特許異議申立
2022-700884
船舶
- 審判番号
- 2022-700884
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2018-024204
- 登録番号
- 7049851
- 請求日
- 2022年09月08日
- 審決日
- 2023年12月27日
- 公報発行日
- 2024年03月29日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】三菱造船株式会社
- 【権利者代理人】弁理士法人酒井国際特許事務所
- 【異議申立人】佐藤 雅彦
- 審判長/審判官
- 審判長 河端 賢
- 審判官 星名 真幸
- 審判官 倉橋 紀夫
- 分類
- P1652.113-YAA(B63B) / P1652.121-YAA(B63B) / P1652.537-YAA(B63B)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法120条の8第1項特許法135条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第9項、特許法第126条第7項、特許法第120条の5第2項、特許法第36条第4項第1号、特許法第29条第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第120条の5第5項、特許法第120条の5第4項、特許法第29条第1項、特許法第36条第6項第2号、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7049851号発明「船舶」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7049851号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1ないし9〕について訂正することを認める。
特許第7049851号の請求項1、2及び4ないし7に係る特許を維持する。
特許第7049851号の請求項3に係る特許についての特許異議申立てを却下する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7049851号の請求項1ないし9に係る特許についての出願は、平成30年2月14日に出願され、令和4年3月30日にその特許権の設定登録がされ、令和4年4月7日に特許掲載公報が発行された。
その後、その特許に対し、令和4年9月8日に特許異議申立人佐藤雅彦(以下「特許異議申立人」という。)より請求項1ないし7に係る特許に対して特許異議の申立てがされ、令和5年2月28日付け(発送日:同年3月3日)で取消理由通知書が通知され、令和5年5月1日に特許権者より意見書の提出及び訂正の請求がされ、令和5年6月22日付け(発送日:同年6月26日)で手続補正指令書(方式)が通知され、令和5年7月26日に特許権者より手続補正書が提出された。
なお、令和5年8月17日付け(発送日:同年8月22日)で特許異議申立人に対して訂正請求があった旨の通知書(特許法第120条の5第5項)を通知し期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが、特許異議申立人から意見書の提出はなかった。
第2 訂正の適否
1 訂正の内容
令和5年5月1日付けで特許権者より提出され、令和5年7月26日付けで特許権者より提出された手続補正書により補正がされた訂正請求書(以下「本件訂正請求書」という。)による訂正(以下「本件訂正」という。)の内容は以下のとおりである。なお、下線は訂正箇所を示すために当審が付したものである。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に、
「 船体と、
前記船体の船尾に配置される左右一対のプロペラと、
前記左右一対のプロペラが後部に装着される左右一対のスケグと、
前記船体の船尾で前記左右一対のプロペラの回転中心軸と同軸上に回転中心を有して前記左右一対のプロペラの後方に配置される左右一対の舵と、
を備え、
前記船体の長手方向における前記左右一対の舵の回転中心の位置で、前記船体の幅方向における前記左右一対の舵が装着される前記船体の船底に、下方に突出する左右一対の凸部を有し、
前記左右一対の凸部は、前記船体の長手方向において、少なくとも前記左右一対の舵が配置される領域であって、下端が前記左右一対のプロペラよりも上方側に位置するように設けられる、
ことを特徴とする船舶。」
と記載されているのを、
「 船体と、
前記船体の船尾に配置される左右一対のプロペラと、
前記左右一対のプロペラが後部に装着される左右一対のスケグと、
前記船体の船尾で前記左右一対のプロペラの回転中心に交差する船高方向に沿う回転中心を有して前記左右一対のプロペラの後方に配置される左右一対の舵と、
を備え、
前記船体の長手方向における前記左右一対の舵の回転中心の位置で、前記船体の幅方向における前記左右一対の舵が装着される前記船体の船底に、下方に突出する左右一対の凸部を有し、
前記左右一対の凸部は、前記船体の長手方向において、少なくとも前記左右一対の舵が配置される領域であって、下端が前記左右一対のプロペラよりも上方側に位置するように設けられ、
前記船体の左舷及び右舷と前記左右一対の凸部とは、段差がなく連続する滑らかな曲線部により接続される、
ことを特徴とする船舶。」
に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2及び4ないし9も同様に訂正する。)。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項3を削除する。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項4に、
「 前記船底は、前記左右一対の凸部の間に船体の幅方向に沿って水平な水平部が設けられることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の船舶。」
と記載されているのを、
「 前記船底は、前記左右一対の凸部の間に船体の幅方向に沿って水平な水平部が設けられることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の船舶。」
に訂正する(請求項4の記載を引用する請求項5ないし9も同様に訂正する。)。
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項5に、「 前記左右一対の凸部は、前記船体の長手方向に沿って水平または船尾に向けて上方に傾斜することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の船舶。」
と記載されているのを、
「 前記左右一対の凸部は、下線部が前記船体の長手方向に沿って水平または船尾に向けて上方に傾斜することを特徴とする請求項1、2,4のいずれか一項に記載の船舶。」
に訂正する(請求項5の記載を引用する請求項6ないし9も同様に訂正する。)。
(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項6に、
「 前記左右一対の凸部は、満載吃水線より下方に配置されることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の船舶。」
と記載されているのを、
「 前記左右一対の凸部は、満載吃水線より下方に配置されることを特徴とする請求項1,2,4,5のいずれか一項に記載の船舶。」
に訂正する(請求項6の記載を引用する請求項7ないし9も同様に訂正する。)。
(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項7に、
「 前記左右一対の凸部下端と前記船底の幅方向における中心位置の前記船体の高さ方向の距離は、船底から中心位置高さの2%~30%の範囲に設定されることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の船舶。」
と記載されているのを、
「 前記左右一対の凸部下端と前記船底の幅方向における中心位置の前記船体の高さ方向の距離は、船底から中心位置高さの2%~30%の範囲に設定されることを特徴とする請求項1,2,4~6のいずれか一項に記載の船舶。」
に訂正する(請求項7の記載を引用する請求項8及び9も同様に訂正する。)。
(7)訂正事項7
特許請求の範囲の請求項8に、
「 前記左右一対の凸部下端は、前記船体の船首側に向けて広がることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の船舶。」
と記載されているのを、
「 前記左右一対の凸部下端は、前記船体の船首側に向けて広がることを特徴とする請求項1,2,4~7のいずれか一項に記載の船舶。」
に訂正する(請求項8の記載を引用する請求項9も同様に訂正する。)。
2 一群の請求項について
訂正前の請求項1ないし9について、請求項2ないし9は、それぞれ請求項1を直接的又は間接的に引用しており、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。したがって、訂正前の請求項1ないし9に対応する訂正後の請求項1ないし9は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。
3 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
(1)訂正事項1について
ア 訂正の目的について
訂正事項1の「前記船体の船尾で前記左右一対のプロペラの回転中心に交差する船高方向に沿う回転中心を有して前記左右一対のプロペラの後方に配置される左右一対の舵」という事項は、訂正前の請求項1の「前記船体の船尾で前記左右一対のプロペラの回転中心軸と同軸上に回転中心を有して前記左右一対のプロペラの後方に配置される左右一対の舵」との記載について、令和5年2月28日付け取消理由通知書で通知した取消理由3(明確性)を解消するために、願書に添付された明細書(以下「本件明細書」という。また、願書に添付された図面を「本件図面」という。)の段落【0034】の「また、船体10は、船尾12に船体10の進行方向を制御する2個の舵20A,20Bが設けられており、各舵20A,20Bは、船高方向Zに沿う回転中心線RCL1,RCL2を中心に回動することができる。」との記載及び本件図面の図3及び4の図示内容に基づいて、「同軸」の意味を明確にするものである。
また、訂正事項1の「前記左右一対の凸部は、前記船体の長手方向において、少なくとも前記左右一対の舵が配置される領域であって、下端が前記左右一対のプロペラよりも上方側に位置するように設けられ、前記船体の左舷及び右舷と前記左右一対の凸部とは、段差がなく連続する滑らかな曲線部により接続される、」という事項は、訂正前の請求項1に記載された「前記左右一対の凸部は、前記船体の長手方向において、少なくとも前記左右一対の舵が配置される領域であって、下端が前記左右一対のプロペラよりも上方側に位置するように設けられる、」との事項を、訂正前の請求項3に記載された「前記船体の左舷及び右舷と前記左右一対の凸部とは、段差がなく連続する滑らかな曲線部により接続される」との事項(なお、同様の記載は本件明細書の段落【0041】及び【0050】にもある。)に基づいて限定するものである。
したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明及び特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項1は、上記アにおいて上述したとおり、本件明細書の段落【0034】記載、本件図面の図3及び4の図示内容、及び訂正前の請求項3の記載に基づくものである。
したがって、訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。
ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項1は、上記アにおいて上述したとおりであり、訂正前の請求項1の発明特定事項を概念的により下位の内容に限定するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。
エ 特許出願の際独立して特許を受けることができるものであること
訂正前の請求項1ないし7については、特許異議申立ての対象であるため、訂正前の請求項1ないし7に係る訂正事項1に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は課されない。
一方、訂正前の請求項8及び9については、特許異議申立ての対象ではない。
訂正前の請求項8及び9に係る訂正事項1は、上記アにおいて上述したとおり、訂正前の請求項8及び9に係る発明を下位概念にするものであるから、特許要件の適否について見直すべき新たな事情は存在せず、訂正事項1に係る訂正により特許法第36条第4項第1号又は第6項(第4号を除く)に規定する要件を満たさなくなるものでもないから、独立特許要件を満たす。
したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項に適合するものである。
(2)訂正事項2について
ア 訂正の目的について
訂正事項2は、特許請求の範囲の請求項3を削除するものである。
したがって、訂正事項2は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項2は、特許請求の範囲の請求項3を削除するものであるから、特許明細書等に記載した事項の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入しないものである。
したがって、訂正事項2は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。
ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項2は、特許請求の範囲の請求項3を削除するものである。
したがって、訂正事項2は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。
(3)訂正事項3について
ア 訂正の目的について
訂正事項3は、訂正事項2により請求項3が削除されたことに伴い、請求項4が従属する請求項を「請求項1から請求項3のいずれか一項」から「請求項1または請求項2」に減縮するものである。
したがって、訂正事項3は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項3は、請求項4が従属する請求項を「請求項1から請求項3のいずれか一項」から「請求項1または請求項2」に減縮するものであるから、特許明細書等に記載した事項の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入しないものである。
したがって、訂正事項3は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。
ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項3は、請求項4が従属する請求項を「請求項1から請求項3のいずれか一項」から「請求項1または請求項2」に減縮するものである。
したがって、訂正事項3は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。
エ 特許出願の際独立して特許を受けることができるものであること
訂正前の請求項1ないし7については、特許異議申立ての対象であるため、訂正前の請求項1ないし7に係る訂正事項3に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は課されない。
一方、訂正前の請求項8及び9については、特許異議申立ての対象ではない。
訂正前の請求項8及び9に係る訂正事項3は、上記アにおいて上述したとおり、特許請求の範囲を減縮するものであるから、特許要件の適否について見直すべき新たな事情は存在せず、訂正事項3に係る訂正により特許法第36条第4項第1号又は第6項(第4号を除く)に規定する要件を満たさなくなるものでもないから、独立特許要件を満たす。
したがって、訂正事項3は、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項に適合するものである。
(4)訂正事項4について
ア 訂正の目的について
訂正事項4の「前記左右一対の凸部は、下線部が前記船体の長手方向に沿って水平または船尾に向けて上方に傾斜すること」という事項は、訂正前の請求項5の「前記左右一対の凸部は、前記船体の長手方向に沿って水平または船尾に向けて上方に傾斜すること」との記載において、令和5年2月28日付け取消理由通知書で通知した取消理由3(明確性)を解消するために、本件明細書の段落【0040】の「ここで、左右一対の凸部31A,31Bは、下端部が船長方向Xに沿って水平に設けられているが、この構成に限定されるものではない。例えば、左右一対の凸部31A,31Bは、下端部が船長方向Xに沿って船尾12側に向けて上方に傾斜するように構成してもよい。」との記載に基づいて、水平または船尾に向けて上方に傾斜するのが凸部のどの部分であるのかを明確にするものである。
また、訂正事項4の「請求項1、2,4のいずれか一項」は、訂正事項2により請求項3が削除されたことに伴い、請求項5が従属する請求項を「請求項1から請求項4のいずれか一項」から減縮するものである。
したがって、訂正事項4は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明及び特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項4は、上記アにおいて上述したとおり、本件明細書の段落【0040】の記載に基づくものであり、請求項5の引用請求項数を削減するものであるから、特許明細書等に記載した事項の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入しないものである。
したがって、訂正事項4は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。
ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項4は、上記アにおいて上述したとおり、訂正前の請求項5の「凸部」について、水平または船尾に向けて上方に傾斜するのが凸部のどの部分であるのかを明確にすることで下位概念にするとともに、請求項5が従属する請求項を「請求項1から請求項4のいずれか一項」から「請求項1、2,4のいずれか一項」に減縮するものである。
したがって、訂正事項4は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。
エ 特許出願の際独立して特許を受けることができるものであること
訂正前の請求項1ないし7については、特許異議申立ての対象であるため、訂正前の請求項1ないし7に係る訂正事項4に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は課されない。
一方、訂正前の請求項8及び9については、特許異議申立ての対象ではない。
訂正前の請求項8及び9に係る訂正事項4は、上記アにおいて上述したとおり、特許請求の範囲を減縮するものであるから、特許要件の適否について見直すべき新たな事情は存在せず、訂正事項4に係る訂正により特許法第36条第4項第1号又は第6項(第4号を除く)に規定する要件を満たさなくなるものでもないから、独立特許要件を満たす。
したがって、訂正事項4は、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項に適合するものである。
(5)訂正事項5について
ア 訂正の目的について
訂正事項5は、訂正事項2により請求項3が削除されたことに伴い、請求項6が従属する請求項を「請求項1から請求項5のいずれか一項」から「請求項1,2,4,5のいずれか一項」に減縮するものである。
したがって、訂正事項5は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項5は、請求項6が従属する請求項を「請求項1から請求項5のいずれか一項」から「請求項1,2,4,5のいずれか一項」に減縮するものであるから、特許明細書等に記載した事項の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入しないものである。
したがって、訂正事項5は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。
ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項5は、請求項6が従属する請求項を「請求項1から請求項5のいずれか一項」から「請求項1,2,4,5のいずれか一項」に減縮するものである。
したがって、訂正事項5は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。
エ 特許出願の際独立して特許を受けることができるものであること
訂正前の請求項1ないし7については、特許異議申立ての対象であるため、訂正前の請求項1ないし7に係る訂正事項5に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は課されない。
一方、訂正前の請求項8及び9については、特許異議申立ての対象ではない。
訂正前の請求項8及び9に係る訂正事項5は、上記アにおいて上述したとおり、特許請求の範囲を減縮するものであるから、特許要件の適否について見直すべき新たな事情は存在せず、訂正事項5に係る訂正により特許法第36条第4項第1号又は第6項(第4号を除く)に規定する要件を満たさなくなるものでもないから、独立特許要件を満たす。
したがって、訂正事項5は、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項に適合するものである。
(6)訂正事項6について
ア 訂正の目的について
訂正事項6は、訂正事項2により請求項3が削除されたことに伴い、請求項7が従属する請求項を「請求項1から請求項6のいずれか一項」から「請求項1,2,4~6のいずれか一項」に減縮するものである。
したがって、訂正事項6は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項6は、請求項7が従属する請求項を「請求項1から請求項6のいずれか一項」から「請求項1,2,4~6のいずれか一項」に減縮するものであるから、特許明細書等に記載した事項の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入しないものである。
したがって、訂正事項6は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。
ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項6は、請求項7が従属する請求項を「請求項1から請求項6のいずれか一項」から「請求項1,2,4~6のいずれか一項」に減縮するものである。
したがって、訂正事項6は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。
エ 特許出願の際独立して特許を受けることができるものであること
訂正前の請求項1ないし7については、特許異議申立ての対象であるため、訂正前の請求項1ないし7に係る訂正事項6に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は課されない。
一方、訂正前の請求項8及び9については、特許異議申立ての対象ではない。
訂正前の請求項8及び9に係る訂正事項6は、上記アにおいて上述したとおり、特許請求の範囲を減縮するものであるから、特許要件の適否について見直すべき新たな事情は存在せず、訂正事項6に係る訂正により特許法第36条第4項第1号又は第6項(第4号を除く)に規定する要件を満たさなくなるものでもないから、独立特許要件を満たす。
したがって、訂正事項6は、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項に適合するものである。
(7)訂正事項7について
ア 訂正の目的について
訂正事項7は、訂正事項2により請求項3が削除されたことに伴い、請求項8が従属する請求項を「請求項1から請求項7のいずれか一項」から「請求項1,2,4~7のいずれか一項」に減縮するものである。
したがって、訂正事項7は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項7は、請求項8が従属する請求項を「請求項1から請求項7のいずれか一項」から「請求項1,2,4~7のいずれか一項」に減縮するものであるから、特許明細書等に記載した事項の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入しないものである。
したがって、訂正事項7は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。
ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項7は、請求項8が従属する請求項を「請求項1から請求項7のいずれか一項」から「請求項1,2,4~7のいずれか一項」に減縮するものである。
したがって、訂正事項7は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。
エ 特許出願の際独立して特許を受けることができるものであること
訂正前の請求項8及び9に係る訂正事項7は、上記アにおいて上述したとおり、特許請求の範囲を減縮するものであるから、特許要件の適否について見直すべき新たな事情は存在せず、訂正事項7に係る訂正により特許法第36条第4項第1号又は第6項(第4号を除く)に規定する要件を満たさなくなるものでもないから、独立特許要件を満たす。
したがって、訂正事項7は、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項に適合するものである。
