特許異議申立
2022-700572
耐火主要構造部
- 審判番号
- 2022-700572
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2017-148195
- 登録番号
- 6991772
- 請求日
- 2022年07月01日
- 審決日
- 2023年02月09日
- 公報発行日
- 2023年05月26日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】株式会社熊谷組
- 【権利者代理人】宮園 靖夫
- 【異議申立人】株式会社 シェルター
- 【異議申立人代理人】小川 護晃
- 審判長/審判官
- 審判長 居島 一仁
- 審判官 前川 慎喜
- 審判官 土屋 真理子
- 分類
- P1651.113-YAA(E04B) / P1651.121-YAA(E04B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項第3号、特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第5項、特許法第120条の5第9項、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第6991772号発明「耐火主要構造部」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第6991772号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1、3〕について訂正することを認める。
特許第6991772号の請求項2及び3に係る特許を維持する。
特許第6991772号の請求項1に係る特許に対する特許異議の申立てを却下する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第6991772号(以下「本件特許」という。)の請求項1ないし3に係る特許についての出願は、平成29年7月31日に出願され、令和3年12月10日にその特許権の設定登録がされ、令和4年1月13日に特許掲載公報が発行された。
その後、同年7月1日に特許異議申立人 株式会社シェルター(以下「申立人」という。)より、請求項1ないし3に係る特許に対して、特許異議の申立てがされ(特許異議申立書について、以下「申立書」という。)、当審より、令和4年10月31日付けで取消理由を通知したところ、特許権者は、その指定期間内である令和4年12月27日に意見書の提出及び訂正の請求(以下「本件訂正請求」という。)を行った。
なお、以下の第2に記載するとおり、本件訂正請求による訂正(以下「本件訂正」という。)は、実質的に、本件訂正前の請求項1及び本件訂正前の請求項1を引用する請求項3の削除のみの訂正であるといえ、特許法第120条の5第5項ただし書に規定された特許異議申立人に意見書を提出する機会を与える必要がないと認められる特別の事情があるといえるから、申立人に意見書を提出する機会を与えないこととした。
第2 訂正の適否についての判断
1 訂正の内容
本件訂正請求による訂正の内容は、以下のとおりである(下線部は訂正箇所を示す。)。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1を削除する。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項3に「木製芯材の除去前の隅角部の頂角と隅角部除去後の断面欠損部の表面との間の最短距離を、1mm以上としたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の耐火主要構造部。」とあるのを、「木製芯材の除去前の隅角部の頂角と隅角部除去後の断面欠損部の表面との間の最短距離を、1mm以上としたことを特徴とする請求項2に記載の耐火主要構造部。」に訂正する。
(3)訂正事項3
願書に添付した明細書の段落【0005】に記載された
「本発明に係る耐火主要構造部は、建築物の主要構造部を構成する木製芯材と、木製芯材の表面を被覆するように設けられた耐火材料部とを備え、木製芯材は、木製芯材の互いに隣り合う側面と側面との境界となる隅角部を除去した断面欠損部を備え、耐火材料部は、木製芯材の表面を被覆するように設けられた内側耐火板と、内側耐火板の表面を被覆するように設けられた外側耐火板とを備えた、少なくとも2層以上の積層構造により構成され、内側耐火板の表面から木製芯材の内側に到達する金属製止着部材と無機質系接着剤とによって内側耐火板と木製芯材とが接合され、外側耐火板の表面から内側耐火板の内側に到達して木製芯材に到達しない金属製止着部材と接着剤とによって外側耐火板と内側耐火板とが接合され、かつ、金属製止着部材同士が互いに接触しないように配置されたとともに、耐火材料部で囲まれた断面欠損部に無機質系接着剤が充填されたことを特徴とするので、火災時において、木製芯材の互いに隣り合う側面と側面との境界となる部分に火熱が伝わり難くなるため、耐火性能が向上する。また、金属製止着部材と接着剤との併用によって火災時に耐火板が崩落し難くくなるとともに、火災時において、金属製止着部材による木製芯材への熱橋が防止され、耐火性能が向上する。
