特許異議申立
2022-700367
多層型メイクアップ保護化粧料
- 審判番号
- 2022-700367
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2021-502217
- 登録番号
- 6961124
- 請求日
- 2022年04月28日
- 審決日
- 2022年09月30日
- 公報発行日
- 2022年11月25日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】株式会社コーセー
- 【権利者代理人】渡邊 薫
- 【異議申立人】石塚 基
- 審判長/審判官
- 審判長 瀬良 聡機
- 審判官 伊藤 佑一
- 審判官 井上 典之
- 分類
- P1651.112-Y (A61K) / P1651.121-Y (A61K) / P1651.537-Y (A61K)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第36条第6項、特許法第36条第6項第1号、特許法第29条第1項第2号、特許法第29条第1項、特許法第36条第6項第2号、特許法第36条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第6961124号発明「多層型メイクアップ保護化粧料」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第6961124号の請求項1~6に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第6961124号(以下「本件特許」という。)の請求項1~6に係る特許についての出願は、2020年(令和2年)2月21日(優先権主張 2019年(令和1年)2月27日(以下「本件優先日」という。))を国際出願日として出願され、令和3年10月14日に特許権の設定登録がされ、同年11月5日にその特許掲載公報が発行され、その後、令和4年4月28日に特許異議申立人 石塚 基(以下「申立人」という。)により、本件特許の請求項1~6に係る発明の特許に対して特許異議の申立てがされたものである。
第2 本件発明
本件特許の請求項1~6に係る発明(以下、それぞれ請求項の番号順に「本件発明1」などといい、まとめて「本件発明」ということもある。)は、それぞれ、本件特許の願書に添付した特許請求の範囲の請求項1~6に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「【請求項1】
以下の成分(A)~(C);
(A)油溶性皮膜形成剤 0.05~8質量%
(B)水 40~95質量%
(C)揮発性油剤 1~40質量%
を含有し、メイクアップの上に噴霧して使用する多層型メイクアップ保護化粧料。
【請求項2】
前記成分(A)が、シリコーン系皮膜形成剤である、請求項1に記載の多層型メイクアップ保護化粧料。
【請求項3】
前記成分(A)が、トリメチルシロキシケイ酸を含有する、請求項1又は2に記載の多層型メイクアップ保護化粧料。
【請求項4】
乳化剤を0.25質量%以上含まない、請求項1~3のいずれか一項に記載の多層型メイクアップ保護化粧料。
【請求項5】
さらに、シリコーンワックスを含有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の多層型メイクアップ保護化粧料。
【請求項6】
噴射剤を使用しないスプレー容器用である、請求項1~5のいずれか一項に記載の多層型メイクアップ保護化粧料。」
第3 申立理由の概要及び証拠
1 申立人が申し立てた理由の概要
申立人が申し立てた本件特許の請求項1~6に係る特許を取り消すべき理由の概要は、以下のとおりである。
申立理由(1)
請求項1~4、6に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された、又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1号証の1、甲第1号証の2、甲第2~5号証を参照すれば、本件特許の出願前に日本国内又は外国において公然実施をされた発明であって、特許法第29条第1項第2号に掲げる発明に該当するから、請求項1~4、6に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。
申立理由(2)
請求項1~4、6に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された、又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1号証の1、甲第1号証の2、甲第2~5号証を参照すれば、本件特許の出願前に日本国内又は外国において公然実施をされた発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~4、6に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。
申立理由(3)
請求項1~4、6に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された、又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第6号証に記載された発明及び甲第1号証の1、甲第1号証の2に記載された技術的事項に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~4、6に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。
申立理由(4)
請求項1~4、6に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された、又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第7号証に記載された発明及び甲第1号証の1、甲第1号証の2に記載された技術的事項に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~4、6に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。
申立理由(5)
請求項1~6に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された、又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第8号証に記載された発明及び甲第1号証の1、甲第1号証の2に記載された技術的事項に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~6に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。
申立理由(6)
請求項1に係る特許に関して、「油溶性皮膜形成剤」及び「揮発性油剤」との記載では、いかなる物質が該当し、いかなる物質が該当しないのかを本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が明確に把握することができないため、請求項1に係る発明は明確ではなく、請求項1を引用する請求項2~6についても、少なくとも「揮発性油剤」との記載の点で同様であり、それらの特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に適合するものではないので、特許法第36条第6項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、取り消されるべきものである。
申立理由(7)
請求項1~6に係る特許に関して、本件特許明細書には、「油溶性皮膜形成剤」としては特定の6種が用いられ、「揮発性油剤」としては特定の3種から「ジメチルポリシロキサン」を含む2種が併用されている試験例のみが記載されており、具体的に実証された物質以外の任意の「油溶性皮膜形成剤」と「揮発性油剤」との組合せによっても「噴霧使用時の霧の細かさに優れながらも、優れたメイクアップ保護効果を持つ、メイクアップ保護化粧料を提供すること」ができるとは認識できないから、請求項1~6に係る発明は、発明の詳細な説明に記載された発明ではなく、その特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に適合するものではないので、特許法第36条第6項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、取り消されるべきものである。
2 申立人が提出した証拠
甲第1号証の1:商品詳細 L:oil(ロイル) フェイスミスト 脂性肌用、印刷日:2022年4月22日、https://www.cosmetic-info.jp/prod/detail.php?id=42134
甲第1号証の2:メイクの上から使える美容オイルミストL:oil -ロイル- お肌に合わせて選べるタイプ全3種類になって新発売!、2015年10月21日、印刷日:2022年4月22日、https://www.t-garden.jp/press-release/520/
甲第2号証:化粧品の全成分表示の表示方法等について、平成13年3月6日、印刷日:2022年4月22日、https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00ta7768&dataType=1&pageNo=1
甲第3号証:薬食審査発第0524001号、各都道府県衛生主管部(局)長宛て厚生労働省医薬食品局審査管理課長通知、化粧品に配合可能な医薬品の成分について、平成19年5月24日
甲第4号証:特開2001-187715号
甲第5号証:光井武夫、新化粧品学、株式会社南山堂、2001年1月18日、355頁
甲第6号証:特開平7-33625号
甲第7号証:特開2018-8910号
甲第8号証:特開2006-306860号
(以下、番号順に「甲1の1」~「甲8」ということがある。)
第4 当審合議体の判断
当審合議体は、請求項1~6に係る特許は、申立人が申し立てた理由及び証拠によっては、取り消すことはできないと判断する。
理由は以下のとおりである。
1 申立理由(1)について
(1)各甲号証の記載事項(特に着目すべき点について、当審合議体にて下線を追記した。)
(1-1)甲1の1の記載事項
本件優先日前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった電子的情報である甲1の1から、以下の事項が読み取れる。
記載(1-1a)
「発売元 T-Garden
発売日 2015-10-20
剤型分類 ミスト状化粧水
種類 化粧品
全成分リスト
1.水
2.グリセリン
3.シクロペンタシロキサン
4.エタノール
5.ジメチコン
6.DPG
7.プロパンジオール
8.海水
9.アラントイン
10.ノイバラ果実エキス
11.スイゼンジノリ多糖体
12.ナツメ果実エキス
13.ウンシュウミカン果皮エキス
14.オタネニンジン根エキス
15.アロエベラ葉エキス
16.ダイズ種子エキス
17.サッカロミセス/(黒砂糖/プラセンタエキス)発酵液
18.ヨーグルト液
19.グリチルリチン酸2K
20.トリメチルシロキシケイ酸
21.クエン酸
22.クエン酸Na
23.ツバキ種子油
24.ホホバ種子油
25.マカデミア種子油
26.ハッカ油
27.トリ(カプリル/カプリン酸)グリセリル
28.トコフェロール
29.メントール
30.フェノキシエタノール
31.BG
32.香料」(申立人が提出した甲1の1を印刷したものの1/2頁における1~36行)
(1-2)甲1の2の記載事項
本件優先日前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった電子的情報である甲1の2には、以下の事項が読み取れる。
記載(1-2a)
「メイクの上から使える美容オイルミストL:oil -ロイル- お肌に合わせて選べるタイプ全3種類になって新発売!
