特許異議申立
2022-700530
イチゴ苗の生育システム及び生育方法
- 審判番号
- 2022-700530
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2021-163461
- 登録番号
- 6981707
- 請求日
- 2022年06月16日
- 審決日
- 2022年12月16日
- 公報発行日
- 2023年04月28日
- 結論
- 請求成立(取消)
- 当事者
- 【権利者】株式会社恵葉&菜健康野菜
- 【権利者代理人】中村 雅典
- 【異議申立人】藤田 幸三郎
- 審判長/審判官
- 審判長 住田 秀弘
- 審判官 佐藤 美紗子
- 審判官 土屋 真理子
- 分類
- P1651.113-ZC (A01G) / P1651.121-ZC (A01G)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第6981707号発明「イチゴ苗の生育システム及び生育方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第6981707号の請求項1ないし5に係る特許を取り消す。
同請求項6ないし8に係る特許を維持する。
理由
理 由
1 手続の経緯
特許第6981707号の請求項1ないし8に係る特許についての出願は、令和3年10月4日に出願され、令和3年11月22日にその特許権の設定登録がされ、令和3年12月17日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許について、令和4年6月16日に特許異議申立人藤田幸三郎(以下「申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、当審は、令和4年9月8日付けで取消理由を通知し、期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが、特許権者は応答しなかった。
2 本件特許発明
本件特許の請求項1ないし8に係る発明(以下、「本件特許発明1」等といい、全体を「本件特許発明」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1ないし8に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。
「【請求項1】
所定深さの養液が湛えられる養液槽で、親株が栽培される親株栽培用プランターと、
前記親株栽培用プランターの側方に配置されて所定深さの水が湛えられる水槽で、且つ水が循環させられており、親株から伸長するランナーに発生した子株が水に浸されることにより栽培される子株栽培用プランターと、を備えることを特徴とするイチゴ苗の生育システム。
【請求項2】
所定深さの養液が湛えられる横長の養液槽で、親株が栽培される親株栽培用プランターと、
前記親株栽培用プランターと平行に配置されて所定深さの水が湛えられる横長の水槽で、且つ水が長手方向に循環させられており、親株から伸長するランナーに発生した子株が水に浸されることにより栽培される子株栽培用プランターと、を備えることを特徴とするイチゴ苗の生育システム。
【請求項3】
所定深さの養液が湛えられる横長の養液槽で、親株が栽培される親株栽培用プランターと、
前記親株栽培用プランターの短手方向の両側に前記親株栽培用プランターと略平行に配置されて、それぞれ所定深さの水が湛えられる横長の水槽で、且つ水が長手方向に循環させられており、親株から伸長するランナーに発生した子株が水に浸されることにより栽培される子株栽培用プランターと、を備えることを特徴とするイチゴ苗の生育システム。
【請求項4】
所定深さの養液が湛えられる養液槽で、親株が栽培される親株栽培用プランターと、
前記親株栽培用プランターの側方に配置されて所定深さの水が湛えられる水槽で、且つ水が循環させられており、親株から伸長するランナーに発生した子株が水に浸されることにより栽培される子株栽培用プランターと、
前記親株栽培用プランターで栽培される親株と前記子株栽培用プランターで栽培される子株に光を照射する照明と、を備え、
前記親株栽培用プランター及び前記子株栽培用プランターと、前記照明を上下方向に交互に積層配置してなることを特徴とするイチゴ苗の生育システム。
【請求項5】
所定深さの養液が湛えられる養液槽で、親株が栽培される親株栽培用プランターと、
親株から伸長するランナーに発生する子株を定着させるスポンジ培地と、 前記親株栽培用プランターの側方に配置されて所定深さの水が湛えられる水槽で、且つ水が循環させられており、子株を定着させたスポンジ培地が設置される子株栽培用プランターと、を備えることを特徴とするイチゴ苗の生育システム。
【請求項6】
請求項5記載のイチゴ苗の生育システムを用いるイチゴ苗の生育方法において、
前記スポンジ培地に子株を定着させる際には、前記スポンジ培地が水中に浸されるように吸水させて設置し、
子株の根が前記培地スポンジの下側から発出した後は、前記スポンジ培地と前記子株栽培用プランターの底面との隙間を広げるように、前記スポンジ培地の下側に突起体を取り付けることを特徴とするイチゴ苗の生育方法。
【請求項7】
請求項5記載のイチゴ苗の生育システムを用いるイチゴ苗の生育方法において、
前記スポンジ培地に子株を定着させる際には、前記スポンジ培地が水中に浸されるように吸水させて設置し、
子株の根が前記培地スポンジの下方に発出した後は、前記スポンジ培地と前記子株栽培用プランターの底面との隙間を広げるように、前記スポンジ培地と前記子株栽培用プランターの底面との間に介在物を設置することを特徴とするイチゴ苗の生育方法。
【請求項8】
請求項5記載のイチゴ苗の生育システムを用いるイチゴ苗の生育方法において、
前記スポンジ培地に子株を定着させる際には、前記スポンジ培地が水中に浸されるように吸水させて設置し、
子株の根が前記培地スポンジの下側から発出した後は、前記スポンジ培地を水に浮かべられるように脱水することを特徴とするイチゴ苗の生育方法。」
3 取消理由の概要
請求項1ないし5に係る特許に対して、当審が令和4年9月8日付けの取消理由通知において特許権者に通知した取消理由の概要は、次のとおりである。
(1)本件特許発明1及び2は、甲第1号証(特公平3-8170号公報)に記載された発明(以下「甲1発明」という。)であるか、甲1発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(2)本件特許発明3ないし5は、甲1発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
