特許異議申立
2022-700359
熱伝導シート及び熱伝導シートの製造方法
- 審判番号
- 2022-700359
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2021-099910
- 登録番号
- 6960554
- 請求日
- 2022年04月27日
- 審決日
- 2022年08月25日
- 公報発行日
- 2022年09月30日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】デクセリアルズ株式会社
- 【権利者代理人】野口 信博
- 【権利者代理人】穂谷野 聡
- 【異議申立人】吉澤 悦子
- 【異議申立人】増山 美紀
- 審判長/審判官
- 審判長 恩田 春香
- 審判官 小田 浩
- 審判官 松永 稔
- 分類
- P1651.113-Y (C08J) / P1651.121-Y (C08J) / P1651.161-Y (C08J)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第1項、特許法第29条の2
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第6960554号発明「熱伝導シート及び熱伝導シートの製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第6960554号の請求項1ないし9に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第6960554号の請求項1ないし9に係る特許についての出願は、令和3年6月16日に出願され、同年10月13日にその特許権の設定登録がされ、同年11月5日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許に対して令和4年4月27日に特許異議申立人 吉澤 悦子(以下、「特許異議申立人1」という。)により、及び同年5月2日に特許異議申立人 増山 美紀(以下、「特許異議申立人2」という。)により特許異議の申立てがされた。
第2 本件発明
特許第6960554号の請求項1ないし9の特許に係る発明(以下、「本件発明1」ないし「本件発明9」という。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1ないし9に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
バインダ樹脂と、異方性熱伝導性フィラーと、上記異方性熱伝導性フィラー以外の他の熱伝導性フィラーとを含む組成物の硬化物からなる熱伝導シートであって、
以下の条件1~3を満たす、熱伝導シート。
[条件1]当該熱伝導シート表面に対する仮想垂線から60°の位置より入射した光線にて測定したグロス値が10未満である。
[条件2]上記異方性熱伝導性フィラーの平均粒子径が15μm以上45μm以下である。
[条件3]当該熱伝導シート中、上記異方性熱伝導性フィラーと上記他の熱伝導性フィラーの合計含有量が60体積%を超え、75体積%未満である。
【請求項2】
上記異方性熱伝導性フィラーの含有量が20体積%を超え、35体積%未満である、請求項1に記載の熱伝導シート。
【請求項3】
当該熱伝導シートの表面のL*a*b表色系におけるL*値が70以上である、請求項1又は2に記載の熱伝導シート。
【請求項4】
バルク熱伝導率が8W/m・K以上である、請求項1~3のいずれか1項に記載の熱伝導シート。
【請求項5】
上記異方性熱伝導性フィラーが窒化ホウ素であり、
上記他の熱伝導性フィラーが、アルミナと、窒化アルミニウム、酸化亜鉛及び水酸化アルミニウムの少なくとも1種とを含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の熱伝導シート。
【請求項6】
上記窒化ホウ素が、鱗片状の窒化ホウ素である、請求項5に記載の熱伝導シート。
【請求項7】
上記異方性熱伝導性フィラーの平均粒子径が20μm以上40μm以下である、請求項1~6のいずれか1項に記載の熱伝導シート。
【請求項8】
バインダ樹脂と、異方性熱伝導性フィラーと、上記異方性熱伝導性フィラー以外の他の熱伝導性フィラーとを含有する熱伝導性組成物を作製する工程Aと、
上記熱伝導性組成物を押出成形した後硬化し、柱状の硬化物を得る工程Bと、
上記柱状の硬化物を柱の長さ方向に対し略垂直方向に所定の厚みに切断して熱伝導シートを得る工程Cとを有し、
上記熱伝導シートが以下の条件1~3を満たす、熱伝導シートの製造方法。
[条件1]上記熱伝導シート表面に対する仮想垂線から60°の位置より入射した光線にて測定したグロス値が10未満である。
[条件2]上記異方性熱伝導性フィラーの平均粒子径が15μm以上45μm以下である。
[条件3]上記熱伝導シート中、上記異方性熱伝導性フィラーと上記他の熱伝導性フィラーの合計含有量が60体積%を超え、75体積%未満である。
【請求項9】
発熱体と、
放熱体と、
発熱体と放熱体との間に挟持された請求項1~7のいずれか1項に記載の熱伝導シートとを備える、電子機器。」
第3 申立理由の概要
1 特許異議申立人1は、国際公開第2020/105601号(以下、「文献1」という。特許異議申立人1による特許異議申立書に記載の甲第1号証。)を提出し、本件発明1ないし9は、文献1に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項1ないし9に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである旨主張する。
2 特許異議申立人1は、文献1を提出し、本件発明1ないし7及び9は、文献1に記載された発明に基づいて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1ないし7及び9に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである旨主張する。
3 特許異議申立人1は、主たる証拠として文献1及び従たる証拠として特開2012-23335号公報(以下、「文献2」という。特許異議申立人1による特許異議申立書に記載の甲第3号証。)を提出し、本件発明8は、文献1及び2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項8に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである旨主張する。
4 特許異議申立人1は、特開2012-201106号公報(以下、「文献3」という。特許異議申立人1による特許異議申立書に記載の甲第2号証)を提出し、本件発明8は、文献3に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項8に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである旨主張する。
5 特許異議申立人1は、文献3を提出し、本件発明8は、文献3に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項8に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである旨主張する。
6 特許異議申立人2は、特願2020-18476号(特開2021-123661号公報)(以下、「先願1」という。特許異議申立人2による特許異議申立書に記載の甲第1号証。)を提出し、請求項1ないし9に係る発明は、先願1の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「明細書等」という。)に記載された発明であるから、請求項1ないし9に係る特許は、特許法第29条の2の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである旨主張する。
第4 文献の記載
1 文献1(国際公開第2020/105601号)について
文献1には、以下の記載がある。(下線は、当審で付した。以下同じ。)
「[0001] 本発明は、熱伝導性シート、及びその製造方法に関する。」
「[0012] 以下、本発明の実施形態に係る熱伝導性シートについて詳しく説明する。
[第1の実施形態]
図1は、第1の実施形態の熱伝導性シートを示す。第1の実施形態に係る熱伝導性シート10は、それぞれがシリコーン樹脂11と、熱伝導性充填材とを含有する複数の単位層13を備える。複数の単位層13は、面方向に沿う一方向(すなわち、厚さ方向zに垂直な一方向であり、「積層方向x」ともいう)に沿って積層されており、隣接する単位層13同士が互いに接着されている。各単位層13において、シリコーン樹脂11は、熱伝導性充填材を保持するマトリクス成分となるものであり、シリコーン樹脂11には、熱伝導性充填材が分散するように配合される。
[0013] 熱伝導性シート10は、熱伝導性充填材として、異方性充填材14と、非異方性充填材15とを含有する。異方性充填材14は、シート10の厚さ方向zに配向している。すなわち、各単位層13の面方向の一方向に沿って配向している。熱伝導性シート10は、シートの厚さ方向zに配向する異方性充填材14を含有することで、厚さ方向zの熱伝導性が向上する。また、熱伝導性シート10は、さらに非異方性充填材15を含有することでも熱伝導性がさらに向上する。
・・・中 略・・・
[0015](シリコーン樹脂)
シリコーン樹脂11は、オルガノポリシロキサンであれば特に限定されないが、硬化型シリコーン樹脂を使用することが好ましい。シリコーン樹脂11は、硬化型である場合には、硬化性シリコーン組成物を硬化することで得られるものである。シリコーン樹脂11は、付加反応型のものを使用してもよいし、それ以外のものを使用してもよい。付加反応型の場合、硬化性シリコーン組成物は、主剤となるシリコーン化合物と、主剤を硬化させる硬化剤とからなることが好ましい。
・・・中 略・・・
[0019](異方性充填材)
異方性充填材14は、形状に異方性を有する充填材であり、配向が可能な充填材である。異方性充填材14としては、繊維状材料、鱗片状材料などが挙げられる。異方性充填材14は、一般的にアスペクト比が高いものであり、アスペクト比が2を越えるものであり、5以上であることがより好ましい。アスペクト比を2より大きくすることで、異方性充填材14を厚さ方向zに配向させやすくなり、熱伝導性シート10の熱伝導性を高めやすい。
[0020] また、アスペクト比の上限は、特に限定されないが、実用的には100である。
なお、アスペクト比とは、異方性充填材14の短軸方向の長さに対する長軸方向の長さの比であり、繊維状材料においては、繊維長/繊維の直径を意味し、鱗片状材料においては鱗片状材料の長軸方向の長さ/厚さを意味する。
[0021] 熱伝導性シートにおける異方性充填材14の含有量は、シリコーン樹脂100質量部に対して10~500質量部であることが好ましく、50~350質量部であることがより好ましい。また、異方性充填材14の含有量は、体積基準の充填率(体積充填率)で表すと、熱伝導性シート全量に対して、好ましくは2~40体積%、より好ましくは8~30体積%である。
異方性充填材14の含有量を10質量部以上とすることで、熱伝導性を高めやすくなり、500質量部以下とすることで、後述する液状組成物の粘度が適切になりやすく、異方性充填材14の配向性が良好となる。
[0022] 異方性充填材14は、繊維状材料である場合、その平均繊維長が、好ましくは10~500μm、より好ましくは20~350μmである。平均繊維長を10μm以上とすると、各熱伝導性シート10において異方性充填材同士が適切に接触して、熱の伝達経路が確保され、熱伝導性シート10の熱伝導性が良好になる。
一方、平均繊維長を500μm以下とすると、異方性充填材の嵩が低くなり、シリコーン樹脂中に高充填できるようになる。また、異方性充填材14に導電性を有するものを使用しても、熱伝導性シート10の導電性が必要以上に高くなることが防止される。
なお、上記の平均繊維長は、異方性充填材を顕微鏡で観察して算出することができる。より具体的には、例えば、熱伝導性シート10のマトリクス成分を溶かして分離した異方性充填材14について、電子顕微鏡や光学顕微鏡を用いて、任意の異方性充填材50個の繊維長を測定して、その平均値(相加平均値)を平均繊維長とすることができる。この際、繊維を粉砕しないように大きなシェアがかからないようにする。また、熱伝導性シート10から異方性充填材14を分離することが難しい場合は、X線CT装置を用いて、異方性充填材40の繊維長を測定して、平均繊維長を算出してもよい。
また、異方性充填材14の直径についても同様に電子顕微鏡や光学顕微鏡、X線CT装置を用いて測定することができる。
なお、本発明において、任意のものとは無作為に選んだものをいう。