株式会社T-Garden(本社:東京都渋谷区、代表取締役:文倉達之)は、20代後半~30代の女性に向けたスキンケアブランドL:oil(ロイル)よりブライトスキン・脂性肌タイプを新たに追加した「フェイスミスト」を発売致します。」(1頁1~5行(申立人が提出した甲1の2を印刷したものの頁及び行による。以下同じ。))
記載(1-2b)
「水分と油分両方を簡単に補給できる、二層式の新感覚フェイスミスト
ホホバオイルや海洋深層水など厳選した保湿・美容成分を配合した美容オイルinフェイスミスト。
お肌にうるおいを与えるウォーター層と保湿ヴェールで水分蒸発を抑えるオイル層のWモイスチャーが、肌のキメを整え、瞬時に艶めくお肌に導きます。
メイクキープ成分配合でメイクの上からでも使用ができるので、オフィスや外出先で乾燥を感じた時のうるおい補給や化粧水前のブースターとして、オールシーズン使用できます。
今回新たに、すべての肌質の方にお使いいただける既存品を「普通肌」とし、透明感のある輝き肌へ導く「ブライトスキン」、肌を引き締め皮脂分泌を抑える「脂性肌」を加えた3種類となりパッケージも新たに発売となりました。」(1頁6~13行)
記載(1-2c)
「ロイル フェイスミスト ―脂性肌用― <化粧水> シャボンの香り
[図:0001390585000001.jpg]
」(3頁)
記載(1-2d)
「■ブランド名
L:oil(ロイル)
■商品名
フェイスミスト <化粧水・全3種>
・・・
■発売日
2015年10月20日メーカー出荷
■販売チャネル
公式通販サイト Luvlit(ラブリット)http://luvlit.jp/
全国バラエティーショップ、ドン・キホーテ、ドラッグストア等
■公式ウェブサイト
http://loil-skin.jp/
■発売元
株式会社T-Garden」(3頁10行~4頁6行)
(1-3)甲2の記載事項
本件優先日前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった電子的情報である甲2には、以下の事項が記載されている。
記載(2a)
「1 化粧品の全成分表示の表示方法は、以下のとおりとするので、貴管下関係業者に対し指導方よろしく御配慮をお願い致します。
・・・
(2) 成分名の記載順序は、製品における分量の多い順に記載する。ただし、1%以下の成分及び着色剤については互いに順不同に記載して差し支えない。」(11~14行)
(1-4)甲3の記載事項
本件優先日前に頒布された刊行物である甲3には、以下の事項が記載されている。
記載(3a)
「今般、承認化粧品成分について明確化を図ることを目的とし、平成16年3月25日付け薬食審査発第0325022号厚生労働省医薬食品局審査管理課長通知「化粧品に配合可能な医薬品の成分について(確認依頼)」(以下「課長通知」という。)にて調査を行い、本調査により提出された資料を基に、その結果を下記のとおりとりまとめましたので、御了知の上、貴管下関係業者に周知方よろしく御配慮願いたい。
記
1.化粧品に配合可能な医薬品成分の取扱いについて
(1) 承認化粧品成分として、課長通知による調査の結果、確認できた成分は別添のとおりであり、これらの成分については、別添に示す分量の範囲内において、化粧品の成分とすることができること。」(1頁11~20行)
記載(3b)
「
[図:0001390585000002.jpg]
」(4頁)
(1-5)甲4の記載事項
本件優先日前に頒布された刊行物である甲4には、以下の事項が記載されている。
記載(4a)
「【請求項1】次の成分(a)、(b)(a)油溶性皮膜形成性樹脂 0.1~20質量%(b)フッ素化合物処理粉体 0.1~50質量%を含有することを特徴とするアイライナー化粧料。」(特許請求の範囲)
記載(4b)
「【0004】
【課題を解決するための手段】そこで本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意研究した結果、油溶性皮膜形成性樹脂とフッ素化合物処理粉体とを用いることにより、目の輪郭を強調するといった化粧効果に優れ、その化粧効果の持続性が高く、なめらかで描きやすい等の良好な使用性、使用感及び均一な化粧膜を付与する事ができる事を見出し、本発明を開発するに至った。すなわち本発明は、次の成分(a)油溶性皮膜形成性樹脂、及び(b)フッ素化合物処理粉体とを含有することを特徴とするアイライナー化粧料に関するものである。
【0005】
【発明の実施の形態】以下、本発明を詳細に説明する。本発明に使用される成分(a)の油溶性皮膜形成性樹脂としては特に制限されず、通常化粧料に配合されるものであればいずれのものも使用できる。例えば、ロジン酸系樹脂、トリメチルシロキシケイ酸、アクリル変性シリコーン、酢酸ビニル系樹脂、ポリブテン、ポリビニルイソブチルエーテル、ポリイソブチレンなどが挙げられるが、なかでも、ポリイソブチレンが使用性、化粧効果、及び化粧効果の持続の点で最も好ましい。これらの樹脂は必要に応じ、1種又は2種以上を用いることができる。また、成分(a)の油溶性皮膜形成性樹脂の配合量は、全組成物中0.1~20質量%(以下、単に「%」で示す)が好ましく、特に1~10%が好ましい。配合量がこの範囲であれば化粧効果、化粧効果の持続、使用性、使用感の面で良好なものが得られる。」
(1-6)甲5の記載事項
本件優先日前に頒布された刊行物である甲5には、以下の事項が記載されている。
記載(5a)
「1-3-2.化粧水の主成分
既述された如く,化粧水の基本機能は角質層に水分・保湿成分を補給することであるが,このほかにも柔軟・収れん・洗浄などの目的に応じて必要な成分を配合する。表1-4に一般的な化粧水の成分を示す。
[図:0001390585000003.jpg]
」(355頁10~13行)
(2)甲1の1及び甲1の2に基いて認定できる発明
甲1の1から、発売元がT-Gardenであり、発売日が2015年10月20日である商品名「L:oil(ロイル) フェイスミスト 脂性肌用」の化粧品について、その全成分リストが「1.水・・・3.シクロペンタシロキサン・・・8.海水 9.アラントイン・・・20.トリメチルシロキシケイ酸」であることが看取できる(記載(1-1a))。
また、甲1の2から、発売元がT-Gardenであり、発売日が2015年10月20日である商品名「L:oil(ロイル) フェイスミスト 脂性肌用」の化粧品について(記載(2a)、記載(2d))、その外観やパッケージを撮影した写真とともに、ウォーター層とオイル層からなる二層式のフェイスミストであり、メイクキープ成分配合でメイクの上からでも使用ができるものであることがであることが看取できる(記載(1-2b)、記載(1-2c))。
ここで、甲1の1と甲1の2が同一の発売元から同じ日に発売された同一商品に関する証拠であることを考慮すると、上記商品名の化粧品は実際に販売されたものといえる。
したがって、甲1の1及び甲1の2からは、「L:oil(ロイル) フェイスミスト 脂性肌用」との商品名の商品が本件優先日前である2015年10月20日に、実際に販売されたことが理解でき、公然実施された発明として、次の発明を認定できる。
「以下の成分;
トリメチルシロキシケイ酸
水、海水
シクロペンタシロキサン
を含有し、メイクキープ成分配合でメイクの上からでも使用ができるウォーター層とオイル層からなる二層式のフェイスミスト。」(以下「甲1発明」という。)
(3) 対比・判断
ア-1 本件発明1と甲1発明との対比
甲1発明の「トリメチルシロキシケイ酸」は、本件発明1の「(A)油溶性皮膜形成剤」に、甲1発明の「水、海水」は、本件発明1の「(B)水」に、甲1発明の「シクロペンタシロキサン」は、本件特明1の「(C)揮発性油剤」に、それぞれ相当する。
また、甲1発明の「メイクキープ成分配合でメイクの上からでも使用ができるウォーター層とオイル層からなる二層式のフェイスミスト」は、本件発明1の「メイクアップの上に噴霧して使用する多層型メイクアップ保護化粧料」に相当するといえる。
したがって、本件発明1と甲1発明とは、
「以下の成分(A)~(C);
(A)油溶性皮膜形成剤
(B)水
(C)揮発性油剤
を含有し、メイクアップの上に噴霧して使用する多層型メイクアップ保護化粧料。」
である点で一致し、以下の点で相違する。
相違点1:本件発明1が、「(A)油溶性皮膜形成剤 0.05~8質量%
(B)水 40~95質量%
(C)揮発性油剤 1~40質量%」と成分(A)~(C)の配合比率を特定しているのに対し、甲1発明は成分(A)~(C)の配合比率が不明である点。
イ-1 相違点1の判断
甲2の記載(2a)を参照すると、化粧品の全成分表示において、成分名の記載順序は、製品における分量の多い順に記載されるが、1%以下の成分及び着色剤については互いに順不同に記載して差し支えないことが理解できる。
また、甲3の記載(3a)、記載(3b)を参照すると、化粧品成分としてアラントインを使用する際、当該化粧品が「粘膜に使用される化粧品のうち洗い流さないもの」である場合においても100g中の最大配合量は0.3gであると理解できる。
してみると、甲1の1における全成分表示に記載されたアラントインの配合比率は最大でも0.3%であるから、当該全成分表示においてアラントインよりも後に表示されるトリメチルシロキシケイ酸は、1%以下の成分として互いに順不同に記載されていることが考えられるため、その配合比率は最大でも1%であると理解するのが自然である。
一方で、甲1の1、甲1の2、甲2及び甲3からは、それ以外に甲1発明におけるトリメチルシロキシケイ酸の配合比率を推認できる記載はなく、他の甲号証の記載を参照しても、最大でも1%であることにとどまり、それ以外配合比率についての知見は不明である。
したがって、甲1発明に包含される「(A)油溶性皮膜形成剤」であるトリメチルシロキシケイ酸の配合比率について、本件発明1で特定された「0.05~8質量%」に包含されるか否かは不明であるから、甲1発明における成分(B)及び(C)の配合比率によらず、相違点1は実質的な相違点である。
申立人は、特許異議申立書(以下「申立書」という。)において、甲1発明におけるトリメチルシロキシケイ酸の配合比率について、甲1の2において「メイクキープ成分配合」と記載されているところ、甲1の1で「メイクキープ成分」に該当するのはトリメチルシロキシケイ酸のみであり、甲4より油溶性皮膜形成性樹脂であるトリメチルシロキシケイ酸の配合量は全組成物中0.1~20質量%であることが技術常識であるから、トリメチルシロキシケイ酸がメイクキープ成分として機能する配合量が0.05質量%未満であると判断する根拠はないと主張している。
