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特許拒絶査定不服審判

2023-000203

圧力検出装置及びそれを用いた血液浄化装置

審判番号
2023-000203
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2019-109371外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2023年01月06日
審決日
2024年02月07日
公報発行日
2024年04月26日
結論
請求不成立
当事者
審判長/審判官
分類
P18 .536-Z (G01L)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第36条
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2019-109371「圧力検出装置及びそれを用いた血液浄化装置」拒絶査定不服審判事件〔令和 2年12月17日出願公開、特開2020-201175〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論
本件審判の請求は、成り立たない。

理由

目次 ▾ 12項目
理 由

第1 手続の経緯

折りたたみ中(クリックで表示)

本願は、令和元年6月12日の出願であって、その手続の経緯の概略は以下のとおりである。

令和 4年 6月13日付け:拒絶理由通知書

同年 8月19日 :意見書、手続補正書の提出

同年10月 4日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)

(同月11日 :原査定の謄本の送達)

令和 5年 1月 6日 :審判請求書、手続補正書の提出
同年10月25日付け:拒絶理由通知書
同年12月26日 :意見書、手続補正書の提出

なお、令和5年10月25日付けで当審において通知した拒絶理由を、以下「当審拒絶理由」といい、これに対して、同年12月26日に請求人から提出された意見書を、以下、単に「意見書」という。

第2 当審拒絶理由の概要

当審拒絶理由通知において、次を要旨とする拒絶理由(以下「理由1」という。)を通知した。

なお、ここで摘記されている請求項の記載は、令和5年1月6日に提出された手続補正書により補正された後のものであって、同年12月26日に提出された手続補正書により補正される前のものである。

理由1(実施可能要件)

本願の明細書の発明の詳細な説明の記載は、下記の理由1(1)~(3)の点において、請求項1~5に係る発明について、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものではないから、この出願は、発明の詳細な説明の記載が特許法36条4項1号に規定する要件を満たしていない。

1 理由1(1)

請求項1には

「前記第2空間に充填された前記気体の充填量」、

「前記制御部は、前記気体の充填量が未知である場合に、前記押し子を予め設定された初期位置から、前記圧力センサで検出する圧力が所定圧力となる位置まで移動させて、前記押し子を移動させた距離とその際の前記気体の圧力の変化とに基づき、前記気体の充填量を推定する」

と記載されているが、発明の詳細な説明の記載を参酌しても、どのようにして制御部は気体の充填量を推定するのか不明である。

2 理由1(2)

請求項2には

「前記第2空間に充填された前記気体の充填量」、

「前記制御部は、前記気体の充填量が未知である場合に、前記ダイアフラムが無負荷状態となる初期位置から前記押し子を移動させ、前記ダイアフラムが前記所定位置にあることを前記ダイアフラム位置検出部が検出するまでの前記押し子の移動量に基づき、前記気体の充填量を推定する」

と記載されているが、発明の詳細な説明の記載を参酌しても、どのようにして制御部は気体の充填量を推定するのか不明である。

3 理由1(3)

理由1(1)及び(2)において指摘した点は、請求項1又は2の記載を引用する請求項3~5についても同様である。

第3 本願発明

本願の請求項1~5に係る発明(以下、請求項の番号に従って「本願発明1」などという。また、これらを総称して「本願発明」という。)は、令和5年12月26日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1~5に記載された次の事項により特定されるとおりのものと認める。

