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特許異議申立

2022-700818

放射冷却機能塗料及びその応用

審判番号
2022-700818
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2019-552633
登録番号
7023978
請求日
2022年08月19日
審決日
2023年08月23日
公報発行日
2023年11月24日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】寧波瑞凌新能源科技有限公司
  • 【権利者代理人】幸谷 泰造
  • 【権利者代理人】TRY国際弁理士法人
  • 【権利者】寧波瑞凌新能源材料研究院有限公司
  • 【権利者代理人】幸谷 泰造
  • 【権利者代理人】TRY国際弁理士法人
  • 【異議申立人】西内 大生
審判長/審判官
  • 審判長 門前 浩一
  • 審判官 瀬下 浩一
  • 審判官 亀ヶ谷 明久
分類
P1651.113-YAA(C09D) / P1651.121-YAA(C09D) / P1651.536-YAA(C09D) / P1651.537-YAA(C09D)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法120条の8第1項特許法135条
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第126条第6項、特許法第126条第5項、特許法第29条第1項第3号、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第4項第1号、特許法第36条第6項第2号、特許法第29条第1項、特許法第29条第2項、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の8第1項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7023978号発明「放射冷却機能塗料及びその応用」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7023978号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-21〕について訂正することを認める。 特許第7023978号の請求項1-6、8-21に係る特許を維持する。 特許第7023978号の請求項7に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 本件特許に係る出願は、2019年(令和元年)7月26日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2019年7月5日 (CN)中国)を国際出願日とする出願であって、令和4年2月14日に特許権の設定登録(請求項の数21)がされ、同年同月22日に特許掲載公報が発行され、その後、同年8月19日に特許異議申立人 西内 大生により特許異議の申立てがされたものであり、当審は、同年11月9日付けで取消理由を通知し、特許権者は、その指定期間内である令和5年2月6日に意見書の提出及び訂正の請求を行い、同年同月20日に手続補正書(以下、この手続補正書により補正された訂正請求書による訂正の請求を「本件訂正請求」といい、その内容を「本件訂正」という。)を提出し、特許権者から訂正請求があったことを、同年3月1日付けで特許異議申立人に通知し、特許異議申立人は、同年4月3日に意見書を提出した。 第2 本件訂正の適否についての判断 1 請求の趣旨 令和5年2月20日付けの手続補正により補正された訂正請求による訂正の「請求の趣旨」は、「特許第7023978号の特許請求の範囲を、本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~21について訂正することを求める。」というものである。 2 本件訂正の内容 本件訂正は、以下の訂正事項1~7からなる。 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に「前記放射冷却機能樹脂層は、エポキシ樹脂、ポリエステル、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂の1種又は2種を使用することができることを特徴とする選択的放射冷却塗布層。」とあるのを、「前記放射冷却機能樹脂層は、エポキシ樹脂、ポリエステル、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂の1種又は2種を使用することができ、前記第1の顆粒充填材の配向及び前記第2の顆粒充填材の配向を制御するための配向剤をさらに含むことを特徴とする選択的放射冷却塗布層。」に訂正する。(請求項1の記載を引用する請求項2~6及び8~21も同様に訂正する。) (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項7を削除する。 (3)訂正事項3 特許請求の範囲の請求項8に「請求項7に記載の選択的放射冷却塗布層。」とあるのを、「請求項1に記載の選択的放射冷却塗布層。」に訂正する。(請求項8の記載を引用する請求項9~12、16、17についても同様に訂正する。) (4)訂正事項4 特許請求の範囲の請求項9に「請求項1から8のいずれか一項に記載の選択的放射冷却塗布層。」とあるのを、「請求項1から6又は8のいずれか一項に記載の選択的放射冷却塗布層。」に訂正する。(請求項9の記載を引用する請求項10~12、16、17についても同様に訂正する。) (5)訂正事項5 特許請求の範囲の請求項11に「請求項1から10のいずれか一項に記載の選択的放射冷却塗布層。」とあるのを、「請求項1から6又は8から10のいずれか一項に記載の選択的放射冷却塗布層。」に訂正する。(請求項11の記載を引用する請求項16、17についても同様に訂正する。) (6)訂正事項6 特許請求の範囲の請求項16に2箇所「顔料ベース比」とあるのを、2箇所とも「質量比である顔料ベース比」に訂正する。(請求項16の記載を引用する請求項17も同様に訂正する。) (7)訂正事項7 特許請求の範囲の請求項17に「請求項1から16のいずれか一項に記載の選択的放射冷却塗布層。」とあるのを、「請求項1から6又は8から16のいずれか一項に記載の選択的放射冷却塗布層。」に訂正する。 3 一群の請求項について 訂正事項に係る訂正前の請求項1~21について、請求項2~21は請求項1を引用しているものであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。したがって、訂正前の請求項1~21に対応する訂正後の請求項1~6及び8~21は、特許法120条の5第4項に規定する一群の請求項である。 4 訂正要件についての判断 (1)訂正事項1 ア 訂正の目的について 訂正前の請求項1に係る特許発明は、「放射冷却機能樹脂層中に分布している第1の顆粒充填材及び第2の顆粒充填材」の配向をどのように制御するかは特定されていない。 これに対して、訂正後の請求項1は、「前記第1の顆粒充填材の配向及び前記第2の顆粒充填材の配向を制御するための配向剤をさらに含む」との記載により、訂正後の請求項1に係る発明における「第1の顆粒充填材及び第2の顆粒充填材」の配向を制御するための配向材をさらに含むことを限定するものである。 すなわち、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるといえる。 イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正でないかについての判断 上記アの理由から明らかなように、訂正事項1は、「放射冷却機能樹脂層中に分布している第1の顆粒充填材及び第2の顆粒充填材」の配向をどのように制御するかという発明特定事項を下位の「前記第1の顆粒充填材の配向及び前記第2の顆粒充蹟材の配向を制御するための配向剤をさらに含む」にするものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものであるといえる。 ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるかについての判断 訂正事項1の「前記第1の顆粒充填材の配向及び前記第2の顆粒充蹟材の配向を制御するための配向剤をさらに含む」は、訂正前の請求項7に記載されており、また、明細書の段落0018からも導き出される構成である。 