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特許異議申立

2022-700893

軸接地リング

審判番号
2022-700893
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2018-546498
登録番号
7033538
請求日
2022年09月12日
審決日
2023年06月14日
公報発行日
2023年09月29日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】カコ ゲーエムベーハー ウント コンパニー カーゲー
  • 【権利者代理人】今井 秀樹
  • 【異議申立人】カール・フロイデンベルク・カーゲー
  • 【異議申立人代理人】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
  • 【異議申立人代理人】永島 秀郎
審判長/審判官
  • 審判長 窪田 治彦
  • 審判官 関口 哲生
  • 審判官 佐々木 芳枝
分類
P1651.113-YAA(H02K) / P1651.121-YAA(H02K)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第1項、特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の5第2項
データ出所
審決公報(XML)

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特許第7033538号発明「軸接地リング」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7033538号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~27〕について訂正することを認める。 特許第7033538号の請求項1~27に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7033538号の請求項1~27に係る特許についての出願は、2017年(平成29年)3月2日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理 2016年3月3日 (DE)ドイツ連邦共和国、2016年9月5日 (DE)ドイツ連邦共和国)を国際出願日とする出願であって、令和4年3月2日にその特許権の設定登録がされ、同年3月10日に特許掲載公報が発行された。 その後、その特許に対し、令和4年9月12日に、特許異議申立人カール・フロイデンベルク・カーゲー(以下、「異議申立人」という。)により、特許異議の申立てがされた。 本件特許異議の申立ての、その後の手続等の概要は以下のとおりである。 令和4年11月30日付け:取消理由通知書 令和5年 3月 2日 :意見書(特許権者)の提出及び訂正請求(この訂正請求による訂正を、以下「本件訂正」という。) 令和5年 5月 8日 :意見書(異議申立人)の提出 第2 訂正の適否について 1 本件訂正の内容 本件訂正の内容は、以下のとおりである。(なお、下線部は、各訂正事項について特許権者が付したものである。) (1)訂正事項1 ア 訂正事項1-1 本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1に、「第1の機械要素の誘導電圧または電荷を第2の機械要素へ放出するための軸接地リングであって、導電性材料から成るリング状のハウジングを備え、該ハウジングが、一方の機械要素と導電結合され且つ少なくとも1つの放出要素と導電結合し、該放出要素が、同様に導電性材料から成り、他方の機械要素と導電結合して」と記載されているのを、 「第1の機械要素(68)の誘導電圧または電荷を第2の機械要素(69)へ放出するための軸接地リングであって、導電性材料から成るリング状のハウジング(1)を備え、該ハウジング(1)が、一方の機械要素(68)と導電結合され且つ少なくとも1つの放出要素(8,8a)と導電結合し、該放出要素(8,8a)が、同様に導電性材料から成り、他方の機械要素(69)と導電結合して」 に訂正する。 (請求項1の記載を引用する請求項2~27も同様に訂正する。) イ 訂正事項1-2 本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1に、「導電結合している、前記軸接地リングにおいて、前記放出要素(8,8a)が、個々のフィラメントから形成されるのではなく、周の少なくとも一部分にわたって延在するディスク状の一体に形成された放出体であり、」と記載されているのを、 「導電結合しており、前記放出要素(8,8a)が、個々のフィラメントから形成されるのではなく、周の少なくとも一部分にわたって延在する一体に形成された放出体である、前記軸接地リングにおいて、 前記放出要素(8,8a)が、ディスク状に形成されており、クランプ要素(2,17,55,60)と、導電性材料から成る本体(4,33,61)との間で締め付け固定されており、」 に訂正する。 (請求項1の記載を引用する請求項2~27も同様に訂正する。) ウ 訂正事項1-3 本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1に、「前記放出要素(8,8a)が、その半径方向内側エッジ領域(10)でもって弾性変形により前記第1の機械要素(68)と導電結合され、または、その半径方向外側エッジ領域(10)でもって弾性変形により前記第2の機械要素(69)と導電結合されている」と記載されているのを、 「前記放出要素(8,8a)が、前記クランプ要素(2,17,55,60)を越えて突出するその半径方向内側エッジ領域(10)でもって弾性変形により半径方向力によって前記第1の機械要素(68)と導電結合され、または、前記クランプ要素(2,17,55,60)を越えて突出するその半径方向外側エッジ領域(10)でもって弾性変形により半径方向力によって前記第2の機械要素(69)と導電結合されている」 に訂正する。 (請求項1の記載を引用する請求項2~27も同様に訂正する。) (2)訂正事項2 本件訂正前の特許請求の範囲の請求項7に、「前記放出要素(8,8a)が、その半径方向の幅の半分以上にわたって、クランプ要素(2,17,55,60)と、導電性材料から成る本体(4,33,61)との間で締め付け固定されていること」と記載されているのを、 「前記放出要素(8,8a)が、その半径方向の幅の半分以上にわたって、クランプ要素(2,17,55,60)と、前記本体(4,33,61)との間で締め付け固定されていることを特徴とする、請求項1から6までのいずれか一つに記載の軸接地リング。」 に訂正する。 (請求項7の記載を引用する請求項8~27も同様に訂正する。) (3)一群の請求項 本件訂正前の請求項1~27は、本件訂正前の請求項2~27がそれぞれ請求項1を直接的又は間接的に引用する関係にあるから、本件訂正は、一群の請求項〔1~27〕に対して請求されたものである。 2 本件訂正の適否 (1)訂正の目的、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否について ア 訂正事項1-1について (ア)訂正の目的 訂正事項1-1は、訂正前の請求項1において、「第1の機械要素」、「第2の機械要素」、「ハウジング」、「一方の機械要素」、「放出要素」及び「他方の機械要素」と記載されているのを、それぞれ、「第1の機械要素(68)」、「第2の機械要素(69)」、「ハウジング(1)」、「一方の機械要素(68)」、「放出要素(8,8a)」及び「他方の機械要素(69)」として符号を付加し、発明の詳細な説明に示される実施形態との対応関係を明瞭にしたものであり、訂正事項1-1は、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 (イ)新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否 訂正事項1-1に係る、上記(ア)の訂正が、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、また、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「本件特許明細書等」という。)に記載した事項の範囲内においてしたものであることは明らかである。 イ 訂正事項1-2について (ア)訂正の目的 訂正事項1-2は、訂正前の請求項1における「導電結合している、前記軸接地リングにおいて、前記放出要素(8,8a)が、個々のフィラメントから形成されるのではなく、周の少なくとも一部分にわたって延在するディスク状の一体に形成された放出体であり、」と記載されているのを、 「導電結合しており、前記放出要素(8,8a)が、個々のフィラメントから形成されるのではなく、周の少なくとも一部分にわたって延在する一体に形成された放出体である、前記軸接地リングにおいて、 前記放出要素(8,8a)が、ディスク状に形成されており、」として、「おいて」までの前提となる事項を限定し、更に、放出要素について、「クランプ要素(2,17,55,60)と、導電性材料から成る本体(4,33,61)との間で締め付け固定されており、」という事項を付加し、「放出要素」を限定するものである。 したがって、訂正事項1-2は特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 (イ)新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否 訂正事項1-2により、放出要素の固定に関する構成が付加され、限定された。したがって、訂正事項1-2は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 また、本件特許明細書等の特許請求の範囲の請求項7に「前記放出要素(8,8a)が、その半径方向の幅の半分以上にわたって、クランプ要素(2,17,55,60)と、導電性材料から成る本体(4,33,61)との間で締め付け固定されている」と記載され、段落0042に、「有利には金属から成る両クランプリング1,2により、円板状の放出体8の形態の放出要素が締め付け固定される。・・・内側クランプリング2はその側面5でもってクランプリング1の側面3の内側にプレスばめで当接している。このようにして、放出体8はクランプリング1,2の両ラジアルフランジ4,6の間で確実に締め付け固定されている。」と記載され、また、段落0058に「有利には、放出体は繰り抜き部11としてのスリットを備えている。互いに接している放出体8は、前述の態様で両クランプリング1と2の間で締め付け固定されている。」と記載されていることから、訂正事項1-2は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものである。 ウ 訂正事項1-3について (ア)訂正の目的 訂正事項1-3は、訂正前の請求項1における「その半径方向内側エッジ領域(10)でもって弾性変形により前記第1の機械要素(68)と導電結合され、」と記載されているのを、「前記クランプ要素(2,17,55,60)を越えて突出するその半径方向内側エッジ領域(10)でもって弾性変形により半径方向力によって前記第1の機械要素(68)と導電結合され、」とし、また、訂正前の請求項1における「その半径方向外側エッジ領域(10)でもって弾性変形により前記第2の機械要素(69)と導電結合され」と記載されているのを、「前記クランプ要素(2,17,55,60)を越えて突出するその半径方向外側エッジ領域(10)でもって弾性変形により半径方向力によって前記第2の機械要素(69)と導電結合され」として、放出要素について、「前記クランプ要素(2,17,55,60)を越えて突出する」という事項を付加し、また、放出要素と機械要素との導電結合について「半径方向力によって」という事項を付加し、「放出要素」を限定するものである。 