム22と下流側搬送ローラー21Bとの配置位置関係には何ら制約があるものではないから、引用発明1の搬送ドラム22と下流側搬送ローラー21Bとの距離をどの程度とするかは、技術の具体的適用に伴う設計的事項であり、下流側搬送ローラー21Bを搬送ドラム22から搬送されてきた長尺の媒体(紙S)を直ちに支持できるような配置とすることは、設計的事項の範囲内で当業者が適宜なし得ることである。

ウ 小括

前記ア及びイから、本願発明は、引用発明1に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

(3)審判請求人の主張

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審判請求人は、令和6年2月22日付け意見書において、「2-2-1.補正後の請求項1(本願発明)の効果」として、下記アのとおり主張した上で、「2-2-2.本願発明と引用文献1との対比」として、下記イ乃至エのとおり主張している。

ア 「また、回転支持体、第1搬送ローラ、および第2搬送ローラの配置について、本願発明は、「前記搬送方向に対して、前記回転支持体の上流側であって、前記回転支持体と前記長尺状の被印刷物が挟持されるような位置または前記回転支持体へ搬送される前記長尺状の被印刷物が直ちに搬送される位置に配置され、前記長尺状の被印刷物の表面を支持しながら搬送する第1搬送ローラと、」との構成、および「前記搬送方向に対して、前記回転支持体の下流側でかつ下方に前記回転支持体と接触しないように配置されており、前記回転支持体から搬送されてきた前記長尺状の被印刷物を直ちに支持できるように配置され、前記長尺状の被印刷物の裏面を支持しながら搬送する第2搬送ローラと、」との構成を備えています。これらの構成から、印刷装置を全体的にコンパクト化することができます。また、回転支持体と、第1搬送ローラおよび第2搬送ローラとの間で長尺状の被印刷物に撓みを生じ難くすることができます。」