以上より、当該訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものであるといえる。 (2)訂正事項2 ア 訂正の目的について 訂正事項2は、請求項7を削除するというものであるから、当該訂正事項2は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるといえる。 イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正でないかについての判断 訂正事項2は、請求項7を削除するというものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものであるといえる。 ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるかについての判断 訂正事項2は、請求項7を削除するというものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものであるといえる。 (3)訂正事項2 ア 訂正の目的について 訂正前の請求項8が請求項7の記載を引用する記載であるところ、訂正事項2で請求項7が削除されて、訂正事項1で請求項7の発明特定事項が請求項1で特定されたことに伴い、請求項間の引用関係に矛盾が生じないようにする訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正であるといえる。 イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正でないかについての判断 訂正前の請求項8が請求項7の記載を引用する記載であるところ、訂正事項2で請求項7が削除されて、訂正事項1で請求項7の発明特定事項が請求項1で特定されたことに伴い、請求項間の引用関係に矛盾が生じないようにする訂正であり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものであるといえる。 ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるかについての判断 訂正前の請求項8が請求項7の記載を引用する記載であるところ、訂正事項2で請求項7が削除されて、訂正事項1で請求項7の発明特定事項が請求項1で特定されたことに伴い、請求項間の引用関係に矛盾が生じないようにする訂正であるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものであるといえる。 (4)訂正事項4、5、7 ア 訂正の目的について 訂正事項4、5、7は、訂正前の請求項9が請求項1から8のいずれか一項の記載を引用する記載であり、訂正前の請求項11が請求項1から10のいずれか一項の記載を引用する記載であり、訂正前の請求項17が請求項1~16のいずれか一項の記載を引用する記載であるところ、請求項7を引用しないものとするための訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正であるといえる。 イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正でないかについての判断 訂正事項4、5、7は、請求項7を引用しないものとするための訂正であるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものであるといえる。 ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるかについての判断 訂正事項4、5、7は、請求項7を引用しないものとするための訂正であるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項 範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものであるといえる。 (5)訂正事項6 ア 訂正の目的について 訂正後の請求項16は、「質量比である」との記載により、訂正後の請求項16における「前記第1の顆粒充填材と前記第1の放射冷却機能層の顔料ベース比」及び「前記第2の顆粒充填材と前記第2の放射冷却機能層の顔料ベース比」の「顔料ベース比」が、質量比であることを明瞭にするものである。すなわち、訂正事項6は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものであるといえる。 イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正でないかについての判断 上記アの理由から明らかなように、訂正事項6は、「顔料ベース比」が「質量比」であることを明瞭にするものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものであるといえる。 ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるかについての判断 訂正事項6の「質量比である」は、明細書の段落0068の「顔料ベース比とは、塗布層における顆粒充填材と樹脂固体部分との質量比を指し」から導き出される構成である。 以上より、当該訂正事項6は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものであるといえる。 5 小括 以上のとおりであるから、本件訂正は特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 したがって、特許第7023978号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-21〕について訂正することを認める。 第3 本件特許発明 上記第2で述べたとおり、本件訂正は認められるので、本件特許の請求項1~21に係る発明は、令和5年2月20日付けの付けの手続補正により補正された訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1~21に記載された事項により特定される次のとおりのもの(以下「本件特許発明1」~「本件特許発明21」、まとめて「本件特許発明」ともいう。)である。 「【請求項1】 選択的放射冷却塗布層は、放射冷却機能塗料によって製作される放射冷却機能層を含み、 前記放射冷却機能層は、放射冷却機能樹脂層と、この放射冷却機能樹脂層中に分布している第1の顆粒充填材及び第2の顆粒充填材を含み、 前記第1の顆粒充填材を含む放射冷却機能層は、可視光線及び近赤外線を反射する作用と、赤外放射方式で大気の窓を介して熱エネルギーを放射する作用と、を有し、 前記第1の顆粒充填材は、前記放射冷却機能樹脂層中に規則的に配列され、前記第1の顆粒充填材は、ケイ酸アルミニウム、真珠粉末、シリカ、重質炭酸カルシウム粉末、硫酸バリウム、タルク粉末、酸化チタン粉末、硫化亜鉛、セラミック粉末、セラミックビーズ、ガラスビーズの一種又は二種以上を使用することができ、 前記第2の顆粒充填材を含む放射冷却機能層は、紫外線及び可視光線を反射する作用と、赤外放射方式で大気の窓を介して熱エネルギーを放射する作用と、を有し、前記第2の顆粒充填材は、前記放射冷却機能樹脂層中に規則的に配列され、前記第2の顆粒充填材は、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化セリウム、酸化ランタン、酸化ロジウム、酸化マグネシウムの一種又は二種以上を使用することができ、 前記放射冷却機能樹脂層は、エポキシ樹脂、ポリエステル、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂の1種又は2種を使用することができ、前記第1の顆粒充填材の配向及び前記第2の顆粒填材の配向を制御するための配向剤をさらに含むことを特徴とする選択的放射冷却塗布層。 【請求項2】 前記第1の顆粒充填材及び前記前記第2の顆粒充填材の形状は、それぞれ棒状、球状、楕円体であり、 前記第1の顆粒充填材の形状及び前記第2の顆粒充填材の形状は、それぞれ棒状、楕円体である場合は、そのアスペクト比は1:1~10:1であることを特徴とする請求項1に記載の選択的放射冷却塗布層。 【請求項3】 前記第1の顆粒充填材は、前記放射冷却機能樹脂層中に規則的に配列されことは、前記第1の顆粒充填材が前記放射冷却機能樹脂中に均一に分布することと、前記第1の顆粒充填材が前記放射冷却機能樹脂中に配向的に配列することと、を含み、 前記第2の顆粒充填材は、前記放射冷却機能樹脂層中に規則的に配列されことは、前記第2の顆粒充填材が前記放射冷却機能樹脂中に均一に分布することと、前記第2の顆粒充填材が前記放射冷却機能樹脂中に配向的に配列することと、を含むことを特徴とする請求項1に記載の選択的放射冷却塗布層。 