特許異議申立
2021-701229
無機充填材強化ポリアミド樹脂組成物および成形体
- 審判番号
- 2021-701229
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2017-127178外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 登録番号
- 6893132
- 請求日
- 2021年12月22日
- 審決日
- 2022年11月21日
- 公報発行日
- 2023年02月24日
- 結論
- 訂正認容
- 分類
- P1651.113-YAA(C08L) / P1651.121-YAA(C08L) / P1651.537-YAA(C08L)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第36条第6項第1号、特許法第29条第2項、特許法第36条第6項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第6893132号発明「無機充填材強化ポリアミド樹脂組成物および成形体」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第6893132号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-10〕について訂正することを認める。
特許第6893132号の請求項1~10に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第6893132号(請求項の数6。以下、「本件特許」という。)は、平成29年6月29日を出願日とする特許出願(特願2017-127178号、以下「本願」という。)に係るものであって、令和3年6月2日に設定登録されたものである(特許掲載公報の発行日は、令和3年6月23日である。)
その後、令和3年12月22日に、本件特許の請求項1~6に係る特許に対して、特許異議申立人である吉澤悦子(以下、「申立人」という。)により、特許異議の申立てがされたものである。
(1)特許異議申立以降の経緯
令和3年12月22日 特許異議申立書
令和4年 4月20日付け 取消理由通知書
同年 6月24日 訂正請求書、意見書(特許権者)
同年 6月30日付け 通知書(申立人宛)
なお、当該通知書に対し、申立人からの応答はなかった。
(2)証拠方法
申立人が、特許異議申立書に添付して提出した証拠方法は、以下のとおりである。
・甲第1号証:国際公開第2017/094696号
・甲第2号証:製品パンフレット「レプコマイカ(金雲母)/Repco Mica (Phlogopite) 、株式会社レプコ(製品パンフレット)
・甲第3号証:「安全データシート」、整理番号S01-03b、株式会社レプコ、2013年3月18日(改訂日)
・甲第4号証:測定分析結果報告書「比表面積測定(水蒸気吸着法による比表面積測定)」、株式会社島津テクノリサーチ、2021年6月2日付け
・甲第5号証:測定分析結果報告書「比表面積測定(N2ガス吸着法による比表面積測定)」、株式会社島津テクノリサーチ、2021年6月2日付け
・甲第6号証:測定分析結果報告書、株式会社レプコ、2021年11月16日付け
・甲第7号証:特開2008-38149号公報
・甲第8号証:特開2007-308611号公報
第2 訂正の適否についての判断
令和4年6月24日にした訂正請求は、以下の訂正事項を含むものである。
(以下、「本件訂正」という。また、設定登録時の本件願書に添付した明細書及び特許請求の範囲を「本件特許明細書等」という。下線は、訂正箇所を示す。)
1 訂正の内容
(1)訂正事項1
訂正前の特許請求の範囲の請求項1に、「前記(C)非繊維状無機充填材の水蒸気吸着によるBET比表面積S水蒸気と窒素ガス吸着によるBET比表面積S窒素との比(S水蒸気/S窒素)が、0.45以上である」とあるのを、
「前記(C)非繊維状無機充填材の水蒸気吸着によるBET比表面積S水蒸気と窒素ガス吸着によるBET比表面積S窒素との比(S水蒸気/S窒素)が、0.45以上0.80以下である」に訂正する。
(2)訂正事項2
訂正前の特許請求の範囲の請求項5に、「請求項1~4のいずれか一項に記載の無機充填材強化ポリアミド樹脂組成物。」とあるのを、
「請求項1又は2に記載の無機充填材強化ポリアミド樹脂組成物。」に訂正する。
(3)訂正事項3
訂正前の特許請求の範囲の請求項6に、「請求項1~5のいずれか1項に記載の無機充填材強化ポリアミド樹脂組成物」とあるのを、「請求項1、2、及び5のいずれか1項に記載の無機充填材強化ポリアミド樹脂組成物」に訂正する。
(4)訂正事項4
訂正前の特許請求の範囲の請求項1を引用する請求項3について、訂正前の請求項1との引用関係を解消し、訂正前の請求項1の記載を引用しないものとして、
「(A)ポリアミド樹脂100質量部に対して、(B)ガラス繊維および/または炭素繊維0~150質量部、(C)非繊維状無機充填材10~200質量部含む無機充填材強化ポリアミド樹脂組成物であって、
前記(C)非繊維状無機充填材が、タルク、マイカ、カオリンおよびワラストナイトの中から選ばれる1種以上であり、
前記(C)非繊維状無機充填材の水蒸気吸着によるBET比表面積S水蒸気と窒素ガス吸着によるBET比表面積S窒素との比(S水蒸気/S窒素)が、0.45以上であり、
前記(C)非繊維状無機充填材が、イソシアネート系化合物、有機シラン系化合物、有機チタネート系化合物、有機ボラン系化合物およびエポキシ化合物の中から選ばれる1種以上で表面処理される、無機充填材強化ポリアミド樹脂組成物。」
に訂正する。
(5)訂正事項5
訂正前の特許請求の範囲の請求項3にある記載のうち、訂正前の請求項2を引用するものについて、訂正前の請求項1及び2との引用関係を解消し、訂正前の請求項1及び請求項2の記載を引用しないものとして、
「(A)ポリアミド樹脂100質量部に対して、(B)ガラス繊維および/または炭素繊維0~150質量部、(C)非繊維状無機充填材10~200質量部含む無機充填材強化ポリアミド樹脂組成物であって、
前記(C)非繊維状無機充填材が、タルク、マイカ、カオリンおよびワラストナイトの中から選ばれる1種以上であり、
前記(C)非繊維状無機充填材の水蒸気吸着によるBET比表面積S水蒸気と窒素ガス吸着によるBET比表面積S窒素との比(S水蒸気/S窒素)が、0.45以上であり、
前記(C)非繊維状無機充填材の数平均粒子径が10~40μmであり、
前記(C)非繊維状無機充填材が、イソシアネート系化合物、有機シラン系化合物、有機チタネート系化合物、有機ボラン系化合物およびエポキシ化合物の中から選ばれる1種以上で表面処理される、無機充填材強化ポリアミド樹脂組成物。」
