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特許異議申立

2021-700963

血管新生剤およびその製造方法

審判番号
2021-700963
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2019-539625
登録番号
6854904
請求日
2021年10月06日
審決日
2022年07月14日
公報発行日
2022年10月28日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】富士フイルム株式会社
  • 【権利者代理人】特許業務法人特許事務所サイクス
  • 【異議申立人】大村 豊
審判長/審判官
  • 審判長 藤原 浩子
  • 審判官 田中 耕一郎
  • 審判官 原田 隆興
分類
P1651.113-YAA(A61L) / P1651.121-YAA(A61L) / P1651.537-YAA(A61L)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第120条の5第5項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第2号
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第6854904号発明「血管新生剤およびその製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第6854904号の明細書を、訂正請求書に添付された訂正明細書のとおり訂正することを認める。 特許第6854904号の請求項1~15に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第6854904号(以下「本件特許」という。)の請求項1~15に係る特許についての出願は、平成30年8月30日(優先権主張 平成29年8月30日、平成30年2月26日 いずれも日本国(JP))を国際出願日とする特願2019-539625号であって、令和3年3月18日にその特許権の設定登録(請求項の数:15)がなされ、令和3年4月7日に特許掲載公報が発行された。 本件特許異議の申立ての主な経緯は、次のとおりである。 令和3年10月 6日 :特許異議申立人 大村豊(以下「申立人」とい う。)による請求項1~15に係る特許に対す る特許異議の申立て 令和4年 1月25日付け:取消理由通知書 同年 4月 1日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出 その後、令和4年4月12日付けで、当審から申立人に対して意見書を提出する機会を与えたが(特許法第120条の5第5項)、申立人から意見書は提出されなかった。 第2 訂正の適否についての判断 1 訂正の内容 訂正請求による訂正(以下「本件訂正」という。)の内容は、以下のとおりである。なお、下線は当審合議体が付した。 明細書の段落【0022】に、 「(1)生体親和性高分子ブロック (1-1)生体親和性高分子 ・・・アクリル、ステンレス、チタン、シリコーン、・・・」 と記載されているのを、 「(1)生体親和性高分子ブロック (1-1)生体親和性高分子 ・・・アクリル、シリコーン、・・・」 に訂正する。 2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否 本件訂正は、訂正前の段落【0022】における「生体親和性高分子」の説明において、生体親和性高分子の例として記載された「ステンレス、チタン」を除くものであり、「ステンレス、チタン」が金属であって生体親和性高分子ではないことは当業者に自明の技術的事項であるから、「ステンレス、チタン」は誤って記載されたものであって、これを除く本件訂正は、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 そして、本件訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものであり、また、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 3 小括 以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 したがって、本件特許の明細書を、訂正請求書に添付された訂正明細書のとおり訂正することを認める。 第3 本件発明 本件特許の請求項1~15に係る発明は、その特許請求の範囲の請求項1~15に記載された事項により特定される、次のとおりのものである(以下、それぞれ「本件発明1」~「本件発明15」という。また、これらをまとめて「本件発明」ともいう。)。 「【請求項1】 (A)細胞構造体、および(B)前記細胞構造体を内包する免疫隔離膜、を含む血管新生剤であって、細胞構造体が、複数個の生体親和性高分子ブロックと、少なくとも一種の複数個の間葉系幹細胞とを含み、複数個の前記間葉系幹細胞の隙間に、少なくとも1個の前記生体親和性高分子ブロックが配置されている細胞構造体として、含まれている、血管新生剤。 【請求項2】 前記間葉系幹細胞が、脂肪由来間葉系幹細胞または骨髄由来間葉系幹細胞である、請求項1に記載の血管新生剤。 【請求項3】 前記免疫隔離膜が、ポリマーを含む多孔質膜である、請求項1または2に記載の血管新生剤。 【請求項4】 前記多孔質膜の最小孔径が0.02μm~1.5μmである、請求項3に記載の血管新生剤。 【請求項5】 前記多孔質膜の厚みが10μm~250μmである、請求項3または4に記載の血管新生剤。 【請求項6】 前記多孔質膜が、孔径が最小となる層状の緻密部位を内部に有し、前記緻密部位から前記多孔質膜の少なくとも一方の表面に向かって厚み方向で孔径が連続的に増加している、請求項3から5の何れか一項に記載の血管新生剤。 【請求項7】 前記緻密部位の厚みが0.5μm~30μmである、請求項6に記載の血管新生剤。 【請求項8】 前記多孔質膜の最小孔径と最大孔径との比が3.0~20.0である、請求項3から7の何れか一項に記載の血管新生剤。 【請求項9】 前記多孔質膜が少なくとも一種のポリスルホンおよびポリビニルピロリドンを含む、請求項3から8の何れか一項に記載の血管新生剤。 【請求項10】 多孔質膜が熱可塑性または熱硬化性のポリマーを含む、請求項3から9の何れか一項に記載の血管新生剤。 【請求項11】 前記生体親和性高分子ブロック一つの大きさが20μm以上200μm以下である、請求項1から10の何れか一項に記載の血管新生剤。 【請求項12】 前記生体親和性高分子ブロックにおいて、生体親和性高分子が熱、紫外線または酵素により架橋されている、請求項1から11の何れか一項に記載の血管新生剤。 【請求項13】 前記生体親和性高分子ブロックが不定形である、請求項1から12の何れか一項に記載の血管新生剤。 【請求項14】 前記細胞構造体が、細胞1個当り0.0000001μg以上1μg以下の生体親和性高分子ブロックを含む、請求項1から13の何れか一項に記載の血管新生剤。 【請求項15】 細胞構造体を免疫隔離膜で内包する工程を含む、請求項1から14の何れか一項に記載の血管新生剤の製造方法。」 第4 取消理由の概要 請求項1~15に係る特許に対して、当審が特許権者に通知した取消理由の概要は、次のとおりである。 [取消理由1](新規性)本件特許の下記の請求項に係る発明は、その優先日前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当するので、下記の請求項に係る特許は、同法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 ・請求項1~3、5、10、12、13、15に対して甲10 [取消理由2](進歩性)本件特許の下記の請求項に係る発明は、その優先日前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、本件特許の優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、下記の請求項に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 ・請求項1に対して甲10 ・請求項2、3に対して甲10、6、12 ・請求項4、5、8~15に対して甲10、6、9、12 ・請求項1~5、8~15に対して甲9、6、10、12 [取消理由3](明確性)本件特許は、特許請求の範囲の記載が不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。 ・請求項1~15 <甲号証一覧> 申立人が特許異議申立書に添付して提出した各甲号証を、簡略化して、「甲1」等と記載する。 甲1:国際公開第2017/126612号 甲2:STEM CELLS, 2012, Vol.30, Issue 6, pp.1286-1296 甲3:特開2011-160854号公報 甲4:特開2004-331643号公報 甲5:特表平11-506951号公報 甲6:STEM CELLS Transl. Med., 2016, Vol.5, Issue 6, pp.773-781 甲7:日消外会誌、1996年、29巻4号、911~915頁 甲8:米国特許出願公開第2015/0335788号明細書 甲9:特表2016-516827号公報 甲10:Acta Biomaterialia, 2015, Vol.15, pp.65-76 甲11:国際公開第2014/133081号 甲12:科学研究費助成事業 研究成果報告書、機関番号14301、“間葉系幹細胞を活用した糖尿病に対する皮下細胞移植治療法の研究”、角昭一郎、2016年6月15日作成、2017年5月10日公開 第5 取消理由についての当審の判断 1 甲号証に記載された事項及び甲号証に記載された発明 (1)甲6、9、10、12に記載された事項 甲6、9、10、12には、以下の記載がある。