特許異議申立
2022-700368
液化ガス燃料船
- 審判番号
- 2022-700368
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2016-212220
- 登録番号
- 6962679
- 請求日
- 2022年04月28日
- 審決日
- 2023年07月13日
- 公報発行日
- 2023年11月24日
- 結論
- 請求成立(取消)
- 当事者
- 【権利者】三井E&S造船株式会社
- 【権利者代理人】神崎 真
- 【権利者代理人】松浦 孝
- 【権利者代理人】小倉 洋樹
- 【異議申立人】渡辺 末治
- 審判長/審判官
- 審判長 一ノ瀬 覚
- 審判官 藤井 昇
- 審判官 中村 則夫
- 分類
- P1652.121-ZDA(B63B) / P1652.832-ZDA(B63B) / P1652.841-ZDA(B63B) / P1652.851-ZDA(B63B) / P1652.857-ZDA(B63B) / P1652.856-ZDA(B63B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第9項、特許法第29条第2項、特許法第120条の5第5項、特許法第120条の5第7項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第6962679号発明「液化ガス燃料船」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第6962679号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1、〔3~11〕について訂正することを認める。
特許第6962679号の請求項1に係る特許を取り消す。
特許第6962679号の請求項3~6、8~11に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第6962679号(以下「本件特許」ともいう。)の請求項1~11に係る特許についての出願は、平成28年10月28日に出願され、令和3年10月18日に特許権の設定登録がされ、同年11月5日に特許掲載公報が発行された。
その後、その特許について、令和4年4月28日に特許異議申立人渡辺末治(以下「申立人」という。)より特許異議の申立てがされ、同年5月27日に手続補正書(方式)が提出され、同年7月28日付けで取消理由が通知され、同年10月3日に訂正請求書及び意見書が提出され、同年11月1日付けで訂正請求があった旨が通知され(特許法第120条の5第5項)、これに対して、その指定期間内である同年11月28日に申立人から意見書が提出され、令和5年2月16日付けで取消理由(決定の予告)が通知され、同年4月20日に訂正請求書及び意見書が提出され、同年4月27日付けで訂正請求があった旨が通知され(特許法第120条の5第5項)、これに対して、その指定期間内である同年6月5日に申立人から意見書が提出されたものである。
第2 訂正の適否について
1 訂正の内容
令和5年4月20日付けの訂正請求書による訂正(以下「本件訂正」という。)は、特許6962679号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1、3~11について訂正することを請求するものであり、その内容は以下のとおりである(下線は、訂正箇所を示す。)。
なお、令和4年10月3日付けの訂正請求書による訂正は、特許法第120条の5第7項の規定により、取り下げられたものとみなす。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「液化ガスを燃料として使用する液化ガス燃料船であって、前記液化ガスを貯蔵するための液化ガス燃料タンクと、前記液化ガス燃料タンク内の燃料を燃料消費部へ供給するための液化ガス供給システムとを備え、前記液化ガス燃料タンクの少なくとも一部が、船側から型幅の1/5よりも内側に配置されるとともに、前記液化ガス供給システムが、前記液化ガス燃料タンクと前記船側の間、および船側から型幅の1/5よりも外側に配置されることを特徴とする液化ガス燃料船。」と記載されているのを、「液化ガスを燃料として使用する液化ガス燃料船であって、前記液化ガスを貯蔵するための液化ガス燃料タンクと、前記液化ガス燃料タンク内の燃料を燃料消費部へ供給するための液化ガス供給システムとを備え、前記液化ガス燃料タンクがフリーボードデッキよりも下側に配置されるとともに、前記液化ガス燃料タンクの全てが、両船側から型幅の1/5よりも内側に配置されるとともに、前記液化ガス供給システムが、前記液化ガス燃料タンクと前記船側の間、および船側から型幅の1/5よりも外側に配置されることを特徴とする液化ガス燃料船。」に訂正する。
(2)訂正事項2
