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特許異議申立

2022-701019

液体クロマトグラフ

審判番号
2022-701019
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2021-501218
登録番号
7056797
請求日
2022年10月17日
審決日
2023年10月02日
公報発行日
2024年01月26日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】株式会社島津製作所
  • 【権利者代理人】阿久津 好二
  • 【権利者代理人】妹尾 明展
  • 【権利者代理人】岸本 雅之
  • 【権利者代理人】江口 裕之
  • 【異議申立人】所 智恵子
審判長/審判官
  • 審判長 三崎 仁
  • 審判官 松本 隆彦
  • 審判官 渡戸 正義
分類
P1652.113-YAA(G01N) / P1652.121-YAA(G01N)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第120条の5第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第29条第1項、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の8第1項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7056797号発明「液体クロマトグラフ」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7056797号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~7〕について訂正することを認める。 特許第7056797号の請求項1、2、6及び7に係る特許を維持する。 特許第7056797号の請求項5に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7056797号(以下「本件特許」という。)に係る出願は、2019年(平成31年)2月21日を国際出願日とする特許出願であって、令和4年4月11日にその特許権の設定登録がされ、同年4月19日に特許掲載公報が発行された。 その後、本件特許の請求項1、2、5、6及び7に係る特許に対し、特許異議申立人(以下、「申立人」という。)である所 智恵子により、令和4年10月17日に特許異議の申立てがされた。 以降の手続の経緯は、次のとおりである。 令和4年12月26日付け:取消理由通知 令和5年 3月 6日付け:意見書(特許権者) 同年 4月26日付け:取消理由通知(決定の予告) 同年 7月 7日付け:意見書及び訂正請求書(特許権者) 同年 8月24日 :意見書(申立人) 第2 訂正の適否についての判断 令和5年7月7日付けの訂正請求書により請求された訂正は適法になされたものと判断する。 以下、その理由につき詳述する。 1 訂正の内容 令和5年7月7日付け訂正請求書における訂正請求(以下、「本件訂正請求」といい、本件訂正請求による訂正を「本件訂正」という。)の趣旨は、特許請求の範囲を本件訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~7について訂正することを求めるものであり、その内容は、次の訂正事項1~3からなる(下線部は訂正箇所を示す。)。 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に 「 移動相を送液する送液ポンプと、 前記送液ポンプからの移動相が流れ、試料を成分ごとに分離するための分離カラム及び前記分離カラムにおいて分離した試料成分を検出するための検出器を有する分析流路と、 前記分離カラムの上流において前記分析流路中に試料を注入するための試料注入部と、 前記送液ポンプによる送液圧力を検出する圧力センサと、 試料の分析回ごとに、分析に関する一連の動作中の所定のタイミングで前記圧力センサにより検出される前記送液圧力を記録するように構成された送液圧力記録部と、を備えた液体クロマトグラフ。」と記載されているのを、 「 移動相を送液する送液ポンプと、 前記送液ポンプからの移動相が流れ、試料を成分ごとに分離するための分離カラム及び前記分離カラムにおいて分離した試料成分を検出するための検出器を有する分析流路と、 前記分離カラムの上流において前記分析流路中に試料を注入するための試料注入部と、 前記送液ポンプによる送液圧力を検出する圧力センサと、 試料の分析回ごとに、分析に関する一連の動作中の所定のタイミングで前記圧力センサにより検出される前記送液圧力を記録するように構成された送液圧力記録部と、 前記送液圧力記録部に記録された送液圧力を分析回を追うごとに時系列的に表示する表示装置と、を備えた液体クロマトグラフ。」に訂正する。 (請求項1の記載を引用する訂正後の請求項6及び7についても同様に訂正する。) (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項2に 「前記送液圧力記録部は、前記試料注入部が前記分析流路中に試料を注入する直前の前記送液圧力を記録するように構成されている、請求項1に記載の液体クロマトグラフ。」と記載されているのを、 「 移動相を送液する送液ポンプと、 前記送液ポンプからの移動相が流れ、試料を成分ごとに分離するための分離カラム及び前記分離カラムにおいて分離した試料成分を検出するための検出器を有する分析流路と、 前記分離カラムの上流において前記分析流路中に試料を注入するための試料注入部と、 前記送液ポンプによる送液圧力を検出する圧力センサと、 試料の分析回ごとに、分析に関する一連の動作中の所定のタイミングで前記圧力センサにより検出される前記送液圧力を記録するように構成された送液圧力記録部と、を備え、 前記送液圧力記録部は、前記試料注入部が前記分析流路中に試料を注入する直前の前記送液圧力を記録するように構成されている、液体クロマトグラフ。」に訂正する。 (請求項2の記載を引用する訂正後の請求項3及び4も同様に訂正する。) (3)訂正事項3 特許請求の範囲の請求項5を削除する。 2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否 (1)訂正事項1について 訂正事項1は、訂正前の請求項1に対して、「前記送液圧力記録部に記録された送液圧力を分析回を追うごとに時系列的に表示する表示装置」という記載により、表示装置を備えるものに限定し、特許請求範囲を減縮するものである。 願書に添付した明細書の段落【0020】の「送液圧力表示部32は、送液圧力記録部30によって記録された各分析回の送液圧力を時系列的に、すなわち、分析回を追うごとの送液圧力の変化を視覚的に把握できるように、管理装置12に電気的に接続されている表示装置(図示は省略)に表示するように構成されている。」(下線は当審が付与。)と記載されていることから、表示装置が、送液圧力を時系列的に表示すること、時系列的な表示が、(分析回を追うごとの送液圧力の変化を視覚的に把握できるように)分析回を追うごとの表示であることが開示されていると認められるので、これらの事項から「前記送液圧力記録部に記録された送液圧力を分析回を追うごとに時系列的に表示する表示装置」という記載による訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲及び図面のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではないことは明らかである。 したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された事項の範囲内においてされたものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (2)訂正事項2について 訂正事項2は、訂正前の請求項2が請求項1の記載を引用するものであったところ、独立請求項形式に記載を改め請求項1の記載を引用しないものとする訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に規定する、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものであって、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてなされたものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (3)訂正事項3について 訂正事項3は、本件訂正前の請求項5を削除するものであり、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 また、訂正事項3は、請求項を削除するものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (4)独立特許要件について 訂正事項2は、特許異議の申立てされていない請求項3、4に対しても同様に訂正するものであるところ、上記(2)で述べたとおり、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に掲げることを目的とするものであるから、請求項3及び4については独立特許要件は課されない。 (5)一群の請求項について 訂正前の請求項2~7は、訂正前の請求項1を直接的又は間接的に引用し、これら請求項1~7は一群の請求項を構成するところ、訂正事項1~3の特許請求の範囲の訂正は、特許法第120条の5第4項の規定に従い、この一群の請求項1~7を訂正の単位とする。なお、訂正後の請求項2~4については、訂正請求書において、別の訂正単位とする求めが記載されていない。 3 小括 以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 したがって、本件特許の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~7〕について訂正することを認める。 第3 本件特許請求の範囲の記載 上記第2のとおり本件訂正請求は適法になされたものであると認められるので、本件特許の特許請求の範囲の請求項1~7に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」~「本件発明7」といい、まとめて「本件発明」ということがある。)は、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1~7に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。 「【請求項1】 移動相を送液する送液ポンプと、 前記送液ポンプからの移動相が流れ、試料を成分ごとに分離するための分離カラム及び前記分離カラムにおいて分離した試料成分を検出するための検出器を有する分析流路と、 前記分離カラムの上流において前記分析流路中に試料を注入するための試料注入部と、 前記送液ポンプによる送液圧力を検出する圧力センサと、 試料の分析回ごとに、分析に関する一連の動作中の所定のタイミングで前記圧力センサにより検出される前記送液圧力を記録するように構成された送液圧力記録部と、 前記送液圧力記録部に記録された送液圧力を分析回を追うごとに時系列的に表示する表示装置と、を備えた液体クロマトグラフ。 