特許拒絶査定不服審判
2022-018232
熱伝導転写印刷
- 審判番号
- 2022-018232
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2019-528852
- 請求日
- 2022年11月14日
- 審決日
- 2023年12月26日
- 公報発行日
- 2024年01月26日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 当事者
- 【請求人】ランダ ラブズ (2012) リミテッド
- 【請求人代理人】杉村 憲司
- 【請求人代理人】杉村 光嗣
- 【請求人代理人】塚中 哲雄
- 審判長/審判官
- 審判長 里村 利光
- 審判官 清水 康司
- 審判官 関根 洋之
- 分類
- P18 .113-WYA(B41M) / P18 .121-WYA(B41M) / P18 .536-WYA(B41M) / P18 .537-WYA(B41M) / P18 .575-WYA(B41M)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条、特許法第29条、特許法第184条の6第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
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特願2019-528852「熱伝導転写印刷」拒絶査定不服審判事件〔平成30年 6月 7日国際公開、WO2018/100530、令和 2年 5月14日国内公表、特表2020-513354、請求項の数(14)〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
原査定を取り消す。
本願の発明は、特許すべきものとする。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本件出願は、平成29年11月30日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理2016年11月30日、国際事務局)を国際出願日とする外国語特許出願であって、令和元年7月24日に国際出願日における明細書、請求の範囲、図面(図面の中の説明)及び要約の日本語による翻訳文(特許法184条の6第2項の規定により、国際出願日における明細書の翻訳文、請求の範囲の翻訳文、並びに国際出願日における図面(図面の中の説明を除く。)及び図面の中の説明の翻訳文(図面の中の説明)は、それぞれ、同法36条2項の規定により提出された明細書、特許請求の範囲、及び図面とみなす。)が提出され、令和2年11月27日に手続補正書が提出され、令和3年4月27日付けで拒絶理由が通知され、同年8月11日に手続補正書及び意見書が提出され、令和4年1月20日付けで拒絶理由(最後)が通知され、同年6月22日に手続補正書及び意見書が提出されたが、令和4年6月22日に提出された手続補正書による補正(以下「本件補正」という。)が令和4年6月28日付けで却下されるとともに、同日付けで拒絶査定(以下「原査定」という。)がされた。
本件拒絶査定不服審判事件は、「原査定を取り消す。この出願の発明は特許をすべきものとする、との審決を求める。」との趣旨で、同年11月14日に請求されたものであって、請求人は、審判請求書中で、補正の却下の決定は不適法なものであり取り消されるべきである旨主張している。
第2 令和4年6月22日に提出された手続補正書による補正後の請求項1ないし14に係る発明
本件補正後の請求項1ないし14に係る発明(以下、それぞれを「本件却下発明1」ないし「本件却下発明14」とい、これらを総称して「本件却下発明」ということがある。)は、本件補正後の請求項1ないし14に記載された事項により特定されるものと認められるところ、本件補正後の請求項1ないし14の記載は、次のとおりである。
「【請求項1】
基板の表面に熱転写印刷する印刷システムであって、
a) 両側である前面側及び裏面側を有し、前記前面側に画像化表面を含む転写部材と、
b) 熱可塑性ポリマーでできている個別粒子の単層、又は熱可塑性ポリマーでコーティングされた個別粒子の単層で、前記画像化表面を周期的にコーティングまたは補充するコーティングステーションと、
c) 前記転写部材の裏面側から粒子がコーティングされた前記画像化表面の選択された領域にエネルギーが印加され、前記選択された領域内で前記画像化表面における前記粒子を粘着性のあるものにする画像化ステーションと、
d) 前記転写部材の前記画像化表面及び基板表面が互いに押し合わせられて、粘着性のあるものにされた粒子コーティングの領域のみを前記基板表面に転写させる転写ステーションと、
