特許異議申立
2022-700593
検査装置用リード線、リード線装着部品及び検査用治具
- 審判番号
- 2022-700593
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2018-025453
- 登録番号
- 7008529
- 請求日
- 2022年07月06日
- 審決日
- 2023年06月01日
- 公報発行日
- 2023年10月27日
- 結論
- 請求成立(取消)
- 当事者
- 【権利者】東京特殊電線株式会社
- 【権利者代理人】吉村 俊一
- 【異議申立人】伊東 沙織
- 審判長/審判官
- 審判長 岡田 吉美
- 審判官 濱野 隆
- 審判官 後藤 慎平
- 分類
- P1651.121-ZAA(G01R)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第9項、特許法第29条、特許法第120条の5第4項、特許法第113条、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7008529号発明「検査装置用リード線、リード線装着部品及び検査用治具」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7008529号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~5〕について訂正することを認める。
特許第7008529号の請求項1、3~5に係る特許を取り消す。
特許第7008529号の請求項2に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7008529号(以下「本件特許」という。)について、その手続の経緯は、以下のとおりである。
平成30年 2月15日 :特許出願
令和 4年 1月13日 :特許権の設定登録
同月25日 :特許掲載公報の発行
同年 7月 6日 :特許異議申立書の提出
(特許異議申立人:伊東 沙織 全請求項1~5に対して)
同年 9月12日付け:取消理由通知書(審尋も含む)
同年11月14日 :訂正請求書及び意見書の提出(特許権者)
令和 5年 1月17日 :意見書の提出(特許異議申立人)
同年 3月 6日付け:取消理由通知書(決定の予告)
なお、令和5年3月6日付け取消理由通知書(決定の予告)において、期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが、特許権者は応答しなかった。
以下、令和4年11月14日に提出された訂正請求書を「本件訂正請求書」といい、本件訂正請求書による訂正を「本件訂正」という。
第2 本件訂正について
1 請求の趣旨
本件訂正に係る請求の趣旨は、本件特許の特許請求の範囲を、本件訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~5について訂正することを求めるものである。
2 本件訂正前の特許請求の範囲の記載
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1~5の記載(登録時における特許請求の範囲の記載)は、以下のとおりである。
「【請求項1】
被測定体の検査装置を構成する検査用治具に設けられてプローブに繰り返し接触する導体部を有するリード線において、前記導体部は、導体径が0.018~0.18mmの範囲内の銅合金線からなり、引張強度が700~1500MPaの範囲内であり、マイクロビッカース硬度が200~350HV(0.04)の範囲内であり、導電率が60~85%IACSの範囲内である、ことを特徴とする検査装置用リード線。
【請求項2】
前記導体部は、0.5~15質量%のAgを含有し、残部がCu及び不可避不純物である、請求項1に記載の検査装置用リード線。
【請求項3】
前記導体部の外周には絶縁被膜が設けられている、請求項1又は2に記載の検査装置用リード線。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の検査装置用リード線が保持板に装着された部品であって、前記検査装置用リード線の端面と前記保持板の表面とが平坦になっている、又は、前記検査装置用リード線の端面が前記保持板の表面よりも突出している、ことを特徴とするリード線装着部品。
【請求項5】
本体部とともに検査装置を構成する検査用治具であって、請求項4に記載のリード線装着部品を備えている、ことを特徴とする検査用治具。」
3 本件訂正後の特許請求の範囲の記載
本件訂正後の特許請求の範囲の請求項1~5の記載は、以下のとおりである。下線は訂正箇所である。
「【請求項1】
被測定体の検査装置を構成する検査用治具に設けられてプローブに繰り返し接触する導体部を有するリード線において、前記導体部は、2~10質量%のAgを含有し残部がCu及び不可避不純物であり、導体径が0.018~0.18mmの範囲内の銅合金線からなり、引張強度が778~1500MPaの範囲内であり、マイクロビッカース硬度が227~350HV(0.04)の範囲内であり、導電率が60~85%IACSの範囲内である、ことを特徴とする検査装置用リード線。
【請求項2】
(削除)
【請求項3】
前記導体部の外周には絶縁被膜が設けられている、請求項1に記載の検査装置用リード線。
【請求項4】
請求項1又は3のいずれか1項に記載の検査装置用リード線が保持板に装着された部品であって、前記検査装置用リード線の端面と前記保持板の表面とが平坦になっている、又は、前記検査装置用リード線の端面が前記保持板の表面よりも突出している、ことを特徴とするリード線装着部品。
【請求項5】
本体部とともに検査装置を構成する検査用治具であって、請求項4に記載のリード線装着部品を備えている、ことを特徴とする検査用治具。」
4 本件訂正の内容
本件訂正の内容を請求項ごとに訂正事項として整理すると、以下のとおりである。
なお、本件訂正前の請求項1~5について、請求項2~5は、それぞれ請求項1の記載を直接的又は間接的に引用しているから、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものであり、請求項1~5は、特許法120条の5第4項の規定する一群の請求項である。
(1) 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に
「被測定体の検査装置を構成する検査用治具に設けられてプローブに繰り返し接触する導体部を有するリード線において、前記導体部は、導体径が0.018~0.18mmの範囲内の銅合金線からなり、引張強度が700~1500MPaの範囲内であり、マイクロビッカース硬度が200~350HV(0.04)の範囲内であり、導電率が60~85%IACSの範囲内である、ことを特徴とする検査装置用リード線。」
と記載されているのを、
「被測定体の検査装置を構成する検査用治具に設けられてプローブに繰り返し接触する導体部を有するリード線において、前記導体部は、2~10質量%のAgを含有し残部がCu及び不可避不純物であり、導体径が0.018~0.18mmの範囲内の銅合金線からなり、引張強度が778~1500MPaの範囲内であり、マイクロビッカース硬度が227~350HV(0.04)の範囲内であり、導電率が60~85%IACSの範囲内である、ことを特徴とする検査装置用リード線。」
に訂正する。
(請求項1の記載を引用する請求項3~5も同様に訂正する。)
(2) 訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2を削除する。
(3) 訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3に
「前記導体部の外周には絶縁被膜が設けられている、請求項1又は2に記載の検査装置用リード線。」
とあるうち、請求項1を引用するものについて、
「前記導体部の外周には絶縁被膜が設けられている、請求項1に記載の検査装置用リード線。」
に訂正する。
(請求項3の記載を引用する請求項4~5も同様に訂正する。)
(4) 訂正事項4
特許請求の範囲の請求項4に
