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特許異議申立

2022-700325

強化ポリアミド樹脂組成物および成形体

審判番号
2022-700325
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2017-127179外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
登録番号
6952514
請求日
2022年04月19日
審決日
2022年09月06日
公報発行日
2022年10月28日
結論
維持
当事者
審判長/審判官
分類
P1651.113-Y (C08L) / P1651.121-Y (C08L) / P1651.537-Y (C08L)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第113条第2号、特許法第36条第6項第1号、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第36条第6項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第6952514号発明「強化ポリアミド樹脂組成物および成形体」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論
特許第6952514号の請求項1~4に係る特許を維持する。

理由

目次 ▾ 12項目
理 由

第1 手続の経緯

折りたたみ中(クリックで表示)

特許第6952514号(請求項の数4。以下、「本件特許」という。)は、平成29年6月29日を出願日とする特許出願(特願2017-127179号)に係るものであって、令和3年9月30日に設定登録されたものである(特許掲載公報の発行日は、令和3年10月20日である。)。

その後、令和4年4月19日に、本件特許の請求項1~4に係る特許に対して、特許異議申立人である吉澤 悦子(以下、「申立人」という。)により、特許異議の申立てがされた。

第2 本件発明

特許第6952514号の特許請求の範囲の記載は、本件特許の願書に添付した特許請求の範囲の請求項1~4に記載される以下のとおりのものである。(以下、請求項1~4に記載された事項により特定される発明を「本件発明1」~「本件発明4」といい、まとめて「本件発明」ともいう。また、本件特許の願書に添付した明細書を「本件明細書」という。)

「【請求項1】
(A)ポリアミド樹脂100質量部に対して、(B)ガラス繊維および/または炭素繊維0~150質量部、(C)非繊維状無機充填材10~80質量部含む強化ポリアミド樹脂組成物であって、
前記(C)非繊維状無機充填材が、タルク、マイカ、カオリンおよびワラストナイトの中から選ばれる1種以上であり、イソシアネート系化合物、有機シラン系化合物、有機チタネート系化合物、有機ボラン系化合物およびエポキシ化合物の中から選ばれる1種以上で表面処理され、数平均粒子径が10~40μmであり、粒度分布の指標となる(D90-D10)/数平均粒子径が2.8以上である、強化ポリアミド樹脂組成物。
【請求項2】
前記(C)非繊維状無機充填材が、酸無水物基含有アルコキシシラン化合物で表面処理される、請求項1に記載の強化ポリアミド樹脂組成物。
【請求項3】
前記(A)ポリアミド樹脂が、ISO 307に準拠して質量分率96%の硫酸で測定される粘度数が80~150ml/gである、請求項1または2に記載の強化ポリアミド樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の強化ポリアミド樹脂組成物を成形してなる成形体。」

第3 異議申立ての理由の概要及び証拠方法

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異議申立人の申立ての理由の概要は、以下のとおりである。

1 申立理由の概要

(1)申立理由1(新規性)

本件発明1~4は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物である又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第1号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであるから、特許法第113条第2号に該当し、その発明に係る特許は取り消すべきものである。

(2)申立理由2(進歩性)

本件発明1~4は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物である又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第1号証に記載された発明及び甲第2~6号証に記載された技術的事項に基づいて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、特許法第113条第2号に該当し、その発明に係る特許は取り消すべきものである。

(3)申立理由3(サポート要件)

本件の特許請求の範囲の請求項1~4の記載は、同各項に記載された特許を受けようとする発明が、下記「第5 当審の判断」「2 申立理由3(サポート要件)について」「(1)申立理由3の概要」に記載した点で、特許法第36条第6項第1号に適合するものではない。

よって、本件発明1~4に係る特許は、同法第36条第6項に規定する要件を満たさない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。

2 証拠方法

異議申立書とともに提出された証拠方法は、以下のとおりである。

甲第1号証:特開2010-260889号公報
甲第2号証:再公表特許WO2014/024661号公報
甲第3号証:再公表特許WO2015/093260号公報
甲第4号証:特開平6-88022号公報
甲第5号証:特開2008-38149号公報
甲第6号証:特開2007-308611号公報
甲第7号証:化学大辞典編集員会編、「化学大辞典5」、共立出版株式会社、2006年6月15日縮刷版第39刷発行、第683頁
甲第8号証:化学大辞典編集員会編、「化学大辞典1」、共立出版株式会社、2006年6月15日縮刷版第39刷発行、第828頁
甲第9号証:化学大辞典編集員会編、「化学大辞3」、共立出版株式会社、2006年9月15日縮刷版第39刷発行、第290頁

第4 本件明細書及び各甲号証に記載された事項

1 本件明細書に記載された事項

本件明細書には、以下の事項が記載されている。

(本a)「【技術分野】

【0001】

本発明は、機械的強度、耐衝撃性および外観に優れ、さらに低反り性にも優れる強化ポリアミド樹脂組成物および成形体に関する。

・・・

【発明が解決しようとする課題】

【0006】

しかしながら、外観を維持しつつ、機械的強度を向上させるという点では充分ではなかった。

本発明の課題は、自動車部品や小型精密部品等に好適な、機械的強度、耐衝撃性および外観に優れ、さらに低反り性にも優れた強化ポリアミド樹脂組成物および成形体を提供することである。

・・・

【発明の効果】

【0013】

本発明によれば、機械的強度、耐衝撃性および外観に優れ、さらに低反り性にも優れたポリアミド樹脂組成物を提供することができる。」

(本b)「【0015】

まず、本発明で使用することのできる各成分について詳しく述べる。

[(A)ポリアミド]

「ポリアミド」とは、主鎖に-CO-NH-(アミド)結合を有する高分子化合物を意味する。本発明で用いられるポリアミドとしては、特に限定されないが、例えば、(a)ラクタムの開環重合で得られるポリアミド、(b)ω-アミノカルボン酸の自己縮合で得られるポリアミド、(c)ジアミンおよびジカルボン酸を縮合することで得られるポリアミド、並びにこれらの共重合物が挙げられる。ポリアミドは、1種で用いてもよく、2種以上の混合物として用いてもよい。以下、本発明で用いられるポリアミド樹脂の原料について説明する。

・・・

【0029】

本発明において、(A)ポリアミド樹脂は、ISO 307に準拠し、質量分率96%の硫酸で測定される粘度数(VN)が、80~180ml/gであることが、機械的強度、射出成形時の流動性、外観の観点から好ましい。より好ましくは80~150ml/g、さらに好ましくは100~150ml/gであり、特に好ましくは、115~150ml/gである。

【0030】

本発明で用いられる(A)ポリアミド樹脂の配合量は、流動性と外観の観点から、ポリアミド樹脂組成物100質量%に対して30~90質量%であることが好ましい。より好ましくは35~80質量%、さらに好ましくは35~75質量%、特に好ましくは40~70質量%である。」

(本c)「【0031】

[(B)ガラス繊維および/または炭素繊維]

本発明のポリアミド樹脂組成物は、(B)ガラス繊維および/または炭素繊維を含んでいてもよい。ガラス繊維および/または炭素繊維を含有することにより、優れた機械的強度、耐衝撃性、剛性が得られる。

・・・

【0040】

本発明で用いられるガラス繊維および/または炭素繊維の配合量は、機械的強度、耐衝撃性や外観の観点から、(A)ポリアミド樹脂100質量部に対し、0~150質量部である。好ましくは15~150質量部、より好ましくは25~120質量部、さらに好ましくは30~100質量部である。また、ポリアミド樹脂組成物100質量%に対しては、0~57質量%であることが好ましく、より好ましくは10~55質量%、さらに好ましくは15~55質量%、特に好ましくは20~50質量%である。」

(本d)「【0041】

[(C)非繊維状無機充填材]

本発明のポリアミド樹脂組成物は、(C)非繊維状無機充填材を含んでいる。非繊維状無機充填材を含有することにより、優れた機械的強度、外観と剛性が得られる。

【0042】

非繊維状無機充填材としては、球状、板状、棒状、針状、粒状、鱗片状の形状であることが好ましい。

非繊維状無機充填材としては、以下に限定されるものではないが、例えば、フレーク状ガラス、タルク、カオリン、マイカ、ハイドロタルサイト、炭酸カルシウム、炭酸亜鉛、酸化亜鉛、リン酸一水素カルシウム、ワラストナイト、シリカ、ゼオライト、アルミナ、ベーマイト、水酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化ケイ素、酸化マグネシウム、ケイ酸カルシウム、アルミノケイ酸ナトリウム、ケイ酸マグネシウム、グラファイト、黄銅、銅、銀、アルミニウム、ニッケル、鉄、フッ化カルシウム、雲母、モンモリロナイト、膨潤性フッ素雲母およびアパタイトが挙げられる。

これらは、1種のみを単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。

【0043】

例示した中でも、本発明のポリアミド樹脂組成物の機械的強度および剛性を増大させる観点から、フレーク状ガラス、タルク、カオリン、マイカ、炭酸カルシウム、ワラストナイト、グラファイト、モンモリロナイト、膨潤性フッ素雲母およびアパタイトよりなる群から選択される1種以上が好ましい。より好ましくは、タルク、マイカ、カオリンおよびワラストナイトの中から選ばれる1種以上であり、さらに好ましくはタルク、マイカおよびカオリンの中から選ばれる1種以上である。

【0044】

本発明で用いられる非繊維状無機充填材は、優れた機械的強度と耐衝撃性、低反り性をポリアミド樹脂組成物に付与できるという観点から、数平均粒子径が10~40μmである。10μm以上であると、機械的強度に加え、耐衝撃性と低反り性に優れる傾向にある。一方で40μm以下であると、機械的強度に優れる傾向にある。好ましくは10~30μmであり、より好ましくは15~30μmであり、さらに好ましくは15~25μmである。ここで、非繊維状無機充填材の数平均粒子径は、レーザー粒度計にて測定した値である。例えば、島津製作所社製SALD-2100を用いて、原料である非繊維状無機充填材、またはポリアミド樹脂組成物を電気炉に入れて含まれる有機物を焼却処理した残渣分を、分散剤としてヘキサメタリン酸ナトリウム0.2質量%、界面活性剤として中性洗剤を0.1質量%加えた精製水に分散させ、フローセルを使用して測定した粒度分布から求めることができる。

