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特許異議申立

2022-700790

含フッ素ポリマーの製造方法及びその組成物

審判番号
2022-700790
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2020-178419
登録番号
7014987
請求日
2022年08月10日
審決日
2023年04月28日
公報発行日
2023年07月28日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】ダイキン工業株式会社
  • 【権利者代理人】弁理士法人三枝国際特許事務所
  • 【異議申立人】所 智恵子
審判長/審判官
  • 審判長 近野 光知
  • 審判官 藤井 勲
  • 審判官 小出 直也
分類
P1651.113-YAA(C08L) / P1651.121-YAA(C08L) / P1651.537-YAA(C08L)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法120条の8第1項特許法135条
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第1項第3号、特許法第113条第2号、特許法第36条第6項第1号、特許法第120条の5第1項、特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第2項、特許法第29条、特許法第120条の8第1項
データ出所
審決公報(XML)

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特許第7014987号発明「含フッ素ポリマーの製造方法及びその組成物」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7014987号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-9〕について訂正することを認める。 特許第7014987号の請求項1ないし3及び5ないし9に係る特許を維持する。 特許第7014987号の請求項4に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7014987号の請求項1ないし9に係る特許についての出願は、令和2年10月23日(優先権主張 令和1年11月1日 日本国)を出願日として出願人ダイキン工業株式会社(以下、「特許権者」という。)により出願されたものであって、令和4年1月25日にその特許権の設定登録がされ、同年2月15日に特許掲載公報が発行された。その後、令和4年8月10日に、特許異議申立人である所智恵子(以下「申立人」という。)により、「特許第7014987号の特許請求の範囲の請求項1ないし9に記載された発明についての特許を取り消すべきである。」という趣旨の本件特許異議の申立てがされた(以下、当該申立てを「申立て」という。)。 申立て以降の経緯は、次のとおりである。 令和4年10月31日付け 取消理由通知 同年12月28日 意見書(特許権者)の提出及び訂正の請求 令和5年 3月29日 意見書(申立人)の提出 第2 訂正の可否についての判断 1 訂正の内容 特許権者は、令和4年10月31日付け取消理由通知書において、特許法第120条の5第1項の規定により審判長が指定した期間内である令和4年12月28日に訂正請求書を提出し、本件特許の特許請求の範囲を訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり訂正後の請求項1~9について訂正することを求めた(以下、当該訂正請求書により請求された訂正を「本件訂正」という。また、設定登録時の本件特許の明細書を「本件明細書」という。)。 本件訂正の内容は、以下のとおりである(当審注:下線は当審にて付与した。)。 ア 訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に 「下記式(A3) 【化1】 [図:0001399374000001.jpg] [式中、R6~R9はそれぞれ独立して、フッ素原子、C1-C5のパーフルオロアルキル基、又はC1-C5のパーフルオロアルコキシ基を示す。] で表される構成単位を主成分として含む含フッ素ポリマー(A)、及び非プロトン性溶媒(B)を含有する組成物であって、 前記含フッ素ポリマー(A)は前記非プロトン性溶媒(B)に溶解し、前記非プロトン性溶媒(B)に溶解した前記含フッ素ポリマー(A)の含有量が前記組成物質量に対し20質量%~65質量%である、組成物。」 とあるのを、 「下記式(A3): 【化1】 [図:0001399374000002.jpg] [式中、R6~R9はそれぞれ独立して、フッ素原子、C1-C5のパーフルオロアルキル基、又はC1-C5のパーフルオロアルコキシ基を示す。] で表される構成単位を主成分として含む含フッ素ポリマー(A)、及び非プロトン性溶媒(B)を含有する組成物であって、 前記含フッ素ポリマー(A)は前記非プロトン性溶媒(B)に溶解し、 前記非プロトン性溶媒(B)に溶解した前記含フッ素ポリマー(A)の含有量が前記組成物質量に対し20質量%~65質量%であり、 前記非プロトン性溶媒(B)が、 パーフルオロトリアルキルアミン;パーフルオロアルカン; 式(B-1): F(CF2)pO(CH2)qH (B-1) [式中、pは1~6の整数であり、qは1~4の整数である。] で表わされる化合物; 式(B-2): H(CF2)pO(CF2)qF (B-2) [式中、p及びqは前記と同意義である。] で表わされる化合物; 式(B-3): H(CF2)pO(CH2)qH (B-3) [式中、p及びqは前記と同意義である。] で表わされる化合物; 式(B-4): X(CF2)pCH2O(CF2)qH (B-4) [式中、Xはフッ素原子又は水素原子を表し、p及びqは前記と同意義である。] で表わされる化合物; (CF3)2CHOCH3;(CF3)2CFOCH3;CF3CHFCF2OCH3;CF3CHFCF2OCF3;及び 式(B-5): R21-O-R22 (B-5) [式中、R21は、一つ以上の水素原子がフッ素原子に置換されている直鎖状又は分岐鎖状のプロピル又はブチルであり、R22は、メチル又はエチルである。] で表される化合物; からなる群より選択される少なくとも1種である、 組成物。」 に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2、3及び5~9も同様に訂正する。但し、請求項3は後記の訂正事項2に示すとおりに訂正する。)。 イ 訂正事項2 特許請求の範囲の請求項3に 「前記非プロトン性溶媒(B)が、パーフルオロ芳香族化合物、パーフルオロトリアルキルアミン、パーフルオロアルカン、ハイドロフルオロカーボン、パーフルオロ環状エーテル、ハイドロフルオロエーテル、及び少なくとも一つの塩素原子を含むオレフィン化合物からなる群から選択される少なくとも一種の溶媒である請求項1又は2のいずれか一項に記載の組成物。」 とあるのを、 「前記非プロトン性溶媒(B)が、パーフルオロトリアルキルアミン及びパーフルオロアルカンからなる群から選択される少なくとも一種の溶媒である請求項1又は2のいずれか一項に記載の組成物。」 に訂正する(請求項3の記載を引用する請求項5及び8~9も同様に訂正する。)。 ウ 訂正事項3 特許請求の範囲の請求項4を削除する。 エ 訂正事項4 特許請求の範囲の請求項5に 「前記非プロトン性溶媒(B)の地球温暖化係数(GWP)が400以下である請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。」 とあるのを 「前記非プロトン性溶媒(B)の地球温暖化係数(GWP)が400以下である請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。」 に訂正する。 オ 訂正事項5 特許請求の範囲の請求項6に 「前記非プロトン性溶媒(B)が、 式(B-1): F(CF2)pO(CH2)qH (B-1) [式中、pは1~6の整数であり、qは1~4の整数である。] で表わされる化合物、 式(B-2): H(CF2)pO(CF2)qF (B-2) [式中、p及びqは前記と同意義である。] で表わされる化合物、 式(B-3): H(CF2)pO(CH2)qH (B-3) [式中、p及びqは前記と同意義である。] で表わされる化合物、 式(B-4): X(CF2)pCH2O(CF2)qH (B-4) [式中、Xはフッ素原子又は水素原子を表し、p及びqは前記と同意義である。] で表わされる化合物、 (CF3)2CHOCH3、(CF3)2CFOCH3、CF3CHFCF2OCH3、及びCF3CHFCF2OCF3からなる群より選択される少なくとも1種のハイドロフルオロエーテルである請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物。」 