特許異議申立
2022-701113
情報処理装置、情報処理方法、情報処理プログラム
- 審判番号
- 2022-701113
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2019-101047
- 登録番号
- 7068710
- 請求日
- 2022年11月15日
- 審決日
- 2024年02月16日
- 公報発行日
- 2024年05月31日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】株式会社ダブルスタンダード
- 【権利者代理人】明坂 正博
- 【異議申立人】加藤 浩志
- 審判長/審判官
- 審判長 五十嵐 努
- 審判官 木方 庸輔
- 審判官 樫本 剛
- 分類
- P1651.161-YAA(G06T)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条の2、特許法第41条第3項、特許法第36条第6項第2号、特許法第36条第6項第1号、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第4項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7068710号発明「情報処理装置、情報処理方法、情報処理プログラム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7068710号の特許請求の範囲を令和5年10月13日付け訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~5〕,6,7について訂正することを認める。
特許第7068710号の請求項1~7に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7068710号(以下「本件特許」という。)に係る特許についての出願は、平成30年12月19日に優先権主張(平成30年12月11日)を伴って出願された特願2018-237005号の一部を、令和元年5月30日に新たな特許出願としたものであり、令和4年5月9日にその特許権の設定の登録がされ、同年5月17日にその特許掲載公報が発行された。本件特許の請求項の数は7である。
これに対して、令和4年11月15日に特許異議申立人加藤 浩志(以下「申立人」という。)は、証拠として甲第1号証~甲第4号証を提出し、本件特許の請求項1~7に係る特許に特許異議の申立てをした。その後の経緯は、次のとおりである。
令和5年 3月 7日付け:取消理由通知書
同年 5月 9日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
同年 6月22日 :申立人による意見書の提出
同年 9月 5日付け:取消理由通知書(決定の予告)
同年10月13日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
以下、令和5年10月13日に提出された訂正請求書を「本件訂正請求書」といい、本件訂正請求書による訂正を「本件訂正」という。
なお、令和5年5月9日に特許権者がした訂正の請求は、特許法第120条の5第7項の規定により、取り下げられたものとみなす。
また、申立人に、令和5年10月13日に提出された特許権者による意見書及び訂正請求書に対して、期間を指定して意見書を提出する機会を設けたが、期間内に申立人からの応答はなかった。
第2 本件訂正について
1 請求の趣旨及び訂正の内容
本件訂正の請求の趣旨は、本件特許の願書に添付した特許請求の範囲を、本件訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~7について訂正することを求めるものであって、その内容は次のとおりである。
なお、訂正箇所に下線を付した。
(1)請求項1~5に係る訂正(訂正事項1)
本件訂正に含まれる請求項1~5に係る訂正は、請求項1に
「【請求項1】
本人確認書類の画像データを取得する情報処理装置であって、
撮像位置の異なる本人確認書類撮像用の画面データが複数格納された記憶部を参照し、前記撮像位置の異なる本人確認書類撮像用の画面データのいずれで前記本人確認書類を撮像させるかを抽選する撮像位置抽選部と、
前記撮像位置抽選部で抽選された位置で前記本人確認書類を撮像するように指示する撮像方法指示部と、
前記撮像方法指示部による指示に基づいて撮像された前記本人確認書類の撮像データを取得する撮像データ取得部と、
を備えることを特徴とする情報処理装置。」と記載されているのを、
「【請求項1】
本人確認書類の画像データを取得する情報処理装置であって、
撮像位置の異なる本人確認書類撮像用の画面データと、動作を指示するためのデータとが各々複数格納された記憶部を参照し、前記撮像位置の異なる本人確認書類撮像用の画面データのいずれで前記本人確認書類を撮像させるかを抽選する撮像位置抽選部と、
前記撮像位置抽選部で抽選された位置で前記本人確認書類を撮像するように指示する撮像方法指示部と、
前記撮像方法指示部による指示に基づいて撮像された前記本人確認書類の撮像データを取得する撮像データ取得部と、
前記記憶部を参照し、前記記憶部から1以上の動作をランダムに抽出する動作抽出部と、
前記動作抽出部が抽出した1以上の動作を指示するタイミングをランダムに決定する指示タイミング決定部と、
前記動作抽出部が抽出した1以上の動作を前記指示タイミング決定部で決定されたタイミングで指示する動作指示部と、
を備えることを特徴とする情報処理装置。」に訂正するものである。
また、請求項1の記載を引用する請求項2~5も同様に訂正するものである。
以下、この訂正を「訂正事項1」という。
(2)請求項6に係る訂正(訂正事項2)
本件訂正に含まれる請求項6に係る訂正は、請求項6に
「【請求項6】
本人確認書類の画像データを取得する情報処理方法であって、
撮像位置抽選部が、撮像位置の異なる本人確認書類撮像用の画面データが複数格納された記憶部を参照し、前記撮像位置の異なる本人確認書類撮像用の画面データのいずれで前記本人確認書類を撮像させるかを抽選する工程と、
撮像方法指示部が、前記撮像位置抽選部で抽選された位置で前記本人確認書類を撮像するように指示する工程と、
撮像データ取得部が、前記撮像方法指示部による指示に基づいて撮像された前記本人確認書類の撮像データを取得する工程と、
を有することを特徴とする情報処理方法。」と記載されているのを、
「【請求項6】
本人確認書類の画像データを取得する情報処理方法であって、
撮像位置抽選部が、撮像位置の異なる本人確認書類撮像用の画面データと、動作を指示するためのデータとが各々複数格納された記憶部を参照し、前記撮像位置の異なる本人確認書類撮像用の画面データのいずれで前記本人確認書類を撮像させるかを抽選する工程と、
撮像方法指示部が、前記撮像位置抽選部で抽選された位置で前記本人確認書類を撮像するように指示する工程と、
撮像データ取得部が、前記撮像方法指示部による指示に基づいて撮像された前記本人確認書類の撮像データを取得する工程と、
動作抽出部が、前記記憶部を参照し、前記記憶部から1以上の動作をランダムに抽出する工程と、
指示タイミング決定部が、前記動作抽出部が抽出した1以上の動作を指示するタイミングをランダムに決定する工程と、
動作指示部が、前記動作抽出部が抽出した1以上の動作を前記指示タイミング決定部で決定されたタイミングで指示する工程と、
を有することを特徴とする情報処理方法。」に訂正するものである。
以下、この訂正を「訂正事項2」という。
(3)請求項7に係る訂正(訂正事項3)
本件訂正に含まれる請求項7に係る訂正は、請求項7に
「【請求項7】
本人確認書類の画像データを取得する情報処理プログラムであって、
コンピュータを、
撮像位置の異なる本人確認書類撮像用の画面データが複数格納された記憶部を参照し、前記撮像位置の異なる本人確認書類撮像用の画面データのいずれで前記本人確認書類を撮像させるかを抽選する撮像位置抽選部、
前記撮像位置抽選部で抽選された位置で前記本人確認書類を撮像するように指示する撮像方法指示部、
前記撮像方法指示部による指示に基づいて撮像された前記本人確認書類の撮像データを取得する撮像データ取得部、
として機能させることを特徴とする情報処理プログラム。」と記載されているのを、
「【請求項7】
本人確認書類の画像データを取得する情報処理プログラムであって、
コンピュータを、
撮像位置の異なる本人確認書類撮像用の画面データと、動作を指示するためのデータとが各々複数格納された記憶部を参照し、前記撮像位置の異なる本人確認書類撮像用の画面データのいずれで前記本人確認書類を撮像させるかを抽選する撮像位置抽選部、
前記撮像位置抽選部で抽選された位置で前記本人確認書類を撮像するように指示する撮像方法指示部、
前記撮像方法指示部による指示に基づいて撮像された前記本人確認書類の撮像データを取得する撮像データ取得部、
前記記憶部を参照し、前記記憶部から1以上の動作をランダムに抽出する動作抽出部、
前記動作抽出部が抽出した1以上の動作を指示するタイミングをランダムに決定する指示タイミング決定部、
前記動作抽出部が抽出した1以上の動作を前記指示タイミング決定部で決定されたタイミングで指示する動作指示部、
として機能させることを特徴とする情報処理プログラム。」に訂正するものである。
以下、この訂正を「訂正事項3」という。
2 訂正の適否についての判断
(1)訂正事項1について
ア 一群の請求項について
訂正前の請求項2~5は、訂正前の請求項1を引用しており、請求項1に連動して訂正されるものであるから、請求項1~5は、特許法第120条の5第4項に規定する「一群の請求項」に該当する。
したがって、訂正事項1に係る訂正は、一群の請求項〔1~5〕について請求されたものである。
イ 訂正の目的
訂正事項1は、訂正前の請求項1の「撮像位置の異なる本人確認書類撮像用の画面データが複数格納された記憶部を参照し、前記撮像位置の異なる本人確認書類撮像用の画面データのいずれで前記本人確認書類を撮像させるかを抽選する撮像位置抽選部」を、「撮像位置の異なる本人確認書類撮像用の画面データと、動作を指示するためのデータとが各々複数格納された記憶部を参照し、前記撮像位置の異なる本人確認書類撮像用の画面データのいずれで前記本人確認書類を撮像させるかを抽選する撮像位置抽選部」とすることで、「撮像位置抽選部」を特定する事項を追加するものであり、さらに、訂正前の請求項1の情報処理装置に「前記記憶部を参照し、前記記憶部から1以上の動作をランダムに抽出する動作抽出部」と、「前記動作抽出部が抽出した1以上の動作を指示するタイミングをランダムに決定する指示タイミング決定部」と、「前記動作抽出部が抽出した1以上の動作を前記指示タイミング決定部で決定されたタイミングで指示する動作指示部」を追加するものである。(なお、下線は、強調のために当審で付した。)
また、請求項1を引用する訂正後の請求項2~5についても同様である。
よって、請求項1~5に係る訂正事項1は、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正である。
したがって、訂正事項1に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものである。
ウ 新規事項の有無
本件特許の明細書の段落【0014】~【0015】、【0023】、【0029】~【0031】及び【0130】~【0131】、並びに、図面の【図8】には、以下の記載がある。
なお、下線は、強調のために当審にて付した。