4 引用文献の記載
(1)甲第1号証
上記取消理由通知において引用され、本件特許の出願前に頒布された刊行物である甲第1号証には、次の記載がある(下線は当審で付した。以下同様。)。
(ア)「以下、本発明に係るいちごの育苗装置の構成について説明する。
第1図及び第2図に示すように、本発明の要部である水耕ベツド1の養液パレツト部2と水パレツト部3とは、後述するように、それぞれ別体として構成され、それぞれ地面Eに立設された2組の支持体4,5に支えられている。」(第4欄第11~17行)
(イ)「第4図に示すように、水耕ベツド1は、いちごの親株14が植えられる養液パレツト部2と、親株14から伸びてきたランナ15に派生する多数の子株16を育苗するための幅の広い水パレツト部3とによつて構成されているが、本実施例では、両パレツト部2,3は別体として形成されている。
まず、支持体4の各支持ビーム7の間には、発泡ポリスチレンよりなる断熱性の床板17が、長手方向に複数個連続して載置され、支持体4の下り勾配に沿つた約1.5%の傾斜を有する水耕ベツド1の養液パレツト部2が構成されている。」(第5欄第8~19行)
(ウ)「次に、前記養液パレツト部2の隣に設置されている水パレツト部3について説明する。
支持体5の各支持脚9に取付けられたブラケツト13には、発泡ポリスチレンよりなる断熱性の床板23が、それぞれ載置されてボルトで止められている。これらの床板23は、互いに連結されて前記養液パレツト部2とほぼ同じ長さに形成されており、支持体5の下り勾配に沿つた約1.5%の傾斜を有する水耕ベツド1の水パレツト部3を構成している。」(第6欄第8~17行)
(エ)「次に、前記養液パレツト部2及び水パレツト部3にそれぞれ養液N及び水を供給するための手段について説明する。
第1図及び第2図に示すように、傾斜して設置された養液パレツト部2の床板17の内、最も底所に位置する床板17aには、流下してくる養液Nをせき止めるための壁板17bが設けられている。この床板17aの凹段部には、排液管27が接続連通されており、該排液管27を通つて流れ落ちる養液Nは、案内管28を経て、環境温度の低い地下に設置した養液タンク29に集められるように構成されている。
また、床板17a下方の地上には、ポンプ30が設置されている。ポンプ30の吸込口は、地中配管31を介して、前記養液タンク29に接続連通されており、吐出口は、地中配管32の一端部に接続連通されている。該地中配管32は、養液パレツト部2の長手方向に沿つて埋設されており、その他端部は、最も高所に位置する床板17cの近傍で地上にあらわれ、アルミ蒸着シート21をくぐつて該床板17cの凹段部上方に延設されている。そして、床板17cの流水面に近接した地中配管32の該他端部には、外周面下部に多数の供給孔が設けられると共に、両端が閉塞された構造の散液管33が設けられている。
従つて、ポンプ30を駆動させれば、養液タンク29中の養液Nは、ポンプ30、地中配管32、散液管33を経て養液パレツト部2の上流に供給され、その後、養液Nは、流水面を流れ落ち、排液管27を通つて再び養液タンク29に循環することになる。
図示はしないが、水パレツト部3にも、以上説明した養液の供給手段と略同様の水循環供給手段が設けられているが、気温が高く、循環水の温度を所定値以下に保つことができない時は、水温の低い地下水を流しつぱなしにして、子株16に水を供給するようにしてもよい。」(第6欄第43行~第7欄第35行)
(オ)「次に、このように養液Nの循環している養液パレツト部2に、いちごの親株14を移植する。すなわち、親株14の茎及び根を、アルミ蒸着シート21の切れ目22から差込み、根の部分が、水路シート19上を流れ落ちてくる養液Nの層に、育成に適した状態で浸されるようにする。」(第8欄第20~25行)
(カ)「このとき、前記養液パレツト部2と同様に、水パレツト部3の供給手段も駆動させておき、水パレツト部3の水路シート19表面には、所定温度以下に保たれた水の膜が、循環して流れ落ちているようにする。」(第8欄第34~38行)
(キ)第3図は次のものである。
第3図
[図:0001396284000001.jpg]
(ク)第3図より、養液パレット部2と水パレット部3の外形は、略同じ長さの長辺を有する長方形であり、水パレット部2と養液パレット部3とは、その短辺方向に並んで略平行に配置されていることが看取される。
(ケ)以上より、甲第1号証には次の甲1発明が記載されているものと認められる。
(甲1発明)
「水耕ベツドを要部とするいちごの育苗装置であって、
水耕ベツドは、親株の茎及び根を、アルミ蒸着シートの切れ目から差込み、根の部分が、水路シート上を流れ落ちてくる養液の層に、育成に適した状態で浸されるようにする、いちごの親株が植えられる養液パレツト部と、前記養液パレツト部と同様に、水パレツト部の供給手段も駆動させておき、水パレツト部の水路シート表面には、所定温度以下に保たれた水の膜が、循環して流れ落ちているようにする、親株から伸びてきたランナに派生する多数の子株を育苗するための幅の広い水パレツト部とによつて構成され、
両パレツト部は、それぞれ別体として構成され、それぞれ地面に立設された2組の支持体に支えられており、
支持体の各支持ビームの間には、発泡ポリスチレンよりなる断熱性の床板が、長手方向に複数個連続して載置され、支持体の下り勾配に沿つた約1.5%の傾斜を有する水耕ベツドの養液パレツト部が構成されており、
支持体の各支持脚に取付けられたブラケツトには、発泡ポリスチレンよりなる断熱性の床板が、それぞれ載置されてボルトで止められており、これらの床板は、互いに連結されて前記養液パレツト部とほぼ同じ長さに形成されており、支持体の下り勾配に沿つた約1.5%の傾斜を有する水耕ベツドの水パレツト部を構成しており、
水パレツト部に、水循環供給手段が設けられており、
養液パレット部と水パレット部の外形は、略同じ長さの長辺を有する長方形であり、水パレット部と養液パレット部とは、その短辺方向に並んで略平行に配置されている、
いちごの育苗装置。」
(2)甲第2号証
上記取消理由通知において引用され、本件特許の出願前に頒布された刊行物である甲第2号証(特開2007-167033号公報)には、次の記載がある。
(ア)「【0007】
(実施例1)
本発明の一実施の形態を図面に基づいて、詳細に説明する。
養液栽培ハウス1内に、苺の親株Aから伸びたランナーから発生した子株を育苗する育苗装置2と苺の養液栽培装置3とが設けられている。
【0008】