4 小括
本件訂正による訂正事項1ないし7は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に規定する事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項の規定に適合すると共に、同条第9項で準用する同法第126条第5項ないし第7項の規定に適合する。
よって、訂正後の請求項〔1ないし9〕について訂正を認める。
第3 本件訂正請求による訂正後の本件発明
上記のとおり、請求項1ないし9についての訂正は認められるから、本件訂正請求により訂正された請求項1ないし9に係る発明(以下、請求項1に係る発明を「本件発明1」、請求項2ないし9に係る発明を、各請求項の番号に対応させて、それぞれ「本件発明2」ないし「本件発明9」といい、請求項1ないし9に係る発明をまとめて「本件発明」ということがある。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1ないし9に記載された事項により特定される次のとおりのものである(下線は、訂正箇所を示す。)。
「【請求項1】
船体と、
前記船体の船尾に配置される左右一対のプロペラと、
前記左右一対のプロペラが後部に装着される左右一対のスケグと、
前記船体の船尾で前記左右一対のプロペラの回転中心に交差する船高方向に沿う回転中心を有して前記左右一対のプロペラの後方に配置される左右一対の舵と、
を備え、
前記船体の長手方向における前記左右一対の舵の回転中心の位置で、前記船体の幅方向における前記左右一対の舵が装着される前記船体の船底に、下方に突出する左右一対の凸部を有し、
前記左右一対の凸部は、前記船体の長手方向において、少なくとも前記左右一対の舵が配置される領域であって、下端が前記左右一対のプロペラよりも上方側に位置するように設けられ、
前記船体の左舷及び右舷と前記左右一対の凸部とは、段差がなく連続する滑らかな曲線部により接続される、
ことを特徴とする船舶。
【請求項2】
前記左右一対の凸部は、前記船体の長手方向における前記左右一対の舵の回転中心の位置で、前記船体の幅方向において、最も低位置に配置されることを特徴とする請求項1に記載の船舶。
【請求項3】(削除)
【請求項4】
前記船底は、前記左右一対の凸部の間に船体の幅方向に沿って水平な水平部が設けられることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の船舶。
【請求項5】
前記左右一対の凸部は、下端部が前記船体の長手方向に沿って水平または船尾に向けて上方に傾斜することを特徴とする請求項1、2,4のいずれか一項に記載の船舶。
【請求項6】
前記左右一対の凸部は、満載吃水線より下方に配置されることを特徴とする請求項1,2,4,5のいずれか一項に記載の船舶。
【請求項7】
前記左右一対の凸部下端と前記船底の幅方向における中心位置の前記船体の高さ方向の距離は、船底から中心位置高さの2%~30%の範囲に設定されることを特徴とする請求項1,2,4~6のいずれか一項に記載の船舶。
【請求項8】
前記左右一対の凸部下端は、前記船体の船首側に向けて広がることを特徴とする請求項1,2,4~7のいずれか一項に記載の船舶。
【請求項9】
前記左右一対の凸部下端における船首側広がり角度は、15度以下に設定されることを特徴とする請求項8に記載の船舶。」
第4 取消理由通知書に記載した取消理由について
1 取消理由の概要
当審が令和5年2月28日付けで特許権者に通知した取消理由の概要は、以下のとおりである。
1.(新規性)本件特許の請求項1、2及び4-7に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項1、2及び4-7に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。
2.(進歩性)本件特許の請求項1、2及び4-7に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1、2及び4-7に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
3.(明確性)本件特許は、特許請求の範囲の記載が不備のため、請求項1ないし7に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
記
<取消理由1 新規性>
・請求項 1
・引用文献 甲1又は甲2又は甲3又は甲4
・請求項 2
・引用文献 甲1又は甲2
・請求項 4
・引用文献 甲1又は甲2
・請求項 5
・引用文献 甲1又は甲2又は甲3又は甲4
・請求項 6
・引用文献 甲2又は甲3又は甲4
・請求項 7
・引用文献 甲3又は甲4
<取消理由2 進歩性>
・請求項 1
・引用文献 甲1又は甲2又は甲3又は甲4
・請求項 2
・引用文献 甲1又は甲2
・請求項 4
・引用文献 甲1又は甲2
・請求項 5
・引用文献 甲1又は甲2又は甲3又は甲4
・請求項 6
・引用文献 甲2又は甲3又は甲4
・請求項 7
・引用文献 甲3又は甲4
<取消理由3 明確性>
・請求項 1-7
引用文献1ないし引用文献7は、それぞれ特許異議申立人の提出した甲第1号証ないし甲第7号証(以下「甲1」ないし「甲7」という。)であり、以下のとおりである。
<引用文献等一覧>
甲1:加戸、「SES開発の歴史と検証 第6回 2軸型SESの開発その2」、月刊共有船、No.501、平成26年11月5日発行、海交新社、p53-60
甲2:ヤンマー(株)特機エンジン事業部、「2軸型SES「新進丸」の実船性能について」、月刊共有船、No.482、平成24年11月25日発行、海交新社、p25-28
甲3:加戸、「SES開発の歴史と検証 第5回 2軸型SESの開発その1」、月刊共有船、No.500、平成26年10月5日発行、海交新社、p43-50
甲4:鉄道・運輸機構 共有船舶建造支援部、「「2軸型SESの船型調査」報告書概要」、平成24年3月(2017年7月5日にインターネットで公開)、鉄道・運輸機構、p1-24
※甲第4号証が現在開示されているウェブサイトのURLは以下のとおり
https://warp.da.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/10375154/www.jrtt.go.jp/02Business/Vessel/pdf/vesselProvide2-0-01.pdf
甲4-1:国立国会図書館のWEBアーカイブ(WARP)、2017年7月5日、国立国会図書館
※甲第4号証-1が現在開示されているウェブサイトのURLは以下のとおり
https://warp.da.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/10375154/www.jrtt.go.jp/02Business/Vessel/vessel-provide.html
2 当審の判断
(1)取消理由3(明確性)について
ア 訂正後の請求項1には「前記船体の船尾で前記左右一対のプロペラの回転中心に交差する船高方向に沿う回転中心を有して前記左右一対のプロペラの後方に配置される左右一対の舵」と記載されており、前記舵の回転中心がプロペラの回転中心に交差する船高方向に沿う回転中心であることが明確になり、前記舵が船舶の針路を変えるという舵の機能を果たすことができることが明確になった。
したがって、本件発明1は明確である。
また、請求項1を引用する請求項2及び4ないし7に係る発明も明確である。
イ 訂正後の請求項5には「前記左右一対の凸部は、下端部が前記船体の長手方向に沿って水平または船尾に向けて上方に傾斜すること」と記載されており、凸部の部分のうち下端部が水平または船尾に向けて上方に傾斜することが明確となった。
したがって、本件発明5は明確である。
また、請求項5を引用する請求項6及び7に係る発明も明確である。
ウ 小括
したがって、取消理由3によっては、本件発明1、2及び4ないし7に係る特許を取り消すことはできない。
(2)取消理由1(新規性)について
ア 各甲号証の記載等
以下、頁番号は、各甲号証の下部に付された番号を採用する。
(ア)甲1
a 甲1の記載事項
(a)第53頁左欄第1行-第13行
「はじめに
2005年より造船、舶用機器会社等の関係者の協力を得て、ラインシャフト2重反転プロペラ(CRP)方式、タンデムハイブリッド方式、ツインポッド方式の3つの推進方式によるSESを開発し、普及促進に努めてきた。前回報告のように、2010年度より4番目の方式として2軸型SESの開発を、JRTTが中心となってその基本計画からすすめた。 開発プロジェクトの進展に伴い、新たに研究会を設置し、外部の会社、機関の協力を得て第1船建造に向けての加速を進めた。その当時の状況について検証する。」
(b)第54頁右欄第2行-第6行
「2.新進丸の建造
(1)建造
2軸型SESの第1船は島根県の(有)福島造船鉄工所で建造され、「新進丸」と命名された。」
(c)第54頁右欄第17行-第22行
「 ツインスケグ部は性能上最も重要な箇所であり、複雑な曲面形状と精度管理を要求された。図1.の写真のように造船所にとっても初めての作業であり、試行錯誤を重ねながら、図2.の写真のように、見事に完成させることができた。」
(d)第78頁下部
「
[図:0001407798000001.jpg]
」
b 図示事項
(a)第55頁
「図2.完成した船尾部」
[図:0001407798000002.jpg]
c 認定事項
(a)上記a(a)の「2005年より造船、舶用機器会社等の関係者の協力を得て、ラインシャフト2重反転プロペラ(CRP)方式、タンデムハイブリッド方式、ツインポッド方式の3つの推進方式によるSESを開発し、普及促進に努めてきた。前回報告のように、2010年度より4番目の方式として2軸型SESの開発を、JRTTが中心となってその基本計画からすすめた。 開発プロジェクトの進展に伴い、新たに研究会を設置し、外部の会社、機関の協力を得て第1船建造に向けての加速を進めた。その当時の状況について検証する。」、上記a(b)の「2.新進丸の建造(1)建造 2軸型SESの第1船は島根県の(有)福島造船鉄工所で建造され、「新進丸」と命名された。」及び上記a(c)の「ツインスケグ部は性能上最も重要な箇所であり、複雑な曲面形状と精度管理を要求された。図1.の写真のように造船所にとっても初めての作業であり、試行錯誤を重ねながら、図2.の写真のように、見事に完成させることができた。」から、甲1には、2軸型SESの船舶が記載されていると認められる。
(b)上記a(c)の「ツインスケグ部は性能上最も重要な箇所であり、複雑な曲面形状と精度管理を要求された。図1.の写真のように造船所にとっても初めての作業であり、試行錯誤を重ねながら、図2.の写真のように、見事に完成させることができた。」から、ツインスケグ部、即ち一対のスケグが設けられていることが認められる。
(c)上記b(a)の「図2.完成した船尾部」から、図2はその船尾部を撮影した写真であると認められる。
上記b(a)の「図2.完成した船尾部」について、特許異議申立人が部材の位置などを特定し易くするために矢印及び用語等を付した参考図(特許異議申立書の第18頁-第19頁)を以下に示す。
〔参考図 甲1-A〕
[図:0001407798000003.jpg]
〔参考図 甲1-B〕
[図:0001407798000004.jpg]
〔参考図 甲1-C〕
[図:0001407798000005.jpg]
(c-1)プロペラについて
上記b(a)の「図2.完成した船尾部」から、船体の船尾に左右一対のプロペラが配置されていることが看取できる(上記〔参考図 甲1-A〕を参照。)。
(c-2)スケグについて
上記c(b)のとおり、船体には一対のスケグが設けられており、技術常識を踏まえれば、一対のスケグは、「左右一対のスケグ」として左右一対のプロペラの前部に装着されるものと認められる。
(c-3)舵について
技術常識を踏まえれば、2軸型の船舶はその船尾に舵が設けられていると認められる。
また、上記b(a)の「図2.完成した船尾部」から、左右一対のプロペラの後部に左右一対の舵が配置されていることが看取できる(上記〔参考図 甲1-A〕を参照)。
更に、上記b(a)の「図2.完成した船尾部」から、左右一対のプロペラの回転中心に交差する船高方向に沿う回転中心を有して左右一対のプロペラの後方に左右一対の舵が配置されていることも看取できる(上記〔参考図 甲1-B〕を参照。)。
(c-4)凸部について
上記b(a)の「図2.完成した船尾部」から、船体の長手方向における左右一対の舵の回転中心の位置で、船体の幅方向における左右一対の舵が装着される船体の船底に、下方に突出する左右一対の凸部を有すること及び左右一対の凸部は、船体の長手方向において、少なくとも左右一対の舵が配置される領域であって、下端が左右一対のプロペラよりも上方側に位置するように設けられることが看取できる(上記〔参考図 甲1-C〕を参照。)。
d 甲1発明
上記aないしcを踏まえると、甲1には、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
〔甲1発明〕
「船体と、
前記船体の船尾に配置される左右一対のプロペラと、
前記左右一対のプロペラが後部に装着される左右一対のスケグと、
