特許異議申立
2025-700404
船舶
- 審判番号
- 2025-700404
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2023-511177
- 登録番号
- 7566137
- 請求日
- 2025年04月10日
- 審決日
- 2025年08月29日
- 公報発行日
- 2025年09月26日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】三菱造船株式会社
- 【権利者代理人】松沼 泰史
- 【権利者代理人】伊藤 英輔
- 【権利者代理人】橋本 宏之
- 【権利者代理人】古都 智
- 【権利者代理人】鎌田 康一郎
- 【異議申立人】北島 亮二
- 審判長/審判官
- 審判長 倉橋 紀夫
- 審判官 高橋 学
- 審判官 稲垣 彰彦
- 分類
- P1652.113-Y (B63B) / P1652.121-Y (B63B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7566137号発明「船舶」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7566137号の請求項1~3、8に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7566137号の請求項1~10に係る特許についての出願は、2022年(令和4年)3月25日(優先権主張 令和3年3月31日)を国際出願日とする出願であって、令和6年10月3日にその特許権の設定登録がされ、令和6年10月11日に特許掲載公報が発行された。
その後、その特許に対し、令和7年4月10日に特許異議申立人北島亮二(以下「申立人」という。)により、その請求項1~3、8に係る特許に対して特許異議の申立てがされ、同年6月9日に特許異議申立書に対する手続補正書(方式)が提出されたものである。
第2 本件発明
特許第7566137号(以下「本件特許」という。)の請求項1~3、8の特許に係る発明は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1~3、8に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
船体と、
前記船体に設けられて、燃料アンモニアを液体の状態で貯留するアンモニアタンクと、
前記アンモニアタンクに接続された燃料供給ラインと、
前記燃料供給ラインを介して前記アンモニアタンクから前記燃料アンモニアが導入される燃焼装置と、
前記燃料供給ラインを介して少なくとも前記燃焼装置に不活性ガスを圧送する不活性ガス供給装置と、
前記燃焼装置に圧送された不活性ガスとともに前記燃焼装置内の前記燃料アンモニアが導入され、前記燃料アンモニアが液体の状態を維持可能な高圧状態で前記燃料アンモニアを貯蔵可能な高圧貯蔵タンクと、
前記高圧貯蔵タンクに貯蔵された前記燃料アンモニアを、前記燃料供給ラインに導入可能なアンモニア充填ラインと、
前記燃料供給ラインに設けられて、前記アンモニアタンクからの燃料アンモニアを一時貯留可能であるとともに、前記アンモニア充填ラインを介して前記高圧貯蔵タンクに貯蔵された前記燃料アンモニアを一時貯留可能であり、一時貯留された前記燃料アンモニアを前記燃料供給ラインへ送り込むことが可能なアンモニア貯めタンクと、
前記アンモニア貯めタンクよりも前記燃焼装置に近い側の前記燃料供給ラインに設けられて、前記アンモニア貯めタンクに貯留された前記燃料アンモニアを圧送するアンモニア高圧ポンプと、
前記燃焼装置で燃料として用いられずに残った余剰の燃料アンモニアを前記アンモニア高圧ポンプよりも前記アンモニアタンクに近い側の前記燃料供給ラインに戻すアンモニア燃料戻りラインと、
回収対象の前記燃料アンモニアを水に吸収させて回収可能なアンモニア回収部と、
前記高圧貯蔵タンクの気相に連通され前記高圧貯蔵タンク内の気体を前記アンモニア回収部に送り込む気体排出ラインと、
を備える船舶。
【請求項2】
前記アンモニア燃料戻りラインは、前記燃焼装置で燃料として用いられずに残った余剰の前記燃料アンモニアを、前記アンモニア貯めタンクに戻す
請求項1に記載の船舶。
【請求項3】
前記燃料供給ラインと前記アンモニア回収部とを接続する第一パージガス排出ラインと、
前記アンモニア燃料戻りラインと前記アンモニア回収部とを接続する第二パージガス排出ラインと、を備える
請求項1に記載の船舶。
【請求項8】
船体と、