したがって、訂正事項1-3は特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 (イ)新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否 訂正事項1-3により、放出要素の固定に関する構成が付加され、限定された。したがって、訂正事項1-3は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 また、訂正事項1-3は、本件特許明細書等の段落0045に、「放出体8の半径方向内側領域10は、貫通穴7のエッジから突出している。この突出の大きさは、放出体8のこの半径方向内側領域10が弾性変形で軸68上に載置されるように選定されている。」と記載され、また、段落0047に「弾性変形により発生する、軸68に対し半径方向に作用する力が、大きすぎないようにするため、この弾性変形領域には、周方向に配分して配置される、縁が開口した複数の繰り抜き部11が設けられている。これらの繰り抜き部11は、本実施形態では、放出体8の内側エッジまで延在するスリットとして形成されている。スリット11の長さは次のように選定され、すなわち放出体8の、スリットの間に形成される部分12が、一方では十分な半径方向の力で軸68上に載置されることで、電圧を確実に放出するように、他方では軸との接触領域での放出体8の摩耗が可能な限り小さくなるような力でもって載置されるように、選定される。」と記載され、更に、段落0100~0102に「図20および図21は、基本的には図1ないし図3の実施形態と同一に構成された軸接地リングを示している。これら実施形態と異なるのは、クランプリング1がその筒状側面3でもって軸68上に相対回転不能に着座している点である。このケースでは、ディスク状の放出体8は、両クランプリング1,2から半径方向へ突出しているその領域10でもって、ハウジング69の取り付け空間70の内壁71に当接している。軸接地リングをこのように構成しても、電圧または電荷を軸68からクランプリング1と放出体8とを介してハウジング69へ放出させることができる。放出体8の、半径方向に突出している領域10は、図1および図2の実施形態に対応して、周方向に配分して配置される複数の繰り抜き部11を備えている(図20)。これらの繰り抜き部は有利にはスリットによって形成されている。しかし、ディスク状の放出体8を、図3の実施形態に対応して形成してもよく、すなわち半径方向に突出している領域10がこの種の繰り抜き部を有しないように形成してもよい。」と記載されていることから、訂正事項1-3は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものである。 エ 訂正事項2について (ア)訂正の目的 訂正事項2は、訂正事項1に伴って、訂正前の請求項7において、「導電性材料から成る本体(4,33,61)」と記載されているのを、「前記本体(4,33,61)」とし、訂正事項1により請求項1で特定される「導電性材料から成る本体(4,33,61)」と同一のものであることを明らかにしたものである。 したがって、訂正事項2は、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 (イ)新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否 訂正事項2に係る、上記(ア)の訂正が、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、また、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものであることは明らかである。 3 独立特許要件について 本件においては、本件訂正前の請求項1~27について特許異議の申立てがされているので、本件訂正後の請求項1~27に係る発明に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項に規定する独立特許要件は課されない。 4 一群の請求項について 本件訂正前の請求項2~27は、請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する関係であるから、請求項1~27は、一群の請求項である。そして、本件訂正は、請求項1~27について訂正することを求めるものであるから、特許法第120条の5第4項で規定する一群の請求項ごとに訂正の請求をするものである。 5 小括 以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 したがって、特許請求の範囲を、本件訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、本件訂正後の請求項〔1~27〕について訂正することを認める。 第3 本件発明について 本件訂正後の請求項1~27に係る発明(以下、請求項順に「本件発明1」、「本件発明2」などといい、また、本件発明1~27を総称して「本件発明」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1~27に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 「【請求項1】 第1の機械要素(68)の誘導電圧または電荷を第2の機械要素(69)へ放出するための軸接地リングであって、導電性材料から成るリング状のハウジング(1)を備え、該ハウジング(1)が、一方の機械要素(68)と導電結合され且つ少なくとも1つの放出要素(8,8a)と導電結合し、該放出要素(8,8a)が、同様に導電性材料から成り、他方の機械要素(69)と導電結合しており、前記放出要素(8,8a)が、個々のフィラメントから形成されるのではなく、周の少なくとも一部分にわたって延在する一体に形成された放出体である、前記軸接地リングにおいて、 前記放出要素(8,8a)が、ディスク状に形成されており、クランプ要素(2,17,55,60)と、導電性材料から成る本体(4,33,61)との間で締め付け固定されており、 前記放出要素(8,8a)が、前記クランプ要素(2,17,55,60)を越えて突出するその半径方向内側エッジ領域(10)でもって弾性変形により半径方向力によって前記第1の機械要素(68)と導電結合され、または、前記クランプ要素(2,17,55,60)を越えて突出するその半径方向外側エッジ領域(10)でもって弾性変形により半径方向力によって前記第2の機械要素(69)と導電結合されていることを特徴とする軸接地リング。 【請求項2】 前記放出要素(8,8a)が、前記軸接地リングのラジアル面内にある導電性PTFE要素であることを特徴とする、請求項1に記載の軸接地リング。 【請求項3】 前記放出要素(8,8a)が、弾性湾曲したエッジ領域(10)を備え、エッジ領域(10)が、前記第1の機械要素(68)または前記第2の機械要素(69)に当接していることを特徴とする、請求項1または2に記載の軸接地リング。 【請求項4】 エッジ領域(10)が、その周方向に、エッジが開口した複数の繰り抜き部(11)を備えていることを特徴とする、請求項3に記載の軸接地リング。 【請求項5】 少なくとも2つの前記放出要素(8,8a)が1つのパックにまとめられていることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか一つに記載の軸接地リング。 【請求項6】 前記放出要素(8,8a)の前記パックの1つの側に、前記放出要素と少なくともほぼ同一の形状およびサイズを有する弾性要素(15)が当接していることを特徴とする、請求項5に記載の軸接地リング。 【請求項7】 前記放出要素(8,8a)が、その半径方向の幅の半分以上にわたって、クランプ要素(2,17,55,60)と、前記本体(4,33,61)との間で締め付け固定されていることを特徴とする、請求項1から6までのいずれか一つに記載の軸接地リング。 【請求項8】 前記クランプ要素(2,17,55,60)が、前記ハウジング(1)の内部に配置されて、これと導電性固定結合されていることを特徴とする、請求項7に記載の軸接地リング。 【請求項9】 前記本体(4,33,61)が前記ハウジング(1,62)と一体的に形成されていることを特徴とする、請求項7または8に記載の軸接地リング。 【請求項10】 前記ハウジング(1)内に、少なくとも1つの他の放出要素(8,8a)、または、複数の前記放出要素の少なくとも1つの他のパックが配置されていること、前記放出要素(8,8a)または前記放出要素の前記パックが、導電性材料から成る少なくとも1つの中間ディスク(13)によって互いに分離されていることを特徴とする、請求項1から9までのいずれか一つに記載の軸接地リング。 【請求項11】 前記クランプ要素(33,37)が弾性力で前記放出要素(8,8a)に当接していることを特徴とする、請求項7から10までのいずれか一つに記載の軸接地リング。 【請求項12】 前記本体が、導電性材料から成って前記第1の機械要素(68)と固定結合されているブシュ(3)の一部分であることを特徴とする、請求項7から11までのいずれか一つに記載の軸接地リング。 【請求項13】 前記放出要素(8)が前記ブシュ(3)と前記ハウジング(69)とに当接していることを特徴とする、請求項12に記載の軸接地リング。 【請求項14】 前記放出要素(8)が、その半径方向内側領域(10)でもって前記ブシュ(45)の円錐状部分(47)上に載置され、且つ前記ブシュ(45)の前記円錐状部分(47)の方向に力の作用を受けていることを特徴とする、請求項12または13に記載の軸接地リング。 【請求項15】 前記クランプ要素(60)が、該クランプ要素を前記放出要素(8,8a)に対し押圧させる突起(67)を備えていることを特徴とする、請求項7から14までのいずれか一つに記載の軸接地リング。 【請求項16】 前記クランプ要素(60)が、前記ハウジング(62)に固定されているクランプシートであり、その突起(67)がエンボス加工工程によって形成されていることを特徴とする、請求項15に記載の軸接地リング。 【請求項17】 前記クランプ要素(60)が、レーザー溶接によって前記ハウジング(62)に固定されていることを特徴とする、請求項16に記載の軸接地リング。 【請求項18】 前記放出要素(8,8a)が一体に形成され、または、複数のより大きな部分から成っていることを特徴とする、請求項1から17までのいずれか一つに記載の軸接地リング。 【請求項19】 前記放出要素(8,8a)がコンパクトな導電性材料から成っていることを特徴とする、請求項1から18までのいずれか一つに記載の軸接地リング。 【請求項20】 前記放出要素(8)が弾性変形可能なディスク状の本体(82)を有し、該本体が、導電性材料から成っている被覆部(83)を備えていることを特徴とする、請求項1から19までのいずれか一つに記載の軸接地リング。 【請求項21】 前記被覆部(83)が前記本体(82)全体を覆うことを特徴とする、請求項20に記載の軸接地リング。 【請求項22】 前記本体(82)は、前記放出要素(8)が前記機械要素(68,69)に当接している領域に、複数の貫通破断部(86)を備え、これら貫通破断部が、導電性材料(87)で充填されていることを特徴とする、請求項20または21に記載の軸接地リング。 【請求項23】 前記複数の貫通破断部(86)が、前記本体(82)の周方向に配分して配置されていることを特徴とする、請求項22に記載の軸接地リング。 【請求項24】 該導電性材料(87)が前記複数の貫通破断部(86)において少なくとも前記被覆部と結合され、該被覆部が、前記本体(82)の、前記第1または第2の機械要素(68,69)とは逆の側(84,85)に設けられていることを特徴とする、請求項22または23に記載の軸接地リング。 