特許異議申立
2022-701058
腫瘍マーカーの測定方法及び測定試薬
- 審判番号
- 2022-701058
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2018-538408
- 登録番号
- 7060510
- 請求日
- 2022年10月26日
- 審決日
- 2023年07月11日
- 公報発行日
- 2023年10月27日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】富士レビオ株式会社
- 【権利者代理人】弁理士法人谷川国際特許事務所
- 【異議申立人】中嶋 美奈子
- 審判長/審判官
- 審判長 樋口 宗彦
- 審判官 松本 隆彦
- 審判官 石井 哲
- 分類
- P1651.113-YAA(G01N) / P1651.121-YAA(G01N)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第1項、特許法第120条の5第4項、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7060510号発明「腫瘍マーカーの測定方法及び測定試薬」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7060510号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~4〕について訂正することを認める。
特許第7060510号の請求項1~4に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7060510号(以下、「本件特許」という。)の請求項1~4に係る特許についての出願は、2017年(平成29年)9月5日(優先権主張 平成28年9月6日)を国際出願日として出願され、令和4年4月18日にその特許権の設定登録がされ、同年4月26日に特許掲載公報が発行された。本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。
令和4年10月26日 :特許異議申立人中嶋 美奈子(以下「申立人」という。)による請求項1~4に係る特許に対する特許異議の申立て
同年12月28日付け:取消理由通知書
令和5年 3月 7日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
同年 5月22日 :申立人による意見書の提出
第2 訂正の適否についての判断
1 訂正の内容
(1)令和5年3月7日に提出された訂正請求書による訂正(以下、「本件訂正」という。)は、本件特許の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~4について訂正することであって、その内容は、以下のとおりである(下線は、訂正箇所を示すために当審で付したものである。)。
・訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に
「生体から分離された試料と、陰イオン性界面活性剤を含む前処理液とを混和する前処理工程を含む、生体から分離された試料中の腫瘍マーカーをイムノアッセイにより測定する方法であって、前記試料が血清、血漿、全血、尿、又は便であり、前記イムノアッセイが直接競合法、間接競合法又はサンドイッチ法である、方法。」
と記載されているのを、
「生体から分離された試料と、陰イオン性界面活性剤を含む前処理液とを混和する前処理工程を含む、生体から分離された試料中の腫瘍マーカーをイムノアッセイにより測定する方法であって、前記試料が血清、血漿、全血、尿、又は便であり、前記イムノアッセイが直接競合法、間接競合法又はサンドイッチ法である、方法(ただし、前記腫瘍マーカーがPSA-α2-マクログロブリン複合体又はアクチビンβcである場合を除く)。」
と訂正する。(請求項1の記載を直接又は間接的に引用する請求項2~4も同様に訂正する。)
(2)訂正の単位について
訂正前の請求項1~4は、請求項2~4が請求項1を直接的又は間接的に引用していることから、一群の請求項である。
そして、訂正事項1は、一群の請求項〔1~4〕についてされたものであるから、この訂正は、特許法第120条の5第4項で規定する一群の請求項ごとに請求されたものである。
2 訂正の適否について
(1)訂正の目的
訂正事項1は、いわゆる「除くクレーム」に該当するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
(2)新規事項の有無について