【請求項4】 前記第1の顆粒充填材及び前記第2の顆粒充填材が前記放射冷却機能樹脂中に配向的に配列するとは、前記第1の顆粒充填材及び記第2の顆粒充填材の最長径は前記放射冷却機能層の表面と0~45゜をなすことを特徴とする請求項3に記載の選択的放射冷却塗布層。 【請求項5】 前記第1の顆粒充填材及び前記第2の顆粒充填材が前記放射冷却機能樹脂中に配向的に配列するとは、前記第1の顆粒充填材及び記第2の顆粒充填材の最長径は前記放射冷却機能層の表面と0~30゜をなすことを特徴とする請求項3に記載の選択的放射冷却塗布層。 【請求項6】 前記第1の顆粒充填材の粒径は、0.5μm~40μmであり、 前記第2の顆粒充填材の粒径は、0.01μm~40μmであることを特徴とする請求項1に記載の選択的放射冷却塗布層。 【請求項7】 (削除) 【請求項8】 前記配向剤は、水溶性カルボキシメチルアセテートブチレート、エチレン-酢酸ビニル共重合体ワックスエマルション、ポリエチレンワックスやポリアミドワックスの1種又は2種以上を使用することができることを特徴とする請求項上に記載の選択的放射冷却塗布層。 【請求項9】 前記放射冷却機能層に、顔料がさらに含まれることを特徴とする請求項1から6又は8のいずれか一項に記載の選択的放射冷却塗布層。 【請求項10】 前記顔料は、蛍光染料であることを特徴とする請求項9に記載の選択的放射冷却塗布層。 【請求項11】 前記放射冷却機能層は、第1の放射冷却機能層と、第2の放射冷却機能層と、を含み、 前記第1の放射冷却機能層は、放射冷却機能樹脂層と、この放射冷却機能樹脂層中に分布している第1の顆粒充填材とを含み、 前記第2の放射冷却機能層は、放射冷却機能樹脂層と、この放射冷却機能樹脂層中に分布している第2の顆粒充填材とを含むことを特徴とする請求項1から6又は8から10のいずれか一項に記載の選択的放射冷却塗布層。 【請求項12】 前記第1の放射冷却機能層の厚さは、30μm~300μmであり、 前記第2の放射冷却機能層の厚さは、10μm~60μmであることを特徴とする請求項11に記載の選択的放射冷却塗布層。 【請求項13】 前記放射冷却機能層は、第1の表面と、この第1の表面から離れている第2の表面とを有し、 前記選択的放射冷却塗布層は、前記第1の表面に設けられる耐候性樹脂層、及び/又は、前記第2の表面に設けられる下塗り樹脂層をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の選択的放射冷却塗布層。 【請求項14】 前記耐候性樹脂層の透過率は、80%以上であり、 前記耐候性樹脂層の材料は、フッ素含有樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル、ポリウレタン、アクリル樹脂、シリコーン樹脂の1種又は2種であり、 前記下塗り樹脂層の材料は、エポキシ樹脂及び/又はアクリル樹脂であることを特徴とする請求項13に記載の選択的放射冷却塗布層。 【請求項15】 前記耐侯性樹脂層の厚さは、10μm~50μmであり、 前記下塗り樹脂層の厚さは、10μm~50μmであることを特徴とする請求項13に記載の選択的放射冷却塗布層。 【請求項16】 前記第1の顆粒充填材と前記第1の放射冷却機能層の質量比である顔料ベース比は、1:10~6:1であり、 前記第2の顆粒充填材と前記第2の放射冷却機能層の質量比である顔料ベース比は、1:10~6:1であることを特徴とする請求項11に記載の選択的放射冷却塗布層。 【請求項17】 前記選択的放射冷却塗布層は、太陽光スペクトルのエネルギーに対する反射率が80%以上であり、大気の窓の放射率が80%以上であり、常温で100W/m2以上の放射冷却パワーを提供することを特徴とする請求項1から6又は8から16のいずれか一項に記載の選択的放射冷却塗布層。 【請求項18】 基材と、この基材に塗布されている請求項1に記載の選択的放射冷却塗布層と、を含むことを特徴とする複合材料。 【請求項19】 前記基材は、金属、プラスチック、ゴム、コンクリート、セメント、アスファルト、紙、織物、木材、タイル、ガラス又は有機合成材の一種であることを特徴とする請求項18に記載の複合材料。 【請求項20】 請求項1に記載の前記選択的放射冷却塗布層を主体の表面に形成して、この放射冷却機能層が熱エネルギーを外方へ反射及び/又は放射するようにすることを含むことを特徴とする選択的放射冷却塗布層の応用方法。 【請求項21】 前記主体は、建物、光起電モジュール及びシステム、車両、室外用品、農業及び畜産設備、航空宇宙設備、コールドチェーン輸送設備、室外タンク、紡織業設備、室外通信設備、工業設備、公共施設、冷却水システム、エネルギーシステムまたは省エネ設備の一種であることを特徴とする請求項20に記載の選択的放射冷却塗布層の応用方法。」 第4 取消理由通知に記載した取消理由について 理由1(明確性要件)本件特許の請求項16、17に係る発明は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第2号に適合するものではないから、本件特許の請求項16、17に係る発明は、同法第36条第6項の規定を満たしていない特許出願に対してされたものであり、同法第113条第4号に該当し取り消されるべきものである。 本件特許発明16は、「前記第1の顆粒充填材と前記第1の放射冷却機能層の顔料ベース比」及び「前記第2の顆粒充填材と前記第2の放射冷却機能層の顔料ベース比」なる発明特定事項を含み、本件特許発明9を引用する本件特許発明11を引用するものである。 ここで、本件特許発明9は「顔料がさらに含まれる」ことを特定しており、一方、本件特許明細書【0068】において「前記顆粒充填材と前記放射冷却機能層の顔料ベース比」と記載されている。 そうすると、本件特許発明16の「顔料ベース比」は、第1(第2)の顆粒充填材と前記第1(第2)の放射冷却機能層の合計に対する本件特許発明9で特定される「顔料」の比を意味するのか、第1(第2)の顆粒充填材と前記第1(第2)の放射冷却機能層の比を意味するのか不明であり、その結果、本件特許発明16は不明確となっている。 本件特許発明16を引用する本件特許発明17も不明確である。 理由2(新規性)本件特許の請求項1、3、18、20に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明である甲第1号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、前記の請求項1、3、18、20に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 理由3(進歩性)本件特許の請求項1~3、6、9~21に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明である甲第1号証、甲第3号証及び甲第5号証に記載された発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、前記の請求項1~3、6、9~21に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 甲第1号証:特表2018-526599号公報 甲第3号証:特開2009-20437号公報 甲第5号証:特表2019-515967号公報 第5 前記第4における理由1(明確性要件)について 本件訂正により「顔料ベース比」とあるのが「質量比である顔料ベース比」に訂正されたため、本件特許明細書【0068】に記載される「塗布層における顆粒充填材と樹脂固体部分との質量比」を意味し、第1(第2)の顆粒充填材と前記第1(第2)の放射冷却機能層の比であることが明確となったといえるから、本件特許発明16は明確であり、本件特許発明16を引用する本件特許発明17も明確である。 第6 前記第4における理由2(新規性)及び理由3(進歩性)について 1 甲号証について 前記第4のとおり。 2 甲号証の記載について (1)甲第1号証(以下、「甲1」という。) 1a「【請求項1】 放射冷却用のシステムであって、 1または2以上のポリマーを有する上部層であって、熱スペクトルの少なくとも一部において、高い放射率を有し、電磁減衰係数が近似的にゼロであり、吸収率が近似的にゼロであり、太陽スペクトルの少なくとも一部において高い透過率を有する、上部層と、 前記上部層の下側に配置された反射層であって、1または2以上の金属を有し、前記太陽スペクトルの少なくとも一部において、高い反射率を有する、反射層と、 を有する、システム。 