特許異議申立
2022-701117
板材敷設構造、板材枚数予測方法およびプログラム
- 審判番号
- 2022-701117
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2018-044153
- 登録番号
- 7067969
- 請求日
- 2022年11月15日
- 審決日
- 2023年06月15日
- 公報発行日
- 2023年09月29日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】大和ハウス工業株式会社
- 【権利者代理人】神保 泰三
- 【異議申立人】杉本 光史
- 審判長/審判官
- 審判長 居島 一仁
- 審判官 有家 秀郎
- 審判官 津熊 哲朗
- 分類
- P1651.851-YAA(E04D) / P1651.113-YAA(E04D) / P1651.121-YAA(E04D) / P1651.537-YAA(E04D)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法120条の8第1項特許法135条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第2項、特許法第36条第6項第2号、特許法第36条第6項第1号、特許法第120条の5第4項、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第120条の5第5項、特許法第120条の5第9項、特許法第36条、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7067969号発明「板材敷設構造、板材枚数予測方法およびプログラム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7067969号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-2〕、及び訂正後の請求項〔3-5〕について、訂正することを認める。
特許第7067969号の請求項1及び2に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
特許第7067969号の請求項3ないし5に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7067969号は、平成30年3月12日に出願され、令和4年5月6日にその特許権の設定登録がされ、同年同月16日に特許掲載公報が発行されたものである。
その後、その特許について、令和4年11月15日に、特許異議申立人 杉本 光史(以下、「申立人」という。)より、特許異議申立書(以下、「申立書」という。)が提出され、請求項1ないし5に係る特許に対して、特許異議の申立てがされた。
その後の経緯は、次のとおりである。
令和5年 1月19日付け: 取消理由通知書
同年 3月23日: 特許権者による意見書及び訂正請求書
の提出
なお、同年同月30日付けで当審から申立人に対し、訂正の請求があった旨の通知をするとともに、相当の期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが(特許法第120条の5第5項)、申立人から意見書は提出されなかった。
第2 訂正の適否についての判断
1 訂正の内容
令和5年3月23日になされた訂正請求(以下、「本件訂正請求」といい、本件訂正請求による訂正を「本件訂正」という。)は、特許第7067969号の特許請求の範囲を、本件訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1ないし5について訂正することを求めるものであって、その訂正の内容は以下のとおりである。(下線は訂正箇所を示す。)
なお、訂正事項の番号については、当審において通し番号を付した。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1を、削除する。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2を、削除する。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3に、「BC=(BB-BB′)×1.00未満の適用率AD」と記載されているのを、「BC=(BB-BB′)×1.00未満で0.50以上の適用率AD」に訂正する。
(請求項3の記載を直接又は間接的に引用する訂正後の請求項4及び5も、同様に訂正する。)
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項4に、「上記適用率ADを0.45~0.65の範囲とする」と記載されているのを、「上記適用率ADを0.50~0.65の範囲とする」に訂正する。
(請求項4の記載を引用する訂正後の請求項5も、同様に訂正する。)
2 訂正の目的の適否、特許請求の範囲の拡張・変更の存否、新規事項の有無、独立特許要件、及び訂正の単位について
(1)訂正事項1について
ア 訂正の目的について
訂正事項1は、訂正前の請求項1を削除するものであるから、特許法120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
訂正事項1は、訂正前の請求項1を削除するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
ウ 新規事項追加の有無について
訂正事項1は、訂正前の請求項1を削除するものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものである。
(2)訂正事項2について
ア 訂正の目的について
