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特許異議申立

2023-700668

シリコンドリフト型放射線検出素子、シリコンドリフト型放射線検出器及び放射線検出装置

審判番号
2023-700668
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2019-559215
登録番号
7197506
請求日
2023年06月26日
審決日
2024年03月28日
公報発行日
2024年06月28日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】株式会社堀場製作所
  • 【権利者代理人】河野 英仁
  • 【権利者代理人】河野 登夫
  • 【異議申立人】伊東 沙織
審判長/審判官
  • 審判長 山村 浩
  • 審判官 安藤 達哉
  • 審判官 松川 直樹
分類
P1652.113-YAA(G01T) / P1652.121-YAA(G01T) / P1652.537-YAA(G01T)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法120条の8第1項特許法135条
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第120条の5第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第29条第1項、特許法第29条第2項、特許法第120条の8第1項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7197506号発明「シリコンドリフト型放射線検出器及び放射線検出装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7197506号「シリコンドリフト型放射線検出器及び放射線検出装置」の明細書及び特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項[1~6]、[7~14]、15、16、17、18、19について訂正することを認める。 特許第7197506号の請求項7~11、13~19に係る特許を維持する。 特許第7197506号の請求項1~6に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7197506号(以下「本件特許」という。)の請求項1~14に係る特許についての出願は、2018年(平成30年)12月14日(優先権主張 2017年(平成29年)12月15日、以下「優先日」という。)を国際出願日とする出願であって、令和4年12月19日にその特許権の設定登録がされ、令和4年12月27日に特許掲載公報が発行された。 本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。 令和 5年 6月27日(受付日):特許異議申立人伊東沙織(以下「申立人」という。)による請求項1~11、13~14に係る特許に対する特許異議の申立て 同年 9月22日付け :取消理由通知書 同年11月27日(受付日):特許権者による意見書及び訂正請求書(以下、この訂正請求書を「本件訂正請求書」といい、本件訂正請求書による訂正を「本件訂正」という。)の提出 なお、当合議体は、申立人に対し、本件訂正に係る請求について、相当の期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが、その期間内に申立人からは何らの応答もなかった。 第2 本件訂正の適否 1 本件訂正の内容 本件訂正の内容は、次のとおりである。下線は訂正箇所を示す。 (1)訂正事項1(請求項1) 請求項1を削除する。 (2)訂正事項2(請求項2) 請求項2を削除する。 (3)訂正事項3(請求項3) 請求項3を削除する。 (4)訂正事項4(請求項4) 請求項4を削除する。 (5)訂正事項5(請求項5) 請求項5を削除する。 (6)訂正事項6(請求項6) 請求項6を削除する。 (7-1)訂正事項7-1(請求項7) 訂正前の請求項7に、 「ハウジングと、 該ハウジングの内側に配置された請求項1乃至6のいずれか一つに記載のシリコンドリフト型放射線検出素子とを備え、 前記ハウジングは、塞がれていない開口部を有し、 前記シリコンドリフト型放射線検出素子は、前記開口部に対向する表面を有し、 該表面の上に遮光膜が設けられていること を特徴とするシリコンドリフト型放射線検出器。」 と記載されているうち、請求項1を引用するものについて、 「ハウジングと、 該ハウジングの内側に配置されたシリコンドリフト型放射線検出素子とを備え、 前記ハウジングは、塞がれていない開口部を有し、 前記シリコンドリフト型放射線検出素子は、前記開口部に対向しており放射線が入射する表面を有し、 該表面上に直接又は他の膜を介して遮光膜が設けられており、 前記表面は前記開口部よりも大きく、 前記ハウジングは、前記開口部の縁を含み、前記表面の一部に重なった重なり部分を有し、 前記重なり部分は、前記表面に接着部材を介して接着されていること を特徴とするシリコンドリフト型放射線検出器。」と訂正する(請求項7を直接的又は間接的に引用する請求項9~14も同様に訂正する。)。 (7-2)訂正事項7-2(請求項15) 訂正前の請求項7に、 「ハウジングと、 該ハウジングの内側に配置された請求項1乃至6のいずれか一つに記載のシリコンドリフト型放射線検出素子とを備え、 前記ハウジングは、塞がれていない開口部を有し、 前記シリコンドリフト型放射線検出素子は、前記開口部に対向する表面を有し、 該表面の上に遮光膜が設けられていること を特徴とするシリコンドリフト型放射線検出器。」 と記載されているうち、請求項2を引用するものについて、 「ハウジングと、 該ハウジングの内側に配置されたシリコンドリフト型放射線検出素子とを備え、 前記ハウジングは、塞がれていない開口部を有し、 前記シリコンドリフト型放射線検出素子は、前記開口部に対向しており放射線が入射する表面を有し、 該表面上に直接又は他の膜を介して遮光膜が設けられており、 前記遮光膜は、前記表面に入射する光の量を0.1%未満に減少させ、 前記表面は前記開口部よりも大きく、 前記ハウジングは、前記開口部の縁を含み、前記表面の一部に重なった重なり部分を有し、 前記重なり部分は、前記表面に接着部材を介して接着されていること を特徴とするシリコンドリフト型放射線検出器。」と記載し、新たに請求項15とする。 (7-3)訂正事項7-3(請求項16) 訂正前の請求項7に、 「ハウジングと、 該ハウジングの内側に配置された請求項1乃至6のいずれか一つに記載のシリコンドリフト型放射線検出素子とを備え、 前記ハウジングは、塞がれていない開口部を有し、 前記シリコンドリフト型放射線検出素子は、前記開口部に対向する表面を有し、 該表面の上に遮光膜が設けられていること を特徴とするシリコンドリフト型放射線検出器。」 と記載されているうち、請求項3を引用するものについて、 「ハウジングと、 該ハウジングの内側に配置されたシリコンドリフト型放射線検出素子とを備え、 前記ハウジングは、塞がれていない開口部を有し、 前記シリコンドリフト型放射線検出素子は、前記開口部に対向しており放射線が入射する表面を有し、 該表面上に直接又は他の膜を介して遮光膜が設けられており、 前記遮光膜は、厚さ50nm超500nm未満の金属膜であり、 前記表面は前記開口部よりも大きく、 前記ハウジングは、前記開口部の縁を含み、前記表面の一部に重なった重なり部分を有し、 前記重なり部分は、前記表面に接着部材を介して接着されていること を特徴とするシリコンドリフト型放射線検出器。」と記載し、新たに請求項16とする。 (7-4)訂正事項7-4(請求項17) 訂正前の請求項7に、 「ハウジングと、 該ハウジングの内側に配置された請求項1乃至6のいずれか一つに記載のシリコンドリフト型放射線検出素子とを備え、 前記ハウジングは、塞がれていない開口部を有し、 前記シリコンドリフト型放射線検出素子は、前記開口部に対向する表面を有し、 該表面の上に遮光膜が設けられていること を特徴とするシリコンドリフト型放射線検出器。」 