訂正前の特許請求の範囲の請求項3に「前記液化ガス燃料タンクの容量の少なくとも1/3が、全長Lの中心から長手方向後方へ30%Lの位置から前記機関室前壁までの間に配置されることを特徴とする請求項1または2の何れか一項に記載の液化ガス燃料船。」と記載されているのを「液化ガスを燃料として使用する液化ガス燃料船であって、前記液化ガスを貯蔵するための液化ガス燃料タンクと、前記液化ガス燃料タンク内の燃料を燃料消費部へ供給するための液化ガス供給システムとを備え、前記液化ガス燃料タンクの少なくとも一部が、船側から型幅の1/5よりも内側に配置されるとともに、前記液化ガス供給システムが、前記液化ガス燃料タンクと前記船側の間、および船側から型幅の1/5よりも外側に配置され、前記液化ガス燃料タンクの容量の少なくとも1/3が、全長Lの中心から長手方向後方へ30%Lの位置から前記機関室前壁までの間に配置されることを特徴とする液化ガス燃料船。」に訂正する。
(3)訂正事項3
訂正前の特許請求の範囲の請求項4に「前記液化ガス燃料タンクの容量の少なくとも1/3が、全長Lの中心から長手方向前方へ35%Lの位置から船首隔壁までの間に配置されることを特徴とする請求項1~3の何れか一項に記載の液化ガス燃料船。」と記載されているのを、「液化ガスを燃料として使用する液化ガス燃料船であって、前記液化ガスを貯蔵するための液化ガス燃料タンクと、前記液化ガス燃料タンク内の燃料を燃料消費部へ供給するための液化ガス供給システムとを備え、前記液化ガス燃料タンクの少なくとも一部が、船側から型幅の1/5よりも内側に配置されるとともに、前記液化ガス供給システムが、前記液化ガス燃料タンクと前記船側の間、および船側から型幅の1/5よりも外側に配置され、前記液化ガス燃料タンクの容量の少なくとも1/3が、全長Lの中心から長手方向前方へ35%Lの位置から船首隔壁までの間に配置されることを特徴とする液化ガス燃料船。」に訂正する。
(4)訂正事項4
訂正前の特許請求の範囲の請求項5に「前記液化ガス燃料船が、前記液化ガス燃料タンクを複数備える1列センターピラー構造を有する船舶であって、少なくとも一対の前記液化ガス燃料タンクが船体中心線に対して左右対称に配置されることを特徴とする請求項1~3の何れか一項に記載の液化ガス燃料船。」と記載されているのを、「液化ガスを燃料として使用する液化ガス燃料船であって、前記液化ガスを貯蔵するための液化ガス燃料タンクと、前記液化ガス燃料タンク内の燃料を燃料消費部へ供給するための液化ガス供給システムとを備え、前記液化ガス燃料タンクの少なくとも一部が、船側から型幅の1/5よりも内側に配置されるとともに、前記液化ガス供給システムが、前記液化ガス燃料タンクと前記船側の間、および船側から型幅の1/5よりも外側に配置され、前記液化ガス燃料船が、前記液化ガス燃料タンクを複数備える1列センターピラー構造を有する船舶であって、少なくとも一対の前記液化ガス燃料タンクが船体中心線に対して左右対称に配置されることを特徴とする液化ガス燃料船。」に訂正する。
(5)訂正事項5
訂正前の特許請求の範囲の請求項6に「請求項1、3~5の何れか一項に記載の液化ガス燃料船。」と記載されているのを、「請求項3~5の何れか一項に記載の液化ガス燃料船。」に訂正する(請求項6の記載を引用する請求項7も同様に訂正する)。
(6)訂正事項6
訂正前の特許請求の範囲の請求項8に「請求項1~7の何れか一項に記載の液化ガス燃料船。」と記載されているのを、「請求項2~7の何れか一項に記載の液化ガス燃料船。」に訂正する。
(7)訂正事項7
訂正前の特許請求の範囲の請求項9に「請求項1~8の何れか一項に記載の液化ガス燃料船。」と記載されているのを、「請求項2~8の何れか一項に記載の液化ガス燃料船。」に訂正する(請求項9の記載を引用する請求項10も同様に訂正する)。
(8)訂正事項8
訂正前の特許請求の範囲の請求項11に「請求項1~10の何れか一項に記載の液化ガス燃料船。」と記載されているのを、「請求項2~10の何れか一項に記載の液化ガス燃料船。」に訂正する。
(9)一群の請求項等についての説明
訂正前の請求項1、3~11について、請求項3~6、8、9、11は、それぞれ請求項1を引用し、また、請求項7、10は、請求項1を引用する請求項6、9を各々引用するものである。したがって、訂正前の請求項1、3~11に対応する訂正後の請求項1、3~11は、一群の請求項であるから、本件訂正は、一群の請求項について請求されている。
また、訂正後の請求項3~11において、当該請求項についての訂正が認められる場合には、請求項1とは別の訂正単位として扱われることを求めている。
2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1について
ア 訂正の目的について