なお、外国語で記載されている部分については、日本語訳で摘記する。下線は当審合議体が付した。以下同様である。 ア 甲6に記載された事項 (摘記6a) 「要約 間葉系幹細胞(MSC)ベースの治療法は、組織修復への応用について幅広い調査が行われているが、移植時の細胞の持続性と生着が不十分である。MSCスフェロイドは、in vitroでの生存率、抗炎症、血管新生の可能性の向上を示し、in vivoで移植すると血管新生を促進する。ただし、細胞が組織の細胞外マトリックスに関与し、凝集体から移動すると、これらの利点は失われる。細胞治療の有効性は、人工材料を使用すると一貫して改善され、スフェロイド機能を導くための生体材料の役割を調査する必要性を動機付ける。人工材料のスフェロイド活性に対する接着性の寄与を評価し、MSCの骨形成の可能性を促進するために、Arg-Gly-Asp(RGD)で修飾されたアルギン酸ヒドロゲルに閉じ込められたときのMSCスフェロイドの機能を非汚染の末修飾アルギン酸と比較した。材料に関係なく、MSCスフェロイドは、同数の解離細胞と比較して、カスパーゼ活性の低下と血管内皮増殖因子(VEGF)分泌の増加を示した。RGD修飾ヒドロゲルのMSCスフェロイドは、非修飾アルギン酸塩のスフェロイドよりも有意に高い細胞生存率を示した。培養5日後、RGD修飾ゲルのスフェロイドは同様のレベルのアポトーシスを示したが、非修飾ゲルのスフェロイドと比較してVEGF分泌が2倍以上増加した。全てのゲルは、皮下移植の8週間後に石灰化組織を含み、RGD修飾アルギン酸塩に捕捉された細胞は、非修飾ゲルの細胞よりも大きな石灰化を示した。免疫組織化学により、解離した対照と比較して、スフェロイドを含むゲルにおいてより拡散したオステオカルシン染色が確認された。この研究は、骨組織工学アプリケーションのためのMSCスフェロイドの生存と機能を指示する細胞教育生体材料の可能性を示している。」(773頁「ABSTRACT」の項) (摘記6b) 「材料及び方法 細胞培養 単一のドナーからのヒト骨髄由来MSCは、Lonza(Walkersville、MD、http://www.lonza.com)から購人し、特性評価することなく使用した。細胞は、10%ウシ胎児血清(JR Scientific、カリフォルニア州ウッドランド、http://wwwojrscientific.com、100units/ml ペニシリン、及び100μg/mlストレプトマイシン(Mediatech、バージニア州マナッサス、http://wwwcellgro.com)で、6代継代して使用するまで標準的な条件下で培養した。」(774頁「MATERIALS AND METHODS」の「Cell Culture」の項) イ 甲9に記載された事項 (摘記9a) 「【請求項1】 生きている細胞を保持するのに適した内部チャンバを備える生体分子カプセル化デバイスであって、前記内部チャンバは第1の半透層と第2の半透層との間に配置されると共に、前記第1の半透層及び前記第2の半透層は前記内部チャンバの周囲を取り囲む支持フレームに取り付けられており、前記支持フレームは第1のフレーム要素及び第2のフレーム要素を備えると共に、前記第1のフレーム要素及び前記第2のフレーム要素は協働して、前記第1の半透層及び前記第2の半透層同士の間が所定の離間距離となるように前記第1の半透層及び前記第2の半透層を位置決めしている、生体分子カプセル化デバイス。」(請求項1) (摘記9b) 「【請求項9】 前記第1の半透層及び前記第2の半透層のそれぞれが、前記内部チャンバと接触した膜層と、前記内部チャンバの外部に対して前記膜層を覆っているメッシュ層と、を備える、請求項1~3のいずれか一項に記載の生体分子カプセル化デバイス。」(請求項9) (摘記9c) 「【請求項11】 前記内部チャンバ内にカプセル化された哺乳類細胞を保持するのに適している、請求項1~10のいずれか一項に記載の生体分子カプセル化デバイス。」(請求項11) (摘記9d) 「【請求項23】 生きている哺乳類内で治療用薬剤を産生するための方法であって、請求項1~10のいずれか一項に記載された生体分子カプセル化デバイス内で治療用薬剤を産生するように改変された細胞をカプセル化するステップを含む方法。」(請求項23) (摘記9e) 「【0025】 幾つかの実施形態では細胞は、ハイドロゲルなどチャンバ内の生物的適合性マトリックス材の内部に囲繞されることや、生物的適合性マトリックス材上に配置されることがある。適当なマトリックス材には、ポリビニルアルコール(PVA)、アルギン酸塩、アガロース、ゼラチン、コラーゲン、ポリエチレングリコール、フィブリン及びキトサンが含まれる。このマトリックスは、例えばゲル、ミクロビーズ又はスポンジの形態とすることがある。このマトリックスはチャンバに対してデバイスの製造中に(すなわち、チャンバに細胞が導入される前に)追加されることがあり、また別法としてこのマトリックスは細胞の装填と同時にチャンバに追加されることがある。幾つかの実施形態では細胞は先ずマトリックス(例えば、多孔性のミクロビーズ)と合成され、次いでマトリックスはチャンバ内に装填される細胞を備えることがある。」(【0025】) (摘記9f) 「【0027】 [細胞] 本明細書に記載したデバイスにカプセル化し得る細胞は、任意のタイプの動物細胞(好ましくは哺乳類細胞)又はヒトの細胞を含むことが可能である。典型的にはこの細胞は、移植されると対象に対して治療上の恩恵となり得るものである。適当な細胞には、同種異系及び異種細胞、自家細胞又はこれらの派生種を含む。例えば、対象から幹細胞又は体細胞を取得しこれらの細胞から治療用細胞集団を導出することが望ましいことがある。このようなプロセスは典型的には、移植される細胞に対する免疫応答のリスクを低減させる。カプセル化デバイスでの使用に適した例示的な細胞型には、多能性幹細胞又はその派生種(好ましくは人工多能性幹(iPS)細胞、さらに好ましくはヒト人工多能性幹(hiPS)細胞)からなる凝集した又は単一の細胞懸濁液を含む。特定の実施形態では細胞は、膵臓始原細胞、グルコース応答性ベータ細胞、インスリン産生細胞、胚体内胚葉細胞、膵島細胞、腫瘍細胞、又はこれらの任意の組合せを備えることがある。」(【0027】) (摘記9g) 「【0040】 一実施形態では半透層は、細胞の生存及び機能にとって重要な酸素や他の分子は半透層を通って移動できるが、細胞(例えば、カプセル化された細胞及び/又は宿主の免疫系細胞)はこの孔を透過又は横断できないような孔寸法を有する。 【0041】 デバイスによって1つ又は複数の生物学的に活性な薬剤(例えば、血管新生因子、成長因子又はホルモン)がさらにカプセル化されるような実施形態では、半透層はさらにカプセル化された関心対象の生物学的に活性な物質が、宿主の組織や有機体内でデバイスの外部の標的細胞へのアクセスを提供するように当該層を通過できるようにすることが好ましい。」(【0040】、【0041】) (摘記9h) 「【0045】 幾つかの実施形態では半透層は2層以上の副層を備える(例えば、層状構造をしている)。例えば半透層は、2層、3層又は4層の副層を備えた積層構造とすることがある。特に好ましい実施形態では半透層は、内部チャンバと接触した第1の副層と、内部チャンバの外部に対して第1の副層を覆っている第2の副層と、を備える(すなわち、第1の副層がデバイスの内部に接した位置にあり且つ第2の副層がデバイスの外部に接した位置にある)。 ・・・ 【0048】 第2の副層は、典型的には血管新生膜の役割をするメッシュ層を備えることが好ましい。「血管新生膜」とは、この副層によってデバイスの周りにおいて宿主組織の脈管構造の成長が促進されることを意味する。第2の副層はまた、第1の副層に対する力学的支持又は力学的保護を提供することがある。」(【0045】~【0048】) ウ 甲10に記載された事項 (摘記10a) 「要約 生体材料に対する異物反応は、重度の線維症と限られた血管新生による多くの生物医学的デバイスの性能を損なう。間葉系幹細胞は、炎症状態を治療するためのサイトカインを分泌することが知られている。本研究では、脂肪由来間葉系幹細胞(ADSCs)のパラクリン産物が生体材料の微小環境に影響を及ぼすか、生体材料インプラントへの組織応答を改善できるかどうかを調査することを目的とする。モデルシステムは、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)ろ過膜からなるマクロカプセル化装置に、ADSCスフェロイドをロードすることによって構築された。インビトロでデバイスから拡散した可溶性ADSC因子は、内皮細胞の血管新生活性を促進し、マクロファージの分泌パターンに影響を及ぼした。インビボ試験は、ブランク又はADSC搭載デバイスをラットの皮下に埋め込むことによって行われた。4週間の移植後、ADSC搭載デバイスは、非細胞対照と比較して、血管新生がよくなり、線維性組織形成誘導が有意に低下した。この研究は、異物反応の理解を促進し、細胞ベースの治療のための生物医学的デバイスの組織反応を改善するための新しい方法を提案するだろう。」(65頁「Abstract」の項 ) (摘記10b) 「この研究では、化学物質以外に、細胞のパラクリン生成物を利用して、生体材料の生体適合性を改善できるかを調べることに興味がある。