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特許異議申立

2022-700936

光学積層体および該光学積層体の位相差層付偏光板を含む画像表示装置

審判番号
2022-700936
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2020-127534
登録番号
7046127
請求日
2022年09月26日
審決日
2023年07月04日
公報発行日
2023年10月27日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】日東電工株式会社
  • 【権利者代理人】籾井 孝文
  • 【異議申立人】松永 健太郎
審判長/審判官
  • 審判長 里村 利光
  • 審判官 杉山 輝和
  • 審判官 井口 猶二
分類
P1651.113-YAA(G02B) / P1651.121-YAA(G02B) / P1651.536-YAA(G02B) / P1651.537-YAA(G02B)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第120条の5第4項、特許法第29条、特許法第120条の5第2項、特許法第113条
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7046127号発明「光学積層体および該光学積層体の位相差層付偏光板を含む画像表示装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7046127号の明細書及び特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の明細書及び請求項〔1-12〕について訂正することを認める。 特許第7046127号の請求項1ないし12に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7046127号の請求項1~12に係る特許(以下「本件特許」という。)についての出願(特願2020-127534号)は、令和2年7月28日を出願日とする出願であって、令和4年3月24日にその特許権の設定登録がされ、令和4年4月1日に特許掲載公報が発行された。 本件特許について、特許掲載公報の発行の日から6月以内である令和4年9月26日に、特許異議申立人 松永 健太郎(以下、「異議申立人」という。)から、請求項1~12に係る特許に対して、特許異議の申立てがされた。その後の手続等の経緯の概要は、以下のとおりである。 令和4年12月16日付け:取消理由通知書 令和5年 2月16日 :特許権者による意見書・訂正請求書の提出 令和5年 4月11日 :異議申立人による意見書の提出 第2 本件訂正請求及び訂正の適否についての判断 1 請求の趣旨 令和5年2月16日にされた訂正の請求(以下「本件訂正請求」という。)の趣旨は、特許第7046127号の明細書、特許請求の範囲を、本件訂正請求書に添付した訂正明細書、特許請求の範囲のとおり、訂正後の明細書及び請求項1~12について訂正することを求める、というものである。 2 訂正の内容 本件訂正請求における訂正の内容は次のとおりである。なお、下線は訂正箇所を示すものである。 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に 「偏光子と該偏光子の少なくとも視認側に保護層とを含む偏光板と、該偏光板の視認側と反対側に第1の接着剤層を介して貼り合わせられた第1の位相差層と、該第1の位相差層に第2の接着剤層を介して貼り合わせられた第2の位相差層と、該第2の位相差層の該第1の位相差層と反対側に設けられた粘着剤層と、を有する位相差層付偏光板と; 該位相差層付偏光板の視認側に剥離可能に仮着された表面保護フィルムと; 該位相差層付偏光板の該粘着剤層に剥離可能に仮着されたセパレーターと; を備える光学積層体であって、 該粘着剤層の厚みをTPSA、該位相差層付偏光板の厚みをTPWR、該光学積層体の厚みをTOLとしたとき、下記の関係を満足する、光学積層体: TPSA/TPWR≧0.4 TPSA/TOL≦0.29。」 と記載されているのを、 「偏光子と該偏光子の少なくとも視認側に保護層とを含む偏光板と、該偏光板の視認側と反対側に第1の接着剤層を介して貼り合わせられた第1の位相差層と、該第1の位相差層に第2の接着剤層を介して貼り合わせられた第2の位相差層と、該第2の位相差層の該第1の位相差層と反対側に設けられた粘着剤層と、を有する位相差層付偏光板と; 該位相差層付偏光板の視認側に剥離可能に仮着された表面保護フィルムと; 該位相差層付偏光板の該粘着剤層に剥離可能に仮着されたセパレーターと; を備える光学積層体であって、 該セパレーターの厚みが50μm以上であり、 該粘着剤層の厚みをTPSA、該位相差層付偏光板の厚みをTPWR、該光学積層体の厚みをTOLとしたとき、下記の関係を満足する、光学積層体: TPSA/TPWR≧0.4 TPSA/TOL≦0.29。」 に訂正する。請求項1の記載を引用する請求項3~12も同様に訂正する。 (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項2に 「偏光子と該偏光子の少なくとも視認側に保護層とを含む偏光板と、該偏光板の視認側と反対側に第1の接着剤層を介して貼り合わせられた第1の位相差層と、該第1の位相差層に第2の接着剤層を介して貼り合わせられた第2の位相差層と、該第2の位相差層の該第1の位相差層と反対側に設けられた粘着剤層と、を有する位相差層付偏光板と; 該位相差層付偏光板の視認側に剥離可能に仮着された表面保護フィルムと; 該位相差層付偏光板の該粘着剤層に剥離可能に仮着されたセパレーターと; を備える光学積層体であって、 該粘着剤層の厚みをTPSA、該位相差層付偏光板の厚みをTPWR、該セパレー ターの厚みをTSPとしたとき、下記の関係を満足する、光学積層体: TPSA/TPWR≧0.4 TSP/TPSA≧0.8。」 と記載されているのを、 「偏光子と該偏光子の少なくとも視認側に保護層とを含む偏光板と、該偏光板の視認側と反対側に第1の接着剤層を介して貼り合わせられた第1の位相差層と、該第1の位相差層に第2の接着剤層を介して貼り合わせられた第2の位相差層と、該第2の位相差層の該第1の位相差層と反対側に設けられた粘着剤層と、を有する位相差層付偏光板と; 該位相差層付偏光板の視認側に剥離可能に仮着された表面保護フィルムと; 該位相差層付偏光板の該粘着剤層に剥離可能に仮着されたセパレーターと; を備える光学積層体であって、 該セパレーターの厚みが50μm以上であり、 該粘着剤層の厚みをTPSA、該位相差層付偏光板の厚みをTPWR、該セパレー ターの厚みをTSPとしたとき、下記の関係を満足する、光学積層体: TPSA/TPWR≧0.4 TSP/TPSA≧0.8。」 に訂正する。請求項2の記載を引用する請求項4~12も同様に訂正する。 (3)訂正事項3 明細書の段落【0062】、【0066】~【0072】、【0073の表1における「実施例1」の記載を「参考例A」とする訂正を行う。 3 一群の請求項について 訂正前の請求項3~12は、請求項1を直接的に又は間接的に引用していることから、訂正前の請求項1、3~12に対応する本件訂正後の請求項1、3~12は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。 また、訂正前の請求項4~12は、請求項2を直接的に又は間接的に引用していることから、訂正前の請求項2、4~12に対応する本件訂正後の請求項2、4~12は、一群の請求項である。 