また、本発明に係る耐火主要構造部は、建築物の主要構造部を構成する木製芯材と、木製芯材の表面を被覆するように設けられた耐火材料部とを備え、木製芯材は、木製芯材の互いに隣り合う側面と側面との境界となる隅角部を除去した断面欠損部を備え、耐火材料部は、木製芯材の表面を被覆するように設けられた内側石膏ボードと、内側石膏ボードの表面を被覆するように設けられた火山性ガラス質複合板と、火山性ガラス質複合板の表面を被覆するように設けられた外側石膏ボードとを備えた積層構造であり、内側石膏ボードの表面から木製芯材の内側に到達する金属製止着部材と無機質系接着剤とによって内側石膏ボードと木製芯材とが接合され、火山性ガラス質複合板の表面から内側石膏ボードの内側に到達して木製芯材に到達しない金属製止着部材と接着剤とによって火山性ガラス質複合板と内側石膏ボードとが接合され、外側石膏ボードの表面から火山性ガラス質複合板の内側に到達して内側石膏ボードに到達しない金属製止着部材と接着剤とによって外側石膏ボードと火山性ガラス質複合板とが接合され、かつ、金属製止着部材同士が互いに接触しないように配置されたとともに、耐火材料部で囲まれた断面欠損部に無機質系接着剤が充填されたことを特徴とするので、火災時において、木製芯材の互いに隣り合う側面と側面との境界となる部分に火熱が伝わり難くなるため、耐火性能が向上する。また、金属製止着部材と接着剤との併用によって火災時に耐火板が崩落し難くくなるとともに、火災時において、金属製止着部材による木製芯材への熱橋が防止され、耐火性能が向上する。また、耐火材料部(燃え止まり層)の厚さを薄くできて、建物内空間を広くできるとともに、火山性ガラス質複合板を備えたことで熱抵抗値の低下を改善できて、さらに、火山性ガラス質複合板を備えたことで内側石膏ボード及び外側石膏ボードの欠けや割れ部分に対する防御的機能を備えた構成となる。
また、木製芯材の除去前の隅角部の頂角と隅角部除去後の断面欠損部の表面との間の最短距離を、1mm以上としたので、1時間耐火性能を有する耐火主要構造部を構成しやすくなる。」との記載を、
「本発明に係る耐火主要構造部は、建築物の主要構造部を構成する木製芯材と、木製芯材の表面を被覆するように設けられた耐火材料部とを備え、木製芯材は、木製芯材の互いに隣り合う側面と側面との境界となる隅角部を除去した断面欠損部を備え、耐火材料部は、木製芯材の表面を被覆するように設けられた内側石膏ボードと、内側石膏ボードの表面を被覆するように設けられた火山性ガラス質複合板と、火山性ガラス質複合板の表面を被覆するように設けられた外側石膏ボードとを備えた積層構造であり、内側石膏ボードの表面から木製芯材の内側に到達する金属製止着部材と無機質系接着剤とによって内側石膏ボードと木製芯材とが接合され、火山性ガラス質複合板の表面から内側石膏ボードの内側に到達して木製芯材に到達しない金属製止着部材と接着剤とによって火山性ガラス質複合板と内側石膏ボードとが接合され、外側石膏ボードの表面から火山性ガラス質複合板の内側に到達して内側石膏ボードに到達しない金属製止着部材と接着剤とによって外側石膏ボードと火山性ガラス質複合板とが接合され、かつ、金属製止着部材同士が互いに接触しないように配置されたとともに、耐火材料部で囲まれた断面欠損部に無機質系接着剤が充填されたことを特徴とするので、火災時において、木製芯材の互いに隣り合う側面と側面との境界となる部分に火熱が伝わり難くなるため、耐火性能が向上する。また、金属製止着部材と接着剤との併用によって火災時に耐火板が崩落し難くくなるとともに、火災時において、金属製止着部材による木製芯材への熱橋が防止され、耐火性能が向上する。また、耐火材料部(燃え止まり層)の厚さを薄くできて、建物内空間を広くできるとともに、火山性ガラス質複合板を備えたことで熱抵抗値の低下を改善できて、さらに、火山性ガラス質複合板を備えたことで内側石膏ボード及び外側石膏ボードの欠けや割れ部分に対する防御的機能を備えた構成となる。
また、木製芯材の除去前の隅角部の頂角と隅角部除去後の断面欠損部の表面との間の最短距離を、1mm以上としたので、1時間耐火性能を有する耐火主要構造部を構成しやすくなる。」に訂正する。
(4)訂正の単位について
