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特許異議申立

2022-700639

放射冷却膜及びその製品

審判番号
2022-700639
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2021-065443
登録番号
6999057
請求日
2022年07月13日
審決日
2024年02月19日
公報発行日
2024年03月29日
結論
維持
当事者
  • 【権利者】寧波瑞凌新能源科技有限公司
  • 【権利者代理人】幸谷 泰造
  • 【権利者代理人】TRY国際弁理士法人
  • 【権利者】寧波瑞凌新能源材料研究院有限公司
  • 【権利者代理人】幸谷 泰造
  • 【権利者代理人】TRY国際弁理士法人
  • 【異議申立人】西内 大生
審判長/審判官
  • 審判長 水野 治彦
  • 審判官 槙原 進
  • 審判官 間中 耕治
分類
P1651.536-Y (E04B) / P1651.537-Y (E04B) / P1651.121-Y (E04B)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第36条第4項第1号、特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第6項第2号
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第6999057号発明「放射冷却膜及びその製品」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第6999057号の請求項1~15に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第6999057号(以下、「本件特許」という。)の請求項1~15に係る特許についての出願は、令和3年4月7日(パリ条約による優先権主張2021年2月4日(CN)中華人民共和国)に出願され、令和3年12月23日にその特許権の設定登録がされ、令和4年1月18日に特許掲載公報が発行された。その特許についての本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。 令和4年7月13日 :特許異議申立人 西内 大生(以下、「申立人」という。)による請求項1~15に係る特許に対する特許異議の申立て 令和4年9月22日付け:取消理由通知 令和4年12月26日 :特許権者による意見書の提出 令和5年2月3日付け :審尋(特許権者に対して) 令和5年3月6日 :特許権者による回答書の提出 令和5年3月16日付け:審尋(申立人に対して) 令和5年4月6日 :申立人による回答書の提出 令和5年6月29日付け:取消理由通知(以下、「決定の予告」という。) 令和5年10月2日 :意見書の提出 第2 本件発明 本件特許の請求項1~15に係る発明(以下、「本件発明1」~「本件発明15」という。また、これらを総称して「本件発明」という。)は、本件特許の特許請求の範囲の請求項1~15に記載された、以下の事項により特定されるとおりのものである。 「 【請求項1】 積層して設置されたキャリア層、反射層及び放射層を含む放射冷却膜において、放射冷却膜には、放射冷却粒子が添加されず、前記放射層は、前記放射冷却膜の光入射側であり、前記放射層の材料は、C-F結合を含むポリマーであり、前記キャリア層の材料は、C-C結合及び/又はC-O結合を含むポリマーであり、前記キャリア層は、120℃で30分間置かれた後、横方向に熱収縮率が2%以下であり、縦方向に熱収縮率が3%以下であるという性質を持ち、前記放射冷却膜の厚さは、50μm~170μmであり、前記放射層の厚さが20%~90%を占め、前記キャリア層と前記反射層との間にポリマー塗布層が設置され、前記ポリマー塗布層の表面エネルギーは、40mN/m以上であり、前記ポリマー塗布層の厚さは、3nm~200nmであることを特徴とする放射冷却膜。 【請求項2】 前記反射層は、前記キャリア層と前記放射層との間に配置され、前記放射冷却膜の厚さは、55μm~170μmであることを特徴とする、請求項1に記載の放射冷却膜。 【請求項3】 前記放射層と前記キャリア層の厚さの比は、1:2~8:1であることを特徴とする、請求項2に記載の放射冷却膜。 【請求項4】 前記放射層の厚さは、25μm~120μmであることを特徴とする、請求項3に記載の放射冷却膜。 【請求項5】 前記キャリア層が前記放射層と前記反射層との間に配置され、前記放射冷却膜の厚さは、50μm~125μmであることを特徴とする、請求項1に記載の放射冷却膜。 【請求項6】 前記放射層と前記キャリア層の厚さの比は、3:10~22:3であることを特徴とする、請求項5に記載の放射冷却膜。 【請求項7】 前記放射層の厚さは、15μm~110μmであることを特徴とする、請求項6に記載の放射冷却膜。 【請求項8】 前記放射層の材料は、フッ素含有樹脂を含み、及び/又は前記キャリア層の材料は、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド及びポリカーボネートのうちの少なくとも一種を含み、及び/又は前記反射層の材料は、金属及び合金のうちの少なくとも一種を含むことを特徴とする、請求項1~請求項7のいずれかの一項に記載の放射冷却膜。 【請求項9】 前記キャリア層の前記反射層を支持する表面の表面エネルギーは、40mN/m以上であることを特徴とする、請求項1~請求項7のいずれかの一項に記載の放射冷却膜。 【請求項10】 前記キャリア層と前記ポリマー塗布層との間の屈折率差の絶対値は、0.05以上であることを特徴とする、請求項9に記載の放射冷却膜。 【請求項11】 前記放射層の光入射面にエンボス構造が設置されることを特徴とする、請求項1~請求項7のいずれかの一項に記載の放射冷却膜。 【請求項12】 製品は、基板及び前記基板に配置された請求項1に記載の放射冷却膜を含み、前記放射冷却膜の放射層から離れた表面は、接着剤層によって前記基板に接続されることを特徴とする放射冷却膜を含む製品。 【請求項13】 前記基板は、金属基板、セラミック基板、半導体基板、プラスチック基板、ガラス基板、ゴム基板、アスファルト基板、セメント基板及びテキスタイル基板のうちの少なくとも一種を含むことを特徴とする、請求項12に記載の製品。 【請求項14】 前記製品は、放射冷却防水シートであり、前記基板は、石油アスファルト紙フェルト、石油アスファルトグラスファイバータイヤシート、アルミニウム箔表面シート、SBS修飾アスファルト防水シート、APP修飾アスファルト防水シート、EPDMシート、PVCシート、塩素化ポリエチレンシート、ゴムブレンドシート、TPO防水シートのうちの少なくとも一種であることを特徴とする、請求項12に記載の製品。 【請求項15】 前記製品は、放射冷却金属板であり、前記基板は、アルミニウム合金金属板、亜鉛メッキ金属板、錫メッキ金属板、複合鋼金属板及びカラーコーティングされた鋼金属板のうちの少なくとも一種であることを特徴とする、請求項12に記載の製品。」 第3 決定の予告で通知した取消理由の概要 決定の予告で通知した取消理由(以下、「予告の取消理由」という。)は、概ね次のとおりである。 本件特許の明細書及び図面の記載により開示された事項をみても、エポキシアクリルポリマー、ウレタンアクリレート及びポリエステルアクリレートの各ポリマー材料は、化合物そのものではなく、特定の構造を有する化合物の総称であり、化合物により特性は異なり、また、ポリマー塗布層を塗布する際、上記ポリマー材料の溶媒の種類、塗布時の溶媒による希釈の程度、塗布温度等の塗布の処理条件に応じてポリマー塗布層の表面エネルギーが異なることは否定できないことから、上記ポリマー材料の種類やポリマー塗布層の厚さを特定するのみでは、表面エネルギーが40mN/m以上であるポリマー塗布層を当業者が製造することができる程度に開示しているとはいえない。 また、本件特許の明細書の発明の詳細な説明の記載は、プラズマ方法及びコロナ方法により、表面エネルギーが40mN/m以上であるポリマー塗布層を当業者が製造することができる程度の開示をしているとはいえない。 そうすると、本件特許の明細書の発明の詳細な説明の記載は、本件発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものではない。 したがって、本件発明に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、同法第113条第4号に該当するから、取り消されるべきものである。 第4 特許権者の主張の概要及び証拠方法について 1 令和5年10月2日に提出された意見書における主張の概要 特許権者は、乙第9号証~乙第18号証を提出し、令和5年10月2日に提出された意見書において、概略、次の主張をする。 (1)「乙第9号証に開示されているように、固体の表面エネルギーは下記の公式で表されます。 [図:0001407793000001.jpg] ここで、Gはギブスの自由エネルギー、Aは固体の表面積であり、上記の公式より、固体の表面エネルギーγsは、温度T、圧力P、成分niにのみ関係し、厚さには依存しないものです」(5頁23行~同頁29行) (2)「乙第10号証から乙第14号証に記載されるように、当業者には、エポキシアクリルポリマー、ウレタンアクリレート及びポリエステルアクリレートのうちの少なくとも一種である材料からなり、表面エネルギーが40mN/m以上となるものは広く知られており、当業者であれば、当該材料を厚さが3nm~200nmで塗布することができますので、表面エネルギーを40mN/m以上とするポリマー塗布層を得ることができます。 さらに、エポキシアクリルポリマー、ウレタンアクリレートおよびポリエステルアクリレートの表面にもC-C結合およびC-H結合が存在することから、乙第15号証から乙第18号証に記載された周知技術に基づいて、当業者であれば、エポキシアクリルポリマー、ウレタンアクリレート及びポリエステルアクリレートのうちの少なくとも一種である材料の化合物からなるポリマー層をプラズマ処理やコロナ放電処理することにより、その表面エネルギーを増加させることもできます。 すなわち、本件特許明細書の段落【0043】、【0044】、【0065】及び【0067】~【0070】には、表面エネルギーが40mN/m以上とされるポリマー塗布層について、ポリマー塗布層の材料をエポキシアクリルポリマー、ウレタンアクリレート及びポリエステルアクリレートのうちの少なくとも一種とし、ポリマー塗布層の厚さを3nm~200nmの範囲(実施形態5及び7~10では、それぞれ50nm、10nm、100nm、20nm、50nmである。)とすることが記載されており、ポリマー塗布層の材料及び厚さが特定されれば、それぞれにおいて40mN/m以上とするものを得ることができ、また、プラズマ方法及びコロナ方法における表面処理の条件を設定することで、その表面エネルギーを増加させることができ、それぞれにおいて40mN/m以上とすることができます。」(8頁13行~9頁4行) 2 証拠方法 乙第9号証:Robert J. Good,Robert R Stromberg,”1, Contact Angles and the Surface Free Energy of Solids”,”SURFACE AND COLLOID SCIENCE, Volume 11, EXPERIMENTAL METHODS”,PLENUM PRESS. NEW YORK AND LONDON,1979,p.3 及び抄訳文 乙第10号証:中国特許出願公開第106634462号明細書及び抄訳文 乙第11号証:中国特許出願公開第106867442号明細書及び抄訳文 乙第12号証:中国特許出願公開第104004452号明細書及び抄訳文 乙第13号証:中国特許出願公開第107641454号明細書及び抄訳文 乙第14号証:中国特許出願公開第105733492号明細書及び抄訳文 乙第15号証: [図:0001407793000002.jpg] 乙第16号証: [図:0001407793000003.jpg] 乙第17号証: [図:0001407793000004.jpg] 乙第18号証: [図:0001407793000005.jpg] (以下、乙第9号証~乙第18号証を、「乙9」~「乙18」という。) 第5 当審の判断 1 予告の取消理由の対象とした本件発明の発明特定事項 本件発明1は、「前記ポリマー塗布層の表面エネルギーは、40mN/m以上であり」との発明特定事項(以下、「特定事項A」という。)を備えており、本件発明2~15は、いずれも本件発明1を引用するから、本件発明は、全て特定事項Aを備えるものである。 2 本件特許の明細書における発明の詳細な説明及び図面の記載 本件発明の特定事項Aに関して、本件特許の明細書における発明の詳細な説明及び図面には、以下の記載がある。 「【0016】 前記キャリア層と前記反射層との間にポリマー塗布層が設置され、前記ポリマー塗布層の表面エネルギーは、40mN/m以上であり、前記ポリマー塗布層の厚さは、3nm~200nmである。」 「【0042】 さらに、キャリア層31の材料がポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド及びポリカーボネートから選択される場合、その表面エネルギーが低いので、反射層32を堆積又は貼り付ける前に、プラズマ方法及びコロナ方法でキャリア層31の表面を、その表面エネルギーを40mN/m以上、さらに42mN/m以上、45mN/m以上、50mN/m以上又は55mN/m以上に増加させるように処理してもよい。或いは、キャリア層31にポリマー塗布層35が設置され、ポリマー塗布層35の表面エネルギーは40mN/m以上、さらに42mN/m以上又は45mN/m以上又は50mN/m以上又は55mN/m以上である。これによって、キャリア層31と反射層32との間の接着性が大幅に改善され、それにより、放射冷却膜全体の剥離強度が向上される。 【0043】 ポリマー塗布層35を設置する場合、ポリマー塗布層の厚さは3nm~200nmであり、キャリア層31とポリマー塗布層35との間の屈折率差の絶対値は、放射冷却膜の反射率を向上するのを助けるために、0.05以上である。 【0044】 一つの実施形態では、ポリマー塗布層35の材料は、エポキシアクリルポリマー、ウレタンアクリレート及びポリエステルアクリレートのうちの少なくとも一種である。」 「【0049】 本実施形態では、反射層32は、キャリア層31の表面に直接貼り付けることができ、又はスパッタリング、蒸着などによってキャリア層31の表面に直接堆積することができる。反射層32を堆積又は貼り付ける前に、表面エネルギーを高めるために、プラズマ方法及びコロナ方法でキャリア層31の表面を処理してもよい。或いは、キャリア層31と反射層32との間の接着力を高め、それによって放射冷却膜全体の剥離強度を改善するために、キャリア層31にポリマー塗布層35を設置する。」 「【0065】 実施形態5 実施形態5と実施形態3との違いは、実施形態5の銀反射層を支持する表面に厚さが50nmであるエポキシアクリルポリマー塗布層が設置され、表面エネルギーが56mN/mであり、且つキャリア層とポリマー塗布層の屈折率の差の絶対値は0.06であるということである。」 「【0067】 実施形態7 厚さが20μmであるポリエチレンテレフタレートフィルムをキャリア層として、キャリア層が120℃で30分間置いた後、横方向の熱収縮率が1.5%であり、縦方向の熱収縮率が1.6%であり、キャリア層の表面に厚さが10nmであるウレタンアクリレートポリマー塗布層をコーティングし、表面エネルギーが42mN/mであり、且つキャリア層とポリマー塗布層の屈折率の差の絶対値が0.07である。・・・」 「【0068】 実施形態8 厚さが30μmであるポリエチレンテレフタレートフィルムをキャリア層として、キャリア層が120℃で30分間置いた後、横方向の熱収縮率が1.2%であり、縦方向の熱収縮率が1.4%であり、キャリア層の表面に厚さが100nmであるポリエステルアクリレートポリマー塗布層をコーティングし、表面エネルギーが47mN/mであり、且つキャリア層とポリマー塗布層の屈折率の差の絶対値が0.06である。・・・」 「【0069】 実施形態9 厚さが50μmであるポリエチレンテレフタレートフィルムをキャリア層として、キャリア層を120℃で30分間置いた後、横方向の熱収縮率が0.8%であり、縦方向の熱収縮率が1.0%である。キャリア層の表面に厚さが20nmであるポリエステルアクリレートポリマー塗布層をコーティングし、表面エネルギーが47mN/mであり、且つキャリア層とポリマー塗布層の屈折率の差の絶対値が0.06である。」 「【0070】 実施形態10 厚さが35μmであるポリエチレンテレフタレートフィルムをキャリア層として、キャリア層を120℃で30分間置いた後、横方向の熱収縮率が1.1%であり、縦方向の熱収縮率が1.2%である。キャリア層の表面に厚さが50nmであるポリエステルアクリレートポリマー塗布層をコーティングし、表面エネルギーが42mN/mであり、且つキャリア層とポリマー塗布層の屈折率の差の絶対値が0.07である。」 「 [図:0001407793000006.jpg] 」 3 乙9~乙18の記載事項 (1)乙9の記載事項 乙9には、以下の記載事項がある。 「 [図:0001407793000007.jpg] 」(3頁21行~同頁25行) (抄訳文) 「 [図:0001407793000008.jpg] 」 (2)乙10の記載事項 乙10には、以下の記載事項がある。 「 [図:0001407793000009.jpg] 」(段落[0015]) (抄訳文) 「上記の高ダイン値硬化膜において、前記主体樹脂は、ポリエステルアクリレート、エポキンアクリレート、ウンタンアクリレート、またはポリエーテルアクリレートのいずれか1つまたは複数である。」 