訂正事項1は、いわゆる「除くクレーム」に該当するものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項の規定に適合するものである。
(3)特許請求の範囲の拡張又は変更について
訂正事項1は、いわゆる「除くクレーム」に該当するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項の規定に適合するものである。
(4)独立特許要件
本件においては、すべての請求項について特許異議の申立てがされているので、訂正事項1に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する第126条第7項の独立特許要件は課されない。
3 小括
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔1~4〕について訂正することを認める。
第3 訂正後の本件発明
上記第2のとおり、本件訂正は認容されるので、本件訂正により訂正された請求項1~4に係る発明(以下「本件発明1」~「本件発明4」ということがある。)は、次のとおりのものである。
「 【請求項1】
生体から分離された試料と、陰イオン性界面活性剤を含む前処理液とを混和する前処理工程を含む、生体から分離された試料中の腫瘍マーカーをイムノアッセイにより測定する方法であって、前記試料が血清、血漿、全血、尿、又は便であり、前記イムノアッセイが直接競合法、間接競合法又はサンドイッチ法である、方法(ただし、前記腫瘍マーカーがPSA-α2-マクログロブリン複合体又はアクチビンβcである場合を除く)。
【請求項2】
前記前処理工程が、加熱条件下で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記腫瘍マーカーが、PSA、α-フェトプロテイン、CA125、CA15-3、CA19-9、または癌胎児性抗原である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記試料が血清又は血漿である、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。」
第4 特許異議申立理由及び取消理由について
1 特許異議申立理由の概要
申立人は、証拠として、(3)証拠方法に示す甲第1号証及び甲第2号証(以下、それぞれ「甲1」~「甲2」という。)を提出し、以下の申立理由により請求項1~4に係る発明は、取り消されるべきものである旨を主張している。
(1)申立理由1(新規性欠如)
・請求項1~4について
ア 請求項1~4に係る発明は、甲1に記載の発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
したがって、請求項1~4に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当するから、取り消されるべきものである。
イ 請求項1~2に係る発明は、甲2に記載の発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
したがって、請求項1~2に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当するから、取り消されるべきものである。
(2)申立理由2(進歩性欠如)
・請求項1~4について
請求項1~4に係る発明は、甲1又は甲2に記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
したがって、請求項1~4に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当するから、取り消されるべきものである。
(3)証拠方法
甲第1号証:特表2001-509270号公報
甲第2号証:特表2006-510008号公報
2 令和4年12月28日付け取消理由通知で通知した取消理由の概要
令和4年12月28日付け取消理由通知で通知した取消理由1は、本件訂正前の請求項1~4に係る発明について、上記1の特許異議の申立理由1(新規性欠如)のうち、甲1に基づく新規性欠如を理由とするもの、本件訂正前の請求項1、2、4に係る発明について、甲2に基づく新規性欠如を理由とするものであり、取消理由2は、本件訂正前の請求項1~4に係る発明について、甲1又は甲2に基づく進歩性欠如を理由とするものである。
第5 甲号証の記載
1 甲1
(1) 甲1の記載事項
甲1には、次の記載がある(摘記中の下線は当審が付したものである。)。
ア 特許請求の範囲
