特許異議申立
2024-700320
照明器具
- 審判番号
- 2024-700320
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2019-140501
- 登録番号
- 7357483
- 請求日
- 2024年04月05日
- 審決日
- 2024年09月17日
- 公報発行日
- 2024年10月25日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】三菱電機株式会社
- 【権利者代理人】弁理士法人きさ特許商標事務所
- 【権利者】三菱電機照明株式会社
- 【権利者代理人】弁理士法人きさ特許商標事務所
- 【異議申立人】杉本 光史
- 審判長/審判官
- 審判長 筑波 茂樹
- 審判官 澤崎 雅彦
- 審判官 高橋 学
- 分類
- P1651.121-Y (F21V) / P1651.537-Y (F21V)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条第6項第2号、特許法第29条第2項、特許法第36条第6項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7357483号発明「照明器具」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7357483号の請求項1~6に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7357483号(以下「本件特許」という。)の請求項1~6に係る特許についての出願は、令和1年7月31日に出願されたものであって、令和5年9月28日にその特許権の設定登録がされ、同年10月6日に特許掲載公報が発行された。
その後、本件特許について、令和6年4月5日に特許異議申立人杉本光史(以下「申立人」という。)により本件特許異議の申立て(全請求項)がされたものである。
第2 本件発明
本件特許の請求項1~6に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」等という。)は、本件特許の願書に添付された特許請求の範囲の請求項1~6に記載された事項により特定される、以下のとおりのものであると認められる。
「 【請求項1】
長方形の板状形状を有し、長手方向において中央部分よりも端部側に、前記長手方向に延びた楕円形に形成された貫通孔が形成された基板と、
前記基板の一方の面に設けられ、前記一方の面の長手方向の一辺に沿って配置された光源と、
前記基板の前記一方の面および前記一方の面の反対側の他方の面に設けられ、前記光源が発生する熱を放出させる放熱部と、
前記基板の前記他方の面に対して設置され、前記基板を保持するとともに、前記基板に設けられた前記放熱部から伝導された熱を放出させる放熱板と、
前記基板の前記一方の面に面接触し、前記基板に設けられた前記放熱部の少なくとも一部分を前記放熱板に向けて押圧し、前記基板の前記貫通孔に挿入される突起部が形成された押さえ板と
を備えた、
照明器具。
【請求項2】
前記基板に設けられた前記放熱部は、前記光源と前記基板の前記一方の面との間に介在された膜状の熱伝導部材を有する、
請求項1に記載の照明器具。
【請求項3】
前記基板に設けられた前記放熱部は、前記光源に接続されて、前記基板の前記一辺に対向する他辺に向かって前記光源から延設され、前記基板の前記一方の面に配置された、第1の導体パターンを有する、
請求項1または2に記載の照明器具。
【請求項4】
前記基板に設けられた前記放熱部は、前記基板の前記他方の面に設けられ、前記第1の導体パターンに接続された第2の導体パターンを有する、
請求項3に記載の照明器具。
【請求項5】
前記基板に設けられた前記放熱部は、前記基板を貫通する貫通穴と、前記貫通穴に充填された熱伝導部材とを有する、ビアを有し、
前記第1の導体パターンと前記第2の導体パターンとは、前記ビアを介して接続されている、
請求項4に記載の照明器具。
【請求項6】
前記放熱板は、前記基板に設けられた前記放熱部から伝導された熱を放出させる複数の放熱フィンを有し、
前記複数の放熱フィンは、前記放熱板の前記基板が設けられている面とは反対側の面に配置され、前記基板から離れる方向に向かって延びている、
請求項1~5のいずれか1項に記載の照明器具。」
第3 申立理由の概要
申立人が提出した特許異議申立書に記載した申立ての理由(以下「申立理由」という。)の概要は次のとおりである。