そして、一群の請求項である本件訂正後の請求項1、3~12と、一群の請求項である本件訂正後の請求項2、4~12とは、共通の請求項である請求項4~12を有するから、これらの一群の請求項は組み合わされて、請求項1~12が1つの一群の請求項となる。 したがって、訂正前の請求項1~12に対応する本件訂正後の請求項1~12は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。 4 訂正の適否 (1)訂正事項1について ア 訂正の目的 請求項1に記載の「セパレーター」の厚みを「50μm以上」に特定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正に該当する。 イ 新規事項 本件特許の願書に添付した明細書(以下「本件明細書」という。)の【0013】には、粘着剤層に隣接する「セパレーターの厚みを大きくすること」により、切断時の粘着剤の変形防止に大きく寄与することができることが、また、同【0059】には、セパレーターの厚みは好ましくは20μm~80μmであることが、記載されている。 そして、本件明細書の【0066】(実施例2)及び【0067】(実施例3)には、セパレーターの厚みTSPを50μmとした実施例が記載されている。 したがって、訂正事項1に係る訂正は、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲及び図面の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではない。 ウ 拡張又は変更 上記ア及びイに照らせば、訂正事項1に係る訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでない。 (2)訂正事項2について 訂正事項2は、請求項2において、訂正事項1と同内容の訂正を行うものであるから、上記(1)アに示したとおり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 また、上記(1)イ及びウに示したとおり、訂正事項2に係る訂正、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内でしたものであること、及び実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しないことは明らかである。 (3)訂正事項3について 訂正事項3は、訂正事項1、2によって請求項1、2の範囲が減縮されることにともなって、本件明細書の発明の詳細な説明に記載されている実施例のうち、実施例1が実施例ではなくなるので、実施例1をそれぞれ参考例Aとすることを目的とするものであるから、訂正事項3は、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 また、上記のとおりであるから、訂正事項3に係る訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された事項の範囲内においてするものであって、実質的に特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しないことは明らかである。 (4)小括 訂正事項1~3に係る訂正は、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、かつ、同法同条9項で準用する同法126条5項及び6項の規定に適合する。 したがって、明細書及び特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の明細書及び請求項〔1~12〕について訂正することを認める。 第3 本件特許発明 上記第2のとおり、本件訂正請求による訂正は認められることとなったことから、本件特許の請求項1~12に係る発明(以下、それぞれ「本件特許発明1」~「本件特許発明12」という。また、それらを総称して「本件特許発明」という。)は、訂正後の特許請求の範囲の請求項1~12に記載された事項によって特定されるとおりの、以下のものである。 「【請求項1】 偏光子と該偏光子の少なくとも視認側に保護層とを含む偏光板と、該偏光板の視認側と反対側に第1の接着剤層を介して貼り合わせられた第1の位相差層と、該第1の位相差層に第2の接着剤層を介して貼り合わせられた第2の位相差層と、該第2の位相差層の該第1の位相差層と反対側に設けられた粘着剤層と、を有する位相差層付偏光板と; 該位相差層付偏光板の視認側に剥離可能に仮着された表面保護フィルムと; 該位相差層付偏光板の該粘着剤層に剥離可能に仮着されたセパレーターと; を備える光学積層体であって、 該セパレーターの厚みが50μm以上であり、 該粘着剤層の厚みをTPSA、該位相差層付偏光板の厚みをTPWR、該光学積層体の厚みをTOLとしたとき、下記の関係を満足する、光学積層体: TPSA/TPWR≧0.4 TPSA/TOL≦0.29。 【請求項2】 偏光子と該偏光子の少なくとも視認側に保護層とを含む偏光板と、該偏光板の視認側と反対側に第1の接着剤層を介して貼り合わせられた第1の位相差層と、該第1の位相差層に第2の接着剤層を介して貼り合わせられた第2の位相差層と、該第2の位相差層の該第1の位相差層と反対側に設けられた粘着剤層と、を有する位相差層付偏光板と; 該位相差層付偏光板の視認側に剥離可能に仮着された表面保護フィルムと; 該位相差層付偏光板の該粘着剤層に剥離可能に仮着されたセパレーターと; を備える光学積層体であって、 該セパレーターの厚みが50μm以上であり、 該粘着剤層の厚みをTPSA、該位相差層付偏光板の厚みをTPWR、該セパレー ターの厚みをTSPとしたとき、下記の関係を満足する、光学積層体: TPSA/TPWR≧0.4 TSP/TPSA≧0.8。 【請求項3】 前記セパレーターの厚みをTSPとしたとき、前記TPSA、前記TPWRおよび前記TSPが下記の関係を満足する、請求項1に記載の光学積層体: TPSA/TPWR≧0.4 TSP/TPSA≧0.8。 【請求項4】 前記粘着剤層の厚みTPSAが20μm以上である、請求項1から3のいずれかに記載の光学積層体。 【請求項5】 前記偏光子の厚みが8μm以下である、請求項1から4のいずれかに記載の光学積層体。 【請求項6】 前記粘着剤層の25℃における貯蔵弾性率が1.0×104Pa~1.0×106Paである、請求項1から5のいずれかに記載の光学積層体。 【請求項7】 前記位相差層付偏光板の厚みTPWRが100μm以下である、請求項1から6のいずれかに記載の光学積層体。 【請求項8】 前記偏光板が、前記偏光子の視認側のみに保護層を有する、請求項1から7のいずれかに記載の光学積層体。 【請求項9】 前記第1の位相差層および前記第2の位相差層がそれぞれ、液晶化合物の配向固化層である、請求項1から8のいずれかに記載の光学積層体。 【請求項10】 前記第1の位相差層のRe(550)が200nm~300nmであり、その遅相軸と前記偏光子の吸収軸とのなす角度が10°~20°であり、 前記第2の位相差層のRe(550)が100nm~190nmであり、その遅相軸と該偏光子の吸収軸とのなす角度が70°~80°である、 請求項9に記載の光学積層体。 【請求項11】 請求項1から10のいずれかに記載の光学積層体の前記位相差層付偏光板を備える、画像表示装置。 【請求項12】 有機エレクトロルミネセンス表示装置である、請求項11に記載の画像表示装置。」 第4 取消しの理由及び証拠 1 令和4年12月16日付け取消理由通知書における取消の理由 特許権者に対して、当合議体が令和4年12月16日付け取消理由通知書により通知した取消しの理由の概要は、下記のとおりである。 記 理由1:(新規性)本件特許の請求項1~5、7~9に係る発明は、本件出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法29条1項3号に該当し、特許を受けることができない。 