特許異議申立
2022-700330
船舶
- 審判番号
- 2022-700330
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2021-060225
- 登録番号
- 6966661
- 請求日
- 2022年04月21日
- 審決日
- 2023年07月20日
- 公報発行日
- 2023年12月28日
- 結論
- 請求成立(取消)
- 当事者
- 【権利者】三菱造船株式会社
- 【権利者代理人】松沼 泰史
- 【権利者代理人】伊藤 英輔
- 【権利者代理人】橋本 宏之
- 【権利者代理人】古都 智
- 【権利者代理人】鎌田 康一郎
- 【異議申立人】グローリーホルダー リキファイド ガス マシーナリー(ディーエル)カンパニー リミテッド
- 【異議申立人代理人】伊東 忠重
- 【異議申立人代理人】伊東 忠彦
- 【異議申立人代理人】宮崎 修
- 【異議申立人代理人】新川 圭二
- 審判長/審判官
- 審判長 藤井 昇
- 審判官 筑波 茂樹
- 審判官 中村 則夫
- 分類
- P1651.113-ZDA(B63B) / P1651.121-ZDA(B63B) / P1651.832-ZDA(B63B) / P1651.841-ZDA(B63B) / P1651.851-ZDA(B63B) / P1651.853-ZDA(B63B) / P1651.857-ZDA(B63B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第4項、特許法第29条、特許法第29条第2項、特許法第113条第2号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第6966661号発明「船舶」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第6966661号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~5〕について、訂正することを認める。
特許第6966661号の請求項1、3、5に係る特許を取り消す。
特許第6966661号の請求項2、4に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第6966661号(以下「本件特許」という。)の請求項1~5に係る特許についての出願は、令和3年3月31日に出願され、同年10月25日にその特許権の設定登録がなされ、同年11月17日に特許掲載公報が発行された。その特許について、グローリーホルダー リキファイド ガス マシーナリー(ディーエル)カンパニー リミテッド(以下「申立人」という。)により特許異議の申立てがなされ、その異議の申立ての経緯は、次のとおりである。
令和4年 4月21日 :請求項1~5に係る特許に対する特許異議の
申立て
同年 7月28日付け:取消理由通知
同年 9月16日 :特許権者による意見書、訂正請求書の提出
同年12月 5日 :申立人による意見書の提出
令和5年 1月23日付け:取消理由通知(決定の予告)
同年 3月28日 :特許権者による意見書、訂正請求書の提出
同年 5月15日 :申立人による意見書の提出
第2 訂正の適否
1 訂正の内容
令和5年3月28日に提出された訂正請求書による訂正(以下「本件訂正」といい、本件訂正の請求を「本件訂正請求」という。)の内容は、以下のとおりである(当審注:下線は訂正箇所を示す。)。なお、本件訂正があったので、令和4年9月16日の訂正請求は、特許法第120条の5第7項の規定により、取り下げられたものとみなす。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1を
「船体と、
前記船体に備えられ、液化ガスを貯留する液化ガスタンクと、
前記液化ガスタンクの前記液化ガスを主機に導入する第一ラインと、
前記第一ラインに備えられて前記液化ガスを圧送する上流側ポンプと、
前記第一ラインにおける前記上流側ポンプよりも下流側に備えられ、前記液化ガスを前記上流側ポンプよりも高い圧力で圧送する下流側ポンプと、
前記液化ガスタンク内で前記液化ガスが蒸発することで生成されたボイルオフガスを補機に導入する第二ラインと、
前記第二ラインに備えられ、前記ボイルオフガスを前記上流側ポンプの吐出側よりも高く、かつ前記下流側ポンプの吐出側よりも低い圧力で圧送する圧縮機と、
前記第一ラインにおける前記上流側ポンプと前記下流側ポンプとの中間部と前記第二ラインにおける前記圧縮機よりも下流側の部分とを接続し、前記第二ラインにより前記ボイルオフガスを前記補機へ導入させつつ、前記補機で消費しきれない余剰の前記ボイルオフガスを前記第一ラインの前記液化ガスに混合可能な混合ラインと、を備え、
前記混合ラインから流れ込むボイルオフガスの圧力の方が、前記第一ラインの液化ガスの圧力よりも高く、前記第一ラインの液化ガスの温度は、飽和温度よりも低い
船舶。」に訂正する。
(請求項1の記載を引用する請求項3、5も同様に訂正する。)
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2を
「船体と、
前記船体に備えられ、液化ガスを貯留する液化ガスタンクと、
前記液化ガスタンクの前記液化ガスを主機に導入する第一ラインと、
前記第一ラインに備えられて前記液化ガスを圧送する上流側ポンプと、
前記第一ラインにおける前記上流側ポンプよりも下流側に備えられ、前記液化ガスを前記上流側ポンプよりも高い圧力で圧送する下流側ポンプと、
前記液化ガスタンク内で前記液化ガスが蒸発することで生成されたボイルオフガスを補機に導入する第二ラインと、
前記第二ラインに備えられ、前記ボイルオフガスを前記上流側ポンプの吐出側よりも高く、かつ前記下流側ポンプの吐出側よりも低い圧力で圧送する圧縮機と、
前記第一ラインにおける前記上流側ポンプと前記下流側ポンプとの中間部と前記第二ラインにおける前記圧縮機よりも下流側の部分とを接続し、前記第二ラインの前記ボイルオフガスを前記第一ラインの前記液化ガスに混合可能な混合ラインと、を備え、
前記第二ラインにおける前記圧縮機よりも下流側に配置され、冷媒との熱交換を行う第一熱交換器、をさらに備えるが、前記混合ラインと、前記第一ラインにおける前記下流側ポンプよりも下流側の部分との間で熱交換を行う第二熱交換器は備えず、
前記混合ラインから流れ込むボイルオフガスの圧力の方が、前記第一ラインの液化ガスの圧力よりも高く、前記第一ラインの液化ガスの温度は、飽和温度よりも低い
船舶。」に訂正する。
(請求項2の記載を引用する請求項3、5も同様に訂正する。)
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項4を
「船体と、
前記船体に備えられ、液化ガスを貯留する液化ガスタンクと、
前記液化ガスタンクの前記液化ガスを主機に導入する第一ラインと、
前記第一ラインに備えられて前記液化ガスを圧送する上流側ポンプと、
前記第一ラインにおける前記上流側ポンプよりも下流側に備えられ、前記液化ガスを前記上流側ポンプよりも高い圧力で圧送する下流側ポンプと、
前記液化ガスタンク内で前記液化ガスが蒸発することで生成されたボイルオフガスを補機に導入する第二ラインと、
前記第二ラインに備えられ、前記ボイルオフガスを前記上流側ポンプの吐出側よりも高く、かつ前記下流側ポンプの吐出側よりも低い圧力で圧送する圧縮機と、
前記第一ラインにおける前記上流側ポンプと前記下流側ポンプとの中間部と前記第二ラインにおける前記圧縮機よりも下流側の部分とを接続し、前記第二ラインにより前記ボイルオフガスを前記補機へ導入させつつ、前記補機で消費しきれない余剰の前記ボイルオフガスを前記第一ラインの前記液化ガスに混合可能な混合ラインと、を備え、