[申立理由1](進歩性)本件特許の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、本件特許の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、その特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
[申立理由2](明確性要件)本件特許の下記の請求項に係る発明は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないから、下記の請求項に係る特許は、特許法第36条第6項の規定に違反してされたものである。
記
<申立人が提出した証拠>
(以下、申立人が提出した「甲第○号証」を「甲○」という。)
・甲1:特開2019-54000号公報
・甲2:国際公開第2014/091657号
・甲3:特開2016-81776号公報
・甲4:特開2016-81777号公報
・甲5:特開2016-81778号公報
・甲6:特開2016-81779号公報
・甲7:特開2016-81780号公報
・甲8:特開2016-81781号公報
・甲9:特開2016-81782号公報
・甲10:特開2016-81783号公報
・甲11:特開2016-81899号公報
・甲12:特開2012-181945号公報
・甲13:特開2012-181946号公報
・甲14:特開2012-181947号公報
・甲15:特開2012-182191号公報
・甲16:特開2012-182192号公報
・甲17:特開2012-54166号公報
<申立理由と請求項に係る発明及び引用文献との関係>
・申立理由:1
・請求項 :1
・引用文献:甲1~甲16
・申立理由:1
・請求項 :2~6
・引用文献:甲1~甲17
・申立理由:2
・請求項 :1~6
特許請求の範囲の請求項1には、「前記基板の前記一方の面に面接触し、前記基板に設けられた前記放熱部の少なくとも一部分を前記放熱板に向けて押圧し、前記基板の前記貫通孔に挿入される突起部が形成された押さえ板」と記載されているが、「押圧」をどのように実施するのかが不明確であり、自重によるものも含むのか、押圧手段を持っているのかが不明確である。
請求項1を引用する請求項2~6も同様である。
第4 申立理由についての判断
1 申立理由1(進歩性)について
1-1 引用文献について
(1)甲1
(1-1)甲1の記載事項
甲1には、以下のことが記載されている(下線は主要な参照箇所を示す。)。
ア 「【0012】
図1乃至図4において、照明器具は、本体1と、光源部2と、拡散部材3と、点灯装置4と、点灯装置カバー5と、取付部6と、カバー部材7とを備えている。また、器具取付面としての天井面Cに設置された引掛けシーリングボディCbに電気的かつ機械的に接続されるアダプタAを備えている。このような照明器具は、丸形の円形状の外観に形成され、前面側を光の照射面とし、背面側を天井面Cへの取付面としている。」
イ 「【0014】
光源部2は、図6の参照を加えて説明するように、基板21と、この基板21に実装された主光源としての複数の発光素子22とを備えている(図2においては発光素子22の図示を省略している)。基板21は、所定の幅寸法を有した円弧状の4枚の基板21が繋ぎ合わされるように配設されて全体として略サークル状に形成されている。つまり、全体として略サークル状に形成された基板21は、4枚の分割された基板21から構成されている。そして、これら基板21相互は、分割部DにおいてコネクタCnによって電気的に接続されている(図3参照)。
【0015】
このように分割された基板21を用いることにより、基板21の分割部Dで熱的収縮を吸収して基板21の変形を抑制することができる。なお、複数に分割された基板21を用いることが好ましいが、略サークル状に一体的に形成された一枚の基板を用いるようにしてもよい。」
ウ 「【0016】
基板21は、絶縁材であるガラスエポキシ樹脂(FR-4)の平板からなり、表面側には銅箔によって配線パターンが形成されている。また、配線パターンの上、つまり、基板21の表面には反射層として作用する白色のレジスト層が施されている。なお、基板21の材料は、絶縁材とする場合には、セラミックス材料又は合成樹脂材料を適用できる。さらに、金属製とする場合は、アルミニウム等の熱伝導性が良好で放熱性に優れたべース板の一面に絶縁層が積層された金属製のべース基板を適用できる。」
エ 「【0017】
発光素子22は、LEDであり、表面実装型のLEDパッケージである。このLEDパッケージが複数個サークル状の基板21の周方向に沿って、つまり、取付部6を中心とする略円周上に複数列、本実施形態では、内周側及び外周側の2列に亘って実装されている。また、LEDパケージには、発光色が昼白色Nのものと電球色Lのものとが用いられており、これらが交互に並べられていて、各列の隣接する発光素子22は略等間隔を空けて配設されている。この昼白色Nと電球色LのLEDパッケージに流れる電流等を調整することにより調色が可能となっている。」