前記船体の船尾で 前記左右一対のプロペラの回転中心に交差する船高方向に沿う回転中心を有して前記左右一対のプロペラの後方に配置される左右一対の舵と、
を備え、
前記船体の長手方向における前記左右一対の舵の回転中心の位置で、前記船体の幅方向における前記左右一対の舵が装着される前記船体の船底に、下方に突出する左右一対の凸部を有し、
前記左右一対の凸部は、前記船体の長手方向において、少なくとも前記左右一対の舵が配置される領域であって、下端が前記左右一対のプロペラよりも上方側に位置するように設けられる、
船舶。」
(イ)甲2
a 記載事項
(a)第25頁上部
「2軸型SES「新進丸」の実船性能について」
(b)第25頁右欄第3行-第11行
「1.2軸型SESコールタール船一番船
「新進丸」の主要項目
船種:液体化学薬品ばら積船兼油タンカー
(IMO TYPEII)
船行区域:沿海区域(非国際)
総トン数:749トン
Lpp×B×D:69.95m×ll.5m×5.2m
積載量:約1,500m3
常用航海速力:12ノット(85%出力)
建造造船所:(有)福島造船鉄工所
竣工:平成24年6月」
(c)第26頁第1行-第3行
「電気拙進システムは、従来システムに比較すると電気への変換を行う分、伝達効率が低下する。そのため推進抵抗による燃料消黄率の改善を図るべく、船型はツインスケグとバトックフロー船型を組み合わせたものにした。」
(d)第74頁下部
[図:0001407798000006.jpg]
b 図示事項
(a)第25頁
「2.一般配置」
[図:0001407798000007.jpg]
(b)第26頁
「3.推進プラントの概要」
[図:0001407798000008.jpg]
c 認定事項
(a)上記a(a)の「2軸型SES「新進丸」の実船性能について」及び上記a(b)の「1.2軸型SESコールタール船一番船「新進丸」の主要項目」から、甲2には、2軸型SESの船舶が記載されていると認められる。
(b)上記a(c)の「船型はツインスケグとバトックフロー船型を組み合わせたものにした。」及び上記b(a)一番上の側面図の「ツインスケグ船尾」との記載から、ツインスケグ部、即ち一対のスケグが設けられていることが認められる。
(c)上記b(b)の「3.推進プラントの概要」には、通常船尾部に配置されるプロペラが示されていることから、その船尾部を撮影した写真であると認められる。
上記b(a)の「2.一般配置」及び上記b(b)の「3.推進プラントの概要」について、特許異議申立人が部材の位置などを特定し易くするために矢印及び用語等を付した参考図(特許異議申立書の第23頁-第28頁)を以下に示す。
〔参考図 甲2-A〕
[図:0001407798000009.jpg]
〔参考図 甲2-B〕
[図:0001407798000010.jpg]
〔参考図 甲2-C〕
[図:0001407798000011.jpg]
〔参考図 甲2-D〕
[図:0001407798000012.jpg]
(c-1)プロペラについて
上記b(b)の「3.推進プラントの概要」から、船体の船尾に左右一対のプロペラが配置されていることが看取できる(上記〔参考図 2-A〕を参照。)。
(c-2)スケグについて
上記c(b)のとおり、船体には一対のスケグが設けられており、技術常識を踏まえれば、一対のスケグは、「左右一対のスケグ」として左右一対のプロペラの前部に装着されるものと認められる。
(c-3)舵について
技術常識を踏まえれば、2軸型の船舶はその船尾に舵が設けられていると認められる。
また、上記b(b)の「3.推進プラントの概要」から、左右一対のプロペラの後部に左右一対の舵が配置されていることが看取できる(上記〔参考図 甲2-A〕を参照。)。
更に、上記b(b)の「3.推進プラントの概要」から、左右一対のプロペラの回転中心に交差する船高方向に沿う回転中心を有して左右一対のプロペラの後方に左右一対の舵が配置されていることも看取できる(上記〔参考図 甲2-B〕を参照。)。
(c-4)凸部について
上記b(a)の「2.一般配置」及び上記b(b)の「3.推進プラントの概要」から、船体の長手方向における左右一対の舵の回転中心の位置で、船体の幅方向における左右一対の舵が装着される船体の船底に、下方に突出する左右一対の凸部を有すること及び左右一対の凸部は、船体の長手方向において、少なくとも左右一対の舵が配置される領域であって、下端が左右一対のプロペラよりも上方側に位置するように設けられることが看取できる(上記〔参考図 甲2-C〕及び〔参考図 甲2-D〕を参照。)。
d 甲2発明
上記aないしcを踏まえると、甲2には、次の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されていると認められる。
〔甲2発明〕
「船体と、
前記船体の船尾に配置される左右一対のプロペラと、
前記左右一対のプロペラが後部に装着される左右一対のスケグと、
前記船体の船尾で 前記左右一対のプロペラの回転中心に交差する船高方向に沿う回転中心を有して前記左右一対のプロペラの後方に配置される左右一対の舵と、
を備え、
前記船体の長手方向における前記左右一対の舵の回転中心の位置で、前記船体の幅方向における前記左右一対の舵が装着される前記船体の船底に、下方に突出する左右一対の凸部を有し、
前記左右一対の凸部は、前記船体の長手方向において、少なくとも前記左右一対の舵が配置される領域であって、下端が前記左右一対のプロペラよりも上方側に位置するように設けられる、
船舶。」
(ウ)甲3
a 記載事項
(a)第43頁上部
「第5回 2軸型SESの開発その1」
(b)第44頁左欄第13行-第17行
「これに対し2重反転プロペラの代わりに 2軸のプロペラとし、インバータによる回転数制御の代わりに可変ピッチプロペラ(CPP)の採用により、汎用機器のみを使用して開発したのが2軸型SESである。」
(c)第45頁第10行-第25行
「3.2軸型SESの船型開発
(1)ツインスケグ2軸型の採用
従来から大出力を必要とする中高速船では2軸船型が多く採用されてきた。この2軸船には通常シャフトブラケット方式が使用されてきた。しかしプロペラ軸とそれを支える大きなブラケットが船外に露出しているため、船尾部の流場に付加物があることで抵抗増加と推進効率を悪化させてしまう問題があり、またベアリング部分が水中部分に露出しているため、メンテナンスや 浮遊物の衝突なども心配された。
今回採用したツインスケグ型は、プロペラ軸を囲い込む様に船尾形状を構成し、その形状を最適化することにより抵抗低減と 推進効率向上を図ったものである。」
(d)第47頁左欄第4行-第8行
「2軸型SESの開発船として、表1.に示す主要目の白油タンカー、ケミカル船、セメント船の3船種をマーケット状況から実現性が高いと判断し、その基本計画をすすめた。」
(e)第47頁
「表1.SES 3船種の主要目表」
[図:0001407798000013.jpg]
(f)第48頁第30-34行
「(2)2軸型SESの機関室配置の検討
図11.に機関室下段の平面図と機関室後部の断面図を示す。ツインスケグ船型は2軸のプロペラ軸を囲むツインスケグ部とその間のトンネル部から構成される。」
(g)第70頁下部
[図:0001407798000014.jpg]
b 図示事項
(a)第43頁
「図1.2軸型SESの完成予想図」
[図:0001407798000015.jpg]
(b)第47頁
「図10.749GT型白油タンカーの配置図」
[図:0001407798000016.jpg]
(c)第48頁
「図11.機関室配置図の検討」
[図:0001407798000017.jpg]
c 認定事項
(a)上記a(a)の「第5回 2軸型SESの開発その1」から、甲3には、2軸型SESの船舶が記載されていると認められる。
(b)上記a(c)の「(1)ツインスケグ2軸型の採用 従来から大出力を必要とする中高速船では2軸船型が多く採用されてきた。この2軸船には通常シャフトブラケット方式が使用されてきた。しかしプロペラ軸とそれを支える大きなブラケットが船外に露出しているため、船尾部の流場に付加物があることで抵抗増加と推進効率を悪化させてしまう問題があり、またベアリング部分が水中部分に露出しているため、メンテナンスや 浮遊物の衝突なども心配された。今回採用したツインスケグ型は、プロペラ軸を囲い込む様に船尾形状を構成し、その形状を最適化することにより抵抗低減と 推進効率向上を図ったものである。」との記載から、ツインスケグ部、即ち一対のスケグが設けられていることが認められる。
(c)上記b(b)の「図10.749GT型白油タンカーの配置図」について、特許異議申立人が部材の位置などを特定し易くするために矢印及び用語等を付した参考図(特許異議申立書の第29頁-第30頁)を以下に示す。
〔参考図 甲3-A〕
[図:0001407798000018.jpg]
〔参考図 甲3-B〕
[図:0001407798000019.jpg]
(c-1)プロペラについて
上記b(b)の「図10 749GT型白油タンカーの配置図」には、船舶の船尾にプロペラが設けられていることが看取され(上記〔参考図 甲3-A〕を参照。)、また、甲3の船舶は2軸型であるから、技術常識を踏まえれば、一対のプロペラを有すると認められる。
(c-2)スケグについて
上記(b)のとおり、船体には一対のスケグが設けられており、上記a(f)並びにb(a)及び(c)から、一対のスケグは、「左右一対のスケグ」として左右一対のプロペラの前部に装着されるものと認められる。
(c-3)舵について
技術常識を踏まえれば、2軸型の船舶はその船尾に舵が設けられていると認められる。
また、上記b(b)の「図10 749GT型白油タンカーの配置図」から、左右一対のプロペラの後部に左右一対の舵が配置されていることが看取できる(上記〔参考図 甲3-A〕を参照。)。
更に、上記b(b)の「図10 749GT型白油タンカーの配置図」から、左右一対のプロペラの回転中心に交差する船高方向に沿う回転中心を有して左右一対のプロペラの後方に左右一対の舵が配置されていることも看取できる(上記〔参考図 甲3-A〕を参照。)。
(c-4)凸部について
上記b(b)の「図10 749GT型白油タンカーの配置図」から、側面図において、船体の長手方向における舵の回転中心の位置で、船体の舵が装着される船体の船底に、下方に突出する凸部を有すること、及び、凸部は、船体の長手方向において、少なくとも舵が配置される領域であって、下端がプロペラよりも上方側に位置するように設けられることが看取でき、さらに平面図及び上記(c-3)から、舵は左右一対に配置されていることから、船体の長手方向における左右一対の舵の回転中心の位置で、船体の幅方向における左右一対の舵が装着される船体の船底に、下方に突出する左右一対の凸部を有すること及び左右一対の凸部は、船体の長手方向において、少なくとも左右一対の舵が配置される領域であって、下端が左右一対のプロペラよりも上方側に位置するように設けられることが看取できる(上記〔参考図 甲3-A〕を参照。)。
d 甲3発明
上記c(c)の参考図 甲3-Bも踏まえて上記aないしcを総合すると、甲3には、次の発明(以下「甲3発明」という。)が記載されていると認められる。
〔甲3発明〕
「船体と、
前記船体の船尾に配置される左右一対のプロペラと、
前記左右一対のプロペラが後部に装着される左右一対のスケグと、
前記船体の船尾で 前記左右一対のプロペラの回転中心に交差する船高方向に沿う回転中心を有して前記左右一対のプロペラの後方に配置される左右一対の舵と、
を備え、
前記船体の長手方向における前記左右一対の舵の回転中心の位置で、前記船体の幅方向における前記左右一対の舵が装着される前記船体の船底に、下方に突出する左右一対の凸部を有し、
前記左右一対の凸部は、前記船体の長手方向において、少なくとも前記左右一対の舵が配置される領域であって、下端が前記左右一対のプロペラよりも上方側に位置するように設けられる、
船舶。」
(エ)甲4
a 記載事項
(a)第1頁
「「2軸型SESの船型調査」報告書概要」
(b)第6頁
「2軸型SES(749タンカー)の主要目」
[図:0001407798000020.jpg]
(c)甲4-1のアーカイブ
[図:0001407798000021.jpg]
b 図示事項
(a)第7頁「749G/Tタンカー 基本設計 一般配置図」
[図:0001407798000022.jpg]
(b)第8頁「749G/Tタンカー 基本設計 一般配置図」
[図:0001407798000023.jpg]
c 認定事項
(a)上記a(c)には、国会図書館のWebアーカイブに2017年7月5日付のアーカイブが保存されていることから、甲4は、本件特許出願前の平成29年(2017年)7月5日に公知になったものと推認される。
(b)上記a(a)の「「2軸型SESの船型調査」報告書概要」から、甲4には、2軸型SESの船舶が記載されていると認められる。
(c)上記b(a)の「749G/Tタンカー 基本設計 一般配置図」の左上には「船尾ツインスケグ船型」と記載されており、ツインスケグ部、即ち一対のスケグが設けられていることが認められる。
(d)上記b(a)の「749G/Tタンカー 基本設計 一般配置図」及び上記b(b)の「749G/Tタンカー 基本設計 一般配置図」について、特許異議申立人が部材の位置などを特定し易くするために矢印及び用語等を付した参考図(特許異議申立書の第34頁-第35頁及び第40頁-第44頁)を以下に示す。