を備え、
前記転写部材は、前記コーティングステーション、前記画像化ステーション及び前記転写ステーションに対して移動可能であり、
e) 前記コーティングステーションで塗布される前記個別粒子の単層は、前記粒子を前記画像化表面に塗布し、前記画像化表面と直接接触していない塗布された粒子を除去して、前記画像化表面に実質的に1個の粒子のみの深さの個別粒子の層を付着させることによって形成され、
f) 前記画像化ステーションは、前記転写部材の前記裏面側に熱接触し、前記転写部材を経る熱伝導によって前記画像化表面上の前記粒子にエネルギーを印加するよう動作する感熱プリントヘッドを有する、印刷システム。
【請求項2】
請求項1記載の印刷システムにおいて、前記転写ステーションは、前記転写部材の前記前面側に対面して位置決めされて、前記転写部材の前記画像化表面及び前記基板表面が互いに押し合わされるニップを画定する印象シリンダを有し、
前記画像化ステーションの前記感熱プリントヘッドは、前記ニップで又は前記ニップに隣接して前記転写部材の前記裏面側に熱を印加するよう整列させ、これにより熱可塑性粒子を粘着性のあるものにすること、及び前記粒子を前記基板表面に刷ることがほぼ同時に生ずるようにする、印刷システム。
【請求項3】
請求項1又は2記載の印刷システムにおいて、さらに、前記転写部材の前記裏面側に潤滑剤を制御可能に放出して前記転写部材が前記感熱プリントヘッドを摺動するとき前記裏面側を潤滑するよう構成された潤滑システムを備える、印刷システム。
【請求項4】
請求項3記載の印刷システムにおいて、前記転写部材が厚さを有し、前記潤滑剤は、前記転写部材の前記厚さを通過でき、剥離促進剤として作用する、印刷システム。
【請求項5】
請求項1~4のうちいずれか1項記載の印刷システムにおいて、さらに、前記転写ステーションを通過した後、前記基板を処理する処理ステーションを備える、印刷システム。
【請求項6】
請求項5記載の印刷システムにおいて、前記処理ステーションは、前記基板に転写された画像を、及び/又は転写された画像を受ける前記基板を加熱するよう動作するヒーターを有する、印刷システム。
【請求項7】
請求項6記載の印刷システムにおいて、前記ヒーターは前記転写された画像に接触しない、印刷システム。
【請求項8】
請求項6記載の印刷システムにおいて、前記ヒーターは前記転写された画像に接触する加熱されたシリコーン被覆ローラ又はベルトを含む、印刷システム。
【請求項9】
請求項1~8のうちいずれか1項記載の印刷システムにおいて、第1転写ステーションで基板に転写された前記熱可塑性ポリマーは、少なくとも、前記基板に付着する粒子の層によって第2転写ステーションで接触されるまで粘着性を保持する、印刷システム。
【請求項10】
請求項9記載の印刷システムにおいて、前記第2転写ステーションの前記粒子は、ワニス、保護コーティング又は装飾コーティングとして作用する、印刷システム。
【請求項11】
基板表面に熱転写印刷する方法であって、以下のステップ、すなわち、
a) 両側である前面側及び裏面側を有し、前記前面側に画像化表面を含む可動転写部材を準備するステップと、
b) 熱可塑性ポリマーでできている個別粒子の単層、又は熱可塑性ポリマーでコーティングされた個別粒子の単層を前記画像化表面に塗布するステップと、
c) 前記転写部材の前記裏面側から粒子がコーティングされた前記画像化表面の選択された領域に熱伝導による熱が印加され、前記選択された領域内で前記画像化表面における前記粒子を粘着性のあるものにするステップと、並びに
d) 前記画像化表面及び前記基板表面が互いに押し合わせられ、粘着性のあるものにされた粒子コーティングの前記領域のみを前記基板表面に転写させるステップと、
を備え、
e) ステップb)を周期的に繰り返して、ステップd)で先に塗布された単層コーティングが前記基板表面に転写された前記選択された領域に新しい個別粒子の単層コーティングを塗布し、前記画像化表面を再び個別粒子の単層で均一にコーティングされた状態が残り補充された画像化表面が形成されるようにして、ステップc)~d)を繰り返して受けることができるようにし、
塗布される前記粒子コーティングの単層は、前記粒子を前記画像化表面に塗布し、前記画像化表面と直接接触していない塗布された粒子を除去して、前記画像化表面に実質的に1個の粒子のみの深さの個別粒子の層を付着させることによって形成される、方法。
【請求項12】
請求項11記載の方法において、第1転写ステーションで前記基板表面に転写された前記粒子及び/又は前記粒子を前記第1転写ステーションで前記基板表面に転写することによって選択的にコーティングされた前記基板は、第2転写ステーションにおいて粒子の層と接触する前及び/接触している間に、選択的加熱されない、印刷システム。
