特許異議申立
2017-700338
船舶の液化ガス処理方法
- 審判番号
- 2017-700338
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2015-535579
- 登録番号
- 特許第6002330号(P6002330)
- 請求日
- 2017年04月05日
- 審決日
- 2018年11月28日
- 公報発行日
- 2019年03月29日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】デウ シップビルディング アンド マリーン エンジニアリング カンパニー リミテッド
- 【権利者代理人】特許業務法人青莪
- 【異議申立人】遠藤 雅子
- 審判長/審判官
- 審判長 氏原 康宏
- 審判官 尾崎 和寛
- 審判官 和田 雄二
- 分類
- P1651.121-YAA(B63B) / P1651.537-YAA(B63B) / P1651.55 -YAA(B63B) / P1651.851-YAA(B63B) / P1651.852-YAA(B63B) / P1651.857-YAA(B63B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条第6項第2号、特許法第17条の2第3項、特許法第120条の5第5項、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第2項、特許法第36条第2項、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第6002330号発明「船舶の液化ガス処理方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
【結 論】
特許第6002330号の明細書、特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書、特許請求の範囲のとおり訂正後の請求項〔1-7、9-10〕、8について訂正することを認める。
特許第6002330号の請求項1ないし10に係る特許を維持する。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
特許第6002330号の請求項1~10に係る特許についての出願は、2013年(平成25年)10月24日を国際出願日(優先権主張 2012年(平成24年)10月24日 2012年(平成24年)12月11日 2013年(平成25年)6月26日 韓国(KR))として出願された。その後の手続の経緯は以下のとおりである。
平成28年3月7日付け :拒絶理由通知
平成28年7月13日 :意見書及び手続補正書の提出
平成28年8月25日付け:特許査定
平成28年9月9日 :特許権の設定登録
平成28年10月5日 :特許掲載公報の発行
平成29年4月5日 :特許異議申立人遠藤雅子(以下、「特許異議 申立人」という。)による、請求項1~10 に係る特許に対する特許異議の申立て
平成29年7月10日 :特許権者による上申書の提出
平成29年8月2日付け :取消理由通知書
平成29年10月30日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
平成29年12月7日付け:訂正拒絶理由通知書
平成30年1月18日 :特許権者による意見書及び手続補正書の提出
平成30年4月23日付け:取消理由通知書(決定の予告)
平成30年7月24日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
平成30年9月20日付け:特許法第120条の5第5項の通知
平成30年10月23日 :特許異議申立人による意見書の提出
第2 訂正の適否
1.訂正の内容
平成30年7月24日にされた訂正の請求(以下、「本件訂正請求」という。)は、本件特許の願書に添付した明細書及び特許請求の範囲を、訂正請求書に添付した訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり訂正することを求めるものであり、その訂正の内容は以下のとおりである(下線は訂正箇所を示す)。
なお、平成30年7月24日にされた訂正の請求により、平成29年10月30日にされた訂正の請求は、特許法第120条の5第7項の規定により取り下げられたものとみなす。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「LNGを貯蔵している貯蔵タンクと、前記貯蔵タンクに貯蔵されているLNGを燃料として使用する主エンジン及び副エンジンとを備えた船舶の液化ガス処理システムによって液化ガスを処理する方法であって、
前記液化ガス処理システムは、前記貯蔵タンクで発生したBOGを圧縮して前記主エンジン及び前記副エンジンに燃料として供給する圧縮機ラインと、前記貯蔵タンクに貯蔵されたLNGを圧縮して前記主エンジン及び前記副エンジンに燃料として供給するポンプラインと、を含み、
前記圧縮機ラインは、前記貯蔵タンクから発生するBOGを150~400baraに圧縮する高圧圧縮機を含み、前記ポンプラインは、前記貯蔵タンクに貯蔵されたLNGを150~400baraに圧縮する高圧ポンプを含んで前記高圧圧縮機と前記高圧ポンプとを前記主エンジンと貯蔵タンクとの間に並列に配置し、
前記高圧圧縮機によって150~400baraに圧縮されることで超臨界状態となったBOGのうち前記主エンジンに燃料として供給されていないBOGを、前記貯蔵タンクから排出されて前記圧縮機に移送される前のBOGと熱交換させた後、減圧して液化させることを特徴とする船舶の液化ガス処理方法。」と記載されているのを、「LNGを貯蔵している貯蔵タンクと、前記貯蔵タンクに貯蔵されているLNGを燃料として使用する主エンジン及び副エンジンとを備えた船舶の液化ガス処理システムによって液化ガスを処理する方法であって、
前記液化ガス処理システムは、前記貯蔵タンクで発生したBOGを圧縮して前記主エンジン及び前記副エンジンに燃料として供給する圧縮機ラインと、前記貯蔵タンクに貯蔵されたLNGを加圧して前記主エンジン及び前記副エンジンに燃料として供給するポンプラインと、を含み、
前記圧縮機ラインは、前記貯蔵タンクから発生するBOGを150~400baraに圧縮する高圧圧縮機を含み、前記ポンプラインは、前記貯蔵タンクに貯蔵されたLNGを150~400baraに加圧する高圧ポンプを含んで前記高圧圧縮機と前記高圧ポンプとを前記主エンジンと貯蔵タンクとの間に並列に配置し、
前記高圧圧縮機によって150~400baraに圧縮されることで超臨界状態となったBOGのうち前記主エンジンに燃料として供給されていないBOGを、前記貯蔵タンクから排出されて前記圧縮機に移送される前のBOGと熱交換させた後、減圧して液化させることを特徴とする船舶の液化ガス処理方法。」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2~7及び9、10も同様に訂正する。)。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項8に「前記高圧圧縮機は、複数個の圧縮シリンダを含み、
前記高圧圧縮機に含まれる複数個の前記圧縮シリンダを全部通過して圧縮されたボイルオフガスをオイルフィルタを経て移送することを特徴とする請求項1に記載の船舶の液化ガス処理方法。」と記載されているのを、「LNGを貯蔵している貯蔵タンクと、前記貯蔵タンクに貯蔵されているLNGを燃料として使用する主エンジン及び副エンジンとを備えた船舶の液化ガス処理システムによって液化ガスを処理する方法であって、
前記液化ガス処理システムは、前記貯蔵タンクで発生したBOGを圧縮して前記主エンジン及び前記副エンジンに燃料として供給する圧縮機ラインと、前記貯蔵タンクに貯蔵されたLNGを加圧して前記主エンジン及び前記副エンジンに燃料として供給するポンプラインと、を含み、
前記圧縮機ラインは、前記貯蔵タンクから発生するBOGを150~400baraに圧縮する高圧圧縮機を含み、前記ポンプラインは、前記貯蔵タンクに貯蔵されたLNGを150~400baraに加圧する高圧ポンプを含んで前記高圧圧縮機と前記高圧ポンプとを前記主エンジンと貯蔵タンクとの間に並列に配置し、
前記高圧圧縮機によって150~400baraに圧縮されることで超臨界状態となったBOGのうち前記主エンジンに燃料として供給されていないBOGを、前記貯蔵タンクから排出されて前記圧縮機に移送される前のBOGと熱交換させた後、減圧して液化させ、
前記高圧圧縮機は、複数個の圧縮シリンダを含み、前記複数個の圧縮シリンダの中に潤滑油方式で作動するものとオイルフリー方式で作動するものとを含み、前記高圧圧縮機に含まれる複数個の前記圧縮シリンダを全部通過して圧縮されたBOGをオイルフィルタを経て移送することを特徴とする船舶の液化ガス処理方法。」に訂正する。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項9に「前記圧縮シリンダで圧縮されることで温度上昇したボイルオフガスを冷却する」と記載されているのを、「前記圧縮シリンダで圧縮されることで温度上昇したBOGを冷却する」に訂正する。
(4)訂正事項4
明細書の段落【0015】、【0124】、【0137】及び【0151】にそれぞれ「LNG・・・圧縮」と記載されているのを、「LNG・・・加圧」に訂正する。
明細書の段落【0043】に「LNG及びBOGをそれぞれ圧縮させる」と記載されているのを、「LNG及びBOGをそれぞれ加圧・圧縮させる」に訂正する。
明細書の段落【0137】、【0139】、【0154】及び【0158】にそれぞれ「圧縮されたLNG」と記載されているのを、「加圧されたLNG」に訂正する。
明細書の段落【0139】、【0140】及び【0147】にそれぞれ「高圧ポンプ・・・圧縮」と記載されているのを、「高圧ポンプ・・・加圧」に訂正する。
2.一群の請求項及び明細書の訂正について
訂正前の請求項1~10について、請求項2~10はそれぞれ請求項1を直接又は間接に引用しているものであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。したがって、訂正前の請求項1~10に対応する訂正後の請求項1~10は一群の請求項であるところ、訂正後の請求項8については、当該請求項について訂正が認められる場合には、請求項1~7及び9~10とは別の訂正単位として扱われることを求めており、後記3.のとおり当該請求項については訂正が認められるので、本件訂正請求は、一群の請求項〔1~7、9~10〕及び請求項8ごとに請求されている。
また、訂正事項4は、訂正後の請求項1~7及び9~10と、訂正後の請求項8とに関係する訂正である。
3.訂正の目的の適否、新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1
訂正前の請求項1は、「LNGを圧縮して」及び「LNGを150~400baraに圧縮する」と記載されていた。当該記載の「圧縮」は「加圧」の誤りであることが、明細書の段落【0118】の「・・・高圧ポンプ120によってLNGを加圧して推進システムに燃料として供給するライン・・・」という記載や技術常識から明らかであるといえる。