〔参考図 甲4-A〕
[図:0001407798000024.jpg]
〔参考図 甲4-B〕
[図:0001407798000025.jpg]
〔参考図 甲4-C〕
[図:0001407798000026.jpg]
〔参考図 甲4-D〕
[図:0001407798000027.jpg]
〔参考図 甲4-E〕
[図:0001407798000028.jpg]
(d-1)プロペラについて
上記b(a)の「749G/Tタンカー 基本設計 一般配置図」から、船体の船尾に左右一対のプロペラが配置されていることが看取できる(上記〔参考図 甲4-B〕を参照。)。
(d-2)スケグについて
上記c(c)のとおり、船体には一対のスケグが設けられており、技術常識を踏まえれば、一対のスケグは、「左右一対のスケグ」として左右一対のプロペラの前部に装着されるものと認められる。
(d-3)舵について
技術常識を踏まえれば、2軸型の船舶はその船尾に舵が設けられていると認められる。
また、上記b(b)の「749G/Tタンカー 基本設計 一般配置図」から、左右一対のプロペラの後部に左右一対の舵が配置されていることが看取できる(上記〔参考図 甲4-C〕を参照。)。
更に、上記b(b)の「749G/Tタンカー 基本設計 一般配置図」から、左右一対のプロペラの回転中心に交差する船高方向に沿う回転中心を有して左右一対のプロペラの後方に左右一対の舵が配置されていることも看取できる(上記〔参考図 甲4-C〕を参照。)。
(d-4)凸部について
上記b(a)の「749G/Tタンカー 基本設計 一般配置図」から、船体の長手方向における左右一対の舵の回転中心の位置で、船体の幅方向における左右一対の舵が装着される船体の船底に、下方に突出する左右一対の凸部を有すること及び左右一対の凸部は、船体の長手方向において、少なくとも左右一対の舵が配置される領域であって、下端が左右一対のプロペラよりも上方側に位置するように設けられることが看取できる(上記〔参考図 甲4-D〕を参照。)。
d 甲4発明
上記c(d)の参考図 甲4-A及び甲-4Eも踏まえて上記aないしcを総合すると、甲4には、次の発明(以下「甲4発明」という。)が記載されていると認められる。
〔甲4発明〕
「船体と、
前記船体の船尾に配置される左右一対のプロペラと、
前記左右一対のプロペラが後部に装着される左右一対のスケグと、
前記船体の船尾で 前記左右一対のプロペラの回転中心に交差する船高方向に沿う回転中心を有して前記左右一対のプロペラの後方に配置される左右一対の舵と、
を備え、
前記船体の長手方向における前記左右一対の舵の回転中心の位置で、前記船体の幅方向における前記左右一対の舵が装着される前記船体の船底に、下方に突出する左右一対の凸部を有し、
前記左右一対の凸部は、前記船体の長手方向において、少なくとも前記左右一対の舵が配置される領域であって、下端が前記左右一対のプロペラよりも上方側に位置するように設けられる、
船舶。」
イ 対比及び判断
(ア)甲1発明を主引用発明とした場合
a 本件発明1について
(a)対比
本件発明1と甲1発明とを対比する。
甲1発明の「船体と、前記船体の船尾に配置される左右一対のプロペラと、前記左右一対のプロペラが後部に装着される左右一対のスケグと、前記船体の船尾で 前記左右一対のプロペラの回転中心に交差する船高方向に沿う回転中心を有して前記左右一対のプロペラの後方に配置される左右一対の舵と、を備え、前記船体の長手方向における前記左右一対の舵の回転中心の位置で、前記船体の幅方向における前記左右一対の舵が装着される前記船体の船底に、下方に突出する左右一対の凸部を有し、前記左右一対の凸部は、前記船体の長手方向において、少なくとも前記左右一対の舵が配置される領域であって、下端が前記左右一対のプロペラよりも上方側に位置するように設けられる、船舶。」は本件発明1の「船体と、前記船体の船尾に配置される左右一対のプロペラと、前記左右一対のプロペラが後部に装着される左右一対のスケグと、前記船体の船尾で前記左右一対のプロペラの回転中心に交差する船高方向に沿う回転中心を有して前記左右一対のプロペラの後方に配置される左右一対の舵と、を備え、前記船体の長手方向における前記左右一対の舵の回転中心の位置で、前記船体の幅方向における前記左右一対の舵が装着される前記船体の船底に、下方に突出する左右一対の凸部を有し、前記左右一対の凸部は、前記船体の長手方向において、少なくとも前記左右一対の舵が配置される領域であって、下端が前記左右一対のプロペラよりも上方側に位置するように設けられ」「る船舶。」に相当する。
そうすると、本件発明1と甲1発明とは、
「船体と、前記船体の船尾に配置される左右一対のプロペラと、前記左右一対のプロペラが後部に装着される左右一対のスケグと、前記船体の船尾で 前記左右一対のプロペラの回転中心に交差する船高方向に沿う回転中心を有して前記左右一対のプロペラの後方に配置される左右一対の舵と、を備え、前記船体の長手方向における前記左右一対の舵の回転中心の位置で、前記船体の幅方向における前記左右一対の舵が装着される前記船体の船底に、下方に突出する左右一対の凸部を有し、前記左右一対の凸部は、前記船体の長手方向において、少なくとも前記左右一対の舵が配置される領域であって、下端が前記左右一対のプロペラよりも上方側に位置するように設けられる、船舶。」の点で一致し、以下の点で相違する。
〔相違点1〕
本件発明1は「前記船体の左舷及び右舷と前記左右一対の凸部とは、段差がなく連続する滑らかな曲線部により接続される」のに対し、甲1発明は、そのような構成を有しているのかどうか不明な点。
(b)判断
甲1には本件発明1の「前記船体の左舷及び右舷と前記左右一対の凸部とは、段差がなく連続する滑らかな曲線部により接続される」ことは記載も示唆もされていない。
したがって、相違点1は実質的な相違点である。
(c)まとめ
上記(b)のとおり、相違点1は実質的な相違点であるから、本件発明1は甲1発明ではない。
b 本件発明2及び4ないし7について
本件発明2及び4ないし7は、いずれも本件発明1の全ての発明特定事項を含んだ上で、新たに発明特定事項を追加したものであり、すなわち、相違点1に係る本件発明1の発明特定事項を含むものであるから、上記aに示した理由と同様の理由により、本件発明2及び4ないし7は甲1発明ではない。
(イ)甲2発明を主引用発明とした場合
a 本件発明1について
(a)対比
本件発明1と甲2発明とを対比する。
甲2発明の「船体と、前記船体の船尾に配置される左右一対のプロペラと、前記左右一対のプロペラが後部に装着される左右一対のスケグと、前記船体の船尾で 前記左右一対のプロペラの回転中心に交差する船高方向に沿う回転中心を有して前記左右一対のプロペラの後方に配置される左右一対の舵と、を備え、前記船体の長手方向における前記左右一対の舵の回転中心の位置で、前記船体の幅方向における前記左右一対の舵が装着される前記船体の船底に、下方に突出する左右一対の凸部を有し、前記左右一対の凸部は、前記船体の長手方向において、少なくとも前記左右一対の舵が配置される領域であって、下端が前記左右一対のプロペラよりも上方側に位置するように設けられる、船舶。」は本件発明1の「船体と、前記船体の船尾に配置される左右一対のプロペラと、前記左右一対のプロペラが後部に装着される左右一対のスケグと、前記船体の船尾で前記左右一対のプロペラの回転中心に交差する船高方向に沿う回転中心を有して前記左右一対のプロペラの後方に配置される左右一対の舵と、を備え、前記船体の長手方向における前記左右一対の舵の回転中心の位置で、前記船体の幅方向における前記左右一対の舵が装着される前記船体の船底に、下方に突出する左右一対の凸部を有し、前記左右一対の凸部は、前記船体の長手方向において、少なくとも前記左右一対の舵が配置される領域であって、下端が前記左右一対のプロペラよりも上方側に位置するように設けられ」「る船舶。」に相当する。
そうすると、本件発明1と甲2発明とは、
「船体と、前記船体の船尾に配置される左右一対のプロペラと、前記左右一対のプロペラが後部に装着される左右一対のスケグと、前記船体の船尾で 前記左右一対のプロペラの回転中心に交差する船高方向に沿う回転中心を有して前記左右一対のプロペラの後方に配置される左右一対の舵と、を備え、前記船体の長手方向における前記左右一対の舵の回転中心の位置で、前記船体の幅方向における前記左右一対の舵が装着される前記船体の船底に、下方に突出する左右一対の凸部を有し、前記左右一対の凸部は、前記船体の長手方向において、少なくとも前記左右一対の舵が配置される領域であって、下端が前記左右一対のプロペラよりも上方側に位置するように設けられる、船舶。」の点で一致し、以下の点で相違する。
〔相違点2〕
本件発明1は「前記船体の左舷及び右舷と前記左右一対の凸部とは、段差がなく連続する滑らかな曲線部により接続される」のに対し、甲2発明は、そのような構成を有しているのかどうか不明な点。
(b)判断
甲2には本件発明1の「前記船体の左舷及び右舷と前記左右一対の凸部とは、段差がなく連続する滑らかな曲線部により接続される」ことは記載も示唆もされていない。
したがって、相違点2は実質的な相違点である。
(c)まとめ
上記(b)のとおり、相違点2は実質的な相違点であるから、本件発明1は甲2発明ではない。
b 本件発明2及び4ないし7について
本件発明2及び4ないし7は、いずれも本件発明1の全ての発明特定事項を含んだ上で、新たに発明特定事項を追加したものであり、すなわち、相違点2に係る本件発明1の発明特定事項を含むものであるから、上記aに示した理由と同様の理由により、本件発明2及び4ないし7は甲2発明ではない。
(ウ)甲3発明を主引用発明とした場合
a 本件発明1について
(a)対比
本件発明1と甲3発明とを対比する。
甲3発明の「船体と、 前記船体の船尾に配置される左右一対のプロペラと、前記左右一対のプロペラが後部に装着される左右一対のスケグと、前記船体の船尾で 前記左右一対のプロペラの回転中心に交差する船高方向に沿う回転中心を有して前記左右一対のプロペラの後方に配置される左右一対の舵と、を備え、前記船体の長手方向における前記左右一対の舵の回転中心の位置で、前記船体の幅方向における前記左右一対の舵が装着される前記船体の船底に、下方に突出する左右一対の凸部を有し、前記左右一対の凸部は、前記船体の長手方向において、少なくとも前記左右一対の舵が配置される領域であって、下端が前記左右一対のプロペラよりも上方側に位置するように設けられる、船舶。」は本件発明1の「船体と、前記船体の船尾に配置される左右一対のプロペラと、前記左右一対のプロペラが後部に装着される左右一対のスケグと、前記船体の船尾で前記左右一対のプロペラの回転中心に交差する船高方向に沿う回転中心を有して前記左右一対のプロペラの後方に配置される左右一対の舵と、を備え、前記船体の長手方向における前記左右一対の舵の回転中心の位置で、前記船体の幅方向における前記左右一対の舵が装着される前記船体の船底に、下方に突出する左右一対の凸部を有し、前記左右一対の凸部は、前記船体の長手方向において、少なくとも前記左右一対の舵が配置される領域であって、下端が前記左右一対のプロペラよりも上方側に位置するように設けられ」「る船舶。」に相当する。
そうすると、本件発明1と甲3発明とは、
「船体と、前記船体の船尾に配置される左右一対のプロペラと、前記左右一対のプロペラが後部に装着される左右一対のスケグと、前記船体の船尾で 前記左右一対のプロペラの回転中心に交差する船高方向に沿う回転中心を有して前記左右一対のプロペラの後方に配置される左右一対の舵と、を備え、前記船体の長手方向における前記左右一対の舵の回転中心の位置で、前記船体の幅方向における前記左右一対の舵が装着される前記船体の船底に、下方に突出する左右一対の凸部を有し、前記左右一対の凸部は、前記船体の長手方向において、少なくとも前記左右一対の舵が配置される領域であって、下端が前記左右一対のプロペラよりも上方側に位置するように設けられる、船舶。」の点で一致し、以下の点で相違する。
〔相違点3〕
本件発明1は「前記船体の左舷及び右舷と前記左右一対の凸部とは、段差がなく連続する滑らかな曲線部により接続される」のに対し、甲3発明は、そのような構成を有しているのかどうか不明な点。
(b)判断
甲3には本件発明1の「前記船体の左舷及び右舷と前記左右一対の凸部とは、段差がなく連続する滑らかな曲線部により接続される」ことは記載も示唆もされていない。
したがって、相違点3は実質的な相違点である。
(c)まとめ
上記(b)のとおり、相違点3は実質的な相違点であるから、本件発明1は甲3発明ではない。
b 本件発明2及び4ないし7について
本件発明2及び4ないし7は、いずれも本件発明1の全ての発明特定事項を含んだ上で、新たに発明特定事項を追加したものであり、すなわち、相違点3に係る本件発明1の発明特定事項を含むものであるから、上記aに示した理由と同様の理由により、本件発明2及び4ないし7は甲3発明ではない。
(エ)甲4発明を主引用発明とした場合
a 本件発明1について
(a)対比
本件発明1と甲4発明とを対比する。