訂正前の請求項1に係る発明では、「前記液化ガス燃料タンクの少なくとも一部が、船側から型幅の1/5よりも内側に配置されるとともに」と記載されているに対し、訂正後の請求項1に係る発明では、「前記液化ガス燃料タンクがフリーボードデッキよりも下側に配置されるとともに、前記液化ガス燃料タンクの全てが、両船側から型幅の1/5よりも内側に配置されるとともに」と訂正することによって、「液化ガス燃料タンク」の配置を更に特定するものであり、特許法第120条の5第2項ただし書第1号の特許請求の範囲の減縮を目的とする。
イ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「特許明細書等」という。)に記載した事項の範囲内においてした訂正であること
訂正事項1に係る「前記液化ガス燃料タンクがフリーボードデッキよりも下側に配置されるとともに、前記液化ガス燃料タンクの全てが、両船側から型幅の1/5よりも内側に配置される」とする記載は、願書に添付した明細書の段落【0011】、【0017】、【0018】、特許請求の範囲の請求項9、図1等に記載した事項に基づく。したがって訂正事項1の訂正は、特許明細書等に記載した事項の範囲内においてした訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。
ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
上記訂正事項1の「ア 訂正の目的について」から明らかなように、訂正事項1は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正には該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。
(2)訂正事項2~4について
ア 訂正の目的について
訂正前の請求項3~5は、先行する請求項の内何れか一項を引用するものであるのに対し、訂正により、訂正後の請求項3~5は、請求項1を選択して独立形式請求項に改めたものであり、特許法第120条の5第2項ただし書第1号の特許請求の範囲の減縮及び第4号の他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的している。
イ 新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
訂正事項2~4による訂正は、上記ア「訂正の目的について」から明らかなように新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(3)訂正事項5について
ア 訂正の目的について
訂正前の請求項6は、請求項1、3~5を引用する請求項であるのに対し、訂正により引用先を、請求項1を除く請求項3~5に改めたものであり、特許法第120条の5第2項ただし書第1号の特許請求の範囲の減縮及び第4号の他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的している。
イ 新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
訂正事項5による訂正は、上記ア「訂正の目的について」から明らかなように新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(4)訂正事項6~8について
ア 訂正の目的について
訂正事項6~8についても、訂正前の請求項8、9、11において請求項1を含んで引用していた引用先を、訂正により請求項1を除く引用先に改めたものであり、特許法第120条の5第2項ただし書第1号の特許請求の範囲の減縮及び第4号の他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的している。
イ 新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
訂正事項6~8による訂正は、上記ア「訂正の目的について」から明らかなように新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
3 独立特許要件
本件においては、訂正前の請求項1、3~6、8~11の全てについて特許異議の申立てがされているので、訂正前の請求項1、3~6、8~11にそれぞれ係る訂正事項1~8に関して、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第7項に規定する独立特許要件は課されない。
訂正前の請求項7については、特許異議の申立てがされていないから、ここで、訂正後の請求項7に係る発明の独立特許要件について検討する。
訂正後の請求項7は、訂正後の請求項6を引用するものであり、訂正後の請求項6は、訂正後の請求項3~5を引用するものであるが、後述(第5参照)のように、訂正後の請求項3~6には、取消理由はない。