「 【請求項1】
圧力の測定対象となる液体を流通する液流路に設けられたケースと、
前記ケース内の空間を、前記液体が流通する第1空間と、気体が充填された第2空間とに区画するように設けられ、前記第1空間内の前記液体の圧力に応じて変位可能なダイアフラムと、
前記第2空間に充填された前記気体の圧力を測定する圧力センサと、
続きを表示(全29行)
前記第2空間に充填された前記気体の充填量を調節することで、前記ダイアフラムの初期位置を所望の位置に調整可能なダイアフラム初期位置調整機構と、を備え、
前記ダイアフラム初期位置調整機構は、前記第2空間と連通されたシリンダ、前記シリンダ内で進退可能に設けられた押し子、前記押し子を進退駆動させる押し子駆動部を有し、前記押し子駆動部により前記押し子を前記シリンダ内で進退させることで前記第2空間に充填された前記気体の充填量を調節する往復動ポンプ、及び押し子の位置を検出する押し子位置検出部を有し、
前記往復動ポンプの制御を行うことで前記ダイアフラムの初期位置を調整する制御部を備え、
前記制御部は、前記気体の充填量が未知である場合に、前記第1空間が大気開放されており、前記押し子を予め設定された初期位置から、前記圧力センサで検出する圧力が所定圧力となる位置まで移動させて、前記押し子を移動させた距離とその際の前記気体の圧力の変化とに基づき、前記押し子を前記所定圧力となる位置としたときの前記第2空間内の前記気体の充填量を推定すると共に、推定した前記気体の充填量を基に、前記ダイアフラムが所望の位置となる前記押し子の位置である調整位置を演算し、前記押し子を前記調整位置に移動させる、
圧力検出装置。
【請求項2】
圧力の測定対象となる液体を流通する液流路に設けられたケースと、
前記ケース内の空間を、前記液体が流通する第1空間と、気体が充填された第2空間とに区画するように設けられ、前記第1空間内の前記液体の圧力に応じて変位可能なダイアフラムと、
前記第2空間に充填された前記気体の圧力を測定する圧力センサと、
前記第2空間に充填された前記気体の充填量を調節することで、前記ダイアフラムの初期位置を所望の位置に調整可能なダイアフラム初期位置調整機構と、を備え、
前記ダイアフラム初期位置調整機構は、前記第2空間と連通されたシリンダ、前記シリンダ内で進退可能に設けられた押し子、前記押し子を進退駆動させる押し子駆動部を有し、前記押し子駆動部により前記押し子を前記シリンダ内で進退させることで前記第2空間に充填された前記気体の充填量を調節する往復動ポンプ、及び押し子の位置を検出する押し子位置検出部を有し、
前記往復動ポンプの制御を行うことで前記ダイアフラムの初期位置を調整する制御部と、
前記ダイアフラムが前記ケースの内壁に張り付いた位置である所定位置にあることを検出可能なダイアフラム位置検出部と、を備え、
前記制御部は、前記気体の充填量が未知である場合に、前記第1空間が大気開放されており、前記第1空間と前記第2空間とが共に大気圧となって前記ダイアフラムが無負荷状態となる初期位置から前記押し子を移動させ、前記ダイアフラムが前記所定位置にあることを前記ダイアフラム位置検出部が検出するまでの前記押し子の移動量に基づき、前記押し子を前記ダイアフラムが前記所定位置となる位置としたときの前記第2空間内の前記気体の充填量を推定すると共に、推定した前記気体の充填量を基に、前記ダイアフラムが所望の位置となる前記押し子の位置である調整位置を演算し、前記押し子を前記調整位置に移動させる、
圧力検出装置。
【請求項3】
前記ダイアフラム初期位置調整機構は、前記往復動ポンプと前記第2空間とを接続するポンプ流路と、前記ポンプ流路に設けられ前記ポンプ流路を開閉するポンプ流路開閉機構と、を有している、
請求項1または2に記載の圧力検出装置。
【請求項4】
前記圧力センサが接続されるソケット部を備え、
前記ケース及び前記ダイアフラムは、前記ソケット部に対して取り外し可能に設けられている、
請求項1乃至3の何れか1項に記載の圧力検出装置。
【請求項5】
患者の血液を体外循環させる血液回路、前記血液回路または前記血液回路に設けられた血液浄化器に供給液を供給する液供給流路、あるいは前記血液浄化器からの排液を排出する排液流路に設けられる圧力検出装置の少なくとも1つが、請求項1乃至4の何れか1項に記載の圧力検出装置である、
血液浄化装置。」