【請求項2】 前記上部層は、2または3以上のポリマーを有し、 各ポリマーは、前記熱スペクトルの異なる位置において高い放射率を有し、電磁減衰係数が近似的にゼロであり、前記太陽スペクトルの少なくとも一部において、高い透過率を有する、請求項1に記載のシステム。 ・・・ 【請求項5】 前記上部層は、ポリ(ジメチルシロキサン)、ポリ(フッ化ビニリデン)、ポリ(アクリル酸)、およびポリ(メチルメタクリレート)の1または2以上を有する、請求項1乃至4のいずれか一つに記載のシステム。 【請求項6】 前記上部層は、前記反射層が存在しない場合、受動放射冷却に使用できる、請求項1乃至5のいずれか一つに記載のシステム。 ・・・ 【請求項15】 前記上部層は、さらに、1または2以上の種類のナノ粒子を有し、 各種類のナノ粒子は、前記熱スペクトルの少なくとも一部において、存在する場合、他の種類のナノ粒子、および1または2以上の前記ポリマーよりも高い放射率を有し、 前記ナノ粒子は、前記太陽スペクトルにおいて、電磁減衰係数が近似的にゼロであり、吸収率が近似的にゼロである、請求項1乃至14のいずれか一つに記載のシステム。 ・・・ 【請求項39】 さらに、基板を有する、請求項1乃至38のいずれか一つに記載のシステム。 【請求項40】 前記上部層は、物理的もしくは化学的気相成膜法、フォトリソグラフィ法、電子ビームリソグラフィ法、湿式エッチング法、反応性イオンエッチング法、3D印刷法、インプリント法、スプレー法、浸漬コーティング法、スピンコーティング法、またはアプリケータの少なくとも一つを用いて、前記基板に設置される、請求項39に記載のシステム。 ・・・ 【請求項43】 放射冷却の方法であって、 1または2以上のポリマー、および1または2以上の添加物を有する上部層を提供するステップ を有し、 前記1または2以上のポリマーは、熱スペクトルの少なくとも一部において高い放射率を有し、 前記1または2以上の添加物は、太陽スペクトルの少なくとも一部において、電磁減衰係数が近似的にゼロであり、前記太陽スペクトルの少なくとも一部において、約0.3よりも大きな反射率を有する、方法。」 1b「【0028】 ・・・ 【図8】本発明の一実施形態による複数種のナノ粒子と、ポリマーとを含む上部層における、シミュレーションされた反射および放射スペクトルの一例を示した図である。 ・・・」 1c「【0040】 本願において「大気透過窓」とも称される、大気の赤外透過性窓は、電磁スペクトル内の波長範囲であり、この範囲を超えて、大気は、地表からその厚さを介して外側空間まで移動する、80%以上の放射線を透過する。従って、大気透過窓は、約8μmから約13.5μmの波長を有する電磁放射線を含む。 ・・・ 【0045】 本願の一実施形態では、受動放射冷却用のシステムは、太陽スペクトルにおいて低い吸収率を有し、熱スペクトルにおいて高い放射率を有する。例えば、システムは、大気の赤外透過窓の少なくとも一部において高い放射率を有し、外側空間は、放射される放射線の熱シンクとして機能できる。これにより、地球の比較的温かい大気がバイパスできる。一例として、図1には、そのようなシステムの吸収スペクトルの例を示す。図1に示すように、システムは、太陽スペクトル、すなわち約350nmから約2.5μmにおいて、低い吸収を示す。 【0046】 システムは、太陽スペクトルにおける低い吸収と、熱スペクトルにおける高い放射に加えて、太陽スペクトルにおいて、高い反射を示しても良い。例えば、そのような高反射率は、システムの上部層、および/または下地の反射層から得られる。従って、システムは、熱放射線として、熱を効率的に逸散することができるとともに、任意の入射太陽光を反射することができる。そのようなシステムは、例えば、受動放射冷却に使用することができる。一例として、図2には、3つのそのようなシステムの反射スペクトルおよび放射スペクトルを示す。図2に示すように、システムは、太陽スペクトルにおいて比較的大きな反射率を有し、熱スペクトルにおいて、特に大気透過窓において、低い反射率(すなわち比較的高い放射率)を有する。 ・・・ 【0050】 ある実施形態では、基板は、剛性材料であっても良い。これに限られるものではないが、一例では、そのような材料は、二酸化ケイ素および酸化アルミニウムを含む。剛性基板は、例えばタイルとして、構造の上に層状化され、剛性システムの支持を提供し、例えば放射冷却が提供されても良い。 【0051】 あるいは、基板は、可撓性材料であっても良い。これに限られるものではないが、例えば、そのような材料は、ポリ(ジメチルシロキサン)およびポリ(フッ化ビニリデン)を含む。可撓性基板は、可撓性システムに使用することができ、これは、例えば、不規則形状の構造上に、コーティングすることができる。 ・・・ 【0060】 ある実施形態では、上部層40は、保護層と隣接して設置され、あるいは図3に示すように、反射層20に隣接して設置される。上部層40は、熱スペクトルにおいて、高い放射率を有することができる。これに加えてまたはこれとは別に、上部層40は、太陽スペクトルにおいて、高い透過率を有し、吸収が無視できる。上部層40は、約5μmから約500μmの厚さを有し得る。」 1d「【0071】 示された上部層は、熱スペクトルにおいて高い放射率を示し、太陽スペクトルにおける吸収率が実質的にゼロである。従って、窓および他のガラスパネル化ビルの外構、太陽パネルのような、下地基板に対して太陽光の高い透過性が要求される受動放射冷却機器、ならびにルーフタイムおよびラップトップの表面、および他の電子機器のような、基板色が保護されることが要求される用途に好適である。従って、システムとは別個に、例えば反射層なしで、上部層40が使用されることは、当業者には明らかである。しかしながら、高い太陽反射率を有する平滑な金属表面、例えば、図3、6のような反射層上に適用された場合、透過した太陽光は、金属により大部分が反射される。組み合わせ構造は、熱スペクトルにおける高い放射率と、太陽スペクトルにおける高い反射率とを兼ね備え(すなわち、いずれも約0.9超)、これは、昼間受動放射冷却に好適である。 ・・・ 【0073】 限定のためではなく、一例として、図8には、ポリ(ジメチルシロキサン)と、体積比で、0.8612:0.01735:0.01735:0.0694:0.0347のCaCO3、SiO2、Si3N4、およびAl2O3のナノ粒子とを含む、5μmの厚さの上部層のシミュレーションされた反射率が示されている。図8に示すように、ナノ粒子60および反射層20を有するシステムは、太陽スペクトルにおいて比較的高い反射率を示し、熱スペクトル、特に、昼間受動放射冷却に適する大気透過窓において、比較的低い反射率(すなわち比較的高い放射率)を示す。」 1e「【0075】 一実施形態では、ナノ粒子は、存在する場合、下地反射層の高い太陽反射率を維持するように選定することができる。ナノ粒子の選択は、例えば、太陽スペクトルにおける材料の複屈折率、およびナノ粒子のサイズに基づく。例えば、太陽スペクトルにおけるナノ粒子の減衰係数は、近似的にゼロにすることができる。別の例では、太陽スペクトルにおける材料の屈折率は、散乱の最小化と同様、太陽スペクトルの少なくとも一部内で相互の例えば10%にすることができる。また、これらの屈折率のため、ナノ粒子は十分に小さく、例えば、直径が約100nm未満とされ、上部層内に太陽光をトラップする光散乱が最小化され、太陽スペクトルにおける反射層20による吸収が上昇する。当業者には明らかなように、小さなナノ粒子は、熱放射線によりポリマーマトリクスから「区別」することができない。熱放射線の波長は、少なくとも25倍、粒子よりも大きいからである。従って、そのような波長では、上部層およびナノ粒子は、単一の高放射相として振る舞い、有効な媒質を形成する。 ・・・ 【0077】 また、上部層40内のナノ粒子60の濃度は、ナノ粒子および上部層の放射特性に応じて変化する。例えば、熱スペクトルにおいて低い電磁減衰係数を有するナノ粒子の場合、また上部層におけるナノ粒子の屈折率とポリマーの屈折率の間に大きな差がある場合、ナノ粒子の濃度は、吸収率を高めるため、増加されても良い。例えば、ナノ粒子:ポリマーの体積濃度は、約1:1である。 ・・・ 【0080】 このように、ナノ構造および/またはマイクロ構造を用いて、太陽スペクトルの広い範囲において高い反射率を有する上部層を形成することができる。前述のように、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、およびポリマーマトリクス成分のような材料は、熱スペクトルにおいても放射性であり、熱スペクトルにおいて高い放射率を有する上部層の形成に使用することができる。