「【0014】
記憶装置200Bは、例えば、HDDや半導体記憶装置である。記憶装置200Bには、認証プログラム(アプリケーションソフトウェア)が記憶されている。また、記憶装置200Bには、後述する動作指示部208において利用される複数の動作を指示するためのテキストデータ及び音声データが動作IDに関連付けて記憶されたデータベースが記憶されている。
【0015】
データベースには、種々の動作のテキストデータ及び音声データが動作IDに関連付けて記憶されている。例えば、「両まぶたを3秒間閉じてください」、「左まぶたを3秒間閉じてください」、「右まぶたを3秒間閉じてください」、「口を大きく開けてください」、「画面に合わせて顔を動かしてください」、「大きくうなずいてください」、「ゆっくりと「あ・お・う・え・お」と発音してください」、「舌を出してください」などのテキストデータ及び音声データが動作IDに関連付けて記憶されている。」
「【0023】
図2(b)に示すように、ユーザ端末2は、撮像装置制御部201、入力受付部202、表示装置制御部203、送信部204、受信部205、動作抽出部206、指示タイミング決定部207、動作指示部208、音声出力装置制御部209及び記憶装置制御部210などの機能を有する。なお、図2(b)に示す機能は、ユーザ端末2のROM(不図示)に記憶された管理プログラムをCPU200Gが実行することにより実現される。」
「【0029】
動作抽出部206は、記憶装置200Bに記憶されている動作IDから、1以上の動作IDをランダムに抽出する。
【0030】
指示タイミング決定部207は、後述する動作指示部208がユーザUに対して動作を指示するタイミングをランダム(例えば、自撮り動画の撮像開始から3秒後や5秒後)に決定する。
【0031】
動作指示部208は、ユーザUに対して1以上の動作を指示タイミング決定部207で決定されたタイミングで指示する。具体的には、動作指示部208は、指示タイミング決定部207で決定されたタイミングで、動作抽出部206により抽出された動作IDに対応するテキストデータを表示するように表示装置制御部203に指示する。また、動作指示部208は、指示タイミング決定部207で決定されたタイミングで、動作抽出部206により抽出された動作IDに対応する音声データを出力するように音声出力装置制御部209に指示する。」
「【0130】
初めに、第3実施形態に係るユーザ端末2の記憶装置200Bに記憶されているデータについて説明する。第3実施形態に係るユーザ端末2の記憶装置200Bには、第2実施形態及びその変形例1,2に係るユーザ端末2の記憶装置200Bに記憶されているデータに加えて、撮像位置抽選部212で利用される画像データが位置IDに関連付けて記憶されている。
【0131】
図8は、第3実施形態に係るユーザ端末2の表示装置200Dに表示される画面100の一例を示す図である。図8に示すように、撮像位置の異なる4つの本人確認書類撮像用の画面100のデータ(以下、画面データともいう)が位置IDに関連付けて格納されている。(後略)」
「【図8】
[図:0001410187000001.jpg]
」
上記した本件特許の明細書の段落【0130】~【0131】の記載によれば、明細書の「記憶装置200B」、「撮像位置の異なる4つの本人確認書類撮像用の画面100のデータ」は、それぞれ訂正事項1の「記憶部」、「撮像位置の異なる本人確認書類撮像用の画面データ」に対応するから、訂正事項1における「撮像位置の異なる本人確認書類撮像用の画面データが複数格納された記憶部」は、明細書又は図面に記載されているといえる。
また、本件特許の明細書の段落【0014】~【0015】には、「記憶装置200Bには、後述する動作指示部208において利用される複数の動作を指示するためのテキストデータ及び音声データが動作IDに関連付けて記憶されたデータベースが記憶され」、「データベースには、種々の動作のテキストデータ及び音声データが動作IDに関連付けて記憶されている」と記載されている。
ここで、明細書の「記憶装置200B」、「動作を指示するためのテキストデータ及び音声データ」がそれぞれ訂正事項1の「記憶部」、「動作を指示するためのデータ」に対応するから、訂正事項1における「動作を指示するためのデータが複数格納された記憶部」は、明細書に記載されているといえる。
よって、訂正事項1における「撮像位置の異なる本人確認書類撮像用の画面データと、動作を指示するためのデータとが各々複数格納された記憶部」は、本件特許の明細書又は図面に記載されているといえる。
また、本件特許の明細書の段落【0023】及び【0029】~【0031】には、「ユーザ端末2は、動作抽出部206、指示タイミング決定部207、動作指示部208」の「機能を有」し、「動作抽出部206は、記憶装置200Bに記憶されている動作IDから、1以上の動作IDをランダムに抽出」し、「指示タイミング決定部207は、後述する動作指示部208がユーザUに対して動作を指示するタイミングをランダム(例えば、自撮り動画の撮像開始から3秒後や5秒後)に決定」し、「動作指示部208は、ユーザUに対して1以上の動作を指示タイミング決定部207で決定されたタイミングで指示する。具体的には、動作指示部208は、指示タイミング決定部207で決定されたタイミングで、動作抽出部206により抽出された動作IDに対応するテキストデータを表示するように表示装置制御部203に指示する。また、動作指示部208は、指示タイミング決定部207で決定されたタイミングで、動作抽出部206により抽出された動作IDに対応する音声データを出力するように音声出力装置制御部209に指示する」と記載されている。
ここで、明細書の「動作抽出部206」、「指示タイミング決定部207」、「動作指示部208」は、それぞれ訂正事項1の「動作抽出部」、「指示タイミング決定部」、「動作指示部」に対応する。
よって、訂正事項1における情報処理装置が「前記記憶部を参照し、前記記憶部から1以上の動作をランダムに抽出する動作抽出部」、「前記動作抽出部が抽出した1以上の動作を指示するタイミングをランダムに決定する指示タイミング決定部」及び「前記動作抽出部が抽出した1以上の動作を前記指示タイミング決定部で決定されたタイミングで指示する動作指示部」を備えることは、明細書に記載されているといえる。
したがって、訂正事項1に係る訂正は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。
エ 拡張ないし変更
上記イで検討したとおり、訂正事項1は、特許請求の範囲を減縮するものであり、特許請求の範囲の拡張や変更を伴うものではない。
したがって、訂正事項1に係る訂正は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。
オ 独立特許要件
訂正事項1に係る訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるが、本件においては、訂正前の全ての請求項1~7について特許異議の申立てがされているので、訂正前の請求項1~5に係る訂正事項1に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項に規定する独立特許要件は、課されない。
カ 訂正事項1のまとめ
上記ア~オのとおり、本件訂正の訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、及び、同条第9項で準用する同法第126条第5項~第6項の規定に適合する。
(2)訂正事項2について
ア 訂正の目的
訂正事項2は、訂正前の請求項6の「撮像位置抽選部が、撮像位置の異なる本人確認書類撮像用の画面データが複数格納された記憶部を参照し、前記撮像位置の異なる本人確認書類撮像用の画面データのいずれで前記本人確認書類を撮像させるかを抽選する工程」を、「撮像位置の異なる本人確認書類撮像用の画面データと、動作を指示するためのデータとが各々複数格納された記憶部を参照し、前記撮像位置の異なる本人確認書類撮像用の画面データのいずれで前記本人確認書類を撮像させるかを抽選する工程」とすることで、「撮像位置抽選部」を特定する事項を追加するものであり、さらに、訂正前の請求項6の情報処理方法に「動作抽出部が、前記記憶部を参照し、前記記憶部から1以上の動作をランダムに抽出する工程」と、「指示タイミング決定部が、前記動作抽出部が抽出した1以上の動作を指示するタイミングをランダムに決定する工程」と、「動作指示部が、前記動作抽出部が抽出した1以上の動作を前記指示タイミング決定部で決定されたタイミングで指示する工程」を追加するものである。(なお、下線は、強調のために当審で付した。)
よって、請求項6に係る訂正事項2は、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正である。
したがって、請求項6に係る訂正事項2は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とする訂正である。
イ 新規事項の有無
上記(1)ウにおける訂正事項1についての検討と同様に、訂正事項2に係る訂正は、本件特許の明細書又は図面に記載されている事項と認められる。
したがって、訂正事項2に係る訂正は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。
ウ 拡張ないし変更
上記アで検討したとおり、訂正事項2は、特許請求の範囲を減縮するものであり、特許請求の範囲の拡張や変更を伴うものではない。
したがって、訂正事項2に係る訂正は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。
エ 独立特許要件
訂正事項2に係る訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるが、本件においては、訂正前の全ての請求項1~7について特許異議の申立てがされているので、訂正前の請求項6に係る訂正事項2に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項に規定する独立特許要件は、課されない。
オ 訂正事項2のまとめ
上記ア~エのとおり、本件訂正の訂正事項2は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項~第6項の規定に適合する。
(3)訂正事項3について
ア 訂正の目的
訂正事項3は、訂正前の請求項7の「撮像位置の異なる本人確認書類撮像用の画面データが複数格納された記憶部を参照し、前記撮像位置の異なる本人確認書類撮像用の画面データのいずれで前記本人確認書類を撮像させるかを抽選する撮像位置抽選部」を、「撮像位置の異なる本人確認書類撮像用の画面データと、動作を指示するためのデータとが各々複数格納された記憶部を参照し、前記撮像位置の異なる本人確認書類撮像用の画面データのいずれで前記本人確認書類を撮像させるかを抽選する撮像位置抽選部」とすることで、「撮像位置抽選部」を特定する事項を追加するものであり、さらに、訂正前の請求項7の情報処理プログラムに「前記記憶部を参照し、前記記憶部から1以上の動作をランダムに抽出する動作抽出部」と、「前記動作抽出部が抽出した1以上の動作を指示するタイミングをランダムに決定する指示タイミング決定部」と、「前記動作抽出部が抽出した1以上の動作を前記指示タイミング決定部で決定されたタイミングで指示する動作指示部」を追加するものである。(なお、下線は、強調のために当審で付した。)