【請求項13】
請求項11又は12記載の方法において、第1転写ステーションで前記基板表面に転写された前記粒子は、前記粒子を前記第1転写ステーションで前記基板表面に転写することによって形成される画像が、第2転写ステーションで前記基板表面に付着する粒子の層に接触するまで、粘着性を保持する、印刷システム。
【請求項14】
請求項12又は13記載の方法において、前記第2転写ステーションの前記粒子は、ワニス、保護コーティング又は装飾コーティングとして作用する、印刷システム。」
第3 令和4年6月28日にされた補正の却下の決定の概要
本件補正を却下する決定の理由は、概略、次のようなものである。
本件補正後の請求項1、11についての補正は限定的減縮を目的としている。この場合、補正後の請求項1、11に係る発明及び補正後の請求項1、11の記載を引用する形式で記載された請求項2ないし10、12ないし14に係る発明は特許出願の際独立して特許を受けることができるものでなければならないが、補正後の請求項1ないし14に係る発明は、次の理由で、特許出願の際独立して特許を受けることができない。
却下理由1(明確性要件):
補正後の請求項1、11の「実質的に1個の粒子のみ」とは、単層全体にわたって、「1個の粒子のみが横並びに敷き詰められた状態で付着し、粒子のオーバーラップは一切存在しない」のか、「粒子がオーバーラップした領域が存在する」のか、本件明細書の【0016】の記載等を参酌しても不明瞭であるから、本件出願は、特許請求の範囲の記載が、特許法36条6項2号に規定する要件を満たしていない。
却下理由2(実施可能要件):
仮に、補正後の請求項1、11の「実質的に1個の粒子のみ」とは、単層全体にわたって、「1個の粒子のみが横並びに敷き詰められた状態で付着し、粒子のオーバーラップは一切存在しない」ものであるとすると、発明の詳細な説明は、当業者が請求項1ないし14に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものでないから、本件出願は、発明の詳細な説明の記載が、特許法36条4項1号に規定する要件を満たしていない。
却下理由3(委任省令要件):
補正後の請求項4に係る発明では、熱転写シート(転写部材)の裏面から滲み出た潤滑剤(剥離促進剤)が、表面の熱転写層(インク層)に滲み出て混和し、インク自体に剥離性が付与されてしまい、感熱プリントヘッドで裏面から加熱しても、受像シートへ転写(付着)されにくくなったり、熱転写層(インク層)が劣化したりして、結果的に良好な画像が得られなくなると解され、仮に、補正後の請求項4の構成によって、熱転写層(インク層)が受像シートに転写(付着)されやすくなるとしても、感熱プリントヘッドで加熱されない領域の熱転写層(インク層)も、熱転写シート(転写部材)から剥離しやすくなり、意図しない部分も受像シートに転写(付着)され、良好な熱転写画像が形成できないと考えられる。
結局、具体的な実施例がないため、補正後の請求項4に係る発明によって、良好な熱転写画像が形成できるのかどうか確認できない。
したがって、発明の詳細な説明は、補正後の請求項4に係る発明、及び当該請求項4の記載を引用する形式で記載された請求項5ないし10に係る発明の技術上の意義が当業者に理解できるように記載されていないから、本件出願は、発明の詳細な説明の記載が、特許法36条4項1号に記載する要件を満たしていない。
却下理由4(新規性):
補正後の請求項1、2、11に係る発明は、引用文献2に記載された発明であるから、特許法29条1項3号に該当し、特許を受けることができない。
却下理由5(進歩性):
補正後の請求項1、2、11に係る発明は、引用文献2に記載された発明に基づいて、又は、引用文献2に記載された発明及び引用文献11に記載された技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、
補正後の請求項3に係る発明は、引用文献2に記載された発明及び周知技術(周知例:引用文献7、10)に基づいて、又は、引用文献2に記載された発明、引用文献11に記載された技術事項及び周知技術(周知例:引用文献7、10)に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、
補正後の請求項5ないし7に係る発明は、引用文献2に記載された発明及び周知技術(周知例:引用文献7ないし9)に基づいて、又は、引用文献2に記載された発明、引用文献11に記載された技術事項及び周知技術(周知例:引用文献7ないし9)に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、
