特許異議申立
2022-700587
補強材を用いた耐火パネル
- 審判番号
- 2022-700587
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2020-106702
- 登録番号
- 6989166
- 請求日
- 2022年07月05日
- 審決日
- 2022年11月07日
- 公報発行日
- 2022年12月28日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】日本パネル株式会社
- 【権利者代理人】あいそう特許業務法人
- 【異議申立人】杉本 光史
- 審判長/審判官
- 審判長 前川 慎喜
- 審判官 有家 秀郎
- 審判官 佐藤 美紗子
- 分類
- P1651.121-Y (E04B) / P1651.537-Y (E04B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条第6項第2号、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第6989166号発明「補強材を用いた耐火パネル」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第6989166号の請求項1ないし5に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第6989166号の請求項1ないし5に係る特許についての出願は、令和2年6月22日に出願され、令和3年12月6日にその特許権の設定登録がされ、令和4年1月5日に特許掲載公報が発行された。
その後、同年7月5日(受付日)に、特許異議申立人 杉本 光史(以下、「申立人」という。)より特許異議申立書(以下、「申立書」という。)が提出され、請求項1ないし5に係る特許に対して、特許異議の申立てがされた。
第2 本件発明
特許第6989166号の請求項1ないし5の特許に係る発明(以下、それぞれを「本件発明1」などという。)は、その特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。
「【請求項1】
表側表面材と裏側表面材とを備え前記表側表面材と前記裏側表面材との間に断熱材を設けた耐火パネルを補強する耐火パネルの補強材を備えた耐火パネルであって、
前記補強材は、
矩形状の中央片と、前記中央片の長手方向の一方の一辺から直角に屈曲形成されるとともに前記表側表面材に係止固定可能な長片状の第一係止固定部と、前記中央片の長手方向の他方の一辺から直角に屈曲形成されるとともに前記裏側表面材に係止固定可能な短片状の第二係止固定部とを備え、
前記第一係止固定部は前記表側表面材に設けられた第一折り返し部に側方より挿嵌され、前記第二係止固定部は前記裏側表面材に設けられた第二折り返し部に側方より挿嵌されて、前記補強材が、前記第一折り返し部及び前記第二折り返し部の側方からの挿嵌方向には移動可能に、前記第一折り返し部及び前記第二折り返し部の側方からの挿嵌方向に対して垂直方向には移動不能にされて、前記表側表面材と前記裏側表面材との間隔の拡がりを規制可能な耐火パネル。
【請求項2】
表側表面材と裏側表面材とを備え、前記表側表面材と前記裏側表面材との間に断熱材を設けた請求項1に記載の耐火パネル。
【請求項3】
矩形状の表側表面材と矩形状の裏側表面材と、前記表側表面材と前記裏側表面材との間に断熱材を設けた耐火パネルであって、前記表側表面材の四辺のうちの少なくともいずれかに第一折り返し部が設けられ、前記裏側表面材の四辺のうち前記表側表面材の前記第一折り返し部が設けられた位置と同位置の辺に第二折り返し部が設けられ、前記第一折り返し部には前記補強材の前記第一係止固定部が係止固定され、前記第二折り返し部には、前記補強材の前記第二係止固定部が係止固定される請求項1又は請求項2に記載の耐火パネル。
【請求項4】
前記第一折り返し部及び前記第二折り返し部は、前記耐火パネルの下端辺に設けられた請求項3に記載の耐火パネル。
【請求項5】
前記耐火パネルの前記第一折り返し部及び前記第二折り返し部が設けられた四辺のうちの一つの辺には凹状部が形成され、前記耐火パネルの前記一つの辺と対向する位置の辺に、前記凹状部と嵌合可能な凸状部が形成された請求項3又は請求項4に記載の耐火パネル。」
第3 証拠一覧、特許異議申立理由の要旨、及び証拠の記載
1 証拠一覧
申立人が提示する証拠は、以下のとおりである。なお、以下では甲第1号証及び甲第2号証を、それぞれ「甲1」、「甲2」という。
甲1: 特開2003-326624号公報
(平成15年11月19日公開)
甲2: 特開平8-184159号公報
(平成8年7月16日公開)
2 特許異議申立理由の要旨
申立人が申立書において主張する特許異議申立理由の要旨は、次のとおりである。
(1)進歩性欠如
本件特許の請求項1ないし5に係る発明は、甲1に記載された発明、及び、甲2に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、これらの発明に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであって、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