[0023] また、異方性充填材14が鱗片状材料である場合、その平均粒径は、10~400μmが好ましく、15~300μmがより好ましい。また、20~200μmが特に好ましい。平均粒径を10μm以上とすることで、熱伝導性シート10において異方性充填材14同士が接触しやすくなり、熱の伝達経路が確保され、熱伝導性シート10の熱伝導性が良好になる。一方、平均粒径を400μm以下とすると、異方性充填材14の嵩が低くなり、シリコーン樹脂11中の異方性充填材14を高充填にすることが可能になる。
なお、鱗片状材料の平均粒径は、異方性充填材を顕微鏡で観察して長径を直径として算出することができる。より具体的には、前記平均繊維長と同様に電子顕微鏡や光学顕微鏡、X線CT装置を用いて、任意の異方性充填材50個の長径を測定して、その平均値(相加平均値)を平均粒径とすることができる。
また、前記異方性充填材14の厚さについても同様に電子顕微鏡や光学顕微鏡、X線CT装置を用いて測定することができる。
[0024] 異方性充填材14は、熱伝導性を有する公知の材料を使用すればよい。また、異方性充填材14は、導電性を有していてもよいし、絶縁性を有していてもよい。異方性充填材14が絶縁性を有すると、熱伝導性シート10の厚さ方向zの絶縁性を高めることができるため、電気機器において好適に使用することが可能になる。なお、本発明において導電性を有するとは例えば体積抵抗率が1×109Ω・cm以下の場合をいうものとする。また、絶縁性を有するとは例えば体積抵抗率が1×109Ω・cmを超える場合をいうものとする。
[0025] 異方性充填材14としては、具体的には、炭素繊維、鱗片状炭素粉末で代表される炭素系材料、金属繊維で代表される金属材料や金属酸化物、窒化ホウ素や金属窒化物、金属炭化物、金属水酸化物、ポリパラフェニレンベンゾオキサゾール繊維等が挙げられる。これらの中では、炭素系材料は、比重が小さく、シリコーン樹脂11中への分散性が良好なため好ましく、中でも熱伝導率が高い、黒鉛化炭素材料がより好ましい。また、窒化ホウ素、ポリパラフェニレンベンズオキサゾール繊維は絶縁性を有する観点から好ましく、中でも窒化ホウ素がより好しい。窒化ホウ素は、特に限定されないが、鱗片状材料として使用されることが好ましい。鱗片状の窒化ホウ素は、凝集されてもよいし、凝集されていなくてもよいが、一部又は全部が凝集されていないことが好ましい。
[0026] 異方性充填材14は、特に限定されないが、異方性を有する方向(すなわち、長軸方向)に沿う熱伝導率が、一般的に30W/m・K以上であり、好ましくは100W/m・K以上である。異方性充填材14の熱伝導率は、その上限が特に限定されないが、例えば2000W/m・K以下である。熱伝導率の測定方法は、レーザーフラッシュ法である。
[0027] 異方性充填材14は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。例えば、異方性充填材14として、少なくとも2つの互いに異なる平均粒径または平均繊維長を有する異方性充填材14を使用してもよい。大きさの異なる異方性充填材を使用すると、相対的に大きな異方性充填材の間に小さな異方性充填材が入り込むことにより、異方性充填材をシリコーン樹脂中に高密度に充填できるとともに、熱の伝導効率を高めるられると考えられる。
・・・中 略・・・
[0032] 異方性充填材14は、各単位層において熱伝導性シートの厚さ方向zに配向している。異方性充填材14の厚さ方向zの配向をより具体的に説明すると、熱伝導性充填材14が繊維状充填材であるときは、熱伝導性シート10の厚さ方向zに対して繊維状充填材の長軸のなす角度が30°未満の異方性充填材の数の割合が、異方性充填材全量に対して、50%を超える状態にあることをいい、該割合は、好ましくは80%を超える。
また、異方性充填材14が鱗片状充填材であるときは、熱伝導性シート10の厚さ方向zに対して鱗片状状充填材の鱗片面のなす角度が30°未満の異方性充填材の数の割合が、異方性充填材全量に対して、50%を超える状態にあることをいい、該割合は、好ましくは80%を超えるものとすることができる。換言すれば、熱伝導性シートのシート面(x-y面)に対して、鱗片面の法線方向のなす角度が30°未満の異方性充填材の数の割合が、異方性充填材全量に対して、50%を超える状態にあることをいい、該割合は、好ましくは80%を超える。
なお、異方性充填材14の配向方向は、熱伝導率を高める観点からは厚さ方向zに対する長軸のなす角度または鱗片面のなす角度を0°以上5°未満とすることが好ましい。一方、熱伝導性シート10を圧縮したときの荷重を低くすることができるという点で、5°以上30°未満の範囲で傾斜させることもできる。なお、これら角度は、一定数(例えば、任意の異方性充填材14を50個)の異方性充填材14の配向角度の平均値である。
さらに異方性充填材14は、熱伝導性充填材14が繊維状または鱗片状のいずれでもないときは、熱伝導性シート10の厚さ方向zに対して異方性充填材14の長軸のなす角度が30°未満の異方性充填材の数の割合が、異方性充填材全量に対して、50%を超える状態にあることをいい、該割合は、好ましくは80%を超えるものとする。
[0033] また、異方性充填材14が鱗片状材料である場合、異方性充填材14は、さらに、鱗片面の法線方向が所定方向を向くことが好ましく、具体的には、複数の単位層13の積層方向xに向くことが好ましい。このように法線方向が積層方向xに向くことで、熱伝導性シート10の厚さ方向zの熱伝導性が向上する。また、熱伝導性シート10の面方向に沿い、かつ積層方向xに直交する方向の熱伝導性も向上する。
なお、鱗片面の法線方向が積層方向xに向くとは、積層方向xに対して法線方向のなす角度が30°未満の炭素繊維粉末の数の割合が50%を超える状態にあることをいい、該割合は、好ましくは80%を超える。
なお、異方性充填材14は、鱗片状材料である場合には、後述する製造方法で述べるように、剪断力を付与しながらシート状に成形することで、鱗片面の法線方向が積層方向xに向くことになる。
[0034]<非異方性充填材>
非異方性充填材15は、異方性充填材14とは別に熱伝導性シート10に含有される熱伝導性充填材であり、異方性充填材14とともに熱伝導性シート10に熱伝導性を付与する材料である。本実施形態では、非異方性充填材15が含有されることで、配向した異方性充填材14の間の隙間に充填材が介在し、熱伝導率の高い熱伝導性シート10が得られる。
非異方性充填材15は、形状に異方性を実質的に有しない充填材であり、後述する剪断力作用下など、異方性充填材14が所定の方向に配向する環境下においても、その所定の方向に配向しない充填材である。
[0035] 非異方性充填材15は、そのアスペクト比が2以下であり、1.5以下であることがより好ましい。本実施形態では、このようにアスペクト比が低い非異方性充填材15が含有されることで、異方性充填材14の隙間に熱伝導性を有する充填材が適切に介在され、熱伝導率の高い熱伝導性シート10が得られる。また、アスペクト比を2以下とすることで、後述する液状組成物の粘度が上昇するのを防止して、高充填にすることが可能になる。
[0036] 非異方性充填材15は、導電性を有してもよいが、絶縁性を有することが好ましく、熱伝導性シート10においては、異方性充填材14及び非異方性充填材15の両方が絶縁性を有することが好ましい。このように、異方性充填材14及び非異方性充填材15の両方が絶縁性であると、熱伝導性シート10の厚さ方向zの絶縁性をより一層高めやすくなる。
[0037] 非異方性充填材15の具体例は、例えば、金属、金属酸化物、金属窒化物、金属水酸化物、炭素材料、金属以外の酸化物、窒化物、炭化物などが挙げられる。また、非異方性充填材14の形状は、球状、不定形の粉末などが挙げられる。
非異方性充填材15において、金属としては、アルミニウム、銅、ニッケルなど、金属酸化物としては、アルミナに代表される酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛など、金属窒化物としては窒化アルミニウムなどを例示することができる。金属水酸化物としては、水酸化アルミニウムが挙げられる。さらに、炭素材料としては球状黒鉛などが挙げられる。金属以外の酸化物、窒化物、炭化物としては、石英、窒化ホウ素、炭化ケイ素などが挙げられる。
これらの中でも、酸化アルミニウムやアルミニウムは、熱伝導率が高く、球状のものが入手しやすい点で好ましく、水酸化アルミニウムは入手し易く熱伝導性シートの難燃性を高めることができる点で好ましい。
絶縁性を有する非異方性充填材15としては、上記した中でも、金属酸化物、金属窒化物、金属水酸化物、金属炭化物が挙げられるが、特に酸化アルミニウム、水酸化アルミニウムが好ましい。
非異方性充填材15は、上記したものを1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
[0038] 非異方性充填材15の平均粒径は0.1~50μmであることが好ましく、0.5~35μmであることがより好ましい。また、1~15μmであることが特に好ましい。平均粒径を50μm以下とすることで、異方性充填材14の配向を乱すなどの不具合が生じにくくなる。また、平均粒径を0.1μm以上とすることで、非異方性充填材15の比表面積が必要以上に大きくならず、多量に配合しても液状組成物の粘度は上昇しにくく、非異方性充填材15を高充填しやすくなる。
なお、非異方性充填材15の平均粒径は、電子顕微鏡等で観察して測定できる。より具体的には、前記異方性充填材における測定と同様に電子顕微鏡や光学顕微鏡、X線CT装置を用いて、任意の非異方性充填材50個の粒径を測定して、その平均値(相加平均値)を平均粒径とすることができる。
[0039] 熱伝導性シート10における非異方性充填材15の含有量は、シリコーン樹脂100質量部に対して、50~1500質量部の範囲であることが好ましく、200~800質量部の範囲であることがより好ましい。50質量部以上とすることで、異方性充填材14同士の隙間に介在する非異方性充填材15の量が一定量以上となり、熱伝導性が良好になる。一方、1500質量部以下とすることで、含有量に応じた熱伝導性を高める効果を得ることができ、また、非異方性充填材15により異方性充填材14による熱伝導を阻害したりすることもない。また、200~800質量部の範囲内にすることで、熱伝導性シート10の熱伝導性に優れ、液状組成物の粘度も好適となる。
なお、非異方性充填材15の含有量は、体積%で表すと、熱伝導性シート全量に対して、10~75体積%が好ましく、30~60体積%がより好ましい。
なお、本実施形態において各単位層13は、実質的に同一の組成を有する。したがって、各単位層における異方性充填材、非異方性充填材、及びシリコーン樹脂の含有量は、熱伝導性シートにおける含有量と同様であり、各単位層における異方性充填材、非異方性充填材及びシリコーン樹脂の含有量も、上記で述べたとおりとなる。
・・・中 略・・・
[0041](熱伝導性シート)
熱伝導性シート10の厚さ方向zの熱伝導率は、例えば5W/(m・K)以上であり、7W/(m・K)以上とすることが好ましく、9W/(m・K)以上がより好ましい。これら下限値以上とすることで、熱伝導性シート10の厚さ方向zにおける熱伝導性を優れたものにできる。上限は特にないが、熱伝導性シート10の厚さ方向zの熱伝導率は、例えば50W/(m・K)以下である。なお、熱伝導率はASTM D5470-06に準拠した方法で測定するものとする。
・・・中 略・・・
[0044] 熱伝導性シート10の厚さは、熱伝導性シート10が搭載される電子機器の形状や用途に応じて、適宜変更される。熱伝導性シート10の厚さは、特に限定されないが、例えば0.1~5mmの範囲で使用されるとよい。
また、各単位層13の厚さは、特に限定されないが、0.1~2.0mmが好ましく、0.3~0.8mmがより好ましい。なお、単位層13の厚さは、単層13の積層方向xに沿う単位層13の長さである。
[0045] 熱伝導性シート10は、電子機器内部などにおいて使用される。具体的には、熱伝導性シート10は、発熱体と放熱体との間に介在させられ、発熱体で発した熱を熱伝導して放熱体に移動させ、放熱体から放熱させる。ここで、発熱体としては、電子機器内部で使用されるCPU、パワーアンプ、電源などの各種の電子部品が挙げられる。また、放熱体は、ヒートシンク、ヒートポンプ、電子機器の金属筐体などが挙げられる。熱伝導性シート10は、両面10A、10Bそれぞれが、発熱体及び放熱体それぞれに密着し、かつ圧縮して使用される。
[0046]<熱伝導性シートの製造方法>
次に、上記した第1の実施形態に係る熱伝導性シートの製造方法の一例について図2を参照しながら説明する。本製造方法は、それぞれがシリコーン樹脂と、熱伝導性充填材を含む、複数の1次シートを用意する1次シート準備工程と、1次シートにVUVを照射するVUV照射工程と、VUVを照射した1次シートを積層して積層ブロックを得る積層工程と、積層ブロックを切断して熱伝導性シートを得る切断工程とを備える。以下、各工程について詳細に説明する。
[0047](1次シート準備工程)
1次シート準備工程では、まず、シリコーン樹脂の原料である硬化性シリコーン組成物と、熱伝導性充填材(すなわち、異方性充填材14、非異方性充填材15)とを混合して液状組成物を調製する。液状組成物は、通常スラリーとなる。液状組成物には必要に応じて適宜添加成分がさらに混合されてもよい。ここで、液状組成物を構成する各成分の混合は、例えば公知のニーダー、混練ロール、ミキサーなどを使用するとよい。