イ 「まず、本願発明の「前記長尺状の被印刷物の搬送方向に対して前記複数のインクジェットヘッドの各々の下流側に配置され、前記長尺状の被印刷物の表面を乾燥させる複数の乾燥部」の構成について述べます。
今般の拒絶理由通知において、審判官殿より、本願発明と引用文献1に記載の発明とを比較すると、上記した本願発明の構成が引用文献1との相違点であるというご認定を頂きました。・・・
このご認定について検討致しますと、引用文献1は、段落0015に「紫外線(以下、UV)の照射によって硬化する紫外線硬化型インク(以下、UVインク)を噴射することにより、媒体に画像を印刷する装置である。UVインクは、紫外線硬化樹脂を含むインクであり、UVの照射を受けると紫外線硬化樹脂において光重合反応が起こることにより硬化する。」と記載されており、段落0020に「仮硬化とは、インク間の滲みやドットの広がりを抑制するために行う硬化」と記載されており、段落0030に「本硬化は、インクを完全に固化させるための硬化である。」と記載されています。つまり、引用文献1ではインクを最終的に固化させることが目的であり、そのために光重合反応という化学反応を用いて硬化そして固化を行っております。これに対し、本願発明の乾燥部は、本願明細書の段落0029に「被印刷物100の表面100bを加熱するための温風が、図3の破線矢印で示すように、温風発生源(図示せず)から内側管状本体部36を通って被印刷物100の表面100bに吹き付けられ、塗布されたインクに含まれる水を蒸発させ、インクの定着を促進させる。」と記載されているように、温風により水を蒸発させてインクを定着させています。このように、引用文献1の「硬化(固化)」と本願発明の「乾燥」とは、全く異なる手段です。このため、引用文献1に記載の「仮硬化用照射部」と本願発明の「乾燥部」とは全く異なります。
また、引用文献1の段落0053の記載から、「電磁波を照射して前記液体を硬化させる仮硬化用照射部」を赤外線による加熱に変更したとしても、この加熱手段による作用は「硬化」であり、本願発明の「乾燥部」による「乾燥」ではありません。このように、引用文献1には、本願発明の「前記長尺状の被印刷物の搬送方向に対して前記複数のインクジェットヘッドの各々の下流側に配置され、前記長尺状の被印刷物の表面を乾燥させる複数の乾燥部」の構成は開示も示唆も一切ありません。
そして、引用文献1の段落0053に記載されている「電磁波」の中から、特段に「赤外線」の使用に想到し、さらに赤外線を使用しての乾燥に想到することは、当業者であっても困難であると思料致します。」
ウ 「次に、引用文献1には、本願発明の「前記搬送方向に対して、前記回転支持体の下流側でかつ下方に前記回転支持体と接触しないように配置されており、前記回転支持体から搬送されてきた前記長尺状の被印刷物を直ちに支持できるように配置され、前記長尺状の被印刷物の裏面を支持しながら搬送する第2搬送ローラ」の構成は開示も示唆もありません。
引用文献1は、インク間の滲みやドットの広がりを抑制するために仮硬化用照射部42a~42eで仮硬化を行った後、本硬化用照射部44で本硬化を行います(引用文献1の段落0022)。引用文献1では、紙Sが搬送ドラム22から離れた後、曲率半径が印刷時(ドット形成時)よりも小さくなる前に(すなわち下流側搬送ローラー21Bの手前で)本硬化を行えるよう、本硬化用照射部44は搬送ドラム22と下流側搬送ローラー21Bとの間の平らな所に配置されています。これにより、紙Sがカールするのを防止し、また、搬送ドラム22を加熱しないようにしています(引用文献1の段落0033、0038、0057、図2、図8、及び図10)。このように、引用文献1では、本硬化用照射部44は搬送ドラム22から離れて配置することが重要とされています。
ここで、引用文献1の図10において、下流側搬送ローラー21Bを搬送ドラム22から搬送されてきた紙Sを直ちに支持できるような位置に配置する場合、これに伴って本硬化用照射部44も搬送ドラム22に近付くように配置しなければなりません。このような位置に本硬化用照射部44を配置すると、本硬化用照射部44が搬送ドラム22を加熱してしまうことになります。しかしながら、上記のとおり、引用文献1では、本硬化用照射部44が搬送ドラム22を加熱しないよう、搬送ドラム22から十分離れた位置に本硬化用照射部44が配置されています。したがって、引用文献1の図10において、下流側搬送ローラー21Bを搬送ドラム22に近付くように配置することはできません。
よって、引用文献1には、下流側搬送ローラー21Bを搬送ドラム22に近付くように配置するという技術的思想は無いと思料致します。このことから、引用文献1には、本願発明の「前記搬送方向に対して、前記回転支持体の下流側でかつ下方に前記回転支持体と接触しないように配置されており、前記回転支持体から搬送されてきた前記長尺状の被印刷物を直ちに支持できるように配置され、前記長尺状の被印刷物の裏面を支持しながら搬送する第2搬送ローラ」の構成を備えることが開示も示唆もないことは明らかです。よって、本願発明の印刷装置と引用文献1に記載の発明とは、全く相違すると思料致します。」

エ 「また、当業者が引用文献1に記載の発明に基づいて、本願発明に容易に想到することもできません。上記のとおり、引用文献1には、本願発明の「前記長尺状の被印刷物の搬送方向に対して前記複数のインクジェットヘッドの各々の下流側に配置され、前記長尺状の被印刷物の表面を乾燥させる複数の乾燥部」の構成、および「前記搬送方向に対して、前記回転支持体の下流側でかつ下方に前記回転支持体と接触しないように配置されており、前記回転支持体から搬送されてきた前記長尺状の被印刷物を直ちに支持できるように配置され、前記長尺状の被印刷物の裏面を支持しながら搬送する第2搬送ローラ」の構成を備えることが開示も示唆もありません。このため、上記2-1で説明した本願発明の効果(当審注:「2-2-1.補正後の請求項1(本願発明)の効果」の前記アの効果と解される。)を奏し得ません。」

