特許異議申立
2022-700835
プリント配線板用基材及びプリント配線板
- 審判番号
- 2022-700835
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2017-247549
- 登録番号
- 7032126
- 請求日
- 2022年08月24日
- 審決日
- 2023年04月20日
- 公報発行日
- 2023年07月28日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】住友電気工業株式会社
- 【権利者代理人】天野 一規
- 【権利者代理人】池田 義典
- 【権利者代理人】小川 博生
- 【権利者代理人】石田 耕治
- 【権利者】住友電工プリントサーキット株式会社
- 【権利者代理人】天野 一規
- 【権利者代理人】池田 義典
- 【権利者代理人】小川 博生
- 【権利者代理人】石田 耕治
- 【権利者代理人】藤中 賢一
- 【異議申立人】安倍 園子
- 審判長/審判官
- 審判長 山田 正文
- 審判官 山本 章裕
- 審判官 須原 宏光
- 分類
- P1652.121-YAA(H05K)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第2号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7032126号発明「プリント配線板用基材及びプリント配線板」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7032126号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり訂正後の請求項〔1-4、6-9〕、5について訂正することを認める。
特許第7032126号の請求項1、5に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7032126号の請求項1ないし5に係る発明についての出願は、平成29年12月25日に出願され、令和4年2月28日にその特許権の設定登録がされ、令和4年3月8日に特許掲載公報が発行された。
その特許についての本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。
令和4年 8月24日 :特許異議申立人安倍園子(以下、「申立人」という。)による請求項1、5に係る特許に対する特許異議の申立て
令和4年12月 1日付け:取消理由通知書
令和5年 2月 1日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
令和5年 3月 7日 :申立人による意見書の提出
第2 訂正の適否についての判断
1 訂正の内容
令和5年2月1日の訂正請求の趣旨は、特許第7032126号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり訂正することを求めるものであり、その訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は次のとおりである。
(1)訂正事項1(請求項1について)
特許請求の範囲の請求項1に、
「 絶縁性を有するベースフィルムと、
このベースフィルムの一方側の面に積層される金属粒子の焼結体層と
を備え、
上記焼結体層が、直接的に接合される複数の上記金属粒子を含んでおり、上記金属粒子の焼結体が、上記ベースフィルムの上記一方側の面に直接固着しており、
上記焼結体層の一方側の面の算術平均粗さ(Sa)が0.005μm以上0.10μm以下であるプリント配線板用基材。」
と記載されているのを
「 絶縁性を有するベースフィルムと、
このベースフィルムの一方側の面に積層される金属粒子の焼結体層と
を備え、
上記焼結体層が、直接的に接合される複数の上記金属粒子を含んでおり、上記金属粒子の焼結体が、上記ベースフィルムの上記一方側の面に直接固着しており、
上記焼結体層の一方側の面の算術平均粗さ(Sa)が0.005μm以上0.10μm以下であり、
上記焼結体の平均粒子径が200nm末満であるプリント配線板用基材。」(下線は訂正箇所を示す。以下同様。)と訂正する。
(2)訂正事項2(請求項2について)
特許請求の範囲の請求項2に、
「 上記焼結体層を構成する上記焼結体が銅粒子焼結体であり、この銅粒子焼結体の平均粒子径が50nm以上300nm以下である請求項1に記載のプリント配線板用基材。」
と記載されているのを
「 絶縁性を有するベースフィルムと、
このベースフィルムの一方側の面に積層される金属粒子の焼結体層と
を備え、
上記焼結体層が、直接的に接合される複数の上記金属粒子を含んでおり、上記金属粒子の焼結体が、上記ベースフィルムの上記一方側の面に直接固着しており、
上記焼結体層の一方側の面の算術平均粗さ(Sa)が0.005μm以上0.10μm以下であり、
上記焼結体層を構成する上記焼結体が銅粒子焼結体であり、この銅粒子焼結体の平均粒子径が50nm以上300nm以下であるプリント配線板用基材。」と訂正する。
(3)訂正事項3(請求項3について)
特許請求の範囲の請求項3に、
「 上記ベースフィルムの主成分がポリイミドであり、
上記ベースフィルムの上記一方側の表層のポリイミドのイミド環の開環率が10%以上30%以下である請求項1又は請求項2に記載のプリント配線板用基材。」
と記載されているのを
「 絶縁性を有するベースフィルムと、
このベースフィルムの一方側の面に積層される金属粒子の焼結体層と
を備え、