と改め、新たに請求項7とする。
(6)訂正事項6
訂正前の特許請求の範囲の請求項4にある記載のうち、訂正前の請求項2を引用する請求項3の記載を引用する態様について、訂正前の請求項1~3との引用関係を解消し、記載としては訂正前の請求項1及び請求項2の記載を引用しないものとして、
「(A)ポリアミド樹脂100質量部に対して、(B)ガラス繊維および/または炭素繊維0~150質量部、(C)非繊維状無機充填材10~200質量部含む無機充填材強化ポリアミド樹脂組成物であって、
前記(C)非繊維状無機充填材が、タルク、マイカ、カオリンおよびワラストナイトの中から選ばれる1種以上であり、
前記(C)非繊維状無機充填材の水蒸気吸着によるBET比表面積S水蒸気と窒素ガス吸着によるBET比表面積S窒素との比(S水蒸気/S窒素)が、0.45以上であり、
前記(C)非繊維状無機充填材の数平均粒子径が10~40μmであり、
前記(C)非繊維状無機充填材が、酸無水物基含有アルコキシシラン化合物で表面処理される、無機充填材強化ポリアミド樹脂組成物。」
と改め、新たに請求項8とする。
(7)訂正事項7
訂正前の特許請求の範囲の請求項5にある記載のうち、訂正前の請求項3及び請求項4の記載を引用するものについて、
「前記(A)ポリアミド樹脂が、ISO 307に準拠して質量分率96%の硫酸で測定される粘度数が80~150ml/gである、請求項3、4、7、又は8に記載の無機充填材強化ポリアミド樹脂組成物。」
と改め、新たに請求項9とする。
(8)訂正事項8
訂正前の特許請求の範囲の請求項6にある記載のうち、訂正前の請求項3、請求項4及び請求項5の記載を引用するものについて、
「請求項3、4、7、8、又は9に記載の無機充填材強化ポリアミド樹脂組成物を成形してなる成形体。」
と改め、新たに請求項10とする。
(9)一群の請求項
本件訂正前の請求項2~6は、それぞれ訂正前の請求項1を直接的又は間接的に引用するものであり、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものであり、本件訂正前の請求項1~6は一群の請求項である。
本件訂正により、訂正前の請求項3は、訂正事項4~5により請求項1及び請求項2の記載を引用しないものとし、訂正事項5~8により新たに請求項7~10が設けられたが、訂正請求書には、別の訂正単位とする求めはされていない。
よって、本件訂正は、一群の請求項に対してなされたものと解される。
2 判断
(1)訂正事項1について
ア 訂正の目的
訂正事項1による訂正は、訂正前の請求項1の「(C)非繊維状無機充填材の水蒸気吸着によるBET比表面積S水蒸気と窒素ガス吸着によるBET比表面積S窒素との比(S水蒸気/S窒素)」について、「0.45以上」と下限のみ特定されていたのを、「0.45以上0.80以下」と上限の特定も追加し、「(C)非繊維状無機充填材の水蒸気吸着によるBET比表面積S水蒸気と窒素ガス吸着によるBET比表面積S窒素との比(S水蒸気/S窒素)」をより特定・減縮するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるといえる。
イ 新規事項の追加及び実質上の特許請求の範囲の拡張・変更
訂正事項1による「(C)非繊維状無機充填材の水蒸気吸着によるBET比表面積S水蒸気と窒素ガス吸着によるBET比表面積S窒素との比(S水蒸気/S窒素)」の上限を特定する訂正は、本件明細書の段落【0046】に「本発明で用いられる非繊維状無機充填材は、水蒸気吸着によるBET比表面積S水蒸気と窒素ガス吸着によるBET比表面積S窒素の比(S水蒸気/S窒素)が、0.45以上であり、好ましくは0.45以上0.8以下であり」と記載されていることから、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内であるといえる。
また、訂正事項1による訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、実質上特許請求の範囲の拡張又は変更に当たらないことも明らかである。
(2)訂正事項2について
ア 訂正の目的
訂正事項2による訂正は、訂正前の請求項5が訂正前の請求項1~4を引用していたのを、訂正前の請求項3~4を引用しないものとするものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるといえる。
イ 新規事項の追加及び実質上の特許請求の範囲の拡張・変更
訂正事項2は、単に引用していた請求項を削除するものであるから、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは明らかである。
(3)訂正事項3について
ア 訂正の目的
訂正事項3による訂正は、訂正前の請求項6が訂正前の請求項1~5を引用していたのを、訂正前の請求項3~4を引用しないものとするものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるといえる。
イ 新規事項の追加及び実質上の特許請求の範囲の拡張・変更
訂正事項3は、単に引用していた請求項を削除するものであるから、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは明らかである。
(4)訂正事項4について
ア 訂正の目的
訂正事項4による訂正は、訂正前の請求項3が訂正前の請求項1または請求項2を引用していたのを、そのうち、請求項1を引用する態様について、請求項1の記載を引用しないものとするものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に掲げる他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものであるといえる。
イ 新規事項の追加及び実質上の特許請求の範囲の拡張・変更
訂正事項4は、訂正前の請求項3の請求項1を引用する態様について、訂正前の請求項1の記載を引用しないものとするものであるから、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは明らかである。
(5)訂正事項5について
ア 訂正の目的
訂正事項5による訂正は、訂正前の請求項3が訂正前の請求項1または請求項2を引用していたのを、そのうち、請求項2を引用する態様について、請求項1及び請求項2の記載を引用しないものとして新たな請求項7とするものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に掲げる他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものであるといえる。