育苗装置2は、正面視で台形状に枠組した支持枠4に目抜き鋼板(多数の孔が開いている鋼板)よりなる載置台5…を6段固定し、最上段の載置台5上に苺の親株用プランター6…が一列に多数載置されている。そして、上から2段目~6段面(当審注:「6段面」は「6段目」の誤記と認める。)の載置台5…の各々の左右端部に内部にビニール製の内径が6~9cmの育苗用ポット7(底面には給水及び排水用の孔があいている)を多数収納できる子株用トイ8a,8b,8c,8d,8eを載置している。」
(イ)図2及び図4は次のものである。
【図2】
[図:0001396284000002.jpg]
【図4】
[図:0001396284000003.jpg]
(ウ)上記(ア)及び(イ)より、最上段の載置台5上に苺の親株用プランター6…が一列に多数載置され、最上段の載置台5及び苺の親株用プランター6…の短手方向の両側に位置する上から2段目~6段目の載置台5…の各々の左右端部に内部にビニール製の内径が6~9cmの育苗用ポット7(底面には給水及び排水用の孔があいている)を多数収納できる子株用トイ8a,8b,8c,8d,8eを載置しているといえる。
(エ)以上より、甲第2号証には次の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されているものと認められる。
(甲2発明)
「正面視で台形状に枠組した支持枠に目抜き鋼板よりなる載置台を6段固定し、最上段の載置台5上に苺の親株用プランターが一列に多数載置され、最上段の載置台及び苺の親株用プランターの短手方向の両側に位置する上から2段目~6段目の載置台の各々の左右端部に内部にビニール製の内径が6~9cmの育苗用ポットを多数収納できる子株用トイを載置している、苺の親株から伸びたランナーから発生した子株を育苗する育苗装置。」
(3)甲第3号証
上記取消理由通知において引用され、本件特許の出願前に頒布された刊行物である甲第3号証(特開2018-85966号公報)には、次の記載がある。
(ア)「【0013】
以下、本発明の育苗方法に使用する育苗装置を図1と図2に示す。以下、
イチゴの育苗方法に詳述する。ただ、本発明の育苗方法は育苗する植物をイチゴに特定するものでなく、親株からランナーが伸びて子株を苗に生育できる他の全ての植物の育苗方法として利用できる。
【0014】
以上の育苗装置は、水平に配置させて複数の親株1が長手方向に並べて植え付けられる親株栽培床2と、親株栽培床2の下方に、親株栽培床2と平行な姿勢で上下に離して多段に配設され、かつ親株栽培床2の親株1から延びるランナー3を介して成長する子株4を植え付けする培地を充填してなる子株用栽培床5と、親株栽培床2及び子株用栽培床5を水平姿勢に配置する支柱フレームとを備える。」
(イ)図1は次のものである。
【図1】
[図:0001396284000004.jpg]
(ウ)図1より、子株用栽培床5は親株栽培床2の左右両側に配設されている点が看取される。
(エ)以上より、甲第3号証には次の発明(以下「甲3発明」という。)が記載されているものと認められる。
(甲3発明)
「イチゴの育苗方法に使用する育苗装置であって、
水平に配置させて複数の親株が長手方向に並べて植え付けられる親株栽培床と、親株栽培床の下方に、親株栽培床と平行な姿勢で上下に離して多段に配設され、かつ親株栽培床の親株から延びるランナーを介して成長する子株を植え付けする培地を充填してなる子株用栽培床と、親株栽培床及び子株用栽培床を水平姿勢に配置する支柱フレームとを備え、
子株用栽培床は親株栽培床の左右両側に配設されている、イチゴの育苗方法に使用する育苗装置。」
(4)甲第4号証
上記取消理由通知において引用され、本件特許の出願前に頒布された刊行物である甲第4号証(特開2014-82995号公報)には、次の記載がある。
(ア)「【0009】
植物栽培装置は、空気調和システムと、栽培棚11とを含んで構成される。この栽培棚11は、複数段の棚を有していて、各段の棚上には、植栽された植物12が載置される。図1では、栽培棚11は、薄膜水耕(NFT)用の多段型栽培棚とされている。ここで、NFTとは、約1%の緩やかな傾斜をもつ棚上に、植物の栄養分となる養液を薄く少量ずつ流す水耕栽培である。なお、NFTに限定されるものではなく、養液を溜め、その養液のみで栽培を行う湛液型水耕(DFT)にも適用できるものである。
【0010】
例えば、栽培棚11の各段の棚上には、複数の樋13が隣接して、あるいは一定の間隔で平行に並ぶように、上記角度で傾斜して載置され、複数の樋13上に、互いに隣接するように複数の栽培トレイ14が載置される。樋13としては、例えば、住宅建築において用いられる雨樋を採用することができる。雨樋は、筒をその長手方向に半分に切断した形状を有するものである。」
(イ)「【0013】
栽培トレイ14が載置される棚の1段上の棚の下面には、植物12の葉に光を照射するための照明装置15が取り付けられる。照明装置15は、光を照射することができればいかなる光源を用いてもよいが、例えば、蛍光灯、発光ダイオード(LED)を用いることができる。消費電力を少なくし、光源から発生する熱を極力少なくすることができる点で、LEDが好ましい。照明装置15から発生した熱を植物12が受けると、熱による障害を引き起こすからである。」
(ウ)「【0038】
本発明の植物栽培装置により栽培することができる植物12としては、サラダ菜、サニーレタス、リーフレタス、チンゲン菜、小松菜、スイートバジル、ニチニチソウ、トマト、イチゴ、ねぎ等を挙げることができる。なお、これは一例であるので、これに限られるものではない。また、養液としては、植物の成長に必要とされる窒素、リン酸、カリウム、カルシウム、マグネシウム等を含む水溶液を挙げることができる。各物質の濃度は、栽培する植物に応じて適宜決定することができる。」
(エ)図1は次のものである。
【図1】
[図:0001396284000005.jpg]
(オ)上記(イ)の記載をふまえると、図1より、栽培トレイ14と照明装置15が交互に積層配置されている点が看取される。
(カ)以上より、甲第4号証には次の発明(以下「甲4発明」という。)が記載されているものと認められる。
(甲4発明)
「複数段の棚を有していて、各段の棚上には、植栽された植物が載置され、薄膜水耕(NFT)用の多段型栽培棚とされている栽培棚を含んで構成され、
栽培棚の各段の棚上には複数の樋が載置され、複数の樋上に互いに隣接するように複数の栽培トレイが載置されており、
栽培トレイが載置される棚の1段上の棚の下面には、植物の葉に光を照射するための照明装置が取り付けられ、
栽培トレイと照明装置が交互に積層配置されている、
栽培することができる植物としてイチゴを挙げることができる、植物栽培装置。」
(5)甲第5号証