【0045】

また、発明で用いられる非繊維状無機充填材は、上記レーザー粒度計を用いて測定される、D90(体積累積90%粒子径)とD10(体積累積10%粒子径)と数平均粒子径を用いた粒度分布の指標となる(D90-D10)/数平均粒子径が2.8以上である。

2.8以上にすることで、機械的強度と耐衝撃性を両立し、さらに外観、低反り性にも優れるポリアミド樹脂組成物が得られる。好ましくは2.8以上5.0以下であり、より好ましくは2.8以上4.0以下であり、さらに好ましくは2.9以上3.5以下である。D90-D10は粒子分布の広がりを絶対値として示しており、大きい値ほど粒子分布が広いことを意味している。この値を数平均粒子径で除すことにより、粒子径のレンジが異なる分布を、相対的に比較する際の指標と考えることができる。これらの非繊維状無機充填材の粒度分布は、乾式粉砕や湿式粉砕などの方法を利用して調整することができる。

【0046】

非繊維状無機充填材は、表面処理剤などにより表面処理を施してもよい。好ましい表面処理剤としては、イソシアネート系化合物、有機シラン系化合物、有機チタネート系化合物、有機ボラン系化合物およびエポキシ化合物の中から選ばれる1種以上であり、中でも優れた機械的強度、耐衝撃性の観点から、有機シラン系化合物がより好ましい。

・・・

【0050】

本発明で用いられる非繊維状無機充填材の配合量は、機械的強度、耐衝撃性や外観の観点から、(A)ポリアミド樹脂100質量部に対し、10~200質量部である。好ましくは15~150質量部、より好ましくは15~100質量部、さらに好ましくは20~80質量部である。また、ポリアミド樹脂組成物100質量%に対しては、10~65質量%であることが好ましく、より好ましくは10~50質量%、さらに好ましくは10~45質量%、特に好ましくは10~40質量%である。」

(本e)「【0051】

付加的成分の例を以下に挙げる。

酸化防止剤、紫外線吸収剤、熱安定剤、光劣化防止剤、滑剤、可塑剤、離型剤、核剤、難燃剤、着色剤等を添加することもできるし、他の熱可塑性樹脂をブレンドしてもよい。

・・・

【0075】

本発明において、ポリアミド樹脂組成物の製造方法は、単軸または多軸押出機によってポリアミド樹脂を溶融させた状態で混練する方法を用いることができる。上流側供給口と下流側供給口を備えた二軸押出機を使用し、上流側供給口からポリアミド樹脂を供給して溶融させた後、下流側供給口から無機充填材を供給して溶融混練する方法を好ましく使用できる。また、ガラス繊維ロービングを用いる場合も、公知の方法で複合することができる。

このようにして得られる組成物は、従来より公知の種々の方法、例えば、射出成形により各種部品の成形体として成形できる。

【0076】

これら各種部品としては、例えば、自動車用、機械工業用、電気・電子用、産業資材用、工業材料用、日用・家庭品用として好適に使用できる。

以下、実施例をあげて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に制約されるものではない。」

(本f)「【実施例】

【0077】

(使用した原料)

(1)ポリアミド

(1-1)ポリアミド66/6I(以下、PA-1と略記)

ヘキサメチレンアジパミド単位:ヘキサメチレンイソフタルアミド単位=75:25(質量比)の共重合ポリアミド

VN(硫酸):90ml/kg、アミノ末端基:30mmol/kg、

カルボン酸末端基:100mmol/kg

(1-2)ポリアミド66/6I/6(以下、PA-2と略記)

ヘキサメチレンアジパミド単位:ヘキサメチレンイソフタルアミド単位:εカプラミド単位=75:17:8(質量比)の共重合ポリアミド

VN(硫酸):105ml/kg、アミノ末端基:40mmol/kg、

カルボン酸末端基:90mmol/kg

【0078】

(2)ガラス繊維

平均繊維径13μmのガラス繊維(以下、GFと略記)

【0079】

(3)無機充填材

(3-1)数平均粒子径17.0μmのタルク(以下、T-1と略記)

D90:55.8μm、D10:4.4μm

(D90-D10)/数平均粒子径:3.02

モード経:21.1μm

(3-2)数平均粒子径17.0μmのタルク(以下、T-2と略記)

D90:55.8μm、D10:4.4μm

(D90-D10)/数平均粒子径:3.02

モード径:21.1μm

0.5質量%の酸無水物基含有アルコキシシラン化合物(3-トリメトキシシリルプロピルコハク酸無水物)で表面処理されたもの

(3-3)数平均粒子径17.4μmのタルク(以下、T-3と略記)

D90:51.8μm、D10:4.9μm

(D90-D10)/数平均粒子径:2.70

モード径:21.2μm

(3-4)数平均粒子径13.1μmのタルク(以下、T-4と略記)

D90:38.6μm、D10:3.9μm

(D90-D10)/数平均粒子径:2.65

モード径:17.2μm

(3-5)数平均粒子径13.1μmのタルク(以下、T-5と略記)

D90:38.6μm、D10:3.9μm

(D90-D10)/数平均粒子径:2.65

モード径:17.2μm

0.5質量%の酸無水物基含有アルコキシシラン化合物(3-トリメトキシシリルプロピルコハク酸無水物)で表面処理されたもの

(3-6)数平均粒子径4.8μmのタルク(以下、T-6と略記)

D90:10.0μm、D10:2.1μm

(D90-D10)/数平均粒子径:1.65

モード径:6.1μm

【0080】

(4)滑剤

モンタン酸カルシウム[Licomont(登録商標)CaV102(クラリアントケミカルズ社製)](以下、WAXと略記)

【0081】

(5)着色剤

ポリアミド6(VN(硫酸):150ml/g);80質量%、CB(三菱カーボン(登録商標)52B);15質量%、エチレンビスステアリン酸アミド;5質量%で構成されるマスターバッチ(以下、CMBと略記)

【0082】

(評価方法)

以下に、評価方法について述べる。

<引張強度>

実施例および比較例で得られたポリアミド樹脂組成物ペレットを、射出成形機[PS-40E:日精樹脂株式会社製]を用いて、射出+保圧時間25秒、冷却時間15秒、金型温度80℃、溶融樹脂温度290℃に設定し、ISO 3167、多目的試験片A型の成形片を成形した。得られた成形片を用いて、ISO 527に準拠し、引張速度5mm/minで引張試験を行い、引張強度を測定した。

【0083】

<シャルピー衝撃強度>

上記多目的試験片A型を切削して使用し、80mm×10mm×4mmの試験片を用いて、ISO 179/1eAに準拠し、ノッチ付きシャルピー衝撃強度を測定した。

【0084】

<外観>

実施例および比較例で得られたポリアミド樹脂組成物ペレットを、射出成形機[PS-40E:日精樹脂株式会社製]を用いて、金型温度を80℃、溶融樹脂温度290℃に設定し、ISO 294-3に従いタイプD1の金型を用いて、60mm×60mm×2mmの成形片を、射出時の充填時間を1秒、保圧5秒でそれぞれ成形し、目視で外観を判定した。10枚の成形片の両面(合計20面)を観察し、全ての面で充填材の浮きやシルバーストリーク等による白化部分が観察されないものをA、白化部分が観察される面の数が5つ以下のものをB、白化部分が観察される面が6つ以上のものをCとした。

【0085】

<低反り性>

実施例および比較例で得られたポリアミド樹脂組成物ペレットを、射出成形機[PS-40E:日精樹脂株式会社製]を用いて、射出+保圧時間10秒、冷却時間15秒、金型温度を80℃、溶融樹脂温度290℃に設定し、ISO 294-3に従いタイプD1の金型を用いて、60mm×60mm×2mmの成形片を成形した。この試験片を恒温恒湿(23℃、50RH%)雰囲気下で24時間放置後、水平な面に置き、4角のうちの任意の1点を水平な面に固定し、その対角の点の浮き上がり高さを反り量として測定し、0.2mm未満のものをAA、0.2mm以上0.5mm未満のものをA、0.5mm以上1.0mm未満のものをB、1.0mm以上のものをCとした。

【0086】

[実施例1~4、比較例1~7]

押出機上流側から1番目のバレルに上流側供給口を有し、6番目のバレルに下流側第1供給口、9番目のバレルに下流側第2供給口、11番目のバレルに真空脱揮口を有した、L/D(押出機のシリンダーの長さ/押出機のシリンダー径)=48(バレル数:12)の二軸押出機[ZSK-26MC:コペリオン社製(ドイツ)]を用いて、上流側供給口からダイまでを300℃に設定し、スクリュー回転数300rpm、吐出量25kg/hで、表1記載の割合となるように、上流側供給口よりポリアミド、滑剤、着色剤を供給し、下流側第1供給口より無機充填材、下流側第2供給口よりガラス繊維を供給し、真空脱揮口より減圧して溶融混練し樹脂組成物ペレットを作製した。得られた樹脂組成物を、樹脂温度290℃、金型温度80℃にて成形し、引張強度、シャルピー衝撃強度、外観および低反り性を評価した。物性値等を組成とともに表1に併記した。

【0087】

【表1】

[図:0001389413000001.jpg]

【0088】

表1から明らかなように、本発明の強化ポリアミド樹脂組成物は機械的強度、耐衝撃性および外観に優れ、さらに低反り性にも優れていることがわかる。

【産業上の利用可能性】

【0089】

本発明のポリアミド樹脂組成物は機械的強度、耐衝撃性および外観に優れ、さらに低反り性にも優れるため、自動車部品や小型電気電子部品など、機械的強度と良外観が要求される成形品として好適に利用することができる。」