とあるのを 「前記非プロトン性溶媒(B)が、 式(B-1): F(CF2)pO(CH2)qH (B-1) [式中、pは1~6の整数であり、qは1~4の整数である。] で表わされる化合物、 式(B-2): H(CF2)pO(CF2)qF (B-2) [式中、p及びqは前記と同意義である。] で表わされる化合物、 式(B-3): H(CF2)pO(CH2)qH (B-3) [式中、p及びqは前記と同意義である。] で表わされる化合物、 式(B-4): X(CF2)pCH2O(CF2)qH (B-4) [式中、Xはフッ素原子又は水素原子を表し、p及びqは前記と同意義である。] で表わされる化合物、 (CF3)2CHOCH3、(CF3)2CFOCH3、CF3CHFCF2OCH3、及びCF3CHFCF2OCF3からなる群より選択される少なくとも1種のハイドロフルオロエーテルである請求項1、2及び5のいずれか一項に記載の組成物。」 に訂正する。 カ 訂正事項6 特許請求の範囲の請求項7に 「前記非プロトン性溶媒(B)が、式(B-5): R21-O-R22 (B-5) [式中、R21は、一つ以上の水素原子がフッ素原子に置換されている直鎖状又は分岐鎖状のプロピル又はブチルであり、R22は、メチル又はエチルである。] で表される化合物 である請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物。」 とあるのを 「前記非プロトン性溶媒(B)が、式(B-5): R21-O-R22 (B-5) [式中、R21は、一つ以上の水素原子がフッ素原子に置換されている直鎖状又は分岐鎖状のプロビル又はブチルであり、R22は、メチル又はエチルである。] で表される化合物 である請求項1、2及び5のいずれか一項に記載の組成物。」 に訂正する。 キ 訂正事項7 特許請求の範囲の請求項8に 「前記式(A3)で表される構成単位が、下記式(A3-l) 【化2】 [図:0001399374000003.jpg] で表される構成単位である、請求項1~7のいずれか一項に記載の組成物。」 とあるのを 「前記式(A3)で表される構成単位が、下記式(A3-1): 【化2】 [図:0001399374000004.jpg] で表される構成単位である、請求項1~3及び5~7のいずれか一項に記載の組成物。」 に訂正する。 ク 訂正事項8 特許請求の範囲の請求項9に 「前記含フッ素ポリマー(A)中の全ての構成単位における前記式(A3)で表される構成単位の割合が80モル%以上である、請求項1~8のいずれか一項に記載の組成物。」 とあるのを 「前記含フッ素ポリマー(A)中の全ての構成単位における前記式(A3)で表される構成単位の割合が80モル%以上である、請求項1~3及び5~8のいずれか一項に記載の組成物。」 に訂正する。 本件訂正前の請求項1~9は、請求項2~9が、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する関係にあるから、本件訂正は、一群の請求項について請求されたものである。 2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の有無について 検討するにあたり、本件訂正の請求項1における「パーフルオロトリアルキルアミン;パーフルオロアルカン; 式(B-1): F(CF2)pO(CH2)qH (B-1) [式中、pは1~6の整数であり、qは1~4の整数である。] で表わされる化合物; 式(B-2): H(CF2LpO(CF2)qF (B-2) [式中、p及びqは前記と同意義である。] で表わされる化合物; 式(B-3): H(CF2)pO(CH2)qH (B-3) [式中、p及びqは前記と同意義である。] で表わされる化合物; 式(B-4): X(CF2)pCH2O(CF2)qH (B-4) [式中、Xはフッ素原子又は水素原子を表し、p及びqは前記と同意義である。] で表わされる化合物; (CF3)2CHOCH3;(CF3)2CFOCH3;CF3CHFCF2OCH3;CF3CHFCF2OCF3;及び 式(B-5): R21-O-R22 (B-5) [式中、R21は、一つ以上の水素原子がフッ素原子に置換されている直鎖状又は分岐鎖状のプロピル又はブチルであり、R22は、メチル又はエチルである。] で表される化合物」を、以下「非プロトン性化合物」という。 ア 訂正事項1について 訂正事項1は、本件訂正前の請求項1における「非プロトン性溶媒(B)」を、「非プロトン性化合物」に、より具体的に特定して限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、実質上の特許請求の範囲の拡張・変更に当たらない。 また、訂正事項1における「非プロトン性化合物」については、訂正前の請求項3、6、7、及び段落【0046】、【0048】、【0049】、【0052】~【0054】において記載されていることから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲に記載した事項の範囲内の訂正である。 よって、訂正事項1は、本件明細書に記載された事項であって、新規事項の追加に該当しない。 イ 訂正事項2 訂正事項2は、訂正前の請求項3から、択一的に記載されていた「パーフルオロ芳香族化合物」、「ハイドロフルオロカーボン、パーフルオロ環状エーテル、ハイドロフルオロエーテル、及び少なくとも一つの塩素原子を含むオレフィン化合物」を削除するものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とし、実質上の特許請求の範囲の拡張・変更に当たらない。 よって、訂正事項2は、本件明細書に記載された事項であって、新規事項の追加にあたらない。 ウ 訂正事項3 訂正事項3は、請求項4を削除するというものであるから、当該訂正事項3は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。 また、訂正前の請求項4を削除するものであるから、本件明細書に記載した事項の範囲内でされたものであり、新規事項の追加に該当しない。 エ 訂正事項4~8 訂正事項4~8は、訂正前の請求項5~9のそれぞれが引用する請求項を減らすものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、実質上の特許請求の範囲の拡張・変更に当たらない。 また、訂正前の請求項5~9のそれぞれがもともと引用していた請求項のうち、上記ウにより削除された訂正前の請求項4を除くものであり、さらに訂正前の請求項6、7のそれぞれがもともと引用していた請求項のうち、上記ア、イにより引用関係が解消した請求項3を除くものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲に記載した事項の範囲内の訂正であり、新規事項の追加に該当しない。 3 独立特許要件の規定について 本件においては、本件訂正前の請求項1~9について特許異議の申立てがされているので、本件訂正に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の独立特許要件が課される請求項はない。 4 小括 よって、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる目的に適合し、また、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するから、本件訂正を認める。 第3 本件訂正後の本件発明 本件訂正請求により訂正された請求項1~請求項9に係る発明(以下、順に「本件発明1」のようにいい、これらをまとめて、「本件発明」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1~9に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。 「【請求項1】 下記式(A3) 【化1】 [図:0001399374000005.jpg] [式中、R6~R9はそれぞれ独立して、フッ素原子、C1-C5のパーフルオロアルキル基、又はC1-C5のパーフルオロアルコキシ基を示す。] で表される構成単位を主成分として含む含フッ素ポリマー(A)、及び非プロトン性溶媒(B)を含有する組成物であって、 前記含フッ素ポリマー(A)は前記非プロトン性溶媒(B)に溶解し、 前記非プロトン性溶媒(B)に溶解した前記含フッ素ポリマー(A)の含有量が前記組成物質量に対し20質量%~65質量%であり、 前記非プロトン性溶媒(B)が、 パーフルオロトリアルキルアミン;パーフルオロアルカン; 式(B-1): F(CF2)pO(CH2)qH (B-1) [式中、pは1~6の整数であり、qは1~4の整数である。] で表わされる化合物; 式(B-2): H(CF2)pO(CF2)qF (B-2) [式中、p及びqは前記と同意義である。] で表わされる化合物; 式(B-3): H(CF2)pO(CH2)qH (B-3) [式中、p及びqは前記と同意義である。] で表わされる化合物; 式(B-4): X(CF2)pCH2O(CF2)qH (B-4) [式中、Xはフッ素原子又は水素原子を表し、p及びqは前記と同意義である。] で表わされる化合物; (CF3)2CHOCH3;(CF3)2CFOCH3;CF3CHFCF2OCH3;CF3CHFCF2OCF3;及び 式(B-5): R21-O-R22 (B-5) [式中、R21は、一つ以上の水素原子がフッ素原子に置換されている直鎖状又は分岐鎖状のプロピル又はブチルであり、R22は、メチル又はエチルである。] で表される化合物; からなる群より選択される少なくとも1種である、 組成物。 