「請求項1~3のいずれか1項に記載の検査装置用リード線が保持板に装着された部品であって、前記検査装置用リード線の端面と前記保持板の表面とが平坦になっている、又は、前記検査装置用リード線の端面が前記保持板の表面よりも突出している、ことを特徴とするリード線装着部品。」
とあるうち、請求項1又は3を引用するものについて、
「請求項1又は3のいずれか1項に記載の検査装置用リード線が保持板に装着された部品であって、前記検査装置用リード線の端面と前記保持板の表面とが平坦になっている、又は、前記検査装置用リード線の端面が前記保持板の表面よりも突出している、ことを特徴とするリード線装着部品。」
に訂正する。
(請求項4の記載を引用する請求項5も同様に訂正する。)
第3 本件訂正の適否についての当審の判断
1 訂正の目的
(1) 訂正事項1
ア 訂正事項1の訂正は、本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1の「前記導体部」について、「2~10質量%のAgを含有し残部がCu及び不可避不純物であり」と限定することを含むものであり、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とする。
イ 訂正事項1の訂正は、本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1の「引張強度」について、「700~1500MPaの範囲内」としていたものを「778~1500MPaの範囲内」として数値範囲を限定することを含むものであり、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とする。
ウ 訂正事項1の訂正は、本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1の「マイクロビッカース硬度」について、「200~350HV(0.04)の範囲内」としていたものを「227~350HV(0.04)の範囲内」として数値範囲を限定することを含むものであり、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とする。
エ よって、訂正事項1の訂正は、特許法120条の5第2項ただし書き1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。
(2) 訂正事項2
訂正事項2の訂正は、請求項2を削除するものであるから、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。
(3) 訂正事項3、4
ア 訂正事項3の訂正は、訂正事項2により請求項2を削除したことに伴い、請求項3が引用する請求項を請求項1又は2から請求項1に訂正するものであり、多数項を引用している請求項の引用請求項数の削減に該当するから、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。
イ 訂正事項4の訂正は、訂正事項2により請求項2を削除したことに伴い、請求項4が引用する請求項を請求項1~3から請求項1又は3に訂正するものであり、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。
2 新規事項の追加、特許請求の範囲の実質的拡張・変更
前記訂正事項1~4の訂正は、特許法120条の5第2項ただし書き2号に掲げる「誤記又は誤訳の訂正」を目的とするものに該当しないから、これらの訂正における新規事項の追加の有無を判断する際の基準となる明細書等は、特許権の設定の登録がされた時点での願書に添付した明細書、特許請求の範囲及び図面である。
(1) 訂正事項1
ア 訂正事項1において、「前記導体部」について「2~10質量%のAgを含有し残部がCu及び不可避不純物であり」と訂正することは、後記の(ア)及び(イ)に示す、願書に添付された明細書の段落【0013】、【0036】の記載に基づくものであるから、訂正事項1の上記訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件特許明細書等」という。)に記載した事項の範囲内においてされたものであると認められる。
(ア) 段落【0013】
「【0013】
本発明に係る検査装置用リード線において、前記導体部は、0.5~15質量%のAgを含有し、残部がCu及び不可避不純物であることが好ましい。」
(イ) 段落【0036】
「【0036】
リード線50は、上記特性を備えた導体部52を有していれば、その導体部52を構成する銅合金線は特に限定されない。好ましい銅合金線としては、例えば、銀を2~10質量%含有する銅合金線、Zr(ジルコニウム)を0.1~3.0質量%含有する銅合金線を好ましく挙げることができるが、上記機械的特性と電気的特性を有する銅合金線であれば、その組成は特に限定されない。また、リード線50の表面には、導電率の向上、予備はんだ付け性の向上、はんだ細りの抑制等の各目的に応じためっき層が設けられていてもよい。そうしためっき層としては、厚さ0.1~2.0μm程度の銀めっき層、ニッケルめっき層、錫めっき層、及び金めっき層等を任意に選択して使用することができる。」
イ 訂正事項1において、「引張強度」について「778~1500MPaの範囲内」と訂正することは、後記の(ア)及び(イ)に示す、願書に添付された明細書の段落【0055】~【0058】及び【0061】の記載に基づくものであるから、訂正事項1の上記訂正は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてされたものであると認められる。
(ア) 段落【0055】~【0058】
「【0055】
[実験1]
(リード線装着部品)
銀を4質量%含有する銅合金線(直径0.65mm)を用い、この銅合金線を直径0.04mmまで伸線加工(加工度99.62%)した。得られた銅合金線を、種々の温度でテンションアニール(熱処理時間は24秒間)し、引張強度、ビッカース硬度、伸び、導電率、曲率半径について測定した。その結果を表1に示す。なお、テンションアニール時の矯正張力は、曲率半径が300mm以上になる安定条件を設定した。
【0056】
次に、熱処理して種々の特性を備えた銅合金線(導体部52)を所定長さに切断し、リード線装着部品6を構成する保持板40に固定した。導体部52の保持板40への固定は、保持板40に設けられている多数の穴42に導体部52を挿入し、導体部52の端面51と保持板40の表面41とが同じ面となるようにして接着剤で接着した。こうしてリード線装着部品6を作製した。このリード線装着部品6を断面研磨装置(丸本ストルアス株式会社製)で研磨し、研磨ダレを評価した。その結果も表1に併せて示した。
【0057】
実験方法として、引張強度と伸びは卓上形精密万能試験機(株式会社島津製作所製、AGS-X)にて測定し、ビッカース硬度はビッカース硬度計(株式会社明石製作所製、現株式会社ミツトヨ)にて測定し、導電率はマルチメーター(ヒューレットパッカード社製、現キーサイトテクノロジー社、3468A)にて測定し、曲率半径は、自然放置後の曲率半径をスケールで実測して測定した。研磨ダレの有無は、光学顕微鏡で90倍に拡大して目視により確認した。挿入容易性は、熱処理後の銅合金線を保持板40の穴42に挿入しやすいか否かで評価した。長さ1mの1000本のリード線を取り回した後のキンク等の発生の有無についても評価した。
【0058】
【表1】
[図:0001402738000001.jpg]
」
(イ) 段落【0061】
「【0061】
[評価]
上記実験1,2の結果をもとに、研磨ダレがなく、挿入が容易で、キンク等は発生しない特性は、引張強度が700~1500MPaの範囲内であり、マイクロビッカース硬度が200~350HV(0.04)の範囲内であり、導電率が60~85%IACSの範囲内であり、曲率半径が300mm以上であることがわかった。」