前記船体に設けられて、燃料アンモニアを液体の状態で貯留するアンモニアタンクと、
前記アンモニアタンクに接続された燃料供給ラインと、
前記燃料供給ラインを介して前記アンモニアタンクから前記燃料アンモニアが導入される燃焼装置と、
前記燃料供給ラインを介して少なくとも前記燃焼装置に不活性ガスを圧送する不活性ガス供給装置と、
前記燃焼装置に圧送された不活性ガスとともに前記燃焼装置内の前記燃料アンモニアが導入され、前記燃料アンモニアが液体の状態を維持可能な高圧状態で前記燃料アンモニアを貯蔵可能な高圧貯蔵タンクと、
前記高圧貯蔵タンクに貯蔵された前記燃料アンモニアを、前記燃料供給ラインに導入可能なアンモニア充填ラインと、
前記燃料供給ラインに設けられて、前記アンモニアタンクからの燃料アンモニアを一時貯留可能であるとともに、前記アンモニア充填ラインを介して前記高圧貯蔵タンクに貯蔵された前記燃料アンモニアを一時貯留可能であり、一時貯留された前記燃料アンモニアを前記燃料供給ラインへ送り込むことが可能なアンモニア貯めタンクと、
前記アンモニア貯めタンクよりも前記燃焼装置に近い側の前記燃料供給ラインに設けられて、前記アンモニア貯めタンクに貯留された前記燃料アンモニアを圧送するアンモニア高圧ポンプと、
前記燃焼装置で燃料として用いられずに残った余剰の燃料アンモニアを前記アンモニア高圧ポンプよりも前記アンモニアタンクに近い側の前記燃料供給ラインに戻すアンモニア燃料戻りラインと、
前記燃料アンモニアを回収可能なアンモニア回収部と、
前記高圧貯蔵タンクと前記アンモニア回収部とを接続する気体排出ラインと、
前記燃料供給ラインと前記アンモニア回収部とを接続する第一パージガス排出ラインと、
前記アンモニア燃料戻りラインと前記アンモニア回収部とを接続する第二パージガス排出ラインと、
を備える船舶。」
第3 申立理由の概要
1 証拠方法
申立人は、証拠として以下の甲第1号証(以下「甲1」という。)を提出している。
甲1:Kjeld Aabo、“Ammonia-fuelled MAN B&W 2-Stroke Dual-fuel
Engine”、日本マリンエンジニアリング学会誌「Marine En
gineering」、公益社団法人日本マリンエンジニアリング学
会、2020年11月1日、第55巻第6号(2020)、P62~
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2 申立理由
申立人が提出した特許異議申立書(以下「申立書」という。)に記載した申立ての理由の概要は次のとおりである。
(1)申立理由1(新規性)
本件特許の請求項1~3、8に係る発明は、甲1に記載された発明であるから、請求項1~3、8に係る特許は、特許法第29条第1項第3号の規定に違反して特許されたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
(2)申立理由2(進歩性)
本件特許の請求項1~3、8に係る発明は、甲1に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~3、8に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
第4 甲1について
1 認定事項
(1)図5の図示内容から、以下の参考図に示した事項を看取することができる。
<図5を元に当審で作成した参考図>
[図:0001426852000001.jpg]
(2)1.や3.3の記載から、図5に示された「MAN B&Wアンモニアエンジン」は船舶に備えられる船舶エンジンであるといえる。
そして、船舶が船体を備えることは明らかであることから、当該「MAN B&Wアンモニアエンジン」は、船体を備える船舶に備えられるものであると認められる。
(3)「MAN B&Wアンモニアエンジン」はアンモニアを燃料とするものであることは明らかであるから、「アンモニア貯留タンク」に貯留されるアンモニアは、燃料アンモニアであると認められる。
そして、MAN B&Wアンモニアエンジンは、図5に示された「ラインA」((1)の参考図において点線で囲まれたライン)を介してアンモニア貯留タンクから燃料アンモニアが導入されるものであると認められる。
さらに、燃料タンクが船体に設けられること、及び燃料アンモニアが液体の状態で貯留されるものであることは、それぞれ当業者にとって自明の事項であるから、「アンモニア貯留タンク」は、船体に設けられて、燃料アンモニアを液体の状態で貯留するものであると認められる。