オ 「【0023】
さらに、図3に示すように、特定の基板21aの内周側には、電源供給接続部23が設けられている。この電源供給接続部23は、具体的には、コネクタであり、後述する点灯装置4から導出される出力線Wが接続され、基板21の配線パターンを介して主光源としての各発光素子22や補助光源としての発光素子22aに電力が供給されるようになっている。」
カ 「【0035】
また、拡散部材3には、平坦部33が形成されて基板21の実装面側の全面を覆うようになっているので、充電部が拡散部材3によって覆われ保護される。」
キ 「【0040】
上記のように構成された光源部2は、図4及び図5に代表して示すように、基板21が取付部6の周囲に位置して、発光素子22の実装面が前面側、すなわち、下方の照射方向に向けられて配設されている。また、基板21の裏面側が本体1の内面側の平坦部12に密着するように面接触して取付けられている。具体的には、基板21の前面側から拡散部材3が重ね合わされ、この拡散部材3を例えば、ねじS等の固定手段によって本体1に取付けることにより、基板21は、本体1と拡散部材3との間に挟み込まれて押圧固定されるようになっている。つまり、1本のねじSによって基板21と拡散部材3とが共締めされている。
【0041】
したがって、基板21は、本体1と熱的に結合され、基板21からの熱が裏面側から本体1に伝導され放熱されるようになっている。なお、基板21と本体1との面接触は、基板21の裏面側の全面が本体1に接触する場合に限らない。部分的な面接触であってもよい。」
ク 「【図2】
[図:0001415317000001.jpg]
」
ケ 「【図3】
[図:0001415317000002.jpg]
」
コ 「【図5】
[図:0001415317000003.jpg]
」
サ 「【図6】
[図:0001415317000004.jpg]
」
(1-2)甲1の認定事項
甲1の記載事項から、以下のことが認定できる。
ア 図3には、例えば下記参考図1(図3の部分拡大図に説明等を付したもの。)におけるaの箇所に2つの小さな円(以下「小円」という。)が記載されており、bでさらに拡大して示す当該小円の中には十字の線が記載されている。
上記小円について検討すると、図5に記載されたねじSの頭部は基板21の前面側に位置していること、頭部にプラスドライバを差込むための十字の溝が設けられたねじは極めて一般的であること、及び、図3には他にねじSを示していると考えられる適当な記載がないこと、から、上記小円は十字の溝が設けられたねじSの頭部を示していると認められる。
また、参考図1のa、c、dの箇所等、図3に記載されている同様の小円もねじSの頭部を示していると認められる。
[参考図1](図3の部分拡大図に説明等を付したもの。)
[図:0001415317000005.jpg]
イ 段落【0014】の「・・・これら基板21相互は、分割部DにおいてコネクタCnによって電気的に接続されている(図3参照)。」との記載、及び、図6で示される分割部Dにおける基板21の輪郭から、参考図1のcの箇所に示されている参照符号「D」の点線は、拡散部材3に覆われた基板21の分割部Dにおける輪郭を示していると認められる。
また、参考図1のdの箇所等、図3に記載されている同様の点線も基板21の分割部Dにおける輪郭を示していると認められる。
ウ 上記ア、イから、ねじSは、円弧状の基板21の周方向における中央の内周側及び外周側の縁に位置しており、また、他には分割部Dの内周側及び外周側に位置していると認められる。
エ 下記参考図2(図6の部分拡大図に説明等を付したもの。)のaの箇所を参酌すると、図6から、円弧状の基板21(図中右下の参照符号「22」は「21」の誤記と認められる。)の周方向における中央の内周側及び外周側の縁にU字状の切り欠きが形成されていることが看取される。
[参考図2](図6の部分拡大図に説明等を付したもの。)
[図:0001415317000006.jpg]
オ 図2及び図5から、拡散部材3は板状の部材であることが看取される。
カ 上記イから、図3の参考図1のa、c、dの箇所は、それぞれ、図6の参考図2のa、c、dの箇所に対応していると認められる。
そして、図6の参考図2のaの箇所にある上記U字状の切り欠きは、図3の参考図1のaの箇所の上記小円とちょうど対応する位置にあるから、上記ウから、ねじSは基板21に形成されたU字状の切り欠きに挿通されると認められる。
(1-3)甲1発明