理由2:(進歩性)本件特許の請求項1~12に係る発明は、本件出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいて、本件出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、本件特許は、特許法113条2号に該当し、取り消されるべきものである。 甲1:特開2019-159199号公報 甲2:特開2020-106602号公報 甲3:国際公開第2016/043124号 甲4:特開平10-68816号公報 甲5:井手文雄監修、「ディスプレイ用光学フィルム」、株式会社シーエムシー出版、2004年2月29日発行、93~97頁 (当合議体注:甲1は主引用例であり、甲2は甲1の記載事項に関する参考資料、甲3~5は周知技術を示す資料である。) 2 追加の証拠について 特許異議申立人は、甲1~甲5のほか、令和5年4月11日提出の意見書に添付して、以下の証拠を提出している。 甲6: 藤森工業株式会社、剥離フィルム「フィルムバイナ(R)シリコーン」のカタログ(発行日不明) (当合議体注:登録商標を表す丸囲いのRを、(R)で代用表記した。) 甲7: 特開2008-50471号公報 甲8: 特開2018-21202号公報 (当合議体注:甲6~8は周知技術を示す資料である。) 第5 取消しの理由についての当合議体の判断 1 甲1の記載事項及び甲1に記載された発明 (1)甲1の記載事項 甲1には、以下の記載事項がある。なお、当合議体が発明の認定等に用いた箇所に下線を付した。 ア 「【0011】 [実施形態1(粘着層付き光学積層体の製造方法)] 図1~図5は、本実施形態の粘着層付き光学積層体の製造工程の一例を模式的に示す概略断面図である。図中、Wは幅方向を表す。本実施形態の粘着層付き光学積層体80の製造方法によって製造される粘着層付き光学積層体80は、図5(b)に示すように、光学フィルム60、第1接着剤硬化層31、第1液晶層12、第2接着剤硬化層32、第2液晶層22、及び粘着層33がこの順に積層されたものである。粘着層33の第2液晶層22とは反対側に、剥離層53を有していてもよい。 ・・・(中略)・・・ 【0019】 準備した剥離層付き粘着層58の粘着層33と、第2基材層21を剥離することによって露出した光学積層体70の第2液晶層22(第2露出面)とを貼合して、粘着層付き光学積層体80を得る(図5(b))。このとき得られた粘着層付き光学積層体80は、剥離層53を有している。この粘着層付き光学積層体80を、光学表示素子に積層する場合には、剥離層53を剥離し、粘着層33と光学表示素子とを貼合して画像表示パネルとすることができる。 ・・・(中略)・・・ 【0046】 (光学フィルム) 光学フィルムは、偏光子、偏光子の少なくとも片面に保護層が形成された偏光板、偏光板の少なくとも片面にプロテクトフィルムが積層されたプロテクトフィルム付き偏光板、反射フィルム、半透過型反射フィルム、輝度向上フィルム、光学補償フィルム、防眩機能付きフィルム等であることができる。」 イ 「【0078】 偏光板は、後述する実施例に記載の方法で測定されるプロテクトフィルム付き偏光板からプロテクトフィルムを剥離した偏光板の実測MDカール値及び実測TDカール値がそれぞれ独立して、-40mm以上40mm以下の範囲にあることが好ましく、-30mm以上35mm以下の範囲にあることがより好ましく、-20mm以上30mm以下の範囲にあることがさらに好ましい。 ウ 「【実施例】 【0160】 以下、実施例及び比較例を示して本発明をさらに具体的に説明する・・・ ・・・(中略)・・・ 【0165】 〔カールの測定(2)〕 各実施例、各比較例で得られた粘着層付き光学積層体から切り出した切出し片から、第1セパレータとともにプロテクトフィルムを剥離したものを試験片としたこと以外は、上記カールの測定(1)と同様の手順で、プロテクトフィルムを剥離した光学積層体の実測MDカール値及び実測TDカール値を算出した。 ・・・(中略)・・・ 【0169】 〔両面セパレータ付き粘着層の準備〕 粘着剤を次の方法により製造した。・・・ 【0170】 上記で得られた(メタ)アクリル酸エステル重合体100部(固形分換算値;以下同じ)と、イソシアネート系架橋剤としてトリメチロールプロパン変性トリレンジイソシアネート(東ソー株式会社製、商品名「コロネートL」)0.30部と、シランカップリング剤として3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社製、商品名「KBM403」)0.30部とを混合し、十分に撹拌して、酢酸エチルで希釈することにより、粘着剤組成物の塗工溶液を得た。 【0171】 剥離層をなす第1セパレータ(リンテック株式会社製:SP-PLR382190)の離型処理面(剥離面)に、アプリケーターにより、乾燥後の厚さが25μmとなるように上記粘着剤組成物の塗工溶液を塗工した後、100℃で1分間乾燥して粘着層を形成し、粘着層のセパレータが貼合された面とは反対面に、もう1枚の第2セパレータ(リンテック社製:SP-PLR381031)を貼合し、両面セパレータ付き粘着層を得た。 【0172】 〔接着剤組成物の準備〕 下記に示すカチオン硬化性成分a1~a3及びカチオン重合開始剤を混合した後、下記に示すカチオン重合開始剤及び増感剤をさらに混合した後、脱泡して、光硬化型の接着剤組成物を調製した。・・・ 【0173】 〔プロテクトフィルム付き偏光板の準備〕 厚み20μmのポリビニルアルコールフィルム(平均重合度約2,400、ケン化度99.9モル%以上)を、乾式延伸により約5倍に一軸延伸し、さらに緊張状態を保ったまま、60℃の純水に1分間浸漬した後、ヨウ素/ヨウ化カリウム/水の質量比が0.05/5/100の水溶液に28℃で60秒間浸漬した。その後、ヨウ化カリウム/ホウ酸/水の質量比が8.5/8.5/100の水溶液に72℃で300秒間浸漬した。引き続き26℃の純水で20秒間洗浄した後、65℃で乾燥して、ポリビニルアルコールフィルムにヨウ素が吸着配向した厚み7μmの偏光子を得た。 【0174】 次に、この偏光子の片側に、水100部に対し、カルボキシ基変性ポリビニルアルコール((株)クラレから入手した商品名“KL-318”)を3部溶解し、その水溶液に水溶性エポキシ樹脂であるポリアミドエポキシ系添加剤(田岡化学工業(株)から入手した商品名“スミレーズレジン 650(30)”、固形分濃度30%の水溶液)を1.5部添加したエポキシ系接着剤を塗工し、保護層として、厚み13μmの透明のノルボルネン系樹脂フィルムを貼り合せた。このようにして、偏光子の片面に保護層が積層された偏光板を得た。さらにノルボルネン系樹脂フィルムの偏光子とは反対側の表面に、厚み38μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム上に15μmのアクリル系粘着層が形成されたプロテクトフィルムを貼合し、厚み73μmのプロテクトフィルム付き偏光板を得た。・・・ 【0175】 〔基材層付き第1液晶層及び基材層付き第2液晶層の準備〕 (光配向層形成用組成物(1)の調製) 下記の成分を混合し、得られた混合物を温度80℃で1時間攪拌することにより、光配向層形成用組成物(1)を得た。・・・ 【0176】 (配向層形成用組成物(2)の調製) 市販の配向性ポリマーであるサンエバーSE-610(日産化学工業株式会社製)に2-ブトキシエタノールを加えて配向層形成用組成物(2)を得た。・・・ 【0177】 (液晶層形成用組成物(A-1)の調製) 下記の成分を混合し、得られた混合物を80℃で1時間攪拌することにより、液晶層形成用組成物(A-1)を得た。