イ 新規事項の追加及び実質上の特許請求の範囲の拡張・変更
訂正事項5は、訂正前の請求項3の請求項2を引用する態様について、訂正前の請求項1及び請求項2の記載を引用しないものとして新たな請求項7とするものであるから、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは明らかである。
(6)訂正事項6について
ア 訂正の目的
訂正事項6による訂正は、訂正前の請求項3を引用する請求項4について、訂正前の請求項1、請求項2及び請求項3の記載を引用しないものとして新たな請求項8とするものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に掲げる他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものであるといえる。
イ 新規事項の追加及び実質上の特許請求の範囲の拡張・変更
訂正事項6は、訂正前の請求項4の請求項3を引用する態様について、訂正前の請求項1~3の記載、実質的には請求項1~2の記載を引用しないものとして新たな請求項8とするものであるから、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは明らかである。
(7)訂正事項7について
ア 訂正の目的
訂正事項7による訂正は、訂正前の請求項5が訂正前の請求項1~4のいずれかを引用していたのを、訂正事項2~3により引用をしないものとされた請求項3~4、及び訂正事項5~6により訂正前の請求項3~4に相当するものとして新たに設けられた請求項7~8を引用するものであり、訂正前の請求項5について、訂正前の請求項3により特定される態様を引用し、請求項1または請求項2の態様の引用を削除して、新たに請求項9としたものといえるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるといえる。
イ 新規事項の追加及び実質上の特許請求の範囲の拡張・変更
訂正事項7は、実質的に、訂正前の請求項5について、訂正前の請求項3により特定される態様のみを引用し、それ以外の請求項1又は請求項2の態様を単に削除するものであるから、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは明らかである。
(8)訂正事項8について
ア 訂正の目的
訂正事項8による訂正は、訂正前の請求項6が訂正前の請求項1~5のいずれかを引用していたのを、訂正事項2~3により引用をしないものとされた請求項3~4、及び訂正事項5~7により訂正前の請求項3~5に相当するものとして新たに設けられた請求項7~9を引用するものであり、訂正前の請求項6について、訂正前の請求項3により特定される態様を引用し、請求項1または請求項2の態様の引用を削除して、新たに請求項10としたものといえるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるといえる。
イ 新規事項の追加及び実質上の特許請求の範囲の拡張・変更
訂正事項8は、実質的に、訂正前の請求項6について、訂正前の請求項3により特定される態様のみを引用し、それ以外の請求項1または請求項2の態様を単に削除するものであるから、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは明らかである。
(9)まとめ
以上のとおりであるから、訂正事項1~8による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号または第4号に掲げる目的に適合し、また、同法同条第9項において準用する同法第126条第5及び6項の規定に適合するから、本件訂正を認める。
第3 本件発明
上記「第2 訂正の適否についての判断」のとおり、本件訂正は適法であるので、特許第6893132号の特許請求の範囲の記載は、訂正後の特許請求の範囲の請求項1~10に記載された事項により特定される以下のとおりのものである(以下、請求項1~10に記載された事項により特定される発明を「本件発明1」~「本件発明10」といい、まとめて「本件発明」ともいう。また、設定登録時の本件願書に添付した明細書を「本件明細書」という。)。
「【請求項1】
(A)ポリアミド樹脂100質量部に対して、(B)ガラス繊維および/または炭素繊維0~150質量部、(C)非繊維状無機充填材10~200質量部含む無機充填材強化ポリアミド樹脂組成物であって、
前記(C)非繊維状無機充填材が、タルク、マイカ、カオリンおよびワラストナイトの中から選ばれる1種以上であり、
前記(C)非繊維状無機充填材の水蒸気吸着によるBET比表面積S水蒸気と窒素ガス吸着によるBET比表面積S窒素との比(S水蒸気/S窒素)が、0.45以上0.80以下である無機充填材強化ポリアミド樹脂組成物。
【請求項2】
前記(C)非繊維状無機充填材の数平均粒子径が10~40μmである、請求項1記載の無機充填材強化ポリアミド樹脂組成物。
【請求項3】
(A)ポリアミド樹脂100質量部に対して、(B)ガラス繊維および/または炭素繊維0~150質量部、(C)非繊維状無機充填材10~200質量部含む無機充填材強化ポリアミド樹脂組成物であって、
前記(C)非繊維状無機充填材が、タルク、マイカ、カオリンおよびワラストナイトの中から選ばれる1種以上であり、
前記(C)非繊維状無機充填材の水蒸気吸着によるBET比表面積S水蒸気と窒素ガス吸着によるBET比表面積S窒素との比(S水蒸気/S窒素)が、0.45以上であり、
前記(C)非繊維状無機充填材が、イソシアネート系化合物、有機シラン系化合物、有機チタネート系化合物、有機ボラン系化合物およびエポキシ化合物の中から選ばれる1種以上で表面処理される、無機充填材強化ポリアミド樹脂組成物。
【請求項4】
前記(C)非繊維状無機充填材が、酸無水物基含有アルコキシシラン化合物で表面処理される、請求項3に記載の無機充填材強化ポリアミド樹脂組成物。
【請求項5】
前記(A)ポリアミド樹脂が、ISO 307に準拠して質量分率96%の硫酸で測定される粘度数が80~150ml/gである、請求項1又は2に記載の無機充填材強化ポリアミド樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1、2、及び5のいずれか1項に記載の無機充填材強化ポリアミド樹脂組成物を成形してなる成形体。
【請求項7】