【請求項2】 移動相を送液する送液ポンプと、 前記送液ポンプからの移動相が流れ、試料を成分ごとに分離するための分離カラム及び前記分離カラムにおいて分離した試料成分を検出するための検出器を有する分析流路と、 前記分離カラムの上流において前記分析流路中に試料を注入するための試料注入部と、 前記送液ポンプによる送液圧力を検出する圧力センサと、 試料の分析回ごとに、分析に関する一連の動作中の所定のタイミングで前記圧力センサにより検出される前記送液圧力を記録するように構成された送液圧力記録部と、を備え、 前記送液圧力記録部は、前記試料注入部が前記分析流路中に試料を注入する直前の前記送液圧力を記録するように構成されている、液体クロマトグラフ。 【請求項3】 前記試料注入部は、分析対象試料を一時的に保持するサンプルループ、及び、前記サンプルループを前記送液ポンプと前記分離カラムとの間に介在させない第1状態と前記サンプルループを前記送液ポンプと前記分離カラムとの間に介在させる第2状態との間で流路構成を切り替えるように構成された切替バルブを有し、 前記送液圧力記録部は、前記試料注入部の前記切替バルブが前記第1状態から前記第2状態に切り替えられる直前の前記送液圧力を記録するように構成されている、請求項2に記載の液体クロマトグラフ。 【請求項4】 前記試料注入部は、管理装置から送信される分析開始命令を受けてから前記切替バルブを前記第1状態から前記第2状態へ切り替えるように構成され、 前記送液圧力記録部は、前記管理装置が前記試料注入部へ前記分析開始命令を送信する直前若しくは直後、又は前記管理装置が前記試料注入部へ前記分析開始命令を送信するのと同時に、前記送液圧力を記録するように構成されている、請求項3に記載の液体クロマトグラフ。 【請求項5】 (削除) 【請求項6】 前記圧力センサによって検出される前記送液圧力を予め設定されたしきい値と比較し、前記送液圧力が前記しきい値を超えたことを圧力エラーとして検出するように構成されたエラー検出部と、 前記エラー検出部が前記圧力エラーを検出した分析回を記録するエラー記録部と、を備えている、請求項1に記載の液体クロマトグラフ。 【請求項7】 前記送液圧力記録部は、試料の分析回ごとに、分析に関する一連の動作中の複数のタイミングで前記圧力センサにより検出される前記送液圧力のうち最も高い圧力値を記録するように構成されている、請求項1に記載の液体クロマトグラフ。」 第4 取消理由通知書(決定の予告)に記載した取消理由について 1 取消理由の概要 当審が特許権者に通知した、令和5年4月26日付けの取消理由の概要は、次のとおりである。 (1)取消理由1(新規性欠如) 訂正前の請求項1に係る発明は、甲第1号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するものであるから、その特許は、同法第29条第1項の規定に違反してされたものである。 (2)取消理由2(進歩性欠如) 訂正前の請求項1、5、6及び7に係る発明は、甲第1号証に記載された発明、甲第1号証~甲第2号証に記載された事項及び慣用手段に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、それらの特許は、同法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 2 証拠一覧 (甲第1号証)特開平9-113496号公報(以下、「甲1」という。) (甲第2号証)特開2011-220789号公報(以下、「甲2」という。) (甲第4号証)特開平9-274028号公報(以下、「甲4」という。) なお、上記取消理由通知(決定の予告)では甲1、甲2及び甲4を提示したが、申立人は、他にも特許異議申立書において甲第3号証及び以下に(申立書引用)として記載した特許公開公報を、令和5年8月24日に提出した意見書で、更に、甲第5号証も提示しているので、ここで併せて記載する。 (甲第3号証)特開平5-223800号公報(以下、「甲3」という。) (甲第5号証)特開2005-321200号公報(以下、「甲5」という。) (申立書引用)特開2013-242244号公報 3 各証拠の記載事項及び引用発明 (1)甲1について ア 甲1の記載事項 甲1には、以下の事項が記載されている(下線は当審が付した)。 (甲1-ア) 「【特許請求の範囲】 【請求項1】 ポンプで溶離液を送液し、試料注入装置より前記溶離液中に試料を注入し、前記溶離液および前記試料をカラムに通過させ、そのカラム中の成分ピークをもとにデータ処理装置で前記試料の同定および定量を行うクロマトグラフ分析装置において、前記溶離液の流路中の圧力を測定する圧力測定手段と、測定開始時から所定の時間間隔毎の圧力測定値を試料別に圧力遷移データのデータファイルとして記憶する圧力記憶手段と、未知試料測定時に比較対照となる圧力遷移データを既に記憶した前記データファイルより選択する選択手段と、前記圧力測定手段で測定した未知試料の圧力測定値と前記選択手段で選択した圧力遷移データの各値とを比較しその合致度を判断する比較手段とを有することを特徴とするクロマトグラフ分析装置。 (・・・途中略・・・) 【請求項6】 請求項5記載のクロマトグラフ分析装置において、前記数値化した合致度に予め閾値を設定する閾値設定手段をさらに有し、前記比較手段は前記数値化した合致度と前記閾値とを比較し、かつ前記出力手段は前記数値化した合致度が前記閾値の範囲にない場合に警告メッセージを出力することを特徴とするクロマトグラフ分析装置。 【発明の詳細な説明】 【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、ポンプで送液される溶離液中に試料を注入してカラムに通過させ、そのカラム中の成分ピークをもとに試料の同定および定量を行うクロマトグラフ分析装置に関する。 【0002】 【従来の技術】クロマトグラフ分析装置は、ポンプで溶離液を送液し、試料注入装置より溶離液中に試料を注入し、その溶離液および試料をカラムに通過させ、そのカラム中の成分ピークをもとにデータ処理装置で上記試料の同定および定量を行うものであるが、ポンプで送液される溶離液の圧力の情報は、クロマトグラフ分析装置が正常に動作しているかどうかを判定するために非常に有効な情報である。 【0003】従来のクロマトグラフ分析装置としては、試料注入時の溶離液の圧力を測定し、その圧力測定値を記録紙上に記録するものがあったが、このようなクロマトグラフ分析装置は圧力測定値を単に記録するだけであり、その圧力の情報から異常かどうかを判定することは不可能であった。これに対し、試料注入後の圧力を連続的に測定し、圧力変化が生じた場合に警告のメッセージを表示するものがあった。さらに、装置の動作異常を圧力遷移により判定する上記と類似の手法として、特公平6-19361号公報に記載のように測定圧力の急激な変化をもとに装置の異常を判定する方法や、特公平6-19362号公報に記載のように測定圧力の積算値をもとに装置の異常を判定する方法があった。 【0004】 【発明が解決しようとする課題】クロマトグラフ分析装置では、溶離液の組成を変化させながら一つの分析対象の分析を行う場合、その分析中に溶離液の圧力が変化する。ところが、上記特公平6-19361号公報や特公平6ー19361号公報に記載の従来技術では、そのような溶離液の組成を変化させる場合の圧力変化に関して何ら配慮されておらず、設定通りに溶離液の組成を変化させている時に、それに起因する圧力変化を急激な変化、あるいは圧力積算値の異常と判断し、装置の異常として認識してしまう不具合があった。 【0005】また、圧力遷移により装置の異常を判定しようとする上記特公平6-19361号公報や特公平6-19361号公報に記載の従来技術は、常に同じ溶離液を、常に同じ条件で送液する場合においては非常に有効であるが、分析対象によって溶離液の送液条件が異なる場合に適用することはできなかった。 【0006】本発明の目的は、分析時に溶離液の組成や送液条件を変化させる場合においても、装置が正常に動作したかどうかを容易にかつ客観的に判断することが可能なクロマトグラフ分析装置を提供することである。 【0007】 【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため、本発明によれば、ポンプで溶離液を送液し、試料注入装置より前記溶離液中に試料を注入し、上記溶離液および試料をカラムに通過させ、そのカラム中の成分ピークをもとにデータ処理装置で前記試料の同定および定量を行うクロマトグラフ分析装置において、前記溶離液の流路中の圧力を測定する圧力測定手段と、測定開始時から所定の時間間隔毎の圧力測定値を試料別に圧力遷移データのデータファイルとして記憶する圧力記憶手段と、未知試料測定時に比較対照となる圧力遷移データを既に記憶した前記データファイルより選択する選択手段と、上記圧力測定手段で測定した未知試料の圧力測定値と上記選択手段で選択した圧力遷移データの各値とを比較しその合致度を判断する比較手段とを有することを特徴とするクロマトグラフ分析装置が提供される。 【0008】上記のように構成した本発明においては、圧力測定手段によって溶離液の流路中の圧力を測定し、圧力記憶手段において測定開始時から所定の時間間隔毎の圧力測定値を試料別に圧力遷移データのデータファイルとして記憶しておく。この記憶すべきデータファイルとしては、標準試料(予め成分や濃度のわかっている試料)の圧力遷移データでもよいし、以前に分析した分析対象試料の圧力遷移データでもよい。そして、未知試料(成分や濃度が未知である分析対象となる試料)の測定時に、選択手段において、上記のように記憶したデータファイルより比較対照となる圧力遷移データを選択し、比較手段において、圧力測定手段で測定した未知試料の圧力測定値と選択手段で選択した圧力遷移データの各値とを比較しその合致度を判断する。 【0009】ここで、標準試料または以前に分析した分析対象試料の測定時と、未知試料測定時とで溶離液の組成や送液条件を同一にすると、溶離液の圧力遷移は同じになるはずである。従って、選択手段において同じ条件で分析した時の標準試料または以前の分析対象試料の圧力遷移データのうちから適切なものを選択し、比較手段で未知試料測定時の圧力遷移と比較して合致度を判断することにより、装置が正常に動作しているか否かを容易にかつ客観的に判断することが可能となる。また、未知試料測定時の圧力遷移データと、同じ条件で分析した時の標準試料または以前の分析対象試料の圧力遷移データとを比較するため、溶離液の組成や送液条件を変化させながら分析を実施する場合に本発明を適用することは勿論可能である。 【0010】上記クロマトグラフ分析装置において好ましくは、比較手段が、測定開始時からの同時刻における未知試料の圧力測定値と前記データファイルより選択した圧力遷移データの各値との合致度を数値化する手段である。また、好ましくは、上記比較手段が、未知試料の圧力測定値と前記データファイルより選択した圧力遷移データの各値との差または比をとる手段である。 【0011】このように構成すると、比較手段で上記のような比較を行う場合に、測定開始時からの同時刻における圧力遷移の合致度を数値化するため、一層容易にかつ客観的にその合致度を判断することが可能となる。その際、各値間の差または比をとって数値化すれば非常に容易に合致度の判断ができる。 (・・・途中略・・・) 【0014】さらに、好ましくは、前記数値化した合致度に予め閾値を設定する閾値設定手段をさらに有し、上記比較手段は前記数値化した合致度と前記閾値とを比較し、かつ上記出力手段は前記数値化した合致度が前記閾値の範囲にない場合に警告メッセージを出力する。 【0015】このように、閾値設定手段によって数値化した合致度に予め適当な閾値を設定しておき、比較手段で数値化した合致度と上記閾値とを比較し、その閾値の範囲にない場合に出力手段から警告メッセージを出力すれば、装置が正常に動作しているか否かを一層容易にかつ客観的に判断することが可能となる。」 (甲1-イ) 「【0017】図1は、本実施形態のクロマトグラフ分析装置の構成図である。溶離液ボトル1a,2aに収容された溶離液1,2はポンプ5により加圧送液される。このとき、バルブ3,4を開閉させることにより、溶離液1,2の組成をそれぞれ変化させることが可能である。