特に、間葉系幹細胞(MSC)は、骨髄、脂肪組織、臍帯、歯肉組織を含むさまざまな組織タイプに見られる多能性細胞である[19]。最近の臨床試験では、MSCは、移植片対宿主病や心筋梗塞などの免疫又は炎症状態の治療に治療効果を示している[20,21]。興味深いことに、これらの臨床研究の多くでは、MSCの注入/移植に起因する治療結果は、他のタイプの細胞に分化する能力ではなく、MSCによって産生される免疫調節又は抗炎症性パラクリン因子に起因すると考えられている[22,23]。実際、セクレトミック分析により、骨髄MSCは、プロスタグランジンE2(PGE2)、一酸化窒素(NO)、トランスフォーミング成長因子ベータ1(TGF-β1)などの免疫調節サイトカイン、血管内皮増殖因子(VEGF)や線維芽細胞増殖因子-2(FGF-2)などの血管新生促進因子を放出できることが示されている[21,24,25]。」(66頁左欄12~30行) (摘記10c) 「2.3.免疫隔離デバイスの準備 単層構造のPTFEろ過膜(BioporeTM、Millipore、米国)をモデルデバイスの作製のための免疫保護層として使用した。膜は厚さ25μmで、直径0.45μmの細孔を含ませた。ポリエチレンテレフタレート(PET)メッシュ(SAATItechTM、Satti、イタリア)を使用して、デバイスが完全な状態を保つための機械的支持を行った。メッシュの開口部の幅は250μmだった。デバイスを製造するために、PTFE膜とPETメッシュを適切な長方形にカットした。2枚の内側にあるPTFE膜は、PETメッシュの2つの層の間に置かれた。ポリエチレン(PE)チューブ(BD Biosciences、カリフォルニア州サンノゼ)を2つのPTFE層の間にアクセスポートとして配置した。膜は、PEチューブと一緒に金型内に配置され、20kHzの超音波溶接機(BNS-2020、中国、深セン)によって融合された。膜を密閉してチャンバを形成した後、デバイスの端を溶接領域に沿ってトリミングした。次に、デバイスを75%エタノール水溶液に少なくとも3時間浸し、滅菌PBSで洗浄し、将来の使用のために保管した。」(66頁右欄「2.3 Preparation of the immuneisolation device」の項) (摘記10d) 「2.4. ADSCスフェロイドの培養、特性評価、ローディング ADSCスフェロイドを生成するために、ADSCを1ウェルあたり100,000細胞の超低付着24ウェルマイクロプレートに播種した。マイクロプレートをオービタルシェーカーに置き、160rpmで回転させた。24時間後、25個のマイクロウェルから吸引して集めた多細胞スフェロイドを一緒にした。次に、スフェロイドをDPBSで洗浄し、1000rpmで5分間の遠心分離により沈殿させた。沈殿したスフェロイドは、合計250万個の細胞と約10μlの体積で、40μlのアガロースプレゲル溶液に再懸濁した。100μlの精密シリンジ(Hamilton、スイス)を介してポートチューブを通して免疫隔離チャンバに注入された。次に、ポートを滅菌シリコン医療用接着剤(Dow-corning、米国)で密封した。次に、デバイスを4℃に冷却し、その温度で10分間維持して、アガロースを固化した。次に、ロードした各デバイスを60mm培養皿に置き、さらに実験するために6mlの完全なADSC培地に浸した。 24ウェルマイクロプレート上で培養されたスフェロイドのサイズは、位相差画像(IX71、オリンパス、日本)によって分析された。各マイクロプレートについて、175個のスフェロイドがランダムに選択され、その直径がImageJソフトウェア分析によって決定された。高解像度の形態を得るために、スフェロイドを室温で30分間2.5%グルタルアルデヒド溶液に固定した。サンプルは、各ステップで15分間、段階的なエタノールシリーズ(30%から100%v/v)で脱水された。乾燥したら、サンプルを金でスパッタコーティングし、走査電子顕微鏡(SEM)(S-4800、日立、日本)で画像化した。」(66頁右欄~67頁左欄「2.4 Culture, characterization and loading of the ADSC spheroids」の項) (摘記10e) 「3.1. ADSCスフェロイド含有マクロカプセル化デバイスの製造 デバイスの内層と外層は、それぞれPTFEろ過膜(図1A)とPETメッシュ(図1B)で構成されていた。最終的なデバイスの画像を図1Cに示す。PTFEポリマーとPETポリマーの融点は異なるが、2つの膜は超音波溶着プロセスによってうまく融合した。溶接領域のエッジラインは、幅が約2mmだった。拡散チャンバの全体サイズは27(L)×14(W)mmだった。デバイスの内部容積は~50μlである。 単層のPTFEろ過膜は、デバイス全体の輸送特性を決定する実際の障壁である。孔径は、免疫細胞が移植細胞を攻撃するのを防ぐように設計されている(図2A)。一方、孔径は、(i)外部組織からの小さな栄養性サイトカインと(ii)カプセル化された細胞からの治療用生成物の拡散のみを可能にすることにより、タンパク質の選択的透過に適している。私たちの研究では、カプセル化された細胞から分泌されるパラクリン因子は、血管新生を促進し、デバイス近くのマクロファージ応答を調節する能力について調査されている。炎症及び創傷治癒プロセスに寄与する重要なサイトカイン、ケモカイン、及び成長因子は、図2B[31-33]に示すように分類され、その発現はこの試験でin vitro又はin vivoで分析された。 回転楕円体形状の多細胞ADSC凝集体は、非接着表面での24時間の回転培養後に容易に形成された(図3A)。アガロース溶液に分散したスフェロイドは、デバイスに正常にロードされた。固化後、アガロースゲルは、ADSCスフェロイドの凝集を効果的に防ぎ、拡散チャンバ内で分離されたままであることが判明した(図3B)。SEM画像は、スフェロイドに凝集する個々のADSCがほとんど球形を採用していることを示している(図3C)。実際のサイズに関しては、ほとんどのスフェロイドは70~160μmの範囲に収まっていた。また、ピークサイズが80~90μmで、ピークが1つである分布であった(図3D)。 スフェロイドとして培養すると、ADSCは2次元単層培養の細胞と比較して、一連の遺伝子の発現の上昇を示した。(図4)ADSCスフェロイドでの幹細胞ホーミング[34]の重要な受容体であるCXCR-4の発現は、2-D単層(図4A)の発現と比較して7.5倍増加し、血管新生促進因子である、VEGF、FGF-2及び肝細胞成長因子(HGF)は、それぞれ2.6倍、3.3倍及び4.1倍増加した。インターロイキン-6(IL-6)及び誘導型一酸化窒素合成酵素(iNOS)は、マクロファージの炎症反応の調節に関与する2つの因子であり[35,36]、その発現はそれぞれ12.2及び3.0倍の増加を示した。アラキドン酸をPGE2に変換する酵素であるシクロオキシゲナーゼ-2(COX-2)は最も顕著にアップレギュレートされ、単層細胞での発現量より93.8倍の増加を示した。 遺伝子発現の分析を補完するために、ADSC-CMのVEGFの量、ADSCを含むデバイスの外側の培地、又はADSC単層の上清を測定した。図4Bに示すようにスフェロイド培養は単層培養と比較してADSCのVEGF産生をほぼ100%増加させたが、これは図4Aの遺伝子発現パターンと一致している。」(68頁左欄~69頁右欄「3.1 Fabrication of ADSC spheroid-laden macroencapsulation devices」の項) (摘記10f) 「3.2. in vitroでのADSCパラクリン因子の血管新生促進及び抗炎症効果 HUVEC活性に対するADSC-CMの影響を調査した。HUVECに適用した場合、ADSCスフェロイドから採取したADSC-CMのみが、ネガティブコントロールと比較して最大40%の細胞活性の増加を示すことにより、内皮細胞の増殖と移動を積極的に刺激することがわかった(図5A,B)ADSC単層からのADSC-CMは、ネガティブコントロールと比較して統計的な差が見られなかったため、そのような効果はなかった。 管形成アッセイでは、ADSCパラクリン因子の血管新生促進効果も有意だった:ADSC-CM(カプセル化されたスフェロイド)グループでより長い管成長が見られ、平均管長はネガティブコントロール又は単層由来のADSC-CMグループの約2.4倍である(図5C)。3つのHUVECアッセイ全てにおいて、統計分析ではADSC-CM(カプセル化されたスフェロイド)とポジティブコントロール群との間に差は認められなかった。 ADSCパラクリン因子の抗炎症効果を理解するために、ADSCを含むデバイスをLPS刺激MΦsと共培養した(図6A)。デバイスの膜を透過した因子は、デバイスの外部のMΦsに直接供給された。ADSC因子の影響下で、MΦsはより高いレベルの抗炎症マーカーであるアルギナーゼ-1(ARG-1)を発現したことがわかる。これは、アルギニンの尿素及びオルニチンへの加水分解を触媒する細胞質ゾル酵素である[37]。さらに、MΦs単独と比較して、共培養MΦsは、IL-10(3.6倍)、IL-6(3.9倍)、iNOS(4.7倍)、VEGF(2.9倍)のアップレギュレーション、及び腫瘍壊死因子アルファ(TNF-α)(0.7倍)、IL-1β(0.6倍)及びMMP-9(0.2倍)のダウンレギュレーションの表現型を示した(図6B)。 LPS刺激MΦsの存在下では、カプセル化されたADSCの上方制御された遺伝子プロファイルも、MΦsの影響なしの元の状態と比較して観察された(図6C)。特に、血管新生促進因子VEGF、FGF-2及びHGFの遺伝子は、MΦsなしで培養したADSCと比較して、それぞれ2.2倍、3.4倍及び2.8倍に増加した。