[0048] 液状組成物の粘度は、シート成形の手段及び所望されるシートの厚みに応じて決定することができる。液状組成物を基材に塗工することによりシート成形を行う場合、液状組成物の粘度は50~10000Pa・sであることが好ましい。粘度を50Pa・s以上とすることで、剪断力を付与することにより、異方性充填材を1次シートの面方向に配向しやすくなる。また、10000Pa・s以下とすることで塗工性が良好となる。
なお、粘度とは、回転粘度計(ブルックフィールド粘度計DV-E、スピンドルSC4-14)を用いて、回転速度1rpmで測定された粘度であり、測定温度は液状組成物の塗工時の温度である。
[0049] 硬化性シリコーン組成物は、通常、液体となるものであり、硬化性シリコーン組成物を構成する各成分(アルケニル基含有オルガノポリシロキサン、オルガノハイドロジェンポリシロキサンなど)の分子量などを適宜調整することで、上記粘度とするとよい。また、液状組成物には、上記粘度に調製するために必要に応じて有機溶剤が配合されてもよいが、有機溶剤は配合されないほうが好ましい。
[0050] 次に、液状組成物を、剪断力を付与しながらシート状に成形することにより、異方性充填材14をシート面と平行な方向(すなわち、面方向)に配向させる。ここで、液状組成物は、例えば、バーコータ又はドクターブレード等の塗布用アプリケータ、もしくは、押出成形やノズルからの吐出等により、基材フィルム上に塗工するとよく、このような方法により、液状組成物の塗工方向に沿った剪断力を与えることができる。この剪断力を受けて、液状組成物中の異方性充填材14は塗工方向に配向する。
[0051] 次に、シート状に成形された液状組成物を硬化させ、1次シートを得る。1次シートでは、上記のとおり、面方向に沿って異方性充填材が配向される。液状組成物の硬化は、液状組成物に含まれる硬化性シリコーン組成物を硬化することで行う。液状組成物の硬化は、加熱により行うとよいが、例えば、50~150℃程度の温度で行うとよい。また、加熱時間は、例えば10分~3時間程度である。
なお、液状組成物に溶剤が配合される場合には、溶剤は硬化時の加熱により揮発させるとよい。
・・・中 略・・・
[0054](VUV照射工程)
次に、硬化された1次シートの少なくとも一方の面に対して、VUV照射を行う。VUVとは、真空紫外線であり、波長が10~200nmの紫外線を意味する。VUVの光源としては、エキシマXeランプ、エキシマArFランプなどが挙げられる。
硬化された1次シートは、上記したようにシリコーン樹脂(オルガノポリシロキサン)を含むものであり、VUVを照射すると、VUVが照射された面は活性化される。1次シートは、後述するように、その活性化された一方の面が重ね合わせ面となるように、他の1次シートと重ね合わせることで、1次シート間が強固に接着されることになる。
その原理は定かではないが、シリコーン樹脂は、VUVが照射されると、オルガノポリシロキサンのC-Si結合が、Si-OHなどのSi-O結合に変化し、そのSi-O結合により、1次シート間が強固に接着されると推定される。すなわち、1次シートと1次シート(単位層13、13)は、オルガノポリシロキサンの分子間で結合が生じることで接着される。
VUV照射条件は、1次シートの表面を活性化できる条件であれば特に限定されないが、例えば積算光量が5~100mJ/cm2、好ましくは積算光量が10~50mJ/cm2となるようにVUVを照射するとよい。
[0055](積層工程)
次に、複数の1次シート21を、図2(a)及び(b)に示すように、異方性充填材14の配向方向が同じになるように積層する。ここで、各1次シート21は、上記したとおり、互いに接触する重ね合わせ面のいずれか一方の面が、予めVUV照射されていればよい。一方の面がVUV照射されていることで、その活性化された一方の面により隣接する1次シート21、21同士が接着される。また、接着性をより向上させる観点から、重ね合わせ面の両方がVUV照射されていることが好ましい。
すなわち、図2(a)に示すように、1次シート21は、VUV照射された一方の面21Aを、他の1次シート21に接触するように重ね合わせるとよいが、この際、一方の面21Aに接触する、他の1次シート21の他方の面21BもVUV照射されることが好ましい。
[0056] 1次シート21は、上記のように重ね合わせるだけで接着可能であるが、より強固に接着させるために、1次シート21の積層方向xに加圧してもよい。加圧は、1次シート21が大きく変形しない程度の圧力で行うとよく、例えばローラやプレスを用いて加圧することができる。一例として、ローラを用いるときは、圧力を0.3~3kgf/50mmとすることが好ましい。
積層された1次シート21は、例えば加圧するときなどに適宜加熱されてもよいが、VUV照射により活性化された1次シート21は、加熱しなくても接着できるので、積層された1次シート21は、加熱しないことが好ましい。したがって、プレス時の温度は、例えば0~50℃、好ましくは10~40℃程度である。
[0057](切断工程)
次に、図2(c)に示すように、刃物18によって、積層ブロック22を1次シート21の積層方向xに沿って切断し、熱伝導性シート10を得る。この際、積層ブロック22は、異方性充填材14の配向方向と直交する方向に切断するとよい。刃物18としては、例えば、カミソリ刃やカッターナイフ等の両刃や片刃、丸刃、ワイヤー刃、鋸刃等を用いることができる。積層ブロック22は、刃物18を用いて、例えば、押切、剪断、回転、摺動等の方法により切断される。」
「[0069] 以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。
[0070] 本実施例では、以下の方法により熱伝導性シートの物性を評価した。
[圧縮率]
熱伝導性シートを、10mm×10mmのサイズでカットして、0.276MPa(=40psi)で圧縮したときの圧縮率を測定した。具体的には10mm×10mmの大きさで表面が平坦な台座と、平行に押圧する押圧子の間に試験片を挟み、0.276MPaで試験片を圧縮したときの厚みT2を測定し、初期厚みT1に対する圧縮率(T1-T2)/T1を算出した。
[硬さ]
熱伝導性シート及び1次シートのタイプOO硬さは、ASTM D2240-05の規定に従って測定した。なお、タイプOO硬さは、試験片が10mmとなるように調整して、試験片の両面の硬さを測定してその平均値を算出した。ただし、厚みが10mm未満である場合には、複数枚のシートを重ねて、試験片の厚みが10mm、又は10mmより大きくかつ10mmに最も近い厚さとなるように調整した。
[熱伝導率]
熱伝導性シートの熱伝導率はASTM D5470-06に準拠した方法で測定した。
[0071][実施例1]
硬化性シリコーン組成物として、アルケニル基含有オルガノポリシロキサン(主剤)とハイドロジェンオルガノポリシロキサン(硬化剤)(合計で100質量部、体積充填率40体積%)と、異方性充填材として黒鉛化炭素繊維(平均繊維長100μm、アスペクト比10、熱伝導率500W/m・K)120質量部(体積充填率30体積%)と、非異方性充填材として酸化アルミニウム粉末(球状、平均粒径3μm、アスペクト比1.0)500質量部(体積充填率30体積%)を混合して、スラリー状の液状組成物を得た。液状組成物の25℃における粘度は90Pa・sであった。
[0072] 液状組成物を、ポリエチレンテレフタレート(PET)製の基材フィルム上に、25℃で塗布用アプリケータとしてバーコータを用いて一方向に塗布した。異方性充填材は、塗布方向に長軸が向き、塗布面の法線方向に短軸が向いていた。次に、塗布した液状組成物を、120℃で0.5時間加熱することで、液状組成物を硬化させることで、厚さ500μmの1次シートを得た。
[0073] 得られた1次シートそれぞれの両面に対して、VUV照射装置(商品名エキシマMINI、浜松ホトニクス社製)を用いて、室温(25℃)、大気中で1次シートの表面に積算光量20mJ/cm2の条件でVUVを照射した。次に、VUVを照射した1次シートを、100枚積層して、25℃の環境下、ローラにより1.6kgf/50mmの圧力で加圧して、積層ブロックを得た。得られた積層ブロックをカッター刃により、積層方向に平行で、かつ異方性充填材の配向方向に垂直にスライスして、各単位層の厚さが500μm、厚さ2mmの熱伝導性シートを得た。
・・・中 略・・・
[0075](実施例6)
異方性充填材を窒化ホウ素(非凝集鱗片状材料、平均粒径40μm、アスペクト比4~8、熱伝導率100W/m・K)に変更し、さらに添加部数を180質量部に変更した点を除いて実施例1と同様に実施した。得られた熱伝導性シートは厚さが2mmで、各単位層の厚さは500μmであった。異方性充填材の充填率が26体積%、非異方性充填材の充填率が41体積%であり、シリコーン樹脂の充填率が33体積%であった。なお、異方性充填材は、鱗片面の法線方向が積層方向に向いていた。
・・・中 略・・・
[0083]
[表1]
[図:0001388419000001.jpg]
」
「請求の範囲
[請求項1] それぞれがシリコーン樹脂を含む複数の単位層を備え、かつ前記複数の単位層が互いに接着するように積層される熱伝導性シートであって、
前記複数の単位層のうち、少なくとも1つが熱伝導性充填材を含み、
前記複数の単位層が互いに接着する接着面に対して垂直方向から0.276MPaで圧縮したときの圧縮率が20~65%である、熱伝導性シート。
[請求項2] 前記複数の単位層が、シートの面方向に沿う一方向に沿って積層される請求項1に記載の熱伝導性シート。
[請求項3] 前記熱伝導性充填材が、異方性充填材を含有する請求項1又は2に記載の熱伝導性シート。
[請求項4] 前記熱伝導性充填材が、さらに非異方性充填材を含有する請求項3に記載の熱伝導性シート。
[請求項5] 前記異方性充填材が、シートの厚さ方向に配向される請求項3又は4に記載の熱伝導性シート。
[請求項6] 前記異方性充填材が、繊維状材料、及び鱗片状材料から選択される少なくとも1種である請求項3~5のいずれか1項に記載の熱伝導性シート。
[請求項7] 前記鱗片状材料の鱗片面の法線方向が、前記複数の単位層の積層方向に向く請求項6に記載の熱伝導性シート。
[請求項8] 前記隣接する単位層同士が、直接固着している請求項1~7のいずれか1項に記載の熱伝導性シート。
[請求項9] それぞれがシリコーン樹脂を含み、かつ少なくとも1つの1次シートが熱伝導性充填材を含む、複数の1次シートを用意する工程と、
前記1次シートの少なくとも一方の面に真空紫外線を照射する工程と、
前記複数の1次シートを、真空紫外線が照射された前記一方の面を他の1次シートに接触させるようにして積層することで、複数の1次シートを接着させて積層ブロックを形成する工程と、
前記積層ブロックを積層方向に沿ってシート状になるように切断して熱伝導性シートを得る工程と
を備える熱伝導性シートの製造方法。
[請求項10] 前記熱伝導性充填材が、異方性充填材を含み、前記1次シートではその面方向に沿って異方性充填材が配向され、
前記積層ブロックは、前記異方性充填材が配向する方向に直交する方向に切断される
請求項9に記載の熱伝導性シートの製造方法。」
上記記載から、文献1には[第1の実施形態]として、以下の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されている。
「シリコーン樹脂11と、異方性充填材14と、非異方性充填材15とを含有する複数の単位層13を備え、
異方性充填材14の平均粒径は、15~300μmであり、
異方性充填材14の含有量は、体積基準の充填率(体積充填率)で表すと、熱伝導性シート全量に対して、8~30体積%であり、非異方性充填材15の含有量は、体積%で表すと、熱伝導性シート全量に対して、30~60体積%である、
熱伝導性シート10。」
また、上記記載から、文献1には[第1の実施形態]として、以下の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されている。
「シリコーン樹脂の原料である硬化性シリコーン組成物と、熱伝導性充填材(すなわち、異方性充填材14、非異方性充填材15)とを混合して液状組成物を調製し、液状組成物を押出成形により、基材フィルム上に塗工し、シート状に成形された液状組成物を硬化させ、1次シートを得る、1次シート準備工程と、
1次シートにVUVを照射するVUV照射工程と、
VUVを照射した1次シートを積層し、接着させ、積層ブロック22を得る積層工程と、
積層ブロック22を1次シート21の積層方向xに沿って切断し、熱伝導性シート10を得る切断工程とを備え、
熱伝導性シートの
異方性充填材14の平均粒径は、15~300μmであり、
異方性充填材14の含有量は、体積基準の充填率(体積充填率)で表すと、熱伝導性シート全量に対して、8~30体積%であり、非異方性充填材15の含有量は、体積%で表すと、熱伝導性シート10全量に対して、30~60体積%である、
熱伝導性シート10の製造方法。」
2 文献2(特開2012-23335号公報)について
文献2には、以下の記載がある。