(2)明確性要件違反
本件特許の請求項1ないし5に係る発明は、明確でないから、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
したがって、これらの発明に係る特許は、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。
3 証拠の記載
(1)甲1
ア 記載事項
甲1には、次の記載がある(下線は、当審で付した。以下、同様。)。
(ア)明細書
「【0007】
【課題を解決するための手段】本発明の請求項1に係る断熱パネルの製造方法は、金属製の二枚の表面板1、2の間に断熱材3を配置し、熱盤5、6により表面板1、2と断熱材3とを加熱加圧することによって、表面板1、2と断熱材3とを湾曲させると共に一体的に接着することを特徴とするものであり、表面板1、2を加圧加熱するための熱盤5、6を金属板で形成することによって、木型を用いた場合に比べて熱盤5、6の作製に手間と時間がかからないようにすることができ、湾曲した断熱パネルを安価に製造することができるものであり、しかも、金属板の熱盤5、6はその曲率半径を容易に変更することができるので、断熱パネルの曲率半径の変更にも容易に迅速に対応することができるものである。また、表面板1、2と断熱材3とを加熱加圧しながら接着するので、接着剤の硬化を速めることができ、生産性を高くすることができるものである。
・・・・
【0015】表面板1、2は剛性があって塑性変形可能な金属製の板材料であれば何でも使用することができ、例えば、鉄板、鋼板(SS41、SS400、SUS304等)、アルミニウム板などの金属板を用いることができる。金属板の中でも耐火性や耐食性を考慮して着色亜鉛めっき鋼板、着色合金めっき鋼板、フッ素樹脂フィルムラミネート鋼板、ステンレス鋼板などを用いるのが好ましい。また、表面板1、2は厚さ0.5~1.6mmのものを使用することができる。
【0016】図2に表面板1、2の一例を示す。この表面板1、2は図13に示すような湾曲した断熱パネルを形成するためのものであって、一方の表面板1は断熱パネルを外壁パネルとして使用した場合に屋外側に向けられる外皮材として形成されていると共に他方の表面板2は外壁パネルとして使用した場合に屋内側に向けられる内皮材として形成されている。また、表面板1、2はその短手方向(幅方向)の一方の端部に断面略U字状の折曲部25、26が、短手方向の他方の端部に凹凸状の突出部27、28がそれぞれ表面板1、2の長手方向(図2の紙面と直交する方向)の全長に亘って形成されている。この折曲部25、26と突出部27、28は板材料を所定の幅寸法と長さ寸法に切断した後、切断した板材料に曲げ加工などの成形加工を施すことにより形成することができる。そして、金属板1、2を対向配置することによって、対向する折曲部25、26の間を断熱パネルの下端の嵌合凹部29として形成することができると共に対向する突出部27、28で断熱パネルの上端の嵌合凸部30を形成することができる。
【0017】尚、本発明の断熱パネルの嵌合凸部30と嵌合凹部29の形状は任意であり、各種の形状の嵌合凸部30と嵌合凹部29に応じて表面板1、2の折曲部25、26と突出部27、28を形成することができる。また、本発明の断熱パネルの長手方向の端部は箱折り加工するタイプとしないタイプがあり、それぞれに応じて表面板1、2の長手方向の端部を加工しておく。また、本発明により製造される断熱パネルは、現状では長手方向の寸法が8m以下、働き幅の寸法が0.6~1m、曲率半径が6~100m、厚さ35~100mmのものが考えられるが、もちろんこれに限定されるものではない。
【0018】断熱材(芯材)3としてはスラグ系や天然岩石系のロックウール、グラスウール、フェノールボード、ウレタンボードなどを用いることができるが、防火・耐火性能を考慮すると、密度が120kg/m3以上のロックウールを用いるのが好ましく、より好ましくは密度が200kg/m3以上のロックウールを用いる。また、断熱材3はラメラと称される短冊状に切断されたものを用いるが、この短冊状の断熱材3には短手方向の寸法が異なる三種類のものがある。一つは嵌合用ラメラであって、対向配置された表面板1、2の突出部27、28の間に充填されて断熱パネルの嵌合凸部30を構成するものである。また、他の一つは標準用ラメラであって、断熱パネルの嵌合凸部30と嵌合凹部29の間において表面板1、2の間に充填されるものである。さらに、他の一つは幅調整用ラメラであって、断熱パネルの嵌合凹部29付近に充填されるものである。これら標準用ラメラと嵌合用ラメラと幅調整用ラメラは任意のサイズに形成することができるが、例えば、標準用ラメラと嵌合用ラメラは厚み48.5mm、短手方向の寸法103mm、長手方向の寸法1125mmに形成することができ、また、幅調整用ラメラは標準用ラメラを切断して短手方向の寸法を103mmよりも短い任意の寸法に形成することができる。
・・・・