しかしながら、記載(4a)のとおり、甲4は「目の輪郭を強調するといった化粧効果に優れ、その化粧効果の持続性が高く、なめらかで描きやすい等の良好な使用性、使用感及び均一な化粧膜を付与する事ができる」といった特性を有するアイライナー化粧料に関するものであり、メイクアップの上に噴霧して使用する多層型メイクアップ保護化粧料に関するものではないことから、甲4において当該アイライナー化粧料が全組成物中0.1~20質量%の油溶性皮膜形成性樹脂を含むものであるとの記載があるとしても、用途、成分、使用態様などの異なる多層型メイクアップ保護化粧料においても、油溶性皮膜形成性樹脂を同様の配合比率とすることが技術常識であったとは認められない。よって、上記主張を参酌しても、甲1発明におけるトリメチルシロキシケイ酸の配合比率が0.05質量%以上であることが記載されているに等しいとはいえない。
さらに、申立人は、申立書において、甲1発明におけるシクロペンタシロキサン、水、海水の配合比率について、「油相体積分率25%」、「油相の密度およそ0.94」、「甲第5号証から、保湿成分の総含有量の上限20質量%」といった前提に基いて、甲1発明におけるシクロペンタシロキサンの配合比率は、最大で20質量%であり、最低でも9.75質量%である、甲1発明における水、海水の配合比率は、最大でも67.75質量%未満であり、最小でも56.75質量%である、と主張している。
しかしながら、油相体積分率については、甲1発明の商品において断面積はいずれの高さにおいても一定であるとの認識に基づき、写真から把握される水相及び油相の高さが各相の体積分率に比例するとして「25%」程度であると類推できるとしても、油相の密度は油相を構成する成分の配合比率によって変化し得ることから、「油相の密度およそ0.94」との前提に根拠があるとは認められない。さらに、記載(5a)のとおり、甲5は一般的な化粧水における保湿剤の添加量について、その上限が総含有量の20質量%であることが記載されているに過ぎず、用途、成分、使用態様などの異なる多層型メイクアップ保護化粧料においても、保湿剤の添加量の上限が総含有量の20質量%であるとは認められない。してみると、甲1発明におけるシクロペンタシロキサン、水、海水の配合比率に関しても、その推定の前提について根拠が認められないことから、本件発明1で特定された「(B)水 40~95質量%」及び「(C)揮発性油剤 1~40質量%」の配合比率に包含されるとはいえない。
以上により、申立人の上記主張は採用できない。
ウ-1 したがって、本件発明1は、本件優先日前に公然実施された発明(甲1発明)であるとはいえない。
ア-2 本件発明2~4、6と甲1発明との対比
本件発明2は、本件発明1において、「成分(A)が、シリコーン系皮膜形成剤である」ことを特定したものであり、本件発明3は、本件発明1又は2において、「成分(A)が、トリメチルシロキシケイ酸を含有する」ことを特定したものであり、本件発明4は、本件発明1~3において、「乳化剤を0.25質量%以上含まない」ことを特定したものであり、本件発明6は、本件発明1~5において、「噴射剤を使用しないスプレー容器用である」ことを特定したものであるところ、上記ア-1と同様に、本件発明2~4、6と甲1発明との対比においても、相違点の一つとして相違点1が存在する。
イ-2 判断
上記ア-1~ウ-1で、本件発明1と甲1発明との対比判断をしたとおり、相違点1は実質的相違点であり、本件発明2~4、6は、本件特許の優先日前に公然実施された発明(甲1発明)であるとはいえない。
(4)まとめ
したがって、本件発明1~4、6は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された、又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲1の1、甲1の2、甲2~5を参照しても、本件特許出願前に日本国内又は外国において公然実施をされた発明であるとはいえず、特許法第29条第1項第2号に該当しないので、本件特許の請求項1~4、6に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものとはいえない。
2 申立理由(2)について
(1)本件特許明細書の記載
本件特許明細書の発明の詳細な説明には、以下の記載がある。
記載(ア)
「【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者は、従来、噴霧使用時に霧の細かさを実現させつつ、かつ、優れたメイクアップ保護効果を有するメイクアップ保護化粧料を提供することを課題として試みていないことに着目した(例えば特許文献1~3参照)。そこで、先ず、本発明者は、後記〔実施例〕に示すように、噴霧使用時に霧の粒子が肌上で水滴になりにくい及び塗布後8時間後に化粧崩れがみられにくいかどうかの評価を行い、これら評価が良好なメイクアップ保護料を得ようとした。
【0006】
従って、本技術は、メイクアップの上から噴霧して使用するメイクアップ保護化粧料であり、噴霧使用時の霧の細かさに優れながらも、優れたメイクアップ保護効果を持つ、メイクアップ保護化粧料を提供することを主な課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる実情において、本発明者は、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、油溶性皮膜形成剤、特定量の水、揮発性油剤を組み合わせることにより、噴霧使用時での霧の細かさに優れながらも、優れたメイクアップ保護効果を持つ、多層型メイクアップ保護化粧料を提供できることを見出し、上記課題を解決しうる本発明を完成するに至った。」
記載(イ)
「【発明の効果】
【0009】
本技術は、メイクアップの上から噴霧して使用するメイクアップ保護化粧料であり、噴霧使用時の霧の細かさに優れながらも、優れたメイクアップ保護効果を持つ、メイクアップ保護化粧料を提供することができる。なお、ここに記載された効果は、必ずしも限定されるものではなく、本明細書中に記載されたいずれかの効果であってもよい。」
記載(ウ)
「【0011】
<本技術の概要>
本発明者は、ユーザが、顔のメイクアップの上にメイクアップ保護料を噴霧して使用する際に、これを噴霧した後に、できるだけ長時間、化粧崩れがほとんど見られないことを望んでいることに着目した。また、本発明者は、噴霧使用時に霧が細かいことで、肌上で水滴にならずに、顔のメイクアップに均一に噴霧でき、メイクアップを保護しやすいことに着目した。
【0012】
そこで本技術は、メイクアップの上から噴霧して使用するメイクアップ保護化粧料であり、噴霧使用時の霧の細かさに優れながらも、優れたメイクアップ保護効果を持つ、メイクアップ保護化粧料を提供することを第一の目的とするものである。
【0013】
さらに、本技術は、優れたメイクアップ保護効果を持ちながらも、負担感のなさ、ベタつきのなさ、噴霧使用時の霧の細かさに優れる、メイクアップの上から噴霧して使用する多層型メイクアップ保護化粧料を提供することを第二の目的とするものである。
【0014】
本技術は、次の成分(A)~(C);(A)油溶性皮膜形成剤、(B)水を40~95質量%、(C)揮発性油剤を含有することで、メイクアップの上から噴霧して使用したときに、噴霧使用時の霧の細かさに優れながらも、優れたメイクアップ保護効果を持つ、メイクアップ保護化粧料を提供するという本技術における第一の目的を達成することができる。
【0015】
さらに、本技術は、前記成分(A)が、シリコーン系皮膜形成剤であることが、噴霧使用時の霧の細かさや持続性の高いメイクアップ保護効果の観点から、好ましい。また、前記成分(A)が、トリメチルシロキシケイ酸を含有することが、噴霧使用時の霧の細かさや持続性の高いメイクアップ保護効果の観点から、より好ましい。
【0016】
また、本技術は、前記多層型メイクアップ化粧料が、噴射剤を使用しないスプレー容器用であることが、顔に噴霧するという使用性から、噴射剤を使用するエアゾール形態よりも、好ましい。
【0017】
また、本技術は、本技術の多層型メイクアップ保護化粧料が、さらに成分(D)としてシリコーンワックスを含有することが、優れたメイクアップ保護効果や噴霧使用時の霧の細かさの観点、負担感のなさやベタつきのなさの観点から、好ましい。さらに、本技術の化粧料中に、成分(C)水を50~95質量%含有させることが、負担感のなさやベタつきのなさの観点から、より好ましい。
【0018】
このように、本技術は前記成分(A)~(D)を含むことで、優れたメイクアップ保護効果を持ちながらも、負担感のなさ、ベタつきがなく、噴霧使用時の霧の細かさに優れる、メイクアップの上から噴霧して使用する多層型メイクアップ保護化粧料を提供するという本技術の第二の目的を達成することができる。」
記載(エ)
「【0019】
<成分(A)油溶性皮膜形成剤>
本技術に用いられる成分(A)油溶性皮膜形成剤は、揮発性油等の油剤に可溶で、皮膜を形成するものであり、通常の化粧料に使用できるものであれば、いずれのものも使用できる。
成分(A)油溶性皮膜形成剤として、特に限定されないが、例えば、トリメチルシロキシケイ酸、ポリメチルシルセスキオキサン、アクリル変性シリコーン、フッ素変性シリコーン等のシリコーン系樹脂;ロジン変性フェノール樹脂、ロジンエステル等のロジン酸系樹脂;キャンデリラ樹脂、酢酸ビニル系樹脂、ポリビニルイソブチルエーテル、ポリブテン、ポリイソブチレン;などの油溶性樹脂が挙げられ、これらから選択される1種又は2種以上を用いることができる。これにより、噴霧使用時の霧の細かさ及び/又は優れたメイクアップ保護効果を得ることができる。」
記載(オ)
「【0028】
<成分(C)の揮発性油剤>
本技術に使用される成分(C)の揮発性油剤とは、20℃、常圧において液状であり揮発性を有するものであれば特に限定されず、粘度、起源を問わない。
成分(C)の揮発性油剤は、成分(A)油溶性皮膜形成剤を溶解するとともに、化粧料中に安定に含有させることができる。
成分(C)の揮発性油剤として、特に限定されないが、例えば、シリコーン系油、炭化水素系油、エステル系油等のいずれのものも使用することができ、これらからなる1種又は2種以上用いることができる。
より具体的には、例えば、低分子量メチルポリシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、メチルトリメチコン、デカメチルテトラシロキサン、エチルトリシロキサンなどのシリコーン系油;軽質流動イソパラフィン、イソドデカン、イソヘキサデカンなどの炭化水素系油などが挙げられるがこれらに限定されない。これらからなる1種又は2種以上用いることができる。」