2 各甲号証に記載された事項

(1)甲第1号証に記載された事項

甲第1号証には、以下の事項が記載されている。

(甲1a)「【特許請求の範囲】

【請求項1】

(A)結晶性脂肪族ポリアミド樹脂90~60重量部および(B)非晶性または難結晶性ポリアミド樹脂10~40重量部から成る全ポリアミド樹脂100重量部に対して、(C)ポリアミドと反応しうる官能基を有するオレフィン樹脂、オレフィン系エラストマー及びスチレン系エラストマーからなる群から選ばれる少なくとも1種の樹脂5~20重量部、(D)異形断面ガラス繊維40~250重量部、(E)球状及び/又は不定形の無機充填剤5~50重量部を含有するポリアミド樹脂組成物であり、該組成物の示差走査熱量計(DSC)により求められる降温結晶化温度(TC2)の最高温度側が205℃以上で、かつ、該組成物のDSCにて測定した融点より20℃高い温度条件で、せん断速度12.2sec-1における溶融粘度が1000Pa・s以上で、かつせん断速度1216sec-1における溶融粘度が250Pa・s以下であるガラス繊維強化ポリアミド樹脂組成物。

【請求項2】

請求項1に記載の樹脂組成物100重量部に対してテルペンフェノール系樹脂を1~10重量部添加してなるガラス繊維強化ポリアミド樹脂組成物。

【請求項3】

前記(E)球状及び/又は不定形の無機充填剤がガラスビーズである請求項1または2に記載のガラス繊維強化ポリアミド樹脂組成物。

【請求項4】

前記(E)球状及び/又は不定形の無機充填材が、あらかじめ表面処理剤が付与された請求項1~3のいずれかに記載のガラス繊維強化ポリアミド樹脂組成物。

【請求項5】

ISO-178に準じて測定した曲げたわみ率が2.0%以上である、請求項1~4のいずれかに記載のガラス繊維強化ポリアミド樹脂組成物。

【請求項6】

シャルピー衝撃強度が12KJ/m2以上である請求項1~5のいずれかに記載のガラス繊維強化ポリアミド樹脂組成物。

【請求項7】

100角1mm厚さの成形品のソリ変形量が、4mm以下である請求項1~6のいずれかに記載のガラス繊維強化ポリアミド樹脂組成物。

【請求項8】

請求項1~7のいずれかに記載のガラス繊維強化ポリアミド樹脂組成物を用いて成形された、厚さ1.3mm以下の成形品。

【請求項9】

請求項1~7のいずれかに記載のガラス繊維強化ポリアミド樹脂組成物を用いて成形された、金属部品がインサートされた成形品。」

(甲1b)「【技術分野】

【0001】

本発明は、脂肪族結晶性ポリアミド樹脂、半芳香族ポリアミド樹脂、反応性柔軟樹脂および異形断面形状を有するガラス繊維および球状及び/又は不定形の無機充填材等からなる繊維強化ポリアミド樹脂組成物に関する。 詳しくは、優れた強度、良ウエルド特性、剛性と靭性および耐衝撃破壊特性等の物性を持ち、良好な流動性と低ソリ性および成形品表面外観特性に加えて、薄肉成形時のバリ発生量が少なく、極めて早いサイクルでの成形時の突き出し変形が少ない高剛性で易成形性のポリアミド樹脂組成物であり、薄肉軽量化電化製品、例えば携帯電話、携帯用の音楽を聞く製品、携帯用の映像を見る製品および携帯用パソコン等の筐体用材料などに適するものである。

・・・

【0008】

そこで、本発明は上述の問題点や筐体としての要求される課題を解決すること、即ち優れた強度、良ウエルド特性、剛性と靭性や低ソリ性、良好な意匠面外観を合わせ持つことはもとより、良好な流動性と低バリ性の相反する特性を両立させ、塗装やの優れた後加工性、ハイサイクル化達成による量産性を有するポリアミド樹脂組成物を得ることを課題とする。

・・・

【発明の効果】

【0014】

本発明のポリアミド樹脂組成物は優れた剛性と良ウエルド特性と耐衝撃性を有し、低ソリ性や外観特性が極めて良好であり、塗装、着色等の後加工性が良い。また、バリの少ない薄肉成形品をハイサイクルで成形が可能であり、機械特性と共に軽量化と意匠性が重視される携帯用電化製品、例えば、例えば携帯電話、携帯用の音楽を聞く製品、携帯用の映像を見る製品および携帯用パソコン等の筐体用材料などに適するものである。」

(甲1c)「【0016】

以下に本発明を具体的に説明する。

本発明における(A)成分に用いる結晶性脂肪族ポリアミド樹脂としては分子中に酸アミド結合(-CONH-)を有する脂肪族ポリアミド樹脂で、結晶融点を有するものである。 具体的にはポリカプロアミド(ナイロン6)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン66)、ポリテトラメチレンアジパミド(ナイロン46)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ナイロン610)、ポリヘキサメチレンドデカミド(ナイロン610)、ポリラウリルラクタム(ナイロン12)、ポリー11-アミノウンデカン酸(ナイロン11)等、およびそれらの共重合体やブレンド物等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。本発明においては、特に好ましい結晶性脂肪族ポリアミド樹脂としてはナイロン6とナイロン66との混合物であり、ナイロン6/ナイロン66の混合比率は重量比で80/20~20/80である。さらに好ましくは、70/30~30~70である。

【0017】

前記結晶性脂肪族ポリアミド樹脂の96%-硫酸濃度(ポリアミド樹脂濃度1g/dl)測定による相対粘度は、1.6~2.8の範囲が好ましい。特に好ましい相対粘度は1.7~2.4の範囲である。なお1.6未満ではタフネスが低下するため好ましくなく、2.8を超えると流動性が低下して好ましくない。また結晶性脂肪族ポリアミド樹脂の配合量は全ポリアミド樹脂に対して90~60重量部である。また、複数の脂肪族ポリアミドを配合する時は、それぞれのポリアミドの相対粘度が上記範囲に入るポリアミドを使用する必要がある。

【0018】

本発明における(B)成分に用いる非晶性または難結晶性ポリアミド樹脂としては、JIS K7121に準じて昇温速度20℃/分でDSC測定いた場合に、明確な融点を示さないポリアミドや昇温時発熱ピークが観測されるポリアミドである。具体的には4,4'-ジアミノ-3,3'-ジメチルジシクロヘキシルメタン(CA)、4,4’-ジアミノジシクロヘキシルメタン(PACM)、メタキシリレンジアミン(MXD)、トリメチルヘキサメチレンジアミン(TMD)、イソフォロンジアミン(IA)、4,4’-ジアミノジシクロヘキシルプロパン(PACP)、ヘキサメチレンジアミン等のジアミンとと テルフタール酸、イソフタール酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカン2酸 等のジカルボン酸およびカプロラクタム、ラウリルラクタム等のラクタム類から重縮合して得られる重合体または共重合体もしくはブレンド物等を例示することが出来るが、これらに限定されるものではない。

これらの非晶性ポリアミド樹脂の中で、特に好ましいものはヘキサメチレンテレフタルアミド/ヘキサメチレンイソフタルアミド共重合体(6T/6I)、4,4'-ジアミノ-3,3'-ジメチルジシクロヘキシルメタン(CA)/イソフタール酸(I)/ラウリルラクタム(LL)共重合体(I/CA/LL)およびテレフタール酸(T)/トリメチルヘキサメチレンジアミン(TMD)重合体(T/TMD)である。

【0019】

非晶性または難結晶性ポリアミド樹脂の96%硫酸測定による相対粘度は1.8~3.5の範囲が好ましく。特に好ましいのは2.0~2.8の範囲である。なお1.6未満ではタフネス性が低下するため好ましくない、3.5を越えると流動性が低下して好ましくない。

また非晶性ポリアミド樹脂の配合量は全ポリアミド樹脂100重量部中に10~40重量部である。さらに好ましくは、10~30重量部である。」

(甲1d)「【0020】

本発明における携帯用電化製品の筐体には多くの課題があり、薄肉製品での流動性と低バリ性という相反する特性を両立することも一つの大きな課題である。この課題を解決するため、低粘度に調整した脂肪族ポリアミドに、変性したオレフィンやスチレン系の柔軟性樹脂の配合が成形品のバリ防止に極めて重要である。

・・・

【0025】

官能基を含有する柔軟樹脂の配合量は全ポリアミド樹脂100重量部に対して1~20重量部である。好ましくは1~15重量部、さらに好ましくは、3~12重量部である。

柔軟樹脂の配合量は、少なすぎるとバリ抑制の改良効果が小さく、多すぎると熱間剛性が低下して金型からの突き出し時に変形したり、粘度が高くなりすぎて成形性を逆に損なう場合があり、好ましくない。」

(甲1e)「【0026】

本発明における(D)成分に用いる異形断面ガラス繊維とはガラス繊維の断面がほぼ扁平な形状になっており、ガラス繊維断面の短径D1と長径D2が異なる寸法を有しているガラス繊維である。本発明における異形断面形状を有するガラス繊維の長径と短径の比、D2/D1は1.5以上の異形比を持っている。好ましくはD2/D1は1.5~10であり、更に好ましくはD2/D1は2.0~8である。

・・・

【0027】

異形断面ガラス繊維の配合量は全ポリアミド樹脂100重量部に対して50~250重量部である。さらに好ましくは、100~170重量部である。」

(甲1f)「【0028】

本発明における(E)球状及び/不定形の無機充填材とは、無機充填材の形状が繊維状・板状形状では無く、球状及び又は不定形の形状を有する無機充填材である。球状及び/又は不定形の形状とは、長短度(長径/短径)、扁平度(短径/厚さ)、アスペクト比(投影面積径/厚さ)のいずれもが3.0以下、このましくは2.0以下、最も好ましいのは1.0(球)である。これらの値が3.0以上になればウエルド強度が低下し好ましくない。

具体的には、ガラスビーズ・シリカ・炭酸カルシュウム・ワラストナイト・硫酸バリュウム・針状性の小さいワラストナイト・粒子性のホウ酸アルミニウム等をかかげられるが、これらに限定されるものではない。

球状及び/又は不定形の無機充填材の粒子径には特に制限がなく、任意のものが使用できるが、例えば、粒子径が1~80μmのものが好ましく、2~50μmのものがより好ましい。