訂正前の請求項3は訂正前の請求項1を直接的に引用するものであるから、訂正前の請求項1及び3は、一群の請求項に該当するものであり、訂正前の請求項1及び3について訂正する訂正事項1ないし3は、一群の請求項に対してされたものである。
2 訂正の適否の判断
以下、各訂正事項について、訂正の適否を検討する。
(1)訂正事項1について
訂正事項1に係る請求項1の訂正は、請求項1の削除を目的とするものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことも明らかである。
(2)訂正事項2について
訂正事項2に係る請求項3の訂正は、訂正事項1により請求項1が削除されたため、請求項1を引用しない形式にしたものであるから、同法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、同時に、訂正前の請求項3において引用されていた訂正前の請求項1の記載の引用をしないものとするものであるから、同法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものでもあると認められ、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことも明らかである。
(3)訂正事項3について
訂正事項3は、明細書の【課題を解決するための手段】を記載する段落【0005】において、訂正事項1及び2の内容に対応する記載としたものであって、すなわち明細書の記載を特許請求の範囲と整合させるためになされたものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正であって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、また訂正事項1及び2と同様の理由により、新規事項の追加に該当するものではない。
(4)独立特許要件について
本件訂正においては、訂正前の請求項1ないし3が特許異議の申立ての対象とされているので、上記(1)、(2)のとおり特許請求の範囲の減縮が行われていても、訂正後の請求項3に係る発明には、特許法120条の5第9項で読み替えて準用する同法126条7項の独立特許要件は課されない。
(5)まとめ
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ同条第9項において準用する同法126条第5項、第6項及び第7項の規定に適合する。
よって、本件訂正後の請求項〔1、3〕についての訂正を認める。
第3 訂正後の本件特許発明
上記第2のとおり、本件訂正は認められるから、本件特許の請求項1ないし3に係る発明は、本件訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された事項により特定される、次のとおりのものである(請求項2に係る発明は本件訂正の対象ではなく、以下、本件訂正後の請求項2に係る発明、請求項3に係る発明をそれぞれ「本件特許発明2」、「本件訂正発明3」という。)
「【請求項1】(削除)
【請求項2】
建築物の主要構造部を構成する木製芯材と、木製芯材の表面を被覆するように設けられた耐火材料部とを備え、
木製芯材は、木製芯材の互いに隣り合う側面と側面との境界となる隅角部を除去した断面欠損部を備え、
耐火材料部は、木製芯材の表面を被覆するように設けられた内側石膏ボードと、内側石膏ボードの表面を被覆するように設けられた火山性ガラス質複合板と、火山性ガラス質複合板の表面を被覆するように設けられた外側石膏ボードとを備えた積層構造であり、
内側石膏ボードの表面から木製芯材の内側に到達する金属製止着部材と無機質系接着剤とによって内側石膏ボードと木製芯材とが接合され、火山性ガラス質複合板の表面から内側石膏ボードの内側に到達して木製芯材に到達しない金属製止着部材と接着剤とによって火山性ガラス質複合板と内側石膏ボードとが接合され、外側石膏ボードの表面から火山性ガラス質複合板の内側に到達して内側石膏ボードに到達しない金属製止着部材と接着剤とによって外側石膏ボードと火山性ガラス質複合板とが接合され、かつ、金属製止着部材同士が互いに接触しないように配置されたとともに、耐火材料部で囲まれた断面欠損部に無機質系接着剤が充填されたことを特徴とする耐火主要構造部。
【請求項3】
木製芯材の除去前の隅角部の頂角と隅角部除去後の断面欠損部の表面との間の最短距離を、1mm以上としたことを特徴とする請求項2に記載の耐火主要構造部。」
第4 証拠一覧、特許異議申立理由の要旨、及び取消理由通知に記載した取消理由の要旨
1 証拠一覧
本件特許異議申立における証拠は、以下のとおりである。