前記第一ラインは、前記第一ラインと前記混合ラインとの合流部よりも下流側に、少なくとも一つの屈曲部を有し、
前記第一ラインは、前記第一ラインと前記混合ラインとの合流部よりも下流側に、内部流体による熱収縮および前記船体の船首尾方向の伸縮変形を吸収するオフセットベントが備えられ、
前記オフセットベントは、前記下流側ポンプより上流側に設けられ、
前記屈曲部は、前記オフセットベントの一部を構成する
船舶。」に訂正する。
(請求項4の記載を引用する請求項5も同様に訂正する。)
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項5を
「【請求項5】
前記混合ラインと、前記第一ラインにおける前記下流側ポンプよりも下流側の部分との間で熱交換を行う第二熱交換器、をさらに備える
請求項1、請求項3(請求項2を引用する従属項は除く)、請求項4の何れか一項に記載の船舶。」に訂正する。
2 一群の請求項
訂正前の請求項3~5は請求項1を引用しているものであって、訂正事項1によって訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。また、訂正前の請求項3~5は請求項2を引用しているものであって、訂正事項2によって訂正される請求項2に連動して訂正されるものである。
したがって、訂正前の請求項1、3、4、5に対応する訂正後の請求項1、3、4、5及び訂正前の請求項2、3、4、5に対応する訂正後の請求項2、3、4、5は、それぞれ一群の請求項となるが、共通する請求項3、4、5があるそれぞれの一群の請求項は組み合わされて、訂正前の請求項1~5に対応する訂正後の請求項1~5は、特許法120条の5第4項に規定する一群の請求項になる。
そして、訂正事項1~4の訂正は、当該一群の請求項〔1~5〕について、請求されたものである。
3 訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存
否
(1)訂正事項1、2について
ア 訂正の目的
訂正事項1に係る訂正は、訂正前の請求項1に係る発明において、「前記混合ラインから流れ込むボイルオフガスの圧力の方が、前記第一ラインの液化ガスの圧力よりも高く、前記第一ラインの液化ガスの温度は、飽和温度よりも低い」との限定を付加することで、特許請求の範囲を減縮するものである。
訂正事項2に係る訂正は、訂正前の請求項2に係る発明において、「前記混合ラインと、前記第一ラインにおける前記下流側ポンプよりも下流側の部分との間で熱交換を行う第二熱交換器は備えず、前記混合ラインから流れ込むボイルオフガスの圧力の方が、前記第一ラインの液化ガスの圧力よりも高く、前記第一ラインの液化ガスの温度は、飽和温度よりも低い」との限定を付加することで、特許請求の範囲を減縮するものである。
よって、訂正事項1、2は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 新規事項の有無
(ア)訂正事項1、2により付加された事項のうち「前記混合ラインから流れ込むボイルオフガスの圧力の方が、前記第一ラインの液化ガスの圧力よりも高く、前記第一ラインの液化ガスの温度は、飽和温度よりも低い」との事項について
願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件明細書等」という。)の段落【0029】の「・・・このとき、第二ライン32から混合ライン33Aに流れ込むボイルオフガスBOGは、圧縮機44で圧縮されることによって、上流側ポンプ41の吐出側よりも高く、かつ下流側ポンプ42の吐出側よりも低い圧力(例えば0.6MPaG)となる。ボイルオフガスBOGが混合ライン33Aから第一ライン31に流れ込む部分(言い換えれば、合流部31j近傍)において、第一ライン31の液化ガスLGは、上流側ポンプ41の吐出側の圧力(例えば0.5MPaG)である。つまり、混合ライン33Aから流れ込むボイルオフガスBOGの圧力の方が、第一ライン31の液化ガスLGの圧力よりも高い。そのため、これら圧力差によって、混合ライン33AのボイルオフガスBOGは、第一ライン31の液化ガスLG中に円滑に合流する。また、液化ガスLGは上流側ポンプ41で加圧されることで例えば-150℃程度まで昇温するが、加圧後(例えば0.5MPaG)における飽和温度(例えば-134℃程度)よりも低い温度であるため、混合ライン33Aから流れ込むボイルオフガスBOGは冷却され凝縮する。このようにして液化ガスLGに混合されたボイルオフガスBOGは、液化ガスLGとともに主機21に送り込まれて燃焼される。」との記載に基づくものであり、新規事項を追加するものではない。
(イ)訂正事項2により付加された事項のうち「前記混合ラインと、前記第一ラインにおける前記下流側ポンプよりも下流側の部分との間で熱交換を行う第二熱交換器は備えず」との事項について
本件明細書等の段落【0036】~【0038】には、以下の記載がある。
「【0036】・・・以下に説明する第二実施形態においては、第一実施形態と第二熱交換器の構成のみが異なるので、第一実施形態と同一部分に同一符号を付して説明するとともに、重複説明を省略する。
この実施形態の船舶1における燃料供給システム30Bは、上記第一実施形態における燃料供給システム30Aの構成に加えて、第二熱交換器49を備えている。第二熱交換器49は、混合ライン33Bを流れるボイルオフガスBOGと、第一ライン31における下流側ポンプ42よりも下流側を流れる液化ガスLG、すなわちボイルオフガスBOGと混合された後の液化ガスLGとの間で熱交換を行う。
・・・
【0038】
上記第二実施形態の船舶1によれば、混合ライン33Bと、第一ライン31における下流側ポンプ42よりも下流側の部分との間で熱交換を行う第二熱交換器49を備えていることで、第一実施形態と同様に、ボイルオフガスBOGの処理を、より効率良く行うことが可能となる。」
上記記載によれば、第二実施形態では、第一実施形態の構成に加えて、混合ライン33Bと、第一ライン31における下流側ポンプ42よりも下流側の部分との間で熱交換を行う第二熱交換器を備えているものである。逆に第一実施形態では、当該第二熱交換器を備えていないといえるから、「前記混合ラインと、前記第一ラインにおける前記下流側ポンプよりも下流側の部分との間で熱交換を行う第二熱交換器は備えず」との事項は、第一実施形態に基づくものであって、新規事項を追加するものではない。
よって、訂正事項1、2は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。
ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項1、2は、発明特定事項をより具体的に限定するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。
(2)訂正事項3について
ア 訂正の目的
訂正事項3に係る訂正は、訂正前の請求項1を引用する請求項3を引用する請求項4を独立請求項とするとともに、「前記オフセットベントは、前記下流側ポンプより上流側に設けられ」と限定することで、特許請求の範囲の記載を減縮するものである。
よって、訂正事項3は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第4号に規定する特許請求の範囲の減縮及び他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。
イ 新規事項の有無