訂正後の請求項1では、「LNGを加圧して」及び「LNGを150~400baraに加圧する」との記載により、訂正前の請求項1の誤記を訂正するものであるから、訂正事項1は、誤記の訂正を目的とするものである。
また、訂正事項1は、誤記を訂正するものであるから、カテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張・変更するものではない。
さらに、訂正事項1は、上記のように明細書の段落【0118】の記載に基づいているから、新規事項の追加に該当しない。
(2)訂正事項2
ア.訂正の目的
(ア)訂正事項2は、訂正前の請求項8が訂正前の請求項1を引用する記載であったものを、請求項間の引用関係を解消し、請求項1の記載を引用しないものとし、独立形式請求項へ改めるための訂正であって、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。
(イ)また、訂正前の請求項8が引用していた訂正前の請求項1では、「LNGを圧縮して」及び「LNGを150~400baraに圧縮する」と記載されていた。
上記(1)で述べたのと同様に、訂正後の請求項8では、「LNGを加圧して」及び「LNGを150~400baraに加圧する」との記載により、訂正前の誤記を訂正するものである。
したがって、訂正事項2は、誤記の訂正を目的とするものでもある。
(ウ)さらに、訂正前の請求項8の「ボイルオフガス」は、明細書の段落【0007】の「・・・ボイルオフガス(BOG;Boil-Off Gas)」という記載からすれば、特許請求の範囲で使用されている「BOG」のことであるといえる。
訂正事項2は、訂正前の請求項8の「ボイルオフガス」との記載の存在により、本来同じことを示す「BOG」との記載と「ボイルオフガス」との記載とが混在していたため、特許請求の範囲の記載が不明りょうであったものを、「ボイルオフガス」を「BOG」と訂正することにより明瞭とすることを目的とするものである。
したがって、訂正事項2は、明瞭でない記載の釈明を目的とするものでもある。
(エ)加えて、訂正前の請求項8は、「前記高圧圧縮機は、複数個のシリンダを含み、」との記載により、高圧圧縮機が複数個の圧縮シリンダを含むことのみを特定している。それに対して,訂正後の請求項8は、「前記高圧圧縮機は、複数個の圧縮シリンダを含み、前記複数の圧縮シリンダの中に潤滑油方式で作動するものとオイルフリー方式で作動するものとを含み、」との記載により、高圧圧縮機に含まれる複数個の圧縮シリンダの中に、潤滑油方式で作動するものとオイルフリー方式で作動するものとを有するという構成を具体的に特定し、限定するものであるから、訂正事項2は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものでもある。
イ.新規事項の有無
(ア)訂正事項2のうち、訂正前の請求項8が引用していた訂正前の請求項1の「LNGを圧縮して」及び「LNGを150~400baraに圧縮する」と記載されていたのを、訂正後の請求項8では、「LNGを加圧して」及び「LNGを150~400baraに加圧する」とする訂正は、明細書の段落【0118】の「・・・高圧ポンプ120によってLNGを加圧して推進システムに燃料として供給するライン・・・」という記載に基づいているから、新規事項の追加に該当しない。
(イ)訂正事項2のうち、訂正前の請求項8では、「圧縮されたボイルオフガス」と記載されていたのを、訂正後の請求項8では、「圧縮されたBOG」とする訂正は、明細書の段落【0007】の「・・・ボイルオフガス(BOG;Boil-Off Gas)」という記載に基づいているから、新規事項の追加に該当しない。
(ウ)訂正事項2のうち、訂正前の請求項8では、「前記高圧圧縮機は、複数個のシリンダを含み、」と記載されていのを、訂正後の請求項8では、「前記高圧圧縮機は、複数個の圧縮シリンダを含み、前記複数の圧縮シリンダの中に潤滑油方式で作動するものとオイルフリー方式で作動するものとを含み、」とする訂正は、訂正前の請求項8に係る発明の「高圧圧縮機」について、シリンダの数が複数であることのみが規定されていたものを、訂正後の請求項8に係る発明の「高圧圧縮機」が、潤滑油方式で作動するものとオイルフリー方式で作動するものとを含むというものに限定するものであり、しかも、この点は、明細書の段落【0077】の「特に、5つのシリンダを含み、前段の3つのシリンダはオイルフリー(oil-free)方式で動作し、後段の2つのシリンダは油潤滑(oil-lubricated)方式で動作する・・・」との記載に基づくものである。
したがって、訂正事項2のうち、訂正前の請求項8では、「前記高圧圧縮機は、複数個のシリンダを含み、」と記載されていのを、訂正後の請求項8では、「前記高圧圧縮機は、複数個の圧縮シリンダを含み、前記複数の圧縮シリンダの中に潤滑油方式で作動するものとオイルフリー方式で作動するものとを含み、」とする訂正は、本件明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではないから、新規事項の追加に該当しない。
(エ)訂正事項2のうち、訂正前の請求項8が訂正前の請求項1を引用する記載であったものを、請求項間の引用関係を解消し、請求項1の記載を引用しないものとし独立形式請求項へ改めつつ特許請求の範囲の減縮をするための訂正は、上記(ア)をも踏まえると、新規事項の追加に該当しない。
(オ)上記(ア)~(エ)より、訂正事項2は、新規事項の追加に該当しない。
ウ.特許請求の範囲の拡張・変更の存否
上記アのとおり、訂正事項2は、請求項間の引用関係を解消し、請求項1の記載を引用しないものとし、独立形式請求項へ改めるための訂正であり、また、請求項8に係る発明の「高圧圧縮機」について、潤滑油方式で作動するものとオイルフリー方式で作動するものとを含み」との限定構成を付加するものであり、さらに、誤記を訂正し、加えて、明瞭でない記載の釈明をするものであるから、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものでなく、当該訂正事項により、訂正前の特許請求の範囲には含まれないとされていた発明が訂正後の特許請求の範囲に含まれることとなる、という事情は認められない。
したがって、訂正事項2は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでない。
(3)訂正事項3
上記1.(3)のとおり、訂正事項3は、訂正前の請求項9の「ボイルオフガス」という記載を、訂正後の請求項9の「BOG」とするものであり、上記(2)ア.(ウ)で述べたと同様に、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。そして、上記(2)イ.及びウ.で述べたと同様に、新規事項の追加をするものでなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(4)訂正事項4
訂正事項4は、訂正事項4で特定される、訂正前の各段落の「圧縮」は「加圧」の誤りであることが、明細書の段落【0118】の「・・・高圧ポンプ120によってLNGを加圧して推進システムに燃料として供給するライン・・・」という記載や技術常識から明らかであるといえる。
訂正事項4は、これら訂正前の各段落の「圧縮」を「加圧」と訂正することにより、正しい記載とすることを目的とするものであるから、誤記の訂正を目的とするものである。
そして、訂正事項4は、カテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張・変更するものではない。
さらに、上記のように明細書の段落【0118】の記載に基づいているから、新規事項の追加に該当しない。
4.小括
以上のとおり、訂正事項1~4に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第2号、第3号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、明細書及び特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲及び訂正明細書のとおり、訂正後の請求項〔1~7、9~10〕、8について訂正することを認める。
第3 取消理由の概要
訂正前の請求項1~10に係る特許に対して、当審が平成30年4月23日付けで特許権者に通知した取消理由(決定の予告)の概要は次のとおりである。
[取消理由1]本件特許は、特許請求の範囲の請求項1~10の記載が不備のため特許法第36条第2項に規定する要件を満たしていないから、取り消されるべきものである。
[取消理由2]本件特許の請求項1~10に係る発明は、その優先日前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物1~9に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、取り消されるべきものである。
記
[刊行物]
引用文献1:LNG as fuel for 2-stroke propulsion of Merchant ships.
Sept.2012 MAN Diesel&Turbo
引用文献2:永田良典,田ノ上聖,木田隆之,川合崇,「LNG燃料船用I
HI-SPBタンク」,IHI技報,株式会社IHI技術開本部
管理部,平成24年9月1日,第52巻,第3号,p. 36-41
引用文献3:国際公開2012/128447号
引用文献4:韓国公開特許第10-2012-0049731号公報
引用文献5:特表2009-504838号公報
引用文献6:特表2008-528882号公報
引用文献7:特表2011-517749号公報
引用文献8:Roberto Chellini,”LABY-GI COMPRESSOR DEVELOPED FOR L
NG CARRIER SERVICE”,COMPRESSORTechTwo,(米),
Diesel & Gas Turbine Publications,2008,Vol. 13,
No. 7,p. 58, 60-63
引用文献9:米国特許第3919852号明細書
上記引用文献1は特許異議申立人の提出した甲第1号証であり、以下同様に、引用文献2~引用文献9は、甲第2号証、甲第3号証、甲第4号証、甲第5号証、甲第8号証、甲第10号証、甲第9号証及び甲第11号証である。
第4 当審の判断
1.本件発明
上記第2のとおり、本件訂正請求が認められるので、訂正後の請求項1~10に係る発明は、以下のとおりのものである(以下、「本件発明1」~「本件発明10」という。)。
「【請求項1】
LNGを貯蔵している貯蔵タンクと、前記貯蔵タンクに貯蔵されているLNGを燃料として使用する主エンジン及び副エンジンとを備えた船舶の液化ガス処理システムによって液化ガスを処理する方法であって、
前記液化ガス処理システムは、前記貯蔵タンクで発生したBOGを圧縮して前記主エンジン及び前記副エンジンに燃料として供給する圧縮機ラインと、前記貯蔵タンクに貯蔵されたLNGを加圧して前記主エンジン及び前記副エンジンに燃料として供給するポンプラインと、を含み、
前記圧縮機ラインは、前記貯蔵タンクから発生するBOGを150~400baraに圧縮する高圧圧縮機を含み、前記ポンプラインは、前記貯蔵タンクに貯蔵されたLNGを150~400baraに加圧する高圧ポンプを含んで前記高圧圧縮機と前記高圧ポンプとを前記主エンジンと貯蔵タンクとの間に並列に配置し、