【0029】

本発明者は、種々の検討の中で、異形断面ガラス繊維と球状及び/又は不定形の無機充填材を単純に併用した場合は、通常の丸形断面ガラス繊維と球状及び/又は不定形の無機充填材の併用の場合に比べても、ガラス繊維による機械物性の強化効果が球状及び、又は不定形の無機充填材によって著しく損なわれてしまうことが明かとなった。この理由は、異形断面ガラス繊維は、その異形形状故に、丸型ガラス繊維と比較して成形品中でのガラス繊維同士の絡み合いが少なく、かつ球状及び/又は不定形の無機充填材がガラス繊維同士の絡み合いを阻害するためであると考えられる。つまり、異形断面ガラス繊維や球状及び/又は不定形の無機充填材の場合は、マトリックス樹脂とのぬれやすさ、接着性が大きく影響するものと考えられる。そこで、本発明者は、球状及び/又は不定形の無機充填材をあらかじめポリアミドと球状及び/又は不定形の無機充填材との双方に反応しうる官能基を含有するシランカップリング剤などの表面処理剤で前処理するか、またはかかる表面処理剤をポリアミドと球状及び/又は不定形の無機充填材の双方に反応しやすいように組成物中に配合できれば、ポリアミドと球状及び/又は不定形の無機充填材、さらには異形断面ガラス繊維との接着性が向上し、機械物性の低下を抑制することができると考えて本発明の組成物の機械的物性を高度なものとすることができたのである。

【0030】

ポリアミドと球状及び/又は不定形の無機充填材との双方に反応しうる官能基を含有する表面処理剤としては、シラン系化合物、エポキシ系化合物、イソシアネート系化合物、チタネート系化合物等の公知の表面処理剤を使用することができる。・・・

球状及び/又は不定形の無機充填材の配合量は全ポリアミド樹脂100重量部に対して1~50重量部である。好ましくは、3~40重量部、さらに好ましくは、10~30重量部である。

これらの球状及び/又は不定形の無機充填材は、配合量が少なすぎるとソリ改善効果が低く、多く配合しすぎると靭性を著しく損なうため、好ましくない。」

(甲1g)「【0038】

本発明のガラス繊維強化ポリアミド樹脂組成物には、前記以外に、必要に応じて公知の範囲で光又は熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、可塑剤、滑材、結晶核剤、離型剤、帯電防止剤、ハロゲン系難燃剤と酸三化アンチモンの組み合わせ、各種リン酸系難燃剤、メラミン系難燃剤、無機顔料、有機顔料、染料、あるいは他種ポリマーなども添加することが出来る。

【0039】

本発明のガラス繊維強化ポリアミド樹脂組成物を製造する製造法としては、上述した少なくとも(A)、(B)、(C)、(D)及び(E)の各成分、および塗装性改良樹脂、その他の配合物は上記配合組成にて任意の配合順列で配合した後、タンブラー或いはヘンシェルミキサー等で混合し、溶融混錬される。溶融混錬方法は、当業者に周知のいずれかの方法が可能であり、単軸押出機、2軸押出機、ニーダー、バンバリーミキサー、ロール等が使用できるが、なかでも2軸押出機を使用することが好ましい。」

(甲1h)「【実施例】

【0040】

次に実施例および比較例を用いて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。

また 以下に実施例、比較例において示した各特性および物性値は、下記に示した試験方法で測定した。

(1-1)曲げ強度、曲げ弾性率、曲げたわみ率:ISO-178に準じて測定した。

(1-2)ウエルド部曲げ強度:試験片の両端より溶融樹脂を挿入しISO-178に準じて測定した。

(2)シャルピー衝撃強度:ISO-179-1eAに準じて測定した。

(3)融点・TC2:エスアイアイナノテクノロジー社製DSC6220を用い、窒素気流下で20℃/分の昇温速度で300℃まで昇温し、その温度で5分間保持した後、10℃/分の速度にて50℃まで降温させたことにより測定した数値である。融点は、昇温時の吸熱ピークのピークトップとしたが、複数のポリマーを配合して吸熱ピークが多段で発生する場合には、発現した吸熱ピークの最高温側のピークのピークトップを融点とした。同様にTC2は、降温時の発熱ピークのピークトップとしたが、多段で発熱ピークが観測された場合には、最高温側のピークトップをTC2とした。DSCの測定試料は、100×100×1mmの平板の中央部付近から切り出した。

(4)取り出し剛性:図1に示す成形品において、シリンダー温度は各評価用材料をDSCにて測定した融点より20℃高い温度に設定し、金型温度は90℃とし、射出時間6秒、冷却時間10秒として成形し、成形品取り出しから5秒以内に取り出した成形品を図2に示す様に、プッシュプルゲージを用いて折り曲げた時の力を測定した。成形品は、ゲート側端部を15mm程度錘に挟み込み、プッシュする地点は中に浮かせた成形品端部から60mmの成形品中央部付近にて測定した。

○ : 折り曲げ力が、2.5Kgより大きい

× : 折り曲げ力が、2.5Kg以下

(5)平面ソリ:図1に示した100×100×1mm(フィルムゲート) の平板の成形品を定盤の上に固定し、9地点の高さを3次元測定機で測定し、その平均値から平面ソリ変形量を評価した。評価に用いた成形品の成形は、シリンダー温度は各評価用材料をDSCにて測定した融点より20℃高い温度に設定し、金型温度は90℃とし、射出時間6秒、冷却時間10秒として成形した。

◎ : ソリ量が、3.0mm未満

○ : ソリ量が、3.0mm以上、4.0mm以下

× : ソリ量が、4.0mmを超える

(6)塗装密着性:ウレタン塗料をスプレーガンで塗装、塗料膜厚は約30μ。焼付温度は120℃×30分で行い、密着性の強度は、φ10mm長さ300mm片側フック付き円筒形治具の金属治具を塗装後の成形品にアロンアルファ101を用いて接着し、フック部分をプッシュプルゲージで引っ張って塗膜の剥離力を求めた。

◎ : 剥離力が25Kgを超え、剥離した塗料に破壊した母材が付着している。

○ : 剥離力が15Kg以上、20Kg以下。

× : 剥離力が15Kg未満。

(7)成形品バリ量:図1に示す、100×100×1mm(フィルムゲート)の平板を同一射出条件にて成形して発生したバリ量について測定、比較した。成形条件は、各樹脂のバリ発生量が容易に比較できるように高圧で成形し、水準間の特性について比較した。詳細な成形条件について以降に示す。成形機は東芝機械社製、IS-100N、スクリュー口径はφ32mmを用いて射出圧力 180MPaに設定し、充填時間が0.5秒となる様に射出速度を設定した。保圧は、40MPaに設定し、充填時間+保圧時間で5秒とした。樹脂温度は、全水準で280℃にて成形し、金型温度は表中に記載する各樹脂の最適金型温度となるよう設定した。

◎ : 発生したバリの最大長さが、3.0mm未満。

○ : 発生したバリの最大長さが、3.0mm以上、4.0mmm以下。

× : 発生したバリの最大長さが、4.0mmを超える。

(8)成形品外観:平板ソリ測定用の成形品で、ガラス繊維の浮きおよび表面光沢等を目視観察した。

◎ : 成形品全体にガラスや強化材の浮きが無い。

○ : ゲート付近や末端に僅かにガラスや強化材の浮きがある。

× : 成形品全体に多量のガラス繊維や強化材の浮きがある。

(9)せん断粘度:キャピラリーレオメーター(東洋精機(株)、製品名キャピログラフ1B)を使用した。

キャピラリー形状:穴の直径1.0mm、長さ30mm
せん断速度:12.2sec-1(1.0mm/分)
せん断速度:1216sec-1(100.0mm/分)
測定温度:DSCにて測定した融点より20℃高い温度

(10)流動長:図3に示す成形品に対して、一定成形条件で射出した時の流動距離を測定した。成形条件について以下に示す。

シリンダー温度:DSCにて測定した融点より15℃高い温度に設定
金型温度:90℃
射出圧力:150MPa
射出時間:8秒

【0041】

機械物性、せん断粘度、各種成形や測定用いたナイロン樹脂組成物は、水分の混入による変動を防止するために、水分率を0.08%以下となる様に乾燥して用いた。水分率の測定は、カールフィッシャー式水分率計、三菱化学社製CA-100型を用いて、200℃にて水分率を測定した。

【0042】

実施例、比較例で使用した原材料は以下の通りである。

(1)ナイロン樹脂として以下を使用した。

・相対粘度RV=2.4の6ナイロン、東洋紡ナイロンT-840

・相対粘度RV=1.9の6ナイロン、東洋紡ナイロンT-840SF

・相対粘度RV=2.4の66ナイロン、東レアミランE3000F

・相対粘度RV=2.0の6T/6I共重合ナイロン、6T/6I=33/67モル

・相対粘度RV=1.8のMXD6ナイロン東洋紡ナイロンT-640

(2)テンペンフェノール、 ハヤカワケミカル社製、YSポリスターS145

(3)マレイン酸変性PE(MAH-PE)、三井東圧化学社製、MME-001

(4)マレイン酸変性SEBS(MAH-SEBS)、旭化成社製、タフテックM1943

(5)異形断面ガラス繊維、 日東紡(株)製 3PA820S

(6)丸断面ガラス繊維、 オーエンスコーニング社製 MAFT2A

(7)ガラスビーズ、 東芝バロティー二(株)製 EBG731B(18μφ)

(8)ワラストナイト、 長瀬産業(株)製 NYAD325(長短度=1.7)

(9)エポキシシラン変性ワラストナイト、 長瀬産業(株)製 NYAD325(長径が12μ、短径が7μ、長短度=1.7)を用いて、ワラストナイト100重量部に対して、日本ユニカー社製エポキシシラン、A-187を0.5重量部添加し、攪拌することで前処理したエポキシシラン変性ワラストナイトを作製した。