【請求項2】 前記非プロトン性溶媒(B)に溶解した前記含フッ素ポリマー(A)の含有量が前記組成物質量に対し20質量%超~65質量%の範囲内である、請求項1に記載の組成物。 【請求項3】 前記非プロトン性溶媒(B)が、パーフルオロトリアルキルアミン及びパーフルオロアルカンからなる群から選択される少なくとも一種の溶媒である請求項1又は2のいずれか一項に記載の組成物。 【請求項4】 (削除) 【請求項5】 前記非プロトン性溶媒(B)の地球温暖化係数(GWP)が400以下である請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。 【請求項6】 前記非プロトン性溶媒(B)が、 式(B-1): F(CF2)pO(CH2)qH (B-1) [式中、pは1~6の整数であり、qは1~4の整数である。] で表わされる化合物、 式(B-2): H(CF2)pO(CF2)qF (B-2) [式中、p及びqは前記と同意義である。] で表わされる化合物、 式(B-3): H(CF2)pO(CH2)qH (B-3) [式中、p及びqは前記と同意義である。] で表わされる化合物、 式(B-4): X(CF2)pCH2O(CF2)qH (B-4) [式中、Xはフッ素原子又は水素原子を表し、p及びqは前記と同意義である。] で表わされる化合物、 (CF3)2CHOCH3、(CF3)2CFOCH3、CF3CHFCF2OCH3、及びCF3CHFCF2OCF3からなる群より選択される少なくとも1種のハイドロフルオロエーテルである請求項1、2及び5のいずれか一項に記載の組成物。 【請求項7】 前記非プロトン性溶媒(B)が、式(B-5): R21-O-R22 (B-5) [式中、R21は、一つ以上の水素原子がフッ素原子に置換されている直鎖状又は分岐鎖状のプロピル又はブチルであり、R22は、メチル又はエチルである。] で表される化合物 である請求項1、2及び5のいずれか一項に記載の組成物。 【請求項8】 前記式(A3)で表される構成単位が、下記式(A3-1): 【化2】 [図:0001399374000006.jpg] で表される構成単位である、請求項1~3及び5~7のいずれか一項に記載の組成物。 【請求項9】 前記含フッ素ポリマー(A)中の全ての構成単位における前記式(A3)で表される構成単位の割合が80モル%以上である、請求項1~3及び5~8のいずれか一項に記載の組成物。」 第4 特許異議申立書の申立理由と当審が通知した取消理由 1 特許異議申立書(以下「申立書」ということがある。)の申立理由 (1)申立理由1(新規性、進歩性) 本件訂正前の請求項1~4、8及び9に係る発明は、甲第1号証に記載された発明であるので、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、又は甲第1号証に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許受けることができないものであるから、本件訂正前の請求項1~4、8及び9に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 (2)申立理由2(進歩性) 本件訂正前の請求項3~7に係る発明は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証、甲第3号証に記載された発明又は事項に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件訂正前の請求項3~7に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 2 証拠方法 (1)申立人が、申立書に添付した証拠は、以下のとおりである。 甲第1号証:Frantisek Mikesら、「Synthesis and Characterization of an Amorphous Perfluoropolymer:Poly(perfluoro-2-methylene-4-methyl-1,3-dioxolane)」、Macromolecules 2005, 38, 4237-4245 及び訳文 甲第2号証:国際公開第2018/043165号 甲第3号証:独立行政法人日本学術振興会・フッ素化学第155委員会「フッ素化学入門2010 基礎と応用の最前線」三共出版株式会社、2010年4月20日発行 甲第4号証:特開2020-122068号公報 以下、甲第1号証~甲第4号証を、「甲1」などという。 3 当審が通知した令和4年10月31日付け取消理由通知の理由 本件特許の請求項1ないし9に係る特許に対して、当審が令和4年10月31日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は次の(1)ないし(3)のとおりである。なお、取消理由2、3は、上記申立理由のうち、申立理由1を包含する。 (1)取消理由1(サポート要件) 本件特許の請求項1ないし3、5、8及び9に係る特許は、下記のとおり特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。 記 ア 本件発明1において、「非プロトン性溶媒」は、解離して容易にプロトン(H+)を放出しない溶媒であるから(岩波 理化学辞典、第5版、第1216頁、「プロトン性溶媒」の項を参照)、本件発明1における「非プロトン性溶媒」には、上記「パーフルオロ溶媒」及び「非パーフルオロ溶媒」の他に、例えば、フッ素を含有しない液状の炭化水素、エーテル化合物、エステル化合物など種々の溶媒が包含されるものと解され、本件発明1の(A3)で表される構成単位を主成分として含む「含フッ素ポリマー(A)」は、「非プロトン性溶媒(B)」の構造や極性などによって、溶解度パラメータが異なり、単一のポリマーであっても溶解度が変わり、「非プロトン性溶媒(B)」の種類によって溶解度が変わるというのが本願出願時の技術常識であると解されるところ、本件明細書には、上述のように、(A3)で表される構成単位を主成分として含む「含フッ素ポリマー(A)」を、一部のパーフルオロ溶媒や非パーフルオロ溶媒に、組成物質量に対し高濃度で溶解して含有することが記載されているにとどまり、任意の「非プロトン性溶媒(B)」であっても「含フッ素ポリマー(A)」を溶解して高濃度で含有することが記載されているとは解せない(以下、「取消理由1ア」という。)。 イ 本件発明3における「非プロトン性溶媒(B)」のうち、非パーフルオロ溶媒である「ハイドロフルオロカーボン」及び「塩素原子を含むオレフィン化合物」を用いた具体例は示されておらず、本件明細書の段落【0050】及び【0055】には、「ハイドロフルオロカーボン」及び「塩素原子を含むオレフィン化合物」が例示されているが、これらの化合物が上記(A3)で表される構造単位を主成分として含む「含フッ素ポリマー(A)」に20~65質量%の含有量で溶解することを当業者が認識できる作用機序は示されていないし、段落【0009】及び【0046】には、非パーフルオロ溶媒は含フッ素ポリマーを溶解しがたいと考えられていたことも記載されており、さらに、「含フッ素ポリマー(A)」は、「非プロトン性溶媒(B)」の構造や極性などによって溶解度パラメータが異なり、単一のポリマーであっても溶解度が変わることが本願出願時の技術常識と解されるから、実施例を参酌して、「ハイドロフルオロカーボン」及び「少なくとも一つの塩素原子を含むオレフィン化合物」であっても、上記(A3)で表される構造単位を主成分として含む「含フッ素ポリマー(A)」を20~65質量%の含有量で溶解することを推認することもできない(以下、「取消理由1イ」という。)。 (2)取消理由2(甲1を主引例とする新規性) 本件特許の請求項1ないし4、8、9に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲1に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、本件特許の上記請求項に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 (3)取消理由3(甲1を主引例とする進歩性) 本件特許の請求項1ないし5、8、9に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲1に記載された発明に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の上記請求項に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 第5 当審の判断 1 取消理由1(サポート要件)について (1)サポート要件の判断基準 特許請求の範囲の記載が、サポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。 (2)特許請求の範囲の記載 本件特許の特許請求の範囲の記載は、上記第3のとおりである。 (3)発明の詳細な説明の記載 本件発明1では、「式(A3)(式は省略する、以下、同様)で表される構成単位を主成分として含む含フッ素ポリマー(A)」と「非プロトン性溶媒(B)」とを含有する「組成物」であって、「非プロトン性溶媒(B)」に溶解した「含フッ素ポリマー(A)」の含有量が「組成物」質量に対し20質量%~65質量%であることが特定されている。 そこで、本件発明1の「非プロトン性溶媒(B)」について、本件明細書及び実施例には、以下の技術事項が記載されている。 「【0005】 本開示は、含フッ素ポリマーの製造方法及びその組成物を提供することを主な目的とする。」 「【0009】 本開示によれば、非プロトン性溶媒中で高濃度(特に、20質量%以上)で溶解可能な、含フッ素脂肪族環を有する構成単位を主成分として含む含フッ素ポリマーの製造方法が提供される。本開示によれば、含フッ素脂肪族環を有する構成単位を主成分として含む含フッ素ポリマーが非プロトン性溶媒に高濃度(特に、20質量%以上)で溶解した組成物が提供される。本開示によれば、非パーフルオロ溶媒には溶解しがたいと考えられていた前記式(A3)で表される構成単位を主成分として含む含フッ素ポリマーと非パーフルオロ溶媒を含む組成物であって当該含フッ素ポリマーが溶解した組成物が提供され得る。」 「【0017】 組成物 本開示の一実施態様は、含フッ素脂肪族環を有する構成単位を主成分として含む含フッ素ポリマー(A)及び非プロトン性溶媒(B)を含有する組成物である。当該組成物は液状であり、且つ、含フッ素ポリマー(A)は溶解していることが好ましい。 ・・・」 「【0046】 非プロトン性溶媒(B) 本開示の組成物は、非プロトン性溶媒(B)を含有する。非プロトン性溶媒としては、パーフルオロ溶媒及び非パーフルオロ溶媒からなる群から選択される少なくとも一種を挙げることができる。 パーフルオロ溶媒は、非プロトン性溶媒のうち、フッ素原子及び炭素原子を含み水素原子を含まない溶媒である。パーフルオロ溶媒としては、パーフルオロ芳香族化合物、パーフルオロトリアルキルアミン、パーフルオロアルカン、パーフルオロ環状エーテルなどが挙げられる。パーフルオロ溶媒は、1種単独又は2種以上組み合わせて使用できる。 非パーフルオロ溶媒は、非プロトン性溶媒のうち、フッ素原子、炭素原子及び水素原子を含む溶媒である。非パーフルオロ溶媒としては、ハイドロフルオロカーボン、ハイドロフルオロエーテル、及び少なくとも一つの塩素原子を含むオレフィン化合物などが挙げられる。非パーフルオロ溶媒は、1種単独又は2種以上組み合わせて使用できる。非パーフルオロ溶媒は、地球温暖化係数が概してパーフルオロ溶媒より低いため、環境負荷の点からすれば、好ましい溶媒である。一方で、非パーフルオロ溶媒は、フッ素ポリマーを溶解させる性能が低いと考えられていたが、構成単位(A3)を主成分として含むポリマーを溶解できることを本発明者らは見出した。 ・・・ 【0048】 パーフルオロトリアルキルアミンは、例えば、3つの直鎖状又は分岐状のパーフルオロアルキル基で置換されたアミンである。当該パーフルオロアルキル基の炭素数は例えば1~10であり、好ましくは1~5、より好ましくは1~4である。当該パーフルオロアルキル基は同一又は異なっていてもよく、同一であることが好ましい。 パーフルオロトリアルキルアミンの例は、パーフルオロトリメチルアミン、パーフルオロトリエチルアミン、パーフルオロトリプロピルアミン、パーフルオロトリイソプロピルアミン、パーフルオロトリブチルアミン、パーフルオロトリsec-ブチルアミン、パーフルオロトリtert-ブチルアミン、パーフルオロトリペンチルアミン、パーフルオロトリイソペンチルアミン、パーフルオロトリネオペンチルアミンを包含する。 パーフルオロトリアルキルアミンの好ましい例は、パーフルオロトリプロピルアミン、パーフルオロトリブチルアミンを包含する。 【0049】 パーフルオロアルカンは、例えば、直鎖状、分岐状、又は環状のC3-C12(好ましくはC3-C10、より好ましくはC3-C6)パーフルオロアルカンである。 パーフルオロアルカンの例は、パーフルオロペンタン、パーフルオロ-2-メチルペンタン、パーフルオロヘキサン、パーフルオロ-2-メチルヘキサン、パーフルオロへプタン、パーフルオロオクタン、パーフルオロノナン、パーフルオロデカン、パーフルオロシクロヘキサン、パーフルオロ(メチルシクロヘキサン)、パーフルオロ(ジメチルシクロヘキサン)(例:パーフルオロ(1,3-ジメチルシクロヘキサン))、パーフルオロデカリンを包含する。 パーフルオロアルカンの好ましい例は、パーフルオロペンタン、パーフルオロヘキサン、パーフルオロへプタン、パーフルオロオクタンを包含する。 ・・・ 【0052】 ハイドロフルオロエーテルは、例えば、フッ素含有エーテルである。 ハイドロフルオロエーテルの地球温暖化係数(GWP)は600以下が好ましく、400以下がより好ましく、300以下が特に好ましい。ハイドロフルオロエーテルの地球温暖化係数(GWP)の下限は1以上であっても5以上であってもよい。 ハイドロフルオロエーテルの例は、CF3CF2CF2CF2OCH3、CF3CF2CF(CF3)OCH3、CF3CF(CF3)CF2OCH3、CF3CF2CF2CF2OC2H5、CF3CH2OCF2CHF2、C2F5CF(OCH3)C3F7、(CF3)2CHOCH3、(CF3)2CFOCH3、CHF2CF2OCH2CF3、CHF2CF2CH2OCF2CHF2、CF3CHFCF2OCH3、CF3CHFCF2OCF3、トリフルオロメチル1,2,2,2-テトラフルオロエチルエーテル(HFE-227me)、ジフルオロメチル1,1,2,2,2-ペンタフルオロエチルエーテル(HFE-227mc)、トリフルオロメチル1,1,2,2-テトラフルオロエチルエーテル(HFE-227pc)、ジフルオロメチル2,2,2-トリフルオロエチルエーテル(HFE-245mf)、2,2-ジフルオロエチルトリフルオロメチルエーテル(HFE-245pf)、1,1,2,3,3-ヘキサフルオロプロピルメチルエーテル(CF3CHFCF2OCH3)、1,1,1,2,2-テトラフルオロエチル2,2,2-トリフルオロエチルエーテル(CHF2CF2OCH2CF3)、及び1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-メトキシプロパン((CF3)2CHOCH3)を含む。 ハイドロフルオロエーテルの好ましい例は、CF3CF2CF2CF2OCH3、CF3CF2CF2CF2OC2H5、CF3CH2OCF2CHF2、C2F5CF(OCH3)C3F7、1,1,2,3,3-ヘキサフルオロプロピルメチルエーテル(CF3CHFCF2OCH3)、1,1,1,2,2-テトラフルオロエチル2,2,2-トリフルオロエチルエーテル(CHF2CF2OCH2CF3)、及び1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-メトキシプロパン((CF3)2CHOCH3)を包含する。 【0053】 ハイドロフルオロエーテルは、下記式(B-1)で表わされる化合物、下記式(B-2)で表される化合物、下記式(B-3)で表わされる化合物、下記式(B-4)で表される化合物、(CF3)2CHOCH3、(CF3)2CFOCH3、CF3CHFCF2OCH3、及びCF3CHFCF2OCF3からなる群より選択される少なくとも1種であってよい。 式(B-1): F(CF2)pO(CH2)qH (B-1) [式中、pは1~6の整数であり、qは1~4の整数である。] 式(B-2): H(CF2)pO(CF2)qF (B-2) [式中、p及びqは前記と同意義である。] 式(B-3): H(CF2)pO(CH2)qH (B-3) [式中、p及びqは前記と同意義である。] 式(B-4): X(CF2)pCH2O(CF2)qH (B-4) [式中、Xはフッ素原子又は水素原子を表し、p及びqは前記と同意義である。] 【0054】 ハイドロフルオロエーテルは、下記式(B-5): R21-O-R22 (B-5) [式中、R21は、一つ以上の水素原子がフッ素原子に置換されている直鎖状又は分岐鎖状のプロピル又はブチルであり、R22は、メチル又はエチルである。] で表される化合物がより好ましい。式(B-5)で表わされる化合物は、R21がパーフルオロブチルであり、R22がメチル又はエチルである、化合物であってよい。 ・・・ 【0056】 非プロトン性溶媒(B)としては、使用時の環境負荷が小さく、ポリマーからの留去が容易なことから、ハイドロフルオロエーテルが好ましい。 【0057】 非プロトン性溶媒(B)の地球温暖化係数(GWP)は600以下、400以下等とでき、375以下が好ましく、350以下がより好ましく、0が特に好ましい。非プロトン性溶媒(B)の地球温暖化係数(GWP)の下限は1以上であっても5以上であってもよい。 【0058】 本開示の組成物において、前記組成物質量に対する非プロトン性溶媒(B)の含有量は80質量%以下とできる。