上記(1-1)、(1-2)から、甲1には、次の発明が記載されていると認められる(以下「甲1発明」という。なお、括弧内には、主な参照箇所を示す。)。
「所定の幅寸法を有した円弧状で、絶縁材であるガラスエポキシ樹脂の平板からなり、周方向における中央の内周側及び外周側の縁にU字状の切り欠きが形成された基板21と、(段落【0014】、【0016】、上記(1-2)エ)
前記基板21の前面側に、周方向に沿って内周側及び外周側の2列に亘って実装されている発光素子22と、(段落【0014】、【0017】、【0040】)
基板21の表面側に、銅箔によって形成された発光素子22に電力を供給するための配線パターンと、(段落【0016】、【0023】)
基板21の裏面側が密着するように面接触して取付けられ、基板21からの熱が前記裏面側から伝導され放熱されるようになっている本体1と、(段落【0040】、【0041】)
基板21の実装面側の全面を覆うようになっており、基板21の前面側から重ね合わされ、ねじSによって本体1に取付けることにより、基板21を本体1との間に挟み込んで押圧固定する板状の拡散部材3と、(段落【0035】、【0040】、上記(1-2)オ)
基板21と拡散部材3とを共締めし、基板21に形成されたU字状の切り欠きに挿通されるねじSと、(段落【0040】、上記(1-2)カ)
を備えた、
照明器具。(段落【0012】)」
(2)甲2
(2-1)甲2の記載事項
甲2には、以下のことが記載されている(下線は主要な参照箇所を示す。)。
ア 「[0108] 以上、本実施の形態に係る照明用光源によれば、発光装置10の実装基板11は、カバー部材30を介して締め付け部材40によって基台20に締め付け固定されている。具体的には、締め付け部材40としてねじを用いた場合、ねじのねじ頭がカバー部材30に係止して保持されるように、ねじの軸をカバー部材30の第1貫通孔31と実装基板11の第1貫通孔11aとに挿通させて、基台20の固定穴20aにねじをねじ込む。
[0109] このように、本実施の形態では、基台20に対して実装基板11を直接ねじ止めするのではなく、カバー部材30を介して実装基板11を基台20に締め付け固定している。すなわち、本実施の形態は、直接ねじ止めするような点固定ではなく、カバー部材30を用いた面固定によって実装基板11を固定している。
[0110] これにより、実装基板11に対する荷重負荷を、より広い範囲で均等荷重とすることができるので、実装基板11として樹脂基板や金属基板を用いた場合であっても、実装基板11に反りが発生することを抑制できる。したがって、実装基板11と基台20との密着性の低下を抑制できるので、放熱性が低下することを抑制できる。」
イ 「[0129] また、実装基板11の第1貫通孔11aの開口形状を、実装基板11の中心と当該第1貫通孔11aの中心とを結ぶ直線に沿った方向(第1方向)の長さが当該第1方向に垂直な方向である第2方向の長さよりも長い形状となるように構成してもよい。
[0130] 例えば、図4の(a)及び(b)に示すように、実装基板11の第1貫通孔11aの開口形状を、第1方向に長軸を有するともに第2方向に短軸を有する楕円形とすることができる。この場合、図4(b)に示すように、実装基板11の第1貫通孔11aの第1方向の開口径(長軸の長さ)をφ1’とし、カバー部材30の第1貫通孔31の開口径をφ2とすると、φ1’>φ2とすることができる。なお、実装基板11の第1貫通孔11aの第2方向の開口径(短軸の長さ)は、カバー部材30の第1貫通孔31の開口径(φ2)と同等であってもよい。
[0131] これにより、図3に示す変形例1と同様に、本変形例でも、実装基板11の変形による反りを抑制できるとともに、実装基板11の割れや欠けを抑制することができる。なお、本変形例において、実装基板11の第1貫通孔11aの開口形状は楕円形に限らず、長方形やレーストラック形状等とすることもできる。」
ウ 「[図4]
[図:0001415317000007.jpg]
」
(2-2)甲2発明
上記(2-1)から、甲2には、次の発明が記載されていると認められる(以下「甲2発明」という。なお、括弧内には、主な参照箇所を示す。)。
「実装基板11は、カバー部材30を介して締め付け部材40によって基台20に締め付け固定され、直接ねじ止めするような点固定ではなく、カバー部材30を用いた面固定によって実装基板11を固定している発光装置10において、(段落[0108]、[0109])
実装基板11の中心と当該第1貫通孔11aの中心とを結ぶ直線に沿った方向を第1方向とし、当該第1方向に垂直な方向を第2方向とした場合、実装基板11の第1貫通孔11aの開口形状を、第1方向に長軸を有するとともに第2方向に短軸を有する楕円形とすることにより、実装基板11の変形による反りを抑制できるとともに、実装基板11の割れや欠けを抑制すること。(段落[0129]~[0131])」