上記取消理由通知において引用され、本件特許の出願前に頒布された刊行物である甲第5号証(特開2019-41694号公報)には、次の記載がある。
(ア)「【0014】
図1に示すように、植物栽培装置2は、複数の支柱4と、支柱4間にわたって架設される複数の梁6を備えた骨組みから成る多段式の構造物である。この植物栽培装置2においては、支柱4と梁6によって構成された複数の単位空間8が層状に積層されている。
【0015】
ここで、各単位空間8の底面には、植物9を栽培するための栽培パネル10が配置され、各栽培パネル10の下方には、水耕栽培を行う際の養液が流れる栽培プール11が備えられている。
【0016】
また、単位空間8の上方には、人工光を照射する照明装置12を固定する照明カセット13が配置されている。照明カセット13は、図2に示すように、照明装置12の光の反射板としての役割を有する板状部分13aと、板状部分13aに固定された横桟13bからなり、照明装置12は、横桟13bを介して照明カセット13に固定される。また、照明カセット13の上面には、照明装置12の電源コードなどが配置される。また、照明カセット13は、植物栽培装置2から脱着可能に設計されている。これは、照明装置12の交換や、照明の条件を変更する時などに、取り外して作業できるようにするためである。」
(イ)「【0054】
従って、対象となる植物9としては葉菜類、果菜類、根菜類、果樹類、穀類、コケ類、シダ類、観葉植物類、薬草類等が挙げられる。 葉菜類としては、アブラナ科のミズナ、コマツナ、カラシミズナ、カラシナ、ワサビナ、クレソン、ハクサイ、ツケナ類、チンゲンサイ、キャベツ、カリフラワー、ブロッコリー、メキャベツ、ルッコラ、ピノグリーンなど;キク科のレタス類、サラダナ、シュンギク、フキ、ロロロッサ、レッドロメイン、チコリーなど;ユリ科のタマネギ、ニンニク、ラッキョウ、ニラ、アスパラガスなど;セリ科のパセリ、イタリアンパセリ、ミツバ、セルリー、セリ、ディルなど;シソ科のシソ、バジル、ローズマリーなど;ネギ科のネギなど;ウコギ科のウドなど;ショウガ科のミョウガなどが挙げられる。」
(ウ)「【0057】
果菜類としては、ウリ科のメロン、キュウリ、カボチャ、スイカ、シロウリ、マクワウリ、ニガウリ、ズッキーニ、トウガンなど;マメ科のサヤインゲン、ソラマメ、サヤエンドウ、エダマメなど;ナス科のトマト、ナス、ピーマン、シシトウ、トウガラシ、パプリカなど;バラ科のイチゴなど;アオイ科のオクラなど;イネ科のトウモロコシなどが挙げられる。」
(エ)図1は次のものである。
【図1】
[図:0001396284000006.jpg]
(オ)図1より、栽培パネル10と照明カセット13が交互に積層配置されている点が看取される。
(カ)以上より、甲第5号証には次の発明(以下「甲5発明」という。)が記載されているものと認められる。
(甲5発明)
「複数の支柱と、支柱間にわたって架設される複数の梁を備えた骨組みから成る多段式の構造物であって、支柱と梁によって構成された複数の単位空間が層状に積層されており、
各単位空間の底面には、植物を栽培するための栽培パネルが配置され、各栽培パネルの下方には、水耕栽培を行う際の養液が流れる栽培プールが備えられており、
単位空間の上方には、人工光を照射する照明装置を固定する照明カセットが配置されており、
栽培パネルと照明カセットが交互に積層配置されている、
対象となる植物として果菜類が挙げられ、果菜類としてはイチゴが挙げられる植物栽培装置。」
(6)甲第7号証
上記取消理由通知において引用され、本件特許の出願前に頒布された刊行物である甲第7号証(特開2013-153691号公報)には、次の記載がある。
(ア)「【0020】
本発明を適用する植物栽培システムの一例を、図1(a)に正面図、図1(b)に側面図で示す。この植物栽培システム1は、コンテナや建屋内で使用されるものである。植物栽培システム1は、一例として、枠組みされたフレーム30に、上下2段の棚11を有しており、各棚11で植物を栽培可能になっている。また、フレーム30の上には、制御ユニット20が配置されていて、各棚11における栽培は各々独立して制御ユニット20に制御される。フレーム30に設けられた棚11の数は1段であってもよく、2段以上の複数段であってもよい。各棚11に備えられた構成は同様であるので、以下では、1つの棚11の構成について説明する。
【0021】
棚11には、培地台15、植物栽培用の照明4、照明の昇降装置2、ビーム光源6、受光器7、及び光量センサ5が備えられている。
【0022】
棚11は、地面と水平になるようにフレーム30に固定されている。棚11の上には、植物90の培地となる複数の培地台15が、等間隔の列(例えば5列)となるように載置されている。培地台15は、一例として、水漏れしない上部開口容器に吸水性スポンジ培地を入れたものである。培地台15には、図示しないが、養液を循環させるための養液タンク及び循環ポンプが配管を介して接続されている。」
(イ)以上より、甲第7号証には次の発明(以下「甲7発明」という。)が記載されているものと認められる。
(甲7発明)
「枠組みされたフレームに、上下2段の棚を有しており、各棚で植物を栽培可能になっており、また、フレームの上には、制御ユニットが配置されていて、各棚における栽培は各々独立して制御ユニットに制御され、
棚には、培地台、植物栽培用の照明、照明の昇降装置、ビーム光源、受光器、及び光量センサが備えられており、
棚は、地面と水平になるようにフレームに固定されており、棚の上には、植物の培地となる複数の培地台が、等間隔の列(例えば5列)となるように載置されており、培地台は、水漏れしない上部開口容器に吸水性スポンジ培地を入れたものである、
植物栽培システム。」
(7)甲第8号証
上記取消理由通知において引用され、本件特許の出願前に頒布された刊行物である甲第8号証(特許第6864138号公報)には、次の記載がある。
(ア)「【0019】
本実施形態の固形培地(以下、固形培地10)は、図1に示すように植物Pの水耕栽培に用いられ、具体的に説明すると、植物Pの種子を発芽させるための発芽床として、あるいは、植物Pの苗を育成するための育成床(苗床)として利用される。植物Pは、例えば、栽培後に収穫された後に商品として出荷される植物であり、具体的には野菜等の可食用植物又は花卉等の鑑賞用植物である。
【0020】
固形培地10は、その上部にて植物Pを栽培し、栽培期間中、固形培地10の下部が水又は養液(以下、養液等W)に浸される。より詳しく説明すると、養液等Wが溜められた不図示の栽培パレット内に、複数の固形培地10が所定方向に整列されて配置されている(図1では、図示の便宜上、一つの固形培地10のみが描かれている)。各固形培地10の下部は、養液等Wに浸かっており、養液等Wは、固形培地10内に浸み込むと、毛管現象及び植物Pの吸上げ力等によって上昇し、固形培地10の上部で植物Pに供給(吸収)される。」