【請求項25】 前記被覆部(83)が導電性の箔であることを特徴とする、請求項20から24までのいずれか一つに記載の軸接地リング。 【請求項26】 前記導電性の箔が、前記本体(82)の1つの側から外側エッジを介して前記本体(82)の他の側へ延在していることを特徴とする、請求項25に記載の軸接地リング。 【請求項27】 前記導電性の箔が、互いに隣り合っている前記本体(82)の間に位置していることを特徴とする、請求項25または26に記載の軸接地リング。」 第4 取消理由通知に記載した取消理由について 1 取消理由の概要 訂正前の請求項1~27に係る特許に対して、当審が令和4年11月30日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。 (1)請求項1、7~9に係る発明は、本件特許出願の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された甲第5号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項1、7~9に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。 (2)請求項1、2、7~9、11、15~19に係る発明は、本件特許出願の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された甲第5号証に記載された発明及び甲第6号証に記載された事項に基いて、本件特許出願の優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1、2、7~9、11、15~19係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 (3)請求項1、3に係る発明は、本件特許出願の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された甲第7号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項1、3に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。 (4)請求項1~5、18、19に係る発明は、本件特許出願の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された甲第7号証に記載された発明及び甲第6号証に記載された事項に基いて、本件特許出願の優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~5、18、19に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 <甲号証一覧> 甲第5号証:特開平9-14452号公報 甲第7号証:米国特許第7498703号明細書 甲第6号証:特開2014-142065号公報 (以下、各甲号証を証拠番号に従って、「甲5」などという。) 2 各証拠の記載 (1)甲5について ア 甲5には、図面とともに次の事項が記載されている。 (ア)「【0001】 【発明が属する技術分野】本発明は、電車の車軸等に用いられる車両用軸受等と組み合わせて使用されるオイルシールのリップを潤滑するための構造に関するものである。」 (イ)「【0004】 【発明が解決しようとする課題】しかしながら、前記実開平6-32837号公報に記載の方法では、潤滑剤の滲み出し位置が軸から離れていることや、プラスチックグリースの充填作業が難しいこと等から、十分な潤滑効果が安定的に得られない場合があるという問題点がある。 【0005】本発明は、このような従来技術の問題点に着目してなされたものであり、軸と外周部材との間に介装されたオイルシールのリップを潤滑するための構造において、十分な潤滑効果が安定的に得られるものを提供することを目的とする。」 (ウ)「【0006】 【課題を解決するための手段】上記課題を解決するために、本発明は、軸とこれを包囲する外周部材との間に介装されたオイルシールのリップを潤滑するための構造において、環状の潤滑剤含有プラスチック成形体を、その内周面が前記軸のオイルシール近傍部分に接触する状態で前記外周部材に固定するか、または、前記軸のオイルシール近傍部分に固定したことを特徴とするオイルシールリップの潤滑構造を提供する。」 (エ)「【0009】また、前記潤滑剤含有プラスチック成形体は、機械的強度を向上させる目的で、前記ポリオレフィン系ポリマー以外に、以下のような熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂を一種類または二種類以上含むものであってもよい。含有可能な熱可塑性樹脂としては、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリブチレンテレフタレート、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアミドイミド、ポリスチレン、ABS樹脂等が挙げられる。」 (オ)「【0012】また、鉄道用車両の車軸用軸受においては、電動機や他の装置からの漏れ電流等によって、金属製の軸と軸ケース(シールケース)に電荷が溜まりやすく、この溜まった電荷が放電する際に両者の間にある軸受を通ることになって軸受が電食され、軸受寿命が著しく短くなるという問題点があり、このような電食を防止するためには、前記潤滑剤含有プラスチック成形体に導電性フィラーが含有されていると好ましい。」 (カ)「【0017】 【発明の実施の形態】以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明に係るオイルシールリップの潤滑構造の第一実施形態を示す断面図である。この潤滑構造において、オイルシール1は、回転軸Sとこれを包囲する円筒状のシールケース(外周部材)2との間に介装してあり、この回転軸Sは、軸受Jを介して図示されない固定側に回転自在に支持されている。また、シールケース2は、内周面で軸受Jの外輪の軸方向端部を受ける大径部21と、これより径が小さく内側にオイルシール1が配置される中径部22と、これよりさらに径が小さい小径部23と、中径部22と小径部23との境界でオイルシール1の端部が当接される当接部24とを有するそして、オイルシール1は、ガータスプリング付オイルシールであり、ダストリップ11aと主リップ11bを備えたゴム部材11の外側に、断面逆L字状の金属環12が固定され、主リップ11bの外周にガータスプリング13が配されている。なお、軸Sおよびシールケース2は共に金属製のものである。 【0018】また、このオイルシール1は、軸受J側からシールケース2の内側に挿入され、金属環12をシールケース2の当接部24に当接させて中径部22内に配置された後に、金属環12の外周面をなす嵌合部12aとシールケース2との間にスプリングカバー3を圧入することで固定されている。このスプリングカバー3は、オイルシール1の金属環12と同様に断面逆L字状の環状体に形成され、その外周面をなす嵌合部31と、内向きフランジ状のカバー部32とで構成されている。そして、スプリングカバー3の嵌合部31が、金属環12の嵌合部12aとシールケース2との間に圧入され、カバー部32に潤滑剤含有プラスチック成形体4が固定されている。」 (キ)「【0020】そして、この潤滑剤含有プラスチック成形体4は、スプリングカバー3のカバー部32に外周部42を当接して配置され、外周部42の外側面からカバー部32を貫通するねじB1 により直接的にはスプリングカバー3に固定され、このスプリングカバー3を介してシールケース2の中径部22に固定されている。また、軸Sの外周面は、この潤滑剤含有プラスチック成形体4の内周部41の内周面に接触している。また、ここでは、内周部41の外周面にガータスプリング5が配されていて、その弾性力により、潤滑剤含有プラスチック成形体4の内周面が確実に軸Sに接触するようになっている。」 (ク)「【0021】また、軸Sの回転により潤滑剤含有プラスチック成形体4と軸Sとの間に摩擦熱が生じるため、潤滑剤含有プラスチック成形体4から潤滑剤が滲み出しやすくなるから、主リップ11bの潤滑が十分になされる。また、この潤滑剤含有プラスチック成形体4は導電性フィラーを含有しているため電気伝導度が高く、金属製である軸Sおよびシールケース2は常に短絡状態にあるから、両者に電荷が溜まり難い。これにより、軸受Jの電食を防止することができる。 【0022】さらに、この場合には、潤滑剤含有プラスチック成形体4がスプリングカバー3の外側に固定されるため、メンテナンス時に潤滑剤含有プラスチック成形体4の交換が容易に行える。図2は、本発明に係るオイルシールリップの潤滑構造の第二実施形態を示す断面図である。」 (ケ)「【0048】したがって、この第八実施形態の潤滑構造では、前記第二実施形態および第五実施形態の両方の効果が得られるとともに、二つの潤滑剤含有プラスチック成形体4a,4bによって、より長期間における主リップ11bの潤滑および軸受Jの電食防止が可能となる。図9は、本発明に係るオイルシールリップの潤滑構造の第九実施形態を示す断面図である。 【0049】この潤滑構造において、オイルシール1とその取付け方、オイルシール1が介装されている軸Sとシールケース2の構造、スプリングカバー3の形状、および潤滑剤含有プラスチック成形体4cの組成は前記第一実施形態と同じであるが、潤滑剤含有プラスチック成形体4cの形状およびその配置が異なる。この潤滑剤含有プラスチック成形体4cは、オイルシール1のゴム部材11とスプリングカバー3と軸Sとの隙間に弾性変形状態で埋め込まれる形状に成形されたものであり、オイルシール1をシールケース2に配置し、この潤滑剤含有プラスチック成形体4cをゴム部材11の凹部に嵌め入れた後に、スプリングカバー3の嵌合部31を金属環12の嵌合部12aとシールケース2との間に圧入することによって、ゴム部材11とスプリングカバー3と軸Sとの隙間に弾性変形状態で埋め込まれる。これにより、潤滑剤含有プラスチック成形体4cは、軸Sに接触状態で直接的にはスプリングカバー3に固定され、このスプリングカバー3を介してシールケース2に固定されている。 【0050】したがって、この第九実施形態の潤滑構造では、前記各実施形態と同様に、潤滑剤含有プラスチック成形体4cから滲み出した潤滑剤が、軸Sを介してオイルシール1の主リップ11bと軸Sとの間に安定的に供給される。また、この潤滑剤含有プラスチック成形体4cは、オイルシール1の主リップ11bに近接して配置されているため、主リップ11bの潤滑が十分になされる。さらに、この実施形態ではボルト止めなしでスプリングカバー3に固定されるため、取付けにかかる手間が軽減される。」 (コ)「【図1】 [図:0001401650000001.jpg] 【図9】 [図:0001401650000002.jpg] 」 (サ)上記(オ)、(ク)の記載から、シールケース2および軸受の外側には、更に、シールケース2で溜まった電荷を逃がすための、接地された外装が存在し、シールケース2と接地された外装が電気的につながっていることは明らかであるといえる。 (シ)上記(ク)の記載から、シールケース2、潤滑剤含有プラスチック成形体4、回転軸Sが電気的につながっていることは明らかである。 (ス)上記(キ)、(ク)及び図1の記載から、潤滑剤含有プラスチック成形体4が、個々のフィラメントから形成されるのではなく、また、周の少なくとも一部分にわたって延在するディスク状の一体に形成された放出体であることは明らかであるといえる。 (セ)上記(キ)及び図1の記載から、潤滑剤含有プラスチック成形体4の内周部41が弾性変形し、回転軸Sと接触していることは明らかであるといえる。 イ 甲5に記載された発明 前記(ア)~(ク)、(コ)~(セ)の記載を総合して、本件発明の表現に倣って整理すると甲5には、以下の発明(以下、「甲5発明」という。)が記載されていると認められる。 (甲5発明) 「回転軸Sの電荷を外装へ放出するためのオイルシールリップの潤滑構造であって、金属製の円筒状のシールケース2を備え、該シールケース2が、外装と電気的につながり且つ潤滑剤含有プラスチック成形体4と電気的につながり、該潤滑剤含有プラスチック成形体4が、導電性フィラーを含有し、回転軸Sと電気的につながっており、前記潤滑剤含有プラスチック成形体4が、個々のフィラメントから形成されるのではなく、周の少なくとも一部分にわたって延在するディスク状の一体に形成された放出体である、前記オイルシールリップの潤滑構造であって、 前記潤滑剤含有プラスチック成形体4が、その内周部41でもって弾性変形により前記回転軸Sと電気的につながっているオイルシールリップの潤滑構造。」 また、前記(ケ)及び(コ)の記載から、甲5には、以下の事項(以下、「甲5に記載の事項」という。)が記載されている。 「潤滑剤含有プラスチック成形体4cが、その半径方向の幅の半分以上にわたって、ゴム部材11とスプリングカバー3と軸Sとの隙間に弾性変形状態で埋め込まれていること。」 (2)甲7について ア 甲7には、図面とともに次の事項が記載されている。 なお、括弧()内の翻訳文は、(エ)及び(オ)は、異議申立人による抄訳、また、(ア)~(ウ)は、当審による仮訳である。 (ア)「SHAFT SEALING ASSEMBLY」(1欄1行) (シャフトシーリングアセンブリ) (イ)「This invention relates generally to a motor shaft sealing assembly and, more particularly to a seal assembly for providing a seal between a shaft and a housing in which the shaft rotates.」(1欄8~11行) (本発明は、モータシャフトシールアセンブリ、より具体的には、シャフトとシャフトが回転するハウジングとの間をシールするためのシーリングアセンブリに関するものである。) (ウ)「A shaft sealing assembly provides a conductive electrical path between the motor shaft and an electrical ground to dissipate electrical charges from the shaft. Without such a dissipation, residual current and/or shaft voltage will accumulate on the rotor and discharge through the motor bearing. Random and frequent discharging can damage the bearing rolling elements and/or raceways allowing contaminants to accumulate and interfere with motor performance. In extreme cases, the electrical discharge damage can lead to catastrophic bearing failure. Moreover, certain safety standards limit the amount of acceptable electrical discharge (e.g., less than 15mV on any rotating shaft) in manufacturing situations whereby, independent of bearing isolation issues, some type of electrical dissipation must be provided.」(1欄26~39行) (シャフトシーリングアセンブリは、モータシャフトとシャフトから電荷を消散させる電気接地との間に導電性の電気的経路を提供する。このような消散がないと、残留電流および/またはシャフト電圧はロータ上に蓄積するとモータ軸受を通って放出される。ランダムで頻繁に生じる放電は、軸受の転動体および/またはレースに、汚染物が蓄積するのを許し、損傷を与え得、また、モータ性能に干渉し得る。極端な場合には、電気的放電による破壊は軸受の突発的な故障につながる可能性がある。さらに、ある種の安全規格は、製造状況において許容可能な放電(例えば、任意の回転シャフトに15mV未満)の量を制限するために、軸受隔離の問題とは無関係に、いくつかのタイプの電気損失を提供しなければならない。) (エ)「The sealing assembly 10 additionally comprises at least one electrical-path establishing element 88 which forms the electrically conductive path between the shaft 12 and the electrical ground 34. In this manner, residual current and/or stray voltage will pass from the shaft 12 to the element 88, to the housing 20, and through the support structure 28 to the electrical ground 34. In the sealing assembly shown in FIGS. 3A-3D, the path-establishing element 88 is part of the stator 42. The element 88 can be permanently fixed to the main body 70 of the stator 42 (and/or its flange 72) and/or it can be formed in one piece therewith.」(3欄22~32行) (シーリングアセンブリ10は、シャフト12と電気接地34との間の導電経路を形成する少なくとも1つの電気経路確立要素88をさらに備える。このようにして、残留電流および/または浮遊電圧がシャフト12から要素88へ、ハウジング20へ、支持構造体28を通って電気接地34へと流れる。図3A~3Dに示されるシーリングアセンブリでは、経路確立要素88は固定子42の一部である。要素88は、固定子42の本体70(および/またはそのフランジ72)に恒久的に固定することができ、および/またはそれと一体に形成することができる。) (オ)「The illustrated path-establishing element 88 is a thin lip having a curved base portion 92 extending from the main body 70 of the stator 42 and a tip portion 94 extending radially inward therefrom. The tip portion 94 rides against the shaft 12 to ensure electrical contact is established. The thin lip-like profile of the portions 92/94 allows at least a limited amount of flexing relative to the rest of the stator 42 to accommodate, for example, slight non-rotational movements and/or shifts of the shaft12.」(3欄33~41行) (図示の経路確立要素88は、ステータ42の本体70から延在する湾曲した基部92と、そこから半径方向内側に延在する先端部分94とを有する薄いリップである。先端部分94は、電気的接触が確実に確立されるように、シャフト12に乗り上げる。部分92/94の薄い唇状の外形は、例えば、シャフト12のわずかな非回転運動および/またはシフトに適応するために、固定子42の残りの部分に対して少なくとも制限された量の屈曲を可能にする。) (カ)「 [図:0001401650000003.jpg] [図:0001401650000004.jpg] 」 (キ)上記(エ)、(オ)の記載から、残留電流および/または浮遊電圧がシャフト12から電気経路確立要素88へ流れ、更に、ステータ42の本体70を通り、ハウジング20へ流れることが明らかであるから、ステータ42の本体70が、導電性材料から成るものであるといえる。 (ク)上記(エ)、(オ)及び図2A~図2Dの記載から、ステータ42の本体70が環状であり、また、ステータ42の本体70から延在する電気経路確立要素88が、個々のフィラメントから形成されるのではなく、周の少なくとも一部分にわたって延在する一体に形成された放出体であること、更に、電気経路確立要素88が、環状に形成されていることは、明らかである。 (ケ)上記(エ)、(オ)及び図2A~図2Dの記載から、電気経路確立要素88の部分92/94の薄い唇状の外形は、シャフトのわずかな非回転運動および/またはシフトに適応するために、固定子42の残りの部分に対して少なくとも制限された量の屈曲を可能にするものであることから、半径方向力によってシャフトと導電結合されることは、明らかである。 イ 甲7に記載された発明 前記(ア)~(ケ)の記載を総合して、本件発明の表現に倣って整理すると甲7には、以下の発明(以下、「甲7発明」という。)が記載されていると認められる。 (甲7発明) 「シャフトの残留電流または浮遊電圧をハウジング20へ放電するためのシャフトシーリングアセンブリ10であって、導電性材料から成る環状のステータ42の本体70を備え、該ステータ42の本体70が、シャフトと導電結合され且つ電気経路確立要素88と導電結合し、該電気経路確立要素88が、同様に導電性材料から成り、ハウジング20と導電結合しており、前記電気経路確立要素88が、個々のフィラメントから形成されるのではなく、周の少なくとも一部分にわたって延在する一体に形成された放出体である、前記シャフトシーリングアセンブリ10において、 前記電気経路確立要素88が、環状に形成されており、 前記電気経路確立要素88が、その湾曲した基部92とそこから半径方向内側に延在する先端部分94でもって制限された量の屈曲により半径方向力によって前記シャフトと導電結合されるシャフトシーリングアセンブリ10。」 (3)甲6について ア 甲6には、図面とともに次の事項が記載されている。 (ア)「【0001】 本発明は、ゴム弾性材料(gummielastischer Werkstoff)からなるシールリング、及び動的負荷を受ける少なくとも1つのシールリップと、シールリップに対して軸方向の間隔を置いて隣接配置されている少なくとも1つの前置シールと、を備えるシールリングに関する。」 (イ)「【0004】 本発明の課題は、帯電と、互いにシールすべき機械要素の、帯電から結果として生じる損傷とを、シールリングによって防止するように、シールリング及びシール装置をさらに改良することである。 (ウ)「【0041】 シールリングは、シールリップ1及び前置シール2を有している。前置シール2は、導電性の材料、図示の実施の形態では、PTFE含浸フリース材料からなっている。前置シール2は、円環状のディスクとして形成されており、シールリップ1の、シールすべき空間10とは軸方向で反対側に配置されている。 【0042】 前置シール2は、半径方向で第1の機械要素6のシールすべき表面5から第2の機械要素8にかけて延在している。両機械要素6,8は、前置シール2にそれぞれが当接して接触するようになっており、これにより互いに導電的に接続されている。」 (エ)「【図1】 [図:0001401650000005.jpg] 」 第5 当審の判断 1 本件発明1について (1)甲5を主引用例としたもの ア 本件発明1と甲5発明とを対比すると、甲5発明の「回転軸S」は本件発明1の「第1の機械要素」に相当し、同様に、「外装」は「第2の機械要素」に、「オイルシールリップの潤滑構造」は「軸接地リング」に、「金属製の」は「導電性材料から成る」に、「円筒状」は「リング状」に、「シールケース2」は「ハウジング」に、「電気的につながり」は「導電結合され」に、「潤滑剤含有プラスチック成形体4」は「放出要素」に、「導電性フィラーを含有し」は「導電性材料から成り」に、それぞれ相当する。 また、甲5発明の「回転軸S」及び「外装」は、前記したように、本件発明1の「第1の機械要素」及び「第2の機械要素」にそれぞれ相当するところ、甲5発明の「回転軸S」及び「外装」の内、一方が、本件発明1の「一方の機械要素」に相当し、他方が、本件発明1の「他方の機械要素」に相当する。 そして、甲5の前記第4の2(1)ア(カ)、(キ)及び図1の記載によれば、潤滑剤含有プラスチック成形体4は、外周部42と、軸に接触する内周部41とにより構成されているところ、内周部41は、潤滑剤含有プラスチック成形体4の半径方向内側領域にあるといえるから、本件発明1の「その半径方向内側エッジ領域でもって弾性変形により半径方向力によって前記第1の機械要素と導電結合され」と甲5発明の「その内周部41でもって弾性変形により前記回転軸Sと電気的につながって」とは、「その半径方向内側領域でもって弾性変形により前記第1の機械要素と導電結合され」ている点で共通する。 そうすると、本件発明1と甲5発明とは、以下の「一致点1」で一致し、以下の「相違点1」で相違する。 (一致点1) 第1の機械要素の電荷を第2の機械要素へ放出するための軸接地リングであって、導電性材料から成るリング状のハウジングを備え、該ハウジングが、一方の機械要素と導電結合され且つ少なくとも1つの放出要素と導電結合し、該放出要素が、同様に導電性材料から成り、他方の機械要素と導電結合しており、前記放出要素が、個々のフィラメントから形成されるのではなく、周の少なくとも一部分にわたって延在する一体に形成された放出体である、前記軸接地リングにおいて、 前記放出要素が、ディスク状に形成されており、 前記放出要素が、その半径方向内側領域でもって弾性変形により前記第1の機械要素と導電結合されている軸接地リング。 (相違点1) ディスク状に形成された放出要素に関し、本件発明1は、「クランプ要素(2,17,55,60)と、導電性材料から成る本体(4,33,61)との間で締め付け固定されており」、また、「前記クランプ要素(2,17,55,60)を越えて突出するその半径方向内側エッジ領域(10)」でもって弾性変形により半径方向力によって前記第1の機械要素(68)と導電結合され、または、「前記クランプ要素(2,17,55,60)を越えて突出するその半径方向外側エッジ領域(10)でもって弾性変形により半径方向力によって前記第2の機械要素(69)と導電結合されている」のに対し、 甲5発明では、クランプ要素と、導電性材料から成る本体との間で締め付け固定されるものではなく、前記クランプ要素を越えて突出するものでなく、また、その内周部41でもって弾性変形により前記回転軸Sと電気的につながっている点。 イ 相違点1について (ア)甲5発明は、甲5の第一実施形態に基づくものであるところ、クランプ要素と、導電性材料から成る本体との間で締め付け固定されるものではないことは明らかである。 したがって、相違点1は、実質的な相違点であるといえる。 よって、本件発明1は、甲5発明であるとはいえない。 (イ)また、甲5には、甲5発明とは別の実施形態である第九実施形態として、上記第4の2(1)イに示した、甲5に記載の事項、すなわち、「潤滑剤含有プラスチック成形体4cが、その半径方向の幅の半分以上にわたって、ゴム部材11とスプリングカバー3と軸Sとの隙間に弾性変形状態で埋め込まれていること」が記載されている。 しかし、図9等に示される第九実施形態について、上記第4の2(1)ア(ケ)の段落0049に「前記第一実施形態と・・・潤滑剤含有プラスチック潤滑剤含有プラスチック成形体4cの形状およびその配置が異なる。」と記載されるように、潤滑剤含有プラスチック成形体4cの形状は、ディスク状と認めた、第一実施形態の潤滑剤含有プラスチック成形体4と異なる形状であることは明らかである。 ところで、本件特許明細書等の段落0007に「ディスク状の放出体とは、放出体が一体に形成されていなければならないということだけでなく、放出体を形成するために、取り付け状態で互いに当接しあっているか、或いは、互いに間隔を持つことができるようなより大きな(比較的大きな)部分から成っていてもよいと理解すべきである。さらに、ディスク状の放出体とは、わずかな厚さを有していればよい構成部材である。放出体は簡単に作製でき、取り付けることができる。放出要素は多数のフィラメントから形成されるのではなく、少なくとも1つの放出体によって形成されるので、放出要素の個々の部品が溶けることはない。」と記載され、また、段落0008に「放出要素としてのディスク状の放出体が、軸接地リングのラジアル面内にある導電性PTFE要素であり、この導電性PTFEが有利にはPTFEディスクであれば有利である。導電性は、PTFE内の適当な導電性充填物質によって生じる。このようなPTFEコンパウンドは摩擦が少なく、摩耗しにくい。PTFE要素は、回転する第1の機械要素または第2の機械要素との有利な面接触を可能にする。PTFE要素により、第1の機械要素の回転方向交替は難なく可能である。PTFE要素に内在する記憶効果には、該PTFE要素がその変形後も出発位置に、すなわちディスク形状に戻ろうとするという利点がある。」と記載され、更に、段落0042に「有利には金属から成る両クランプリング1,2により、円板状の放出体8の形態の放出要素が締め付け固定される。」と記載されるように、本件発明1で特定される「ディスク状」とは、厚さ方向に変形が可能な程度のわずかな厚さを有する板状であると理解できる。 そうすると、甲5に記載の事項に係る「潤滑剤含有プラスチック成形体4c」は、ディスク状であるとはいえない。また、甲5に記載の事項に係る「スプリングカバー3」はクランプ要素ともいえるとしても、「ゴム部材11」は導電性材料から成る本体とはいえないから、「潤滑剤含有プラスチック成形体4c」は、クランプ要素と、導電性材料から成る本体との間で締め付け固定されるものであるともいえない。 そして、甲5の段落0022に「潤滑剤含有プラスチック成形体4がスプリングカバー3の外側に固定されるため、メンテナンス時に潤滑剤含有プラスチック成形体4の交換が容易に行える。」と記載されるように、第一実施形態における固定態様についての効果が示されているところ、このものにおいて、潤滑剤含有プラスチック成形体4がスプリングカバー3の外側に固定される態様を変更すると、その効果が得られないこととなるから、これを変更する動機はない。すなわち、第一実施形態に基づく甲5発明において、甲5に記載の事項に示す、クランプ要素で締め付け固定しているような固定態様を変更して、甲5発明における潤滑剤含有プラスチック成形体4の固定態様として採用する動機はない。そして、仮に、甲5発明の潤滑剤含有プラスチック成形体4の固定態様に不都合があれば、甲5に記載の事項の一部を抽出し採用するのではなく、潤滑剤含有プラスチック成形体の形状も含め、第九実施形態そのものに変更すると考えられるところ、そうすると、放出要素が、ディスク状に形成されたものではなくなり、また、クランプ要素と、導電性材料から成る本体との間で締め付け固定されるものともいえない。 したがって、甲5発明において、甲5に記載の事項を勘案したとしても、本件発明1には至らない。 (ウ)さらに、後述の第6の2(1)に示すとおり、甲1には、甲1発明、すなわち「シャフト16の電荷をフェースプレート14へ放出するためのブラシリング組立体10であって、導電性材料から成る環状カップ20を備え、カップ20が、フェースプレート14と結合され且つ少なくとも1つのフィラメント30と結合し、フィラメント30が、導電性材料から成り、シャフト16と接触しており、フィラメント30が、実質的に連続した環状リングとして配置されている、ブラシリング組立体10において、フィラメント30が内側プレート32と外側プレート34の間で固定され、フィラメント30が、内側プレート32と外側プレート34の内径を越えて延びる、その半径方向内側においてシャフト16に接触しているブラシリング組立体10。」が記載されている。そして、甲5発明と甲1発明とは、放出要素自体の構成、及び、放出要素を固定する構造が異なるものであるため、甲1発明から放出要素を固定する構造のみを抽出し、甲5発明に適用することはできないところ、そもそも、上記(イ)で検討したように、甲5発明において、潤滑剤含有プラスチック成形体4が固定される態様を変更する動機はない。また、甲1には、放出要素にフィラメントのみが示され、甲1発明は、放出要素がフィラメントであることを前提として、フィラメント30を内側プレート32と外側プレート34の間で固定するものであるから、甲1発明を適用するに際しては放出要素がフィラメントであることも共に適用されるべきであるところ、仮に、甲5発明において、甲1発明を適用し得たとしても、放出要素がフィラメントから形成されるものとなり、本件発明1には至らない。 (エ)加えて、上記第4の2(2)、(3)に示される甲6~7、また、後述の第6の2(2)~(5)に示すとおりの甲2~4、甲8をみても、上記相違点1に係る、放出要素が、「クランプ要素と、導電性材料から成る本体との間で締め付け固定され」、また、「前記クランプ要素を越えて突出するもの」とすることは記載されていない。 そうすると、甲5発明において、本件発明1の上記相違点1に係る構成とする動機はないところ、仮に、甲2~4、甲6~8に記載された技術を適用し得たとしても、本件発明1の上記相違点1に係る構成には至らない。 (オ)したがって、甲5発明において、前記相違点1に係る本件発明1の構成とすることは、当業者であっても容易になし得たことではない。 ウ 以上によれば、本件発明1は、甲5発明ではなく、また、当業者であっても、甲5発明に基き容易に発明をすることができたものではない。 (2)甲7を主引用例としたもの ア 本件発明1と甲7発明とを対比すると、甲7発明の「シャフト」は本件発明1の「第1の機械要素」に相当し、同様に、「残留電流または浮遊電圧」は「誘導電圧または電荷」に、「ハウジング20」は「第2の機械要素」に、「放電」は「放出」に、「シャフトシーリングアセンブリ10」は「軸接地リング」に、それぞれ相当する。 また、甲7発明の「ステータ42の本体70」は本件発明1の「ハウジング」に相当するから、甲7発明の「環状のステータ42の本体70」は本件発明1の「リング状ハウジング」に相当する。 さらに、甲7発明の「シャフト」及び「ハウジング20」は、前記したように、本件発明1の「第1の機械要素」及び「第2の機械要素」にそれぞれ相当するところ、甲7発明の「シャフト」及び「ハウジング20」の内、一方が、本件発明1の「一方の機械要素」に相当し、他方が、本件発明1の「他方の機械要素」に相当する。 また、甲7発明の「電気経路確立要素88」は本件発明1の「放出要素」に相当するから、甲7発明の「電気経路確立要素88が、環状に形成され」は本件発明1の「放出要素が、ディスク状に形成され」に相当する。 さらに、甲7発明の「湾曲した基部92とそこから半径方向内側に延在する先端部分94」は本件発明1の「半径方向内側エッジ領域」に相当し、同様に、「屈曲」は「弾性変形」に相当する。 そうすると、本件発明1と甲7発明とは、以下の「一致点2」で一致し、以下の「相違点2」で相違する。 (一致点2) 第1の機械要素の電荷を第2の機械要素へ放出するための軸接地リングであって、導電性材料から成るリング状のハウジングを備え、該ハウジングが、一方の機械要素と導電結合され且つ少なくとも1つの放出要素と導電結合し、該放出要素が、同様に導電性材料から成り、他方の機械要素と導電結合しており、前記放出要素が、個々のフィラメントから形成されるのではなく、周の少なくとも一部分にわたって延在する一体に形成された放出体である、前記軸接地リングにおいて、 前記放出要素が、ディスク状に形成されており、 前記放出要素が、その半径方向内側エッジ領域でもって弾性変形により半径方向力によって前記第1の機械要素と導電結合されている軸接地リング。 (相違点2) ディスク状に形成された放出要素に関し、本件発明1は、「クランプ要素(2,17,55,60)と、導電性材料から成る本体(4,33,61)との間で締め付け固定されており」、また、「前記クランプ要素(2,17,55,60)を越えて突出するその半径方向内側エッジ領域(10)でもって弾性変形により半径方向力によって前記第1の機械要素(68)と導電結合され、または、前記クランプ要素(2,17,55,60)を越えて突出するその半径方向外側エッジ領域(10)でもって弾性変形により半径方向力によって前記第2の機械要素(69)と導電結合されている」のに対し、 甲7発明では、クランプ要素と、導電性材料から成る本体との間で締め付け固定されるものではなく、前記クランプ要素を越えて突出するものではない点。 イ 相違点2について (ア)甲7発明は、電気経路確立要素88が、ステータ42の一部として構成されたものであるから、クランプ要素と、導電性材料から成る本体との間で締め付け固定されるものではないことは明らかである。 したがって、相違点2は、実質的な相違点であるといえる。 よって、本件発明1は、甲7発明であるとはいえない。 (イ)また、ステータ42の一部として構成された電気経路確立要素88を、ステータ42から分離して別部材とすること、そして、別部材とされた電気経路確立要素88を、更に、クランプ要素と、導電性材料から成る本体との間で締め付け固定されるように構成することは、甲7に記載も示唆もなく、甲7発明において、ステータ42の一部として構成された電気経路確立要素88を、ステータ42から分離して別部材とすること、そして、別部材とされた電気経路確立要素88を、更に、クランプ要素と、導電性材料から成る本体との間で締め付け固定されるように構成する動機はみあたらない。 したがって、上記(1)イで検討したように、甲5に、「甲5に記載の事項」が記載され、また、後述の第6の2(1)に示すとおり、甲1に「甲1発明」が記載されているとしても、甲7発明において、甲5に記載の事項や甲1発明を適用する動機はない。また、上記(1)イ(イ)で検討したように、甲5に記載の事項に係る「潤滑剤含有プラスチック成形体4c」は、ディスク状であるとはいえず、また、クランプ要素と、導電性材料から成る本体との間で締め付け固定されるもの内周部41を有したものでなく、その半径方向内側領域でもって弾性変形により半径方向力によって回転軸Sと電気的につながるものであるともいえないから、甲7発明に甲5に記載の事項を適用し得たとしても、本件発明1には至らない。さらに、上記(1)イ(ウ)で検討したように、甲1には、放出要素にフィラメントのみが示され、甲1発明は、放出要素がフィラメントであることを前提として、フィラメント30を内側プレート32と外側プレート34の間で固定するものであるから、甲1発明を適用するに際しては放出要素がフィラメントであることも共に適用されるべきであるところ、仮に、甲7発明において、甲1発明を適用し得たとしても、放出要素がフィラメントから形成されるものとなり、本件発明1には至らない。 (ウ)さらに、上記第4の2(3)に示される甲6や、後述の第6の2(2)~(5)に示すとおりの甲2~4、甲8をみても、上記相違点2に係る、放出要素が、「クランプ要素と、導電性材料から成る本体との間で締め付け固定され」、また、「前記クランプ要素を越えて突出するもの」とすることは記載されていない。 そうすると、甲7発明において、本件発明1の上記相違点2に係る構成とする動機はないところ、仮に、甲2~4、甲6、甲8に記載された技術を適用し得たとしても、本件発明1の上記相違点2に係る構成には至らない。 (エ)したがって、甲7発明において、前記相違点2に係る本件発明1の構成とすることは、当業者であっても容易になし得たことではない。 ウ 以上によれば、本件発明1は、甲7発明ではなく、また、当業者であっても、甲7発明に基き容易に発明をすることができたものではない。 (3)異議申立人の主張に対して 異議申立人は、令和5年5月8日付け意見書で、「甲第1号証に記載のブラシリング組立体は、「モータ12のシャフト16に蓄積され得る電荷を放散するために、モータ12(図2)に、具体的にはモータ12のフェースプレート14に取り付けられる。」(段落0021)ので、訂正後の請求項1に係る発明の「軸接地リング」に相当します。ブラシアセンブリ22を構成するフィラメント30(「放出要素」)は、実質的に連続した環状リング(「ディスク状」)として配置されています(段落0024、Fig.2)。さらに、フィラメント30は、内側プレート32および外側プレート34の対向面に対して直接配置され、リップ28がブラシアセンブリ22を内側バリア26に対して保持する状態で、カップ20内に圧入配置で保持されている(段落0025)ので、フィラメント30は、内側プレート32と外側プレート34(「クランプ要素」及び「本体」)との間で「締め付け固定」されています。・・・また、フィラメント30(「放出要素」)の遠位端部分(「半径方向内側エッジ領域」)は、環状内側プレート32と環状外側プレート34の内径を越えて延びている(段落0025) ので、「クランプ要素を越えて突出」しています。フィラメント30の遠位端部分は、半径方向内側において、弾性変形によってシャフト16(「第1の機械要素」)と接触している (Fig.2)ので、「その半径方向内側エッジ領域でもって弾性変形により半径方向力によって前記第1の機械要素と導電結合され」ています。」(6頁下から3行~7頁17行)と主張し、また、「取消理由通知書における引用発明1-1(甲第5号証)におけるオイルシールと、甲1発明におけるブラシリング組立体は、ともに第1の機械要素(軸)の電荷を第2の機械要素(シールケース)へ放出するための軸接地リングと言えるため、それらを組み合わせるにあたり特段の阻害要因も存在しません。 同じく、取消理由通知書における引用発明2-1(甲第7号証)におけるシーリングアセンブリと、甲1発明におけるブラシリング組立体は、ともに第1の機械要素(シャフト)の電荷を第2の機械要素(ハウジング)へ放出するための軸接地リングと言えるため、それらを組み合わせるにあたり特段の阻害要因も存在しません。」(7頁20行~8頁1行)と主張し、本件発明1が、甲5発明と甲1発明に基づき、又は、甲7発明と甲1発明に基づき容易に発明することができた旨主張する。 しかし、上記(1)で検討したように、甲5発明において、甲1発明を適用する動機はなく、また、仮に甲5発明に甲1発明を採用し得たとしても、放出要素がフィラメントから形成されるものとなるから、本件発明1には至らない。 また、上記(2)で検討したように、甲7発明においても、甲1発明を適用する動機はなく、また、仮に甲7発明に甲1発明を採用し得たとしても、放出要素がフィラメントから形成されるものとなるから、本件発明1には至らない。 したがって、異議申立人の上記主張は、採用できない。 2 本件発明2~5、7~9、11、15~19について 本件発明2~5、7~9、11、15~19は、本件発明1を、直接的又は間接的に引用するものである。 ア 甲5を主引用例としたもの 本件発明2~5、7~9、11、15~19と、甲5発明とをそれぞれ対比すると、両者は、少なくとも、上記で示した、相違点1で相違する。 そして、上記で検討したとおり、甲5発明において、相違点1に係る構成は、容易に想到し得たものでない。 以上によれば、その余の点について検討するまでもなく、本件発明2~5、7~9、11、15~19は、甲5発明及び甲1発明、甲7発明、甲5に記載の事項、甲2~6、8に記載の技術に基いて、当業者が容易に発明することができたものであるとはいえない。 イ 甲7を主引用例としたもの 本件発明2~5、7~9、11、15~19と、甲7発明とをそれぞれ対比すると、両者は、少なくとも、上記で示した、相違点2で相違する。 そして、上記で検討したとおり、甲7発明において、相違点2に係る構成は、容易に想到し得たものでない。 以上によれば、その余の点について検討するまでもなく、本件発明2~5、7~9、11、15~19は、甲7発明及び甲1発明、甲5に記載の事項、甲2~6、8に記載の技術に基いて、当業者が容易に発明することができたものであるとはいえない。 第6 取消理由通知において採用しなかった異議申立人の申立理由について 1 申立理由の概要 本件特許の請求項1~27に係る発明は、本件特許出願の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された甲第1号証に記載された発明及び甲第2~8号証に記載された事項に基いて、本件特許出願の優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~27に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 <証拠方法> 甲第1号証:欧州特許第1872463号明細書 甲第2号証:米国特許第5812908号明細書 甲第3号証:実公平2-27250号公報 甲第4号証:特開昭63-43067号公報 甲第5号証:特開平9-14452号公報 甲第6号証:特開2014-142065号公報 甲第7号証:米国特許第7498703号明細書 甲第8号証:米国特許第3564477号明細書 2 各証拠の記載 (1)甲1について ア 甲1には、以下の事項が記載されている。(なお、下線は当審において付与した。また、日本語訳は、異議申立人から提出された翻訳文及び令和5年5月8日提出の意見書のとおり。(以下同様。)) (ア)「[0021] Referring now more specifically to the drawings and to Fig. 1 in particular, numeral 10 designates a shaft current control brush ring assembly in accordance with the present invention. Brush ring assembly 10 is installed on a motor 12 (Fig. 2) and specifically in a faceplate 14 of motor 12 for dissipating electrical charges that may build up on a shaft 16 of motor 12. It should be understood that brush ring assembly 10 can be provided in a variety of different sizes for use in motors of different types and on shafts 16 of different diameters. [0022] Brush ring assembly 10 is of generally annular shape, surrounding shaft 16. Brush ring assembly 10 is secured to faceplate 14 and is operatively arranged between shaft 16 and faceplate 14. Brush ring assembly 10 is continuously operative to dissipate electrical charges that build on motor shaft 16 during operation of motor 12 by transferring the charges from shaft 16 to faceplate 14 