訂正事項3で付加された「前記オフセットベントは、前記下流側ポンプより上流側に設けられ」ることは、本件明細書等の段落【0020】の「第一ライン31は、更に、オフセットベント48を備えている。オフセットベント48は、下流側ポンプ42よりも、第一ライン31における液化ガスLGの流れ方向の上流側に設けられている。・・・」との記載に基づくものであり、新規事項を追加するものではない。
よって、訂正事項3は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。
ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項3は、他の請求項を引用する請求項を独立請求項とするとともに、発明特定事項をより具体的に限定するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。
(3)訂正事項4について
ア 訂正の目的
訂正事項4は、訂正事項2の訂正により、請求項2に「前記混合ラインと、前記第一ラインにおける前記下流側ポンプよりも下流側の部分との間で熱交換を行う第二熱交換器は備えず」との事項が付加されることで、請求項5で特定される「前記混合ラインと、前記第一ラインにおける前記下流側ポンプよりも下流側の部分との間で熱交換を行う第二熱交換器、をさらに備える」との事項との間で不整合が生じるから、請求項5において、請求項2及び同項を引用する請求項3を引用しないものとするものであり、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に規定する、特許請求の範囲の減縮及び明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
イ 新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否
引用する請求項を削除する訂正事項4が、新規事項を追加するものではなく、また、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないことは明らかである。
よって、訂正事項4は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。
4 独立特許要件
本件においては、訂正前の全ての請求項1~5について特許異議の申立てがなれされているので、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の独立特許要件は課されない。
5 小括
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第3号及び第4号に規定する事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項及び第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
よって、特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~5〕について、訂正することを認める。
第3 本件発明
上記「第2」で説示したように本件訂正請求は認められるから、本件訂正により訂正された訂正後の請求項1~5に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」・・・「本件発明5」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1~5に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
船体と、
前記船体に備えられ、液化ガスを貯留する液化ガスタンクと、
前記液化ガスタンクの前記液化ガスを主機に導入する第一ラインと、
前記第一ラインに備えられて前記液化ガスを圧送する上流側ポンプと、
前記第一ラインにおける前記上流側ポンプよりも下流側に備えられ、前記液化ガスを前記上流側ポンプよりも高い圧力で圧送する下流側ポンプと、
前記液化ガスタンク内で前記液化ガスが蒸発することで生成されたボイルオフガスを補機に導入する第二ラインと、
前記第二ラインに備えられ、前記ボイルオフガスを前記上流側ポンプの吐出側よりも高く、かつ前記下流側ポンプの吐出側よりも低い圧力で圧送する圧縮機と、
前記第一ラインにおける前記上流側ポンプと前記下流側ポンプとの中間部と前記第二ラインにおける前記圧縮機よりも下流側の部分とを接続し、前記第二ラインにより前記ボイルオフガスを前記補機へ導入させつつ、前記補機で消費しきれない余剰の前記ボイルオフガスを前記第一ラインの前記液化ガスに混合可能な混合ラインと、を備え、
前記混合ラインから流れ込むボイルオフガスの圧力の方が、前記第一ラインの液化ガスの圧力よりも高く、前記第一ラインの液化ガスの温度は、飽和温度よりも低い
船舶。
【請求項2】
船体と、
前記船体に備えられ、液化ガスを貯留する液化ガスタンクと、
前記液化ガスタンクの前記液化ガスを主機に導入する第一ラインと、
前記第一ラインに備えられて前記液化ガスを圧送する上流側ポンプと、
前記第一ラインにおける前記上流側ポンプよりも下流側に備えられ、前記液化ガスを前記上流側ポンプよりも高い圧力で圧送する下流側ポンプと、
前記液化ガスタンク内で前記液化ガスが蒸発することで生成されたボイルオフガスを補機に導入する第二ラインと、
前記第二ラインに備えられ、前記ボイルオフガスを前記上流側ポンプの吐出側よりも高く、かつ前記下流側ポンプの吐出側よりも低い圧力で圧送する圧縮機と、
前記第一ラインにおける前記上流側ポンプと前記下流側ポンプとの中間部と前記第二ラインにおける前記圧縮機よりも下流側の部分とを接続し、前記第二ラインの前記ボイルオフガスを前記第一ラインの前記液化ガスに混合可能な混合ラインと、を備え、
前記第二ラインにおける前記圧縮機よりも下流側に配置され、冷媒との熱交換を行う第一熱交換器、をさらに備えるが、前記混合ラインと、前記第一ラインにおける前記下流側ポンプよりも下流側の部分との間で熱交換を行う第二熱交換器は備えず、
前記混合ラインから流れ込むボイルオフガスの圧力の方が、前記第一ラインの液化ガスの圧力よりも高く、前記第一ラインの液化ガスの温度は、飽和温度よりも低い
船舶。
【請求項3】
前記第一ラインは、前記第一ラインと前記混合ラインとの合流部よりも下流側に、少なくとも一つの屈曲部を有する
請求項1又は2に記載の船舶。
【請求項4】
船体と、
前記船体に備えられ、液化ガスを貯留する液化ガスタンクと、
前記液化ガスタンクの前記液化ガスを主機に導入する第一ラインと、
前記第一ラインに備えられて前記液化ガスを圧送する上流側ポンプと、
前記第一ラインにおける前記上流側ポンプよりも下流側に備えられ、前記液化ガスを前記上流側ポンプよりも高い圧力で圧送する下流側ポンプと、
前記液化ガスタンク内で前記液化ガスが蒸発することで生成されたボイルオフガスを補機に導入する第二ラインと、
前記第二ラインに備えられ、前記ボイルオフガスを前記上流側ポンプの吐出側よりも高く、かつ前記下流側ポンプの吐出側よりも低い圧力で圧送する圧縮機と、
前記第一ラインにおける前記上流側ポンプと前記下流側ポンプとの中間部と前記第二ラインにおける前記圧縮機よりも下流側の部分とを接続し、前記第二ラインにより前記ボイルオフガスを前記補機へ導入させつつ、前記補機で消費しきれない余剰の前記ボイルオフガスを前記第一ラインの前記液化ガスに混合可能な混合ラインと、を備え、
前記第一ラインは、前記第一ラインと前記混合ラインとの合流部よりも下流側に、少なくとも一つの屈曲部を有し、