記載(カ)
「【0053】
本技術のメイクアップ保護化粧料は、後記〔実施例〕に示すように、上に油層、下が水層を含む少なくとも2層以上の多層型であり、粉体などを含むことで3層以上にすることもできる。そして、本技術の多層型メイクアップ保護化粧料は、噴霧使用直前に混合することで、良好に分散でき、一定期間、この分散状態を維持することができる一方で、一定期間放置すると多層型に戻る。
【0054】
このように、本技術の多層型メイクアップ保護化粧料は、混合後一定期間、良好な分散状態にあるため、霧のような細かい粒子を噴霧できる。さらに、本技術は、成分(B)水及び成分(C)揮発性油剤を含む多層型の形態であっても、噴霧性や皮膜形成性に優れている。これは、油溶性皮膜形成剤を配合し、前記成分(A)~(C)の組み合わせにしたことに起因する。さらに、本技術は、乳化剤を配合しなくとも噴霧粒子が細かいので、乳化剤フリーや乳化剤低減のメイクアップ保護化粧料としても提供できる。
【0055】
しかも、本技術は、前記成分(A)~(C)を組み合わせたことで、高い耐水性及び耐皮脂性を有する皮膜を、施されたメイクアップ上に形成でき、持続性に優れたメイクアップ保護効果を有する。さらに、本技術は、霧のような細かい粒子で全顔に噴霧でき、高い耐水性及び撥水性を有する皮膜を全顔に形成できる。また、本技術は成分(D)シリコーンワックスをさらに含有させてもよい。」
記載(キ)
「【実施例】
【0058】
次に試験例や実施例などを挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。
【0059】
試験例1~27:多層型メイクアップ保護化粧料
表1~4に示す組成の多層型メイクアップ保護料を下記の製造方法により調製し、以下に示す評価方法及び判定基準により評価判定し、結果を併せて表中に示した。
【0060】
【表1】
[図:0001390585000004.jpg]
【0061】
*1:ユニフィルマHVY(千葉製粉社製)
*2:KP-561P(融点:25~35℃、信越化学工業社製)
*3:DC2503(融点32℃、東レ・ダウコーニング社製)
*4:2501 Cosmetic Wax(融点30℃、東レ・ダウコーニング社製)
【0062】
(製造方法)
(A)油層:(1)~(19)を均一に加熱混合する。
(B)水層:(20)~(24)を均一に混合する。
(C)スプレーノズル付き容器に、(B)の水層、(A)の油層の順に充填し、多層型メイクアップ保護料を得た。
【0063】
【表2】
[図:0001390585000005.jpg]
【0064】
【表3】
[図:0001390585000006.jpg]
【0065】
【表4】
[図:0001390585000007.jpg]
【0066】
(評価方法)
化粧品評価専門パネル10名が、試験例の各多層型メイクアップ保護料をファンデーションとアイメイクのメイクアップを施した全顔に本品を5回噴霧し、「イ.霧の細かさ」、「ロ.メイクアップ保護効果」、「ハ.ベタツキのなさ」、「ニ.負担感のなさ」について、下記の評価基準に従って5段階評価を行い、評点を付けた。イ~ハの項目については、使用中及び直後に、「ロ.メイクアップ保護効果」については、使用後通常の生活を送ってもらい8時間後にメイクアップの化粧もちについて評価を行った。その後、全パネルの評点の平均点を算出し、下記の判定基準に従って判定した。
【0067】
[評価基準]
イ.霧の細かさ
[評点]:[評価結果]
4点 :非常に霧の粒子が細かい。
3点 :適度に霧の粒子が細かい。
2点 :やや霧の粒子が大きい。
1点 :霧の粒子が大きく肌上で水滴になる。
0点 :霧状に吐出しない。
ロ.メイクアップ保護効果
[評点]:[評価結果]
4点 :塗布後8時間後に全く化粧の崩れがみられない。
3点 :塗布後8時間後にほとんど化粧崩れがみられない。
2点 :塗布後8時間後にやや化粧崩れがみられる。
1点 :塗布後8時間後に化粧崩れがみられる。
0点 :塗布後8時間後に非常に化粧崩れがみられる。
ハ.べたつきのなさ
[評点]:[評価結果]
4点 :全くべたつきがない。
3点 :ほぼべたつきがない。
2点 :どちらでもない。
1点 :ややべたつきがある。
0点 :非常にべたつきがある。
ニ.負担感のなさ
[評点]:[評価結果]
4点 :全く負担感がない。
3点 :負担感がない。
2点 :どちらでもない。
1点 :やや負担感がある。
0点 :非常に負担感がある。
[判定基準]
[評点の平均点] :[判 定]
3.5以上 : ◎(優)
2.5以上~3.5未満 : ○(良)
1.0以上~2.5未満 : △(やや不可)
1.0未満 : ×(不可)
【0068】
試験例1~27の多層型メイクアップ保護料は、上に油層、下が水層の2層に分かれた多層型であった。
表の結果から明らかなように、試験例1~24の本技術に係る多層型メイクアップ保護料は、(A)油溶性皮膜形成剤、(B)水40%以上、(C)揮発性油剤を含むことで、噴霧時の霧の細かさ、メイクアップ保護効果の両方の項目に関して優れたものであった。そして、本技術の化粧料は、霧が細かく顔全体にふんわりと噴霧され、施されたメイクアップを損なうものではなかった。なお、スプレーノズル付き容器の噴霧口径はφ0.3mmである。
【0069】
また、本技術の化粧料(試験例1~24)の評価結果からすると、本技術の化粧料は、メイクアップを施した全顔に対して、細かい霧状で噴霧できるため、一般的なユーザであっても、全顔に適度な膜厚でむらなく化粧膜を形成させやすい。また、一般的なユーザであっても、本技術の化粧料を用いれば、高い撥水・撥油性を有する化粧膜をメイクアップ上に容易に形成でき、またそのメイクアップ保護効果も高いという優れた利点がある。
また、本技術の化粧料(試験例1~24)は、顔に塗布後8時間もの長時間において化粧崩れがみられないことから、本技術の化粧料は高い耐皮脂性を有するという利点がある。」
(2)対比・判断
ア-1 本件発明1と甲1発明との対比
上記1(3)ア-1のとおり、本件発明1と甲1発明とは、
「以下の成分(A)~(C);
(A)油溶性皮膜形成剤
(B)水
(C)揮発性油剤
を含有し、メイクアップの上に噴霧して使用する多層型メイクアップ保護化粧料。」
である点で一致し、以下の点で相違する。
相違点1:本件発明1が、「(A)油溶性皮膜形成剤 0.05~8質量%
(B)水 40~95質量%
(C)揮発性油剤 1~40質量%」と成分(A)~(C)の配合比率を特定しているのに対し、甲1発明は成分(A)~(C)の配合比率が不明である点。
イ-1 相違点1の判断
(ア)動機付けの有無及び他の甲号証の適用について
甲1の1及び甲1の2から認定された公然実施発明である甲1発明は、商品の成分や特徴を表示した範囲のものが販売されたという事実に基づいたものであり、多数の成分のうち本願発明の(A)~(C)に相当する成分に着目して、それらの組成をあえて特定する動機付けは特に存在しない。
また、上記1(3)イ-1のとおり、甲2及び甲3の記載を参照しても、甲1発明におけるトリメチルシロキシケイ酸の配合比率は最大でも1%であることが理解できるにとどまり、それ以外に配合比率についての知見は不明である。
甲1の1には、記載(1-1a)のとおり、甲1発明の全成分表示があるものの、各成分の配合比率についての契機となるものは読み取れない。
甲1の2には、記載(1-2b)のとおり、甲1発明が厳選した保湿・美容成分を配合した美容オイルinフェイスミストであることは記載されているものの、各成分の配合比率についての契機となるものは読み取れない。
甲4には、記載(4a)のとおり、「目の輪郭を強調するといった化粧効果に優れ、その化粧効果の持続性が高く、なめらかで描きやすい等の良好な使用性、使用感及び均一な化粧膜を付与する事ができる」といった特性を有するアイライナー化粧料が記載されており、記載(4b)には、トリメチルシロキシケイ酸などの油溶性皮膜形成性樹脂の配合量は全組成物中0.1~20質量%が好ましいことも記載されているものの、メイクアップの上に噴霧して使用する多層型メイクアップ保護化粧料やその配合については何ら記載されていない。
甲5には、記載(5a)のとおり、一般的な化粧水における保湿剤の添加量について、その上限が総含有量の20質量%であることが記載されているものの、メイクアップの上に噴霧して使用する多層型メイクアップ保護化粧料やその配合については何ら記載されていない。
したがって、甲1発明において、成分(A)~(C)の配合比率を特定して相違点1に係る本件発明1の技術的事項を採用することが当業者が容易になし得た事項であるとはいえない。
(イ)本件発明1の奏する効果について
本件発明1の奏する効果について、本件特許明細書の記載(カ)、記載(キ)には、メイクアップ保護化粧料として成分(A)~(C)を一定の配合比率で含有させることで、メイクアップの上から噴霧して使用したときに、噴霧使用時の霧の細かさに優れながらも、優れたメイクアップ保護効果を持つことが記載されている。
一方で、甲1の1、甲1の2、甲2~5には、成分(A)~(C)を一定の配合比率で含有するメイクアップ保護化粧料について、メイクアップの上から噴霧して使用したときに、噴霧使用時の霧の細かさに優れながらも、優れたメイクアップ保護効果を持つという効果について何ら記載されていないことから、本件発明1の奏する上記効果は当業者の予測し得ない、顕著なものといえる。
ウ-1 よって、本件発明1は、甲1発明及び甲2~5に記載の技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
ア-2 本件発明2~4、6と甲1発明との対比
上記1(3)ア-2に記載のとおり、本件発明2~4、6と甲1発明との対比においても、相違点の一つとして相違点1が存在する。
イ-2 判断
上記ア-1~ウ-1で、本件発明1と甲1発明との対比判断をしたとおり、甲1発明との間で相違点1が存在する本件発明2~4、6は、甲1発明及び甲2~5に記載の技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(3)まとめ
したがって、本件特明1~4、6は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された、又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲1の1、甲1の2、甲2~5を参照しても、本件特許出願前に日本国内又は外国において公然実施をされた発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものではないため、請求項1~4、6に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。