(イ)「【0022】
固形培地10は、図2に示すように所定の立体形状に成形された多孔質材料からなり、吸水性(吸液性)を有し、例えばスポンジ、発泡体又は繊維マット等によって構成されている。固形培地10の形状は、立体形状であれば特に限定されないが、例えば、立方体、直方体、柱形状(例えば円柱形状)、半球形状及び樽型形状等が好ましい。固形培地10のサイズ(すなわち、XYZの各方向における長さ)は、特に限定されず、固形培地10上で栽培する植物Pの苗の大きさ及び個数、あるいは固形培地10に播かれる植物Pの種子数に応じて適宜設計すればよい。
なお、以下では、一辺が30mmである立方体形状の固形培地10を例に挙げて説明することとする。」
(ウ)図1は次のものである。
【図1】
[図:0001396284000007.jpg]
(エ)図1より、固定培地10は「養液等W」に浮かんで設置されていることが看取される。
(オ)以上より、甲第8号証には次の発明(以下「甲8発明」という。)が記載されているものと認められる。
(甲8発明)
「植物の水耕栽培に用いられる、
固形培地であって、
その上部にて植物を栽培し、栽培期間中、その下部が水又は養液に浸されかつ浮かんで設置され、
スポンジによって構成されている、
固形培地。」
(8)甲第10号証
本件特許の出願前に頒布された刊行物である甲第10号証(特開2019-162095号公報)には、次の記載がある。
(ア)「【0001】
本発明は、食用植物を水耕栽培させる植物育成床において、藻を付着させにくい植物育成床、および予め植物を発芽させる発芽床と植物育成床とからなる植物育成床セットに関する。より詳細には、藻を付着させにくくかつ除去しやすく、軽く、移動容易であることに加えて、耐久性に優れた植物育成床および植物育成床セットに関する。」
(イ)「【0049】
植物育成床1は、一枚の樹脂板が真空成形により成形されると共に、鍔部10の外端部と鉢部11の下方の孔とを、刃型により打ち抜き加工させることにより成形されている。植物育成床1の外形は、短辺が600mmとされ、長辺が900mmとされ、厚さが30mmとされている。鍔部10が周囲側壁12の下端部から側方に8mm突出されている。」
(ウ)「【0055】
ここで、予め植物を発芽させる発芽床20について、図3を参照して簡単に説明する。植物の種をまく発芽床20は、ウレタンスポンジ等の連続気泡発泡体とされる(図3(A)図参照)。発芽床20の形状は、平面視で一辺の長さが30mmの略正方形形状とされている。発芽床20の天面の中央には略半球形状の凹部22が備えられ、まかれた植物の種を保持する。更に、前記凹部22には、植物の根が培養液に向けて成長されやすいように、凹部22の底部から発芽床の底面まで貫通された十字の切込み23が備えられている。この発芽床20と植物育成床1とが植物育成床セットとされる。」
(エ)「【0057】
鉢部11において、上方側の開放部16の直径は35mmとされ、発芽床20の一辺の長さよりも長いため、発芽床20を鉢部に容易に嵌め込むことができる(図2(B)図参照)。一方、下方側の開放部17の直径は28mmとされ、発芽床20の一辺の長さよりも短くされ、鉢部全体は下方が窄まった逆円錐台形状をなしている。そのため、鉢部11の表面が、藻が付着しにくいように平滑にされていても、発芽床20が培養液201中に抜け落ちることがない(図2(B)図参照)。また、発芽床20が鉢部11に嵌め込まれると、ウレタンスポンジの復元力により、発芽床20が鉢部の側壁14に接して安定された状態で保持される(図2(B)図参照)。発芽床20の高さは、鉢部11の高さと略同一とされ、食用植物300の茎が上に向かって成長できるように保持される。
【0058】
各々の鉢部11に食用植物が定植された後には、植物育成床1が培養液槽200に浮かべられ、食用植物300が育成される(図2(B)図参照)。植物育成床1が培養液槽200に浮かべられる際には、周囲側壁12の一部が培養液に没して、空気溜空間15に空気が溜められるように培養液槽に浮かべられる。培養液槽に浮かべられた植物育成床1は、鉢部11に保持された食用植物の重量により、変形抑制手段をなす鍔部10が培養液201に沈んだ状態となる(図2(B)図参照)。」
(オ)以上より、甲第10号証には次の発明(以下「甲10発明」という。)が記載されているものと認められる。
(甲10発明)
「一枚の樹脂板が真空成形により成形されると共に、鍔部の外端部と鉢部の下方の孔とを、刃型により打ち抜き加工させることにより成形されており、
ウレタンスポンジ等の連続気泡発泡体とされる発芽床が鉢部に嵌め込まれ、
各々の鉢部に食用植物が定植された後には、培養液槽に浮かべられ、食用植物が育成される、
植物育成床。」
(9)甲第11号証
本件特許の出願前に頒布された刊行物である甲第11号証(特開2019-115261号公報)には、次の記載がある。
(ア)「【0025】
この第1実施形態の植物栽培装置は、図1,図2に示すように、植物Pを栽培するための養液(水と肥料を混ぜた混合液)を貯留する貯留部1と、貯留部1から供給された養液により植物Pを栽培する栽培部2と、植物Pが搭載される植物搭載部3と、貯留部1の内部と栽培部2の内部とを連通する連通部4と、貯留部1から連通部4を介して栽培部2の内部に流入した養液を吸い込んで貯留部1に戻す液ポンプ5と、液ポンプ5の吐出側に一端が接続され、他端が貯留部101内に配置された戻り配管6とを備える。上記連通部4は、栽培部2の側壁の底2a側に設けられた貫通孔である。」
(イ)「【0027】
また、上記栽培部2は、上面が開口する直方体形状の箱形容器であり、栽培部2の底2aが略水平になるように、栽培部2の大部分が貯留部1内に配置されている。また、栽培部2は、底2aが貯留部1の底1aよりも所定間隔あけて上方に位置するように貯留部1に固定されている。
【0028】
また、植物搭載部3は、栽培部2内の底2aから間隔をあけて配置されている。また、植物搭載部3は、発泡樹脂製の長方形状のフロート板31と、フロート板31の底面31bから下方に向かって立設された発泡樹脂製の支持体32,32とを有する。上記フロート板31と支持体32,32の材料は、発泡樹脂に限らず、養液に浮く材料であればよい。なお、支持体32,32の底部には、フロート板31の長手方向に沿って溝や貫通孔を設けて、連通部4側から液ポンプ5側への養液の流路を確保している。
【0029】