(4)4.4には、窒素がエンジンのパージに用いられること、及び、窒素が高い圧力で供給されることが記載されている。
そして、図5には、「窒素供給」がラインAに接続されることが示されているから、当該「窒素供給」は、ラインAを介してMAN B&Wアンモニアエンジンに窒素を高い圧力で供給するものであると認められる。
(5)図5には、「タンクB」がラインAに設けられることが示されているから、タンクBはアンモニア貯留タンクからの燃料アンモニアを一時貯留可能であり、一時貯留された燃料アンモニアをラインAへ送り込むことが可能なものであると認められる。
(6)図5には、「HPポンプ」が、タンクBよりもMAN B&Wアンモニアエンジンに近い側のラインAに設けられることが示されている。
そして、上記(3)で述べたように、ラインAを介してアンモニア貯留タンクからMAN B&Wアンモニアエンジンに燃料アンモニアが導入されるものであるから、HPポンプは、タンクBに貯留された燃料アンモニアを圧送するものであると認められる。
(7)4.1には、「再循環システム」が燃料ガスを再循環させること、及び、エンジンから燃料ガスを回収することが記載されている。
そして、図5には、「ラインC」((1)の参照図において一点鎖線で囲まれたライン)が、MAN B&Wアンモニアエンジンから再循環システムを経由して、ラインAにおいてHPポンプよりもアンモニア貯留タンクに近いタンクBに至るものであることが示されているから、ラインCは、MAN B&Wアンモニアエンジンから回収された燃料アンモニアを、ラインAにおいてHPポンプよりもアンモニア貯留タンクに近いタンクBに戻すものであると認められる。
(8)図5に示された「アンモニア捕獲システム」は、回収対象のアンモニアを回収可能であるものと認められる。
2 甲1発明
上記1を踏まえると、甲1には以下の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
「船体と、(上記1(2))
前記船体に設けられて、燃料アンモニアを液体の状態で貯留するアンモニア貯留タンクと、(上記1(3))
前記アンモニア貯留タンクに接続されたラインAと、(上記1(1))
前記ラインAを介して前記アンモニア貯留タンクから前記燃料アンモニアが導入されるMAN B&Wアンモニアエンジンと、(上記1(3))
前記ラインAを介して前記MAN B&Wアンモニアエンジンに窒素を高い圧力で供給する窒素供給と、(上記1(4))
前記MAN B&Wアンモニアエンジンに接続されたタンクAと、(上記1(1))
前記ラインAに設けられて、前記アンモニア貯留タンクからの燃料アンモニアを一時貯留可能であり、一時貯留された前記燃料アンモニアを前記ラインAへ送り込むことが可能なタンクBと、(上記1(5))
前記タンクAと、前記タンクBとを接続するラインBと、(上記1(1))
前記タンクBよりも前記MAN B&Wアンモニアエンジンに近い側の前記ラインAに設けられて、前記タンクBに貯留された前記燃料アンモニアを圧送するHPポンプと、(上記1(6))
前記MAN B&Wアンモニアエンジンから回収された燃料アンモニアを、前記ラインAにおいて前記HPポンプよりも前記アンモニア貯留タンクに近い前記タンクBに戻すラインCと、(上記1(7))
回収対象のアンモニアを回収可能なアンモニア捕獲システムと、(上記1(8))
前記タンクAと前記アンモニア捕獲システムとを接続するラインDと、(上記1(1))
を備える船舶。(上記1(2))」
第5 当審の判断
1 請求項1に係る発明(以下「本件発明1」という。)について
(1)対比
本件発明1と甲1発明とを対比する。
ア 甲1発明の「船体」は、本件発明1の「船体」に相当する。
イ 甲1発明の「前記船体に設けられて、燃料アンモニアを液体の状態で貯留するアンモニア貯留タンク」は、本件発明1の「前記船体に設けられて、燃料アンモニアを液体の状態で貯留するアンモニアタンク」に相当する。
ウ 甲1発明の「前記アンモニア貯留タンクに接続されたラインA」は、本件発明1の「前記アンモニアタンクに接続された燃料供給ライン」に相当する。
エ 甲1発明の「前記ラインAを介して前記アンモニア貯留タンクから前記燃料アンモニアが導入されるMAN B&Wアンモニアエンジン」は、本件発明1の「前記燃料供給ラインを介して前記アンモニアタンクから前記燃料アンモニアが導入される燃焼装置」に相当する。
オ 甲1発明の「前記ラインAを介して前記MAN B&Wアンモニアエンジンに窒素を高い圧力で供給する窒素供給」は、一般的に窒素は不活性ガスであることが明らかであるから、本件発明1の「前記燃料供給ラインを介して少なくとも前記燃焼装置に不活性ガスを圧送する不活性ガス供給装置」に相当する。