事実、マイクロ構造のような大きな構造は、熱放射線を上部層に横向きに散乱し、これにより、光路長および放射率が高められる。また、前述のように、1または2以上のポリマーを、例えば、機械的および化学的結合強度、ならびに耐食性のため、使用し、選定することができる。また、ファイバ(例えばセルロースファイバ)および布地(例えばナイロン布地)を、上部層に導入しても良い。セルロースファイバは、比較的小さなコストで、上部層を機械的に強化し、および/または太陽光の後方散乱を強めることができる。また、前述のような考慮により、各成分の使用を最小限に抑制したまま、各成分の質量比を調整して、最良の光学的、機械的、および化学的特性を得ることができる。」 1f「【図8】 [図:0001403643000001.jpg] 」 (2)甲第3号証(以下、「甲3」という。) 3a「【請求項1】 赤外線を反射する赤外線反射材において、 規則的な間隔で配列されたコロイド粒子と、 該コロイド粒子の間に介在する充填材と、 を備え、 上記コロイド粒子の屈折率と上記充填材の屈折率との差が、可視光領域にて0.05以下であり、赤外線領域のうち反射波長がブラッグの法則の条件を満たしたピーク値を示す波長にて0.1以上となるように設定されていること、を特徴とする赤外線反射材。 ・・・ 【請求項4】 請求項1に記載の赤外線反射材を複数積層した赤外線反射積層体であり、 上記各々の赤外線反射材は、上記コロイド粒子と上記充填材との配合割合が異なっている赤外線反射積層体。」 3b「【0016】 (2) 赤外線反射構造体10の製造方法 次に、赤外線反射構造体10の製造方法について説明する。赤外線反射構造体10は、周知の方法を用いることができ、例えば、以下の工程により製造することができる。まず、充填材を形成するための溶媒を調製する。溶媒は、第1樹脂材料と第2樹脂材料とを混合して得られる。第1樹脂材料:第2樹脂材料との混合比は、1:9である。第1樹脂材料は、ラジカル重合により第2樹脂材料の紫外線硬化を促進するために添加する。続いて、溶媒に、溶質である粒径300nmのSiO2粒子を、最終的なコロイド分散液に対して50重量%添加する。次に、溶液を超音波撹拌し、紫外線硬化の開始剤(商品名:チバスペシャルティーケミカルズ株式会社製;Darocur1173)を樹脂に対して2重量%添加する。これにより、コロイド分散液が得られる。 【0017】 次に、透明基板12上にコロイド分散液を1mm塗布することで膜を形成し、この膜に向けて紫外線を照射する。なお、コロイド分散液を複数回に分けて塗布することによりこの膜を形成してもよい。この紫外線により膜が硬化することで、コロイド粒子が充填材で保持される赤外線反射材が形成される。このとき、コロイド粒子は、自律的かつ規則的に配列される。さらに、別の種類のコロイド分散液を用いて、順次、この工程を繰り返す。このとき、コロイド分散液は、コロイド粒子の粒径や充填材との混合割合を変更したものを用いる。これにより、反射波長の異なる赤外線反射材を複数積層した赤外線反射積層体20を作成することができる。」 (3)甲第5号証(以下、「甲5」という。) 5a「【請求項1】 ポリマーと、前記ポリマー中に分散した複数の誘電体粒子とを含む選択的放出層を備えており、前記選択的放出層における前記誘電体粒子の体積パーセントが1%~25%の範囲にあり、前記粒子が3μm~30μmの範囲にある平均径を特徴とする、選択的放射冷却構造体であって、 7μm~14μmの波長範囲で0.5~1.0の範囲にある平均放出率を特徴とする、選択的放射冷却構造体。」 5b「【0017】 [0017]一実施形態において、放射層は、図3Aに概略的に図示されているように、ある体積割合の埋め込まれた粒子又は球体に有するポリマー層を含む。図3Bは、本発明の実施形態の非ポリマー粒子が埋め込まれたポリマー層(5体積%の直径8μmの固体シリカ微小球を含む、厚さ50μmのポリメチルペンテンフィルム)の例示的な吸収曲線(太陽光スペクトルにおける平均吸収が5%未満)を示す。実施形態において、誘電体粒子は、球形、楕円形、多面体、棒状、プレート状又は不規則な形状である。実施形態において、粒子又は球体は、直径(又は、粒子が非球形である場合には有効径若しくは特徴的寸法)が、1μm~20μm、3μm~30μm、4μm~10μm又は20μm~30μmである。例として、棒状又はプレート状の粒子の直径又は厚さを、特徴的寸法として使用することができる。さらなる実施形態において、粒子又は球体の平均値又は平均径は、指定の範囲内にある。さらなる実施形態において、放射層は、2つ以上の異なる径範囲を有する粒子を含むことができる。実施形態において、粒子又は球体は、誘電材料の粒子又は球体である。粒子又は球体に適した材料には、シリカ(SiO2)、CaCO3、SiC、あらゆる種類のガラス状材料及びそれらの組合せが含まれるが、これらに制限されることはない。幾つかの場合において、分散粒子なしのポリマー組成物を使用することができる。実施形態において、粒子又は球体の体積濃度は、1%~15%、5%~15%、1%~25%、2%~25%又は5~25%であり得る。実施形態において、濃度は0であってもよい(純粋なポリマーフィルム)。実施形態において、複合材料のポリマーマトリックスは、複合材の体積と平衡を保つか、又は複合材の80~100%若しくは95~100%の範囲にある。一実施形態において、ポリマー層の厚さは、粒子又は球体の有効径よりも厚い。実施形態において、ポリマー又はポリマーベースの層は、厚さが、10μm~3ミリメートル以上、4μm~10μm、10μm~1mm、10μm~500μm、10μm~100μm、100μm~750μm、200μm~1000μm、200μm~750μm、250μm~500μm又は500μm~1000μmであり得る。」 5c「【0021】 [0021]さらなる実施形態において、1つ又は複数のさらなるシート又は層の材料をポリマーベースの放射冷却シートに結合する。実施形態において、さらなる層(複数可)には、反射防止性、防水性、耐候性、紫外線防御性、耐摩耗性又は類似した特性がある。これらのシートを構成し得る材料又はこれらのシートに含まれ得る材料には、太陽光に対して透明であり耐候性を示す材料若しくはポリマー、例えばPET、又は誘電材料、例えばMgF2及びそれらの組合せが含まれる。幾つかの例において、これらのさらなる層のうち少なくとも1つが赤外吸収を示す一方で、その他の例において、これらのさらなる層のうち少なくとも1つは赤外光に対して透明である。組合せとしては、赤外光に対して透明なポリマーと誘電材料との多層構造体が含まれる。幾つかの実施形態において、紫外光曝露及び/又は気象に対する保護層の厚さは、10nm~10μm、100nm~10μm、10nm~1μm、100nm~1μm又は500nm~10μmである。」 5d「【0036】 [0036]太陽光を反射して赤外放射を放出するポリマーベースの放射冷却シートを使用して、建築物(図7A参照)及び自動車(図7B参照)に対して受動冷却効果をもたらすことができる。冷却のために、放射冷却シートを建築物又は車の屋根に直接取り付け、反射層は、建築物又は車の屋根に接している。冷却効果は、以下の2つの側面によるものである:1)多量(例えば、90%以上)の入射太陽放射を放射冷却シートの金属反射層により反射して、太陽放射からの熱取得を大幅に低減することができること;2)放射冷却シートから空へ赤外放射が放出されること(例えば、100W/m2以上)。本願は、熱帯及び亜熱帯地域における軽量建築物の受動冷却に特に適している。図7A:150 建築物;3 入射する太陽光の放射;4 放射冷却シートから空への放射冷却束;1 屋根に取り付けられた放射冷却シート;6 建築物内部の熱取得;9 反射された太陽放射。図7B:180 車;1 車の屋根に取り付けられた放射冷却シート。」 3 甲1号証に記載された発明 (1)甲1発明1 甲1の【0073】には、【請求項1】、【請求項39】及び【請求項40】を参照すると、「ポリ(ジメチルシロキサン)と、体積比で、0.8612:0.01735:0.01735:0.0694:0.0347のCaCO3、SiO2、Si3N4、およびAl2O3のナノ粒子とを含む、コーティング法を用いて基板に設置される、5μmの厚さの上部層を有する、放射冷却用のシステム。」の発明が記載されているといえる(摘記1a、1d参照)。 4 対比・判断 (1)本件特許発明1 ア 甲1発明1との対比 甲1発明1の「ポリ(ジメチルシロキサン)」は、シリコーン樹脂であり、上層部の層を構成し、熱スペクトルの異なる位置において高い放射率を有するものであるから(摘記1a参照)、本件特許発明1の「放射冷却機能樹脂層」及び「前記放射冷却機能樹脂層は、エポキシ樹脂、ポリエステル、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂の1種又は2種を使用することができる」に相当する。 