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特許異議申立

2022-701182

ポリエステルフィルム及びその製造方法

審判番号
2022-701182
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2019-215313
登録番号
7080871
請求日
2022年11月29日
審決日
2023年08月17日
公報発行日
2024年01月26日
結論
請求成立(取消)
当事者
  • 【権利者】南亞塑膠工業股▲分▼有限公司
  • 【権利者代理人】弁理士法人南青山国際特許事務所
  • 【異議申立人】高山 敏男
審判長/審判官
  • 審判長 加藤 友也
  • 審判官 磯貝 香苗
  • 審判官 植前 充司
分類
P1651.121-ZC (C08J) / P1651.536-ZC (C08J) / P1651.537-ZC (C08J)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法36条4項1号特許法113条4号
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第113条第4号、特許法第36条第6項第2号、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第4項第1号、特許法第29条第2項、特許法第113条第2号、特許法第113条第2項、特許法第113条第4項
データ出所
審決公報(XML)

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特許第7080871号発明「ポリエステルフィルム及びその製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7080871号の請求項3、4、9に係る特許を取り消す。 特許第7080871号の請求項1、2、5ないし8、10及び11に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7080871号(以下、「本件特許」という。)の請求項1ないし11に係る特許についての出願は、 令和 1年11月28日(パリ条約の例による優先権主張 2019年 8月14日 台湾)に出願され、 令和 4年 5月27日にその特許権の設定登録(請求項の数 11)がされ、 令和 4年 6月 6日に特許掲載公報が発行された。 その後、当該特許に対し、 令和 4年11月29日に高山 敏男(以下、「特許異議申立人」という。)が、全ての請求項に係る特許に対して特許異議申立てを行い、 令和 5年 3月27日付けで取消理由が通知されたが、これに対し、特許権者(南亜塑膠工業股▲分▼有限公司)からは何ら応答がなかったものである。 第2 本件特許発明 特許第7080871号の請求項1ないし11に係る発明(以下、「本件特許発明1」のようにいい、総称して「本件特許発明」という。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1ないし11に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 【請求項1】 再生プラスチックを再生利用するためのポリエステルフィルムの製造方法であって、 前記ポリエステルフィルムの製造方法は、 物理的手段で一部分の前記再生プラスチックを再製することにより物理的再生ポリエステル樹脂を取得するステップと、 化学的手段で他部分の前記再生プラスチックを再製することにより化学的再生ポリエステル樹脂を取得するステップと、 前記物理的再生ポリエステル樹脂及び前記化学的再生ポリエステル樹脂を含んだポリエステルの組成物を調製するステップと、 前記ポリエステルの組成物を使用して前記ポリエステルフィルムを成形するステップと、を含み、 前記ポリエステルの組成物の総重量を100wt%とした場合、前記化学的再生ポリエステル樹脂の重量比率が5wt%以上であり、 前記ポリエステルフィルムの総重量を100wt%とした場合、前記物理的再生ポリエステル樹脂と前記化学的再生ポリエステル樹脂の総重量は10wt%~100wt%であり、 化学的手段で他部分の前記再生プラスチックを再製する前記ステップはさらに、 前記再生プラスチックを解重合することで原料混合物を取得するステップと、 前記原料混合物を再重合することで前記化学的再生ポリエステル樹脂を製造するステップと、を含み、 前記原料混合物を再重合する前記ステップはさらに、前記原料混合物に静電密着剤を添加するステップを含み、前記静電密着剤はアルカリ金属化合物又はアルカリ土類金属化合物を含んだ複合物であり、 物理的手段で一部分の前記再生プラスチックを再製する前記ステップにおいて、顆粒寸法が2ミクロンより大きい滑剤を前記再生プラスチックに添加する、ことを特徴とする、ポリエステルフィルムの製造方法。 【請求項2】 前記ポリエステルの組成物の総重量を100wt%とした場合、前記物理的再生ポリエステル樹脂の含有量は10wt%~90wt%であり、前記化学的再生ポリエステル樹脂の含有量は10wt%~90wt%である、請求項1に記載のポリエステルフィルムの製造方法。 【請求項3】 前記原料混合物を再重合する前記ステップはさらに、滑剤を前記原料混合物に添加した後、前記原料混合物を再重合するステップを含み、前記滑剤は、シリカ、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、シリカゲル、アクリル又はそれらの組成物であり、前記ポリエステルフィルムの透明度が85%以上になるように、前記ポリエステルの組成物には更に前記滑剤が0.01wt%~1wt%含まれ、前記滑剤の顆粒寸法は2ミクロンより小さい、請求項1に記載のポリエステルフィルムの製造方法。 【請求項4】 前記ポリエステルフィルムのヘイズは5%以下である、請求項3に記載のポリエステルフィルムの製造方法。 