3 申立理由(3)について
(1)甲6の記載事項
本件優先日前に頒布された刊行物である甲6には、以下の事項が記載されている。
記載(6a)
「【請求項1】 トリメチルシロキシケイ酸と、揮発性シリコーンと、ショ糖脂肪酸エステルと、表面を疎水化した無水ケイ酸及び/又は表面を有機処理した粘度族鉱物とを含有し、かつ、粘度が100,000cp以下に調製された液状化粧料。」(特許請求の範囲)
記載(6b)
「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、使用感、化粧もち、耐水性及び塗布後の皮膚への定着安定性に優れた口紅、ファンデーション、アイシャドウ等に用いられる液状化粧料に関する。」
記載(6c)
「【0007】
【作用】本発明は、化粧料として塗布固着性及び顔料分散性に優れたトリメチルシロキシケイ酸と、塗布時の流動性、また、塗布後は揮発することにより、よれの防止、付着性の向上を付与する揮発性シリコーンと、定着安定性及び分散安定性を付与するショ糖脂肪酸エステル、表面を疎水化した無水ケイ酸及び/又は表面を有機処理した粘度族鉱物とを含有し、かつ、粘度を100,000cp以下に調製したものであるので、使用感、塗布後の耐水性等の向上による化粧もち、付着性の更なる向上、液の分散性、皮膚への定着安定性に優れたものとなる(この点に関しては更に実施例において説明する)。
【0008】以下、本発明の内容を説明する。なお、本発明で記載する配合量は、化粧料(全体)100重量部に対する配合量を意味する。本発明で用いるトリメチルシロキシケイ酸は、塗布固着性及び顔料分散性に優れた作用をなすものであり、その配合量は、0.2~50重量部、好ましくは、2~20重量部である。トリメチルシロキシケイ酸の配合量が0.2重量部未満であると、塗布固着性及び顔料分散性の効果を十分に発揮できず、また、配合量が50重量部を越えると、のびが悪く、ごわごわ感、つっぱり感が残るという欠点があり好ましくない。
【0009】本発明で用いる揮発性シリコーンは、塗布時の流動性、また塗布後は揮発することにより、よれの防止、付着性を付与するものであり、その配合量は、5~80重量部、好ましくは、10~60重量部である。揮発性シリコーンの配合量が5重量部未満であると、塗布時の流動性、また塗布後のよれの防止、付着性を付与することができず、また、配合量が80重量部を越えると、揮発が遅くなり、よれの原因となるので好ましくない。」
記載(6d)
「【0021】表1の結果から下記のことが判明した。比較例1~4は、本発明の範囲外となるものであり、比較例1は、表面を疎水化した無水ケイ酸又は表面を有機処理した粘度族鉱物のみが含有されない場合であり、比較例2は、比較例1に無水ケイ酸を配合した場合であり、比較例3は、トリメチルシロキシケイ酸のみが含有されない場合であり、比較例4はショ糖脂肪酸エステルのみが含有されない場合である。本発明で規定されるトリメチルシロキシケイ酸と、揮発性シリコーンと、ショ糖脂肪酸エステルと、表面を疎水化した無水ケイ酸及び/又は表面を有機処理した粘度族鉱物の四成分又は五成分うち、一以上の成分が含有されない比較例1~4では、使用感(ぬるぬる感)、化粧もち(よれ)、付着性(耐水性)及び安定性のうち何れか二つ以上が著しく劣ることが判明した。これに対して、実施例1~3は、本発明の成分を全て含有する場合であり、使用感(ぬるぬる感)、化粧もち(よれ)、付着性(耐水性)及び安定性の全てについて良好なものとなることが判明した。
【0022】
【発明の効果】本発明によれば、使用感、塗布後の耐水性等の向上による化粧もち、付着性の更なる向上、液の分散性、皮膚への定着安定性に優れた液状化粧料が提供される。また、本発明の液状化粧料は、内部に液状化粧料の貯蔵部を有し、該液状化粧料を繰り出し機構によりパイプ状の吐出部から化粧料を吐出し、塗布具最先端部には化粧料の浸出する塗布部を備えた塗布具に好適に用いることができ、塗布部での液持ちが良く、化粧料の皮膚への使用感に優れ、さらに、パフや刷毛もしくは手指で皮膚へのばした場合にも良好な塗布感が得られる。」
(2)甲6に記載された発明
記載(6a)のとおり、甲6には、トリメチルシロキシケイ酸と、揮発性シリコーンを含有する液状化粧料が記載されており、記載(6c)のとおり、トリメチルシロキシケイ酸の配合量は0.2~50重量部であり、揮発性シリコーンの配合量は5~80重量部であること、また、記載(6b)のとおり、使用感、化粧もち、耐水性及び塗布後の皮膚への定着安定性に優れた口紅、ファンデーション、アイシャドウ等に用いられる液状化粧料であることも記載されている。
したがって、甲6に記載された発明として、次の発明を認定できる。
「以下の成分;
トリメチルシロキシケイ酸 0.2~50質量%
揮発性シリコーン 5~80質量%
を含有し、使用感、化粧もち、耐水性及び塗布後の皮膚への定着安定性に優れた口紅、ファンデーション、アイシャドウ等に用いられる液状化粧料。」(以下「甲6発明」という。)
(3) 対比・判断
ア-1 本件発明1と甲6発明との対比
甲6発明の「トリメチルシロキシケイ酸」は、本件発明1の「(A)油溶性皮膜形成剤」に、甲6発明の「揮発性シリコーン」は、本件発明1の「(C)揮発性油剤」に、それぞれ相当する。
したがって、本件発明1と甲6発明とは、
「以下の成分(A)、(C);
(A)油溶性皮膜形成剤
(C)揮発性油剤
を含有する化粧料。」
である点で一致し、以下の点で相違する。
相違点2:本件発明1が、「(A)油溶性皮膜形成剤 0.05~8質量%
(B)水 40~95質量%
(C)揮発性油剤 1~40質量%」と、成分(B)を含有する点とともに成分(A)~(C)の配合比率が特定された「メイクアップの上に噴霧して使用する多層型メイクアップ保護化粧料」であるのに対し、甲6発明は、成分(B)を含有せず、成分(A)、(C)の配合比率が「(A)油溶性皮膜形成剤 0.2~50質量%
(C)揮発性油剤 5~80質量%」と特定された「使用感、化粧もち、耐水性及び塗布後の皮膚への定着安定性に優れた口紅、ファンデーション、アイシャドウ等に用いられる液状化粧料」である点。
イ-1 相違点2の判断
(ア)動機付けの有無及び他の甲号証の適用について
甲6には、記載(6d)において、甲6発明は「塗布具に好適に用いることができ、塗布部での液持ちが良く、化粧料の皮膚への使用感に優れ、さらに、パフや刷毛もしくは手指で皮膚へのばした場合にも良好な塗布感が得られる」と記載されているとおり、皮膚に塗布して使用することは記載されているが、メイクアップ保護のためにメイクアップの上に噴霧して使用することは何ら記載されていない。
したがって、甲6発明において、「メイクアップの上に噴霧して使用する多層型メイクアップ保護化粧料」の使用態様に変更する動機付けはそもそもない。
また、甲1の1には、記載(1-1a)のとおり、甲1発明の全成分表示があり、甲1の2には、記載(1-2b)のとおり、甲1発明が厳選した保湿・美容成分を配合した美容オイルinフェイスミストであり、メイクキープ成分配合でメイクの上からでも使用ができることが読み取れるものの、甲1の1及び甲1の2には、各成分の配合比率や各成分の組合せとフェイスミストとしての機能との関係等についての契機となるものは読み取れない。
したがって、甲1発明を参酌したとしても、「口紅、ファンデーション、アイシャドウ等に用いられる液状化粧料」である甲6発明において、「メイクアップの上に噴霧して使用する多層型メイクアップ保護化粧料」とすることや、その成分として「水」を加えた上で本件発明1の配合比率とすることは、当業者が容易になし得た事項であるとはいえない。
(イ)本件発明1の奏する効果について
本件発明1の奏する効果について、本件特許明細書の記載(カ)、記載(キ)には、メイクアップ保護化粧料として成分(A)~(C)を一定の配合比率で含有させることで、メイクアップの上から噴霧して使用したときに、噴霧使用時の霧の細かさに優れながらも、優れたメイクアップ保護効果を持つことが記載されている。
一方で、甲1の1、甲1の2、甲6には、成分(A)~(C)を一定の配合比率で含有するメイクアップ保護化粧料について、メイクアップの上から噴霧して使用したときに、噴霧使用時の霧の細かさに優れながらも、優れたメイクアップ保護効果を持つという効果について何ら記載されていないことから、本件発明1の奏する上記効果は当業者の予測し得ない、顕著なものといえる。
ウ-1 よって、本件発明1は、甲6発明並びに甲1の1及び甲1の2に記載の技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
ア-2 本件発明2~4、6と甲6発明との対比
上記1(3)ア-2の記載と同様に、本件発明2~4、6と甲6発明との対比においても、相違点の一つとして相違点2が存在する。
イ-2 判断
上記ア-1~ウ-1で、本件発明1と甲6発明との対比判断をしたとおり、甲6発明との間で相違点2が存在する本件発明2~4、6は、甲6発明並びに甲1の1及び甲1の2に記載の技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(4)申立人の主張について
申立人は、申立書において、「トリメチルシロキシケイ酸」と「揮発性シリコーン」であるシクロペンタシロキサンを含む化粧料において、さらに水を含むこと、ミスト状化粧水とすること、及び多層型とすることは、甲1発明により公然実施されており、甲6発明と甲1発明とは化粧料の技術分野に属し、メイクキープを課題とする点で共通することから、甲1発明の特徴を甲6発明に適用することは、当業者が容易に想到し得るものである、と主張している。
しかしながら、上記(3)イ-1に記載のとおり、甲1発明と甲6発明とは化粧料の種類や配合が異なるものであるから、ともに化粧料の技術分野に属し、メイクキープを課題とするということのみをもって、甲1発明の特徴を甲6発明に適用することが当業者にとって容易に想到し得ることとはいえず、申立人の上記主張は採用できない。
(5)まとめ
したがって、本件発明1~4、6は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された、又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第6号証に記載された発明及び甲第1号証の1、甲第1号証の2に記載された技術的事項に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものではないため、請求項1~4、6に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。