・・・ 【0178】 (液晶層形成用組成物(B-1)の調製) 下記の成分を混合し、得られた混合物を80℃で1時間攪拌した後、室温まで冷却して液晶層形成用組成物(B-1)を得た。・・・ 【0179】 (基材層付き第1液晶層の製造) 厚み100μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを、コロナ処理装置(AGF-B10、春日電機株式会社製)を用いて出力0.3kW、処理速度3m/分の条件で1回処理した。コロナ処理を施した表面に、光配向層形成用組成物(1)をバーコーター塗布し、80℃で1分間乾燥し、偏光UV照射装置(SPOT CURE SP-7;ウシオ電機株式会社製)を用いて、100mJ/cm2の積算光量で偏光UV露光を実施して、光配向層を得た。得られた光配向層の厚みをレーザー顕微鏡(LEXT、オリンパス株式会社製)で測定したところ、100nmであった。 【0180】 続いて、光配向層上に液晶層形成用組成物(A-1)を、バーコーターを用いて塗布し、120℃で1分間乾燥した後、高圧水銀ランプ(ユニキュアVB―15201BY-A、ウシオ電機株式会社製)を用いて、紫外線を照射(窒素雰囲気下、波長:365nm、波長365nmにおける積算光量:1000mJ/cm2)することにより、位相差層としての第1液晶層を形成して、基材層付き第1液晶層を得た。第1液晶層の厚みは2μmであった。 【0181】 (基材層付き第2液晶層の製造) 厚み38μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを、コロナ処理装置(AGF-B10、春日電機株式会社製)を用いて出力0.3kW、処理速度3m/分の条件で1回処理した。コロナ処理を施した表面に、配向層形成用組成物(2)をバーコーター塗布し、90℃で1分間乾燥し、配向層を得た。得られた配向層の厚みをレーザー顕微鏡(LEXT、オリンパス株式会社製)で測定したところ、34nmであった。 【0182】 続いて、配向層上に液晶層形成用組成物(B-1)を、バーコーターを用いて塗布し、90℃で1分間乾燥した後、高圧水銀ランプ(ユニキュアVB―15201BY-A、ウシオ電機株式会社製)を用いて、紫外線を照射(窒素雰囲気下、波長:365nm、波長365nmにおける積算光量:1000mJ/cm2)することにより、位相差層としての第2液晶層を形成して、基材層付き第2液晶層を得た。第2液晶層の厚みは1μmであった。」 エ 「【0183】 〔実施例1〕 上記で準備した基材層付き第1液晶層、基材層付き第2液晶層、及び両面セパレータ付き粘着層を用いて、図1~図6に示す工程で粘着層付き光学積層体を得た。具体的には、次のように行った。 【0184】 上記で準備した基材層付き第2液晶層(MD方向長さ300mm×TD方向長さ200mm)の第2液晶層側の表面にコロナ処理(800W、10m/min、バー幅700mm、1Pass)を施した。このコロナ処理面に、上記で準備した接着剤組成物を、塗工機(第一理化(株)製のバーコーター)を用いて、接着剤硬化層の厚みが1μmとなるように塗工して、接着剤組成物層を形成した(図1(c)参照)。次に、上記で準備した基材層付き第1液晶層(MD方向長さ300mm×TD方向長さ200mm)の第1液晶層側に上記と同様の条件でコロナ処理を施し、このコロナ処理面と、基材層付き第2液晶層上に形成した接着剤組成物層とを、貼付装置(フジプラ(株)製の“LPA3301”)を用いて貼合した後(図1(d)参照)、基材層付き第2液晶層側から、ベルトコンベア付き紫外線照射装置(ランプは、フュージョンUVシステムズ社製の“Hバルブ”使用)により、UVA域では照射強度が390mW/cm2、積算光量が420mJ/cm2となるように、UVB域では400mW/cm2、積算光量が400mJ/cm2となるように、紫外線を照射して接着剤組成物を硬化させて、基材層付き液晶層積層体を得た(図2(a)参照)。・・・ 【0185】 上記で準備したプロテクトフィルム付き偏光板(MD方向長さ300mm×TD方向長さ200mm)のプロテクトフィルム側とは反対側(偏光子側)の面にコロナ処理(800W、10m/min、バー幅700mm、1Pass)を施した。上記で準備した接着剤組成物を、塗工機(第一理化(株)製のバーコーター)を用いて、接着剤硬化層の厚みが1μmとなるように塗工して、接着剤組成物層を形成して、組成物層付き偏光板を得た(図3(a)参照)。 【0186】 基材層付き液晶層積層体の基材層付き第1液晶層のPETフィルム(厚み100μm)を剥離して露出した面(第1液晶層側の面)と、組成物層付き偏光板の接着剤組成物層とを、貼付装置(フジプラ(株)製の“LPA3301”)を用いて貼合した後(図3(b)参照)、組成物層付き偏光板のプロテクトフィルム側から、ベルトコンベア付き紫外線照射装置(ランプは、フュージョンUVシステムズ社製の“Hバルブ”使用)により、UVA域では照射強度が390mW/cm2、積算光量が420mJ/cm2となるように、UVB域では400mW/cm2、積算光量が400mJ/cm2となるように、紫外線を照射して接着剤組成物を硬化させて、基材層付き光学積層体を得た(図4(a)参照)。得られた基材層付き光学積層体の基材層付き第2液晶層のPETフィルム(厚み38μm)を剥離して露出した面(第2液晶層側の面)と、上記で準備した両面セパレータ付き粘着層(300mm×200mm)から第2セパレータを剥離して露出した粘着層とを、自動貼合機HALTECを用いて枚葉貼合して、粘着層付き光学積層体(1)を得た(図5(b)参照)。・・・」 オ 「【図5】(b) [図:0001402756000001.jpg] 」 (2)甲1に記載された発明 ア 上記(1)に摘記した甲1の記載事項によれば、【0183】~【0186】に記載された実施例1で得られた「粘着層付き光学積層体(1)」は、【0011】に記載された実施形態1の「粘着層付き光学積層体80」に対応する。 イ 甲1の【0046】の記載を踏まえると、実施例1の「粘着層付き光学積層体(1)」に含まれる「プロテクトフィルム付き偏光板」は、実施形態1の「粘着層付き光学積層体80」に含まれる「光学フィルム60」に対応する。 そして、【0173】、【0174】の記載によれば、上記「光学フィルム60」は、実施例1において、ポリビニルアルコールフィルムにヨウ素が吸着配向した厚み7μmの偏光子の片側に、エポキシ系接着剤を塗工し、保護層として、厚み13μmの透明のノルボルネン系樹脂フィルムを貼り合せて、偏光子の片面に保護層が積層された偏光板を得て、ノルボルネン系樹脂フィルムの偏光子とは反対側の表面に、厚み38μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム上に15μmのアクリル系粘着層が形成されたプロテクトフィルムを貼合して得られた、厚み73μmのプロテクトフィルム付き偏光板であるといえる。 ウ 甲1の【0171】の記載によれば、実施例1における、剥離層53をなす第1セパレータ(リンテック株式会社製:SP-PLR382190)の離型処理面(剥離面)に、乾燥後の厚さが25μmとなるように粘着剤組成物の塗工溶液を塗工した後、乾燥して形成した「粘着層」は、実施形態1の「粘着層33」に対応する。 エ 甲1の【0180】、【0182】の記載によれば、実施例1における、「位相差層としての第1液晶層」及び「位相差層としての第2液晶層」は、実施形態1の「第1液晶層12」及び「第2液晶層22」に対応し、各層の厚みは、それぞれ、「2μm」及び「1μm」である。 オ 甲1の【0184】の記載及び図5bによれば、実施例1における、基材層付き第2液晶層の第2液晶層側の表面に、接着剤硬化層の厚みが1μmとなるように塗工して形成した「接着剤組成物層」(接着剤硬化層)は、基材層付き第1液晶層の第1液晶層側の面と貼合したものであるから、実施形態1の「第2接着剤硬化層32」に該当し、その厚みは「1μm」である。 