【0035】そして、上記のような製造装置を用いて湾曲した断熱パネルを製造するにあたっては次のようにして行う。まず、外皮材となる表面板1の片面(断熱材3が配置される方の面)に接着剤を塗布する。接着剤としてはウレタン系接着剤やエポキシ系接着剤などの熱硬化型接着剤を用いる。具体的には、二液型ウレタン系接着剤であるヘンケルジャパン(株)製の「UK8104E-30(主剤)/UK5400(硬化剤)」を用いることができるが、これに限定されるものではない。また、一液型ウレタン系接着剤では硬化反応が速すぎて採用することができない場合がある。また、接着剤の塗布方法はビード塗布方式、ロールコート方式、噴霧方式等などの任意の方法を採用することができる。また、接着剤の塗布量は接着剤の種類等によっても異なるが、上記のウレタン系接着剤の場合は200~500g/m2にすることができる。
【0036】次に、表面板1に補強金物60をセットする。補強金物60は図6に示すように、長片61とこれに対向する短片62とを備えて断面略コ字状に形成されるものであり、長片61を表面板1の折曲部25内に挿入することによって表面板1に複数個の補強金物60を取り付けることができる。この補強金物60は長さ(図6の紙面に対して直交する方向の寸法)を約50mmに形成することができ、また、補強金物60は50mm程度のピッチで表面板1に設けることができる。
【0037】次に、表面板1の接着剤を塗布した面に複数個の角材形状あるいは薄板形状の断熱材3を配置する。この時、図7(a)(b)に示すように、短手方向の長さが異なる複数種の断熱材3のうちまず最初に嵌合用ラメラ3aを表面板1の折曲部25に沿って配置し、次に複数個の標準用ラメラ3bを突出部27の近傍にまで並べて配置し、最後に幅調整用ラメラ3cを突出部27及びその近傍に配置する。このようにして隣接する断熱材3同士を突き合わせながら、短手方向の長さが異なる複数種の断熱材3を表面板1の短手方向に並べて配置することによって、隣接する断熱材3の間に隙間が生じないようにすることができる。また、断熱材3はその長手方向が表面板1の長手方向と平行になるように配置されるが、この長手方向において隣接する断熱材3の突き合わせ部分が一箇所に集中しないように、複数個の断熱材3を少しずつ長手方向にずらしながら配置するようにする。すなわち、複数個の断熱材3は千鳥配列で配置するものであり、これにより、隣接する断熱材3の突き合わせ部分である強度不足部分を集中させないようにすることができる。また、断熱材3はその繊維方向が表面材1、2の面方向と直角(直交する方向)になるように配置される。
【0038】一方、上記の断熱材3の配置が終わるまでに、内皮材となるもう一つの表面板2の片面(断熱材3が配置される方の面)に接着剤を塗布する。接着剤としては上記と同様のものを用いる。また、塗布方法や塗布量も上記と同様にする。次に、接着剤を塗布した側を下に向けて表面板2を表面板1の断熱材3の上に載置することにより断熱材3を介して表面板1、2を上下に対向させて配置する。このように表面板1に表面板2を載置するときに、図8に示すように、表面板1に取り付けた補強金物60の短片62に表面板2の折曲部26を挿入する。また、表面板1、2を対向配置すると、表面板1の突出部27と表面板2の突出部28が対向するが、図9に示すように、この対向する突出部27、28の外側に断面略コ字状の挟持金物63を取り付けるようにするものであり、挟持金物63で突出部27、28の挟持することによって、成形時の加圧で突出部27、28が互いに離れる方向に変形するのを防止することができ、嵌合凸部30が開かないようにすることができる。この挟持金物63は突出部27、28に沿って約50mmのピッチで複数個設けることができる。尚、挟持金物63は成形後に湾曲した断熱パネルから取り外す。
【0039】このようにして表面板1、2と断熱材3とを組み付けて、金属製の二枚の表面板1、2の間に断熱材3を介装した積層体70を形成した後、この積層体70を下側成形機46の熱盤6に載置する。この時、図9に示すように、下側の表面板1の突出部27と熱盤6の上面との間に敷物64を配設するものであり、これにより、突出部27と熱盤6との間に隙間がなくなって突出部27、28の間に加圧(プレス圧)を均等にかけることができるものである。また、図10に示すように、下側の熱盤6の上面において積層体70の周囲に複数個のスペーサ65を配置する。このスペーサ65の高さ寸法は断熱パネルの仕上がりの厚みと同じに形成されている。また、スペーサ65は支持具48の支柱51に対応する位置に配置する。
・・・・
【0042】そして、上記のように熱盤5、6で表面板1、2と断熱材3を湾曲させながら挟持しつつ加熱することによって、接着剤を硬化させて表面板1、2と断熱材3を一体的に接着する。この加熱加圧成形時には、断熱材3がロックウールやグラスウールなどの繊維集合体である場合、未硬化あるいは半硬化の接着剤が断熱材3の表面に含浸し、この後、接着剤が加熱により硬化するものであり、これにより、接着剤によるアンカー効果が発現されて表面板1、2と断熱材3を強固に接着することができるものである。また、断熱材3へ接着剤を含浸させやすくすると共に断熱パネルの強度を高くするために、断熱材3の繊維方向が表面板1、2の表面と略垂直になるように表面板1、2の間に断熱材3を配置するのが好ましい。また、上記の加熱加圧成形の時間は、接着剤の硬化時間等によって適宜設定されるが、5~10分間である。従来の木型15を用いた加圧成形のみでは接着剤が硬化するまでに2~3時間かかるものであり、一枚の断熱パネルを製造するのに長時間を要していたが、本発明では加熱により接着剤の硬化時間を短縮させたので、一枚の断熱パネルを製造するのに短時間で済み、生産性を高くすることができるものである。