(3)甲3~甲11
甲3には、以下のことが記載されている。
ア 「【0040】
一方、本願に係る照明装置1では、主カバー部221に設けられた被固定用孔部228が支持部材24の固定用孔部241より大きく形成されている。このため、リベット等の主カバー部固定部品の軸部の直径が被固定用孔部228の寸法よりも小さくなる。このため、被固定用孔部228に主カバー部固定部品が挿入されていても、被固定用孔部228の内壁と主カバー部固定部品表面との間にクリアランスが生じる。このため、主カバー部221が膨張しても主カバー部固定部品の位置が被固定用孔部228内で移動するのみであり、主カバー部221に変形が生じにくくなる。
【0041】
対向する支持部材24の固定用孔部241及び主カバー部221の被固定用孔部228の一方は丸形状に形成され、対向する支持部材24の固定用孔部241及び主カバー部221の被固定用孔部228の他方は長穴形状に形成されていてもよい(例えば固定用孔部241a及び被固定用孔部228a)。図11に示すように、主カバー部221の被固定用孔部228(228a及び228c)は、支持部材24の固定用孔部241(241a及び241c)が丸形状に形成されている場合には長穴形状に形成される。なお、「長穴形状」とは、楕円形状、長角丸形状、長方形状等を示す。また、主カバー部221の被固定用孔部228は、支持部材24の固定用孔部241が長穴形状に形成されている場合には丸形状に形成される。」
甲4の【0040】、【0041】、甲5の【0040】、【0041】、甲6の【0040】、【0041】、甲7の【0040】、【0041】、甲8の【0040】、【0041】、甲9の【0040】、【0041】、甲10の【0040】、【0041】、甲11の【0040】、【0041】にも、それぞれ同様のことが記載されている。
(4)甲12~甲16
甲12には、以下のことが記載されている(下線は主要な参照箇所を示す。)。
ア 「【0070】
カバー押え部材21は、非透光性材料(例えば、アルミニウムなどの金属や、白色不透明の樹脂など)により形成されており、発光装置3から放射されてカバー20の本体部20aの外周面から出射される光をできるだけ妨げないように扁平な環状(図示例では、円環状)に形成されている。また、カバー押え部材21は、カバー20の鍔部20bをベース1との間に挟持する。」
イ 「【0072】
また、カバー押え部材21の一表面(図1では、下面)には、ベース1側へ突出する複数個(図1では、4個のうちの2個が見えている)の円柱状のボス部21cが設けられている。ここにおいて、カバー20の鍔部20bの外周部には、カバー押え部材21の各ボス部21cの各々に対応する部位に、各ボス部21cを挿通する半円状の切欠き部20dが各々形成されている。また、ベース1の周部には、カバー押え部材21の各ボス部21cの各々に対応する部位に、ボス部21cを貫通させる貫通孔1aが形成されている。ここで、上述のカバー20をベース1に取り付ける場合は、カバー押え部材21の各ボス部21cをベース1の各貫通孔1aに挿通させてから、ベース1の上記他表面側(図1では、下面側)から各ボス部21cの先端部をレーザ光などの照射により塑性変形させてベース1の貫通孔1aよりも広げることによって、ベース1にカバー20が取り付けられる。要するに、ボス部21cは、最終的にはマッシュルーム状の形状となる。ここにおいて、ベース1の上記他表面側には、各貫通孔1aの各々に対応する部位に、マッシュルーム状のボス部21cの頭部(先端部)が収納配置される収納部1jにより、貫通孔1aに連通して形成されている。ここで、各収納部1jの深さ寸法は、ベース1の上記他表面を含む平面からマッシュルーム状のボス部21cの頭部が突出しないように設定されている。
【0073】
本実施形態のLEDユニット10は、カバー20の鍔部20bをベース1とカバー押え部材21とで挟持することによって、カバー20に過剰な応力が加わるのを防止することが可能となる。」
甲13の段落【0062】、【0064】、【0065】、甲14の段落【0059】、【0061】、【0062】、甲15の段落【0069】、【0071】、【0072】、甲16の段落【0057】、【0059】、【0060】にも、それぞれ同様のことが記載されている。
1-2 判断
(1)本件発明1について
(1-1)対比
本件発明1と甲1発明とを対比する。
ア 後者の「基板21」は前者の「基板」に相当し、以下同様に、「発光素子22」は「光源」に、「本体1」は「放熱板」に、「押圧固定する板状の拡散部材3」は「押さえ板」に、「照明器具」は「照明器具」に、それぞれ相当する。また、これらの相当関係を踏まえると、以下のことがいえる。