「1.ヒトの生物学的液体中のPSA-α2-マクロクロブリン複合体の存在を検出する方法であって、該生物学的液体の試料を、PSA-α2-マクログロブリン複合体に特異的に結合する結合タンパク質と接触させ、該複合体に結合した結合タンパク質を検出する各工程を含むことを特徴とする方法。
2.前記生物学的液体が血清であることを特徴とする請求の範囲第1項記載の方法。
3.前記液体を界面活性剤で前処理する工程を含むことを特徴とする請求の範囲第1項記載の方法。
4.前記界面活性剤がドデシル硫酸ナトリウムを含むことを特徴とする請求の範囲第3項記載の方法。
5.前記前処理工程が前記液体を加熱する工程を含むことを特徴とする請求の範囲第3項記載の方法。
・・・
11.・・・該被験者の体液中のPSA-α2-M複合体の濃度を測定する工程を含み、・・・
12.・・・前記PSA-α2-マクログロブリン複合体の存在を決定する各工程を含むイムノアッセイ法により決定されること・・・」
イ 9頁13~16行
「潜在的に細胞成分が損傷を受けるかもしれない。血清中のPSAのタンパク質分解活性は、アルファ-1-抗キモトリプシン(α1-ACT)、アルファ-2-マクログロブリン(α2-M)、および他の急性期タンパクのようなプロテアーゼ阻害因子により阻害される。」
ウ 10頁14~16行
「本発明の目的は、前立腺癌の存在および/または病期の信頼性のある指標として、患者の血液試料中のPSA-α2-マタログロブリン複合体のレベルを正確に測定できる方法および診断組成物を提供することにある。」(当審注:甲1全体の記載から「PSA-α2-マタログロブリン複合体」は、「PSA-α2-マクログロブリン複合体」の誤記と認められる。)
エ 10頁23~24行
「本願出願人は、PSAの総循環レベルの60%ほど多くが、前立腺癌患者中にPSA-α2-M複合体として存在することを示した。」
オ 11頁7~15行
「この被験者は好ましくは人間であり、生物学的液体は好ましくは血液の血清または血漿、もしくはその分画である。好ましい実施の形態において、本発明の方法は二部位イムノアッセイである。このイムノアッセイ実験方法は、試料中における結合タンパク質のPSAへの結合を促進させるのに十分な条件下で、前立腺癌を有すると疑われるまたはその危険性のある被験者からの血清をPSAに特異的な結合タンパク質と組み合わせる工程を含む。次いで、この混合物を試料中のα2-Mに特異的な第二の結合タンパク質と組み合わせる。次いで、血清試料中のPSA-α2-Mの量を、両方の結合タンパク質と結合した物質を検出することにより測定することができる。」
カ 16頁9~14行
「この試料をイムノアッセイまたはウエスタン法の前に前処理してもよい。前処理により、このPSA-α2-M複合体中のPSAエピトープをより露出させ、したがって、結合により利用しやすくしてもよい。本発明の方法の現在好ましい実施の形態において、この前処理段階は、溶液試料を暖め、この試料をSDSのような洗浄剤と接触させる各工程を含む。他の洗浄剤をこの目的に用いてもよい。」
キ 16頁23行~17行13行
「この生物学的液体中の複合体の量は、ウエスタン法またはイムノアッセイ法により測定される。特に好ましい実施の形態において、PSA-α2-M複合体の血清レベルは、前立腺癌を患った、またはその危険性のある個体から血清試料を得て、この血清試料を、PSA特異的結合タンパク質および固相を含む第一の接合体と、この第一の接合体と試料中のPSAとの間の反応を誘発させるのに十分な条件下で組み合わせることにより測定される。この接合に用いられる固相は、この特異的結合タンパク質と結合し、この処理中に形成される反応生成物を反応混合物から除去できるどのような固体物質であっても差し支えない。固相としては、例えば、磁気粒子、膜、高分子支持体または所望の特性を有する他の物質が挙げられる。本発明の使用するのには、磁気粒子が好ましい。次いで、この段階後に形成された混合物を、この試料中のα2-Mに特異的な結合タンパク質および検出可能な部位を含む第二の接合体と、この第二の接合体と試料中のα2-Mとの間の反応を誘発させるのに十分な条件下で接触させる。この時点では、PSA特異的結合タンパク質、PSA-α2-M複合体および検出可能な部位を有するα2-M特異的結合タンパク質を含む反応生成物に付着している固相を、反応混合物から分離する。次いで、PSA-α2-M複合体の量を検出可能な部位の量に基づいて測定することができる。」
(2) 甲1に記載の発明
上記(1)ア~キに摘記した甲1の記載から、甲1には以下の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