ウ 訂正事項1において、「マイクロビッカース硬度」について「227~350HV(0.04)の範囲内」と訂正することは、前記イに示した願書に添付された明細書の段落【0055】~【0057】、【0061】及び後記に示す、段落【0059】~【0060】の記載に基づくものであるから、訂正事項1の上記訂正は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてされたものであると認められる。
段落【0059】~【0060】
「【0059】
[実験2]
銀を10質量%含有する銅合金線(直径0.65mm)を用い、この銅合金線を直径0.04mmまで伸線加工(加工度99.62%)した。それ以外は実験1と同様にした。結果を表2に示す。
【0060】
【表2】
[図:0001402738000002.jpg]
」
エ 前記ア~ウの検討結果を踏まえると、訂正事項1の訂正は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものであり、特許法120条の5第9項において準用する同法126条5項の規定に適合する。
また、訂正事項1の訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法120条の5第9項において準用する同法126第6項の規定に適合する。
(2) 訂正事項2
訂正事項2の訂正は、請求項2を削除するものであるから、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものであり、特許法120条の5第9項において準用する同法126条5項の規定に適合する。
また、訂正事項2の訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法120条の5第9項において準用する同法126第6項の規定に適合する。
(3) 訂正事項3、4
訂正事項3及び4の訂正は、いずれも多数項を引用している請求項の引用請求項数を削減するものであるから、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものであり、特許法120条の5第9項において準用する同法126条5項の規定に適合する。
また、訂正事項3及び4の訂正は、いずれも実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法120条の5第9項において準用する同法126第6項の規定に適合する。
3 独立特許要件
この特許異議の申立てにおいては、請求項1~5について特許異議の申立てがされているところ、訂正事項1は請求項1、3~5に係るものであり、訂正事項2は請求項2に係るものであり、訂正事項3は請求項3~5に係るものであり、訂正事項4は請求項4~5に係るものであるから、本件訂正後における請求項1、3~5に記載されている事項により特定される発明について、特許法120条の5第9項において読み替えて準用する同法126条7項に規定する独立特許要件は課されない。
4 小括
前記1~3において検討した訂正要件についての当審の判断をまとめると、訂正事項1~4の訂正は、いずれも訂正要件を満たすものであるから、本件訂正は適法なものである。
よって、前記結論のとおり、訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~5〕について訂正することを認める。
第4 取消理由の概要
本件特許について、令和5年3月6日付けの取消理由通知(決定の予告)において特許権者に通知した取消理由(進歩性の欠如)の概要は、次のとおりである。
本件特許の請求項1~5に係る発明は、下記の引用文献に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、上記請求項に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものである。
記
引用文献1:特開2007-322369号公報
引用文献2:独立行政法人物質・材料研究機構の発表資料「高強度・高導電率銅合金の開発 低濃度のAg添加で世界一の強度・導電率バランスを実現」平成17年12月5日
引用文献3:田中和明「図解入門 最新金属の基本がわかる事典」株式会社秀和システム2015年7月1日、85頁
甲1号証:特開平6-196535号公報
甲2号証:特開2005-114393号公報
甲3号証:特開2010-156648号公報
甲4号証:特開2005-336510号公報
甲5号証:坂井義和他「高強度・高導電性Cu-Ag合金の開発」日本金属学会誌,55巻12号(1991)1382-1391頁
引用文献1~3は、当審において職権調査により発見したものである。
各甲号証を文献の番号に従い「甲1文献」等という。
第5 当審の判断
1 本件訂正発明について
前記第3において説示したとおり、本件訂正は認められたから、本件特許の請求項1、3~5に係る発明(以下、請求項の番号に従って「本件訂正発明1」などという。また、これらを総称して「本件訂正発明」ということもある。)は、それぞれ、本件訂正後の特許請求の範囲の請求項1、3~5に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、請求項1、3~5の記載は、前記第2の3に示したとおりである。
2 引用文献に記載された発明等
(1) 引用文献1
ア 引用文献1の記載事項
引用文献1(特開2007-322369号公報)には、次の記載がある。下線は合議体が付した。以下同様である。
「【0002】
近年、携帯電話等に使用される高密度実装基板、又は、パソコン等に組み込まれるBGA(Ball Grid Array)やCSP(Chip Size Package)等のICパッケージ基板等、様々な回路基板が多く用いられている。このような回路基板は、実装の前後の工程において、例えば直流抵抗値の測定や導通検査等が行われ、その電気特性の良否が検査されている。電気特性の良否の検査は、電気特性を測定する検査装置に接続された検査装置用治具(以下、「プローブユニット」という。)を用いて行われ、例えば、プローブユニットに装着されたピン形状のプローブ(本願では「コンタクトプローブ」という。)の先端を、その回路基板の電極(以下「被測定体」ともいう。)に接触させることにより行われている(例えば特許文献1を参照。)。」
「【0004】
図9に示すプローブユニット110は、複数本から数千本のコンタクトプローブ101と、コンタクトプローブ101のリード線側を案内する案内穴付きガイド板130と、コンタクトプローブ101の先端が被測定体111の電極112に接するようにコンタクトプローブ101の電極側を案内する案内穴付きガイド板120とを少なくとも備えている。電気特性の検査は、プローブユニット110又は被測定体111を相対的に上下させ、コンタクトプローブ101の弾性力を利用して被測定体111の電極112にコンタクトプローブ101を所定の圧力で押し当てることにより行われる。このとき、電極112に押し当てられた力によってたわんだコンタクトプローブ101の後端102bはリード線150に強く接触し、被測定体112からの電気信号がそのリード線150を通って検査装置(図示しない。)に送られる。」
「【0048】
(プローブを用いた電気特性の検査方法)
次に、上述した本発明のプローブを用いた電気特性の検査方法について説明する。図6は本発明のコンタクトプローブを備えたプローブユニットを用いて被測定体の電気特性を検査する方法を説明するための模式断面図であり、図7は図6に示すプローブユニットが上下逆向きに構成された例を示す模式断面図である。
【0049】
本発明のプローブ1は、プローブユニットに装着されて回路基板等の被測定体の電気特性の良否の検査に利用される。プローブユニット10は、図6及び図7に示すように、複数本から数千本のプローブ1と、プローブ1を被測定体11の電極12にガイドするガイド板20と、プローブ1を検査装置のリード線50にガイドするガイド板30とを備えている。検査装置側のガイド板30は、プローブ1の外径よりも若干大きい案内穴を有し、その案内穴は一本一本のプローブ1の金属導体2をリード線50にガイドする。被測定体側のガイド板20は、図6に示す形態のプローブユニット10においては、金属導体2の直径よりも若干大きい案内穴を有し、その案内穴は一本一本のプローブ1の金属導体2を電極21にガイドする。一方、図6に示す形態のプローブユニット10においては、被測定体側のガイド板20は、プローブ1の外径よりも若干大きい案内穴を有し、その案内穴は一本一本のプローブ1の金属導体2を電極2にガイドする。