カ 甲1発明の「前記MAN B&Wアンモニアエンジンに接続されたタンクA」と、本件発明1の「前記燃焼装置に圧送された不活性ガスとともに前記燃焼装置内の前記燃料アンモニアが導入され、前記燃料アンモニアが液体の状態を維持可能な高圧状態で前記燃料アンモニアを貯蔵可能な高圧貯蔵タンク」とは、本件発明1の高圧貯蔵タンクが、燃焼装置内の燃料アンモニアが導入されるものであることから少なくとも前記燃焼装置と高圧貯蔵タンクとが接続されていることは明らかであるので、「前記燃焼装置に接続された貯蔵タンク」である点で共通する。
キ 甲1発明の「前記ラインAに設けられて、前記アンモニア貯留タンクからの燃料アンモニアを一時貯留可能であり、一時貯留された前記燃料アンモニアを前記ラインAへ送り込むことが可能なタンクB」と、本件発明1の「前記燃料供給ラインに設けられて、前記アンモニアタンクからの燃料アンモニアを一時貯留可能であるとともに、前記アンモニア充填ラインを介して前記高圧貯蔵タンクに貯蔵された前記燃料アンモニアを一時貯留可能であり、一時貯留された前記燃料アンモニアを前記燃料供給ラインに送り込むことが可能なアンモニア貯めタンク」とは、「前記燃料供給ラインに設けられて、前記アンモニアタンクからの燃料アンモニアを一時貯留可能であり、一時貯留された前記燃料アンモニアを前記燃料供給ラインに送り込むことが可能な燃料アンモニア貯めタンク」である点で共通する。
ク 本件発明1の「前記高圧貯蔵タンクに貯蔵された前記燃料アンモニアを、前記燃料供給ラインに導入可能なアンモニア充填ライン」は、前記高圧貯蔵タンクと前記燃料供給ラインとを接続するものであることは明らかである。
また、甲1発明の「前記タンクAと、前記タンクBとを接続するラインB」は、上記1(5)で述べたように、タンクBがラインAに設けられるものであることから、前記タンクAと前記ラインAとを接続するものでもあるといえる。
そうすると、甲1発明の「前記タンクAと、前記タンクBとを接続するラインB」と、本件発明1の「前記高圧貯蔵タンクに貯蔵された前記燃料アンモニアを、前記燃料供給ラインに導入可能なアンモニア充填ライン」とは、「前記貯蔵タンクと前記燃料供給ラインを接続するライン」である点で共通する。
ケ 上記オから、甲1発明の「前記タンクBよりも前記MAN B&Wアンモニアエンジンに近い側の前記ラインAに設けられて、前記タンクBに貯留された前記燃料アンモニアを圧送するHPポンプ」と、本件発明1の「前記アンモニア貯めタンクよりも前記燃焼装置に近い側の燃料供給ラインに設けられて、前記アンモニア貯めタンクに貯留された前記燃料アンモニアを圧送するアンモニア高圧ポンプ」は、「前記燃料アンモニア貯めタンクよりも前記燃焼装置に近い側の燃料供給ラインに設けられて、前記燃料アンモニア貯めタンクに貯留された前記燃料アンモニアを圧送するアンモニア高圧ポンプ」である点で共通する。
コ 甲1発明の「前記MAN B&Wアンモニアエンジンから回収された燃料アンモニア」は、前記MAN B&Wアンモニアエンジンで燃料として用いられずに残った余剰の燃料アンモニアであることが明らかである。
また、上記1(5)で述べたように、タンクBがラインAに設けられるものである。
そうすると、甲1発明の「前記MAN B&Wアンモニアエンジンから回収された燃料アンモニアを、前記ラインAにおいて前記HPポンプよりも前記アンモニア貯留タンクに近いタンクBに戻すラインC」は、本件発明1の「前記燃焼装置で燃料として用いられずに残った余剰の燃料アンモニアを前記アンモニア高圧ポンプよりも前記アンモニアタンクに近い側の前記燃料供給ラインに戻すアンモニア燃料戻りライン」に相当する。
サ 甲1発明の「回収対象のアンモニアを回収可能なアンモニア捕獲システム」と、本件発明1の「回収対象の前記燃料アンモニアを水に吸収させて回収可能なアンモニア回収部」とは、「回収対象のアンモニアを回収可能なアンモニア回収部」である点で共通する。
シ 甲1発明の「前記タンクAと前記アンモニア捕獲システムとを接続するラインD」と、本件発明1の「前記高圧貯蔵タンクの気相に連通され前記高圧貯蔵タンク内の気体を前記アンモニア回収部に送り込む気体排出ライン」とは、本件発明1の「前記高圧貯蔵タンクの気相に連通され前記高圧貯蔵タンク内の気体を前記アンモニア回収部に送り込む気体排出ライン」は、前記高圧貯蔵タンクと前記アンモニア回収部を接続するものであることが明らかであるから、「前記貯蔵タンクと前記アンモニア回収部とを接続するライン」である点で共通する。