と記載されているうち、請求項4を引用するものについて、 「ハウジングと、 該ハウジングの内側に配置されたシリコンドリフト型放射線検出素子とを備え、 前記ハウジングは、塞がれていない開口部を有し、 前記シリコンドリフト型放射線検出素子は、前記開口部に対向しており放射線が入射する表面を有し、 該表面上に直接又は他の膜を介して遮光膜が設けられており、 前記遮光膜は、カーボン膜であり、 前記表面は前記開口部よりも大きく、 前記ハウジングは、前記開口部の縁を含み、前記表面の一部に重なった重なり部分を有し、 前記重なり部分は、前記表面に接着部材を介して接着されていること を特徴とするシリコンドリフト型放射線検出器。」と記載し、新たに請求項17とする。 (7-5)訂正事項7-5(請求項18) 訂正前の請求項7に、 「ハウジングと、 該ハウジングの内側に配置された請求項1乃至6のいずれか一つに記載のシリコンドリフト型放射線検出素子とを備え、 前記ハウジングは、塞がれていない開口部を有し、 前記シリコンドリフト型放射線検出素子は、前記開口部に対向する表面を有し、 該表面の上に遮光膜が設けられていること を特徴とするシリコンドリフト型放射線検出器。」 と記載されているうち、請求項5を引用するものについて、 「ハウジングと、 該ハウジングの内側に配置されたシリコンドリフト型放射線検出素子とを備え、 前記ハウジングは、塞がれていない開口部を有し、 前記シリコンドリフト型放射線検出素子は、前記開口部に対向しており放射線が入射する表面を有し、 該表面上に直接又は他の膜を介して遮光膜が設けられており、 前記表面とは逆側にある裏面に設けられ、放射線の入射によって発生する電荷が流入し、前記電荷に応じた信号を出力する信号出力電極と、 前記表面に設けられており、電圧を印加される第1電極と、 前記裏面に設けられ、前記信号出力電極を囲んでおり、前記信号出力電極からの距離が互いに異なる複数の第2電極とを更に備え、 前記表面は前記開口部よりも大きく、 前記ハウジングは、前記開口部の縁を含み、前記表面の一部に重なった重なり部分を有し、 前記重なり部分は、前記表面に接着部材を介して接着されており、 前記第2電極は、前記裏面に沿った一の方向の長さが前記裏面に沿った他の方向の長さよりも長い形状を有し、 前記信号出力電極は、前記一の方向に沿って並んでおり互いに接続された複数の電極からなること を特徴とするシリコンドリフト型放射線検出器。」と記載し、新たに請求項18とする。 (7-6)訂正事項7-6(請求項19) 訂正前の請求項7に、 「ハウジングと、 該ハウジングの内側に配置された請求項1乃至6のいずれか一つに記載のシリコンドリフト型放射線検出素子とを備え、 前記ハウジングは、塞がれていない開口部を有し、 前記シリコンドリフト型放射線検出素子は、前記開口部に対向する表面を有し、 該表面の上に遮光膜が設けられていること を特徴とするシリコンドリフト型放射線検出器。」 と記載されているうち、請求項6を引用するものについて、 「ハウジングと、 該ハウジングの内側に配置されたシリコンドリフト型放射線検出素子とを備え、 前記ハウジングは、塞がれていない開口部を有し、 前記シリコンドリフト型放射線検出素子は、前記開口部に対向しており放射線が入射する表面を有し、 該表面上に直接又は他の膜を介して遮光膜が設けられており、 前記表面とは逆側にある裏面に設けられ、放射線の入射によって発生する電荷が流入し、前記電荷に応じた信号を出力する信号出力電極と、 前記表面に設けられており、電圧を印加される第1電極と、 前記裏面に設けられ、前記信号出力電極を囲んでおり、前記信号出力電極からの距離が互いに異なる複数の第2電極とを更に備え、 前記表面は前記開口部よりも大きく、 前記ハウジングは、前記開口部の縁を含み、前記表面の一部に重なった重なり部分を有し、 前記重なり部分は、前記表面に接着部材を介して接着されており、 前記第2電極は、前記裏面に沿った一の方向の長さが前記裏面に沿った他の方向の長さよりも長い形状を有し、 前記信号出力電極は、前記裏面に設けられており前記一の方向に沿って延伸した導電線を含んでいること を特徴とするシリコンドリフト型放射線検出器。」と記載し、新たに請求項19とする。 (8)訂正事項8(請求項8) 訂正前の請求項8に、 「ハウジングと、 該ハウジングの内側に配置されたシリコンドリフト型放射線検出素子とを備え、 前記ハウジングは、塞がれていない開口部を有し、 前記シリコンドリフト型放射線検出素子は、前記開口部に対向しており放射線が入射する表面を有し、 該表面の上に遮光膜が設けられていること を特徴とするシリコンドリフト型放射線検出器。」 と記載されているのを、 「ハウジングと、 該ハウジングの内側に配置されたシリコンドリフト型放射線検出素子とを備え、 前記ハウジングは、塞がれていない開口部を有し、 前記シリコンドリフト型放射線検出素子は、前記開口部に対向しており放射線が入射する表面を有し、 該表面の上に遮光膜が設けられており、 前記表面は前記開口部よりも大きく、 前記ハウジングは、前記開口部の縁を含み、前記表面の一部に重なった重なり部分を有し、 前記重なり部分は、前記表面に接着部材を介して接着されていること を特徴とするシリコンドリフト型放射線検出器。」と訂正する(請求項8を直接的又は間接的に引用する請求項9~14も同様に訂正する。)。 (9)訂正事項9(発明の名称) 訂正前の明細書の発明の名称に、 「シリコンドリフト型放射線検出素子、シリコンドリフト型放射線検出器及び放射線検出装置」 と記載されているのを、 「シリコンドリフト型放射線検出器及び放射線検出装置」と訂正する。 (10)訂正事項10(【0001】) 訂正前の明細書の【0001】に、 「本発明は、シリコンドリフト型放射線検出素子、シリコンドリフト型放射線検出器及び放射線検出装置に関する。」 と記載されているのを、 「本発明は、シリコンドリフト型放射線検出器及び放射線検出装置に関する。」と訂正する。 (11)訂正事項11(【0007】) 訂正前の明細書の【0007】に 「本発明は、斯かる事情に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、放射線の検出効率及び低エネルギーの放射線の検出感度を向上させたシリコンドリフト型放射線検出素子、シリコンドリフト型放射線検出器及び放射線検出装置を提供することにある。」 と記載されているのを、 「本発明は、斯かる事情に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、放射線の検出効率及び低エネルギーの放射線の検出感度を向上させたシリコンドリフト型放射線検出器及び放射線検出装置を提供することにある。」と訂正する。 (12)訂正事項12(【0008】~【0019】) 訂正前の明細書の【0008】~【0019】を削除する。 (13)一群の請求項及び別の訂正単位としての求めについて 本件訂正は、一群の請求項である訂正後の請求項1~19について請求されたものである。また、明細書に係る訂正は、一群の請求項である訂正後の請求項1~19について請求されたものである。 そして、特許権者は、訂正後の請求項7~14並びに訂正後の請求項15、16、17、18及び19について、当該各請求項に係る訂正が認められる場合には、一群の請求項の他の訂正後の請求項とは別の訂正単位として扱われることを求めている。 2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否、独立特許要件の有無 (1)訂正事項1~6 ア 訂正の目的の適否 訂正事項1~6は、それぞれ、訂正前の請求項1~6を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 新規事項の有無 訂正事項1~6は、前記アのとおりのものであるから、新規事項を追加するものではない。 ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否 上記ア及びイに照らせば、訂正事項1~6は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 エ 独立特許要件の有無 訂正事項1~6に係る訂正後の請求項1~6は、特許異議の申立てがされている請求項であるから、当該訂正事項に対しては、いわゆる独立特許要件は課されない。 