【0043】このようにして接着剤を硬化させた後、重り66と上側成形機45を取り外し、吸着パット付き装置等で湾曲した断熱パネルを下側成形機46から取り出す。このようにして金属製の二枚の表面板1、2の間に断熱材3を介装した断熱パネルを製造することができる。」
(イ)図面の図示
a 【図2】
「
[図:0001392064000001.jpg]
」
b 【図6】
「
[図:0001392064000002.jpg]
」
c 【図8】
「
[図:0001392064000003.jpg]
」
d 【図13】
「
[図:0001392064000004.jpg]
」
イ 図面の図示より看取される事項
上記ア(イ)の図示より、次の事項が看取される。
・【図2】、【図6】及び【図8】より、【図13】の状態に製造された断熱パネルにおいて、断面略コ字状の補強金物60は、対向する折曲部25、26及びその間に形成される断熱パネルの下端の嵌合凹部29が延在する方向と垂直な方向には移動せず、表面板1と表面板2とが互いに離れる方向に変形することを防止する構造となっている様子が、看取される。
ウ 記載された発明
上記ア及びイより、甲1には、次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されている。なお、各構成を認定するうえで参照した段落番号等を、括弧書きで付した。
「金属製の二枚の表面板1、2の間に断熱材3を配置し、熱盤5、6により表面板1、2と断熱材3とを加熱加圧することによって、表面板1、2と断熱材3とを湾曲させると共に一体的に接着した、断熱パネルであって、(【0007】)
表面板1、2は、剛性があって塑性変形可能な、耐火性や耐食性を考慮した金属製の板材料を使用し、(【0015】)
一方の表面板1は、断熱パネルを外壁パネルとして使用した場合に屋外側に向けられる外皮材として形成され、他方の表面板2は、外壁パネルとして使用した場合に屋内側に向けられる内皮材として形成され、
表面板1、2は、その短手方向(幅方向)の一方の端部に断面略U字状の折曲部25、26が、短手方向の他方の端部に凹凸状の突出部27、28が、それぞれ表面板1、2の長手方向の全長に亘って、所定の幅寸法と長さ寸法に切断した板材料に曲げ加工を施すことにより形成され、金属板1、2を対向配置することによって、対向する折曲部25、26の間は、断熱パネルの下端の嵌合凹部29として形成され、対向する突出部27、28は、断熱パネルの上端の嵌合凸部30として形成されるものであり、(【0016】)
断熱パネルの長手方向の端部は、箱折り加工するタイプとしないタイプがあり、それぞれに応じて表面板1、2の長手方向の端部を加工しておき、(【0017】)
断熱材3として、防火・耐火性能を考慮して、ロックウールを用い、(【0018】)
断熱パネルを製造するにあたっては、
まず、外皮材となる表面板1の片面(断熱材3が配置される方の面)に接着剤を塗布し、(【0035】)
次に、表面板1に補強金物60をセットし、補強金物60は長片61とこれに対向する短片62とを備えて断面略コ字状に形成されるものであり、長片61を表面板1の折曲部25内に挿入することによって表面板1に複数個の補強金物60を取り付け、長さを約50mmに形成した補強金物60は、50mm程度のピッチで表面板1に設け、(【0036】)
次に、表面板1の接着剤を塗布した面に断熱材3を配置し、(【0037】)
一方、内皮材となるもう一つの表面板2の片面(断熱材3が配置される方の面)に接着剤を塗布しておき、
次に、接着剤を塗布した側を下に向けて表面板2を表面板1の断熱材3の上に載置し、表面板2を載置するときに、表面板1に取り付けた補強金物60の短片62に表面板2の折曲部26を挿入し、(【0038】)
このようにして表面板1、2と断熱材3とを組み付けて、金属製の二枚の表面板1、2の間に断熱材3を介装した積層体70を形成した後、(【0039】)
熱盤5、6で表面板1、2と断熱材3を湾曲させながら挟持しつつ加熱することによって、接着剤を硬化させて表面板1、2と断熱材3を一体的に接着し、(【0042】)
断面略コ字状の補強金物60は、対向する折曲部25、26及びその間に形成される断熱パネルの下端の嵌合凹部29が延在する方向と垂直な方向には移動せず、表面板1と表面板2とが互いに離れる方向に変形することを防止する、(図よりの看取)
金属製の二枚の表面板1、2の間に断熱材3を介装した断熱パネル(【0043】)」
(2)甲2
甲2には、次の記載がある。
ア 明細書
「【0007】以下に図面によって、本発明にかかる耐火パネルについて詳細に説明する。図1は本発明の代表例の耐火パネルの斜視図であり、表面材1、裏面材20、芯材30からなるサンドイッチ構造の耐火パネルである。表面材1及び裏面材20は金属薄板材からなり、例えばAl、Fe、Cu、ステンレス、アルミ‐亜鉛合金メッキ鋼板、カラー鋼板、ホーロー鋼板、フッ素樹脂塗装鋼板、クラッド鋼板、サンドイッチ鋼板等の一種をプレス成形、押出成形、ロール成形等によって成形したものである。図1に示す耐火パネルでは、化粧面2、雌型連結部40、雄型連結部50を形成したものである。