また、訂正後の請求項7に係る発明の「前記多筒タンクが双筒タンクであり、前記双筒タンクにおいて、両円筒部直上に設けられるタンクコネクションルームが連結され一体化される」構成は、甲1に記載も示唆もされていないし、これらの構成が公知ないし周知であるといえる根拠もないから、訂正後の請求項7に係る発明は、甲1発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものともいえない(「甲1」及び「甲1発明」については、以下の「第4」及び「第5」を参照。)。
そして、訂正後の請求項7に係る発明については、他に特許を取り消すべき理由を見出せないから、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第7項の規定に適合する。
4 小括
上記のとおり、訂正事項1~8に係る本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項~第7項の規定に適合する。
したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1、〔3~11〕について訂正することを認める。
第3 本件発明
上記「第2」のとおり、本件訂正は認められたから、本件特許の願書に添付した特許請求の範囲の請求項1~11に係る発明(以下それぞれ「本件発明1」~「本件発明11」という。)は、令和5年4月20日付けの訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1~11に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
液化ガスを燃料として使用する液化ガス燃料船であって、
前記液化ガスを貯蔵するための液化ガス燃料タンクと、
前記液化ガス燃料タンク内の燃料を燃料消費部へ供給するための液化ガス供給システムとを備え、
前記液化ガス燃料タンクがフリーボードデッキよりも下側に配置されるとともに、前記液化ガス燃料タンクの全てが、両船側から型幅の1/5よりも内側に配置されるとともに、前記液化ガス供給システムが、前記液化ガス燃料タンクと前記船側の間、および船側から型幅の1/5よりも外側に配置される
ことを特徴とする液化ガス燃料船。
【請求項2】
液化ガスを燃料として使用する液化ガス燃料船であって、
前記液化ガスを貯蔵するための液化ガス燃料タンクと、
前記液化ガス燃料タンク内の燃料を燃料消費部へ供給するための液化ガス供給システムとを備え、
前記液化ガス燃料タンクの少なくとも一部が、船側から型幅の1/5よりも内側に配置されるとともに、前記液化ガス供給システムが、前記液化ガス燃料タンクと前記船側の間、および/または、前記液化ガス燃料タンクと機関室前壁との間に配置され、
前記液化ガス燃料タンクが、複数の円筒タンクが長手方向に沿って並び連結された多筒タンクであり、
前記多筒タンクが双筒タンクであり、前記双筒タンクにおいて、両円筒部直上に設けられるタンクコネクションルームが連結され一体化される
ことを特徴とする液化ガス燃料船。
【請求項3】
液化ガスを燃料として使用する液化ガス燃料船であって、
前記液化ガスを貯蔵するための液化ガス燃料タンクと、
前記液化ガス燃料タンク内の燃料を燃料消費部へ供給するための液化ガス供給システムとを備え、
前記液化ガス燃料タンクの少なくとも一部が、船側から型幅の1/5よりも内側に配置されるとともに、前記液化ガス供給システムが、前記液化ガス燃料タンクと前記船側の間、および船側から型幅の1/5よりも外側に配置され、前記液化ガス燃料タンクの容量の少なくとも1/3が、全長Lの中心から長手方向後方へ30%Lの位置から前記機関室前壁までの間に配置されることを特徴とする液化ガス燃料船。
【請求項4】
液化ガスを燃料として使用する液化ガス燃料船であって、
前記液化ガスを貯蔵するための液化ガス燃料タンクと、
前記液化ガス燃料タンク内の燃料を燃料消費部へ供給するための液化ガス供給システムとを備え、
前記液化ガス燃料タンクの少なくとも一部が、船側から型幅の1/5よりも内側に配置されるとともに、前記液化ガス供給システムが、前記液化ガス燃料タンクと前記船側の間、および船側から型幅の1/5よりも外側に配管され、前記液化ガス燃料タンクの容量の少なくとも1/3が、全長Lの中心から長手方向前方へ35%Lの位置から船首隔壁までの間に配置されることを特徴とする液化ガス燃料船。
【請求項5】
液化ガスを燃料として使用する液化ガス燃料船であって、
前記液化ガスを貯蔵するための液化ガス燃料タンクと、
前記液化ガス燃料タンク内の燃料を燃料消費部へ供給するための液化ガス供給システムとを備え、
前記液化ガス燃料タンクの少なくとも一部が、船側から型幅の1/5よりも内側に配置されるとともに、前記液化ガス供給システムが、前記液化ガス燃料タンクと前記船側の間、および船側から型幅の1/5よりも外側に配置され、