オ 小括 よって、訂正事項1~6は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とし、同法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものであり、同法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項に規定する要件は課されない。 (2-1)訂正事項7-1 ア 訂正の目的の適否 訂正事項7-1は以下の内容からなる。 (i)訂正前の請求項7は請求項1~6のいずれかの記載を引用していたところ、そのうち請求項1の記載を引用するものに限定する訂正。 (ii)上記(i)に加えて、請求項間の引用関係を解消して、独立形式請求項である訂正後の請求項7とする訂正。 (iii)上記(i)に伴い、「前記シリコンドリフト型放射線検出素子」が、「前記開口部に対向する表面を有し、該表面の上に遮光膜が設けられている」ことと、「放射線が入射する表面上に直接に又は他の膜を介して遮光膜が設けられている」ことの双方が特定されたことになることから、冗長な記載を整理して、「前記開口部に対向しており放射線が入射する表面を有し、該表面上に直接又は他の膜を介して遮光膜が設けられて」いることにする訂正。 (iv)訂正前の請求項7に特定されていた「ハウジング」、「(ハウジングの)開口部」及び「(シリコンドリフト型放射線検出素子の)表面」の関係について、「前記表面は前記開口部よりも大きく、前記ハウジングは、前記開口部の縁を含み、前記表面の一部に重なった重なり部分を有し、前記重なり部分は、前記表面に接着部材を介して接着されていること」を限定する訂正。 上記(i)及び(iv)の訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 上記(ii)の訂正は、請求項間の引用関係の解消を目的とするものである。 上記(iii)の訂正は、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 イ 新規事項の有無 (ア)上記(i)~(iii)の訂正について 上記(i)~(iii)の訂正によって、新たな技術的事項が導入されることはない。 (イ)上記(iv)の訂正について 上記(iv)の訂正に係る事項は、本件特許の設定登録時の明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件明細書等」という。)の「表面111は、開口部131よりも大きい。カバー13の一部分は、放射線検出素子11の表面111に対向する視点から表面111に直交する方向に見た場合、表面111の一部に重なっている。カバー13の中で表面111の一部に重なっている部分を重なり部分132とする。重なり部分132は、開口部131の縁を含んでいる。重なり部分132は、放射線検出素子11の表面111に、接着部材162を介して接着されている。」(【0045】)、及び図3(下図参照)の記載に照らして、新規事項を追加するものではない。 [図:0001411316000001.jpg] ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否 上記ア及びイに照らせば、訂正事項7-1は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 エ 独立特許要件の有無 訂正事項7-1に係る訂正後の請求項7及びそれを直接的又は間接的に引用する訂正後の請求項9~14のうち、訂正後の請求項12以外の請求項は、特許異議の申立てがされている請求項であるから、当該請求項についての訂正事項に対しては、いわゆる独立特許要件は課されない。 他方、訂正後の請求項12は、特許異議の申立てがされていない請求項であるところ、当該請求項に係る訂正事項は、特許請求の範囲の減縮を目的とする上記(i)及び(iv)の訂正を含むことから、訂正後の請求項7を直接的又は間接的に引用する訂正後の請求項12に係る訂正については、いわゆる独立特許要件が課されることになる。しかるに、後記第6の1(3)のとおり、訂正後の請求項12に係る発明は甲9に記載された発明に基づいて進歩性を欠如するものではなく、また、他に、特許出願の際独立して特許を受けることができない理由を発見しないことから、当該訂正事項は、独立特許要件を満たしている。 オ 小括 よって、訂正事項7-1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第3号及び第4号に掲げる事項を目的とし、同法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものであり、同法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項に規定する要件は課されないか、又は同項の規定に適合する。 (2-2)訂正事項7-2~7-6 ア 訂正の目的の適否 訂正事項7-2~7-6は以下の内容からなる。 (i)訂正前の請求項7は請求項1~6のいずれかの記載を引用していたところ、それぞれ、そのうち請求項2~6の記載を引用するものに限定する訂正。 (ii)上記(i)に加えて、請求項間の引用関係を解消して、それぞれ、独立形式請求項である訂正後の請求項15~19を新たに追加する訂正。 (iii)上記(i)に伴って、訂正事項7-1の(iii)と同じ。 (iv)上記(i)に加えて、訂正事項7-1の(iv)と同じ。 上記(i)及び(iv)の訂正は、特許請求の範囲の減縮の目的とするものである。 上記(ii)の訂正は、請求項間の引用関係の解消を目的とするものである。 上記(iii)の訂正は、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 イ 新規事項の有無 訂正事項7-1における判断と同じとなる。 ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否 訂正事項7-1における判断と同じとなる。 エ 独立特許要件の有無 訂正事項7-2~7-6に係る訂正後の請求項15~19は、特許異議の申立てがされている請求項であるから、当該訂正事項に対しては、いわゆる独立特許要件は課されない。 オ 小括 よって、訂正事項7-2~7-6は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第3号及び第4号に掲げる事項を目的とし、同法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項に適合するものであり、同法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項に規定する要件は課されない。 (3)訂正事項8 ア 訂正の目的の適否 訂正事項8は以下の内容からなる。 訂正前の請求項8に特定されていた「ハウジング」、「(ハウジングの)開口部」及び「(シリコンドリフト型放射線検出素子の)表面」の関係について、訂正事項7-1の(iv)と同じ。 上記の訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 新規事項の有無 訂正事項7-1の(iv)における判断と同じとなる。 ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否 訂正事項7-1の(iv)における判断と同じとなる。 エ 独立特許要件の有無 訂正事項8に係る訂正後の請求項8及びそれを直接的又は間接的に引用する訂正後の請求項9~14のうち、訂正後の請求項12以外の請求項は、特許異議の申立てがされている請求項であるから、当該請求項についての訂正事項に対しては、いわゆる独立特許要件は課されない。 他方、訂正後の請求項12は、特許異議の申立てがされていない請求項であるところ、当該請求項に係る訂正事項は、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正を含むことから、訂正後の請求項8を直接的又は間接的に引用する訂正後の請求項12に係る訂正については、いわゆる独立特許要件が課されることになる。