【0008】この表面材1は、図2に示すように、壁体を形成した際に、壁体表面を形成する化粧面2と、化粧面2の一端側をU字状に突出させた突出部3と、突出部3の板材の戻り先端部を化粧面と垂直で内方に突出させた補強リブ4とから係合部5を形成し、化粧面2の他端側は、化粧面2のU字状の突出部3の厚さより、やや多く内方に屈曲させて、隣接のパネルの突出部3と接触しない程度で、しかもU字状の突出部3の長さよりやや長めになるようにした屈曲部6と、ビスのような取付部材の頭部が入り込む入れ込み凹部7を有し、かつ化粧面と平行な部分8を設け、その先端を化粧面に垂直で内方に突出させた補強リブ9とからなる差込固定部10からなる。表面材1は化粧面2、係合部5と差込固定部10とよりなるものである。
【0009】裏面材20は、図3に示すように、前記素材の一つよりなる板材の一端側を表面材1のU字状の突出部3より短いU字状に突出させて突出部21を形成し、その突出部21の板材の戻り先端部を裏面材20と垂直で内方に突出させて補強リブ22とし、これによって係合部下縁23を形成する。他端側はU字状の突出部21の厚さよりやや多く内方に屈曲させて、隣接パネルの突出部21と接触しない程度で、しかもU字状の突出部21の長さよりやや長めになるようにした屈曲部24と裏面材と平行な部分25を設け、その先端を裏面材と垂直で内方に突出させた補強リブ26とからなる差込固定部下縁27からなる。裏面材20は、裏面材12、係合部下縁23、差込固定部下縁27とからなる。
【0010】このようにして、雌型連結部40は、係合部5のU字状の突出部3と補強リブ4、係合部下縁23のU字状の突出部21と補強リブ22及び芯材30とからなる側断面が略変形コの字形の嵌合部分よりなり、この凹部にコ字状補強材41を有し、雄型連結部50は、差込固定部10、差込固定部下縁27及び芯材30とからなるものである。
【0011】この雌型連結部40は、図4に示すように、隣接パネルの雄型連結部50と係合するものであって、壁下地60に固定する場合には、雄型連結部50に設けられた取付部材の頭部が入り込む入れ込み凹部7から、ビス等の取付部材70を挿通して壁下地60に固定する。次いで固定されたこの雄型連結部50に、隣接の耐火パネルの雌型連結部40を嵌合するが、この際に耐火性の向上のために、対向する補強リブ4と隣接パネルの雄型連結部50の補強リブ9の間及び補強リブ22と隣接の補強リブ26の間に耐火性目地材80を挟持させることが好ましい。耐火性目地材は、特に制限されるものではないが、ロックウールやセラミックファイバーからなる目地材が好ましい。
【0012】雌型連結部40と隣接パネルの雄型連結部50との結合をより強固にするために、雌型連結部の係合部の表面材、裏面材のU字状突起に断面が変形コの字状の補強材41を有することが好ましい。ここで使用するコ字型補強材41は、雌、雄の嵌合構造をより強度にする為のものであり、負圧に対し、パネル下端の変形を防止し、水漏れを防ぐものである。
・・・・
【0017】
【実施例】以下に実施例によって、本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこの実施例によって何等限定されるものではない。図1に示すような耐火パネルを用い、図4に示すように施工する場合の施工例について説明する。ここに使用した耐火パネルとしては表面材1及び裏面材20には 0.5mm厚のカラー鋼板を使用し、芯材30としては、輝緑岩、安山岩等の天然岩石又は水砕スラグを電気炉やキュポラで溶融した後、繊維化したロックウールを成形加工したものを使用した。又コ字形補強材41としては、0.5mm厚のステンレス鋼板製のものを用いた。」
イ 図面の図示
(ア)【図1】
「
[図:0001392064000005.jpg]
」
(イ)【図2】
「
[図:0001392064000006.jpg]
」
(ウ)【図3】
「
[図:0001392064000007.jpg]
」
(エ)【図4】
「
[図:0001392064000008.jpg]
」
第4 判断
1 進歩性
(1)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲1発明とを対比する。
甲1発明において、「断熱パネルを外壁パネルとして使用した場合に屋外側に向けられる外皮材として形成」される「一方の表面板1」は、本件発明1における「表側表面材」に相当する。
甲1発明において、「外壁パネルとして使用した場合に屋内側に向けられる内皮材として形成」される「他方の表面板2」は、本件発明1における「裏側表面材」に相当する。
甲1発明における「断熱材3」は、本件発明1における「断熱材」に相当する。
甲1発明において、「表面板1、2」として「耐火性や耐食性を考慮した金属製の板材料を使用」し、「断熱材3として、防火・耐火性能を考慮して、ロックウールを用い」ている、「金属製の二枚の表面板1、2の間に断熱材3を介装した断熱パネル」は、使用素材からみて「断熱パネル」全体としても耐火性を有していることをふまえると、本件発明1において、「表側表面材と裏側表面材とを備え前記表側表面材と前記裏側表面材との間に断熱材を設けた耐火パネル」に相当する。
甲1発明において、「断熱パネル」に取り付けられる「補強金物60」は、本件発明1において、「耐火パネルを補強する耐火パネルの補強材」に相当する。