前記高圧圧縮機によって150~400baraに圧縮されることで超臨界状態となったBOGのうち前記主エンジンに燃料として供給されていないBOGを、前記貯蔵タンクから排出されて前記圧縮機に移送される前のBOGと熱交換させた後、減圧して液化させることを特徴とする船舶の液化ガス処理方法。
【請求項2】
前記高圧圧縮機は、複数個の圧縮シリンダを含み、
前記貯蔵タンクで発生するBOGは複数個の前記圧縮シリンダのうち一部の圧縮シリンダによって圧縮された後、前記副エンジンに燃料として供給されることを特徴とする請求項1に記載の船舶の液化ガス処理方法。
【請求項3】
前記貯蔵タンクで発生するBOG及び強制気化されたLNGを前記高圧圧縮機に供給して圧縮させた後、前記主エンジン及び前記副エンジンのうち少なくとも1つに燃料として供給することを特徴とする請求項1に記載の船舶の液化ガス処理方法。
【請求項4】
前記貯蔵タンクに貯蔵されたLNGを前記副エンジンに供給する時、LNGのメタン価を前記副エンジンで要求する値に合わせるためにLNGから重炭化水素成分を分離することを特徴とする請求項1に記載の船舶の液化ガス処理方法。
【請求項5】
前記熱交換させた後のBOGの減圧を膨張バルブまたは膨脹機により行うことを特徴とする請求項1に記載の船舶の液化ガス処理方法。
【請求項6】
前記液化されたBOGを気液分離器に供給して気体成分と液体成分とに分離し、
前記気体成分を前記貯蔵タンクから排出されて前記高圧圧縮機に移送されるBOGに合流させることを特徴とする請求項1に記載の船舶の液化ガス処理方法。
【請求項7】
前記気液分離器に供給される液化されたBOGを、冷却器により前記気体成分と熱交換させて冷却することを特徴とする請求項6に記載の船舶の液化ガス処理方法。
【請求項8】
LNGを貯蔵している貯蔵タンクと、前記貯蔵タンクに貯蔵されているLNGを燃料として使用する主エンジン及び副エンジンとを備えた船舶の液化ガス処理システムによって液化ガスを処理する方法であって、
前記液化ガス処理システムは、前記貯蔵タンクで発生したBOGを圧縮して前記主エンジン及び前記副エンジンに燃料として供給する圧縮機ラインと、前記貯蔵タンクに貯蔵されたLNGを加圧して前記主エンジン及び前記副エンジンに燃料として供給するポンプラインと、を含み、
前記圧縮機ラインは、前記貯蔵タンクから発生するBOGを150~400baraに圧縮する高圧圧縮機を含み、前記ポンプラインは、前記貯蔵タンクに貯蔵されたLNGを150~400baraに加圧する高圧ポンプを含んで前記高圧圧縮機と前記高圧ポンプとを前記主エンジンと貯蔵タンクとの間に並列に配置し、
前記高圧圧縮機によって150~400baraに圧縮されることで超臨界状態となったBOGのうち前記主エンジンに燃料として供給されていないBOGを、前記貯蔵タンクから排出されて前記圧縮機に移送される前のBOGと熱交換させた後、減圧して液化させ、
前記高圧圧縮機は、複数個の圧縮シリンダを含み、前記複数個の圧縮シリンダの中に潤滑油方式で作動するものとオイルフリー方式で作動するものとを含み、前記高圧圧縮機に含まれる複数個の前記圧縮シリンダを全部通過して圧縮されたBOGをオイルフィルタを経て移送することを特徴とする船舶の液化ガス処理方法。
【請求項9】
前記高圧圧縮機は、複数個の圧縮シリンダと1つ以上の中間冷却機とを含み、
前記中間冷却機により、前記圧縮シリンダで圧縮されることで温度上昇したBOGを冷却することを特徴とする請求項1に記載の船舶の液化ガス処理方法。
【請求項10】
前記超臨界状態となったBOGのうち前記主エンジンに供給されていないBOGは、熱交換及び減圧されたことで、別途の冷媒を使用する再液化装置を使わないで液化されることを特徴とする請求項1に記載の船舶の液化ガス処理方法。」
2.[取消理由1]について
平成30年4月23日付けで特許権者に通知した取消理由1は、具体的には、(i)請求項1の「前記貯蔵タンクに貯蔵されたLNGを圧縮して前記主エンジン及び前記副エンジンに燃料として供給する」という文言、及び、「前記貯蔵タンクに貯蔵されたLNGを150~400baraに圧縮する高圧ポンプ」という文言は、技術的に不明確であるというもの、及び、(ii)請求項8の「圧縮機」の圧縮シリンダの全部がオイルフリー方式で作動するものである場合、請求項8の「オイルフィルタ」を設ける技術的意味が不明であるというものである。
そして、上記(i)の点については、上記第2の1.(1)の訂正事項1により解消された。
また、上記(ii)の点については、上記第2の1.(2)の訂正事項2により解消された。
したがって、平成30年4月23日付けで特許権者に通知した取消理由1によっては本件請求項1~10に係る発明の特許を取り消すことはできない。
3.[取消理由2]について
(1)引用文献1の記載事項及び引用発明
本件特許に係る出願の優先日前に頒布された(「Japanese Shipyards' Technical Seminar from 2nd September to 8th September 2012 in Copenhagen」におけるTuesday 4th September 12:30~15:45のセッションで配布された。)刊行物である引用文献1には以下の事項が記載されている。
※引用文献1の各頁右下には、<>内にスライド番号が付されているものと付されていないものがあるので、以下では、便宜的に引用文献1の表紙を第1頁とし、最終頁を第42頁とした。
なお、引用文献1について、引用文献1の記載内容に一貫性があり、特別不自然な点もないこと等からみて、引用文献1が、「Japanese Shipyards' Technical Seminar from 2nd September to 8th September 2012 in Copenhagen」におけるTuesday 4th September 12:30~15:45のセッションで配布されたものと推認できることを付言する。
(訳は、異議申立人の訳を参考にして当審で付した。訳の後の()内は原文。)
ア.「商業船の2ストローク推進用燃料としてのLNG」(LNG as fuel for 2-stroke propulsion of Merchant Ships.)(第1頁)
イ.第21頁(スライド番号<21>)には以下の図が示されている。
ウ.引用文献1には、上記イ.のとおり、ME-GIエンジン(ME-GI)の燃料ガス供給システムが図示されているところ、かかる図面の他、引用文献1の他の各頁及び当業者における技術常識を踏まえると、以下の事項が認定できる。
(ア)LNG貨物タンク(LNG Cargo Tanks)を備えるLNG運搬船(LNG Carrier)。(LNG運搬船(LNG Carrier)については、第15、16頁、参照。)
(イ)LNG運搬船には、LNG貨物タンク(LNG Cargo Tanks)に貯蔵されているLNGを燃料として使用するME-GIエンジン(ME-GI)とDF Gensete(DF Gensete)が備えられている。
ここで、DF Gensete(DF Gensete)とは、二元燃料ディーゼルエンジンと発電機のセットである(第12、13頁(スライド番号<12>、<13>)、参照。)
(ウ)LNG運搬船(LNG Carrier)のME-GIエンジン(ME-GI)とDF Gensete(ディーゼルエンジンと発電機のセット)(DF Gensete)のための燃料ガス供給システム(Fuel Gas Supply System)、及び、この燃料ガス供給システム(Fuel Gas Supply System)によってLNGを処理する方法。
なお、燃料ガス供給システム(Fuel Gas Supply System)については、第13頁(スライド番号<13>)、参照。
(エ)BCA Laby-GI圧縮機(BCA Laby-GI compressor)は5つ(5段(5-stage))の圧縮シリンダを持ち(この点については第17頁~19頁、参照)、下記(カ)での経路は、BCA Laby-GI圧縮機(BCA Laby-GI compressor)の第1段の後から分岐している。
(オ)LNG貨物タンク(LNG Cargo Tanks)で発生したBOG(BOG)を、熱交換器(Heat Exchanger)と5段の圧縮シリンダを持つBCA Laby-GI圧縮機(BCA Laby-GI compressor)の全てのシリンダを経由して300bar、45℃としてME-GIエンジン(ME-GI)に供給する経路。
(カ)LNG貨物タンク(LNG Cargo Tanks)で発生したBOG(BOG)を、熱交換器(Heat Exchanger)と5段の圧縮シリンダを持つBCA Laby-GI圧縮機(BCA Laby-GI compressor)の1段目のシリンダを経由して4-6barとしてDF Gensete(ディーゼルエンジンと発電機のセット)(DF Gensete)に供給する経路。
(キ)LNG貨物タンク(LNG Cargo Tanks)で発生したBOG(BOG)を、熱交換器(Heat Exchanger)と5段の圧縮シリンダを持つBCA Laby-GI圧縮機(BCA Laby-GI compressor)の1~3段目のシリンダを経由して39barとして、さらに前記熱交換器(Heat Exchanger)と膨張弁(Expansion Valve)を経由し気液混合状態(Liquid and Flash Gas)としてLNG貨物タンク(LNG Cargo Tanks)に供給する経路。
(ク)LNG貨物タンク(LNG Cargo Tanks)からLNGをLNG供給ポンプ(LNG Supply Pump)とLNG昇圧ポンプ(LNG Booster Pump)と高圧LNGポンプ(HP LNG Pump)及び高圧気化器(HP Vaporiser)を経由して300bar、45℃としてME-GIエンジン(ME-GI)に供給する経路。
(ケ)上記(キ)の経路は、LNG貨物タンク(LNG Cargo Tanks)で発生したBOG(BOG)であって、BCA Laby-GI圧縮機(BCA Laby-GI compressor)を経由したBOG(BOG)のうち、ME-GIエンジン(ME-GI)と、DF Gensete(ディーゼルエンジンと発電機のセット)(DF Gensete)とに供給されない、BOG(BOG)をLNG貨物タンク(LNG Cargo Tanks)に供給するものであること。
(コ)上記(キ)の経路の熱交換器(Heat Exchanger)は、これによって、BCA Laby-GI圧縮機(BCA Laby-GI compressor)に導入される前に、LNG貨物タンク(LNG Cargo Tanks)で発生したBOG(BOG)と熱交換すること。
(サ)上記(キ)の経路の膨張弁(Expansion Valve)は、これによって、熱交換器(Heat Exchanger)を経由した後のBOG(BOG)を、減圧して気液混合状態(Liauid and Flash Gas)とするものであること。
エ.したがって、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる。
「LNG貨物タンク(LNG Cargo Tanks)と、