好ましくは35質量%~80質量%の範囲内、より好ましくは35質量%~80質量%未満の範囲内、特に好ましくは50質量%~80質量%未満の範囲内とできる。 【0059】 その他の成分 本開示の組成物は、含フッ素ポリマー(A)及び非プロトン性溶媒(B)に加えて、原料モノマー、原料モノマーから形成されたオリゴマー、重合開始剤、原料に由来する不純物などを含有してもよい。組成物に含有される前記の各種成分の量は、例えば含フッ素ポリマー(A)の製造条件(例:温度、時間、原料モノマー種及び量、溶媒種及び量、重合開始剤種及び量)を設定することにより調製し得る。また、当該各種成分の量は、含フッ素ポリマー(A)の製造後の精製により調製し得る。 【0060】 含フッ素ポリマー(A3)及び非プロトン性溶媒(B)を含有する組成物(A3) 「含フッ素ポリマー(A3)」は、含フッ素ポリマー(A)の一形態であって、構成単位(A3)を主成分として含む含フッ素ポリマー(A)を意味する。 「組成物(A3)」は、これまで説明した本開示の組成物の一形態であって、構成単位(A3)を主成分として含む含フッ素ポリマー(A)及び非プロトン性溶媒(B)を含有する組成物である。 含フッ素ポリマー(A3)及び非プロトン性溶媒(B)を含有する組成物(A3)は、本開示の組成物の一実施態様である。したがって、組成物(A3)については、これまでに説明した事項が適用できるだけでなく、これに代えて又は加えて、本項において説明する事項を適用してもよい。 【0061】 組成物(A3)において、含フッ素ポリマー(A3)の含有量は、例えば20質量%以上、30質量%以上、30質量%超、31質量%以上とでき、好ましくは20質量%~65質量%の範囲内、20質量%超~65質量%の範囲内、20質量%~50質量%の範囲内であり、より好ましくは30質量%~65質量%の範囲内、30質量%超~65質量%の範囲内、31質量%~65質量%の範囲内であり、特に好ましくは30質量%~50質量%の範囲内、30質量%超~50質量%の範囲内、31質量%~50質量%の範囲内である。 【0062】 組成物(A3)において、非プロトン性溶媒の含有量は、例えば80質量%以下、70質量%以下、70質量%未満、69質量%以下とでき、好ましくは35質量%~80質量%の範囲内、35質量%~80質量%未満の範囲内、50質量%~80質量%の範囲内であり、より好ましくは35質量%~70質量%の範囲内、35質量%~70質量%未満の範囲内、35質量%~69質量%の範囲内であり、特に好ましくは50質量%~70質量%の範囲内、50質量%~70質量%未満の範囲内、50質量%~69質量%の範囲内である。 【0063】 含フッ素ポリマー(A3)及び非プロトン性溶媒(B)としての非パーフルオロ溶媒を含有する組成物(A3-2) 本開示の組成物の他の側面は、含フッ素ポリマー(A3)及び非プロトン性溶媒(B)としての非パーフルオロ溶媒を含有する組成物(A3-2)である。組成物(A3-2)において含フッ素ポリマー(A3)は、溶媒が非パーフルオロ溶媒であるにもかかわらず溶解していてもよい。 組成物(A3-2)については、本項以外で説明した事項が適用できるが、含フッ素ポリマー(A3)の濃度は20質量%未満であってもよい。 【0064】 含フッ素ポリマー(A)の製造方法 含フッ素ポリマー(A)はモノマーを重合開始剤の存在下で重合反応させて製造される。 前記モノマーは、含フッ素ポリマー(A)に主成分として含まれる構成単位に対応するモノマー(M)を含む。 前記重合反応は、非プロトン性溶媒(B)中で行われる。 前記非プロトン性溶媒(B)は、パーフルオロ芳香族化合物、パーフルオロトリアルキルアミン、パーフルオロアルカン、パーフルオロ環状エーテル、ハイドロフルオロエーテル、及び少なくとも一つの塩素原子を含むオレフィン化合物からなる群から選択される少なくとも一種の溶媒である。 【0065】 本開示の含フッ素ポリマー(A)の製造方法では、含フッ素ポリマー(A)含量又は溶解量の高い非プロトン性溶媒(B)が得られる。このため、本開示の製造方法を、本開示の組成物を製造する方法として好適である。」 「【表1】 [図:0001399374000007.jpg] 」 【表2】 [図:0001399374000008.jpg] 」 (4)サポート要件の判断 ア 本件発明の課題 本件明細書の段落【0005】には、発明が解決しようとする課題として「本開示は、含フッ素ポリマーの製造方法及びその組成物を提供することを主な目的とする」こと、同【0009】には、「本開示によれば、含フッ素脂肪族環を有する構成単位を主成分として含む含フッ素ポリマーが非プロトン性溶媒に高濃度(特に、20質量%以上)で溶解した組成物が提供される」ことが記載されており、また、該含フッ素ポリマーとして、請求項1に記載の式(A3)(当審注:化学式は省略する。以下、同様)で表される構成単位を主成分として含む含フッ素ポリマー(A)が例示されていることから、これらの記載によると、本件発明の課題は、「式(A3)で表される構成単位を主成分として含む含フッ素ポリマー(A)が非プロトン性溶媒(B)に20質量%以上の高濃度で溶解した組成物を提供すること」であると解される(以下、「本件発明の課題」という。)。 イ 上記第4 3(1)に示す取消理由1アについて 本件発明1に係る組成物は、「非プロトン性溶媒(B)」として「非プロトン性化合物」を含有するものである。 そこで、該「非プロトン性化合物」が、本件発明の課題を解決できるか否かついて検討する。 本件明細書の段落【0046】には、「非プロトン性溶媒(B)」として、「パーフルオロ溶媒」及び「非パーフルオロ溶媒」からなる群から選択される少なくとも一種が挙げられ、「パーフルオロ溶媒」として同【0048】にはパーフルオロトリアルキルアミン、同【0049】にはパーフルオロアルカン、「非パーフルオロ溶媒」として同【0052】~【0054】にはハイドロフルオロエーテルが具体的に例示されており、いずれも上記「非プロトン性化合物」に該当する。 そして、実施例では、パーフルオロトリアルキルアミン(実施例16、17及び23)、パーフルオロアルカン(実施例19)、式(B-1)の溶媒(実施例1~4、7~12、21、22)、式(B-4)の溶媒(実施例27~29)、式(B-5)の溶媒(実施例1~4、7~12、21、22、24~26)、(CF3)2CHOCH3(実施例30~32)、CF3CHFCF2OCH3(実施例24~26)であるものが記載されており、いずれの実施例においても、式(A3)で表される構成単位を主成分とする含フッ素ポリマーが「非プロトン性化合物」に20質量%以上の高濃度で溶解した組成物である。 なお、式(B-2)、式(B-3)については、実施例により、本件発明の課題が解決することが示されていないものの、式(B-2)、式(B-3)は、式(B-1)、式(B-4)、式(B-5)と同様にH-、F-、-CF2-、-CH2-を部分構造として有するハイドロフルオロエーテルであることから、式(B-1)等と同様に、上記課題を解決できることが推認できる。 してみると、上記「非プロトン性化合物」を用いることにより、本件発明の課題を解決することが本件明細書に記載されていると認められる。 したがって、本件明細書には、本件発明1が上記本件発明の課題を解決できることを当業者が認識できるように記載されているといえる。 ウ 本件発明2、5、8及び9について 本件発明1を直接的又は間接的に引用する本件発明2、5、8及び9についても同様の理由により、本件明細書に記載したものといえる。 エ 上記第4 3(1)に示す取消理由1イについて 本件発明3に係る組成物は、「非プロトン性化合物」のうち、「パーフルオロトリアルキルアミン及びパーフルオロアルカンからなる群から選択される少なくとも一種の溶媒」を含むものである。 そこで、該「非プロトン性化合物」のうち、パーフルオロトリアルキルアミン又はパーフルオロアルカンが、本件発明の課題を解決できるか否かついて検討する。 上記イで述べたように、本件明細書の段落【0048】にはパーフルオロトリアルキルアミン、同【0049】にはパーフルオロアルカンが例示されており、実施例では、パーフルオロトリアルキルアミン(実施例16、17及び23)、パーフルオロアルカン(実施例19)を用いた場合には、組成物中のポリマー濃度としてパーフルオロトリアルキルアミンが36~49wt%、パーフルオロアルカンが45wt%と高濃度で「含フッ素ポリマー(A)」を溶解させることが示されている。 してみると、本件発明3の「含フッ素ポリマー(A)」と「パーフルオロトリアルキルアミン及び、パーフルオロアルカンからなる群から選択される少なくとも一種の溶媒」との組合せにより、本件発明の課題を解決することが理解できる。 したがって、本件明細書には、本件発明3が上記本件発明の課題を解決できることを当業者が認識できるように記載されているといえる。 また、本件発明3を直接的又は間接的に引用する本件発明5、8、9についても同様の理由により、本件明細書に記載したものといえる。 オ まとめ したがって、本件特許の請求項1~3、5、8及び9に係る特許は、その特許請求の範囲が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしている。 (5)申立人の主張について 申立人は、令和5年3月29日に提出された意見書において、以下のとおり主張する。 本件訂正発明1及び3(本件発明1及び3)は、非プロトン性溶媒(B)として「1.パーフルオロトリアルキルアミン」のみ、「2.パーフルオロアルカン」のみとした発明を包含するところ、「1.パーフルオロトリアルキルアミン」に該当する実施例は、実施例16、17及び23だけであり、同様に「2.パーフルオロアルカン」に該当する実施例は、実施例19だけであり、含フッ素ポリマー(A3-1)の含有量は、組成物質量に対し、上記1の場合は36質量%~49質量%、上記2の場合は45質量%の含有量の組成物しか開示されておらず、これら溶媒に上記1の場合は49質量%を超える含有量又は上記2の場合は45質量%を超える含有量で含フッ素ポリマーが溶解することが理解できないから、本件訂正発明1の「前記非プロトン性溶媒(B)に溶解した前記含フッ素ポリマー(A)の含有量が前記組成物質量に対し20質量%~65質量%」という範囲まで、発明の詳細な説明において開示された内容を拡張ないし一般化することはできない。 本件発明の課題は、上記(4)アに示したとおりであり、含フッ素ポリマー(A)が非プロトン性溶媒(B)に20質量%以上溶解すれば、本件発明の課題を解決するものである。また、本件発明1及び3では、非プロトン性溶媒が「非プロトン性化合物」であることを特定し、上記(4)イ及びエに示したとおり、実施例において、該「非プロトン性化合物」が含フッ素ポリマーを20質量%以上溶解するものであると理解でき、上記「非プロトン性化合物」の種類によっては64質量%まで溶解するものであることも理解できる。 してみると、全ての「非プロトン性化合物」において、含フッ素ポリマー(A)を65質量%まで溶解する実施例が記載されていないことを根拠にサポート要件を満たさないとはいえない。 そして、申立人は、「含フッ素ポリマー(A)」の含有量が、上述の上限付近である場合については理解できないという主張をしているが、上記含有量が上限付近にはなりえないことを示す合理的な理由や根拠をあげて主張するものではない。 以上から、申立人の主張は妥当でなく、採用できない。 2 取消理由2、3(甲1に基づく新規性・進歩性)について 取消理由2、3は、主引用文献が同じであるため、併せて検討する。 (1)証拠に記載された事項等 ア 甲1に記載された事項及び甲1発明 (ア)甲1に記載された事項 甲1には、以下の事項が記載されている(当審注:英文の後の()内に和訳を付与した。)。 摘記a「ABSTRACT: A perfluorinated monomer, perfluoro-2-methylene-4-methyl-1,3-dioxolane (PFMMD), was synthesized by various methods. The monomer was polymerized in bulk and/or in the solution by a free radical mechanism using perfluorodibenzoyl peroxide and/or perfluorodi-tert-butyl peroxide as an initiators. The polymers obtained (poly(PFMMD)) were colorless and transparent. ・・・ The glass transition temperature of the purified polymer was 130-134 ℃. NMR measurements indicate that thepurified polymers have mostly vinyl addition polymer structure. ・・・ The intrinsic viscosity of poly(PFMMD) samples was determined in hexafluorobenzene. Hexafluorobenzene is a thermodynamically good solvent for poly(PFMMD). ・・・」 (当審訳:要約:ペルフルオロフッ素化モノマー、ペルフルオロ-2-メチル-4-メチレン-1,3-ジオキソラン(PFMMD)をさまざまな方法で合成した。モノマーは、開始剤としてペルフルオロジベンゾイルパーオキシド及び/又はペルフルオロジ-tert-ブチルパーオキシドを使用するフリーラジカル機構によって、バルク及び/又は溶液中で重合した。得られたポリマー(ポリ(PFMMD))は、無色透明であった。・・・精製ポリマーのガラス転移温度は、130~134℃であった。NMR測定は、精製ポリマーが主として、ビニル付加ポリマーの構造を有することを示している。・・・ポリ(PFMMD)の固有粘度は、ヘキサフルオロベンゼン中で決定された。ヘキサフルオロベンゼンは、ポリ(PFMMD)にとって熱力学的に良好な溶媒である。・・・) 摘記b「Experimental Part Materials. Hexafluoropropylene oxide (1), hexafluorobenzene(HFB), chloropentafluorobenzene (CPFB), and Fluorinert FC-75(FC-75) were purchased from Syn.Quest,Inc. ・・・ ・・・ Viscometry. Viscosities of a solvent and filtered polymer solutions were measured using a modified Ubbelohde viscometer at 25 ± 0.05 ℃ in a thermostat bath. The intrinsic viscosity was evaluated using the Huggins equation. ・・・」 (当審訳:実験項 材料.ヘキサフルオロプロピレンオキサイド(1)、ヘキサフルオロベンゼン(HFB)、クロロペンタフルオロベンゼン(CPFB)、及びFluorinert FC-75(FC-75)をSyn.Quest,Inc.から購入した。・・・ ・・・ 粘度.溶媒及び濾過したポリマー溶液の粘度を改変したウベローデ粘度計を使用して、恒温槽で25±0.05℃において測定した。固有粘度は、ハギンズの式を使用して評価した。・・・) 摘記c「Results and Discussion ・・・ Polymer Preparation. ・・・ Polymerizations of PFMMD were carried out in bulk and/or in the solution. Polymerizations in bulk were carried out at 60 ℃ for 24 h, and in order to obtain high conversion, the polymerization temperature was gradually increased to 110 ℃. The polymers isolated were dissolved in HFB and then precipitated in chloroform and dried in vacuo. Poly(PFMMD)s prepared in bulk were colorless and transparent. ・・・ Polymerization of PFMMD in bulk was also initiated by perfluorodi-tert-butyl peroxide. ・・・ Purified polymers have structure as polymers prepared by vinyl addition (Figure 2). [図:0001399374000009.jpg] (以下、図2は省略する。) ・・・ Those of the polymers prepared in solutions of 5 and/or HFB are listed in Table 2. ・・・ The Tg is higher and the increase in Tg is smaller for the polymers prepared in solutions compared with those of the polymers prepared in bulk. The difference might be ascribed to a broader distribution of the molecular weights of the polymers prepared in bulk that have a higher conversion of monomer than the polymers prepared in solution.」 (当審訳:結果と考察 ・・・ ポリマー調製.・・・ PFMMDの重合は、バルク及び/又は溶液で実施した。バルクにおける重合は、60℃で24時間実施し、高い変換を得るために、重合温度は、徐々に110℃に上昇した。単離したポリマーは、HFBに溶解し、次いでクロロホルムに沈殿させ、真空で乾燥させた。 