(10)エポキシシラン変性白マイカ、 平均粒径27μmの白マイカを用いて、マイカ100重量部に対して、日本ユニカー社製エポキシシラン、A-187を0.5重量部添加し、撹拌することで前処理したエポキシシラン変性マイカを作成した。

(11)その他の添加剤

・安定剤 ヒンダートフェノール 全組成物100重量部に対して、0.5重量部

・離型剤 モンタン酸エステル 全組成物100重量部に対して、0.6重量部

・カップリング剤 アミノシランカップリング剤 全組成物100重量部に対して0.3重量部

【0043】

評価サンプルの製造は表1に示した割合で各原料を計測し、ガラス繊維を除く他の原料をタンブラーで混合した後、L/D=32の二軸押出機のホッパーに投入した。 ガラス繊維は二軸押出機の第二ベント口から計量しながら投入した。二軸押出機の混錬温度は230℃~300℃である。 得られた繊維強化ポリアミド樹脂組成物のペレットは射出成形機で各種の評価用試料を成形した。射出成形機の成形条件は、特に記載していない項目の評価には、シリンダー温度245~300℃、金型温度は80℃~145℃で、適宜各水準のベース樹脂に適切な条件に設定して成形した。

評価結果は表1及び表2に示した。

【0044】

【表1】

[図:0001389413000002.jpg]

【表2】

[図:0001389413000003.jpg]

【0045】

本発明の特許請求項を満足した 実施例1~5はいずれも高い流動性、すなわち高せん断時の溶融粘度が低く、一定圧力下での流動長が長いにも関わらず、低せん断時の溶融粘度が高く、薄肉成形品でも低圧成形が可能となって成形品のバリ発生量が少なく良好な結果となっている。また、易成形性において重要な指標となる、薄肉成形品かつ短時間の型内冷却時間でありながら取り出し時の剛性優れており、結晶化挙動の制御によってハイサイクル成形性が可能となっている。成形品のソリ変形に関しても極めて優れている。更に低粘度かつ強化材高充填樹脂組成物でありながら、曲げたわみ率もいずれも良好な値を示しており、靭性面及びウエルド特性も良好な結果である。

また、実施例2~5は、塗装性改良材を適量配合することで、特性面を保持しながら塗膜密着性がさらに良好な結果を示した。

この様に請求項を満足する樹脂組成物は、薄肉成形品における低バリ性、ハイサイクル成形、成形品ソリ量、靭性、塗装性などの携帯用電化製品の筐体材料として必要な多くの要求特性を満足するものである。

【0046】

比較例1は通常丸型ガラス繊維に、大量のマイカを配合した組成物であるが、ソリ量は十分に改善されていないばかりか、靭性をも損なっている。また、単にポリアミド6に6T6I共重合ポリアミドを配合しただけでは、取り出し時の剛性が全く満足できていない。又、板状晶のマイカを使用している為、ウエルド部の特性が大幅に低下している。

比較例2はポリアミド6と66をブレンドし、異形断面ガラス繊維を高充填した組成であるが、単に異形断面ガラス繊維を配合しただけではソリ改良効果が充分でない結果であった。また、樹脂相対粘度を高くすれば靭性面は良好となり、低せん断時の溶融粘度も比較的高くなるが、一方で高せん断域での溶融粘度も上昇してしまうために流動長が低くなった結果、薄肉成形品の狭いキャビティへ流動させるための充填圧力が高くなる。その結果ゲート付近の金型壁面への圧力も同時に高くなりバリの発生を抑制することは極めて困難であった。

比較例3は、低粘度のポリアミド66に6T6I共重合ポリアミドを配合し、異形断面ガラス繊維を配合した組成であり、取り出し時の剛性や成形品外観は良好であり、かつ流動性も良好で流動長は充分であったが、射出時にゲート付近の金型壁面に掛かる圧力が小さくても、低せん断時の溶融粘度が低いためにバリの発生が抑制できない結果であった。さらに、ソリ量も充分に改良がなされていない結果であり、異形断面ガラス繊維のみの配合では充分でない結果であった。

比較例4は、ベース樹脂としてMXD6を使用した例である。MXD6は、難結晶性樹脂であり、成形時に薄肉成形品を十分に結晶化させるために金型温度140℃の設定が必要であった。

そのため、粘度特性は請求項の範囲内としてもバリの発生を抑制することが出来ない結果であった。また、MXD6の様な半芳香族ポリアミドは、脂肪族ポリアミドと比較して靭性が低く、加えて低粘度としているため、曲げたわみ率が低く、薄肉成形品の場合、製品の脆さも大きな問題となり得る。

比較例5~10は請求項の範囲を外した組成物での実施結果である。

反応性柔軟成分が多すぎると、TC2が範囲内であっても柔軟成分が多すぎるために熱間剛性が低下して取り出し剛性が著しく低下し、また流動長が損なわれるために、成形時に樹脂に掛かる圧力が増大してゲート付近のバリが多く発生した。

非晶性ポリアミドを大量に配合すると、固化速度が極めて遅くなるために取り出し時の剛性が不足し変形が発生した。

比較例7は、実施例に近い組成であるがベース樹脂の粘度が高いために流動長が小さくなり、比較例1や5と同様にバリが多く発生した。

【0047】

実施例、比較例から明らかなように、本発明の課題である優れた成形性と機械特性、良ウエルド特性、低ソリ性、意匠面外観、塗膜密着性を合わせ持ち、さらに薄肉製品を成形するために極めて重要な特性である、良好な流動性と低バリ性という、相反する特性を両立させたポリアミド樹脂組成物を得るためには、本発明のポリアミド樹脂組成物によって上記課題が達成できることが明らかとなった。」

(2)甲第2号証に記載された事項

甲第2号証には、以下の事項が記載されている。

(甲2a)「【0033】

実施例

[図:0001389413000004.jpg]

以上の各成分をニーダを用いて混練し、180℃、4分間の一次加硫および200℃、15時間の二次加硫を行い、内径95mm、外径113mm、幅8.5mmのオイルシールを加硫成形した。

【0034】

比較例1

実施例において、ウォラストナイトとして同社製品NYGLOS8(平均粒子径8μm、平均粒子長136μm、アスペクト比17)が同量用いられた。

【0035】

比較例2

実施例において、ウォラストナイトとして同社製品NYAD400(平均粒子径7μm、平均粒子長35μm、アスペクト比5)が55重量部用いられた。

【0036】

比較例3

実施例において、ウォラストナイトとして同社製品NYAD1250(平均粒子径3μm、平均粒子長9μm、アスペクト比3)が同量用いられた。

【0037】

比較例4

実施例において、ウォラストナイトとして同社製品NYAD325(平均粒子径10μm、平均粒子長50μm、アスペクト比5)が55重量部用いられた。」

(3)甲第3号証に記載された事項

甲第3号証には、以下の事項が記載されている。

(甲3a)「【0047】

また、上記板状充填材、粒状充填材としては、例えば、タルク、カオリンクレー、炭酸カルシウム、酸化亜鉛、ケイ酸カルシウム水和物、マイカ、ガラスフレーク、ガラスビーズ、炭酸マグネシウム、シリカ、酸化チタン、アルミナ、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、亜硫酸カルシウム、ホウ酸亜鉛、メタホウ酸バリウム、ホウ酸アルミニウム、ホウ酸カルシウム、ホウ酸ナトリウム、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素、上記繊維状充填材の粉砕物などが挙げられる。これらは単独で使用してもよいし、2種以上組み合わせて使用してもよい。

【0048】

充填材(B)は、レーザー回折散乱式粒度分布測定法による重量基準粒度分布における平均粒子径が0.1μm以上であることが好ましい。これにより、熱硬化性樹脂組成物(P)の作業性を向上させつつ、得られる樹脂部材101の機械的強度をより一層向上させることができる。充填材(B)の平均粒子径の上限は特に限定されないが、例えば、100μm以下である。

また、充填材(B)としては、平均長径が5μm以上50mm以下で、平均アスペクト比が1以上1000以下である繊維状充填材または板状充填材を含むことがより好ましい

・・・

【0049】

充填材(B)としてはワラストナイト、カオリンクレー、タルク、マイカ、ガラスビーズ、酸化チタン、アルミナ、シリカ、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、亜硫酸カルシウム、ホウ酸亜鉛、メタホウ酸バリウム、ホウ酸アルミニウム、ホウ酸カルシウム、ホウ酸ナトリウム、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素、炭素繊維、およびガラス繊維からなる群から選ばれる一種または二種以上が好ましく、ガラス繊維、炭素繊維、ガラスビーズ、炭酸カルシウム、ワラストナイト、シリカ、カオリンクレーからなる群から選ばれる一種または二種以上がより好ましい。このような充填材(B)を用いると、樹脂部材101の機械的強度を特に向上させることができる。

【0050】

また、充填材(B)は、後述するシランカップリング剤(C)などのカップリング剤による表面処理が行われていてもよい。」

(甲3b)「【0085】

(実施例3)

熱硬化性樹脂組成物(P1)の代わりに、以下の熱硬化性樹脂組成物(P3)を使用した以外は実施例1と同様の方法により金属樹脂複合体3を作製した。この金属樹脂複合体3を試験片3とし、実施例1と同様の評価をおこなった。

ノボラック型フェノール樹脂(PR-51305、住友ベークライト社製)を25.0質量%、ヘキサメチレンテトラミンを5.0質量%、ガラス繊維(CS3E479、日東紡社製、平均粒子径:11μm、平均長径:3mm、平均アスペクト比:270)を17.0質量%、ワラストナイト(NYCO Minerals社製、製品名:NYAD325、平均粒子径:10μm)を26.0質量%、溶融シリカ(ELKEM社製、製品名:SIDISTAR、平均粒子径:0.15μm)を17.0質量%、カルボン酸変性のポリ酢酸ビニル(電気化学工業社製、製品名:デンカASR CH-09)を6.0質量%、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン(信越化学工業社製、製品名:KBE-903)を0.5質量%、酸化マグネシウム(協和化学工業社製、製品名:キョーワマグ30)を0.6質量%、潤滑剤等のその他の成分を2.9質量%、それぞれ乾式混合し、これを90℃の加熱ロールで溶融混練して、シート状にして冷却したものを粉砕して顆粒状の熱硬化性樹脂組成物(P3)を得た。」