【請求項5】 前記原料混合物を再重合する前記ステップはさらに、前記原料混合物に顔料を添加して、前記原料混合物を再重合するステップを含み、前記ポリエステルの組成物には更に前記顔料が10ppm~10wt%含まれる、請求項1に記載のポリエステルフィルムの製造方法。 【請求項6】 前記原料混合物を再重合する前記ステップはさらに、前記原料混合物に白色の添加物を添加して、前記原料混合物を再重合するステップを含み、前記ポリエステルの組成物には更に前記白色の添加物が5wt%~40wt%含まれる、請求項1に記載のポリエステルフィルムの製造方法。 【請求項7】 前記白色の添加物としては、二酸化チタン、硫酸バリウム及び炭酸カルシウムから選択される少なくとも1種である、請求項6に記載のポリエステルフィルムの製造方法。 【請求項8】 前記白色の添加物は二酸化チタン、硫酸バリウム及び炭酸カルシウムを含み、二酸化チタンは前記白色の添加物の総重量の0.01wt%~80wt%を占め、硫酸バリウムは前記白色の添加物の総重量の0.01wt%~80wt%を占め、炭酸カルシウムは前記白色の添加物の総重量の0.0wt%~80wt%を占める、請求項7に記載のポリエステルフィルムの製造方法。 【請求項9】 前記原料混合物を再重合する前記ステップはさらに、艶消し添加剤を前記原料混合物に添加して、前記原料混合物を再重合するステップを含み、前記艶消し添加剤は、シリカ、シリカゲル、アクリル又はそれらの組成物であり、前記ポリエステルフィルムのヘイズが0.1%~90%になるように、前記ポリエステルの組成物には前記艶消し添加剤が500ppm~20wt%含まれる、請求項1に記載のポリエステルフィルムの製造方法。 【請求項10】 前記原料混合物を再重合する前記ステップはさらに、分解性材料を前記原料混合物に添加するステップを含み、前記ポリエステルの組成物には前記分解性材料が5wt%~90wt%含まれる、請求項1に記載のポリエステルフィルムの製造方法。 【請求項11】 物理的手段で一部分の前記再生プラスチックを再製する前記ステップにおいて、有機添加物を前記再生プラスチックに添加し、前記有機添加物は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ4-メチルペンテン又はそれらの組成物である、請求項1に記載のポリエステルフィルムの製造方法。 第3 特許異議申立書に記載した申立理由の概要 令和 4年11月29日に特許異議申立人が提出した特許異議申立書に記載した申立理由1ないし4の概要及び提出証拠は次のとおりである。 1 申立理由1(甲第1号証に基づく進歩性) 本件特許の請求項1ないし11に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1号証に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし11に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 2 申立理由2(明確性) 本件特許の請求項1ないし11に係る特許は、下記(1)ないし(6)の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、特許法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。 (1)本件特許発明1の「複合物」について 本件特許発明1は、静電密着剤を「アルカリ金属化合物又はアルカリ土類金属化合物を含んだ複合物」で特定している。ここで、「複合物」とは二種以上の物が結合して一体になっているものを意味するところ、本件特許発明1の「複合物」は、アルカリ金属化合物又はアルカリ土類金属化合物が、何と複合物を形成しているのか特定されておらず、その範囲が不明確である。 よって、本件特許発明1は明確でなく、本件特許発明1を引用する本件特許発明2ないし11についても同様に明確でない。 (2)本件特許発明1の「滑剤の顆粒寸法」について 本件特許発明1は、滑剤の顆粒寸法が2ミクロンよりも大きいことを特定している。ここで、顆粒寸法の測定方法としては、日本工業規格(JIS Z 8901)等に記載されているように、顕微鏡法、沈降法、レーザー回折・散乱法などが挙げられ、測定方法の種類に応じて測定値が異なることは出願時における技術常識である。本件特許明細書には、顆粒寸法の測定方法についてなんら記載がなく、その範囲を具体的に特定することができない。 よって、本件特許発明1は明確でなく、本件特許発明1を引用する本件特許発明2ないし11についても同様に明確でない。 (3)本件特許発明3の「滑剤の顆粒寸法」について 本件特許発明3は、滑剤の顆粒寸法が2ミクロンよりも小さいことを特定している。(2)と同様に本件特許明細書には顆粒寸法の測定方法について記載がないから、その範囲を具体的に特定することができない。 (4)本件特許発明3の「ポリエステルフィルムの透明度」について 本件特許発明3はポリエステルフィルムの透明度が85%以上であることを特定している。本件特許明細書には、透明度の定義も測定方法も記載されておらず、その範囲を具体的に特定することができない。 (5)本件特許発明4及び9の「ポリエステルフィルムのヘイズ」について 本件特許発明4及び9は、ポリエステルフィルムのヘイズを特定している。本件特許明細書には、ヘイズの測定方法について記載がないから、その範囲を具体的に特定することができない。 (6)本件特許発明8の「炭酸カルシウム」について 本件特許発明8は、「前記白色の添加物は、・・・炭酸カルシウムを含み」と特定される一方で、「炭酸カルシウムは前記白色の添加物の総重量の0.0wt%~80wt%を占める」と特定されており、炭酸カルシウムを含むのか含まないのか明瞭でない。 3 申立理由3(サポート要件) 本件特許の請求項1ないし11に係る特許は、下記の点で、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、特許法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。 