上記焼結体層が、直接的に接合される複数の上記金属粒子を含んでおり、上記金属粒子の焼結体が、上記ベースフィルムの上記一方側の面に直接固着しており、
上記焼結体層の一方側の面の算術平均粗さ(Sa)が0.005μm以上0.10μm以下であり、
上記ベースフィルムの主成分がポリイミドであり、
上記ベースフィルムの上記一方側の表層のポリイミドのイミド環の開環率が10%以上30%以下であるプリント配線板用基材。」と訂正する。
(4)訂正事項4(請求項4について)
特許請求の範囲の請求項4に、
「 上記ベースフィルムの上記一方側の面近傍のパラジウムの含有量が1.0mg/m2以下である請求項1、請求項2又は請求項3に記載のプリント配線板用基材。」
と記載されているのを
「 絶縁性を有するベースフィルムと、
このベースフィルムの一方側の面に積層される金属粒子の焼結体層と
を備え、
上記焼結体層が、直接的に接合される複数の上記金属粒子を含んでおり、上記金属粒子の焼結体が、上記ベースフィルムの上記一方側の面に直接固着しており、
上記焼結体層の一方側の面の算術平均粗さ(Sa)が0.005μm以上0.10μm以下であり、
上記ベースフィルムの上記一方側の面近傍のパラジウムの含有量が1.0mg/m2以下であるプリント配線板用基材。」と訂正する。
(5)訂正事項5(請求項5について)
特許請求の範囲の請求項5に
「 絶縁性を有するベースフィルムと、
このベースフィルムの一方側の面に積層される金属粒子の焼結体層と、
上記焼結体層の一方側の面に積層されるめっき層と
を備え、
上記焼結体層及び上記めっき層が平面視でパターニングされているプリント配線板であって、
上記焼結体層が、直接的に接合される複数の上記金属粒子を含んでおり、上記金属粒子の焼結体が、上記ベースフィルムの上記一方側の面に直接固着しており、
上記焼結体層の上記一方側の面の算術平均粗さ(Sa)が0.005μm以上0.10μm以下であるプリント配線板。」
と記載されているのを
「 絶縁性を有するベースフィルムと、
このベースフィルムの一方側の面に積層される金属粒子の焼結体層と、
上記焼結体層の一方側の面に積層されるめっき層と
を備え、
上記焼結体層及び上記めっき層が平面視でパターニングされているプリント配線板であって、
上記焼結体層が、直接的に接合される複数の上記金属粒子を含んでおり、上記金属粒子の焼結体が、上記ベースフィルムの上記一方側の面に直接固着しており、
上記焼結体層の上記一方側の面の算術平均粗さ(Sa)が0.005μm以上0.10μm以下であり、
上記焼結体の平均粒子径が200nm末満であるプリント配線板。」と訂正する。
(6)訂正事項6(請求項6について)
特許請求の範囲の請求項6として、
「 絶縁性を有するベースフィルムと、
このベースフィルムの一方側の面に積層される金属粒子の焼結体層と
を備え、
上記焼結体層が、直接的に接合される複数の上記金属粒子を含んでおり、上記金属粒子の焼結体が、上記ベースフィルムの上記一方側の面に直接固着しており、
上記焼結体層の一方側の面の算術平均粗さ(Sa)が0.005μm以上0.10μm以下であり、
上記ベースフィルムの主成分がポリイミドであり、
上記ベースフィルムの上記一方側の表層のポリイミドのイミド環の開環率が10%以上30%以下であり、
上記ベースフィルムの上記一方側の面近傍のパラジウムの含有量が1.0mg/m2以下であるプリント配線板用基材。」と記載し、新たに請求項6とする。
(7)訂正事項7(請求項7について)
特許請求の範囲の請求項7として、
「 絶縁性を有するベースフィルムと、
このベースフィルムの一方側の面に積層される金属粒子の焼結体層と
を備え、
上記焼結体層が、直接的に接合される複数の上記金属粒子を含んでおり、上記金属粒子の焼結体が、上記ベースフィルムの上記一方側の面に直接固着しており、
上記焼結体層の一方側の面の算術平均粗さ(Sa)が0.005μm以上0.10μm以下であり、
上記焼結体層を構成する上記焼結体が銅粒子焼結体であり、この銅粒子焼結体の平均粒子径が50nm以上300nm以下であり、
上記ベースフィルムの主成分がポリイミドであり、
上記ベースフィルムの上記一方側の表層のポリイミドのイミド環の開環率が10%以上30%以下であるプリント配線板用基材。」と記載し、新たに請求項7とする。
(8)訂正事項8(請求項8について)
特許請求の範囲の請求項8として、
「 絶縁性を有するベースフィルムと、
このベースフィルムの一方側の面に積層される金属粒子の焼結体層と
を備え、
上記焼結体層が、直接的に接合される複数の上記金属粒子を含んでおり、上記金属粒子の焼結体が、上記ベースフィルムの上記一方側の面に直接固着しており、
上記焼結体層の一方側の面の算術平均粗さ(Sa)が0.005μm以上0.10μm以下であり、
上記焼結体層を構成する上記焼結体が銅粒子焼結体であり、この銅粒子焼結体の平均粒子径が50nm以上300nm以下であり、
上記ベースフィルムの上記一方側の面近傍のパラジウムの含有量が1.0mg/m2以下であるプリント配線板用基材。」と記載し、新たに請求項8とする。
(9)訂正事項9(請求項9について)
特許請求の範囲の請求項9として、
「 絶縁性を有するベースフィルムと、
このベースフィルムの一方側の面に積層される金属粒子の焼結体層と
を備え、
上記焼結体層が、直接的に接合される複数の上記金属粒子を含んでおり、上記金属粒子の焼結体が、上記ベースフィルムの上記一方側の面に直接固着しており、
上記焼結体層の一方側の面の算術平均粗さ(Sa)が0.005μm以上0.10μm以下であり、
上記焼結体層を構成する上記焼結体が銅粒子焼結体であり、この銅粒子焼結体の平均粒子径が50nm以上300nm以下であり、