「前立腺癌の存在および/または病期の信頼性のある指標として、患者の血清試料中のPSA-α2-マクログロブリン複合体のレベルを正確に測定できる二部位イムノアッセイ方法であって、血清試料を加熱し、ドデシル硫酸ナトリウムで前処理する工程、該血清試料を、PSA特異的結合タンパク質および固相を含む第一の接合体と、この第一の接合体と血清試料中のPSAとの間の反応を誘発させるのに十分な条件下で組み合わせる工程、この段階後に形成された混合物を、この血清試料中のα2-マクログロブリンに特異的な結合タンパク質および検出可能な部位を含む第二の接合体と、この第二の接合体と血清試料中のα2-マクログロブリンとの間の反応を誘発させるのに十分な条件下で接触させる工程を含む方法。」
2 甲2
(1) 甲2の記載事項
甲2には、次の記載がある(摘記中の下線は当審が付したものである。)。
ア
「【請求項1】
アクチビンβのレベルまたは生物活性の調節によって特徴付けられる状態の発症または発症の素因を哺乳動物において検出する方法であって、そのレベルが正常レベルと比較して調節されており、該方法が、哺乳動物に由来する生物学的試料におけるアクチビンβCタンパク質および/または遺伝子発現のレベルについてスクリーニングする段階を含む、方法。」
イ
「【請求項7】
前記状態が悪性新生物である、請求項6記載の方法。」
ウ
「【請求項28】
結合タンパク質を除去するために試料に解離剤を加える段階をさらに含む、請求項27記載の方法。
エ
【請求項29】
解離剤がSDS、デオキシコール酸ナトリウムおよびTween 20を含む群より選択される、請求項28記載の方法。」
オ
「【0001】
発明の分野
本発明は、一般的に、アクチビン発現のレベルの調節によって特徴付けられる状態の発生または進行を診断、予測、またはモニターする方法に関し、より詳細には、アクチビンβCサブユニットの発現のレベルの調節によって特徴付けられる状態の発生または進行を診断、予測、またはモニターする方法に関する。本発明はさらに、異常な、望ましくない、またはそうでなければ不適切なアクチビン発現によって特徴付けられる状態、例えば、アクチビンの過剰発現または発現の不足によって特徴付けられる状態、および最も詳細には、アクチビンβCサブユニットの過剰発現または発現の不足によって特徴付けられる状態の、治療的または予防的処置のための方法を提供する。本発明のさらなる局面は、本発明の方法における使用のための薬剤に拡張される。」
カ
「【0055】
新生物を含む新生物細胞は、上皮細胞または非上皮細胞といった任意の組織に由来する、任意の種類の細胞であり得る。本発明は、好ましくは、悪性新生物の診断に関するが、悪性でない新生物の診断および/またはモニタリングは除外されない。本明細書中での「悪性新生物」および「癌」という用語に対する言及は交換可能であると理解されるべきである。」
キ
「【0059】
生物学的試料は、生物に由来する物質の任意の試料であり得る。これには、哺乳動物中の組織および体液などの生物中に天然に存在する試料(例えば、リンパ試料、切除試料、組織抽出物、血液、リンパ液、糞便、気管支分泌物、または細胞培養培地などの生検試料)と、生物の身体に導入され、続いて除去される試料(例えば、肺洗浄後の肺から、または浣腸後の結腸から抽出される生理食塩水溶液)の両方に対する言及が含まれる。これはまた、生物起源であるが、インビトロで維持された細胞(例えば細胞株)、または操作された、もしくは生物から切除された後に処理された細胞(例えば、不死化されたか、または遺伝的に改変された細胞または組織)に対する言及を含む。」
ク
「【0074】
個体またはそれに由来する生物学的試料におけるアクチビンβCレベルの変化をスクリーニングする手段は、以下のような当業者に周知である任意の適切な方法によって達成され得るが、これらに限定されない。」
ケ
「【0082】
(iii)例えば、免疫相互作用的な分子(例えばβCヘテロダイマーもしくはホモダイマーまたはβCモノマーサブユニットを検出するための抗体など)を利用するイムノアッセイ法による、定量的または定性的のいずれかでの、細胞抽出物もしくは血液または他の適切な生物学的試料中のアクチビンβCタンパク質レベルの変化の測定。
【0083】
1つの例において、アクチビンβC免疫相互作用分子複合体形成を検出することが求められることもある。例えば、それと結合するレポーター分子を有する本発明の抗体は、イムノアッセイ法において利用され得る。このようなイムノアッセイ法には、ラジオイムノアッセイ法(RIA)、酵素結合検疫吸着アッセイ法(ELISA)、および免疫クロマトグラフィー技術(ICT)が含まれるがこれらに限定されない。ウェスタンブロッティングは当業者に周知である。例えば、本発明に従って使用され得る種々のイムノアッセイ法を開示する「Current Protocols in Immunology」, 1994を参照してもよい。イムノアッセイ法は競合的アッセイ法を含み得る。本発明は、定性的および定量的イムノアッセイ法を含むことが理解される。」