(A)ポリアミド樹脂100質量部に対して、(B)ガラス繊維および/または炭素繊維0~150質量部、(C)非繊維状無機充填材10~200質量部含む無機充填材強化ポリアミド樹脂組成物であって、
前記(C)非繊維状無機充填材が、タルク、マイカ、カオリンおよびワラストナイトの中から選ばれる1種以上であり、
前記(C)非繊維状無機充填材の水蒸気吸着によるBET比表面積S水蒸気と窒素ガス吸着によるBET比表面積S窒素との比(S水蒸気/S窒素)が、0.45以上であり、
前記(C)非繊維状無機充填材の数平均粒子径が10~40μmであり、
前記(C)非繊維状無機充填材が、イソシアネート系化合物、有機シラン系化合物、有機チタネート系化合物、有機ボラン系化合物およびエポキシ化合物の中から選ばれる1種以上で表面処理される、無機充填材強化ポリアミド樹脂組成物。
【請求項8】
(A)ポリアミド樹脂100質量部に対して、(B)ガラス繊維および/または炭素繊維0~150質量部、(C)非繊維状無機充填材10~200質量部含む無機充填材強化ポリアミド樹脂組成物であって、
前記(C)非繊維状無機充填材が、タルク、マイカ、カオリンおよびワラストナイトの中から選ばれる1種以上であり、
前記(C)非繊維状無機充填材の水蒸気吸着によるBET比表面積S水蒸気と窒素ガス吸着によるBET比表面積S窒素との比(S水蒸気/S窒素)が、0.45以上であり、
前記(C)非繊維状無機充填材の数平均粒子径が10~40μmであり、
前記(C)非繊維状無機充填材が、酸無水物基含有アルコキシシラン化合物で表面処理される、無機充填材強化ポリアミド樹脂組成物。
【請求項9】
前記(A)ポリアミド樹脂が、ISO 307に準拠して質量分率96%の硫酸で測定される粘度数が80~150ml/gである、請求項3、4、7、又は8に記載の無機充填材強化ポリアミド樹脂組成物。
【請求項10】
請求項3、4、7、8、又は9に記載の無機充填材強化ポリアミド樹脂組成物を成形してなる成形体。」
第4 特許異議申立理由及び当審が通知した取消理由の概要
1 取消理由通知の概要
当審が令和4年4月20日付けの取消理由通知で通知した取消理由の概要は、以下に示すとおりである。
(1)取消理由A(新規性)
本件訂正前の請求項1~2、5~6に係る発明は、本件特許の出願前日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第1号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、同法第113条第2号に該当し、その発明に係る特許は取り消すべきものである。
(2)取消理由B(進歩性)
本件訂正前の請求項1~2、5~6に係る発明は、本件特許の出願前日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第1号証に記載された発明及び甲第2~8号証に記載された技術的事項に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、同法第113条第2号に該当し、その発明に係る特許は取り消すべきものである。
2 特許異議申立理由の概要
申立人が特許異議申立書に記載した申立理由の概要は、以下に示すとおりである。
(1)申立理由1(新規性)
本件訂正前の請求項1~2、5~6に係る発明は、本件特許の出願前日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第1号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、同法第113条第2号に該当し、その発明に係る特許は取り消すべきものである。
(2)申立理由2(サポート要件)
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1~6の記載は、同各項に記載された特許を受けようとする発明が、下記「第6 当審の判断」「2 特許異議申立書に記載された申立理由について」「(1)申立理由2(サポート要件)の概要」に記載した点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件に適合するものではない。
よって、本件訂正前の請求項1~6に係る発明の特許は、同法第36条第6項に規定する要件を満たさない特許出願に対してされたものであるから同法第113条第4号に該当し取り消されるべきものである。
第5 本件明細書及び各甲号証に記載された事項
1 本件明細書に記載された事項
本件明細書には、以下の事項が記載されている。
(本a)「【技術分野】
【0001】
本発明は、機械的強度や外観に優れる無機充填材強化ポリアミド樹脂組成物および成形体に関する。
・・・
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、外観を維持しつつ、機械的強度を向上させるという点では充分ではなかった。
本発明の課題は、自動車部品や小型精密部品等に好適な、機械的強度や外観に優れた無機充填材強化ポリアミド樹脂組成物および成形体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討を重ねた結果、非繊維状無機充填材の水蒸気吸着によるBET比表面積S水蒸気と窒素ガス吸着によるBET比表面積S窒素との比(S水蒸気/S窒素)を所定範囲とすることが、これら特性に優れた無機充填材強化ポリアミド樹脂組成物を得るために有効であることを見出し、本発明に到達した。
・・・
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、機械的強度や外観に優れた無機充填材強化ポリアミド樹脂組成物および成形体を提供することができる。」
(本b)「【0015】
[(A)ポリアミド]
「ポリアミド」とは、主鎖に-CO-NH-(アミド)結合を有する高分子化合物を意味する。本発明で用いられるポリアミドとしては、特に限定されないが、例えば、(a)ラクタムの開環重合で得られるポリアミド、(b)ω-アミノカルボン酸の自己縮合で得られるポリアミド、(c)ジアミンおよびジカルボン酸を縮合することで得られるポリアミド、並びにこれらの共重合物が挙げられる。ポリアミドは、1種で用いてもよく、2種以上の混合物として用いてもよい。
・・・
【0029】
本発明において、(A)ポリアミド樹脂は、ISO 307に準拠し、質量分率96%の硫酸で測定されるした粘度数(VN)が、80~180ml/gであることが、機械的強度、射出成形時の流動性、外観の観点から好ましい。より好ましくは80~150ml/g、さらに好ましくは100~150ml/gであり、特に好ましくは、115~150ml/gである。
【0030】