甲第1号証:国土交通省住宅局建築指導課・新耐火防火便覧編集委員会編,「新耐火防火構造・材料等便覧」(改訂版),新日本法規出版株式会社,第1-A巻,平成26年8月26日、p.1701-1707
甲第2号証:国土交通省住宅局建築指導課・新耐火防火便覧編集委員会編,「新耐火防火構造・材料等便覧」(改訂版),新日本法規出版株式会社,第2巻,平成26年8月26日,p.2337-2342
2 特許異議申立理由の要旨
申立人が申立書において主張する特許異議申立理由の要旨は、次のとおりである。
(新規性及び進歩性)
本件訂正前の本件特許の請求項1及び3に係る発明は、甲第1号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、これらの発明に係る特許は同法第29条第1項の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
また、本件訂正前の本件特許の請求項1ないし3に係る発明は、甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、これらの発明に係る特許は同法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
3 取消理由通知に記載した取消理由の要旨
令和4年10月31日付け取消理由通知に記載した取消理由の要旨は、次のとおりである。
(新規性及び進歩性)
本件訂正前の本件特許の請求項1及び3に係る発明は、甲第1号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、これらの発明に係る特許は同法第29条第1項の規定に違反してされたものである。
または、本件訂正前の本件特許の請求項1及3に係る発明は、甲第1号証に記載された発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、これらの発明に係る特許は同法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
よって、本件訂正前の本件特許の請求項1及び請求項3に係る発明は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
第5 証拠について
1 甲第1号証について
(1)甲第1号証の記載
本件特許の出願前に頒布された刊行物である、国土交通省住宅局建築指導課・新耐火防火便覧編集委員会編,「新耐火防火構造・材料等便覧」(改訂版),新日本法規出版株式会社,第1-A巻,平成26年8月26日、p.1701-1707(甲第1号証)には、以下の記載がある。(なお、枠線及びそれに伴う「(エ)」や「(オ)」等の文字は申立人が付したものである。甲第2号証も同様。)
ア 1701ないし1707頁は次のとおりである。
[図:0001397199000001.jpg]
[図:0001397199000002.jpg]
(1702頁)
[図:0001397199000003.jpg]
(1703頁)
[図:0001397199000004.jpg]
(1704頁)
[図:0001397199000005.jpg]
(1705頁)
[図:0001397199000006.jpg]
(1706頁)
[図:0001397199000007.jpg]
(1707頁)
イ 1701ないし1703、及び1707頁に記載されている主要な事項
(ア)1701頁
・「認定区分」欄に「耐火構造」との記載がある。
・「構造方法又は建築材料の名称」欄、及び「認定した構造内容又は建築材料の内容(寸法単位:mm) 1. 構造名」欄に、「すぎ集成材/強化せっこうボード3枚重張被覆/木製柱」との記載がある。
・「表1 申請仕様の寸法・形状」の項目「柱」に対応する「申請仕様」の欄に、「形状:角型」との記載がある。
・同表の項目「被覆材」に対応する「申請仕様」の欄に、「内層部:63mm以上(21mm以上×3層)」との記載がある。
(イ)1702頁
・「表2 申請仕様の主材料構成」の項目欄に「柱(荷重負担部分)」との記載がある。
・同表の項目「柱(荷重負担部分)」に対応する「申請仕様」の欄に、「柱断面四隅の形状:面取あり」との記載がある。
・同表の項目「被覆材」に対応する「申請仕様」の欄に、
「(1)内層部(被覆材1~3の3枚重張)
材料:強化せっこうボード・・・
厚さ:21mm以上
(2)外層部(被覆材4の単層)
材料:すぎ集成材・・・」
との記載がある。(なお「被覆材1~3」の1及び3は丸数字である。被覆材について以下同様。)
(ウ)1703頁
・「表3 申請仕様の副構成材料」の項目「接着剤」に対応する「申請仕様」の欄に、
「接着剤1(柱と被覆材1及び被覆材1~3相互用)
材料:炭酸カルシウム系接着剤・・・