コ
「【0085】
2部位アッセイ法は本発明における使用のために特に好ましい。これらのアッセイ法の多数のバリエーションが存在し、これらのすべてが本発明に含まれることが意図される。手短に述べると、典型的なフォワードアッセイ法において、標識されていない抗原結合分子(例えば標識されていない抗体)を、固体基材上に固定し、試験される試料を結合分子と接触させた。適切なインキュベーションの時間の後、抗体-抗原複合体の形成を可能にするのに十分な時間の間、検出可能なシグナルを産生することができるレポーター分子で標識された、別の抗原結合分子、適切には、抗原に特異的な第2の抗体が加えられ、抗体-抗原-標識された抗体の別の複合体の形成のために十分な時間の間インキュベートされる。未反応の物質は洗い流され、抗原の存在が、レポーター分子によって産生されるシグナルの観察によって決定される。結果は、目に見えるシグナルの単純な観察によって定性的であり得るか、または既知の量の抗原を含む対照試料と比較することによって定量され得るかのいずれかである。フォワードアッセイ法のバリエーションには同時アッセイ法が含まれ、ここでは試料と標識された抗体の両方が、結合した抗体に同時に加えられる。これらの技術は当業者に周知であり、容易に明らかであるように、少数のバリエーションを含む。」
サ
「【0107】
本発明の診断方法において、対象物が哺乳動物(ヒトを含むがこれに限定されない)であることが好ましい。対象の生物学的試料は、好ましくは血清、組織培養上清、精漿、細胞溶解物、組織ホモジネート、生物学的液体、脳脊髄液、または精液である。生物学的試料は、特に診断される疾患または状態が細胞である場合、組織の溶解物または細胞の馴化培地であり得る。診断される疾患または状態が生殖の疾患または状態に関するならば、生物学的試料は、卵胞液、精液、または精漿を含み得る。」
シ
「【0122】
生物学的試料は、試料を第1の抗体と接触させる前に調製され得る。例えば、試料は、適切な希釈剤(例えば、組織培養培地、および/またはPBSなど)で希釈され得る。試料は、好ましくは、試料を第1の抗体と接触させる前に、加熱することによってSDSと共に変性され得る。好ましくは、生物学的試料は、試料を酸化するように処理され得る。より好ましくは、試料中のアクチビンβCサブユニットが酸化され、その結果、アクチビンβCサブユニット上のメチオニンが酸化される。適切な酸化剤(例えばH2O2など)が、アクチビンβAサブユニット上のメチオニンを酸化するために生物学的試料に加えられることもある。
【0123】
好ましい態様において、本発明の方法は、結合タンパク質を除去するために試料に解離剤を加えるさらなる段階を含む。好ましくは、解離剤は、段階(a)の前に加えられる。好ましくは、除去される結合タンパク質は、フォリスタチン、BMP、またはα-2マクログロブリンからなる群より選択される。好ましくは、SDSが、結合タンパク質(例えば、フォリスタチン、BMP、またはα-2マクログロブリンなど)を除去するための解離剤として試料に加えられ得る。しかし、他の解離剤には、McFarlane et al, 1996 Eur J Endocrinol 134:481-9において公開されたものが含まれ、これは、有用な解離剤としてデオキシコール酸ナトリウム、Tween 20、SDSを記載している。フォリスタチンなどの結合タンパク質は、高いアフィニティーでアクチビンA、Bのβサブユニットに結合し、低いアフィニティーでインヒビンAおよびBに結合する。フォリスタチンはまた、アクチビンβCサブユニットに結合し得る。それゆえに、結合タンパク質を除去するために解離段階を含むことが好ましい。」
ス
「【0217】
実施例1
生物学的試料中のアクチビンACヘテロダイマーの検出アクチビンAC酵素結合免疫吸着アッセイ法(ELISA)プレートを、以前に記載されたように(Evans et al, 1998,. J Endocrinol 56:275-82)、96ウェルELISAプレート(MaxiSorp; Nunc, Ros kilde, Denmark)上で、ヒトアクチビンβCサブユニットクローン1モノクローナル抗体を用いて被覆およびブロックした。bFFを仮の標準として使用した。1/10希釈に等価である、アッセイ法における最高の用量を、10U/mlの任意単位に割り当てた。標準および試料を、培養実験において使用されるようにDMEM/5% FCS中で希釈した。