補正後の請求項8に係る発明は、引用文献2に記載された発明及び周知技術(周知例:引用文献7)に基づいて、又は、引用文献2に記載された発明、引用文献11に記載された技術事項及び周知技術(周知例:引用文献7)に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、
補正後の請求項9、12、13に係る発明は、引用文献2に記載された発明及び周知技術(周知例:引用文献5、6)に基づいて、又は、引用文献2に記載された発明、引用文献11に記載された技術事項及び周知技術(周知例:引用文献5、6)に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、
補正後の請求項10、14に係る発明は、引用文献2に記載された発明及び周知技術(周知例:引用文献8、9)に基づいて、又は、引用文献2に記載された発明、引用文献11に記載された技術事項及び周知技術(周知例:引用文献8、9)に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、
補正後の請求項1ないし14に係る発明は、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
却下理由4、5で引用された引用例及び周知例は、次のとおりである。
引用文献2:特開昭60-992号公報(主引例)
引用文献5:特開昭61-199978号公報(周知例)
引用文献6:特開平10-800号公報(周知例)
引用文献7:特開平8-187884号公報(周知例)
引用文献8:特開2005-186411号公報(周知例)
引用文献9:特開2013-216058号公報(周知例)
引用文献10:特開昭62-162576号公報(周知例)
引用文献11:英国特許出願公開第2536361号明細書(副引例)
第4 補正の却下の決定の当否に対する当合議体の判断
1 却下理由1(明確性要件)について
本件補正後の請求項1には、「熱可塑性ポリマーでできている個別粒子の単層、又は熱可塑性ポリマーでコーティングされた個別粒子の単層で、前記画像化表面を周期的にコーティングまたは補充する」及び「前記個別粒子の単層は、・・・(中略)・・・前記画像化表面に実質的に1個の粒子のみの深さの個別粒子の層を付着させることによって形成され、」なる発明特定事項が記載され、請求項11にも同様の発明特定事項が記載されているところ、これらの発明特定事項には、「実質的に」なる表現が存在する点で、不明瞭な点が存在するものの、本件明細書の【0016】の「手短に言えば、各転写後に画像化表面上の粒子コーティングの補充を容易にするためには、互いに付着するよりも強力に画像化表面に付着する粒子を利用する。この結果、塗布された層は、オーバーラップがあるとしてもほとんどない、ほぼ個別粒子の単層であり、したがって、単層の厚さは粒子の厚さと同等(例えば、1~3倍)である。換言すれば、層は、画像化表面の大部分の面積にわたって1個の粒子分の厚さのみであり、粒子全部でなくとも大部分が画像化表面に少なくとも若干の直接接触をする。」という記載を参酌すれば、前記発明特定事項における「個別粒子の単層で」、「コーティングまたは補充する」とは、個別粒子のオーバーラップがあるとしてもほとんどなく、個別粒子の大部分が画像化表面に直接接触しており、単層の厚さが粒子の厚さと同等となるように、個別粒子を画像化表面に付着させることを意味しているものと理解され、第三者に不測の不利益を被らせるほど不明確であるとはいえない。
したがって、却下理由1によって、本件却下発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができないものということはできない。
2 却下理由2(実施可能要件)について
本件明細書の発明の詳細な説明の【0030】には、ハウジングの下側リム1404を画像化表面12に対してぴったり合う形状にし、ハウジング1403とドラム10との間に狭いギャップのみが残るようにして、個別粒子の単層を形成する方法が記載されているところ、前記1で述べた「個別粒子の単層で」、「コーティングまたは補充する」の解釈を踏まえれば、当業者は発明の詳細な説明の前記記載に基づいて、「個別粒子の単層で」、「コーティングまたは補充する」印刷システムを実施することができると認められる。
したがって、却下理由2によって、本件却下発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができないものということはできない。
3 却下理由3(委任省令要件)について