「 [図:0001407793000010.jpg] 」(段落[0077]) (抄訳文) 「 [図:0001407793000011.jpg] 」 (3)乙11の記載事項 乙11には、以下の記載事項がある。 「 [図:0001407793000012.jpg] 」(請求項7) (抄訳文) 「ステップS4:前記モールド化されたゲル層を固化して、前記装飾膜を得る。」 「 [図:0001407793000013.jpg] 」(請求項9) (抄訳文) 「,前記装飾膜の表面ダイン値は40より大きい,」 「 [図:0001407793000014.jpg] 」(請求項10) (抄訳文) 「10.重量部で計算すると、前記接着剤は、45~70重量部のオリゴマー、10~30重量部の第2単量体、・・・ 好ましくは、前記オリゴマーはウレタンアクリレートまたは純粋なアクリレートであり、好ましくは、第2単量体は、アクリル酸イソボルニル、長興化学の2-ヒドロキシエチルメタクリレートホスフェート、アクリル酸テトラヒドロフルフリルからなる1つまたは複数の混合物である。」 「 [図:0001407793000015.jpg] 」(段落[0102]) (抄訳文) 「装飾膜表面のダイン値 46 46 48 40 46 46 46 46 46 46 46 48 46 46」(表の最下項目) (4)乙12の記載事項 乙12には、以下の記載事項がある。 「 [図:0001407793000016.jpg] 」(請求項10) (抄訳文) 「3.前記高官能単量体は、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエイスリトールヘキサアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレートから選択される1つまたは複数である、ことを特徴とする講求項1に記載の塗料組成物。」 「 [図:0001407793000017.jpg] 」 (抄訳文) 「膜表面ダイン値 42~44 42~44 42~44」(表1の3つ目の項目) (5)乙13の記載事項 乙13には、以下の記載事項がある。 「 [図:0001407793000018.jpg] 」(請求項1) (抄訳文) 「1.析出防止塗布液は、光重合開始剤および改質UV光硬化性樹脂を含み、改質UV光硬化性樹脂は、8~12重量部のウレタンアクリレート、6~10重量部のウレタンアクリレート、および0~2重量部の有機ケイ素改質アクリル酸樹脂を含むことを特徴とする析出防止PET光学薄膜。」(請求項1の3~5行) 「 [図:0001407793000019.jpg] 」(請求項4) (抄訳文) 「4.前記析出防止塗布層の鉛筆硬度は2H~4Hであり、表面ダイン値は40より大きく、表面インピーダンスが1012Ω より小さく、水接触角が100°より大きいことを特徴とする、請求項3に記載の析出防止PET光学薄膜。」 (6)乙14の記載事項 乙14には、以下の記載事項がある。 「 [図:0001407793000020.jpg] 」(請求項1) (抄訳文) 「1.ポリウレタンアクリレートオリゴマーが30-70%、アクリレートモノマーが20-60%、・・・表面張力が48dyne/cm以上」(請求項1の2~3行) (7)乙15の記載事項 乙15には、以下の記載事項がある。 「 [図:0001407793000021.jpg] 」(55頁左欄6行~同欄8行) (抄訳文) 「原料の組成、助剤、コロナ条件等は、ポリプロピレンフィルムの表面改質とアルミフィルムの粘着効果に重要な影響を与える。」 「 [図:0001407793000022.jpg] 」(55頁右欄9行~同欄12行) (抄訳文) 「プラズマコロナは高圧放電を利用して、電極間の雰囲気で多量のプラズマを生成し、これらの励起状態の分子、ラジカル、またはイオン等はポリプロピレン分子鎖と反応することで、ポリプロピレン表面にヒドロキシ基、カルボキシ基、アミノ基等の極性基[8,12]を生成させる。」 「 [図:0001407793000023.jpg] 」(56頁左欄15行~同欄19行) (抄訳文) 「ポリプロピレンフィルムはコロナ処理過程で、その表面(30~50nm)分子鎖上に上記のような化学反応が生じる。図1に示される酸素含有極性物質を生成する過程で、分子鎖の断裂と分子量の減少に従って、水またはアルコールに溶性可能な低分子量の酸化物(LMWO)[15-16]が得られる。」 「 [図:0001407793000024.jpg] 」(56頁左欄下から3行行~同欄末行) (抄訳文) 「X線光電子分光法(XPS)と接触角測定を通じて、コロナ処理過程で膜表面O/C比が増加し続き、膜表面の表面エネルギーが向上する。」 (8)乙16の記載事項 乙16には、以下の記載事項がある。 「 [図:0001407793000025.jpg] 」(2頁16行~同頁19行) (抄訳文) 「コロナ法処理:コロナ法処理の原理は、薄膜が2つの電極の間を通過し、電極の間の高電圧により空気が電離し、電子流が生成され、それによって薄膜の表面に酸化極性基が形成されて、薄膜表面の極性が増加する。コロナ処理後、表面には多くの電子の放電痕が残り、同時にわずかな活性基が形成され、それにより薄膜の表面張力が増加し、表面の接着性が改善される。」 「 [図:0001407793000026.jpg] 」(2頁30行~同頁末行) (抄訳文) 「プラズマ法処理:プラズマは、部分的に電子を奪われた原子および電離された原子から生成された正負の電子から主に構成されるイオン化したガス状の物質である。プラズマは薄膜表面に衝突すると、薄膜表面の分子や原子に自己のエネルギーを伝達し、一連の物理的および化学的反応を引き起こすため、主に薄膜表面性能を改善して、基材内部に損傷を与えない[11]。」 (9)乙17の記載事項 乙17には、以下の記載事項がある。 「 [図:0001407793000027.jpg] 」(25頁左欄16行~同欄23行) (抄訳文) 「3.1.3 コロナ放電時、一定量のオゾンが生成される。このような条件の下、薄膜表面のポリエステル分子の一部のC-C結合とC-H結合がC-O結合とO-H結合に変化します。Paulingの電気陰性度相対値表【10】によれば、Oの電気陰性度は5.231、Cは3.79、Hは3.55であるため、新たに形成されたC-O結合とO-H結合は、元々のC-C結合とC-H結合よりも極性が大幅に高くなり、コロナ処理後のポリエステル薄膜表面層の極性が著しく向上される。」 (10)乙18の記載事項 乙18には、以下の記載事項がある。 「 [図:0001407793000028.jpg] 」(8頁4行~同頁11行) (抄訳文) 「低温プラズマ処理は、近年、PTFE微孔膜表面改質の急速な発展を遂げた技術の一つで、その原理は、低温プラズマ中の活性粒子がC-C結合とC-F結合の結合エネルギーよりも高いエネルギーを持っており、プラズマの衝撃作用により、PTFE微孔膜表面分子のC-C結合およびC-F結合の切断が引き起こされ、それにより自由基が生成し、エッチング作用や自由基の架橋作用、および活性官能基の導入反応が生じることで、表面張力と表面活性が向上する。この方法の利点は、他の方法と比較して、処理低温が低く、所要時間が短く、基材の固有特特性に影響を与えない。また、材料の特性に応じて異なるガス媒体を使用して処理でき、効率が高い。さらに、汚染を生じず、省エネルギーで、コストが低い。ただし、この方法には処理設備が高く、改質処理の効果維持時間が短いという欠点も存在する。」 4 判断 上記3(1)から、固体の表面エネルギーは、厚さには依存しないことが本件特許の優先日前に技術常識であったといえる。また、上記3(2)~(6)から、材料がエポキシアクリルポリマー、ウレタンアクリレート及びポリエステルアクリレートのうちの少なくとも一種であるポリマーの膜において、表面エネルギーが40mN/m以上であるものが存在することは、本件特許の優先日前に技術常識であったといえる これら技術常識を踏まえて、本件発明の特定事項Aが、発明の詳細な説明において、当業者が実施することが可能な程度に明確かつ十分に記載されているかを以下に検討する。 上記2の段落【0042】の記載によると、キャリア層と反射層との間の接着性を改善することにより、放射冷却膜全体の剥離強度を向上するための手段は、反射層を堆積又は貼り付ける前に、プラズマ方法及びコロナ方法でキャリア層の表面を、その表面エネルギーを40mN/m以上に増加させるように処理する手段(以下、「プラズマ方法及びコロナ方法で処理する手段」という。)と、キャリア層に表面エネルギーが40mN/m以上であるポリマー塗布層を設置する手段(以下、「ポリマー塗布層を設置する手段」という。)とを選択的に採用するものであることが説明されている。 