よって、請求項7に係る訂正事項3は、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正である。
したがって、請求項7に係る訂正事項3は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とする訂正である。
イ 新規事項の有無
上記(1)ウにおける訂正事項1についての検討と同様に、訂正事項3に係る訂正は、本件特許の明細書又は図面に記載されている事項と認められる。
したがって、訂正事項3に係る訂正は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。
ウ 拡張ないし変更
上記アで検討したとおり、訂正事項3は、特許請求の範囲を減縮するものであり、特許請求の範囲の拡張や変更を伴うものではない。
したがって、訂正事項3に係る訂正は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。
エ 独立特許要件
訂正事項3に係る訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるが、本件においては、訂正前の全ての請求項1~7について特許異議の申立てがされているので、訂正前の請求項7に係る訂正事項3に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項に規定する独立特許要件は、課されない。
オ 訂正事項3のまとめ
上記ア~エのとおり、本件訂正の訂正事項3は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項~第6項の規定に適合する。
3 訂正事項のまとめ
上記1~2のとおり、本件訂正の訂正事項1~3は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、及び、同条第9項で準用する同法第126条第5項~第6項の規定に適合する。
したがって、本件特許の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~7について訂正することを認める。
第3 本件発明
本件訂正請求により訂正された特許請求の範囲の請求項1~7に係る発明(以下それぞれ「本件発明1」などという。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1~7に記載された事項により特定されるものと認められるところ、その記載は次のとおりである。
また、本件発明1~7を、当審において(1A)~(7G)に分説し、分説した発明特定事項を、以下それぞれ「発明特定事項1A」などという。
【請求項1】
(1A) 本人確認書類の画像データを取得する情報処理装置であって、
(1B) 撮像位置の異なる本人確認書類撮像用の画面データと、動作を指示するためのデータとが各々複数格納された記憶部を参照し、前記撮像位置の異なる本人確認書類撮像用の画面データのいずれで前記本人確認書類を撮像させるかを抽選する撮像位置抽選部と、
(1C) 前記撮像位置抽選部で抽選された位置で前記本人確認書類を撮像するように指示する撮像方法指示部と、
(1D) 前記撮像方法指示部による指示に基づいて撮像された前記本人確認書類の撮像データを取得する撮像データ取得部と、
(1E) 前記記憶部を参照し、前記記憶部から1以上の動作をランダムに抽出する動作抽出部と、
(1F) 前記動作抽出部が抽出した1以上の動作を指示するタイミングをランダムに決定する指示タイミング決定部と、
(1G) 前記動作抽出部が抽出した1以上の動作を前記指示タイミング決定部で決定されたタイミングで指示する動作指示部と、
(1A) を備えることを特徴とする情報処理装置。
【請求項2】
(2A) 前記撮像方法指示部は、
前記本人確認書類の表面及び裏面を撮像するように指示する
(2B)ことを特徴とする請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
(3A) 前記撮像方法指示部は、
前記本人確認書類の表面及び裏面を撮像する際に、前記本人確認書類をひっくり返すよう指示する
(3B)ことを特徴とする請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
(4A) 前記撮像方法指示部は、
前記本人確認書類の厚みがわかるように、前記本人確認書類を斜めに傾けた状態で撮像するよう指示する
(4B)ことを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の情報処理装置。
【請求項5】
(5A) 前記撮像方法指示部は、
動画により前記本人確認書類を撮像するよう指示する
(5B)ことを特徴とする請求項2乃至請求項4のいずれかに記載の情報処理装置。
【請求項6】
(6A) 本人確認書類の画像データを取得する情報処理方法であって、
(6B) 撮像位置抽選部が、撮像位置の異なる本人確認書類撮像用の画面データと、動作を指示するためのデータとが各々複数格納された記憶部を参照し、前記撮像位置の異なる本人確認書類撮像用の画面データのいずれで前記本人確認書類を撮像させるかを抽選する工程と、
(6C) 撮像方法指示部が、前記撮像位置抽選部で抽選された位置で前記本人確認書類を撮像するように指示する工程と、
(6D) 撮像データ取得部が、前記撮像方法指示部による指示に基づいて撮像された前記本人確認書類の撮像データを取得する工程と、
(6E) 動作抽出部が、前記記憶部を参照し、前記記憶部から1以上の動作をランダムに抽出する工程と、
(6F) 指示タイミング決定部が、前記動作抽出部が抽出した1以上の動作を指示するタイミングをランダムに決定する工程と、
(6G) 動作指示部が、前記動作抽出部が抽出した1以上の動作を前記指示タイミング決定部で決定されたタイミングで指示する工程と、
(6A) を有することを特徴とする情報処理方法。
【請求項7】
(7A) 本人確認書類の画像データを取得する情報処理プログラムであって、
コンピュータを、
(7B) 撮像位置の異なる本人確認書類撮像用の画面データと、動作を指示するためのデータとが各々複数格納された記憶部を参照し、前記撮像位置の異なる本人確認書類撮像用の画面データのいずれで前記本人確認書類を撮像させるかを抽選する撮像位置抽選部、
(7C) 前記撮像位置抽選部で抽選された位置で前記本人確認書類を撮像するように指示する撮像方法指示部、
(7D) 前記撮像方法指示部による指示に基づいて撮像された前記本人確認書類の撮像データを取得する撮像データ取得部、
(7E) 前記記憶部を参照し、前記記憶部から1以上の動作をランダムに抽出する動作抽出部、
(7F) 前記動作抽出部が抽出した1以上の動作を指示するタイミングをランダムに決定する指示タイミング決定部、
(7G) 前記動作抽出部が抽出した1以上の動作を前記指示タイミング決定部で決定されたタイミングで指示する動作指示部、
(7A) として機能させることを特徴とする情報処理プログラム。
第4 取消理由通知に記載した取消理由の概要
本件訂正前の請求項1~7に係る特許について、令和5年9月5日付けで特許権者に通知した取消理由(取消理由1~3)の要旨は、次のとおりである。なお、取消理由1~3は、いずれも拡大先願に係るものであり、周知技術を示す文献として甲第5~7号証(令和5年6月22日の申立人による意見書(以下「申立人意見書」という。)の参考資料1,2,5)を提示している。
・取消理由1(先願1に基づく拡大先願)
本件特許の請求項1~7に係る発明は、その優先日前の特許出願であって、その出願後に出願公開がされた下記の特許出願(先願1)の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「先願1明細書等」という。)に記載された発明(以下「先願1発明」という。)と同一であり、かつ、本件特許の発明者が先願1に係る上記の発明をした者と同一ではなく、また、本件特許の出願の時において、その出願人が先願1の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができないから、これらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
記
先願1:特願2018-143650号(特開2020-21222号公報(申立人提出の甲第1号証)に係る出願)
・取消理由2(先願2に基づく拡大先願)
本件特許の請求項1及び6~7に係る発明は、その優先日前の特許出願であって、その出願後に下記の文献1によって特許法第41条第3項の規定により出願公開がされたものとみなされた下記の特許出願(先願2)の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「先願2明細書等」という。)に記載された発明(以下「先願2発明」という。)と同一であり、かつ、本件特許の発明者が先願2に係る上記の発明をした者と同一ではなく、また、本件特許の出願の時において、その出願人が先願2の出願人と同一でもないので、同法第29条の2の規定により特許を受けることができないから、これらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
記
先願2:特願2018-209404号(申立人提出の甲第2号証)
文献1:特開2020-77421号公報(申立人提出の甲第3号証)
・取消理由3(先願3に基づく拡大先願)
本件特許の請求項1及び6~7に係る発明は、その優先日前の特許出願であって、その出願後に出願公開がされた下記の特許出願(先願3)の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「先願3明細書等」という。)に記載された発明(以下「先願3発明」という。)と同一であり、かつ、本件特許の発明者が先願3に係る上記の発明をした者と同一ではなく、また、本件特許の出願の時において、その出願人が先願3の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができないから、これらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
記
先願3:特願2018-229170号(特開2020-91731号公報(申立人提出の甲第4号証)に係る出願)
第5 当審の判断
1 取消理由1(先願1に基づく拡大先願)
(1)本件特許に係る出願に対する先願1の地位について
先願1は、出願日が平成30年7月31日であり、公開日が令和2年2月6日であり、発明者がカンウィパー ラートサムルアイパン及び有定裕晶であり、出願人が株式会社メルカリである。
これに対し、本件特許は、出願日が平成30年12月19日であり、優先日が平成30年12月11日であり、発明者が中島正三であり、その出願の時の出願人が株式会社ダブルスタンダードである。
したがって、先願1は、本件特許の優先日前の出願であり、本件特許の出願後に出願公開がされたものであり、発明者が本件特許の発明者と同一でなく、出願人が本件特許の出願の時においてその出願人と同一でない出願である。
(2)先願1明細書等の記載
先願1明細書等には、以下の記載がある。なお、下線は当審にて付した(以下同様)。
「【0001】
本開示は、プログラム、情報処理方法、情報処理装置に関する。」
「【0008】
本開示は、本人確認時にオンラインで提出される画像が、その場で撮影されたものであることを担保することが可能な技術を提供することを目的とする。」
「【0020】