上記ベースフィルムの主成分がポリイミドであり、
上記ベースフィルムの上記一方側の表層のポリイミドのイミド環の開環率が10%以上30%以下であり、
上記ベースフィルムの上記一方側の面近傍のパラジウムの含有量が1.0mg/m2以下であるプリント配線板用基材。」と記載し、新たに請求項9とする。
(10)一群の請求項について
訂正前の請求項1ないし4は、請求項2ないし4が請求項1を直接又は間接的に引用する関係にあるから一群の請求項であり、これら訂正前の請求項1ないし4に対応する訂正後の請求項1ないし4、及び6ないし9も一群の請求項である。
2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
(1)訂正事項1
ア 訂正の目的について
訂正事項1は、訂正前の請求項1に記載されていた「焼結体」に関し、その平均粒子径が200nm末満であることを限定するものである。
したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正である。
イ 新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
明細書の段落【0039】には「上記銅粒子焼結体の平均粒子径の上限としては、300nmが好ましく、200nmがより好ましい。」と記載されている。したがって、焼結体の平均粒子径が200nm末満であることは、願書に添付した明細書に記載した事項である。
よって、訂正事項1は、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内においてした訂正である。また、上記「ア」のとおり、訂正事項1は特許請求の範囲を減縮するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
以上のことより、訂正事項1は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
ウ 独立特許要件
訂正事項1は、上記「ア」で示したとおり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるが、訂正前の請求項1について特許異議の申立てがされているから、訂正前の請求項1に係る本件訂正に関して、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第7項の独立特許要件は課されない。
(2)訂正事項2
ア 訂正の目的について
訂正事項2は、訂正前の請求項1を引用する訂正前の請求項2に記載されていた発明を独立形式に改めたものである。
したがって、訂正事項2は、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に掲げる、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とする訂正である。
イ 新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
訂正事項2は引用形式で記載されていた請求項を独立請求項に改める補正であるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてした訂正であり、また、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
以上のことより、訂正事項2は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
(3)訂正事項3
ア 訂正の目的について
訂正事項3は、訂正前の請求項1を引用する訂正前の請求項3に記載されていた発明を独立形式に改めたものである。
したがって、訂正事項3は、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に掲げる、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とする訂正である。
イ 新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
訂正事項3は引用形式で記載されていた請求項を独立請求項に改める補正であるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてした訂正であり、また、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
以上のことより、訂正事項3は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
(4)訂正事項4
ア 訂正の目的について
訂正事項4は、訂正前の請求項1を引用する訂正前の請求項4に記載されていた発明を独立形式に改めたものである。
したがって、訂正事項4は、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に掲げる、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とする訂正である。
イ 新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
訂正事項4は引用形式で記載されていた請求項を独立請求項に改める補正であるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてした訂正であり、また、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