そして、本件発明の特定事項Aは、ポリマー塗布層を設置する手段に該当し、上記2によると、本件特許の発明の詳細な説明には、表面エネルギーが40mN/m以上のポリマー塗布層として、材料がエポキシアクリルポリマー、ウレタンアクリレート及びポリエステルアクリレートのうちの少なくとも一種であり(段落【0043】)、厚さが3nm~200nmである(段落【0043】)ことが説明され、ポリマー塗布層の実施の形態として、実施形態5では、厚さが50nmであるエポキシアクリルの表面エネルギーが56mN/mであり(段落【0065】)、実施形態7では、厚さが10nmであるウレタンアクリレートの表面エネルギーが42mN/mであり(段落【0067】)、実施形態8では、厚さが100nmであるポリエステルアクリレートの表面エネルギーが47mN/mであり(段落【0068】)、実施形態9では、厚さが20nmであるポリエステルアクリレートの表面エネルギーが47mN/mであり(段落【0069】)、実施形態10では、厚さが50nmであるポリエステルアクリレートの表面エネルギーが42mN/mである(段落【0070】)ことが開示されている。 そして、乙9の記載事項から認められる技術常識及び乙10~乙14の記載事項から認められる技術常識を知り得た当業者であれば、本件発明の特定事項Aに含まれる、実施形態5及び7~10の表面エネルギーが40mN/m以上のポリマー塗布層は過度の試行錯誤をすることなく実施可能といえる。 そうすると、本件特許の発明の詳細な説明は、当業者が本件発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものである。 5 まとめ したがって、本件特許の請求項1~15に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たす特許出願に対してされたものであって、同法第113条第4号に該当しないから、当審が通知した取消理由によっては、取り消すことができない。 第6 取消理由通知(決定の予告)で採用しなかった特許異議申立理由について 1 特許異議申立理由の理由1(進歩性)について (1)理由1の概要 申立人は、甲第1号証~甲第3号証を提出し、理由1について概ね以下の主張をする。 本件発明1、5~10及び12~15は、甲第1号証に記載された発明に基いて、又は甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 また、本件発明11は、甲第1号証に記載された発明に基いて、又は甲第1号証に記載された発明、甲第2号証に記載された事項及び甲第3号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 よって、本件特許の請求項1及び5~15に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 [証拠方法] 甲第1号証:国際公開第2020/195743号明細書 甲第2号証:社団法人日本化学会編,「化学便覧 応用化学編」,第5版,平成7年3月15日発行,丸善株式会社,P.501 甲第3号証:国際公開第2020/022156号明細書 (以下、甲第1号証~甲第3号証を、「甲1」~「甲3」という。) (2)甲1~甲3について ア 甲1について (ア)甲1の記載事項 本件特許の優先日前に頒布された刊行物である甲1には、次の記載事項及び図示事項がある。 「[0008] 本発明の放射冷却装置は、放射面から赤外光を放射する赤外放射層と、当該赤外放射層における前記放射面の存在側とは反対側に位置させる光反射層とが設けられたものであって、その特徴構成は、 前記赤外放射層が、吸収した太陽光エネルギーよりも大きな熱輻射エネルギーを波長8μmから波長14μmの帯域で放つ厚みに調整された樹脂材料層である点にある。 [0009] すなわち、赤外放射層としての樹脂材料層の放射面から入射する太陽光は、樹脂材料層を透過した後、樹脂材料層の放射面の存在側とは反対側にある光反射層で反射され、放射面から系外へ逃がされる。 なお、本明細書の記載において、単に光と称する場合、当該光の概念には紫外光、可視光、赤外光を含む。これらを電磁波としての光の波長で述べると、その波長が10nmから20000nm(0.01μmから20μmの電磁波)の電磁波を含む。 [0010] また、放射冷却装置への伝熱(入熱)は、樹脂材料層で赤外線に変換されて、放射面から系外へ逃がされる。 このように、上記構成によれば、放射冷却装置へ照射される太陽光を反射し、また、放射冷却装置への伝熱(例えば、大気からの伝熱や、放射冷却装置が冷却する冷却対象物からの伝熱)を赤外光として系外へ放射することができる。 [0011] また、樹脂材料層が、吸収した太陽光エネルギーよりも大きな熱輻射エネルギーを波長8μmから波長14μmの帯域で放つ厚みに調整されているから、日射環境下においても、冷却機能を発揮することができる。 [0012] そして、樹脂材料層は、柔軟性の高い樹脂材料にて形成されることになるから、樹脂材料層に柔軟性を持たせることができる。ちなみに、光反射層は、例えば銀の薄膜として構成する等により、柔軟性を備えさせることができる。 したがって、樹脂材料層と光反射層とを備える放射冷却装置に柔軟性を持たせることができる。 [0013] 要するに、本発明の放射冷却装置の特徴構成によれば、柔軟性を持たせた放射冷却装置を提供することができる。」 「[0027] 本発明の放射冷却装置の更なる特徴構成は、前記樹脂材料層を形成する樹脂材料は、炭素-フッ素結合、シロキサン結合、炭素-塩素結合、炭素-酸素結合、エーテル結合、エステル結合、ベンゼン環のいずれかを1つ以上有する樹脂から選択される点にある。 [0028] すなわち、樹脂材料層を形成する樹脂材料として、炭素-フッ素結合(C-F)、シロキサン結合(Si-O-Si)、炭素-塩素結合(C-Cl)、炭素-酸素結合(C-O)、エーテル結合(R-COO-R)、エステル結合(C-O-C)、ベンゼン環のいずれかを1つ以上有する無色の樹脂材料を用いることができる。」 「[0031] 樹脂材料層を形成する樹脂材料の吸収スペクトルについて説明を加える。 炭素-フッ素結合(C-F)に関しては、CHFおよびCF2に起因する吸収係数が大気の窓である波長8μmから14μmにかけた広帯域に大きく広がっており、特に8.6μmで吸収係数が大きい。併せて、太陽光の波長帯域に関しては、エネルギーが大きな波長0.3-2.5μmで目立った吸収係数がない。 [0032] C-F結合を有する樹脂材料としては、 完全フッ素化樹脂であるポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、 部分フッ素化樹脂であるポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)およびポリフッ化ビニリデン(PVDF)およびポリフッ化ビニル(PVF)、 フッ素化樹脂共重合体であるペルフルオロアルコキシフッ素樹脂(PFA)、 四フッ化エチレン・六フッ化プロピレン共重合体(FEP)、 エチレン・四フッ化エチレン共重合体(ETFE)、 エチレン・クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)が挙げられる。 [0033] ポリフッ化ビニリデン(PVDF)を代表としての基本構造部のC-C結合、C-H結合、C-F結合の結合エネルギーを求めると、4.50eV、4.46eV、5.05eVとなる。それぞれ、波長0.275μm、波長0.278μm、波長0.246μmに対応し、これら波長より短波長側の光を吸収する。 太陽光スペクトルは波長0.300μmより長波しか存在しないため、フッ素樹脂を用いた場合、太陽光の紫外線、可視光線、近赤外線をほとんど吸収しない。 尚、紫外線は波長0.400μmよりも短波長側の範囲とし、可視光線は波長0.400μmから0.800μmの範囲とし、近赤外線は波長0.800μmから3μmの範囲とし、中赤外線は波長3μmから8μmの範囲とし、遠赤外線は波長8μmよりも長波長側の範囲とする。」 「[0042] 本発明の放射冷却装置の更なる特徴構成は、前記樹脂材料層の厚みが、10μm以上である点にある。 [0043] すなわち、炭素-フッ素結合(C-F)、炭素-塩素結合(C-Cl)、炭素-酸素結合(C-O)、エステル結合(R-COO-R)、エーテル結合(C-O-C)、ベンゼン環のいずれかが主たる構成要素の樹脂材料の場合、10μm以上の膜厚があると、大気の窓における輻射強度が大きくなって、太陽光の入力よりも放射冷却による出力の方が大きな状態を作り出すことができる。 [0044] 要するに、本発明の放射冷却装置の更なる特徴構成によれば、樹脂材料層を形成する樹脂材料が、炭素-フッ素結合(C-F)、炭素-塩素結合(C-Cl)、炭素-酸素結合(C-O)、エステル結合(R-COO-R)、エーテル結合(C-O-C)、ベンゼン環のいずれかが主たる構成要素の樹脂材料の場合において、太陽光の入力よりも放射冷却による出力の方が大きな状態を作り出すことができる。」 「[0080] 本発明の放射冷却装置の更なる特徴構成は、前記光反射層が、銀または銀合金で構成され、その厚みが50nm以上である点にある。 [0081] すなわち、光反射層に上述の反射率特性、つまり、波長0.4μmから0.5μmの反射率が90%以上、波長500nmより長波の反射率が96%以上である反射率特性を持たせるためには、光反射層における放射面側の反射材料としては、銀または銀合金である必要がある。 そして、銀または銀合金のみで前述の反射率特性を持たせた状態で太陽光を反射する場合、厚さが50nm以上必要である。 [0082] 要するに、本発明の放射冷却装置の更なる特徴構成によれば、光反射層よる太陽光エネルギーの吸収を的確に抑えて、樹脂材料層による放射冷却を良好に行うことができる。 [0083] 本発明の放射冷却装置の更なる特徴構成は、前記光反射層が、銀または銀合金とアルミまたはアルミ合金の積層構造である点にある。 [0084] すなわち、光反射層に前述の反射率特性を持たせるためには、銀または銀合金とアルミまたはアルミ合金を積層させた構造にしてもよい。なお、この場合も放射面側の反射材料は銀または銀合金である必要がある。この場合、銀の厚みは10nm以上必要であり、アルミの厚みは30nm以上必要である。」 「[0165] 銀または銀合金のみで太陽光を前記の反射率特性を持たせた状態で反射する場合、厚さが50nm以上必要である。 但し、光反射層Bに柔軟性を備えさせるためには、厚さを100μm以下にする必要がある。これ以上厚いと曲げにくくなる。 ちなみに、「銀合金」としては、銀に、銅、パラジウム、金、亜鉛、スズ、マグネシウム、ニッケル、チタンのいずれかを、例えば、0.4~4.5質量%程度添加した合金を用いることができる。具体例としては、銀に銅とパラジウムを添加して作成した銀合金である「APC-TR(フルヤ金属製)」を用いることができる。 [0166] 光反射層Bに上述の反射率特性を持たせるためには、銀または銀合金とアルミまたはアルミ合金を積層させた構造にしてもよい。尚、この場合においても、放射面Hの存在側(樹脂材料層Jの存在側)の反射材料は銀または銀合金である必要がある。 銀(銀合金)とアルミ(アルミ合金)の2層で構成する場合、銀の厚みは10nm以上必要であり、アルミの厚みは30nm以上必要である。 但し、光反射層Bに柔軟性を備えさせるためには、銀の厚さとアルミの厚さとの合計を100μm以下にする必要がある。これ以上厚いと曲げにくくなる。 [0167] ちなみに、「アルミ合金」としては、アルミに、銅、マンガン、ケイ素、マグネシウム、亜鉛、機械構造用炭素鋼、イットリウム、ランタン、ガドリニウム、テルビウムを添加した合金を用いることができる。 [0168] 銀および銀合金は風雨や湿度に弱くそれらから保護をする必要がある。そのために、図15~図18に示す如く、銀や銀合金に隣接させる形態で、銀の保護層Dが必要である。 銀の保護層Dは、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、酸化膜(SiO2、Al2O3)などを用いることができる。厚みは無機材料の場合、0.02μm以上、有機材料の場合、0.5μm以上が望ましい。無機材料の方が酸素の透過率が低いために、薄膜でも銀の保護として機能する。」 「[0172] (放射冷却装置の具体構成) 本発明の放射冷却装置CPは、図15~図18に示すように、フィルム構造にすることができる。樹脂材料層Jを形成する樹脂材料はもとより柔軟であるために、光反射層Bを薄膜にすると、光反射層Bにも柔軟性を備えさせることができ、その結果、放射冷却装置CPを柔軟性を備えるフィルム(放射冷却フィルム)とすることができる。 フィルム状の放射冷却装置CP(放射冷却フィルム)は、糊をつけて、車の外周、倉庫や建屋の外壁、・ヘルメットの外周にラッピングすることにより、放射冷却を発揮させる等、既設の物体に後付けして、容易に放射冷却能力を発揮させることができる。」 「[0179] 図17の放射冷却装置CP(放射冷却フィルム)の作成方法としては、PET(ポリエチレンテレフタラート)等にてフィルム状に形成されたフィルム層Fの上に、光反射層B、保護層Dを順次塗布して、一体的に成形し、保護層Dに対して、別途形成したフィルム状の樹脂材料層Jをのり層Nにて接着する方法を採用することができる。 のり層Nにて使用する接着剤は、例えば、アクリル系粘着剤、フッ素系粘着剤、シリコーン系粘着剤があり、太陽光に対して高い透明性を持つものが望ましい。なお接着剤としてよく用いられるウレタン系接着剤は紫外線劣化しやすいので適さない。」 「[図17] [図:0001407793000029.jpg] 」 (イ)上記(ア)から認められる認定事項 a 上記(ア)の段落[0172]及び[0179]の記載事項並びに図17の図示事項によれば、甲1には、積層して設置されたフィルム層F、光反射層B、保護層D、のり層N及び樹脂材料層Jを含むフィルム状の放射冷却装置CPが記載されている。 b 上記(ア)の各記載事項(特に、段落[0172]及び[0179]の記載事項並びに図17の図示事項)を参酌しても、フィルム状の放射冷却装置CPには、放射冷却粒子が添加されていないことが認められる。 c 上記(ア)の段落[0008]~[0010]、[0172]及び[0179]の記載事項並びに図17の図示事項によれば、によれば、樹脂材料層Jは、前記フィルム状の放射冷却装置CPの光入射側であることが認められる。 d 上記(ア)の段落[0031]及び[0044]の記載事項並びに図17の図示事項によれば、樹脂材料層Jの材料は、C-F結合を有する樹脂材料であることが認められる。 そして、上記(ア)の段落[0008]~[0011]の記載によれば、放射面から赤外光を放射する赤外放射層として機能し、熱輻射エネルギーを放つものであることが認められる。 e 上記(ア)の段落[0179]の記載事項及び図17の図示事項によれば、フィルム層Fの材料は、ポリエチレンテレフタレートであることが認められる。 f 上記(ア)の段落[0042]及び[0043]の記載事項並びに図17の図示事項によれば、樹脂材料層Jの厚さが10μm以上であることが認められる。 フィルム状の放射冷却装置CPの厚さについては、段落[0084]及び[0166]の記載事項から、光反射層Bの厚さが40nm以上100μmであることが認められ、段落[0168]の記載事項から、保護層Dの厚さが0.02μm以上であることが認められる。 g 上記(ア)の段落[0172]及び[0179]の記載事項並びに図17の図示事項によれば、保護層Dと樹脂材料層Jとの間にのり層Nが設置されることが認められる。 (ウ)甲1発明 上記(ア)及び(イ)を総合すると、甲1には、次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されているものと認める。 「積層して設置されたフィルム層F、光反射層B、保護層D、のり層N及び樹脂材料層Jを含むフィルム状の放射冷却装置CPにおいて、フィルム状の放射冷却装置CPには、放射冷却粒子が添加されず、前記樹脂材料層Jは、前記フィルム状の放射冷却装置CPの光入射側であり、前記樹脂材料層Jの材料は、C-F結合を有する樹脂材料であり、前記フィルム層Fの材料は、ポリエチレンテレフタレートであり、前記樹脂材料層Jの厚さが10μm以上であり、前記保護層Dと前記樹脂材料層Jとの間に前記のり層Nが設置された、フィルム状の放射冷却装置CP。」 イ 甲2について (ア)甲2の記載事項 本件特許の優先日前に頒布された刊行物である甲2には、次の記載事項がある。 「d. フッ素樹脂 フッ素樹脂の主要特性を他の汎用樹脂の特性とともに表12.24に示す.これらの特性を比蚊すると,フッ素樹脂は耐熱性,耐薬品性,耐候性,しゅう動性に優れ,絶縁材料としての電気特性の高い材料である。したがって,化学プラントの耐食ライニングや各種ガスケット,パツキングなどの材料として広く用いられるとともに,高耐候性塗料,電線被覆材,食塩電解用イオン交換膜に利用されている.」(II-501頁26行~同頁末行) ウ 甲3について (ア)甲3の記載事項 本件特許の優先日前に頒布された刊行物である甲3には、次の記載事項がある。 「[0001] 本発明は、放射面から赤外光を放射する赤外放射層と、当該赤外放射層における前記放射面の存在側とは反対側に位置させる光反射層とが積層状態で設けられた放射冷却装置に関する。」 「[0051] 本発明の放射冷却装置の更なる特徴構成は、前記赤外放射層の前記放射面が、光散乱用の凹凸を備える状態に形成されている点にある。 [0052] すなわち、赤外放射層の放射面が光散乱用の凹凸を備えているから、赤外放射層の放射面が着色されている状態、つまり、赤外放射層の放射面の存在側から放射冷却装置を見たときに着色されている状態を、放射面を様々な方向から見ても、適切に得ることができる。」 「[0057] 赤外放射層Aは、太陽光のエネルギーの強度が大きい400nm以上1800nm以下の波長(図26参照)についての透過率が高く(例えば、95%以上)、8μm以上14μm以下の波長範囲で大きな熱輻射を生じる材料がよい。 