本開示において、サーバ110と、端末120とをそれぞれ区別する必要がない場合は、サーバ110と端末120とは、それぞれ情報処理装置200と表現されてもよい。なお、ネットワーク130に接続される情報処理装置200の数は限定されない。」
「【0050】
このとき、端末120は、身分証明書の撮影を行う画面に、身分証明書の撮影方法を指示する撮影ガイド(以下、「身分証明書の撮影ガイド」と言う。)を表示する。身分証明書の撮影方法には、撮影画像の枠内における身分証明書の位置や身分証明書の保持方法などが含まれる。身分証明書の撮影ガイドは、ユーザが身分証明書の画像を撮影する度に変更される。なお、撮影ガイドの具体例は後述するが、撮影ガイドは、身分証明書とユーザの身体における身分証明書を保持する部位との位置関係を示すものと定義されてもよい。」
「【0053】
第1実施形態によれば、身分証明書の撮影ガイドは、ユーザが身分証明書の画像を撮影する度に変更される。つまり、ユーザは、オンラインで提出する画像を事前に撮影しておいて後日提出するといった行為や、事前に撮影した画像を加工して提出するといった行為を行うことが困難になる。すなわち、第1実施形態によれば、オンラインで提出される画像が、その場で撮影されたものであること(ライブ性)を担保することが可能になるという効果が得られる。また、ユーザに指示する身分証明書の撮影ガイドの選択をサーバ110又は端末120が行うことになるので、ユーザに指示する撮影ガイドのランダム性を担保することができ、本人確認及びライブ性確認を行う際の確認精度を高めることが可能になるという効果が得られる。」
「【0067】
端末120は、入力部321と、通信部322と、表示制御部323と、撮影部324と、認証部325と、記憶部326とを有する。入力部321と、通信部322と、表示制御部323と、撮影部324と、認証部325とは、プロセッサ201が、記憶部326に格納されているプログラムを読み出して実行することで実現される。記憶部326は、メモリ202及び/又はストレージ203を用いて実現される。」
「【0103】
以上、図5を用いて説明した処理手順において、身分証明書の撮影ガイドを端末120の画面に表示するための表示データが、撮影ガイドのデータを一意に識別するための識別子と対応づけられて、予め端末120内の記憶部326に格納されていてもよい。この場合、サーバ110の撮影ガイド送信部314は、撮影ガイド指示情報として、撮影ガイドの識別子を端末120に送信するようにしてもよい。又は、身分証明書の撮影ガイドを端末120の画面に表示するための表示データがサーバ110の記憶部317に格納されており、サーバ110の撮影ガイド送信部314は、撮影ガイド指示情報として、撮影ガイドの表示データそのものを端末120に送信するようにしてもよい。識別子は表示データよりもデータサイズが小さいことから、前者の方法は、後者の方法と比較して、サーバ110及び端末120における通信データ量を削減することができる。一方、後者の方法は、前者の方法と比較して、表示データの更新をリアルタイムに行うことができる。
【0104】
図6は、実施形態に係る通信システム1の処理を示すシーケンスの一例を示す。図6を用いて、端末120の画面に表示させる身分証明書の撮影ガイドを、端末120が自ら決定する場合のシーケンス例について説明する。」
「【0106】
ステップS201で、表示制御部323は、撮影画面に表示する身分証明書(表面)の撮影ガイドを、複数のバリエーションの中から選択する。選択方法は、図5のステップS102で説明した、サーバ110の選択部313が行う方法と同一でよい。続いて、表示制御部323は、選択した身分証明書の表面の撮影ガイドを、カメラの出力画像を表示する撮影画面に重ねて表示する。撮影部324は、シャッターボタンが押下(又はタッチ)されたタイミングで、身分証明書の表面の画像を撮影する。
【0107】
ステップS202で、表示制御部323は、撮影画面に表示する身分証明書(裏面)の撮影ガイドを、複数のバリエーションの中から選択する。選択方法は、図5のステップS102で説明した、サーバ110の選択部313が行う方法と同一でよい。続いて、表示制御部323は、選択した身分証明書の裏面の撮影ガイドを、カメラの出力画像を表示する撮影画面に重ねて表示する。撮影部324は、シャッターボタンが押下(又はタッチ)されたタイミングで、身分証明書の裏面の画像を撮影する。」
「【0116】
<第1実施形態の撮影ガイドの表示態様>
図7及び図8は、端末120の撮影画面に表示される身分証明書の撮影ガイドの一例を示す。図7(a)及び図7(b)は、身分証明書を指で挟むように保持する場合の撮影ガイドの一例を示している。つまり、撮影ガイドは、ユーザの指と身分証明書とが接触する位置を示すものであってもよい。
【0117】
図7(a)の例では、表示制御部323は、表示エリアA100に、カメラの出力画像と、撮影画像の枠内において身分証明書の表面を配置すべき位置を指示するオブジェクトJ1-1と、身分証明書を持つ位置を指示するオブジェクトJ2-1とを表示する。(後略)」
「【0130】
<第1実施形態の第5実施例>
撮影部324は、ステップS104乃至ステップS107の処理手順で画像を撮影し、撮影した画像をステップS109の処理手順でサーバ110に送信するようにしたが、これに限定されない。例えば、撮影部324は、ユーザが端末120の画面を操作して身分証明書を撮影ガイドに合わせたり自身の顔を写そうとしている様子を、全て動画データ(ストリーミングデータ)としてサーバ110に送信するようにしてもよい。サーバ110は、静止画ではなく、動画データを用いて、本人確認及びライブ性確認を行うようにしてもよい。」
「【0185】
また、図12(b)に示すように、身分証明書の側面の撮影ガイドは、身分証明書の側面を確認可能な範囲で、身分証明書の側面と共に身分証明書の表面又は裏面も写るように、身分証明書を傾けて撮影すべきことを指示するオブジェクトJ1-4であってもよい。表示制御部323は、身分証明書を傾ける角度をランダムに選択してもよい。具体的には、表示制御部323は、回転軸Xを撮影画面に対して傾ける角度を所定の角度の範囲(例えば10~45度など)でランダムに選択し、回転軸Xを当該所定の角度傾けたオブジェクトJ1-4を表示するようにしてもよい。身分証明書の側面と共に身分証明書の表面及び裏面も写るようにすることで、側面をクレジットカードなど身分証明書以外のもので撮影するといった不正行為を抑止することができる。」
「【図7】
[図:0001410187000002.jpg]
」
(3)先願1発明
上記(2)の記載から、先願1には、以下の認定事項ア~オが記載されているといえる。
・認定事項ア
段落【0020】によれば、端末120は、情報処理装置200と表現されてもよいものであるから、先願1明細書等に記載の情報処理装置は、端末120であるといえる。
・認定事項イ
段落【0053】によれば、ユーザに指示する身分証明書の撮影ガイドの選択を端末120が行うことで、ユーザに指示する撮影ガイドのランダム性を担保することができるのであるから、先願1明細書等に記載の端末120は、ユーザに指示する身分証明書を複数の撮影ガイドから選択することで、ユーザに指示する撮影ガイドのランダム性を担保するものであるといえる。
・認定事項ウ
段落【0103】によれば、記憶部326は、撮影ガイドの表示データについて、撮影ガイドのデータを一意に識別するための識別子と対応づけられて、予め端末120内に格納するものであるから、先願1明細書等に記載の記憶部326は、撮影ガイドの表示データが、複数記憶されるものである。
・認定事項エ
段落【0116】~【0117】によれば、端末120の撮影画面に表示される身分証明書の撮影ガイドは、撮影画像の枠内において身分証明書の表面を配置すべき位置を指示するオブジェクトJ1-1と、身分証明書を持つ位置を指示するオブジェクトJ2-1とを表示し、【図7】によれば、「指の位置を星マークに合わせてIDカードを持ってください」などとの指示が複数種類表示されていることが読み取れるから、先願1明細書等に記載の撮影ガイドには、動作を指示するためのデータが含まれることが読み取れる。
・認定事項オ
段落【0130】によれば、撮影部324は、画像を撮影し、撮影した画像は、身分証明書を動画データとし、動画データを用いて、本人確認を行うようにしてもよいものであるから、先願1明細書等に記載の撮影部324は、身分証明書を動画データとして撮影するものである。
よって、上記(2)の記載事項及び上記認定事項ア~オによれば、先願1には、以下の発明(先願1発明)が記載されている。
なお、先願1発明を、当審にて(1a)~(1p)に分説した。以下、分説した発明特定事項を、それぞれ「発明特定事項1a」などという。なお、先願1明細書等における記載箇所又は各認定事項を、各発明特定事項の末尾の( )内に示した。
(先願1発明)
「(1a)情報処理装置であって(【0001】)、
(1b)本人確認時にオンラインで提出される画像が、その場で撮影されたものであることを担保するものであり(【0008】)、
(1c)情報処理装置は、端末120であり(認定事項ア)、
(1d)端末120は、表示制御部323と、撮影部324と、記憶部326とを有し(【0067】)、
(1e)記憶部326には、撮影ガイドの表示データが、複数記憶され(認定事項ウ)、
(1f)端末120は、ユーザに指示する身分証明書を複数の撮影ガイドから選択することで、ユーザに指示する撮影ガイドのランダム性を担保し(認定事項イ)、
(1g)端末120は、身分証明書の撮影を行う画面に、身分証明書の撮影方法を指示する撮影ガイドを表示し(【0050】)、
(1h)身分証明書の撮影方法には、撮影画像の枠内における身分証明書の位置が含まれるものであり(【0050】)、
(1i)撮影ガイドには、動作を指示するためのデータが含まれ(認定事項エ)、
(1j)端末120の画面に表示させる身分証明書の撮影ガイドを、端末120が自ら決定する場合において(【0104】)、
表示制御部323は、撮影画面に表示する身分証明書(表面)の撮影ガイドを、複数のバリエーションの中から選択し(【0106】)、
(1k)表示制御部323は、選択した身分証明書の表面の撮影ガイドを、カメラの出力画像を表示する撮影画面に重ねて表示し(【0106】)、
(1l)撮影部324は、身分証明書の表面の画像を撮影し(【0106】)、
(1m)表示制御部323は、撮影画面に表示する身分証明書(裏面)の撮影ガイドを、複数のバリエーションの中から選択し(【0107】)、
(1n)表示制御部323は、選択した身分証明書の裏面の撮影ガイドを、カメラの出力画像を表示する撮影画面に重ねて表示するものであり(【0107】)、
(1o)身分証明書の側面の撮影ガイドは、身分証明書の側面を確認可能な範囲で、身分証明書の側面と共に身分証明書の表面又は裏面も写るように、身分証明書を傾けて撮影すべきことを指示するものであってもよいものであり(【0185】)、
(1p)撮影部324は、身分証明書を動画データとして撮影してもよいものである(認定事項オ)
(1a)情報処理装置(【0001】)。」
(4)対比・判断
ア 本件発明1
(ア)発明特定事項1A
先願1発明は、発明特定事項1a及び1bによれば、本人確認時にオンラインで提出される画像が、その場で撮影されたものであることを担保する情報処理装置に係る発明であり、発明特定事項1cによれば、情報処理装置は、「端末120」であり、発明特定事項1dによれば、「端末120」は、撮影部324を有するものであり、発明特定事項1lによれば、撮影部324は、身分証明書の表面の画像を撮影するものである。