しかるに、後記第6の1(3)のとおり、訂正後の請求項12に係る発明は甲9に記載された発明に基づいて進歩性を欠如するものではなく、また、他に、特許出願の際独立して特許を受けることができない理由を発見しないことから、当該訂正事項は、独立特許要件を満たしている。 オ 小括 よって、訂正事項8は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第4号に掲げる事項を目的とし、同法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項に適合するものであり、同法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項に規定する要件は課されないか、又は同項の規定に適合する。 (4)訂正事項9~12 訂正事項9~12は、訂正事項1~6により、「シリコンドリフト型放射線検出素子」の発明に係る請求項1~6が削除されたことに伴って、明細書の記載を特許請求の範囲の記載と整合させるためにしたものであって、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 また、訂正事項9~12は、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 また、訂正事項9~12は、上記のとおり、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、特許請求の範囲の減縮並びに誤記及び誤訳の訂正のいずれをも目的とするものではないから、いわゆる独立特許要件は課されない。 よって、訂正事項9~12は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる事項を目的とし、同法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項に適合するものであり、同法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項に規定する要件は課されない。 3 訂正の適否についての判断の小括 以上のとおり、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第3号又は第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合し、同法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項に規定する要件は課されないか、又は同項の規定に適合する。 そして、前記1(13)のとおり、特許権者は、訂正後の請求項7~14並びに訂正後の請求項15、16、17、18及び19について、当該各請求項に係る訂正が認められる場合には、一群の請求項の他の請求項とは別の訂正単位として扱われることを求めている。 よって、明細書及び特許請求の範囲を、本件訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項[1~6]、[7~14]、15、16、17、18、19について訂正することを認める。 第3 訂正後の本件発明 前記第2によれば、本件特許の請求項1~19に係る発明(以下、それぞれ、「本件発明1」~「本件発明19」といい、削除された請求項に係る発明を除き、これらを総称して「本件発明」ということがある。)は、本件訂正後の請求項1~19に記載されたとおりの以下のものである。 「【本件発明1】(削除) 【本件発明2】(削除) 【本件発明3】(削除) 【本件発明4】(削除) 【本件発明5】(削除) 【本件発明6】(削除) 【本件発明7】 ハウジングと、 該ハウジングの内側に配置されたシリコンドリフト型放射線検出素子とを備え、 前記ハウジングは、塞がれていない開口部を有し、 前記シリコンドリフト型放射線検出素子は、前記開口部に対向しており放射線が入射する表面を有し、 該表面上に直接に又は他の膜を介して遮光膜が設けられており、 前記表面は前記開口部よりも大きく、 前記ハウジングは、前記開口部の縁を含み、前記表面の一部に重なった重なり部分を有し、 前記重なり部分は、前記表面に接着部材を介して接着されていること を特徴とするシリコンドリフト型放射線検出器。 【本件発明8】 ハウジングと、 該ハウジングの内側に配置されたシリコンドリフト型放射線検出素子とを備え、 前記ハウジングは、塞がれていない開口部を有し、 前記シリコンドリフト型放射線検出素子は、前記開口部に対向しており放射線が入射する表面を有し、 該表面の上に遮光膜が設けられており、 前記表面は前記開口部よりも大きく、 前記ハウジングは、前記開口部の縁を含み、前記表面の一部に重なった重なり部分を有し、 前記重なり部分は、前記表面に接着部材を介して接着されていること を特徴とするシリコンドリフト型放射線検出器。 【本件発明9】 前記表面は前記開口部よりも大きく、 前記ハウジングは、前記開口部の縁を含み、前記表面の一部に重なった重なり部分を有し、 前記表面内で前記重なり部分が重なった部分で囲まれた部分は、前記遮光膜で覆われていること を特徴とする請求項7又は8に記載のシリコンドリフト型放射線検出器。 【本件発明10】 前記シリコンドリフト型放射線検出素子を冷却する冷却部を備えておらず、 前記ハウジングは気密されていないこと を特徴とする請求項7乃至9のいずれか一つに記載のシリコンドリフト型放射線検出器。 【本件発明11】 前記表面に対向する位置に窓材が設けられていないこと を特徴とする請求項7乃至10のいずれか一つに記載のシリコンドリフト型放射線検出器。 【本件発明12】 前記ハウジングと前記シリコンドリフト型放射線検出素子との間の隙間に充填された充填物を更に備えること を特徴とする請求項7乃至11のいずれか一つに記載のシリコンドリフト型放射線検出器。 【本件発明13】 請求項7乃至12のいずれか一つに記載のシリコンドリフト型放射線検出器と、 該シリコンドリフト型放射線検出器が検出した放射線のスペクトルを生成するスペクトル生成部と を備えることを特徴とする放射線検出装置。 【本件発明14】 試料へ放射線を照射する照射部と、 前記試料から発生した放射線を検出する請求項7乃至12のいずれか一つに記載のシリコンドリフト型放射線検出器と、 該シリコンドリフト型放射線検出器が検出した放射線のスペクトルを生成するスペクトル生成部と、 該スペクトル生成部が生成したスペクトルを表示する表示部と を備えることを特徴とする放射線検出装置。 【本件発明15】 ハウジングと、 該ハウジングの内側に配置されたシリコンドリフト型放射線検出素子とを備え、 前記ハウジングは、塞がれていない開口部を有し、 前記シリコンドリフト型放射線検出素子は、前記開口部に対向しており放射線が入射する表面を有し、 該表面上に直接に又は他の膜を介して遮光膜が設けられており、 前記遮光膜は、前記表面に入射する光の量を0.1%未満に減少させ、 前記表面は前記開口部よりも大きく、 前記ハウジングは、前記開口部の縁を含み、前記表面の一部に重なった重なり部分を有し、 前記重なり部分は、前記表面に接着部材を介して接着されていること を特徴とするシリコンドリフト型放射線検出器。 【本件発明16】 ハウジングと、 該ハウジングの内側に配置されたシリコンドリフト型放射線検出素子とを備え、 前記ハウジングは、塞がれていない開口部を有し、 前記シリコンドリフト型放射線検出素子は、前記開口部に対向しており放射線が入射する表面を有し、 該表面上に直接に又は他の膜を介して遮光膜が設けられており、 前記遮光膜は、厚さ50nm超500nm未満の金属膜であり、 前記表面は前記開口部よりも大きく、 前記ハウジングは、前記開口部の縁を含み、前記表面の一部に重なった重なり部分を有し、 前記重なり部分は、前記表面に接着部材を介して接着されていること を特徴とするシリコンドリフト型放射線検出器。 【本件発明17】 ハウジングと、 該ハウジングの内側に配置されたシリコンドリフト型放射線検出素子とを備え、 前記ハウジングは、塞がれていない開口部を有し、 前記シリコンドリフト型放射線検出素子は、前記開口部に対向しており放射線が入射する表面を有し、 該表面上に直接に又は他の膜を介して遮光膜が設けられており、 前記遮光膜は、カーボン膜であり、 前記表面は前記開口部よりも大きく、 前記ハウジングは、前記開口部の縁を含み、前記表面の一部に重なった重なり部分を有し、 前記重なり部分は、前記表面に接着部材を介して接着されていること を特徴とするシリコンドリフト型放射線検出器。 