その具体例としては、無アルカリガラス、クラウンガラス、ホウケイ酸ガラスのうちのいずれかのガラス(白板ガラス)を挙げることができ、その他、オレフィン系樹脂、PET系樹脂、フッ素系樹脂、シリコン系樹脂、アクリル系樹脂、塩化ビニル系樹脂、塩化ビニリデン系樹脂等の樹脂を挙げることができる。」 「[0118](5)上記実施形態では、赤外放射層Aの放射面Hを平坦面に形成するものとして説明したが、図32に示すように、赤外放射層Aの放射面Hを、光散乱用の凹凸を備える状態に形成してもよい。 光散乱用の凹凸は、エンボス加工等により形成でき、赤外放射層Aをガラス(白板ガラス)にて構成する場合には、すりガラス加工により形成できる。 尚、図32は、光散乱用の凹凸を、実際よりも誇張して記載するものである。」 「[図32] [図:0001407793000030.jpg] 」 (3)本件発明1について ア 対比 本件発明1と甲1発明とを対比する。 ・後者の「フィルム層F」は、光反射層Bの下側に形成され、材料がC-O結合を含むポリエチレンテレフタレートであるから、前者の「キャリア層」に相当する。 また、後者の「光反射層B」は、前者の「反射層」に相当し、同様に、「フィルム状の放射冷却装置CP」は、「放射冷却膜」に相当する。 さらに、後者の「樹脂材料層J」は、放射面から赤外光を放射する赤外放射層として機能し、熱輻射エネルギーを放つものであるから、前者の「放射層」に相当する。 そうすると、後者の「積層して設置されたフィルム層F、光反射層B、保護層D、のり層N及び樹脂材料層Jを含むフィルム状の放射冷却装置CP」は、前者の「積層して設置されたキャリア層、反射層及び放射層を含む放射冷却膜」に相当する。 ・後者の「フィルム状の放射冷却装置CPには、放射冷却粒子が添加されず、前記樹脂材料層Jは、前記フィルム状の放射冷却装置CPの光入射側であ」ることは、前者の「放射冷却膜には、放射冷却粒子が添加されず、前記放射層は、前記放射冷却膜の光入射側であ」ることに相当する。 ・後者の「C-F結合を有する樹脂材料」は、前者の「C-F結合を含むポリマー」に相当する。 また、後者の「ポリエチレンテレフタレート」は、本件特許の明細書の段落【0036】の記載によれば、前者の「C-C結合及び/又はC-O結合を含むポリマー」に相当する。 そうすると、後者の「前記樹脂材料層Jの材料は、C-F結合を有する樹脂材料であり、前記フィルム層Fの材料は、ポリエチレンテレフタレートであ」ることは、前者の「前記放射層の材料は、C-F結合を含むポリマーであり、前記キャリア層の材料は、C-C結合及び/又はC-O結合を含むポリマーであ」ることに相当する。 そうすると、両者の間には、次の一致点及び相違点が認められる。 [一致点] 「積層して設置されたキャリア層、反射層及び放射層を含む放射冷却膜において、放射冷却膜には、放射冷却粒子が添加されず、前記放射層は、前記放射冷却膜の光入射側であり、前記放射層の材料は、C-F結合を含むポリマーであり、前記キャリア層の材料は、C-C結合及び/又はC-O結合を含むポリマーである、放射冷却膜。」 [相違点1] 本件発明1では、「前記キャリア層は、120℃で30分間置かれた後、横方向に熱収縮率が2%以下であり、縦方向に熱収縮率が3%以下であるという性質を持」つのに対して、甲1発明では、フィルム層Fがそのような事項を有しているか不明である点。 [相違点2] 本件発明1では、「前記放射冷却膜の厚さは、50μm~170μmであり、前記放射層の厚さが20%~90%を占め」るのに対して、甲1発明は、樹脂材料層Jの厚さが10μm以上との特定はあるが、フィルム状の放射冷却装置CPの厚み及びフィルム状の放射冷却装置CPの厚みにおける樹脂材料層Jの厚さの占める割合は特定されていない点。 [相違点3] 本件発明1では、「前記キャリア層と前記反射層との間にポリマー塗布層が設置され、前記ポリマー塗布層の表面エネルギーは、40mN/m以上であり、前記ポリマー塗布層の厚さは、3nm~200nmである」のに対して、甲1発明では、「前記保護層Dと前記樹脂材料層Jとの間に前記のり層Nが設置され」るものであって、フィルム層Fと光反射層Bとの間にのり層Nが設置されておらず、そのような事項を備えていない点。 イ 判断 事案に鑑み、上記相違点3について検討する。 上記(2)イ(ア)の甲2の記載事項は、フッ素樹脂が耐候性に優れることを示すものであり、上記相違点3に係る本件発明1の発明特定事項を備えるものではない。 また、上記(2)ウ(ア)の甲3の記載事項についても、赤外放射層と、当該赤外放射層における放射面の存在側とは反対側に位置させる光反射層とが積層状態で設けられた放射冷却装置において、前記赤外放射層の放射面が光散乱用の凹凸を備えていることを示すものあり、上記相違点3に係る本件発明1の発明特定事項を備えるものではない。 そうすると、甲1発明において、甲2の記載事項及び甲3の記載事項を適用することができたとしても、相違点3に係る本件発明1の発明特定事項とはならないから、甲1発明において相違点3に係る本件発明1の発明特定事項とすることは、当業者が容易になし得たことではない。 ウ 効果について そして、本件発明1は、相違点3の発明特定事項を備えることにより、「優れた冷却効果、耐候性及び機械的性質を有する放射冷却膜及びその製品を提供する。」(本件特許明細書の段落【0006】)という所期の効果を奏するものである。 エ まとめ したがって、本件発明1は、他の相違点1及び2の検討をするまでもなく、甲1発明及び甲2の記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (4)本件発明2~15について 本件発明2~10及び12~15は、いずれも本件発明1の発明特定事項を全て含むものであるから、上記(3)の検討を踏まえると、甲1発明及び甲2の記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 また、本件発明11についても、本件発明1の発明特定事項を全て含むものであるから、上記(3)の検討を踏まえると、甲1発明、甲2の記載事項及び甲3の記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (5)小括 上記(3)及び(4)の検討によると、本件特許の請求項1~15に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものとはいえず、取り消すことができない。 2 特許異議申立理由の理由2(サポート要件)について (1)理由2の概要 申立人は、理由2について概ね以下の主張をする。 本件発明の解決すべき課題は、従来の放射冷却膜において、放射冷却膜に含まれる放射冷却粒子が放射冷却膜の機械的特性や耐候性を低下させていたことに鑑み、優れた冷却効果、耐候性及び機械的特性を有する放射冷却膜及びその製品を提供することであるところ、本件明細書に記載された実験からは、放射層の厚みが50μm未満である場合やポリマー塗布層を有する場合について、耐候性が改善されることを理解できない。 したがって、放射層の厚みが50μm未満である態様を含み、また、ポリマー塗布層を有する本件発明は、発明の課題が解決できることを当業者が理解できるように記載されているとはいえない。 よって、本件の請求項1~15に係る特許は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。 (2)判断 本件発明の課題は、「本発明は、従来技術の問題を解決するために、優れた冷却効果、耐候性及び機械的性質を有する放射冷却膜及びその製品を提供する。」というものである。 そこで、本件発明1が、発明の詳細な説明において、本件発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を超えるものであるか否かを、以下に検討する。 本件特許の明細書の段落【0066】~【0068】には、次の記載事項があり、また、同明細書の段落【0085】には、次の表1が記載されている。 「【0066】 実施形態6 厚さが15μmであるポリエチレンテレフタレートフィルムをキャリア層として、キャリア層が120℃で30分間置いた後、横方向の熱収縮率が1.6%であり、縦方向の熱収縮率が1.8%であり、キャリア層の表面にプラズマ処理を行って、その表面エネルギーを42mN/mに達させ、次に該表面に厚さが50nmである銀反射層をマグネトロンスパッタリングした後、銀反射層から離れたキャリア層の表面にポリテトラフルオロエチレン樹脂をコーティングし、且つ厚さが35μmである放射層に硬化し、放射層がエンボス加工によって、表面に深さが0.5μmである正方形のエンボス構造を形成し、放射冷却膜を得る。 【0067】 実施形態7 厚さが20μmであるポリエチレンテレフタレートフィルムをキャリア層として、キャリア層が120℃で30分間置いた後、横方向の熱収縮率が1.5%であり、縦方向の熱収縮率が1.6%であり、キャリア層の表面に厚さが10nmであるウレタンアクリレートポリマー塗布層をコーティングし、表面エネルギーが42mN/mであり、且つキャリア層とポリマー塗布層の屈折率の差の絶対値が0.07である。