LNG貨物タンク(LNG Cargo Tanks)に貯蔵されているLNGを燃料として使用するME-GIエンジン(ME-GI)とDF Gensete(ディーゼルエンジンと発電機のセット)(DF Gensete)を備えるLNG運搬船(LNG Carrier)のME-GIエンジン(ME-GI)とDF Gensete(ディーゼルエンジンと発電機のセット)(DF Gensete)のための燃料ガス供給システム(Fuel Gas Supply System)によってLNGを処理する方法であって、
前記燃料ガス供給システム(Fuel Gas Supply System)は、
LNG貨物タンク(LNG Cargo Tanks)で発生したBOG(BOG)を、熱交換器(Heat Exchanger)と5段の圧縮シリンダを持つBCA Laby-GI圧縮機(BCA Laby-GI compressor)の全てのシリンダを経由して300bar、45℃としてME-GIエンジン(ME-GI)に供給する経路と、
LNG貨物タンク(LNG Cargo Tanks)で発生したBOG(BOG)を、熱交換器(Heat Exchanger)と5段の圧縮シリンダを持つBCA Laby-GI圧縮機(BCA Laby-GI compressor)の1段目のシリンダを経由して4-6barとしてDF Gensete(ディーゼルエンジンと発電機のセット)(DF Gensete)に供給する経路と、
LNG貨物タンク(LNG Cargo Tanks)からLNGをLNG供給ポンプ(LNG Supply Pump)とLNG昇圧ポンプ(LNG Booster Pump)と高圧LNGポンプ(HP LNG Pump)及び高圧気化器(HP Vaporiser)を経由して300bar、45℃としてME-GIエンジン(ME-GI)に供給する経路と、
LNG貨物タンク(LNG Cargo Tanks)で発生したBOG(BOG)を、熱交換器(Heat Exchanger)と5段の圧縮シリンダを持つBCA Laby-GI圧縮機(BCA Laby-GI compressor)の前3段のシリンダを経由して39barとして、さらに前記熱交換器(Heat Exchanger)と膨張弁(Expansion Valve)を経由し気液混合状態(Liquid and Flash Gas)としてLNG貨物タンク(LNG Cargo Tanks)に供給する経路と、を含み、
LNG貨物タンク(LNG Cargo Tanks)で発生したBOG(BOG)を、熱交換器(Heat Exchanger)と5段の圧縮シリンダを持つBCA Laby-GI圧縮機(BCA Laby-GI compressor)の前3段のシリンダを経由して39barとして、さらに前記熱交換器(Heat Exchanger)と膨張弁(Expansion Valve)を経由し気液混合状態(Liquid and Flash Gas)としてLNG貨物タンク(LNG Cargo Tanks)に供給する経路の、熱交換器(Heat Exchanger)によって、BCA Laby-GI圧縮機(BCA Laby-GI compressor)に導入される前の、LNG貨物タンク(LNG Cargo Tanks)で発生したBOG(BOG)と熱交換し、膨張弁(Expansion Valve)によって、熱交換器(Heat Exchanger)を経由した後のBOG(BOG)を、減圧して気液混合状態(Liauid and Flash Gas)とする、
LNG運搬船(LNG Carrier)のME-GIエンジン(ME-GI)とDF Gensete(ディーゼルエンジンと発電機のセット)(DF Gensete)のための燃料ガス供給システム(Fuel Gas Supply System)によってLNGを処理する方法。」
(2)対比・判断
ア.本件発明1について
(ア)対比
本件発明1と引用発明とを対比する。
a.機能的、構造的にみて、引用発明の「LNG貨物タンク(LNG Cargo Tanks)」は、本件発明1の「LNGを貯蔵している貯蔵タンク」に相当する。
また、同じく機能的、構造的にみて、引用発明の「ME-GIエンジン(ME-GI)」及び「DF Gensete(ディーゼルエンジンと発電機のセット)(DF Gensete)」の「ディーゼルエンジン」は、本件発明1の「主エンジン」及び「副エンジン」に相当する。
そして、引用発明の「LNG運搬船(LNG Carrier)のME-GIエンジン(ME-GI)とDF Gensete(ディーゼルエンジンと発電機のセット)(DF Gensete)のための燃料ガス供給システム(Fuel Gas Supply System)」は、船舶であるLNG運搬船の液化ガスといえるLNGを燃料ガスとして供給して処理するシステムといえる。
したがって、引用発明の「LNG貨物タンク(LNG Cargo Tanks)と、LNG貨物タンク(LNG Cargo Tanks)に貯蔵されているLNGを燃料として使用するME-GIエンジン(ME-GI)とDF Gensete(ディーゼルエンジンと発電機のセット)(DF Gensete)を備えるLNG運搬船(LNG Carrier)のME-GIエンジン(ME-GI)とDF Gensete(ディーゼルエンジンと発電機のセット)(DF Gensete)のための燃料ガス供給システム(Fuel Gas Supply System)によってLNGを処理する方法」は、本件発明1の「船舶の液化ガス処理方法」に相当するとともに、本件発明1の「LNGを貯蔵している貯蔵タンクと、前記貯蔵タンクに貯蔵されたLNGを供給されて燃料として使用するエンジンとを備えた船舶の液化ガス処理システムによって前記液化ガスを処理する方法」に相当する。
b.機能的、構造的にみて、引用発明の「BCA Laby-GI圧縮機(BCA Laby-GI compressor)」及び「高圧LNGポンプ(HP LNG Pump)」は、それぞれ本件発明1の「高圧圧縮機」及び「高圧ポンプ」に相当する。
機能的、構造的にみて、引用発明の「LNG貨物タンク(LNG Cargo Tanks)で発生したBOG(BOG)を、熱交換器(Heat Exchanger)と5段の圧縮シリンダを持つBCA Laby-GI圧縮機(BCA Laby-GI compressor)の全てのシリンダを経由して300bar、45℃としてME-GIエンジン(ME-GI)に供給する経路」は、本件発明1の「前記貯蔵タンクで発生したBOGを圧縮して前記主エンジン」「に燃料として供給する圧縮機ライン」に相当する。同じく、機能的、構造的にみて、引用発明の「LNG貨物タンク(LNG Cargo Tanks)で発生したBOG(BOG)を、熱交換器(Heat Exchanger)と5段の圧縮シリンダを持つBCA Laby-GI圧縮機(BCA Laby-GI compressor)の1段目のシリンダを経由して4-6barとして DF Gensete(ディーゼルエンジンと発電機のセット)(DF Gensete)に供給する経路」は、本件発明1の「前記貯蔵タンクで発生したBOGを圧縮して」「前記副エンジンに燃料として供給する圧縮機ライン」に相当する。
したがって、引用発明の「LNG貨物タンク(LNG Cargo Tanks)で発生したBOG(BOG)を、熱交換器(Heat Exchanger)と5段の圧縮シリンダを持つBCA Laby-GI圧縮機(BCA Laby-GI compressor)の全てのシリンダを経由して300bar、45℃としてME-GIエンジン(ME-GI)に供給する経路と、LNG貨物タンク(LNG Cargo Tanks)で発生したBOG(BOG)を、熱交換器(Heat Exchanger)と5段の圧縮シリンダを持つBCA Laby-GI圧縮機(BCA Laby-GI compressor)の1段目のシリンダを経由して4-6barとして DF Gensete(ディーゼルエンジンと発電機のセット)(DF Gensete)に供給する経路」は、本件発明1の「前記貯蔵タンクで発生したBOGを圧縮して前記主エンジン及び前記副エンジンに燃料として供給する圧縮機ライン」に相当する。
c.機能的、構造的にみて、引用発明の「LNG貨物タンク(LNG Cargo Tanks)からLNGをLNG供給ポンプ(LNG Supply Pump)とLNG昇圧ポンプ(LNG Booster Pump)と高圧LNGポンプ(HP LNG Pump)及び高圧気化器(HP Vaporiser)を経由して300bar、45℃としてME-GIエンジン(ME-GI)に供給する経路」は、本件発明1の「前記貯蔵タンクに貯蔵されたLNGを加圧して前記主エンジン及び前記副エンジンに燃料として供給するポンプライン」との対比において、「前記貯蔵タンクに貯蔵されたLNGを加圧して前記主エンジンに燃料として供給するポンプライン」の限度で一致する。
d.本件発明1で使用されている圧力の単位baraは引用発明のbarを、特に、絶対圧であることを明記したものであるので、本件発明1の「bara」と引用発明1の「bar」は実質的に同じ単位である。
とすると、引用発明の「LNG貨物タンク(LNG Cargo Tanks)で発生したBOG(BOG)を、熱交換器(Heat Exchanger)と5段の圧縮シリンダを持つBCA Laby-GI圧縮機(BCA Laby-GI compressor)の全てのシリンダを経由して300bar、45℃としてME-GIエンジン(ME-GI)に供給する経路」は、本件発明1の「前記圧縮機ラインは、前記貯蔵タンクから発生するBOGを150~400baraに圧縮する圧縮機を含」んでいるといえる。
また、引用発明の「LNG貨物タンク(LNG Cargo Tanks)からLNGをLNG供給ポンプ(LNG Supply Pump)とLNG昇圧ポンプ(LNG Booster Pump)と高圧LNGポンプ(HP LNG Pump)及び高圧気化器(HP Vaporiser)を経由して300bar、45℃としてME-GIエンジン(ME-GI)に供給する経路」は、本件発明1の「前記ポンプラインは、前記貯蔵タンクに貯蔵されたLNGを150~400baraに加圧する高圧ポンプを含」んでいるといえる。
そして、引用発明の「LNG貨物タンク(LNG Cargo Tanks)で発生したBOG(BOG)を、熱交換器(Heat Exchanger)と5段の圧縮シリンダを持つBCA Laby-GI圧縮機(BCA Laby-GI compressor)の全てのシリンダを経由して300bar、45℃としてME-GIエンジン(ME-GI)に供給する経路」と、「LNG貨物タンク(LNG Cargo Tanks)からLNGをLNG供給ポンプ(LNG Supply Pump)とLNG昇圧ポンプ(LNG Booster Pump)と高圧LNGポンプ(HP LNG Pump)及び高圧気化器(HP Vaporiser)を経由して300bar、45℃としてME-GIエンジン(ME-GI)に供給する経路」は、主エンジンたるME-GIエンジン(ME-GI)とLNG貨物タンク(LNG Cargo Tanks)との間に並列して設けられているといえるから、それぞれの経路にある、高圧圧縮機たる「Laby-GI圧縮機(BCA Laby-GI compressor)」と、高圧ポンプたる「高圧LNGポンプ(HP LNG Pump)」は並列に配置されているといえる。