【0050】
プローブユニット10と被測定体11は、被測定体11の電気特性を検査する際、プローブ1と電極12とが対応するように位置制御される。電気特性の検査は、プローブユニット10を上下させ、プローブ1の弾性力を利用して被測定体11の電極12にプローブ1の先端2aを所定の圧力で押し当てることにより行われる。このとき、プローブ1の後端2bはリード線50に接触し、被測定体11からの電気信号がそのリード線50を通って検査装置(図示しない。)に送られる。なお、図6及び図7中、符号40はリード線用の保持板を示している。」
「【図6】
[図:0001402738000003.jpg]
」
イ 引用発明の認定
前記アにおいて摘記した事項を総合すると、引用文献1には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。
[引用発明]
「 被測定体の電気特性を検査するために用いられるコンタクトプローブを備えたプローブユニットであって、(【0048】)
プローブユニットは、電気特性を測定する検査装置に接続された検査装置用治具であり、
コンタクトプローブは、プローブユニットに装着されたピン形状のプローブであり、(【0002】)
プローブユニット10は、複数本から数千本のプローブ1と、プローブ1を被測定体11の電極12にガイドするガイド板20と、プローブ1を検査装置のリード線50にガイドするガイド板30とを備えており、
検査装置側のガイド板30は、プローブ1の外径よりも若干大きい案内穴を有し、その案内穴は一本一本のプローブ1の金属導体2をリード線50にガイドするものであり、(【0049】)
リード線50は、リード線用の保持板40により保持されており、(【0050】、【図6】)
電気特性の検査は、プローブユニット10を上下させ、プローブ1の弾性力を利用して被測定体11の電極12にプローブ1の先端2aを所定の圧力で押し当てることにより行われ、プローブ1の後端2bはリード線50に接触し、被測定体11からの電気信号がそのリード線50を通って検査装置に送られる、(【0050】)
プローブユニット。」
(2) 周知技術を示す文献
ア 甲2文献の記載事項
甲2文献(特開2005-114393号公報)には、次の記載がある。
「【0012】
本発明のリード線付きコンタクトプローブの具体的な製造実施態様について図1、図3を用いて説明する。
先ず金属ばね線5として、ばね性と直線性に優れたφ0.10mmの真直ベリリウム銅線を用い、絶縁皮膜焼付装置(図示せず)により0.05mm厚さのポリウレタン皮膜6を連続的に焼付けることにより、絶縁皮膜付き真直ベリリウム銅線(以下、絶縁真直ベリリウム銅線と略記する)wを製造した。(絶縁被覆加工工程f1)
次に、切断装置で前記絶縁真直ベリリウム銅線を500mm長さに切断した。(定尺切断加工工程f2)
次に、定尺切断した絶縁真直ベリリウム銅線の先端部を研削加工装置により半球形状に研削加工し先端研削加工部7を設けた。(先端部研削加工工程f3)
次に、半球形状に研削加工した先端研削加工部7へニッケルめっき処理を施してニッケルめっき層mを設け、先端めっき加工部7とした。(先端部めっき処理工程f4)
次に、折り曲げ治具にて先端めっき加工部7から所定の長さ部分に、間隔が0.2mmで角度が150°の2箇所の折り曲げ加工部4を有する折り曲げ形状に加工し(ストッパー部折り曲げ加工工程f5)リード線付きコンタクトプローブ1を得た。
上記実施態様では、金属ばね線5に真直ベリリウム銅線を用い、この外周に絶縁被覆6としてポリウレタン皮膜を設けて絶縁真直ベリリウム銅線wとし、次いで定尺切断加工を行い、次いで先端形状を半球形状とした後ニッケルめっき処理を行い、次いで間隔が0.2mmで角度が150°の2箇所の折り曲げ加工による折り曲げ加工部4を有しているが、金属ばね線5の材質は他の銅合金、例えばりん青銅、銅銀合金、またはタングステンであってもよい。また金属ばね線5のサイズは、検査対象の電極の間隔等により選定されるが、例えばφ0.05mm~φ0.10mmである。また絶縁被覆6は、ポリウレタン皮膜がはんだ付け性を有するので好ましいが、ポリエステル、ポリエステルイミド等、各種のエナメル皮膜が用いられる。また先端研削加工部7の形状は針状または平坦形状(台形等も含む)であってもよい。また、先端めっき加工部7のめっき層mはニッケル以外のめっき材質、例えばニッケル-リン、ニッケル-ボロン、パラジウム、ロジウム等であってもよい。また、折り曲げ加工部4は2箇所以上、例えば3箇所、4箇所であってもよく、また折り曲げ角度および折り曲げ間隔が如何様であっても、何ら本発明を逸脱するものでないことは勿論である。」
「【図1】
[図:0001402738000004.jpg]
」
イ 甲3文献の記載事項
甲3文献(特開2010-156648号公報)には、次の記載がある。
「【0023】
(リード線一体型のプローブ)
プローブ10は、リード線一体型のワイヤー型プローブである。ここでの「ワイヤー型」は従来の短いピン型プローブに対して、ある程度の長さを持っていることを表す用語として用い、「リード線一体型」はピン型プローブとリード線とで構成された従来の信号伝達導体構造に対する用語として用いている。すなわち、リード線一体型のワイヤー型プローブとは、従来のようにプローブとリード線とが分かれておらず、接触圧力が変動したり接触自体が繰り返されたりすることによりプローブとリード線との接触抵抗が不安定になるという問題が生じない長尺の信号伝達導体であって、金属線15と、金属線15上に設けられた絶縁層16とを有するものである。
【0024】
金属線15は、所定の長さに加工されてなる線状導体であり、高い導電性と高い弾性率を有する金属線(「金属ばね線」ともいう。)を切断加工して形成されている。金属線15に用いられる金属としては、広い弾性域を持つ金属を挙げることができ、例えばベリリウム銅等の銅合金、タングステン、レニウムタングステン、鋼(例えば高速度鋼:SKH)等を好ましく用いることができる。金属線15が弾性材で構成される理由は、本発明のプローブユニット構造1がプローブ10の先端11を被検査体50に押し当て、湾曲したプローブ10の反発力を検査圧力として利用しているからである。
【0025】
プローブユニット構造1においては、被検査体50に押し当たるプローブ先端11の長さと、被検査体にプローブ先端11が押し当たって湾曲する湾曲部13の長さと、リード線として機能するリード部14の長さとを少なくとも確保する必要があるので、プローブ10はある程度の長さが必要であり、特にリード部14が長い必要があるため、金属線11の長さとしては、数百mm、例えば200mm程度から500mm程度の長さは最低限必要である。こうした長さの金属線15は、先端11から後端12まで継ぎ目がないものが通常用いられるが、融着やカシメ等によって継ぎ目を持たせたものであってもよい。ただし、継ぎ目を持たせる場合は、リード部14である必要がある。
【0026】
金属線15は、通常、上記の金属が所定の径の線状導体となるまで冷間又は熱間伸線等の塑性加工が施される。金属線15の外径は、接触させる被検査体の大きさ、プレート穴24の直径、プレート穴への挿入本数、リード線としての取り扱い易さ等によって任意に設定されるが、通常、20μm以上500μm以下、好ましくは25μm以上200μm以下の範囲内から任意に選択することができる。なお、金属線15の先端側の端部と後端側の端部の形状は特に限定されないが、図5(B)に示すように、使用時に研削されるので、通常は平坦面又はやや湾曲した平面形状であればよい。」
ウ 甲1文献の記載事項
甲1文献(特開平6-196535号公報)には、次の記載がある。