本発明で用いられる(A)ポリアミド樹脂の配合量は、流動性と外観の観点から、ポリ
アミド樹脂組成物100質量%に対して30~90質量%であることが好ましい。より好ましくは35~80質量%、さらに好ましくは35~75質量%、特に好ましくは40~70質量%である。」
(本c)「【0031】
[(B)ガラス繊維および/または炭素繊維]
本発明のポリアミド樹脂組成物は、(B)ガラス繊維および/または炭素繊維を含んでいてもよい。ガラス繊維および/または炭素繊維を含有することにより、優れた機械的強度、耐衝撃性、剛性が得られる。
【0032】
ガラス繊維や炭素繊維のうち、優れた機械的強度をポリアミド樹脂組成物に付与できる観点から、ポリアミド樹脂組成物中において、数平均繊維径が3~30μmであり、重量平均繊維長が100~750μmであり、および重量平均繊維長と数平均繊維径とのアスペクト比(重量平均繊維長を数平均繊維径で除した値)が10~100であるものがさらに好ましい。
【0033】
また、ガラス繊維および炭素繊維は、断面が円形状であっても、偏平状(楕円状、繭型形状など)であってもよい。偏平状であると、耐衝撃性、低反り性の観点で好ましい。
ガラス繊維の繊維径は、偏平状の場合は、優れた機械的強度と外観、低反り性の観点から、平均短径が3~15μmが好ましく、より好ましくは4~10μmであり、さらに好ましくは5~9μmである。
・・・
【0040】
本発明で用いられるガラス繊維および/または炭素繊維の配合量は、機械的強度、耐衝撃性や外観の観点から、ポリアミド樹脂100質量部に対し、0~150質量部である。好ましくは15~150質量部、より好ましくは25~120質量部、さらに好ましくは30~100質量部である。また、ポリアミド樹脂組成物100質量%に対しては、0~57質量%であることが好ましく、より好ましくは10~55質量%、さらに好ましくは15~55質量%、特に好ましくは20~50質量%である。」
(本d)「【0041】
[(C)非繊維状無機充填材]
本発明のポリアミド樹脂組成物は、(C)非繊維状無機充填材を含んでいる。非繊維状無機充填材を含有することにより、優れた機械的強度、外観と剛性が得られる。非繊維状無機充填材としては、球状、板状、棒状、針状、粒状、鱗片状の形状であることが好ましい。
非繊維状無機充填材としては、以下に限定されるものではないが、例えば、フレーク状ガラス、タルク、カオリン、マイカ、ハイドロタルサイト、炭酸カルシウム、炭酸亜鉛、酸化亜鉛、リン酸一水素カルシウム、ワラストナイト、シリカ、ゼオライト、アルミナ、ベーマイト、水酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化ケイ素、酸化マグネシウム、ケイ酸カルシウム、アルミノケイ酸ナトリウム、ケイ酸マグネシウム、グラファイト、黄銅、銅、銀、アルミニウム、ニッケル、鉄、フッ化カルシウム、雲母、モンモリロナイト、膨潤性フッ素雲母およびアパタイトが挙げられる。
これらは、1種のみを単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0042】
例示した中でも、本発明のポリアミド樹脂組成物の機械的強度および剛性を増大させる観点から、フレーク状ガラス、タルク、カオリン、マイカ、炭酸カルシウム、ワラストナイト、グラファイト、モンモリロナイト、膨潤性フッ素雲母およびアパタイトよりなる群から選択される1種以上が好ましい。より好ましくは、タルク、マイカ、カオリンおよびワラストナイトの中から選ばれる1種以上であり、さらに好ましくはタルク、マイカおよびカオリンの中から選ばれる1種以上である。
【0043】
非繊維状無機充填材は、優れた機械的特性と外観をポリアミド樹脂組成物に付与できるという観点から、数平均粒子径が0.1~50μmであるものが好ましい。より好ましくは3~40μmであり、さらに好ましくは10~40μmであり、特に好ましくは10~30μmである。非繊維状無機充填材の数平均粒子径は、原料である非繊維状無機充填材、またはポリアミド樹脂組成物を電気炉に入れて含まれる有機物を焼却処理した残渣分を、1%石鹸水に分散させ、レーザー粒度計にて粒子径分布を測定することにより求めることができる。
【0044】
また、非繊維状無機充填材の中でも、優れた機械的特性をポリアミド樹脂組成物に付与できるという観点から、ポリアミド樹脂組成物中において、数平均繊維径が3~20μmであり、重量平均繊維長が10~300μmであり、およびアスペクト比が3~20である針状無機充填材がさらに好ましい。
・・・
【0046】
本発明で用いられる非繊維状無機充填材は、水蒸気吸着によるBET比表面積S水蒸気と窒素ガス吸着によるBET比表面積S窒素の比(S水蒸気/S窒素)が、0.45以上であり、好ましくは0.45以上0.8以下であり、より好ましくは0.5以上0.7以下である。ここで、S水蒸気/S窒素は、非繊維状無機充填材表面が親水性か疎水性かの指標となる値で、この値が大きい程親水性の傾向が強いことを意味している。S水蒸気/S窒素を上記範囲とすることで、極性があり親水性の官能基の割合が高いポリアミド樹脂との親和性が増すので、機械的強度や耐衝撃性が向上する傾向にある。
【0047】
S水蒸気とS窒素は、例えば、マイクロトラック・ベル社製のBELSORP-maxなどのガス吸着量測定装置を用いることで測定することができる。具体的測定方法は、試料の前処理として100℃で6時間真空加熱を行った後、定容量法により水蒸気または窒素ガスの吸着等温線を測定し、BET法を用いて比表面積を求めることができる。
S水蒸気とS窒素は、非繊維状無機充填材の原料となる鉱石によって異なるため、上記方法で分析することによって、非繊維状無機充填材を選定することが好ましい。
【0048】
非繊維状無機充填材は、表面処理剤などにより表面処理を施してもよい。好ましい表面処理剤としては、イソシアネート系化合物、有機シラン系化合物、有機チタネート系化合物、有機ボラン系化合物およびエポキシ化合物の中から選ばれる1種以上であり、中でも優れた機械的強度、耐衝撃性の観点から、有機シラン系化合物がより好ましい。
・・・
【0052】
本発明で用いられる非繊維状無機充填材の配合量は、機械的強度、耐衝撃性や外観の観点から、ポリアミド樹脂100質量部に対し、10~200質量部である。好ましくは15~150質量部、より好ましくは15~100質量部、さらに好ましくは20~80質量部である。また、ポリアミド樹脂組成物100質量%に対しては、10~65質量%であることが好ましく、より好ましくは10~50質量%、さらに好ましくは10~45質量%、特に好ましくは10~40質量%である。」
(本e)「【0053】