したがって、引用発明の「LNG貨物タンク(LNG Cargo Tanks)で発生したBOG(BOG)を、熱交換器(Heat Exchanger)と5段の圧縮シリンダを持つBCA Laby-GI圧縮機(BCA Laby-GI compressor)の全てのシリンダを経由して300bar、45℃としてME-GIエンジン(ME-GI)に供給する経路」と、「LNG貨物タンク(LNG Cargo Tanks)からLNGをLNG供給ポンプ(LNG Supply Pump)とLNG昇圧ポンプ(LNG Booster Pump)と高圧LNGポンプ(HP LNG Pump)及び高圧気化器(HP Vaporiser)を経由して300bar、45℃としてME-GIエンジン(ME-GI)に供給する経路」によって、本件発明1の「前記圧縮機ラインは、前記貯蔵タンクから発生するBOGを150~400baraに圧縮する圧縮機を含み、前記ポンプラインは、前記貯蔵タンクに貯蔵されたLNGを150~400baraに加圧する高圧ポンプを含んで前記高圧圧縮機と前記高圧ポンプとを前記主エンジンと貯蔵タンクとの間に並列に配置し」に相当する構成を有することとなる。
e.LNGおいては、その組成の8割程度がメタンからなることが技術常識であり、メタンの臨界圧力がおよそ46bara、臨界温度がおよそ-83℃であることからすれば、引用発明において、Laby-GI圧縮機(BCA Laby-GI compressor)にいおて圧縮された後のLNGが、300bar、45℃であることは、当該LNGは超臨界状態となっているといえる。
したがって、引用発明の「LNG貨物タンク(LNG Cargo Tanks)で発生したBOG(BOG)を、熱交換器(Heat Exchanger)と5段の圧縮シリンダを持つBCA Laby-GI圧縮機(BCA Laby-GI compressor)の全てのシリンダを経由して300bar、45℃と」することは、機能的に、本件発明1の「前記高圧圧縮機によって150~400baraに圧縮されることで超臨界状態となったBOG」とすることに相当する。
引用発明の「LNG貨物タンク(LNG Cargo Tanks)で発生したBOG(BOG)を、熱交換器(Heat Exchanger)と5段の圧縮シリンダを持つBCA Laby-GI圧縮機(BCA Laby-GI compressor)の前3段のシリンダを経由して39barとして、さらに前記熱交換器(Heat Exchanger)と膨張弁(Expansion Valve)を経由し気液混合状態(Liquid and Flash Gas)としてLNG貨物タンク(LNG Cargo Tanks)に供給する経路」は、LNG貨物タンク(LNG Cargo Tanks)で発生したBOG(BOG)であって、5段の圧縮シリンダを持つBCA Laby-GI圧縮機(BCA Laby-GI compressor)を経由したBOG(BOG)のうち、ME-GIエンジン(ME-GI)と、DF Gensete(ディーゼルエンジンと発電機のセット)(DF Gensete)とに供給されない、BOG(BOG)を、熱交換器(Heat Exchanger)によって、BCA Laby-GI圧縮機(BCA Laby-GI compressor)に導入される前に、LNG貨物タンク(LNG Cargo Tanks)で発生したBOG(BOG)と熱交換し、さらに、膨張弁(Expansion Valve)によって、熱交換器(Heat Exchanger)を経由した後のBOG(BOG)を、減圧して気液混合状態(Liauid and Flash Gas)としてLNG貨物タンク(LNG Cargo Tanks)に供給する経路である。
したがって、引用発明の「LNG貨物タンク(LNG Cargo Tanks)で発生したBOG(BOG)を、熱交換器(Heat Exchanger)と5段の圧縮シリンダを持つBCA Laby-GI圧縮機(BCA Laby-GI compressor)の前3段のシリンダを経由して39barとして、さらに前記熱交換器(Heat Exchanger)と膨張弁(Expansion Valve)を経由し気液混合状態(Liquid and Flash Gas)としてLNG貨物タンク(LNG Cargo Tanks)に供給する経路の、熱交換器(Heat Exchanger)によって、BCA Laby-GI圧縮機(BCA Laby-GI compressor)に導入される前の、LNG貨物タンク(LNG Cargo Tanks)で発生したBOG(BOG)と熱交換し、膨張弁(Expansion Valve)によって、熱交換器(Heat Exchanger)を経由した後のBOG(BOG)を、減圧して気液混合状態(Liauid and Flash Gas)とする」ことは、本件発明1の「前記高圧圧縮機によって150~400baraに圧縮されることで超臨界状態となったBOGのうち前記主エンジンに燃料として供給されていないBOGを、前記貯蔵タンクから排出されて前記圧縮機に移送される前のBOGと熱交換させた後、減圧して液化させる」こととの対比において、「前記高圧圧縮機によって圧縮されるBOGのうち前記主エンジンに燃料として供給されていないBOGを、前記貯蔵タンクから排出されて前記圧縮機に移送される前のBOGと熱交換させた後、減圧して液化させる」という限度で一致する。
したがって、本件発明1と引用発明との一致点及び相違点は次のとおりであるといえる。
<一致点>
「LNGを貯蔵している貯蔵タンクと、前記貯蔵タンクに貯蔵されているLNGを燃料として使用する主エンジン及び副エンジンとを備えた船舶の液化ガス処理システムによって液化ガスを処理する方法であって、
前記液化ガス処理システムは、前記貯蔵タンクで発生したBOGを圧縮して前記主エンジン及び前記副エンジンに燃料として供給する圧縮機ラインと、前記貯蔵タンクに貯蔵されたLNGを加圧して前記主エンジンに燃料として供給するポンプラインと、を含み、
前記圧縮機ラインは、前記貯蔵タンクから発生するBOGを150~400baraに圧縮する高圧圧縮機を含み、前記ポンプラインは、前記貯蔵タンクに貯蔵されたLNGを150~400baraに加圧する高圧ポンプを含んで前記高圧圧縮機と前記高圧ポンプとを前記主エンジンと貯蔵タンクとの間に並列に配置し、
前記高圧圧縮機によって圧縮されるBOGのうち前記主エンジンに燃料として供給されていないBOGを、前記貯蔵タンクから排出されて前記圧縮機に移送される前のBOGと熱交換させた後、減圧して液化させる船舶の液化ガス処理方法。」
<相違点1>
本件発明1は、「ポンプライン」が「前記貯蔵タンクに貯蔵されたLNGを加圧して」「前記副エンジンに燃料として供給する」ものを含むのに対し、引用発明はそのような構成を備えていない点。
<相違点2>
本件発明1は、「前記貯蔵タンクから排出されて前記圧縮機に移送される前のBOGと熱交換させた後、減圧して液化させる」のが、「前記高圧圧縮機によって150~400baraに圧縮されることで超臨界状態となったBOGのうち前記主エンジンに燃料として供給されていないBOG」であるのに対し、引用発明は、「前記熱交換器(Heat Exchanger)と膨張弁(Expansion Valve)を経由し気液混合状態(Liquid and Flash Gas)としてLNG貨物タンク(LNG Cargo Tanks)に供給する経路の、熱交換器(Heat Exchanger)によって、BCA Laby-GI圧縮機(BCA Laby-GI compressor)に導入される前の、LNG貨物タンク(LNG Cargo Tanks)で発生したBOG(BOG)と熱交換し、膨張弁(Expansion Valve)によって、熱交換器(Heat Exchanger)を経由した後のBOG(BOG)を、減圧して気液混合状態(Liauid and Flash Gas)とする」のが、「熱交換器(Heat Exchanger)と5段の圧縮シリンダを持つBCA Laby-GI圧縮機(BCA Laby-GI compressor)の前3段のシリンダを経由して39barとし」た「LNG貨物タンク(LNG Cargo Tanks)で発生したBOG(BOG)」である点。
(イ)判断
a.相違点1について
LNGを燃料として使用する主エンジン及び副エンジンを有する船舶において、主エンジンと同様に、副エンジンについても、貯蔵タンクに貯蔵されたLNGを加圧して副エンジンに燃料として供給ラインを設けることは、従来周知の技術事項である(必要であれば、引用文献2の図6(b)、引用文献3の【図9a】、【図9b】、【図10b】、引用文献4の図1~4、参照。)。
したがって、引用発明において、相違点1に係る本件発明1の構成となすことは、上記従来周知の技術事項に基いて当業者が容易に想到し得たものといえる。
b.相違点2について
(a)引用文献1の第16頁には、5段の圧縮シリンダを持つLNG運搬船用のLaby-GI圧縮機手段(The Laby-GI Compressor Solution for LNG Carriers)が記載されており、続く第17~18頁で、Laby-GI圧縮機としてブルクハルト社(Burchardt Compression)のLaby-GI 6LP250-5Sが記載されている(Labyはブルクハルト社の登録商標)。第17~18頁の記載(第17頁の「Stages 1 to 3 labyrinth sealing,oil-free」、「Stages 4 to 5 ring sealing,lubricated」という記載、及び、第18頁(スライド番号<18>)の右図の「Labyrinth 1st to 3rd stage」、「Ring sealed 4th to 5th stage」という記載)から、このブルクハルト社(Burchardt Compression)のLaby-GI 6LP250-5Sは、5段の圧縮シリンダを持ち、前3段がオイルフリー方式(ラビリンスシール)で作動するものあり、後2段が潤滑油方式で作動するものあることが看て取れる。
(b)そして、引用文献1の第21頁(スライド番号<21>)には、5段の圧縮シリンダを持つLNG運搬船用のLaby-GI圧縮機手段(The Laby-GI Compressor Solution for LNG Carriers)のオプションNo.2(Option No.2)として、LNG貨物タンク(LNG Cargo Tanks)で発生したBOG(BOG)を、5段の圧縮シリンダを持つBCA Laby-GI圧縮機(BCA Laby-GI compressor)の前3段を経由して39barとし、その後、熱交換器(Heat Exchanger)と膨張弁(Expansion Valve)を経由し気液混合状態(Liquid and Flash Gas)としてLNG貨物タンク(LNG Cargo Tanks)に供給する構成をもつものが記載されている。
引用文献1における、上記第16頁~21頁の記載内容からすれば、引用文献1の第21頁(スライド番号<21>)に記載のLNG運搬船用の5段の圧縮シリンダを持つLaby-GI圧縮機手段(The Laby-GI Compressor Solution for LNG Carriers)のオプションNo.2(Option No.2)のBCA Laby-GI圧縮機(BCA Laby-GI compressor)は、第17頁~18頁に記載されたブルクハルト社(Burchardt Compression)のLaby-GI 6LP250-5Sであると解するのが自然である。