接着剤2(被覆材3と被覆材4用)
材料:炭酸カルシウム系接着剤・・・
接着剤3(柱4隅面取り部分)
材料:炭酸カルシウム系接着剤・・・」との記載がある。
・「表3 申請仕様の副構成材料」の項目「留付材」に対応する「申請仕様」の欄に、
「留付材1(柱と被覆材1用)
材料:ステープル
材質:1)又は2)
1)鋼製
2)ステンレス鋼製
寸法:・・・長さ51mm以上・・・
留付材2(被覆材1~3相互用)
材料:ステープル
材質:1)又は2)
1)鋼製
2)ステンレス鋼製
寸法:・・・長さ51mm以上・・・」との記載がある。
(エ)1707頁
以下の記載がある。
「6. 施工方法
施工は以下の手順で行う。
(1)柱断面四隅の加工
・柱断面四隅の面取りを行う。(面取り寸法:面15mm)
・隅角部の面取りをした隙間には接着剤3を充てんする。
(2)被覆材(内層部)の取り付け
・取り付け
柱に、3重で被覆材1~3を留付材1、2及び接着剤1で接着する。
・留付材
柱への被覆材1の取り付けは、留付材1を用いる。・・・
被覆材1~3相互の取り付けは、留付材2を用いる。・・・
・接着剤
被覆材1~3に、接着剤1を用いて取り付ける。・・・
(3)被覆材(外層材)の取り付け
・取り付け
被覆材4としてすぎ材を、全面に接着剤2で取り付け、コーナー4カ所を接着する。」(1~22行)
ウ 図面から看取できる事項
上記アの、「申請仕様の構造説明図」(1704頁1行)である(「図1 構造説明図」(1704頁)、「図2 構造説明図(断面詳細図)」(1705頁)及び「図3 構造説明図(立面)」(1706頁)から、以下のことが看取できる
・被覆材1,2,3は、柱の表面を被覆するように設けられ、より詳細には、柱の表面を被覆するように設けられた被覆材1と、被覆材1の表面を被覆するように設けられた被覆材2と、被覆材2の表面を被覆するように設けられた被覆材3とを備えた、3枚重張で構成されている点。
・柱断面四隅の、隅角部の面取りをした隙間は、被覆材1,2,3で囲まれている点。(とくに図2から。)
(2)甲1発明
上記(1)に示された耐火構造について、甲第1号証には以下の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されているといえる。
[甲1発明]
「荷重負担部分である、角型で、柱断面四隅が面取あり形状の、木製の柱と、
柱の表面を被覆するように設けられた、強化せっこうボードである被覆材1,2,3とを有し、
柱断面四隅の面取り加工は以下のものであり、
・柱断面四隅の面取りを行う。(面取り寸法:面15mm)
・被覆材1,2,3で囲まれている、隅角部の面取りをした隙間には炭酸カルシウム系接着剤3を充てんする。
被覆材1,2,3は、柱の表面を被覆するように設けられた被覆材1と、被覆材1の表面を被覆するように設けられた被覆材2と、被覆材2の表面を被覆するように設けられた被覆材3とを備えた、3枚重張で構成され、
被覆材1,2,3は、炭酸カルシウム系接着剤1、及び、柱と被覆材1については留付材1、被覆材1,2,3相互については留付材2を用いて、柱に、及び被覆材1,2,3相互に、取り付けられ、
被覆材1,2,3は、厚さが各21mm以上、合計63mm以上であり、
留付材1,2はともに長さ51mm以上の鋼製またはステンレス鋼製のステープルであり、
さらに被覆材1,2,3の外層に、すぎ材被覆材4が炭酸カルシウム系接着剤2により取り付けられている、
耐火構造。」
2 甲第2号証について
(1)甲第2号証の記載
本件特許の出願前に頒布された刊行物である、国土交通省住宅局建築指導課・新耐火防火便覧編集委員会編,「新耐火防火構造・材料等便覧」(改訂版),新日本法規出版株式会社,第2巻,平成26年8月26日,p.2337-2342(甲第2号証)には、以下の記載がある。
ア 2337ないし2342頁は次のとおりである。
[図:0001397199000008.jpg]
(2337頁)
[図:0001397199000009.jpg]
(2338頁)
[図:0001397199000010.jpg]
(2339頁)
[図:0001397199000011.jpg]
(2340頁)
[図:0001397199000012.jpg]
(2341頁)
[図:0001397199000013.jpg]
(2342頁)
イ 図面から看取できる事項
上記アの、「4. 構造説明図」中の「A部詳細図」及び「B部詳細図」(いずれも2340頁)から、以下の事項が看取できる。(以下「甲2図面事項」という。)
・上張材を留付けるステープルと、下張材を留付けるくぎとが、互いに接触しない位置にある。
第6 当審の判断
1 取消理由通知に記載した取消理由についての判断