付加的成分の例を以下に挙げる。
酸化防止剤、紫外線吸収剤、熱安定剤、光劣化防止剤、滑剤、可塑剤、離型剤、核剤、難燃剤、着色剤等を添加することもできるし、他の熱可塑性樹脂をブレンドしてもよい。
熱安定剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、フェノール系熱安定剤、リン系熱安定剤、アミン系熱安定剤、周期律表の第Ib族、第IIb族、第IIIa族、第IIIb族、第IVa族および第IVb族の元素の金属塩、並びにアルカリ金属のハロゲン化物およびアルカリ土類金属のハロゲン化物等が挙げられる。
これらは、1種のみを単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
・・・
【0077】
本発明において、ポリアミド樹脂組成物の製造方法は、単軸または多軸押出機によってポリアミド樹脂を溶融させた状態で混練する方法を用いることができる。上流側供給口と下流側供給口を備えた二軸押出機を使用し、上流側供給口からポリアミド樹脂を供給して溶融させた後、下流側供給口から無機充填材を供給して溶融混練する方法を好ましく使用できる。また、ガラス繊維ロービングを用いる場合も、公知の方法で複合することができる。
このようにして得られる組成物は、従来より公知の種々の方法、例えば、射出成形により各種部品の成形体として成形できる。
【0078】
これら各種部品としては、例えば、自動車用、機械工業用、電気・電子用、産業資材用、工業材料用、日用・家庭品用として好適に使用できる。」
(本f)「【実施例】
【0080】
(使用した原料)
(1)ポリアミド
(1-1)ポリアミド66(以下、PA-1と略記)
VN(硫酸):147ml/kg、アミノ末端基:50mmol/kg、カルボン酸末端基:80mmol/kg
(1-2)ポリアミド6(以下、PA-2と略記)
VN(硫酸):125ml/kg、アミノ末端基:90mmol/kg、カルボン酸末端基:30mmol/kg
【0081】
(2)ガラス繊維
(2-1)平均繊維径13μmのガラス繊維(以下、GF-1と略記)
(2-2)平均短径7μm、平均長径28μmの扁平形状断面のガラス繊維(以下、GF-2と略記)
【0082】
(3)無機充填材
(3-1)平均粒子径19.4μmのタルク(以下、T-1と略記)
窒素ガス吸着BET比表面積S窒素:3.3m2/g
水蒸気吸着BET比表面積S水蒸気:1.9m2/g
S水蒸気/S窒素:0.58
(3-2)平均粒子径17.8μmのタルク(以下、T-2と略記)
窒素ガス吸着BET比表面積S窒素:7.2m2/g
水蒸気吸着BET比表面積S水蒸気:2.5m2/g
S水蒸気/S窒素:0.35
【0083】
(4)滑剤
モンタン酸ナトリウム[Licomont(登録商標)NaV101(クラリアントケミカルズ社製)](以下、WAXと略記)
【0084】
(評価方法)
以下に、評価方法について述べる。
<引張強度>
実施例および比較例で得られたポリアミド樹脂組成物ペレットを、射出成形機[PS-40E:日精樹脂株式会社製]を用いて、射出+保圧時間25秒、冷却時間15秒、金型温度80℃、溶融樹脂温度290℃に設定し、ISO 3167、多目的試験片A型の成形片を成形した。得られた成形片を用いて、ISO 527に準拠し、引張速度5mm/minで引張試験を行い、引張強度を測定した。
【0085】
<シャルピー衝撃強度>
上記多目的試験片A型を切削して使用し、80mm×10mm×4mmの試験片を用いて、ISO 179/1eAに準拠し、ノッチ付きシャルピー衝撃強度を測定した。
【0086】
<外観>
実施例および比較例で得られたポリアミド樹脂組成物ペレットを、射出成形機[PS-40E:日精樹脂株式会社製]を用いて、金型温度を80℃、溶融樹脂温度290℃に設定し、ISO 294-3に従いタイプD1の金型を用いて、60mm×60mm×2mmの成形片を、射出時の充填時間を1秒、保圧5秒でそれぞれ成形し、目視で外観を判定した。10枚の成形片の両面(合計20面)を観察し、全ての面で充填材の浮きやシルバーストリーク等による白化部分が観察されないものをA、白化部分が観察される面の数が5つ以下のものをB、白化部分が観察される面が6つ以上のものをCとした。
【0087】
[製造例1(表面処理タルクT-3の製造)]
タルク(T-1)3kgとγ-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン9gをヘンシェルミキサー中で10分間撹拌し、0.3質量%のアミノ基含有アルコキシシラン化合物で表面処理されたタルク(以下、T-3と略記)を得た。
【0088】
[製造例2(表面処理タルクT-4の製造)]
タルク(T-1)3kgとγ-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン30gをヘンシェルミキサー中で10分間撹拌し、1.0質量%のアミノ基含有アルコキシシラン化合物で表面処理されたタルク(以下、T-4と略記)を得た。
【0089】
[製造例3(表面処理タルクT-5の製造)]
タルク(T-2)3kgとγ-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン9gをヘンシェルミキサー中で10分間撹拌し、0.3質量%のアミノ基含有アルコキシシラン化合物で表面処理されたタルク(以下、T-5と略記)を得た。
【0090】
[製造例4(表面処理タルクT-6の製造)]
タルク(T-2)3kgとγ-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン30gをヘンシェルミキサー中で10分間撹拌し、1.0質量%のアミノ基含有アルコキシシラン化合物で表面処理されたタルク(以下、T-6と略記)を得た。
【0091】
[製造例5(表面処理タルクT-7の製造)]
タルク(T-1)3kgと3-トリメトキシシリルプロピルコハク酸無水物9gをヘンシェルミキサー中で10分間撹拌し、0.3質量%の酸無水物基含有アルコキシシラン化合物で表面処理されたタルク(以下、T-7と略記)を得た。
【0092】
[製造例6(表面処理タルクT-8の製造)]
タルク(T-1)3kgと3-トリメトキシシリルプロピルコハク酸無水物30gをヘンシェルミキサー中で10分間撹拌し、1.0質量%の酸無水物基含有アルコキシシラン化合物で表面処理されたタルク(以下、T-8と略記)を得た。
【0093】
[製造例7(表面処理タルクT-9の製造)]
タルク(T-2)3kgと3-トリメトキシシリルプロピルコハク酸無水物9gをヘンシェルミキサー中で10分間撹拌し、0.3質量%の酸無水物基含有アルコキシシラン化合物で表面処理されたタルク(以下、T-9と略記)を得た。