甲1発明において、「補強金物60」は、「長辺61とこれに対向する短片62とを備えて断面略コ字状に形成」されており、「長さ」は「約50mm」であるところ、「断面略コ字状」の「補強金物60」のうち、「長辺61」と「これに対向する短片62」との間の中央の部分は、本件発明1において、「補強材」が有する「矩形状の中央片」に相当する。
甲1発明において、「断面略コ字状」の「補強金物60」が有する「長片61」及び「これに対向する短辺62」は、本件発明1において、「補強材」が有する「前記中央片の長手方向の一方の一辺から直角に」「形成」された「長片状の第一係止固定部」、及び「前記中央片の長手方向の他方の一辺から直角に」「形成」された「短片状の第二係止固定部」に、それぞれ相当する。
甲1発明において、「表面板1の折曲部25」、及び「表面板2の折曲部26」は、本件発明1において、「前記表側表面材に設けられた第一折り返し部」、及び「前記裏側表面材に設けられた第二折り返し部」に、それぞれ相当する。
甲1発明において、「補強金物60」に関し、「長片61を表面板1の折曲部25内に挿入することによって表面板1に」「取り付け」られ、「表面板1に取り付けた補強金物60の短片62に表面板2の折曲部26を挿入」するものである構成は、本件発明1において、「補強材」に関し、「長片状の第一係止固定部」が「前記表側表面材に係止固定可能」であり、「短片状の第二係止固定部」が「前記裏側表面材に係止固定可能」である構成に相当する。また、甲1発明における上記構成と、本件発明1において、「前記第一係止固定部は前記表側表面材に設けられた第一折り返し部に側方より挿嵌され、前記第二係止固定部は前記裏側表面材に設けられた第二折り返し部に側方より挿嵌され」る構成とは、「前記第一係止固定部は前記表側表面材に設けられた第一折り返し部に挿嵌され、前記第二係止固定部は前記裏側表面材に設けられた第二折り返し部に挿嵌され」る点で、共通する。
甲1発明において、「断面略コ字状の補強金物60は、対向する折曲部25、26及びその間に形成される断熱パネルの下端の嵌合凹部29が延在する方向と垂直な方向には移動せず、表面板1と表面板2とが互いに離れる方向に変形することを防止する」構成と、本件発明1において、「前記補強材が、前記第一折り返し部及び前記第二折り返し部の側方からの挿嵌方向には移動可能に、前記第一折り返し部及び前記第二折り返し部の側方からの挿嵌方向に対して垂直方向には移動不能にされて、前記表側表面材と前記裏側表面材との間隔の拡がりを規制可能」である構成とは、本件発明1における「前記第一折り返し部及び前記第二折り返し部の側方からの挿嵌方向」は「第一折り返し部」及び「第二折り返し部」が延在する方向であることをふまえると、「前記補強材が、前記第一折り返し部及び前記第二折り返し部の延在する方向に対して垂直方向には移動不能にされて、前記表側表面材と前記裏側表面材との間隔の拡がりを規制可能」である点で、共通する。
以上を整理すると、本件発明1と甲1発明とは、次の点で一致する。
「表側表面材と裏側表面材とを備え前記表側表面材と前記裏側表面材との間に断熱材を設けた耐火パネルを補強する耐火パネルの補強材を備えた耐火パネルであって、
前記補強材は、
矩形状の中央片と、前記中央片の長手方向の一方の一辺から直角に形成されるとともに前記表側表面材に係止固定可能な長片状の第一係止固定部と、前記中央片の長手方向の他方の一辺から直角に形成されるとともに前記裏側表面材に係止固定可能な短片状の第二係止固定部とを備え、
前記第一係止固定部は前記表側表面材に設けられた第一折り返し部に挿嵌され、前記第二係止固定部は前記裏側表面材に設けられた第二折り返し部に挿嵌されて、前記補強材が、前記第一折り返し部及び前記第二折り返し部の延在する方向に対して垂直方向には移動不能にされて、前記表側表面材と前記裏側表面材との間隔の拡がりを規制可能な耐火パネル。」
そして、本件発明1と甲1発明とは、以下の点で相違する。
<相違点1>
「補強材」が有する「長片状の第一係止固定部」及び「短片状の第二係止固定部」に関し、
本件発明1においては、「屈曲」形成されると特定されているのに対し、
甲1発明においては、「断面略コ字状」をなす「補強金物60」の「長片61」及び「短片62」について、「屈曲」形成されるとは特定されていない点。
<相違点2>
「耐火パネル」に備えられた「補強材」に関し、
本件発明1においては、「補強材」の「第一係止固定部」及び「第二係止固定部」が「第一折り返し部」及び「第二折り返し部」に対して「側方から」挿嵌されることが特定され、「第一折り返し部」及び「第二折り返し部」が延在する方向について、「前記第一折り返し部及び前記第二折り返し部の側方からの挿嵌方向」と特定されているとともに、「前記補強材が、前記第一折り返し部及び前記第二折り返し部の側方からの挿嵌方向には移動可能に」されていると特定されているのに対し、
甲1発明においては、そのように特定されていない点。
イ 相違点についての判断
事案に鑑み、上記相違点2から判断する。
甲1発明に係る「断熱パネル」は、「断熱パネルの長手方向の端部は、箱折り加工するタイプとしないタイプがあり、それぞれに応じて表面板1、2の長手方向の端部を加工してお」くものであるから、「箱折り加工」するタイプの「断熱パネル」、及び「箱折り加工」しないタイプの「断熱パネル」について、それぞれ相違点2の容易想到性を判断する。
(ア)「箱折り加工」するタイプの「断熱パネル」について