甲1発明1の「CaCO3、SiO2、Si3N4、およびAl2O3のナノ粒子」は、ナノ構造を用いて太陽スペクトルの広い範囲において高い反射率を有する上層部を形成し(摘記1e参照)、図8からみて、前記上層部は、太陽スペクトル、すなわち約350nmから約2.5μmにおいて高い反射率を有しており、大気透過窓、すなわち、約8μmから約13.5μmにおいて、高い放射率を有し(摘記1b、1c、1f参照)、ここで、「CaCO3、SiO2」及び「のナノ粒子」、並びに、「Al2O3のナノ粒子」は、本件特許発明1の「重質炭酸カルシウム粉末」、「シリカ」及び「酸化アルミニウム」と異なるものではなく、甲1発明1の「ポリ(ジメチルシロキサン)」中に均一に分布していることが明らかであり、そのように分布することは規則的に配列されているといえるから、それぞれ、「第1の顆粒充填材」及び「前記第1の顆粒充填材は、前記放射冷却機能樹脂層中に規則的に配列され、前記第1の顆粒充填材は、ケイ酸アルミニウム、真珠粉末、シリカ、重質炭酸カルシウム粉末、硫酸バリウム、タルク粉末、酸化チタン粉末、硫化亜鉛、セラミック粉末、セラミックビーズ、ガラスビーズの一種又は二種以上を使用することができ」、並びに、「第2の顆粒充填材」及び「前記第2の顆粒充填材は、前記放射冷却機能樹脂層中に規則的に配列され、前記第2の顆粒充填材は、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化セリウム、酸化ランタン、酸化ロジウム、酸化マグネシウムの一種又は二種以上を使用することができ」に相当する。 甲1発明1の「コーティング法を用いて基板に設置される、5μmの厚さの上部層」は、コーティングにより塗布され、上層部は熱スペクトルの異なる位置において高い放射率を有するものであるから(摘記1a参照)、本件特許発明1の「放射冷却機能塗料によって製作される放射冷却機能層」に相当し、甲1発明1の「上層部」は、本件特許発明1の「放射冷却機能樹脂」に相当する「ポリ(ジメチルシロキサン)」により構成され、本件特許発明1の「第1の顆粒充填材」及び「第2の顆粒充填材」に相当する「CaCO3、SiO2」及び「のナノ粒子」並びに「Al2O3のナノ粒子」を含み、太陽スペクトル、すなわち約350nmから約2.5μmにおいて高い反射率を有しており、大気透過窓、すなわち、約8μmから約13.5μmにおいて、高い放射率を有し(摘記1c、1f参照)、甲1発明1の「CaCO3、SiO2」及び「のナノ粒子」、並びに、「Al2O3のナノ粒子」は、本件特許発明1の「シリカ」、「重質炭酸カルシウム粉末」及び「酸化アルミニウム」と異なるものではないから、それぞれ、上部層に可視光線及び近赤外線を反射する作用及び紫外線及び可視光線を反射する作用を有するものとすることができるものとなるから、甲1発明1の「コーティング法を用いて基板に設置される、5μmの厚さの上部層を有する、放射冷却用のシステム」は、本件特許発明1の「選択的放射冷却塗布層は、放射冷却機能塗料によって製作される放射冷却機能層を含み、 前記放射冷却機能層は、放射冷却機能樹脂層と、この放射冷却機能樹脂層中に分布している第1の顆粒充填材及び第2の顆粒充填材を含み」、「前記第1の顆粒充填材を含む放射冷却機能層は、可視光線及び近赤外線を反射する作用と、赤外放射方式で大気の窓を介して熱エネルギーを放射する作用と、を有し」及び「前記第2の顆粒充填材を含む放射冷却機能層は、紫外線及び可視光線を反射する作用と、赤外放射方式で大気の窓を介して熱エネルギーを放射する作用と、を有し」に相当する。 そうすると、本件特許発明1と甲1発明1は、「選択的放射冷却塗布層は、放射冷却機能塗料によって製作される放射冷却機能層を含み、 前記放射冷却機能層は、放射冷却機能樹脂層と、この放射冷却機能樹脂層中に分布している第1の顆粒充填材及び第2の顆粒充填材を含み、 前記第1の顆粒充填材を含む放射冷却機能層は、可視光線及び近赤外線を反射する作用と、赤外放射方式で大気の窓を介して熱エネルギーを放射する作用と、を有し、 前記第1の顆粒充填材は、前記放射冷却機能樹脂層中に規則的に配列され、前記第1の顆粒充填材は、ケイ酸アルミニウム、真珠粉末、シリカ、重質炭酸カルシウム粉末、硫酸バリウム、タルク粉末、酸化チタン粉末、硫化亜鉛、セラミック粉末、セラミックビーズ、ガラスビーズの一種又は二種以上を使用することができ、 前記第2の顆粒充填材を含む放射冷却機能層は、紫外線及び可視光線を反射する作用と、赤外放射方式で大気の窓を介して熱エネルギーを放射する作用と、を有し、 前記第2の顆粒充填材は、前記放射冷却機能樹脂層中に規則的に配列され、前記第2の顆粒充填材は、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化セリウム、酸化ランタン、酸化ロジウム、酸化マグネシウムの一種又は二種以上を使用することができ、 前記放射冷却機能樹脂層は、エポキシ樹脂、ポリエステル、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂の1種又は2種を使用することができることを特徴とする選択的放射冷却塗布層。」である点で一致し、以下の点で相違する。 <相違点> 本件特許発明1は前記第1の顆粒充填材の配向及び前記第2の顆粒填材の配向を制御するための配向剤をさらに含むのに対し、甲1発明1ではそのような特定がない点。 イ 相違点についての検討 前記第1の顆粒充填材の配向及び前記第2の顆粒填材の配向を制御するための配向剤をさらに含む点は実質的な相違点である。 そして、甲1には甲1発明1の放射冷却用のシステムにおいて配向剤を含むことについて記載も示唆もない。 また、甲3及び甲5にも放射冷却用のシステムにおいて配向剤を含むことについて記載も示唆もない。 そうすると、甲1発明1の放射冷却用のシステムにおいて配向剤を含むものとする動機付けがあるとはいえない。 ウ 小括 したがって、本件特許発明1は、甲1に記載された発明ではなく、甲1に記載された発明並びに甲3及び甲5に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第1項第3号に該当せず、あるいは、同法同条第2項の規定により、特許を受けることができないものではない。 (2)本件特許発明2~3、6、9~21 本件特許発明2~3、6、9~21は、本件特許発明1を直接又は間接的に引用してさらに限定するものであり、上記本件特許発明1と引用発明との<相違点>と同じ相違点を有するものであって、<相違点>については前記(1)イで検討したとおりであるから、本件特許発明2~3、6、9~21は、甲1に記載された発明ではなく、甲1に記載された発明並びに甲3及び甲5に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第1項第3号に該当せず、あるいは、同法同条第2項の規定により、特許を受けることができないものではない。 第7 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について 特許異議申立人の主張は以下のとおりであり、理由1及び理由2は取消理由通知で採用されている。 理由1(新規性)本件特許の請求項1、3、18、20に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された甲第1号証に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、前記の請求項1、3、18、20に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。 理由2(進歩性)本件特許の請求項1~3、6、9~21に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された甲第1号証~甲第5号証に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、前記の請求項1~3、6、9~21に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 理由3(サポート要件)本件特許の請求項1~21に係る特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で特許法第36条第6項第1号に適合するものではないから、本件特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない出願に対してなされたものであり、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。 