ここで、先願1発明の「身分証明書」、及び、撮影された「画像」のデータは、本件発明1の発明特定事項1Aにおける「本人確認書類」及び「画像データ」に相当する。
よって、先願1発明の「端末120」は、本件発明1の発明特定事項1Aである「本人確認書類の画像データを取得する情報処理装置」に相当する。
(イ)発明特定事項1B
先願1発明の「撮影ガイド」は、発明特定事項1gによれば、端末120の身分証明書の撮影を行う画面に、身分証明書の撮影方法を指示する際に表示されるものであるから、先願1発明の「撮影ガイド」は、本件発明1の発明特定事項1Bにおける「本人確認書類撮像用の画面データ」に相当する。
また、先願1発明は、発明特定事項1iによれば、「撮影ガイドには、動作を指示するためのデータが含まれ」、発明特定事項1dによれば、「端末120」は、「表示制御部323と、記憶部326とを有」し、発明特定事項1eによれば、「記憶部326には、撮影ガイドの表示データが、複数記憶され」るものであるから、先願1発明の「記憶部326」は、本件発明1の発明特定事項1Bにおける「本人確認書類撮像用の画面データと、動作を指示するためのデータとが各々複数格納された記憶部」に相当する。
ここで、先願1発明は、発明特定事項1jによれば、端末120の画面に表示させる身分証明書の撮影ガイドを、端末120が自ら決定する場合において、撮影画面に表示する身分証明書の撮影ガイドを複数のバリエーションの中から選択するものである。また、先願1発明は、発明特定事項1hによれば、先願1発明における身分証明書の撮影方法には、撮影画像の枠内における身分証明書の位置が含まれるものである。
そうすると、先願1発明の「撮影ガイド」は、「複数」あり、「撮像位置が異なる」ものである。
さらに、先願1発明は、発明特定事項1fによれば、「端末120は、ユーザに指示する身分証明書を複数の撮影ガイドから選択することで、ユーザに指示する撮影ガイドのランダム性を担保」するものであるから、撮影ガイドを抽選するものである。
よって、先願1発明の「端末120」は、本件発明1の発明特定事項1Bにおける「記憶部を参照し、前記撮像位置の異なる本人確認書類撮像用の画面データのいずれで前記本人確認書類を撮像させるかを抽選する撮像位置抽選部」を備えるものである。
したがって、先願1発明の「端末120」は、本件発明1の発明特定事項1Bである「撮像位置の異なる本人確認書類撮像用の画面データと、動作を指示するためのデータとが各々複数格納された記憶部を参照し、前記撮像位置の異なる本人確認書類撮像用の画面データのいずれで前記本人確認書類を撮像させるかを抽選する撮像位置抽選部」を備えるものである。
(ウ)発明特定事項1C
先願1発明の「撮影ガイド」は、上記(イ)のとおり、身分証明書の撮影方法を指示する際に表示されるものであり、複数のバリエーションの中から選択されるものであるから、本件発明1の発明特定事項1Cにおける「前記撮像位置抽選部で抽選された位置で前記本人確認書類を撮像するように指示する」ための画像である「画面データ」であるといえる。
よって、先願1発明において「撮影ガイド」を表示する「表示制御部323」は、本件発明1の発明特定事項1Cである「前記撮像位置抽選部で抽選された位置で前記本人確認書類を撮像するように指示する撮像方法指示部」に相当する。
(エ)発明特定事項1D
先願1発明の「表示制御部323」は、発明特定事項1kによれば、「選択した身分証明書の表面の撮影ガイド」を撮影画像に重ねて表示するものである。
そして、先願1発明の発明特定事項1dによれば、端末120は、「撮影部324」を有するものであり、発明特定事項1lにおいて「撮影部324」は、撮影ガイドの指示に基づいて身分証明書の画像を撮影するものといえるから、先願1発明の「身分証明書の画像」は、本件発明1の発明特定事項1Dにおける「本人確認書類の撮像データ」に相当する。
よって、先願1発明の「撮影部324」は、本件発明1の発明特定事項1Dである「前記撮像方法指示部による指示に基づいて撮像された前記本人確認書類の撮像データを取得する撮像データ取得部」に相当する。
(オ)一致点・相違点
上記(ア)~(エ)のとおりであるから、先願1発明と本件発明1とは、以下の一致点で一致し、以下の相違点で相違する。
(一致点)
「(1A) 本人確認書類の画像データを取得する情報処理装置であって、
(1B) 撮像位置の異なる本人確認書類撮像用の画面データと、動作を指示するためのデータとが各々複数格納された記憶部を参照し、前記撮像位置の異なる本人確認書類撮像用の画面データのいずれで前記本人確認書類を撮像させるかを抽選する撮像位置抽選部と、
(1C) 前記撮像位置抽選部で抽選された位置で前記本人確認書類を撮像するように指示する撮像方法指示部と、
(1D) 前記撮像方法指示部による指示に基づいて撮像された前記本人確認書類の撮像データを取得する撮像データ取得部と、
(1A) を備えることを特徴とする情報処理装置。」
(相違点)
本件発明1は、発明特定事項1E~1Gを備えるのに対し、先願1発明は、そのような構成を備えない点。
(カ)相違点についての判断
上記(オ)の相違点について検討する。
本件発明1の発明特定事項1Eである「前記記憶部を参照し、前記記憶部から1以上の動作をランダムに抽出する動作抽出部」、発明特定事項1Fである「前記動作抽出部が抽出した1以上の動作を指示するタイミングをランダムに決定する指示タイミング決定部」と、発明特定事項1Gである「前記動作抽出部が抽出した1以上の動作を前記指示タイミング決定部で決定されたタイミングで指示する動作指示部」は、いずれも、申立書の甲第1~4号証及び申立人意見書の参考資料1~5に記載されておらず、周知技術とはいえないものであり、また、新たな効果を奏するものであり、課題解決のための具体化手段における微差とは認められない。
よって、先願1発明と、本件発明1とは、上記(オ)の相違点において相違する。
イ 本件発明2
本件発明2の発明特定事項2Bは、「請求項1に記載の情報処理装置」であり、「請求項1に記載の情報処理装置」は、上記ア(カ)のとおり、先願1発明と上記ア(オ)の相違点で相違する。
よって、先願1発明と本件発明2とは、少なくとも、本件発明2が発明特定事項1E~1Gを備えるのに対し、先願1発明が当該発明特定事項に係る構成を備えない点で相違する。
ウ 本件発明3
本件発明3の発明特定事項3Bは、「請求項2に記載の情報処理装置」であり、「請求項2に記載の情報処理装置」は、上記イのとおり、先願1発明と上記ア(オ)の相違点で相違する。
よって、先願1発明と本件発明3とは、少なくとも、本件発明3が発明特定事項1E~1Gを備えるのに対し、先願1発明が当該発明特定事項に係る構成を備えない点で相違する。
エ 本件発明4
本件発明4の発明特定事項4Bは、「請求項3に記載の情報処理装置」であり、「請求項3に記載の情報処理装置」は、上記ウのとおり、先願1発明と上記ア(オ)の相違点で相違する。
よって、先願1発明と本件発明4とは、少なくとも、本件発明4が発明特定事項1E~1Gを備えるのに対し、先願1発明が当該発明特定事項に係る構成を備えない点で相違する。
オ 本件発明5
本件発明5の発明特定事項5Bは、「請求項2又は3に記載の情報処理装置」であり、「請求項2に記載の情報処理装置」及び「請求項3に記載の情報処理装置」は、それぞれ、上記イ~ウのとおり、先願1発明と、上記ア(オ)の相違点で相違する。
よって、先願1発明と本件発明5とは、少なくとも、本件発明5が発明特定事項1E~1Gを備えるのに対し、先願1発明が当該発明特定事項に係る構成を備えない点で相違する。
カ 本件発明6
本件発明6は、本件発明1の情報処理装置を、情報処理方法としたものであり、本件発明1と同様の発明特定事項を備えるものである。特に、本件発明1の発明特定事項1E~1Gは、本件発明6の発明特定事項6E~6Gに対応する。
一方で、先願1発明は、情報処理装置に係る発明であり、先願1明細書等の段落【0001】には、「本開示は、プログラム、情報処理方法、情報処理装置に関する。」と記載されていることから、先願1明細書等には、先願1発明の情報処理装置において行われる方法に対応する情報処理方法の発明も記載されているものと認められる。
しかし、先願1発明と本件発明1とは、上記ア(オ)のとおり、本件発明1が発明特定事項1E~1Gを備えるのに対し、先願1発明が当該発明特定事項に係る構成を備えない点で相違する。
よって、先願1発明と本件発明6とは、少なくとも、本件発明6が発明特定事項6E~6Gを備えるのに対し、先願1発明が当該発明特定事項に係る構成を備えない点で相違する。
キ 本件発明7
本件発明7は、本件発明1の情報処理装置を、コンピュータを機能させるプログラムとしたものであり、本件発明1と同様の発明特定事項を備えるものである。特に、本件発明1の発明特定事項1E~1Gは、本件発明7の発明特定事項7E~7Gに対応する。
一方で、先願1発明は、情報処理装置に係る発明であり、先願1明細書等の段落【0001】には、「本開示は、プログラム、情報処理方法、情報処理装置に関する。」と記載されていることから、先願1明細書等には、先願1発明の情報処理装置におけるコンピュータを機能させるプログラムの発明も記載されていると認められる。
しかし、先願1発明と本件発明1とは、上記ア(オ)のとおり、本件発明1が発明特定事項1E~1Gを備えるのに対し、先願1発明が当該発明特定事項に係る構成を備えない点で相違する。
よって、先願1発明と本件発明7とは、少なくとも、本件発明7が発明特定事項7E~7Gを備えるのに対し、先願1発明が当該発明特定事項に係る構成を備えない点で相違する。
(5)取消理由1のまとめ
上記(4)のとおり、本件発明1~7は、先願1発明と上記の点で相違するから、特許法第29条の2の規定に該当しない。
2 取消理由2(先願2に基づく拡大先願)
(1)本件特許に係る出願に対する先願2の地位について
先願2は、出願日が平成30年11月7日であり、公開日が特許法第41条第3項の規定により、先願2を優先権の基礎とする文献1の公開日である令和2年5月21日とみなされるものであり、発明者が萩原弘佳、木村雅則及び松田薫平であり、出願人が大日本印刷株式会社である。
これに対し、本件特許は、上記1(1)でも述べたとおり、出願日が平成30年12月19日であり、優先日が平成30年12月11日であり、発明者が中島正三であり、その出願の時の出願人が株式会社ダブルスタンダードである。
したがって、先願2は、本件特許の優先日前の出願であり、本件特許の出願後に出願公開がされたとみなされるものであり、発明者が本件特許の発明者と同一でなく、出願人が本件特許の出願の時においてその出願人と同一でない出願である。
(2)先願2明細書等の記載、及び、文献1による公開
先願2明細書等には、以下の記載がある。また、これらの記載は、全て文献1によって公開されている。なお、以下に摘記した記載において、先願2の段落番号と文献1の段落番号とは、一致している。
「【0001】
本発明は、本人確認処理に用いる携帯端末、本人確認サーバ、本人確認システム及びプログラムに関する。」
「【0014】
携帯端末1は、例えば、サービス提供サーバ7によるサービスの提供を受けようとする者が所有する端末である。以下、サービスの提供を受けようとする者のことを、ユーザという。携帯端末1は、例えば、スマートフォンやタブレットに代表されるコンピュータの機能を併せ持った携帯型の装置である。
図2に示すように、携帯端末1は、制御部10と、記憶部20と、カメラ23(撮影部)と、タッチパネルディスプレイ25と、通信インタフェース部29とを備える。
【0015】