甲1発明に係る「断熱パネル」のうち、「箱折り加工するタイプ」については、「表面板1、2の長手方向の端部」が「箱折り加工」されているから、「表面板1」及び「表面板2」の構造として、「補強金物60」を「側方より挿嵌」することはできず、相違点2に係る本件発明1の構成のうち、「補強材」の「第一係止固定部」及び「第二係止固定部」が「第一折り返し部」及び「第二折り返し部」に対して「側方から」挿嵌される、という構成を満たすものではない。
また、「箱折り加工するタイプ」の甲1発明に係る「断熱パネル」について、「補強金物60」を、「側方より挿嵌」する構造とする動機付けはない。
したがって、「箱折り加工するタイプ」の甲1発明に係る「断熱パネル」においては、その余の構成について検討するまでもなく、上記相違点2に係る本件発明1の構成に至ることは、当業者にとって想到容易でない。
(イ)「箱折り加工」しないタイプの「断熱パネル」について
甲1発明に係る「断熱パネル」のうち、「箱折り加工」しないタイプについては、「表面板1」及び「表面板2」の「端部」において、「箱折り加工」により「補強金物60」を「側方より挿嵌」することが妨げられるものではない。
しかしながら、甲1発明においては、「片面(断熱材3が配置される方の面)に接着剤を塗布」した「表面板1」に対して「補強金物60をセット」し、「次に、表面板1の接着剤を塗布した面に断熱材3を配置」し、「次に、接着剤を塗布した側を下に向けて表面板2を表面板1の断熱材3の上に載置し、表面板2を載置するときに、表面板1に取り付けた補強金物60の短片62に表面板2の折曲部26を挿入」し、「熱盤5、6で表面板1、2と断熱材3を湾曲させながら挟持しつつ加熱することによって、接着剤を硬化させて表面板1、2と断熱材3を一体的に接着」するから、「箱折り加工」しないタイプの「断熱パネル」についても、「補強金物60」を、「側方より挿嵌」し、完成後において「側方からの挿嵌方向には移動可能に」しているとはいえない。
甲1発明において、「補強金物60は、50mm程度のピッチで表面板1に設け」ている点に着目すれば、「断熱パネルの下端の嵌合凹部29が延在する方向」において、複数の「補強金物60」の間には「50mm程度」の間隔があると解される。
しかしながら、「表面板1に複数個の補強金物60を取り付け」る段階で「50mm程度のピッチで表面板1に設け」たうえで、後続する「表面板2を載置するときに、表面板1に取り付けた補強金物60の短片62に表面板2の折曲部26を挿入」し、「熱盤5、6で表面板1、2と断熱材3を湾曲させながら挟持しつつ加熱する」という処理を行うことからすれば、甲1発明に係る「断熱パネル」においては、「補強金物60」の位置がずれないように、「50mm程度のピッチで表面板1に設け」る段階で固定している蓋然性が高い。また、仮にそうでないとしても、「熱盤5、6で表面板1、2と断熱材3を湾曲させながら挟持しつつ加熱することによって、接着剤を硬化させて表面板1、2と断熱材3を一体的に接着」した後の「断熱パネル」について、「補強金物60」が「50mm程度のピッチ」の部分で移動可能ということはできない。
そして、甲1発明において、完成後の「断熱パネル」について、「補強金物60」を、「50mm程度のピッチ」の部分で、移動可能とする動機付けはない。
この点に関し、甲2には、上記第3の3(2)に摘記した事項が記載されているが、甲2における「コ字型補強材41」に関し、側方から挿入し「耐火パネル」内で側方に移動可能なものとすることは示されておらず、甲1発明において上記相違点2に係る本件発明1の構成に至ることを示唆するものではない。
したがって、「箱折り加工」しないタイプの甲1発明に係る「断熱パネル」において、甲2に記載される事項を考慮しても、上記相違点2に係る本件発明1の構成に至ることは、当業者にとって想到容易でない。
ウ 申立人の主張について
申立人は申立書において、上記相違点2に係る本件発明1の構成に関し、甲1発明において補強金物60を側方から挿して嵌めることは、当然採用し得る通常の手段である旨、及び、甲1発明において補強金物60が側方からの挿嵌方向に移動可能であることは明らかである旨を、主張している(申立書第9頁第10行-第10頁第11行)。
しかしながら、上記相違点2の容易想到性については、上記イに判断したとおりであり、申立人の上記主張を考慮しても、上記イと異なる判断をすべき事情は見いだせない。
エ 本件発明1の進歩性
上記イのとおり、甲1発明において、上記相違点2に係る本件発明1の構成に至ることは、甲2に記載される事項を考慮しても、当業者にとって想到容易でないから、その余の相違点1について判断するまでもなく、本件発明1は、甲1発明、及び甲2に記載される事項に基いて、当業者が容易に発明できたものではない。
(2)本件発明2ないし5について
本件発明2ないし5は、本件発明1の構成を全て有し、さらに構成を付加したものである。
そして、上記(1)に示したとおり、本件発明1は、甲1発明及び甲2に示される事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
したがって、本件発明2ないし5における付加的構成について検討するまでもなく、本件発明2ないし5は、甲1発明、及び甲2に示される事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
2 明確性