(4)甲第4号証に記載された事項

甲第4号証には、以下の事項が記載されている。

(甲4a)「【請求項1】 (A)ポリアミド樹脂 20~98重量%および(B)下記(I)または(II)式で示されるコハク酸系またはコハク酸無水物系化合物により表面処理された無機充填材 80~2重量%からなるポリアミド樹脂組成物。

[図:0001389413000005.jpg]

【化2】

[図:0001389413000006.jpg]

(式中、R1、R2およびR3はそれぞれ単独に炭素数1~10のアルキル基を、R4は水素またはメチル基を、nは1~15の整数を表わす。)」

(甲4b)「【0009】また、本発明に使用する無機充填材としては従来公知の各種充填材が使用できる。その例としては、例えば、酸化鉄、アルミナ、酸化マグネシウム、亜鉛華などの酸化物;水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、塩基性炭酸マグネシウム、水酸化カルシウム、酸化錫水和物、酸化ジルコニウム水和物などの水和金属酸化物;炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムなどの炭酸塩;タルク、クレー、ベントナイト、アタパルジャイトなどの珪酸塩;ほう酸バリウム、ほう酸亜鉛などのほう酸塩;燐酸アルミニウム、トリポリリン酸ナトリウムなどの燐酸塩;石膏などの硫酸塩などを挙げることができる。また、繊維状充填材としては、例えばガラス繊維、チタン酸カリウム繊維、金属皮膜ガラス繊維、セラミックス繊維、ウォラスドナイト、金属炭化物繊維などを挙げることができる。その他のものとしては、ガラスビーズ、ガラスバルーン、シラスバルーンなどの球状物、ガラス粉末、ガラスフレーク、マイカなどを挙げることができる。これらの無機充填材は単独でも、2種以上を混合しても用いることができる。」

(5)甲第5号証に記載された事項

甲第5号証には、以下の事項が記載されている。

(甲5a)「【特許請求の範囲】

【請求項1】

(A)ポリアミド(ただし、テレフタル酸を60~100モル%含有するジカルボン酸単位(a)と、1,9-ノナンジアミン単位(b-1)および2-メチル-1,8-オクタンジアミン単位(b-2)を60~100モル%含有するジアミン単位(b)からなる半芳香族ポリアミドは除く)(B)ポリフェニレンエーテル、(C)下式(I)で表されるホスフィン酸塩、下式(II)で表されるジホスフィン酸塩及びこれらの縮合物の中から選ばれる少なくとも1種のホスフィン酸塩類を含んでなる樹脂組成物であって、ここで(A)ポリアミドの粘度数(ISO307:1997で規定される96%硫酸中で測定)が50ml/g~250ml/gである事を特徴とする樹脂組成物。

【化1】

[図:0001389413000007.jpg]

[式中、R1及びR2は、同一か又は異なり、直鎖状もしくは分岐状のC1~C6-アルキル及び/又はアリールもしくはフェニルであり、R3は、直鎖状もしくは分岐状のC1~C10-アルキレン、C6~C10-アリーレン、C6~C10-アルキルアリーレン又はC6~C10-アリールアルキレンであり、Mはカルシウム(イオン)、マグネシウム(イオン)、アルミニウム(イオン)、亜鉛(イオン)、ビスマス(イオン)、マンガン(イオン)、ナトリウム(イオン)、カリウム(イオン)及びプロトン化された窒素塩基から選ばれる1種以上であり、mは2又は3であり、nは1~3であり、xは1又は2である。]」

(甲5b)「【0027】

本発明で使用されるポリアミドはISO307:1994に準拠し96%硫酸で測定した粘度数が50ml/g~250ml/gである必要がある。ポリアミドの粘度数を50ml/g以上とする事により、押出し等の加工性が向上するとともに、難燃性が向上し、成形時のガスの発生が大幅に抑制される。また、モールドデポジットの発生が少ないので、射出成形時の正常な成形が可能なショット数を飛躍的に増やす事ができ、成形性の大幅な改善につながる。また、粘度数を250ml/g以下とする事により、上述した効果に加え、薄肉成形品の成形性の向上といった新たな効果が発現できるようになる。

好ましい下限値は70ml/gであり、更に好ましい下限値は100ml/gである。また、好ましい上限値は、200ml/gであり、最も好ましい上限値は150ml/gである。

【0028】

また、本発明で使用されるポリアミドがポリアミド9,T等の半芳香族ポリアミドである場合は、好適な粘度範囲が若干異なる。好適な粘度数の下限値は、70ml/gであり、更に好ましい下限値は100ml/gである。また、より好ましい上限値は150ml/gであり、最も好ましい上限値は120ml/gである。

本発明の効果である種々の特性は、ポリアミドの粘度数により大きく変動し、特定範囲内の粘度数を有するポリアミドを使用した場合において特異的に特性の改善が見られる。」

(甲5c)「【0089】

本発明の(F)成分の無機充填材とは、ガラス繊維、チタン酸カリウム繊維、石膏繊維、黄銅繊維、ステンレス繊維、スチール繊維、セラミックス繊維、ボロンウィスカ繊維、マイカ、タルク、シリカ、炭酸カルシウム、カオリン、焼成カオリン、ウォラストナイト、ゾノトライト、アパタイト、ガラスビーズ、ガラスフレーク、酸化チタン、着色用カーボンブラック等の繊維状、粒状、板状、あるいは針状の無機質強化材が挙げられる。これら無機充填材は2種以上組み合わせて用いても構わない。これらの中でもより好ましい無機充填材としては、タルク、ウォラストナイト、ガラス繊維が挙げられる。また、無機充填材はシランカップリング剤等の表面処理剤を用いて公知の方法で表面処理した物を用いても構わない。

【0090】

本発明における無機充填材の好ましい量は、無機充填材を含む樹脂組成物すべての質量を100質量%とした際に1~70質量%である。より好ましい量としては5~50質量%であり、最も好ましくは10~45質量%である。」

(6)甲第6号証に記載された事項

甲第6号証には、以下の事項が記載されている。

(甲6a)「【特許請求の範囲】

【請求項1】

下記の成分(A)~(D)を、組成物を構成する全成分の合計100重量%に対して、それぞれ下記の比率で含有してなる自動車外装部品製造用熱可塑性樹脂組成物。

成分(A):ISO-307に準拠して測定される粘度数が80~120ml/gの範囲内であるポリアミド6樹脂:35~77重量%

成分(B):ビニル芳香族化合物重合体ブロックと共役ジエン系化合物重合体ブロックとのブロック共重合体の水素添加物、並びに、不飽和酸及び/又はその誘導体でグラフト変性された、ビニル芳香族化合物重合体ブロックと共役ジエン系化合物重合体ブロックとのブロック共重合体の水素添加物:1~20重量%

成分(C):炭素繊維:21~40重量%

成分(D):エチレンビニルアルコール樹脂:1~5重量%」

(甲6b)「【0011】

以下本発明を詳細に説明する。

成分(A)ポリアミド6樹脂

本発明において、成分(A)として用いるポリアミド6樹脂は、ISO-307に定められた手法、つまり96%濃硫酸溶媒及び該溶媒中0.5重量%濃度のポリアミド溶液について、23℃で測定された粘度から計算された粘度数(以下、単に「ISO粘度数」と略称することもある。)が、80~120ml/g以下のものであり、好ましくは80~110ml/gの範囲内のものである

成分(A)のポリアミド6樹脂のISO粘度数が120ml/gを超えると流動性が低下するので、また80ml/gに満たないと耐衝撃性が低下するので好ましくない。

なお、成分(A)のポリアミド樹脂6としてISO粘度数が異なる複数種のポリアミド6樹脂の配合物を使用する場合は、それぞれ単独には、ISO粘度数が前記所定の範囲外であっても、範囲内であっても差し支えないが、それらの配合物であるポリアミド6樹脂(成分(A))のISO粘度数は前記所定の範囲内であることが必要である。」

(7)甲第7号証に記載された事項

甲第7号証には、以下の事項が記載されている。

(甲7a)「

[図:0001389413000008.jpg]

[図:0001389413000009.jpg]

」

(8)甲第8号証に記載された事項

甲第8号証には、以下の事項が記載されている。

(甲8a)「

[図:0001389413000010.jpg]

」

(9)甲第9号証に記載された事項

甲第9号証には、以下の事項が記載されている。

(甲9a)「

[図:0001389413000011.jpg]

」

第5 当審の判断

1 申立理由1(新規性)及び申立理由2(進歩性)について

申立理由1(新規性)及び申立理由2(進歩性)は、いずれも甲第1号証を主引用例とする理由であるから、併せて検討する。

(1)甲第1号証に記載された発明について

甲第1号証の段落【0042】、【0043】、【0044】の【表1】の実施例3に着目すると、甲第1号証には、

「相対粘度RV=1.9の6ナイロン、東洋紡ナイロンT-840SF 18重量%
相対粘度RV=2.4の66ナイロン、東レアミランE3000F 12重量%
相対粘度RV=2.0の6T/6I共重合ナイロン、6T/6I=33/67モル 6重量%
マレイン酸変性PE(MAH-PE)、三井東圧化学社製、MME-001 2重量%
エポキシシラン変性ワラストナイト(長瀬産業(株)製 NYAD325(長径が12μ、短径が7μ、長短度=1.7)を用いて、ワラストナイト100重量部に対して、日本ユニカー社製エポキシシラン、A-187を0.5重量部添加し、攪拌することで前処理したエポキシシラン変性ワラストナイトを作製した) 7重量%
テンペンフェノール、ハヤカワケミカル社製、YSポリスターS145 2重量%
をタンブラーで混合した後、L/D=32の二軸押出機のホッパーに投入し、
異形断面ガラス繊維、日東紡(株)製 3PA820S 53重量%
を二軸押出機の第二ベント口から計量しながら投入し、二軸押出機の混錬温度は230℃~300℃として得た、繊維強化ポリアミド樹脂組成物」の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されているといえる。