第4 当審の判断

1 理由1(1)について

(1) 請求項1の記載

請求項1には次の事項が記載されている。

「前記第2空間に充填された前記気体の充填量」、

「前記制御部は、前記気体の充填量が未知である場合に、前記第1空間が大気開放されており、前記押し子を予め設定された初期位置から、前記圧力センサで検出する圧力が所定圧力となる位置まで移動させて、前記押し子を移動させた距離とその際の前記気体の圧力の変化とに基づき、前記押し子を前記所定圧力となる位置としたときの前記第2空間内の前記気体の充填量を推定する」

なお、「前記押し子を移動させた距離とその際の前記気体の圧力の変化とに基づき、前記押し子を前記所定圧力となる位置としたときの前記第2空間内の前記気体の充填量を推定する」ことを、以下「本願発明1推定方法」という。

(2) 明細書の発明の詳細な説明の記載

前記(1)に関連し、明細書の発明の詳細な説明には、次のア~エの技術的事項が記載されている(段落【0034】~【0036】参照)。

ア 「第2空間2b、測定用流路61、シリンダ511、ポンプ流路53に充填されている」「空気の充填量が未知である場合には、空気の充填量を推定する手段が必要にな[り]」、「例えば、押し子512を移動させた際の空気の圧力の変化から、空気の充填量を推定することができ」、「この場合、制御部7は、押し子512を移動させた距離とその際の空気の圧力の変化とに基づき、空気の充填量を推定する」こと。(【0034】)

イ 「空気の充填量の推定の際には、例えば、ボイルシャルルの法則を用いて推定を行うとよい」こと。(【0034】)

ウ 「ポンプ流路開閉弁52を開放し」「押し子512を初期位置から後退(例えば、押し子512を押し切った位置から減圧側に後退)させ」「押し子512が所定の減圧位置に到達したか(押し子512を所定距離移動させたか)を判定」し、「YESと判定された場合」「押し子512を停止した後」、「押し子512の移動距離と、圧力センサ6で検出した空気の圧力変化とを基に、空気の充填量を推定」すること。(【0035】)

エ 「押し子512を所定距離移動させた際の空気の圧力変化を検出」する方法又は「空気の圧力変化が所定値となる押し子512の移動距離を検出」する方法を用いて、「空気の充填量を推定」することが可能であること。(【0035】~【0036】)

(3) 当審の判断

ア 明細書の発明の詳細な説明の記載について

発明の詳細な説明には「押し子512の移動距離と、圧力センサ6で検出した空気の圧力変化とを基に、空気の充填量を推定」すること(特に、前記(2)ウ参照)が記載されている。

しかしながら、発明の詳細な説明には「押し子512の移動距離」及び「圧力センサ6で検出した空気の圧力変化」にどのように基づいて、どのような根拠や計算式をもとに、「空気の充填量を推定」するのか、何ら記載されておらず、技術常識に照らしても当業者にとって不明である。一応、発明の詳細な説明には、前記(2)イに示すとおり、「空気の充填量の推定」において「ボイルシャルルの法則を用いて推定を行う」ことは示唆されているものの、ボイルシャルルの法則をどのように用いて空気の充填量の推定を行うのか、何ら記載されておらず、技術常識に照らしても当業者にとって不明である。

よって、当業者は、本願発明1推定方法を実施することができない。

イ 請求人の主張について

(ア) 請求人の主張1の内容

折りたたみ中(クリックで表示)

請求人は意見書において、概略、次の主張を行っている。

a 「初期位置」は、例えば、押し子を押し切った位置や引き切った位置とされるが、予め設定された既知の位置であればどの位置であっても構わない。

b(a) 押し子を「初期位置」から、「圧力センサで検出する圧力が所定圧力となる位置」まで移動させる。押し子を後退させると、ダイアフラムがケースの内壁に張り付いた状態となり、圧力センサで検出される圧力が負圧になる。この圧力が大気圧から負圧に切り替わった時点での押し子の位置、あるいは予め設定された所定の負圧になったときの押し子の位置が、「所定圧力となる位置」となる。