試料注入装置7からは試料が流路中に注入され、溶離液に混合された試料はカラム8により各成分に分離される。カラム8は温度変化を避けるためにカラム恒温槽8aの中に収容されている。検出器9においてはカラム8からの溶出液の変化が電気信号に変換され、データ処理装置10の分析部10aに送られる。分析部10aでは各成分ピークの保持時間から成分の同定を、各成分ピークの溶出面積あるいは高さから成分の定量を行なう。圧力センサ6はポンプ5の下流側に取り付けられており、圧力センサ6で測定された圧力値はデータ処理装置10の判定部10bに送られる。」 (甲1-ウ) 「【0019】図3は、本実施形態のクロマトグラフ分析装置におけるデータ処理装置10の判定部10bの構成を示す図である。圧力センサ6で測定された溶離液の圧力値は電気信号に変換されて判定部10bのA/D変換器11に送られ、デジタル化された後にCPU12に送られる。CPU12では、試料注入装置7から試料注入信号が入力されると、所定の一定時間間隔毎に圧力値データをメモリ13に格納する。そして、圧力値データの格納開始より定められた時間が経過するか、あるいは分析が終了すると、上記圧力値データの集合は圧力遷移データとして名称が付けられ一データファイルとしてメモリ13に再記憶される。上記のようにメモリ13に記憶すべきデータファイルとしては、標準試料(予め成分や濃度のわかっている試料)の圧力遷移データの場合と、以前に分析した分析対象試料の圧力遷移データの場合とがある。 【0020】そして、未知試料(成分や濃度が未知である分析対象となる試料)の測定時に、上記データファイルの中から比較対照となる圧力遷移データを選択し、CPU12において、圧力センサ6で測定した未知試料の圧力値とデータファイルの中から選択した圧力遷移データの各値とを比較し、その合致度を両者の差または比により判断する。但し、データファイルの中から比較対照となる圧力遷移データを選択する際には、入力部14より行い、表示部15にその様子を表示させる。また、未知試料の圧力値もその後の分析時の比較対照となる圧力遷移データとして使用することができるように一データファイルとして記憶しておく。CPU12における比較結果(圧力遷移合致度)は、分析部10aにおける成分の同定結果および定量結果と共に出力部16より出力される。この出力部16からの出力方式としては種々の方式が考えられ、例えば、テレビ画面を用いてもよいし、プリンタを用いて記録紙にプリントアウトする方式を用いてもよいし、フロッピーディスク等に記録する方式を用いてもよい。 【0021】図4は、未知試料の比較対照とすべき圧力遷移データをデータファイルより選択する際の表示部15の画面の一例である。未知試料の分析を行うには、通常、その分析の直前に標準試料を分析しておいてから、それと同じ条件で未知試料の分析を行う。従って、比較対照となる圧力遷移ファイルとしては、上記のように直前の標準試料を分析した際に得られた圧力遷移ファイルとするのがよい。あるいは、上記直前の標準試料に限らず、それよりも以前に分析した分析対象試料の圧力遷移データとしてもよい。図4では、標準試料分析時のファイルを指定する場合と、それよりも以前に分析した試料のファイルをファイル名で指定する場合のどちらかを選択する画面を示している。また、圧力遷移合致度の閾値は、差によって合致度を判断する場合には0に近い所定の範囲に設定し、比によって合致度を判断する場合には1に近い所定の範囲に設定しておく。図4では、比によって合致度を判断するものとし、その閾値を0.9から1.1の範囲と設定している。 【0022】図5は、図2の条件で標準試料を分析した際にその圧力を試料注入時から10秒ごとに測定記憶し、同じ条件で分析した未知試料分析時の圧力も同様に測定記憶して、試料注入後同時刻の圧力値同士を比較した図である。合致度は両者の圧力値の差および比により表している。装置が正常に動作した場合は、圧力の遷移は標準試料分析時と未知試料分析時で酷似しており、試料注入後同時刻の圧力値データ同士を比較すると、その差は-0.02から0.10MPa、その比は1.00から1.02の範囲に入る。 【0023】図6は、未知試料分析時に溶離液(アセトニトリル)の送液流路に気泡が混入した場合の圧力の変化を、図5と同様の方法で比較した図である。送液流路に気泡が入ったことにより、試料注入後260秒後近傍で標準試料分析時と比較して未知試料分析時の圧力が低下している。また、アセトニトリルが設定通りに送液(吸引)できなかったために未知試料分析時のアセトニトリルの濃度が標準試料分析時よりも減少し、試料注入後300秒後近傍で未知試料分析時の圧力の上昇が見られる。この場合、試料注入後同時刻の圧力値データ同士を比較すると、その差は-2.79から0.24MPa、その比は0.56から1.04となり、装置が正常に動作した場合よりは明らかに大きな違いがあることがわかる。」 (甲1-エ) 「【0024】図7は、未知試料分析の途中でカラム恒温槽8aの異常により、カラム8の温度が変化した場合の圧力の変化を、図5と同様の方法で比較した図である。カラム8の温度が低下したことにより、試料注入後250秒以後に標準試料分析時と比較して未知試料分析時の圧力が上昇している。この場合、試料注入後同時刻の圧力値データ同士を比較すると、その差は-0.02から0.68MPa、その比は1.00から1.11となり、図6の気泡が入った場合と同様に、装置が正常に動作した場合よりは明らかに大きな違いがあることがわかる。 【0025】これらのことから、標準試料分析時の圧力を試料注入後から一定時間間隔毎に測定記憶し、未知試料分析時にも同様の条件で測定記憶し、試料注入後同時刻の圧力値データ同士を比較することにより、ポンプ5を含む送液装置、溶離液の組成を変化させるためのバルブ3,4、あるいはカラム恒温槽8a等の装置が正常に、すなわち標準試料分析時と同じように動作していたかどうかを確認することができる。 【0026】図8は本実施形態のクロマトグラフ分析装置で得られた分析結果レポートの一例を示す図である。分析日時、出力日時、分析法ファイル名、データファイル名とともに、試料注入後の圧力を10秒ごとに測定記憶した圧力データファイル名が出力されている。各成分の濃度に続いて出力されている圧力遷移合致度は、標準試料分析時に試料注入後の圧力を10秒ごとに測定記憶して得られた比較対照となる圧力ファイル(図ではファイル名をPAH001.PRSとしている)と、今回の(未知試料の)分析で得られた圧力値(図では圧力データファイル:PAH005.PRSとしている)を比較したものであり、図8の場合には試料注入後同時刻のデータ同士の比を取って、全データの中でその比が1から一番大きくはなれた値を圧力遷移合致度として出力している。 【0027】図9は本実施形態のクロマトグラフ分析装置で得られた分析結果レポートの他の例を示す図である。図8と同じ方法で算出された圧力遷移合致度が出力されている。但し、図では、この時の(未知試料の)分析で得られた圧力値を圧力データファイル:PAH006.PRSとしている。この例では、圧力遷移合致度(比の値)が0.56で、予め設定した所定の閾値である0.9から1.1(図4参照)の範囲に入っていないため、「圧力遷移が異常です」という警告メッセージが出力されている。 (・・・途中略・・・) 【0029】以上のような本実施形態によれば、未知試料の測定時に、標準試料または以前に分析した分析対象試料の圧力遷移データの中から比較対照となるものを選択し、データ処理装置10の判定部10bにおいて、試料注入後同時刻における未知試料の圧力測定値と選択した圧力遷移データの各値との比または差をとってその合致度を判断するので、装置が正常に動作しているか否かを容易にかつ客観的に判断することができる。また、未知試料測定時の圧力遷移データと、同じ条件で分析した時の標準試料または以前の分析対象試料の圧力遷移データとを比較するため、溶離液の組成や送液条件を変化させながら分析を実施する場合にも適用できる。 (・・・途中略・・・) 【図面の簡単な説明】 【図1】本発明の一実施形態によるクロマトグラフ分析装置の構成図である。 (・・・途中略・・・) 【符号の説明】 1,2 溶離液 3,4 バルブ 5 ポンプ 6 圧力センサ 7 試料注入装置 8 カラム 8a カラム恒温槽 9 検出器 10 データ処理装置 10a 分析部 10b 判定部 12 CPU 13 メモリ 14 入力部 15 表示部 16 出力部」 (甲1-オ)(図1) [図:0001405795000001.jpg] ・図1からの看取事項 クロマトグラフ分析装置は、ポンプから圧力センサ、試料注入装置、カラム、検出器と順に接続される流路を備えている。 (甲1-カ)(図5) [図:0001405795000002.jpg] (甲1-キ)(図8) [図:0001405795000003.jpg] ・図8からの看取事項 分析結果レポートには、分析日時、データファイル名、圧力ファイル、対照圧力ファイル、圧力遷移合致度が含まれ、圧力遷移合致度が1.02であり、(甲1―ウ)の記載事項(「予め設定した所定の閾値である0.9から1.1(図4参照)の範囲」)と合わせると、圧力遷移合致度は所定の閾値の範囲内である。 (甲1-ク)(図9) [図:0001405795000004.jpg] ・図9からの看取事項 分析結果レポート中の「圧力遷移合致度」は「0.56(圧力遷移が異常です)」と記載されていることから、分析結果レポートにおいて、警告メッセージが出力されている。 イ 甲1発明 (甲1―エ)の図8、9に関する説明、(甲1-キ)及び(甲1-ク)から、分析結果レポートは、圧力遷移の異常の有無にかかわらず出力されるものと認められる。上記(甲1-ア)~(甲1-ク)の記載事項から、甲第1号証には、次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。 「データ処理装置、溶離液ボトルに収容された溶離液を加圧送液するポンプ、試料を流路中に注入する試料注入装置、溶離液に混合された試料を各成分に分離するカラム、カラムからの溶出液の変化を電気信号に変換し、データ処理装置の分析部に送る検出部、ポンプの下流側に取り付けられている圧力センサ、圧力センサで測定された圧力値が送られるデータ処理装置の判定部、及び、ポンプから圧力センサ、試料注入装置、カラム、検出器と順に接続される流路を備えたクロマトグラフ分析装置であって、 データ処理装置の判定部のCPUでは、試料注入装置から試料注入信号が入力されると、10秒ごとに圧力値データをメモリに格納し、圧力値データの格納開始より定められた時間が経過するか、あるいは分析が終了すると、上記圧力値データの集合は圧力遷移データとして名称が付けられデータファイルとしてメモリに再記憶するように構成され、 標準試料分析時に試料注入後の圧力を10秒ごとに測定記憶し、未知試料分析時にも同様の条件で測定記録し、試料注入後同時刻の圧力値同士を比較して、その比をとって、全データの中でその比が1から一番大きくはなれた値を圧力遷移合致度としてテレビ画面に出力し、予め設定した所定の閾値の範囲に入っていない時に、分析結果レポートに警告メッセージを出力し、前記分析結果レポートには、分析日時、データファイル名、試料注入後の圧力を10秒ごとに測定記録した圧力データファイル名、対照圧力ファイル名、圧力遷移合致度が含まれるクロマトグラフ分析装置。」 (2)甲2について 甲2には、以下の事項が記載されている。 (甲2-ア) 「【特許請求の範囲】 (・・・途中略・・・) 【請求項5】 前記分析処理部は、前記仕様及び推奨分析条件を含む情報と、分析中に記録された前記クロマトユニットの駆動状態とを比較し、 前記警告部は、前記仕様及び推奨分析条件の範囲外で駆動した前記クロマトユニットに関する警告を前記出力装置に出力することを特徴とする請求項1記載の液体クロマトグラフ装置。 【発明の詳細な説明】 【技術分野】 【0001】 本発明は、液体クロマトグラフ装置に関し、例えば管理用電子タグによって制御可能な液体クロマトグラフ装置に関するものである。 (・・・途中略・・・) 【0015】 すなわち、本発明による液体クロマトグラフィー装置は、中央処理装置が液体クロマトグラフ分析を制御する液体クロマトグラフ装置であって、前記液体クロマトグラフ分析に用いるポンプ、オートサンプラ、カラムオーブン、又は検出器を含むクロマトユニットに関する仕様及び推奨分析条件を含む情報が予め記録されたカラムタグと、前記クロマトユニットに関する仕様及び推奨分析条件を含む情報を前記カラムタグから読み出す初期設定部と、分析者から前記クロマトユニットの分析条件に関する指示を受信し、前記仕様及び推奨分析条件を含む情報並びに前記分析者からの指示に基づき前記クロマトユニットを制御し、前記クロマトユニットの駆動状態を記録する分析処理部と、前記分析処理部が受信した分析者からの指示に基づき、前記カラムの洗浄処理または封入液充填処理を実施するカラム洗浄・封入液充填部と、前記カラムの洗浄処理または封入液充填処理のうち少なくとも一方が未実施の場合、分析者が前記カラムオーブンからカラムを取り外す際に、出力装置に警告メッセージを表示する警告部と、を備え、前記中央処理装置は、前記ポンプから送出された溶離液に前記オートサンプラから注入された試料を混合した混合液を、前記カラムオーブンで高温維持しながら成分分離し、該成分を前記検出器で検出することで、液体クロマトグラフ分析を制御する。 【発明の効果】 【0016】 本発明によれば、液体クロマトグラフ装置において、カラム特有の推奨条件で、カラム洗浄、及び封入液充填を自動化でき、カラムの管理が容易となる。また、分析者によるカラム洗浄漏れ、及び封入液充填漏れを防止でき、カラム寿命を長くすることができる。 【図面の簡単な説明】 【0017】 (・・・途中略・・・) 【図5】 本発明の実施形態に係る分析処理のフローチャートを示す図である。 (・・・途中略・・・) 【発明を実施するための形態】 【0018】 本発明は、ポンプから送出された溶離液にオートサンプラから注入された試料を混合した混合液を、カラムオーブンで高温維持しながら成分分離し、該成分を検出器で検出することで液体クロマトグラフ分析を行う液体クロマトグラフ装置に関するものである。 (・・・途中略・・・) 【0020】 <液体クロマトグラフ装置の構成> 図1は、本発明の実施形態に係る液体クロマトグラフ装置の概略構成を示す図である。 液体クロマトグラフ装置は、複数種類の溶離液10、洗浄液11、および封入液12を送出するポンプ20、試料を注入するオートサンプラ30、オートサンプラ30からの混合液を成分分離するカラムオーブン40、分離した各成分を検出し特定する検出器50、これら機構を制御する中央処理装置70、検出結果を出力するディスプレイやプリンタ等の出力装置80、分析者がシステム構成設定や分析条件(後述する図4のステップ401、402)を入力するのに用いるキーボードやマウス等の入力装置90、検出後の廃液を回収する廃液容器60、カラムオーブン40に接続されたカラムタグ110、を備える。なお、入力装置90は、出力装置80の表示面上に設けられたタッチパネルなどでも良い。 【0021】 図2は、本発明の実施形態に係るカラムオーブン40とカラムタグ110の概略構成図である。カラムオーブン40には、カラム100にワイヤー120で紐付けされたカラムタグ110が接続されている。カラムタグ内の情報は、カラムオーブン40を仲介して中央処理装置70が読み書きする。」 (甲2-イ) 「【0035】 <分析処理> ここでは、前述したステップ402での分析処理について、図5を用いて詳細に説明する。図5は、本発明の実施形態に係る分析処理のフローチャートを示す図である。ここでの主体は、特に表記がなければ分析処理部1202である。 【0036】 ステップ500では、分析者が入力装置90に入力した分析処理開始合図を受信し、分析処理を開始する。 【0037】 ステップ501では、図10のステップ1003でカラムタグ110から読み込んだ、注入回数交換目安(No.6)と、注入回数(No.19)とを比較する。ここでの注入回数とは、前回の分析処理終了後時点において、試料を注入した累積回数である。 【0038】 ステップ502では、比較した結果、注入回数が注入回数交換目安以上である場合、警告部1204は、カラム交換時期を分析者へ知らせる警告メッセージを出力装置80に出力する。 【0039】 ステップ503では、分析者が入力装置90に入力した分析条件、即ちクロマトユニットを構成する各装置の装置条件を取得し、設定する。装置条件とは、例えば、ポンプ20における溶離液混合比率、流量、及び圧力上下限値、オートサンプラ30における試料注入量、注入回数、及び圧力上下限値、カラムオーブン40における温度設定値、温度上下限値、並びに検出器50における測定波長及び測定時間等である。このように、各装置の装置条件を中央処理装置70が認識することで、各装置を制御することができる。 【0040】 ステップ504~508では、混合液の作成から成分検出までを行う。ポンプ20が溶離液10をオートサンプラ30に送出し(ステップ504)、オートサンプラ30が溶離液10に試料を注入し、混合液を作成する。ここで、オートサンプラ30の注入と同時に、カラムタグ110内の注入回数(No.19)を更新する(ステップ505)。その後、カラムオーブン40がこの混合液を恒温維持しながら成分分離し(ステップ506)、検出器50が分離された各成分を検出する(ステップ507)。検出後の混合液は、廃液容器60に廃棄される(ステップ508)。これらの処理の間、例えば、ポンプ20からはポンプ圧力が、オートサンプラからは注入圧力が、カラムオーブン40からはオーブン温度が、随時データ処理70に送信され、出力装置80に表示されるとともに、それぞれの最大値が記録される。また、検出されたクロマトデータは、随時中央処理装置70に送信され、出力装置80に表示される。このように、各装置からの情報及び駆動状態が出力装置80に集中することで、分析者が随時分析状況を把握できる。 【0041】 ステップ509では、得られたクロマトデータからクロマトピークの高さや面積を算出し、この結果を出力装置80に出力する。また、分析者は、出力装置80に表示された各装置の駆動状態を見ながら、各装置の調整を行うことができる。例えば、ポンプ20のポンプ圧力を調整したり、オートサンプラ30の試料注入量を調整したり、カラムオーブン40の温度を調整したりできる。 【0042】 ステップ510では、図10のステップ1003でカラムタグ110から読み出した最大圧力(No.20)と、ステップ504~508の間に中央処理装置70に記憶された分析中の最大圧力とを比較する。 【0043】 ステップ511では、比較した結果、分析中の最大圧力が読み出した最大圧力より大きい場合、カラムタグ110の最大圧力(No.20)および最大圧力更新日時(No.21)を更新する。 【0044】 ステップ512では、図10のステップ1003でカラムタグ110から読み出した最大圧力交換目安(No.7)と、ステップ504~508の間に中央処理装置70に記憶された分析中の最大圧力とを比較する。 【0045】 ステップ513では、比較した結果、分析中の最大圧力が最大圧力交換目安以上である場合、カラム交換時期を分析者へ知らせる警告メッセージを出力装置80に出力する。 (・・・途中略・・・) 【0052】 なお、注入回数に関する警告(ステップ502)、最大圧力および最高温度に関する警告(ステップ513、517)の順番、および警告の回数は問わない。 (・・・途中略・・・) 【0069】 <まとめ> 本発明の実施形態によれば、初期設定部1201は、分析者により設定されたクロマトユニットに関する情報をカラムタグ110から読み出し、クロマトユニットを制御する。また、分析者は、出力装置80に表示されたクロマトユニットの駆動状態を監視し、クロマトユニットの状態を調整する。この場合、分析処理部1202は、クロマトユニットからの情報を受信しながら、分析者により設定された分析条件に従って、クロマトユニットを制御する。このようにすることにより、液体クロマトグラフ分析を自動化できるので、分析者の負担を軽減し、分析時間を減らすことができる。 【0070】 また、分析処理部1202は、カラムタグ110から読み出したクロマトユニットの仕様および推奨分析条件と、これらに対応する、分析中に記録されたクロマトユニットの最大値とを比較する。比較の結果、クロマトユニットの仕様および推奨分析条件の範囲外で駆動したクロマトユニットについては、警告部1204が、出力装置80に警告を出力する。こうすることにより、クロマトユニットの性能を適切に維持でき、性能が劣化したものについては忘れることなく迅速に交換できるので、分析時間を減らし、高い分析精度を維持することができる。」 (甲2-ウ)「【図5】 [図:0001405795000005.jpg] 」 (3)甲3について 甲3には、以下の事項が記載されている。 「【特許請求の範囲】 【請求項1】 分析流路上に、移動相送液ポンプ、ループ式インジェクター、カラム及び検出器を備えた分析装置と、移動相を分析流路に送液し、該移動相中にループ内のサンプルを注入してカラム及び検出器にて分析すべく分析装置の各部に作動を指令する制御装置とからなる液体クロマトグラフにおいて、 制御装置が、サンプル注入開始時又はその直前から所定時間、移動相の送液流量を所定量増加させるべく、送液ポンプに作動を指令する、サンプル注入時の圧力流量低下防止用指令部を具備してなる液体クロマトグラフ。 【発明の詳細な説明】 【0001】 【産業上の利用分野】この発明は、液体クロマトグラフに関し、更に詳しくはループ式インジェクターを用いてサンプルを移動相中に注入する液体クロマトグラフに関する。 (・・・途中略・・・) 【0004】 【課題を解決するための手段及び作用】この発明は分析流路上に、移動相送液ポンプ、ループ式インジェクター、カラム及び検出器を備えた分析装置と、移動相を分析流路に送液し、該移動相中にループ内のサンプルを注入してカラム及び検出器にて分析すべく分析装置の各部に作動を指令する制御装置とからなる液体クロマトグラフにおいて、制御装置が、サンプル注入開始時又はその直前から所定時間、移動相の送液流量を所定量増加させるべく、送液ポンプに作動を指令する、サンプル注入時の圧力流量低下防止用指令部を具備してなる液体クロマトグラフである。 【0005】すなわち、この発明は、制御装置の指令部により、サンプル注入開始時又はその直前から所定時間、移動相の送液流量を所定量増加させることによって、サンプル注入時の圧力・流量の低下を防止しようとするものである。制御装置の指令部としては、移動相の送液流量増加分と流量増加時間とを次の〔I〕〔II〕式を満する値、f3(t)と(t2-t1 )とにそれぞれ設定するものを好ましい例として挙げることができる。 (・・・途中略・・・) 【0007】 【実施例】以下、図に示す実施例に基づいてこの発明を詳述する。なお、これによってこの発明は限定を受けるものではない。まず図1において、液体クロマトグラフ(1)は、分析流路(2)上に移動相の送液ポンプ(3)、ループ式インジェクター(4)、カラム(5)及び検出器(6)を備えた分析装置(7)と、移動相を分析流路(2)に送液し、該移動相中にループ内のサンプルを注入してカラム(5)及び検出器(6)にて分析すべく分析装置(7)の各部に作動を指令するマイクロコンピュータよりなる制御装置(8)とから主としてなる。 【0008】前記ループ式インジェクター(4)は、分析流路(2)上の送液ポンプ(3)とカラム(5)との間に接続された6方切換バルブ(9)と、このバルブの2つのポートを連結するサンプルループ(10)と、残りの2つのポートに接続されたシリンジ(11)及びサンプル容器(12)とからなる。なお、(13)(14)は開閉バルブ、(15)は移動相容器、(16)は洗浄液容器、(17)はフラクションコレクターである。 