以上のことより、訂正事項4は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
(5)訂正事項5
ア 訂正の目的について
訂正事項5は、訂正前の請求項5に記載されていた「焼結体」に関し、その平均粒子径が200nm末満であることを限定するものである。
したがって、訂正事項5は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正である。
イ 新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
明細書の段落【0039】には「上記銅粒子焼結体の平均粒子径の上限としては、300nmが好ましく、200nmがより好ましい。」と記載されている。したがって、焼結体の平均粒子径が200nm末満であることは、願書に添付した明細書に記載した事項である。
よって、訂正事項5は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてした訂正である。また、上記「ア」のとおり、訂正事項5は特許請求の範囲を減縮するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
以上のことより、訂正事項5は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
ウ 独立特許要件
訂正事項5は、上記「ア」で示したとおり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるが、訂正前の請求項5について特許異議の申立てがされているから、訂正前の請求項5に係る本件訂正に関して、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第7項の独立特許要件は課されない。
(6)訂正事項6
ア 訂正の目的について
訂正事項6は、訂正前の請求項1を引用する訂正前の請求項3を引用する訂正前の請求項4に記載されていた発明を独立形式に改めたものである。
したがって、訂正事項6は、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に掲げる、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とする訂正である。
イ 新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
訂正事項6は引用形式で記載されていた請求項を独立請求項に改める補正であるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてした訂正であり、また、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
以上のことより、訂正事項6は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
(7)訂正事項7
ア 訂正の目的について
訂正事項7は、訂正前の請求項1を引用する訂正前の請求項2を引用する訂正前の請求項3に記載されていた発明を独立形式に改めたものである。
したがって、訂正事項7は、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に掲げる、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とする訂正である。
イ 新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
訂正事項7は引用形式で記載されていた請求項を独立請求項に改める補正であるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてした訂正であり、また、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
以上のことより、訂正事項7は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
(8)訂正事項8
ア 訂正の目的について
訂正事項8は、訂正前の請求項1を引用する訂正前の請求項2を引用する訂正前の請求項4に記載されていた発明を独立形式に改めたものである。
したがって、訂正事項8は、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に掲げる、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とする訂正である。
イ 新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
訂正事項8は引用形式で記載されていた請求項を独立請求項に改める補正であるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてした訂正であり、また、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
以上のことより、訂正事項8は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
(9)訂正事項9
ア 訂正の目的について
訂正事項9は、訂正前の請求項1を引用する訂正前の請求項2を引用する訂正前の請求項3を引用する訂正前の請求項4に記載されていた発明を独立形式に改めたものである。