前記液化ガス燃料船が、前記液化ガス燃料タンクを複数備える1列センターピラー構造を有する船舶であって、少なくとも一対の前記液化ガス燃料タンクが船体中心線に対して左右対称に配置されることを特徴とする液化ガス燃料船。
【請求項6】
前記液化ガス燃料タンクが、複数の円筒タンクが長手方向に沿って並び連結された多筒タンクであることを特徴とする請求項3~5の何れか一項に記載の液化ガス燃料船。
【請求項7】
前記多筒タンクが双筒タンクであり、前記双筒タンクにおいて、両円筒部直上に設けられるタンクコネクションルームが連結され一体化されることを特徴とする請求項6に記載の液化ガス燃料船。
【請求項8】
前記液化ガス燃料タンクが、船首または船尾の少なくとも一方の側において先すぼまりの形状を呈することを特徴とする請求項2~7の何れか一項に記載の液化ガス燃料船。
【請求項9】
前記液化ガス燃料タンクが、フリーボードデッキよりも下に配置されることを特徴とする請求項2~8の何れか一項に記載の液化ガス燃料船。
【請求項10】
前記液化ガス燃料タンクが、フリーボードデッキ下の深さの80%以下および/または、フリーボードデッキから2.4m下方の位置より下側に配置されることを特徴とする請求項9に記載の液化ガス燃料船。
【請求項11】
前記液化ガス燃料タンクが、船体の二重底直上に支持構造を介して設置されることを特徴とする請求項2~10の何れか一項に記載の液化ガス燃料船。」
第4 取消理由通知(決定の予告)の概要
請求項1、6及び8~11に係る特許に対して、当審が令和5年2月16日付け取消理由通知(決定の予告)において特許権者に通知した取消理由の概要は、次のとおりである。
請求項1、6及び8~11に係る発明は、甲1発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであるから、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。
甲第1号証(刊行物)
財団法人 日本船舶技術研究協会 国際海運におけるエネルギー効率化に向けた枠組み作り(フェーズ2) (2011年度報告書) 2012年3月発行
甲第1号証は、特許異議申立人が提出した甲号証である。以下「甲1」という。
第5 当審の判断
1 甲1について
(1)甲1に記載された事項
甲1の198ページには、次の図面が記載されている。
電気推進型LNG焚き旅客フェリーの概略配置図 検討例
[図:0001403619000001.jpg]
165ページの「(3)燃料タンクの概要」には、「LNGを燃料として使用するための機器を表2.2.及び表2.3.にまとめた。・・・3000GT型フェリーはBOGの処理が容易な2重殻円筒形タンクを使用した。」との記載があり、表2.2には、「内航旅客フェリー用」として2重殻円筒形タンクを「2~4」基配置することが記載されている。
また、168ページ2~4行には、「内航フェリーの例では車両甲板下の機関区域にLNGタンク、機器を配置した。このクラスでは航海距離が短く、搭載燃料が少ないこともあり、スペース的に余裕があるので、円筒型のLNGタンク2基でも十分に配置することが可能であった。」との記載もある。
(2)甲1の認定事項
198ページの「電気推進型LNG焚き旅客フェリーの概略配置図 検討例」(以下「198ページの図面」という。)は、寸法などが記載されていることから、概略配置図とはいえ、その寸法関係などはそのまま把握して差し支えないところ、当該図面から、「4基のLNGタンクと、LNG機器室とを備え、4基のLNGタンクのうち、最も右舷側にあるLNGタンクの一部を除く3基のタンクは、両船側から型幅の1/5よりも内側に配置されるとともに、LNG機器室が、4つのLNGタンクと船側の間に配置され、および、LNG機器室の大部分が、船側から型幅の1/5よりも外側に配置される」ことが認定できる。
また、198ページの図面において、上記の記載の「ガス発電機関」に相当するものは、「ガス焚きエンジン」であることが明らかである。
(3)甲1に記載された発明
上記(1)、(2)を総合すると、甲1には、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
[甲1発明]
「電気推進型LNG焚き旅客フェリーであって、
4基のLNGタンクと、
LNG燃料をガス化してガス焚きエンジンへ供給するLNG機器室とを備え、
4基のLNGタンクのうち、最も右舷側にあるLNGタンクの一部を除く3基のタンクは、両船側から型幅の1/5よりも内側に配置されるとともに、LNG機器室が、4基のLNGタンクと船側の間に配置され、および、LNG機器室の大部分が、船側から型幅の1/5よりも外側に配置される
電気推進型LNG焚き旅客フェリー。」
2 本件発明1の対比・判断
(1)対比
本件発明1と甲1発明とを対比する。