オ 「したがって、引用文献1に記載の発明に基づいて、当業者が本願発明に容易に想到することはできません。」

(4)審判請求人の主張の検討

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ア 審判請求人の主張する前記(3)イは、前記(1)に示した相違点1に関する主張であるので、まず前記(3)イから検討する。

(ア)引用発明1においてノズルから噴射する液体を水性インクとすることが当業者にとって容易に想到し得ることは、前記(2)アに示したとおりである。インクジェットプリンタの分野において、赤外線を照射することで水性インクを乾燥して固化させることは技術常識であるところ、引用文献1はUVインクを例示している(UVインクに限定されるものでないことは前記1(1)ア(キ)に示した引用文献1の段落【0053】のとおり)ため、UVインクを液体から固化させるために、UV照射による硬化という手段を用いているが、前記技術常識から、水性インクを液体から固化させるために、赤外線照射による乾燥手段を用いればよいことは、当業者にとって自明の事項であるので、前述のとおり引用発明1においてノズルから噴射する液体を水性インクとすれば、引用発明1の「電磁波を照射して前記液体を硬化させる仮硬化用照射部」を赤外線による加熱で水性インクを乾燥させる手段とすることは当業者が当然に採用する事項である。

(イ)したがって、引用発明1においてノズルから噴射する液体を水性インクとすることの容易性を考慮せずに「引用文献1の段落0053に記載されている「電磁波」の中から、特段に「赤外線」の使用に想到し、さらに赤外線を使用しての乾燥に想到することは、当業者であっても困難」という審判請求人の前記(3)イの主張は採用できない。

イ 次に前記(1)に示した相違点2に関する審判請求人の主張である前記(3)ウについて検討する。

(ア)本願の請求項1の「前記回転支持体から搬送されてきた前記長尺状の被印刷物を直ちに支持できるように配置」という発明特定事項は、前記(2)イ(ア)に示したとおり解されるので、前記(2)イ(イ)の判断となる。したがって、審判請求人の前記(3)ウの主張は採用できない。

(イ)しかし、審判請求人の前記(3)ウの主張は、請求項1の前記発明特定事項が、前記(2)イ(ア)に示した解釈よりもなんらかの配置を限定するものであることを前提として、引用発明1の「下流側搬送ローラー21B」は「前記回転支持体から搬送されてきた前記長尺状の被印刷物を直ちに支持できる」配置よりも前記回転支持体から遠くに配置されているという主張であるので、その前提にたっても以下、検討する。

(ウ)確かに、引用文献1の段落0038には、「搬送ドラム22と下流側搬送ローラー21Bとの間の平らな所に本硬化用照射部44を配置」することにより「紙Sがカールするのを防止でき」、「搬送ドラム22を加熱しないようにすることができる」ことが記載されている。しかし、UVインクは、水性インクに比べて記録媒体に浸透しにくく、記録媒体の表面に固化することは技術常識(必要であれば、特開2018-130902号公報の【0045】を参照。)であるので、前記(2)アに示したように、引用発明1においてノズルから噴射する液体を水性インクした場合、記録媒体の表面にインクが固化するUVインクの場合と比べて、記録媒体が搬送部材の円筒形状(カール状)に固定されてフラットにならない問題は小さくなる。また、引用発明1において「紙Sがカールするのを防止でき、」「搬送ドラム22を加熱しないようにする」ことは、「搬送ドラム22と下流側搬送ローラー21Bとの間の平らな所に本硬化用照射部44を配置」により可能となることからしても、この配置の範囲内で、搬送ドラム22から搬送されてきた長尺の媒体(紙S)を直ちに支持できるような配置とすることを妨げる要因は存在しない。したがって、前記(4)イ(イ)の前提にたったとしても、やはり前記(2)イ(ウ)に示したとおり、本願の請求項1の「前記回転支持体から搬送されてきた前記長尺状の被印刷物を直ちに支持できるように配置」という発明特定事項は技術の具体的適用に伴う設計的事項の範囲内でなし得る事項である。