【0009】而して制御装置(8)は、サンプル注入開始時(t1 )から終了時(t2 )までの所定時間(T=t2-t1 )、移動相の送液流量を所定量〔f3(t)〕増加させるべく送液ポンプ(3)に作動を指令する回路、つまりサンプル注入時の圧力・流量低下防止用指令回路(18)を具備している。なお、(19)は圧力センサである。 【0010】そして移動相の送液流量増加分f3(t)と流量増加時間(T=t2-t1 )とは次の〔I〕〔II〕式を満足する値に設定される。 【0011】 【数2】 [図:0001405795000006.jpg] 〔ここでf3(t)は移動相の送液流量増加分であり、通常送液流量f2 と増加時の送液流量f1 との差である。t2 ,t1 はそれぞれ流量増加開始時間と終了時間、Pは通常の移動相の送液圧力、V1 はサンプルの注入体積、V2 はループ内容積、K1 、K2 はそれぞれサンプルおよび移動相の圧縮率、αは分析装置の補正係数で定数である。〕 かくして制御装置(8)は分析装置(7)の各部に作動を指令して分析装置(7)を全体として次のように作動させる。 【0012】すなわち、切換バルブ(9)を実線の接続状態で、送液ポンプ(3)を作動させて分析流路(2)に移動相を定常状態で流れるようにする。一方、インジェクター(4)のループ(10)には、シリンジ(11)の吸引作動によりサンプルがサンプル容器(12)から切換バルブ(9)を介して充填される。そして切換バルブ(9)を点線の接続状態に切換えて定常状態の移動相中にサンプルループ(10)中の一定量のサンプルを注入するが、切換バルブ(9)の上記切換時から所定時間(T=t2-t1 )、送液ポンプ(3)の移動相送液流量を所定量〔f3(t)〕増加させると送液ポンプ(3)の出口圧力低下が、送液流量を増加させない場合(図5)に比べて少なくなる(図2)。この送液ポンプ(3)の出口圧力は、ほぼそのままカラム(5)及び検出器(6)に伝達されるので、カラム(5)及び検出器(6)に対する影響も少なくなる。 【0013】ここで制御装置(8)の指令回路(18)によって行われる移動相の送液流量増加分f3(t)と流量増加時間(T=t2-t1 )との設定例を挙げる。 α=1、圧力P=100kgf/cm2,通常の送液流量f2:20ml/分 サンプルの圧縮率K1 =1%/100kgf/cm2 移動相の圧縮率 K2 =1%/100kgf/cm2 サンプルループ内容積V2:20ml,サンプル注入体積V1:10ml及び流量増加時間T:1/100分として送液流量増加分f3(t)の求まる値の例はf3(t)=20ml/分(t1≧t≧t2)f3(t)=0(t<t1及びt>t2)となる。 【0014】ここで分析流路上のループ式インジェクター(4)とカラム(5)との間に、図1のごとき逆止弁(20)又は抵抗管(21)を介設し、圧力の乱れ、特に圧力の変動幅を少なくすることもできる。具体的には、逆止弁(20)の介設はサンプル注入時に移動相がカラム(5)からインジェクター(4)側へ逆流するのを防止してカラム(5)の入口圧力の急激な減少(圧力ショック)を防止する。また圧力損失が少ないので送液ポンプ圧力を有効に使えることになる。一方抵抗管(21)の介設はその抵抗によって圧力ショックを防止できるが、デッドボリュームを少なくできるのでサンプルバンドの拡がりも防止できる。なお、抵抗管(21)を使用する場合には、カラム径、送液流量に応じて適切な、抵抗値のものを選択して介設する必要がある。 【0015】以上の各実施例とは異なり、移動相の送液流量の増加は、サンプル注入開始時ではなく、その直前(例えばサンプル注入開始時より0.1~0.2秒前)から行なわれてもよい。通常、サンプル注入開始は制御装置によって予め定められた時刻に行なわれるので、その時刻より前に、移動相の送液流量の増加時刻を制御装置によって設定すればよい。 【0016】 【発明の効果】この発明によれば、制御装置の指令部により、サンプル注入開始時又はその直前から所定時間、移動相の送液流量を所定量増加させることによって、サンプル注入時の圧力・流量の低下を防止でき、それによってカラムの寿命を長くすると共に検出器のベースへの影響を少なくする。 【図面の簡単な説明】 【図1】この発明に係る液体クロマトグラフの一実施例を示す構成説明図である。 【図2】上記実施例の場合のサンプル注入時における移動相の送液量と送液ポンプ出口圧力の時間変化を示すグラフである。 【図3】上記実施例のインジェクターとカラムとの間に抵抗管(21)を介設した場合の送液ポンプ出口圧力とカラム入口圧力の時間変化を示すグラフである。 (・・・途中略・・・) 【図5】従来例の場合の図2相当図である。 【符号の説明】 1 液体クロマトグラフ 2 分析流路 3 送液ポンプ 4 ループ式インジェクター 5 カラム 6 検出器 7 分析装置 8 制御装置 18 サンプル注入時の圧力・流量低下防止用指令回路」 「図1 [図:0001405795000007.jpg] 」 「 [図:0001405795000008.jpg] 」 (4)甲4について 甲4には、以下の事項が記載されている。 (甲4-ア) 「【特許請求の範囲】 【請求項1】 分析対象の試料をサンプリングして分析用のカラムに供給するオートサンプラ、溶離液の前記カラムへの送液および切り換えを行なうポンプ、前記カラムを恒温保持するカラムオーブン、および前記カラムでの測定データを収集する検出器を機器として有するクロマトグラフユニットを複数備え、データ処理装置によって前記クロマトグラフユニットからの前記測定データをデータ処理して分析結果を求める液体クロマトグラフにおいて、 前記データ処理装置に備えられ、個々の前記クロマトグラフユニットにおける各機器の構成および分析条件を記憶する主記憶手段と、 前記データ処理装置に備えられ、個々の前記クロマトグラフユニットに対して前記主記憶手段に記憶した前記分析条件を送ると共に、個々の前記クロマトグラフユニットに対して測定動作および各機器の固有情報の送信を要求する主制御手段と、 個々の前記クロマトグラフユニットに備えられ、前記データ処理装置からの測定動作要求に対して前記分析条件のもとで前記クロマトグラフユニットの各機器に測定動作を行わせると共に前記各機器の固有情報を取得し、前記クロマトグラフユニットの各機器で生じた障害をチェックすると共にその障害情報および前記各機器の固有情報を前記主制御手段に送るユニット制御手段とを備え、 さらに前記主制御手段は、前記障害情報、前記固有情報および前記分析条件をもとに個々の前記クロマトグラフユニットに生じた障害の解析を行い、かつ前記主記憶手段は前記障害解析結果を個々の前記クロマトグラフユニットにおける各機器の構成毎に対応付けて記憶することを特徴とする液体クロマトグラフ。 (・・・途中略・・・) 【発明の詳細な説明】 【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、分析対象の試料を溶離液により溶離させて分析を行うクロマトグラフユニットを複数備えた液体クロマトグラフに係わり、特に個々のクロマトグラフユニットにおける装置に生じた障害を解析する構成を備えた液体クロマトグラフに関する。 【0002】 【従来の技術】液体クロマトグラフィは、恒温保持した分析用のカラム内で分析対象の試料を溶離液により溶離させて分析を行う分析方法であるが、このような分析を行うクロマトグラフユニットを複数備えてシステムを構築し、多数の試料の分析を行うことを可能にした液体クロマトグラフが知られている。従来、このような液体クロマトグラフのシステムにおいて測定上の障害が発生した場合には、実際に測定に使用した多数のクロマトグラフユニットにおける装置構成、それら個々のクロマトグラフユニットにおける各装置の測定条件や設定条件、各クロマトグラフユニットにおけるデータ処理条件などと共に、エラーに関する情報をオペレータが収集および転記し、その転記した情報をもとにして障害の発生箇所、障害の種類、障害の発生状況等を解析し、その解析結果に基づいて発生した障害の回避手段を講じていた。 【0003】 【発明が解決しようとする課題】複数のクロマトグラフユニットで構築された液体クロマトグラフのシステムでは、個々のクロマトグラフユニットの動作が複雑に絡んでいるため、障害の解析を行うためには正確な情報を取得することが重要である。 【0004】しかしながら、前述した個々のクロマトグラフユニットの装置構成、測定条件や設定条件、データ処理条件、エラーに関する情報などの収集および転記は、オペレータが直接パラメータ設定画面等から手作業で行っていたため、障害の解析のために必要な情報が不足したり、誤って転記を行ったりした場合には、障害を回避するための的確な手段が得られなかったり、障害の回避手段を得るために多大な時間を費やす場合があった。」 (甲4-イ) 「【0005】本発明の目的は、複数のクロマトグラフユニットで構築された液体クロマトグラフにおいて、手作業に頼ることなく、かつ必要な情報が不足したり情報を誤って転記することがないように障害解析用の情報取得を行うことができ、的確な障害回避手段を得ることが可能な液体クロマトグラフを提供することである。 【0006】 【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため、本発明によれば、分析対象の試料をサンプリングして分析用のカラムに供給するオートサンプラ、溶離液の上記カラムへの送液および切り換えを行なうポンプ、上記カラムを恒温保持するカラムオーブン、および上記カラムでの測定データを収集する検出器を機器として有するクロマトグラフユニットを複数備え、データ処理装置によってクロマトグラフユニットからの前記測定データをデータ処理して分析結果を求める液体クロマトグラフにおいて、前記データ処理装置に備えられ個々のクロマトグラフユニットにおける各機器の構成および分析条件を記憶する主記憶手段と、前記データ処理装置に備えられ個々のクロマトグラフユニットに対して前記主記憶手段に記憶した分析条件を送ると共に個々のクロマトグラフユニットに対して測定動作および各機器の固有情報の送信を要求する主制御手段と、個々のクロマトグラフユニットに備えられ前記データ処理装置からの測定動作要求に対して前記分析条件のもとでクロマトグラフユニットの各機器に測定動作を行わせると共に前記各機器の固有情報を取得しクロマトグラフユニットの各機器で生じた障害をチェックすると共にその障害情報および各機器の固有情報を前記主制御手段に送るユニット制御手段とを備え、さらに前記主制御手段は前記障害情報や前記固有情報や前記分析条件をもとに個々のクロマトグラフユニットに生じた障害の解析を行い、かつ前記主記憶手段は前記障害解析結果を個々のクロマトグラフユニットにおける各機器の構成毎に対応付けて記憶することを特徴とする液体クロマトグラフが提供される。」 (甲4-ウ) 「【0008】このように構成した本発明においては、まず、個々のクロマトグラフユニットにおけるオートサンプラ、ポンプ、カラムオーブン、および検出器等の各機器の構成がデータ処理装置の主記憶手段に記憶される。また、個々のクロマトグラフユニットにおける測定のための分析条件も上記主記憶手段に記憶される。記憶される各機器の構成および分析条件に関しては、例えばオペレータが各々のパラメータを入力する。 【0009】そして、主制御手段からは個々のクロマトグラフユニットに対して測定のための分析条件が送られ、また測定動作が要求される。この測定動作要求に対し、個々のクロマトグラフユニットにおいては、上記分析条件のもとでユニット制御手段によって各機器に測定動作を行わせ、その時の各機器の固有情報が取得される。この時の測定データはユニット制御手段或いはそれ以外のルートを介してデータ処理装置に送られ、その測定データがデータ処理されて分析結果が求められる。クロマトグラフユニットの各機器で障害が生じると、その障害をユニット制御手段がチェックすると共にその障害情報が主制御手段に送信される。また、主制御手段は各機器の固有情報の送信を個々のクロマトグラフユニットに要求し、それに答えて各機器の固有情報がユニット制御手段から送られる。