また、甲1の【0185】の記載及び図5bによれば、実施例1における、プロテクトフィルム付き偏光板のプロテクトフィルム側とは反対側(偏光子側)の面に、接着剤組成物を接着剤硬化層の厚みが1μmとなるように塗工して形成した「接着剤組成物層」(接着剤硬化層)は、基材層付き液晶層積層体の基材層付き第1液晶層のPETフィルムを剥離して露出した面(第1液晶層側の面)と貼り合わせるものであるから、実施形態1の「第1接着剤硬化層31」に該当し、その厚みは「1μm」である。 カ 以上によれば、甲1には、その実施形態1の実施例として、実施例1に係る次の「粘着層付き光学積層体80」の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「光学フィルム60、第1接着剤硬化層31、位相差層としての第1液晶層12、第2接着剤硬化層32、位相差層としての第2液晶層22、及び粘着層33がこの順に積層され、粘着層33の第2液晶層22とは反対側に、剥離層53を有している粘着層付き光学積層体80であって、 この粘着層付き光学積層体80を光学表示素子に積層する場合には、剥離層53を剥離し、粘着層33と光学表示素子とを貼合して画像表示パネルとするものであり、 第1セパレータ(リンテック株式会社製:SP-PLR382190)が剥離層53をなしており、 光学フィルム60は、ポリビニルアルコールフィルムにヨウ素が吸着配向した厚み7μmの偏光子の片側に、エポキシ系接着剤を塗工し、保護層として、厚み13μmの透明のノルボルネン系樹脂フィルムを貼り合せて、偏光子の片面に保護層が積層された偏光板を得て、ノルボルネン系樹脂フィルムの偏光子とは反対側の表面に、厚み38μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム上に15μmのアクリル系粘着層が形成されたプロテクトフィルムを貼合して得られた、厚み73μmのプロテクトフィルム付き偏光板であり、 第1接着剤硬化層31は、光学フィルム60のプロテクトフィルム側とは反対側(偏光子側)の面に形成されており、 第1接着剤硬化層31、第1液晶層12、第2接着剤硬化層32、第2液晶層22、及び粘着層33の厚さは、それぞれ、1μm、2μm、1μm、1μm、及び25μmである、 粘着層付き光学積層体80。」 (当合議体注:上記認定では、「粘着層付き光学積層体80」及び「粘着層付き光学積層体(1)」は、用語を前者に統一した。) 2 本件特許発明1について (1)対比 本件特許発明1と引用発明を対比する。 ア 引用発明の「粘着層付き光学積層体80」は、「光学フィルム60、第1接着剤硬化層31、位相差層としての第1液晶層12、第2接着剤硬化層32、位相差層としての第2液晶層22、及び粘着層33がこの順に積層され、粘着層33の第2液晶層22とは反対側に、剥離層53を有している」ものであり、「この粘着層付き光学積層体80を光学表示素子に積層する場合には、剥離層53を剥離し、粘着層33と光学表示素子とを貼合して画像表示パネルとするものであり」、「第1接着剤硬化層31は、光学フィルム60のプロテクトフィルム側とは反対側(偏光子側)の面に形成されて」いるから、 粘着層付き光学積層体80において、光学フィルム60が最も視認側に位置し、剥離層53が最も光学表示素子側に位置しており、また、 光学フィルム60において、プロテクトフィルムを構成するPETフィルムが最も視認側に位置し、偏光子が最も光学表示素子側に位置している、と認められる。 イ 引用発明の、光学フィルム60は、「保護層として、厚み13μmの透明のノルボルネン系樹脂フィルムを貼り合せて、偏光子の片面に保護層が積層された偏光板を得て、ノルボルネン系樹脂フィルムの偏光子とは反対側の表面に、厚み38μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム上に15μmのアクリル系粘着層が形成されたプロテクトフィルムを貼合して得られた」ものであって、上記アを踏まえると、保護層としてのノルボルネン系樹脂フィルムは偏光子よりも視認側にあるといえるから、 引用発明の「偏光子の片面に保護層が積層された偏光板」は、本件特許発明1の「偏光子と該偏光子の少なくとも視認側に保護層とを含む偏光板」に相当する。 ウ 引用発明の「粘着層付き光学積層体80」は、「光学フィルム60、第1接着剤硬化層31、位相差層としての第1液晶層12、第2接着剤硬化層32、位相差層としての第2液晶層22、及び粘着層33がこの順に積層され」たものであり、「第1接着剤硬化層31は、光学フィルム60のプロテクトフィルム側とは反対側(偏光子側)の面に形成され」ているから、 引用発明の「第1接着剤硬化層31」、「位相差層としての第1液晶層12」、「第2接着剤硬化層32」、及び「位相差層としての第2液晶層22」は、それぞれ、本件特許発明1の「第1の接着剤層」、「第1の位相差層」、「第2の接着剤層」、及び「第2の位相差層」に相当し、「粘着剤層33」、「位相差層としての第2液晶層22」と「位相差層としての第1液晶層12」との積層順からみて、引用発明の「粘着剤層33」は、本件特許発明1の「該第2の位相差層の該第1の位相差層と反対側に設けられた粘着剤層」に相当し、 引用発明の「第1液晶層12」は、本件特許発明1の「第1の位相差層」の、「該偏光板の視認側と反対側に第1の接着剤層を介して貼り合わせられた」との要件を満たし、引用発明の「第2液晶層22」は、本件特許発明1の「第2の位相差層」の、「該第1の位相差層に第2の接着剤層を介して貼り合わせられた」との要件を満たす。 エ 上記イ及びウを踏まえると、引用発明の、「偏光子の片面に保護層が積層された偏光板」並びに「第1接着剤硬化層31、第1液晶層12、第2接着剤硬化層32、第2液晶層22、及び粘着層33」からなる部分は、その機能及び構成からみて、本件特許発明1の「位相差層付偏光板」に相当するといえる。 オ 引用発明の「プロテクトフィルム」は、甲1の【0078】、【0165】の記載によれば、粘着層付光学積層体から剥離可能であるということができるから、上記アを踏まえると、本件特許発明1の「該位相差層付偏光板の視認側に剥離可能に仮着された表面保護フィルム」に相当する。 カ 引用発明の「剥離層53」は、「粘着層付き光学積層体80を光学表示素子に積層する場合には、剥離層53を剥離し、粘着層33と光学表示素子とを貼合して画像表示パネルとするものであ」るから、本件特許発明1の「該位相差層付偏光板の該粘着剤層に剥離可能に仮着されたセパレーター」に相当する。 キ 以上ア~カを踏まえると、引用発明の「粘着層付き光学積層体80」は、本件特許発明1の「光学積層体」に相当する。 ク 引用発明の、「剥離層53」をなす「第1セパレータ(リンテック株式会社製:SP-PLR382190)」について、甲1にはその厚さの記載はないが、甲2の【0147】の記載によれば、剥離層53(第1セパレータ(リンテック株式会社製:SP-PLR382190))の厚みは38μmであると認められる。 ケ 上記クも踏まえて、引用発明の各層の厚みをみると、「粘着剤層」の厚み(本件特許発明1の「TPSA」)に相当する厚みは25μm、位相差層付偏光板の厚み(本件特許発明1の「TPWR」)に相当する厚みは50μm、光学積層体の厚み(本件特許発明1の「TOL」)に相当する厚みは141μmとなるから、引用発明は、本件特許発明1の「該粘着剤層の厚みをTPSA、該位相差層付偏光板の厚みをTPWR、該光学積層体の厚みをTOLとしたとき、」「TPSA/TPWR≧0.4」及び「TPSA/TOL≦0.29」「の関係を満足する」との要件を満たす。 (2)一致点及び相違点 上記(1)によれば、本件特許発明1と引用発明とは、下記アの点で一致し、下記イの点で相違する。 