制御部10は、携帯端末1の全体を制御するCPU(中央処理装置)である。制御部10は、記憶部20に記憶されているオペレーティングシステム(OS)や各種アプリケーションプログラムを適宜読み出して実行することにより、上述したハードウェアと協働し、各種機能を実行する。
制御部10は、アプリ起動部11と、本人確認部12と、本人認証部17と、サービス開始判定部18(サービス開始判定手段)とを備える。
【0016】
アプリ起動部11は、取引アプリ21aを実行した際に、取引アプリ21aに対応して処理を行うサービス提供サーバ7から本人認証の要求を受信して、本人確認アプリ21b(プログラム)を起動させる。
本人確認部12は、本人確認処理を行う制御部である。本人確認部12は、本人確認画像処理部13(本人確認画像取得手段、顔写真画像抽出手段)と、ガイド画像出力部14(第2のガイド画像出力手段)と、保存画像処理部15(保存画像取得手段、第2の画像確認手段)と、照合画像処理部16(照合画像取得手段、照合用画像送信手段)とを備える。」
「【0018】
ガイド画像出力部14は、本人確認書類と、本人確認書類を所持したユーザ(所持者)の顔との両方を含む画像を取得するためのガイド画像(第2のガイド画像)を、タッチパネルディスプレイ25に出力する。ガイド画像は、配置範囲を示した補助的な画像であり、本人確認書類と、ユーザの顔とを、指示通りの位置に配置した画像を取得するためのガイドとなるものである。」
「【0022】
記憶部20は、制御部10が各種の処理を実行するために必要なプログラム、データ等を記憶するための半導体メモリ素子等の記憶領域である。
記憶部20は、プログラム記憶部21を備える。プログラム記憶部21は、各種のアプリケーションプログラム(以下、アプリケーションプログラムのことを、アプリケーション、アプリ、又はプログラム等という。)を記憶する記憶領域である。プログラム記憶部21は、取引アプリ21aと、本人確認アプリ21bとを記憶している。なお、本実施形態では、以下において、取引アプリ21aと、本人確認アプリ21bとを用いるものを説明するが、2つのアプリの機能が一体になったアプリを用いるものであってもよい。」
「【0040】
図5のS30において、携帯端末1の制御部10(本人確認画像処理部13)は、本人確認画像処理を行う。
ここで、本人確認画像処理について、図6に基づき説明する。
図6のS40において、携帯端末1の制御部10は、アウトカメラ23bを起動させ、タッチパネルディスプレイ25にアウトカメラ23bのスルー画像(撮影範囲の画像)を表示させて、本人確認書類を撮影可能にする。そして、ユーザが、本人確認書類をスルー画像に写り込むようにして、図示しない撮影ボタンをタップすることで、制御部10は、本人確認画像を取得する。」
「【0045】
ここで、制御部10は、予め複数用意した書類位置領域が異なるガイド画像から、1つのガイド画像を無作為(ランダム)に指定して、タッチパネルディスプレイ25に表示させてもよい。ここで、書類位置領域は、顔位置領域に重ならない位置に設けられる。また、書類位置領域は、本人確認書類が視認できる程度の所定以上の大きさの領域である。
なお、ガイド画像は、静止画像に限定するものではなく、動画であってもよい。さらに、書類位置領域の位置が異なるガイド画像としては、書類位置領域の位置が、撮影位置に対して上下左右方向に異なるものの他、撮影位置に対して奥行方向が異なるものを含む。
【0046】
図7のS52において、制御部10(保存画像処理部15)は、インカメラ23aを起動させ、タッチパネルディスプレイ25にインカメラ23aのスルー画像を、ガイド画像と共に表示させる。
ユーザは、図9に示すように、自分の顔がガイド画像81の顔位置領域81aに写りこむようにし、また、本人確認書類がガイド画像81の書類位置領域81bに写りこむように顔の位置及び本人確認書類の位置を調整する。そして、ユーザが、撮影ボタン81cをタップすることで、制御部10は、インカメラ23aが撮影したユーザの顔と、本人確認書類とを含む保存画像を取得する。」
「【図9】
[図:0001410187000003.jpg]
」
(3)先願2発明
上記(2)の記載から、先願2には、以下に示す認定事項カが記載されているといえる。
・認定事項カ
上記(2)の図9によれば、「ガイド画像81」に、「枠に合わせて撮影してください」と表示されており、この表示は、撮影時の動作を指示していると言えるから、先願2には、ガイド画像のデータとして、動作を指示するためのデータを含むことが記載されていると言える。
上記(2)の記載事項及び上記認定事項によれば、先願2には、以下の発明(先願2発明)が記載されている。
なお、先願2発明を、当審にて(2a)~(2k)に分説した。以下、分説した発明特定事項を、それぞれ「発明特定事項2a」などという。なお、先願2明細書等における記載箇所又は認定事項を、各発明特定事項の末尾の( )内に示した。
(先願2発明)
「(2a)本人確認処理に用いる携帯端末であって(【0001】)、
(2b)携帯端末1は、制御部10と、記憶部20と、カメラ23と、タッチパネルディスプレイ25とを備えており(【0014】)、
(2c)携帯端末1の制御部10は、本人確認書類が写り込む本人確認画像を取得し(【0040】)、
(2d)制御部10は、本人確認部12を備え(【0015】)、
(2e)本人確認部12は、ガイド画像出力部14と、保存画像処理部15とを備え(【0016】)、
(2f)ガイド画像出力部14は、本人確認書類を含む画像を取得するためのガイド画像を、タッチパネルディスプレイ25に出力し(【0018】)、
(2g)ガイド画像は、本人確認書類を、指示どおりの位置に配置した画像を取得するためのガイドであり(【0018】)、
(2h)ガイド画像のデータとして、動作を指示するためのデータを含み(認定事項カ)、
(2i)記憶部20は、制御部10が各種の処理を実行するために必要なデータを記憶し(【0022】)、
(2j)制御部10は、予め複数用意した書類位置領域が異なるガイド画像から、1つのガイド画像を無作為(ランダム)に指定し(【0045】)、
(2k)制御部10(保存画像処理部15)は、インカメラ23aが撮影した本人確認書類を含む保存画像を取得する(【0046】)
(2a)携帯端末(【0005】)。」
(4)対比・判断
ア 本件発明1
(ア)発明特定事項1A
先願2発明は、発明特定事項2aによれば、本人確認を行うための「携帯端末」であって、発明特定事項2bによれば、先願2発明の「携帯端末1」は、制御部10と、カメラ23を備えるものであり、発明特定事項2cによれば、先願2発明の「携帯端末1」の制御部10は、本人確認書類が写り込む本人確認画像を取得するものである。ここで、先願2発明の「本人確認画像」は、本人確認書類が写り込むものであるから、本件発明1の「本人確認書類の画像データ」に相当する。
よって、先願2発明の「携帯端末1」は、本件発明1の発明特定事項1Aである「本人確認書類の画像データを取得する情報処理装置」に相当する。
(イ)発明特定事項1B
先願2発明の「制御部10」は、発明特定事項2dによれば、本人確認部12を備え、発明特定事項2eによれば、本人確認部12が、ガイド画像出力部14を備えるものである。
そして、先願2発明の「ガイド画像」は、発明特定事項2gによれば、本人確認書類を、指示どおりの位置に配置した画像を取得するためのガイドであり、発明特定事項2jによれば、予め複数用意され、それぞれ書類位置領域が異なり、発明特定事項2fによれば、タッチパネルディスプレイ25に出力され、発明特定事項2hによれば、ガイド画像のデータとして、動作を指示するためのデータを含むものである。
そうすると、先願2発明の「ガイド画像」は、本件発明1の発明特定事項1Bにおける「撮像位置の異なる本人確認書類撮像用の画面データと、動作を指示するためのデータ」に相当する。
また、先願2発明の携帯端末1は、発明特定事項2bによれば、「記憶部20」を備えるものであり、発明特定事項2iによれば、先願2発明の「記憶部20」は、制御部10が各種の処理を実行するために必要なデータを記憶するものである。
ここで、先願2発明の「ガイド画像」は、発明特定事項2i「制御部10が各種の処理を実行するために必要なデータ」であると認められるから、「記憶部20」に記憶されているものと認められる。
よって、先願2発明の「記憶部20」は、本件発明1の「撮像位置の異なる本人確認書類撮像用の画面データと、動作を指示するためのデータとが各々複数格納された記憶部」に相当する。
さらに、先願2発明の「制御部10」は、ガイド画像の指定に関し、発明特定事項2jによれば、予め複数用意した中から、1つを無作為(ランダム)に指定するものである。
ここで、先願2発明の予め複数用意した中から、1つを無作為(ランダム)に指定することは、抽選することと認められる。
よって、先願2発明の「制御部10」は、本件発明1の発明特定事項1Bにおける「記憶部を参照し、前記撮像位置の異なる本人確認書類撮像用の画面データのいずれで前記本人確認書類を撮像させるかを抽選する撮像位置抽選部」に相当する。
したがって、先願2発明の「制御部10」は、本件発明1の発明特定事項1Bである「撮像位置の異なる本人確認書類撮像用の画面データと、動作を指示するためのデータとが各々複数格納された記憶部を参照し、前記撮像位置の異なる本人確認書類撮像用の画面データのいずれで前記本人確認書類を撮像させるかを抽選する撮像位置抽選部」に相当する。
(ウ)発明特定事項1C
先願2発明の「ガイド画像」は、上記(イ)のとおり、本人確認書類を、指示どおりの位置に配置した画像を取得するためのガイドであり、予め複数用意され、それぞれ書類位置領域が異なるものであるから、本件発明1の発明特定事項1Cにおける「前記撮像位置抽選部で抽選された位置で前記本人確認書類を撮像するように指示する」ための画像である「画面データ」であるといえる。
よって、先願2発明の「ガイド画像出力部14」は、本件発明1の発明特定事項1Cである「前記撮像位置抽選部で抽選された位置で前記本人確認書類を撮像するように指示する撮像方法指示部」に相当する。
(エ)発明特定事項1D
先願2発明の「ガイド画像出力部14」は、上記(ウ)のとおり、本人確認書類を、指示どおりの位置に配置した画像を取得するためのガイド画像を表示するものである。
そして、先願2発明は、発明特定事項2dによれば、制御部10が、本人確認部12を備えるものであり、発明特定事項2eによれば、本人確認部12が、保存画像処理部15を備えるものであり、発明特定事項2kにおいて、制御部10の「保存画像処理部15」が、ガイド画像の指示どおりの位置に配置した画像として、インカメラ23aが撮影した本人確認書類を含む保存画像を取得するものといえる。
ここで、先願2発明の「本人確認書類を含む保存画像」は、本件発明1の発明特定事項1Dにおける「本人確認書類の撮像データ」に相当する。
よって、先願2発明の「保存画像処理部15」は、本件発明1の発明特定事項1Dである「前記撮像方法指示部による指示に基づいて撮像された前記本人確認書類の撮像データを取得する撮像データ取得部」に相当する。
(オ)一致点・相違点
上記(ア)~(エ)のとおりであるから、先願2発明と本件発明1とは、以下の一致点で一致し、以下の相違点で相違する。
(一致点)
「(1A) 本人確認書類の画像データを取得する情報処理装置であって、
(1B) 撮像位置の異なる本人確認書類撮像用の画面データと、動作を指示するためのデータとが各々複数格納された記憶部を参照し、前記撮像位置の異なる本人確認書類撮像用の画面データのいずれで前記本人確認書類を撮像させるかを抽選する撮像位置抽選部と、
(1C) 前記撮像位置抽選部で抽選された位置で前記本人確認書類を撮像するように指示する撮像方法指示部と、