(2)本件発明1について

ア 対比

本件発明1と甲1発明とを対比する。

甲1発明の「相対粘度RV=1.9の6ナイロン、東洋紡ナイロンT-840SF」、「相対粘度RV=2.4の66ナイロン、東レアミランE3000F」、「相対粘度RV=2.0の6T/6I共重合ナイロン、6T/6I=33/67モル」は、本件発明1の「(A)ポリアミド樹脂」に相当する。

甲1発明の「異形断面ガラス繊維、日東紡(株)製 3PA820S」は、本件発明1の「(B)ガラス繊維」に相当する。

甲1発明の「異形断面ガラス繊維、日東紡(株)製 3PA820S」は、「(A)ポリアミド樹脂」に相当する上記「相対粘度RV=1.9の6ナイロン、東洋紡ナイロンT-840SF」、「相対粘度RV=2.4の66ナイロン、東レアミランE3000F」、「相対粘度RV=2.0の6T/6I共重合ナイロン、6T/6I=33/67モル」の合計量36重量%に対し、「53重量%」含まれており、これは「ポリアミド樹脂」100重量部に対して「147重量部」(=53/36×100)含まれていることになるから、本件発明1の「(A)ポリアミド樹脂100質量部に対して、(B)ガラス繊維および/または炭素繊維0~150質量部」の範囲で含んでいるといえる。

甲1発明の「エポキシシラン変性ワラストナイト(長瀬産業(株)製 NYAD325(長径が12μ、短径が7μ、長短度=1.7)を用いて、ワラストナイト100重量部に対して、日本ユニカー社製エポキシシラン、A-187を0.5重量部添加し、攪拌することで前処理したエポキシシラン変性ワラストナイトを作製した)」は、「長瀬産業(株)製 NYAD325(長径が12μ、短径が7μ、長短度=1.7)」である「ワラストナイト」を、「エポキシ化合物」である「日本ユニカー社製エポキシシラン、A-187」によって表面処理されたものといえるから、本件発明1の「(C)非繊維状無機充填材」であって「(C)非繊維状無機充填材が、ワラストナイトの中から選ばれる1種以上であり、エポキシ化合物で表面処理され」たものに相当する。

甲1発明の「エポキシシラン変性ワラストナイト」は、甲1発明の「ナイロン」の合計量36重量%に対し、「7重量%」含むものであり、「ポリアミド樹脂」100重量部に対して「19.4重量部」含まれていることになるから、本件発明1の「(A)ポリアミド樹脂100質量部に対して、」「(C)非繊維状無機充填材10~80質量部」の範囲で含んでいるといえる。

また、甲1発明の「繊維強化ポリアミド樹脂組成物」は、本件発明1の「強化ポリアミド樹脂組成物」に相当するといえる。

そうすると、本件発明1と甲1発明とは、

「(A)ポリアミド樹脂100質量部に対して、(B)ガラス繊維および/または炭素繊維0~150質量部、(C)非繊維状無機充填材10~80質量部含む強化ポリアミド樹脂組成物であって、
前記(C)非繊維状無機充填材が、タルク、マイカ、カオリンおよびワラストナイトの中から選ばれる1種以上であり、イソシアネート系化合物、有機シラン系化合物、有機チタネート系化合物、有機ボラン系化合物およびエポキシ化合物の中から選ばれる1種以上で表面処理されたものである、強化ポリアミド樹脂組成物。」

である点で一致し、以下の点で相違する。

相違点1:「(C)非繊維状無機充填材」について、本件発明1では、「数平均粒子径が10~40μmであり、粒度分布の指標となる(D90-D10)/数平均粒子径が2.8以上である」のに対し、甲1発明では、「エポキシシラン変性ワラストナイト(長瀬産業(株)製 NYAD325(長径が12μ、短径が7μ、長短度=1.7)を用いて、ワラストナイト100重量部に対して、日本ユニカー社製エポキシシラン、A-187を0.5重量部添加し、攪拌することで前処理したエポキシシラン変性ワラストナイトを作製した)」の「数平均粒子径」及び「粒度分布の指標となる(D90-D10)/数平均粒子径」の値が明らかでない点。

イ 判断

上記相違点1について検討する。

(ア)本件発明の課題は(本a)の段落【0006】の記載からみて「自動車部品や小型精密部品等に好適な、機械的強度、耐衝撃性および外観に優れ、さらに低反り性にも優れた強化ポリアミド樹脂組成物および成形体を提供すること」であるといえるところ、(本f)の実施例及び比較例をみると、相違点1である「(C)非繊維状無機充填材」として「数平均粒子径が10~40μmであり、粒度分布の指標となる(D90-D10)/数平均粒子径が2.8以上である」段落【0079】の無機充填材(T-1)及び(T-2)を用いた実施例1~4(実施例1~4のうち、本件発明1の「イソシアネート系化合物、有機シラン系化合物、有機チタネート系化合物、有機ボラン系化合物およびエポキシ化合物の中から選ばれる1種以上で表面処理され」たとの発明特定事項を満たすものは実施例2~3のみである)は、「(D90-D10)/数平均粒子径が2.8以上」であるとの発明特定事項を満たさない段落【0079】の無機充填材(T-3)~(T-5)を用いた比較例1~4、さらに「数平均粒子径が10~40μm」であるとの発明特定事項も満たさない無機充填材(T-6)を用いた比較例5に比べて(比較例1~5のうち、本件発明1の「イソシアネート系化合物、有機シラン系化合物、有機チタネート系化合物、有機ボラン系化合物およびエポキシ化合物の中から選ばれる1種以上で表面処理され」たとの発明特定事項を満たすものは比較例3~4のみである)、引張強度、シャルピー衝撃強度、外観、低反り性の全ての項目について同等以上の評価を得ていることが確認できる。

このことから、本件発明1の相違点1に係る発明特定事項は、本件発明の上記課題の解決に必要な事項であるといえる。

(イ)甲第1号証には、「エポキシシラン変性ワラストナイト(長瀬産業(株)製 NYAD325(長径が12μ、短径が7μ、長短度=1.7)を用いて、ワラストナイト100重量部に対して、日本ユニカー社製エポキシシラン、A-187を0.5重量部添加し、攪拌することで前処理したエポキシシラン変性ワラストナイトを作製した)」の相違点1に係る「数平均粒子径」及び「粒度分布の指標となる(D90-D10)/数平均粒子径」の値は記載されていない。

また、甲第2号証の(甲2a)の段落【0037】及び甲第3号証の(甲3b)の段落【0085】には、甲1発明の「ワラストナイト(長瀬産業(株)製 NYAD325(長径が12μ、短径が7μ、長短度=1.7))」と同じ品番のものについて「平均粒子径」がいずれも「10μm」であることは記載されているものの、「変性ワラストナイト」について「粒度分布の指標となる(D90-D10)/数平均粒子径が2.8以上である」ことは記載されておらず、また、当該事項を推認できる記載もない。さらに、甲第4~6号証をみても、甲1発明の「エポキシシラン変性ワラストナイト」の「粒度分布の指標となる(D90-D10)/数平均粒子径」に関する記載、あるいは、当該事項を推認できる記載もない。

そうすると、相違点1は、実質的な相違点であり、本件発明1は、甲第1号証に記載された発明であるとはいえない。

(ウ)次に、上記相違点1について、甲第1~6号証の記載から容易に発明をすることができたか否かを検討する。

甲第1号証の(甲1f)の段落【0028】には、「(E)球状及び/不定形の無機充填材」の「長短度(長径/短径)」、「扁平度(短径/厚さ)」、「アスペクト比(投影面積径/厚さ)」、「粒子径」についての記載はあるものの、相違点1の「粒度分布の指標となる(D90-D10)/数平均粒子径」に関する記載はないため、甲1発明において、「(D90-D10)/数平均粒子径が2.8以上である」ものを選択することが動機づけられるとはいえない。

また、甲第2~6号証をみても、甲1発明において、「エポキシシラン変性ワラストナイト」として「(D90-D10)/数平均粒子径が2.8以上である」ものを選択することが動機づけられる記載はないし、また、これにより、上記(ア)で述べた引張強度、シャルピー衝撃強度、外観、低反り性について優れたものとなるという本件発明1の効果を予測し得る記載もない。

そうすると、本件発明1は、甲1発明及び甲第1~6号証に記載された技術的事項から、当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。

ウ 小括

以上のとおり、本件発明1は、甲1号証に記載された発明とはいえず、甲1発明及び甲第2~6号証に記載された技術的事項に基いて容易に発明をすることができたものともいえない。

(3)本件発明2~4について

本件発明2~4は、本件発明1を直接的又は間接的に引用して限定した発明であるから、本件発明2~4は、本件発明1について上記(2)で示した理由と同じ理由により、甲第1号証に記載された発明とはいえず、また、甲第1号証に記載された発明及び甲第2~6号証に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(4)まとめ

以上のとおり、申立理由1~2によっては、本件発明1~4に係る特許を取り消すことはできない。

2 申立理由3(サポート要件)について

(1)申立理由3の概要

申立理由3の概要は、以下のとおりである。

本件発明は、「(C)非繊維状無機充填材」について「数平均粒子径が10~40μmであり、粒度分布の指標となる(D90-D10)/数平均粒子径が2.8以上」とすることにより、「機械的強度、耐衝撃性および外観に優れ、さらに低反り性にも優れた強化ポリアミド樹脂組成物および成形体を提供する」ものであると解されるところ、「(C)非繊維状無機充填材」の形状、物性等の物理的な性質が成形体の強度に関与することは技術常識であり、「数平均粒子径」及び「(D90-D10)/数平均粒子径」が所定の範囲とすれば、いかなる種類の「(C)非繊維状無機充填材」であっても、本件発明の課題が解決できるとすることはできない。