前記第一ラインは、前記第一ラインと前記混合ラインとの合流部よりも下流側に、内部流体による熱収縮および前記船体の船首尾方向の伸縮変形を吸収するオフセットベントが備えられ、
前記オフセットベントは、前記下流側ポンプより上流側に設けられ、
前記屈曲部は、前記オフセットベントの一部を構成する
船舶。
【請求項5】
前記混合ラインと、前記第一ラインにおける前記下流側ポンプよりも下流側の部分との間で熱交換を行う第二熱交換器、をさらに備える
請求項1、請求項3(請求項2を引用する従属項は除く)、請求項4の何れか一項に記載の船舶。」
第4 取消理由の概要
令和5年1月23日付け取消理由通知(決定の予告)で通知した取消理由の概要は次のとおりである。
(進歩性)本件特許の下記の請求項に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、本件特許の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、当該請求項に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。
記
[各甲号証]
甲第1号証:中国実用新案第203810038号明細書
甲第2号証:中国特許第103382930号明細書
なお、甲第1号証及び甲第2号証は、申立人が、令和4年4月21日の特許異議申立書とともに提出した甲第1号証及び甲第2号証(以下、それぞれ「甲1」、「甲2」という。)である。
・請求項1、3、5について、甲1
・請求項2について、甲1及び甲2
第5 当審の判断
1 各甲号証の記載
(1)甲1
本件特許の出願前に外国で頒布された甲1には、図面とともに、以下の記載がある。なお、括弧内に当審の作成した翻訳を示し、下線を付与した。以下同じ。
ア 甲1の記載事項及び図示事項
「
[図:0001404735000001.jpg]
」
(翻訳:[0004]
液化天然ガスは船上に貯蔵され、MAN ME-GIメインエンジンにとって、BOGボイルオブガスの処理が一難題である。汎用の再液化システムを設置した場合、船舶の製造コストは大幅に増加し、BOGボイルオブガスを直接300barまで圧縮した場合、圧縮機のコストが非常に高くなるだけではなく高く、消費電力も非常に大きくなる。)
「
[図:0001404735000002.jpg]
[図:0001404735000003.jpg]
」
(翻訳:[0007]
本考案の有利な効果は以下の通りである。前記の自己平衡式再液化システムのLNG移送ポンプは供給タンクに接続され、LNG貯蔵タンクの頂部は圧縮機ユニットに接続され、圧縮機ユニットは発電機ユニットに接続され、かつ、圧縮機ユニットは圧力制御バルブ、第1の高圧スリーブ式熱交換器を経由して供給タンクに接続され、供給タンクはLNG加圧ポンプ、第1の高圧スリーブ式熱交換器と第2の高圧スリーブ式熱交換器を経由してメインエンジンの燃料供給パイプに接続される。発電機ユニットが圧縮後のBOGボイルオブガスを全部消費することができない場合、余分な高温BOGボイルオブガスは圧力制御バルブによって第1の高圧スリーブ式熱交換器の外管中に導入され、LNG加圧ポンプが低温LNGを排出して気化することで発生する冷熱エネルギーを利用して二重管中のBOGボイルオブガスに対し冷却を行い、供給タンクの底部において噴出を行って再液化を実現する。この再液化システムは、LNG貯蔵タンク内の余分なBOGボイルオブガスを再液化すると同時に、ガス供給システム中のLNG気化で発生した冷熱エネルギーを利用して、LNG貯蔵タンクの圧力を低減し、かつLNG貯蔵タンクの停泊蓄圧時間を延長することができる。)
「
[図:0001404735000004.jpg]
」
(翻訳:具体実施方式
[0011]
図1は自己平衡型再液化システムの動作原理を示す図である。図中、自己平衡型再液化システムは、LNG貯蔵タンク2、圧縮機ユニット3、LNG加圧ポンプ4、供給タンク5、第1の高圧スリーブ式熱交換器6及び第2の高圧スリーブ式熱交換器7を含み、LNG貯蔵タンク2内にLNG移送ポンプ1と上方噴射パイプ10が設置されている。LNG移送ポンプ1はパイプを用いて、第1制御バルブ1aを経由して供給タンク5に接続され、第1制御バルブ1aはパイプを用いて、上方噴射制御バルブ10aを経由して上方噴射パイプ10に接続され、前記LNG貯蔵タンク2の頂部はパイプを用いて、第2制御バルブ3aを経由して圧縮機ユニット3に接続され、圧縮機ユニット3はパイプを用いて、第3制御バルブ8aを経由して発電機ユニット8に接続され、さらに、圧力制御バルブ9、第1の高圧スリーブ式熱交換器6を順に経由して供給タンク5に接続され、前記供給タンク5はパイプを用いて、LNG加圧ポンプ4、第1の高圧スリーブ式熱交換器6と第2の高圧スリーブ式熱交換器7を順に経由してメインエンジンの燃料供給パイプに接続される。
[0012]
前記自己平衡式再液化システムの動作原理は以下の通りである。
[0013]
(a)圧縮機ユニット3はLNG貯蔵タンク2内のBOGボイルオブガスを6-6.5barまで圧縮し、温度を25-40℃まで向上させた後、発電機ユニット8に供給する。
[0014]
(b)LNG移送ポンプ1は連続的に動作して、LNG貯蔵タンク2内のLNG液体を供給タンク5まで移送し、一部のLNG液体が上方噴射制御バルブ10aにより、上方噴射パイプ10を経由してLNG貯蔵タンク2内に噴出され、供給タンク5への注入流量を調節し、供給タンク5内の液面の高さを一定高さに維持する。すなわち、「注入量」+「圧縮機ユニットの余分なBOGボイルオブガス」=「LNG加圧ポンプ吐出量」=「メインエンジン消費量」。供給タンク5内の圧力は圧縮機ユニット3が排出した余分なBOGボイルオブガス流量によって決まり、通常は0-6.5bar.Gに制御され、圧力が6.5barより高くなると、圧縮機3は排出量を自動的に減少させ、供給タンク5の内圧を6.5bar以内に維持する。
[0015]
(c)LNG加圧ポンプ4は供給タンク5内のLNG液体(-132℃)を300barまで加圧させた後に第1の高圧スリーブ式熱交換器6と第2の高圧スリーブ式熱交換器7に注入し、加熱/気化して、最終的にメインエンジンに供給し、気体圧力は300barであり、気体温度は20℃である。
[0016]
(d)圧力制御バルブ9の圧力設定点が6.2barであり、圧縮機の圧力が6.2barに達した時に、圧力制御バルブ9がオンになり、発電機ユニットが消費し切れなかった余分なBOGボイルオブガスを第1の高圧スリーブ式熱交換器6の外層パイプまで通し、かつ、LNG加圧ポンプ4が排出したLNG液体と熱交換を行う。第1の高圧スリーブ式熱交換器6の吐出口のBOGボイルオブガスの温度は-70℃であり、冷却後のBOGボイルオブガスは下方噴射パイプ5aを通って供給タンク5に入り、自己平衡型再液化が完了する。)
図1
[図:0001404735000005.jpg]
※当審注:図1における5aの位置は、段落[0016]の「第1の高圧スリーブ式熱交換器6の吐出口のBOGボイルオブガスの温度は-70℃であり、冷却後のBOGボイルオブガスは下方噴射パイプ5aを通って供給タンク5に入り」との記載を踏まえると、誤記と認められる。
イ 甲1の認定事項
(ア)段落[0004]の「液化天然ガスは船上に貯蔵され」、「船舶の製造コストは大幅に増加し」との記載から、甲1の自己平滑型再液化システムは船舶に備えられるものと認められる。船舶が船体を備えることは自明である。
(イ)ボイルオフガスが、液化ガスが自然入熱等により蒸発して生成されたガスを意味することは当業者において自明の事項である。そうすると、段落[0015]の「LNG貯蔵タンク2内のBOGボイルオブガス」との記載から、BOGボイルオブガスは、LNG貯蔵タンク2内のLNGが蒸発して生成されたものと認められる。