(エ)したがって、審判請求人の前記(3)ウの主張も採用できない。

ウ 前記(3)エにて審判請求人が主張する効果のうち、前記(3)アに示した「回転支持体と、第1搬送ローラおよび第2搬送ローラとの間で長尺状の被印刷物に撓みを生じ難くすることができます。」という効果は、引用発明1も有している。また、前記(3)アに示した「印刷装置を全体的にコンパクト化することができます。」という効果は、第1搬送ローラと回転支持体と第2搬送ローラの配置から自ずと奏する効果であり、前記(2)イ(ア)に示した解釈にたてば、前記(2)イ(イ)から本願発明と同様の配置を有する引用発明1も有する効果であるし、前記(4)イ(イ)の前提にたっても、前記(2)イ(ウ)を踏まえると引用発明1と出願時の技術水準から当業者が予測できる程度の効果であるので、進歩性を認める根拠とはならない。

エ したがって、審判請求人が主張する前記(3)オの主張は、採用できない。

2-2 引用発明2を主引用発明とした場合

(1)本願発明と引用発明2との対比

本願発明と引用発明2とを対比する。

(ア)引用発明2は、「円筒状の供給ローラ13と、前記供給ローラ13の下流側に配置されて長尺状の記録媒体12の裏面を支持しながら搬送する複数の円筒状の偏向ローラ14」が記録媒体12を搬送するので、円筒状の供給ローラ13と円筒状の偏向ローラ14とが所定の方向に回転する回転軸を有することは明らかである。したがって、引用発明2における「円筒状の供給ローラ13と、前記供給ローラ13の下流側に配置されて長尺状の記録媒体12の裏面を支持しながら搬送する複数の円筒状の偏向ローラ14」は、本願発明における「所定の方向に回転する回転軸を有し、長尺状の被印刷物の裏面を支持しながら搬送する回転支持体」に相当する。

(イ)引用発明2の「前記複数の偏向ローラ14上に支持された長尺状の記録媒体12の表面に対向するように配置され、前記長尺状の記録媒体12の表面上に複数のインク滴26を吐出して印刷を行う複数のプリントバー11に含まれるプリントヘッド」は、本願発明の「前記回転支持体上に支持された長尺状の被印刷物の表面に対向するように配置され、前記長尺状の被印刷物の表面上に複数のインクのそれぞれを塗布して印刷を行う複数のインクジェットヘッド」に相当する。

(ウ)引用発明2の「前記長尺状の記録媒体12の搬送方向に対して、前記供給ローラ13の上流側に配置され、前記長尺状の記録媒体12の表面を支持しながら搬送する」「上流側偏向ローラ14」は、本願発明の「『前記搬送方向に対して、前記回転支持体の上流側であ』『る位置に配置され、前記長尺状の被印刷物の表面を支持しながら搬送する第1搬送ローラ』」に対応する。

(エ)引用発明2の「前記搬送方向に対して、前記複数の偏向ローラ14の下流側かつ下方に偏向ローラ14と接触しないように配置され、前記長尺状の記録媒体12の裏面を支持しながら搬送する巻取ローラ16」は、本願発明の「『前記搬送方向に対して、前記回転支持体の下流側でかつ下方に前記回転支持体と接触しないように配置されており、』『前記長尺状の被印刷物の裏面を支持しながら搬送する第2搬送ローラ』」に相当する。

(オ)引用発明1の「印刷グループ10」は、本願発明の「印刷装置」に対応する。

したがって、本願発明と引用発明2を対比すると、両者は、

<一致点>

「所定の方向に回転する回転軸を有し、長尺状の被印刷物の裏面を支持しながら搬送する回転支持体と、
前記回転支持体上に支持された長尺状の被印刷物の表面に対向するように配置され、前記長尺状の被印刷物の表面上に複数のインクのそれぞれを塗布して印刷を行う複数のインクジェットヘッドと、
前記搬送方向に対して、前記回転支持体の上流側である位置に配置され、前記長尺状の被印刷物の表面を支持しながら搬送する第1搬送ローラと、
前記搬送方向に対して、前記回転支持体の下流側でかつ下方に前記回転支持体と接触しないように配置されており、前記長尺状の被印刷物の裏面を支持しながら搬送する第2搬送ローラと、を備える印刷装置。」