訂正事項2は、訂正前の請求項2を削除するものであるから、特許法120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
訂正事項2は、訂正前の請求項2を削除するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
ウ 新規事項追加の有無について
訂正事項2は、訂正前の請求項2を削除するものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものである。
(3)訂正事項3について
ア 訂正の目的について
訂正事項3は、訂正前の請求項3に係る発明について、数式で用いる「適用率AD」が「1.0未満」と特定されていたのを、「1.0未満で0.50以上」へと限定する訂正であるから、特許法120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
上記アで説示したとおり、訂正事項3は、訂正前の請求項3に係る発明について限定を行うものであり、発明のカテゴリーや対象又は目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
ウ 新規事項の有無について
願書に添付された明細書の段落【0031】には、「100パーセント未満の適用率AD」について、「望ましくは、0.50~0.60の範囲とする。」と記載されている。
上記段落【0031】の記載から、「100パーセント未満の適用率AD」について、「望ましくは、0.50~0.60の範囲」として示される「0.50」を下限として、「1.0未満で0.50以上」の範囲とすることは、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「願書に添付した明細書等」という。)に記載されたすべての事項に対して、新たな技術的事項を追加するものではなく、願書に添付した明細書等に記載された事項を総合することにより導出される事項ということができる。
したがって、訂正事項3において、数式で用いる「適用率AD」の範囲を、「1.0未満」から、「1.0未満で0.50以上」へと限定した点は、願書に添付した明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。
(4)訂正事項4について
ア 訂正の目的について
訂正事項4は、訂正前の請求項4に係る発明について、「上記適用率AD」を「0.45~0.65の範囲とする」と特定されていたのを、「0.50~0.65の範囲とする」と限定する訂正であるから、特許法120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
上記アで説示したとおり、訂正事項4は、訂正前の請求項4に係る発明について限定を行うものであり、発明のカテゴリーや対象又は目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
ウ 新規事項の有無について
願書に添付された明細書の段落【0031】には、「適用率AD」について、「0.45~0.65の範囲としてもよく、望ましくは、0.50~0.60の範囲とする。」と記載されている。
上記段落【0031】の記載から、「適用率AD」について、下限値について「望ましくは」とされる「0.50」とし、「0.50~0.65」の範囲とすることは、願書に添付した明細書等に記載されたすべての事項に対して、新たな技術的事項を追加するものではなく、願書に添付した明細書等に記載された事項を総合することにより導出される事項ということができる。
したがって、訂正事項4において、「適用率AD」について、「0.45~0.65の範囲」から、「0.50~0.65の範囲」へと限定した点は、願書に添付した明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。
(5)独立特許要件について
本件においては、訂正前の全ての請求項1ないし5について、特許異議の申立てがされているので、訂正事項1ないし4において、請求項1ないし5について、特許請求の範囲の減縮が行われていても、訂正の適否の要件として、訂正後の請求項1ないし5に係る発明について、特許法120条の5第9項で読み替えて準用する同法126条7項の独立特許要件は課されない。
(6)訂正の単位について
本件訂正前の請求項1及び2について、請求項2は請求項1を引用しているから、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正がされるものである。そのため、訂正前の請求項1及び2に対応する訂正後の請求項1及び2は、特許法120条の5第4項に規定する一群の請求項に該当する。
訂正前の請求項3ないし5について 請求項4及び5はそれぞれ請求項3を直接又は間接的に引用しているから、訂正事項3によって記載が訂正される請求項3に連動して訂正がされるものである。そのため、訂正前の請求項3ないし5に対応する訂正後の請求項3ないし5は、特許法120条の5第4項に規定する一群の請求項に該当する。
したがって、訂正事項1及び2に係る訂正、及び、訂正事項3及び4に係る訂正は、それぞれ、一群の請求項〔1-2〕、及び、一群の請求項〔3-5〕に対して、一群の請求項ごとに請求されたものである。
(7)申立人の主張について
申立人は、本件訂正請求に対して、意見書を提出せず、本件訂正の適否について、意見を述べていない。
3 小括
以上のとおり、本件訂正は、特許法120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであって、かつ、同条9項で準用する同法126条5項及び第6項の規定に適合するから、訂正後の請求項〔1-2〕、及び訂正後の請求項〔3-5〕について、本件訂正を全て認める。
第3 本件発明
上記第2のとおり、本件訂正は全て認められた。