ア 一致点 「偏光子と該偏光子の少なくとも視認側に保護層とを含む偏光板と、該偏光板の視認側と反対側に第1の接着剤層を介して貼り合わせられた第1の位相差層と、該第1の位相差層に第2の接着剤層を介して貼り合わせられた第2の位相差層と、該第2の位相差層の該第1の位相差層と反対側に設けられた粘着剤層と、を有する位相差層付偏光板と; 該位相差層付偏光板の視認側に剥離可能に仮着された表面保護フィルムと; 該位相差層付偏光板の該粘着剤層に剥離可能に仮着されたセパレーターと; を備える光学積層体であって、 該粘着剤層の厚みをTPSA、該位相差層付偏光板の厚みをTPWR、該光学積層体の厚みをTOLとしたとき、下記の関係を満足する、光学積層体: TPSA/TPWR≧0.4 TPSA/TOL≦0.29。」 イ 相違点 本件特許発明1では、セパレーターの厚みが「50μm以上」とされているのに対して、引用発明では、「剥離層53(第1セパレータ)」の厚みは38μmである点(以下「相違点1」という。)。 (3)判断 ア 甲8に基づく容易想到性について 相違点1に対する、甲8に記載された技術事項に基づく容易想到性について、以下に検討する。 (ア) 甲8に記載された技術事項 甲8には、以下の記載がある。 「【発明が解決しようとする課題】 【0004】 近年、画像表示装置は薄型化の傾向にあり、このため光学フィルムとしては、例えば100μm以下のようなより薄いものが望まれている。このような薄い光学フィルムに粘着剤層を設け、その上にセパレータフィルムを積層した光学フィルム(セパレータフィルム積層粘着剤層付き光学フィルム)は、多くの場合、ロール状に巻回された状態で保管され、輸送または運搬される。この際、セパレータフィルムの外表面にゴミ等の異物が付着した状態でセパレータフィルム積層粘着剤層付き光学フィルムが巻回されると、巻回されたフィルム同士の圧力により保管や輸送、運搬中に異物が光学フィルムに押し付けられ、脱圧された後でも光学フィルムに異物による傷や打痕が残ることがある。また、セパレータフィルム積層粘着剤層付き光学フィルムを、これが貼合される表示素子のサイズに合せた大きさに切出し、積み重ねて保管し、輸送することもある。この場合にも、積み重ねられたセパレータフィルム積層粘着剤層付き光学フィルム同士の間に異物が存在すると、異物による傷や打痕が光学フィルムに残ることがある。このような異物による傷付きや打痕は、光学フィルムの光学特性に欠陥を生じることから、異物による光学フィルムの傷付きや打痕防止に対する高い効果を有するセパレータフィルム積層粘着剤層付き光学フィルムが求められている。 【0005】 したがって、本発明は、加圧下における凹みが少なく、特に保管時や輸送、運搬時において異物による傷付きや打痕防止の効果に優れる、セパレータフィルム積層粘着剤層付き光学フィルムを提供することを目的とする。 【課題を解決するための手段】 【0006】 本発明者等は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、本発明を完成するに至った。 すなわち、本発明には、以下の好適な態様が含まれる。 [1]光学フィルム(A)の少なくとも一方の面に粘着剤層(B)を介して積層されたセパレータフィルム(C)を含むセパレータフィルム積層粘着剤層付き光学フィルムであって、 前記セパレータフィルム(C)の膜厚が45μm以上であり、前記光学フィルム(A)の膜厚が100μm以下であり、前記セパレータフィルム(C)は、単独での表面のビッカース硬度が15以上を示すセパレータフィルムである、セパレータフィルム積層粘着剤層付き光学フィルム。」、 「【0010】 本発明のセパレータフィルム積層粘着剤層付き光学フィルムにおいて、セパレータフィルム(C)の膜厚は45μm以上である。セパレータフィルムの膜厚が45μm未満であると、セパレータフィルムの表面に付着した異物等により生じる凹みが粘着剤層にまで及びやすくなり、光学フィルムに対する傷や打痕の防止効果を十分に確保することが難しくなる。本発明のセパレータフィルム積層粘着剤層付き光学フィルムにおいて、セパレータフィルム(C)の膜厚は、45μm以上であることが好ましく、47μm以上であることがより好ましく、50μm以上であることがさらに好ましい。セパレータフィルム(C)の膜厚の上限は、特に限定されるものではないが、通常、200μm以下であり、セパレータフィルムを剥離する際の引起しが容易になる点で、例えば150μm以下であることが好ましく、100μm以下であることがより好ましい。」 以上の記載によれば、甲8には、セパレータフィルム積層粘着剤層付き光学フィルムにおいて、セパレータフィルムの表面に付着した異物等により生じる凹みが少なく、光学フィルムに対する傷や打痕の防止効果に優れるという観点から、セパレータフィルムとして、表面のビッカース硬度が15以上を示し、膜厚が45μm以上、好ましくは50μm以上のものを採用し、光学フィルムの膜厚が100μm以下であるものとする、技術事項が記載されていると認められる。 (イ) 容易想到性について 引用発明の「粘着層付き光学積層体」はセパレータを含むものであるから、甲8に記載されたセパレータフィルム積層粘着剤層付き光学フィルムと共通する技術分野に属するものといえる。 そうすると、甲8の上記記載に接した当業者は、引用発明のセパレータの厚さを、甲8において好ましいとされる50μm以上の範囲に、調整しようと動機付けられるかもしれない。 しかしながら、上記(2)アで一致点とした本件特許発明1の発明特定事項である関係式(パラメーター)は、その中にセパレーターの厚みも含むものであり、セパレーターの厚みを変更すると、前記の関係式の各パラメーターの値も変更されることになる。ここで、上記関係式の技術的意義は、本件明細書の【0012】に記載によれば、「所定の折り曲げ性を有する位相差層付偏光板」とし、かつ、「位相差層付偏光板を所定のサイズまたは所定形状に切断する際に糊欠け」等が発生し得るという課題を解決する点にある認められることから、セパレーターの厚みについての相違点1に係る構成は、一致点とした各構成と技術的に密接に関係していると認められる。 この点についてみるに、甲8には、引用発明の粘着層付き光学積層体において、上記(2)アに示した一致点を維持しつつ、セパレーターの厚みのみを調整するという技術思想ないし手がかりは何ら記載されていない。 また、本件明細書の実施例の記載(特に【0073】の表1参照。)によると、セパレーターの厚みが50μmである実施例3と、セパレーターの厚みが38μmである点を除いて実施例3と同一である参考例A(訂正前の「実施例1」)との比較から、実施例3は糊汚れの発生割合が0%であり、厚みのみ異なる参考例Aよりも糊汚れを顕著に抑制できるという効果が認められるところ、相違点1に係る本件特許発明1の構成により奏されるこの効果は、甲1の記載に接した当業者が予想することができる範囲内の効果とはいえない。 以上によると、引用発明において、甲8に記載された事項に接した当業者が、相違点1に係る構成を含めた本件特許発明1に係る構成に容易に想到し得たということはできない。 イ 周知技術に基づく容易想到性について 相違点1に係る構成を含めた本件特許発明1に係る構成に容易に想到し得たということはできないことは、上記アに示したとおりであるが、異議申立人は、令和5年4月11日に提出した意見書において、同意見書に添付して提出した甲6~8に基づいて、「偏光板分野において、粘着剤層に剥離可能に仮着するセパレーターの厚みを50μm以上とすること」は周知な技術であって、当業者が通常なし得ることである旨主張するので、以下、念のため相違点1に対する周知技術に基づく容易性についても検討する。 (ア)セパレーターの厚みに関する周知技術について a 甲6について (a) 甲6の公知性について 甲6は、「フィルムバイナ(R)」という名称のPET基材の剥離フィルムのカタログであると認められるところ、甲6上にその発行日についての記載はない。 