また、植物搭載部3のフロート板31の中央に設けられた植栽孔31aに、植物Pが植栽されたキャリア10を差し込んでいる。このキャリア10としては、一般的に水耕栽培に使用されるキャリアであればよく、ウレタン、ロックウール、綿状素材、スポンジなどが用いられる。」
(ウ)「【0040】
栽培部2内を流れる薄膜状の養液の深さは、栽培する植物Pの品種に応じて適宜設定すると共に、植物Pの成長する根の形態に合わせて、水中根と空中根との割合が最適になるように植物搭載部3の支持体32,32の高さを調整する。」
(エ)以上より、甲第11号証には次の発明(以下「甲11発明」という。)が記載されているものと認められる。
(甲11発明)
「植物を栽培するための養液(水と肥料を混ぜた混合液)を貯留する貯留部と、貯留部から供給された養液により植物を栽培する栽培部と、植物が搭載される植物搭載部とを備える、
植物栽培装置であって、
栽培部は、上面が開口する直方体形状の箱形容器であり、
栽培部の大部分が貯留部内に配置されており、
植物搭載部は、栽培部内の底から間隔をあけて配置されており、
植物搭載部は、発泡樹脂製の長方形状のフロート板と、フロート板の底面から下方に向かって立設された発泡樹脂製の支持体とを有し、
植物搭載部のフロート板の中央に設けられた植栽孔に、植物が植栽されたキャリアを差し込んでおり、
植物の成長する根の形態に合わせて、水中根と空中根との割合が最適になるように植物搭載部の支持体の高さを調整する、
植物栽培装置。」
5 当審の判断
(1)取消理由通知に記載した取消理由について
ア 本件特許発明1について
(ア)対比
本件特許発明1と甲1発明とを対比する。
a 甲1発明の「養液パレット部」、「親株」、「水パレツト部」、「ランナ」、「子株」、「いちごの育苗装置」は、本件特許発明1の「養液槽」及び「親株が栽培される親株栽培用プランター」、「親株」、「水槽」及び「子株栽培用プランター」、「ランナー」、「子株」、「イチゴ苗の生育システム」に相当する。
b 甲1発明の「いちごの親株が植えられる養液パレツト部」が「親株の茎及び根を、アルミ蒸着シートの切れ目から差込み、根の部分が、水路シート上を流れ落ちてくる養液の層に、育成に適した状態で浸されるようにする」ことは、本願発明1の「養液槽」に「所定深さの養液が湛えられる」ことに相当する。
c 甲1発明の「親株から伸びてきたランナに派生する多数の子株を育苗するための幅の広い水パレツト部」が「前記養液パレツト部と同様に、水パレツト部の供給手段も駆動させておき、水パレツト部の水路シート表面には、所定温度以下に保たれた水の膜が、循環して流れ落ちているようにする」ことは、本願発明1の「所定深さの水が湛えられる水槽で」ある「子株栽培用プランター」において、「親株から伸長するランナーに発生した子株が水に浸されることにより栽培される」ことに相当する。
d 甲1発明の「水パレット部は養液パレット部と平行に配置されている」点は、本件特許発明1の「子株栽培用プランター」は「前記親株プランターの側方に配置され」る点に相当する。
e 甲1発明の「水パレツト部に、水循環供給手段が設けられて」いる点は、本件特許発明1の「子株栽培用プランター」は「水が循環させられて」いる点に相当する。
f 以上より、本件特許発明1と甲1発明とは
「所定深さの養液が湛えられる養液槽で、親株が栽培される親株栽培用プランターと、
前記親株栽培用プランターの側方に配置されて所定深さの水が湛えられる水槽で、且つ水が循環させられており、親株から伸長するランナーに発生した子株が水に浸されることにより栽培される子株栽培用プランターと、を備えるイチゴ苗の生育システム。」
である点で一致し、相違点はない。
仮に相違点があったとしても、甲1発明に接した当業者であれば、本件特許発明1に係る発明を容易に発明できたものと認められる。
(イ)小括
以上のとおりであるから、本件特許発明1は、甲第1号証に記載された発明であるか、甲1発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
イ 本件特許発明2について
(ア)対比
本件特許発明2と甲1発明を対比する。
a 本件特許発明2は、本件特許発明1の「養液槽」を「横長」と限定し、同じく、「子株栽培用プランター」が「横長」であると限定し、「子株栽培用プランター」と「親株栽培用プランター」との配置を「平行」とし、その「水槽」が「横長」と限定する発明である。
よって、まずは当該限定について、甲1発明と対比する。
甲1発明の「養液パレット部と水パレット部」が「略同じ長さの長辺を有する長方形であ」ることは、本件特許発明2の「養液槽」が「横長」であり、「水槽」が「横長」であることに相当する。
また、甲1発明の「水パレット部」が「養液パレット部と平行に配置されている」ことは、本件特許発明2の「子株栽培用プランター」が「親株栽培用プランター」との配置を「平行」としていることに相当する。
b 本件特許発明2の上記限定された事項以外の構成については、上記ア(ア)のとおりであるから、本件特許発明2と甲1発明とは
「所定深さの養液が湛えられる横長の養液槽で、親株が栽培される親株栽培用プランターと、
前記親株栽培用プランターと平行に配置されて所定深さの水が湛えられる横長の水槽で、且つ水が長手方向に循環させられており、親株から伸長するランナーに発生した子株が水に浸されることにより栽培される子株栽培用プランターと、を備えるイチゴ苗の生育システム。」
である点で一致し、相違点はない。
仮に相違点があったとしても、甲1発明に接した当業者であれば、本件特許発明2に係る発明を容易に発明できたものと認められる。
(イ)小括
以上のとおりであるから、本件特許発明2は、甲第1号証に記載された発明であるか、甲1発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
ウ 本件特許発明3について
(ア)対比
本件特許発明3と甲1発明を対比する。
a 本件特許発明3は、本件特許発明1の「養液槽」を「横長」と限定し、同じく、同じく、「子株栽培用プランター」が「横長」であると限定し、「子株栽培用プランター」が「短手方向の両側に前記親株用プランターと略平行に配置させられて」いると限定する発明である。
よって、まずは当該限定について、甲1発明と対比する。
甲1発明の「養液パレット部と水パレット部」が「略同じ長さの長辺を有する長方形であ」ることは、本件特許発明3の「養液槽」が「横長」であり、「水槽」が「横長」であることに相当する。
また、甲1発明の「水パレット部と養液パレット部と」が、「その短辺方向に並んで略平行に配置されている」ことは、本件特許発明3の「子株栽培用プランター」が「前記親株用プランターと略平行に配置させられて」いることに相当する。