パルクで調製したポリ(PFMMD)は無色透明である。・・・ バルクにおけるPFMMDの重合はまた、ペルフルオロジ-tert-ブチルパーオキシドによって開始された。・・・精製ポリマーは、ビニル付加によって調製されたポリマーのような構造を有する(図2)。 ・・・5及び/又はHFBの溶液中で調製されたサンプルについて、[η]の関数としてのポリマーのTgのプロットを示す。・・・バルクにおいて調製されたポリマーと比較して、溶液中で調製されたポリマーは、Tgがより高く、Tgの上昇が小さい。差異は、溶液中で調製されたポリマーによりも高いモノマー変換を有するバルクにおいて調製されたポリマーのより広範な分子量分布に起因する可能性がある。) 摘記d「Light Scattering Measurement.・・・ ・・・Poly(PFMMD) is soluble at ambient temperature in HFB, Fluorinert FC-75 solvent, and in binary mixtures of HFB and CPFB containing more than 50 wt % of the first component. At 65 ℃, poly(PFMMD) is soluble also in CPFB. The refractive index was measured for solutions of poly(PFMMD) (sample no. 85) in HFB and HFB/CPFB (60/40 w/w) at 546 nm, 25 ℃ at several concentrations up to ~0.10 g/mL.」 (当審訳:光散乱測定.・・・ ・・・ポリ(PFMMD)は周囲温度で、HFB、Fluorinert FC-75溶媒、並びに50wt%超の第1の成分を含有するHFB及びCPFBの2成分混合物に可溶である。65℃でポリ(PFMMD)はまたCPFBに可溶である。25℃、約0.10g/mlまでのいくつかの濃度で、546nmにおいて、HFB及びHFB/CPFB(60/40w/w)中のポリ(PFMMD)(サンプル85番)の溶液についての屈折率を測定した。・・・) 摘記e「 [図:0001399374000010.jpg] 」 (当審訳:表2.ペルフルオロ-2-ヒドロ-2,4-ジメチル-1,3-ジオキソラン及び/又はヘキサフルオロベンゼンの溶液中で調製されたポリ(ペルフルオロ-2-メチレン-4-メチル-1,3-ジオキソラン)の特性α) (表中の表記は省略する。) αモノマー/溶媒混合物38/62(w/w)、重合温度60℃、重合時間24時間、重合収率は、50~80%の範囲であった。固有粘度-HFB、25℃。開始剤-ペルフルオロジベンゾイルパーオキシド) (イ)甲1発明 甲1の表2に着目すると、甲1には次の発明が記載されていると認める。 「ペルフルオロ-2-ヒドロ-2,4-ジメチル-1,3-ジオキソラン及び/又はヘキサフルオロベンゼン中で調製されたポリ(ペルフルオロ-2-メチレン-4-メチル-1,3-ジオキソラン)の溶液であって、モノマー/溶媒混合物が38/62(w/w)、重合温度60℃、重合時間24時間で重合し、重合収率が50~80%の範囲である溶液。」(以下、「甲1発明」という。) (2)対比・判断 ア 本件発明1について 本件発明1と甲1発明とを対比する。 まず、甲1発明の「ポリ(ペルフルオロ-2-メチレン-4-メチル-1,3-ジオキソラン)」は、本件発明1の「式(A3) [図:0001399374000011.jpg] (当審注:以下、「式(A3)」の構造式は省略する。) で表される構成単位を主成分として含む含フッ素ポリマー(A)」に相当する。 ついで、甲1発明の「ペルフルオロ-2-ヒドロ-2,4-ジメチル-1,3-ジオキソラン及び/又はヘキサフルオロベンゼン」は、環状のハイドロフルオロエーテル及び/又はパーフルオロ芳香族化合物であるから、甲1発明の「ペルフルオロ-2-ヒドロ-2,4-ジメチル-1,3-ジオキソラン及び/又はヘキサフルオロベンゼン」と本件発明1の「非プロトン性溶媒(B)」とは、「非プロトン性溶媒」である限りにおいて一致する。 そして、甲1発明の「溶液」は、上記「ポリ(ペルフルオロ-2-メチレン-4-メチル-1,3-ジオキソラン)」が「ペルフルオロ-2-ヒドロ-2,4-ジメチル-1,3-ジオキソラン及び/又はヘキサフルオロベンゼン」に溶解したものであるから、甲1発明の「ペルフルオロ-2-ヒドロ-2,4-ジメチル-1,3-ジオキソラン及び/又はヘキサフルオロベンゼン」中で調製された「ポリ(ペルフルオロ-2-メチレン-4-メチル-1,3-ジオキソラン)」の「溶液」と本件発明1の「前記含フッ素ポリマー(A)は前記非プロトン性溶媒(B)に溶解し」た「組成物」とは、「含フッ素ポリマー(A)は非プロトン性溶媒に溶解し」た「組成物」である限りにおいて一致する。 そうすると、本件発明1と甲1発明とは、 「下記式(A3)で表される構成単位を主成分として含む含フッ素ポリマー(A)、及び非プロトン性溶媒(B)を含有する組成物であって、 前記含フッ素ポリマー(A)は前記非プロトン性溶媒に溶解した、組成物。」 である点で一致し、以下の点で相違する。 <相違点1> 非プロトン性溶媒が、本件発明1では、「非プロトン性化合物」であるのに対し、甲1発明では、ペルフルオロ-2-ヒドロ-2,4-ジメチル-1,3-ジオキソラン及び/又はヘキサフルオロベンゼン」である点 <相違点2> 含フッ素ポリマー(A)は非プロトン性溶媒に溶解した組成物として、本件発明1では、含フッ素ポリマー(A)が「非プロトン性化合物」に溶解した組成物であるのに対し、甲1発明では、含フッ素ポリマー(A)がペルフルオロ-2-ヒドロ-2,4-ジメチル-1,3-ジオキソラン及び/又はヘキサフルオロベンゼンに溶解した組成物である点 <相違点3> 本件発明1では「非プロトン性溶媒に溶解した含フッ素ポリマー(A)の含有量が前記組成物質量に対し20質量%~65質量%である」のに対し、甲1発明ではそのような特定がない点 相違点1について検討する。 非プロトン性溶媒が、本件発明1では、「非プロトン性化合物」であるのに対し、甲1発明では、ペルフルオロ-2-ヒドロ-2,4-ジメチル-1,3-ジオキソラン及び/又はヘキサフルオロベンゼンであるところ、該ペルフルオロ-2-ヒドロ-2,4-ジメチル-1,3-ジオキソラン及び/又はヘキサフルオロベンゼンは、上記「非プロトン性化合物」に含まれるいずれの化合物にも該当しないものであるから、上記相違点1は、実質的な相違点である。 よって、本件発明1は甲1に記載された発明ではない。 ついで、相違点1の容易想到性について、さらに検討する。 甲1には、含フッ素ポリマー(A)を重合により得る際の非プロトン性溶媒として、ポリ(PFMMD)(「含フッ素ポリマー(A3)」に該当)が周囲温度でヘキサフルオロベンゼン(HFB)、Fluorinert FC-75(Syn.Quest,Inc.より入手。当審注:パーフルオロ(2-ブチルテトラヒドロフラン)、3M社製)、並びに50wt%超のHFB及びクロロペンタフルオロベンゼン(CPFB)の混合溶液に溶解し、65℃のCPFBに可溶であること(摘記d)が記載されている。これら非プロトン性溶媒は、ポリ(PFMMD)を溶解する溶媒として記載されているものの、「非プロトン性化合物」に含まれるいずれの化合物にも該当しないものである。 そうすると、甲1には、非プロトン性溶媒として、「非プロトン性化合物」を用いようとする動機付けがないことから、相違点1に係る構成、つまり非プロトン性溶媒として、「非プロトン性化合物」を採用することは、当業者が容易に想到し得たことではない。 してみると、他の相違点を検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明及び甲1の記載に基づいて、当業者が容易に発明できたものであるとはいえない。 なお、甲1の実験の追試結果を示すものとしてあげられた甲4は、本件出願の優先日時には未公開であるものの、甲1と同じ含フッ素ポリマーであるポリ(ペルフルオロ-2-メチレン-4-メチル-1,3-ジオキソラン)と非プロトン性溶媒であるヘキサフルオロベンゼンとを含む組成物において、当該組成物に対する含フッ素ポリマー含有量が29.3%程度であっても上記含フッ素ポリマーを溶解することを示すための証拠である。しかしながら、上記ヘキサフルオロベンゼンは、「非プロトン性化合物」に含まれないものであるから、甲4を参照したとしても、本件発明1が甲1に記載された発明であると認められることにはならない。 イ 以上のとおりであるから、本件発明1は、甲1に記載された発明ではない。さらに、本件発明1は、甲1に記載された発明及び甲1の記載に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 (3)本件発明2、3、5~9について 本件発明2、3、5~9は、本件発明1を直接的又は間接的に引用するものであるから、これらの発明も、本件発明1と同様に、甲1に記載された発明ではないし、甲1に記載された発明及び甲1の記載に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 3 取消理由通知に採用しなかった申立理由2について (1)申立理由2について 上記第4 1(2)に記載したとおり、訂正前の本件発明3~7(訂正後の本件発明3、5~7)が、甲1に記載された発明、並びに甲2及び/又は甲3に記載された事項又は甲2及び/又は甲3に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたというものである。 (2)甲2に記載された事項及び甲2に記載された発明 ア 甲2に記載された事項 甲2には、以下の事項が記載されている。 「請求の範囲 [請求項1] 下式(1)で表される単位を含む、含フッ素重合体。 [化1] [図:0001399374000012.jpg] (式(1)中、 X1およびX2は、それぞれ独立に、水素原子またはフッ素原子であり、 Q1は、単結合またはエーテル性酸素原子であり、 Rf1は、フルオロアルキレン基、または炭素-炭素原子間にエーテル性酸素原子を有する炭素数2以上のフルオロアルキレン基であり、 Z1は、NR1-Y1、O-Y2またはS-Y3であり、 R1は、水素原子、アルキル基またはアリール基であり、 Y1、Y2およびY3は、それぞれ独立に、1以上の加水分解性シリル基を有する基である。) ・・・ [請求項3] さらに、下式(1a)で表される単位を含む、請求項1または2に記載の含フッ素重合体。 [図:0001399374000013.jpg] (式(1a)中、 X1、X2、Q1およびRf1は、請求項1で定義されたとおりであり、 Z2は、ハロゲン原子、OHまたはOR7であり、 R7は、アルキル基である。) ・・・ [請求項8] 請求項1~7のいずれか一項に記載の含フッ素重合体の製造方法であって、下式(1a)で表される単位を含みかつ前記単位(1)を含まない含フッ素重合体と、アミノシラン化合物、エポキシシラン化合物、メルカプトシラン化合物およびイソシアナトシラン化合物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物とを反応させることを特徴とする製造方法。 [図:0001399374000014.jpg] (式(1a)中、 X1、X2、Q1およびRf1は、請求項1で定義されたとおりであり、 Z2は、請求項3で定義されたとおりである。) ・・・」 「[0001] 本発明は、含フッ素重合体、その製造方法、および含フッ素重合体の硬化物を備える物品に関する。」 「[0064] 反応は、溶媒の非存在下または存在下で行うことができる。反応が溶媒の存在下で行われる場合、溶媒は、原料成分(前駆体および前記シラン化合物)を溶解できることが好ましく、少なくとも前駆体が溶解する溶媒を用いることが特に好ましい。この場合、反応は、原料成分が溶媒に溶解または分散した状態で行われる。このような溶媒として、含フッ素溶媒が挙げられる。 [0065] 含フッ素溶媒としては、フッ素化アルカン、フッ素化芳香族化合物、フルオロアルキルエーテル、フッ素化アルキルアミン、フルオロアルコール等が挙げられる。 フッ素化アルカンとしては、炭素数4~8の化合物が好ましい。市販品としては、たとえばC6F13H(旭硝子社製、アサヒクリン(登録商標)AC-2000)、C6F13C2H5(旭硝子社製、アサヒクリン(登録商標)AC-6000)、C2F5CHFCHFCF3(ケマーズ社製、バートレル(登録商標)XF)等が挙げられる。 フッ素化芳香族化合物としては、たとえばヘキサフルオロベンゼン、トリフルオロメチルベンゼン、ペルフルオロトルエン、ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン等が挙げられる。 フルオロアルキルエーテルとしては、炭素数4~12の化合物が好ましい。市販品としては、たとえばCF3CH2OCF2CF2H(旭硝子社製、アサヒクリン(登録商標)AE-3000)、C4F9OCH3(3M社製、ノベック(登録商標)7100)、C4F9OC2H5(3M社製、ノベック(登録商標)7200)、C2F5CF(OCH3)C3F7(3M社製、ノベック(登録商標)7300)等が挙げられる。 フッ素化アルキルアミンとしては、たとえばペルフルオロトリプロピルアミン、ペルフルオロトリブチルアミン等が挙げられる。 フルオロアルコールとしては、たとえば2,2,3,3-テトラフルオロプロパノール、2,2,2-トリフルオロエタノール、ヘキサフルオロイソプロパノール等が挙げられる。」 イ 甲2発明 甲2の請求項8に記載された製造方法により得られた請求項3に記載の、式(1a)で表される単位を含む、含フッ素重合体(式(1a)は省略する。以下同様)が段落[0065]における含フッ素溶媒を用いて製造されることに着目すると、次の発明が記載されているものと認める。 「式(1a)(化学式は省略する。)で表される単位を含む、含フッ素重合体を含フッ素溶媒を用いて重合して得られた組成物であって、 上記含フッ素溶媒がフルオロアルキルエーテル、フッ素化アルキルアミンである、組成物。」(以下、「甲2発明」という。) (3)甲3に記載された事項及び甲3発明 ア 甲3に記載された事項 甲3には、以下の事項が記載されている。 「 [図:0001399374000015.jpg] 」 「 [図:0001399374000016.jpg] [図:0001399374000017.jpg] 」 「 [図:0001399374000018.jpg] 」 イ 甲3発明 甲3に記載された事項によると、以下の発明が記載されているものと認める。 「フッ素系溶剤として、ハイドロフルオロエーテル(HFE)の使用。」(以下、「甲3発明」という。) (3)本件発明3について 本件発明3は、本件発明1の「非プロトン性溶媒(B)」として種々あげられたもののうち、「パーフルオロトリアルキルアミン及びパーフルオロアルカンからなる群から選択される少なくとも一種の溶媒である」ことを、さらに特定したものである。 ここで、申立理由2は、同じ証拠方法を用いるものであることから、甲1に記載された発明に、甲2及び/又は甲3に記載された事項を適用する場合、及び甲2発明及び/又は甲3発明を適用する場合を、併せて検討する。 甲2、甲3によれば、フルオロアルキルエーテル(本件発明3の「ハイドロフルオロエーテル」に相当)、フッ素化アルキルアミン(本件発明3の「パーフルオロトリアルキルアミン」に相当)が従来からよく知られていた非プロトン性溶媒であることが把握できる。 しかしながら、上記2(2)に示したとおり、甲1には、含フッ素ポリマーを溶解する非プロトン性溶媒として、パーフルオロトリアルキルアミンやパーフルオロアルカンを用いることについて記載も示唆もされていないものである。 そうすると、パーフルオロトリアルキルアミンやハイドロフルオロエーテルが本件出願の優先日時によく知られていた非プロトン性溶媒であったとしても、甲1に記載された発明に、上述の甲2、甲3に記載された非プロトン性溶媒を適用する十分な動機付けを有しないものである。 また、本件明細書の段落【0092】には、含フッ素ポリマー(A)は通常非プロトン性溶媒(B)に対する溶解性が低いところ、本件発明では含フッ素ポリマー(A)及び非プロトン性溶媒(B)の合計質量に対し、含フッ素ポリマー(A)の溶解度が20質量%~65質量%と高濃度な溶液を製造できることが記載され、20質量%以上の高濃度の溶液を実施例に示していることから、当業者が予測し得ない効果を奏するものといえる。 したがって、甲1に記載された発明に、甲2、甲3に記載された非プロトン性溶媒を適用することは、当業者が容易に想到し得たものではない。 よって、本件発明3は、甲1に記載された発明、並びに甲2及び/又は甲3に記載された事項あるいは甲2発明及び/又は甲3発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (4)本件発明5~7について 本件発明5~7は、本件発明3を直接的又は間接的に引用するものであるから、これらの発明も、本件発明3と同様に、甲1に記載された発明、並びに甲2及び/又は甲3に記載された事項あるいは甲2発明及び/又は甲3発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 第6 まとめ 以上のとおり、本件特許に対する訂正は適法であるから、これを認める。 そして、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1~3、5~9に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件請求項1~3、5~9に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 本件特許の請求項4は、本件訂正により削除され、請求項4に係る特許についての申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。 よって、結論のとおり決定する。

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2022-700790

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