甲4発明の「船体と、前記船体の船尾に配置される左右一対のプロペラと、前記左右一対のプロペラが後部に装着される左右一対のスケグと、前記船体の船尾で 前記左右一対のプロペラの回転中心に交差する船高方向に沿う回転中心を有して前記左右一対のプロペラの後方に配置される左右一対の舵と、を備え、前記船体の長手方向における前記左右一対の舵の回転中心の位置で、前記船体の幅方向における前記左右一対の舵が装着される前記船体の船底に、下方に突出する左右一対の凸部を有し、前記左右一対の凸部は、前記船体の長手方向において、少なくとも前記左右一対の舵が配置される領域であって、下端が前記左右一対のプロペラよりも上方側に位置するように設けられる、船舶。」は本件発明1の「船体と、前記船体の船尾に配置される左右一対のプロペラと、前記左右一対のプロペラが後部に装着される左右一対のスケグと、前記船体の船尾で前記左右一対のプロペラの回転中心に交差する船高方向に沿う回転中心を有して前記左右一対のプロペラの後方に配置される左右一対の舵と、を備え、前記船体の長手方向における前記左右一対の舵の回転中心の位置で、前記船体の幅方向における前記左右一対の舵が装着される前記船体の船底に、下方に突出する左右一対の凸部を有し、前記左右一対の凸部は、前記船体の長手方向において、少なくとも前記左右一対の舵が配置される領域であって、下端が前記左右一対のプロペラよりも上方側に位置するように設けられ」「る船舶。」に相当する。
そうすると、本件発明1と甲4発明とは、
「船体と、前記船体の船尾に配置される左右一対のプロペラと、前記左右一対のプロペラが後部に装着される左右一対のスケグと、前記船体の船尾で 前記左右一対のプロペラの回転中心に交差する船高方向に沿う回転中心を有して前記左右一対のプロペラの後方に配置される左右一対の舵と、を備え、前記船体の長手方向における前記左右一対の舵の回転中心の位置で、前記船体の幅方向における前記左右一対の舵が装着される前記船体の船底に、下方に突出する左右一対の凸部を有し、前記左右一対の凸部は、前記船体の長手方向において、少なくとも前記左右一対の舵が配置される領域であって、下端が前記左右一対のプロペラよりも上方側に位置するように設けられる、船舶。」の点で一致し、以下の点で相違する。
〔相違点4〕
本件発明1は「前記船体の左舷及び右舷と前記左右一対の凸部とは、段差がなく連続する滑らかな曲線部により接続される」のに対し、甲4発明は、そのような構成を有しているのかどうか不明な点。
(b)判断
甲4には本件発明1の「前記船体の左舷及び右舷と前記左右一対の凸部とは、段差がなく連続する滑らかな曲線部により接続される」ことは記載も示唆もされていない。
したがって、相違点4は実質的な相違点である。
(c)まとめ
上記(b)のとおり、相違点4は実質的な相違点であるから、本件発明1は甲4発明ではない。
b 本件発明2及び4ないし7について
本件発明2及び4ないし7は、いずれも本件発明1の全ての発明特定事項を含んだ上で、新たに発明特定事項を追加したものであり、すなわち、相違点4に係る本件発明1の発明特定事項を含むものであるから、上記aに示した理由と同様の理由により、本件発明2及び4ないし7は甲4発明ではない。
ウ 小括
以上のとおり、本件発明1、2及び4ないし7に係る特許は、特許法第29条第1項第3号の規定に違反してされたものではなく、上記取消理由1によっては、本件発明1、2及び4ないし7に係る特許を取り消すことはできない。
(3)取消理由2(進歩性)について
ア 甲1発明を主引用発明とした場合
(ア)本件発明1について
a 判断
本件発明1と甲1発明との対比、一致点、相違点は、上記(2)イ(ア)a(a)のとおりである。
上記相違点1について、以下検討する。
甲1には、相違点1に係る本件発明1の発明特定事項である「前記船体の左舷及び右舷と前記左右一対の凸部とは、段差がなく連続する滑らかな曲線部により接続される」ことは記載も示唆もされていない。
また、当業者の通常の創作能力の範囲内で、甲1発明から相違点1に係る本件発明1の発明特定事項とすることを容易に想到し得たとする他の事情を見出すことはできない。
したがって、甲1発明において、相違点1に係る本件発明1の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到できたことではない。
また、相違点1に係る本件発明1の発明特定事項は、甲2ないし4のいずれにも記載されていない。
したがって、甲1発明において甲2ないし4に記載された事項を採用しても、本件発明1の発明特定事項1を含む相違点1に係る本件発明1の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到できたことではない。
そして、本件発明1は、本件明細書段落【0050】に記載されたように「船体10の左舷14及び右舷15の外側の流れを曲線部13f,13gによりスムースに左右一対の凸部31A,31Bに導いて後方に流すことができる。」という格別顕著な効果も奏する。
b まとめ
したがって、本件発明1は、甲1発明に基いて、又は、甲1発明及び甲2ないし4に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(イ)本件発明2及び4ないし7について
本件発明2及び4ないし7は、いずれも本件発明1の全ての発明特定事項を含んだ上で、新たに発明特定事項を追加したものであり、すなわち、相違点1に係る本件発明1の発明特定事項を含むものであるから、上記(ア)に示した理由と同様の理由により、本件発明2及び4ないし7は、甲1発明に基いて、又は、甲1発明及び甲2ないし4に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
イ 甲2発明を主引用発明とした場合
(ア)本件発明1について
本件発明1と甲2発明との対比、一致点、相違点は、上記(2)イ(イ)a(a)のとおりである。
上記相違点2について、以下検討する。
上記相違点2に係る本件発明1の発明特定事項は、上記相違点1に係る本件発明1の発明特定事項と実質的に同じである。
そして、上記相違点1に対する判断については、上記ア(ア)aにおいて上述したとおりである。
そうすると、本件発明1は、甲2発明に基いて、又は、甲2発明並びに甲1、3及び4に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(イ)本件発明2及び4ないし7について
本件発明2及び4ないし7は、いずれも本件発明1の全ての発明特定事項を含んだ上で、新たに発明特定事項を追加したものであり、すなわち、相違点2に係る本件発明1の発明特定事項を含むものであるから、上記(ア)に示した理由と同様の理由により、本件発明2及び4ないし7は、甲2発明に基いて、又は、甲2発明並びに甲1、3及び4に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
ウ 甲3発明を主引用発明とした場合
(ア)本件発明1について
本件発明1と甲3発明との対比、一致点、相違点は、上記(2)イ(ウ)a(a)のとおりである。
上記相違点3について、以下検討する。
上記相違点3に係る本件発明1の発明特定事項は、上記相違点1に係る本件発明1の発明特定事項と実質的に同じである。
そして、上記相違点1に対する判断については、上記ア(ア)aにおいて上述したとおりである。
そうすると、本件発明1は、甲3発明に基いて、又は、甲3発明並びに甲1、2及び4に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(イ)本件発明2及び4ないし7について
本件発明2及び4ないし7は、いずれも本件発明1の全ての発明特定事項を含んだ上で、新たに発明特定事項を追加したものであり、すなわち、相違点3に係る本件発明1の発明特定事項を含むものであるから、上記(ア)に示した理由と同様の理由により、本件発明2及び4ないし7は、甲3発明に基いて、又は、甲3発明並びに甲1、2及び4に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
エ 甲4発明を主引用発明とした場合
(ア)本件発明1について
本件発明1と甲4発明との対比、一致点、相違点は、上記(2)イ(エ)a(a)のとおりである。上記相違点4について、以下検討する。
上記相違点4に係る本件発明1の発明特定事項は、上記相違点1に係る本件発明1の発明特定事項と実質的に同じである。
そして、上記相違点1に対する判断については、上記ア(ア)aにおいて上述したとおりである。
そうすると、本件発明1は、甲4発明に基いて、又は、甲4発明及び甲1ないし3に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(イ)本件発明2及び4ないし7について
本件発明2及び4ないし7は、いずれも本件発明1の全ての発明特定事項を含んだ上で、新たに発明特定事項を追加したものであり、すなわち、相違点4に係る本件発明1の発明特定事項を含むものであるから、上記(ア)に示した理由と同様の理由により、本件発明2及び4ないし7は、甲4発明に基いて、又は、甲4発明及び甲1ないし3に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
オ 小括
以上のとおり、本件発明1、2及び4ないし7に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではなく、上記取消理由2によっては、本件発明1、2及び4ないし7に係る特許を取り消すことはできない。
第5 決定の予告において採用しなかった特許異議申立理由について
1 決定の予告において採用しなかった特許異議申立理由の概要
本件発明1ないし7に対する決定の予告において採用しなかった特許異議申立理由の概要は、次のとおりである。
理由2(進歩性)本件特許の請求項1ないし3に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1ないし3に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
記
理由2(進歩性)
(甲5発明を主引用発明とする場合)
・請求項 1ないし3
・引用文献 甲5ないし7
(甲1発明ないし甲4発明のいずれかを主引用発明とする場合)
・請求項 3
・引用文献 甲1ないし4のいずれか及び甲6
<引用文献等一覧>
甲5:特開2013-112091号公報
甲6:特開平7-33072号公報
甲7:Editor in chief:Reko‐Antti Suojanen, ”Special features of vessels operating in ice”, Arctic Passion News, Aker Arctic Technology Inc, September 2017, p14-15
2 各甲号証の記載等
(1)甲5
ア 記載事項
(ア)「【0025】
図1に示したように、本発明のポッド推進装置1は、船体10の後尾船底に取り付けられたストラット(支柱)4と、該ストラット4に取り付けられた繭状のポッド本体2とから構成されている。なお、ストラット4は、舵板としての機能を兼ねるものであってもよく、例えば、船底に対して360度回転可能に取り付けられていてもよいものである。
【0026】
ポッド本体2の内部には、油圧モータ6が収容されている。そして、該油圧モータ6の回転軸にはプロペラシャフト5が直結されており、該プロペラシャフト5の先端にはポッド側プロペラ3が固定されている。そして、油圧モータ6が駆動してプロペラシャフト5が回転することで、ポッド側プロペラ3が回転するように構成されている。
【0027】
また、図1に示したように、船体10の内部には油圧ポンプ8が収容されている。該油圧ポンプ8は、メインエンジンである主機12と同軸上に配置されており、その回転軸が、主機12に接続されているフロペラシャフト15に直結されている。また、プロペラシャフト15の先端には船体側プロペラ13が固定されており、プロペラシャフト15の回転に伴って回転するようになっている。これにより、主機12によってプロペラシャフト15が回転することで、油圧ポンプ8が駆動するとともに、船体側プロペラ13が回転するようになっている。」
(イ)「【0033】
このように、本発明では、油圧モータ6と油圧ポンプ8とを有する油圧回路によってポッド側プロペラ3を回転させるように構成されている。このため、例えば、図2(a)に示したように、主機12の出力軸に直結した油圧ポンプ8を1台備え、該油圧ポンプ8によって2台の油圧モータ6a,6bを駆動させ、対向して配置したポッド側プロペラ3と船体側プロペラ13を互いに反転させるように構成することもできる(1軸二重反転推進方式)。また、図2(b)に示したように、主機12の出力軸に直結した油圧ポンプ8を1台備え、該油圧ポンプ8によって2つのポッド推進装置1a,1b夫々の油圧モータ6a,6bを駆動させ、夫々のポッド側プロペラ3a,3bを回転させるように構成することもできる(2軸ポッド推進方式)。さらに図2(c)に示したように、主機12の出力軸に直結した油圧ポンプ8を1台備え、該油圧ポンプ8によって、対向して配置された2組のポッド側プロペラ3a,3bと、本体側プロペラ13a,13bを夫々反転させるように、4つの油圧モータ6a,6b,6c,6dを駆動させることも可能である(2軸二重反転推進方式)。」
(ウ)図1「
[図:0001407798000029.jpg]
」
(エ)図2「
[図:0001407798000030.jpg]
」
イ 認定事項