本件明細書の発明の詳細な説明の【0054】ないし【0059】等の記載から、本件却下発明4ないし10において、転写材の裏面に供給する潤滑剤は、表面に滲み出て、個別粒子を画像化表面から剥離しやすくする機能を担っていると理解されることから、当業者は、本件明細書の発明の詳細な説明の記載から、本件却下発明4ないし10の技術上の意義を理解することができる。
なお、補正の却下の決定の理由において、加熱されない個別粒子も剥離しやすくなり、良好な画像が形成されないと考えられると指摘された点については、裏面に供給する潤滑剤の量を適宜調節することによって、加熱され粘着性を生じた個別粒子は剥離し、加熱されない個別粒子は剥離しないようにすることは可能であると考えられるから、当該点をもって、発明の詳細な説明の記載から、本件却下発明4ないし10の技術上の意義が理解できないということはできない。
したがって、却下理由3によって、本件却下発明4ないし10が、特許出願の際独立して特許を受けることができないものということはできない。
4 却下理由4(新規性)及び却下理由5(進歩性)について
(1)引用文献2に記載された発明
引用文献2の記載(特に、請求項1、2ページ右下欄8行ないし3ページ左上欄7行、4ページ左下欄9行等を参照。)から、引用文献2に、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「エンドレスベルト状の支持体2と、
前記支持体2を帯電させるコロナ帯電器3と、
帯電した前記支持体2の表面に、熱可塑性樹脂等の熱溶融性バインダー中に着色剤を分散させてなる熱溶融性インクの微粒子5を供給して、静電的に付着させる回転ブラシ4と、
前記微粒子5が付着した支持体2を加圧して平滑な熱転写インク層5aを形成して感熱転写材とする一対の加圧ローラ6a、6bと、
プラテンロール8と、
前記プラテンロール8との間で、前記支持体2と、前記感熱転写材と、当該感熱転写材の前記熱転写インク層5aに接する側に配された記録媒体7とを挟み、前記支持体2の裏面側から、前記熱転写性インク層5aをパターン状に加熱して、前記記録媒体7状に所望のインクパターン5bを形成する、熱ヘッド9と、
支持体1a状に残量するインク5cを除去するクリーニングブレード10と、
を有する感熱転写記録システム。」
(2)本件却下発明1について
ア 引用発明との対比
本件却下発明1と引用発明を対比すると、両者は、少なくとも、次の点で相違する。
相違点1:
転写部材の画像化表面にコーティングまたは補充する個別粒子の層が、
本件却下発明1では、単層であって、粒子を画像化表面に塗布し、画像化表面と直接接触していない塗布された粒子を除去して、画像化表面に実質的に1個の粒子のみの深さの個別粒子の層を付着させることによって形成されるものであるのに対して、
引用発明では、単層とはいえず、粒子を画像化表面に塗布し、画像化表面と直接接触していない塗布された粒子を除去して、画像化表面に実質的に1個の粒子のみの深さの個別粒子の層を付着させることによって形成されるものともいえない点。
イ 新規性について
前記アで述べたとおり、本件却下発明1と引用発明の間に、少なくとも、相違点1が存在する以上、本件却下発明1は、引用発明ではない。
ウ 進歩性について
(ア)相違点1の容易想到性について
引用文献2には、支持体2の表面に静電的に付着させる熱溶融性インクの微粒子5を支持体2の表面面に塗布した後、支持体2の表面と直接接触していない微粒子5を除去して、支持体2の表面に実質的に1個の微粒子5のみの深さの個別粒子の層を付着させて、個別粒子の単層とすることについては、記載も示唆もされていない。
そして、技術的にみて、引用発明の、コロナ帯電器3により支持体2を帯電させ、回転ブラシ4により帯電した前記支持体2の表面に熱溶融性インクの微粒子5を供給して、静電的に付着させるという手段によって、微粒子5の単層を形成することができるとは考えられない。
また、補正の却下の決定で引用された引用文献11(特に、明細書10ページ24行ないし11ページ5行、12ページ1行ないし13ページ末行等を参照。)には、印刷システムにおいて、粒子を画像化表面に塗布し、画像化表面と直接接触していない塗布された粒子を除去することによって、画像化表面に個別粒子の単層を形成する技術が記載されているものの、引用発明において、当該引用文献11に記載された技術事項を採用する動機付けは見当たらないことから、たとえ引用文献11を考慮しても、引用発明において、相違点1に係る本件却下発明1の発明特定事項に相当する構成を具備したものとすることが、当業者が容易に想到し得たことということはできない。
さらに、補正の却下の決定で周知例として例示された引用文献5ないし10のいずれを考慮しても、引用発明において、相違点1に係る本件却下発明1の発明特定事項に相当する構成を具備したものとすることが、当業者が容易に想到し得たことということはできない。