「【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマー、異方性熱伝導性フィラー、及び充填剤を含有する熱伝導性組成物を押出機で押出して、前記異方性熱伝導性フィラーが押出し方向に沿って配向した押出成形物を成形する押出成形工程と、
前記押出成形物を硬化させて硬化物とする硬化工程と、
前記硬化物を、超音波カッターを用いて前記押出し方向に対し垂直方向に所定の厚みに切断する切断工程と、を少なくとも含むことを特徴とする熱伝導性シートの製造方法。
【請求項2】
ポリマー、異方性熱伝導性フィラー、及び充填剤を含有する熱伝導性組成物を押出機で押出して、前記異方性熱伝導性フィラーが押出し方向に沿って配向した押出成形物を成形する押出成形工程と、
前記押出成形物を硬化させて硬化物とする硬化工程と、
前記硬化物を超音波カッターで所定の厚みに切断する際に、前記超音波カッターで切断される前記硬化物の厚み方向に対して前記異方性熱伝導性フィラーが5°~45°の角度に配向するように前記硬化物を配置して切断する切断工程と、
を少なくとも含むことを特徴とする熱伝導性シートの製造方法。
【請求項3】
異方性熱伝導性フィラーの平均繊維長が100μm以上である請求項1から2のいずれかに記載の熱伝導性シートの製造方法。
【請求項4】
異方性熱伝導性フィラーが、炭素繊維である請求項1から3のいずれかに記載の熱伝導性シートの製造方法。
【請求項5】
異方性熱伝導性フィラーの熱伝導性組成物中の含有量が、16体積%~25体積%である請求項1から4のいずれかに記載の熱伝導性シートの製造方法。
【請求項6】
充填剤の平均粒子径が1μm~40μmである請求項1から5のいずれかに記載の熱伝導性シートの製造方法。
【請求項7】
充填剤が、球形状のアルミナ粒子である請求項1から6のいずれかに記載の熱伝導性シートの製造方法。
【請求項8】
ポリマーがシリコーン樹脂である請求項1から7のいずれかに記載の熱伝導性シートの製造方法。
【請求項9】
請求項1から8のいずれかに記載の熱伝導性シートの製造方法により製造されたことを特徴とする熱伝導性シート。
【請求項10】
熱伝導性シートにおける外周部の微粘着性が、熱伝導性シートにおける内部の微粘着性よりも高い請求項9に記載の熱伝導性シート。
【請求項11】
熱伝導性シートの切断面の表面粗さRaが9.9μm以下である請求項9から10のいずれかに記載の熱伝導性シート。」
「【技術分野】
【0001】
本発明は、熱伝導性シート及び熱伝導性シートの製造方法に関する。」
「【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、従来における前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、切断面の表面粗さが小さいので界面での熱抵抗が低くなり、厚み方向の熱伝導性が高いので、各種熱源と放熱部材との間に挟持させて好適に用いられる熱導電性シート及び熱伝導性シートの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するため本発明者らが鋭意検討を重ねた結果、以下の知見を得た。即ち、異方性熱伝導性フィラー及び充填剤を含有してなる熱伝導性組成物を、複数のスリットを通過させることで熱伝導性組成物内に配合された異方性熱伝導性フィラーを熱伝導性シートの厚み方向に配向させ、異方性熱伝導性フィラーの配向状態を乱すことなく成形させた後、型出口よりブロック体として押出し成形する。そして、得られた成形体を硬化させた後、硬化物を押出し方向に対し垂直方向に超音波カッターで所定の厚みに切断することにより、切断面の表面粗さが小さいので界面での熱抵抗が低くなり、厚み方向の熱伝導性が高くなり、各種熱源(例えばCPU、トランジスタ、LED等の各種デバイス)と放熱部材との間に挟持させて好適に用いられる熱伝導性シートが得られることを知見した。
また、前記熱伝導性組成物の硬化物を超音波カッターで所定の厚みに切断する際に、前記超音波カッターで切断される前記硬化物(熱伝導性シート)の厚み方向に対して前記異方性熱伝導性フィラーが5°~45°の角度に配向するように前記硬化物を配置して切断することで、半導体素子とヒートシンクの間に貼り付けて荷重を加えた時に、角度を付けたことによって異方性熱伝導性フィラーが倒れ易くなり(熱伝導性シート内で異方性熱伝導性フィラーがスライドし易くなり)、熱抵抗の上昇を抑えながら圧縮率の向上を図れることを知見した。」
「【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、本発明の熱伝導性シートの製造方法の流れ示す模式図である。
【図2】図2は、押出成形工程における異方性熱伝導性フィラーの配向状態を説明するための説明図である。
【図3】図3は、実施例1のシリコーン硬化物を超音波カッターで切断した状態を示す写真である。」
「【図1】
[図:0001388419000002.jpg]
」
「【図2】
[図:0001388419000003.jpg]
」
「【図3】
[図:0001388419000004.jpg]
」
3 文献3(特開2012-201106号公報)について
文献3には、以下の記載がある。
「【特許請求の範囲】
【請求項1】
六方晶窒化ホウ素粉末(A)の平均粒子径が20~50μmであり、酸化アルミニウム粉末(B)の平均粒子径が0.5~5μmであり、(A):(B)の配合割合が体積比で7:3~9:1の熱伝導性フィラー40~70体積%含有してなるシリコーン樹脂組成物を積層したシリコーン積層体を、積層方向から切断することを特徴とする熱伝導性成形体。」
「【技術分野】
【0001】
本発明は、熱伝導性に優れた熱伝導性成形体とその用途に関するものであり、特に電子部品用放熱部材として使用した際に、トランジスタ、サイリスタ、CPU(中央処理装置)等の発熱性電子部品を損傷させることなく、電子機器に組み込むことができる熱伝導性成形体に関するものである。」
「【0007】
本発明は、上記の課題を解決するために、以下の手段を採用する。
(1)六方晶窒化ホウ素粉末(A)の平均粒子径が20~50μmであり、酸化アルミニウム粉末(B)の平均粒子径が0.5~5μmであり、(A):(B)の配合割合が体積比で7:3~9:1の熱伝導性フィラー40~70体積%含有してなるシリコーン樹脂組成物を積層したシリコーン積層体を、積層方向から切断することを特徴とする熱伝導性成形体。
(2)六方晶窒化ホウ素粉末(A)の平均粒子径が20~50μmであり、窒化アルミニウム粉末(B)の平均粒子径が0.5~5μmであり、(A):(B)の配合割合が体積比で7:3~9:1の熱伝導性フィラー40~70体積%含有してなるシリコーン樹脂組成物を積層したシリコーン積層体を、積層方向から切断することを特徴とする熱伝導性成形体。
(3)シリコーン樹脂が質量平均分子量15000~30000(C)と質量平均分子量400000~600000(D)のビニル基をもつオルガノポリシロキサンであり、その体積比が(C):(D)=7:3~5:5であることを特徴とする前記(1)または(2)に記載の熱伝導性成形体。
(4)前記(1)乃至(3)のいずれか一項に記載の熱伝導性成形体を用いた電子部品用放熱部材。」
「【0013】
本発明の熱伝導性成形体における熱伝導性フィラーの含有率は、全体積中の40~70体積%、特に50~60体積%であることが望ましい。熱伝導性フィラーの含有率が40体積%未満では熱伝導性成形体の熱伝導性が減少する傾向にある。また70体積%を越えると、成形体の機械的強度が損なわれる傾向にある。」
「【0021】
本発明の樹脂組成物は、付加反応型液状シリコーンに窒化ホウ素粉末と、酸化アルミニウム粉末又は窒化アルミニウムを添加し、自転・公転ミキサーであるシンキー社製「あわとり練太郎」を用いて混合することで製造することができる。
【0022】
平均粒子径20~50μmである六方晶窒化ホウ素粉末と平均粒子径0.5~5μmである酸化アルミニウム粉末の配合割合は7:3~9:1である必要があり、さらに配合割合は7.5:2.5~8.5:1.5の範囲のものが好ましい。平均粒子径20~50μmである六方晶窒化ホウ素粉末の割合が7より小さくなると、フィラーの充填性が悪くなる傾向にある。反対に平均粒子径20~50μmである六方晶窒化ホウ素粉末の割合が9より大きくなると、フィラーが緻密に充填しづらくなり、熱伝導性が減少する傾向にある。
【0023】
平均粒子径20~50μmである六方晶窒化ホウ素粉末と平均粒子径0.5~5μmである窒化アルミニウム粉末の配合割合は7:3~9:1である必要があり、さらに配合割合は7.5:2.5~8.5:1.5の範囲のものが好ましい。平均粒子径20~50μmである六方晶窒化ホウ素粉末の割合が7より小さくなると、フィラーの充填性が悪くなる傾向にある。反対に平均粒子径20~50μmである六方晶窒化ホウ素粉末の割合が9より大きくなると、フィラーが緻密に充填しづらくなり、熱伝導性が減少する傾向にある。
【0024】
本発明のシリコーン樹脂組成物を積層したシリコーン積層体とは、熱伝導性フィラーとシリコーンゴムの混合物を厚さ1~6mmに薄板化し、その薄板を厚さ方向へ10~100枚積層し、10~100mmの厚さにしたものである。
【0025】
本発明の熱伝導性成形体の製造方法の一例を示す。付加反応型液状シリコーン及び熱伝導性フィラーを室温下で混合して、シリコーン樹脂組成物のコンパウンドを調整した。このコンパウンドをピストン式又はスクリュー式の押し出し機で押し出して、未硬化の薄板(グリーンシート)に仮成形した後、それを積層し加熱硬化させた後、積層方向から所望の幅に切断する方法があげられる。
・・・中 略・・・
【0027】
本発明の熱伝導性成形体は、発熱性電子部品又は熱熱性電子部品の搭載された回路基板と冷却装置との間に挟みこんで使用されるものであるが、冷却装置にあらかじめ貼り付け一体化するなどして電子部品用放熱部材として供給することも可能である。冷却装置としては、例えばヒートシンク、放熱フィン、金属又はセラミックスのケース等があげられ、またはそのセラミックスとしては窒化アルミニウム、窒化ホウ素、炭化珪素、窒化珪素、酸化アルミニウム等があげられる。」
「【実施例】
【0029】
実施例1~30 比較例1~18
熱伝導性フィラーとして表1に示される六方晶窒化ホウ素粉末5種類、酸化アルミニウム粉末5種類、窒化アルミニウム粉末5種類、付加反応型シリコーンとして、表2にしめされるD液5種類(白金触媒を含有したビニル基を有するオルガノポリシロキサン)、E液5種類(H-Si基を有するオルガノポリシロキサン及びビニル基を有するオルガノポリシロキサン)、F液5種類(ビニル基を有するオルガノポリシロキサン)を室温下で表3~7に示す配合(体積%)で、自転・公転ミキサーであるシンキー社製「あわとり練太郎」を用いて、回転速度2000rpmで10分混合して、シリコーン樹脂組成物のコンパウンドを作製した。
【0030】
このコンパウンドをスリット(1mm×60mm)付きダイスの固定されたシリンダー構造金型内に充填し、ピストンで圧力をかけながらスリットから押し出して、シリコーン樹脂組成物の未硬化の薄板(グリーンシート)を作製した。
【0031】
厚さ1mm、幅60mm、長さ120mmのグリーンシート25枚から縦横の長さが50mmの正方形となるようにカッターでグリーンシートを切り出した。そして、正方形のグリーンシート同士の各角を合わせつつ、50mmの高さになるまで50層積層した。その後、乾燥機を用いて150℃で22時間加熱硬化させて、シリコーン積層体を作製した。この1辺の長さが50mmの立方体であるシリコーン積層体をカッターでグリーンシートを重ねた面に対して垂直であり、その辺に対して平行に刃を下ろしながら切断し、本発明のシート状熱伝導性成形体(1mm)を作製した。
【0032】
上記で得られたシート状熱伝導性成形体について、10mm×10mmに裁断し、熱伝導率を測定した。それらの結果を表3~7に示す。
【0033】
【表1】
[図:0001388419000005.jpg]
【0034】
【表2】
[図:0001388419000006.jpg]
【0035】
【表3】
[図:0001388419000007.jpg]
【0036】
【表4】
[図:0001388419000008.jpg]
【0037】
【表5】
[図:0001388419000009.jpg]
【0038】
【表6】
[図:0001388419000010.jpg]
【0039】
【表7】
[図:0001388419000011.jpg]
【0040】
表3~表7の実施例と比較例から、本発明の熱伝導性成形体は、優れた熱伝導性を示している。」
上記記載から、文献3には以下の発明(以下、「引用発明3」という。)が記載されている。
「付加反応型液状シリコーン及び熱伝導性フィラーを室温下で混合して、シリコーン樹脂組成物のコンパウンドを調整し、
このコンパウンドをピストン式又はスクリュー式の押し出し機で押し出して、未硬化の薄板(グリーンシート)に仮成形した後、それを積層し加熱硬化させ、
積層方向から所望の幅に切断する、
熱伝導性成形体の製造方法であって、