である点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点3>

本願発明の「第1搬送ローラ」は、「前記回転支持体と前記長尺状の被印刷物が挟持されるような位置または前記回転支持体へ搬送される前記長尺状の被印刷物が直ちに搬送される位置に配置され」るのに対し、引用発明2の「上流側偏向ローラ14」は供給ローラ13と長尺状の記録媒体12が挟持されるような位置には配置されておらず、また供給ローラ13へ搬送される長尺状の記録媒体12が直ちに搬送される位置に配置されているか否か明らかでなく、また、本願発明の「第2搬送ローラ」は、「前記回転支持体から搬送されてきた前記長尺状の被印刷物を直ちに支持できるように配置」されるのに対し、引用発明2の「巻取ローラ16」は偏向ローラ14から搬送されてきた長尺状の記録媒体12を直ちに支持できるように配置されているか否か明らかでない点。

<相違点4>

本願発明は、「前記長尺状の被印刷物の搬送方向に対して前記複数のインクジェットヘッドの各々の下流側に配置され、前記長尺状の被印刷物の表面を乾燥させる複数の乾燥部」を備えるのに対し、引用発明2は乾燥部を備えていない点。

(2)判断

ア 相違点3について

(ア)本願発明の「第2搬送ローラ」に関する「前記回転支持体から搬送されてきた前記長尺状の被印刷物を直ちに支持できるように配置」という発明特定事項は、回転支持体から搬送されてきた長尺状の被印刷物を張力が付与された状態で支持できる距離内に配置されることを含むと解されることは、前記2-1(2)イ(ア)に示したとおりである。また、前記2-1(2)イ(ア)に示した本願の発明の詳細な説明の【0026】や【0044】の記載から、本願の請求項1の「第1搬送ローラ」に関する「前記回転支持体へ搬送される前記長尺状の被印刷物が直ちに搬送される位置に配置」という発明特定事項も、回転支持体へ搬送される長尺状の被印刷物が張力が付与された状態で支持できる距離内に配置されることを含むと解される。

(イ)引用発明2の「印刷グループ10」は、「前記上流側偏向ローラ14と前記供給ローラ13の間、また最下流の偏向ローラ14と巻取ローラ16の間、を前記記録媒体12が直線状に搬送される」ものであるので、「前記上流側偏向ローラ14と前記供給ローラ13の間、また最下流の偏向ローラ14と巻取ローラ16の間」を前記搬送部材は張力が付与された状態で搬送されると認められる。前記(ア)を踏まえると、引用発明2の「上流側偏向ローラ14」は供給ローラ13へ搬送される長尺状の記録媒体12が直ちに搬送される位置に配置されていて、引用発明2の「巻取ローラ16」は最下流の偏向ローラ14から搬送されてきた長尺状の記録媒体12を直ちに支持できる位置に配置されているといえるので、本願発明の「第1搬送ローラ」と引用発明2の「上流側偏向ローラ14」とは「前記回転支持体へ搬送される前記長尺状の被印刷物が直ちに搬送される位置に配置され」る点で一致し、本願発明の「第2搬送ローラ」と引用発明2の「巻取ローラ16」とは「前記回転支持体から搬送されてきた前記長尺状の被印刷物を直ちに支持できるように配置され」る点で一致するから、相違点3は実質的な相違点とは認められない。

イ 相違点4について

(ア)引用文献3記載の技術的事項における「インクジェットヘッド16a~16eよりも搬送の下流側に設けられ前記インクジェットヘッド16a~16eによって吐出された水性インクの乾燥を促進する表面事後加温部18b~18f」は、ウェブ状印刷基材に対して画像形成した水性インクの乾燥を促進するので、本願発明における「前記長尺状の被印刷物の搬送方向に対して前記複数のインクジェットヘッドの各々の下流側に配置され、前記長尺状の被印刷物の表面を乾燥させる複数の乾燥部」に相当する。つまり、相違点4に係る構成は、引用文献3記載の技術的事項に示されている。