ア
甲1発明の「電気推進型LNG焚き旅客フェリー」、「LNGタンク」及び「ガス焚きエンジン」は、それぞれ、本件発明1の「液化ガスを燃料として使用する液化ガス燃料船」、「液化ガスを貯蔵するための液化ガス燃料タンク」及び「燃料消費部」に相当する。
イ
甲1発明の「LNG燃料をガス化してガス焚きエンジンへ供給するLNG機器室」には、LNG燃料をガス化してガス焚きエンジンへ供給する機器(以下「LNG燃料供給機器」という。)が配置されていることが明らかであり、上記アを踏まえると、甲1発明の「LNG機器室」に配置されている「LNG燃料供給機器」は、本件発明1の「前記液化ガス燃料タンク内の燃料を燃料消費部へ供給するための液化ガス供給システム」に相当する。
ウ
甲1発明の「4基のLNGタンクのうち、最も右舷側にあるLNGタンクの一部を除く3基のタンクは、両船側から型幅の1/5よりも内側に配置される」ことと、本件発明1の「前記液化ガス燃料タンクがフリーボードデッキよりも下側に配置されるとともに、前記液化ガス燃料タンクの全てが、両船側から型幅の1/5よりも内側に配置される」こととは、「前記液化ガス燃料タンクの大部分が、両船側から型幅の1/5よりも内側に配置される」ことにおいて共通する。
以上から、本件発明1と甲1発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
<一致点>
「液化ガスを燃料として使用する液化ガス燃料船であって、
前記液化ガスを貯蔵するための液化ガス燃料タンクと、
前記液化ガス燃料タンク内の燃料を燃料消費部へ供給するための液化ガス供給システムとを備え、
前記液化ガス燃料タンクの大部分が、両船側から型幅の1/5よりも内側に配置される、
液化ガス燃料船。」
<相違点1>
液化ガス燃料タンクに関して、本件発明1では、「フリーボードデッキよりも下側に配置される」とともに、前記液化ガス燃料タンクの「全て」が、両船側から型幅の1/5よりも内側に配置されるのに対して、甲1発明では、フリーボードデッキよりも下側に配置されることが不明であるとともに「4基のLNGタンクのうち、最も右舷側にあるLNGタンクの一部を除く3基のタンク」は、両船側から型幅の1/5よりも内側に配置される点。
<相違点2>
本件発明1では、「前記液化ガス供給システムが、前記液化ガス燃料タンクと前記船側の間、および船側から型幅の1/5よりも外側に配置される」のに対して、甲1発明では、「LNG機器室が、4つのLNGタンクと船側の間に配置され」、「LNG燃料供給機器」が配置されている「LNG機器室の大部分が、船側から型幅の1/5よりも外側に配置される」が、「LNG燃料供給機器」自体が船側から型幅の1/5よりも外側に配置されることは特定されていない点。
(2)判断
<相違点1について>
ア 甲1の198ページの図面において、どの甲板がフリーボードデッキであるのかは不明であるが、船底からの高さが4.800すなわち4.8メートルの甲板が、最も下に位置している甲板であることは明らかであり、この最も下に位置している甲板よりも下方にLNGタンクが配置されているから(198ページの上の図面を参照)、甲1発明において、LNGタンクがフリーボードデッキよりも下に配置されていることは明らかである。
イ 上述した甲1の内航フェリーの燃料タンクに関する記載事項からみて、甲1において内航旅客フェリー用のLNGタンクの数は4基に限定されるものではなく、航海距離に応じてLNGタンクの数を設定すれば良いことが示唆されており、その目安として「2基」とすることも言及されているから、甲1発明において、LNGタンクを2基として両船側から型幅の1/5よりも内側に配置されるようにすることは、適宜成し得る程度の設計的事項にすぎない。
ウ また、本件の審査過程で令和2年3月30日付け拒絶理由通知において引用された引用文献3(西藤浩一、“天然ガス燃料船の実用化とNKの取組み”、日本マリンエンジニアリング学会誌、第47巻第6号、日本マリンエンジニアリング学会、2012年、p.8~11)の10ページには、「2012年1月に発行したガス燃料船ガイドライン」についての説明において、「4.2 燃料タンクの配置」として「燃料タンクは、船舶の衝突、座礁等による船体損傷を考慮し、外板から少なくとも図2に示す距離だけ離して設置すること」と記載され、図2には、「B/5又は11.5mの小さい方」だけ外板から離すこと(ここで、Bは船舶の最大のモールテッド幅(m)つまり型幅であること)が指針として示されている。
これを甲1の198ページの図にあてはめると、型幅Bは約17.6mとなり、B/5は11.5mより小さくなることから、船側から型幅Bの1/5より内側に離して燃料タンクを配置することが指針(技術常識)に沿っていることになる。
そうすると、甲1発明の燃料タンクの大部分が両船側から型幅の1/5よりも内側に配置されたものを、上記指針(技術常識)に鑑み、燃料タンクの「全て」を両船側から型幅の1/5よりも内側に配置されるようにすることに何ら困難性はないともいえる。