次に、ポリマー塗布層に厚さが60nmである銀反射層をマグネトロンスパッタリングした後、銀反射層から離れたキャリア層の表面にポリテトラフルオロエチレン樹脂をコーティングし、且つ厚さが40μmである放射層に硬化し、放射層がエンボス加工によって、表面に深さが0.5μmである正方形のエンボス構造を形成し、放射冷却膜を得る。 【0068】 実施形態8 厚さが30μmであるポリエチレンテレフタレートフィルムをキャリア層として、キャリア層が120℃で30分間置いた後、横方向の熱収縮率が1.2%であり、縦方向の熱収縮率が1.4%であり、キャリア層の表面に厚さが100nmであるポリエステルアクリレートポリマー塗布層をコーティングし、表面エネルギーが47mN/mであり、且つキャリア層とポリマー塗布層の屈折率の差の絶対値が0.06である。次に、ポリマー塗布層に厚さが50nmである銀反射層及び厚さが50nmであるアルミニウム反射層をマグネトロンスパッタリングした後、銀反射層から離れたキャリア層の表面にポリテトラフルオロエチレン樹脂をコーティングし、且つ厚さが15μmである放射層に硬化し、放射層がエンボス加工によって、表面に深さが1μmである正方形のエンボス構造を形成し、放射冷却膜を得る。」 「 [図:0001407793000031.jpg] 」(段落【0085】の【表1】) 上記表1は、放射層の耐候性を剥離強度、破断伸長率、引張強度で評価したものである。 そして、本件発明の実施例は、ポリマー塗布層を含む実施形態5、7~10(但し、8は全体の厚みの点でのみ除かれる)であり、上記表1の記載から、剥離強度、破断伸長率、引張強度が、放射冷却粒子を含む比較例1~4と比べて、キセノンランプによる紫外線照射による劣化の前後とも大きい値を示し、耐候性に優れることが理解できる。 また、実施形態6の放射層の厚みが35μmのものや、実施形態7の放射層の厚みが40μmや、実施形態8の放射層の厚みが15μmのものであっても、比較例1~4の50μmより耐候性に優れることが確認され、本件発明において、放射層の厚みが50μm未満であっても、放射層の耐候性が優れるものと認められるから、放射層の厚みが1/5の10μm(段落【0023】に記載の下限値)の厚さであっても、耐候性が改善されると理解することができる。 そうすると、本件発明は、発明の詳細な説明において、本件発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を超えるものではない。 したがって、本件特許の請求項1~15に係る特許は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるとはいえず、取り消すことができない。 3 特許異議申立理由の理由3(明確性)について (1)理由3の概要 申立人は、甲第4号証を提出し、理由3について概ね以下の主張をする。 本件発明では、ポリマー塗布層の表面エネルギーが40mN/m以上であると規定されているが、本件明細書には、表面エネルギーの定義及びその測定方法に関する記載が一切ない。また、表面エネルギーの測定方法が複数あることが当業者の技術常識であるところ、当業者が複数の方法の中から特定の一つの方法を採用するとの技術常識もなく、いずれの方法を使用しても表面エネルギーが同じ測定値になるという技術常識も存在しない。したがつて、本件発明で規定されている表面エネルギーがどのように測定して得られる値であるかを特定することができないから、本件発明は不明確である。 よって、本件特許の請求項1~15に係る特許は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。 [証拠方法] 甲第4号証:畑 敏雄,「高分子の表面エネルギー」,高分子,32巻,9月号,1983年,p.648-653 (以下、甲第4号証を、「甲4」という。) (2)判断 ア 技術常識について 特許権者は、令和4年12月26日に、意見書とともに次の乙第1号証~乙第4号証を提出する。 乙第1号証:欧州特許第1467870号明細書及び抄訳文 乙第2号証:K.BRASCHブログ「ぬれ性チェック用ダインペンで表面エネルギー値を簡易的に判定」,K.BRASCH,2016 乙第3号証:米国特許第4936936号明細書及び抄訳文 乙第4号証:米国特許第5055346号明細書及び抄訳文 乙第1号証~乙第4号証(以下、「乙1」~「乙4」という。)には、以下の記載事項がある。 (ア)乙1について 乙1には、以下の記載事項がある。 「[0023] According to the method, a substrate is corona treated to raise the surface energy above 40 dynes/cm2 and preferably above 45 dynes/cm2. The print pattern is then applied by any suitable technique, such as screenprinting solvent based PVC ink. The pre-printed, patterned substrate is left for a time sufficient for the substrate surface energy to fall below a predetermined level, typically less than 40 dynes/cm2 and preferably less than 35 dynes/cm2, such that a subsequently applied design layer, typically of UV ink, does not form a durable image material on the substrate but does form a durable image material on the print pattern. The surface energy can be monitored by several means, including "dyne pens" of different gradings, such that when the ink from a dynes pen fails to "wet out" but forms into globules, the surface energy is less than the grading of the particular "dyne pen."」 (抄訳文) 「[0023] この方法によれば、基材をコロナ処理して、表面エネルギーを40dynes/cm2より高く、好ましくは45dynes/cm2より高くする。次に、溶剤ベースのPVCインクをスクリーン印刷するなどの任意の適切な技術によって、印刷パターンが適用される。プレ印刷され、パターン化された基板は、基板の表面エネルギーが所定のレベル、典型的には40dynes/cm2未満、好ましくは35dynes/cm2未満に低下するのに十分な時間放置され、その後適用される典型的にはUVインクのデザイン層が、基材上に耐久性のある画像材料を形成しないが、印刷パターン上に耐久性のある画像材料を形成するようにする。表面エネルギーは、ダインペンからのインクが「湿潤」せずに小球を形成する場合、表面エネルギーが特定の「ダインペン」の等級付けよりも低くなるように、さまざまな等級の「ダインペン」を含むいくつかの手段で監視することができる。」 (イ)乙2について 乙2には、以下の記載事項がある。 「「ダインペン|ぬれ性チェック用ダインペンで表面エネルギ値を簡易的に判定 2016/06/29」 「表面エネルギー値とは、インクやのり・ニス等が、プラスチックや金属の表面にどれだけ接造するか、すなわちぬれ性を測る基準です。 mN/m(ミリ・ニュートン・パー・メーター)という単位で表します。」 「ダインペン(テストペン)。テストインクは、表面エネルギー値(ダインレベル)を簡易的に判定するものです。 【使用方法】 例: 38mN/mのダインペン・インクを数センチ塗布し、その状態を2~4秒保つかを観察します: はじいて水滴になる場合、基材の表画エネルギーはその数値(38)以下ということです。 その場合、次は36mN/mを使ってみます。 同じ要領で、2~4秒で変化するレンジを探していきます。 例えば36mN/mは2~4秒保持するが、38mN/mではじく場合 その基材の表面エネルギー値は36以上38mN/m以下と判定されます。」 (ウ)乙3について 乙3には、以下の記載事項がある。 