【本件発明18】 ハウジングと、 該ハウジングの内側に配置されたシリコンドリフト型放射線検出素子とを備え、 前記ハウジングは、塞がれていない開口部を有し、 前記シリコンドリフト型放射線検出素子は、前記開口部に対向しており放射線が入射する表面を有し、 該表面上に直接に又は他の膜を介して遮光膜が設けられており、 前記表面とは逆側にある裏面に設けられ、放射線の入射によって発生する電荷が流入し、前記電荷に応じた信号を出力する信号出力電極と、 前記表面に設けられており、電圧を印加される第1電極と、 前記裏面に設けられ、前記信号出力電極を囲んでおり、前記信号出力電極からの距離が互いに異なる複数の第2電極とを更に備え、 前記表面は前記開口部よりも大きく、 前記ハウジングは、前記開口部の縁を含み、前記表面の一部に重なった重なり部分を有し、 前記重なり部分は、前記表面に接着部材を介して接着されており、 前記第2電極は、前記裏面に沿った一の方向の長さが前記裏面に沿った他の方向の長さよりも長い形状を有し、 前記信号出力電極は、前記一の方向に沿って並んでおり互いに接続された複数の電極からなること を特徴とするシリコンドリフト型放射線検出器。 【本件発明19】 ハウジングと、 該ハウジングの内側に配置されたシリコンドリフト型放射線検出素子とを備え、 前記ハウジングは、塞がれていない開口部を有し、 前記シリコンドリフト型放射線検出素子は、前記開口部に対向しており放射線が入射する表面を有し、 該表面上に直接に又は他の膜を介して遮光膜が設けられており、 前記表面とは逆側にある裏面に設けられ、放射線の入射によって発生する電荷が流入し、前記電荷に応じた信号を出力する信号出力電極と、 前記表面に設けられており、電圧を印加される第1電極と、 前記裏面に設けられ、前記信号出力電極を囲んでおり、前記信号出力電極からの距離が互いに異なる複数の第2電極とを更に備え、 前記表面は前記開口部よりも大きく、 前記ハウジングは、前記開口部の縁を含み、前記表面の一部に重なった重なり部分を有し、 前記重なり部分は、前記表面に接着部材を介して接着されており、 前記第2電極は、前記裏面に沿った一の方向の長さが前記裏面に沿った他の方向の長さよりも長い形状を有し、 前記信号出力電極は、前記裏面に設けられており前記一の方向に沿って延伸した導電線を含んでいること を特徴とするシリコンドリフト型放射線検出器。」 第4 取消理由通知書に記載した取消理由の概要 本件特許の登録時の請求項1~14に係る特許に対して、当合議体が特許権者に通知した取消理由通知書(以下、単に「取消理由通知書」という。)に係る取消理由の概要は、次のとおりである。 1 サポート要件違反 本件特許の登録時の請求項1~11、13、14に係る特許は、特許請求の範囲の記載が不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない出願に対してされたものである。 2 新規性欠如 本件特許の登録時の請求項1~3に係る発明は、その優先日前に日本国内または外国において頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明である、甲第1号証~甲第3号証のそれぞれに記載された発明であり、又は、本件特許の登録時の請求項1~3、7、8、11に係る発明は、その優先日前に日本国内または外国において頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明である、甲第9号証に記載された発明であるから、当該各請求項に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。 3 進歩性欠如 本件特許の登録時の請求項1~3に係る発明は、その優先日前に日本国内または外国において頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明である、甲第1号証~甲第3号証のそれぞれに記載された発明に基いて、又は、本件特許の登録時の請求項1~3、7、8、11、13、14に係る発明は、その優先日前に日本国内または外国において頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明である、甲第9号証に記載された発明及び周知技術に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、当該各請求項に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 第5 当事者が提出した証拠 以下、「第」及び「号証」を略して表記する。 1 申立人が提出した証拠 甲1:米国特許出願公開第2012/0313195号明細書 甲2:独国特許出願公開第102012012296号明細書 甲3:M.Bautz et al.,”Directly-deposited blocking filters for high-performance silicon X-ray detectors” Proceedings of SPIE, Vol.9905 99054C (2016) 甲4:米国特許出願公開第2012/0025089号明細書 甲5:米国特許第4354104号明細書 甲6:米国特許出願公開第2008/0164412号明細書 甲7:米国特許出願公開第2017/0184734号明細書 甲8:米国特許出願公開第2008/0156996号明細書 甲9:Anderhaltz et al,, ”Windowless Silicon Drift Detector” Microsc. Microanal., 17(Suppl2), p.620,621 (2011) 甲10:米国特許出願公開第2008/0212739号明細書 甲11:米国特許第6337897号明細書 甲12:米国特許出願公開第2012/0288058号明細書 2 特許権者が提出した証拠 なし 第6 当合議体の判断 当合議体は、本件発明7~11、13~19に係る特許は、取消理由通知書に記載した取消理由(以下、単に「取消理由」という。)及び申立人が申し立てた特許異議申立理由によっては、取り消すことはできないと判断する。その理由は以下のとおりである。 1 取消理由についての判断 (1)サポート要件違反について ア 取消理由は、本件特許の登録時の請求項1~11、13、14に記載された発明について、本件明細書等には、(i)放射線検出器が窓材を有する窓を備えていないこと(【0061】)、(ii)放射線検出器の表面は、カバーの重なり部分が重なった部分で囲まれた部分が遮光膜に覆われていること(【0060】)、(iii)カバーの重なり部分は、放射線検出素子の表面に接着部材を介して接着されていること(【0045】)が記載されており、当業者であれば、このような構成であれば、遮光膜を設けることによって窓材を存在しなくてもよいようにできる(【0060】)とともに、放射線検出素子を試料に近づけることができる距離が、カバーの厚みと接着部材の厚みとを併せた値になって小さくなることから、本件明細書等に記載された発明が解決しようとする課題、つまり、従来技術の放射線検出器においては、ハウジングの気密状態を維持するためにハウジング及び窓材にある程度の大きさが必要であり、放射線検出器全体の大きさが大きくなるため、放射線検出素子を試料に近づけることができる距離には下限があり、また、気密状態を維持するためには窓材にはある程度の厚みが必要であるため、低エネルギーの放射線が窓材を透過する透過率が低くなっていたという課題を解決できることを認識できるといえる一方、当該請求項1~11、13、14の記載は、放射線検出素子を試料に近づけることができる距離を小さくするための構成を反映していないから、当該各請求項に記載された発明は、当業者が本件課題を解決できると認識できる範囲のものとはいえないことを説示するものである。 これに対し、本件訂正により、本件発明が、いずれも、上記(i)~(iii)に係る構成を備えることが明らかにされたことから、取消理由は解消した。 