本件特許の請求項1及び2に係る発明は、削除された。
本件特許の請求項3ないし5に係る発明(以下、各々を「本件発明3」等といい、請求項3ないし5に係る発明をまとめて「本件発明」という。)は、本件訂正請求書に添付された訂正特許請求の、請求項3ないし5に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。
「【請求項3】
複数の板材が一部を重ねた状態で設置面上に複数段で敷設され、上記板材として反転使用ができない第1板材と反転使用ができる第2板材とが用いられており、上記板材は屋根材であり、上記第1板材の表面の略半面が化粧面とされる一方、上記第2板材は表面の全面が化粧面とされており、
上記設置面の斜め縁の箇所で、その斜め形状に合わせて上記第2板材が切断されて敷設される場合における上記第2板材の枚数を予測する板材枚数予測方法であって、
上記設置面の斜め縁の箇所は屋根面の斜め縁の箇所であり、
コンピューターによる、上記斜め縁の長さBAを働き寸法で除算することで斜め縁の上記屋根材の段数となるBBを算出する処理と、BBを6で除算した余りBB′を算出する処理と、上記第2板材の予測枚数BCを、BC=(BB-BB′)×1.00未満で0.50以上の適用率AD×斜め縁の数+BB′×斜め縁の数によって算出する処理と、を含むことを特徴とする板材枚数予測方法。
【請求項4】
請求項3に記載の板材枚数予測方法において、上記適用率ADを0.50~0.65の範囲とすることを特徴とする板材枚数予測方法。
【請求項5】
請求項3または請求項4に記載の板材枚数予測方法をコンピューターに実行させるプログラム。」
第4 証拠一覧、特許異議申立理由の要旨、及び取消理由通知に記載した取消理由の要旨
1 証拠一覧
申立人が提出した証拠は、以下のとおりである。なお、以下では甲第1号証、甲第2号証等を、それぞれ「甲1」、「甲2」等という。
甲1: 特開平7-317222号公報
(平成7年12月5日公開)
甲2: 特開2011-226231号公報
(平成23年11月10日公開)
甲3: 特開平7-317226号公報
(平成7年12月5日公開)
甲4: 特開2005-146538号公報
(平成17年6月9日公開)
甲5: 特開2003-127092号公報
(平成15年5月8日公開)
甲6: 特開平8-209862号公報
(平成8年8月13日公開)
2 特許異議申立理由の要旨
申立人が申立書において主張する申立理由の要旨は、次のとおりである。
(1)新規性欠如
本件特許の請求項1及び2に係る発明は、本件特許の出願前に頒布された甲1に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号の規定に該当するから、これらの発明に係る特許は、同法同条同項の規定に違反してされたものであって、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
(2)進歩性欠如
本件特許の請求項1ないし5に係る発明は、本件特許の出願前に頒布された甲1に記載された発明、及び甲2ないし甲6に記載される発明又は周知技術に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、これらの発明に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであって、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
(3)明確性要件違反
本件特許の請求項3ないし5に係る発明は、請求項3に記載される「1.00未満の適用率AD」の技術的意義が不明であり、発明が明確でないから、これらの発明に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであって、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。
3 取消理由通知に記載した取消理由の要旨
本件訂正前の請求項1ないし5に係る特許に対して、当審が令和5年1月19日付けの取消理由通知(以下、単に「取消理由通知」という。)により特許権者に通知した取消理由の概要は、次のとおりである。
(1)新規性欠如
本件特許の請求項1及び2に係る発明は、本件特許の出願前に頒布された甲1に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号の規定に該当するから、これらの発明に係る特許は、同法同条同項の規定に違反してされたものであって、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
(2)進歩性欠如
本件特許の請求項1及び2に係る発明は、本件特許の出願前に頒布された甲1に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
(3)サポート要件違反
本件特許の請求項3ないし5に係る発明は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。
第5 当審の判断
1 取消理由通知に記載した取消理由について
本件訂正により、請求項1及び2は削除されたので、請求項3ないし5に関して通知したサポート要件違反の取消理由(上記第4の3(3))について、以下に判断する。
(1)サポート要件の判断基準
特許請求の範囲の記載がサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載又はその示唆により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきである。
(2)本件発明3ないし5における、第2板材の枚数予測
本件発明3を特定する、特許請求の範囲の請求項3の記載は、上記第3に摘記したとおりである。