そうすると、引用発明の「LNG貨物タンク(LNG Cargo Tanks)で発生したBOG(BOG)を、熱交換器(Heat Exchanger)と5段の圧縮シリンダを持つBCA Laby-GI圧縮機(BCA Laby-GI compressor)の前3段のシリンダを経由して39bar」となったBOG(BOG)は、オイルフリー方式で作動する圧縮シリンダを経由し、超臨界状態まで圧縮されていない39barとなり、かつ、潤滑油を含まないBOG(BOG)であるといえる。
(c)ここで、引用発明は、LNG運搬船のLNG貨物タンク(LNG Cargo Tanks)で発生したBOG(BOG)を処理する(再液化する(Reliquefaction))方法であって、かかる引用発明によって処理(再液化)された、LNGはLNG貨物タンク(LNG Cargo Tanks)に戻される、すなわち、貨物として戻されるものである。ここで、貨物として戻されるLNGにオイルが含まれると貨物としての品質が低下することになるから、処理(再液化)されたLNGにはオイルが含まれないことが要求されることは当業者には明らかである。そうすると引用発明において、「LNG貨物タンク(LNG Cargo Tanks)で発生したBOG(BOG)を、熱交換器(Heat Exchanger)と5段の圧縮シリンダを持つBCA Laby-GI圧縮機(BCA Laby-GI compressor)の前3段のシリンダを経由して39bar」とし、オイルを含まないBOG(BOG)を、「さらに前記熱交換器(Heat Exchanger)と膨張弁(Expansion Valve)を経由し気液混合状態(Liquid and Flash Gas)としてLNG貨物タンク(LNG Cargo Tanks)に供給する」構成を採用したのは、引用発明によって処理(再液化)され貨物として戻されるLNGにオイルが含まれないようにすることを目的の一つとしていると理解できる。
(d)ところで、メタンのモリエル線図から、当業者であれば、熱交換器を流れる流体の圧力が高圧になると熱交換器の熱伝達係数が改善され、また、膨張機の冷却性が改善されるという技術事項が認識できるとともに、超臨界流体は、熱容量や熱伝導度が大きく、高い熱移動速度が得られることが技術常識である。これらのことからすれば、引用発明において、LNG貨物タンク(LNG Cargo Tanks)で発生したBOG(BOG)を、5段の圧縮シリンダを持つBCA Laby-GI圧縮機(BCA Laby-GI compressor)の全てのシリンダを通して、39barより高圧の超臨界圧に圧縮すれば、その後に経由される熱交換器(Heat Exchanger)と膨張弁(Expansion Valve)での効率が上がることが当業者には予測可能であるともいえる。
しかしながら、例えば、引用発明にも採用されているブルクハルト社(Burchardt Compression)のLaby-GI 6LP250-5Sにも示されるように、ガスを圧縮する多段の高圧圧縮機の後段部分には、ガス圧や圧縮効率を考慮して潤滑油方式で作動する圧縮シリンダを採用することが一般的であり、仮に、LNG貨物タンク(LNG Cargo Tanks)で発生したBOG(BOG)を再液化処理するに当たり、再液化処理における熱交換器及び膨張弁での効率を考え、熱交換器及び膨張弁へ導入するLNG貨物タンク(LNG Cargo Tanks)で発生したBOG(BOG)を超臨界状態まで圧縮するには、多段の高圧圧縮機の潤滑油方式で作動する圧縮シリンダを経由させることとなるが、そうすると、再液化処理され貨物として戻されるLNGにオイルが含まれることとなり、このオイルを除去する手段を講じる必要が生じることとなる、また、LNG貨物タンク(LNG Cargo Tanks)で発生したBOG(BOG)を、より高圧に圧縮するには、より多くの動力が要求されることになることは当業者であれば容易に認識しうる。
したがって、引用発明において、5段の圧縮シリンダを持つBCA Laby-GI圧縮機(BCA Laby-GI compressor)の前3段のシリンダを経由して39barとして分岐させる手段に代えて、5段の圧縮シリンダを持つBCA Laby-GI圧縮機(BCA Laby-GI compressor)の全てのシリンダを経由して、超臨界状態まで圧縮して分岐させる手段を採用することには、5段の圧縮シリンダを持つBCA Laby-GI圧縮機(BCA Laby-GI compressor)の全てのシリンダを経由させると、再液化処理され貨物として戻されるLNGにオイルが含まれてしまうし、より多くの動力が要求されることになる、というその手段の採用を阻害する要因があるというべきである。
また、引用発明において、「LNG貨物タンク(LNG Cargo Tanks)で発生したBOG(BOG)を、熱交換器(Heat Exchanger)と5段の圧縮シリンダを持つBCA Laby-GI圧縮機(BCA Laby-GI compressor)の前3段のシリンダを経由して39bar」とすることには、上記(c)で述べたように技術的合理性ないしメリットがあり、たとえ、メタンのモリエル線図から、当業者であれば、熱交換器を流れる流体の圧力が高圧になると熱交換器の熱伝達係数が改善され、また、膨張機の冷却性が改善されるという技術事項が認識できるとともに、超臨界流体は、熱容量や熱伝導度が大きく、高い熱移動速度が得られることが技術常識であり、引用発明において、LNG貨物タンク(LNG Cargo Tanks)で発生したBOG(BOG)を、5段の圧縮シリンダを持つBCA Laby-GI圧縮機(BCA Laby-GI compressor)の全てのシリンダを通して、39barより高圧の超臨界圧に圧縮すれば、その後に経由される熱交換器(Heat Exchanger)と膨張弁(Expansion Valve)での効率が上がることが当業者には予測可能であるとしても、上記技術的合理性ないしメリットに反して、Laby-GI圧縮機(BCA Laby-GI compressor)の全てのシリンダを通して、39barより高圧の超臨界圧に圧縮する技術を採用することの起因ないし契機となることは、引用文献1には、記載も示唆もない。
よって、引用発明において、相違点2に係る本件発明1の構成となすことは、当業者が容易になし得たということはできない。
引用文献5は、LNG貨物タンク(LNG Cargo Tanks)で発生したBOG(BOG)を再液化処理してLNG貨物タンク(LNG Cargo Tanks)に戻す船舶の液化ガス処理システムに関する技術ではないし、また、液化対象である供給ガス流から分流したものを冷媒として用いる冷凍サイクルを利用して供給ガスを液化する装置を前提として、供給ガス流を超臨界圧を含む高圧に圧縮する技術を開示しているものであり(段落【0013】)、供給ガス流(LNG貨物タンク(LNG Cargo Tanks)で発生したBOG(BOG))から分流したものを冷媒として用いる冷凍サイクルを利用しない引用発明とは技術的前提が異なることから、引用文献5に記載の供給ガス流を液化前に超臨界圧を含む高圧に圧縮するという技術事項を引用発明に適用することは、当業者であっても容易には想到し得ない。
なお、その他の引用文献6~9にも、相違点2に係る本件発明1の構成を示唆する記載はない。
c.小括
以上のとおりであるから、本件発明1は、引用文献1~引用文献9に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
イ.本件発明2~7、9~10について
本件発明2~7、9~10は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに請求項2~7、9~10に記載の発明特定事項を追加したものである。
したがって、本件発明2~7、9~10と引用発明との間には、少なくとも上記ア.(ア)で指摘した相違点2が存在することとなる。そうすると、上記ア.(イ)b.で述べた理由と同様の理由により、請求項2~7、9~10は、引用文献1~引用文献9に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
ウ.本件発明8について
(ア)対比
本件発明8と引用発明とを対比する。
a.機能的、構造的にみて、引用発明の「LNG貨物タンク(LNG Cargo Tanks)」は、本件発明8の「LNGを貯蔵している貯蔵タンク」に相当する。
また、同じく機能的、構造的にみて、引用発明の「ME-GIエンジン(ME-GI)」及び「DF Gensete(ディーゼルエンジンと発電機のセット)(DF Gensete)」の「ディーゼルエンジン」は、本件発明8の「主エンジン」及び「副エンジン」に相当する。
そして、引用発明の「LNG運搬船(LNG Carrier)のME-GIエンジン(ME-GI)とDF Gensete(ディーゼルエンジンと発電機のセット)(DF Gensete)のための燃料ガス供給システム(Fuel Gas Supply System)」は、船舶であるLNG運搬船の液化ガスといえるLNGを燃料ガスとして供給して処理するシステムといえる。
したがって、引用発明の「LNG貨物タンク(LNG Cargo Tanks)と、LNG貨物タンク(LNG Cargo Tanks)に貯蔵されているLNGを燃料として使用するME-GIエンジン(ME-GI)とDF Gensete(ディーゼルエンジンと発電機のセット)(DF Gensete)を備えるLNG運搬船(LNG Carrier)のME-GIエンジン(ME-GI)とDF Gensete(ディーゼルエンジンと発電機のセット)(DF Gensete)のための燃料ガス供給システム(Fuel Gas Supply System)によってLNGを処理する方法」は、本件発明8の「船舶の液化ガス処理方法」に相当するとともに、本件発明8の「LNGを貯蔵している貯蔵タンクと、前記貯蔵タンクに貯蔵されたLNGを供給されて燃料として使用するエンジンとを備えた船舶の液化ガス処理システムによって前記液化ガスを処理する方法」に相当する。
b.機能的、構造的にみて、引用発明の「BCA Laby-GI圧縮機(BCA Laby-GI compressor)」及び「高圧LNGポンプ(HP LNG Pump)」は、それぞれ本件発明8の「高圧圧縮機」及び「高圧ポンプ」に相当する。
機能的、構造的にみて、引用発明の「LNG貨物タンク(LNG Cargo Tanks)で発生したBOG(BOG)を、熱交換器(Heat Exchanger)と5段の圧縮シリンダを持つBCA Laby-GI圧縮機(BCA Laby-GI compressor)の全てのシリンダを経由して300bar、45℃としてME-GIエンジン(ME-GI)に供給する経路」は、本件発明8の「前記貯蔵タンクで発生したBOGを圧縮して前記主エンジン」「に燃料として供給する圧縮機ライン」に相当する。同じく、機能的、構造的にみて、引用発明の「LNG貨物タンク(LNG Cargo Tanks)で発生したBOG(BOG)を、熱交換器(Heat Exchanger)と5段の圧縮シリンダを持つBCA Laby-GI圧縮機(BCA Laby-GI compressor)の1段目のシリンダを経由して4-6barとして DF Gensete(ディーゼルエンジンと発電機のセット)(DF Gensete)に供給する経路」は、本件発明8の「前記貯蔵タンクで発生したBOGを圧縮して」「前記副エンジンに燃料として供給する圧縮機ライン」に相当する。