b 本件特許発明3の上記限定された事項以外の構成については、上記ア(ア)のとおりであるから、本件特許発明3と甲1発明とは
「所定深さの養液が湛えられる横長の養液槽で、親株が栽培される親株栽培用プランターと、
前記親株栽培用プランターの短手方向の側に前記親株栽培用プランターと略平行に配置されて、それぞれ所定深さの水が湛えられる横長の水槽で、且つ水が長手方向に循環させられており、親株から伸長するランナーに発生した子株が水に浸されることにより栽培される子株栽培用プランターと、を備えるイチゴ苗の生育システム。」
である点で一致し、以下の点で相違する。
(相違点1)
本件特許発明3の「子株栽培用プランター」は「前記親株栽培用プランターの短手方向の両側に」「配置されて」いるのに対し、甲1発明では「水パレット部」の「養液パレット部」に対する配置が短手方向に並んでいるものの「両側」とされていない点。
(イ)判断
上記相違点1について検討する。
甲2発明の「最上段の載置台5上に苺の親株用プランターが一列に多数載置され、最上段の載置台及び苺の親株用プランターの短手方向の両側に位置する上から2段目~6段目の載置台の各々の左右端部に内部にビニール製の内径が6~9cmの育苗用ポットを多数収納できる子株用トイを載置している」点は、本件特許発明3の「子株栽培用プランター」は「前記親株栽培用プランターの短手方向の両側に」「配置されて」いる点に相当する。
甲3発明の「子株用栽培床は親株栽培床の左右両側に配設されている」点は、本件特許発明3の「子株栽培用プランター」は「前記親株栽培用プランターの」「両側に」「配置されて」いる点に相当する。
よって、甲2発明、甲3発明に示されるように、親株栽培部の両側に子株栽培部を配置する構成は本願出願前に周知である。
甲第1号証の図3を参酌するに、1つの親株から2つのランナーが同方向にのびており、それぞれのランナーに発生した子株を図縦方向に並べて配置しているため、親株同士の間隔が離れていることから、当業者であれば、当該間隔を減ずることに着目して、甲1発明の「養液パレット部」のスペースを有効活用するため、上記周知技術を甲1発明に適用し、相違点1に係る構成に相当する構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。
(ウ)小括
以上のとおりであるから、本件特許発明3は、甲1発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
エ 本件特許発明4について
(ア)対比
本件特許発明4と甲1発明を対比する。
本件特許発明4において、本件特許発明1と同じ構成については、上記ア(ア)aないしd及びfに記載した相当関係と同様であるから、本件特許発明4と甲1発明とは
「所定深さの養液が湛えられる養液槽で、親株が栽培される親株栽培用プランターと、
前記親株栽培用プランターの側方に配置されて所定深さの水が湛えられる水槽で、且つ水が循環させられており、親株から伸長するランナーに発生した子株が水に浸されることにより栽培される子株栽培用プランターと、を備えたイチゴ苗の生育システム。」
である点で一致し、以下の点で相違する。
(相違点2)
本件特許発明4は「前記親株栽培用プランターで栽培される親株と前記子株栽培用プランターで栽培される子株に光を照射する照明」「を備え、前記親株栽培用プランター及び前記子株栽培用プランターと、前記照明を上下方向に交互に積層配置してなる」のに対し、甲1発明はそのような構成になっていない点。
(イ)判断
上記相違点2について検討する。
甲4発明の「栽培トレイが載置される棚の1段上の棚の下面には、植物の葉に光を照射するための照明装置が取り付けられ、栽培トレイと照明装置が交互に積層配置されている」点は、本件特許発明4の「栽培用プランター」と、「前記照明を上下方向に交互に積層配置してなる」点に相当する。
甲5発明の「単位空間の上方には、人工光を照射する照明装置を固定する照明カセットが配置されており、栽培パネルと照明カセットが交互に積層配置されている」点は、本件特許発明4の「栽培用プランター」と、「前記照明を上下方向に交互に積層配置してなる」点に相当する。
よって、甲4発明、甲5発明に示されるように、栽培用プランターと照明を上下方向に交互に積層配置する構成は、本願出願前に周知である。
甲1発明は「親株栽培用プランター」と「子株栽培用プランター」がそれぞれ鉛直方向に一層のみ配置されているが、これを多層配置として空間を有効活用するために、上記周知技術を甲1発明に適用し、相違点2に係る構成に相当する構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。
(ウ)小括
以上のとおりであるから、本件特許発明4は、甲1発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
オ 本件特許発明5について
(ア)対比
本件特許発明5と甲1発明を対比する。
本件特許発明5において、本件特許発明1と同じ構成については、上記ア(ア)aないしd及びfに記載した相当関係と同様であるから、本件特許発明5と甲1発明とは
「所定深さの養液が湛えられる養液槽で、親株が栽培される親株栽培用プランターと、
前記親株栽培用プランターの側方に配置されて所定深さの水が湛えられる水槽で、且つ水が循環させられている子株栽培用プランターと、を備えるイチゴ苗の生育システム。」
である点で一致し、以下の点で相違する。
(相違点3)
本件特許発明5は「親株から伸長するランナーに発生する子株を定着させ」、「子株栽培用プランター」に設置される「スポンジ培地」を有しているのに対し、甲1発明はそのような構成になっていない点。
(イ)判断
上記相違点3について検討する。
甲7発明の「植物栽培システム」の「水漏れしない上部開口容器に吸水性スポンジ培地を入れたものである」「培地台」は、本件特許発明5の植物の「生育システム」の「スポンジ培地」に相当する。
甲8発明の「スポンジによって構成されている植物の水耕栽培に用いられる、固形培地」は、本件特許発明5の植物の「生育システム」の「スポンジ培地」に相当する。
よって、甲7発明、甲8発明に示されるように、スポンジ培地を有する構成は、本願出願前に周知である。
植物栽培部の培地としてどのようなものを採用するかは、当業者が適宜選択しうる設計事項であるから、上記周知技術を甲1発明に適用し、相違点3に係る構成に相当する構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。
(ウ)小括