一方、IL-6(32.9倍)、iNOS(196.1倍)、COX-2(68.9倍)の量が増加すると、ADSCの抗炎症性サイトカイン又は酵素の遺伝子発現も有意にアップレギュレートが観察された。」(69頁右欄~70頁左欄「3.2 The pro-angiogenesis and anti-inflammatory effects of ADSC paracrine factors in vitro」の項) (摘記10g) 「3.3. 生体内でのADSC含有マクロカプセル化インプラントに対する組織反応 ADSCを搭載したデバイスに対する宿主の反応を評価するために、ADSCスフェロイドを含む又は含まないマクロカプセル化デバイスを腹部に皮下移植し、4週間後に組織形態/組織を比較した。デバイスを取り外すと、拡散チャンバ内のADSCの存在に関係なく、成熟した血管網を含むカプセル組織がデバイス表面に付着しているのが観察された。以前の研究では、微小孔サイズの膜が移植の初期段階で表面の血管新生を可能にしたことが指摘されていたが[12]、線維症は線維層が厚くなるにつれて、時間の経過とともに血管を表面から遠ざけるであろう。私たちの研究では、ADSCスフェロイドを備えたデバイスの周囲の組織は、より白っぽいカプセル組織を持つことが観察された空の組織と比較して透明であることが観察された(図7)。血管形成に関しては、ADSCを搭載したデバイスを取り巻く血管の数と密度は、希少血管のみが見られる細胞のないデバイスを視覚的に上回った。また、血管が外側のPET支持メッシュの細孔を貫通する可能性があることも認められた(図7B)。これは、以前の研究と一致する結果である[12]。 H&E染色の組織切片では、全ての組織反応がPTFE膜の外表面上で発生し、宿主細胞のカプセル化チャンバへの侵入を効果的に阻止した。非細胞性ブランクデバイスのPTFE膜を取り巻く繊維組織の複数の層を特定できた(図8A)。ADSCを搭載したデバイス近傍の組織形態は劇的に異なっていた:線維性組織は薄く、ゆるく、一方、小さな血管が豊富であった(図8B)。拡大された画像では、細胞活性は2種類のインプラントで明確に異なっていた。ブランクデバイスを取り囲む細胞は、ほとんどが線維芽細胞であり、いくつかのマクロファージが膜表面に住んでいた(図8C)。対照的に、ADSCを搭載したデバイスに近接する組織では、リンパ球と肥満細胞が線維芽細胞と血管細胞とともに特定できた(図8D)。 定量的画像分析では、線維性組織はブランクデバイスを取り囲む230μmと同じ厚さだったが、ADSCを含むサンプルでは平均30μmだった(図9A)。装置から100μmの距離内にある血管プロファイル、又はいわゆる密接な血管構造は、カプセル化された細胞への栄養供給を維持するための鍵だった[12,38,39]。閉鎖血管構造の分析により、ADSC搭載デバイス近傍の血管数がブランクデバイスを最大5.6倍超えていることがわかる(図9B)。 拡散チャンバの内腔を調べたとき、ブランクデバイスはin vivoで十分に密封され、宿主からチャンバの細胞浸潤なしで無傷のままだった(図10A)。ADSCを搭載したデバイスでは、生細胞が見つかった。これらの細胞は、回転楕円体の凝集を維持していなかった。代わりに、PTFE膜の内面に平行に、通常は3セル又は4セルの厚さの全ての層が積層された(図10B)。 デバイス周囲の組織の遺伝子発現分析では、血管新生/創傷治癒を促進し、炎症を抑制するいくつかの要因がADSCを搭載したデバイスでアップレギュレートされた(図11)。特に、ADSCを搭載したデバイスから採取した組織を空のデバイスから採取した組織と比較すると、2.4倍のVEGF、8.1倍のIL-10、3.9倍のTGF-β1及び42倍のiNOSが観察された。例外は抗炎症性サイトカインであるIL-6であり、これはADSCグループで有意にダウンレギュレートされていた。炎症性サイトカインであるTNF-αも、ADSCがデバイスにカプセル化されたときに上方制御されていることがわかった。」(70頁左欄~右欄「3.3 Tissue reaction to ADSC-laden macroencapsulation implants in vivo」の項) (摘記10h) 「 [図:0001389393000001.jpg] 図2 (A)免疫分離デバイスの模式図。カプセル化された細胞は、仮にパラクリン産物を放出し、それがカプセル化チャンバの外に拡散して装置外の細胞の挙動を調節していると考えられている。(B)本研究で解析したサイトカインと、FBRでの役割に応じた分類。」(69頁の図2) (摘記10i) 「 [図:0001389393000002.jpg] 図3 ADSCスフェロイドの画像と解析:非付着性マイクロプレート上に形成されたスフェロイド(A)とマクロカプセル化装置でカプセル化されたもの(B)の位相差画像、ADSCスフェロイドのSEM画像(C)及びマイクロプレートから採取したADSCスフェロイドのサイズ分布(D)。スケールバー:200μm(A、B)、50μm(C)。」(69頁の図3) (摘記10j) 「 [図:0001389393000003.jpg] 図7 移植4週間後に腹側から摘出したインプラントの代表的な肉眼画像:(A)厚い線維組織(矢印)に覆われ、血管構造を持たないブランクデバイス、(B)緻密な微細血管網に覆われたADSC入りデバイス、(挿入図)PETメッシュ(矢印)を貫通する血管(矢印)の拡大図。」(72頁の図7) エ 甲12に記載された事項 (摘記12a) 「糖尿病のようにホルモン不足により発症する疾患は、原理的には当該ホルモンを適切に分泌する細胞あるいは組織の移植により治療できる。このような細胞・組織の移植部位は、細胞機能を維持し、ホルモンを体循環に送り込むに足る組織血流が確保されれば、体内のどの部位でも良い。この点で、皮下組織は低侵襲の移植部位として最適であるが、血流に乏しい。我々の研究グループは、血管新生を誘導する前処置により、皮下組織が膵島あるいはマクロカプセル化膵島の移植部位として使える事を確認している1-3。また、移植する細胞・組織は、血液や血球と直接に接触する必要はなく、ガス交換やホルモン・低分子栄養素等の透過を許容する半透膜等で免疫隔離された状態でも機能する。このような概念に基づいて、バイオ人工膵島などのバイオ人工臓器が研究されてきた。 間葉系幹細胞(MSC)は、骨髄や脂肪組織等から比較的容易に得られ、in vitroで旺盛な増殖能を示すとともに、中胚葉組織のみならず神経や肝細胞等、広範な分化能を有するとされる。また、多様な増殖因子等を分泌することで血管新生を誘導し、炎症反応を制御するなど、多くの利点があり、各種虚血性疾患や骨・軟骨疾患等の再生医療に広く応用が試みられている。近年、このようなMSCの機能に着日して、MSCや骨髄細胞を肝不全治療や膵島移植に応用する研究が行われている。我々は、MSCの利点を最大限に活用して疾患治療に結びつけるために、膵島細胞とMSCとの融合細胞を作製し、独自に開発したマクロカプセル化技術4と組み合わせてこれを皮下移植することにより、糖尿病の新しい治療法の可能性を探る本研究を立案した。」(「2.研究の目的」の1~36行) (2)甲9、10に記載された発明 ア 甲9に記載された発明 上記摘記9a~c、e、f、hの記載によれば、甲9には以下の発明が記載されていると認められる。 「生きている細胞を保持するのに適した内部チャンバを備える生体分子カプセル化デバイスであって、前記内部チャンバは第1の半透層と第2の半透層との間に配置されると共に、前記第1の半透層及び前記第2の半透層は前記内部チャンバの周囲を取り囲む支持フレームに取り付けられており、前記支持フレームは第1のフレーム要素及び第2のフレーム要素を備えると共に、前記第1のフレーム要素及び前記第2のフレーム要素は協働して、前記第1の半透層及び前記第2の半透層同士の間が所定の離間距離となるように前記第1の半透層及び前記第2の半透層を位置決めしており、第1の半透層及び第2の半透層は、それぞれが内部チャンバと接触した膜層と内部チャンバの外部に対して膜層を覆っているメッシュ層とを備えており、当該メッシュ層は、デバイスの外側に位置して血管新生膜の役割をしてデバイスの周りにおいて宿主組織の脈管構造の成長を促進するものであって、前記内部チャンバ内に、生物的適合性マトリックス材の内部に囲繞された哺乳類細胞である多能性幹細胞又はその派生種が保持されている、生体分子カプセル化デバイス。」(以下「甲9発明1」という。) また、上記摘記9a~f、hの記載によれば、甲9には以下の発明が記載されていると認められる。 「生きている哺乳類内で治療用薬剤を産生するための方法であって、甲9発明1に係る生体分子カプセル化デバイス内で治療用薬剤を産生するように改変された細胞をカプセル化するステップを含む、方法。」(以下「甲9発明2」という。) イ 甲10に記載された発明 上記摘記10a~10jの記載によれば、甲10には以下の発明が記載されていると認められる。 「インビトロにおいてもインビボにおいても血管新生促進効果を示す、脂肪組織由来間葉系幹細胞(ADSC)含有マイクロカプセル化デバイスであって、膜の厚さ25μmで直径0.45μmの細孔を有する単層構造のポリテトラフルオロエチレン(PTFE)ろ過膜が免疫保護層として内側に配置された内部容積50μl程度のチャンバ内に、アガロースプレゲル溶液に分散懸濁したADSCが注入され、そのアガロースプレゲル溶液に分散懸濁したADSCが分離されたまま固化している、ADSC含有マイクロカプセル化デバイス。」(以下「甲10発明1」という。) 