イ 後者の基板21が「絶縁材であるガラスエポキシ樹脂の平板からな」ることは、前者の基板が「板状形状を有」することに相当する。
そうすると、後者の「所定の幅寸法を有した円弧状で、絶縁材であるガラスエポキシ樹脂の平板からなり、周方向における中央の内周側及び外周側の縁にU字状の切り欠きが形成された基板21」は、前者の「長方形の板状形状を有し、長手方向において中央部分よりも端部側に、前記長手方向に延びた楕円形に形成された貫通孔が形成された基板」と、「板状形状を有する基板」において共通する
ウ 後者の基板21の「前面側」の面は、前者の基板の「一方の面」に相当する。
そうすると、後者の発光素子22が「基板21の前面側に、周方向に沿って内周側及び外周側の2列に亘って実装されている」ことは、前者の光源が「前記基板の一方の面に設けられ、前記一方の面の長手方向の一辺に沿って配置された」ことと、「前記基板の一方の面に設けられ、前記一方の面の辺に沿って配置された」ことにおいて共通する。
エ 後者の基板21の「表面側」の面は、前者の基板の「一方の面」に相当する。
また、後者の「配線パターン」は、「銅箔によって形成され」且つ「発光素子22に電力を供給するための」ものであるから、発光素子22から発生する熱は当該配線パターンに伝わっていずれかに放熱されることは自明であり、甲1の段落【0041】の記載を参酌すれば、当該配線パターンに伝わった熱は、少なくとも基板21から本体1に伝導されて放熱されると認められる。
そうすると、後者の「基板21の表面側に、銅箔によって形成された発光素子22に電力を供給するための配線パターン」は、前者の「前記基板の前記一方の面および前記一方の面の反対側の他方の面に設けられ、前記光源が発生する熱を放出させる放熱部」と、「前記基板の前記一方の面に設けられ、前記光源が発生する熱を放出させる放熱部」において共通する。
オ 後者の基板21の「裏面側」の面は、前者の基板の「他方の面」に相当する。
また、後者の本体1に「基板21の裏面側が密着するように面接触して取付けられ」ていることは、前者の放熱板が「前記基板を保持する」ことに相当する。
そうすると、上記エの相当関係も踏まえれば、後者の本体1が「基板21の裏面側が密着するように面接触して取付けられ、基板21からの熱が前記裏面側から伝導され放熱されるようになっている」ことは、前者の放熱板が「前記基板の前記他方の面に対して設置され、前記基板を保持するとともに、前記基板に設けられた前記放熱部から伝導された熱を放出させる」ことに相当する。
カ 後者の基板21の「実装面側」の面は、前者の基板の「一方の面」に相当する。
そうすると、後者の拡散部材3が「基板21の実装面側の全面を覆うようになっており、基板21の前面側から重ね合わされ、ねじSによって本体1に取付けることにより、基板21を本体1との間に挟み込んで押圧固定する」ことは、前者の押さえ板が「前記基板の前記一方の面に面接触し、前記基板に設けられた前記放熱部の少なくとも一部分を前記放熱板に向けて押圧」することと、「前記基板の前記一方の面に面接触し、前記放熱板に向けて押圧」することにおいて共通する。
キ 上記ア~カを踏まえると、本件発明1と甲1発明とは以下の一致点及び相違点を有する。
[一致点]
「板状形状を有する基板と、
前記基板の一方の面に設けられ、前記一方の面の辺に沿って配置された光源と、
前記基板の前記一方の面に設けられ、前記光源が発生する熱を放出させる放熱部と、
前記基板の前記他方の面に対して設置され、前記基板を保持するとともに、前記基板に設けられた前記放熱部から伝導された熱を放出させる放熱板と、
前記基板の前記一方の面に面接触し、前記放熱板に向けて押圧する押さえ板と、
を備えた、
照明器具。」
[相違点1]
本件発明1では、基板が「長方形」であるのに対して、甲1発明では、基板21が「円弧状」である点。
[相違点2]
本件発明1では、基板に、「長手方向において中央部分よりも端部側に、前記長手方向に延びた楕円形に形成された貫通孔が形成され」ているのに対して、甲1発明では、基板21に「周方向における中央の内周側及び外周側の縁にU字状の切り欠きが形成され」ている点。
[相違点3]
本件発明1では、光源が、基板の「長手方向の一辺」に沿って配置されているのに対して、甲1発明では、発光素子22が、基板21の「周方向に沿って内周側及び外周側の2列」に亘って実装されている点。
[相違点4]
本件発明1では、放熱部が基板の「前記一方の面の反対側の他方の面」にも設けられ、押さえ板が「前記基板に設けられた前記放熱部の少なくとも一部分を」放熱板に向けて押圧しているのに対して、甲1発明では、そのことが特定されていない点。