熱伝導性フィラーは、平均粒子径20~50μmである六方晶窒化ホウ素粉末と平均粒子径0.5~5μmである酸化アルミニウム粉末、もしくは、平均粒子径20~50μmである六方晶窒化ホウ素粉末と平均粒子径0.5~5μmである窒化アルミニウム粉末からなり、
熱伝導性成形体における熱伝導性フィラーの含有率は、全体積中の40~70体積%である、
熱伝導性成形体の製造方法。」
4 先願1(特願2020-18476号(特開2021-123661号公報))について
先願1の明細書等には、以下の記載がある。
「【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の式(1)で示される熱抵抗値変化率Aが15%以下であるか、又は以下の式(2)で示される熱抵抗値変化率Bが7.5%以下であり、30%圧縮強度が2000kPa以下である、熱伝導性樹脂シート。
|(1-10%圧縮時の熱抵抗値/30%圧縮時の熱抵抗値)×100| (1)
|(1-40%圧縮時の熱抵抗値/30%圧縮時の熱抵抗値)×100| (2)
【請求項2】
前記熱抵抗値変化率Aが15%以下であり、かつ熱抵抗値変化率Bが7.5%以下である、請求項1に記載の熱伝導性樹脂シート。
【請求項3】
10%圧縮時の熱抵抗値が5K/W以下である、請求項1又は2に記載の熱伝導性樹脂シート。
【請求項4】
熱伝導性フィラーを含有する、請求項1~3のいずれかに記載の熱伝導性樹脂シート。
【請求項5】
前記熱伝導性フィラーが、非球状フィラーを含有する、請求項4に記載の熱伝導性樹脂シート。
【請求項6】
前記熱伝導性フィラーのアスペクト比が5以上である、請求項4又は5に記載の熱伝導性樹脂シート。
【請求項7】
前記熱伝導性フィラーの配向角度が45°より大きい、請求項4~6のいずれかに記載の熱伝導性樹脂シート。
【請求項8】
前記熱伝導性フィラーの含有量が、樹脂100質量部に対して150~700質量部である、請求項4~7のいずれかに記載の熱伝導性樹脂シート。
【請求項9】
エラストマー樹脂、シリコーン樹脂、及びアクリル樹脂から選択される少なくとも1種以上の樹脂を含有する、請求項1~8のいずれかに記載の熱伝導性樹脂シート。
【請求項10】
前記樹脂が液状である、請求項9に記載の熱伝導性樹脂シート。」
「【技術分野】
【0001】
本発明は、熱伝導性樹脂シートに関する。」
「【0021】
(熱伝導率)
本発明の熱伝導性樹脂シートの熱伝導率は4W/m・K以上であることが好ましい。熱伝導率が4W/m・K以上であると、発熱体から発生する熱を放熱することができる。熱伝導性樹脂シートの放熱性を向上させる観点から、熱伝導性樹脂シートの熱伝導率は、好ましくは6W/mK以上であり、より好ましくは8W/m・K以上である。また、熱伝導性樹脂シートの熱伝導率は、高ければ高い方がよいが、通常、100W/m・K以下である。熱伝導率は、例えば、後述する熱伝導性フィラーの含有量や配向などを調節することで、所望の値に調整しやすくなる。
【0022】
(熱伝導性フィラー)
本発明の熱伝導性樹脂シートは、熱伝導性フィラーを含有することが好ましい。熱伝導性フィラーは熱伝導性樹脂シート中の樹脂成分中に分散され、熱抵抗値が低くなる。
熱伝導性フィラーの平均粒子径は、好ましくは0.1~300μm、より好ましくは0.5~100μm、更に好ましくは5~50μmである。平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布測定装置により粒度分布を測定して求めることができる。
【0023】
熱伝導性フィラーは、球状フィラーでも非球状フィラーでもよいが、熱伝導性樹脂シートの熱抵抗値及び熱抵抗値変化率を低くする観点から、非球状フィラーを少なくとも含有することが好ましい。なお、熱伝導性フィラーは、一種のみを用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0024】
非球状フィラーとしては、例えば、鱗片状、薄片状などの板状フィラー、針状フィラー、繊維状フィラー、樹枝状フィラー、不定形状フィラー、凝集フィラーなどが挙げられる。中でも、熱伝導性樹脂シートの熱伝導性を良好とする観点から、板状フィラーが好ましい。
ここで、「球状」とはアスペクト比が1.0~2.0、好ましくは1.0~1.5の形状であることを意味し、必ずしも真球であることを意味しない。なお、球状フィラーの場合のアスペクト比は、長径/短径比を意味する。また、「非球状」とは上記球状以外の形状、すなわちアスペクト比が2を超える形状を意味する。」
「【0028】
熱伝導性フィラーの材質としては、例えば、炭化物、窒化物、酸化物、水酸化物、金属、炭素系材料などが挙げられる。
炭化物としては、例えば、炭化ケイ素、炭化ホウ素、炭化アルミニウム、炭化チタン、炭化タングステンなどが挙げられる。
窒化物としては、例えば、窒化ケイ素、窒化ホウ素、窒化ホウ素ナノチューブ、窒化アルミニウム、窒化ガリウム、窒化クロム、窒化タングステン、窒化マグネシウム、窒化モリブデン、窒化リチウムなどが挙げられる。
酸化物としては、例えば、酸化鉄、酸化ケイ素(シリカ)、酸化アルミニウム(アルミナ)(酸化アルミニウムの水和物(ベーマイトなど)を含む。)、酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化セリウム、酸化ジルコニウムなどが挙げられる。また、酸化物として、チタン酸バリウムなどの遷移金属酸化物などや、さらには、金属イオンがドーピングされている、例えば、酸化インジウムスズ、酸化アンチモンスズなどが挙げられる。
【0029】
水酸化物としては、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウムなどが挙げられる。
金属としては、例えば、銅、金、ニッケル、錫、鉄、または、それらの合金が挙げられる。
炭素系材料としては、例えば、カーボンブラック、黒鉛、ダイヤモンド、グラフェン、フラーレン、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、ナノホーン、カーボンマイクロコイル、ナノコイルなどが挙げられる。
上記以外の熱伝導性フィラーとして、ケイ酸塩鉱物であるタルクを挙げることができる。
これら熱伝導性フィラーは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0030】
これらの中でも、熱抵抗値変化率を低くする観点から、窒化ホウ素、水酸化マグネシウム、及び酸化マグネシウムが好ましく、窒化ホウ素がより好ましい。
【0031】
熱伝導性フィラーの含有量は、樹脂100質量部に対して、好ましくは150~700質量部であり、より好ましくは200~600質量部であり、更に好ましくは230~450質量部である。150質量部以上であると、熱伝導性樹脂シートの熱抵抗値が低くなる。また、700質量部以下であると、熱伝導性樹脂シートの柔軟性が良好となりやすい。
熱伝導性フィラー中の非球状フィラーの含有量は、熱伝導性フィラー全量基準で、60質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、100質量%であることが更に好ましい。」
「【0034】
(樹脂)
本発明の熱伝導性樹脂シートは、樹脂を含有し、その樹脂の種類は、特に制限されないが、柔軟性を良好とする観点から、エラストマー樹脂、シリコーン樹脂、及びアクリル樹脂から選択される1種以上であることが好ましい。
熱伝導性樹脂シートに含有される樹脂は固体状でも液状でもよいが、より柔軟性を良好とする観点から、液状の樹脂であることが好ましい。そのため、熱伝導性樹脂シートは、液状エラストマー樹脂、液状シリコーン樹脂、及び液状アクリル樹脂から選択される1種以上であることが好ましく、中でも後述する液状エラストマー樹脂がより好ましい。
なお、本明細書において、液状とは常温(23℃)かつ常圧(1気圧)で液状であることをいい、固体状とは常温(23℃)かつ常圧(1気圧)で固体状であることをいう。
【0035】
エラストマー樹脂の種類としては、例えば、アクリロニトリルブタジエンゴム、エチレン-プロピレン-ジエンゴム、エチレン-プロピレンゴム、天然ゴム、ポリイソプレンゴム、ポリブタジエンゴム、水素添加ポリブタジエンゴム、スチレン-ブタジエンブロック共重合体、水素添加スチレン-ブタジエンブロック共重合体、水素添加スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体、水素添加スチレン-イソプレンブロック共重合体、水素添加スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体等が挙げられる。
これらのエラストマー樹脂は、固体状であっても液状であってもよいが、液状エラストマー樹脂が好ましい。液状エラストマー樹脂としては、特に限定されず、例えば、上記したエラストマー樹脂のうち液状のものを用いることができるが、中でも、液状アクリロニトリルブタジエンゴム、液状エチレン-プロピレン-ジエンゴム、液状ポリイソプレンゴム、液状ポリブタジエンゴムが好ましい。
エラストマー樹脂は、1種のみを用いてもよいし、複数種類を併用してもよい。
【0036】
シリコーン樹脂の種類としては、例えば、縮合反応型シリコーン樹脂、付加反応型シリコーン樹脂、シリコーンオイルなどが挙げられる。シリコーン樹脂は、固体状のシリコーン樹脂であっても、液状シリコーン樹脂であってもよいが、熱伝導性樹脂シートの柔軟性を高める観点から、液状シリコーン樹脂が好ましい。
液状シリコーン樹脂としては、柔軟性向上の観点から、好ましくはシリコーンオイルである。シリコーンオイルとしては、例えば、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、メチルハイドロジェンシリコーンオイル等のストレートシリコーンオイル、並びにアミノ変性シリコーンオイル、エポキシ変性シリコーンオイル、カルボキシ変性シリコーンオイル、メタクリル変性シリコーンオイル、メルカプト変性シリコーンオイル、カルビノール変性シリコーンオイル、フッ素変性シリコーンオイル、メチルスチリル変性シリコーンオイル、ポリエーテル変性シリコーンオイル等の変性シリコーンオイルが挙げられる。これらの中でもストレートシリコーンオイルが好ましい。
シリコーン樹脂は、1種のみを用いてもよいし、複数種類を併用してもよい。
【0037】
アクリル樹脂の種類としては、例えば、アクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸、及びメタクリル酸エステルから選択される1種以上のアクリル系モノマーを含むモノマー成分の重合体が挙げられ、アクリル系モノマーの重合体であってもよいし、アクリル系モノマーと他のモノマーとの共重合体であってもよい。
アクリル樹脂は、固体状のアクリル樹脂であっても、液状アクリル樹脂であってもよいが、熱伝導性樹脂シートの柔軟性を高める観点から、液状アクリル樹脂が好ましい。
液状アクリル樹脂は、好ましくは、アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルから選択される1種以上を含むモノマー成分の重合体が挙げられ、より好ましくはアクリル酸エステルを含むモノマー成分の重合体である。アクリル酸エステルとしては、特に限定されず、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル等が挙げられる。メタクリル酸エステルとしては、特に限定されず、例えばメタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n-ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル等が挙げられる。
アクリル樹脂は、1種のみを用いてもよいし、複数種類を併用してもよい。」
「【0041】
(積層体)
本発明の熱伝導性樹脂シートは単層でもよいし、積層体でもよい。熱伝導性を良好とする観点から、樹脂及び非球状フィラーを含む樹脂層が積層された積層体が好ましい。以下、樹脂及び非球状フィラーを含む樹脂層が積層された積層体の実施形態の一例を図1により説明する。
各図において、各フィラーは上下に隣接するフィラーと重複しているが、本発明においてフィラー同士は必ずしも重複していなくてよい。
図1に示すように、熱伝導性樹脂シート1は、複数の樹脂層2を積層した構造を有している。複数の樹脂層2の積層面に対する垂直面が樹脂シート1の表面であるシート面5となる。
【0042】
熱伝導性樹脂シート1の厚み(すなわち、シート面5とシート面5との間の距離)は特に限定されないが、例えば、0.1~30mmの範囲とすることができる。
樹脂層2の1層の厚み(樹脂層幅)は特に限定されないが、好ましくは1000μm以下、より好ましくは500μm以下であり、そして、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは0.5μm以上、更に好ましくは1μm以上とすることができる。このように厚みを調整することにより、熱伝導性を高めることができる。
樹脂層2は、熱伝導性フィラー6を含有する熱伝導性樹脂層7である。熱伝導性樹脂層7は、樹脂8中に熱伝導性の熱伝導性フィラー6が分散された構造を有する。