「インビトロにおいてもインビボにおいても血管新生促進効果を示す、脂肪組織由来間葉系幹細胞(ADSC)含有マイクロカプセル化デバイスの製造方法であって、膜の厚さ25μmで直径0.45μmの細孔を有する単層構造のポリテトラフルオロエチレン(PTFE)ろ過膜が免疫保護層として内側に配置された内部容積50μl程度のチャンバ内に、アガロースプレゲル溶液に分散懸濁したADSCを注入し、そのアガロースプレゲル溶液に分散懸濁したADSCが分離されたまま固化する、製造方法。」(以下「甲10発明2」という。) 2 取消理由1、2の「甲10を主引用例とする新規性欠如及び進歩性欠如」について (1)本件発明1と甲10発明との対比、判断 ア 本件発明1と甲10発明1との対比 本件発明1と甲10発明1とを対比する。 甲10発明1の「アガロース」は、本件明細書【0022】の記載によれば、本件発明1の「生体親和性高分子」に相当する。 甲10発明1の「脂肪由来間葉系幹細胞(ADSC)」は、本件発明1の「間葉系幹細胞」に相当する。 甲10発明1の「免疫保護層」は「免疫隔離」のためのものである(摘記10c)から、本件発明1の「免疫隔離膜」に相当する。 甲10発明1の「アガロースプレゲル溶液に分散懸濁したADSCが注入され、そのアガロースプレゲル溶液に分散懸濁したADSCが分離されたまま固化している」ものは、間葉系幹細胞を含む生体親和性高分子である点に限り、本件発明1の「細胞構造体」に相当する。 そうすると、甲10発明1の「膜の厚さ25μmで直径0.45μmの細孔を有する単層構造のポリテトラフルオロエチレン(PTFE)ろ過膜が免疫保護層として内側に配置された内部容積50μl程度のチャンバ内に、アガロースプレゲル溶液に分散懸濁したADSCが注入され」た「ADSC含有マイクロカプセル化デバイス」は、「免疫隔離膜」の内側に「間葉系幹細胞を含む生体親和性高分子」が注入されたものであることからみて、本件発明1の「細胞構造体を内包する免疫隔離膜」に相当するといえる。 甲10発明1の「ADSC含有マイクロカプセル化デバイス」が「インビトロにおいてもインビボにおいても血管新生促進効果を示す」ことからみて、甲10発明1の「ADSC含有マイクロカプセル化デバイス」は、本件発明1の「血管新生剤」にほかならない。 そうすると、本件発明1と甲10発明1とは、次の一致点及び相違点があると認められる。 <一致点> 「(A)細胞構造体、および (B)前記細胞構造体を内包する免疫隔離膜、を含む血管新生剤であって、細胞構造体が、生体親和性高分子と複数個の間葉系幹細胞を含む、血管新生剤。」 <相違点1> 細胞構造体が、本件発明1では、「複数個の生体親和性高分子ブロック」「を含み、複数個の前記間葉系幹細胞の隙間に、少なくとも1個の前記生体親和性高分子ブロックが配置されている細胞構造体として、含まれている」ものであるのに対し、甲10発明1では、「アガロースプレゲル溶液に分散懸濁したADSCが注入され、そのアガロースプレゲル溶液に分散懸濁したADSCが分離されたまま固化している」ものである点。 イ 当審の判断 上記相違点1について検討する。 (ア)甲10発明1の「アガロースプレゲル溶液に分散懸濁した脂肪組織由来間葉系幹細胞(ADSC)が注入され、そのアガロースプレゲル溶液に分散懸濁したADSCが分離されたまま固化している」とは、甲10の図2、3によれば、アガロースプレゲル溶液が固化したアガロースゲルは、分離することなく一体としてADSCを担持していることが看取できる(摘記10h、i)。 そうすると、甲10発明1は、アガロースゲルが、複数個のブロックとなり、複数個の間葉系幹細胞の隙間に、そのブロックが配置されているものとはいえない。 したがって、上記相違点1は、実質的な相違点であり、本件発明1は、甲10に記載された発明であるとはいえない。 (イ)甲10には、細胞構造体を内包する免疫隔離膜を含む血管新生剤において、細胞構造体を「複数個の生体親和性高分子ブロックと、少なくとも一種の複数個の間葉系幹細胞とを含み、複数個の前記間葉系幹細胞の隙間に、少なくとも1個の前記生体親和性高分子ブロックが配置されている細胞構造体」とすることは記載されておらず、このことが本件優先日当時の技術常識であるともいえないから、甲10発明1において、アガロースゲルをブロックとして複数個の間葉系幹細胞の隙間に配置させ、相違点1に係る本件発明1の構成を備えたものとすることは、当業者といえども容易になし得たとはいえない。 そして、本件明細書には、本件発明1に係る細胞構造体と免疫隔離膜を有する細胞移植用デバイス(実施例1~実施例5)が、細胞構造体のみを有する細胞移植用デバイス(比較例1)や細胞構造体を含まない細胞移植用デバイス(比較例2)と比較して、多くの血管新生を誘導していることが示されており、本件発明1の効果は、甲10の記載から当業者が予測できるものとはいえない。 したがって、本件発明1は、甲10に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (2)本件発明2~5、8~14と甲10発明との対比、判断 ア 本件発明2~5、8~14と甲10発明との対比 本件発明2~5、8~14は、本件発明1において、更に、間葉系幹細胞の種類、免疫隔離膜の形状や材質、生体親和性高分子ブロックの形状等を限定したものであるから、本件発明2~5、8~14と甲10発明1とは、少なくとも上記(1)アで指摘した相違点1の点で相違するものである。 イ 当審の判断 上記(1)イで説示したとおり、上記相違点1は、実質的な相違点であるから、本件発明2~3、5、10、12、13は、甲10に記載された発明であるとはいえない。 また、甲6、9、12をみても、甲10発明1において、アガロースゲルをブロックとして複数個の間葉系幹細胞の隙間に配置させ、相違点1に係る本件発明2~5、8~14の構成を備えたものとすることは、当業者といえども容易になし得たとはいえない。 そして、本件発明2~5、8~14の効果も、甲10の記載から当業者が予測できるものとはいえない。 したがって、相違点1以外の相違点について検討するまでもなく、本件発明2~5、8~14は、甲10に記載された発明及び甲6、9、12記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (3)本件発明15と甲10発明2との対比、判断 ア 本件発明15と甲10発明2との対比 本件発明15と甲10発明2とを対比する。 上記(1)アを踏まえると、甲10発明2の「膜の厚さ25μmで直径0.45μmの細孔を有する単層構造のポリテトラフルオロエチレン(PTFE)ろ過膜が免疫保護層として内側に配置された内部容積50μl程度のチャンバ内」に「アガロースプレゲル溶液に分散懸濁したADSCを注入」する工程は、本件発明15の「細胞構造体を免疫隔離膜で内包する工程」を含むものであるといえるから、本件発明15と甲10発明2とは、次の一致点及び相違点があると認められる。 <一致点> 「(A)細胞構造体、および (B)前記細胞構造体を内包する免疫隔離膜、を含む血管新生剤であって、細胞構造体が、生体親和性高分子と複数個の間葉系幹細胞とを含む、血管新生剤の製造方法であって、細胞構造体を免疫隔離膜で内包する工程を含む、血管新生剤の製造方法。」 <相違点1’> 細胞構造体が、本件発明15では、「複数個の生体親和性高分子ブロックと、少なくとも一種の複数個の間葉系幹細胞とを含み、複数個の前記間葉系幹細胞の隙間に、少なくとも1個の前記生体親和性高分子ブロックが配置されている細胞構造体として、含まれている」ものであるのに対し、甲10発明2では、「アガロースプレゲル溶液に分散懸濁したADSCを注入し、そのアガロースプレゲル溶液に分散懸濁したADSCが分離されたまま固化する」ものである点。 イ 当審の判断 相違点1’は、上記(1)アに示した相違点1と同じである。 そうすると、相違点1’は、上記(1)イで説示したのと同様に実質的な相違点であるから、本件発明15は、甲10に記載された発明であるとはいえない。 また、甲6、9、12をみても、甲10発明2において、アガロースゲルをブロックとして複数個の間葉系幹細胞の隙間に配置させ、相違点1’に係る本件発明15の構成を備えたものとすることは、当業者といえども容易になし得たとはいえない。 そして、本件発明15の効果も、甲10の記載から当業者が予測できるものとはいえない。 したがって、本件発明15は、甲10に記載された発明及び甲6、9、12に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 3 取消理由2の「甲9を主引用例とする進歩性欠如」について (1)本件発明1と甲9発明1との対比、判断 ア 本件発明1と甲9発明1との対比 本件発明1と甲9発明1とを対比する。 甲9発明1の「哺乳類細胞である多能性幹細胞又はその派生種」と本件発明1の「間葉系幹細胞」とは、「幹細胞」の一種である限りにおいて一致する。 甲9発明1の「生物的適合性マトリックス材の内部に囲繞された・・・又はその派生種」と本件発明1の「複数個の生体親和性高分子ブロックと、少なくとも一種の複数個の間葉系幹細胞とを含み、複数個の前記間葉系幹細胞の隙間に、少なくとも1個の前記生体親和性高分子ブロックが配置されている細胞構造体」とは、甲9発明1の「生物的適合性マトリックス材」には、生体親和性高分子である(本件明細書【0022】)アガロースやゼラチンが含まれる(摘記9e)ことからみて、幹細胞を含む生体親和性高分子である点に限り一致する。 甲9発明1の膜層は、生物学的に活性な薬剤は通過でき、カプセル化された細胞や宿主の免疫系の細胞は通過できないものである(摘記9g)から、本件発明1の「免疫隔離膜」に相当する。また、甲9発明1のメッシュ層は、デバイスの外側に位置して血管新生膜の役割をしてデバイスの周りにおいて宿主組織の脈管構造の成長を促進するものであるから、甲9発明1の生体分子カプセル化デバイスは、本件発明1の「血管新生剤」に相当する。 