PBS中の6%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)溶液125μlを、125μlの試料または標準に加え(3%最終濃度、w/v)、混合し、3分間沸騰させ、そして冷却させた。SDS溶液へのPBSの付加は、アッセイ法の性能、ならびに標準および試料の用量-応答曲線の直線性を改善することを見い出した。その後、20μlの30% H2O2(2%最終濃度、v/v)を加え、チューブを室温で30分間インキュベートした。各ウェルに、25μlの20% BSA/0.1M Tris/0.9% NaCl/5% Triton X-100/0.1% アジ化ナトリウムを加え、その後処理した試料の100μlの2つ組みの付加を行った。プレートを、密閉した加湿ボックス中で一晩インキュベートした。次の日、プレートを、0.05M Tris/0.9% NaCl/0.05% Tween-20/0.1% NaN3で洗浄し、その後、5%BSA/0.1M Tris/0.9% NaCl/5% Triton X-100/0.1% アジ化ナトリウム中の、アクチビンβAサブユニットに指向されたビオチン化E4モノクローナル抗体50μlを各ウェルに加え、室温で2時間インキュベートした。洗浄後、ストレプトアビジン(Invitrogen Corporation, Carlsbad, CA)に連結したアルカリホスファターゼをウェルに加え、室温で1時間インキュベートした。さらなる洗浄後、アルカリホスファターゼ活性を、増幅キット(ELISA Amplification System; Invitrogen)を使用して検出し、それによって基質を室温で1時間インキュベートし、続いて増幅試薬の付加を行った。反応を、50μlの0.4M H2SO4の付加で停止した。プレートを、Multiskan RC plate reader(Labsystems, Helsinki, Finland)上で630nm参照フィルターを用いて492nmで読み取り、データをGenesis Lite EIAソフトウェア(Labsystems)を使用して処理した。」
(2) 甲2に記載の発明
上記(1)ア~スに摘記した甲2の記載から、甲2には以下の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されていると認められる。
「アクチビンβCのレベルまたは生物活性の調節によって特徴付けられる癌の発症または発症の素因を哺乳動物において検出する競合的イムノアッセイ又は二部位イムノアッセイ方法であって、哺乳動物に由来する血液、血清、糞便などの生物学的試料を第1の抗体と接触させる前に、加熱することによってドデシル硫酸ナトリウム(SDS)と共に変性させる方法であり、その後、二部位イムノアッセイの場合、固体基材上に固定された標識されていない第1の抗体と生物学的試料を接触させ、適切なインキュベーションの時間の後、検出可能なシグナルを産生することができるレポーター分子で標識された抗原に特異的な第2の抗体が加えられ、抗体-抗原-標識された抗体の別の複合体の形成のために十分な時間の間インキュベートされ、未反応の物質は洗い流され、抗原の存在が、レポーター分子によって産生されるシグナルの観察によって決定される方法。」
第6 新規性及び進歩性に係る当審の判断
1 甲1発明を主発明とした場合の新規性及び進歩性について
(1)対比
本件発明1と上記甲1発明に記載の発明とを対比すると、後者の特定事項は、前者の特定事項と以下の対応関係で相当するものである。
ア ドデシル硫酸ナトリウムが、陰イオン界面活性剤であることは技術常識であるから、甲1発明の「血清試料を加熱し、ドデシル硫酸ナトリウムで前処理する工程」は、本件発明1の「生体から分離された試料と、陰イオン性界面活性剤を含む前処理液とを混和する前処理工程」に相当する。
イ 甲1発明の「前立腺癌の存在および/または病期の信頼性のある指標として、患者の血清試料中のPSA-α2-マクログロブリン複合体のレベルを正確に測定できる二部位イムノアッセイ方法」は、本件発明1の「生体から分離された試料中の腫瘍マーカーをイムノアッセイにより測定する方法」に相当する。
ウ 甲1発明の「患者の血清試料」は、本件発明1の「前記試料が血清」あることに相当する。