以上のとおりであるから、本件特許発明5は、甲1発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(2)取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
ア 申立人は特許異議申立書において、本件特許発明6~8に対して、甲第8号証、甲第10号証及び甲第11号証の記載から、植物を支持するスポンジ等の培地と、培地が設置される容器との間に隙間を設けることは、周知の技術事項であって、如何にして隙間を設けるかは当業者が適宜選択できるものであるところ、スポンジ培地の下側に突起体を取り付けて隙間を設けること(本件特許発明6)、子株栽培用プランターの底面との間に介在物を設置して隙間を設けること(本件特許発明7)、スポンジ培地を水に浮かべられるように脱水すること(本件特許発明8)はいずれも当業者の通常の創作能力の発揮の範疇であり、設計的事項に過ぎない旨、主張する。
以下、本件特許発明6~8について検討する。
イ 本件特許発明6について
本件特許発明6と甲1発明を対比すると、少なくとも、本件特許発明6は「前記スポンジ培地に子株を定着させる際には、前記スポンジ培地が水中に浸されるように吸水させて設置し、子株の根が前記培地スポンジの下側から発出した後は、前記スポンジ培地と前記子株栽培用プランターの底面との隙間を広げるように、前記スポンジ培地の下側に突起体を取り付ける」のに対し、甲1発明は、そのような構成を備えていない点で相違している。
そこで申立人が提示する甲第8号証、甲第10号証及び甲第11号証についてみると、申立人が主張するように、スポンジ等の培地と培地が設置される容器との間に隙間を設けることが周知技術であることは理解できるものの、甲第8号証、甲第10号証及び甲第11号証は、子株の根が発出した後に、スポンジ培地と容器との隙間を広げるようにするための方法の構成を有しておらず、特にスポンジ培地の下側に突起体を取り付けることについても同様である。
また、申立人が提示するその他の文献をみても、上記の方法の構成は記載も示唆もされていない。
よって、甲1発明において、甲第8号証、甲第10号証及び甲第11号証に記載された事項を参酌しても、「前記スポンジ培地に子株を定着させる際には、前記スポンジ培地が水中に浸されるように吸水させて設置し、子株の根が前記培地スポンジの下側から発出した後は、前記スポンジ培地と前記子株栽培用プランターの底面との隙間を広げるように、前記スポンジ培地の下側に突起体を取り付ける」ことが、当業者が容易になし得たことということはできない。
申立人の主張について検討すると、本件特許発明6と甲1発明との相違点の判断は、申立人が主張するような「如何にして隙間を設けるか」だけではなく、根が発出した後に、隙間を広げるようにするための方法の構成についても検討すべきものであり、この点について、容易想到である旨の説明は、特許異議申立書になされておらず、よって申立人の主張は採用することができない。
ウ 本件特許発明7について
本件特許発明7と甲1発明を対比すると、少なくとも、本件特許発明7は「前記スポンジ培地に子株を定着させる際には、前記スポンジ培地が水中に浸されるように吸水させて設置し、子株の根が前記培地スポンジの下方に発出した後は、前記スポンジ培地と前記子株栽培用プランターの底面との隙間を広げるように、前記スポンジ培地と前記子株栽培用プランターの底面との間に介在物を設置する」のに対し、甲1発明は、そのような構成を備えていない点で相違している。
そして、上記イで検討したように、甲第8号証、甲第10号証及び甲第11号証は、子株の根が発出した後に、スポンジ培地と容器との隙間を広げるようにするための方法の構成を有していない。
また、申立人が提示するその他の文献をみても、上記の方法の構成は記載も示唆もされていない。
よって、甲1発明において、甲第8号証、甲第10号証及び甲第11号証に記載された事項を参酌しても、「前記スポンジ培地に子株を定着させる際には、前記スポンジ培地が水中に浸されるように吸水させて設置し、子株の根が前記培地スポンジの下側から発出した後は、前記スポンジ培地と前記子株栽培用プランターの底面との隙間を広げるように、前記スポンジ培地の下側に介在物を取り付ける」ことが、当業者が容易になし得たことということはできない。
エ 本件特許発明8について
本件特許発明8と甲1発明を対比すると、少なくとも、本件特許発明7は「前記スポンジ培地に子株を定着させる際には、前記スポンジ培地が水中に浸されるように吸水させて設置し、子株の根が前記培地スポンジの下側から発出した後は、前記スポンジ培地を水に浮かべられるように脱水する」のに対し、甲1発明は、そのような構成を備えていない点で相違している。
そして、上記イで検討したように、甲第8号証、甲第10号証及び甲第11号証は、子株の根が発出した後に、(スポンジ培地と容器との隙間を広げるようにするための)スポンジ培地を水に浮かべられるように脱水する方法の構成を有していない。
また、申立人が提示するその他の文献をみても、上記の方法の構成は記載も示唆もされていない。
よって、甲1発明において、甲第8号証、甲第10号証及び甲第11号証に記載された事項を参酌しても、「前記スポンジ培地に子株を定着させる際には、前記スポンジ培地が水中に浸されるように吸水させて設置し、子株の根が前記培地スポンジの下側から発出した後は、前記スポンジ培地を水に浮かべられるように脱水する」ことが、当業者が容易になし得たことということはできない。
6 むすび
以上のとおり、請求項1及び2に係る発明は、甲第1号証に記載された発明であるか、甲1発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1及び2に係る特許は特許法第29条第1項または同条第2項の規定に違反してされたものであり、請求項3ないし5に係る発明は、甲1発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項3ないし5に係る特許は同条第2項の規定に違反してされたものであり、請求項1ないし5に係る特許は同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
また、請求項6ないし8に係る発明は、甲第1号証に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によっては、請求項6ないし8に係る特許を取り消すことはできない。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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2022-700530