本件特許発明の課題は、物理的手段によるPET再生粒には滑剤、静電密着剤等の機能的な成分を添加することができないため、非再生PET粒を使用して当該機能的な成分を添加することにより、PET製品におけるPET再生粒の使用比率が低下することを改善することであると認められる。 しかしながら、本件特許発明は、ポリエステルフィルムの総重量を100wt%とした場合、物理的再生ポリエステル樹脂と化学的再生ポリエステル樹脂の総重量の下限を10wt%に特定しており、10wt%程度では、PET製品におけるPET再生粒の使用比率の低下を改善しているとは言えない。 また、本件特許発明の課題では、物理的手段によるPET再生粒には滑剤を添加することができないとしているのにも関わらず、本件特許発明では、「物理的手段で一部分の前記再生プラスチックを再製する前記ステップにおいて、顆粒寸法が2ミクロンより大きい滑剤を前記再生プラスチックに添加する」ことが特定されている。本件特許発明には実施例も存在しないため、物理的再生ポリエステル樹脂に滑剤が添加し得るのか不明であり、前記課題が解決されるのかも不明である。 さらに、本件特許発明は、静電密着剤として特定される「アルカリ金属化合物又はアルカリ土類金属化合物を含んだ複合物」が明確ではないうえ、本件特許明細書の段落【0036】には、「アルカリ金属化合物又はアルカリ土類金属化合物の複合物であった静電密着剤を特定範囲の値添加する必要がある」と記載されているが、本件特許発明は静電密着剤の添加量が特定されておらず、所望の静電密着性を達成し得るのか不明である。 したがって、本件特許明細書の記載に鑑みても、本件特許発明は当業者が当該発明の課題を解決できると認識し得る範囲のものではない。よって、本件特許発明は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たさない。 4 申立理由4(実施可能要件) 本件特許の請求項1ないし11に係る特許は、下記(1)ないし(3)の点で特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、特許法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。 (1)申立理由2で述べたように、本件特許発明1は、静電密着剤として特定される「アルカリ金属化合物又はアルカリ土類金属化合物を含んだ複合物」が明確でなく、滑剤の寸法粒径も一義的に定まらない。また、申立理由3で述べたように、物理的再生ポリエステル樹脂に滑剤を添加し得るのかどうか不明である。 したがって、本件特許明細書は、当業者が本件特許発明1及びこれを引用する本件特許発明2ないし11を実施できる程度に明確かつ十分に記載されていない。 (2)本件特許発明3は滑剤の顆粒寸法が一義的に定まらず、ポリエステルフィルムの透明度も一義的に定まらない。したがって、本件特許明細書は、当業者が本件特許発明3及びこれを引用する本件特許発明4を実施できる程度に明確かつ十分に記載されていない。 (3)本件特許発明4及び9は、ポリエステルフィルムのヘイズが一義的に定まらない。したがって、本件特許明細書は、当業者が本件特許発明4及び9を実施できる程度に明確かつ十分に記載されていない。 5 証拠方法 甲第1号証:特開2011-256328号公報 甲第2号証:特開2010―280750号公報 甲第3号証:特開平10-60135号公報 甲第4号証:特開2006-290908号公報 甲第5号証:特開2013-39764号公報 甲第6号証:特開2003-41101号公報 甲第7号証:特開2014-65282号公報 証拠の表記は、特許異議申立書の記載におおむね従った。 第4 令和 5年 3月27日付け取消理由通知に記載した取消理由の概要 当審が令和 5年 3月27日付けで特許権者に通知した取消理由の概要は次のとおりである。 1 取消理由1(明確性) 本件特許の請求項3、4、9に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、特許法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。 ・請求項3には「ポリエステルフィルムの透明度が85%以上」という記載がある。 しかしながら、本件特許の発明の詳細な説明において、ポリエステルフィルムの透明度について、透明度の定義及び測定方法が記載されていないし、当該技術分野において一義的に定義されているものでもない。 そして、ポリエステルフィルムの透明度は、フィルムの厚み、測定光源(波長)等に依存して数値が変動するものであると理解されるところ、請求項3においてはフィルムの厚み、測定光源(波長)が特定されていないため、透明度が一義的に定まらない。 よって、本件特許発明3は明確ではない。請求項3を引用して特定する本件特許発明4についても同様に明確ではない。 ・請求項4には「ポリエステルフィルムのヘイズが5%以下」、請求項9には「ポリエステルフィルムのヘイズが0.1%~90%」という記載がある。 しかしながら、本件特許の発明の詳細な説明において、ポリエステルフィルムのヘイズについて、ヘイズの定義及び測定方法が記載されていない。 ポリエステルフィルムのヘイズについては、測定されるフィルムの厚み等に依存して数値が変動するものであると理解されるところ、請求項4、9においてはフィルムの厚み等が特定されていないため、ヘイズを一義的に定めることができない。 よって、本件特許発明4、9は明確ではない。 2 取消理由2(実施可能要件) 本件特許の請求項3、4、9に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、特許法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。 ・本件特許発明3の「ポリエステルフィルムの透明度」、本件特許発明4及び9の「ポリエステルフィルムのヘイズ」について、本件特許の発明の詳細な説明においては、これらの値の定義及び測定方法が何ら記載されていないし、当該技術分野において一義的に定義されているものでもない。 「ポリエステルフィルムの透明度」はフィルムの厚さ及び測定光源(波長)により大きく影響される数値であることは技術常識であり、「ポリエステルフィルムのヘイズ」はフィルムの厚さにより大きく影響される数値であることは技術常識である。 してみると、本件特許発明3の「ポリエステルフィルムの透明度」が85%以上になるようにポリエステルフィルムの製造をする方法、本件特許発明4の「ポリエステルフィルムのヘイズ」が5%以下であるポリエステルフィルムの製造方法、本件特許発明9の「ポリエステルフィルムのヘイズ」が0.1%~90%になるようにポリエステルフィルムの製造をする方法として、どのような測定方法による数値指標と認識したうえで製造したらよいのか、当業者は理解することができない。 したがって、本件特許の発明の詳細な説明には、当業者が、発明の詳細な説明及び出願時の技術常識に基づき、過度の試行錯誤を要することなく、本件特許発明3、4、9の方法を使用し、本件特許発明3、4、9の方法により生産した物の使用をすることができる程度の記載があるとはいえない。 よって、本件特許発明3、4、9に関して、発明の詳細な説明は、実施可能要件を充足するものとはいえない。 第5 当審の判断 1 取消理由についての判断 本件特許の請求項3、4、9に係る特許について、令和 5年 3月27日付けで取消理由を通知し、期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが、特許権者は応答しなかった。 そして、上記の取消理由は妥当なものと認められるので、本件特許の請求項3、4、9に係る特許は、上記の取消理由によって取り消すべきものである。 2 取消理由として採用しなかった申立理由についての判断 以下に述べるとおり、申立理由1ないし4はいずれも理由がないものと判断される。 (1)申立理由1(甲1に基づく進歩性)について ア 甲1に記載された事項等 (ア)甲1に記載された事項 甲1には「リサイクルポリエステル含有ポリエステル構造体及びその製造方法」について、おおむね次の事項が記載されている。 「【請求項7】 エチレンテレフタレート単位を主体とするポリエステル樹脂から成る容器をケミカルリサイクルして成るケミカルリサイクルポリエステル樹脂を製造する製造工程と、エチレンテレフタレート単位を主体とするポリエステル樹脂から成る容器をメカニカルリサイクルしてなるメカニカルリサイクルポリエステル樹脂を製造する製造工程と、前記ケミカルリサイクルポリエステル樹脂とメカニカルリサイクルポリエステル樹脂をブレンドしてプリフォームを製造する製造工程から成るプリフォームの製造方法であって、 前記ケミカルリサイクルポリエステル樹脂とメカニカルリサイクルポリエステル樹脂のブレンド比が99:1乃50:50(重量比)の範囲にあり、ケミカルリサイクルポリエステル樹脂とメカニカルリサイクルポリエステル樹脂から成るリサイクルポリエステル樹脂を25重量%以上の量で含有するプリフォームを製造することを特徴とするプリフォームの製造方法。」 「【0001】 本発明は、ポリエチレンテレフタレートから成るボトルを再生して成るリサイクルポリエステルを含有するポリエステル構造体に関するものであり、より詳細には、ケミカルリサイクルによる再生ポリエステル及びメカニカルリサイクルによる再生ポリエステルの両方を含有するポリエステル構造体及びプリフォームの製造方法に関する。」 「【0009】 本発明によれば更に、エチレンテレフタレート単位を主体とするポリエステル樹脂から成る容器をケミカルリサイクルして成るケミカルリサイクルポリエステル樹脂を製造する製造工程と、エチレンテレフタレート単位を主体とするポリエステル樹脂から成る容器をメカニカルリサイクルしてなるメカニカルリサイクルポリエステル樹脂を製造する製造工程と、前記ケミカルリサイクルポリエステル樹脂とメカニカルリサイクルポリエステル樹脂をブレンドしてプリフォームを製造する製造工程から成るプリフォームの製造方法であって、前記ケミカルリサイクルポリエステル樹脂とメカニカルリサイクルポリエステル樹脂のブレンド比が99:1乃50:50(重量比)の範囲にあり、ケミカルリサイクルポリエステル樹脂とメカニカルリサイクルポリエステル樹脂から成るリサイクルポリエステル樹脂を25重量%以上の量で含有するプリフォームを製造することを特徴とするプリフォームの製造方法が提供される。 本発明のプリフォームの製造方法においては、 1.カラーb値が+2乃至-10の範囲に調整された、バージンのエチレンテレフタレート単位を主体とするポリエステル樹脂又はケミカルリサイクルポリエステル樹脂を配合して、プリフォームのカラーb値を+2乃至-2の範囲にすること、 2.エチレンテレフタレート単位を主体とするポリエステル樹脂から成る容器の回収量に応じたケミカルリサイクルポリエステル樹脂の供給量を基準に、前記メカニカルリサイクルポリエステル樹脂の配合量を変化させること、 が好適である。 【発明の効果】 【0010】 本発明のポリエステル構造体によれば、エチレンテレフタレート単位を主体とするポリエステル樹脂から成る容器をケミカルリサイクルして成るケミカルリサイクルポリエステル樹脂(以下、「ケミカルリサイクルによる再生PET」という)及びエチレンテレフタレート単位を主体とするポリエステル樹脂から成る容器をメカニカルサイクルして成るメカニカルリサイクルポリエステル樹脂(以下、「メカニカルリサイクルによる再生PET」という)を用いて成形されていることにより、環境負荷の低減に貢献することができると共に、飲食品に直接使用することも可能である。 またケミカルリサイクル及びメカニカルリサイクルによる再生PETを組み合わせで用いることにより、上述したように、それぞれが有する利点及び欠点を互いに補うことができ、経済性及び外観特性に優れた再生PETから成る構造体を提供することが可能となる。 