エ 甲1発明は、「二部位イムノアッセイ」であり、「PSA特異的結合タンパク質および固相を含む第一の接合体」を「血清試料中のPSA」に接合させ、「α2-マクログロブリンに特異的な結合タンパク質および検出可能な部位を含む第二の接合体」を「血清試料中のα2-マクログロブリン」に接合させることで、「第一の接合体」-「PSA-α2-マクログロブリン複合体」-「第二の接合体」という接合体を形成させて、「PSA-α2-マクログロブリン複合体」を測定するものであるから、サンドイッチ法であるのは明らかである。よって、甲1発明が「該血清試料を、PSA特異的結合タンパク質および固相を含む第一の接合体と、この第一の接合体と血清試料中のPSAとの間の反応を誘発させるのに十分な条件下で組み合わせる工程、この段階後に形成された混合物を、この血清試料中のα2-マクログロブリンに特異的な結合タンパク質および検出可能な部位を含む第二の接合体と、この第二の接合体と血清試料中のα2-マクログロブリンとの間の反応を誘発させるのに十分な条件下で接触させる工程を含む」ことは、本件発明1の「前記イムノアッセイが」「サンドイッチ法である」ことに相当する。
(2)一致点・相違点
よって、本件発明1と甲1発明とは、次の点で一致し、次の点で相違する。
(一致点)
「生体から分離された試料と、陰イオン性界面活性剤を含む前処理液とを混和する前処理工程を含む、生体から分離された試料中の腫瘍マーカーをイムノアッセイにより測定する方法であって、前記試料が血清であり、前記イムノアッセイがサンドイッチ法である、方法」
(相違点1)
測定対象である腫瘍マーカーについて、本件発明1は、「前記腫瘍マーカーがPSA-α2-マクログロブリン複合体又はアクチビンβcである場合を除く」のに対して、甲1発明は、腫瘍マーカーが「PSA-α2-マクログロブリン複合体」である点。
(3)判断
上記相違点について検討する。
甲1発明は、本件発明1で除かれる「PSA-α2-マクログロブリン複合体」を検出することに特化したものであり、甲1には、「PSA-α2-マクログロブリン複合体」以外の腫瘍マーカーを検出するに際して、「生体から分離された試料と、陰イオン性界面活性剤を含む前処理液とを混和する前処理工程」を行うことは記載も示唆もされていない。
また、上記相違点1に係る本件発明1の構成に関して、甲2には、「アクチビンβCのレベル」を測定するに際して、「生物学的試料を第1の抗体と接触させる前に、加熱することによってドデシル硫酸ナトリウム(SDS)と共に変性させる」ことは記載されているが(第5 2(1)シの摘記を参照。)、「アクチビンβC」を被測定対象とすることは、上記相違点1に係る本件発明1の構成で除外されており、「アクチビンβC」以外の腫瘍マーカーの測定において、「生物学的試料を第1の抗体と接触させる前に、加熱することによってドデシル硫酸ナトリウム(SDS)と共に変性させる」ことは甲2に記載も示唆もされていない。
そうすると、甲1発明において、前記相違点1に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得ることではない。
(4)甲1発明を主発明とした場合の小括
したがって、本件発明1は、甲1発明ではなく、甲1発明及び甲2に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。また、本件発明2~4は、いずれも、本件発明1と同様の「(ただし、前記腫瘍マーカーがPSA-α2-マクログロブリン複合体又はアクチビンβcである場合を除く)」するという発明特定事項を含むものであるから、同様の理由により、甲1発明及び甲2に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
2 甲2発明を主発明とした場合の新規性及び進歩性について
(1)対比
本件発明1と甲2発明に記載の発明とを対比すると、後者の特定事項は、前者の特定事項と以下の対応関係で相当するものである。
(ア)甲2発明の「哺乳動物に由来する血液、血清、糞便などの生物学的試料」は、本件発明1の「血清」「全血、」「又は便であ」る「生体から分離された試料」に相当する。
(イ)ドデシル硫酸ナトリウムが陰イオン性界面活性剤であることは技術常識であるから、甲2発明の「生物学的試料を第1の抗体と接触させる前に、加熱することによってドデシル硫酸ナトリウム(SDS)と共に変性させ」ることは、本件発明1の「陰イオン性界面活性剤を含む前処理液とを混和する前処理工程」に相当する。
(ウ)甲2発明は、「二部位イムノアッセイ」の場合、「抗体-抗原-標識された抗体の別の複合体」を形成させて「アクチビンβCのレベルまたは生物活性の調節によって特徴付けられる癌の発症または発症の素因を哺乳動物において検出する」「方法」であるから、サンドイッチ法によるイムノアッセイを用いるものである。また、甲2発明の「競合的イムノアッセイ」は、本件発明1の「直接的競合法」又は「間接的競合法」に相当している。