イ 取消理由は、本件特許の登録時の請求項4に記載された発明についてサポート要件違反を説示するものであったが、本件訂正により、当該請求項4は削除されたことから、取消理由は解消した。 (2)新規性欠如及び進歩性欠如について 前記第4の2及び3のとおり、取消理由は、(i)登録時の請求項1~3に係る発明に対して、甲1~3のそれぞれに記載された発明に基づく新規性欠如及び進歩性欠如、並びに(ii)登録時の請求項1~3、7、8、11、13、14に係る発明に対して、甲9に記載された発明に基づく新規性欠如又は進歩性欠如からなるところ、前記第2のとおり、請求項1~3は本件訂正により削除されたことから、(i)の取消理由は解消した。 そこで、以下、(ii)について判断する。 なお、本件発明12に係る特許については、特許異議の申立ての対象外であるが、前記第2の2(2-1)エ及び同(3)エにおいて独立特許要件の有無を検討する便宜上、この中で判断を示すこととする。 ア 甲9に記載された事項及び甲9に記載された発明 (ア)甲9に記載された事項 甲9には、以下の事項が記載されている(なお、甲9の翻訳文を記載し、括弧内に原文の対応箇所を示す。また、下線は当合議体が付した。以下同様。)。 「ウィンドウレスシリコンドリフト検出器」(表題) 「ウィンドウレスEDS検出器は、液体窒素冷却のリチウムドリフト型シリコン検出器[1]とシリコンドリフト検出器(SDD;[2])として、最近TEMで使用されている。SDDは比較的控えめな熱電冷却方式で、検出器を数分で冷却でき、TEMを換気する際には急速に暖めることができるため、現代のウィンドウレスEDS用途に適している。」(第1段落) 「試料と検出器の間に従来のウィンドウがない場合、透過率の向上が計算でき、プロットすることができる。図1のウィンドウレス検出器には、試料からの発光の影響を低減するための遮光体が含まれている。この遮光体は超薄型窓(SUTW; Moxtek AP3.3)よりもかなり薄く、X線の透過率をさらに低下させるサポートグリッドを必要としない。図1に示す最も顕著な吸収端は、炭素(0.28keV)、遮光体内の酸素(0.53keV)、遮光体とSUTWの両方に使用されているアルミニウムコーティングによるわずかな減少(1.56keV)である。」(第2段落) (イ)甲9から読み取れる事項 a 前記(ア)によれば、甲9には、ウィンドウレスシリコンドリフト検出器において、試料からの発光の影響を低減するための遮光体が含まれ、この遮光体はX線透過率をさらに低減させるサポートグリッドを必要としないものであり、アルミウムコーティングが使用されていることが記載されていることから、次の技術的事項が記載されていると認められる。 (a)「ウィンドウレスシリコンドリフト検出器において、試料からの発光の影響を低減するためのものであって、アルミニウムコーティングからなる遮光体を用いること。」 (b)「ウィンドウレスシリコンドリフト検出器は、X線を検出対象とすること。」 b 甲9に記載されたウィンドウレスシリコンドリフト検出器が、X線が入射する表面を有するシリコンドリフト検出素子と、それを覆うハウジングと、を有すること、及び、回路等と組み合わせて放射線検出装置を構成すること、は技術常識に照らして明らかである。 (ウ)甲9に記載された発明 前記(1)を踏まえると、甲9には、ウィンドウレスシリコンドリフト検出器についての次の発明(以下「甲9発明」という。)が記載されていると認められる(なお、括弧内は、認定の根拠とした箇所を示す。)。 <甲9発明> 「検出器と試料の間に従来のウィンドウがないものであって、(第2段落) 試料からの発光の影響を低減するためのアルミニウムコーティングからなる遮光体と、(前記(イ)a(a)) X線が入射する表面を有するシリコンドリフト検出素子と、 前記シリコンドリフト検出素子を覆うハウジングと、 を備えたものであって、(前記(イ)b) X線を検出対象とする、(前記(イ)a(b)) ウィンドウレスシリコンドリフト検出器。(表題)」 イ 本件発明7~19に対する判断 (ア)本件発明7について a 対比 (a)本件発明7の「シリコンドリフト型放射線検出器。」との特定事項について 甲9発明の「X線」は、本件発明7の「放射線」に相当する。そうすると、甲9発明の「X線を検出対象とする」「ウィンドウレスシリコンドリフト検出器」は、本件発明7の「シリコンドリフト型放射線検出器」に相当する。 よって、本件発明7と甲9発明は、「シリコンドリフト型放射線検出器」の発明である点において一致する。 (b)本件発明7の「ハウジングと、」との特定事項について 甲9発明の「ハウジング」は、本件発明7の「ハウジング」に相当する。 よって、甲9発明は、本件発明7の上記特定事項を備えている。 (c)本件発明7の「該ハウジングの内側に配置されたシリコンドリフト型放射線検出素子とを備え、」との特定事項について 甲9発明は「X線を検出対象とする」ところ、甲9発明の「シリコンドリフト検出素子」は、「X線が入射する表面を有する」ことからみても、X線を検出する素子であることは明らかである。そうすると、甲9発明の「シリコンドリフト検出素子」は、本件発明7の「シリコンドリフト型放射線検出素子」に相当する。 そして、甲9発明は、「前記シリコンドリフト検出素子を覆うハウジング」を備えるところ、「シリコンドリフト検出素子」が「ハウジング」の内側に配置されることは明らかであり、このことは、本件発明7において、「シリコンドリフト型放射線検出素子」が「該ハウジングの内側に配置され[る]」ことに相当する。 よって、甲9発明は、本件発明7の上記特定事項を備えている。 (d)本件発明7の「前記ハウジングは、塞がれていない開口部を有し、」との特定事項について 甲9発明は、「ハウジング」を備え、「検出器と試料の間に従来のウィンドウがない」ものであるところ、ハウジングにおける当該「ウィンドウがない」ところは、本件発明7の「塞がれていない開口部」に相当するといえる。 よって、甲9発明は、本件発明7の上記特定事項を備えている。 (e)本件発明7の「前記シリコンドリフト型放射線検出素子は、前記開口部に対向しており放射線が入射する表面を有し、」との特定事項について 甲9発明の「シリコンドリフト検出素子」が有する「X線が入射する表面」は、本件発明7の「放射線が入射する表面」に相当する。 また、甲9発明は、「検出器と試料の間に従来のウィンドウがない」ものであるから、「シリコンドリフト検出素子」の「X線が入射する表面」が、「ウィンドウがない」ところに対向して配置されることは明らかであり、前記(d)を踏まえると、前記「X線が入射する表面」が、「ウィンドウがない」ところ、すなわちハウジングの開口部に対向しているといえる。そして、このことは、本件発明7の「放射線が入射する表面」が「前記開口部に対向して[いる]」ことに相当する。 よって、甲9発明は、本件発明7の上記特定事項を備えている。 (f)本件発明7の「該表面上に直接に又は他の膜を介して遮光膜が設けられており、」との特定事項について 甲9発明の「遮光体」は、「アルミニウムコーティングからなる」ものであるから、膜状のものと認められる。したがって、甲9発明の「遮光体」は、本件発明7の「遮光膜」に相当する。 そうすると、本件発明7と甲9発明とは、「遮光膜が設けられて[いる]点で共通する。 他方、「遮光膜」が設けられる構成において、本件発明7は「該表面上に直接に又は他の膜を介して」設けられているのに対して、甲9発明は、そうであるか不明である。 (g)本件発明7の「前記表面は前記開口部よりも大きく、前記ハウジングは、前記開口部の縁を含み、前記表面の一部に重なった重なり部分を有し、前記重なり部分は、前記表面に接着部材を介して接着されていること」との特定事項について 甲9発明は、検出器と試料の間に従来のウィンドウがなく、ハウジングと、X線が入射する表面を有するシリコンドリフト検出素子とを備えるものの、ハウジングとシリコンドリフト検出素子の関係が、「前記表面は前記開口部よりも大きく、前記ハウジングは、前記開口部の縁を含み、前記表面の一部に重なった重なり部分を有し、前記重なり部分は、前記表面に接着部材を介して接着されている」ものであるかは不明である。 b 一致点及び相違点の認定 前記aを踏まえると、本件発明7と甲9発明とは、以下の点で一致し、以下の点で相違する。 <一致点> 「ハウジングと、 該ハウジングの内側に配置されたシリコンドリフト型放射線検出素子とを備え、 前記ハウジングは、塞がれていない開口部を有し、 前記シリコンドリフト型放射線検出素子は、前記開口部に対向しており放射線が入射する表面を有し、 遮光膜が設けられている、 シリコンドリフト型放射線検出器。」 <相違点1> 「遮光膜」が設けられる構成において、本件発明7は「放射線が入射する表面」「上に直接に又は他の膜を介して」であるのに対して、甲9発明は、そうであるのか不明である点。 <相違点2> ハウジング(の開口部)とシリコンドリフト型放射線検出素子(の表面)の関係について、本件発明7は「前記表面は前記開口部よりも大きく、前記ハウジングは、前記開口部の縁を含み、前記表面の一部に重なった重なり部分を有し、前記重なり部分は、前記表面に接着部材を介して接着されている」のに対して、甲9発明は、そうであるのか不明である点。 c 相違点の判断 事案に鑑み、相違点2について判断する。 前記ア(ア)及び(イ)のとおり、甲9の記載からは、ウィンドウレスシリコンドリフト検出器において、X線が入射する表面を有するシリコンドリフト検出素子と、前記シリコンドリフト検出素子を覆うハウジングとを備えること、及び、検出器と試料の間に従来のウィンドウがないことを読み取ることができる。 しかしながら、相違点2に係る構成は、申立人が提示した甲1~12のいずれにも記載も示唆もされていない。また、甲9発明において、相違点2に係る構成を採用する動機付けもない。 そして、本件発明7は、相違点2に係る構成を備えることにより、放射線検出素子を試料に近づけることができる距離が、カバーの厚みと接着部材の厚みとを併せた値になって小さくなり、したがって、低エネルギーの放射線の検出感度が向上するという、格別な効果を奏するものと認められる。 また、甲9のその余の記載をみても、上記の判断を左右するものはない。 したがって、その他の相違点について検討するまでもなく、本件発明7は、甲9に記載された発明及び甲1~12に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 d 本件発明7についての小括 本件発明7は、甲9に記載された発明及び甲1~12に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (イ)本件発明8について a 対比並びに一致点及び相違点の認定 本件発明8と甲9発明とは、前記(ア)と同様に対比すると、前記(ア)bで認定した本件発明7と甲9発明との一致点で一致し、次の点で相違する。 <相違点3> 「遮光膜」が設けられる構成において、本件発明8は「放射線が入射する表面」「の上に」設けられるのに対して、甲9発明は、そうであるのか不明である点。 <相違点4> 相違点2と同じ。 b 相違点の判断 本件発明8は、相違点4に係る構成を備えるところ、前記(ア)cと同様の理由で、甲9に記載された発明及び甲1~12に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (ウ)本件発明9~14について 本件発明9~14は、本件発明7又は8を直接的ないし間接的に引用するものであって、いずれも、前記相違点2又は4を含むから、前記(ア)c又は(イ)bと同様の理由で、甲9に記載された発明及び甲1~12に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (エ)本件発明15~19について 本件発明15~19は、いずれも、本件発明7の発明特定事項を含み、さらに限定したものであって、前記相違点2を含むから、前記(ア)cと同様の理由で、甲9に記載された発明及び甲1~12に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (オ)甲9に記載された発明に基づく新規性及び進歩性欠如についてのまとめ 前記(ア)~(エ)のとおり、本件発明7~19は、甲9に記載された発明及び甲1~12に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (3)取消理由についての判断の小括 以上のとおりであるから、本件発明7~11、13~19についての特許は、取消理由によっては取り消すことができない。 また、本件発明12は、甲9に記載された発明に基づいて新規性及び進歩性を欠如するものではない。 2 取消理由通知書において採用しなかった特許異議申立理由についての判断 申立人は、上記の特許異議申立理由として、(i)本件特許の登録時の請求項1~6に係る発明に対して、甲1~4、7の少なくとも一つを主引用例とする新規性欠如又は進歩性欠如、(ii)本件特許の登録時の請求項7~11、13及び14に係る発明に対して、甲8、10~12の少なくとも一つを主引用例とする進歩性欠如を主張する。 しかるところ、(i)については、前記第2のとおり、請求項1~6が本件訂正により削除されたことから、解消した。 そこで、以下、(ii)について判断する。 (1)甲8を主引用例とする進歩性欠如について 甲8には、図6において、放射線検出システム101における筐体103の内部に放射線検出器モジュール109が設けられ、筐体103の内部環境を真空とすること([0042])、及び、放射線検出器モジュール109を形成するシリコンドリフト検出器(SDD)は、真空中でウィンドウレスで動作できること([0044])が記載されていることから、放射線検出器モジュール109をウィンドウレスにすることを読み取ることができる。 しかしながら、甲8には、放射線検出器モジュール109をウィンドウレスにするにあたり、シリコンドリフト検出器及びハウジングをどのように構成するかについて具体的な記載はなく、前記相違点2及び4に係る本件発明の構成(前記1(2)イ(ア)b及び(イ)a)は記載も示唆もされていない。申立人が提出する他の証拠についても同様である。 そうすると、本件発明7~11、13~19と甲8に記載された発明とは、少なくとも、前記相違点2又は4と同じ点で相違するから、前記1(2)イ(ア)c又は同(イ)bと同様の理由で、本件発明7~11、13~19は、甲8に記載された発明及び甲1~12に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (2)甲10及び11のいずれかを主引用例とする進歩性欠如について 甲10(図3等において、X線検出器5の内部に、半導体検出素子12が、X線の入射窓に検出面12aを向けて設置されている。また、X線検出器5の手前に、X線入射孔13を有する入射側コリメータ14が設置されている。)及び甲11(図7A及び図8において、SSD43が、平板状の第2のコリメータ40に取り付けられている。)は、いずれも、「シリコンドリフト検出素子を覆うハウジング」に設けられた「開口」を記載するものではなく、前記相違点2及び4に係る構成(前記1(2)イ(ア)b及び同(イ)a)は記載も示唆もされていない。申立人が提出する他の証拠についても同様である。 そうすると、本件発明7~11、13~19と甲10及び11に記載された発明とは、少なくとも、前記相違点2又は4と同じ点で相違するから、前記1(2)イ(ア)c又は同(イ)bと同様の理由で、本件発明7~11、13~19は、甲10及び11のいずれかに記載された発明及び甲1~12に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (3)甲12を主引用例とする進歩性欠如について ア 甲12に記載された事項 甲12には、以下の事項が記載されている(なお、甲12の翻訳文を記載し、括弧内に原文の対応箇所を示す。また、翻訳文は、甲12の日本語ファミリ文献である特開2012-255769号公報の記載に基づくものである。)。 (ア)[0060]及び図3 「[0060]図3は、当該実施形態に係る複合X線分析装置1の蛍光X線検出器7の先端の形状を表す模式図である。蛍光X線検出器7の外径は20mmであり、その先端に受光部12を有している。ここで、蛍光X線検出器7がSDDである場合、受光部12は、複数のリング形状の電極が設けられる円形状の平面である。試料100の蛍光X線測定を行う場合、試料100が放射する蛍光X線を検出する感度が最大となるように、蛍光X線検出器7が複合X線分析装置1に配置されている。受光部12で受光される蛍光X線の受光感度を最大にする蛍光X線の入射方向を、蛍光X線検出器7の光軸と定義すると、蛍光X線検出器7の光軸が、試料100の中心部を貫いているのが望ましい。