(1D) 前記撮像方法指示部による指示に基づいて撮像された前記本人確認書類の撮像データを取得する撮像データ取得部と、
(1A) を備えることを特徴とする情報処理装置。」
(相違点)
本件発明1は、発明特定事項1E~1Gを備えるのに対し、先願2発明は、そのような構成を備えない点。
(カ)相違点についての判断
上記(オ)の相違点について検討する。
本件発明1の発明特定事項1Eである「前記記憶部を参照し、前記記憶部から1以上の動作をランダムに抽出する動作抽出部」、発明特定事項1Fである「前記動作抽出部が抽出した1以上の動作を指示するタイミングをランダムに決定する指示タイミング決定部」と、発明特定事項1Gである「前記動作抽出部が抽出した1以上の動作を前記指示タイミング決定部で決定されたタイミングで指示する動作指示部」は、いずれも、申立書の甲第1~4号証及び申立人意見書の参考資料1~5に記載されておらず、周知技術とはいえないものであり、また、新たな効果を奏するものであり、課題解決のための具体化手段における微差とは認められない。
よって、先願2発明と本件発明1は、上記(オ)の相違点において相違する。
イ 本件発明6
本件発明6は、本件発明1の情報処理装置を、情報処理方法としたものであり、本件発明1と同様の発明特定事項を備えるものである。特に、本件発明1の発明特定事項1E~1Gは、本件発明6の発明特定事項6E~6Gに対応する。
一方で、先願2発明は、携帯端末に係る発明であるが、先願2には、先願2発明の携帯端末において行われる方法の発明も記載されているものと認められる。
しかし、先願2発明と本件発明1とは、上記ア(カ)のとおり、本件発明1が発明特定事項1E~1Gを備えるのに対し、先願2発明が当該発明特定事項に係る構成を備えない点で相違する。
よって、先願2発明と本件発明6とは、少なくとも、本件発明6が発明特定事項6E~6Gを備えるのに対し、先願2発明が当該発明特定事項に係る構成を備えない点で相違する。
ウ 本件発明7
本件発明7は、本件発明1の情報処理装置を、コンピュータを機能させるプログラムとしたものであり、本件発明1と同様の発明特定事項を備えるものである。特に、本件発明1の発明特定事項1E~1Gは、本件発明7の発明特定事項7E~7Gに対応する。
一方で、先願2発明は、携帯端末に係る発明であり、先願2明細書等の段落【0001】には、「本発明は、本人確認処理に用いる携帯端末…及びプログラムに関する」と記載されていることから、先願2には、先願2発明の携帯端末におけるコンピュータを機能させるプログラムの発明も記載されていると認められる。
しかし、先願2発明と本件発明1とは、上記ア(カ)のとおり、本件発明1が発明特定事項1E~1Gを備えるのに対し、先願2発明が当該発明特定事項に係る構成を備えない点で相違する。
よって、先願2発明と本件発明7とは、少なくとも、本件発明7が発明特定事項7E~7Gを備えるのに対し、先願2発明が当該発明特定事項に係る構成を備えない点で相違する。
(5)取消理由2のまとめ
上記(4)のとおり、本件発明1及び6~7は、先願2発明と上記の点で相違するから、特許法第29条の2の規定に該当しない。
3 取消理由3(先願3に基づく拡大先願)
(1)本件特許に係る出願に対する先願3の地位について
先願3は、出願日が平成30年12月6日であり、公開日が令和2年6月11日であり、発明者が菊池梓、荘野和也及び坪井有花であり、出願人が株式会社TRUSTDOCKである。
これに対し、本件特許は、上記1(1)でも述べたとおり、出願日が平成30年12月19日であり、優先日が平成30年12月11日であり、発明者が中島正三であり、その出願の時の出願人が株式会社ダブルスタンダードである。
したがって、先願3は、本件特許の優先日前の出願であり、本件特許の出願後に出願公開がされたものであり、発明者が本件特許の発明者と同一でなく、出願人が本件特許の出願の時においてその出願人と同一でない出願である。
(2)先願3明細書等の記載
先願3明細書等には、以下の記載がある。
「【0001】
本発明は、本人確認に用いる情報を取得するための、情報処理装置、情報処理方法、プログラムならびに情報処理サーバに関する。」
「【0011】
<情報処理システムの構成>
図1を参照して、本実施形態に係る情報処理システム10の構成について説明する。情報処理システム10は、撮影された画像を用いた本人確認のためのシステムである。スマートフォン100において撮影された身分証の画像と顔画像とがネットワーク111を介して情報処理サーバ110に送信される。身分証は、本人確認のために使用することが可能なカードであり、例えば、免許証がふくまれる。本実施形態の例では、身分証の一例として免許証を扱う場合を例に説明するが、身分証は、在留カードや保険証を含んでもよい。」
「【0017】
制御部202は、CPU210及びRAM211を含み、例えば記録部207に記録されたプログラムをRAM211に展開し、CPU210が実行することにより、スマートフォン100内の各部の動作を制御する。また、制御部202は、後述する身分証撮影処理および撮影事実の確認処理や顔画像の撮影を実行する。このとき制御部202は、撮像デバイスを用いて画像を撮影する撮影手段、撮影手段が撮影して得られる画像から後述する特定の画像を取得する画像取得を制御する制御手段として機能する。また、表示部206に対する表示を制御するための表示制御手段などの各手段としても機能する。」
「【0050】
<スマートフォンにおける撮影事実の確認処理の動作>
次に、スマートフォン100における撮影事実の確認処理の動作について、図9を参照して説明する。S901において、制御部202は、身分証の所定部位(本実施形態では顔写真)を上下左右に移動させるための移動順を決定する。例えば、記録部207に予め記録しておいた複数の移動順の組み合わせを読み出して、ランダムに選択した移動順を決定する。或いは、情報処理サーバ110から当該移動順を取得してもよい。S902において、制御部202は、撮影開始の指示があったかを判定する。例えば、図10(a)に示す移動確認画面を表示部206に表示したうえで、ユーザ操作によって不図示の開始ボタンが押下されたかを判定する。撮影開始の指示があったと判定した場合、S903に進み、そうでない場合はS902に戻る。
【0051】
S903において、制御部202は、対象位置で顔写真を検出したかを判定する。例えば、制御部202は、図10(a)に示す移動確認画面のカード部位検出枠に移動順1~4を表示させている。また、制御部202は、移動順が1であるカード部位検出枠をアクティブ表示にしたアクティブなカード部位検出枠1001を表示する。図10(a)の例では、ユーザは身分証1004の所定部位(例えば顔写真)がアクティブなカード部位検出枠1001と重畳するように身分証を移動させる。また、制御部202は、表示部206に、ユーザが身分証を移動させる動作を撮影して得られる画像を表示している。テキストガイド1003は、ユーザが身分証をカード部位検出枠1001とカード部位検出枠1002とを番号順に移動させることを示す。制御部202は、撮影される画像において、アクティブなカード部位検出枠1001の位置で顔写真を検出した場合に、S904に進み、そうでない場合にはS903の処理を継続する。
【0052】
S904において、制御部202は、ユーザが身分証をアクティブなカード部位検出枠1001に移動させた動作を撮影した画像を取得し、図10(b)に示すチェックマーク1005を表示する。ユーザが身分証を移動させて複数のカード部位検出枠において顔写真が検出された場合、制御部202は、チェックマーク同士を結ぶ線を更に表示部206に表示させる。」
「【図10】
[図:0001410187000004.jpg]
」
(3)先願3発明
上記(2)によれば、先願3明細書等には、以下の先願3発明が記載されている。
なお、先願3発明を、当審にて(3a)~(3f)に分説した。以下、分説した発明特定事項を、それぞれ「発明特定事項3a」などという。
(先願3発明)
「(3a)情報処理システム10は、撮影された画像を用いた本人確認のためのシステムであり、スマートフォン100において身分証の画像を撮影し(【0011】)、
(3b)制御部202は、スマートフォン100内の各部の動作を制御し(【0017】)、
(3c)制御部202は、身分証の所定部位を上下左右に移動させるための移動順を決定する際に、記録部207に予め記録しておいた複数の移動順の組み合わせを読み出して、ランダムに選択した移動順を決定するものであり(【0050】)、
(3d)制御部202は、移動確認画面のカード部位検出枠に移動順1~4を表示させ、移動順が1であるカード部位検出枠をアクティブ表示にしたアクティブなカード部位検出枠1001を表示するものであり(【0051】)、
(3e)テキストガイド1003は、ユーザが身分証をカード部位検出枠1001とカード部位検出枠1002とを番号順に移動させることを示すものであり(【0051】、【図10】)、
(3f)制御部202は、身分証を撮影した画像を取得する(【0052】)
(3a)スマートフォン100(【0011】)。」
(4)対比・判断
ア 本件発明1
(ア)発明特定事項1A
先願3発明は、発明特定事項3aによれば、撮影された画像を用いた本人確認のための情報処理システム10であり、「スマートフォン100」において身分証の画像を撮影するものであるから、先願3発明の「スマートフォン100」は、本件発明1の発明特定事項1Aである「本人確認書類の画像データを取得する情報処理装置」に相当する。
(イ)発明特定事項1B
先願3発明の「制御部202」は、発明特定事項3bによれば、スマートフォン100内の各部の動作を制御するものであり、発明特定事項3dによれば、移動確認画面のカード部位検出枠に移動順1~4を表示させ、移動順が1であるカード部位検出枠をアクティブ表示にしたアクティブなカード部位検出枠1001を表示するものである。
そうすると、先願3発明のスマートフォン100の制御部202は、カード部位検出枠1001を、異なる複数の位置で表示するものと認められる。
また、発明特定事項3eによれば、「テキストガイド1003は、ユーザが身分証をカード部位検出枠1001とカード部位検出枠1002とを番号順に移動させることを示す」ものである。
よって、先願3発明の「カード部位検出枠1001」及び「テキストガイド1003」を示すデータは、本件発明1の発明特定事項1Bにおける「撮像位置の異なる本人確認書類撮像用の画面データと、動作を指示するためのデータ」に相当する。
また、先願3明細書等には、カード部位検出枠1001及びテキストガイド1003に係る表示用のデータを記憶する構成について記載されていないが、スマートフォン100に記憶されることは自明であると認められる。
よって、先願3発明のスマートフォン100において、異なる複数の位置で表示されるカード部位検出枠1001及びテキストガイド1003に係る表示用のデータを記憶する構成と、本件発明1の「記憶部」は、発明特定事項1Bにおける「撮像位置の異なる本人確認書類撮像用の画面データと、動作を指示するためのデータとが各々複数格納された記憶部」に相当する。
そして、先願3発明の「制御部202」は、発明特定事項3cによれば、記録部207に予め記録しておいた身分証の所定部位を上下左右に移動させるための複数の移動順の組み合わせを読み出して、ランダムに選択した移動順を決定するものである。
ここで、先願3発明において、記録部207に予め記録された「複数の移動順の組み合わせ」は、上述したカード部位検出枠1001及びテキストガイド1003に係る表示用のデータと関連付けて記憶されていることは、自明であると認められる。