【0094】
[製造例8(表面処理タルクT-10の製造)]
タルク(T-2)3kgと3-トリメトキシシリルプロピルコハク酸無水物30gをヘンシェルミキサー中で10分間撹拌し、1.0質量%の酸無水物基含有アルコキシシラン化合物で表面処理されたタルク(以下、T-10と略記)を得た。
【0095】
[実施例1~7、比較例1~8]
押出機上流側から1番目のバレルに上流側供給口を有し、6番目のバレルに下流側第1供給口、9番目のバレルに下流側第2供給口、11番目のバレルに真空脱揮口を有した、L/D(押出機のシリンダーの長さ/押出機のシリンダー径)=48(バレル数:12)の二軸押出機[ZSK-26MC:コペリオン社製(ドイツ)]を用いて、上流側供給口からダイまでを300℃に設定し、スクリュー回転数300rpm、吐出量25kg/hで、表1記載の割合となるように、上流側供給口よりポリアミド、滑剤を供給し、下流側第1供給口より無機充填材、下流側第2供給口よりガラス繊維を供給し、真空脱揮口より減圧して溶融混練し樹脂組成物ペレットを作製した。得られた樹脂組成物を、樹脂温度290℃、金型温度80℃にて成形し、引張強度、シャルピー衝撃強度、外観を評価した。物性値を組成とともに表1に併記した。
【0096】
【表1】
[図:0001393994000001.jpg]
【0097】
表1から明らかなように、本発明の無機充填材強化ポリアミド樹脂組成物は機械的強度や外観に優れていることがわかる。」
2 各甲号証に記載された事項
(1)甲第1号証に記載された事項
甲第1号証には、以下の事項が記載されている。
(甲1a)「請求の範囲
[請求項1] 結晶性脂肪族ポリアミド樹脂(A)、非晶性ポリアミド樹脂(B)、アクリル系樹脂(C)、マイカ(D)、ガラス繊維(E)、及びカーボンブラック(F)をそれぞれ(10~40):(2~20):(1~10):(2~25):(20~50):(0.1~5)の質量比で含有し、さらに前記(A)~(F)成分の合計含有量を100質量部とした場合に銅化合物(G)を0.005~1.0質量部の割合で含有することを特徴とするガラス繊維強化ポリアミド樹脂組成物。
[請求項2] 非晶性ポリアミド樹脂(B)が、半芳香族ポリアミドであることを特徴とする請求項1に記載のガラス繊維強化ポリアミド樹脂組成物。
[請求項3] 前記ガラス繊維強化ポリアミド樹脂組成物を射出成形することにより平板を作製し、該平板について、JIS-K-7350-2に準拠して、耐候試験を行った場合の耐候試験前後の色差△Eが3.5以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載のガラス繊維強化ポリアミド樹脂組成物。
[請求項4] 請求項1~3のいずれかに記載のガラス繊維強化ポリアミド樹脂組成物を用いて成形されていることを特徴とする車両内装用又は車両外装用成形品。
[請求項5] アウターハンドル、アウタードアハンドル、ホイールキャップ、ルーフレール、ドアミラーベース、ルームミラーアーム、サンルーフデフレクター、ラジエーターファン、ラジエーターグリル、ベアリングリテーナー、コンソールボックス、サンバイザーアーム、スポイラー、及びスライドドアレールカバーからなる群から選ばれることを特徴とする請求項4に記載の車両内装用又は車両外装用成形品。」
(甲1b)「技術分野
[0001] 本発明は、成形品外観に優れ、屋外、特に降雨に曝される使用条件下でも、黒色の退色が少なく、ガラス繊維などの充填剤の浮きがない、耐候性に優れたガラス繊維強化ポリアミド樹脂組成物に関する。
・・・
発明が解決しようとする課題
[0006] 本発明は、上記の従来技術の現状に鑑み創案されたものであり、その目的は、成形品外観に優れ、屋外、特に降雨に曝される使用条件下でも、黒色の退色が少なく、ガラス繊維などの充填剤の浮きがない、耐候性に優れたガラス繊維強化ポリアミド樹脂組成物を提供することにある。
課題を解決するための手段
[0007] 本発明者は、かかる目的を達成するために鋭意検討した結果、結晶性脂肪族ポリアミド樹脂と、非晶性ポリアミド樹脂と、アクリル系樹脂と、マイカと、ガラス繊維と、カーボンブラックと、銅化合物とを特定の割合で配合することにより、耐候性に優れたガラス繊維強化ポリアミド樹脂組成物を提供できることを見出し、本発明の完成に至った。
・・・
【発明の効果】
[0009] 本発明のガラス繊維強化ポリアミド樹脂組成物は、降雨に曝される使用条件下でも、黒色の退色が少なく、ガラス繊維などの充填剤の浮きがない、耐候性に優れた成形品を提供することができる。」
(甲1c)「[0010] 本発明のガラス繊維強化ポリアミド樹脂組成物は、結晶性脂肪族ポリアミド樹脂(A)、非晶性ポリアミド樹脂(B)、アクリル系樹脂(C)、マイカ(D)、ガラス繊維(E)、及びカーボンブラック(F)を含有し、(A)、(B)、(C)、(D)、(E)、及び(F)の各成分の質量比はそれぞれ(10~40):(2~20):(1~10):(2~25):(20~50):(0.1~5)である。また、本発明のガラス繊維強化ポリアミド樹脂組成物は、(A)~(F)成分の合計含有量を100質量部とした場合に銅化合物(G)を0.005~1.0質量部の割合で含有する。
[0011] 結晶性脂肪族ポリアミド樹脂(A)としては、ラクタムやω-アミノカルボン酸、ジカルボン酸及びジアミンなどを原料とし、これらの重縮合によって得られるポリアミド樹脂、又はこれらの共重合体やブレンド物が挙げられる。・・・
[0012] 結晶性脂肪族ポリアミド樹脂(A)の配合割合は、本発明のガラス繊維強化ポリアミド樹脂組成物中の(A)成分と後述する(B)~(F)成分の合計含有量を100質量部とした場合に、10~40質量部、好ましくは20~30質量部である。結晶性脂肪族ポリアミド樹脂(A)の配合割合が上記範囲未満であると、組成物の溶融押出が困難となり、一方、上記範囲を越えると、機械的特性、熱的特性などが劣るようになる傾向がある。
[0013] 非晶性ポリアミド樹脂(B)としては、DSC測定時のサーモグラムに、結晶の融解ピークが認められないポリアミド樹脂であり、・・・
[0014] 非晶性ポリアミド樹脂(B)の配合割合は、本発明のガラス繊維強化ポリアミド樹脂組成物中の(A)、(B)成分と後述する(C)~(F)成分の合計含有量を100質量部とした場合に、2~20質量部、好ましくは、10~15質量部である。非晶性ポリアミド樹脂(B)の配合割合が上記範囲未満であると、成形品の外観が悪くなり、一方、上記範囲を越えると、金型からの離型不良や成形品の外観が悪くなる不具合が起きる傾向がある。