各樹脂層2においては、熱伝導性フィラーは、上記のようにシート面に対して45°より大きい角度、より好ましくは50°以上、更に好ましくは60℃以上、更に好ましくは70°以上、更に好ましくは80°以上の角度で配向している。」
「【0044】
[熱伝導性樹脂シートの製造方法]
本発明の熱伝導性樹脂シートの製造方法は、特に限定されないが、単層の熱伝導性樹脂シートを製造する場合は、例えば、非球状の熱伝導性フィラー、樹脂、及び必要に応じて添加剤を押出機に供給し溶融混練して得た混合物を、押出機からシート状に押出すことによって熱伝導性樹脂シートを成形すればよい。
【0045】
(積層体の製造方法)
本発明の積層体からなる熱伝導性樹脂シートの製造方法は、特に限定されないが、以下に説明するように、混練工程、積層工程、さらに必要に応じてスライス工程を含む方法により製造することができる。
【0046】
<混練工程>
熱伝導性フィラーと樹脂とを混練して、熱伝導性樹脂組成物を作製する。
前記の混練は、例えば、熱伝導性フィラーと樹脂とを、プラストミル等の二軸スクリュー混練機や二軸押出機等を用いて、加熱下において混練することが好ましく、これにより、熱伝導性フィラーが樹脂中に均一に分散された熱伝導性樹脂組成物を得ることができる。
次いで、該熱伝導性樹脂組成物をプレスすることにより、シート状の樹脂層(熱伝導性樹脂層)を得ることができる。
【0047】
<積層工程>
積層工程では、前記混練工程で得た樹脂層を積層してn層構造の積層体を作成する。積層方法としては、例えば、混練工程で作製した樹脂層をxi分割して積層し、xi層構造の積層体を作製後、必要に応じて、熱プレスを行い、その後、更に、必要に応じて、分割と積層と前記の熱プレスを繰り替えして、幅がDμmでn層構造の積層体を作製する方法を用いることができる。
熱伝導性フィラーが板状である場合、積層工程後の積層体の幅(Dμm)、前記熱伝導性フィラーの厚み(dμm)は、0.0005≦d/(D/n)≦1を満足することが好ましく、0.001≦d/(D/n)≦1を満足することがより好ましく、0.02≦d/(D/n)≦1を満足することが更に好ましい。
このように、複数回の成形を行う場合には、各回における成形圧を、1回の成形で行う場合に比べて、小さくすることができるため、成形に起因する積層構造の破壊等の現象を回避することができる。
その他の積層方法として、例えば、多層形成ブロックを備える押出機を用い、前記多層形成ブロックを調製して、共押出し成形により、前記n層構造で、かつ、前記厚さDμmの積層体を得る方法を用いることもできる。
具体的には、第1の押出機及び第2の押出機の双方に前記混練工程で得た熱伝導性樹脂組成物を導入し、第1の押出機及び第2の押出機から熱伝導性樹脂組成物を同時に押出す。第1の押出機及び第2の押出機から押出された熱伝導性樹脂組成物は、フィードブロックに送られる。フィードブロックでは、第1の押出機及び上記第2の押出機から押出された熱伝導性樹脂組成物が合流する。それによって、熱伝導性樹脂組成物が積層された2層体を得ることができる。次に、前記の2層体を多層形成ブロックへと移送し、押出し方向に平行な方向であり、かつ積層面に垂直な複数の面に沿って2層体を複数に分割後、積層して、n層構造で、厚みDμmの積層体を作製することができる。このとき、1層当たりの厚み(D/n)は、多層形成ブロックを調整して所望の値とすることができる。
【0048】
(スライス工程)
前記積層工程で得た積層体を積層方向に対して平行方向にスライスすることにより、熱伝導性樹脂シートを作製することができる。」
「【0050】
本発明の熱伝導性樹脂シートは、柔軟性であり、かつ圧縮率が変動した場合であっても、安定した放熱性能を示すものである。本発明の熱伝導性樹脂シートは、例えば、電子機器内部の発熱体と放熱体の間に配置させることで、発熱体から放熱体への熱放散を促進させることができる。このことを図1で説明した熱伝導性樹脂シート1を用いて説明する。
図2に示すように、熱伝導性樹脂シート1は、シート面5が発熱体3や放熱体4と接するように配置される。また、熱伝導性樹脂シート1は、発熱体3と放熱体4等の2つの部材の間において、圧縮した状態で配置される。この際、本発明の熱伝導性樹脂シート1は、比較的広い圧縮率においても安定した放熱性能を発揮できる。なお、発熱体3は、例えば、半導体パッケージ等であり、放熱体4は、例えば、アルミニウムや銅などの金属等である。熱伝導性樹脂シート1をこのような状態で使用することにより、発熱体3で発生した熱が、放熱体4へ熱拡散しやすくなり、効率的な放熱が可能となる。
【実施例】
【0051】
本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。
【0052】
以下の実施例及び比較例で使用した材料は以下のとおりである。
樹脂
・液状エラストマー1:液状ポリブタジエンゴム、株式会社クラレ社製、商品名「L-1203」
・シリコーン樹脂:2液硬化型のシリコーン樹脂(旭化成ワッカーシリコーン製、商品名「SEMICOSIL 962TC」混合比はA材:B材=1:1)
・アクリル樹脂:ナガセケムテックス社製、商品名「SG-280 EK23」
【0053】
(2)熱伝導性フィラー
(a-1)アルミナ
HUBER社製、商品名「TM2410」
アスペクト比:1.5
(b-1)窒化アルミニウム-1
トクヤマ社製、商品名「HF-01D」
アスペクト比:1.5
(b-2)窒化アルミニウム-2
トクヤマ社製、商品名「HF-05」
アスペクト比:1.5
(c-1)水酸化アルミニウム-1
日本軽金属株式会社製、商品名「BF013」
アスペクト比:1.5
(d-1)水酸化マグネシウム-1
協和化学工業社製、商品名「HeaCon-H」
アスペクト比:14
(d-2)水酸化マグネシウム-2
神島化学工業社製、商品名「マグシーズW-H4」
アスペクト比:1.5
(e-1)酸化マグネシウム-1
協和化学工業社製、商品名「HeaCon-X」
アスペクト比:12
(f-1)窒化ホウ素-1(鱗片状)
MOMENTIVE社製、商品名「PT100」
アスペクト比:81
(f-2)窒化ホウ素-3(鱗片状)
MOMENTIVE社製、商品名「PT120」
アスペクト比:6
(f-3)窒化ホウ素-4(鱗片状)
MOMENTIVE社製、商品名「PT140」
アスペクト比:45
(f-4)窒化ホウ素-5(鱗片状)
MOMENTIVE社製、商品名「PT160」
アスペクト比:48
(f-5)窒化ホウ素-7(凝集)
MOMENTIVE社製、商品名「PT180」
アスペクト比:7」
「【0057】
(実施例1)
液状エラストマー1(株式会社クラレ社製、商品名「L-1203」)100質量部と、窒化ホウ素(モメンティブ社製、商品名「PT100」)250質量部とからなる混合物を溶融混練後、プレスすることにより厚さ0.5mm、幅80mm、奥行き80mmのシート状の樹脂層を得た。次に積層工程として、得られた樹脂層を16等分して重ねあわせて総厚さ8mm、幅20mm、奥行き20mmの16層からなる積層体を得た。次いで積層方向に平行にスライスし、厚さ2mm、幅8mm、奥行き20mmの熱伝導性樹脂シートを得た。該熱伝導性樹脂シートの積層体を構成する樹脂層の1層の厚みは0.5mmであった。次いで該熱伝導性樹脂シートの両面にそれぞれ加速電圧525kV、線量600kGyの電子線を照射してシートを架橋させた。この熱伝導性樹脂シートについて表1の各項目について評価した。
【0058】
(実施例2~8、比較例1~2)
表1のとおりに組成を変更した以外は、実施例1と同様にして熱伝導性樹脂シートを得た。この熱伝導性樹脂シートについて表1、2の各項目について評価した。
【0059】
(実施例9~10、比較例3~4)
表1のとおり組成を変更し、かつ電子線の照射を行わなかったこと以外は、実施例1と同様にして熱伝導性樹脂シートを得た。この熱伝導性樹脂シートについて表1、2の各項目について評価した。
【0060】
【表1】
[図:0001388419000012.jpg]
【0061】
【表2】
[図:0001388419000013.jpg]
」
上記記載から、先願1には、以下の発明(以下、「先願発明1」という。)が記載されている。
「樹脂と、熱伝導性フィラーとして非球状フィラーを少なくとも含有し、
熱伝導性フィラーの平均粒子径は、5~50μmであり、
熱伝導性フィラーの含有量は、樹脂100質量部に対して、150~700質量部であり、
熱伝導性フィラー中の非球状フィラーの含有量は、熱伝導性フィラー全量基準で、60質量%以上である、
熱伝導性樹脂シート。」
また、上記記載から、先願1には、以下の発明(以下、「先願発明2」という。)が記載されている。
「非球状の熱伝導性フィラーを含む熱伝導性フィラーと樹脂とを混練して、熱伝導性樹脂組成物を作製する混練工程と、
多層形成ブロックを備える押出機を用い、多層形成ブロックを調製して、共押出し成形により、n層構造で、かつ、厚さDμmの積層体を得る積層工程と、
前記積層工程で得た積層体を積層方向に対して平行方向にスライスするスライス工程を含む
熱伝導性樹脂シートの製造方法であって、
熱伝導性樹脂シートの
熱伝導性フィラーの平均粒子径は、5~50μmであり、
熱伝導性フィラーの含有量は、樹脂100質量部に対して、150~700質量部であること。」
第5 当審の判断
1 本件発明1について
(1)引用発明1について
ア 本件発明1と引用発明1とを対比すると以下のことがいえる。
(ア)引用発明1の「シリコーン樹脂11」、「異方性充填剤14」、「非異方性充填剤15」は、それぞれ、本件発明1の「バインダ樹脂」、「異方性熱伝導性フィラー」、「上記異方性熱伝導性フィラー以外の他の熱伝導性フィラー」に相当する。
(イ)引用発明1の「異方性充填材14の平均粒径は、15~300μmであ」ることと、本件発明1の「[条件2]上記異方性熱伝導性フィラーの平均粒子径が15μm以上45μm以下である」ことは、「上記異方性熱伝導性フィラーの平均粒子径が15μm以上45μm以下である」点で共通する。
(ウ)引用発明1は、「異方性充填材14の含有量は、体積基準の充填率(体積充填率)で表すと、熱伝導性シート全量に対して、8~30体積%であり、非異方性充填材15の含有量は、体積%で表すと、熱伝導性シート全量に対して、30~60体積%である」から、「異方性充填剤14」と「非異方性充填剤15」を合わせた充填剤の含有量は、体積%で表すと、熱伝導性シート全量に対して、38~90体積%であるといえる。
そうすると、引用発明1の「異方性充填剤14」と「非異方性充填剤15」を合わせた充填剤の含有量が、体積%で表すと、熱伝導性シート全量に対して、38~90体積%であることと、本件発明1の「[条件3]当該熱伝導シート中、上記異方性熱伝導性フィラーと上記他の熱伝導性フィラーの合計含有量が60体積%を超え、75体積%未満である」ことは、「当該熱伝導シート中、上記異方性熱伝導性フィラーと上記他の熱伝導性フィラーの合計含有量が60体積%を超え、75体積%未満である」点で共通する。
(エ)引用発明1の「熱伝導性シート10」は、本件発明1の「熱伝導シート」に対応する。
(オ)そうすると、本件発明1と引用発明1との一致点及び相違点は、次のとおりである。
[一致点]
「バインダ樹脂と、異方性熱伝導性フィラーと、上記異方性熱伝導性フィラー以外の他の熱伝導性フィラーとを含む組成物の硬化物からなる熱伝導シート。」
[相違点1]
本件発明1の「熱伝導シート」は、「[条件1]当該熱伝導シート表面に対する仮想垂線から60°の位置より入射した光線にて測定したグロス値が10未満である」ことを満たしているのに対して、引用発明1の「熱伝導性シート10」は、対応する特定がされていない点。
[相違点2]
本件発明1の「熱伝導シート」は、「[条件2]上記異方性熱伝導性フィラーの平均粒子径が15μm以上45μm以下である」ことを満たしているのに対して、引用発明1の「熱伝導性シート10」は「異方性充填材14」の平均粒子径が15μm以上45μm以下であるものを含むとはいえるものの、「異方性充填材14」が、平均粒子径が45μm~300μmのものも含んでいる点。
[相違点3]
本件発明1の「熱伝導シート」は、「[条件3]当該熱伝導シート中、上記異方性熱伝導性フィラーと上記他の熱伝導性フィラーの合計含有量が60体積%を超え、75体積%未満である」ことを満たしているのに対して、引用発明1の「熱伝導性シート10」は「異方性充填剤14」と「非異方性充填剤15」を合わせた充填剤の含有量が「60体積%を超え、75体積%未満である」ものを含むとはいえるものの、「異方性充填剤14」と「非異方性充填剤15」を合わせた充填剤の含有量が、38~60体積%であるもの及び75~90体積%であるものを含んでいる点。
イ 相違点についての当審判断
上記相違点1について判断する。
文献1には、上記相違点1に係る本件発明1の「[条件1]当該熱伝導シート表面に対する仮想垂線から60°の位置より入射した光線にて測定したグロス値が10未満である」ことは記載も示唆もされていない。
そうすると他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、引用発明1であるとはいえない。