(ウ)図1から、圧縮機ユニット3の下流側で分岐した経路が供給タンク5に接続されることが看取できる。
(エ)段落[0007]の「余分な高温BOGボイルオブガスは圧力制御バルブによって第1の高圧スリーブ式熱交換器の外管中に導入され、LNG加圧ポンプが低温LNGを排出して気化することで発生する冷熱エネルギーを利用して二重管中のBOGボイルオブガスに対し冷却を行い、」との記載から、第1の高圧スリーブ式熱交換器ではLNG気体が気化することで発生する冷熱エネルギーを利用してBOGボイルオブガスに対して冷却を行うものと認められる。
(オ)図1から、第1の高圧スリーブ式熱交換器6は、屈曲部を有することが看取できる。
ウ 甲1発明
上記ア及びイを踏まえると、甲1には、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
「船体と、自己平衡型再液化システムを備える船舶であって、
自己平衡型再液化システムは、LNG貯蔵タンク2、圧縮機ユニット3、LNG加圧ポンプ4、供給タンク5、第1の高圧スリーブ式熱交換器6を含み、
LNG貯蔵タンク2内にLNG移送ポンプ1が設置され、LNG移送ポンプ1はパイプを用いて、供給タンク5に接続され、前記供給タンク5はパイプを用いて、LNG加圧ポンプ4を経由してメインエンジンの燃料供給パイプに接続され、
LNG移送ポンプ1は連続的に動作して、LNG貯蔵タンク2内のLNG液体を供給タンク5まで移送し、一部のLNG液体が上方噴射制御バルブ10aにより、上方噴射パイプ10を経由してLNG貯蔵タンク2内に噴出され、供給タンク5への注入流量を調節し、供給タンク5内の液面の高さを一定高さに維持し、
LNG加圧ポンプ4は供給タンク5内のLNG液体(-132℃)を300barまで加圧させた後に第1の高圧スリーブ式熱交換器6に注入し、最終的にメインエンジンに供給し、
LNG貯蔵タンク2の頂部はパイプを用いて、圧縮機ユニット3に接続され、圧縮機ユニット3はパイプを用いて、発電機ユニット8に接続され、さらに、圧縮機ユニット3の下流側で分岐した経路が供給タンク5に接続され、
圧縮機ユニット3はLNG貯蔵タンク2内のLNGが蒸発して生成されたBOGボイルオブガスを6-6.5barまで圧縮し、発電機ユニット8に供給し、
供給タンク5内の圧力は圧縮機ユニット3が排出した余分なBOGボイルオブガス流量によって決まり、通常は0-6.5bar.Gに制御され、
発電機ユニットが消費し切れなかった余分なBOGボイルオブガスを第1の高圧スリーブ式熱交換器6の外層パイプまで通し、かつ、LNG加圧ポンプ4が排出したLNG液体と熱交換を行い、第1の高圧スリーブ式熱交換器ではLNG液体が気化することで発生する冷熱エネルギーを利用してBOGボイルオブガスに対し冷却を行い、冷却後のBOGボイルオブガスは下方噴射パイプ5aを通って供給タンク5に入り、
第1の高圧スリーブ式熱交換器6は、屈曲部を有する
船舶。」
(2)甲2
本件特許の出願前に外国で頒布された甲2には、図面とともに、以下の記載がある。
ア 甲2の記載事項及び図示事項
「
[図:0001404735000006.jpg]
」
(翻訳:技術分野
[0001]
本発明は常温圧縮機を用いて低温気体を処理するシステムに関し、船舶機関室の動力装置の気体燃料の供給、荷積み荷下ろしの気相操作、LNG燃料補給の気相操作、貯蔵室または貨物室間の液体貨物の移送などに用いられる。)
「
[図:0001404735000007.jpg]
」
(翻訳:[0016]
図1は1段加熱と圧縮を利用して低温LNG蒸気を処理するシステムを示している。図1において、LNG液タンクのLNG蒸気は、LNG蒸気入り口6から第1熱交換器1を通って、1段常温圧縮機2に流入して圧縮され、圧縮昇温されたLNG蒸気は1段吸気温度調節バルブ4によって制御され、LNG蒸気入り口6から流入したLNG蒸気が第1熱交換器1で加熱された後、ポスト熱交換器5に流入するか、若しくは直接ポスト熱交換器5に流入し、エアー冷却を利用するポスト熱交換器5において再度冷却された後、LNG排出口7から排出される。)
図1
[図:0001404735000008.jpg]
イ 甲2記載の技術事項
上記アを踏まえると、甲2には、次の技術事項(以下「甲2記載の技術事項」という。)が記載されていると認められる。
「船舶機関室の動力装置の気体燃料の供給に用いられ、LNG液タンクのLNG蒸気は、LNG蒸気入り口6から第1熱交換器1を通って、1段常温圧縮機2に流入して圧縮され、圧縮昇温されたLNG蒸気は、エアー冷却を利用するポスト熱交換器5において再度冷却された後、LNG排出口7から排出される技術。」
2 対比・判断
(1)本件発明1
ア 対比
本件発明1と甲1発明とを対比する。
(ア)後者の「LNG貯蔵タンク2」は前者の「液化ガスを貯留する」「液化ガスタンク」に相当し、以下同様に、「メインエンジン」は「主機」に、「BOGボイルオブガス」は「ボイルオフガス」に、「発電機ユニット」は「補機」に、「圧縮機ユニット3」は「圧縮機」に、それぞれ相当する。
(イ)後者の「LNG貯蔵タンク2」は船体に備えられていることは明らかであるから、上記アの相当関係を踏まえると、前者の「前記船体に備えられ、液化ガスを貯留する液化ガスタンク」に相当する。
(ウ)後者の「LNG貯蔵タンク2内にLNG移送ポンプ1が設置され、LNG移送ポンプ1はパイプを用いて、供給タンク5に接続され、前記供給タンク5はパイプを用いて、LNG加圧ポンプ4を経由してメインエンジンの燃料供給パイプに接続され」る構成は、前者の「前記液化ガスタンクの前記液化ガスを主機に導入する第一ライン」の構成に相当する。
(エ)後者の「LNG貯蔵タンク2内のLNG液体を供給タンク5まで移送」する「LNG移送ポンプ1」は、上記(ウ)で説示した第一ラインにおけるLNG移送ポンプ1とLNG加圧ポンプ4の上流・下流の位置を踏まえると、前者の「前記第一ラインに備えられて前記液化ガスを圧送する上流側ポンプ」に相当する。
同様に、第一ラインにおけるLNG移送ポンプ1とLNG加圧ポンプ4の上流・下流の位置を踏まえると、後者の「LNG加圧ポンプ4」は、前者の「前記第一ラインにおける前記上流側ポンプよりも下流側に備えられ、前記液化ガスを前記上流側ポンプよりも高い圧力で圧送する下流側ポンプ」と「前記第一ラインにおける前記上流側ポンプよりも下流側に備えられ、前記液化ガスを圧送する下流側ポンプ」の点で共通する。
(オ)後者の「LNG貯蔵タンク2の頂部はパイプを用いて、圧縮機ユニット3に接続され、圧縮機ユニット3はパイプを用いて、発電機ユニット8に接続され」る構成は、「圧縮機ユニット3はLNG貯蔵タンク2内のLNGが蒸発して生成されたBOGボイルオブガスを」「発電機ユニット8に供給」することを踏まえると、前者の「前記液化ガスタンク内で前記液化ガスが蒸発することで生成されたボイルオフガスを補機に導入する第二ライン」の構成に相当する。
(カ)後者の「圧縮機ユニット3」は、「LNG貯蔵タンク2内の液化天然ガスが蒸発して生成されたBOGボイルオブガスを6-6.5barまで圧縮」するものであり、LNG加圧ポンプ4の「供給タンク5内のLNG液体(-132℃)を300barまで加圧させ」ることに比べ低い圧力であるから、上記(エ)及び(オ)で説示した相当関係を踏まえると、前者の「前記第二ラインに備えられ、前記ボイルオフガスを前記上流側ポンプの吐出側よりも高く、かつ前記下流側ポンプの吐出側よりも低い圧力で圧送する圧縮機」と、「前記第二ラインに備えられ、前記ボイルオフガスを前記下流側ポンプの吐出側よりも低い圧力で圧送する圧縮機」の点で共通する。