(1)申立人の具体的主張
ア 「断熱材」について
申立人は申立書において、本件発明1ないし5は、「断熱材」として、ロックウールの他に、発泡スチレン、発泡ウレタン、グラスウール等も使用できるところ、発泡スチレン、発泡ウレタン、グラスウールは、ロックウールに比較して、使用可能温度、耐熱温度あるいは熱間収縮温度が低く、発泡スチレン、発泡ウレタンあるいはグラスウールを「断熱材」として使用したパネルは、「耐火パネル」として十分な耐火性能を発揮しないことが明らかであるから、本件発明1ないし5は発明特定事項に技術的な不備があり、発明が不明確である旨を主張している(申立書第11頁第11行-同頁第31行)。
イ 「移動可能」と「係止固定」とについて
また申立人は申立書において、本件発明3は、本件発明1の構成を有することで「補強材」が「側方からの挿嵌方向には移動可能」と特定される一方、本件発明3における付加的構成においては「補強材」が「係止固定」されると特定され、「固定」というからには「補強材」は移動しないこととなるから、本件発明3は発明特定事項が相互に矛盾し、本件発明3、及び本件発明3の構成を有する本件発明4及び5は発明が不明確である旨を主張している(申立書第11頁第32行-第12頁第6行)。
(2)明確性要件に違反するか否かの判断
特許を受けようとする発明が明確であるか否かは、特許請求の範囲の記載のみならず、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願当時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるか否かという観点から、判断されるべきものである。
上記の観点に基づいて、以下、判断する。
ア 「断熱材」について
本件発明1ないし5を特定する請求項1ないし5の記載において、「断熱材」の具体的素材は特定されておらず、全体として「耐火パネル」であることが特定されている。
「断熱材」に関し、明細書の段落【0018】には、実施例として「ロックウール」を用いることが記載されたうえで、「なお断熱材は、例えば発泡スチレン、発泡ウレタン等の板状の発泡樹脂やグラスウール等であっても良い。」と記載されている。
申立人の上記(1)アの主張は、明細書における段落【0018】のなお書きを根拠とするものと解される。
しかしながら、特許請求の範囲の請求項1における記載自体は、「断熱材」を用いていること、及び、全体として「耐火パネル」であることを特定している点で、明確である。
また、特許請求の範囲の記載において排除されていない素材であって、発明の詳細な説明においてなお書きで例示される素材を用いた場合に、実施例の素材を用いたものより性能が劣る場合があり得るとしても、本件特許請求の範囲における請求項1ないし5の記載は上述したとおり明確であるから、明細書の段落【0018】の付記によって、請求項1ないし5の記載により特定される本件発明1ないし5が、第三者に不測の不利益を生じさせる程に不明確となるものではない。
したがって、本件発明1ないし5は、申立人が上記(1)アに主張する点で、発明が不明確なものではない。
イ 「移動可能」と「係止固定」とについて
「係止固定」という語が用いられれば、必ず全方向に移動不能でなければならないという常識はなく、本件明細書においても、「補強材50によってその表面側方向についてそれぞれ係止固定されており」という表現が用いられ(段落【0027】)、また「第一折り返し部21」及び「第二折り返し部31」の内部に差し込まれて「補強材50」を特定の方向に「スライド」可能とするコ字状の長片及び短片について、「第一係止固定部54」及び「第二係止固定部56」という用語が用いられている(段落【0023】及び【0032】)。
そして、特許請求の範囲の請求項3の記載において、「補強材」の「第一係止固定部」及び「第二係止固定部」が、それぞれ「第一折り返し部」及び「第二折り返し部」に「係止固定」されることと、請求項3が引用する請求項1の記載において、「補強材」が「第一折り返し部」及び「第二折り返し部」の「側方からの挿嵌方向には移動可能」であることとは、互いに矛盾することなく整合的に理解されるものであり、明細書及び図面の記載を参照しても、第三者に不測の不利益を生じさせる程に不明確なものではない。
したがって、本件発明3ないし5は、申立人が上記(1)イに主張する点で、発明が不明確なものではない。
ウ その余の構成について
本件発明1ないし5を特定する、特許請求の範囲の請求項1ないし5の記載において、上記ア及びイ以外の点についても、第三者に不測の不利益を生じさせる程に、発明が不明確となる点はない。
したがって、本件発明1ないし5は、申立人が申し立てる点で明確性要件に違反するものではなく、特許法第36条第6項第2号の規定を満たしている。
第6 むすび
以上のとおりであるから、特許異議申立書に記載した特許異議申立理由、及び提出された証拠によっては、本件発明1ないし5に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明1ないし5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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2022-700587