and the grounding circuit of motor 12. [0023] Brush ring assembly 10 includes an annular cup 20 and a brush assembly 22 disposed therein. Cup 20 includes an outer band 24, an inner barrier 26 and an outer lip 28. Together, outer band 24, inner lip 26 and outer lip 28 form an annular shell or channel-like cup 20 in which brush assembly 22 is disposed. Cup 20 is made of conductive materials and has mechanical properties necessary for mounting the assembly to faceplate 14 as will be described hereinafter. Accordingly, cup 20 can be made of aluminum, stainless steel, bronze, copper or other suitable material. [0024] Brush assembly 22 includes a plurality of individual fiber filaments 30 that may be arranged individually, in a substantially continuous annular ring or in bundles circumferentially around shaft 16. Each filament 30 is a fine, hair-like structure and is made from carbon fibers, stainless steel, conductive plastics such as acrylic or nylon fibers, or any other conductive fiber-type filament that can be provided with diameters sufficiently small to induce ionization when in the presence of an electrical field. Filaments 30 generally have diameters less than about 150 microns. Preferably, filaments 30 have diameters within a range of about 5 microns to about 100 microns.」 (訳:[0021]ここで図面、特に図1をより具体的に参照すると、数字10は、本発明によるシャフト電流制御ブラシリング組立体を示す。ブラシリング組立体10は、モータ12のシャフト16に蓄積され得る電荷を放散するために、モータ12(図2)に、具体的にはモータ12のフェースプレート14に取り付けられる。異なるタイプのモータおよび異なる直径のシャフト16で使用するために、ブラシリングアセンブリ10は、様々な異なるサイズで提供され得ることを理解すべきである。 [0022]ブラシリングアセンブリ10は、ほぼ環状であり、シャフト16を取り囲んでいる。ブラシリングアセンブリ10は、フェースプレート14に固定され、シャフト16とフェースプレート14との間に作動可能に配置される。ブラシリングアセンブリ10は、シャフト16からフェースプレート14およびモータ12の接地回路に電荷を移送することにより、モータ12の動作中にモータシャフト16上に蓄積する電荷を放散するように連続的に作動する。 [0023]ブラシリングアセンブリ10は、環状カップ20と、その中に配置されたブラシアセンブリ22とを含む。カップ20は、外側バンド24、内側バリア26および外側リップ28を含む。外側バンド24、内側リップ26および外側リップ28は一緒に、ブラシアセンプリ22が配置される環状シェルまたはチャネル状カップ20を形成する。カップ20は導電性材料でできており、後述するようにアセンブリをフェースプレート14に取り付けるのに必要な機械的特性を有している。したがって、カップ20は、アルミニウム、ステンレス鋼、青銅、銅、または他の適切な材料で作ることができる。 [0024]ブラシアセンブリ22は、実質的に連続した環状リングまたはシャフト16の周りの円周方向の束に個別に配置され得る複数の個々の繊維フィラメント30を含む。各フィラメント30は、微細な毛のような構造であり、カーボンファイバ、ステンレス鋼、アクリルまたはナイロン繊維などの導電性プラスチック、または電界の存在下でイオン化を誘発するのに十分小さい直径を提供できる任意の他の導電性繊維タイプのフィラメントから作られている。フィラメント30は、一般に、約150ミクロン未満の直径を有している。好ましくは、フィラメント30は、約5ミクロンから約100ミクロンの範囲内の直径を有している。) (イ)「[0025] With reference to the enlarged, fragmentary view of Fig. 3, filaments 30, or bundles thereof, are held between an annular inner plate 32 and an annular outer plate 34. Distal end portions of filaments 30 extend past the inner diameters of annular inner plate 32 and annular outer plate 34. Filaments 30 or bundles thereof can be secured to inner plate 32 and outer plate 34 by conductive adhesive, adhesive tape or other suitable means (not shown). Alternatively, filaments 30 can be placed directly against the confronting surfaces of inner plate 32 and outer plate 34 and held therein in a press-fit arrangement in cup 20, with lip 28 hold brush assembly 22 against inner barrier 26.」 (訳:[0025]図3の拡大部分図を参照すると、フィラメント30またはその束は、環状内側プレート32と環状外側プレート34との間に保持される。フィラメント30の遠位端部分は、環状内側プレート32と環状外側プレート34の内径を越えて延びる。フィラメント30またはその束は、導電性接着剤、接着テープまたは他の適切な手段(図示せず)によって内側プレート32および外側プレート34に固定することができる。あるいは、フィラメント30は、内側プレート32および外側プレート34の対向面に対して直接配置され、リップ28がブラシアセンブリ22を内側バリア26に対して保持する状態で、カップ20内に圧入配置で保持され得る。) (ウ)「(図1) [図:0001401650000006.jpg] (図2) [図:0001401650000007.jpg] 」 (エ)上記(ア)及び図2の記載から、フィラメント30が、半径方向内側において、シャフト16と接触していることは明らかである。 イ 甲1発明 上記アを総合すると、甲1には、次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。 (甲1発明) 「シャフト16の電荷をフェースプレート14へ放出するためのブラシリング組立体10であって、 導電性材料から成る環状カップ20を備え、 カップ20が、フェースプレート14と結合され且つ少なくとも1つのフィラメント30と結合し、フィラメント30が、導電性材料から成り、シャフト16と接触しており、フィラメント30が、実質的に連続した環状リングとして配置されている、ブラシリング組立体10において、 フィラメント30が内側プレート32と外側プレート34の間で固定され、 フィラメント30が、内側プレート32と外側プレート34の内径を越えて延びる、その半径方向内側においてシャフト16に接触している ブラシリング組立体10。」 (2)甲2について ア 甲2には、以下の事項が記載されている。 (ア)「According to the present invention and referring to FIG. 1, a carbon fiber electrical contact 100 in the form of a washer is shown, which is cut from the blank 101, as shown in FIG. 4. As described in greater detail earlier, the electrical contact 100 is made from a pultruded composite member and has fibrillated brush like structure on the bore or inner diameter 124. The brush like structure provides a densely distributed filament contact with the shaft or other mating component. The composite member includes a plurality of conductive fibers 102 which are carried within a host matrix 104. The host matrix 104 together with the conductive fibers 102 may also be called a distributed fiber pultrusion. The fibers 102 may be carbonized polyacrylonitrile (PAN) fibers. The electrical contact 100 may have any suitable shape and corresponding features shown herein to include an aperture 106 therein for an electrical contact with a rotating member, for example, a shaft, (not shown). The electrical contact 100 also includes an outer periphery 110 thereof. While the electrical contact may have any suitable shape, preferably, the contact 100 is preferably in the form of a washer having first and second parallel faces 112 and 114 parallel spaced apart and perpendicular to centerline axis 116 of aperture 106.」(9欄53行~10欄8行) (訳:本発明によるとおよび図1を参照すると、ワッシャの形態の炭素繊維電気コンタクト100が示されており、これは図4に示すようにブランク101から切り出される。