4 申立理由(4)について
(1)甲7の記載事項
本件優先日前に頒布された刊行物である甲7には、以下の事項が記載されている。
記載(7a)
「【請求項1】
下記成分(A)~(C)を含有することを特徴とする日焼け止め化粧料。
(A)N-アシルアミノ酸又はその塩で表面処理された微粒子酸化亜鉛
(B)1気圧下での沸点が200℃以下の揮発性油分
(C)トリメチルシロキシケイ酸
・・・
【請求項4】
前記成分(B)が、デカメチルテトラシロキサン、ヘキサメチルジシロキサン、ドデカメチルペンタシロキサン、ジメチルポリシロキサン、カプリリルメチコン、メチルトリメチコン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン等のうち1種又は2種以上のシリコーン系揮発油分から選ばれたものである請求項1~3のいずれかに記載の日焼け止め化粧料。」(特許請求の範囲)
記載(7b)
「【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、柔軟な撥水膜を形成し、塗布後の肌の乾燥感・つっぱり感がなく、使用感に優れ、高い紫外線防御効果を有する日焼け止め化粧料を提供することにある。」
記載(7c)
「【0030】
また、本発明に係る日焼け止め化粧料において、成分(B)の1気圧下での沸点が200℃以下の揮発性油分の含有量は、日焼け止め化粧料全量に対して、1.0~50.0質量%であることが好ましく、より好ましくは10.0~40.0質量%、さらに好ましくは15~35質量%である。成分(B)の含有量1.0質量%未満であると、塗布時の肌なじみといった揮発性油分による使用感が不十分なことがあり、50.0質量%を超えると、配合できる成分(A)、(C)、不揮発性油分といった他の成分の含有量が相対的に減少し、効果が十分に発揮されず、揮発性油分が揮発した後の粉ぎしみを促進することがある。」
【0031】
本発明に係る日焼け止め化粧料に採用される成分(C)のトリメチルシロキシケイ酸としては、化粧料に通常用いられるものであれば限定されない。もっとも、シロキサン構造を主骨格とした架橋構造を持つ化合物が好ましい。
【0032】
また、トリメチルシロキシケイ酸は、使用感と化粧持ちの点から、分子量1000~10000のものが好ましく、2000~9000のものがより好ましく、3000~6000のものがさらに好ましい。
【0033】
これらの成分(C)トリメチルシロキシケイ酸は、市販されているものを用いることができる。例えば、予め溶剤に溶解させたKF-7312T、KF-7312J、KF-7312K(以上、信越化学工業社製)、RSN-0749 RESIN(東レ・ダウコーニング社製)、SS4230、SS4267(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製)等を挙げることができる。また、溶剤に溶解していないフレーク状のものとしては、MQ-1600 Solid Resin(東レ・ダウコーニング社製)、SR1000(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製)等を挙げることができ、これらを1種又は2種以上を用いることもできる。特に、化粧料への配合のしやすさの点から、溶剤に溶解されたトリメチルシロキシケイ酸を用いることがより好ましい。
【0034】
前記した成分(C)の含有量は、日焼け止め化粧料全量に対して、皮膜形成剤の純分として0.2~15.0質量%であり、好ましくは0.5~10.0質量%であり、さらに好ましくは1.0~5.0質量%である。
【0035】
成分(C)の含有量が、0.2質量%未満であると、耐水性の効果が充分に発揮されず、15.0質量%を超えると、使用感の悪さや製剤化が困難になる等の問題を生じる場合がある。」
記載(7d)
「【0038】
本発明に係る日焼け止め化粧料は、上記成分(A)~成分(C)の他にも通常、化粧料に使用されるその他の任意成分を含有し得る。例えば、水、他の油成分、粉体、界面活性剤、多価アルコール、低級アルコール、油ゲル化剤、水溶性高分子又は増粘剤、皮膜形成剤、中和剤、pH調製剤、粉体成分、紫外線散乱剤、紫外線吸収剤等、金属イオン封鎖剤、防腐剤及び抗菌剤、保湿剤、ビタミン類、美容成分及び/又は薬効成分、香料等を、本発明の効果を損なわない範囲内で、目的とする製品に応じて適宜配合し得る。
【0039】
本発明に用いられる水は特に制限はなく、脱イオン水、蒸留水、精製水、温泉水、海水、並びにローズ水、ラベンダー水、及びニオイテンジクアオイ水等の植物由来の水蒸気蒸留水等を挙げることができる。これらの水を、1種又は2種以上組み合わせて使用することもできる。」
記載(7e)
「【0065】
本発明の日焼け止め化粧料の剤形は任意であり、液状、乳液状、クリーム状、ペースト状、固形状、粉末状等に適応が可能であり、さらにシート、発泡体に含浸する形状や、スプレー状、ムース状等としても適用できる。」
記載(7f)
「【0084】
実施例3:油中水型乳化日焼け止めローション(2層タイプ)
配合成分量%
(1)NAI-Z-300A[成分(A)](*4) 55
(2)ステアリン酸処理微粒子酸化チタン 5
(3)メチルポリシロキサン(1.5cs)[成分(B)] 15
(4)ネオペンタン酸イソデシル 2
(5)スクワラン 1
(6)トリメチルシロキシケイ酸[成分(C)](*2) 3
(7)ポリグリセリル-3ポリジメチルシロキシエチルジメチコン 3
(8)ジメチルジステアリルアンモニウムヘクトライト 0.5
(9)ポリメチルシルセスキオキサン 3
(10)精製水 残量
(11)グリセリン 3
(12)1,3ブチレングリコール 2
(13)塩化ナトリウム 1
*4:NAI-Z-300A(NAI-Z-300[成分(A)]、デカメチルシクロペンタシロキサン(成分(B))、PEG-9ポリジメチルシロキシエチルジメチコンを含むペースト状プレミックス品(三好化成社製))
【0085】
製造方法:成分1~9を混合攪拌した。その後、混合溶解をした成分10~14の水相を添加して乳化を行ない、目的の油中水型乳化日焼け止めローションを得た。
【0086】
(評価)
得られた油中水型乳化日焼け止めローションについて、実施例1、2及び比較例1~5と同様の評価を行ったところ、全ての項目に優れた日焼け止めローションであった。」
(2)甲7に記載された発明
記載(7a)のとおり、甲7には、(B)1気圧下での沸点が200℃以下の揮発性油分、(C)トリメチルシロキシケイ酸を含有する日焼け止め化粧料が記載されており、記載(7c)のとおり、成分(B)の1気圧下での沸点が200℃以下の揮発性油分の含有量は、日焼け止め化粧料全量に対して、1.0~50.0質量%であり、成分(C)の含有量は、日焼け止め化粧料全量に対して、皮膜形成剤の純分として0.2~15.0質量%であること、また、記載(7d)のとおり、水を含有し得ることも記載されている。
したがって、甲7に記載された発明として、次の発明を認定できる。
「以下の成分;
トリメチルシロキシケイ酸 0.2~15質量%
水
1気圧下での沸点が200℃以下の揮発性油分 1.0~50.0質量%
を含有する日焼け止め化粧料。」(以下「甲7発明」という。)
(3) 対比・判断
ア-1 本件発明1と甲7発明との対比
甲7発明の「トリメチルシロキシケイ酸」は、本件発明1の「(A)油溶性皮膜形成剤」に、甲7発明の「1気圧下での沸点が200℃以下の揮発性油分」は、本件発明1の「(C)揮発性油剤」に、それぞれ相当する。
したがって、本件発明1と甲7発明とは、
「以下の成分(A)~(C);
(A)油溶性皮膜形成剤
(B)水
(C)揮発性油剤
を含有する化粧料。」
である点で一致し、以下の点で相違する。
相違点3:本件発明1が、「(A)油溶性皮膜形成剤 0.05~8質量%
(B)水 40~95質量%
(C)揮発性油剤 1~40質量%」と、成分(A)~(C)の配合比率が特定された「メイクアップの上に噴霧して使用する多層型メイクアップ保護化粧料」であるのに対し、甲7発明は、成分(A)、(C)の配合比率が「(A)油溶性皮膜形成剤 0.2~15質量%
(C)揮発性油剤 1.0~50.0質量%」と特定された「日焼け止め化粧料」である点。
イ-1 相違点3の判断
(ア)動機付けの有無及び他の甲号証の適用について
甲7には、記載(7b)における発明の目的として、柔軟な撥水膜を形成し、塗布後の肌の乾燥感・つっぱり感がなく、使用感に優れ、高い紫外線防御効果を有する日焼け止め化粧料を提供することは記載されているが、メイクアップ保護のためにメイクアップの上に噴霧して使用することは何ら記載されていない。
したがって、甲7発明において、「メイクアップの上に噴霧して使用する多層型メイクアップ保護化粧料」の使用態様に変更する動機付けはそもそもない。
また、甲1の1には、記載(1-1a)のとおり、甲1発明の全成分表示があり、甲1の2には、記載(1-2b)のとおり、甲1発明が厳選した保湿・美容成分を配合した美容オイルinフェイスミストであり、メイクキープ成分配合でメイクの上からでも使用ができることが読み取れるものの、甲1の1及び甲1の2には、各成分の配合比率や各成分の組合せとフェイスミストとしての機能との関係等についての契機となるものは読み取れない。
したがって、甲1発明を参酌したとしても、「日焼け止め化粧料」である甲7発明において、「メイクアップの上に噴霧して使用する多層型メイクアップ保護化粧料」とすることや、その配合比率を本件発明1のものとすることは、当業者が容易になし得た事項であるとはいえない。
(イ)本件発明1の奏する効果について
本件発明1の奏する効果について、本件特許明細書の記載(カ)、記載(キ)には、メイクアップ保護化粧料として成分(A)~(C)を一定の配合比率で含有させることで、メイクアップの上から噴霧して使用したときに、噴霧使用時の霧の細かさに優れながらも、優れたメイクアップ保護効果を持つことが記載されている。
一方で、甲1の1、甲1の2、甲7には、成分(A)~(C)を一定の配合比率で含有するメイクアップ保護化粧料について、メイクアップの上から噴霧して使用したときに、噴霧使用時の霧の細かさに優れながらも、優れたメイクアップ保護効果を持つという効果について何ら記載されていないことから、本件発明1の奏する上記効果は当業者の予測し得ない、顕著なものといえる。
ウ-1 よって、本件発明1は、甲7発明並びに甲1の1及び甲1の2に記載の技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