甲9発明1の「内部チャンバ」は、「第1の半透層と第2の半透層との間に配置される」ものであることからみて、甲9発明1の「生きている細胞を保持するのに適した内部チャンバを備える生体分子カプセル」は、「免疫隔離膜」で「生体親和性高分子と幹細胞とを含む細胞構造体」の周囲を取り囲んだものであるといえるから、本件発明1の「細胞構造体を内包する免疫隔離膜」に相当する。 そうすると、本件発明1と甲9発明1とは、次の一致点及び相違点があると認められる。 <一致点> 「(A)細胞構造体、および (B)前記細胞構造体を内包する免疫隔離膜、を含む血管新生剤であって、細胞構造体が、生体親和性高分子と複数個の幹細胞を含む、血管新生剤。」 <相違点2> 細胞構造体に含まれる幹細胞が、本件発明1では「間葉系幹細胞」であるのに対し、甲9発明1においては、「哺乳類細胞である多能性幹細胞又はその派生種」である点。 <相違点3> 細胞構造体が、本件発明1では、「複数個の生体親和性高分子ブロック」「を含み」、「複数個の」「幹細胞の隙間に、少なくとも1個の前記生体親和性高分子ブロックが配置されている」ものであるのに対し、甲9発明1では、「生物的適合性マトリックス材の内部に囲繞された哺乳類細胞である多能性幹細胞又はその派生種が保持されている」ものである点。 イ 当審の判断 事案に鑑み、まず相違点3について検討する。 甲9には、「生物的適合性マトリックス材の内部に囲繞された」状態について、マトリックスは細胞の装填と同時にチャンバに追加されることや、細胞は先ずマトリックスと合成され、次いでマトリックスはチャンバ内に装填される細胞を備えることがあることが記載されている(摘記9e)ものの、アガロースゲルを複数個のブロックとして、複数個の間葉系幹細胞の隙間に、そのブロックを配置することは記載されておらず、甲10、6、12をみても、このことが本件優先日当時の技術常識であるともいえない。 そうすると、甲9発明1において、生物的適合性マトリックス材を複数のブロックとして幹細胞の隙間に配置させ、相違点3に係る本件発明1の構成を備えたものとすることは、当業者といえども容易になし得たとはいえない。 そして、本件明細書には、本件発明に係る細胞構造体と免疫隔離膜を有する細胞移植用デバイス(実施例1~実施例5)が、細胞構造体のみを有する細胞移植用デバイス(比較例1)や細胞構造体を含まない細胞移植用デバイス(比較例2)と比較して、多くの血管新生を誘導していることが示されており、本件発明1の効果は、甲9の記載から当業者が予測できるものとはいえない。 したがって、相違点2について検討するまでもなく、本件発明1は、甲9に記載された発明及び甲10、6、12に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (2)本件発明2~5、8~14と甲9発明1との対比、判断 ア 本件発明2~5、8~14と甲9発明1との対比 本件発明2~5、8~14は、本件発明1において、更に、間葉系幹細胞の種類、免疫隔離膜の形状や材質、生体親和性高分子ブロックの形状等を限定したものであるから、本件発明2~5、8~14と甲9発明1とは、少なくとも上記(1)アで指摘した相違点3の点で相違するものである。 イ 当審の判断 上記(1)イで説示したとおり、甲10、6、12をみても、甲9発明1において、生物的適合性マトリックス材を複数のブロックとして幹細胞の隙間に配置させ、相違点3に係る本件発明2~5、8~14の構成を備えたものとすることは、当業者といえども容易になし得たとはいえない。 そして、本件発明2~5、8~14の効果も、甲9の記載から当業者が予測できるものとはいえない。 したがって、相違点3以外の相違点について検討するまでもなく、本件発明2~5、8~14は、甲9に記載された発明及び甲10、6、12に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (3)本件発明15と甲9発明2との対比、判断 ア 本件発明15と甲9発明2との対比 本件発明15と甲9発明2とを対比する。 上記(1)アを踏まえると、甲9発明2の「生体分子カプセル化デバイス内」で「治療用薬剤を産生するように改変された細胞をカプセル化するステップ」は、本件発明15の「細胞構造体を免疫隔離膜で内包する工程」を含むものであるといえるから、本件発明15と甲9発明2とは、次の一致点及び相違点があると認められる。 <一致点> 「(A)細胞構造体、および (B)前記細胞構造体を内包する免疫隔離膜、を含む血管新生剤であって、細胞構造体が、生体親和性高分子と複数個の幹細胞を含む、血管新生剤の製造方法であって、細胞構造体を免疫隔離膜で内包する工程を含む、血管新生剤の製造方法。」 <相違点2’> 細胞構造体に含まれる幹細胞が、本件発明15では「間葉系幹細胞」であるのに対し、甲9発明2においては、「哺乳類細胞である多能性幹細胞又はその派生種」である点。 <相違点3’> 細胞構造体が、本件発明15では、「複数個の生体親和性高分子ブロック」「を含み、複数個の」「幹細胞の隙間に、少なくとも1個の前記生体親和性高分子ブロックが配置されている」ものであるのに対し、甲9発明2では、「生物的適合性マトリックス材の内部に囲繞された哺乳類細胞である多能性幹細胞又はその派生種が保持されている」ものである点。 イ 当審の判断 事案に鑑み、まず相違点3’について検討する。 相違点3’は、上記(1)アに示した相違点3と同じである そうすると、相違点3’は、上記(1)イで説示したのと同様に、甲10、6、12をみても、甲9発明2において、生物的適合性マトリックス材を複数のブロックとして幹細胞の隙間に配置させ、相違点3’に係る本件発明15の構成を備えたものとすることは、当業者といえども容易になし得たとはいえない。 そして、本件発明15の効果も、甲9の記載から当業者が予測できるものとはいえない。 したがって、本件発明15は、相違点2’について検討するまでもなく、甲9に記載された発明及び甲10、6、12に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 4 取消理由3(明確性要件違反)について 請求項1には、「生体親和性高分子ブロック」を含む細胞構造体を含む、血管新生剤に係る発明が記載されている。 請求項15には、「生体親和性高分子ブロック」を含む細胞構造体を含む、血管新生剤の製造方法に係る発明が記載されている。 ここで、本件訂正後の本件明細書【0022】には、「・・・本発明で用いる生体親和性高分子は、生体に親和性を有するものであれば、生体内で分解されるか否かは特に限定されないが、生分解性高分子であることが好ましい。非生分解性材料として具体的には、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリウレタン、ポリプロピレン、ポリエステル、塩化ビニル、ポリカーボネート、アクリル、シリコーン、およびMPC(2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン)などが挙げられる。・・・」と記載されていることからみて、当業者は、本件発明の「生体親和性高分子」は、チタンやステンレスなどの金属を含まない生体親和性高分子であるという技術的な範囲を明確に把握することができるものである。 請求項1を引用して記載する請求項2~14についても同様である。 よって、本件発明1~15は、明確である。 第6 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由についての、当審の判断 1 甲10を主引用例とする新規性欠如及び進歩性欠如について (1)甲10を主引用例とする新規性欠如について(本件発明4、6~9、11、14) 本件発明4、6~9、11、14は、本件発明1において、更に、免疫隔離膜の形状や材質、生体親和性高分子ブロックの形状等を限定したものであるから、本件発明4、6~9、11、14と甲10発明1とは、少なくとも上記第5 2(1)アで指摘した相違点1の点で相違するものである。 上記相違点1は、上記第5 2(1)イで説示したとおり、実質的な相違点であるから、本件発明4、6~9、11、14は、甲10に記載された発明であるとはいえない。 (2)甲10を主引用例とする進歩性欠如について(本件発明6、7) 上記(1)のとおりであるから、本件発明6、7と甲10発明1とは、少なくとも上記第5 2(1)アで指摘した相違点1の点で相違するものである。 そして、甲1~9、11、12をみても、甲10発明1において、アガロースゲルをブロックとして複数個の間葉系幹細胞の隙間に配置させ、相違点1に係る本件発明6、7の構成を備えたものとすることは、当業者といえども容易になし得たとはいえない。 そして、本件発明6、7の効果も、甲10の記載から当業者が予測できるものとはいえない。 したがって、相違点1以外の相違点について検討するまでもなく、本件発明6、7は、甲10に記載された発明及び甲1~9、11、12に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 2 甲9を主引用例とする新規性欠如及び進歩性欠如について (1)甲9を主引用例とする新規性欠如について(本件発明1~15) 本件発明1は、少なくとも上記第5 3(1)アで指摘した相違点3の点で、甲9発明1と相違するものである。 本件発明2~14は、本件発明1において、更に、間葉系幹細胞の種類、免疫隔離膜の形状や材質、生体親和性高分子ブロックの形状等を限定したものであるから、本件発明2~14と甲9発明1とは、少なくとも上記第5 3(1)アで指摘した相違点3の点で相違するものである。 