ス 上記ア~シを踏まえると、本件発明1と甲1発明とは、
「船体と、
前記船体に設けられて、燃料アンモニアを液体の状態で貯留するアンモニアタンクと、
前記アンモニアタンクに接続された燃料供給ラインと、
前記燃料供給ラインを介して前記アンモニアタンクから前記燃料アンモニアが導入される燃焼装置と、
前記燃料供給ラインを介して少なくとも前記燃焼装置に不活性ガスを圧送する不活性ガス供給装置と、
前記燃焼装置に接続された貯蔵タンクと、
前記貯蔵タンクと前記燃料供給ラインを接続するラインと、
前記燃料供給ラインに設けられて、前記アンモニアタンクからの燃料アンモニアを一時貯留可能であり、一時貯留された前記燃料アンモニアを前記燃料供給ラインへ送り込むことが可能な燃料アンモニア貯めタンクと、
前記燃料アンモニア貯めタンクよりも前記燃焼装置に近い側の前記燃料供給ラインに設けられて、前記燃料アンモニア貯めタンクに貯留された前記燃料アンモニアを圧送するアンモニア高圧ポンプと、
前記燃焼装置で燃料として用いられずに残った余剰の燃料アンモニアを前記アンモニア高圧ポンプよりも前記アンモニアタンクに近い側の前記燃料供給ラインに戻すアンモニア燃料戻りラインと、
回収対象のアンモニアを回収可能なアンモニア回収部と、
前記貯蔵タンクと前記アンモニア回収部とを接続するラインと、
を備える船舶。」
で一致し、以下の点で相違する。
〔相違点1〕
「燃焼装置に接続された貯蔵タンク」について、本件発明1は「前記燃焼装置に圧送された不活性ガスとともに前記燃焼装置内の前記燃料アンモニアが導入され、前記燃料アンモニアが液体の状態を維持可能な高圧状態で前記燃料アンモニアを貯蔵可能な高圧貯蔵タンク」であるのに対し、甲1発明はかかる特定がされているか不明である点。
〔相違点2〕
「貯蔵タンクと前記燃料供給ラインを接続するライン」について、本件発明1は「前記高圧貯蔵タンクに貯蔵された前記燃料アンモニアを、前記燃料供給ラインに導入可能なアンモニア充填ライン」であるのに対し、甲1発明はかかる特定がされているか不明である点。
〔相違点3〕
「燃料アンモニア貯めタンク」について、本件発明1は、さらに「前記アンモニア充填ラインを介して前記高圧貯蔵タンクに貯蔵された前記燃料アンモニアを一時貯留可能であ」る「アンモニア貯めタンク」であるのに対し、甲1発明はかかる特定がされているか不明である点。
〔相違点4〕
「アンモニア回収部」について、本件発明1は「前記燃料アンモニアを水に吸収させ」るものであるのに対し、甲1発明はかかる特定がされているか不明である点。
〔相違点5〕
「前記貯蔵タンクと前記アンモニア回収部とを連通するライン」について、本件発明1は「前記高圧貯蔵タンクの気相に連通され前記高圧貯蔵タンク内の気体を前記アンモニア回収部に送り込む気体排出ライン」であるのに対し、甲1発明はかかる特定がなされているか不明である点。
(2)判断
まず、相違点1について以下に検討する。
甲1には、タンクAがMAN B&Wアンモニアエンジンと接続される態様が記載されているものの、タンクAの機能や、エンジンのパージ時における流体回路上のバルブの開閉やラインBの流れの方向等について記載も示唆もされていないから、甲1発明におけるタンクAが、MAN B&Wアンモニアエンジンに高い圧力で供給された窒素とともにMAN B&Wアンモニアエンジン内の燃料アンモニアが導入され、燃料アンモニアが液体の状態を維持可能な高圧状態で燃料アンモニアを貯蔵可能なものであるか否かは不明であるといわざるを得ない。
したがって、本件発明1の相違点1は、実質的な相違点であるから、本件発明1は、甲1発明ではない。
また、甲1には、タンクAについての説明が何も記載されておらず、技術常識を踏まえても、タンクAに何が供給され、何が排出されるのかが不明である。
そうすると、甲1発明において、タンクAを相違点1に係る本件発明1の発明特定事項とすることが当業者にとって容易に想到したことであるとはいえない。
よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(3)申立人の主張について
請求人は、申立書の第3の4(4)キ(申立書の11頁4行~16頁22行)において、相違点1について、
「(ア)タンクAには、不活性ガスとともに燃料アンモニアが導入されること。
甲1には、「4.1再循環システム 再循環された燃料ガスは、運転中にエンジン内で加熱される。2相状態を回避するために、一定量の燃料ガスが専用の再循環ラインに再循環される。・・・再循環ラインは、回収された燃料ガスから窒素を分離して排出する。」・・・と記載されている(68頁 第1~2パラグラフ)。