(キ)後者の供給タンク5は、上記(ウ)及び(エ)で説示した相当関係を踏まえると、第一ラインにおける上流側ポンプと下流側ポンプとの中間部であるから、上記(オ)で説示した相当関係も踏まえると、後者の「圧縮機ユニット3はパイプを用いて、発電機ユニット8に接続され、さらに、圧縮機ユニット3の下流側で分岐した経路が供給タンク5に接続され」る構成は、前者の「前記第一ラインにおける前記上流側ポンプと前記下流側ポンプとの中間部と前記第二ラインにおける前記圧縮機よりも下流側の部分とを接続」する構成に相当する。
(ク)後者の「圧縮機ユニット3」は「BOGボイルオブガスを」「発電機ユニット8に供給し」、「発電機ユニットが消費し切れなかった余分なBOGボイルオブガス」「は下方噴射パイプ5aを通って供給タンク5に入る」構成は、前者の「前記第二ラインにより前記ボイルオフガスを前記補機へ導入させつつ、前記補機で消費しきれない余剰の前記ボイルオフガスを前記第一ラインの前記液化ガスに混合可能な」構成に相当する。
(ケ)上記(キ)及び(ク)を踏まえると、後者の「圧縮機ユニット3の下流側で分岐した経路が供給タンク5に接続され」る構成は、前者の「混合ライン」の構成に相当する。
(コ)上記(ア)~(ケ)を踏まえると、後者の「船舶」が、前者の「船体」、「液化ガスタンク」、「第一ライン」、「上流側ポンプ」、「下流側ポンプ」、「第二ライン」、「圧縮機」、「混合ライン」と「を備える」ことは明らかである。
(サ)上記(ア)~(コ)から、本件発明1と甲1発明とは以下の点で一致する。
[一致点]
「 船体と、
前記船体に備えられ、液化ガスを貯留する液化ガスタンクと、
前記液化ガスタンクの前記液化ガスを主機に導入する第一ラインと、
前記第一ラインに備えられて前記液化ガスを圧送する上流側ポンプと、
前記第一ラインにおける前記上流側ポンプよりも下流側に備えられ、前記液化ガスを圧送する下流側ポンプと、
前記液化ガスタンク内で前記液化ガスが蒸発することで生成されたボイルオフガスを補機に導入する第二ラインと、
前記第二ラインに備えられ、前記ボイルオフガスを、前記下流側ポンプの吐出側よりも低い圧力で圧送する圧縮機と、
前記第一ラインにおける前記上流側ポンプと前記下流側ポンプとの中間部と前記第二ラインにおける前記圧縮機よりも下流側の部分とを接続し、前記第二ラインにより前記ボイルオフガスを前記補機へ導入させつつ、前記補機で消費しきれない余剰の前記ボイルオフガスを前記第一ラインの前記液化ガスに混合可能な混合ラインと、を備える
船舶。」
また、両者は以下の点で相違する。
[相違点1a]
下流側ポンプと上流側ポンプの液化ガスを圧送する圧力の大小関係について、本件発明1では、下流側ポンプは「上流側ポンプよりも高い圧力で圧送する」のに対し、甲1発明では、不明である点。
[相違点1b]
圧縮機がボイルオフガスを圧送する圧力の上流側ポンプの吐出側の圧力との大小関係について、本件発明1では、圧縮機は「上流側ポンプの吐出側よりも高」い圧力で圧送し、「前記混合ラインから流れ込むボイルオフガスの圧力の方が、前記第一ラインの液化ガスの圧力よりも高い」のに対し、甲1発明では、不明である点。
[相違点1c]
本件発明1では、「前記第一ラインの液化ガスの温度は、飽和温度よりも低い」のに対して、甲1発明では、明示的な特定がない点。
イ 判断
(ア)事案に鑑み、まず、相違点1bについて検討する。
甲1発明において、「LNG移送ポンプ1は、連続的に動作して、LNG貯蔵タンク2内のLNG液体を供給タンク5まで移送し、一部のLNG液体が上方噴射制御バルブ10aにより、上方噴射パイプ10を経由してLNG貯蔵タンク2内に噴出され、供給タンク5への注入流量を調節し、供給タンク5内の液面の高さを一定高さに維持し」、「LNG加圧ポンプ4は供給タンク5内のLNG液体(-132℃)を300barまで加圧させた後に」「最終的にメインエンジンに供給」するものであるから、供給タンク5内のLNG液体はLNG加圧ポンプ4でメインエンジンに供給され、その分は圧縮機ユニット3が排出した余分なBOGボイルオブガスが再液化により補填されるとともに、供給タンク5内の液面高さが一定高さに維持されるように流量が調節されたLNG液体がLNG移送ポンプ1により移送されるものである。
すなわち、供給タンク5内のLNG液体はLNG加圧ポンプ4で吸い出された分からBOGボイルオブガスが再液化した分の差分だけ液面高さが減少するから、LNG移送ポンプ1は、その減少分だけ、LNG液体を移送すればよいのであって、供給タンク5内の圧力には関係がない。そうすると、LNG移送ポンプ1に求められる吐出圧力は、供給タンク5までの流路の圧力損失等を考慮して供給タンク5にLNG液体が到達できる程度の圧力であれば十分であって、具体的にどの程度の圧力とするかは当業者が適宜決定すべき設計的事項にすぎない。その際、ポンプのコスト等を考慮して、低い吐出圧力とすることも当業者の当然の選択肢の一つであるから、LNG移送ポンプ1の吐出側の圧力を圧縮機ユニット3の圧力(6-6.5bar)よりも低いものとすること、すなわち、LNG移送ポンプ1の吐出側の圧力より圧縮機ユニット3の圧力を高いものとすることは、当業者が適宜なし得たことである。なお、このときに、LNG移送ポンプ1から供給タンク5までの圧力よりも、圧縮機ユニット3から供給タンク5までの圧力が高いものとなることは明らかである。
そうすると、相違点1bについて、本件発明1の発明特定事項とすることは、甲1発明に基いて、当業者が容易になし得たことである。
(イ)相違点1aについて検討する。
上記(ア)で検討したとおり、LNG移送ポンプ1の吐出側の圧力より圧縮機ユニット3の圧力を高いものとすることは当業者が適宜なし得たことである。そして、甲1発明において、LNG加圧ポンプ4の圧力(300bar)は、圧縮機ユニット3の圧力(6-6.5bar)よりも高いから、LNG移送ポンプ1の吐出側の圧力より圧縮機ユニット3の圧力を高いものとすれば、LNG加圧ポンプ4(本件発明1における「下流側ポンプ」)は、LNG移送ポンプ1(同「上流側ポンプ」)の圧力よりも高い圧力で圧送することは明らかである。そうすると、相違点1aについて、本件発明1の発明特定事項とすることは、甲1発明に基いて、当業者が容易になし得たことである。
(ウ)相違点1cについて検討する。
甲1発明は、「LNG貯蔵タンク2内のLNG液体を供給タンク5まで移送し」、「供給タンク5内のLNG液体(-132℃)を・・・第1の高圧スリーブ式熱交換器6に注入し」との構成を有しており、LNG貯蔵タンク2から、供給タンク5を経由して、メインエンジン至るライン(第一ライン)には、LNG液体が存在する。
そして、飽和温度とは、液体が沸騰して蒸気になる、あるいは蒸気が凝縮して液体になる温度をいうのであって、甲1発明において、液体であるLNG液体の温度が飽和温度よりも低いことは明らかである。
そうすると、相違点1cについては実質的に相違点ではない。
(エ)本件発明1の作用効果については、甲1発明から当業者が予測できる範囲内であり、格別のものではない。
(オ)よって、本件発明1は、甲1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(カ)特許権者は、令和5年5月15日の意見書において、「甲1発明の自己平衡型再液化システムにおいて液面一定制御をしている供給タンク5(液温は-132℃、内圧は圧縮機側の制御弁9で0~6.5bar程度に制御)はその液温が飽和温度(平衡温度)となるので、液温を飽和温度(平衡温度)よりも低くすることは、記載も示唆もされていない。」と主張する。