更に、カラーb値が調整されたケミカルリサイクルによる再生PET或いはバージンポリエステルを、メカニカルリサイクルによる再生PETと組み合わせることによって、メカニカルリサイクルによる再生PETが有する黄色味を調整することが可能になり、外観特性に優れた容器を製造することが可能になる。 また本発明のプリフォームの製造方法によれば、ケミカルリサイクル及びメカニカルリサイクルのそれぞれによって再生されたPETを所定量比でブレンドしてプリフォームを成形することにより、環境性に優れると共に、飲食品用途に使用可能なプリフォームを製造することが可能になる。」 「【0012】 (ポリエステル樹脂) 回収PETのケミカルリサイクルの方法としては、前述したように種々の方法が提案されているが、例えば上記特許文献1の場合、(i)回収PETを粉砕、洗浄、異物分別等を行った後、フレーク又はペレット状にする前処理工程、(ii)前処理で得られたフレーク又はペレットを、エチレングリコールを用いて解重合して、ビス-β-ヒドロキシエチルテレフタレート(BHET)を得る解重合工程、(iii)PET以外のプラスチック成分を除去する異物除去工程、(iv)得られたBHETを濃縮するBHET濃縮工程、(iv)BHETを原料とするPET生成工程、から成っており、原料レベルまで解重合することにより蒸留、濾過などの高度な精製手法が採用できることから、かかるケミカルリサイクルによる再生PETは、バージンPETと同様の性質を有している。」 「【0020】 本発明のポリエステル構造体は、リサイクルによるボトルtoボトルという観点からは、プリフォーム及びこのプリフォームを二軸延伸ブロー成形して得られるボトルであることが特に好適である。 ボトルを成形するためのプリフォームの製造は、押出成形、射出成形、圧縮成形等のそれ自体公知の成形法で行うことができ、多層プリフォームの場合は、共押出成形法、同時射出成形法、逐次射出法、圧縮成形法等で製造することができる。 尚、メカニカルリサイクルによる再生PETにおいては、バージンPETに比して、既に固有粘度の低下が生じていたり、また水分の吸着及び吸収も生じている場合があるため、プリフォームの製造に利用する際には固有粘度の低下が生じやすい状態となっていることから、メカニカルリサイクルによる再生PETの含有量が多い場合には、ベント付多軸押出機で可塑化を行い、固有粘度の実質上の低下を抑制することが望ましい。 本発明のポリエステルボトルは、上記プリフォームを105℃以上の高温に加熱して、このプリフォームを軸方向に引っ張り延伸すると共に周方向にブロー延伸し、必要により熱固定することにより製造することができる。 多層プリフォームの成形とその延伸ブロー成形とは、上記の通りコールドパリソン方式で実施することが好ましいが、形成される多層プリフォームを完全に冷却しないで延伸ブロー成形を行うホットパリソン方式にも適用できる。」 「【0023】 本発明のポリエステル構造体は、上述したように、プリフォーム及びボトルであることが特に好適であるが、勿論、シート、フィルム、カップ、トレイ等の形状の構造体であってもよい。」 (イ)甲1に記載された発明 甲1に記載された事項を整理すると、甲1には次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認める。 <甲1発明> 「エチレンテレフタレート単位を主体とするポリエステル樹脂から成る容器をケミカルリサイクルして成るケミカルリサイクルポリエステル樹脂を製造する製造工程と、エチレンテレフタレート単位を主体とするポリエステル樹脂から成る容器をメカニカルリサイクルしてなるメカニカルリサイクルポリエステル樹脂を製造する製造工程と、前記ケミカルリサイクルポリエステル樹脂とメカニカルリサイクルポリエステル樹脂をブレンドする工程を有し、前記ケミカルリサイクルポリエステル樹脂とメカニカルリサイクルポリエステル樹脂のブレンド比が99:1乃至50:50の範囲にあり、ケミカルリサイクルポリエステル樹脂とメカニカルリサイクルポリエステル樹脂から成るリサイクルポリエステル樹脂を25重量%以上の量で含有するフィルムの製造方法であって、ケミカルリサイクルは、i)回収PETを粉砕、洗浄、異物分別等を行った後、フレーク又はペレット状にする前処理工程、(ii)前処理で得られたフレーク又はペレットを、エチレングリコールを用いて解重合して、ビス-β-ヒドロキシエチルテレフタレート(BHET)を得る解重合工程、(iii)PET以外のプラスチック成分を除去する異物除去工程、(iv)得られたBHETを濃縮するBHET濃縮工程、(iv)BHETを原料とするPET生成工程からなり、メカニカルリサイクルは、回収PETを粉砕、洗浄、異物分別等を行った後、フレーク又はペレット状にする、方法。」 イ 検討 (ア)本件特許発明1についての対比・検討 本件特許発明1と甲1発明とを対比する。 甲1発明における「エチレンテレフタレート単位を主体とするポリエステル樹脂」は、本件特許発明1における「ポリエステル樹脂」に相当する。 甲1発明における「ケミカルリサイクルして成るケミカルリサイクルポリエステル樹脂」、「メカニカルリサイクルしてなるメカニカルリサイクルポリエステル樹脂」は、本件特許発明1における「化学的手段で他部分の前記再生プラスチックを再製することにより」「取得」された「化学的再生ポリエステル」、「物理的手段で一部分の前記再生プラスチックを再製することにより」「取得」された「物理的再生ポリエステル」に相当する。 甲1発明における「前記ケミカルリサイクルポリエステル樹脂とメカニカルリサイクルポリエステル樹脂をブレンドする工程」は、本件特許発明1における「前記物理的再生ポリエステル樹脂と前記化学的再生ポリエステル樹脂を含んだポリエステルの組成物を調整するステップ」に相当する。 