本件発明15は、少なくとも上記第5 3(3)アで指摘した相違点3’の点で、甲9発明2と相違するものである。 相違点3について検討すると、甲9には、「生物的適合性マトリックス材」を複数のブロックとして、幹細胞の隙間に配置することは記載されておらず、このことが本願優先日当時の技術常識であるともいえない。相違点3’についても同様である。 したがって、上記相違点3及び相違点3’は、実質的な相違点であり、本件発明1~15は、甲9に記載された発明であるとはいえない。 (2)甲9を主引用例とする進歩性欠如について(本件発明6、7) 本件発明6、7は、本件発明1を限定した本件発明3において、多孔質膜の形状等を限定したものであるから、本件発明6、7と甲9発明1とは、少なくとも上記第5 3(1)アで指摘した相違点3の点で相違するものである。 そして、甲1~8、10~12をみても、甲9発明1において、生物的適合性マトリックス材を複数のブロックとして幹細胞の隙間に配置させ、相違点3に係る本件発明6、7の構成を備えたものとすることは、当業者といえども容易になし得たとはいえない。 そして、本件発明6、7の効果も、甲9の記載から当業者が予測できるものとはいえない。 したがって、相違点3以外の相違点について検討するまでもなく、本件発明6、7は、甲9に記載された発明及び甲1~8、10~12に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 3 甲8を主引用例とする新規性欠如及び進歩性欠如について(本件発明1~15) (1)甲8に記載された発明 甲8の記載(請求項1~8、19、20、[0063]~[0069])によれば、甲8には以下の発明が記載されていると認められる。 「ナノファイバーファブリックの少なくとも1つの層、ナノファイバーファブリックに埋め込まれた複数のブタ間葉系幹細胞及び複数のブタ間葉系幹細胞由来のパラクリン因子の少なくとも1つ、からなる、血管新生を促進するための治療パッチであって、ナノファイバーファブリックは生物学的材料を含む、血管新生を促進するための治療パッチ。」(以下「甲8発明1」という。) 「ナノファイバーファブリックの少なくとも1つの層、ナノファイバーファブリックに埋め込まれた複数のブタ間葉系幹細胞及び複数のブタ間葉系幹細胞由来のパラクリン因子の少なくとも1つ、からなる、血管新生を促進するための治療パッチであって、ナノファイバーファブリックは生物学的材料を含む、血管新生を促進するための治療パッチの製造方法であって、幹細胞を治療パッチに播種し、治療パッチで幹細胞をインキュベートする、血管新生を促進するための治療パッチの製造方法。」(以下「甲8発明2」という。) (2)甲8に記載された発明との対比、判断 ア 本件発明1について ア-1 本件発明1と甲8発明1との対比 本件発明1と甲8発明1とを対比する。 甲8発明1の「ブタ間葉系幹細胞」は、本件発明1の「間葉系幹細胞」に相当する。 甲8発明1の「ナノファイバーファブリックの少なくとも1つの層」は、[0036]に記載されるように、複数の細孔を有するものであって、細孔は、どの免疫細胞直径よりも小さくてもよく、それによって埋め込まれた細胞を免疫攻撃から保護するものであるから、本件発明1の「免疫隔離膜」に相当する。 甲8発明1の「ナノファイバーファブリックに埋め込まれた複数のブタ間葉系幹細胞」は、ブタ間葉系幹細胞がナノファイバーファブリックの内又は表面に固定されていることを意味する([0028])といえるから、ナノファイバーファブリックの内部にブタ間葉系幹細胞が存在する状態、すなわち、「免疫隔離膜」に内包されたブタ間葉系幹細胞を包含するものである。 甲8発明1の「血管新生を促進するための治療パッチ」は、本件発明1の「血管新生剤」にほかならない。 そうすると、本件発明1と甲8発明1とは、次の一致点及び相違点があると認められる。 <一致点> 「(A)間葉系幹細胞、および (B)前記間葉系幹細胞を内包する免疫隔離膜、を含む血管新生剤。」 <相違点8> 本件発明1では、「複数個の生体親和性高分子ブロックと、少なくとも一種の複数個の間葉系幹細胞とを含み、複数個の前記間葉系幹細胞の隙間に、少なくとも1個の前記生体親和性高分子ブロックが配置されている細胞構造体」を含むものであるのに対し、甲8発明1では、そのような細胞構造体が特定されていない点。 ア-2 当審の判断 上記相違点8について検討する。 (ア)甲8発明1の「ナノファイバーファブリックに埋め込まれた複数のブタ間葉系幹細胞」は、ブタ間葉系幹細胞がナノファイバーファブリックの内又は表面に固定されていることを意味する([0028])といえるから、ナノファイバーファブリックとして一体となって分離することなくブタ間葉系幹細胞を固定していると解される。 そうすると、甲8発明1は、本件発明1の「複数個の生体親和性高分子ブロックと、少なくとも一種の複数個の間葉系幹細胞とを含み、複数個の前記間葉系幹細胞の隙間に、少なくとも1個の前記生体親和性高分子ブロックが配置されている細胞構造体」を含むとはいえないから、上記相違点8は、実質的な相違点であり、本件発明1は、甲8に記載された発明であるとはいえない。 (イ)甲8には、生物学的材料を含むナノファイバーファブリックを複数個のブロックとして、複数個の間葉系幹細胞の隙間に、そのブロックを配置することは記載されておらず、甲6、9、10、12を含むいずれの甲号証をみても、このことが本願優先日当時の技術常識であるともいえないから、甲8発明1の血管新生を促進するための治療パッチにおいて、生物学的材料を含むナノファイバーファブリックをブロックとして間葉系幹細胞の隙間に配置させ、相違点8に係る本件発明1の構成を備えたものとすることは、当業者といえども容易になし得たとはいえない。 そして、本件発明1の上記第5 2(1)イ(イ)に示した効果は、甲8の記載から当業者が予測できるものとはいえない。 したがって、本件発明1は、甲8に記載された発明及び甲1~7、9~12に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 イ 本件発明2~14について イ-1 本件発明2~14と甲8発明1との対比 本件発明2~14は、本件発明1において、更に、間葉系幹細胞の種類、免疫隔離膜の形状や材質、生体親和性高分子ブロックの形状等を限定したものであるから、本件発明2~14と甲8発明1とは、少なくとも上記ア-1で指摘した相違点8の点で相違するものである。 イ-2 当審の判断 上記ア-2で説示したとおり、上記相違点8は、実質的な相違点であり、本件発明2~14は、甲8に記載された発明であるとはいえない。 また、いずれの甲号証をみても、甲8発明1の血管新生を促進するための治療パッチにおいて、生物学的材料を含むナノファイバーファブリックをブロックとして間葉系幹細胞の隙間に配置させ、相違点8に係る本件発明2~14の構成を備えたものとすることは、当業者といえども容易になし得たとはいえない。 そして、本件発明2~14の効果も、甲8の記載から当業者が予測できるものとはいえない。 したがって、相違点8以外の相違点について検討するまでもなく、本件発明2~14は、甲8に記載された発明及び甲1~7、9~12に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 ウ 本件発明15について ウ-1 本件発明15と甲8発明2との対比 本件発明15と甲8発明2とを対比する。 上記ア-1を踏まえると、本件発明15と甲8発明2とは、次の一致点及び相違点があると認められる。 <一致点> 「(A)間葉系幹細胞、および (B)前記間葉系幹細胞を内包する免疫隔離膜、を含む血管新生剤の製造方法であって、間葉系幹細胞を免疫隔離膜で内包する工程を含む、血管新生剤の製造方法。」 <相違点8’> 本件発明15では、「複数個の生体親和性高分子ブロックと、少なくとも一種の複数個の間葉系幹細胞とを含み、複数個の前記間葉系幹細胞の隙間に、少なくとも1個の前記生体親和性高分子ブロックが配置されている細胞構造体」を含むものであるのに対し、甲8発明2では、対応する細胞構造体を含むことが特定されていない点。 <相違点8’’> 本件発明15では、「細胞構造体を免疫隔離膜で内包する工程」を含むものであるのに対し、甲8発明2では、「幹細胞を治療パッチに播種し、治療パッチで幹細胞をインキュベートする」ものである点。 ウ-2 当審の判断 上記相違点8’及び相違点8’’について検討する。 相違点8’は、上記ア-1に示した相違点8と同じである。 そうすると、相違点8’は、上記ア-2で説示したのと同様に実質的な相違点であるから、本件発明15は、甲8に記載された発明であるとはいえない。 また、いずれの甲号証をみても、甲8発明2の「血管新生を促進するための治療パッチ」において、生物学的材料を含むナノファイバーファブリックをブロックとして間葉系幹細胞の隙間に配置させ、相違点8’に係る本件発明15の構成を備えたものとすることは、当業者といえども容易になし得たとはいえない。 そして、本件発明15の効果も、甲8の記載から当業者が予測できるものとはいえない。 したがって、本件発明15は、相違点8’’について検討するまでもなく、甲8に記載された発明及び甲1~7、9~12に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 4 甲11を主引用例とする新規性欠如及び進歩性欠如について(本件発明1~15) (1)甲11に記載された発明 甲11の記載(実施例5、10~16、図4、5)によれば、甲11には以下の発明が記載されていると認められる。 「リコンビナントペプチドであるCBE3を用いた多孔質体から製造されたペプチドブロックであるCBE3ブロックと、ヒト骨髄由来間葉系幹細胞(hMSC)からなるモザイク細胞塊であって、マウスに移植することによってモザイク細胞塊内部に血管を誘引することができる、モザイク細胞塊。」