「To prevent sticking of the color coat layer to the surface of the polyester film when the roll is wound, it is preferred to coat the surface of the polyester film not in contact with the clear coat and color coat layer with a very thin layer of a low surface energy polymeric coating that has a surface energy of less than 42 dynes/cm and at least 4 dynes/cm less than the polyester film. Preferably, the coating has a surface energy of about 30-42 dynes/cm and has a dry film thickness of about 5-25 microns. The coating is applied as above by filling the coater 7 with the low surface energy coating composition and then applying the composition and heating as above. A typical low surface energy coating composition contains an alkyd resin or an acrylic modified alkyd resin, vinyl chloride/vinyl acetate/ vinyl alcohol polymer, crosslinked with a fully alkylated melamine resin. Polyethylene wax or polymethylsiloxane resin are added to adjust surface energy. An extender pigment such as aluminum silicate pigment is added to adjust roughness and a catalyst such as paratoluene sulfonic acid is added to improve cure response.」(第4欄21行~同欄41行) (抄訳文) 「ロールを巻き取ったときにカラーコート層がポリエステルフィルムの表面に付着するのを防ぐために、クリアコート及びカラーコート層と接触していないポリエステルフィルムの表面を、クリアコートおよびカラーコート層と接触していないポリエステルフィルムの表面を、表面エネルギーが42dynes/cm未満でポリエステルフィルムよりも少なくとも4dynes/cm低い低表面エネルギーポリマーコーテイングの非常に薄い層でコーティングすることが好ましい。好ましくは、コーティングは、約30~42dynes/cmの表面エネルギーを有し、約5~25ミクロンの乾燥膜厚を有する。コーティングは、コーター7に低表面エネルギーコーティング組成物を充填し、次いで組成物を塗布し、上記のように加熱することによって、上記のように塗布される。典型的な低表面エネルギーコーティング組成物は、完全にアルキル化されたメラミン樹脂で架橋されたアルキド樹脂又はアクリル変性アルキド樹脂、塩化ビニル/酢酸ビニル/ビニルアルコールポリマーを含む。ポリエチレンワックスやポリメチルシロキサン樹脂を添加して表面エネルギーを調整する。ケイ酸アルミニウム顔料などの体質顔料を添加して粗さを調整し、パラトルエンスルホン酸などの触媒を添加して硬化応答を改善する。」 (エ)乙4について 乙4には、以下の記載事項がある。 「To prevent sticking of the color coat layer to the surface of the polyester film when the roll is wound, it is preferred to coat the surface of the polyester film not in contact with the clear coat and color coat layer with a very thin layer of a low surface energy polymeric coating that has a surface energy of less than 42 dynes/cm and at least 4 dynes/cm less than the polyester film. Preferably, the coating has a surface energy of about 30-42 dynes/cm and has a dry film thickness of about 5-25 microns. The coating is applied as above by filling the coater 7 with the low surface energy coating composition and then applying the composition and heating as above. A typical low surface energy coating composition contains an alkyd resin or an acrylic modified alkyd resin, vinyl chloride/vinyl acetate/ vinyl alcohol polymer, crosslinked with a fully alkylated melamine resin. Polyethylene wax or polymethylsiloxane resin are added to adjust surface energy. An extender pigment such as aluminum silicate pigment is added to adjust roughness and a catalyst such as paratoluene sulfonic acid is added to improve cure response.」(第4欄23行~同欄43行) (抄訳文) 「ロールを巻き取ったときにカラーコート層がポリエステルフィルムの表面に付着するのを防ぐために、クリアコート及びカラーコート層と接触していないポリエステルフィルムの表面を、クリアコートおよびカラーコート層と接触していないポリエステルフィルムの表面を、表面エネルギーが42dynes/cm未満でポリエステルフィルムよりも少なくとも4dynes/cm低い低表面エネルギーポリマーコーテイングの非常に薄い層でコーティングすることが好ましい。好ましくは、コーティングは、約30~42dynes/cmの表面エネルギーを有し、約5~25ミクロンの乾燥膜厚を有する。コーティングは、コーター7に低表面エネルギーコーティング組成物を充填し、次いで組成物を塗布し、上記のように加熱することによって、上記のように塗布される。典型的な低表面エネルギーコーティング組成物は、完全にアルキル化されたメラミン樹脂で架橋されたアルキド樹脂又はアクリル変性アルキド樹脂、塩化ビニル/酢酸ビニル/ビニルアルコールポリマーを含む。ポリエチレンワックスやポリメチルシロキサン樹脂を添加して表面エネルギーを調整する。ケイ酸アルミニウム顔料などの体質顔料を添加して粗さを調整し、パラトルエンスルホン酸などの触媒を添加して硬化応答を改善する。」 乙1~乙4の記載事項によると、表面エネルギーの測定方法として、「ダインペン」を使用して測定する測定方法があることは、本件特許の優先日前に当業者にとって技術常識であったといえる。 イ 検討 上記アの技術常識を踏まえると、本件発明において、「ポリマー塗布層の表面エネルギー」がダインペンを使用した測定方法により測定されることは、当業者であれば技術常識から認識し得ることといえる。そうすると、本件明細書に表面エネルギーの定義及びその測定方法が明記されていないとしても、「ポリマー塗布層の表面エネルギー」は、当業者の通常の技術常識に基づく表面エネルギーの定義及び測定方法により得られるものであることは明確に理解できるものであるから、本件発明が、第三者が不測の不利益を被るおそれがある程度に不明確であるとはいえない。 そうすると、本件発明は明確である。 したがって、本件特許の請求項1~15に係る特許は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるとはいえず、取り消すことができない。 第7 むすび 以上のとおり、本件特許の請求項1~15に係る特許は、当審が通知した取消理由及び特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によっては、取り消すことができない。 また、他に本件特許の請求項1~15に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2022-700639

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