(b) なお、押し子を後退させるのではなく、押し子を進出させることも可能である。この場合、押し子の進出に伴って第1空間が押しつぶされるようにしてダイアフラムがケース内壁に張り付いた状態になり、圧力センサで検出される圧力が大気圧から陽圧になる。この圧力が大気圧から陽圧に切り替わった時点での押し子の位置、あるいは予め設定された所定の陽圧になったときの押し子の位置が、「所定圧力となる位置」となる。

c 圧力センサで検出する圧力が負圧になったか、陽圧になったかといった圧力の変化に基づいて、その時点で第2空間内に充填されている気体の量を推定する。圧力センサで検出する圧力が負圧になった場合には第2空間内に充填されている気体の量はゼロと推定され、圧力センサで検出する圧力が陽圧になった場合には第2空間内に充填されている気体の量はケース内全体の体積と等しいと推定されることになる。

d よって、本願発明1について、本願の明細書の発明の詳細な説明の記載に基づいて、当業者が十分に実施することが可能である。

(イ) 請求人の主張1に対する当審の見解

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a 前記(ア)a~cを総合すると、請求人は、第2空間内に充填されている気体の量の推定方法として、以下のもの(以下「本件推定方法1」という。)を主張していると認められる。

[本件推定方法1]

「押し子を初期位置から後退させ、圧力センサで検出される圧力が大気圧から負圧に切り替わった場合又は予め設定された所定の負圧になった場合は、第2空間内に充填されている気体の量をゼロと推定する。押し子を初期位置から進出させ、圧力センサで検出される圧力が大気圧から陽圧に切り替わった場合又は予め設定された所定の陽圧になった場合は、第2空間内に充填されている気体の量はケース内全体の体積と等しいと推定する。」

b しかしながら、次の(a)~(b)に示すとおり、意見書において本件推定方法1が示されたことを参酌しても、依然として、当業者は本願発明1推定方法を実施することができない。

(a) 第2空間内の気体の充填量を推定するにあたって、本願発明1推定方法においては「前記押し子を移動させた距離」「に基づき」「推定する」ことが特定されているが、本件推定方法1は、押し子を移動させた距離に基づいて推定するものではないから、本件推定方法1は、本願発明1推定方法とは異なる方法によって第2空間内の気体の充填量を推定するものである。

よって、意見書において本件推定方法1が示されたことを参酌しても、依然として、当業者は本願発明1推定方法を実施することができない。

(b) 本願発明1推定方法においては、気体の充填量の推定結果が特定の場合に限られることは限定されていないが、本件推定方法1においては、「第2空間内に充填されている気体の量」の推定結果が「ゼロ」又は「ケース内全体の体積と等しい」場合に限られており、それ以外の場合についてどのように気体の充填量を推定できるのか不明である。

よって、意見書において本件推定方法1が示されたことを参酌しても、依然として、当業者は本願発明1推定方法を実施することができない。

c よって、請求人の主張1は採用できない。

(ウ) 補足事項

なお、本件推定方法1は、本願発明1推定方法とは異なる推定方法である(前記(イ)b(a)参照)が、以下のa~dに示すとおり、発明の詳細な説明に記載された空気の充填量の推定方法とも異なるものであるので、補足事項として付記する。

a 発明の詳細な説明には「押し子512の移動距離と、圧力センサ6で検出した空気の圧力変化とを基に、空気の充填量を推定」すること(特に、前記(2)ウ参照)が記載されているから、発明の詳細な説明に記載された空気の充填量の推定方法は、押し子512を移動させた距離に基づいて、空気の充填量の推定を行うものであるが、本件推定方法1は、押し子を移動させた距離に基づくものではないから、本件推定方法1は、発明の詳細な説明に記載された空気の充填量の推定方法とは異なるものである。

b 発明の詳細な説明には、前記(2)イに示すとおり、「空気の充填量の推定」において「ボイルシャルルの法則を用いて推定を行う」ことが示唆されているが、本件推定方法1は、ボイルシャルルの法則を何ら用いるものではないから、本件推定方法1は、発明の詳細な説明に記載された空気の充填量の推定方法とは異なるものである。