これに対して、本件出願前の公知文献である甲7には、「上に他面側の離型フィルムとして、厚さ100μmの離型PETフィルム(藤森工業(株)製;商品名フィルムバイナ100E_0010BD)を貼付し」との記載がある。 しかしながら、一般に、商品名は、商品の実体が変更されても継続的に用いられるものであり、甲6と甲7とで型番が一致しているものでもないから、甲7に甲6のカタログの商品名が記載されていることのみによって、甲6が本件出願前に発行されていたものと認めるには至らない。 したがって、甲6が本件出願前の公知文献であって、その内容によって周知技術を示すものであると認めることはできない。 (b) 甲6の記載事項について また、たとえ、本件出願当時の周知技術の認定に当たって、甲6の記載内容が参酌できるとしても、甲6に、粘着剤層に剥離可能に仮着するセパレーターの厚みに関する偏光板分野における技術事項が記載されているとはいえない。 すなわち、甲6には、「製造仕様」として、「厚み(μm)」に関して、「19、25、38、50、75、100、125、188」と記載されており、厚みが50μm以上の製品が、厚みが50μm未満の製品と同様に存在することが示されているが、偏光板分野において用いられること、及び偏光板分野において用いられる際に、どの程度の厚みのものが用いられるかについては何ら記載されていない。 したがって、甲6に、偏光板分野において、粘着剤層に剥離可能に仮着するセパレーターの厚みを50μm以上とする技術事項は示されておらず、そのような周知の技術事項の存在を裏付けるものとはいえない。 b 甲7について 甲7には、以下の記載がある。 「【技術分野】 【0001】 本発明は、自動車、鉄道車両、船舶、建築、機械装置等の窓や、平面型画像装置の表示パネルなどの接着に用いる粘着シートに関する。」、 「【0002】 液晶テレビやプラズマテレビなどに用いるフラットパネルは、偏光フィルム、位相差フィルム、光学補償フィルム、輝度向上フィルム等の光学フィルムを積層して形成されている。最近、これら光学フィルムの貼り合わせに、透明な接着剤乃至粘着剤からなる粘着シートが用いられている。この種の粘着シートとしては、例えば、透明な粘着剤からなる粘着層の両面に離型フィルムを積層した粘着シート等が開示されており、」、 「【0022】 離型フィルム3の厚さは、特に限定するものではないが、12μm以上、好ましくは25μm以上、かつ、250μm以下、好ましくは100μm以下とする。」、 「【0059】 両面側の離型フィルムの厚さは互いに相違させるのが好ましい。 このようにすると、厚い離型フィルムの方が剥がれやすくなり、泣き別れをより一層防止することができる。 例えば、最初に剥がす側を離型フィルム33とした場合、離型フィルム33の厚さを100μm、離型フィルム36の厚さを38μmの厚さとするのがよい。」 以上の記載によると、甲7は、離型フィルム(セパレーター)が偏光板の技術分野に用いられ得ることについての一般的記載はあるが、該技術分野に特有の技術事項を示すものではない。そして、上記の離型フィルム(セパレーター)の厚さに関する記載は、引用発明のような位相差層付偏光板を含む光学積層体におけるものではなく、そのような技術分野において適切なセパレーターの厚さを示すものとはいえない。 そして、セパレーターの厚さについても、「特に限定するものではないが、12μm以上、好ましくは25μm以上、かつ、250μm以下、好ましくは100μm以下とする」と言及するのみであり、「50μm以上」の範囲も含む一方、50μm未満の範囲も好ましい範囲として含んでおり、「50μm以上」とすることを示唆するような記載はなされていない。 そうすると、甲7に接した当業者にとって、偏光板の技術分野において用いられ得るセパレーターの厚みとして、50μm未満のものもあれば50μm以上のものもある、ということが認識されるにとどまるのであって、甲7は、偏光板分野において、粘着剤層に剥離可能に仮着するセパレーターの厚みを50μm以上とすることが周知な技術事項であることを裏付けるものとはいえない。 c 周知技術の認定についてのまとめ 上記ア、イのとおり、甲6及び甲7は、偏光板分野において、粘着剤層に剥離可能に仮着するセパレーターの厚みを50μm以上とすることが、周知な技術事項であることを裏付けるものであるとはいえない。 したがって、甲8に、上記ア(ア)に示したように、セパレータフィルム積層粘着剤層付き光学フィルムにおいて、セパレータフィルムの厚みを、好ましくは50μm以上とすることが記載されているとしても、甲6~8に基づいて、偏光板分野において、粘着剤層に剥離可能に仮着するセパレーターの厚みを50μm以上とすることが周知な技術事項であると認めることはできない。 (イ) 周知技術に基づく容易想到性について また、仮に、偏光板分野において、粘着剤層に剥離可能に仮着するセパレーターの厚みを50μm以上とすることが周知な技術事項であるとした場合における容易想到性についてみるに、このような技術事項に接した当業者は、引用発明におけるセパレーターの厚みを、50μm以上の範囲に、調整しようと動機付けられるかもしれない。 しかしながら、上記(2)アで一致点とした本件特許発明1の発明特定事項である関係式のパラメーターは、その中にセパレーターの厚みも含むものであり、セパレーターの厚みを変更すると、前記の関係式の各パラメーターの値も変更されることになる。 そして、甲6~8には、引用発明の粘着層付き光学積層体において、上記(2)アに示した一致点を維持しつつ、セパレーターの厚みを調整することができるのかについての手がかりは記載されていない。 また、上記ア(イ)に示した相違点1に係る構成を含む本件特許発明1の構成により奏される効果は、甲1の記載に接した当業者が予想することができる範囲内の効果とはいえない。 したがって、引用発明において、周知技術に基づいて、本件特許発明1に係る構成に容易に想到し得たということはできない。 (4)小括 以上のとおりであるから、本件特許発明1は、甲1に記載された発明、甲8に記載された技術的事項、周知の技術事項、及び申立人が提出したその他の甲号証に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。 3 本件特許発明2について (1)対比 本件特許発明2と引用発明とを対比する。 上記第3のとおり、本件特許発明2は、本件特許発明1において 「該粘着剤層の厚みをTPSA、該位相差層付偏光板の厚みをTPWR、該光学積層体の厚みをTOLとしたとき、下記の関係を満足する」、「TPSA/TPWR≧0.4」、「TPSA/TOL≦0.29」 とあるのを、 「該粘着剤層の厚みをTPSA、該位相差層付偏光板の厚みをTPWR、該セパレーターの厚みをTSPとしたとき、下記の関係を満足する」、「TPSA/TPWR≧0.4」、「TSP/TPSA≧0.8」 との発明特定事項で置き換えた点以外は、本件特許発明1と同一である。 そして、上記2(1)ケに述べたとおり、引用発明において、「粘着剤層」の厚みTPSAに相当する厚みは25μm、位相差層付偏光板の厚みTPWRに相当する厚みは50μm、光学積層体の厚みTOLに相当する厚みは141μmとなり、上記2(1)クによれば、セパレーターの厚みをTSPに相当する厚みは38μmであるから、引用発明は、「TPSA/TPWR≧0.4」及び「TSP/TPSA≧0.8」の各関係式を満足している。 したがって、本件特許発明2と引用発明とは、下記アの点で一致し、下記イの点で相違する。 