また、移動順をランダムに選択して決定することは、本件発明1の発明特定事項1Bにおける画像データを「抽選する」動作に相当する。
よって、先願3発明の「制御部202」における上記の動作は、本件発明1の発明特定事項1Bにおける「記憶部を参照」して「前記撮像位置の異なる本人確認書類撮像用の画面データのいずれで前記本人確認書類を撮像させるかを抽選する」動作に相当する。
したがって、先願3発明の「制御部202」は、本件発明1の発明特定事項1Bである「撮像位置の異なる本人確認書類撮像用の画面データが複数格納された記憶部を参照し、前記撮像位置の異なる本人確認書類撮像用の画面データのいずれで前記本人確認書類を撮像させるかを抽選する撮像位置抽選部」に相当する。
(ウ)発明特定事項1C
発明特定事項3eによれば、先願3発明の「テキストガイド1003」は、ユーザが身分証をカード部位検出枠1001とカード部位検出枠1002とを番号順に移動させることを示すものであるから、本件発明1の発明特定事項1Cにおける「前記撮像位置抽選部で抽選された位置で前記本人確認書類を撮像するように指示する」ものに相当する。
よって、先願3発明の「テキストガイド1003」を表示する構成は、本件発明1の発明特定事項1Cである「前記撮像位置抽選部で抽選された位置で前記本人確認書類を撮像するように指示する撮像方法指示部」に相当する。
(エ)発明特定事項1D
先願3発明は、発明特定事項3fによれば、「制御部202」が、身分証を撮影した画像を取得するものであるから、先願3発明の「制御部202」は、本件発明1の発明特定事項1Dである「前記撮像方法指示部による指示に基づいて撮像された前記本人確認書類の撮像データを取得する撮像データ取得部」に相当する。
(オ)一致点・相違点
上記(ア)~(エ)のとおりであるから、先願3発明と本件発明1とは、以下の一致点で一致し、以下の相違点で相違する。
(一致点)
「(1A) 本人確認書類の画像データを取得する情報処理装置であって、
(1B) 撮像位置の異なる本人確認書類撮像用の画面データと、動作を指示するためのデータとが各々複数格納された記憶部を参照し、前記撮像位置の異なる本人確認書類撮像用の画面データのいずれで前記本人確認書類を撮像させるかを抽選する撮像位置抽選部と、
(1C) 前記撮像位置抽選部で抽選された位置で前記本人確認書類を撮像するように指示する撮像方法指示部と、
(1D) 前記撮像方法指示部による指示に基づいて撮像された前記本人確認書類の撮像データを取得する撮像データ取得部と、
(1A) を備えることを特徴とする情報処理装置。」
(相違点)
本件発明1は、発明特定事項1E~1Gを備えるのに対し、先願3発明は、そのような構成を備えない点。
(カ)相違点についての判断
上記(オ)の相違点について検討する。
本件発明1の発明特定事項1Eである「前記記憶部を参照し、前記記憶部から1以上の動作をランダムに抽出する動作抽出部」、発明特定事項1Fである「前記動作抽出部が抽出した1以上の動作を指示するタイミングをランダムに決定する指示タイミング決定部」と、発明特定事項1Gである「前記動作抽出部が抽出した1以上の動作を前記指示タイミング決定部で決定されたタイミングで指示する動作指示部」は、いずれも、申立書の甲第1~4号証及び申立人意見書の参考資料1~5に記載されておらず、周知技術とはいえないものであり、また、新たな効果を奏するものであり、課題解決のための具体化手段における微差とは認められない。
よって、先願3発明と、本件発明1とは、上記(オ)の相違点において相違する。
イ 本件発明6
本件発明6は、本件発明1の情報処理装置を、情報処理方法としたものであり、本件発明1と同様の発明特定事項を備えるものである。特に、本件発明1の発明特定事項1E~1Gは、本件発明6の発明特定事項6E~6Gに対応する。
一方で、先願3発明は、スマートフォン100に係る発明であるが、先願3明細書等の【0001】には、「本発明は、本人確認に用いる情報を取得するための、情報処理装置、情報処理方法、プログラムならびに情報処理サーバに関する。」と記載されているから、先願3発明のスマートフォン100において行われる方法の発明も記載されているものと認められる。
しかし、先願3発明と本件発明1とは、上記ア(カ)のとおり、本件発明1が発明特定事項1E~1Gを備えるのに対し、先願3発明が当該発明特定事項に係る構成を備えない点で相違する。
よって、先願3発明と本件発明6とは、少なくとも、本件発明6が発明特定事項6E~6Gを備えるのに対し、先願3発明が当該発明特定事項に係る構成を備えない点で相違する。
ウ 本件発明7
本件発明7は、本件発明1の情報処理装置を、コンピュータを機能させるプログラムとしたものであり、本件発明1と同様の発明特定事項を備えるものである。特に、本件発明1の発明特定事項1E~1Gは、本件発明7の発明特定事項7E~7Gに対応する。
一方で、先願3発明は、スマートフォン100に係る発明であるが、先願3明細書等の【0001】には、「本発明は、本人確認に用いる情報を取得するための、情報処理装置、情報処理方法、プログラムならびに情報処理サーバに関する。」と記載されているから、先願3発明のスマートフォン100において行われる動作を実現するプログラムの発明も記載されているものと認められる。
しかし、先願3発明と本件発明1とは、上記ア(カ)のとおり、本件発明1が発明特定事項1E~1Gを備えるのに対し、先願3発明が当該発明特定事項に係る構成を備えない点で相違する。
よって、先願3発明と本件発明7とは、少なくとも、本件発明7が発明特定事項7E~7Gを備えるのに対し、先願3発明が当該発明特定事項に係る構成を備えない点で相違する。
(5)取消理由3のまとめ
上記(4)のとおり、本件発明1及び6~7は、先願3発明と上記の点において相違するから、特許法第29条の2の規定に該当しない。
4 取消理由のまとめ
上記1~3のとおり、本件発明1~7は、特許法第29条の2の規定に該当しない。
また、他に取消理由を発見しない。
よって、これらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当せず、取り消すことはできない。
第6 取消理由において採用しなかった特許異議申立書の申立理由について
1 特許法第36条第6項第2号(明確性)
特許異議申立書の3(4-6-1)によれば、「本件の請求項1には「前記撮像位置の異なる本人確認書類撮像用の画面データのいずれで前記本人確認書類を撮像させるかを抽選する」と記載されている。しかし、当該記載を普通に読むと、複数の撮像位置の中から一つだけを特定し、当該撮像位置だけで本人確認書類を撮像させることを意味するのか、複数の撮像位置で本人確認書類を撮像させることを意味するのか、あるいは両方であるのか、明確に特定することができない。」「したがって、本件の請求項1に係る発明は明確でない。請求項1を直接的又は間接的に引用して記載する請求項2~5、並びに同様の記載を有する請求項6及び7に係る発明も明確でない。」としている。
しかし、本件特許の請求項1に係る発明(本件発明1)は、本人確認書類を撮像させる画面データを「抽選する」ものとのみ特定しており、抽選により選ばれる画像データ(撮像位置)が「一つだけ」なのか「複数」なのかを問わないものであることは、明らかである。
よって、本件特許は、特許法第36条第6項第2号の規定に違反するものではない。
2 特許法第36条第6項第1号(サポート要件)
(1)特許異議申立書に記載された理由
特許異議申立書の3(4-6-2)によれば、「本件の請求項1~7に記載される発明は、…(中略)…複数の撮像位置で本人確認書類を撮像させることを含むものである。」「しかしながら、…(中略)…本件の請求項1~7に係る発明は、発明の詳細な説明に記載されたものではない。」(以下「サポート要件の理由1」という。)としている。
また、「本件特許の発明の詳細な説明に記載された発明の課題は、本件明細書の段落番号0004によると、「特許文献1に開示される認証方法では、ユーザの口の動き及びユーザが発声した音声の音声データを解析することでユーザがフレーズを発生しているか否かを判定するため、なりすましを防止できるとしている。しかしながら、本人確認の信頼性において更なる向上の余地がある。」とされている。」「しかしながら、本件発明は、本人でないものが他人の本人確認書類を持っていれば、抽選され指定された位置で、他人の本人確認書類を撮影できる、「特許文献1」(特開2011-215942号公報)に記載された発明であれば、本人でない者が発生した音声を解析すれば、なりすましを防止できることと比べて、本件発明は、なりすましを防止することはできず、「本人確認の信頼性において更なる向上」を図っていることにはならない。この点は、本件発明が本人確認書類の表裏を撮影するように指示したり、本人確認書類を斜めに撮影することや動画を撮影することを指示しても変わりはない。」「したがって、本件の請求項1~7に係る発明は、発明の課題を解決するための手段が反映されていないため、発明の詳細な説明に記載した範囲を超えて特許を請求するものである。」(以下「サポート要件の理由2」という。)としている。
(2)特許異議申立書に記載された理由についての検討
ア サポート要件の理由1について
認証に係る装置において、認証を複数通り行うことで、認証の確からしさを高めることは、一般的に行われていることであるから、本願の明細書の記載から、本人確認書類を撮像させることを「複数」の撮像位置で行わせることまで、拡張ないし一般化できないとはいえない。
イ サポート要件の理由2について
本件特許の明細書の【0015】には、認証において指示される動作として、「ゆっくりと「あ・い・う・え・お」と発音してください」との動作が例示されているから、本件特許の明細書によれば、本件特許の明細書に記載された発明には、発声により本人を認証する構成が含まれるものである。
そして、上記「第2」の2(1)ウで示したとおり、本件発明1は、更に、「前記撮像方法指示部による指示に基づいて撮像された前記本人確認書類の撮像データを取得する撮像データ取得部」を備えるものである。
以上の構成を備えた本件特許に係る発明は、発声による認証に加えて、本人確認書類による認証を行うことによって、本人確認の信頼性において更なる向上を図っているものといえる。
したがって、本件特許の明細書における「特許文献1」の「本人でない者が発声した音声を解析すれば、なりすましを防止できること」と比べて、本件発明は、なりすましを防止することができ、「本人確認の信頼性において更なる向上」を図っているものといえる。
そうすると、本件発明1~7は、本件特許の明細書に記載された課題を解決する手段が反映されていないとはいえない。
ウ サポート要件についてのまとめ
上記ア~イのとおり、本件特許は、特許法第36条第6項第1号の規定に違反するものではない。
3 まとめ
上記1~2のとおりであるから、取消理由で採用しなかった特許異議申立書に記載された申立ての理由では、本件特許の請求項1~7に係る特許は取り消すことはできない。
第7 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知書に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載された申立ての理由によっては、本件特許の請求項1~7に係る特許は取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1~7に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2022-701113