本取消理由の対象となった本件訂正前の本件特許発明1については、上記第2のとおり、請求項1を削除する本件訂正が認められたので、請求項1についての本件特許異議申立ては、その対象が存在しないものとなった。
一方、同じく本取消理由の対象となった本件訂正前の本件特許発明3は、上記第2のとおり、本件訂正によって、訂正前の請求項1の記載を引用せず請求項2の記載のみを引用する本件訂正発明3に減縮された。
以上より、以下、本件訂正発明3について検討する。
(1)対比
本件訂正発明3と甲1発明を対比する。
ア 甲1発明の「耐火構造」が建築物に係るものであること、及び、「荷重負担部分である」柱が建築物の主要構造部を構成することは自明であるから、甲1発明の「荷重負担部分である」「木製の柱」は、本件訂正発明3の「建築物の主要構造部を構成する木製芯材」に相当する。
イ 甲1発明における「強化せっこうボード」である被覆材が、耐火構造における耐火材料であることは自明であるから、甲1発明の「柱の表面を被覆するように設けられた、強化せっこうボードである被覆材1,2,3」は、本件訂正発明3の「木製芯材の表面を被覆するように設けられた耐火材料部」に相当する。
ウ 甲1発明において柱が「角型で、柱断面四隅が面取あり形状」であることは、本件訂正発明3において「木製芯材は、木製芯材の互いに隣り合う側面と側面との境界となる隅角部を除去した断面欠損部を備え」ていることに相当する。
エ 甲1発明において「強化せっこうボード」である被覆材が、「被覆材1,2,3は、柱の表面を被覆するように設けられた被覆材1と、被覆材1の表面を被覆するように設けられた被覆材2と、被覆材2の表面を被覆するように設けられた被覆材3とを備えた、3枚重張で構成され」ていることと、
本件訂正発明3において「耐火材料部は、木製芯材の表面を被覆するように設けられた内側石膏ボードと、内側石膏ボードの表面を被覆するように設けられた火山性ガラス質複合板と、火山性ガラス質複合板の表面を被覆するように設けられた外側石膏ボードとを備えた積層構造」であることとは、
火山性ガラス質複合板が、本件特許の明細書の記載(段落【0024】「・・・ 実施形態2の耐火主要構造部は、実施形態1の耐火主要構造部の内側耐火板3及び外側耐火板5として石膏ボードを用いるとともに、中間耐火板4として火山性ガラス質複合板を用いた構成とした。」)を参照しても、耐火板であることは明らかである点を踏まえて、
「耐火材料部は、木製芯材の表面を被覆するように設けられた内側石膏ボードと、内側石膏ボードの表面を被覆するように設けられた中間耐火板と、中間耐火板の表面を被覆するように設けられた外側石膏ボードとを備えた積層構造」である点で共通する。
オ 甲1発明の「鋼製またはステンレス鋼製のステープル」の「留付材1」及び「留付材2」は、本件訂正発明3の「金属製止着部材」に相当する。
また甲1発明における「被覆材1,2,3は、・・・柱と被覆材1については留付材1、被覆材1,2,3相互については留付材2を用いて、柱に、及び被覆材1,2,3相互に、取り付けられ、
被覆材1,2,3は、厚さが各21mm以上、合計63mm以上であり、
留付材1,2はともに長さ51mm以上の・・・ステープル」であるということについて、被覆材1,2,3の厚さが「各21mm以上」、ステープルの長さが「51mm以上」という点から、ステープルが、被覆材3の表面から内側の被覆材2の内側に、また被覆材2の表面から被覆材1の内側に、さらに被覆材1の表面から柱の内側に到達するものであることは明らかである。
よって、甲1発明における「被覆材1,2,3は、炭酸カルシウム系接着剤1、及び、柱と被覆材1については留付材1、被覆材1,2,3相互については留付材2を用いて、柱に、及び被覆材1,2,3相互に、取り付けられ、
被覆材1,2,3は、厚さが各21mm以上、合計63mm以上であり、
留付材1,2はともに長さ51mm以上の鋼製またはステンレス鋼製のステープル」であるということと、
本件訂正発明3において「内側石膏ボードの表面から木製芯材の内側に到達する金属製止着部材と無機質系接着剤とによって内側石膏ボードと木製芯材とが接合され、火山性ガラス質複合板の表面から内側石膏ボードの内側に到達して木製芯材に到達しない金属製止着部材と接着剤とによって火山性ガラス質複合板と内側石膏ボードとが接合され、外側石膏ボードの表面から火山性ガラス質複合板の内側に到達して内側石膏ボードに到達しない金属製止着部材と接着剤とによって外側石膏ボードと火山性ガラス質複合板とが接合され」ていることとは、
「内側石膏ボードの表面から木製芯材の内側に到達する金属製止着部材と無機質系接着剤とによって内側石膏ボードと木製芯材とが接合され、中間耐火板の表面から内側石膏ボードの内側に到達する金属製止着部材と接着剤とによって中間耐火板と内側石膏ボードとが接合され、外側石膏ボードの表面から中間耐火板の内側に到達する金属製止着部材と接着剤とによって外側石膏ボードと中間耐火板とが接合され」ている点で共通する。