理由4(明確性)本件特許の請求項1~21に係る発明は、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしておらず、同法第113条第4号の規定により取り消されるべきものである。 理由5(実施可能要件)本件特許の請求項1~21に係る特許は、発明の詳細な説明の記載が下記の点で特許法第36条第4項第1号に適合するものではないから、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。 第8 前記第7の理由3(サポート要件)について 1 異議申立て理由の概要 本件特許発明の解決すべき課題は、得られる塗布層が太陽の放射スペクトル全般では高反射率を有し、大気の窓の波長(7μm~14μm)範囲では高放射率を有する放射冷却機能塗料を提供することである(本件特許明細書の[0008]段落)。 具体的に、本件特許明細書の[0037]及び[0091]段落には、本件特許発明に係る塗布層によって、太陽光スペクトルのエネルギーに対する反射率が80%以上であり、大気の窓の放射率が80%以上であり、常温で100W/m2以上の放射冷却パワーを提供することができることが記載されている。 また、本件特許発明の具体例として、本件特許明細書の[0103]段落には、配合がXである第1の放射冷却機能塗料(80質量%のアクリル樹脂、19質量%のシリカと重質炭酸カルシウム粉末(シリカと重質炭酸カルシウム粉末との質量比は1:1であり、シリカと重質炭酸カルシウム粉末の形状は棒状であり、粒径は6μmであり、アスペクト比は5:1である))を用いて、シリカと重質炭酸カルシウム粉末との内部の最長径と塗布層の平面とがなす角を0°~30゜に調整した第1の放射冷却機能層が記載されている。 また、本件特許明細書の[0104]段落には、配合がYである第2の放射冷却機能塗料(75質量%のポリウレタン樹脂、23質量%の酸化アルミニウムと酸化マグネシウム(酸化アルミニウムと酸化マグネシウムとの質量比は1:1であり、酸化アルミニウムと酸化マグネシウムの形状は棒状であり、粒径は3μmであり、アスペクト比は6:1である))を用いて、酸化アルミニウムと酸化マグネシウムとの内部の最長径と塗布層の平面とがなす角を0°~30゜に調整した第2の放射冷却機能層が記載されている。 更に、本件特許明細書の[0150]~[0177]段落には、第1の放射冷却機能層と第2の放射冷却機能層を用いたモデルハウス、水槽、テント、ヘルメット及び防水シートの実施例において、0.3μm~2.5μmでの反射率が91~92%であり、7μm~14μmでの放射率が94~97%であったことが記載されている。 一方で、本件特許発明1の放射冷却機能層は、所定の材料からなる第1の顆粒充填材と第2の顆粒充填材とを所定の樹脂中に規則的に配列することを規定するのみで、顆粒充填材の形状、大きさ、含有量及び配列の規則に関しては何ら特定していない。 また、本件特許明細書には、顆粒充填材の形状として、棒状、直方体、立方体、球状、楕円体、多面体、梓状、板状又は不規則的な形状が含まれると記載されており(本件特許明細書の[0043]段落)、規則的な配列には、顆粒充填材が樹脂中に均ーに分布するとともに配向配列することが含まれると記載されている(本件特許明細書の[0053]段落)。 ここで、顆粒充填材の形状が球状の場合、全方位において等長であり、どのような向きに配置しても配向配列といえるから、顆粒充填材を単にランダムに樹脂中に均ーに分布させた状態でも、本件特許発明1に規定する「規則的に配列」に該当することになる。しかしながら、このような場合は、本件特許明細書の[0007]段落に記載の充填材を添加した従来技術の塗料と何ら変わるところがないから、本件特許発明1には、本件特許発明の課題を解決できない態様が含まれている。 更に、本件特許発明1の「規則的に配列」の規則には、位置に関する規則性(例えば、放射冷却機能層の平面視で一辺に所定の間隔で整列している場合や、斜め45゜に整列している場合、放射冷却機能層の平面視ではランダムでも厚さ方向には所定の間隔で整列している場合等)、種類に関する規則性(例えば、シリカ、酸化亜鉛が交互に配置される場合等)、形状に関する規則性(例えば、球状の顆粒充填材と棒状の顆粒充填材とが交互に配列している場合等)、含有量に関する規則性(例えば、放射冷却機能層の厚さ方向に顆粒充填材の含有量が増加する場合等)、又は大きさに関する規則性(例えば、放射冷却機能層の厚さ方向に顆粒充填材の大きさが減少する場合等)等が存在し、これらの要素を組み合わせた規則数は無限大である。 しかしながら、本件特許明細書には、粒径が3μm及び6μmの棒状の顆粒充填材が最長径と塗布層の平面がなす角が0°~30゜に配向された実施例しか記載されておらず、その他のどのような規則的な配列でも実施例と同様の高い反射率と放射率が得られると理解することはできない。 例えば、棒状の顆粒充填材を不規則に配向配列した場合、本件特許明細書の[0111]段落によれば、0~30゜に配向配列したものより、反射率や放射率が劣るとされているところ、不規則な配向配列はそのままに、単に樹脂層の平面視で規則的に配列しさえすれば、0~30゜に配向配列したものと同等の反射率及び放射率を有するものになると、到底理解することはできない。 さらには、甲第2号証(特開2010-131525号公報)ないし甲第4号証(特開2015-177781号公報)に記載されているとおり、粒子を規則的な間隔で配置することにより、ブラッグの法則によって、所定の波長の光を反射できることが技術常識として知られていたところ、太陽光スペクトルの光を反射するためには、単に規則的に配置するだけでは足らず、太陽光スペクトルの光を反射するように調整した規則的配置にしなければならないことは明らかである。 また、本件特許明細書には、顆粒充填材の規則配置が表面プラズモン共鳴を強化し、紫外線、可視光線及び近赤外線に対する反射率と7μm~l4μmでの赤外線の放射率を向上させることができると記載されている(本件特許明細書の[0046]及び[0053]段落)。 ここで、甲第6号証(小林 敏勝、「表面プラズモンによる発色と塗料への展開」、日本画像学会誌、2011年、第50巻第6号、第556~562ページ)に記載のとおり、表面プラズモンの共鳴により吸収する光の波長は、粒子の大きさ、粒子の形状、凝集状態、媒質の誘電率によって変化することが技術常識である(甲第6号証の556ページ左欄9~11行目)。 そうすると、顆粒充填材の大きさ、形状、凝集状態とは無関係に、単に規則配列するだけで実施例と同様の高い反射率と放射率とを有することができると当業者が理解できないことは明白である。 よって、本件特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。 2 当審の判断 本件特許明細書の記載から、所定の材料からなる第1の顆粒充填材と第2の顆粒充填材とを所定の樹脂中に規則的に配列することにより前記課題を解決できることが理解でき、顆粒充填材の形状が球状の場合、全方位において等長であり、どのような向きに配置しても配向配列といえるから、顆粒充填材を単にランダムに樹脂中に均一に分布させた状態でも、本件特許発明1に規定する「規則的に配列」に該当することになり、前記課題を解決できることは明らかであり、本件特許発明1は「配向剤」を含むものとなっているので、前記課題を解決できることは明らかである。 また、ブラッグの法則により太陽光スペクトルの光を反射するには顆粒中の原子や分子が規則的配置になっていればよいから、太陽光スペクトルの光の反射は顆粒充填剤の材料の種類が関係し、顆粒充填材の大きさ、形状、凝集状態とは無関係である。 確かに、表面プラズモンの共鳴により吸収する光の波長は、粒子の大きさ、粒子の形状、凝集状態、媒質の誘電率によって変化することが技術常識であるが、表面プラズモンの共鳴により光の吸収が起こるとしても、その反射が完全に打ち消されない限り、前記のとおり、顆粒中の原子や分子が規則的配置になっていれば、ブラッグの法則により太陽光スペクトルの光を反射できるのであり、また、表面プラズモンの共鳴が、その反射が完全にうちけすほど大きいという技術常識もない。 よって、本件特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないとはいえない。 