したがって、訂正事項9は、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に掲げる、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とする訂正である。
イ 新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
訂正事項9は引用形式で記載されていた請求項を独立請求項に改める補正であるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてした訂正であり、また、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
以上のことより、訂正事項9は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
3 訂正の適否についてのむすび
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
よって、特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-4、6-9〕、5について訂正することを認める。
第3 本件発明
本件訂正請求により訂正された請求項1ないし9に係る発明(以下、「本件発明1」ないし「本件発明9」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1ないし9に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
【請求項1】
絶縁性を有するベースフィルムと、
このベースフィルムの一方側の面に積層される金属粒子の焼結体層と
を備え、
上記焼結体層が、直接的に接合される複数の上記金属粒子を含んでおり、上記金属粒子の焼結体が、上記ベースフィルムの上記一方側の面に直接固着しており、
上記焼結体層の一方側の面の算術平均粗さ(Sa)が0.005μm以上0.10μm以下であり、
上記焼結体の平均粒子径が200nm末満であるプリント配線板用基材。
【請求項2】
絶縁性を有するベースフィルムと、
このベースフィルムの一方側の面に積層される金属粒子の焼結体層と
を備え、
上記焼結体層が、直接的に接合される複数の上記金属粒子を含んでおり、上記金属粒子の焼結体が、上記ベースフィルムの上記一方側の面に直接固着しており、
上記焼結体層の一方側の面の算術平均粗さ(Sa)が0.005μm以上0.10μm以下であり、
上記焼結体層を構成する上記焼結体が銅粒子焼結体であり、この銅粒子焼結体の平均粒子径が50nm以上300nm以下であるプリント配線板用基材。
【請求項3】
絶縁性を有するベースフィルムと、
このベースフィルムの一方側の面に積層される金属粒子の焼結体層と
を備え、
上記焼結体層が、直接的に接合される複数の上記金属粒子を含んでおり、上記金属粒子の焼結体が、上記ベースフィルムの上記一方側の面に直接固着しており、
上記焼結体層の一方側の面の算術平均粗さ(Sa)が0.005μm以上0.10μm以下であり、
上記ベースフィルムの主成分がポリイミドであり、
上記ベースフィルムの上記一方側の表層のポリイミドのイミド環の開環率が10%以上30%以下であるプリント配線板用基材。
【請求項4】
絶縁性を有するベースフィルムと、
このベースフィルムの一方側の面に積層される金属粒子の焼結体層と
を備え、
上記焼結体層が、直接的に接合される複数の上記金属粒子を含んでおり、上記金属粒子の焼結体が、上記ベースフィルムの上記一方側の面に直接固着しており、
上記焼結体層の一方側の面の算術平均粗さ(Sa)が0.005μm以上0.10μm以下であり、
上記ベースフィルムの上記一方側の面近傍のパラジウムの含有量が1.0mg/m2以下であるプリント配線板用基材。
【請求項5】
絶縁性を有するベースフィルムと、
このベースフィルムの一方側の面に積層される金属粒子の焼結体層と、
上記焼結体層の一方側の面に積層されるめっき層と
を備え、
上記焼結体層及び上記めっき層が平面視でパターニングされているプリント配線板であって、
上記焼結体層が、直接的に接合される複数の上記金属粒子を含んでおり、上記金属粒子の焼結体が、上記ベースフィルムの上記一方側の面に直接固着しており、
上記焼結体層の上記一方側の面の算術平均粗さ(Sa)が0.005μm以上0.10μm以下であり、
上記焼結体の平均粒子径が200nm末満であるプリント配線板。
【請求項6】
絶縁性を有するベースフィルムと、
このベースフィルムの一方側の面に積層される金属粒子の焼結体層と
を備え、
上記焼結体層が、直接的に接合される複数の上記金属粒子を含んでおり、上記金属粒子の焼結体が、上記ベースフィルムの上記一方側の面に直接固着しており、
上記焼結体層の一方側の面の算術平均粗さ(Sa)が0.005μm以上0.10μm以下であり、
上記ベースフィルムの主成分がポリイミドであり、
上記ベースフィルムの上記一方側の表層のポリイミドのイミド環の開環率が10%以上30%以下であり、
上記ベースフィルムの上記一方側の面近傍のパラジウムの含有量が1.0mg/m2以下であるプリント配線板用基材。
【請求項7】
絶縁性を有するベースフィルムと、
このベースフィルムの一方側の面に積層される金属粒子の焼結体層と
を備え、
上記焼結体層が、直接的に接合される複数の上記金属粒子を含んでおり、上記金属粒子の焼結体が、上記ベースフィルムの上記一方側の面に直接固着しており、