したがって、引用発明の「LNG貨物タンク(LNG Cargo Tanks)で発生したBOG(BOG)を、熱交換器(Heat Exchanger)と5段の圧縮シリンダを持つBCA Laby-GI圧縮機(BCA Laby-GI compressor)の全てのシリンダを経由して300bar、45℃としてME-GIエンジン(ME-GI)に供給する経路と、LNG貨物タンク(LNG Cargo Tanks)で発生したBOG(BOG)を、熱交換器(Heat Exchanger)と5段の圧縮シリンダを持つBCA Laby-GI圧縮機(BCA Laby-GI compressor)の1段目のシリンダを経由して4-6barとして DF Gensete(ディーゼルエンジンと発電機のセット)(DF Gensete)に供給する経路」は、本件発明8の「前記貯蔵タンクで発生したBOGを圧縮して前記主エンジン及び前記副エンジンに燃料として供給する圧縮機ライン」に相当する。
c.機能的、構造的にみて、引用発明の「LNG貨物タンク(LNG Cargo Tanks)からLNGをLNG供給ポンプ(LNG Supply Pump)とLNG昇圧ポンプ(LNG Booster Pump)と高圧LNGポンプ(HP LNG Pump)及び高圧気化器(HP Vaporiser)を経由して300bar、45℃としてME-GIエンジン(ME-GI)に供給する経路」は、本件発明8の「前記貯蔵タンクに貯蔵されたLNGを圧縮して前記主エンジン及び前記副エンジンに燃料として供給するポンプライン」との対比において、「前記貯蔵タンクに貯蔵されたLNGを加圧して前記主エンジンに燃料として供給するポンプライン」の限度で一致する。
d.本件発明8で使用されている圧力の単位baraは引用発明のbarを、特に、絶対圧であることを明記したものであるので、本件発明8の「bara」と引用発明1の「bar」は実質的に同じ単位である。
とすると、引用発明の「LNG貨物タンク(LNG Cargo Tanks)で発生したBOG(BOG)を、熱交換器(Heat Exchanger)と5段の圧縮シリンダを持つBCA Laby-GI圧縮機(BCA Laby-GI compressor)の全てのシリンダを経由して300bar、45℃としてME-GIエンジン(ME-GI)に供給する経路」は、本件発明8の「前記圧縮機ラインは、前記貯蔵タンクから発生するBOGを150~400baraに圧縮する圧縮機を含」んでいるといえる。
また、引用発明の「LNG貨物タンク(LNG Cargo Tanks)からLNGをLNG供給ポンプ(LNG Supply Pump)とLNG昇圧ポンプ(LNG Booster Pump)と高圧LNGポンプ(HP LNG Pump)及び高圧気化器(HP Vaporiser)を経由して300bar、45℃としてME-GIエンジン(ME-GI)に供給する経路」は、本件発明1の「前記ポンプラインは、前記貯蔵タンクに貯蔵されたLNGを150~400baraに圧縮する高圧ポンプを含」んでいるといえる。
そして、引用発明の「LNG貨物タンク(LNG Cargo Tanks)で発生したBOG(BOG)を、熱交換器(Heat Exchanger)と5段の圧縮シリンダを持つBCA Laby-GI圧縮機(BCA Laby-GI compressor)の全てのシリンダを経由して300bar、45℃としてME-GIエンジン(ME-GI)に供給する経路」と、「LNG貨物タンク(LNG Cargo Tanks)からLNGをLNG供給ポンプ(LNG Supply Pump)とLNG昇圧ポンプ(LNG Booster Pump)と高圧LNGポンプ(HP LNG Pump)及び高圧気化器(HP Vaporiser)を経由して300bar、45℃としてME-GIエンジン(ME-GI)に供給する経路」は、主エンジンたるME-GIエンジン(ME-GI)とLNG貨物タンク(LNG Cargo Tanks)との間に並列して設けられているといえるから、それぞれの経路にある、高圧圧縮機たる「Laby-GI圧縮機(BCA Laby-GI compressor)」と、高圧ポンプたる「高圧LNGポンプ(HP LNG Pump)」は並列に配置されているといえる。
したがって、引用発明の「LNG貨物タンク(LNG Cargo Tanks)で発生したBOG(BOG)を、熱交換器(Heat Exchanger)と5段の圧縮シリンダを持つBCA Laby-GI圧縮機(BCA Laby-GI compressor)の全てのシリンダを経由して300bar、45℃としてME-GIエンジン(ME-GI)に供給する経路」と、「LNG貨物タンク(LNG Cargo Tanks)からLNGをLNG供給ポンプ(LNG Supply Pump)とLNG昇圧ポンプ(LNG Booster Pump)と高圧LNGポンプ(HP LNG Pump)及び高圧気化器(HP Vaporiser)を経由して300bar、45℃としてME-GIエンジン(ME-GI)に供給する経路」によって、本件発明8の「前記圧縮機ラインは、前記貯蔵タンクから発生するBOGを150~400baraに圧縮する圧縮機を含み、前記ポンプラインは、前記貯蔵タンクに貯蔵されたLNGを150~400baraに加圧する高圧ポンプを含んで前記高圧圧縮機と前記高圧ポンプとを前記主エンジンと貯蔵タンクとの間に並列に配置し」に相当する構成を有することとなる。
e.LNGおいては、その組成の8割程度がメタンからなることが技術常識であり、メタンの臨界圧力がおよそ46bara、臨界温度がおよそ-83℃であることからすれば、引用発明において、Laby-GI圧縮機(BCA Laby-GI compressor)にいおて圧縮された後のLNGが、300bar、45℃であることは、当該LNGは超臨界状態となっているといえる。
したがって、引用発明の「LNG貨物タンク(LNG Cargo Tanks)で発生したBOG(BOG)を、熱交換器(Heat Exchanger)と5段の圧縮シリンダを持つBCA Laby-GI圧縮機(BCA Laby-GI compressor)の全てのシリンダを経由して300bar、45℃と」することは、機能的に、本件発明8の「前記高圧圧縮機によって150~400baraに圧縮されることで超臨界状態となったBOG」とすることに相当する。
引用発明の「LNG貨物タンク(LNG Cargo Tanks)で発生したBOG(BOG)を、熱交換器(Heat Exchanger)と5段の圧縮シリンダを持つBCA Laby-GI圧縮機(BCA Laby-GI compressor)の前3段のシリンダを経由して39barとして、さらに前記熱交換器(Heat Exchanger)と膨張弁(Expansion Valve)を経由し気液混合状態(Liquid and Flash Gas)としてLNG貨物タンク(LNG Cargo Tanks)に供給する経路」は、LNG貨物タンク(LNG Cargo Tanks)で発生したBOG(BOG)であって、5段の圧縮シリンダを持つBCA Laby-GI圧縮機(BCA Laby-GI compressor)を経由したBOG(BOG)のうち、ME-GIエンジン(ME-GI)と、DF Gensete(ディーゼルエンジンと発電機のセット)(DF Gensete)とに供給されない、BOG(BOG)を、熱交換器(Heat Exchanger)によって、BCA Laby-GI圧縮機(BCA Laby-GI compressor)に導入される前に、LNG貨物タンク(LNG Cargo Tanks)で発生したBOG(BOG)と熱交換し、さらに、膨張弁(Expansion Valve)によって、熱交換器(Heat Exchanger)を経由した後のBOG(BOG)を、減圧して気液混合状態(Liauid and Flash Gas)としてLNG貨物タンク(LNG Cargo Tanks)に供給する経路である。
したがって、引用発明の「LNG貨物タンク(LNG Cargo Tanks)で発生したBOG(BOG)を、熱交換器(Heat Exchanger)と5段の圧縮シリンダを持つBCA Laby-GI圧縮機(BCA Laby-GI compressor)の前3段のシリンダを経由して39barとして、さらに前記熱交換器(Heat Exchanger)と膨張弁(Expansion Valve)を経由し気液混合状態(Liquid and Flash Gas)としてLNG貨物タンク(LNG Cargo Tanks)に供給する経路の、熱交換器(Heat Exchanger)によって、BCA Laby-GI圧縮機(BCA Laby-GI compressor)に導入される前の、LNG貨物タンク(LNG Cargo Tanks)で発生したBOG(BOG)と熱交換し、膨張弁(Expansion Valve)によって、熱交換器(Heat Exchanger)を経由した後のBOG(BOG)を、減圧して気液混合状態(Liauid and Flash Gas)とする」ことは、本件発明8の「前記高圧圧縮機によって150~400baraに圧縮されることで超臨界状態となったBOGのうち前記主エンジンに燃料として供給されていないBOGを、前記貯蔵タンクから排出されて前記圧縮機に移送される前のBOGと熱交換させた後、減圧して液化させる」こととの対比において、「前記高圧圧縮機によって圧縮されるBOGのうち前記主エンジンに燃料として供給されていないBOGを、前記貯蔵タンクから排出されて前記圧縮機に移送される前のBOGと熱交換させた後、減圧して液化させる」という限度で一致する。
f.引用発明の「BCA Laby-GI圧縮機(BCA Laby-GI compressor)」は「5段の圧縮シリンダを持つ」ものであるから、複数個の圧縮シリンダを含むものであるといえる。
そして、引用文献1の第17頁~第18頁の記載内容からすれば、引用発明の「BCA Laby-GI圧縮機(BCA Laby-GI compressor)」は、引用文献1の第17頁~第18頁に記載のブルクハルト社(burchardt Compression)のLaby-GI 6LP250-5Sであり、前3段がオイルフリー方式(ラビリンスシール)で作動するものあり、後2段が潤滑油方式で作動するものあるといえる(上記ア.(イ)b.(a)、参照。)。
したがって、引用発明の「BCA Laby-GI圧縮機(BCA Laby-GI compressor)」は、本件発明8の「前記高圧圧縮機は、複数個の圧縮シリンダを含み、前記複数個の圧縮シリンダの中に潤滑油方式で作動するものとオイルフリー方式で作動するものを含」むに相当する構成を備えているといえる。
したがって、本件発明8と引用発明との一致点及び相違点は次のとおりであるといえる。
<一致点>
「LNGを貯蔵している貯蔵タンクと、前記貯蔵タンクに貯蔵されているLNGを燃料として使用する主エンジン及び副エンジンとを備えた船舶の液化ガス処理システムによって液化ガスを処理する方法であって、
前記液化ガス処理システムは、前記貯蔵タンクで発生したBOGを圧縮して前記主エンジン及び前記副エンジンに燃料として供給する圧縮機ラインと、前記貯蔵タンクに貯蔵されたLNGを加圧して前記主エンジンに燃料として供給するポンプラインと、を含み、