なお、受光部12が受光できる蛍光X線の量をより多くするために、受光部12の中心より光軸が受光部12の受光面に垂直に延伸しているのが一般的であるが、必ずしもこれに限定されない。さらに、試料100が放射する蛍光X線を検出する感度をより高くするよう、受光部12が試料100により近接するよう、蛍光X線検出器7が配置されるのが望ましい。」 「 [図:0001411316000002.jpg] 」 (イ)[0080]~[0084]、図6、7 「[0080]図6は、当該実施形態に係る複合X線分析装置1の蛍光X線検出器7の先端の形状を表す模式図である。蛍光X線検出器7は、図6に示す通り、X線遮蔽体13をさらに備えている。X線遮蔽体13の形状は、蛍光X線検出器7の本体側が中空円柱をしており、先端側が中空の円錐台形状であり、先端には円形の開口部がある。すなわち、X線遮蔽体13は、中空円柱形状により、蛍光X線検出器7の受光部12の周縁を囲っている。また、X線遮蔽体13の先端側がテーパー状になっており、先端に近づくにつれて、断面の半径が徐々に小さくなっていく構造となっている。X線遮蔽体13は、ビームストッパ8からの蛍光X線を遮蔽する材質であれば何でもよく、ここでは、ステンレススチールからなるとしているが、一般的な金属であってもよい。また、必要に応じて鉛が含まれていてもよい。 [0081]図7は、当該実施形態に係る複合X線分析装置1の蛍光X線検出器7の配置を示す模式図である。蛍光X線検出器7の本体部の外径は20mmであり、X線遮蔽体13の中空円柱部分の外径は12mmであり、受光部12からX線遮蔽体13の先端までの距離は20mmである。X線遮蔽体13の先端から試料100までの距離L1は2mmである。 [0082]光学系3のコリメータから試料100に入射するX線の光軸上に、順に、試料100と、ビームストッパ8が配置されている。コリメータの外径は13mmである。図7に示す通り、ビームストッパ8に、X線のダイレクトビームが照射される位置に鉛によって形成されているコア部11が備えられており、コア部11をホルダーが支持している。すなわち、コア部11は、ビームストッパ8におけるX線のダイレクトビームが直接照射される部分である。試料100に入射するするX線のダイレクトビームをコア部11にある鉛が吸収することにより、ビームストッパ8のコア部11はX線のダイレクトビームを遮蔽している。試料100とビームストッパ8のコア部11の距離L2は、11mmである。なお、ここでは、ビームストッパ8は、鉛によって形成されているコア部11を備えるとしたが、ビームストッパ8はこれに限定されることはなく、たとえば、鉛合金によって形成される一体型であってもよい。この場合であっても、本発明に係るX線遮蔽体13は、一体型のビームストッパにおけるX線のダイレクトビームが直接照射される部分が放射する蛍光X線を遮蔽する。 ・・・中略・・・ [0083]図7に示す蛍光X線検出器7は、試料100が放射する蛍光X線を検出するのに、適した位置に配置されている。X線のダイレクトビームが試料100に照射する領域の中心部を、蛍光X線検出器7の光軸が貫いているのが望ましい。蛍光X線検出器7の光軸は、受光部12の中心から受光部12の平面に対して垂直に延伸しているので、試料100が受光部12へ放射する蛍光X線XL1の中心は、受光部12の中心に到達する。図には、試料100が受光部12へ放射する蛍光X線XL1の中心が波線で示されている。 [0084]これに対して、X線遮蔽体13の一部は、受光部12とビームストッパ8との間に配置されており、X線遮蔽体13は、ビームストッパ8が受光部12へ放射する蛍光X線を遮蔽している。とくに、X線遮蔽体13は、コア部11が受光部12へ放射する蛍光X線XL2を遮蔽している。図には、コア部11が受光部12へ放射する蛍光X線XL2の中心が波線で示されている。もしもX線遮蔽体13が存在していなければ、ビームストッパ8が受光部12へ放射する蛍光X線が受光部12に到達するところ、X線遮蔽体13が存在していることにより、ビームストッパ8が受光部12へ放射する蛍光X線が、とくにコア部11が受光部12へ放射する蛍光X線XL2が、X線遮蔽体13により遮蔽されている。」 「 [図:0001411316000003.jpg] 」 「 [図:0001411316000004.jpg] 」 イ 甲12に記載された発明 (ア)前記ア(ア)によれば、甲12には、図3に係る蛍光X線検出器(以下「図3蛍光X線検出器」という。)について、 「SDD(シリコンドリフト検出器)である蛍光X線検出器7であって、 外径が20mmであり、その先端に受光部12を有しており、 受光部12は、複数のリング形状の電極が設けられる円形状の平面である、([0060]) 蛍光X線検出器7。」の発明が記載されていると認められる。 (イ)また、前記ア(イ)によれば、同じく甲12には、図7に係る蛍光X線検出器(以下「図7蛍光X線検出器」という。)について、 「蛍光X線検出器7であって、 X線遮蔽体13を備えており、X線遮蔽体13の形状は、蛍光X線検出器7の本体側が中空円柱をしており、先端側が中空の円錐台形状であり、先端には円形の開口部があり、すなわち、X線遮蔽体13は、中空円柱形状により、蛍光X線検出器7の受光部12の周縁を囲っており、([0080]) その本体部の外径は20mmであり、X線遮蔽体13の中空円柱部分の外径は12mmであり、受光部12からX線遮蔽体13の先端までの距離は20mmであり、([0081]) 蛍光X線検出器7の光軸は、受光部12の中心から受光部12の平面に対して垂直に延伸しているので、試料100が受光部12へ放射する蛍光X線XL1の中心は、受光部12の中心に到達する、([0083]) 蛍光X線検出器7。」の発明が記載されていると認められる。 ウ 対比・判断 甲12に記載された図3蛍光X線検出器及び図7蛍光X線検出器に係る発明は前記イで認定したとおりであるところ、これらは、本件発明の「シリコンドリフト型放射線検出器」に係るものであって、本件発明の「ハウジング」に相当する構成を備えているとみる余地はある。 しかしながら、図3蛍光X線検出器に係る発明では、シリコンドリフト型放射線検出素子をハウジングにどのように設けるかについて、具体的な記載はなく、前記相違点2及び4に係る本件発明の構成(前記1(2)イ(ア)b及び(イ)a)は記載も示唆もされていない。また、図7蛍光X線検出器に係る発明では、X線遮蔽体13が、中空円柱形状により、蛍光X線検出器7の受光部12の周縁を囲っているものであることが記載されているにとどまり、当該発明が、相違点2及び4に係る本件発明の構成を備えているとはいえない。そして、これらの発明から出発した当業者が、前記相違点2又は4に係る構成を採用する動機付けもない。 また、甲12のその余の記載をみても、上記の判断を左右するものはない。 そうすると、本件発明7~11、13~19は、前記1(1)イ(ア)c又は同(イ)bと同様の理由で、甲12に記載された発明及び甲1~12に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (4)取消理由通知書において採用しなかった特許異議申立理由についての判断の小括 以上のとおりであるから、本件発明7~11、13~19についての特許は、取消理由通知書において採用しなかった特許異議申立理由によっては取り消すことができない。 第7 むすび 以上のとおり、本件発明7~11、13~19に係る特許は、取消理由通知書に記載した取消理由及び特許異議申立理由によっては取り消すことはできない。 また、他に本件発明7~11、13~19に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 請求項1~6に係る特許は本件訂正により削除され、当該各請求項1~6に係る申立ては、その対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。 よって、結論のとおり決定する。

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2023-700668

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