カ 甲1発明において「・被覆材1,2,3で囲まれている、隅角部の面取りをした隙間には炭酸カルシウム系接着剤3を充てんする。」とされていることは、本件訂正発明3の「耐火材料部で囲まれた断面欠損部に無機質系接着剤が充填されたこと」に相当する。
キ 甲1発明における「柱断面四隅の面取り加工」の「支柱断面四隅の面取りを行う。(面取り寸法:面15mm)」との寸法関係が、本件訂正発明3における「木製芯材の除去前の隅角部の頂角と隅角部除去後の断面欠損部の表面との間の最短距離を、1mm以上とした」との寸法関係を満たすことは明らかである。
ク なお、甲1発明において「さらに被覆材1,2,3の外層に、すぎ材被覆材4が炭酸カルシウム系接着剤2により取り付けられている」点については、本件特許の明細書において、「【0035】また、上記では、最も外側に木製化粧材を備えた構成の耐火主要構造部を例示したが、・・・」等、外側耐火板の外表面に木製化粧材を取り付ける旨の説明がなされていることを踏まえれば、甲1発明と本件訂正発明3との対比において相違点とはいえない。
ケ 前記アないしクから、本件訂正発明3と甲1発明とは、
[一致点1]
「建築物の主要構造部を構成する木製芯材と、木製芯材の表面を被覆するように設けられた耐火材料部とを備え、
木製芯材は、木製芯材の互いに隣り合う側面と側面との境界となる隅角部を除去した断面欠損部を備え、
耐火材料部は、木製芯材の表面を被覆するように設けられた内側石膏ボードと、内側石膏ボードの表面を被覆するように設けられた中間耐火板と、中間耐火板の表面を被覆するように設けられた外側石膏ボードとを備えた積層構造であり、
内側石膏ボードの表面から木製芯材の内側に到達する金属製止着部材と無機質系接着剤とによって内側石膏ボードと木製芯材とが接合され、中間耐火板の表面から内側石膏ボードの内側に到達する金属製止着部材と接着剤とによって中間耐火板と内側石膏ボードとが接合され、外側石膏ボードの表面から中間耐火板の内側に到達する金属製止着部材と接着剤とによって外側石膏ボードと中間耐火板とが接合され、耐火材料部で囲まれた断面欠損部に無機質系接着剤が充填され、
木製芯材の除去前の隅角部の頂角と隅角部除去後の断面欠損部の表面との間の最短距離を、1mm以上とした、
耐火主要構造部。」
の点で一致し、下の相違点1ないし3で相違する。
[相違点1]
本件訂正発明3では、「金属製止着部材」が、「火山性ガラス質複合板の表面から」「木製芯材に到達しない」、及び「外側石膏ボードの表面から」「内側石膏ボードに到達しない」と特定されているのに対し、甲1発明では、「ステープル」が、「被覆材2」の表面から「柱」に、また「被覆材3」の表面から「被覆材1」に、到達しないことは特定されていない点。
[相違点2]
本件訂正発明3では「金属製止着部材同士が互いに接触しないように配置され」ていると特定されているのに対し、甲1発明では各「ステープル」同士が互いに接触しないように配置されているか明確でない点。
[相違点3]
本件訂正発明3では、「耐火材料部」は、「木製芯材の表面を被覆するように設けられた内側石膏ボードと、内側石膏ボードの表面を被覆するように設けられた火山性ガラス質複合板と、火山性ガラス質複合板の表面を被覆するように設けられた外側石膏ボードとを備えた積層構造」であるのに対し、甲1発明では、「柱の表面を被覆するように設けられた」「被覆材1,2,3」はすべて「強化せっこうボード」である点。
(2)判断
ア 検討
事案に鑑み、相違点3から検討する。
まず新規性について、本件訂正発明3と甲1発明との間に実質的な相違点が存在するから、本件訂正発明3は、甲1発明ではない。
次に進歩性について、甲1発明の「強化せっこうボードである被覆材1,2,3」を、相違点1に係る本件訂正発明3の構成のように、火山性ガラス質複合板を中間耐火板としてその内側と外側を石膏ボードとする構造に設計変更することは、甲第1号証全体をみても記載も示唆もされていない。
また甲第2号証についても、上記第5の2(1)アに摘記したように、「下張材」を「火山性ガラス質複層板」、「上張材」を「せっこうボード」とする構造が記載されているまでであり、相違点3に係る本件訂正発明3の構成のように、火山性ガラス質複合板を中間耐火板としてその内側と外側をせっこうボードとする3層構造に設計変更することはやはり記載も示唆もされていない。
よって、相違点3に係る本件訂正発明3の構成は、甲1発明並びに甲第2号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に想到することができたものではない。