前記圧縮機ラインは、前記貯蔵タンクから発生するBOGを150~400baraに圧縮する高圧圧縮機を含み、前記ポンプラインは、前記貯蔵タンクに貯蔵されたLNGを150~400baraに加圧する高圧ポンプを含んで前記高圧圧縮機と前記高圧ポンプとを前記主エンジンと貯蔵タンクとの間に並列に配置し、
前記高圧圧縮機によって圧縮されるBOGのうち前記主エンジンに燃料として供給されていないBOGを、前記貯蔵タンクから排出されて前記圧縮機に移送される前のBOGと熱交換させた後、減圧して液化させ、
前記高圧圧縮機は、複数個の圧縮シリンダを含み、前記複数個の圧縮シリンダの中に潤滑油方式で作動するものとオイルフリー方式で作動するものを含む船舶の液化ガス処理方法。」
<相違点A>
本件発明8は、「ポンプライン」が「前記貯蔵タンクに貯蔵されたLNGを加圧して」「前記副エンジンに燃料として供給する」ものを含むのに対し、引用発明はそのような構成を備えていない点。
<相違点B>
本件発明8は、「前記貯蔵タンクから排出されて前記圧縮機に移送される前のBOGと熱交換させた後、減圧して液化させる」のが、「前記高圧圧縮機によって150~400baraに圧縮されることで超臨界状態となったBOGのうち前記主エンジンに燃料として供給されていないBOG」であるのに対し、引用発明は、「前記熱交換器(Heat Exchanger)と膨張弁(Expansion Valve)を経由し気液混合状態(Liquid and Flash Gas)としてLNG貨物タンク(LNG Cargo Tanks)に供給する経路の、熱交換器(Heat Exchanger)によって、BCA Laby-GI圧縮機(BCA Laby-GI compressor)に導入される前の、LNG貨物タンク(LNG Cargo Tanks)で発生したBOG(BOG)と熱交換し、膨張弁(Expansion Valve)によって、熱交換器(Heat Exchanger)を経由した後のBOG(BOG)を、減圧して気液混合状態(Liauid and Flash Gas)とする」のが、「熱交換器(Heat Exchanger)と5段の圧縮シリンダを持つBCA Laby-GI圧縮機(BCA Laby-GI compressor)の前3段のシリンダを経由して39barとし」た「LNG貨物タンク(LNG Cargo Tanks)で発生したBOG(BOG)」である点。
<相違点C>
本件発明8は、「前記高圧圧縮機に含まれる複数個の圧縮シリンダを全部通過して圧縮されたBOGをオイルフィルタを経て移送する」ものであるのに対し、引用発明はそのような構成を備えていることについて限定されていない点。
(イ)判断
a.相違点Aについて
相違点Aは、相違点1と実質的に同じである。
したがって、上記ア.(イ)a.で述べた理由と同様の理由により、引用発明において、相違点Aに係る本件発明8の構成となすことは、引用文献2~4に記載の従来周知の技術事項に基いて当業者が容易に想到し得たものといえる。
b.相違点Bについて
相違点Bは、相違点2と実質的に同じである。
したがって、上記ア.(イ)b.で述べた理由と同様の理由により、引用発明において、相違点Bに係る本件発明8の構成となすことは、当業者が容易に想到し得たということはできない。
c.相違点Cについて
本件発明8において、「前記高圧圧縮機に含まれる複数個の圧縮シリンダを全部通過して圧縮されたBOGをオイルフィルタを経て移送する」という構成を具備する理由は、本件発明8において、BOGを「前記高圧圧縮機に含まれる複数個の圧縮シリンダを全部通過して圧縮」し、これによって、BOGを「150~400baraに圧縮」するため、圧縮したBOGにオイルが含まれているから、これを除去するためであると理解できる。
ここで、上記b.及びア.(イ)b.で述べた理由と同様の理由により、引用発明において、再液化するLNG貨物タンク(LNG Cargo Tanks)で発生したBOG(BOG)を、5段の圧縮シリンダを持つBCA Laby-GI圧縮機(BCA Laby-GI compressor)の全てのシリンダを経由して150~400baraに圧縮する構成となすことが当業者にとって容易に想到し得たものとはいえない。そうすると、再液化するLNG貨物タンク(LNG Cargo Tanks)で発生したBOG(BOG)を5段の圧縮シリンダを持つBCA Laby-GI圧縮機(BCA Laby-GI compressor)の全てのシリンダを経由し圧縮する構成を採用することで初めて必要となる「圧縮されたBOGをオイルフィルタを経て移送する」構成を、引用発明に採用することは、たとえ、引用文献7の段落【0017】に、圧縮機におけるオイルフィルタの使用が示唆されていたとしても、当業者が容易に想到し得たということはできない。
d.小括
以上のとおりであるから、本件発明8は、引用文献1~引用文献9に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
エ.[取消理由2]についてのまとめ
上記ア.~ウ.のとおりであるから、平成30年4月23日付けで特許権者に通知した取消理由2によっては本件請求項1~10に係る発明の特許を取り消すことはできない。
4.取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
(1)特許法第36条第6項第2号について
特許異議申立人は、特許異議申立書において、請求項1の「排出されて前記圧縮機に移送される」との記載は、「前記圧縮機」の記載の前に、「高圧圧縮機」の記載はあるが「圧縮機」の記載がないため、特許を受けようとする発明が明確でない旨主張する。
しかしながら、「前記圧縮機」の記載の前には「高圧圧縮機」以外の圧縮機に関する記載はないことからすれば、「前記圧縮機」が「高圧圧縮機」のことを指すことは当業者には明らかであるといえる。
したがって、特許を受けようとする発明が不明確であるとはいえず、特許請求の範囲の記載は特許法第36条第6項第2号の要件を満たしている。
(2)特許法第17条の2第3項について
ア.特許異議申立人は、特許異議申立書において、平成28年7月13日にされた手続補正により補正された、請求項1の「前記主エンジンに燃料として供給されていないBOGを、前記貯蔵タンクから排出されて前記圧縮機に移送される前のBOGと熱交換させた後、減圧して液化させる」という補正事項は、船舶の液化ガス処理方法における処理の順番として「熱交換させた」後、「減圧して液化させる」ことを要件としているが、熱交換後に液化させること、しかも、減圧して液化させることは、願書に最初に添付した明細書には記載されていないから、上記補正事項は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてされたものではない旨主張する。
しかしながら、願書に最初に添付した図面の【図2】、【図5】、【図6】、【図9】、【図10】及び【図13】には、高圧圧縮機によって圧縮されたBOGのうち主エンジンに燃料として供給されていないBOGを、熱交換器21を通過させ、さらに、膨張機25、52を通過させるボイルオフガス復帰ラインL3が示されているとともに、願書に最初に添付した明細書の段落【0065】~【0067】、【0070】、【0096】~【0098】、及び、【0101】には、高圧圧縮機によって圧縮されたBOGのうち主エンジンに燃料として供給されていないBOGが、熱交換器21を通過し、さらに、膨張機25、52を通過することが記載されている。そして、これらの明細書及び図面の記載から、高圧圧縮機によって圧縮されたBOGのうち主エンジンに燃料として供給されていないBOGが、熱交換器21を通過することによって熱交換され、その後、膨張機25、52を通過することによって膨張され、最終的に液化されることが記載されているといえる。
したがって、願書に最初に添付した明細書及び図面には、高圧圧縮機によって圧縮されたBOGのうち主エンジンに燃料として供給されていないBOGを、熱交換器21を通過させ熱交換した後、膨張機25、52を通過させ減圧して、液化させるという事項が記載されているといえ、平成28年7月13日にされた手続補正により補正された、上記補正事項は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてされたものであるといえる。
イ.(ア)特許異議申立人は、特許異議申立書において、特許法第17条の2第3項に関し概ね次のようにも主張する。
(i)平成28年7月13日にされた手続補正により補正された、請求項8の「前記高圧圧縮機に含まれる複数個の前記圧縮シリンダを全部通過して圧縮されたボイルオフガスをオイルフィルタを経て移送する」という補正事項は、高圧圧縮機によって圧縮されたBOGの分岐を前提とせずオイルフィルタを使用することも含まれるが、高圧圧縮機によって圧縮されたBOGの分岐を前提とせずオイルフィルタを使用することは、願書に最初に添付した明細書には記載されていない。
(ii)上記補正事項によって、高圧圧縮機の2段や3段でBOGを分岐させるとき、ボイルオフガスをオイルフィルタを経て移送することも含まれることとなるが、この点は、願書に最初に添付した明細書には記載されていない。
(イ)上記特許異議申立人の主張に対する当審の判断は以下のとおりである。
まず、請求項8は、上記第2の1.(2)の訂正事項2により訂正された。
(i)について、訂正後の請求項8に係る発明は、「前記液化ガス処理システムは、前記貯蔵タンクで発生したBOGを圧縮して前記主エンジン」「に燃料として供給する圧縮ラインと」、「前記高圧圧縮機によって150~400baraに圧縮されることで超臨界状態となったBOGのうち前記主エンジンに燃料として供給されていないBOGを」「液化させる」という発明特定事項を含んでいるから、「前記液化ガス処理システムは、前記貯蔵タンクで発生したBOGを圧縮して前記主エンジン」「に燃料として供給する圧縮ライン」から「前記高圧圧縮機によって150~400baraに圧縮されることで超臨界状態となったBOGのうち前記主エンジンに燃料として供給されていないBOGを」「液化させる」ラインが分岐していることは明らかであり、訂正後の請求項8に係る発明は、分岐を前提としてオイルフィルタを使用するものとなっている。
なお、この点は、訂正前の請求項8に係る発明においても同様である。
(ii)について、訂正後の請求項8に係る発明は、「前記高圧圧縮機は、複数個の圧縮シリンダを含み」、「前記高圧圧縮機に含まれる複数個の圧縮シリンダを全部通過して圧縮されたBOGをオイルフィルタを経て移送すること」という発明特定事項を含んでいるから、そもそも、、高圧圧縮機の2段や3段でBOGを分岐させるという態様を想定していないものといえる。
なお、請求項8に関する訂正事項2が新規事項の追加にならないことは、上記第2の3.(2)イ.を参照されたい。
(3)小括
上記(1)(2)のとおりであるから、取消理由通知書において採用しなかった特許異議申立人の上記主張は採用することはできない。
第5 むすび
以上のとおり、請求項1~10に係る発明の特許は、取消理由通知書(決定の予告)に記載した取消理由又は特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によっては、特許を取り消すことができない。さらに、他に請求項1~10に係る発明の特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2017-700338