この固有情報としては、例えば測定時におけるオートサンプラによるサンプリング量、ポンプの圧力変化、カラムオーブン温度変化、検出器による検出データ等がある。 【0010】主制御手段では、ユニット制御手段から送られた障害情報および固有情報、さらに主記憶手段に記憶しておいた分析条件をもとに、個々のクロマトグラフユニットに生じた障害の解析を行う。そして、その障害解析結果は主記憶手段において個々のクロマトグラフユニットにおける各機器の構成毎に対応付けて記憶される。 【0011】また、障害解析結果出力手段をさらに備えている場合には、上記の後、障害解析結果が出力される。 【0012】このように本発明では、個々のクロマトグラフユニットの各機器の構成が実際にどんなものであるか、さらに個々のクロマトグラフユニットにおける測定のための分析条件がどんなものであるかが主記憶手段に前もって記憶され、クロマトグラフユニットの各機器で障害(エラー)が生じた場合にその障害解析結果が各機器の構成毎に対応付けて記憶されるため、個々のクロマトグラフユニット毎の各機器の構成および該当する個々の分析条件を正確に認識した上で、どんな障害がどのクロマトグラフユニットにおけるどの機器で生じたのかという情報を、手作業に頼らずに的確かつ迅速に取得することが可能である。従って、必要な情報が不足したり情報を誤って転記することがなく、的確な障害回避手段を得て、その障害に対処することが可能となる。 【0013】 【発明の実施の形態】本発明による液体クロマトグラフの一実施形態について、図1から図5を参照しながら説明する。 【0014】まず、図1により、本実施形態の液体クロマグラフのシステム構成を説明する。ホストコンピュータ1はシステム全体の動作やデータの管理を行う中核をなすコンピュータであり、ホストコンピュータ1にはデータ処理装置2が公衆回線や専用回線等の通信回線で接続されており、データ処理装置2には主制御部2a、主記憶部2b、入力部2cが備えられている。データ処理装置2の主制御部2aは測定データ波形処理および定量計算やその他種々の演算機能および制御機能を備えた回路から構成されており、通信回線を介してクロマトグラフユニット3に接続されている。また、主制御部2aには主記憶部2bに記憶された内容を適宜出力する出力装置8が接続されている。 【0015】クロマトグラフユニット3にはユニット制御部3a、ユニット記憶部3bが備えられており、ユニット制御部3aにはポンプ4、オートサンプラ5、検出器6、およびカラムオーブン7等の機器が接続されている。ユニット制御部3aは主制御部2aによって制御され、かつ各機器の制御および各機器からの情報の取得を行う。図では示されていないが、このシステムはクロマトグラフユニット3と同様の構成を多数備えており、それぞれのクロマトグラフユニット3とデータ処理装置2の主制御部2aとが通信回線で接続されている。 【0016】上記において、主記憶部2bやユニット記憶部3bとしては、SRAMやDRAM等の一般的なコンピュータに備えられるものと同種のメモリを用いるのが好ましい。また、通常のハードディスクや光磁気ディスク、或いはその他のディスク装置を用いてもよい。 【0017】次に、図2~図4により本実施形態の液体クロマトグラフによる処理の流れを説明する。但し、図2はデータ処理装置2におけるデータ処理の流れを示す図であり、図3は個々のクロマトグラフユニット3における動作の流れを示す図である。 【0018】まず、図2のステップS101において、システムコンフィギュレーションの設定を行う。即ち、システムのうちの測定に使用すべきクロマトグラフユニット3の各機器の構成、例えば多数のクロマトグラフユニットのどのクロマトグラフユニットを使用し、そのクロマトグラフユニットのどの機器(ポンプ4や検出器6等)を使用するのかということを指定したシステムコンフィギュレーションファイル(装置構成ファイル)を作成し、主記憶部2bに記憶する。 【0019】次に、ステップS102において、分析条件の作成を行う。即ち、どういう分析をどういう条件で行うかという具体的な内容を指定した分析条件ファイルを作成し、主記憶部2bに記憶する。この分析条件としては、例えば、オートサンプラ5の注入量および注入回数、ポンプ4による溶離液混合比率、流量、圧力の上下限値、カラムオーブン7の温度設定値と温度上下限値、検出器6による測定波長と測定時間等がある。 【0020】ステップS101およびステップS102の処理は、測定を開始するに先立ち、オペレータが入力部2cから入力することにより行う。主記憶部2bでは、例えば図4に示すように、作成されたシステムコンフィギュレーションファイルC1,C2,…の下部にディレクトリが設けられ、その該当するディレクトリ下に分析条件ファイルC11,C12,…が配置される。つまり、同一のシステムコンフィギュレーションにおける分析条件ファイルは、同一ディレクトリ下に格納されることになる。 【0021】次に、ステップS103において、上記ステップS102で作成した分析条件の設定要求および測定動作要求が主制御部2aから個々のクロマトグラフユニット3に通信回線を経由して転送される。 【0022】ここで、個々のクロマトグラフユニット3における動作を図3により説明する。ステップS201において、各クロマトグラフユニット3のユニット制御部3aは主制御部2aからの動作要求を待っている状態であり、通信回線を経由して何らかの動作要求を受信するとステップS202に進む。ステップS202では、各クロマトグラフユニット3が受信した動作要求がどのようなものかを判断し、それぞれに対応したステップに進む。 【0023】上記動作要求が分析条件の設定要求である場合には、ステップS203に進み、ユニット制御部3aは主制御部2aから受信した分析条件をユニット記憶部3bに記憶する。その後は、再びステップS201に戻って動作要求待ちの状態となる。 【0024】上記動作要求が測定動作要求であった場合には、ステップS204に進み、ユニット制御部3aの制御のもとに、ユニット記憶部3bで記憶された分析条件に従って、ポンプ4、オートサンプラ5、検出器6、カラムオーブン7等の各機器により測定動作を行なう。ステップS204の測定動作が終了すると、ユニット制御部3aはステップS206に示すように測定中にエラーが発生したか否かをチェックする。その結果、エラーが発生していなかった場合にはそのままステップS201に戻って動作要求の状態となり、エラーが発生していた場合には、ステップS206に示すようにデータ処理装置2の主制御部2aに対してそのエラー情報を送信し、ステップS201に戻って動作要求待ちの状態となる。 【0025】ステップS201で受信した動作要求が固有情報要求(図1のステップS107で後述する)であった場合には、ステップS207に進み、そのクロマトグラフユニット3のポンプ4、オートサンプラ5、検出器6、およびカラムオーブン7等の各機器の固有情報を取得して主制御部2aに対して送信する。上記各機器の固有情報としては、例えばオートサンプラ5に関するものとして、設定された分析条件で正確な注入量が得られたかどうかの情報、さらにインジェクションポート、インジェクションバルブ、シリンジシール、およびシリンジバルブなどの交換部品の使用回数(メンテナンス情報)があり、ポンプ4に関するものとして、設定された分析条件に沿って適正な圧力が得られたかどうかを示す測定中の圧力変化(圧力プロフィール)のデータや、ポンプシールなどの交換部品の使用回数(メンテナンス情報)があり、カラムオーブン7に関するものとして、設定された分析条件に沿って適正な温度が保持されたかを示す測定中の温度変化(温度プロフィール)のデータがあり、検出器6に関するものとして、設定された分析条件に沿って適正に検出されたかを示すランプエネルギー値と波長を表すデータがある。固有情報の送信後には、ステップS201に戻って動作要求待ちの状態となる。 【0026】次に、図2に戻って引き続きデータ処理装置2におけるデータ処理を説明する。ステップS103で行った分析条件の設定要求および測定動作要求を受けて上述のように各クロマトグラフユニット3に測定を行わせ(ステップS104)、その測定データを主制御部2aが受け取って主記憶部2bに記憶してある分析条件も利用しながら必要なデータ処理を行い、その計算結果を測定データと共に主記憶部2bに記憶する。また、その測定結果(測定データおよび計算結果)を出力装置8に出力する(ステップS105)。但し、主記憶部2bでは、図4に示すように、測定データC111,C121,…および計算結果C112,C122,…が測定したシステムコンフィギュレーションファイル下部のディレクトリに、それぞれのシステムコンフィギュレーションC1,C2,…および分析条件C11,C12,…毎に対応付けて格納される。 【0027】続いて、ステップS106において、主制御部2aは測定が正常に終了したかどうかを、前述した各クロマトグラフユニット3からのエラー情報をもとに確認し、エラーが発生せずに測定が正常に終了した場合にはステップS102に戻り、エラーが発生したために測定が正常に終了しなかったと判断した場合にはステップS107に進む。 【0028】エラーが発生していた場合即ちステップS107では、主制御部2aが各クロマトグラフユニット3のユニット制御部3aに対して固有情報送信要求を行なう。すると、図3の207で説明したように、主制御部2aはユニット制御部3aから送信された各機器の固有情報を受信する(ステップS108)。次に、主制御部2aは、ステップS102で作成した各クロマトグラフユニット3に対する分析条件ファイルを主記憶部2bから読み込み、その分析条件と受信した各クロマトグラフユニット3の各機器の固有情報とを用いてデータ処理を行い、障害解析情報ファイルを生成し、主記憶部2bに記憶する(ステップS109)。但し、図4に示すように、障害解析情報ファイルC113,C123,…は、ユーザ名(オペレータ名)、分析日時、および分析条件等、その測定に関する全ての情報を含んでおり、システムコンフィギュレーションファイル下部のディレクトリに、それぞれのシステムコンフィギュレーションC1,C2,…および分析条件C11,C12,…毎に対応付けて格納される。この時点で、障害解析情報ファイルC113,C123,…を、例えばレポート形式で印刷するなどして出力装置8より出力することもできる。 (・・・途中略・・・) 【0031】以上のような本実施形態によれば、ポンプ4、オートサンプラ5、検出器6、およびカラムオーブン7などの各機器、即ちクロマトグラフユニット3毎の各機器の構成をシステムコンフィギュレーションファイルとして主記憶部2bに前もって記憶しておき、またその各機器による分析条件を分析条件ファイルとして主記憶部2bに記憶しておき、クロマトグラフユニット3でエラーが生じた場合にその障害解析情報ファイルをシステムコンフィギュレーションファイル毎に対応付けて記憶するので、クロマトグラフユニット3毎の各機器の構成および該当する個々の分析条件を正確に認識した上で、どんな障害がどのクロマトグラフユニットにおけるどの機器で生じたのかという情報を、手作業に頼らずに的確かつ迅速に取得することができる。従って、必要な情報が不足したり情報を誤って転記することがなく、的確な障害回避手段を得て、その障害に対処することが可能となる。 【0032】 【発明の効果】本発明によれば、個々のクロマトグラフユニット毎の各機器の構成、およびその各機器による分析条件を主記憶手段に記憶しておき、障害が生じた場合にその障害解析結果を各機器の構成毎に対応付けて記憶するので、障害情報を手作業に頼らずに的確かつ迅速に取得することができる。従って、必要な情報が不足したり情報を誤って転記することがなく、的確な障害回避手段を得て、その障害に対処することが可能となる。」 (5)甲5について 甲5には、以下の事項が記載されている。 (甲5-ア) 「【請求項1】 分析装置による分析によって取得されるデータ、そのデータから解析処理等により派生するデータ、分析実行時や解析処理時の条件を示すデータなどを集中的に管理するための機器分析用データ管理装置において、 (・・・途中略・・・) を備えることを特徴とする機器分析用データ管理装置。」 (甲5-イ) 「【発明の効果】 【0013】 本発明に係る機器分析用データ管理装置によれば、予め指定された時間範囲内に実行された分析により得られるデータ、そのデータから解析処理等により派生するデータ、或いは、分析実行時や解析処理時の条件を示すデータなどの各種データと、それらデータに対して為された操作ログとが同一のデータ集合体に格納され、一元的に管理される。したがって、操作履歴の時間的な連続性や操作履歴とデータとの時系列的な関係を容易に調べることができる。また、操作ログ又はデータが不正に改竄されたときに、その改竄を迅速に見つけることができ、有効な対策を採り易くなる。それによって、高いセキュリティ性を達成することができる。」 (甲5-ウ) 「【0025】 上記のように記録された操作ログを確認したい場合には、入力部18によりそのファイルを指定し、表示部19の画面上に操作ログを時系列的に一覧表示させたり、或いは任意の条件を設定して絞り込みを行って必要な情報のみを表示させたりすることができる。」 (6)特開2013-242244号公報について 特許異議申立書の65頁4行において引用された特開2013-242244号公報には、次の事項が記載されている。 「【0027】 《アラーム発生履歴管理部の詳細》 図4は、図2におけるアラーム発生履歴管理部の機能の一例を示す図である。アラーム発生履歴記憶部201bの記憶情報は、図3で述べたように部品の交換時期の決定に用いられるほか、アラーム発生履歴管理部201aを介して例えば図4に示すようなアラーム発生履歴表示画面401で表示することが可能となっている。当該画面は、例えばユーザの命令等に応じて表示され、自動分析装置の保守・点検(メンテナンス)時等で活用することができる。アラーム発生履歴表示画面401上には、アラームが発生した日時やそのアラーム番号を表すアラーム発生一覧402が表示される。なお、図示は省略するが、アラーム発生一覧402では、例えば、アラーム番号を指定することで、当該アラーム番号に特化した発生日時を表示するようなフィルタリングを実施することも可能となっている。 【0028】 また、アラーム発生履歴表示画面401上には、更にアラーム発生履歴グラフ403が表示される。当該アラーム発生履歴グラフ403では、アラーム番号を選択することにより、その発生日時と累積発生回数との関係が時系列的なグラフとして表示される。当該グラフ内では、▲プロットを選択することにより、アラーム発生時間を確認することが可能となっている。このようなアラーム発生履歴グラフ403を参照することで、アラームの発生頻度や発生回数の累計を視覚的に確認することができる。したがって、例えば、ユーザが部品交換条件設定部202aを用いて設定する交換条件を更に適正化したいような場合等に、このようなグラフを活用することが可能である。」 「 [図:0001405795000009.jpg] 」 第5 当審の判断 1 取消理由1(新規性欠如)について (1)本件発明1について ア 対比・判断 本件発明1と上記甲1発明を対比すると、後者の特定事項は、前者の特定事項と以下の(対比ア)~(対比ケ)の対応関係で相当するものである。 (対比ア)甲1発明の「溶離液ボトルに収容された溶離液を加圧送液するポンプ」は、本件発明1の「移動相を送液する送液ポンプ」に相当する。 (対比イ)甲1発明の「溶離液に混合された試料を各成分に分離するカラム」は、本件発明1の「前記送液ポンプからの移動相が流れ、試料を成分ごとに分離するための分離カラム」に相当する。 (対比ウ)甲1発明の「カラムからの溶出液の変化を電気信号に変換し、データ処理装置の分析部に送る検出部」は、本件発明1の「前記分離カラムにおいて分離した試料成分を検出するための検出器」に相当する。 (対比エ)甲1発明の「ポンプから圧力センサ、試料注入装置、カラム、検出器と順に接続される流路」は、本件発明1の「分離カラム及び」「検出器を有する分析流路」に相当する。 (対比オ)甲1発明の「試料を流路中に注入する試料注入装置」は、本件発明1の「前記分離カラムの上流において前記分析流路中に試料を注入するための試料注入部」に相当する。 (対比カ) 甲1発明の「ポンプの下流側に取り付けられている圧力センサ」は、本件発明1の「前記送液ポンプによる送液圧力を検出する圧力センサ」に相当する。 (対比キ)甲1発明は、「標準試料分析時に試料注入後の圧力を10秒ごとに測定記憶し、未知試料分析時にも同様の条件で測定記録」するものであり、分析結果を分析結果レポートとして出力するものであって、分析結果レポートには、圧力データファイル名が含まれることから、標準試料分析時、及び、未知試料分析時に注入後の圧力を10秒ごとに測定記録されるものである。そして、クロマトグラフ分析装置による分析は、分析が必要とされる試料、つまり、未知試料の分析を目的として行われるものであるから、基本的には、未知試料を対象とするものである。そうすると、「試料注入後の圧力を10秒ごとに測定記録」することは、分析回ごとに行われるといえるものである。 したがって、甲1発明における「上記圧力値データの集合」を「圧力遷移データとして名称が付けられデータファイルとして再記録」する「メモリ」は、本件発明1の「試料の分析回ごとに、分析に関する一連の動作中の所定のタイミングで前記圧力センサにより検出される前記送液圧力を記録するように構成された送液圧力記録部」に相当する。 (対比ク)甲1発明における「圧力遷移合致度」を「出力」する「テレビ画面」と、本件発明1の「前記送液圧力記録部に記録された送液圧力を分析回を追うごとに時系列的に表示する表示装置」とは、「圧力に関する情報を表示する表示装置」の点で共通する。 (対比ケ)甲1発明の「クロマトグラフ分析装置」は、「溶離液に混合された試料を各成分に分離するカラム」を用いるものであるから、本件発明1の「液体クロマトグラフ」に相当する。 以上のことから、本件発明1と甲1発明との一致点、相違点は次のとおりである。 <一致点> 「移動相を送液する送液ポンプと、 前記送液ポンプからの移動相が流れ、試料を成分ごとに分離するための分離カラム及び前記分離カラムにおいて分離した試料成分を検出するための検出器を有する分析流路と、 前記分離カラムの上流において前記分析流路中に試料を注入するための試料注入部と、 前記送液ポンプによる送液圧力を検出する圧力センサと、 試料の分析回ごとに、分析に関する一連の動作中の所定のタイミングで前記圧力センサにより検出される前記送液圧力を記録するように構成された送液圧力記録部と、 圧力に関する情報を表示する表示装置と、を備えた液体クロマトグラフ。」 <相違点1> 圧力に関する情報を表示する表示装置について、本件発明1では、「前記送液圧力記録部に記録された送液圧力を分析回を追うごとに時系列的に表示する」のに対して、甲1発明は、「試料注入後同時刻の圧力値同士を比較して、その比をとって、全データの中でその比が1から一番大きくはなれた値を圧力遷移合致度としてテレビ画面に出力」するものであり、圧力遷移データを、分析回を追うごとに時系列的に表示するものではない点。 よって、上記相違点1は実質的な相違点であるから、本件発明1は、甲1発明はではない。 2 取消理由2(進歩性欠如)について (1)本件発明1について ア 相違点1の検討 「(1)取消理由1(新規性欠如)について」で検討したように、本件発明1と甲1発明は、上記相違点1で相違するものであるから、この点が、当業者が容易に想到し得たものであるか否かについて検討する。 甲2には、上記「第4」の「3」「(2)甲2について」の(甲2-イ)で摘記したように、比較した結果、分析中の最大圧力が最大圧力交換目安以上である場合、カラム交換時期を分析者へ知らせる警告メッセージを出力装置80に出力する(段落【0038】、【0045】)ことや、検出されたクロマトデータ及びクロマトデータから算出されたクロマトピークの高さや面積を出力装置80に出力する(段落【0040】~【0041】)ことは記載があるものの、本件発明1の上記相違点1の構成を開示するものではない。 甲3には、上記「第4」の「3」「(3)甲3について」で摘記したように、「圧力センサ」を設けることは記載されている(段落【0009】)ものの、表示装置については記載がない。そのため、甲3は、本件発明1の上記相違点1の構成を開示するものではない。 甲4には、上記「第4」の「3」「(4)甲4について」で摘記したように、ポンプの圧力変化などの機器の固有情報(段落【0009】)を用いてデータ処理を行い、障害解析情報ファイルを生成し、出力装置より出力すること(段落【0028】)が記載されているものの、分析回を追うごとの圧力変化を時系列的に表示することは記載されていないので、甲4は、本件発明1の上記相違点1の構成を開示するものではない。 甲5には、上記「第4」の「3」「(5)甲5について」の(甲5-ウ)で摘記したように、「表示部19の画面上に操作ログを時系列的に一覧表示させ」ることは記載されている(段落【0025】)ものの、分析回を追うごとの圧力変化を時系列的に表示することは記載されていないので、甲5は、本件発明1の上記相違点1の構成を開示するものではない。 よって、本件発明1の圧力に関する情報を表示する「表示装置」が「前記送液圧力記録部に記録された送液圧力を分析回を追うごとに時系列的に表示する」点については、上記のとおり、甲2~5のいずれにも開示されていないのであるから、甲1発明にいかに甲2~甲5に記載されている事項を組み合わせても、上記相違点1について当業者が容易に想到し得たものではない。したがって、本件発明1は、甲1発明及び甲2~5に記載の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 加えて、甲1発明の解決しようとする課題は、「第4」「3」「(1)甲1について」(甲1-ア)の【0006】に「本発明の目的は、分析時に溶離液の組成や送液条件を変化させる場合においても、装置が正常に動作したかどうかを容易にかつ客観的に判断することが可能なクロマトグラフ分析装置を提供することである。」と記載されているとおりであり、そのために甲1発明では「試料注入後同時刻の圧力値同士を比較して、その比をとって、全データの中でその比が1から一番大きくはなれた値を圧力遷移合致度としてテレビ画面に出力し、予め設定した所定の閾値の範囲に入っていない時に、分析結果レポートに警告メッセージを出力」しているものである。そうすると、甲1発明は、2回の分析間での圧力差を閾値処理することで異常を判定する技術思想のものであるから、本件発明1のように、あえて「送液圧力記録部に記録された送液圧力を分析回を追うごとに時系列的に表示する」必要はないものであるから、甲1発明において「送液圧力記録部に記録された送液圧力を分析回を追うごとに時系列的に表示する」動機があるとはいえない。 イ 申立人の主張について (ア)申立人は、令和5年8月24日提出の意見書において、以下の主張をしている。 a 主張1 「甲1発明において、第5図に記載されているような形態で圧力の変化を表示できるようにすることは当業者が適宜なし得たことであるから、訂正前の請求項5には進歩性欠如の無効理由がある。したがって、新規性又は進歩性を欠如した訂正前の請求項1に同じく進歩性を欠如した請求項5を追加して減縮したとしても、何ら進歩性欠如の無効理由が解消されるものではない。 異議申立書においても指摘したように、複数の分析回のそれぞれについて送液圧力記録部により送液圧力を記録する場合、それが「時系列的に表示するように構成」することは、そもそも如何なる技術分野においてもごく基本的な事柄であり、極めて単純な設計事項であり、何ら本件発明における特異な技術内容ではない。特許権者の意見によっても、「記録された送液圧力を分析回を追うごとに時系列的に表示する」という構成と従来技術との組合せが阻害されるものであるとの主張はなされていない。」