当該請求項3の記載より、本件発明3は、「設置面の斜め縁の箇所で、その斜め形状に合わせて上記第2板材が切断されて敷設される場合における上記第2板材の枚数を予測する」うえで、次の処理1ないし処理3を行うものである。
・処理1:「上記斜め縁の長さBAを働き寸法で除算することで斜め縁の上記屋根材の段数となるBBを算出する処理」
・処理2:「BBを6で除算した余りBB′を算出する処理」
・処理3:「上記第2板材の予測枚数BCを、BC=(BB-BB′)×1.00未満で0.50以上の適用率AD×斜め縁の数+BB′×斜め縁の数によって算出する処理」
上記処理3における、「BC=(BB-BB′)×1.00未満で0.50以上の適用率AD×斜め縁の数+BB′×斜め縁の数」の式(以下、「第2板材の枚数算出式」という。)は、「第2板材の予測枚数BC」を、第1項と第2項の和として算出するものである。
上記第2板材の枚数算出式のうち、第1項は、「(BB-BB′)×1.00未満で0.50以上の適用率AD×斜め縁の数」より、「斜め縁の上記屋根材の段数となるBB」から「6で除算した余りBB′」を減算した段数、すなわち「6で除算」できる部分の段数である「(BB-BB′)」に、「1.00未満で0.50以上の適用率AD」、及び「斜め縁の数」を乗算するものである。
上記第2板材の枚数算出式のうち、第2項は、「斜め縁の上記屋根材の段数となるBB」を「6で除算した余りBB′」に、「斜め縁の数」を乗算するものである。
本件発明3、並びに、本件発明3を引用する本件発明4及び5は、上記第2板材の枚数算出式により、第1項及び第2項の和として、「第2板材の予測枚数BC」を算出する構成を有する。
具体的には、本件発明3ないし5は、上記第2板材の枚数算出式において、第1項から「6で除算」できる部分の「段数」に基づいた第2板材の枚数を算出し、第2項から「6で除算した余り」の段数に基づいた第2板材の枚数を算出して、両算出枚数を合計することで、第2板材の枚数を予測するものである。
なお、本件訂正前においては、「適用率AD」について、「0.50以上」であることは限定されていなかった。
(3)本件発明3ないし5に関する、明細書の記載
本件発明3ないし5に関し、明細書には、次の記載がある(下線は、当審において付した。)
なお、本件訂正の前後において、明細書の記載に変更はない。
ア 「【0010】
また、この発明の板材枚数予測方法は、複数の板材が一部を重ねた状態で設置面上に複数段で敷設され、上記板材として反転使用ができない第1板材と反転使用ができる第2板材とが用いられており、上記設置面の斜め縁の箇所では、その斜め形状に合わせて上記第2板材が切断されて用いられる場合における上記板材の枚数を予測するであって、上記第2板材については、効率的に使いきれると判定される段の数から求めた第2板材の枚数と、効率的に使いきれないと判定される段の数から求めた第2板材の枚数との合計から枚数を予測することを特徴とする。
【0011】
上記の方法であれば、上記第2板材については、効率的に使いきれる箇所の第2板材の枚数と、効率的に使いきれない箇所の第2板材の枚数とに区分して、当該第2板材の枚数を算定するので、枚数予測の精度を高めて上記第2板材の廃材量を極力少なくすることができる。」
イ 「【0012】
上記効率的に使いきれると判定される段数は、全段数のうちで3枚の第2板材を切断して利用できる6段の整数倍となる数とし、上記効率的に使いきれないと判定される段数は、余りの数とするようにしてもよい。また、上記効率的に使いきれると判定される段数に基づいて算出される第2板材の枚数に、100パーセント未満の適用率を乗算して第2板材の枚数を予測するようにしてもよい。」
ウ 「【0022】
図3に示すように、上記第2板材2を切断すると、2枚の分割板材が得られることになる。すなわち、新品の第2板材2を上記設置面3の上記斜め形状に合わせて切断すると、使用可能な端材が出ることになる。そして、この切断においては、経験則上、新品(長)と端材(短)、新品(中位)と端材(中位)、新品(短)と端材(長)となるので、板材配置段数が6段在れば、そのなかの3段について新品の第2板材2を使用し、他の3段について端材が使えることがある。」
エ 「【0028】
上記隅棟における第2板材2の枚数および面積を算出する場合は、例えば、図5のフローチャート(プログラム)および図6の入出力項目説明図(ディスプレイ等において表示することもできる。)に示すように、例えば、隅棟の長さBAをCADからの建物情報等に基づいて算出し(ステップS1)、さらに、隅棟の段数BBを算出する(ステップS2)。上記段数BBは、隅棟の長さBAを隅棟働き寸法で除算することで得ることができる。この例では、段数BBを22となっている。
【0029】
次に、隅棟に使用する第2板材2の枚数BCを算出する(ステップS3)。ここで、段数BBを6で除算して余りBB′を算出する。また、上記第2板材2の枚数BCは、効率的に使いきれると判定される段の数から求めた第2板材2の枚数と、効率的に使いきれないと判定される段の数から求めた第2板材2の枚数との合計によるとする。ここに、効率的に使いきれると判定される段数は、全段数(BB=22)のうちで3枚の第2板材2を切断して利用できる6段の整数倍となる数(全段数を6で割った最上段=18)となり、上記効率的に使いきれないと判定される段数は、余りの数(4)となる。
【0030】
効率的に使いきれると判定される段の数は、BB-BB′で求められ、上記BBを22とすると、BB-BB′=18となる。この18段について、上記のように斜め縁の数を8個とすると、第2板材2を効率的に使いきれる段数は18×8=144段となる。
【0031】