先により詳細に説明したように、電気コンタクト100は、引抜成形された複合部材から作られ、ボアまたは内径124上にフィブリル化されたブラシ状構造を有している。ブラシ状構造は、シャフトまたは他のはめ合い部品との密に分布したフィラメント接触を提供する。複合部材は、ホストマトリックス104内に担持された複数の導電性繊維102を含む。ホストマトリックス104は、導電性繊維102とともに分散繊維引抜成形とも呼ばれる。繊維102は、炭化ポリアクリロニトリル(PAN)繊維であってもよい。 電気コンタクト100は、回転部材、例えばシャフト(図示せず)との電気接触するための開口106を含むように、ここに示される任意の適切な形状および対応する特徴を有していてよい。電気コンタクト100は、その外周110も含む。電気コンタクトは任意の適切な形状を有することができるが、好ましくは、コンタクト100は、好ましくは、平行に離間し、開口106の中心線軸116に垂直な第1および第2の平行面112および114を有するワッシャの形態である。) (イ)「 [図:0001401650000008.jpg] 」 (3)甲3について ア 甲3には、以下の事項が記載されている。 (ア)「本考案は、上記した従来の技術によるオイルシールにおける問題点に鑑み、ベアリングに併設されるオイルシールに導電性を保持させることによつて、ベアリングを支えるハウジングとシヤフトとの間に導電性を保持させるものである。」(1欄24~28行) (イ)「以下、図示の実施例について説明する。第1図の実施例においては、補強環1の円筒部2に、ゴム材料によるオイルリツプ6と一体をなす被覆が施されているが、図上右側の外周面は露出してハウジング4との間に導電性を保持しており、一方、導電性材料を混入された織布又は不織布を用いて製せられたダストリツプ5が、補強環1の径方向部3の側面に添着され、ゴム様弾性材製のオイルリツプ6が、径方向部3の内端部に接着されて斜め内方へ伸びている。 本考案のオイルシールが、上記したように、導電性材料を混入された織布又は不織布によるダストリツプを補強環の径方向部に添着されるとともに、補強環の円筒部の嵌合周面の少なくとも一部を露出させてハウジングとの間に導電性を保持する構成を備えていることにより、ベアリング部における導電性が失われた場合においても、ハウジングとシヤフトの導電性が、ダストリツプ及び補強環を経由して確保されるので、通常のオイルシールを使用した場合において見られたノイズ発生の問題が回避される。」(2欄19行~3欄10行) (ウ)「(第1図) [図:0001401650000009.jpg] 」 (4)甲4について ア 甲4には、以下の事項が記載されている。 (ア)「〔従来の技術〕 自動車などの回転部のころがり軸受に併設されたオイルシールは、導電性でないため回転中静電気の放電現象をひき起こす。そこで、静電気自体に導電性を付与せしめ、そこに電気回路を形成させることにより、放電現象の防止を図ることを本発明者は検討し、導電性物質およびこれに対する親和性が互いに異なる2種以上のゴムの混合物からなる導電性シール材を先に提案した(特願昭60-27977)。」(1頁右欄4~13行) (イ)「本発明に係る発熱性シール材は、例えばオイルシール用ゴム材料として用いることができる。 自動車などの車輪の回転駆動手段は、図面の第1図に例示されるように、ハウジング1と回転軸2との間に装着されたころがり軸受3の働きによるが、このころがり軸受の潤滑剤のシール手段として、回転軸周面と主リップ部4およびダストリップ部5で弾性的に接触して摺動するゴム状弾性材料によるシール部片6を備えたオイルシール7が使用されている。」(3頁左下欄4~13行) (ウ)「こうした一連の現象を防止するために、体積固有抵抗値が104Ω・cmのオーダー以下の導電性ゴム材料で形成されたシール材成形品が用いられ、オイルシール導電性を付与し、発熱機能を持たせるようにする。具体的には、第1図に示された態様の場合には、ダストリップ部5などの摺動部に接するリップ部にこのような機能を保持せしめる。」(3頁右下欄1~7行) (エ)「(第1図) [図:0001401650000010.jpg] 」 (5)甲8について ア 甲8には、以下の事項が記載されている。 (ア)「 [図:0001401650000011.jpg] 」(2欄33~41行) (訳:シール36は、金属ワッシャ38を備える。金属ワッシャ38の外側マージン40は、外側レース22の取り付け溝41にかしめられると逆に折り畳まれる。この方法での取り付けシールは周知であり、1933年7月11日にサミュエル・R・ラージに発行された米国特許第1,917,988号に示されている。金属ワッシャ38の内縁から半径方向内側に延びるのは、図2に最もよく示されているように、複数のフィンガ42である。) (イ)「 [図:0001401650000012.jpg] 」(2欄59~62行) (訳:フィンガ42は、良好な電気的接触を確保し、レース間のわずかな偏心および振れに適応するために、内側レース26内にわずかにばね負荷されることが好ましい。) (ウ)「(図4) [図:0001401650000013.jpg] 」 3 当審の判断 (1)本件発明1について ア 本件発明1と甲1発明とを対比すると、甲1発明の「シャフト16」は本件発明1の「第1の機械要素」に相当し、同様に、「フェースプレート14」は「第2の機械要素」に、「ブラシリング組立体10」は「軸接地リング」に、「環状」は「リング状」に、「カップ20」は「ハウジング」に、「フィラメント30」は「放出要素」に、それぞれ相当する。 また、甲1発明の「シャフト16」及び「フェースプレート14」は、前記したように、本件発明1の「第1の機械要素」及び「第2の機械要素」にそれぞれ相当するところ、甲1発明の「シャフト16」及び「フェースプレート14」の内、一方が、本件発明1の「一方の機械要素」に相当し、他方が、本件発明1の「他方の機械要素」に相当する。 また、甲1発明の「カップ20」と「フェースプレート14」とが、また、「カップ20」と「フィラメント30」とが、更に、「フィラメント30」と「シャフト16」とが、電気的に結合していることは明らかであるから、甲1発明の「カップ20が、フェースプレート14と結合され且つ少なくとも1つのフィラメント30と結合し」は本件発明1の「ハウジングが、一方の機械要素と導電結合され且つ少なくとも1つの放出要素と導電結合し」に、同様に、「フィラメント30が、導電性材料から成り、シャフト16と接触しており」は「放出要素が、同様に導電性材料から成り、他方の機械要素と導電結合しており」に、それぞれ相当する。 そうすると、本件発明1と甲1発明とは、以下の「一致点3」で一致し、以下の「相違点3-1」、「相違点3-2」で相違する。 (一致点3) 第1の機械要素の電荷を第2の機械要素へ放出するための軸接地リングであって、導電性材料から成るリング状のハウジングを備え、該ハウジングが、一方の機械要素と導電結合され且つ少なくとも1つの放出要素と導電結合し、該放出要素が、同様に導電性材料から成り、他方の機械要素と導電結合している、前記軸接地リングにおいて、 前記放出要素が、その半径方向内側領域でもって弾性変形により前記第1の機械要素と導電結合されている軸接地リング。 (相違点3-1) 放出要素に関して、本件発明1は、「個々のフィラメントから形成されるのではなく、周の少なくとも一部分にわたって延在する一体に形成された放出体であ」り、また、「ディスク状に形成されて」いるのに対し、甲1発明は、フィラメントから形成され、フィラメントが、実質的に連続した環状リングとして配置されている点。 (相違点3-2) 本件発明1は、「放出要素(8,8a)が、」「クランプ要素(2,17,55,60)と、導電性材料から成る本体(4,33,61)との間で締め付け固定されており、」そして、「前記クランプ要素(2,17,55,60)を越えて突出するその半径方向内側エッジ領域(10)でもって弾性変形により半径方向力によって前記第1の機械要素(68)と導電結合され、または、前記クランプ要素(2,17,55,60)を越えて突出するその半径方向外側エッジ領域(10)でもって弾性変形により半径方向力によって前記第2の機械要素(69)と導電結合されている」のに対し、 甲1発明では、フィラメント30が内側プレート32と外側プレート34の間で固定され、フィラメント30が、内側プレート32と外側プレート34の内径を越えて延びる、その半径方向内側においてシャフト16に接触している点。 イ 相違点3-1について 甲1の段落0024に「ブラシアセンブリ22は、実質的に連続した環状リングまたはシャフト16の周りの円周方向の束に個別に配置され得る複数の個々の繊維フィラメント30を含む。各フィラメント30は、微細な毛のような構造であり、カーボンファイバ、ステンレス鋼、アクリルまたはナイロン繊維などの導電性プラスチック、または電界の存在下でイオン化を誘発するのに十分小さい直径を提供できる任意の他の導電性繊維タイプのフィラメントから作られている。フィラメント30は、一般に、約150ミクロン未満の直径を有している。好ましくは、フィラメント30は、約5ミクロンから約100ミクロンの範囲内の直径を有している。」(上記2(1)ア(ア)を参照。)と記載され、また、「ブラシリング組立体」ともあるように、甲1に開示されるブラシリング組立体は、放出要素がフィラメントであることを前提とするものであることは、明らかである。 そして、甲1には、放出要素にフィラメントを使用することが示されるのみであり、フィラメントの使用を変更することについて何ら記載も示唆もない。そうすると、放出要素がフィラメントであることを前提とする甲1発明において、フィラメント30に代えて「個々のフィラメントから形成されるのではなく、周の少なくとも一部分にわたって延在する一体に形成された」、「ディスク状に形成されて」放出体とするといった、前提を変更するような動機がないことは明らかである。 したがって、上記第4の2(1)、(2)に示される記載から、甲5や甲7には、「個々のフィラメントから形成されるのではなく、周の少なくとも一部分にわたって延在する一体に形成された」、「ディスク状に形成されて」いる放出要素の技術が開示されているといえるとしても、甲1発明において、フィラメントに代えて、上記甲5又は甲7に開示される放出要素の技術を適用する動機はないため、甲1発明から本件発明1の相違点3-1に係る構成を導くことはできない。 また、甲2~4、6、8を参酌しても、甲1発明から本件発明1の相違点3-1に係る構成を導くことはできない。 よって、甲1発明において、相違点3-1に係る構成は、容易に想到し得たものでない。 ウ 以上によれば、その余の点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明及び甲2~8に記載の技術に基いて、当業者が容易に発明することができたものであるとはいえない。 (2)本件発明2~27について 本件発明2~27は、本件発明1を、直接的又は間接的に引用するものである。 そして、本件発明2~27と、甲1発明とをそれぞれ対比すると、両者は、少なくとも、上記で示した、相違点3-1、相違点3-2で相違する。 そして、上記で検討したとおり、甲1発明において、相違点3-1に係る構成は、容易に想到し得たものでない。 以上によれば、その余の点について検討するまでもなく、本件発明2~27は、甲1発明及び甲2~8に記載の技術に基いて、当業者が容易に発明することができたものであるとはいえない。 第7 むすび 以上のとおりであるから、本件請求項1~27に係る特許は、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載された特許異議の申立ての理由によっては、取り消すことができない。 また、他に本件請求項1~27に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2022-700893

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