「【0021】図1の2は検査対象物の半導体素子であって、その表面に多数の電極14が配列されている。該電極14に対向せしめて複数本のスプリングプローブ15が配列されている。該スプリングプローブ15はプローブ用チューブと、そのプローブ用チューブ内に摺動自在で、ばねの弾性力にて常に先端部が該プローブ用チューブ内から外方に突出する2個の可動ピンとから構成されている。該スプリングプローブ15は上下一組の絶縁基板16を貫通し、該スプリングプローブ15のチューブ外形よりも若干小さな径を有するプローブの先端部17はプローブ先端位置決め用の絶縁基板18を摺動可能な状態で貫通している。該上下一組の絶縁基板16の間には該スプリングプローブ15の長さに適したスペーサ19が設けられている。上記絶縁基板16および18は、快削性セラミックス、アクリル、ポリイミド、エンジニアリングプラスチック、またはエッチングによりスルーホールを形成した感光性ガラスで構成する。
【0022】該スプリングプローブ15の他端から電気信号を検査装置本体に伝送するためのパターン拡大用の配線部分の構成は、検査回路(図示せず)に接続されている。同軸コネクタ39が固定されている配線基板21の表面に形成された電極22に、はんだ23で接続された線材24の一端にチューブ25を固着し、該チューブ25の他端に該スプリングプローブ15を保持するための絶縁基板16のスルーホールの対応位置にスルーホールを形成した該チューブ25保持用の絶縁基板20の該スルーホールの径よりも若干大きな外径を先端部に形成した金属電極26を上記スプリングプローブ15の一方の可動ピンの先端部27に対接するように固定させた該チューブ25が接続された線材24を、接着剤28で配線パターン拡大用の絶縁基板20に固定して構成されている。」
「【0027】図3の25は導電性のチューブであって、24は線材、26は絶縁基板20に形成したスルーホール40の径よりも若干大きな外径を先端部に形成した金属電極である。上記24および金属電極26は導電性のチューブ25に圧着により接続されている。この接続は、レーザ溶接、スポット溶接あるいは、はんだ接続によっても良い。検査回路へ接続するための配線基板21の電極22へ接続するための引き出し用の配線は、銅、タングステン、ステンレス、銅-錫合金、ベリリウム-銅合金などの導電性金属からなる芯線24にポリイミド、ポリテトラフルオロエチレン、ポリパラキシレン若しくはエナメルなどの絶縁性樹脂を被覆して構成されるか、あるいは、銅、タングステン、ステンレス、銅-錫合金、ベリリウム-銅合金などの導電性金属からなる芯線24をポリイミドあるいはポリテトラフルオロエチレンなどの絶縁性チューブ41に挿入して構成されている。」
「【図1】
[図:0001402738000005.jpg]
」
「【図3】
[図:0001402738000006.jpg]
」
エ 周知技術1の認定
前記ア及びイにおいて摘記した事項に例示されるように、次の技術事項は周知技術である(以下「周知技術1」という。)
[周知技術1]
「コンタクトプローブを用いて電気特性を検査する検査装置に設けられるリード導体部が、銅合金の線材からなり、その導体径が0.02~0.5mmの範囲内にあること。」
オ 周知技術2の認定
前記ウにおいて摘記した事項に例示されるように、次の技術事項は周知技術である(以下「周知技術2」という。)
[周知技術2]
「リード線の導体部の外周に絶縁被膜が設けられること。」
(3) 技術常識1を示す文献
ア 甲4文献の記載事項
甲4文献(特開2005-336510号公報)には、次の記載がある。
「【0018】
本発明の好適一実施の形態に係る極細銅合金線は、最終線径が0.05mm以下、好ましくは0.008~0.05mmのものであり、化学組成がCu-1.0~3.5wt%Agの銅合金単体で構成されるものである。この銅合金単体の相組織は、Cuマトリックス中に、ファイバ状(フィラメント状)のCuとAgの共晶相が、線材の全体積の3~20%の割合で分散してなるものである。本実施の形態に係る極細銅合金線は、800MPa以上、好ましくは840~1200MPaの引張強度、80%IACS以上、好ましくは84%IACS以上の導電率を有する。」
「【0047】
(実施例1)
銅合金製造のための母材として、Cu含有率が99.9999wt%、不可避不純物の濃度が総和で0.5ppmの高純度Cu線材を用いた。この線材の表面を酸洗浄した後、真空チャンバ内に固定して設けられた高純度黒鉛るつぼ内に装填し、高純度Cu線材の真空溶解を行った。高純度Cu線材が完全溶解した後、チャンバ内の真空雰囲気をアルゴンガス雰囲気に置換した。その後、高純度黒鉛るつぼ内に純Ag線材を装填し、銅合金溶湯の溶製を行った。この時、銅合金溶湯の化学組成がCu-2.0wt%Agとなるように、純Ag線材の装填量の調整を行った。
【0048】
得られた銅合金溶湯を連続鋳造設備の黒鉛製鋳型に注湯し、直径8.0mmの荒引き線(鋳造体)の連続鋳造を行った。銅合金溶湯の冷却速度は450℃/minとした。
【0049】
この荒引き線に一次伸線加工(減面率:約89.4%)を施して伸線材を形成した後、この伸線材に皮むき処理、酸洗浄処理を施して直径2.6mmに形成した。その後、伸線材をArガス雰囲気中で400℃まで加熱して10時間保持した後、冷水で急冷するという熱処理を施した。この熱処理後の伸線材に二次伸線加工(減面率:約99.9%)を施して直径0.016mmの極細銅合金線を作製した。
【0050】
(実施例2)
実施例1と同じ銅合金溶湯を連続鋳造設備の黒鉛製鋳型に注湯し、直径8.0mmの荒引き線(鋳造体)の連続鋳造を行った。銅合金溶湯の冷却速度は425℃/minとした。
【0051】
この荒引き線に一次伸線加工(減面率:約98.7%)を施して伸線材を形成した後、この伸線材に皮むき処理、酸洗浄処理を施して直径0.9mmに形成した。その後、伸線材を、Arガス雰囲気、800℃の均熱帯中を20秒間走行させるという熱処理を施した。この熱処理後の伸線材に二次伸線加工(減面率:約99.9%)を施した後、その伸線材にAgメッキ処理を施し、直径0.016mmの極細銅合金線を作製した。
【0052】
(実施例3)
実施例1と同様にして、化学組成がCu-1.5wt%Agの銅合金溶湯の溶製を行った。得られた銅合金溶湯を連続鋳造設備の黒鉛製鋳型に注湯し、直径8.0mmの荒引き線(鋳造体)の連続鋳造を行った。銅合金溶湯の冷却速度は450℃/minとした。
【0053】
この荒引き線に一次伸線加工(減面率:約98.7%)を施して伸線材を形成した後、この伸線材に皮むき処理、酸洗浄処理を施して直径0.9mmに形成した。その後、伸線材をArガス雰囲気中で400℃まで加熱して5時間保持した後、冷水で急冷するという熱処理を施した。この熱処理後の伸線材に二次伸線加工(減面率:約99.9%)を施して直径0.016mmの極細銅合金線を作製した。
(実施例4)
実施例1と同様にして、化学組成がCu-3.0wt%Agの銅合金溶湯の溶製を行った。得られた銅合金溶湯を連続鋳造設備の黒鉛製鋳型に注湯し、直径8.0mmの荒引き線(鋳造体)の連続鋳造を行った。銅合金溶湯の冷却速度は450℃/minとした。
【0054】
その後は、熱処理時の加熱温度を500℃とする以外は、実施例3と同様にして直径0.016mmの極細銅合金線を作製した。
(比較例1)
実施例1と同様にして、化学組成がCu-0.4wt%Agの銅合金溶湯の溶製を行った。得られた銅合金溶湯を連続鋳造設備の黒鉛製鋳型に注湯し、直径8.0mmの荒引き線(鋳造体)の連続鋳造を行った。銅合金溶湯の冷却速度は450℃/minとした。
【0055】
その後は、熱処理時の保持時間を10時間とする以外は、実施例3と同様にして直径0.016mmの極細銅合金線を作製した。
【0056】
(比較例2)
実施例1と同様にして、化学組成がCu-1.5wt%Agの銅合金溶湯の溶製を行った。得られた銅合金溶湯を連続鋳造設備の黒鉛製鋳型に注湯し、直径8.0mmの荒引き線(鋳造体)の連続鋳造を行った。銅合金溶湯の冷却速度は500℃/minとした。
【0057】
その後は、熱処理時の保持時間を10時間とする以外は、実施例3と同様にして直径0.016mmの極細銅合金線を作製した。
(比較例3)
実施例1と同様にして、化学組成がCu-5.0wt%Agの銅合金溶湯の溶製を行った。得られた銅合金溶湯を連続鋳造設備の黒鉛製鋳型に注湯し、直径8.0mmの荒引き線(鋳造体)の連続鋳造を行った。銅合金溶湯の冷却速度は450℃/minとした。
【0058】