上記焼結体層の一方側の面の算術平均粗さ(Sa)が0.005μm以上0.10μm以下であり、
上記焼結体層を構成する上記焼結体が銅粒子焼結体であり、この銅粒子焼結体の平均粒子径が50nm以上300nm以下であり、
上記ベースフィルムの主成分がポリイミドであり、
上記ベースフィルムの上記一方側の表層のポリイミドのイミド環の開環率が10%以上30%以下であるプリント配線板用基材。
【請求項8】
絶縁性を有するベースフィルムと、
このベースフィルムの一方側の面に積層される金属粒子の焼結体層と
を備え、
上記焼結体層が、直接的に接合される複数の上記金属粒子を含んでおり、上記金属粒子の焼結体が、上記ベースフィルムの上記一方側の面に直接固着しており、
上記焼結体層の一方側の面の算術平均粗さ(Sa)が0.005μm以上0.10μm以下であり、
上記焼結体層を構成する上記焼結体が銅粒子焼結体であり、この銅粒子焼結体の平均粒子径が50nm以上300nm以下であり、
上記ベースフィルムの上記一方側の面近傍のパラジウムの含有量が1.0mg/m2以下であるプリント配線板用基材。
【請求項9】
絶縁性を有するベースフィルムと、
このベースフィルムの一方側の面に積層される金属粒子の焼結体層と
を備え、
上記焼結体層が、直接的に接合される複数の上記金属粒子を含んでおり、上記金属粒子の焼結体が、上記ベースフィルムの上記一方側の面に直接固着しており、
上記焼結体層の一方側の面の算術平均粗さ(Sa)が0.005μm以上0.10μm以下であり、
上記焼結体層を構成する上記焼結体が銅粒子焼結体であり、この銅粒子焼結体の平均粒子径が50nm以上300nm以下であり、
上記ベースフィルムの主成分がポリイミドであり、
上記ベースフィルムの上記一方側の表層のポリイミドのイミド環の開環率が10%以上30%以下であり、
上記ベースフィルムの上記一方側の面近傍のパラジウムの含有量が1.0mg/m2以下であるプリント配線板用基材。
第4 特許異議申立書に記載された申立理由及び取消理由通知に記載した取消理由について
1 申立理由の概要
(1)本件訂正前の請求項1に係る発明は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2、3号証に記載された事項から、特許法第29条第2項(同法第113条第2号)の規定により取り消されるべきものである。
(2)本件訂正前の請求項5に係る発明は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2ないし4号証に記載された事項から、特許法第29条第2項(同法第113条第2号)の規定により取り消されるべきものである。
(証拠)
甲第1号証 特開2007-12590号公報
甲第2号証 日本工業規格 JIS B 0681-2:2018「製品の幾何特性仕様(GPS)-表面性状:三次元- 第2部:用語、定義及び表面性状パラメータ」
甲第3号証 「ショットブラスト加工表面の表面性状評価パラメータ」、吉田瞬他、軽金属、第61巻、第5号、2011年5月、P187~191、https://www.jstage.jst.go.jp/article/jilm/61/5/61_5_187/_pdf/-char/ja
甲第4号証 特開2016-225524号公報
2 取消理由の概要
訂正前の請求項1、5に係る特許に対して、当審が令和4年12月1日付けで特許権者に通知した取消理由の概要は、次のとおりである。
(進歩性)本件特許の下記の請求項に係る発明は、本件出願日前に日本国内又は外国において頒布された以下の刊行物に記載された発明に基いて、本件出願日前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、本件特許の下記の請求項に係る発明に係る特許は、同法第29条の規定に違反してなされたものであり、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。
記(引用文献は引用文献等一覧を参照。)
(1)請求項1に対して
引用例: 引用文献1、引用文献2
(2)請求項5に対して
引用例: 引用文献1、引用文献2、引用文献3
<引用文献等一覧>
1.特開2007-12590号公報(甲第1号証)
2.「ショットブラスト加工表面の表面性状評価パラメータ」、吉田瞬他、軽金属、第61巻、第5号、2011年5月、P187~191、https://www.jstage.jst.go.jp/article/jilm/61/5/61_5_187/_pdf/-char/ja(甲第3号証)
3.特開2016-225524号公報(甲第4号証)
3 引用文献の記載事項・引用発明
引用文献1(甲第1号証)には以下の記載がある。
「【請求項1】
金属微粒子と、水と、分子量が2000~30000の、室温で固体の分散剤とを含む金属微粒子分散液を、基材の表面に塗布した後、焼成して形成され、
(1) Agと、
(2) Au、Pt、Pd、Ru、Ir、Sn、Cu、Ni、Fe、Co、Ti、およびInからなる群より選ばれた少なくとも1種の金属と、
を含む合金からなり、かつ、合金の総量中の、Agの含有割合が80~99.9原子%であると共に、平均結晶粒径が0.2~5μmであることを特徴とする金属被膜。
・・・
【請求項3】
算術平均高さRaが100nm以下である請求項1または2に記載の金属被膜。」
「【0013】
請求項3に記載の発明は、算術平均高さRaが100nm以下である請求項1または2に記載の金属被膜である。請求項3に記載の発明によれば、算術平均高さRaを100nm以下に規定することによって、表面平滑性、緻密性を、さらに向上させた金属被膜を得ることができる。」