c 本件推定方法1は、ダイアフラムの変位によってダイアフラムがケースの内壁に張り付くことを前提とするものであるが、そのようなことは発明の詳細な説明において記載されていない。また、ダイアフラムの変位によってダイアフラムがケースの内壁に張り付くか否かは、ケースとダイアフラムの設計に依存する事項であるから、発明の詳細な説明において自明な事項であるともいえない。

d 発明の詳細な説明のその他の記載においても、本件推定方法1を開示しているものはない。

ウ 当審の判断のまとめ

以上において検討したとおり、当業者は、本願発明1推定方法を実施することができないから、本願発明1を実施することができない。

したがって、本願の明細書の発明の詳細な説明の記載は、本願発明1について、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものではない。

2 理由1(2)について

(1) 請求項2の記載

請求項2には次の事項が記載されている。

「前記第2空間に充填された前記気体の充填量」、

「前記制御部は、前記気体の充填量が未知である場合に、前記第1空間が大気開放されており、前記第1空間と前記第2空間とが共に大気圧となって前記ダイアフラムが無負荷状態となる初期位置から前記押し子を移動させ、前記ダイアフラムが前記所定位置にあることを前記ダイアフラム位置検出部が検出するまでの前記押し子の移動量に基づき、前記押し子を前記ダイアフラムが前記所定位置となる位置としたときの前記第2空間内の前記気体の充填量を推定する」

なお、「前記押し子の移動量に基づき、前記押し子を前記ダイアフラムが前記所定位置となる位置としたときの前記第2空間内の前記気体の充填量を推定する」ことを、以下「本願発明2推定方法」という。

(2) 明細書の発明の詳細な説明の記載

前記(1)に関連し、明細書の発明の詳細な説明には、次のア~ウの技術的事項が記載されている(段落【0035】、【0039】参照)。

ア 「ダイアフラム位置検出部を備えた場合、制御部7は、押し子512を初期位置から移動させ、ダイアフラム3が所定位置にあることをダイアフラム位置検出部が検出するまでの押し子512の移動量に基づき、空気の充填量を推定する」こと。(【0039】)

イ 「ダイアフラム3が無負荷状態の位置から、ダイアフラム3が所定位置(例えば、第1空間2aの容積が最大となる位置)となるまでに必要な押し子512の後退距離から、空気の充填量を推定する」こと。(【0039】)

ウ 「ポンプ流路開閉弁52を開放し」「押し子512を初期位置から後退(例えば、押し子512を押し切った位置から減圧側に後退)させ」「ダイアフラム3が所定位置にあるかを判定」し、「YESと判定された場合」「押し子512を停止した後」、「押し子512の移動距離を基に空気の充填量を推定」すること。(【0035】、【0039】)

(3) 当審の判断

ア 明細書の発明の詳細な説明の記載について

発明の詳細な説明には「押し子512の移動距離を基に空気の充填量を推定」すること(特に、前記(2)ウ参照)が記載されている。

しかしながら、発明の詳細な説明には「押し子512の移動距離」にどのように基づいて、どのような根拠や計算式をもとに、「空気の充填量を推定」するのか、何ら記載されておらず、技術常識に照らしても当業者にとって不明である。

よって、当業者は、本願発明2推定方法を実施することができない。

イ 請求人の主張について

(ア) 請求人の主張2の内容

折りたたみ中(クリックで表示)

請求人は意見書において、概略、次の主張を行っている。

a(a) 押し子を初期位置から後退させてダイアフラムがケースの内壁に張り付いた状態になると、その時点での第2空間内の気体の充填量はゼロと推定される。

(b) 他方、押し子を初期位置から進出させてダイアフラムがケースの内壁に張り付いた状態になると、その時点での第2空間内の気体の充填量は、ケース内全体の体積と等しい量と推定される。

b このように、押し子を後退させたか進出させたかに基づいて、その時点での第2空間内の気体の充填量(ゼロか、あるいはケース内全体の体積と等しい量か)を推定する。

c よって、本願発明2について、本願の明細書の発明の詳細な説明の記載に基づいて、当業者が十分に実施することが可能である。

(イ) 請求人の主張2に対する当審の見解

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a 前記(ア)aから、請求人は、第2空間内の気体の充填量の推定方法として、以下のもの(以下「本件推定方法2」という。)を主張していると認められる。