(以下「甲11発明」という。) (2)甲11に記載された発明との対比、判断 ア 本件発明1について ア-1 本件発明1と甲11発明との対比 本件発明1と甲11発明とを対比する。 甲11発明の「ヒト骨髄由来間葉系幹細胞(hMSC)」は、本件発明1の「間葉系幹細胞」に相当する。 甲11発明の「リコンビナントペプチドであるCBE3を用いた多孔質体から製造されたペプチドブロックであるCBE3ブロックと、ヒト骨髄由来間葉系幹細胞(hMSC)からなるモザイク細胞塊」は、ヒト骨髄由来間葉系幹細胞(hMSC)を含む増殖培地にCBE3ブロックを加えて作製されたものであって([0147][実施例10])、更に培養を行うことで、モザイク細胞塊同士の間を、外周部に配された細胞が結合させることで、モザイク細胞塊が自然に融合したものとなる([0151][実施例12]、[0152][実施例13])ものであるから、本件発明1の「複数個の生体親和性高分子ブロックと、少なくとも一種の複数個の間葉系幹細胞とを含み、複数個の前記間葉系幹細胞の隙間に、少なくとも1個の前記生体親和性高分子ブロックが配置されている細胞構造体」に相当する。 甲11発明の「モザイク細胞塊」は、「マウスに移植することによってモザイク細胞塊内部に血管を誘引することができる」ものであるから、血管新生剤にほかならない。 そうすると、本件発明1と甲11発明とは、次の一致点及び相違点があると認められる。 <一致点> 「(A)細胞構造体を含む血管新生剤であって、細胞構造体が、複数個の生体親和性高分子ブロックと、少なくとも一種の複数個の間葉系幹細胞とを含み、複数個の前記間葉系幹細胞の隙間に、少なくとも1個の前記生体親和性高分子ブロックが配置されている細胞構造体として、含まれている、血管新生剤。」 <相違点11> 本件発明1では、血管新生剤が「(B)前記細胞構造体を内包する免疫隔離膜」を含むものであるのに対し、甲11発明では、血管新生剤が「(B)前記細胞構造体を内包する免疫隔離膜」を含まないものである点。 ア-2 当審の判断 上記相違点11について検討する。 (ア)本件発明1が「細胞構造体を内包する免疫隔離膜」を含むものであるのに対し、甲11発明は「細胞構造体を内包する免疫隔離膜」を含むものではないから、両者は異なるものであることは明らかである。 したがって、本件発明1は、甲11に記載された発明であるとはいえない。 (イ)甲11発明のモザイク細胞塊を移植するとモザイク細胞塊内部に血管が誘引され、血管が形成されるものであり、甲11発明に係るモザイク細胞塊の周囲に、血管を構成する細胞を通過させない免疫隔離膜を設けると、モザイク細胞塊中の血管の形成を妨げることになることは明らかであるから、甲11発明に係るモザイク細胞塊の周囲に、血管を構成する細胞を通過させない免疫隔離膜を設けることについては、阻害要因があるといえる。 そうすると、いずれの甲号証を参酌しても、甲11に接した当業者が、甲11発明のモザイク細胞塊において、モザイク細胞塊を内包する免疫隔離膜を設けることを動機付けられたとはいえない。 そして、本件発明1の上記第5 2(1)イ(イ)に示した効果は、甲11の記載から当業者が予測できるものとはいえない。 したがって、本件発明1は、甲11に記載された発明及び甲1~10、12に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 イ 本件発明2~14について イ-1 本件発明2~14と甲11発明との対比 本件発明2~14は、本件発明1において、更に、間葉系幹細胞の種類、免疫隔離膜の形状や材質、生体親和性高分子ブロックの形状等を限定したものであるから、本件発明2~14と甲11発明とは、少なくとも上記ア-1で指摘した相違点11の点で相違するものである。 イ-2 当審の判断 上記ア-2で説示したとおり、上記相違点11は、実質的な相違点であり、本件発明2~14は、甲11に記載された発明であるとはいえない。 また、いずれの甲号証を参酌しても、甲11に接した当業者が、甲11発明のモザイク細胞塊において、モザイク細胞塊を内包する免疫隔離膜を設けることを動機付けられたとはいえない。 そして、本件発明2~14の効果も、甲11の記載から当業者が予測できるものとはいえない。 したがって、相違点11以外の相違点について検討するまでもなく、本件発明2~14は、甲11に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 ウ 本件発明15について ウ-1 本件発明15と甲11発明との対比 本件発明15は、「細胞構造体を免疫隔離膜で内包する工程」を含む、本件発明1の血管新生剤の製造方法に係るものである。 そうすると、本件発明15と甲11発明とは、上記ア-1で述べた一致点及び相違点に加えて、以下の点で相違する。 <相違点11’> 本件発明15は、「細胞構造体を免疫隔離膜で内包する工程」を含む血管新生剤の製造方法の発明であるのに対し、甲11発明は、細胞構造体からなる血管新生剤の発明である点。 ウ-2 当審の判断 上記相違点11’について検討する。 本件発明15は、製造方法の発明であるから、物の発明である甲11発明と異なるものであることは明らかである。 よって、本件発明15は、甲11に記載された発明であるとはいえない。 また、上記ア-2(イ)で説示したように、甲11発明に係るモザイク細胞塊の周囲に、血管を構成する細胞を通過させない免疫隔離膜を設けることについては、阻害要因があるといえる。 そうすると、いずれの甲号証を参酌しても、甲11に接した当業者が、甲11発明のモザイク細胞塊において、モザイク細胞塊を免疫隔離膜で内包する工程を含む製造方法とすることを動機付けられたとはいえない。 そして、本件発明15の効果も、甲11の記載から当業者が予測できるものとはいえない。 したがって、本件発明15は、甲11に記載された発明及び甲1~10、12に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 5 本件特許の請求項1~15に係る発明に対する、サポート要件違反について (1)当審の判断 本件明細書の【発明が解決しようとする課題】【0008】の記載によれば、本件発明の課題は、「宿主の細胞を透過させずに免疫拒絶反応からは保護された状態で、間葉系幹細胞による血管新生効果を十分に発揮できる血管新生剤、およびその製造方法を提供すること」にあるといえる。 ここで、発明の詳細な説明には、間葉系幹細胞として、脂肪由来間葉系幹細胞や骨髄由来間葉系幹細胞が使用できることが記載され(【0020】)、免疫隔離膜については、酸素、水、グルコース等の栄養分は透過させ、免疫拒絶反応に関与する免疫細胞等の透過を阻止する選択透過性の膜であって、用途に応じて選択透過性を調整すればよいことが記載されている(【0086】~【0090】)。 また、実施例においては、ポリスルホン多孔質膜を免疫隔離膜としたデバイス(参考例13)に、マウス脂肪由来間葉系幹細胞(mADSC)と生体親和性高分子ブロック(参考例3)とともに培養して得られた均一な細胞構造体(参考例7)を封入して細胞移植用デバイス(血管新生剤)を作成したこと、その細胞移植用デバイス(血管新生剤)をマウスの背部皮下に埋植し、2週経過後に移植部位における組織学的な評価を実施したところ、細胞移植用デバイス近傍に局所的に多数の新生血管が誘導されていることが具体的に確認されたことが記載されている(【0172】[実施例1]、【0175】[実施例2]、【0176】[実施例3])。 上記の発明の詳細な説明の記載によれば、実施例1~3において、具体的に確認された細胞移植用デバイス(血管新生剤)以外にも、本件発明1において特定された、「細胞構造体」と「免疫隔離膜」とを備えるものであれば、上記課題が解決できることを当業者であれば認識できる。 本件発明2~15についても同様である。 (2)申立人の主張について 申立人の主張について検討する。 申立人は、申立書において、本件明細書において、具体的に課題を解決したものと認められるのは、特定の細胞構造体と特定の免疫隔離膜とを組み合わせた実施例のもののみである一方、本件発明1で規定された細胞構造体と免疫隔離膜は、いずれも極めて広範な概念を含むものであり、その配置も極めて広範な配置形態を包含するものであるから、本件明細書の実施例のような極めて特定の例のみをもって、前記課題が解決できるものとは到底認められない旨、主張している(申立書35~39頁の「(A)サポート要件違反について」)。 しかしながら、上記のとおり、当業者は、本件明細書の記載から、本件発明が「宿主の細胞を透過させずに免疫拒絶反応からは保護された状態で、間葉系幹細胞による血管新生効果を十分に発揮できる血管新生剤」であることを理解できる。 また、申立人は、実施例以外の本件発明の血管新生剤が、本件発明の課題を解決できないとする具体的な理由を何ら示していない。 よって、申立人の上記主張を採用することはできない。 第7 むすび 以上のとおりであるから、令和4年1月25日付け取消理由通知書に記載した取消理由又は特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、請求項1~15に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に請求項1~15に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2021-700963

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