その後は、熱処理時の加熱温度を450℃、保持時間を10時間とする以外は、実施例3と同様にして直径0.016mmの極細銅合金線を作製した。
【0059】
得られた実施例1~4及び比較例1~3の各極細銅合金線について、線材の全体積に占める共晶相の体積率(%)、引張強度(MPa)、伸び(%)、導電率(%IACS)の評価を行った。それらの評価結果を表1に示す。
【0060】
【表1】
[図:0001402738000007.jpg]
」
イ 引用文献2の記載事項
引用文献2(独立行政法人物質・材料研究機構の発表資料「高強度・高導電率銅合金の開発 低濃度のAg添加で世界一の強度・導電率バランスを実現」平成17年12月5日)には、次の記載がある。
(ア) 2頁下から7行~3頁6行
「研究成果の内容
本研究は上記の問題点を解決するべくなされたもので、1~6wt%のAgを含有し、残部がCuからなる合金組成の鋳塊を溶製し、800℃、2hの溶体化処理6)後水焼入れを行い、表面を研削した後、冷間加工を行いその途中で、真空雰囲気又は不活性ガス中で400℃以上550℃未満の温度で再結晶化熱処理を施し、さらに冷間加工をすることにより2wt%Agの低濃度においても1200MPa7)、80%IACS8)以上の従来実現できなかった高強度で高導電率特性を有する銅合金の製造を可能にする。本研究は冷間加工途中で十分再結晶が生じる温度で比較的長時間保持するという、強度を意図した材料を得んとする場合に常識外である熱処理を加えることを特徴の一つとするもので、冷間加工工程中ただ1回の熱処理によって強度はその後の冷間加工度の上昇に伴い急激に向上するとともに、加工度9)η(但し、η=lnA0/A A0:加工前断面積、A:加工後断面積)が11以上の超強加工域まで中間焼鈍処理10)なしで加工できるという、従来全く予想出来なかった知見とその確認に基づくものである。」
(イ) 3頁下から3行~最終行
「 図7に本手法で加工したCu-1wt%Ag~6wt%Ag合金の強度と導電率の関係を示す。Cu-2wt%Ag合金の強度及び導電率は1200MPa、81.7%IACS、Cu-3wt%Ag合金では1400MPa、76.4%IACSという、低濃度材では実現できなかった高強度、高導電率が得られる。」
(ウ) 4頁1~17行
「波及効果と今後の展開
第一の特徴は銅合金中で最も優れた強度―導電率バランスを有することである。強度は高強度銅合金の代表であるCu-Be合金に匹敵し、導電率はその3.5倍という驚異的な特性を有する。強度は機器の小型化、軽量化、薄型化に寄与し、導電率はエネルギーの消費やジュール熱の発生を抑制する。例えばロボット産業を考えた場合、近い将来、ロボットの技術革新は益々盛んになりロボットは工業分野や一般家庭に今以上に導入されると考えられるが、これらの機器には電子機器の軽薄短小、駆動部分の耐久性(駆動部分の配線は繰り返し応力がかかる)等を究極まで追求することが要求されるし、電力やバッテリーの消費を抑制することが必要となる。
第二の特徴は単純な合金系(2元系)で且つ添加元素を極力抑えていることである。材料の特性、信頼性、耐久性、製造工程の容易さ{設備、溶解、加工、熱処理}、大量生産、環境、資源、リサイクル等トータルな観点からコストパフォーマンスに優れている。
第三の特徴は優れた加工性が挙げられる。中間焼鈍処理なしで加工度ηが11以上の超強加工域まで容易に加工できる(20μm程度の極細線や箔の製造ができる)。従って、多様なサイズや形状の部品の製造が可能になる。
従来材では不可能であった特性(高強度、高導電率、極細)を有する材料が本発明によって低コストで製造できることは、電機、電子産業分野で大きな経済効果が期待できる。」
(エ) 図7
「
[図:0001402738000008.jpg]
」
ウ 技術常識1の認定
前記ア及びイにおいて摘記した事項に例示されるように、次の技術事項は技術常識である(以下「技術常識1」という。)
[技術常識1]
「少量の銀(2~5wt%程度)を銅に添加したCu-Ag二元合金で構成された極細銅合金線(線径0.05mm以下)は、その製造方法を工夫することにより、引張強度が高く(800MPa以上)、導電率も高い(80%IACS前後)ようにできること。」
(4) 技術常識2を示す文献
ア 引用文献3の記載事項
引用文献3(田中和明「図解入門 最新金属の基本がわかる事典」株式会社秀和システム2015年7月1日、85頁)には、次の記載がある。
(ア) 85頁本文
「金属の硬さと引張り強さ
一般的に硬さと強さは同じ傾向です。硬い金属は強い金属です。引張り強さとビッカース硬度を各種金属で見てみると、引張り強さの3分の1の数値がビッカース硬度になっています*。」
(イ) 85頁脚注
「*…なっています。
この関係は、硬さは表面硬さではなく、内部組織を計測したときの一般論であって、学術的ではない。しかし、「Hv=200か。じゃあ60キロ鋼だな」との現場的な「あたりをつける」のに役立つ。」
(ウ) 各種金属の硬さと引張り強さの相関関係(3-3-4)
「
[図:0001402738000009.jpg]
」
イ 甲5文献の記載事項
甲5文献(坂井義和他「高強度・高導電性Cu-Ag合金の開発」日本金属学会誌,55巻12号(1991)1382-1391頁)には、次の記載がある。
(ア) 1384頁左欄2行~右欄10行
「2. 引張強さおよび導電率
引張強さおよび導電率は熱処理条件により変化する.Fig.5およびFig.6は,Cu-Ag合金線材の引張強さおよび導電率のAg添加量依存性を示す.これらの試料は冷間伸線加工の過程で,数回の中間熱処理を行い,加工度98.2%および99.2%まで伸線加工を行ったものである.中間熱処理として,析出を促進し分散状態を制御するための最適条件,すなわち加工度35%で450℃,2hの熱処理後,引続き加工を行い加工度65%で450℃,1h,最後に加工度90%で350℃,1hの熱処理を行ったものである.熱処理効果の詳細についてはIII-3節に述べる.引張強さ(Fig.5)はAg添加量が少ない領域では急激に上昇するが,10-20at%Ag付近で飽和傾向を示す.そしてCu-Ag合金の共晶組成である60at%Agにおいて,引張強さが最大値を示す.また,引張強さは加工度が大きいほど高くなる.一方,導電率(Fig.6)は引張強さと逆の傾向を示し,Ag添加量および加工度の増加に伴い低下する.Fig.7は引張強さの加工度依存性を示す.中間熱処理条件はFig.5およびFig.6と同様である.すべての組成において加工度が増すに従い,引張強さは指数関数的に増大する.もちろんCuおよびAg単体の引張強さは,Fig.8に示すように,加工度が増加しても低い値に留まっており,中間熱処理を施したCu-Ag合金の強度は,それら単体の引張強さを用いた複合則により見積もられる値よりはるかに高くなる.Cu-Ag合金の鋳造組織はFig.1に示したように,α相および共晶(α相十β相)の2相から成っており,Fig.3およびFig.4に示すように,伸線加工の過程においてそれら2相が微細にかつ伸線方向に引き伸ばされファイバー状組織になる.写真から求めたファイバー径(引き伸ばされたα粒の線径):dと強度の定量的関係をFig.9に示す.強度はd値が小さくなるほど高く,ほぼHa11-Petchの関係に従うことが分かる.d値はAg添加量(Fig.10)ならびに加工度に強く依存し,本実験範囲では,Ag添加量が多いほどまた加工度が増すほど小さくなる.共晶組成ではα相とβ相が細かく晶出することから,Fig.5において引張強さが最高値を示すことが理解される.」
(イ) 1384頁右欄11行~1385頁右欄5行
「3. 熱処理の効果
本実験では鋳造材のまま冷間加工を行うが,鋳造材には,既に述べたように,α相中にはAgが,またβ相中にはCuが固溶している.この固溶しているCuおよびAgを加工と熱処理の組合せにより望ましい形状に析出させることができれば,引張強さならびに導電率の向上が図れる.その効果を調べるために,まず,鋳造材および800℃,1hの溶体化処理を施した材料の,400℃および500℃での時効による硬度の変化を調べたが,その変化は小さかった.また溶体化処理材においては,結晶粒の粗大化のために,その後の冷間加工中に割れが生じた.