そうすると、甲2発明の「アクチビンβCのレベルまたは生物活性の調節によって特徴付けられる癌の発症または発症の素因を哺乳動物において検出する競合的イムノアッセイ又は二部位イムノアッセイ方法であって」、「二部位イムノアッセイの場合、固体基材上に固定された標識されていない第1の抗体と生物学的試料を接触させ、適切なインキュベーションの時間の後、抗体-抗原複合体の形成を可能にするのに十分な時間の間、検出可能なシグナルを産生することができるレポーター分子で標識された抗原に特異的な第2の抗体が加えられ、抗体-抗原-標識された抗体の別の複合体の形成のために十分な時間の間インキュベートされ、未反応の物質は洗い流され、抗原の存在が、レポーター分子によって産生されるシグナルの観察によって決定される方法」であることは、本件発明1の「生体から分離された試料中の腫瘍マーカーをイムノアッセイにより測定する方法であって、」「前記イムノアッセイが直接競合法、間接競合法又はサンドイッチ法である」ことに相当する。
(2)一致点・相違点
よって、本件発明1と甲2発明とは、次の点で一致し、次の点で相違する。
(一致点)
「生体から分離された試料と、陰イオン性界面活性剤を含む前処理液とを混和する前処理工程を含む、生体から分離された試料中の腫瘍マーカーをイムノアッセイにより測定する方法であって、前記試料が血清、全血、又は便であり、前記イムノアッセイが直接競合法、間接競合法又はサンドイッチ法である、方法」
(相違点2)
測定対象である腫瘍マーカーについて、本件発明1は、「前記腫瘍マーカーがPSA-α2-マクログロブリン複合体又はアクチビンβcである場合を除く」のに対して、甲2発明は、腫瘍マーカーが「アクチビンβC」である点。
(3)判断
上記相違点2について検討する。
甲2発明は、本件発明1で除かれる「アクチビンβC」を検出することに特化したものであり、甲2には、「アクチビンβC」以外の腫瘍マーカーを検出するに際して、「生体から分離された試料と、陰イオン性界面活性剤を含む前処理液とを混和する前処理工程」を行うことは記載も示唆もされていない。また、上記相違点に係る本件発明1の構成に関して、甲1には、「PSA-α2-マクログロブリン複合体」を測定するに際して、「血清試料を加熱し、ドデシル硫酸ナトリウムで前処理する工程」を行うことは記載されているが(第5 2(1)シの摘記を参照。)、「PSA-α2-マクログロブリン複合体」を被測定対象とすることは、上記相違点2に係る本件発明1の構成で除外されており、「PSA-α2-マクログロブリン複合体」以外の腫瘍マーカーの測定において、「生物学的試料を第1の抗体と接触させる前に、加熱することによってドデシル硫酸ナトリウム(SDS)と共に変性させる」ことは、甲1に記載も示唆もされていない。
そうすると、甲2発明において、前記相違点2に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得ることではない。
(4)甲2発明を主発明とした場合の小括
したがって、本件発明1は、甲2発明ではなく、甲2発明及び甲1に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。また、本件発明2~4は、いずれも、本件発明1と同様の「(ただし、前記腫瘍マーカーがPSA-α2-マクログロブリン複合体又はアクチビンβcである場合を除く)」するという発明特定事項を含むものであるから、同様の理由により、甲2発明及び甲1に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
3 申立人の主張について
申立人は、令和5年5月22日提出意見書において、本件訂正により訂正された本件発明1~4は、甲1~2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、取り消されるべきものであると主張する。
しかしながら、本件発明1~4は、「(ただし、前記腫瘍マーカーがPSA-α2-マクログロブリン複合体又はアクチビンβcである場合を除く)」するという発明特定事項を含むものであるから、上記1及び2で検討したとおり、甲1発明及び甲2に記載された事項、又は、甲2発明及び甲1に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
よって、申立人の主張は採用できない。
第7 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由ならびに特許異議申立書に記載した申立理由及び証拠によっては、本件請求項1~4に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1~4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2022-701058