[相違点5]
本件発明1では、基板を押圧する押さえ板に「前記基板の前記貫通孔に挿入される突起部が形成され」ているのに対して、甲1発明では、拡散部材3(押さえ板)にそのような突起部を形成することは特定されておらず、「基板21と拡散部材3とを共締め」するねじSが「基板21に形成されたU字状の切り欠きに挿通され」ている点。
(1-2)検討
(1-2-1)相違点5について
事案に鑑みて、まず相違点5について検討する。
甲1の段落【0040】、【0041】の「また、基板21の裏面側が本体1の内面側の平坦部12に密着するように面接触して取付けられている。具体的には、基板21の前面側から拡散部材3が重ね合わされ、この拡散部材3を例えば、ねじS等の固定手段によって本体1に取付けることにより、基板21は、本体1と拡散部材3との間に挟み込まれて押圧固定されるようになっている。つまり、1本のねじSによって基板21と拡散部材3とが共締めされている。」「したがって、基板21は、本体1と熱的に結合され、基板21からの熱が裏面側から本体1に伝導され放熱されるようになっている。」(下線は当審で付与。)との記載を参酌すると、甲1発明において、ねじSは、基板21と本体1とを熱的に結合させて基板21からの熱を本体1に放熱させる効果を奏するために、基板21が本体1に密着するように本体1と拡散部材3との間に挟み込んで押圧固定するための手段である。
一方、上記1-1(4)で示した記載事項から、甲12~16には、「カバー20の鍔部20bをベース1との間に挟持するカバー押え部材21にボス部21cを設け、ベース1にボス部21cを貫通させる貫通孔1aを形成し、カバー押え部材21の各ボス部21cをベース1の各貫通孔1aに挿通させてから、各ボス部21cの先端部をレーザ光などの照射により塑性変形させてベース1にカバー20が取り付けること。」(以下「甲12等記載事項」という。)が記載されていると認められる。
そして、甲12等の記載(甲12であれば段落【0073】の「カバー20の鍔部20bをベース1とカバー押え部材21とで挟持することによって、カバー20に過剰な応力が加わるのを防止することが可能となる。」との記載。)から理解されるように、甲12等記載事項は、カバー20を積極的に押圧して取り付ける構造ではない。
そうすると、甲12等記載事項の上記ボス部21c及び貫通孔1aと甲1のねじSとは目的を異にする固定手段であるから、甲1発明のねじSに代えて甲12等記載事項の上記ボス部21c及び貫通孔1aを採用する動機はない。
また、甲12等記載事項では、ボス部21cはカバー20の貫通孔に挿入されるものではない。
すなわち、甲12等記載事項には、基板を押圧する押さえ板に前記基板の貫通孔に挿入される突起部を形成することは示唆されていない。
そのため、仮に、甲1発明に甲12等記載事項を適用したとしても、基板21(基板)の縁部を本体1(放熱板)との間に挟持する拡散部材3(押さえ板)に、基板21(基板)の貫通孔ではなく本体1(放熱板)の貫通孔に挿通させるボス部を形成する構成となり、相違点5に係る本件発明1の構成とはならない。
また、いずれの証拠にも、放熱のために部材同士を密着させて押圧固定するねじに代えて、突起部を押さえ板に設けることや、ねじ等の固定手段とは別に、突起部を押さえ板に設けることが記載も示唆もされていないので、甲1発明において、拡散部材3(押さえ板)に前記基板21(基板)の切り欠きに挿入される突起部を形成して(その際に、切り欠きを貫通孔にして)、相違点5に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。
よって、甲1発明において、相違点5に係る本件発明1の構成を採用することは、当業者が容易に想到し得たことではない。
なお、申立人は、特許異議申立書において、
「甲第12号証~甲第16号証では、カバー押え部材には、円柱状のボス部が設けられ、ベースの周部には、ボス部を貫通させる貫通孔が形成されていることが記載されている。
すなわち、2つの部材を結合するためにねじの代わりに、2つの部材のうち一方の部材に形成されたボス部(突起部)を他方の部材に形成された貫通孔に貫通させることは、周知の技術といえる。
したがって、甲第1号証において、拡散部材に形成された突起部を用いて基板21と拡散部材(押さえ板)とを結合することは、周知技術により明らかなこと、又は周知技術に基づく設計事項である。」(第21~22ページ参照。)
と主張している。
しかしながら、上述のとおり、甲1発明に甲12等記載事項の固定手段を適用する動機はないし、仮に適用したとしても相違点5に係る本件発明1の構成とはならない。