次に,加工と熱処理を組み合わせた場合の硬度変化を調べた.その結果をFig.11に示す.比較のために,図中曲線(a)は,熱処理を全く行わない非熱処理材の加工度に対する硬度変化を示す.非熱処理材では加工初期に硬度の上昇が観察され,さらに加工を進めると,硬度の上昇は緩やかになり,加工度が90%を超えると再び急激に硬度が上昇する.このような変化は,すべての非熱処理材の加工度に対する硬度変化において認められた.また加工前にのみ,450℃,1hの熱処理を行った試料の硬度変化曲線は,非熱処理材のそれと同様で,加工前熱処理の効果は認められなかった.そこで,加工途中に熱処理を行う方法を試みた.
曲線(b)は40%加工を行った段階で,450℃,1hの熱処理を行い,再び加工を行った試料の硬度変化を示す.加工途中に中間熱処理を行った場合,その後の加工において,非熱処理材あるいは加工前熱処理を行った試料に比較して,急激な硬度の上昇が認められる.しかしながら加工度75%から90%にかけて硬度の上昇が停滞する.この傾向は中間熱処理を行う加工度を変えても,硬度上昇の停滞する加工度の範囲が異なるだけで,同様である.そこで,硬度上昇の停滞が認められる段階(加工度75%)で,再び450℃,1h熱処理を行った試料の硬度変化を曲線(c)に示す.加工途中に2度中間熱処理を行った試料は,加工度の増加とともに急激に硬度が上昇する.」
(ウ) 1388頁の図8
「
[図:0001402738000010.jpg]
」
(エ) 1388頁の図11
「
[図:0001402738000011.jpg]
」
ウ 技術常識2の認定
前記アにおいて摘記した事項に例示されるように、金属や合金の引張強度値からビッカース硬度値のあたりをつける場合には、引張強度(MPa単位)の値に所定の係数(例えば3分の1)を掛ければよいことは技術常識であり(以下「技術常識2」という。)、この技術常識は、イにおいて摘記した事項、特に、Cu-12at%Agの場合の図8の引張強度と、図11のマイクロビッカース硬度の関係をみても、概ね通用するものであるといえる
[技術常識2]
「合金の引張強度(MPa単位)から、ビッカース硬度(HV単位)を概算するには、熱処理の程度によるものの、概ね3分の1程度の係数を掛ければよいこと。」
3 本件訂正発明1について
(1) 対比
本件訂正発明1と引用発明を対比する。
ア(ア) 本件訂正発明1の「被測定体の検査装置を構成する検査用治具」について、特許権者は、当審における審尋に対して令和4年11月14日に提出した意見書において、「検査装置」は、「検査用治具(プローブユニット)10」と「リード線装着部品60」と「本体部(計測機器のことであり、ここでは図示しない。)」を備えたものであり、符合10に含まれるのは、「プローブ1」、「被測定体側のガイド板20」及び「検査装置側のガイド板30」であり、「リード線装着部品60」は検査用治具(プローブユニット)10が備えるものであるが、符合10そのものには含まれない旨回答している(前記意見書4~5頁の各回答を参照)。
(イ) 上記回答内容を踏まえると、引用発明の「プローブユニット10」は、「電気特性を測定する検査装置に接続された検査装置用治具」であるから、本件訂正発明1の「被測定体の検査装置を構成する検査用治具」に相当する。
(ウ) また、引用発明の「プローブ1」は、本件訂正発明1の「プローブ」に相当する。
イ 引用発明の「電気特性の検査」は、「プローブユニット10を上下させ、プローブ1の弾性力を利用して被測定体11の電極12にプローブ1の先端2aを所定の圧力で押し当てることにより行われ、プローブ1の後端2bはリード線50に接触」するところ、引用発明の「プローブユニット10を上下させ」て「プローブ1の後端2b」に「接触」する「リード線50」は、本件訂正発明1の「プローブに繰り返し接触する導体部を有するリード線」に相当する。
ウ 引用発明の「リード線50」が「リード線用の保持板40により保持されて」いることは、本件訂正発明1の「被測定体の検査装置を構成する検査用治具」に「リード線」が「設けられて」いることに相当する。
エ 引用発明では、「被測定体11からの電気信号がそのリード線50を通って検査装置に送られる」から、引用発明の「リード線50」は、本件訂正発明1の「検査装置用リード線」に相当する。
(2) 一致点及び相違点
前記(1)の対比の結果をまとめると、本件訂正発明1と引用発明の一致点及び相違点は、以下のとおりである。
ア 一致点
「 被測定体の検査装置を構成する検査用治具に設けられてプローブに繰り返し接触する導体部を有する検査装置用リード線。」
イ 相違点
本件訂正発明1の「リード線」は、「前記導体部は、2~10質量%のAgを含有し残部がCu及び不可避不純物であり、導体径が0.018~0.18mmの範囲内の銅合金線からなり、引張強度が778~1500MPaの範囲内であり、マイクロビッカース硬度が227~350HV(0.04)の範囲内であり、導電率が60~85%IACSの範囲内」であるのに対して、引用発明の「リード線50」は、そのような特定がされていない点。
(3) 相違点についての判断
ア 導体径について
「コンタクトプローブを用いて電気特性を検査する検査装置に設けられるリード導体部が、銅合金の線材からなり、その導体径が0.02~0.5mmの範囲内にあること」は、周知技術であるから(前記周知技術1を参照)、本件訂正発明1の「リード線」の「導体部」について、「導体径が0.018~0.18mmの範囲内の銅合金線からな[る]」ように構成することは、コンタクトプローブを用いた検査装置において通常採用されている周知の材料の形状パラメータを特定したものにすぎず、格別のものではない。
イ 組成比、引張強度、導電率について
(ア) 引用発明の「電気特性の検査」は、「プローブユニット10を上下させ、プローブ1の弾性力を利用して被測定体11の電極12にプローブ1の先端2aを所定の圧力で押し当てることにより行われ、プローブ1の後端2bはリード線50に接触し、被測定体11からの電気信号がそのリード線50を通って検査装置に送られる」ものであるから、引用発明において、被測定体11からの電気信号が検査装置に確実に送られる程度の電気的特性(導電性)と、リード線50がプローブ1の後端2bに繰り返し接触してもリード線の端面の摩耗が生じにくい程度の機械的特性(強度)が、同時に満たされるように材料選択すべきことは、明示の記載がなくても当業者にとって自明な設計指針である。
(イ) また、一般に合金において導電性と強度はトレードオフの関係にあるから(甲5文献の1382頁右欄最終行から1383頁左欄2行を参照)、引用発明の「リード線50」について、合金材料を用いた場合に導電性と強度の要求水準が同時に満たされるように材料選択の最適化を行う必要があることは明らかである。