イ 申立人の主張について
上記相違点3に関連し、申立人は申立書において
「甲第2号証には、・・・準耐火構造の間仕切壁として、 1対の上張材の間に下張材を配置した間仕切壁が記載されている。また、甲第2号証には、下張材が火山性ガラス質複層板からなること、及び上張材がせっこうボードからなることが記載されている。
甲第1号証及び甲第2号証は、いずれも木製部材に耐火性を付与する技術に関するものであるから、甲2記載事項に基づき、甲1発明における耐火材料部として、耐火性を向上させるために、耐火材料部を内側石膏ボード、火山性ガラス質複合板及び外側石膏ボードを備えた積層構造とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。」(申立書11頁17~25行)
と主張している。
しかしながら、上記主張を参照しても、甲第2号証記載の、「下張材」が「火山性ガラス質複層板」、「上張材」が「せっこうボード」という2層の配置から、相違点3に係る本件訂正発明3の構成である内側と外側が石膏ボード、中間耐火板が火山性ガラス質複合板という3層の配置が導かれることが説明されるものではない。
以上のように、申立人の主張を採用することはできない。
ウ 小括
以上のとおりであるから、その余の相違点について検討するまでもなく、本件訂正発明3は、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえず、また、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるともいえないので、本件訂正発明3に係る特許は、同法第113条第2号に該当せず、取消理由及び特許異議申立理由により取り消すことはできない。
2 取消理由通知を通知しなかった特許発明についての判断
取消理由を通知しなかった本件特許発明2について、以下検討する。
本件特許発明2と甲1発明を対比すると、本件訂正発明3(本件特許発明2を引用している)と甲1発明との対比である上記1(1)の対比(ア~カ、ク)と同様に、本件特許発明2と甲1発明とは、
[一致点2]
「建築物の主要構造部を構成する木製芯材と、木製芯材の表面を被覆するように設けられた耐火材料部とを備え、
木製芯材は、木製芯材の互いに隣り合う側面と側面との境界となる隅角部を除去した断面欠損部を備え、
耐火材料部は、木製芯材の表面を被覆するように設けられた内側石膏ボードと、内側石膏ボードの表面を被覆するように設けられた中間耐火板と、中間耐火板の表面を被覆するように設けられた外側石膏ボードとを備えた積層構造であり、
内側石膏ボードの表面から木製芯材の内側に到達する金属製止着部材と無機質系接着剤とによって内側石膏ボードと木製芯材とが接合され、中間耐火板の表面から内側石膏ボードの内側に到達する金属製止着部材と接着剤とによって中間耐火板と内側石膏ボードとが接合され、外側石膏ボードの表面から中間耐火板の内側に到達する金属製止着部材と接着剤とによって外側石膏ボードと中間耐火板とが接合され、耐火材料部で囲まれた断面欠損部に無機質系接着剤が充填された、
耐火主要構造部。」
の点で一致し、上記1(1)の相違点1ないし3と同じ点で相違する。
そして上記1(2)における判断と同じく、本件特許発明2は、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえず、また、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるともいえないので、本件特許発明2に係る特許は、同法第113条第2号に該当せず、特許異議申立理由により取り消すことはできない。
第7 むすび
以上のとおり、取消理由通知に記載した取消理由及び申立人が申し立てた特許異議申立理由及び証拠によっては、本件特許発明2及び本件訂正発明3に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件特許発明2及び本件訂正発明3に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
そして、請求項1は、本件訂正により削除された。これにより、請求項1に係る特許についての特許異議の申立ては、当該申立てに係る特許が存在しないこととなったため、不適法な特許異議の申立てであって、その補正をすることができないものであるといえるから、特許法120条の8第1項で準用する同法135条の規定により却下すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
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2022-700572