甲1発明は、「ケミカルリサイクルポリエステル樹脂とメカニカルリサイクルポリエステル樹脂から成るリサイクルポリエステル樹脂」を「25重量%以上の量で含有する」ものであるから、本件特許発明1における「前記ポリエステルの組成物の総重量を100wt%とした場合、前記物理的再生ポリエステル樹脂と前記化学的再生ポリエステル樹脂の総重量は10wt%~100wt%である」との特定事項を満たす。 また、甲1発明は「前記ケミカルリサイクルポリエステル樹脂とメカニカルリサイクルポリエステル樹脂のブレンド比が99:1乃至50:50の範囲にあり、ケミカルリサイクルポリエステル樹脂とメカニカルリサイクルポリエステル樹脂から成るリサイクルポリエステル樹脂を25重量%以上の量で含有する」ものであり、これは、ケミカルリサイクルポリエステル樹脂が、全ポリエステル樹脂に対して少なくとも50重量%×25重量%=12.5重量%含有させることになるから、本件特許発明1における「前記ポリエステルの組成物の総重量を100wt%とした場合、前記化学的再生ポリエステル樹脂の重量比率が5wt%以上」との特定事項を満たす。 さらに、甲1発明における「ケミカルリサイクルは、i)回収PETを粉砕、洗浄、異物分別等を行った後、フレーク又はペレット状にする前処理工程、(ii)前処理で得られたフレーク又はペレットを、エチレングリコールを用いて解重合して、ビス-β-ヒドロキシエチルテレフタレート(BHET)を得る解重合工程、(iii)PET以外のプラスチック成分を除去する異物除去工程、(iv)得られたBHETを濃縮するBHET濃縮工程、(iv)BHETを原料とするPET生成工程からな」る構成は、本件特許発明1における「化学的手段で他部分の前記再生プラスチックを再生する前記ステップはさらに、前記再生プラスチックを解重合することで原料混合物を取得するステップと、前記原料混合物を最重合することで前記化学的再生ポリエステル樹脂を製造するステップとを含」む構成に相当する。 また、甲1発明における「メカニカルリサイクルは、回収PETを粉砕、洗浄、異物分別等を行った後、フレーク又はペレット状にする」構成は、本件特許発明1の「物理的手段で一部分の前記再生ポリエステルを再製するステップ」に相当する。 そして、甲1発明は「フィルムの製造方法」であるから、本件特許発明1の「前記ポリエステルの組成物を使用して前記ポリエステルフィルムを成形するステップ」を備えている。 そうすると、本件特許発明1と甲1発明との一致点、相違点は次のとおりである。 <一致点> 「再生プラスチックを再生利用するためのポリエステルフィルムの製造方法であって、 前記ポリエステルフィルムの製造方法は、 物理的手段で一部分の前記再生プラスチックを再製することにより物理的再生ポリエステル樹脂を取得するステップと、 化学的手段で他部分の前記再生プラスチックを再製することにより化学的再生ポリエステル樹脂を取得するステップと、 前記物理的再生ポリエステル樹脂及び前記化学的再生ポリエステル樹脂を含んだポリエステルの組成物を調整するステップと、 前記ポリエステルの組成物を使用して前記ポリエステルフィルムを成形するステップと、を含み、 前記ポリエステルの組成物の総重量を100wt%とした場合、前記化学的再生ポリエステル樹脂の重量比率が5wt%以上であり、 前記ポリエステルフィルムの総重量を100wt%とした場合、前記物理的再生ポリエステル樹脂と前記化学的再生ポリエステル樹脂の総重量は10wt%~100wt%であり、 化学的手段で他部分の前記再生プラスチックを再製する前記ステップはさらに、 前記再生プラスチックを解重合することで原料混合物を取得するステップと、 前記原料混合物を再重合することで前記化学的再生ポリエステル樹脂を製造するステップと、を含み、 物理的手段で一部分の前記再生プラスチックを再製するステップを含む、ポリエステルフィルムの製造方法。」 <相違点1> 本件特許発明1は、化学的手段における原料混合物を再重合するステップにおいて、原料混合物にアルカリ金属化合物又はアルカリ土類金属化合物を含んだ複合物からなる静電密着剤を添加するとの特定を有するのに対して、甲1発明は、そのような特定はない点。 <相違点2> 本件特許発明1は、物理的手段で再生プラスチックを再製するステップにおいて、顆粒寸法が2ミクロンより大きい滑剤を前記再生プラスチックに添加するとの特定を有するのに対して、甲1発明は、そのような特定はない点 相違点1について検討する。 甲1には、相違点1に係る本件特許発明1の発明特定事項を採用する動機付けとなる記載はない。 また、他の証拠にも、甲1発明において、相違点1に係る本件特許発明1の発明特定事項を採用する動機付けとなる記載があるとはいえない。 したがって、甲1及び他の証拠に記載された事項を考慮しても、甲1発明において、相違点1に係る本件特許発明1の発明特定事項を採用することは当業者が容易に想到し得たものであるとはいえない。 (イ)本件特許発明2、5ないし8、10及び11についての対比・検討 本件特許発明2、5ないし8、10及び11は、請求項1を直接又は間接的に引用して特定するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1と同様に判断される。 したがって、本件特許発明2、5ないし8、10及び11は、甲1発明ならびに甲1及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (ウ)申立理由1(甲1に基づく進歩性)についてのむすび 本件特許発明1、2、5ないし8、10及び11は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえず、本件特許の請求項2、5ないし8、10及び11に係る特許は、特許法第113条第2項に該当しないので、申立理由1によっては取り消すことはできない。 (2)申立理由2(明確性)について ア 明確性要件の判断基準 特許を受けようとする発明が明確であるかは、特許請求の範囲の記載だけではなく、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるか否かという観点から判断されるべきである。 