ア-2 本件発明2~4、6と甲7発明との対比
上記1(3)ア-2の記載と同様に、本件発明2~4、6と甲7発明との対比においても、相違点の一つとして相違点3が存在する。
イ-2 判断
上記ア-1~ウ-1で、本件発明1と甲7発明との対比判断をしたとおり、甲7発明との間で相違点3が存在する本件発明2~4、6は、甲7発明並びに甲1の1及び甲1の2に記載の技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(4)申立人の主張について
申立人は、申立書において、甲7発明におけるトリメチルシロキシケイ酸、水、1気圧下での沸点が200℃以下の揮発性油分の含有比率は、本件発明1の含有比率に相当する、甲7発明における「スプレー状」、「2層タイプ」は、本件発明1の「メイクアップの上に噴霧して使用する」、「多層型メイクアップ保護化粧料」に相当する、と主張している。
しかしながら、上記(3)ア-1及びイ-1に記載のとおり、甲7発明の「トリメチルシロキシケイ酸」は、本件発明1の「(A)油溶性皮膜形成剤」に、甲7発明の「1気圧下での沸点が200℃以下の揮発性油分」は、本件発明1の「(C)揮発性油剤」に相当するとしても、甲7発明におけるトリメチルシロキシケイ酸、水、1気圧下での沸点が200℃以下の揮発性油分の含有比率は、本件発明1の含有比率と一部重複するところがあるものの、本件発明1の含有比率に包含されない範囲も含むものであるから、各成分の含有比率の点についてまで相当関係にあるとはいえない。
また、甲7には、「スプレー状」の剤形を適用できることや、「2層タイプ」とする処方例が記載されているものの、上記(3)イ-1に記載のとおり、メイクアップ保護のためにメイクアップの上に噴霧して使用することは何ら記載されておらず、「スプレー状」、「2層タイプ」との記載のみをもって、本件発明1の「メイクアップの上に噴霧して使用する」、「多層型メイクアップ保護化粧料」に相当するとは認められない。
よって、申立人の上記主張は採用できない。
(5)まとめ
したがって、本件発明1~4、6は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布され、又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第7号証に記載された発明及び甲第1号証の1、甲第1号証の2に記載された技術的事項に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものではないため、請求項1~4、6に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。
5 申立理由(5)について
(1)甲8の記載事項
本件優先日前に頒布された刊行物である甲8には、以下の事項が記載されている。
記載(8a)
「【請求項1】
次の成分(A)、(B)及び(C)、
(A)アクリル-シリコーン系グラフト共重合体及び/またはトリメチルシロキシケイ酸
(B)下記平均組成式(1)で示される多価アルコール変性シリコーンR1aR2bR3cSiO(4-a-b-c)/2(1)
・・・
(C)揮発性油剤を含有することを特徴とする化粧料用皮膜形成組成物。
【請求項2】
成分(A)を1~94質量%、成分(B)を0.1~30質量%、成分(C)を5~95質量%含有することを特徴とする請求項1に記載の化粧料用皮膜形成組成物。
【請求項3】
前記請求項1又は2に記載の化粧料用皮膜形成組成物を配合することを特徴とする化粧料。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の化粧料用皮膜形成組成物を1~80質量%配合することを特徴とする化粧料。
【請求項5】
口唇化粧料であることを特徴とする請求項3又は4に記載の化粧料。
【請求項6】
アイメークアップ化粧料であることを特徴とする請求項3又は4に記載の化粧料。
【請求項7】
油中水型化粧料であることを特徴とする請求項3~6のいずれかに記載の化粧料。」(特許請求の範囲)
記載(8b)
「【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは鋭意検討の結果、特定のシリコーン樹脂と特定の多価アルコール変性シリコーンと揮発性油剤を含有する化粧料用皮膜形成組成物によって形成された皮膜が、耐水性および耐油性を有し、透明で柔軟性があり、さらに、この皮膜形成組成物を化粧料に配合することにより、二次付着防止効果や化粧持続性に優れ、べたつきのない軽い伸びと柔軟性のある化粧膜を形成することができ、しかも経時安定性に優れた化粧料が得られることを見出し、本発明を完成させた。
また、特に、前記化粧料が油中水型化粧料であると、肌上の伸びが軽くてみずみずしくべたつきがない優れた使用感を有し、二次付着防止効果に優れ、柔軟性に優れた化粧膜を形成することを見出し本発明を完成した。」
記載(8c)
「【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下本発明を詳細に説明する。
本発明の成分(A)はアクリル-シリコーン系グラフト共重合体またはトリメチルシロキシケイ酸から選ばれるものである。
本発明に用いられる成分(A)のアクリル-シリコーン系グラフト共重合体は、分子中にラジカル重合性基を有するオルガノポリシロキサン化合物と、これ以外のラジカル重合性モノマーの1種又は2種以上とを共重合して得られるアクリル-シリコーン系グラフト共重合体であり、皮膜を形成し、耐水性および耐油性を向上できるものであれば、いずれのものも使用することができる。
・・・
【0012】
本発明の化粧料用皮膜形成組成物は、少なくともトリメチルシロキシケイ酸を含有することが望ましいが、アクリル-シリコーン系グラフト共重合体とトリメチルシロキシケイ酸の両者を組み合わせて用いることにより、皮膜に十分な耐水性および耐油性、透明性を付与する効果が向上するため好ましい。
アクリル-シリコーン系グラフト共重合体及び/またはトリメチルシロキシケイ酸の含有量は特に限定されないが、該皮膜形成組成物全量中1~94質量%(以下、単に「%」で示す。)、好ましくは10~60%である。この範囲であれば、皮膜に十分な耐水性および耐油性、透明性を付与することができ好ましい。
【0013】
本発明に用いられる成分(B)の多価アルコール変性シリコーンは、透明性が良好で、べたつきのない柔軟性のある皮膜を形成することができるもので下記平均組成式(1)で示される多価アルコール変性シリコーンであり、具体的に特開2004-231608号公報に記載されているもの等があげられる。
・・・
【0018】
成分(B)の含有量は特に限定されないが、該皮膜形成組成物中に0.1~30%が好ましく、特に5~25%が好ましい。この範囲であれば、透明感が良好で、べたつきのない柔軟性のある皮膜を形成することができるため好ましい。
【0019】
本発明に用いられる成分(C)の揮発性油剤は、成分(A)及び成分(B)と混合物を作ることにより成分(A)及び成分(B)を安定に配合し、成分(A)を溶解し、粘度調整を発現させるものである。例えば、軽質イソパラフィン、低重合度ジメチルポリシロキサン、メチルトリメチコン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン等の揮発性シリコーンが挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。これらの中でも、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサンが溶解性や粘度調整の点でより好ましい。
【0020】
本発明における成分(C)の含有量は、特に限定されないが皮膜形成組成物中に5~95%が好ましく、特に33~83%が好ましい。この範囲であれば、耐水性および耐油性に優れ、透明で柔軟性が良好な皮膜を形成することができるため好ましい。」
記載(8d)
「【0021】
本発明の化粧料用皮膜形成組成物は、各種化粧料に配合することができる。配合量は特に限定されないが1~80%が好ましく、特に5~60%が好ましい。
本発明の化粧料は油中水型が好ましいが、その場合は水も必須成分となる。当該皮膜形成組成物は、予め組成物を製造して化粧料に配合することもできるが、形成される膜に含有されれば、化粧料の製造工程はいずれの方法であってもかまわない。」
(2)甲8に記載された発明
記載(8a)のとおり、甲8には、(A)アクリル-シリコーン系グラフト共重合体及び/またはトリメチルシロキシケイ酸、(C)揮発性油剤を含有することを特徴とする化粧料用皮膜形成組成物や、当該化粧料用皮膜形成組成物を配合した口唇化粧料やアイメークアップ化粧料などの化粧料が記載されており、記載(8d)のとおり、水を加えて油中水型化粧料として提供できること、また、記載(8c)のとおり、(A)アクリル-シリコーン系グラフト共重合体及び/またはトリメチルシロキシケイ酸の含有量は該皮膜形成組成物全量中1~94質量%とし、(C)揮発性油剤の含有量は該皮膜形成組成物全量中5~95%とすることも記載されている。
したがって、甲8に記載の発明として、次の発明を認定できる。
「以下の成分;
トリメチルシロキシケイ酸 1~94質量%
水
揮発性油剤 5~95質量%
を含有する化粧料。」(以下、「甲8発明」という。)
(3) 対比・判断
ア-1 本件発明1と甲8発明との対比
甲8発明の「トリメチルシロキシケイ酸」は、本件発明1の「(A)油溶性皮膜形成剤」に、甲8発明の「揮発性油剤」は、本件発明1の「(C)揮発性油剤」に相当する。
したがって、本件発明1と甲8発明とは、
「以下の成分(A)~(C);
(A)油溶性皮膜形成剤
(B)水
(C)揮発性油剤
を含有する化粧料。」
である点で一致し、以下の点で相違する。
相違点4:本件発明1が、「(A)油溶性皮膜形成剤 0.05~8質量%
(B)水 40~95質量%
(C)揮発性油剤 1~40質量%」と、成分(A)~(C)の配合比率が特定された「メイクアップの上に噴霧して使用する多層型メイクアップ保護化粧料」であるのに対し、甲8発明は、成分(A)、(C)の配合比率が「(A)油溶性皮膜形成剤 1~94質量%
(C)揮発性油剤 5~95質量%」と特定された「化粧料」である点。
イ-1 相違点4の判断
(ア)動機付けの有無及び他の甲号証の適用について