本件発明1は、「(C)非繊維状無機充填材」について、「タルク」以外に「マイカ、カオリンおよびワラストナイト」の使用について記載しているが、本件明細書の実施例・比較例においては「タルク」のみのデータしか存在せず、甲第7~9号証からみて、「マイカ」及び「ワラストナイト」は「タルク」と同様の物理的性質を有しているとはいえず、「タルク」とは物理的性質の異なる「マイカ」等が、タルクと同じ「数平均粒子径」及び「(D90-D10)/数平均粒子径」の値を有していたとしても、「タルク」を用いたときと同様の機械的強度、耐衝撃性、低反り性を有するとはいえない。

そうすると、本件明細書の発明の詳細な説明の記載だけでは、「タルク」以外の「マイカ、カオリンおよびワラストナイト」の「数平均粒子径」及び「(D90-D10)/数平均粒子径」の値が所定の範囲であれば、本件発明の課題を解決できるとは当業者が認識できるものとはいえない。

本件発明1を直接的又は間接的に引用する本件発明2~4についても同様である。

(2)判断

ア 特許法第36条第6項第1号について

特許法第36条第6項は、「第二項の特許請求の範囲の記載は、次の各号に適合するものでなければならない。」と規定し、その第1号において「特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものであること。」と規定している。同号は、明細書のいわゆるサポート要件を規定したものであって、特許請求の範囲の記載が明細書のサポート要件に適合するか否かは特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載又はその示唆により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。

以下、この観点から検討する。

イ 判断

(ア)本件発明の課題について

本件発明の課題は(本a)の段落【0006】の記載からみて「自動車部品や小型精密部品等に好適な、機械的強度、耐衝撃性および外観に優れ、さらに低反り性にも優れた強化ポリアミド樹脂組成物および成形体を提供すること」であるといえる。

(イ)本件発明1~4の「サポート要件」について

本件発明1は、「(A)ポリアミド樹脂100質量部に対して、(B)ガラス繊維および/または炭素繊維0~150質量部、(C)非繊維状無機充填材10~80質量部含む強化ポリアミド樹脂組成物」であること、「(C)非繊維状無機充填材」について「タルク、マイカ、カオリンおよびワラストナイトの中から選ばれる1種以上であり、イソシアネート系化合物、有機シラン系化合物、有機チタネート系化合物、有機ボラン系化合物およびエポキシ化合物の中から選ばれる1種以上で表面処理され、数平均粒子径が10~40μmであり、粒度分布の指標となる(D90-D10)/数平均粒子径が2.8以上である」ことを発明特定事項とするものである。

上記「1 申立理由1(新規性)及び申立理由2(進歩性)について」「

(2)本件発明1について」「イ 判断」でも述べたように、本件発明1の上記発明特定事項について、本件明細書の(本f)の実施例及び比較例をみると、「(C)非繊維状無機充填材」として「イソシアネート系化合物、有機シラン系化合物、有機チタネート系化合物、有機ボラン系化合物およびエポキシ化合物の中から選ばれる1種以上で表面処理され」、「数平均粒子径が10~40μmであり、粒度分布の指標となる(D90-D10)/数平均粒子径が2.8以上である」段落【0079】の無機充填材であるタルク(T-2)を用いた実施例2~3は、「(D90-D10)/数平均粒子径が2.8以上」であるとの発明特定事項を満たさない段落【0079】のタルク(T-5)を用いた比較例3~4、さらに、「イソシアネート系化合物、有機シラン系化合物、有機チタネート系化合物、有機ボラン系化合物およびエポキシ化合物の中から選ばれる1種以上で表面処理され」との発明特定事項を満たさないタルク(T-3)及び(T-4)を用いた比較例1~2、さらに、「数平均粒子径が10~40μm」であるとの発明特定事項も満たさないタルク(T-6)を用いた比較例5に比べて、本件発明の課題である引張強度、シャルピー衝撃強度、外観、低反り性の全ての項目について同等以上の評価を得ていることが確認できる。また、本件発明1の上記発明特定事項のうち「イソシアネート系化合物、有機シラン系化合物、有機チタネート系化合物、有機ボラン系化合物およびエポキシ化合物の中から選ばれる1種以上で表面処理され」との発明特定事項を満たさないタルク(T-1)を用いた実施例1、4も、比較例1~5に比べて本件発明の課題である引張強度、シャルピー衝撃強度、外観、低反り性の全ての項目について同等以上の評価を得ていることが確認できる。さらに、比較例6は、実施例2~3と同じタルクである(T-2)を用いた場合であっても、(「(C)非繊維状無機充填材」の量が本件発明1の発明特定事項より少ない場合は、外観、低反り性が劣ることが示されている。

次に、本件発明の上記発明特定事項のうち「(B)ガラス繊維および/または炭素繊維」について、本件明細書の記載をみると、(本c)の段落【0031】には「ガラス繊維および/または炭素繊維を含有することにより、優れた機械的強度、耐衝撃性、剛性が得られる」こと、段落【0040】には「ガラス繊維および/または炭素繊維の配合量は、機械的強度、耐衝撃性や外観の観点から、(A)ポリアミド樹脂100質量部に対し、0~150質量部である」ことが記載されている。

また、「(C)非繊維状無機充填材」について、(本d)の段落【0041】には「非繊維状無機充填材を含有することにより、優れた機械的強度、外観と剛性が得られる」こと、段落【0043】には「本発明のポリアミド樹脂組成物の機械的強度および剛性を増大させる観点から、・・・より好ましくは、タルク、マイカ、カオリンおよびワラストナイトの中から選ばれる1種以上であ」ること、段落【0044】には「本発明で用いられる非繊維状無機充填材は、優れた機械的強度と耐衝撃性、低反り性をポリアミド樹脂組成物に付与できるという観点から、数平均粒子径が10~40μmである」こと、段落【0045】には「非繊維状無機充填材は、上記レーザー粒度計を用いて測定される、D90(体積累積90%粒子径)とD10(体積累積10%粒子径)と数平均粒子径を用いた粒度分布の指標となる(D90-D10)/数平均粒子径が2.8以上である。2.8以上にすることで、機械的強度と耐衝撃性を両立し、さらに外観、低反り性にも優れるポリアミド樹脂組成物が得られる」こと、段落【0046】には「好ましい表面処理剤としては、イソシアネート系化合物、有機シラン系化合物、有機チタネート系化合物、有機ボラン系化合物およびエポキシ化合物の中から選ばれる1種以上であり、中でも優れた機械的強度、耐衝撃性の観点から、有機シラン系化合物がより好ましい」こと、段落【0050】には「本発明で用いられる非繊維状無機充填材の配合量は、機械的強度、耐衝撃性や外観の観点から、(A)ポリアミド樹脂100質量部に対し、10~200質量部である」ことが記載されている。また、甲第3号証の(甲3a)、甲第4号証の(甲4b)、甲第5号証の(甲5c)の記載からみて、「タルク」、「マイカ」、「カオリン」、「ワラストナイト」は、無機充填材として汎用のものであり、「マイカ」、「カオリン」、「ワラストナイト」も「タルク」と同様の方法で、同程度の量を添加して用いられていると認められ、本件明細書及び甲第3~5号証の記載からみると、「タルク」に代えて、「マイカ」、「カオリン」、「ワラストナイト」を用いた場合であっても、「タルク」を用いた場合と同様の効果が奏せられ、本件発明の上記課題を解決し得ると、当業者であれば理解できる。

そうすると、本件明細書の実施例では、「非繊維状無機充填材」として「タルク」を用いた例しか記載されていないものの、本件発明1の発明特定事項を満たせば、「マイカ」、「カオリン」、「ワラストナイト」を用いた場合であっても、「タルク」を用いた場合と同様に、本件発明1の発明特定事項を満たさない場合に比べて、本件発明の上記課題を解決し得ることを、当業者であれば理解することができるといえる。

本件発明1を直接的又は間接的に引用する本件発明2~4についても、同様である。

したがって、本件発明1~4は、本件明細書に記載された発明であるといえる。

(ウ)申立人の主張について

申立人は、甲第7~9号証を提出して、「タルク」と「マイカ」と「ワラストナイト」は「タルク」と同様の物理的性質を有しているとはいえず、「タルク」とは物理的性質の異なる「マイカ」等が、タルクと同じ「数平均粒子径」及び「(D90-D10)/数平均粒子径」の値を有していたとしても、「タルク」を用いていたときと同様の機械的強度、耐衝撃性、低反り性を有するとはいえないと主張している。

申立人の当該主張を確認すると、甲第7号証の(甲7a)には「タルク」について「ヘキ開片は曲げることができていくぶん弾性力がある。カタサ1」であること、甲第8号証の(甲8a)には「雲母(mica)」について「弾力性に富む」こと、甲第9号証の(甲9a)には「もろい。かたさ4.5~5」と記載されているものの、いずれもある程度の弾力性を有する無機鉱物であり、甲第7~9号証からは、「ポリアミド樹脂」に配合する「非繊維状無機充填材」として用いた場合にどの程度の差異が生じるかについては具体的に示していない。

そして、上記「(イ)本件発明1~4の「サポート要件」について」で述べたように、「タルク」、「マイカ」、「カオリン」、「ワラストナイト」は、樹脂に配合する無機充填材として汎用のものであり、「マイカ」、「カオリン」、「ワラストナイト」も「タルク」と同様の方法で、同程度の量を添加して用いられているものであるから、本件発明1の発明特定事項を満たせば、「マイカ」、「カオリン」、「ワラストナイト」を用いた場合であっても、「タルク」を用いた場合と同様に、本件発明1の発明特定事項を満たさない場合に比べて、本件発明の上記課題を解決し得ることを、当業者であれば理解することができるといえる。

また、申立人は、甲第7~9号証を示しているものの、「非繊維状無機充填材」の種類の違いより、「強化ポリアミド樹脂組成物」又は当該組成物を成形した「成形体」について、物性が異なることを具体的なデータとして示していない。

そうすると、申立人の上記主張を直ちに採用することはできない。

(3)まとめ

以上のとおり、申立理由3は、理由がない。

第6 むすび

以上のとおり、申立人が主張する異議申立ての理由1~3及び証拠によっては、本件発明1~4に係る特許を取り消すことはできない。

また、他に本件発明1~4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり決定する。

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2022-700325

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