そして、上記144に適用率AD(0.55)を乗算すると、144×0.55=79.2(≒80)となる。すなわち、上記効率的に使いきれると判定される段に基づいて算出される第2板材2の枚数(144)に、100パーセント未満の適用率AD(0.55)を乗算して、上記効率的に使いきれると判定される段についての第2板材2の必要枚数(80)を予測する。適用率ADは、0.55に限定されず、0.45~0.65の範囲としてもよく、望ましくは、0.50~0.60の範囲とする。
【0032】
一方、上記余りに相当するBB′=4となり、上記のように斜め縁の数を8個とすると、第2板材2を効率的に使いきれない段の数は4×8=32段となる。また、その適用率AEを例えば100パーセントとすると、第2板材を効率的に使いきれない段での枚数は同32枚となる。」
なお、上記段落【0031】における「上記効率的に使いきれると判定される段に基づいて算出される第2板材2の枚数(144)」の記載は、先行する段落【0030】の記載、括弧内の「144」という数、及び、後で「第2板材2の必要枚数」を「80」と予測していることから、「上記第2板材を効率的に使いきれると判定される段数(144)」の誤記であることが、明らかである。
(4)取消理由に記載したサポート要件違反の取消理由の具体的内容
本件訂正前の請求項3ないし5に係る特許について、取消理由に記載したサポート要件違反の具体的内容は、以下のとおりであった。
ア 請求項3ないし5に係る発明における課題
上記(3)アに摘記した、段落【0010】及び【0011】の記載より、請求項3ないし5に係る発明の課題は、「第2板材」について、「効率的に使いきれると判定される段の数から求めた第2板材の枚数」と、「効率的に使いきれないと判定される段の数から求めた第2板材の枚数」との「合計」とすることで、精度の高い枚数予測を行うことであると、理解される。
イ 第2板材の枚数算出式について
請求項3ないし5に係る発明における第2板材の枚数算出式は、上記(3)アないしエに摘記した明細書の記載より、
(ア)3枚の第2板材を切断して、板材を配置する6段の段数に効率的に使いきることができるという、経験則を根拠とし(段落【0012】及び【0022】)、
(イ)第2板材を配置する段数を、6の倍数となる段数と、6で割った余りとなる段数とに分け(段落【0022】及び【0029】)、
(ウ)6の倍数となる段数については、6段分を3枚の第2板材を切断して利用でき、効率的に第2板材を使いきれるものとして、第1項から必要枚数を算出し(段落【0029】ないし【0031】)、
(エ)6で割った余りの段数については、効率的に第2板材を使いきれないものとして、第2項から必要枚数を算出する(段落【0029】及び【0032】)、
というものであると、理解される。
ウ 課題を解決できると認識できる範囲か否かについて
上記イのとおり、請求項3ないし5に係る発明における第2板材の枚数算出式について、第2板材を配置する段数を、6の倍数となる段数と、6で割った余りの部分とに分ける点、及び、6の倍数となる段数は第2板材を切断して効率的に使い切ることができるものと扱う点は、いずれも、3枚の第2板材で6段の段数をカバーできるという経験則を、出発点としたものである。
ここで、3枚の第2板材で6段の段数をカバーできるという出発点からすれば、第2板材を効率的に使いきることができる6段の整数倍となる段数について、第2板材の最低限必要な枚数は、当該6段の整数倍となる段数の半分であることが、明白である。
そうであるところ、本件訂正前の請求項3ないし5に係る発明における第2板材の枚数算出式においては、第1項において、6段の整数倍の段数である「(BB-BB′)」×「斜め縁の数」から算出する第2板材の枚数について、当該段数の半分以上とすることなく、「1.00未満の適用率AD」を乗算しており、「適用率AD」として0.5を下回る値を用いた際には、6段の整数倍の段数をカバーすることが理論的に不可能であることが明らかである。
そして、明細書のその余の記載、及び技術常識を参酌しても、3枚の第2板材で6段の段数をカバーすることを根拠としながら、6段の整数倍の段数について、当該段数に0から0.5未満の「適用率AD」を乗算した枚数を算出することで、第2板材の必要な枚数が高い精度で予測されるとは、合理的に理解されない。
したがって、本件訂正前の請求項3ないし5に係る発明は、第2板材の枚数算出式において、第1項において乗算する「適用率AD」について、0から0.5未満の値を含む「1.00未満」の範囲としている点で、精度の高い第2板材の枚数予測を行うという課題を解決できると認識される範囲を超えて、拡張されている。
エ 取消理由の小括
以上のとおり、本件訂正前の請求項3ないし5の記載は、特許法第36条第6項第1号の規定を満たしていないから、本件訂正前の請求項3ないし5に係る特許は、同法第113条第4号の規定に該当し、取り消されるべきものであった。
(5)本件発明3ないし5について
上記第2のとおり、本件訂正は全て認められ、本件発明3ないし5における「適用率AD」は、「1.00未満で0.5以上」であると特定された。
そして、本件発明3ないし5における第2板材の枚数算出式では、第1項においては、6段の整数倍の段数である「(BB-BB′)」×「斜め縁の数」に、「1.00未満で0.50以上の適用率AD」を乗算することで、3枚の第2板材で6段の段数をカバーできるという経験則を基礎として、6の倍数となる段数について必要となる第2板材の枚数を算出していると、合理的に理解することができる。また、第2項においては、6で割った余りとなる段数について必要となる第2板材の枚数を算出していると、合理的に理解することができる。
そうすると、「適用率AD」について「1.00未満で0.50以上」であることを特定した本件発明3ないし5は、発明の詳細な説明の記載に説明される、3枚の第2板材で6段の段数をカバーできるという経験則を基礎として、第2板材の枚数について精度の高い予測をするという発明の課題を解決できると、当業者が認識できる範囲を超えているものではない。