(ウ) ここで、「少量の銀(2~5wt%程度)を銅に添加したCu-Ag二元合金で構成された極細銅合金線(線径0.05mm以下)は、その製造方法を工夫することにより、引張強度が高く(800MPa以上)、導電率も高い(80%IACS前後)ようにできること」は技術常識であるから(前記技術常識1参照)、引用発明の「リード線50」について、上記自明な設計指針に従って、少量の銀を銅に添加したCu-Ag二元合金で構成することにより、導電性と強度の要求水準が同時に満たされるように最適化することは、当業者ならば格別の困難性はないというべきである。
(エ) したがって、本件訂正発明1の「銅合金線」について、「前記導体部は、2~10質量%のAgを含有し残部がCu及び不可避不純物であ[る]」ことは、前記技術常識1をわきまえた当業者が適宜なし得た材料の選択にすぎず、格別のものではない。
また、「引張強度が778~1500MPaの範囲内であり」、「導電率が60~85%IACSの範囲内」であることも、前記技術常識1をわきまえた当業者が最適な製造方法を適宜選択することにより得られる構成にすぎない。
ウ マイクロビッカース硬度について
「引張強度(MPa単位)から、ビッカース硬度(HV単位)を概算するには、熱処理の程度によるものの、概ね3分の1程度の係数を掛ければよいこと」は技術常識であるから(前記技術常識2を参照)、本件訂正発明1の「銅合金線」の「引張強度が778~1500MPaの範囲内」であるとき、「マイクロビッカース硬度が227~350HV(0.04)の範囲内」であることは、自明な事項を特定したものにすぎない。
なお、当審の審尋事項である「HV(0.04)」の意味について、特許権者は、令和4年11月14日に提出した意見書において、「HV(0.04)」はマイクロビッカース硬度の荷重を指している旨回答している。
合議体も、「HV(0.04)」を特許権者の回答どおりの意味に解釈しているが、かかる解釈を採用したことによって上記相違点に係る当審の判断が左右されることはない。
エ 小括
前記ア~ウの検討結果より、前記相違点に係る本件訂正発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
また、本件訂正発明1の奏する効果としては、引用発明、周知技術1及び技術常識1、2から、当業者が予測困難で、かつ、格別顕著なものを認めることはできない。
したがって、本件訂正発明1は、引用発明、周知技術1及び技術常識1、2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
4 本件訂正発明3について
「リード線の導体部の外周に絶縁被膜が設けられること」は、周知技術であり(周知技術2を参照)、本件訂正発明3の構成は格別のものではない
5 本件訂正発明4、5について
「検査装置用リード線の端面と保持板の表面とが平坦になっている」ことは、例えば、引用文献1の【図6】に記載されている。
また、「検査装置用リード線の端面が前記保持板の表面よりも突出している」ことは、例えば、甲1文献の【図5】や甲2文献の【図4】に記載されている。
そして、「本体部とともに検査装置を構成する検査用治具」も、これらの図から読み取れる事項にすぎない。
したがって、本件訂正発明4、5の構成は格別のものではない。
<引用文献1の図6>
[図:0001402738000012.jpg]
<甲1文献の図5>
[図:0001402738000013.jpg]
<甲2文献の図4>
[図:0001402738000014.jpg]
6 特許権者の主張について
(1) 特許権者の主張の概要
特許権者は、令和4年11月14日に提出した意見書において、概ね次の主張をしている。
ア 主張1
本件訂正発明の解決課題は、リード線に研磨ダレが生じないようにしてリード線を狭ピッチで保持板に装着してもショートが生じないようにすることであり、かかる課題は、引用文献1に記載も示唆もされていない。
イ 主張2
甲1~5文献、引用文献2、3に、各構成要素(導体材質要素、導体径要素、引張強度要素、マイクロビッカース硬度要素及び導電率要素)が記載されているとしても、それらは本件訂正発明と同じ課題を解決するための数値範囲として記載されたものではなく、類似の課題を解決するための数値範囲として記載されたものでもなく、単に一般的な範囲として記載されているにすぎず、本件訂正発明の課題解決手段の構成として実験的根拠に基づいて特定されたものではない。
(2) 特許権者の主張に対する当審の判断
ア 主張1に対する当審の判断
引用発明では、「プローブユニット10を上下させ、プローブ1の弾性力を利用して被測定体11の電極12にプローブ1の先端2aを所定の圧力で押し当てることにより行われ、プローブ1の後端2bはリード線50に接触し、被測定体11からの電気信号がそのリード線50を通って検査装置に送られる」から、リード線50がプローブ1の後端2bに繰り返し接触してもリード線の端面の摩耗が生じにくい程度の機械的特性(強度)が要求されることは、明示の記載がなくても自明な課題である。
そして、このような自明の課題を解決するために、組成比、引張強度、マイクロビッカース硬度を好適化することは、当業者の通常の創作能力の発揮にすぎないから、請求人の主張1は前記3(3)エ、4、5の結論を左右するものではない。
なお、このような機械的特性(強度)が確保されていれば、リード線に研磨ダレが生じ難くなることも自明であるから、リード線に研磨ダレが生じないこと、及び、その結果としてリード線を狭ピッチで保持板に装着してもショートが生じないことは、当業者が予測又は容易に発見できる効果にすぎない。
イ 主張2に対する当審の判断
本件訂正発明が規定する各構成要素(導体径、組成比、引張強度、導電率、マイクロビッカース硬度)は、集積度の高い検査装置を検査することや機械的特性(強度)を確保する観点から当業者が適宜好適化すべきことにすぎないから、請求人の主張2は前記3(3)エ、4、5の結論を左右するものではない。
7 まとめ
以上検討のとおりであるから、本件訂正発明1、3~5は当業者が容易に発明することができたものである。
したがって、本件訂正発明1、3~5に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものである。
第6 むすび
以上のとおりであるから、請求項1、3~5に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものであり、特許法113条2号に該当し、取り消されるべきものである。
請求項2は、本件訂正により削除された。これにより、請求項2に係る特許についての特許異議の申立ては、当該申立てに係る特許が存在しないこととなったため、不適法な特許異議の申立てであって、その補正をすることができないものであるといえるから、特許法120条の8第1項で準用する同法135条の規定により却下すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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2022-700593