(4頁4~16行) b 主張2 「異議申立書において、特開2013-242244号公報(2013年12月5日公開)を指摘するなど、当該技術が開示された文献は枚挙に暇が無いことを指摘し、且つ、当該基本的技術を甲1発明に組み合わせることについて何らの阻害要因もないことを明らかにした。補足すれば、本件特許出願前である平成17年11月17日に公開された同一特許権者(株式会社島津製作所)の出願に係る公開特許公報特開2005-321200(発明の名称「機器分析用データ管理装置」)には以下の各記載があるが、これらの記載はいずれも、「記録された送液圧力を分析回を追うごとに時系列的に表示する」という技術内容を記載又は示唆するものであり、甲第1号証とこれらの技術内容を組み合わせることについては、同一分野の技術として動機付けがあるから、いずれにせよ、訂正事項1によって進歩性欠如の無効理由が解消するものではない。」(5頁9~19行)(上記摘記中の「以下の各記載」が指す記載は、「第4」の「3」「(5)甲5について」で摘記した記載である。) (イ)申立人の主張に対する判断 ・aについて 主張1の前半については、「前記送液圧力記録部に記録された送液圧力を分析回を追うごとに時系列的に表示する」ことは、訂正前の請求項5の特定事項そのものではないので、採用できない。 また、主張1の後半については、時系列的に表示するように構成することが極めて単純な設計事項であるとした場合であっても、分析回を追うごとに時系列的に表示することは、各分析回を追うごとの圧力変化を把握しやすくするためであるが、甲1発明は、上記「ア 相違点1の検討」で指摘したように、2回の分析間での圧力差を閾値処理することで異常を判定する技術思想のものであるから、本件発明1のように、あえて「送液圧力記録部に記録された送液圧力を分析回を追うごとに時系列的に表示する」必要はないものであるから、甲1発明において「送液圧力記録部に記録された送液圧力を分析回を追うごとに時系列的に表示する」動機があるとはいえない。 よって、主張1の後半についても採用できない。 ・bについて 特開2013-242244号公報には、「第4」の「3」「(6)」で摘記したように段落【0023】及び図4には、アラーム発生履歴グラフを表示することが記載されている。また、甲5は上記「2」「(1)」「ア 相違点1の検討」の説示のとおりであり、両者とも、相違点1の「前記送液圧力記録部に記録された送液圧力を分析回を追うごとに時系列的に表示する」ことは開示されていない。そして、仮にそれらが開示されているとしても、上記「2」「(1)」「ア 相違点1の検討」で述べたとおり、甲1発明において「送液圧力記録部に記録された送液圧力を分析回を追うごとに時系列的に表示する」動機がない。 よって、主張2は採用できない。 ウ 小括 以上のとおり、本件発明1は、甲1発明及び甲2~5に記載の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないことから、本件発明1に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。 (2)本件発明6、7について 本件発明6及び7は、本件発明1を引用するものであるから、同様に、甲1発明及び甲2~5に記載の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないことから、本件発明6及び7に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。 第6 取消理由において採用しなかった特許異議申立理由について 1 取消理由において採用しなかった特許異議申立理由の概要 標記の特許異議申立理由(以下、「申立理由」という)は、概略、以下のとおりである。 (1)訂正前の請求項2に係る発明に対する新規性欠如 請求項2に係る発明は、甲1発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するものであるから、その特許は、同法第29条第1項の規定に違反してされたものある。 (2)訂正前の請求項2に係る発明に対する進歩性欠如 請求項2に係る発明は、甲1発明及び甲3に開示された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、その特許は、同法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 2 当審の判断 (1)対比 本件発明2は、本件発明1から「前記送液圧力記録部に記録された送液圧力を分析回を追うごとに時系列的に表示する表示装置」の発明特定事項を削除し、「前記送液圧力記録部は、前記試料注入部が前記分析流路中に試料を注入する直前の前記送液圧力を記録するように構成されている」という発明特定事項を加えたものである。 上記「第6」「1」「(1)」「ア」の記載を踏まえて、本件発明2と甲1発明を対比すると、両者の一致点、相違点は次のとおりである。 <一致点> 「移動相を送液する送液ポンプと、 前記送液ポンプからの移動相が流れ、試料を成分ごとに分離するための分離カラム及び前記分離カラムにおいて分離した試料成分を検出するための検出器を有する分析流路と、 前記分離カラムの上流において前記分析流路中に試料を注入するための試料注入部と、 前記送液ポンプによる送液圧力を検出する圧力センサと、 試料の分析回ごとに、分析に関する一連の動作中の所定のタイミングで前記圧力センサにより検出される前記送液圧力を記録するように構成された送液圧力記録部と、 を備えた液体クロマトグラフ。」 <相違点2> 送液圧力記録部が、本件発明2では、「前記送液圧力記録部は、前記試料注入部が前記分析流路中に試料を注入する直前の前記送液圧力を記録するように構成されている」のに対して、甲1発明は、そのように構成されていない点。 よって、上記相違点2は実質的な相違点であるから、本件発明2は、甲1発明はではない。 (2)相違点2の検討 上記相違点2について検討する。 「第4」「3」「(3)甲3について」で摘記したように、甲3の段落【0016】には、「制御装置の指令部により、サンプル注入開始時又はその直前から所定時間、移動相の送液流量を所定量増加させることによって、サンプル注入時の圧力・流量の低下を防止でき、それによってカラムの寿命を長くすると共に検出器のベースへの影響を少なくする」ことが記載されており、同じく摘記した甲3の段落【0009】~【0012】には、増加させる所定量である「移動相の送液流量増加分f3(t)」について記載されており、具体的な値は、式〔I〕で特定される値である。 [図:0001405795000010.jpg] この式〔I〕には、「通常の移動層の送液圧力」であるPが含まれ、甲3の実施例に記載の液体クロマトグラフは、符号19で示される圧力センサを備えるものの(甲3の段落【0009】)、圧力センサの測定値に関する記録については記載がない。また、甲3の図2、3には、圧力の時間変化についてのグラフが記載されており、特に、図3では、ポンプ出口とカラム入口の圧力のグラフが記載されている。しかし、図1から圧力センサはポンプ出口にしか設けられていないことが看取でき、カラム入口の圧力は測定できない。また、図2のグラフについては、甲3の段落【0012】に「そして切換バルブ(9)を点線の接続状態に切換えて定常状態の移動相中にサンプルループ(10)中の一定量のサンプルを注入するが、切換バルブ(9)の上記切換時から所定時間(T=t2-t1 )、送液ポンプ(3)の移動相送液流量を所定量〔f3(t)〕増加させると送液ポンプ(3)の出口圧力低下が、送液流量を増加させない場合(図5)に比べて少なくなる(図2)。」という記載があり、これらのことを踏まえると、図2や図3のグラフは、甲3に記載の発明を説明するための概念的な説明図であると把握されるにとどまるものである。してみれば、甲3には、サンプル注入開始直前の圧力を測定し、記録すること、つまり、本件発明2の上記相違点2の「前記送液圧力記録部は、前記試料注入部が前記分析流路中に試料を注入する直前の前記送液圧力を記録するように構成されている」という事項が、記載されているとはいえない。 よって、甲1発明に甲3に開示された技術を適用したとしても、本件発明2の上記相違点2に係る構成を想到することは当業者にとって容易ではない。 (3)申立人の主張 ア 新規性欠如について 申立人は、特許異議申立書の60頁24行~61頁9行において「甲第1号証の明細書段落【0003】に「従来のクロマトグラフ分析装置としては、試料注入時の溶離液の圧力を測定し、その圧力測定値を記録紙上に記録するものがあった」とあるように、従来のクロマトグラフ分析装置において、試料注入時の溶離液の圧力を測定することは技術常識であり、前記2(1)ウ記載のとおり、甲1発明も構成gとして「試料注入時の溶離液の圧力を測定し、その圧力測定値を記録紙上に記録する、クロマトグラフ分析装置を技術事項に含むものである。ここで、従来技術であり、且つ、甲1発明の構成gが示す「試料注入時」とは、技術的に試料注入後でないことは明らかであるから、試料を注入するタイミング、すなわち、「試料を注入する直前」を意味することは自明である。」と主張している。しかし、申立人が根拠とする甲1の段落【0003】の記載は、従来技術に関する記載であり、圧力を記録紙上に記録するものでは異常判定が不可能であることから、圧力変化を測定・電子的に記録して異常判定を行うという技術の流れがあり、甲1発明が、さらに溶離液組成を変化させる場合の誤判定を改善しようとするものであることを踏まえると、甲1の従来技術として記載されるような圧力測定値を記録紙上に記録する構成、つまり申立人のいう構成gを具備しないと解するのが妥当である。 よって、申立人の主張は採用できない。 イ 進歩性欠如について 申立人は、特許異議申立書の61頁20行~62頁6行及び令和5年8月24日提出の意見書の7頁2~8行において、甲1発明と甲3発明は、技術分野及び課題を共通にし、甲1発明と甲3発明に開示された技術を組み合わせることに動機付けがあるので、上記相違点2は、甲1発明において、周知技術又は甲3発明に開示された技術を参酌することにより、当業者にとって容易に想到できるものであるという旨の主張を行っている。しかし、上記(2)で相違点2について検討したように、甲3に上記相違点2の構成が開示されているとは認められない。 よって、申立人の主張は採用できない。 (4)まとめ 以上のことから、本件発明2は、甲1発明ではなく、そして、甲1発明及び甲3に開示された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではないことから、本件発明2に係る特許は、特許法第29条第1項及び第2項の規定に違反してされたものではない。 第7 むすび 上記第5及び6のとおり、本件特許の請求項1、2、6及び7に係る特許は、特許法第29条第1項及び第2項の規定に違反してされたものであるということはできず、同法第113条第2号に該当するものではないから、取消理由及び特許異議申立書に記載した申立ての理由によっては、取り消すことはできない。 また、他に本件特許の請求項1、2、6及び7に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 さらに、本件特許の請求項5に係る特許は、訂正により削除されたため、請求項5に係る特許についての特許異議申立は、申立ての対象が存在しないものとなったので、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。 よって、結論のとおり決定する。

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2022-701019

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