「【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、表面粗度が小さく、平滑性や緻密性に優れ、しかも、基材への密着性やエッチング性に優れた金属被膜と、前記金属被膜を形成するための形成方法と、前記金属被膜をパターン形成した金属配線とを提供することができる。」
「【0029】
金属被膜の平均結晶粒径は、導電性の妨げとなる結晶粒界を少なくして、金属被膜に良好な導電性を付与することを考慮すると、0.2μm以上であるのが好ましい。また、金属被膜の表面平滑性、緻密性を向上して、例えば、厚みが1μm以下、線幅と隣り合う線間隔とが共に数10μm以下といった微細な平面形状にパターン形成される金属配線の、個々のパターン上の、ミクロ領域においても、緻密で、かつ平滑な状態を維持して、良好な導電性を付与することを考慮すると5μm以下であるの好ましい。」
「【0082】
(金属被膜の形成)
上記金属微粒子分散液を、ポリイミドフィルムの表面に、ディップコート法によって塗布した後、100℃で10分間、乾燥させて塗膜を形成し、次いで、大気中で、200℃に加熱して120分間、焼成して金属被膜を形成した。」
【0150】に以下の【表3】が記載されている。
[図:0001399376000001.jpg]
上記摘記事項より、以下のことがいえる。
・請求項1には、金属被膜は、金属微粒子を含む金属微粒子分散液を、基材の表面に塗布した後、焼成して形成されることが記載されている。したがって、基材と金属被膜よりなる構成が記載されているといえる。
・段落【0082】によれば、基材をポリイミドフィルムにより構成するものが記載されている。
・請求項3及び段落【0013】によれば、焼成して形成される金属被膜の算術平均高さRaは100nm以下である。
・段落【0020】によれば、金属被膜は金属配線をパターン形成するものといえる。
・段落【0029】によれば、金属被膜の平均結晶粒径は0.2μm以上であるといえる。
したがって、引用文献1には以下の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されているものと認められる。
「 基材と金属被膜よりなる構成であって、
基材はポリイミドフィルムによって構成され、
金属微粒子を含む金属微粒子分散液を、基材の表面に塗布した後、焼成して形成される金属被膜を備え、
焼成して形成される金属被膜の算術平均高さRaは100nm以下であり、
金属被膜の平均結晶粒径は0.2μm以上であり、
金属被膜は金属配線をパターン形成するものである、
基材と金属被膜よりなる構成。」
4 当審の判断
(1)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と引用発明1とを対比すると、
・引用発明1における「基材」は絶縁性を有する「ポリイミドフィルム」から構成されるから、本件発明1の「絶縁性を有するベースフィルム」に相当する。
・引用発明1において、「金属被膜」は「金属微粒子を含む金属微粒子分散液を、基材の表面に塗布した後、焼成して形成される」から、金属微粒子分散液を塗布した基材の表面が、本件発明1の「ベースフィルムの一方側の面」に相当し、焼結される「金属微粒子」が本件発明1の「金属粒子」に、焼結して形成される「金属被膜」が本件発明1の「金属粒子の焼結体層」に相当する。
そして、引用発明1は金属微粒子分散液を基材の表面に塗布して焼成していることからみて、本件発明1と同様に「金属微粒子」は直接的に接合され、また「基材の表面」に直接固着しているといえる。そうしてみると、引用発明1は本件発明1の「焼結体層が、直接的に接合される複数の上記金属粒子を含んでおり、上記金属粒子の焼結体が、上記ベースフィルムの上記一方側の面に直接固着して」いることに相当する構成を有する。
・焼結体層が本件発明1は「算術平均粗さ(Sa)が0.005μm以上0.10μm以下である」のに対して、引用発明1は「算術平均高さRaが100nm以下である」点で相違するものの、一定の粗さを有するといえる点では両者は共通する。
・本件発明1では「焼結体の平均粒子径が200nm末満」であるのに対して、引用発明1は「金属被膜の平均結晶粒径は0.2μm以上」である点で相違する。
・引用発明1の「基材と金属被膜よりなる構成」は、「金属被膜は金属配線をパターン形成する」こと、及び引用文献1の段落【0062】には金属配線が多層配線板に好適に使用することが記載されていることからみて、プリント配線として使用するものといえ、本件発明1の「プリント配線用基材」に相当する。
そうしてみると、本件発明1と引用発明1とは、以下の点で一致ないし相違している。
(一致点)
「絶縁性を有するベースフィルムと、
このベースフィルムの一方側の面に積層される金属粒子の焼結体層と
を備え、
上記焼結体層が、直接的に接合される複数の上記金属粒子を含んでおり、上記金属粒子の焼結体が、上記ベースフィルムの上記一方側の面に直接固着しており、
上記焼結体層の一方側の面は一定の粗さを有する、
プリント配線板用基材。」
(相違点1)
焼結体層が本件発明1は「算術平均粗さ(Sa)が0.005μm以上0.10μm以下である」のに対して、引用発明1は「算術平均高さRaが100nm以下である」点。
(相違点2)
本件発明1では「焼結体の平均粒子径が200nm末満」であるのに対して、引用発明1は「金属被膜の平均結晶粒径は0.2μm以上」である点。
イ 判断
事案に鑑み、先に相違点2について検討する。