(イ)上記1(2)ア(ウ)に示した引用文献2の段落【0023】や上記1(2)ア(エ)に示した引用文献2の段落【0061】の記載から、引用発明2において、記録媒体12の表面に印刷した後にインクの乾燥を行い、色のにじみや多色印刷の際の色の混色などがなく好適に印刷するために、引用文献3に記載の表面事後加温部18b~18fの構成を追加することは、当業者が容易になし得ることである。

ウ 小括

前記ア及びイから、本願発明は、引用発明2及び引用文献3記載の技術的事項に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

(3)審判請求人の主張

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審判請求人は、令和6年2月22日付け意見書において、「2-2-3.引用文献2および引用文献3の組み合わせ」として、前記相違点4に関し、次のとおり主張している。

ア 「しかしながら、引用文献2の【0004】には、「印刷中、ノズル内のインクの粘度が上昇し過ぎてはならない。上昇し過ぎると、インクが乾燥してノズルが少なくとも部分的に詰まり、インク滴をきれいに噴射できない虞がある。インク残留物が邪魔になると、望ましい噴射方向が変更され、目標位置からずれたピクセルまたは印刷位置に液滴が印刷される」ことが記載されており、【0033】には、「一定期間ノズル24から液滴26が噴射されないと、ノズル24内のインクが乾燥する危険性がある。これは、空気との接触によってインクの粘度が増加するためである(記録媒体12上のインクの必要な急速乾燥に反して)。粘度が増加するにつれて、液滴26の噴射挙動は、ノズル24が乾燥したインクによって完全に閉じられる点まで変化し、これはノズル24の完全な故障に相当する。これは、印刷品質において顕著である。ノズル24の完全な故障は、印刷画像30では、そうでなければ全面印刷領域に光の縞として見える。」と記載されています。これらの記載から、引用文献2に記載の発明において各インク(当審注:「プリントヘッド」又は「ノズル」の誤記と解される。)の後ろに乾燥手段がない理由は、ノズルに目詰まりが生じるためだと理解できます。このような引用文献2に引用文献3に記載の表面事後加温部18b~18fと裏面加温部38の構成を追加すると、引用文献2のノズルに目詰まりが生じてしまい、印刷に支障を来す虞があります。
このように、引用文献2に記載の発明に引用文献3に記載の発明を適用すると、引用文献2の発明の効果を奏することができません。このような組み合わせを当業者が行うとは考え難いと思料致します。」

イ 「したがって、当業者が引用文献2、3に記載の発明に基づいて、本願発明に容易に想到することはできません。」

(4)審判請求人の主張の検討

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ア 確かに、引用文献2の【0004】や【0033】には、ノズルの目詰まりにより印刷品質に支障が出ることが記載されているが、引用文献2には、前記(3)アに示される引用文献2に記載の発明において各インク(当審注:「プリントヘッド」又は「ノズル」の誤記と解される。)の後ろに乾燥手段がない理由は、ノズルに目詰まりが生じるため」という明記はない。

イ 引用文献3記載の技術的事項においては、「インクジェットヘッド16a~16eよりも搬送の下流側に」「水性インクの乾燥を促進する表面事後加温部18b~18f」を設けた構成でもって、「好適に印刷する効果」を得ているので、前記構成でもインクジェットヘッド16a~16eのノズルに目詰まりが生じることなく印刷できていると解される。したがって、引用発明2に引用文献3記載の技術的事項を組み合わせたからといって、ノズルの目詰まりにより印刷品質に支障が出るとは認められず、前記(2)イ(イ)に示したとおり、そうすることは当業者が容易になし得ることである。

ウ したがって、審判請求人が主張する前記(3)イの主張は、採用できない。

第5 むすび

前記第4のとおり、本願発明は、当審拒絶理由で引用された引用文献の記載に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

したがって、他の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、上記の結論のとおり審決する。

審決本文(J-PlatPat)

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2023-002451

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