また、タンクAには、「MAN B&W ammonia engines」からの流入経路が接続されている・・・。
さらに、タンクAからは、「Knock out drum system」(ノックアウトドラムシステム)を経由して「NH3 capture system」(アンモニア捕獲システム)に至る上側への流出経路が接続されている。
さらにまた、タンクAからは、申立人がFig.5において「タンクBアンモニア貯めタンク」と追記し赤色に着色したタンク(以下、「タンクB」と称する。)に至る下側への流出経路が接続されている。
これらの記載から、「MAN B&W ammonia engines」からタンクAに流入するものは、「前記燃焼装置に圧送された不活性ガスと、前記燃焼装置内の前記燃料アンモニア」である。甲1には、「再循環ラインは、回収された燃料ガスから窒素を分離して排出する。」・・・と 記載されており(68頁 第2パラグラフ)、また、「NH3 capture system」(アンモニア捕獲システム)が捕獲するアンモニアは、エンジンの停止後に、窒素など不活性ガスによるパージによって、燃焼装置内から除去された残留アンモニアだからである。」
と主張している。
しかしながら、甲1の4.1(68頁第1~2パラグラフ)には、「再循環ラインは、デュアル運転が停止されるたびにエンジンから燃料ガスを回収する。・・・再循環ラインは、回収された燃料ガスから窒素を分離して排出する。」と記載されているところ、回収された燃料ガスと窒素とがタンクAに流入するか否か明らかでない。
仮に、前記燃料ガスと窒素とがタンクAに流入するとしても、燃料アンモニアの燃焼によって窒素が発生することは明らかであり、4.1においてエンジンのパージに言及していないことを考慮すると、当該窒素がエンジンに高い圧力で供給されたものであるか否かは不明である。
そうすると、甲1発明において、仮にタンクAにMAN B&Wアンモニアエンジンからの窒素が回収された燃料アンモニアと共に導入されるとしても、当該窒素は、MAN B&Wアンモニアエンジン「に圧送された」ものであるか否かは不明である。
また、アンモニア捕獲システムが、エンジンの停止後に、窒素など不活性ガスによるパージによって、燃焼装置内から除去された残留アンモニアを捕獲するものであるとしても、MAN B&WアンモニアエンジンからタンクAへの流入経路上には、複数のバルブや、ノックアウトドラムエンジンを介したアンモニア捕獲システムへの分岐経路があり、当該分岐経路によっても燃焼装置内から除去された残留アンモニアを捕獲することが可能であると認められることから、エンジンのパージ時に供給される窒素がタンクAに導入されるか否かは不明である。
したがって、申立人の上記主張は採用することができない。
2 請求項2、3に係る発明について
請求項2、3に係る発明は、本件発明1の発明特定事項をすべて含み、さらに発明特定事項を付加したものである。
本件発明1が甲1発明ではないから、本件発明2、3も、上記1に示した理由と同様の理由により、甲1発明ではない。
また、本件発明1が甲1発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではないから、本件発明2、3も、上記1に示した理由と同様の理由により、甲1発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
3 請求項8に係る発明(以下「本件発明8」という。)について
(1)対比
本件発明8は、本件発明1と実質的に略同様な発明特定事項を含む船舶の発明であり、本件発明8と甲1発明とを対比すると、少なくとも上記相違点1~3で相違する。
したがって、本件発明8は、上記1に示した理由と同様の理由により、甲1発明ではない。
また、本件発明8は、上記1に示した理由と同様の理由により、甲1発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
第6 むすび
したがって、申立人がした特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1~3、8に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1~3、8に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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