したがって、本件発明3ないし5は、本件訂正前の請求項3ないし5に係る発明について指摘した点で、サポート要件違反の取消理由を有するものではなく、特許法第36条第6項第1号の規定を満たしている。
2 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
本件訂正により、請求項1及び2は削除されたので、請求項3ないし5に関する特許異議申立理由である、進歩性欠如の特許異議申立理由(上記第4の2(2))、及び明確性要件違反の特許異議申立理由(上記第4の2(3))について、以下に判断する。
(1)進歩性欠如の特許異議申立理由について
ア 甲1の記載、図示、図より看取される事項、及び甲1に記載された発明
甲1には、次の記載及び図示がある(下線は、当審で付した。以下、同様。)。
(ア)明細書
a 「【0002】
【従来の技術】公知の平板瓦は、通常上半分は隠蔽面で下半分が暴露面である。即ち、横に並べて葺いた平板瓦の隠蔽面上に平板瓦の暴露面を上下関係に重ねて屋根を葺く。したがつて、隠蔽面には、この隠蔽面と上下関係にある平板瓦の暴露面の裏面間に雨水が浸入するのを防ぐために水切溝を備え、さらに平板瓦を野地板に固定するために薄肉にした未貫通釘孔を備え、暴露面には、防水性を高めるために防水膜が形成されている。しかるに、隠蔽面と暴露面は、本来的には役割が異なるものであるが、隠蔽面の防水性は暴露面の防水性程には必要とはせず、隠蔽面の防水性を暴露面と同一とすると経済性を損なう。」
b 「【0010】本発明の平板瓦の瓦葺法を使用した、降棟を有する平板瓦葺屋根は、図1に示す通り、上半分が隠蔽面1で、下半分が暴露面2aで成る第1の平板瓦3と全面が暴露面2bで成る第2の平板瓦4の併用によって構成される。すなわち、第1の平板瓦3は軒先のセンターから降棟に向かって横に順次並べ、第1の平板瓦3を切断しないと葺けない所まで第1の平板瓦3を横並べする。この第1の平板瓦3は図3に示す如く、上半分が隠蔽面1を備えている。この隠蔽面1には薄肉の半貫通釘孔5が形成され、この半貫通釘孔5を挿通する釘によって野地板上に固定される。この半貫通釘孔5に載る第1の平板瓦3の暴露面2aによって半貫通釘孔5に打ち込んだ釘孔からの浸水はない。すなわち、上記の横に並んだ第1の平板瓦3、3の隠蔽面1にまたがって上記平板瓦3の暴露面2aを重ねて屋根を一文字状に瓦葺きする。この平板瓦3、3の隠蔽面1にまたがって上記平板瓦3の暴露面2aを重ねる場合も、前記同様に第1の平板瓦3を切断しないと葺けない所まで第1の平板瓦3を並べると、屋根の降棟と上記平板瓦3間には、図2にハッチで示した、上記平板瓦3よりも面積が小さい2角が直角で下棟を傾斜辺とする台形の葺き代6aが形成される。
【0011】この葺き代6aに、図4に示す如く、全面が暴露面2bで成る長方形の第2の平板瓦4を左右両辺に対して傾斜する傾斜線7に沿って切断した半端な、葺き代6aと同一の台形の平板瓦8を葺く。この際、半端な、台形の平板瓦8の残りの台形の平板瓦9は、全面が暴露面2bで成るので、従来の如く隠蔽面と暴露面の配向上の制限がなく、したがって屋根の降棟が属する他の台形の葺き代6bに反転させて使用することができる。尚、この場合、必要に応じて残りの台形の平板瓦9を他の台形の葺き代6bに合わせて切断して用いる。」
(イ)図面の図示
a 図1
「
[図:0001401674000001.jpg]
」
b 図2
「
[図:0001401674000002.jpg]
」
(ウ)図より看取される事項
上記(ア)の記載を踏まえて、上記(イ)の図2に示される台形の葺き代6a及び6bと、図1に示される第2の平板瓦4との関係に着目すると、台形の葺き代6aに対応する箇所に、台形の葺き代6aと同一の台形の平板瓦8とした第2の平板瓦4の1枚のみが配置されているのではなく、縦方向に複数枚の第2の平板瓦4が配置されており、第2の平板瓦4は、一部を重ねて複数段で瓦葺きされることが、看取される。
(エ)甲1に記載された発明
上記(ア)ないし(ウ)より、甲1には、次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されている。
「暴露面には、防水性を高めるために防水膜が形成されている平板瓦を使用した、降棟を有する平板瓦葺屋根における瓦葺法であって、
上半分が隠蔽面1で、下半分が暴露面2aで成る第1の平板瓦3と、全面が暴露面2bで成る第2の平板瓦4とを併用し、
第1の平板瓦3は、軒先のセンターから降棟に向かって、第1の平板瓦3を切断しないと葺けない所まで横並べし、横に並んだ第1の平板瓦3、3の隠蔽面1にまたがって、平板瓦3の暴露面2aを重ねて屋根を一文字状に瓦葺きし、
屋根の降棟と平板瓦3間には、平板瓦3よりも面積が小さい2角が直角で下棟を傾斜辺とする台形の葺き代6aが形成され、
葺き代6aに、全面が暴露面2bで成る長方形の第2の平板瓦4を左右両辺に対して傾斜する傾斜線7に沿って切断した、葺き代6aと同一の台形の平板瓦8を葺き、
台形の平板瓦8の残りの台形の平板瓦9は、全面が暴露面2bで成るので、従来の如く隠蔽面と暴露面の配向上の制限がなく、屋根の降棟が属する他の台形の葺き代6bに反転させて使用することができ、この場合、必要に応じて他の台形の葺き代6bに合わせて切断して用い、
第2の平板瓦4は、一部を重ねて複数段で瓦葺きされる、
降棟を有する平板瓦葺屋根における瓦葺法。」
イ 本件発明3の進歩性
(ア)甲1発明との対比
本件発明3と甲1発明とを対比する。
甲1発明において、「平板瓦」として「併用」される「第1の平板瓦3」及び「第2の平板瓦4」は、本件発明3において、「板材」に相当する。
甲1発明において、「第1の平板瓦3」及び「第2の平板瓦4」が「瓦葺き」される箇所は、本件発明3において、「板材」が「敷設」される「設置面」に相当する。