エ 以上のことから、甲1発明において、相違点1に係る本件発明1の構成とすることは、甲1記載事項又は上記指針(技術常識)に基いて、当業者が容易に想到し得たことである。
<相違点2について>
ア 甲1発明において、「LNG機器室」はその「大部分が、船側から型幅の1/5よりも外側に配置され」るものであり、その内部に配置されるポンプや熱交換器などの「LNG燃料供給機器」も、その大部分が、船側から型幅の1/5よりも外側に配置されていると解することが自然であるから、甲1発明において、「LNG燃料供給機器」は、船側から型幅の1/5よりも外側に配置される蓋然性が高いものといえる。そして、甲1発明の「LNG機器室」内において、「LNG燃料供給機器」全てを船側から型幅の1/5よりも外側に配置することについては格別の技術的意義は見出せないところ、そのような配置とすることは、当業者が適宜採用し得る程度の設計的事項にすぎない。
イ 以上のとおりであるから、甲1発明において上記相違点2に係る本件発明の構成とすることは当業者が容易になし得たことである。
(3)特許権者の主張について
相違点1に関連して、特許権者は、令和5年4月20日の意見書において、「しかし、甲第1号証では左舷側にガス機器室を設置し、それに伴いタンクを右舷側にずらし、その結果として片舷のみ型幅の1/5よりも内側に配置されている。そのため甲第1号証の配置ではガスタンクが右舷側で1/5Bの外側に大きくはみ出しており、衝突時安全性の観点からは配置上の特段の工夫が見られない。液化ガス燃料タンクを船側から型幅の1/5よりも内側に配置する構成を片舷でのみ実施した場合、反対側の舷側に対する衝突安全性が確保されないため、全船体としての衝突時安全性が大幅に改善されることはない。」旨主張する。
しかしながら、「前記液化ガス燃料タンクの「全て」が、両船側から型幅の1/5よりも内側に配置される」ことに進歩性がないことついては、上記(2)<相違点1について>イ、ウに述べたとおりである。
したがって、特許権者の上記主張は採用できない。
(4)小括
したがって、本件発明1は、甲1発明、甲1記載事項又は上記指針(技術常識)に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
第6 取消理由通知(決定の予告)で採用しなかった特許異議申立理由について
1 本件発明3~5について
本件発明3の「前記液化ガス燃料タンクの容量の少なくとも1/3が、全長Lの中心から長手方向後方へ30%Lの位置から前記機関室前壁までの間に配置される」構成、
本件発明4の「前記液化ガス燃料タンクの容量の少なくとも1/3が、全長Lの中心から長手方向前方へ35%Lの位置から船首隔壁までの間に配置される」構成、及び、
本件発明5の「前記液化ガス燃料船が、前記液化ガス燃料タンクを複数備える1列センターピラー構造を有する船舶であって、少なくとも一対の前記液化ガス燃料タンクが船体中心線に対して左右対称に配置される」構成は、
いずれも、甲1に記載も示唆もされていないし、これらの構成が公知ないし周知であるといえる根拠もない。
したがって、本件発明3~5は、甲1発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
2 本件発明6について
本件発明6は、本件発明3~5のいずれか1項の発明特定事項を全て含み、さらに限定を付加したものであるから、甲1発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
3 本件発明8~11について
本件発明8~11は、本件発明2~5のいずれか1項の発明特定事項を全て含み、さらに限定を付加したものであるから、甲1発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
4 小括
上記のとおりであるから、本件発明3~6、8~11は、甲1発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないとはいえない。
第7 むすび
以上のとおり、本件発明1に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであるから、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。
また、本件発明3~6、8~11に係る特許は、取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、取り消すことはできない。さらに、他に本件発明3~6、8~11に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2022-700368