よって、申立人の上記主張は採用することができない。
(1-2-2)相違点2について
次に、相違点2についても検討する。
甲1の段落【0014】、【0015】の記載、上記1-1(1-2)ア~カの認定事項及び長尺部材の熱変形に関する技術常識を参酌すると、甲1発明は、基板21の周方向(円弧形状において長手方向に対応する方向。)中央をねじSで固定しつつ、基板21の周方向における端部側の分割部D(すなわち隣接する基板21間の隙間。)で熱変形の影響を吸収しているものと認められる。
すなわち、甲1発明では、熱変形の影響を吸収するため、基板21の周方向端部側を、あえてねじSで固定していないものと理解される。
そうすると、甲1発明には、あえて固定していない基板21の周方向端部側に甲2発明や甲3~甲11に記載された事項を適用し、その位置に固定のために用いられる周方向が長軸の楕円形の貫通孔を新たに形成する動機はない。
よって、相違点2に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことではない。
なお、申立人は、特許異議申立書において、
「甲第2号証では、第1貫通孔11aの開口形状を、第1方向に長軸を有するともに第2方向に短軸を有する楕円形とすることが記載され、上述した甲第3号証~甲第11号証では、支持部材の固定用孔部及び主カバー部の被固定用孔部の一方を長穴形状(楕円形状)に形成されていることが記載されている。
ここで、本件特許の明細書では、貫通穴18-2は楕円形に形成されることで、基板80に、熱膨張および熱収縮による反りまたはゆがみが生じることを防止することができる、との記載がある(段落【0048】)。
また、甲第3号証~甲第11号証では、支持部材の固定用孔部及び主カバー部の被固定用孔部の一方を長穴形状(楕円形状)に形成することで、主カバー部の熱膨張による固定用孔部の位置ずれを吸収して、主カバー部の変形が抑制される、との記載がある(例えば、甲第3号証の段落【0124】)。
すなわち、変形を抑止するために、貫通穴の形状を楕円形とすることは周知の技術といえる。
したがって、甲第1号証において、基板21に形成された貫通孔を楕円形とすることは、周知技術により明らかなこと、又は周知技術に基づく設計事項である。」(第21ページ参照。)
と主張している。
しかしながら、仮に、甲2~甲11に貫通孔の形状を楕円形とする事項が記載されているとしても、上述したとおり、甲1発明には、あえて固定していない基板21の周方向端部側に貫通孔を新たに形成する動機はない。
よって、申立人の上記主張は採用することができない。
(1-2-3)小括
以上のことから、その他の相違点については判断するまでもなく、本件発明1は甲1発明及びその他の証拠に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(2)本件発明2~6について
本件発明2~6は、本件発明1の全ての発明特定事項を含み、さらに限定を付加したものであるから、上記と同様の理由により、甲1発明及びその他の証拠に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
2 申立理由2(明確性要件)について
申立人は、特許異議申立書(第25~26ページ参照。)において、特許請求の範囲の請求項1には、「前記基板の前記一方の面に面接触し、前記基板に設けられた前記放熱部の少なくとも一部分を前記放熱板に向けて押圧し、・・・押さえ板」と記載されているが、「押圧」をどのように実施するのかが不明確であり、自重によるものも含むのか、押圧手段を持っているのかが不明確である旨主張している。
しかしながら、請求項1の上記記載から、押さえ板が、基板の一方の面に面接触するものであって、その手段を問わず、放熱部の少なくとも一部分を放熱板に向けて押圧する作用のある板であればよいことは明確である。
したがって、申立人の上記主張は採用することができない。
よって、請求項1に係る特許は特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしており、請求項1の記載を直接又は間接的に引用する請求項2~6に係る特許についても同様である。
3 小括
以上により、申立理由1及び申立理由2は成り立たない。
第5 むすび
以上によれば、特許異議申立書に記載された特許異議申立理由及び証拠によっては、請求項1~6に係る特許を取り消すことはできないし、他に請求項1~6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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2024-700320