甲1発明において、「上半分が隠蔽面1で、下半分が暴露面2aで成る第1の平板瓦3」について、「横に並んだ第1の平板瓦3、3の隠蔽面1にまたがって、平板瓦3の暴露面2aを重ねて屋根を一文字状に瓦葺き」され、「第2の平板瓦4」についても、「一部を重ねて複数段で瓦葺き」される構成は、本件発明3において、「複数の板材が一部を重ねた状態で設置面上に複数段で敷設され」る構成に、相当する。
甲1発明において、「上半分が隠蔽面1で、下半分が暴露面2aで成る第1の平板瓦3」は、「従来の如く隠蔽面と暴露面の配向上の制限」を有することが明らかであることを踏まえると、本件発明3において、「反転使用ができない第1板材」に相当する。
甲1発明において、「全面が暴露面2bで成る第2の平板瓦4」は、切断した「台形の平板瓦8」及び「残りの台形の平板瓦9」について、「全面が暴露面2bで成るので、従来の如く隠蔽面と暴露面の配向上の制限がなく、・・・反転させて使用することができ」ることを踏まえると、本件発明3において、「反転使用ができる第2板材」に相当する。
甲1発明において、「暴露面には、防水性を高めるために防水膜が形成されている平板瓦」として、「上半分が隠蔽面1で、下半分が暴露面2aで成る第1の平板瓦3と、全面が暴露面2bで成る第2の平板瓦4とを併用」している構成は、本件発明3において、「板材として反転使用ができない第1板材と反転使用ができる第2板材とが用いられており、上記第1板材の表面の略半面は化粧面とされる一方、上記第2板材は表面の全面が化粧面とされて」いる構成に、相当する。
甲1発明において、「第1の平板瓦3は、軒先のセンターから降棟に向かって、第1の平板瓦3を切断しないと葺けない所まで横並べし、横に並んだ第1の平板瓦3、3の隠蔽面1にまたがって、平板瓦3の暴露面2aを重ねて屋根を一文字状に瓦葺き」した際に、「屋根の降棟と平板瓦3間には、平板瓦3よりも面積が小さい2角が直角で下棟を傾斜辺とする台形の葺き代6a」及び「屋根の降棟が属する他の台形の葺き代6b」が形成される箇所は、本件発明3において、「上記設置面の斜め縁の箇所」に相当する。
甲1発明において、「葺き代6aに、全面が暴露面2bで成る長方形の第2の平板瓦4を左右両辺に対して傾斜する傾斜線7に沿って切断した、葺き代6aと同一の台形の平板瓦8を葺き、台形の平板瓦8の残りの台形の平板瓦9は、・・・・屋根の降棟が属する他の台形の葺き代6bに反転させて使用することができ、必要に応じて他の台形の葺き代6bに合わせて切断して用い」る構成は、本件発明3において、「上記設置面の斜め縁の箇所では、その斜め形状に合わせて上記第2板材が切断されて敷設され」る構成、及び「上記設置面の斜め縁の箇所は屋根面の斜め縁の箇所」である構成に、相当する。
以上を整理すると、本件発明3と甲1発明とは、
「複数の板材が一部を重ねた状態で設置面上に複数段で敷設され、上記板材として反転使用ができない第1板材と反転使用ができる第2板材とが用いられており、上記第1板材の表面の略半面は化粧面とされる一方、上記第2板材は表面の全面が化粧面とされており、
上記設置面の斜め縁の箇所では、その斜め形状に合わせて上記第2板材が切断されて敷設され、
上記設置面の斜め縁の箇所は屋根面の斜め縁の箇所」
である、板材の敷設に関する方法、という点で一致する。
そして両者は、次の点で相違する。
<相違点>
本件発明3は、「第2板材の枚数を予測する板材枚数予測方法」の発明であり、「コンピューターによる、上記斜め縁の長さBAを働き寸法で除算することで斜め縁の上記屋根材の段数となるBBを算出する処理と、BBを6で除算した余りBB′を算出する処理と、上記第2板材の予測枚数BCを、BC=(BB-BB′)×1.00未満で0.50以上の適用率AD×斜め縁の数+BB′×斜め縁の数によって算出する処理と、を含む」のに対し、
甲1発明は、「第2の平板瓦4」の枚数を算出するための具体的な処理を含まない点。
(イ)相違点についての判断
甲1において、「全面が暴露面2bで成る長方形の第2の平板瓦4」について、「傾斜線7に沿って切断」した「台形の平板瓦8」として、「屋根の降棟」の「台形の葺き代6a」の箇所に用いること、「台形の平板瓦8の残りの台形の平板瓦9」について、「屋根の降棟が属する他の台形の葺き代6bに反転させて使用することができ、この場合、必要に応じて残りの台形の平板瓦9を他の台形の葺き代6bに合わせて切断して用いる」ことは記載されている。
しかしながら、甲1において、「屋根の降棟」の段数について、6の倍数が特別な意味を持つことは、記載も示唆もされていない。
甲2ないし甲6にも、そのようなことは、記載も示唆もされていない。
そうすると、甲1発明において、「第2の平板瓦4」の枚数を算出するうえで、「屋根の降棟」の段数を、「6」で除算した「余り」の部分と、6の倍数となる部分とに分けて、それぞれ異なる項として係数を乗じることについて、甲1のその余の記載を参照しても、動機付けがあったということはできない。また、甲2ないし甲6の記載を参照しても、甲1発明において、「屋根の降棟」の段数を、「6」で除算した「余り」の部分と、6の倍数となる部分とに分けて、「第2の平板瓦4」の枚数を算出することが、示唆されているものではない。
したがって、甲1発明において、上記相違点に係る本件発明3の構成を採ることは、甲1における全ての記載、及び、甲2ないし甲6に記載される事項を考慮しても、当業者にとって、容易に想到できたとはいえない。
(ウ)小括
よって、本件発明3は、甲1発明、及び甲2ないし甲6に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではなく、進歩性欠如の特許異議申立理由によって取り消されるべきものではない。
ウ 本件発明4の進歩性
本件発明4は、本件発明3の構成を全て有し、さらに構成を限定したものである。
そして、本件発明4が有する本件発明3の構成は、上記イに示したとおり、甲1発明において、甲1における全ての記載、及び、甲2ないし甲6に記載される事項を考慮しても、当業者にとって、容易に想到できたとはいえない。