第9 前記第7の理由4(明確性要件)について 1 異議申立て理由の概要 (1)顆粒充填材の形状と規則的配列に関して 本件特許発明1の顆粒充填材の形状には球状が含まれ、「規則的に配列」には樹脂層中に均一に分布し、規則的に配向配列することが含まれているところ(本件の請求項3、明細書の[0043]、[0053]段落)、顆粒充填材の形状が球状の場合、全方位において等長であることから、とのように配列しても配向的に配列されることは自明である。 また、「均一」とは、一般的に「一様なこと」(広辞苑第6版)を意味することから、樹脂中に一様にランダムに分布しても、均一に分布することになる。 そうすると、顆粒充填材の形状が球状の場合、規則的とは言えないランダムな配列でも「規則的に配列」に該当することになり、日本語として意味を理解することができない。 よって、本件特許発明1及びこれを引用する請求項に係る本件特許発明2~21は不明確である。 (2)放射冷却パワーに関して 本件特許発明17は、本件特許発明1~16のいずれかの発明特定事項に加えて、「前記選択的放射冷却塗布層は、太陽光スペクトルのエネルギーに対する反射率が80%以上であり、大気の窓の放射率が80%以上であり、常温で100W/m2以上の放射冷却パワーを提供すること」を発明特定事項とする発明である。 ここで、上記第3で詳述したように、本件特許発明の解決すべき課題は、得られる塗布層が太陽の放射スペクトル全般では高反射率を有し、大気の窓の波長(7μm~l4μm)範囲では高放射率を有する放射冷却機能塗料を提供することにある。 そうすると、本件特許発明17の上記発明特定事項として規定された事項は、解決すべき課題の反射率、放射率及び放射冷却パワーを単に規定したものに過ぎない。 したがって、本件特許発明17は、単に解決すべき課題を発明特定事項としたいわゆる願望クレームに係る発明に過ぎず、技術常識を考慮しても技術的に十分に特定されていないことが明らかである。 よって、本件特許発明17は不明確である。 2 当審の判断 (1)顆粒充填材の形状と規則的配列に関して 顆粒充填材の形状が球状の場合、全方位において等長であることから、とのように配列しても配向的に配列され、樹脂中に一様にランダムに分布しても、均一に分布することになっており、そのような場合も「規則的に配列」に該当することは明らかであり、「規則的に配列」なる事項は明確であるといえる。 よって、本件特許発明1及びこれを引用する請求項に係る本件特許発明2~21は明確である。 (2)放射冷却パワーに関して 「前記選択的放射冷却塗布層は、太陽光スペクトルのエネルギーに対する反射率が80%以上であり、大気の窓の放射率が80%以上であり、常温で100W/m2以上の放射冷却パワーを提供すること」なる特定を有する本件特許発明17は単に解決すべき課題を発明特定事項としたいわゆる願望クレームに係る発明であるかもしれないが、該発明特定事項は放射冷却パワーの技術的な特定としてに何ら不明確な点はないから、本件特許発明17は明確である。 3 異議申立人の主張及び当審の判断 異議申立人は、令和5年4月3日付けの意見書において「本件特許発明1の顆粒充填材の形状が球状である場合、顆粒充填材の形状は全方位において等長であるため、粒子の向きが特定の方向に偏っていることを観念することができない。したがって、訂正後の本件特許発明1は、発明特定事項に技術的な不備があり、当業者がその技術的意味を理解することができず、発明特定事項が不足していることは明らかである。 したがって、本件特許発明1及びこれを引用する請求項に係る本件特許発明2~6及び8~21は不明確である。」と主張する。 しかし、顆粒充填材の形状が球状である場合、顆粒充填材の形状は全方位において等長であるため、粒子の向きが特定の方向に偏っていることを観念することができないとしても、規則的に配列しているか否かは判断でき、その技術的意味を理解することができるといえるから、特許異議申立人の前記主張は採用できない。 第10 前記第7の理由5(実施可能要件)について 1 異議申立て理由の概要 本件特許発明の選択的放射冷却塗布層の製造方法として、本件明細書には、放射冷却機能塗料に含まれる第1の顆粒充填材、第2の顆粒充填材及び放射冷却機能樹脂に用いられる材料の種類、並びに、放射冷却機能塗料に添加して顆粒充填材を配向配列するための配向剤の種類が記載されるとともに、放射冷却機能塗料をプラシ塗布等の塗布方法によって基材に塗布することによって、選択的放射冷却塗布層を形成する方法が記載されている(本件明細書の[0049]、[0050]、[0054]、[0055]及び[0065]段落)。 そして、具体例の一つとして、80質量%のアクリル樹脂に、19質量%のシリカと重質炭酸カルシウム粉末(共に形状は棒状、粒径は6μm、アスペクト比は5:1である)と1%の配向剤(エチレン一酢酸ビニル共重合体ワックスエマルション)を添加した第1の放射冷却機能塗料を、トタンに塗布してシリカと重質炭酸カルシウム粉末との内部の最長径と第1の放射冷却機能層の平面とがなす角が0°~30゜に配向配列した選択的放射冷却塗布層を形成した実施例が記載されている(本件明細書の[0103]段落)。 また、別の具体例として、75質量%のポリウレタン樹脂に、23質量%の酸化アルミニウムと酸化マグネシウム(共に形状は棒状、粒径は3μm、アスペクト比は6:1である)と2%の配向剤(ポリアミドワックス)を添加した第2の放射冷却機能塗料を、トタンに塗布して酸化アルミニウムと酸化マグネシウムとの内部の最長径と第2の放射冷却機能層の平面とがなす角が0°~30゜に配向配列した選択的放射冷却塗布層を形成した実施例が記載されている(本件明細書の[0104]段落)。 これらの具体例における顆粒充填材の規則的な配列は、本件特許発明3で規定された「顆粒充填材が放射冷却機能樹脂中に均一に分布することと、顆粒充填材が放射冷却機能樹脂中に配向的に配列することとを含む」という発明特定事項を満足するものである。 しかしながら、本件特許発明1に規定された顆粒充填材を放射冷却機能樹脂層中に規則的に配列する方法は、本件特許発明3に規定された「顆粒充填材が放射冷却機能樹脂中に均一に分布することと、顆粒充填材が放射冷却機能樹脂中に配向的に配列することとを含む」という発明特定事項を満足する方法以外にも無数の方法が考えられるところ、本件明細書には、本件特許発明3の発明特定事項を満足する方法以外の方法に関して、何ら記載はなく、また、これを補う技術常識も存在しないため、本件特許発明3の発明特定事項を満足する規則的な配列以外を形成するにあたり、当業者に過度の試行錯誤を強いることは明らかである。 したがって、本件明細書における発明の詳細な説明は、当業者が本件特許発明1並びにこれを引用する請求項に係る本件特許発明2及び5~21を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されておらず、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。 2 当審の判断 本件特許発明3に規定された「顆粒充填材が放射冷却機能樹脂中に均一に分布することと、顆粒充填材が放射冷却機能樹脂中に配向的に配列することとを含む」方法により顆粒充填材を放射冷却機能樹脂層中に規則的に配列することができるといえるから、本件特許発明1は配向剤を含むことにより、顆粒充填材の規則的な配列ができるといえるから、本件明細書における発明の詳細な説明は、当業者が本件特許発明1並びにこれを引用する請求項に係る本件特許発明2及び5~21を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されており、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていないとはいえない。 第11 むすび 以上のとおりであるから、令和4年11月9日付けの取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件発明1~6、8~21に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件発明1~6、8~21に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 訂正前の請求項7は本件訂正により削除されたため、請求項7についての特許異議の申立ては、不適法なものであり、その補正をすることができないから、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下すべきものである。 よって、結論のとおり決定する。

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2022-700818

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