また、上記相違点1に係る本件発明1の「[条件1]当該熱伝導シート表面に対する仮想垂線から60°の位置より入射した光線にて測定したグロス値が10未満である」ことが、周知技術であるとはいえない。
そうすると他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、当業者が、引用発明1に基づいて、容易に発明をすることができたものではない。
なお、特許異議申立人1は、上記相違点1について、本件特許明細書の発明の詳細な説明の段落0024の
「熱伝導シート1が条件1を満たすと、上述のように、熱伝導シート1中で異方性熱伝導性フィラー3が配向している割合が高い傾向にあり、熱伝導シート1の厚み方向の熱伝導率が良好となる。また、熱伝導シート1が条件1を満たすと、製造した熱伝導シートの良否判定、例えば、所定の粒子径の熱伝導性フィラーを所定量含む熱伝導シートが、所定の熱伝導性を有することの判定を容易に行うことが可能となる。換言すると、熱伝導シート1の熱伝導率を測定する以外に、熱伝導シート1のグロス値を計測することでも、熱伝導シート1の熱伝導率の目安を把握することができる。」
の記載から、条件1は、熱伝導シートの熱伝導率の目安となるものであり、熱伝導率の良否に関係する異方性熱伝導性フィラーの配向割合と関係するから、本件発明1の熱伝導シートと配向状態及び熱伝導率が同等である引用発明1は、「[条件1]当該熱伝導シート表面に対する仮想垂線から60°の位置より入射した光線にて測定したグロス値が10未満である」という条件を満たしている旨主張し、相違点1は実質的相違点とはいえない旨主張する(特許異議申立人1による特許異議申立書の第26頁下から第9行ないし第27頁第25行)。
しかしながら、引用発明1が、相違点1に係る本件発明1の「[条件1]」を満たすことは、上記のとおり、文献1には記載されておらず、また、引用発明1が本件発明1の「熱伝導シート」と同様の熱伝導率となるとしても、異方性熱伝導性フィラーの配向割合が同じであるとはいえず、この「[条件1]」を必ず満たすとはいえないことは、明らかであるから、特許異議申立人1の上記主張には理由がない。
(2)先願発明1について
ア 本件発明1と先願発明1とを対比すると以下のことがいえる。
(ア)先願発明1の「樹脂」、「非球状フィラー」は、それぞれ、本件発明1の「バインダ樹脂」、「異方性熱伝導性フィラー」に相当する。
また、先願発明1は、「熱伝導性フィラー中の非球状フィラーの含有量は、熱伝導性フィラー全量基準で、60質量%以上である」ことから、「鱗片状の非球状フィラー」と異なる「非球状フィラー」でないフィラー、すなわち、「球状フィラー」を40質量%未満含むものである。
そして、先願発明1のこの「球状フィラー」は、本件発明1の「上記異方性熱伝導性フィラー以外の他の熱伝導性フィラー」に相当する。
(イ)先願発明1の「熱伝導性樹脂シート」は、本件発明1の「熱伝導シート」に対応する。
(ウ)そうすると、本件発明1と先願発明1との一致点及び相違点は、次のとおりである。
[一致点]
「バインダ樹脂と、異方性熱伝導性フィラーと、上記異方性熱伝導性フィラー以外の他の熱伝導性フィラーとを含む組成物の硬化物からなる熱伝導シート。」
[相違点4]
本件発明1の「熱伝導シート」は、「[条件1]当該熱伝導シート表面に対する仮想垂線から60°の位置より入射した光線にて測定したグロス値が10未満である」ことを満たしているのに対して、先願発明1の「熱伝導性樹脂シート」は、対応する特定がされていない点。
[相違点5]
本件発明1の「熱伝導シート」は、「[条件2]上記異方性熱伝導性フィラーの平均粒子径が15μm以上45μm以下である」ことを満たしているのに対して、先願発明1の「熱伝導性樹脂シート」は、「非球状の熱伝導性フィラー」の平均粒子径が特定されていない点。
[相違点6]
本件発明1の「熱伝導シート」は、「[条件3]当該熱伝導シート中、上記異方性熱伝導性フィラーと上記他の熱伝導性フィラーの合計含有量が60体積%を超え、75体積%未満である」ことを満たしているのに対して、先願発明1の「熱伝導性樹脂シート」は、「熱伝導性フィラー」の含有量がどのような体積%となるのか特定されていない点。
イ 相違点についての当審判断
上記相違点4について判断する。
先願1の明細書等には、上記相違点4に係る本件発明1の「[条件1]当該熱伝導シート表面に対する仮想垂線から60°の位置より入射した光線にて測定したグロス値が10未満である」ことは記載されていない。
そうすると他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、先願発明1であるとはいえない。
なお、特許異議申立人2は、上記相違点4について、本件特許明細書の発明の詳細な説明の段落0024の記載から、「[条件1]」は、熱伝導率の良否に関係する異方性熱伝導性フィラーの配向割合と関係するものであり、「[条件1]」が異方性熱伝導性フィラーの配向状態、さらに、熱伝導シートの熱伝導率と関連がある以上、上記配向状態及び熱伝導率が本件発明1と同等である先願発明1は、「[条件1]」、すなわち、「[条件1]当該熱伝導シート表面に対する仮想垂線から60°の位置より入射した光線にて測定したグロス値が10未満である」という条件を満たしている旨主張し、相違点4は実質的相違点とはいえない旨主張する(特許異議申立人2による特許異議申立書の第19頁下から第1行ないし第21頁第1行)。
しかしながら、先願発明1が、相違点4に係る本件発明1の「[条件1]」を満たすことは、先願1の明細書等には記載されておらず、また、先願発明1が本件発明1の「熱伝導シート」と同様の熱伝導率となるとしても、異方性熱伝導性フィラーの配向割合が同じであるとはいえず、「[条件1]」を満たすとはいえないことは、明らかであるから、特許異議申立人2の上記主張には理由がない。
2 本件発明2ないし7及び9について
(1)引用発明1について
本件発明2ないし7は、本件発明1をさらに限定したものであり、また、本件発明9は、本件発明1の「熱伝導シート」を備える「電子機器」の発明である。
そうすると、上記1(1)に示した理由と同様の理由により、本件発明2ないし7及び9は、引用発明1であるとはいえず、また、当業者であっても、引用発明1に基づいて、容易に発明をすることができたものではない。
(2)先願発明1について
本件発明2ないし7は、本件発明1をさらに限定したものであり、また、本件発明9は、本件発明1の「熱伝導シート」を備える「電子機器」の発明である。
そうすると、上記1(2)に示した理由と同様の理由により、本件発明2ないし7及び9は、先願発明1であるとはいえない。
3 本件発明8について
(1)引用発明2について
ア 本件発明8と引用発明2とを対比すると以下のことがいえる。
(ア)引用発明2の「シリコーン樹脂11」、「異方性充填剤14」、「非異方性充填剤15」は、それぞれ、本件発明8の「バインダ樹脂」、「異方性熱伝導性フィラー」、「上記異方性熱伝導性フィラー以外の他の熱伝導性フィラー」に相当する。
そして、引用発明2の「シリコーン樹脂の原料である硬化性シリコーン組成物と、熱伝導性充填材(すなわち、異方性充填材14、非異方性充填材15)とを混合して液状組成物を調製する」ことは、本件発明8の「バインダ樹脂と、異方性熱伝導性フィラーと、上記異方性熱伝導性フィラー以外の他の熱伝導性フィラーとを含有する熱伝導性組成物を作製する工程A」に相当する。
(イ)引用発明2の「液状組成物を押出成形により、基材フィルム上に塗工し、シート状に成形された液状組成物を硬化させ、1次シートを得」ることは、本件発明8の「上記熱伝導性組成物を押出成形した後硬化」することに相当する。
そして、引用発明2の「積層ブロック10」は、本件発明8の「柱状の硬化物」に相当するから、引用発明2の「1次シートにVUVを照射するVUV照射工程」を行い、「VUVを照射した1次シートを積層し、接着させ、積層ブロック22を得る積層工程」は、本件発明8の「柱状の硬化物を得る」ことに相当する。
そうすると、引用発明2は、本件発明8の「工程B」と同様の工程を備えているといえる。
(ウ)引用発明2の「積層ブロック22を1次シート21の積層方向xに沿って切断し、熱伝導性シート10を得る切断工程」は、本件発明8の「上記柱状の硬化物を柱の長さ方向に対し略垂直方向に所定の厚みに切断して熱伝導シートを得る工程C」に相当する。
(エ)引用発明2の「異方性充填材14の平均粒径は、15~300μmであ」ることと、本件発明8の「[条件2]上記異方性熱伝導性フィラーの平均粒子径が15μm以上45μm以下である」こととは、「上記異方性熱伝導性フィラーの平均粒子径が15μm以上45μm以下である」点で共通する。
(オ)引用発明2は、「異方性充填材14の含有量は、体積基準の充填率(体積充填率)で表すと、熱伝導性シート全量に対して、8~30体積%であり、非異方性充填材15の含有量は、体積%で表すと、熱伝導性シート全量に対して、30~60体積%である」から、「異方性充填剤14」と「非異方性充填剤15」を合わせた充填剤の含有量は、体積%で表すと、熱伝導性シート全量に対して、38~90体積%であるといえる。
そうすると、引用発明2の「異方性充填剤14」と「非異方性充填剤15」を合わせた充填剤の含有量が、体積%で表すと、熱伝導性シート全量に対して、38~90体積%であることと、本件発明8の「[条件3]当該熱伝導シート中、上記異方性熱伝導性フィラーと上記他の熱伝導性フィラーの合計含有量が60体積%を超え、75体積%未満である」こととは、「当該熱伝導シート中、上記異方性熱伝導性フィラーと上記他の熱伝導性フィラーの合計含有量が60体積%を超え、75体積%未満である」点で共通する。
(カ)引用発明2の「熱伝導性シート10の製造方法」は、本件発明8の「熱伝導シートの製造方法」に対応する。
(キ)そうすると、本件発明8と引用発明2との一致点及び相違点は、次のとおりである。
[一致点]
「バインダ樹脂と、異方性熱伝導性フィラーと、上記異方性熱伝導性フィラー以外の他の熱伝導性フィラーとを含有する熱伝導性組成物を作製する工程Aと、
上記熱伝導性組成物を押出成形した後硬化し、柱状の硬化物を得る工程Bと、
上記柱状の硬化物を柱の長さ方向に対し略垂直方向に所定の厚みに切断して熱伝導シートを得る工程Cとを有する、
熱伝導シートの製造方法。」
[相違点7]
本件発明8の「熱伝導シート」は、「[条件1]当該熱伝導シート表面に対する仮想垂線から60°の位置より入射した光線にて測定したグロス値が10未満である」ことを満たしているのに対して、引用発明2の「熱伝導性シート10」は、対応する特定がされていない点。
[相違点8]
本件発明8の「熱伝導シート」は、「[条件2]上記異方性熱伝導性フィラーの平均粒子径が15μm以上45μm以下である」ことを満たしているのに対して、引用発明2の「熱伝導性シート10」は「異方性充填材14」の平均粒子径が15μm以上45μm以下であるものを含むとはいえるものの、「異方性充填材14」は、平均粒子径が45μm~300μmのものも含んでいる点。
[相違点9]
本件発明8の「熱伝導シート」は、「[条件3]当該熱伝導シート中、上記異方性熱伝導性フィラーと上記他の熱伝導性フィラーの合計含有量が60体積%を超え、75体積%未満である」ことを満たしているのに対して、引用発明2の「熱伝導性シート10」は「異方性充填剤14」と「非異方性充填剤15」を合わせた充填剤の含有量が「60体積%を超え、75体積%未満である」ものを含むとはいえるものの、「異方性充填剤14」と「非異方性充填剤15」を合わせた充填剤の含有量が、38~60体積%であるもの及び75~90体積%であるものを含んでいる点。
イ 相違点についての当審判断
上記相違点7について判断する。
文献1には、上記相違点7に係る本件発明8の「[条件1]当該熱伝導シート表面に対する仮想垂線から60°の位置より入射した光線にて測定したグロス値が10未満である」ことは記載も示唆もされていない。
そうすると他の相違点について検討するまでもなく、本件発明8は、引用発明2であるとはいえない。
また、文献2には、上記相違点7に係る本件発明8の「[条件1]当該熱伝導シート表面に対する仮想垂線から60°の位置より入射した光線にて測定したグロス値が10未満である」ことは記載されておらず、また、この点が周知技術であるともいえない。
そうすると他の相違点について検討するまでもなく、本件発明8は、当業者が、引用発明2及び文献2に記載された技術的事項に基づいて、容易に発明をすることができたものではない。
なお、特許異議申立人1は、上記相違点8について、本件特許明細書の発明の詳細な説明の段落0024の記載から、「[条件1]」は、熱伝導シートの熱伝導率の目安となるものであり、熱伝導率の良否に関係する異方性熱伝導性フィラーの配向割合と関係するから、本件発明8の熱伝導シートと配向状態及び熱伝導率が同等である引用発明2は、「[条件1]当該熱伝導シート表面に対する仮想垂線から60°の位置より入射した光線にて測定したグロス値が10未満である」という条件を満たしている旨主張し、相違点7は実質的相違点とはいえない旨主張する(特許異議申立人1による特許異議申立書の第31頁下から第9行ないし第32頁下から第7行)。