(イ)小括
以上のとおりであるから、本件却下発明1は、引用発明に基づいて、引用発明及び引用文献11に記載の技術に基づいて、又は引用発明、引用文献11に記載された技術事項及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(3)本件却下発明2ないし14について
本件補正後の請求項2ないし10は、請求項1の記載を引用する形式で記載されたものであって、本件却下発明2ないし10は、本件却下発明1の発明特定事項を全て具備し、これに限定を加えたものに該当するから、本件却下発明2ないし10と引用発明は、少なくとも相違点1において相違する。したがって、本件却下発明2ないし10は、引用発明でない。
そして、前記(2)ウ(イ)で述べたとおり、本件却下発明1が、引用発明に基づいて、引用発明及び引用文献11に記載の技術に基づいて、又は引用発明、引用文献11に記載の技術及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでない以上、同様の理由で、本件却下発明2ないし10も、引用発明に基づいて、引用発明及び引用文献11に記載の技術に基づいて、又は引用発明、引用文献11に記載の技術及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
また、引用文献1の記載からは、引用発明の感熱転写記録システムにより実行される熱転写印刷方法に係る発明(以下「引用方法発明」という。)も認定することができるところ、本件却下発明11と引用方法発明を対比すると、両者は、少なくとも、相違点1と同様の点で相違するから、本件却下発明11は、引用方法発明ではない。
そして、引用方法発明において、当該相違点に係る本件却下発明11の発明特定事項に相当する構成を採用することは、前記(2)ウ(ア)で述べたのと同様の理由で、当業者が容易に発明をすることができたことではないから、本件却下発明11は、引用方法発明に基づいて、引用方法発明及び引用文献11に記載の技術に基づいて、又は引用方法発明、引用文献11に記載の技術及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
また、本件却下発明12ないし14と引用発明を対比すると、両者は、少なくとも、相違点1と同様の点で相違するから、本件却下発明12ないし14は、引用発明ではない。
そして、引用発明において、当該相違点に係る本件却下発明12ないし14の発明特定事項に相当する構成を採用することは、前記(2)ウ(ア)で述べたのと同様の理由で、当業者が容易に発明をすることができたことではないから、本件却下発明12ないし14は、引用発明に基づいて、引用発明及び引用文献11に記載の技術に基づいて、又は引用発明、引用文献11に記載の技術及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(4)却下理由4及び却下理由5のまとめ
前記(2)及び(3)のとおりであるから、却下理由4及び却下理由5によって、本件却下発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができないものということはできない。
5 補正の却下の決定の当否についての結論
以上のとおり、却下理由1ないし却下理由5によって、本件却下発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができないものということはできない。
したがって、令和4年6月28日にされた補正の却下の決定を取り消す。
第5 本件発明
前記第4 5のとおり、令和4年6月28日にされた補正の却下の決定は取り消されたから、本件出願の請求項1ないし14に係る発明は、本件補正後の請求項1ないし14に記載された事項により特定されるとおりのものであって、当該請求項1ないし14の記載は、前記第2で認定したとおりである。
第6 原査定の拒絶の理由の概要及び原査定に対する当合議体の判断
原査定の拒絶の理由(以下「査定理由」という。)は、却下理由1ないし却下理由5と同じである。
そうすると、前記第4 1ないし4で述べたのと同様の理由によって、査定理由によって、本件出願を拒絶することはできない。
第7 むすび
以上のとおり、査定理由によって、本件出願を拒絶することはできない。
また、他に本件出願を拒絶すべき理由も発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
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2022-018232