したがって、本件発明4において付加された構成について検討するまでもなく、本件発明4は、甲1発明、及び甲2ないし甲6に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
よって、本件発明4は、進歩性欠如の特許異議申立理由によって、取り消されるべきものではない。
エ 本件発明5の進歩性
本件発明5は、本件発明3又は本件発明4に係る方法を、コンピューターに実行させる、プログラムの発明としたものである。
そして、本件発明3又は本件発明4に係る方法は、甲1発明、及び甲2ないし甲6に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
したがって、本件発明5に係るプログラムの発明についても、甲1発明、及び甲2ないし甲6に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
よって、本件発明5は、進歩性欠如の特許異議申立理由によって、取り消されるべきものではない。
オ 申立人の主張について
申立人は申立書において、本件訂正前の請求項3に係る発明の容易想到性に関し、甲1の【図1】より、切断された第2の平板瓦4について、「大」、「中」及び「小」の3種類の大きさが看取されるから、一枚の屋根材から「大」と「小」の二種類の屋根材を切断して形成し、一枚の屋根材から二枚の「中」の屋根材を形成するのは当然であって、切断した屋根材を効率的に形成できるのは、二枚の屋根材から三種類を形成する場合である、2×3=6となるから、切断した屋根材を効率的に形成できる6で段数を除算した部分と余りの部分とに分けて枚数を算出することは、容易である旨を主張している(申立書第13頁第22行-第14頁台31行)。
しかしながら、甲1においては、「台形の平板瓦8の残りの台形の平板瓦9」を「屋根の降棟が属する他の台形の葺き代6bに反転させて使用する」とき、「必要に応じて他の台形の葺き代6bに合わせて切断」するのであり、【図1】の図示も切断した部材が一部反転して使用されることを示す模式図にとどまるから、申立人が主張するように、6段の倍数部分が第2の平板瓦4をそれぞれ複数の段で有効に利用できる箇所となって、余りの部分が第2の平板瓦4をそれぞれ複数の段で有効に利用できない箇所となる、といった関係が、甲1に示されているということはできない。
なお、本件訂正がされた本件発明3について、申立人は意見書を提出せず、進歩性欠如について特段の主張を補充していない。
したがって、申立人の申立書における上記主張について検討しても、本件発明3の進歩性について、上記イと異なる判断をすべき事情はない。
本件発明4及び5の進歩性についても、上記ウ及び上記エと異なる判断をすべき事情はない。
(2)明確性要件違反の特許異議申立理由について
ア 申立人の具体的主張
申立人は申立書において、本件特許の請求項3ないし5は、明細書及び図面の記載並びに出願時の技術常識を考慮しても、「1.00未満の適用率AD」の意味内容を当業者が理解できないから、発明の範囲が不明確であって、特許法36条6項2号の規定を満たしていない旨を主張している(申立書第15頁下から14行-第16頁第16行)。
イ 具体的主張についての当審の判断
(ア)判断基準
特許法第36条第6項第2号の趣旨は、特許請求の範囲に記載された発明が明確でない場合に、特許が付与された発明の技術的範囲が不明確となることにより生じ得る第三者の不測の不利益を防止することにある。そこで、特許を受けようとする発明が明確であるか否かは、特許請求の範囲の記載のみならず、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出 願当時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるか否かという観点から判断されるべきである。
(イ)判断基準に基づく判断
上記(ア)の判断基準に基づいて、判断する。
本件発明3ないし5は、「適用率AD」について、「1.00未満で0.50以上」と特定しており、「適用率AD」を用いる数式について、発明の構成は明確である。
なお、「1.00未満で0.50以上の適用率AD」を用いて、本件発明3ないし5における算出式によって第2板材の枚数を算出する根拠についても、上記1(5)においてサポート要件について検討したと同様の理由で、当業者が合理的に理解できるものである。
そして、本件発明3ないし5が有するその余の構成についても、第三者に不測の不利益を生じさせるほどに不明確な点はない。
したがって、申立人の上記アの具体的主張について検討しても、本件発明3ないし5は明確であり、特許法第36条第6項第2号の規定に違反するものではない。
なお、本件訂正がされた本件発明3ないし5について、申立人は意見書を提出せず、明確性要件違反について特段の主張を補充していない。
よって、本件発明3ないし5は、明確性要件違反の特許異議申立理由によって、取り消されるべきものではない。
第7 むすび
以上のとおり、本件発明3ないし5に係る特許は、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によっては、取り消すことができない。
また、他に本件発明3ないし5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
請求項1及び2に対する本件特許異議の申立ては、申立ての対象となる請求項が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定によって却下すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
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2022-701117