[本件推定方法2]

「押し子を初期位置から後退させてダイアフラムがケースの内壁に張り付いた状態になった場合は、第2空間内の気体の充填量はゼロと推定する。押し子を初期位置から進出させてダイアフラムがケースの内壁に張り付いた状態になった場合は、第2空間内の気体の充填量はケース内全体の体積と等しい量と推定する。」

b しかしながら、次の(a)に示すとおり、意見書において本件推定方法2が示されたことを参酌しても、依然として、当業者は本願発明2推定方法を実施することができない。

(a) 第2空間内の気体の充填量を推定するにあたって、本願発明2推定方法においては「前記押し子の移動量に基づき」「推定する」ことが特定されているが、本件推定方法2は、押し子の移動量に基づいて推定するものではないから、本件推定方法2は、本願発明2推定方法とは異なる方法によって第2空間内の気体の充填量を推定するものである。

よって、意見書において本件推定方法2が示されたことを参酌しても、依然として、当業者は本願発明2推定方法を実施することができない。

c よって、請求人の主張2は採用できない。

(ウ) 補足事項

なお、本件推定方法2は、本願発明2推定方法とは異なる推定方法である(前記(イ)b(a)参照)が、以下のa~cに示すとおり、発明の詳細な説明に記載された空気の充填量の推定方法とも異なるものであるので、補足事項として付記する。

a 発明の詳細な説明には「押し子512の移動距離を基に空気の充填量を推定」すること(特に、前記(2)ウ参照)が記載されているから、発明の詳細な説明に記載された空気の充填量の推定方法は、押し子512を移動させた距離に基づいて、空気の充填量の推定を行うものであるが、本件推定方法2は、押し子を後退させたか進出させたかに基づくものであっても、押し子を移動させた距離に基づくものではないから、本件推定方法2は、発明の詳細な説明に記載された空気の充填量の推定方法とは異なるものである。

b 本件推定方法2は、ダイアフラムの変位によってダイアフラムがケースの内壁に張り付くことを前提とするものであるが、そのようなことは発明の詳細な説明において記載されていない。また、ダイアフラムの変位によってダイアフラムがケースの内壁に張り付くか否かは、ケースとダイアフラムの設計に依存する事項であるから、発明の詳細な説明において自明な事項であるともいえない。

c 発明の詳細な説明のその他の記載においても、本件推定方法2を開示しているものはない。

ウ 当審の判断のまとめ

以上において検討したとおり、当業者は、本願発明2推定方法を実施することができないから、本願発明2を実施することができない。

したがって、本願の明細書の発明の詳細な説明の記載は、本願発明2について、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものではない。

3 理由1(3)について

請求項3~5は、請求項1又は2の記載を直接又は間接的に引用するものであるところ、前記1、2において示したとおり、当業者は、本願発明1及び本願発明2を実施することができないから、本願発明3~5を実施することができない。

したがって、本願の明細書の発明の詳細な説明の記載は、本願発明3~5について、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものではない。

4 小括

前記1~3で検討したとおり、本願の明細書の発明の詳細な説明の記載は、本願発明1~5について、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものではない。

第5 むすび

以上のとおり、本願の明細書の発明の詳細な説明の記載は、本願発明1~5について、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものではない。

したがって、本願は、発明の詳細な説明の記載が特許法36条4項1号に規定する要件を満たしていない。

よって、結論のとおり審決する。

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2023-000203

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    共通の審決分類: 536・G01L
  • 2019-014758拒絶査定不服審判 / 2021-01-07 / 請求不成立ガラス表面応力計および複数回強化ガラス表面応力計
    共通の審決分類: 536・G01L

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