しかしながら、甲1には、供給タンク5内のLNG液体の液温が飽和温度(平衡温度)となることは何ら記載されていないし、むしろ、甲1の段落[0007]の「余分な高温BOGボイルオブガスは、・・・供給タンクの底部において噴出を行って再液化を実現する。」との記載によれば、供給タンク内ではBOGボイルオブガスが再液化するのであるから、供給タンク5内のLNG液体は飽和温度以下であると解するのが相当である。
よって、特許権者の上記主張は採用できない。
(2)本件発明2
ア 対比
本件発明2と甲1発明とを対比する。
(ア)上記(1)ア(ア)~(カ)で説示した相当関係は、本件発明2と甲1発明との間でも同じである。
(イ)後者の供給タンク5は、上記(1)ア(ウ)及び(エ)で説示した相当関係を踏まえると第一ラインにおける上流側ポンプと下流側ポンプとの中間部であるから、上記(1)ア(オ)で説示した相当関係も踏まえると、後者の「圧縮機ユニット3はパイプを用いて、発電機ユニット8に接続され、さらに、圧縮機ユニット3の下流側で分岐した経路が供給タンク5に接続され」る構成は、前者の「前記第一ラインにおける前記上流側ポンプと前記下流側ポンプとの中間部と前記第二ラインにおける前記圧縮機よりも下流側の部分とを接続」する構成に相当する。
(ウ)後者の「圧縮機ユニット3」は「BOGボイルオブガスを」「発電機ユニット8に供給し」、「発電機ユニットが消費し切れなかった余分なBOGボイルオブガスは下方噴射パイプ5aを通って供給タンク5に入る」構成は、前者の「前記第二ラインの前記ボイルオフガスを前記第一ラインの前記液化ガスに混合可能な」構成に相当する。
(エ)上記(イ)及び(ウ)を踏まえると、後者の「圧縮機ユニット3の下流側で分岐した経路が供給タンク5に接続され」る構成は、前者の「混合ライン」に相当する。
(オ)上記(ア)~(エ)を踏まえると、後者の「船舶」が、前者の「船体」、「液化ガスタンク」、「第一ライン」、「上流側ポンプ」、「下流側ポンプ」、「第二ライン」、「圧縮機」、「混合ライン」と「を備える」ことは明らかである。
(カ)上記(ア)~(オ)から、本件発明2と甲1発明とは以下の点で一致する。
[一致点]
「 船体と、
前記船体に備えられ、液化ガスを貯留する液化ガスタンクと、
前記液化ガスタンクの前記液化ガスを主機に導入する第一ラインと、
前記第一ラインに備えられて前記液化ガスを圧送する上流側ポンプと、
前記第一ラインにおける前記上流側ポンプよりも下流側に備えられ、前記液化ガスを圧送する下流側ポンプと、
前記液化ガスタンク内で前記液化ガスが蒸発することで生成されたボイルオフガスを補機に導入する第二ラインと、
前記第二ラインに備えられ、前記ボイルオフガスを、前記下流側ポンプの吐出側よりも低い圧力で圧送する圧縮機と、
前記第一ラインにおける前記上流側ポンプと前記下流側ポンプとの中間部と前記第二ラインにおける前記圧縮機よりも下流側の部分とを接続し、前記第二ラインの前記ボイルオフガスを前記第一ラインの前記液化ガスに混合可能な混合ラインと、を備える
船舶。」
また、両者は以下の点で相違する。
[相違点2a]
下流側ポンプと上流側ポンプの液化ガスを圧送する圧力の大小関係について、本件発明2では、下流側ポンプは「上流側ポンプよりも高い圧力」としているのに対し、甲1発明では、不明である点。
[相違点2b]
圧縮機がボイルオフガスを圧送する圧力の上流側ポンプの吐出側の圧力との大小関係について、本件発明2では、圧縮機は「上流側ポンプの突出側よりも高」い圧力で圧送し、「前記混合ラインから流れ込むボイルオフガスの圧力の方が、前記第一ラインの液化ガスの圧力よりも高い」のに対し、甲1発明では、不明である点。
[相違点2c]
本件発明2は、「前記第二ラインにおける前記圧縮機よりも下流側に配置され、冷媒との熱交換を行う第一熱交換器」を備えるのに対し、甲1発明では、そのような構成を有しない点。
[相違点2d]
本件発明2は、「前記混合ラインと、前記第一ラインにおける前記下流側ポンプよりも下流側の部分との間で熱交換を行う第二熱交換器は備えず」との構成であるのに対し、甲1発明では、発電機ユニットが消費し切れなかった余分なBOGボイルオブガスを第1の高圧スリーブ式熱交換器6の外層パイプまで通し、かつ、LNG加圧ポンプ4が排出したLNG液体と熱交換を行うものである点。
イ 判断
(ア)事案に鑑み、まず、相違点2dについて検討する。
甲1発明における第1の高圧スリーブ式熱交換器6は、発電機ユニット8が消費しきれなかった余分なBOGボイルオブガスと、LNG加圧ポンプ4が排出したLNG液体と熱交換を行い、BOGボイルオブガスを冷却するためのものである。また、当該熱交換によって、LNG液体が加温されることは明らかであり、この第1の高圧スリーブ式熱交換器6による熱交換がBOGボイルオブガスを再液化するとともに、LNG液体を加温、気化してメインエンジンに供給する甲1発明の自己平衡型再液化システムの作動に寄与しているものといえる。そうすると、甲1発明において、第1の高圧式熱交換器6を取り除く動機づけがあるとはいえず、むしろ、取り除くことには、阻害要因があるといえる。
また、甲2の記載を見ても、甲1発明において、第1の高圧スリーブ式熱交換器6を取り除くことの示唆は見いだせず、また、当該示唆を示す他の証拠も見いだせない。
したがって、相違点2dについて、本件発明2の発明特定事項とすることは、甲1発明に基いて、当業者が容易になし得たことではない。
そうすると、相違点2a~2cについて、検討するまでもなく、本件発明2は、甲1発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(イ)申立人は、令和5年5月15日の意見書において、甲1の圧縮機ユニット3は、「前記第二ラインにおける圧縮機よりも下流側に配置され、冷媒との熱交換を行う第一熱交換器」のようなポスト熱交換器を当然に備えるものと認められ、あるいは甲2記載の技術事項を適用して当業者が適宜なし得る程度の微差に過ぎず、本件発明2の「混合ラインと第一ラインにおける前記下流側ポンプよりも下流側の部分との間で熱交換を行う第二熱交換機は備えず、」との構成については、甲1の第1の高圧スリーブ式熱交換器6を当該ポスト熱交換器で代用し得ることは明らかであるから、甲1との格別の差異ではない旨を主張する。
しかしながら、上記検討のとおり、第1の高圧スリーブ式熱交換器6は、LNG液体を加温する機能も有していると認められるから、仮に、甲1の圧縮機ユニット3がポスト熱交換器を当然に備える、又は、甲2記載の技術事項を適用して圧縮機ユニット3がポスト熱交換器を備えたとしても、第1の高圧スリーブ式熱交換器6を取り除くことが容易想到であるとはいえない。
よって、申立人の上記主張は採用できない。
(3)本件発明3
ア 対比
本件発明3と甲1発明とを対比する。
(ア)上記(1)ア(ウ)及び(キ)~(ケ)で説示した相当関係を踏まえると、甲1発明の「供給タンク5」は、本件発明3の「前記第1ラインと前記混合ラインとの合流部」に相当する。
(イ)甲1発明の「LNG加圧ポンプ4は供給タンク5内のLNG液体(-132℃)を300barまで加圧させた後に第1の高圧スリーブ式熱交換器6に注入し」との構成を踏まえると、第1の高圧スリーブ式熱交換器6は、供給タンク5の下流に設けられたものといえる。
(ウ)上記(ア)及び(イ)を踏まえると、甲1発明の「第1の高圧スリーブ式熱交換器6は、屈曲部を有する」を備える構成は、本件発明3の「第1ラインは、前記第一ラインと前記混合ラインとの合流部よりも下流側に、少なくとも一つの屈曲部を有する」構成に相当する。
(エ)そうすると、本件発明3と甲1発明は、上記(1)アに記載した[一致点]に加え、「前記第一ラインは、前記第一ラインと前記混合ラインとの合流部よりも下流側に、少なくとも一つの屈曲部を有する」点で一致し、上記(1)アに記載した相違点1a~1cで相違する。