しかしながら、引用発明2が、相違点7に係る本件発明8の「[条件1]」を満たすことは、上記のとおり、文献1には記載されておらず、また、引用発明2が本件発明8の「熱伝導シート」と同様の熱伝導率となるとしても、異方性熱伝導性フィラーの配向割合が同じであるとはいえず、この「[条件1]」を必ず満たすとはいえないことは、明らかであるから、特許異議申立人1の上記主張には理由がない。
(2)引用発明3について
ア 本件発明8と引用発明3とを対比すると以下のことがいえる。
(ア)引用発明3の「付加反応型液状シリコーン」は、本件発明8の「バインダ樹脂」に相当する。
また、引用発明3の「熱伝導性フィラー」は、「熱伝導性フィラーは、平均粒子径20~50μmである六方晶窒化ホウ素粉末と平均粒子径0.5~5μmである酸化アルミニウム粉末、もしくは、平均粒子径20~50μmである六方晶窒化ホウ素粉末と平均粒子径0.5~5μmである窒化アルミニウム粉末からな」るから、この「六方晶窒化ホウ素粉末」は、本件発明8の「異方性熱伝導性フィラー」に相当し、「酸化アルミニウム」もしくは「窒化アルミニウム」は、本件発明8の「上記異方性熱伝導性フィラー以外の他の熱伝導性フィラー」に相当する。
そして、引用発明3の「付加反応型液状シリコーン及び熱伝導性フィラーを室温下で混合して、シリコーン樹脂組成物のコンパウンドを調整」することは、本件発明8の「バインダ樹脂と、異方性熱伝導性フィラーと、上記異方性熱伝導性フィラー以外の他の熱伝導性フィラーとを含有する熱伝導性組成物を作製する工程A」に相当する。
(イ)引用発明3の「このコンパウンドをピストン式又はスクリュー式の押し出し機で押し出」すことは、本件発明8の「上記熱伝導性組成物を押出成形」することに相当する。
また、引用発明3の「未硬化の薄板(グリーンシート)に仮成形した後、それを積層し加熱硬化させ」たものが、本件発明8の「柱状の硬化物」に相当するから、引用発明3の「未硬化の薄板(グリーンシート)に仮成形した後、それを積層し加熱硬化させ」ることは、本件発明8の「上記熱伝導性組成物を押出成形した後硬化し、柱状の硬化物を得る」ことに相当する。
そうすると、引用発明3は、本件発明8の「工程B」と同様の工程を備えているといえる。
(ウ)引用発明3の「積層方向から所望の幅に切断する」ことは、本件発明8の「上記柱状の硬化物を柱の長さ方向に対し略垂直方向に所定の厚みに切断して熱伝導シートを得る工程C」に相当する。
(エ)引用発明3の「六方晶窒化ホウ素粉末」の「平均粒子径20~50μmである」ことと、本件発明8の「[条件2]上記異方性熱伝導性フィラーの平均粒子径が15μm以上45μm以下である」こととは、「上記異方性熱伝導性フィラーの平均粒子径が15μm以上45μm以下である」点で共通する。
(オ)引用発明3は、「熱伝導性成形体における熱伝導性フィラーの含有率は、全体積中の40~70体積%である」ことと、本件発明8の「[条件3]当該熱伝導シート中、上記異方性熱伝導性フィラーと上記他の熱伝導性フィラーの合計含有量が60体積%を超え、75体積%未満である」こととは、「当該熱伝導シート中、上記異方性熱伝導性フィラーと上記他の熱伝導性フィラーの合計含有量が60体積%を超え、75体積%未満である」点で共通する。
(カ)引用発明3の「熱伝導性成形体の製造方法」は、本件発明8の「熱伝導シートの製造方法」に対応する。
(キ)そうすると、本件発明8と引用発明3との一致点及び相違点は、次のとおりである。
[一致点]
「バインダ樹脂と、異方性熱伝導性フィラーと、上記異方性熱伝導性フィラー以外の他の熱伝導性フィラーとを含有する熱伝導性組成物を作製する工程Aと、
上記熱伝導性組成物を押出成形した後硬化し、柱状の硬化物を得る工程Bと、
上記柱状の硬化物を柱の長さ方向に対し略垂直方向に所定の厚みに切断して熱伝導シートを得る工程Cとを有する、
熱伝導シートの製造方法。」
[相違点10]
本件発明8の「熱伝導シート」は、「[条件1]当該熱伝導シート表面に対する仮想垂線から60°の位置より入射した光線にて測定したグロス値が10未満である」ことを満たしているのに対して、引用発明3の「熱伝導性成形体」は、対応する特定がされていない点。
[相違点11]
本件発明8の「熱伝導シート」は、「[条件2]上記異方性熱伝導性フィラーの平均粒子径が15μm以上45μm以下である」ことを満たしているのに対して、引用発明3の「熱伝導性シート10」は「六方晶窒化ホウ素」の平均粒子径が15μm以上45μm以下であるものを含むとはいえるものの、「六方晶窒化ホウ素」は、平均粒子径が45μm~50μmのものも含んでいる点。
[相違点12]
本件発明8の「熱伝導シート」は、「[条件3]当該熱伝導シート中、上記異方性熱伝導性フィラーと上記他の熱伝導性フィラーの合計含有量が60体積%を超え、75体積%未満である」ことを満たしているのに対して、引用発明3の「熱伝導性成形体」は「熱伝導性フィラー」の含有量が「60体積%を超え、75体積%未満である」ものを含むとはいえるものの、「熱伝導性フィラー」の含有量が、40~60体積%であるものを含んでいる点。
イ 相違点についての当審判断
上記相違点10について判断する。
文献3には、上記相違点10に係る本件発明8の「[条件1]当該熱伝導シート表面に対する仮想垂線から60°の位置より入射した光線にて測定したグロス値が10未満である」ことは記載も示唆もされていない、
そうすると他の相違点について検討するまでもなく、本件発明8は、引用発明3であるとはいえない。
また、上記相違点10に係る本件発明8の「[条件1]当該熱伝導シート表面に対する仮想垂線から60°の位置より入射した光線にて測定したグロス値が10未満である」ことが、周知技術であるとはいえない。
そうすると他の相違点について検討するまでもなく、本件発明8は、当業者が、引用発明3に基づいて、容易になし得るものではない。
なお、特許異議申立人1は、上記相違点10について、本件特許明細書の発明の詳細な説明の段落0024の記載から、「[条件1]」は、熱伝導シートの熱伝導率の目安となるものであり、熱伝導率の良否に関係する異方性熱伝導性フィラーの配向割合と関係するから、本件発明8の熱伝導シートと配向状態及び熱伝導率が同等である引用発明3は、「[条件1]当該熱伝導シート表面に対する仮想垂線から60°の位置より入射した光線にて測定したグロス値が10未満である」という条件を満たしている旨主張し、相違点10は実質的相違点とはいえない旨主張する(特許異議申立人1による特許異議申立書の第36頁第16行ないし第37頁第16行)。
しかしながら、引用発明3が、相違点10に係る本件発明8の「[条件1]」を満たすことは、上記のとおり、文献3には記載されておらず、また、引用発明3が本件発明8の「熱伝導シート」と同様の熱伝導率となるとしても、異方性熱伝導性フィラーの配向割合が同じであるとはいえず、この「[条件1]」を必ず満たすとはいえないことは、明らかであるから、特許異議申立人1の上記主張には理由がない。
(3)先願発明2について
ア 本件発明8と先願発明2とを対比すると以下のことがいえる。
(ア)先願発明2の「樹脂」、「非球状フィラー」は、それぞれ、本件発明8の「バインダ樹脂」、「異方性熱伝導性フィラー」に相当する。
また、先願発明2は、「熱伝導性フィラー中の非球状フィラーの含有量は、熱伝導性フィラー全量基準で、60質量%以上である」ことから、「鱗片状の非球状フィラー」と異なる「非球状フィラー」でないフィラー、すなわち、「球状フィラー」を40質量%未満含むものである。
そして、先願発明2のこの「球状フィラー」は、本件発明8の「上記異方性熱伝導性フィラー以外の他の熱伝導性フィラー」に相当する。
そうすると、先願発明2の「非球状の熱伝導性フィラーを含む熱伝導性フィラーと樹脂とを混練して、熱伝導性樹脂組成物を作製する混練工程」は、本件発明8の「バインダ樹脂と、異方性熱伝導性フィラーと、上記異方性熱伝導性フィラー以外の他の熱伝導性フィラーとを含有する熱伝導性組成物を作製する工程A」に相当する。
(イ)先願発明2の「厚さDμmの積層体」は「多層形成ブロックを備える押出機を用い、多層形成ブロックを調製して、共押出し成形により」成形されているから、柱状であるといえるから、先願発明2の「厚さDμmの積層体」と、本件発明8の「柱状の硬化物」とは、「柱状の物」である点で共通する。
そうすると、先願発明2の「多層形成ブロックを備える押出機を用い、多層形成ブロックを調製して、共押出し成形により、n層構造で、かつ、厚さDμmの積層体を得る積層工程」と、本件発明8の「上記熱伝導性組成物を押出成形した後硬化し、柱状の硬化物を得る工程B」とは、「上記熱伝導性組成物を押出成形し、柱状の物を得る工程」である点で共通する。
(ウ)先願発明2の「前記積層工程で得た積層体を積層方向に対して平行方向にスライスするスライス工程」と、本件発明8の「上記柱状の硬化物を柱の長さ方向に対し略垂直方向に所定の厚みに切断して熱伝導シートを得る工程C」とは、「上記柱状の物を柱の長さ方向に対し略垂直方向に所定の厚みに切断して熱伝導シートを得る工程」である点で共通する。
(エ)先願発明2の「熱伝導性樹脂シート」及び「熱伝導性樹脂シートの製造方法」は、それぞれ、本件発明8の「熱伝導シート」及び「熱伝導シートの製造方法」に対応する。
(オ)そうすると、本件発明8と先願発明2との一致点及び相違点は、次のとおりである。
[一致点]
「バインダ樹脂と、異方性熱伝導性フィラーと、上記異方性熱伝導性フィラー以外の他の熱伝導性フィラーとを含有する熱伝導性組成物を作製する工程Aと、
上記熱伝導性組成物を押出成形した後硬化し、柱状の硬化物を得る工程Bと、
上記柱状の硬化物を柱の長さ方向に対し略垂直方向に所定の厚みに切断して熱伝導シートを得る工程Cとを有する、
熱伝導シートの製造方法。」
[相違点13]
本件発明8は、「上記熱伝導性組成物を押出成形した後硬化し、柱状の硬化物を得る工程B」を有しているのに対して、先願発明2は、「上記熱伝導性組成物を押出成形し、柱状の物を得る工程」を有するとはいえるものの、「多層形成ブロックを備える押出機を用い、多層形成ブロックを調製して、共押出し成形により」成形された「厚さDμmの積層体」が、硬化されたものであるとの特定がされていない点。
[相違点14]
本件発明8の「熱伝導シート」は、「[条件1]当該熱伝導シート表面に対する仮想垂線から60°の位置より入射した光線にて測定したグロス値が10未満である」ことを満たしているのに対して、先願発明2の「熱伝導性樹脂シート」は、対応する特定がされていない点。
[相違点15]
本件発明8の「熱伝導シート」は、「[条件2]上記異方性熱伝導性フィラーの平均粒子径が15μm以上45μm以下である」ことを満たしているのに対して、先願発明2の「熱伝導性樹脂シート」は、「非球状の熱伝導性フィラー」の平均粒子径が特定されていない点。
[相違点16]
本件発明8の「熱伝導シート」は、「[条件3]当該熱伝導シート中、上記異方性熱伝導性フィラーと上記他の熱伝導性フィラーの合計含有量が60体積%を超え、75体積%未満である」ことを満たしているのに対して、先願発明2の「熱伝導性樹脂シート」は、「熱伝導性フィラー」の含有量がどのような体積%となるのか特定されていない点。
イ 相違点についての当審判断
上記相違点14について判断する。
先願1の明細書等には、上記相違点14に係る本件発明8の「[条件1]当該熱伝導シート表面に対する仮想垂線から60°の位置より入射した光線にて測定したグロス値が10未満である」ことは記載されていない。
そうすると他の相違点について検討するまでもなく、本件発明8は、先願発明2であるとはいえない。
なお、特許異議申立人2は、上記相違点14について、本件特許明細書の発明の詳細な説明の段落0024の記載から、「[条件1]」は、熱伝導率の良否に関係する異方性熱伝導性フィラーの配向割合と関係するものであり、「[条件1]」が異方性熱伝導性フィラーの配向状態、さらに、熱伝導シートの熱伝導率と関連がある以上、上記配向状態及び熱伝導率が本件発明8と同等である先願発明2は、「[条件1]」、すなわち、「[条件1]当該熱伝導シート表面に対する仮想垂線から60°の位置より入射した光線にて測定したグロス値が10未満である」という条件を満たしている旨主張し、相違点4は実質的相違点とはいえない旨主張する(特許異議申立人2による特許異議申立書の第26頁第8行ないし第27頁第11行)。
しかしながら、先願発明2が、相違点14に係る本件発明8の「[条件1]」を満たすことは、先願1の明細書等には記載されておらず、また、先願発明2が本件発明8の「熱伝導シート」と同様の熱伝導率となるとしても、異方性熱伝導性フィラーの配向割合が同じであるとはいえず、「[条件1]」を満たすとはいえないことは、明らかであるから、特許異議申立人2の上記主張には理由がない。
第6 むすび
以上のとおり、特許異議申立人1による特許異議申立書に記載した特許異議申立理由及び証拠、並びに、特許異議申立人2による特許異議申立書に記載した特許異議申立理由及び証拠によって、請求項1ないし9に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1ないし9に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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2022-700359