(ア)図1における左右方向は船長方向であると解されることから、図1及び図2(c)から、一対の船体側プロペラ13a、13bが後部に装着される一対のスケグが設けられていることが看取される。
(イ)図1における左右方向は船長方向であると解されることから、図1から、船体側プロペラ13a、13bの後方にはストラット4が設けられていることが看取される。
(ウ)上記ア(ア)の段落0025の記載及び図1から、ストラット4の回転中心軸は船高方向に沿うことが看取される。
(エ)図1における上下方向は船高方向、左右方向は船長方向であると解されることから、図1及び図2(c)から、ストラット4の回転中心軸は一対の船体側プロペラ13a、13bの回転軸であるプロペラシャフト15の回転中心軸に交差する船高方向に沿うことが看取される。
ウ 甲5発明
上記ア及びイを総合すると、甲5には、次の事項(以下「甲5発明」という。)が記載されていると認められる。
〔甲5発明〕
「船体10と、
船体10の船尾に配置される一対の船体側プロペラ13a、13bと、
一対の船体側プロペラ13a、13bが後部に装着される一対のスケグと、
船体10の船尾で一対の船体側プロペラ13a、13bの回転中心に交差する船高方向に沿う回転中心を有して一対の船体側プロペラ13a、13bの後方に配置され、舵板としての機能を兼ねるストラット4と、
を備える船舶。」
(2)甲6
ア 記載事項
(ア)「【0021】図5(船体後半部の正面線図)および図6(図5のD-D断面図)は本発明の第3実施例としての防振型船尾形状を示しており、船体6の船尾においてプロペラ回転面3a,3bおよびプロペラボス7a,7bで示されるプロペラ2aが左右に対をなして配設されるとともに、これらのプロペラ2aの各直上で満載吃水線5よりも上方へ凹弯曲した船体部分を両側部に有する共通の凹弯曲船体外面6fをそなえている。
【0022】そして、各プロペラ2aよりも後方に左右一対の舵1a,1bが互いに上方へ末広がり状となってプロペラ後流中に存在するように装備されており、これらの舵1a,1bの各装着部を有し満載吃水線5よりも下方へ凸弯曲した凸弯曲船体外面6e,6eが凹弯曲船体外面6fの両側方にそれぞれ形成されている。第3実施例としての防振型船尾形状は、上述の構成により、前述の第2実施例とほぼ同様の作用効果を得ることができる。」
(イ)「【0026】図8(船体後半部の正面線図)は本発明の第5実施例としての防振型船尾形状を示すもので、この第5実施例は前述の第3実施例(図5,6参照)とほぼ同様の船尾形状において、左右の舵1a,1bを船体中心線CLと平行にそなえたものである。すなわち、この船尾形状の場合も、船体6の船尾においてプロペラ回転面3a,3bおよびプロペラボス7a,7bで示されるプロペラ2aが左右に対をなして配設されるとともに、これらのプロペラ2aの各直上で満載吃水線5よりも上方へ凹弯曲した船体部分を両側部に有する共通の凹弯曲船体外面6fをそなえている。
【0027】そして、各プロペラよりも後方に左右一対の舵1a,1bをそなえているが、これらの舵はいずれも船体中心線と平行に鉛直に配設されており、各舵1a,1bの装着部としては満載吃水線5よりも下方へ凸弯曲した凸弯曲船体外面6eが凹弯曲船体外面6fの両側方にそれぞれ形成されている。
【0028】このようにして、この第5実施例としての防振型船尾形状では、前述の第3実施例と比べて、各舵1a,1bがプロペラ後流中に配設されないものの、舵軸の延長を伴わずに各舵1a,1bを水面下へ全没した状態とすることができ、また船体振動の抑制やプロペラの大径化による推進性能の向上については第3実施例と同様の作用効果を奏することができる。」
(ウ)図6「
[図:0001407798000031.jpg]
」
(エ)図8「
[図:0001407798000032.jpg]
」
イ 認定事項
(ア)段落【0028】の下線部の記載から、各舵1a,1bがプロペラ後流中に配設されないことから、左右一対の舵1a、1bの回転中心軸は、左右一対のプロペラ2aの回転中心軸と交差しないと解される。
(イ)図8から、左右一対の凸弯曲船体外面6eは、左右一対の舵1a、1bの回転中心の位置で、船体6の幅方向における左右一対の舵1a、1bが装着される船体6の船底に、最も低位置に配置されることが看取される。
(ウ)図8から、凸弯曲船体外面6eは、船体6の幅方向において、段差がなく連続する滑らかな曲線部により接続されることが看取される。
ウ 甲6記載事項
上記ア及びイを総合すると、甲6には、次の事項(以下「甲6記載事項」という。)が記載されていると認められる。
〔甲6記載事項〕
「船体6と、
船体6の船尾に配設される左右一対のプロペラ2aと、
船体6の船尾で船体中心線CLと平行に鉛直に回転中心を有して左右一対のプロペラの後方に配置される左右一対の1a、1b舵と、
を備え、
船体6の長手方向における左右一対の舵1a、1bの回転中心の位置で、船体6の幅方向における左右一対の舵1a、1bが装着される船体6の船底に、下方に突出する左右一対の凸弯曲船体外面6eを有し、
左右一対の凸弯曲船体外面6eは、船体6の長手方向における左右一対の舵1a、1bが配置される領域で、船体6の幅方向において下端が最も低位置に配置され、
船体6の幅方向において、左右一対の凸弯曲船体外面6eは、段差がなく連続する滑らかな曲線部により接続されること。」
ウ 甲7
(ア)記載事項
a 第14頁右欄第25行ないし第47行
「Propulsion system design
While ice-going ships typically feature conventional mechanical shaft lines and rudders like their open water counterparts, icebreaking vessels have more variety in propulsion systems: up to four shaft lines or azimuthing propulsion units, or a hybrid propulsion with combinations of both. Many icebreakers have propellers also in the bow of the vessel. This is a result of following the same principles as with the hull form: the design is tailored according to project-specific operational parameters and limitations. Regardless of the project, the goal is to achieve the desired icebreaking capability with the smallest installed power, resulting in a vessel that is less expensive and more economical to operate. While icebreakers have high propulsion power compared to other ships, it should be kept reasonable.」
(当審訳:推進システムの設計
氷上航行船は通常、開放水域の船と同様に従来の機械式動力軸と舵を備えるが、砕氷船には、最大4本の機械式動力軸またはアジマススラスター、または両方を組み合わせたハイブリッド推進など、さまざまな推進システムがある。多くの砕氷船には船首にもプロペラが付いている。これは、船体の形状と同じ原則に従った結果である。設計は、プロジェクト固有の運用パラメータと制限に従って調整される。プロジェクトに関係なく、目標は、最小の設置電力で目的の砕氷能力を達成することであり、その結果、船舶をより安価で経済的に運用することができる。砕氷船は他の船に比べて推進力が高いが、適度に保つ必要がある。)
b 第14頁の最下端の図
「
[図:0001407798000033.jpg]
」
3 対比及び判断
(1)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲5発明とを対比する。
甲5発明の「船体10」は、その機能、構成又は技術的意義からみて、本件発明1の「船体」に相当する。
甲5発明の「船体10の船尾に配置される一対の船体側プロペラ13a、13b」と本件発明1の「前記船体の船尾に配置される左右一対のプロペラ」とは、「前記船体の船尾に配置される一対のプロペラ」という限りにおいて一致する。
甲5発明の「一対の船体側プロペラ13a、13bが後部に装着される一対のスケグ」と本件発明1の「前記左右一対のプロペラが後部に装着される左右一対のスケグ」とは、「前記一対のプロペラが後部に装着される一対のスケグ」という限りにおいて一致する。
甲5発明の「船体10の船尾で一対の船体側プロペラ13a、13bの回転中心と交差する船高方向に沿う回転中心を有して一対の船体側プロペラ13a、13bの後方に配置され、舵板としての機能を兼ねるストラット4」と本件発明1の「前記船体の船尾で前記左右一対のプロペラの回転中心に交差する船高方向に沿う回転中心を有して前記左右一対のプロペラの後方に配置される左右一対の舵」とは、「前記船体の船尾で前記一対のプロペラの回転中心に交差する船高方向に沿う回転中心を有して前記一対のプロペラの後方に配置される舵」という限りにおいて一致する。
そうすると、両者は、
「船体と、
前記船体の船尾に配置される一対のプロペラと、
前記一対のプロペラが後部に装着される一対のスケグと、
前記船体の船尾で前記一対のプロペラの回転中心に交差する船高方向に沿う回転中心を有して前記左右一対のプロペラの後方に配置される左右一対の舵と、
を備える船舶。」の点で一致し、少なくとも以下の点で相違する。
〔相違点5〕
「前記船体の船尾に配置される一対のプロペラ」に関し、本件発明1では、「前記船体の船尾に配置される左右一対のプロペラ」であるのに対し、甲5発明では、「船体10の船尾に配置される一対の船体側プロペラ13a、13b」である点。
〔相違点6〕
「前記一対のプロペラが後部に装着される一対のスケグ」に関し、本件発明1では、「前記左右一対のプロペラが後部に装着される左右一対のスケグ」であるのに対し、甲5発明では、「一対の船体側プロペラ13a、13bが後部に装着される一対のスケグ」である点。
〔相違点7〕
「前記船体の船尾で前記一対のプロペラの回転中心に交差する船高方向に沿う回転中心を有して前記一対のプロペラの後方に配置される舵」に関し、本件発明1では、「前記船体の船尾で前記左右一対のプロペラの回転中心に交差する船高方向に沿う回転中心を有して前記左右一対のプロペラの後方に配置される左右一対の舵」であるのに対し、甲5発明では、「船体10の船尾で一対の船体側プロペラ13a、13bの回転中心と交差する船高方向に沿う回転中心を有して一対の船体側プロペラ13a、13bの後方に配置され、舵板としての機能を兼ねるストラット4」である点。
〔相違点8〕
本件発明1は、「前記船体の長手方向における前記左右一対の舵の回転中心の位置で、前記船体の幅方向における前記左右一対の舵が装着される前記船体の船底に、下方に突出する左右一対の凸部を有し、
前記左右一対の凸部は、前記船体の長手方向において、少なくとも前記左右一対の舵が配置される領域であって、下端が前記左右一対のプロペラよりも上方側に位置するように設けられ、
前記船体の左舷及び右舷と前記左右一対の凸部とは、段差がなく連続する滑らかな曲線部により接続される」のに対し、甲5発明は、そのような構成を有していない点。
イ 判断
事案に鑑み、上記相違点8について検討する。
相違点8に係る本件発明1の発明特定事項は、本件発明1の「前記船体の左舷及び右舷と前記左右一対の凸部とは、段差がなく連続する滑らかな曲線部により接続される」(以下「本件発明1の発明特定事項1」という。)ことを含んでいる。
甲5には、本件発明1の発明特定事項1は記載も示唆もされていない。
また、甲6には、上記2(2)ウのとおり、「船体6と、船体6の船尾に配設される左右一対のプロペラ2aと、船体6の船尾で船体中心線CLと平行に鉛直に回転中心を有して左右一対のプロペラの後方に配置される左右一対の1a、1b舵と、を備え、船体6の長手方向における左右一対の舵1a、1bの回転中心の位置で、船体6の幅方向における左右一対の舵1a、1bが装着される船体6の船底に、下方に突出する左右一対の凸弯曲船体外面6eを有し、左右一対の凸弯曲船体外面6eは、船体6の長手方向における左右一対の舵1a、1bが配置される領域で、船体6の幅方向において下端が最も低位置に配置され、船体6の幅方向において、左右一対の凸弯曲船体外面6eは、段差がなく連続する滑らかな曲線部により接続されること。」という甲6記載事項が記載されている。
ここで、本件発明1の「左舷」及び「右舷」に関し、本件明細書の段落【0032】には「図1及び図2に示すように、船体10は、船首11と、船尾12と、船底13と、左舷14と、右舷15を有している。本実施形態では、船体10の船長方向(前後方向)をX方向、船幅方向(幅方向)をY方向、船高方向(上下方向)をZ方向として表している。そして、CLは、船体10の幅方向におけるセンターラインを表し、WLは、船体10の満載喫水線を表している。また、PCL1,PCL2は、各プロペラの回転中心線、RCL1,RCL2は、各舵軸の回転中心線を表している。」と記載されており、本件図面の図2、4、6、7、9における左舷14及び右舷15の位置を踏まえると、甲6の図8における左右一対の凸弯曲船体外面6eと船体6の幅方向において段差がなく連続する滑らかな曲線部により接続される部分は、本件発明1の「左舷」及び「右舷」ではない。