イ 判断
相違点1a~1cについては、上記(1)イで検討したとおりであり、本件発明3は、甲1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(4)本件発明4
ア 対比
本件発明4と甲1発明とを対比する。
(ア)上記(1)ア(ア)~(コ)で説示した相当関係は、本件発明4と甲1発明との間でも同じである。
(イ)上記(3)ア(ア)~(ウ)で説示した相当関係は、本件発明4と甲1発明との間でも同じである。
(ウ)そうすると、本件発明4と甲1発明とは、次の点で一致する。
[一致点]
「 船体と、
前記船体に備えられ、液化ガスを貯留する液化ガスタンクと、
前記液化ガスタンクの前記液化ガスを主機に導入する第一ラインと、
前記第一ラインに備えられて前記液化ガスを圧送する上流側ポンプと、
前記第一ラインにおける前記上流側ポンプよりも下流側に備えられ、前記液化ガスを圧送する下流側ポンプと、
前記液化ガスタンク内で前記液化ガスが蒸発することで生成されたボイルオフガスを補機に導入する第二ラインと、
前記第二ラインに備えられ、前記ボイルオフガスを、前記下流側ポンプの吐出側よりも低い圧力で圧送する圧縮機と、
前記第一ラインにおける前記上流側ポンプと前記下流側ポンプとの中間部と前記第二ラインにおける前記圧縮機よりも下流側の部分とを接続し、前記第二ラインにより前記ボイルオフガスを前記補機へ導入させつつ、前記補機で消費しきれない余剰の前記ボイルオフガスを前記第一ラインの前記液化ガスに混合可能な混合ラインと、を備え、
前記第一ラインは、前記第一ラインと前記混合ラインとの合流部よりも下流側に、少なくとも一つの屈曲部を有する
船舶。」
また、両者は以下の点で相違する。
[相違点4a]
下流側ポンプと上流側ポンプの液化ガスを圧送する圧力の大小関係について、本件発明4では、下流側ポンプは「上流側ポンプよりも高い圧力で圧送する」のに対し、甲1発明では、不明である点。
[相違点4b]
圧縮機がボイルオフガスを圧送する圧力の上流側ポンプの吐出側の圧力との大小関係について、本件発明4では、圧縮機は「上流側ポンプの吐出側よりも高」い圧力で圧送し、「前記混合ラインから流れ込むボイルオフガスの圧力の方が、前記第一ラインの液化ガスの圧力よりも高い」のに対し、甲1発明では、不明である点。
[相違点4c]
本件発明4は、「前記第一ラインは、前記第一ラインと前記混合ラインとの合流部よりも下流側に、内部流体による熱収縮および前記船体の船首尾方向の伸縮変形を吸収するオフセットベントが備えられ、前記オフセットベントは、前記下流側ポンプより上流側に設けられ、前記屈曲部は、前記オフセットベントの一部を構成する」のに対し、甲1発明では、第1の高圧スリーブ式熱交換器6が屈曲部を有するものの、オフセットベントという特定はなく、また、LNG加圧ポンプ(下流側ポンプ)より上流側に設けられるものではない点。
イ 判断
(ア)事案に鑑み、まず、相違点4cについて検討する。
甲1発明におけるLNG加圧ポンプ4は、供給タンク5内のLNG液体を移送するものであるから、供給タンク5内のLNG液体を吸引する液体ポンプと解される。また、甲1発明は、第1の高圧スリーブ式熱交換器6において、二重管中のBOGボイルオブガスを冷却のために、低温LNGが気化することで発生する熱エネルギーを利用するものであり、LNG液体は、第1の高圧スリーブ式熱交換器6において気化するものと認められる。
ここで、仮に、LNG加圧ポンプ4を第1の高圧スリーブ式熱交換器6の下流に置くとすると、LNG加圧ポンプ4の位置ではLNG液体が気化していることになるから、液体ポンプであるLNG加圧ポンプ4では十分な機能を発揮し得ない。そうすると、LNG加圧ポンプ4(下流側ポンプ)を、第1の高圧スリーブ式熱交換器6(オフセットベント)の下流に置くこと、すなわち、「前記オフセットベントは、前記下流側ポンプより上流側に設けられ」る構成とすることには、阻害要因があると認められる。
また、仮に、第1の高圧スリーブ式熱交換器6においてLNG液体が気化しない程度の熱交換を行うとすれば、上記の阻害要因は生じない。しかしながら、この場合、LNG液体が気化しない程度の少量の熱交換しか行えないことになり、低温LNGの加温量及びBOGボイルオブガスの冷却量ともに低下させ、第1の高温スリーブ式熱交換器6の作用・機能を低下させることになる。そして、このような第1の高温スリーブ式熱交換器6の作用・機能の低下を甘受してでも、LNG加圧ポンプ4を第1の高圧スリーブ式熱交換器6の下流に置く動機付けは見いだせない。
したがって、相違点4cについて、本件発明4の発明特定事項とすることは、甲1発明に基いて、当業者が容易になし得たことではない。
そうすると、相違点4a及び4bについて、検討するまでもなく、本件発明4は、甲1発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(イ)申立人は、令和5年5月15日の意見書において、甲1発明において「第1の高圧スリーブ式熱交換器6」を「LNG加圧ポンプ4」の上流側に設けるか下流側に設けるかは、当業者が必要に応じて適宜選択すべきことに過ぎないこと、そもそもLNG液体が通過するパイプのように極端な温度変化により伸縮する管について、長さ方向の変形を吸収する屈曲部(オフセットベンド)を形成することは技術常識に過ぎないことを主張する。
しかしながら、甲1発明において「第1の高圧スリーブ式熱交換器6」を「LNG加圧ポンプ4」の上流側に設けることが容易想到でないことは、上記(ア)で説示したとおりであり、また、温度変化による長さ方向の変形を吸収する屈曲部を形成することが技術常識であることについては、その証拠も示されていないし、仮に技術常識であるとしても甲1発明におけるLNG加圧ポンプ4よりも上流側に設けることを示す証拠も示されていない。
よって、申立人の上記主張は採用できない。
(5)本件発明5
ア 対比
(ア)甲1発明の「第1の高圧スリーブ式熱交換器6」は、「発電機ユニットが消費し切れなかった余分なBOGボイルオブガスを第1の高圧スリーブ式熱交換器6の外層パイプまで通し、かつ、LNG加圧ポンプ4が排出したLNG液体と熱交換を行」う構成を踏まえると、本件発明5の「前記混合ラインと、前記第一ラインにおける前記下流側ポンプよりも下流側の部分との間で熱交換を行う第二熱交換器」に相当する。
(イ)そうすると、本件発明5と甲1発明は、上記(1)アに記載した[一致点]に加え、「前記混合ラインと、前記第一ラインにおける前記下流側ポンプよりも下流側の部分との間で熱交換を行う第二熱交換器を備える」点で一致し、上記(1)アに記載した相違点1a~1cで相違する。
イ 判断
相違点1a~1cについては、上記(1)イで検討したとおりであり、本件発明5は、甲1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
第6 まとめ
以上のとおり、本件発明1、3、5は、甲1発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明1、3、5に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
したがって、本件発明1、3、5に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
本件発明2、4に係る特許は、特許異議申立書に記載された理由及び取消理由通知で通知した理由によっては、取り消すことができない。また、他に本件発明2、4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2022-700330