甲8には、記載(8b)において、特定のシリコーン樹脂と特定の多価アルコール変性シリコーンと揮発性油剤を含有する化粧料用皮膜形成組成物を化粧料に配合することにより、二次付着防止効果や化粧持続性に優れ、べたつきのない軽い伸びと柔軟性のある化粧膜を形成することができ、しかも経時安定性に優れた化粧料が得られることは記載されているが、当該化粧料として、記載(8a)には口唇化粧料やアイメークアップ化粧料が記載されており、メイクアップの上に噴霧して使用するメイクアップ保護化粧料とすることは何ら記載されていない。
したがって、甲8発明において、「メイクアップの上に噴霧して使用する多層型メイクアップ保護化粧料」の使用態様に変更する動機付けはそもそもない。
また、甲1の1には、記載(1-1a)のとおり、甲1発明の全成分表示があり、甲1の2には、記載(1-2b)のとおり、甲1発明が厳選した保湿・美容成分を配合した美容オイルinフェイスミストであり、メイクキープ成分配合でメイクの上からでも使用ができることが読み取れるものの、甲1の1及び甲1の2には、各成分の配合比率や各成分の組合せとフェイスミストとしての機能との関係等についての契機となるものは読み取れない。
したがって、甲1発明を参酌したとしても、口唇化粧料やアイメークアップ化粧料としての提供を念頭に置いた甲8発明において、「メイクアップの上に噴霧して使用する多層型メイクアップ保護化粧料」とすることや、その配合比率を本件発明1のものとすることは、当業者が容易になし得た事項であるとはいえない。
(イ)本件発明1の奏する効果について
本件発明1の奏する効果について、本件特許明細書の記載(カ)、記載(キ)には、メイクアップ保護化粧料として成分(A)~(C)を一定の配合比率で含有させることで、メイクアップの上から噴霧して使用したときに、噴霧使用時の霧の細かさに優れながらも、優れたメイクアップ保護効果を持つことが記載されている。
一方で、甲1の1、甲1の2、甲7には、成分(A)~(C)を一定の配合比率で含有するメイクアップ保護化粧料について、メイクアップの上から噴霧して使用したときに、噴霧使用時の霧の細かさに優れながらも、優れたメイクアップ保護効果を持つという効果について何ら記載されていないことから、本件発明1の奏する上記効果は当業者の予測し得ない、顕著なものといえる。
ウ-1 よって、本件発明1は、甲8発明並びに甲1の1及び甲1の2に記載の技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
ア-2 本件発明2~6と甲8発明との対比
上記1(3)ア-2の記載と同様に、本件発明2~6と甲8発明との対比においても、相違点の一つとして相違点4が存在する。
イ-2 判断
上記ア-1~ウ-1で、本件発明1と甲8発明との対比判断をしたとおり、甲8発明との間で相違点4が存在する本件発明2~6は、甲8発明並びに甲1の1及び甲1の2に記載の技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(4)申立人の主張について
申立人は、申立書において、甲8発明におけるトリメチルシロキシケイ酸、水、揮発性油剤の含有比率は、本件発明1の含有比率に相当する、「トリメチルシロキシケイ酸」と「揮発性シリコーン」であるシクロペンタシロキサンを含む化粧料において、ミスト状化粧水とすることや多層型とすることは、甲1発明により公然実施されており、甲8と甲1発明とは化粧料の技術分野に属し、メイクキープを課題とする点で共通することから、甲1発明の特徴を甲8発明に適用することは、当業者が容易に想到し得るものである、と主張している。
しかしながら、上記(3)ア-1及びイ-1に記載のとおり、甲8発明の「トリメチルシロキシケイ酸」は、本件発明1の「(A)油溶性皮膜形成剤」に、甲8発明の「揮発性油剤」は、本件発明1の「(C)揮発性油剤」に相当するとしても、甲8発明におけるトリメチルシロキシケイ酸、水、揮発性油剤の含有比率は、本件発明1の含有比率と一部重複するところがあるものの、本件発明1の含有比率に包含されない範囲も含むものであるから、各成分の含有比率の点についてまで相当関係にあるとはいえない。
また、上記(3)イ-1に記載のとおり、甲1発明と甲8発明とは化粧料の種類や配合が異なるものであるから、ともに化粧料の技術分野に属し、メイクキープを課題とするということのみをもって、甲1発明の特徴を甲8発明に適用することが当業者にとって容易に想到し得ることとはいえない。
よって、申立人の上記主張は採用できない。
(5)まとめ
したがって、本件発明1~6は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布され、又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第8号証に記載された発明及び甲第1号証の1、甲第1号証の2に記載された技術的事項に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものではないため、請求項1~6に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。
6 申立理由(6)について
(1)本件発明に関する特許法36条6項2号(明確性要件)の判断の前提
特許法36条6項2号は、特許請求の範囲の記載に関し、特許を受けようとする発明が明確でなければならない旨規定する。この趣旨は、特許請求の範囲に記載された発明が明確でない場合には、特許の付与された発明の技術的範囲が結果的に不明確となり、第三者に不測の不利益を及ぼすことがあり得るため、そのような不都合な結果を防止することにある。そして、特許を受けようとする発明が明確であるか否かは、特許請求の範囲の記載のみならず、願書に添付した明細書の記載及び図面を全体として理解した上で、また、当業者の出願時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるか否かという観点から判断される。
(2)判断
ア 本件発明1における「(A)油溶性皮膜形成剤」について、本件特許明細書の記載(エ)には、「揮発性油等の油剤に可溶で、皮膜を形成するものであり、通常の化粧料に使用できるものであれば、いずれのものも使用できる。」との記載とともに、包含される化合物の例が列挙されている。また、本件発明1における「(C)揮発性油剤」についても、本件特許明細書の記載(オ)には、「20℃、常圧において液状であり揮発性を有するものであれば特に限定されず、粘度、起源を問わない。」との記載とともに、包含される化合物の例が列挙されている。
イ してみると、「(A)油溶性皮膜形成剤」には、揮発性油等の油剤に可溶で、皮膜を形成するという特性を有する、通常の化粧料に使用される化合物全般が包含され、また、「(C)揮発性油剤」についても、20℃、常圧において液状であり揮発性を有する化合物全般が包含されることは明らかであり、列挙されている具体的な化合物の例や技術常識を参酌すれば、それらに包含される化合物を当業者は把握できると認められることから、特許請求の範囲の記載が、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるとはいえない。
また、本件発明1を引用する本件発明2~6についても同様である。
ウ 申立人は、申立書において、「(A)油溶性皮膜形成剤」及び「(C)揮発性油剤」が機能により特定されていることから、当業者が明確に理解することができない旨を主張している。
しかしながら、上記イに記載のとおり、本願特許明細書の記載全体を参酌すれば、「(A)油溶性皮膜形成剤」及び「(C)揮発性油剤」に包含される化合物の範囲を当業者は把握できるものといえ、機能により特定されていることのみをもって、明確に理解することができないとはいえない。
よって、申立人の上記主張は採用できない。
(3)まとめ
したがって、本件発明1~6の特許請求の範囲の記載は特許法第36条第6項第2号に適合するものであり、本件特許は特許法第36条第6項に規定する要件を満たした特許出願に対してされたものである。
7 申立理由(7)について
(1)本件発明に関する特許法第36条第6項第1号の判断の前提
特許請求の範囲の記載が明細書のサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載又はその示唆により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。
(2)判断
ア 課題の認定
本件発明1は、特許請求の範囲、明細書の全体の記載事項(特に、記載(ア))及び出願時の技術常識からみて、「噴霧使用時の霧の細かさに優れながらも、優れたメイクアップ保護効果を持つ、メイクアップ保護化粧料を提供すること」を解決しようとする課題とするものであると認められる。
イ 課題を解決するための手段について
上記課題を解決するための手段について、本件特許明細書の記載(ウ)~(オ)には、(A)油溶性皮膜形成剤、(B)水を40~95質量%、(C)揮発性油剤を含有するメイクアップ保護化粧料を提供すること、また、(A)油溶性皮膜形成剤を0.05~8質量%、(C)揮発性油剤を1~40質量%とすることが記載されているとおり、各成分の上下限の技術的意義の記載も存在し、本件特許明細書の記載(キ)には、本件発明に対応する具体的実施例の記載もあるから、それらの記載を参考にすれば、本件の発明の詳細な説明には、当業者が本件発明の課題を解決できることを認識できるといえる。
ウ 申立人は、申立書において、本件特許明細書の実施例では「油溶性皮膜形成剤」及び「揮発性油剤」としては特定の化合物を用いた例のみが記載されており、具体的に実証された物質以外の任意の「油溶性皮膜形成剤」と「揮発性油剤」との組合せによっても課題解決できるとは認められない旨を主張している。
しかしながら、上述のとおり、当業者であれば、本件発明のメイクアップ保護化粧料の各成分に関する一般的記載と実施例の記載を参考に、「油溶性皮膜形成剤」と「揮発性油剤」に包含される化合物全般を用いた場合においても「噴霧使用時の霧の細かさに優れながらも、優れたメイクアップ保護効果を持つ」ことは理解できるといえるから、申立人の上記主張は採用できない。
(3)まとめ
したがって、本件発明1~6の特許請求の範囲の記載は特許法第36条第6項第1号に適合するものであり、本件特許は特許法第36条第6項に規定する要件を満たした特許出願に対してされたものである。
第5 むすび
以上のとおり、本件請求項1~6に係る特許は、特許異議申立人が申し立てた理由及び証拠によっては、取り消されるべきものとはいえない。
また、ほかに本件請求項1~6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2022-700367