そうすると、甲6記載事項の「船体6の幅方向において、左右一対の凸弯曲船体外面6eは、段差がなく連続する滑らかな曲線部により接続されること」は、本件発明1の発明特定事項1を開示ないし示唆するものではない。
また、甲6記載事項が有する課題は振動抑制であり、この課題は本件発明1の「造波抵抗を低減する」という課題と異なり、甲5発明が有する課題と共通するともいえない。
そうすると、二軸船という技術分野が共通するとしても、甲5発明において甲6記載事項を採用する動機付けはない。
したがって、甲5発明において甲6記載事項を採用する動機付けはないから、甲5発明において甲6記載事項を採用することは、当業者が容易に想到できたことではない。
さらに、甲6記載事項は本件発明1の発明特定事項1を開示ないし示唆するものではないから、甲5発明において甲6記載事項を採用しても、本件発明1の発明特定事項1を含む相違点8に係る本件発明1の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到できたことではなく、また、甲6記載事項から当業者が適宜なし得たことでもない。
仮に、甲6の「左舷」及び「右舷」を、特許異議申立人が甲6の図8について部材の位置などを特定し易くするために矢印及び用語等を付した参考図(特許異議申立書の第48頁)のように解したとしても、甲6記載事項の「左右一対の凸弯曲船体外面6e」は、甲6の図8の図示内容を踏まえると、本件発明1の「前記左右一対の凸部は、前記船体の長手方向において、少なくとも前記左右一対の舵が配置される領域であって、下端が前記左右一対のプロペラよりも上方側に位置するように設けられ」るものではない。さらに、上記2(2)イ(ア)から、左右一対の舵1a、1bの回転中心軸は、左右一対のプロペラ2aの回転中心軸と交差しないことから、甲6記載事項の「左右一対の凸弯曲船体外面6e」の下端が最も低位置に配置される船体6の幅方向における位置は、左右一対のプロペラ2aの回転中心軸の幅方向における位置とは重ならない。
そうすると、甲6記載事項の「左右一対の凸弯曲船体外面6e」は、本件発明1の「前記船体の船尾で前記左右一対のプロペラの回転中心に交差する船高方向に沿う回転中心を有して前記左右一対のプロペラの後方に配置される左右一対の舵と、を備え、前記船体の長手方向における前記左右一対の舵の回転中心の位置で、前記船体の幅方向における前記左右一対の舵が装着される前記船体の船底に、下方に突出する左右一対の凸部を有し、前記左右一対の凸部は、前記船体の長手方向において、少なくとも前記左右一対の舵が配置される領域であって、下端が前記左右一対のプロペラよりも上方側に位置するように設けられ」という前提とは異なる配置である。
また、甲7には、本件発明1の発明特定事項1は記載も示唆もされていない。
そうすると、甲5発明において甲6記載事項及び甲7に記載された事項を採用しても、本件発明1の発明特定事項1とすることは、当業者が容易に想到できたことではなく、また、甲6記載事項及び甲7に記載された事項から当業者が適宜なし得たことでもない。
したがって、甲5発明において甲6記載事項及び甲7に記載された事項を採用しても、本件発明1の発明特定事項1を含む相違点8に係る本件発明1の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到できたことではない。
そして、本件発明1は、本件明細書段落【0050】に記載されたように「船体10の左舷14及び右舷15の外側の流れを曲線部13f,13gによりスムースに左右一対の凸部31A,31Bに導いて後方に流すことができる。」という格別顕著な効果も奏する。
ウ まとめ
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲5発明並びに甲6記載事項及び甲7に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(2)本件発明2について
本件発明2は、いずれも本件発明1の全ての発明特定事項を含んだ上で、新たに発明特定事項を追加したものであり、すなわち、相違点8に係る本件発明1の発明特定事項を含むものであるから、上記(1)に示した理由と同様の理由により、本件発明2は、甲5発明並びに甲6記載事項及び甲7に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(3)小括
以上のとおり、本件発明1及び2に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではなく、上記理由2によっては、本件発明1及び2に係る特許を取り消すことはできない。
(4)なお、異議申立書において、訂正前の請求項3は甲1発明ないし甲4発明のいずれか及び甲6記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである旨主張しており、本件訂正により訂正前の請求項3に係る発明特定事項が請求項1に追加されたので、上記第4の2(2)イ(ア)a(a)ないし(エ)a(a)における相違点1ないし4について、甲1発明ないし甲4発明のいずれかと甲6記載事項との組合せについて、念のため以下検討する。
ア 甲1発明を主引用発明とした場合
(ア)本件発明1について
a 判断
本件発明1と甲1発明との対比、一致点、相違点は、上記第4の2(2)イ(ア)a(a)のとおりである。
上記相違点1について、以下検討する。
相違点1に係る本件発明1の発明特定事項は、本件発明1の発明特定事項1を含んでいる。
そして、上記(1)イにおいて説示したとおり、甲6記載事項は、本件発明1の発明特定事項1を開示ないし示唆するものではない。
したがって、甲1発明において甲6記載事項を採用しても、本件発明1の発明特定事項1を含む相違点1に係る本件発明1の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到できたことではない。
そして、本件発明1は、本件明細書段落【0050】に記載されたように「船体10の左舷14及び右舷15の外側の流れを曲線部13f,13gによりスムースに左右一対の凸部31A,31Bに導いて後方に流すことができる。」という格別顕著な効果も奏する。
b まとめ
したがって、本件発明1は、甲1発明及び甲6記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(イ)本件発明2について
本件発明2は、いずれも本件発明1の全ての発明特定事項を含んだ上で、新たに発明特定事項を追加したものであり、すなわち、相違点1に係る本件発明1の発明特定事項を含むものであるから、上記(ア)に示した理由と同様の理由により、本件発明2は、甲1発明及び甲6記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
イ 甲2発明を主引用発明とした場合
(ア)本件発明1について
a 判断
本件発明1と甲2発明との対比、一致点、相違点は、上記第4の2(2)イ(イ)a(a)のとおりである。
上記相違点2について、以下検討する。
相違点2に係る本件発明1の発明特定事項は、本件発明1の発明特定事項1を含んでいる。
そして、上記(1)イにおいて説示したとおり、甲6記載事項は、本件発明1の発明特定事項1を開示ないし示唆するものではない。
したがって、甲2発明において甲6記載事項を採用しても、本件発明1の発明特定事項1を含む相違点2に係る本件発明1の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到できたことではない。
そして、本件発明1は、本件明細書段落【0050】に記載されたように「船体10の左舷14及び右舷15の外側の流れを曲線部13f,13gによりスムースに左右一対の凸部31A,31Bに導いて後方に流すことができる。」という格別顕著な効果も奏する。
b まとめ
したがって、本件発明1は、甲2発明及び甲6記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(イ)本件発明2について
本件発明2は、いずれも本件発明1の全ての発明特定事項を含んだ上で、新たに発明特定事項を追加したものであり、すなわち、相違点2に係る本件発明1の発明特定事項を含むものであるから、上記(ア)に示した理由と同様の理由により、本件発明2は、甲2発明及び甲6記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
ウ 甲3発明を主引用発明とした場合
(ア)本件発明1について
a 判断
本件発明1と甲3発明との対比、一致点、相違点は、上記第4の2(2)イ(ウ)a(a)のとおりである。
上記相違点3について、以下検討する。
相違点3に係る本件発明1の発明特定事項は、本件発明1の発明特定事項1を含んでいる。
そして、上記(1)イにおいて説示したとおり、甲6記載事項は、本件発明1の発明特定事項1を開示ないし示唆するものではない。
したがって、甲3発明において甲6記載事項を採用しても、本件発明1の発明特定事項1を含む相違点3に係る本件発明1の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到できたことではない。
そして、本件発明1は、本件明細書段落【0050】に記載されたように「船体10の左舷14及び右舷15の外側の流れを曲線部13f,13gによりスムースに左右一対の凸部31A,31Bに導いて後方に流すことができる。」という格別顕著な効果も奏する。
b まとめ
したがって、本件発明1は、甲3発明及び甲6記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(イ)本件発明2について
本件発明2は、いずれも本件発明1の全ての発明特定事項を含んだ上で、新たに発明特定事項を追加したものであり、すなわち、相違点3に係る本件発明1の発明特定事項を含むものであるから、上記(ア)に示した理由と同様の理由により、本件発明2は、甲3発明及び甲6記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
エ 甲4発明を主引用発明とした場合
(ア)本件発明1について
a 判断
本件発明1と甲4発明との対比、一致点、相違点は、上記第4の2(2)イ(エ)a(a)のとおりである。
上記相違点4について、以下検討する。
相違点4に係る本件発明1の発明特定事項は、本件発明1の発明特定事項1を含んでいる。
そして、上記(1)イにおいて説示したとおり、甲6記載事項は、本件発明1の発明特定事項1を開示ないし示唆するものではない。
したがって、甲4発明において甲6記載事項を採用しても、本件発明1の発明特定事項1を含む相違点4に係る本件発明1の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到できたことではない。
そして、本件発明1は、本件明細書段落【0050】に記載されたように「船体10の左舷14及び右舷15の外側の流れを曲線部13f,13gによりスムースに左右一対の凸部31A,31Bに導いて後方に流すことができる。」という格別顕著な効果も奏する。
b まとめ
したがって、本件発明1は、甲4発明及び甲6記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(イ)本件発明2について
本件発明2は、いずれも本件発明1の全ての発明特定事項を含んだ上で、新たに発明特定事項を追加したものであり、すなわち、相違点4に係る本件発明1の発明特定事項を含むものであるから、上記(ア)に示した理由と同様の理由により、本件発明2は、甲4発明及び甲6記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
オ 小括
以上のとおり、本件発明1及び2に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではなく、上記理由2によっては、本件発明1、2及び4ないし7に係る特許を取り消すことはできない。
第6 むすび
以上のとおり、取消理由通知書に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件発明1、2及び4ないし7に係る特許を取り消すことはできない。また、他に本件発明1、2及び4ないし7に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
そして、本件の請求項3に係る特許については、本件訂正により削除された。これにより、特許異議申立人による申立てのうち、請求項3に係る申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
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2022-700884