そこで、検討する。 イ 明確性要件の判断 本件特許の特許請求の範囲の請求項1、2、5ないし8、10及び11の記載自体に不明確な記載はなく、本件特許の発明の詳細な説明の記載とも整合する。 したがって、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願時における技術常識を基礎とすれば、本件特許発明1、2、5ないし8、10及び11に関して、特許請求の範囲の記載が、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるとはいえない。 よって、本件特許発明1、2、5ないし8、10及び11は明確である。 ウ 特許異議申立人の主張について 特許異議申立人の上記第3 2の主張について検討する。 (ア)本件特許発明1の「複合物」について 請求項1の「静電密着剤はアルカリ金属化合物又はアルカリ土類金属化合物を含んだ複合物」との記載は、静電密着剤がアルカリ金属化合物又はアルカリ土類金属化合物を含んだ複合物であればよく、複合物のアルカリ金属化合物又はアルカリ土類金属化合物以外の構成要素が特定されないことをもって不明確であるとはいえない。 (イ)本件特許発明1の「滑剤の顆粒寸法」について 請求項1の「滑剤の顆粒寸法」は、測定方法が特定されていないから、当該技術分野において使用される通常の測定方法により測定された滑剤の顆粒寸法によるものであればよく、それ自体明確である。 (ウ)本件特許発明8の「炭酸カルシウム」について 請求項8は「前記白色の添加物は二酸化チタン、硫酸バリウム及び炭酸カルシウムを含み」「炭酸カルシウムは前記白色の添加物の総重量の0.0wt%~80wt%を占める」と記載されているから、炭酸カルシウムを0.0wt%を超える量で含むことを意味し、明確である。ここで、「0.0wt%~」との記載は炭酸カルシウムを含まないことを意味するものではなく、有効数字2桁での含有量下限値を示すものであり、矛盾する記載ではない。 エ 申立理由2についてのむすび したがって、本件特許の請求項1、2、5ないし8、10及び11に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない出願に対してされたものであるとはいえないので、特許法第113条第4号に該当せず、申立理由2によっては取り消すことはできない。 (3)申立理由3(サポート要件) について ア サポート要件の判断基準 特許請求の範囲の記載が、サポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。 そこで、検討する。 イ サポート要件の判断 本件特許の特許請求の範囲の記載は上記第2のとおりである。 本件特許の発明の詳細な説明の【0002】ないし【0007】によると、本件特許発明1の解決しようとする課題(以下、「発明の課題」という。)は、「物理的手段で再生する方法を使用して製造される再生粒には、製造過程で滑剤、静電密着剤等の機能的な成分を添加することができず、別途に新しい非再生PET粒を使用して、別途に滑剤、静電密着剤等の機能的な成分を添加する必要があるが、これではPET製品におけるPET再生粒の使用比率が低下してしまう、という既存技術の不足を改善するため、ポリエステルフィルム及びその製造方法を提供すること」である。 そして、本件特許の発明の詳細な説明の【0008】ないし【0022】には、本件特許発明1、2、5ないし8、10及び11に対応する記載がある。 さらに、本件特許の発明の詳細な説明の【0024】ないし【0047】には本件特許発明の実施形態について説明があり、【0048】には本件特許発明による発明の効果が記載されている。 そうすると、当業者は、再生プラスチックを再生利用するためのポリエステルフィルムの製造方法において、物理的手段で一部分の前記再生プラスチックを再製することにより物理的再生ポリエステル樹脂を取得するステップと、化学的手段で他部分の前記再生プラスチックを再製することにより化学的再生ポリエステル樹脂を取得するステップと、前記物理的再生ポリエステル樹脂及び前記化学的再生ポリエステル樹脂を含んだポリエステルの組成物を調製するステップと、前記ポリエステルの組成物を使用して前記ポリエステルフィルムを成形するステップとを含み、前記ポリエステルの組成物の総重量を100wt%とした場合、前記化学的再生ポリエステル樹脂の重量比率が5wt%以上とし、前記ポリエステルフィルムの総重量を100wt%とした場合、前記物理的再生ポリエステル樹脂と前記化学的再生ポリエステル樹脂の総重量は10wt%~100wt%として、化学的手段で他部分の前記再生プラスチックを再製する前記ステップはさらに、前記再生プラスチックを解重合することで原料混合物を取得するステップと、前記原料混合物を再重合することで前記化学的再生ポリエステル樹脂を製造するステップと、を含み、前記原料混合物を再重合する前記ステップはさらに、前記原料混合物に静電密着剤を添加するステップを含み、前記静電密着剤はアルカリ金属化合物又はアルカリ土類金属化合物を含んだ複合物であり、物理的手段で一部分の前記再生プラスチックを再製する前記ステップにおいて、顆粒寸法が2ミクロンより大きい滑剤を前記再生プラスチックに添加する、ポリエステルフィルムの製造方法とすることにより、既存技術の不足が改善されたポリエステルフィルム及びその製造方法が提供されること、すなわち、発明の課題を解決できると認識できる。 そして、本件特許発明1、2、5ないし8、10及び11は、上記ポリエステルフィルムの製造方法をさらに限定したものである。 したがって、本件特許発明1、2、5ないし8、10及び11は、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえ、本件特許発明1、2、5ないし8、10及び11に関して、特許請求の範囲の記載はサポート要件に適合する。 ウ 特許異議申立人の主張について 特許異議申立人の上記第3 3の主張について検討する。 ・物理的再生ポリエステル樹脂と化学的再生ポリエステル樹脂の総重量の下限値について 先に検討したとおり、発明の課題は「物理的手段で再生する方法を使用して製造される再生粒には、製造過程で滑剤、静電密着剤等の機能的な成分を添加することができず、別途に新しい非再生PET粒を使用して、別途に滑剤、静電密着剤等の機能的な成分を添加する必要があるが、これではPET製品におけるPET再生粒の使用比率が低下してしまう、という既存技術の不足を改善するため、ポリエステルフィルム及びその製造方法を提供すること」であり、PET製品におけるPET再生粒の使用比率を特定の数値以上にすることではない。 よって、本件特許発明1、2、5ないし8、10及び11において、「前記ポリエステルフィルムの総重量を100wt%とした場合、前記物理的再生ポリエステル樹脂と前記化学的再生ポリエステル樹脂の総重量は10wt%~100wt%」の下限値10wt%が発明の課題を解決しないからサポート要件に適合しないという特許異議申立人の主張は採用し得ない。 ・物理手段で一部分の前記再生プラスチックを再製するステップにおいて顆粒寸法が2ミクロンより大きい滑剤を前記再生プラスチックに添加する、について 物理的手段による再製時に顆粒寸法が2ミクロンより大きい滑剤を添加する工程は発明の詳細な説明【0020】及び【0032】に記載されている。そして、物理的手段による再製時に顆粒寸法が2ミクロンより大きい滑剤を添加する工程を採用することにより発明の課題を解決することができると当業者は認識できる。 なお、発明の詳細な説明【0005】に「業界において、今は物理的手段で再生する方法を使用してPETを再生することがよく見られるが、このように製造される再生粒には、製造過程で滑剤、静電密着剤等の機能的な成分を添加することができない」と記載されているが、このことにより物理的手段による再製時に顆粒寸法が2ミクロンより大きい滑剤を添加することが技術的に不可能であるというような事情はなく、また、そのような技術常識はない。よって、特許異議申立人の主張は採用し得ない。 ・静電密着剤の添加量について 発明の課題は既に検討したとおりであり、所望の静電密着性を達成することが、発明の課題ではない。したがって、静電密着剤の添加量が特定されていないから所望の静電密着性を達成し得るのか不明であり、このために本件特許発明の特許請求の範囲の記載がサポート要件に適合しないとの特許異議申立人の主張は採用し得ない。 エ 申立理由3(サポート要件)についてのむすび 本件特許発明1、2、5ないし8、10及び11に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるとはいえず、特許法第113条第4項に該当しないので、申立理由3によっては取り消すことはできない。 (4)申立理由4(実施可能要件)について ア 実施可能要件の判断基準 上記第2のとおり、本件特許発明1、2、5ないし8、10及び11は物を製造する方法の発明であるところ、物を製造する方法の発明について実施可能要件を充足するためには、発明の詳細な説明に、当業者が、発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その物を製造する方法を使用し、その物を製造する方法により製造した物の使用をすることができる程度の記載があることを要する。 そこで検討する。 イ 実施可能要件の判断 本件特許の発明の詳細な説明の記載は、上記(3)イにて検討したとおりであり、本件特許の発明の詳細な説明には、本件特許発明1、2、5ないし8、10及び11の各発明特定事項について具体的に記載され、実施の形態についても具体的に説明されている。 したがって、本件特許の発明の詳細な説明には、当業者が、発明の詳細な説明及び出願時の技術常識に基づき、過度の試行錯誤を要することなく、本件特許発明1、2、5ないし8、10及び11を使用し、本件特許発明1、2、5ないし8、10及び11により生産した物の使用をすることができる程度の記載があるといえる。 よって、本件特許発明1、2、5ないし8、10及び11に関して、発明の詳細な説明は、実施可能要件を充足する。 ウ 特許異議申立人の主張について 上記イのとおり、本件特許発明1、2、5ないし8、10及び11に関して、発明の詳細な説明の記載は、実施可能要件を充足する。以下、特許異議申立人の主張について延べる。 ・静電密着剤として特定される「アルカリ金属化合物又はアルカリ土類金属化合物を含んだ複合物」、「滑剤の顆粒寸法」について 上記(2)ウ(ア)及び(イ)にて検討したとおり、「アルカリ金属化合物又はアルカリ土類金属化合物を含んだ複合物」、「滑剤の顆粒寸法」は明確であり、また、実施可能要件の判断には関係がない。 ・物理的再生ポリエステル樹脂に滑剤を添加し得るかどうかについて 上記(3)ウにて検討したとおり、物理的再生ポリエステル樹脂に滑剤を添加することができないという事情はなく、実施可能要件の判断には影響しない。 エ 申立理由4(実施可能要件)についてのむすび 本件特許の請求項1、2、5ないし8、10及び11に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるとはいえず、特許法第113条第4号に該当しないので、申立理由4によっては取り消すことはできない。 第6 結語 以上のとおり、本件特許の請求項3、4、9に係る特許は、特許法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。 また、本件特許の請求項1、2、5ないし8、10及び11に係る特許は、特許異議申立書に記載した申立ての理由によっては取り消すことはできない。 他に、本件特許の請求項1、2、5ないし8、10及び11に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2022-701182

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