ア 一致点 「偏光子と該偏光子の少なくとも視認側に保護層とを含む偏光板と、該偏光板の視認側と反対側に第1の接着剤層を介して貼り合わせられた第1の位相差層と、該第1の位相差層に第2の接着剤層を介して貼り合わせられた第2の位相差層と、該第2の位相差層の該第1の位相差層と反対側に設けられた粘着剤層と、を有する位相差層付偏光板と; 該位相差層付偏光板の視認側に剥離可能に仮着された表面保護フィルムと; 該位相差層付偏光板の該粘着剤層に剥離可能に仮着されたセパレーターと; を備える光学積層体であって、 該粘着剤層の厚みをTPSA、該位相差層付偏光板の厚みをTPWR、該光学積層体の厚みをTOLとしたとき、下記の関係を満足する、光学積層体: TPSA/TPWR≧0.4 TSP/TPSA≧0.8。」 イ 相違点 <相違点2> 本件特許発明2では、セパレーターの厚みが「50μm以上」とされているのに対して、引用発明では、剥離層(第1セパレータ)の厚みは38μmである点。 (2)判断 相違点2について検討する。 相違点2は、上記2(2)イに示した本件特許発明1と引用発明との相違点1と同一であるから、上記2(3)に示した判断が、同様に妥当する。 (3)小括 以上のとおりであるから、本件特許発明2は、甲1に記載された発明、甲8に記載された技術的事項、申立人が提出したその他の甲号証に記載された技術的事項、及び周知の技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。 4 本件特許発明3~12について 本件特許発明3は、請求項1を引用するものであり、本件特許発明4~12は、いずれも、請求項1~3を直接又は間接的に引用するものであるから、本件特許発明3~12は、本件特許発明1又は2の発明特定事項を全て具備するものである。 そうしてみると、上記2又は3と同様に、本件特許発明3~12も、甲1に記載された発明、甲2に記載された技術的事項、申立人が提出したその他の甲号証に記載された技術的事項及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。 5 小結 以上によれば,取消しの理由(進歩性)によって,本件特許発明1ないし12に係る特許を取り消すことはできない。 第6 取消理由通知において採用しなかった申立理由について 1 サポート要件違反について (1)特許異議申立人の主張 特許異議申立人は、特許異議申立書の「(3-4-2)第36条第6項第1号について」の「(i)”厚さの比”、及び、各層の厚さについて」において、本件特許発明1及び2で要件とされる関係式における各層の厚さについて、当該厚さの比の上限値又は下限値のいずれか一方のみが特定されている状況、及び、各層の厚さの範囲が特定されていない状況では、本件特許発明1及び2に包含される範囲のうち【実施例】で確認されている態様以外の態様でも上記の課題を解決できることを当業者が認識することができない旨主張する。 また、特許異議申立人は、同「(ii)各層の構成材料について」において、実施例1~3で製造されている位相差層付偏光板は、全て同一の材料が用いられており、、「切断の際の糊欠け、糊汚れ」という観点からは粘着剤層の構成材料の特性が大きく影響することが容易に予想されるが、本件特許発明1~12では各層の構成材料が特定されていないため、本件特許発明1~12において各層の構成材料がどのようなものであっても上記の課題を解決できるとは通常考えられない旨主張する。 さらに、特許異議申立人は、同「(iii)評価項目について」において、本件特許発明の課題として、「切断の際の糊欠け、糊汚れおよび切断不良」が抑制されることが挙げられているが、実施例で評価されているのは「糊汚れ」のみであるから、実施例1~3で製造されている位相差層付偏光板が「切断の際の糊欠け」や「切断不良」を抑制できるのかどうかは不明であり、本件特許発明1から12当該課題を解決することができるかどうか、当業者であっても判断することができない旨主張する。 (2)当合議体の判断 本件明細書の発明の詳細な説明には、【0012】、【0013】に、本件特許発明1及び2に特定される各層の厚さの関係を満たすことにより、切断時の粘着剤層の変形を小さくすることにより、位相差層付偏光板を切断する際の糊欠け、糊汚れ及び切断不良を抑制することができるとの作用機序に関する説明がなされているとともに、実施例の結果を参照して、糊汚れに関して、各層の厚さの関係においてその効果に臨界値が存在することが記載されている。 してみると、【0012】、【0013】の作用機序の開示に照らせば、本件特許発明1及び2に特定される各層の厚さの関係を満たすことにより、課題が解決できるものと当業者が認識できるといえるから、厚さの比の両限界値、各層の厚さの範囲、及び、各層の構成材料までが特定されなければサポート要件が充足されてないとはいえない。 また、同開示に照らせば、本件特許発明1及び2に特定される各層の厚さの関係を満たすことによって、実施例で評価されている「糊汚れ」に限らず、解決しようとする課題に対応した効果を奏することは、当業者が認識できるといえる。 (3)小結 以上のとおりであるから、特許の請求の範囲は、発明の詳細な説明の記載により当業者が本件特許発明の課題を解決できると認識できる範囲を超えるものではない。 よって、特許異議申立理由(サポート要件違反)は、その理由がない。 2 実施可能要件違反について (1)特許異議申立人の主張 特許異議申立人は、特許異議申立書の「(3-4-3)第36条第4項第1号について」において、実施例欄(段落【0061】)において、製造した光学積層体の糊汚れ評価の手順が記載されているが、裁断条件(用いた裁断機の種類、切断刃の材質やその表面処理、押切時の圧カ・速度、試験片取得までの切断刃の使用状況、切断刃の清掃状況等)が不明確であり、同等の試験結果を再現できるとはいえず、糊汚れ評価の結果が信用できないものとなり、製造した光学積層体を使用に供することが困難となるから、実質的には本件特許発明の光学積層体を製造できるということはできない、または、実質的には本件特許発明の光学積層体を使用できるということはできない、と主張する。 (2)当合議体の判断 物の発明について実施可能要件を満たすためには、明細書の発明の詳細な説明の記載が、当業者において、その記載及び出願時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、当該発明に係る物を作り、使用することができる程度のものでなければならない。 上記判断基準に照らして、本件明細書の発明の詳細な説明の記載をみるに、本件明細書の【0010】~【0059】には、本件特許発明の光学積層体を構成する、位相差層付偏光板の全体構成、位相差層付偏光板の各構成要素、セパレーターについて、好適な材料、特性、厚み等の詳細が記載されており、同【0060】には、本件特許発明の光学積層体(位相差層付偏光板)の画像表示装置への適用に関して記載されており、同【0061】~【0074】には、本件特許発明の実施例となる光学積層体を作成したことが記載されている。 そして、糊汚れの評価は、物の発明である光学積層体の作成や使用に関わるものではないから、たとえその詳細が記載されていなくとも、本件明細書の上記記載及び出願当時の技術常識に基づけば、過度の試行錯誤を要することなく、当該発明に係る物を作り、使用することができることは明らかであるから、本件明細書は、当業者が本件特許発明1に係る光学積層体を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものである。 (3)小結 以上のとおり、特許異議申立理由(実施可能要件違反)は、その理由がない。 第7 むすび 請求項1~12に係る特許は、いずれも、特許異議の申立ての理由及び証拠によって取り消すことはできない。また、他に請求項1~12に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2022-700936

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