本件発明1では「焼結体の平均粒子径が200nm末満」であるのに対して、引用発明1は「金属被膜の平均結晶粒径は0.2μm以上」(注:0.2μm=200nm)である。そうしてみると、金属被膜の粒子は1つもしくは複数の結晶により構成されていると考えられるから、引用発明1において金属被膜を構成する全ての粒子が1つの結晶で構成されていたとしても、金属被膜の平均粒子径は0.2μm以上となり、金属被膜の粒子が、複数の結晶で構成されているならば平均粒子径はさらに大きな値となることは明らかである。
また、引用文献1の段落【0029】に「金属被膜の平均結晶粒径は、導電性の妨げとなる結晶粒界を少なくして、金属被膜に良好な導電性を付与することを考慮すると、0.2μm以上であるのが好ましい」と記載されていることからみて、引用発明において平均粒子径を0.2μm未満とすることには阻害要因があるといえる。
そうしてみると、引用文献1に記載された発明に基づいて、本件発明1の相違点2に係る構成を得ることは、当業者が容易になし得た事項とはいえない。
また、甲第2号証、引用文献2、3のいずれにも焼結体の平均粒子径を200nm未満とすることは記載も示唆もされておらず、甲第2号証、引用文献2、3を参照しても相違点2に係る構成を容易に想到し得たものとはいえない。
よって、相違点2について検討するまでもなく、本件請求項1に係る発明は、引用文献1に記載された発明、甲第2号証、引用文献2、3に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明できたものではなく、発明特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものとはいえない。
ウ 申立人の主張について
申立人は、令和5年3月7日に提出した意見書において以下のような主張をしている。
(主張1:主位的主張)
本件特許発明は、焼結体層の抵抗が小さくなるまで焼成しますので、多数の金属粒子が焼結されて粒子はなくなり「燒結体の平均粒子径」を定義できません。明細書に「焼結体の平均粒子径とは、表面SEMにより測定した粒径の分布において体積積算値が50%となる粒子径を意味する。」との記載があります。しかし焼結体のSEM画像で何を粒子として特定するのか不明です。したがって、訂正後の請求項1及び請求項5は不明瞭であり、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしません。
(主張2:予備的主張)
焼結体の平均粒子径が200nm未満という数値限定の内と外のそれぞれの効果について量的に顕著な差異がありません。このため、訂正事項は、数値限定の臨界的異議がなく、効果への寄与が不明です。本件特許の請求項1、5に係る発明は、訂正されても効果が不明ですので依然として進歩性を有さず、取り消されるべきものです。
上記主張1について検討する。
本件明細書の段落【0038】【0039】によれば、焼結により複数の金属粒子同士が固着することによって固着した大きな粒子となり、その平均粒子径を200nm未満にできることがみてとれる。申立人は「多数の金属粒子が焼結されて粒子はなくなる」と主張するが、上記段落【0038】【0039】の記載に加えて段落【0021】によれば、「焼結」とは「完全な焼結状態に至る前段階にあって相互に密着して固体接合したような状態とすることを含む」ものであるから、金属粒子が残ったものを含み、平均粒子径を200nm未満とする程度に焼結が行われると解される。また、焼結により粒子が形成されていれば、SEM画像による表面の凹凸の観察から平均粒子径を測定することは可能であると考えられる。したがって、申立人の主張1を採用することはできない。
次に、上記主張2について検討する。
上記「イ」において検討したとおり、引用文献1の段落【0029】に「金属被膜の平均結晶粒径は、導電性の妨げとなる結晶粒界を少なくして、金属被膜に良好な導電性を付与することを考慮すると、0.2μm以上であるのが好ましい」と記載されている以上、平均粒子径を0.2μm未満とすることには阻害要因があり、当業者が容易になし得るということはできない。したがって、申立人の主張2を採用することはできない。
(2)請求項5に対して
ア 追加構成
請求項5に係る発明は、請求項1に係る発明に以下の構成を追加して「プリント配線板」の発明としたものである。
「上記焼結体層の一方側の面に積層されるめっき層と
を備え、
上記焼結体層及び上記めっき層が平面視でパターニングされているプリント配線板であって」
イ 判断
上記「ア」のとおり請求項5に係る発明は、請求項1に係る「プリント配線板用基材」の発明に「めっき層」と「パターニング」する構成を加え「プリント配線板」の発明としたものである。
そうしてみると、請求項5に係る発明は請求項1に係る発明の「発明を特定するための事項」の全部を含み、さらに特定を加えたものである。
したがって、本件発明5も、本件発明1と同様に、引用文献1に記載された発明、甲第2号証、引用文献2、3に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明できたものではなく、発明特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものとはいえない。
第6 むすび
したがって、請求項1、5に係る特許は、特許異議申立書に記載された申立理由及び取消理由通知に記載した取消理由によっては、取り消すことはできない。また、他に請求項1、5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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2022-700835