[0015] 結晶性脂肪族ポリアミド樹脂(A)と非晶性ポリアミド樹脂(B)との配合割合は、高い弾性率を発現させ、固化の速度を調整し生産時のストランド性や射出成形時の金型転写性を改善する観点から、(A):(B)=60:40~95:5の質量比が好ましく、(A):(B)=60:40~90:10の質量比がさらに好ましい。
[0016] 上記のように、結晶性脂肪族ポリアミド樹脂(A)に非晶性ポリアミド樹脂(B)を配合することにより、耐候性向上効果が大きくなる。この理由は、アクリル系樹脂(C)の分散性、相溶性が変化するためであると推察される。
・・・
[0020] 本発明のガラス繊維強化ポリアミド樹脂組成物中において、アクリル系樹脂(C)の配合割合は、ポリアミド樹脂(A)と(B)の合計100質量部に対して、2~30質量部が好ましい。アクリル系樹脂(C)の配合割合が上記範囲未満であると、耐候性向上効果が小さくなり、一方、上記範囲を越えると、強度、剛性、耐溶剤性、耐熱性の低下が大きくなる傾向がある。」
(甲1d)「[0021] マイカ(D)としては、白雲母、金雲母、黒雲母、人造雲母などが挙げられ、いずれを使用してもよい。マイカの形状を楕円に近似し、長径と短径の平均を粒子径とした場合、マイカの粒子径は、外観と剛性のバランスから1~30μm程度が好ましい。
[0022] マイカ(D)の配合割合は、本発明のガラス繊維強化ポリアミド樹脂組成物中の(A)~(D)成分と後述する(E)及び(F)成分の合計含有量を100質量部とした場合に、2~25質量部、好ましくは15~22質量部である。マイカ(D)の配合割合が上記範囲未満であると、成形品の外観向上効果が小さくなり、一方、上記範囲を越えると、流動性や機械的強度が劣る傾向がある。
[0023] ガラス繊維(E)の断面は円形、扁平のいずれでもよい。扁平断面ガラス繊維としては、繊維の長さ方向に対して垂直な断面において略楕円形、略長円形、略繭形であるものを含み、扁平度が1.5~8、さらには2~5であることが好ましい。ここで扁平度とは、ガラス繊維の長手方向に対して垂直な断面に外接する最小面積の長方形を想定し、この長方形の長辺の長さを長径とし、短辺の長さを短径とした場合の、長径/短径の比である。扁平度が上記範囲未満では、円形断面のガラス繊維と形状に大きな差がないため、成形物の耐衝撃性があまり向上しない場合がある。一方、扁平度が上記範囲を越えると、ポリアミド樹脂中における嵩密度が高くなるので、ポリアミド樹脂中に均一に分散できず、成形物の耐衝撃性があまり向上しない場合がある。本発明において、略長円形の断面を有し、扁平度が2~5のガラス繊維を用いると、より高い機械的物性を発現させることができる。
[0024] ガラス繊維(E)の配合割合は、本発明のガラス繊維強化ポリアミド樹脂組成物中の(A)、(B)、(C)、(D)、(E)成分と後述する(F)成分の合計含有量を100質量部とした場合に、20~50質量部、好ましくは25~45質量部である。ガラス繊維(E)の配合割合が上記範囲未満であると、成形品の剛性が不足し、一方、上記範囲を越えると、配合量に見合う補強効果が発現されなくなる傾向がある。
[0025] 本発明のガラス繊維強化ポリアミド樹脂組成物を製造するにあたっては、特に扁平断面ガラス繊維を使用する場合、ポリアミド反応性シランカップリング剤をガラス繊維(E)の0.1~1.0質量%の割合で添加することが好ましい。ポリアミド用チョップドストランドの集束剤にはマトリクス樹脂との接着性の向上のために、予めシランカップリング剤が繊維束に少量含まれている。しかし、予め繊維束に付着させることのできるアミノシランカップリング剤の量は、繊維束が押出時に解繊不良を起こさないように上限があるため、不足分を追加添加することが好ましい。」
(甲1e)「[0026] カーボンブラック(F)としては、特に限定されるものではないが、例えばサーマルブラック、チャンネルブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、ファーネスブラックなどが挙げられる。平均粒子径が10~40μmの範囲、BET吸着法による比表面積が50~300m2/gの範囲、ジブチルフタレートを用いた吸油量の測定値が50cc/100g~150cc/100gの範囲のものが好適である。
・・・
[0029] 銅化合物(G)としては、塩化銅、臭化銅、沃化銅、酢酸銅、銅アセチルアセトナート、炭酸銅、ホウフッ化銅、クエン酸銅、水酸化銅、硝酸銅、硫酸銅、蓚酸銅などが挙げられる。本発明のガラス繊維強化ポリアミド樹脂組成物において、銅化合物(G)の含有割合は、本発明のガラス繊維強化ポリアミド樹脂組成物中の(A)~(F)の成分の合計含有量を100質量部とした場合に、0.005~1.0質量部、好ましくは0.01~0.5質量部である。銅化合物(G)の含有割合が上記範囲未満であると、耐熱老化性が劣る傾向があり、一方、上記範囲を越えても、それ以上の耐熱老化性の向上は見られず、物性が低下する傾向がある。
・・・
[0031] また、本発明のガラス繊維強化ポリアミド樹脂組成物には、本発明の特性を阻害しない範囲で、上記(A)~(G)の必須成分以外に、繊維状強化材、無機充填材、光または熱安定剤としてフェノール系酸化防止剤やリン系酸化防止剤、離型剤、結晶核剤、滑剤、難燃剤、帯電防止剤、顔料、染料等の任意成分を配合することができる。本発明のガラス繊維強化ポリアミド樹脂組成物において、(A)~(G)の必須成分以外の任意成分の合計含有量は、最大10質量%であることが好ましい。また、耐候性の観点から、本発明のガラス繊維強化ポリアミド樹脂組成物の(A)~(F)の成分の合計含有量を100質量部とした場合に、ワラストナイトは5質量部以下であることが好ましく、含有しないことがより好ましい。」
(甲1f)「実施例
[0034] 本発明の効果を以下の実施例により具体的に示すが、本発明の技術思想を逸脱しない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、実施例における特性値の評価は以下の方法に従った。
[0035](1)ポリアミド樹脂の相対粘度:ポリアミド樹脂0.25gを96%の硫酸25mlに溶解し、この溶液10mlをオストワルド粘度管に入れ、20℃で測定し、以下の式により算出した。
RV=T/T0
RV:相対粘度、T:サンプル溶液の落下時間、T0:溶媒の落下時間
[0036](2)曲げ強度、曲げ弾性率:ISO-178に準じて測定した。
[0037](3)耐候性の評価
色差ΔE:射出成形機(東芝機械株式会社製、IS80)でシリンダー温度280℃、金型温度90℃にて成形したシボ平板(100mm×100mm×2mm)について、JIS K-7350-2に準拠し、キセノンウェザーメーター(スガ試験機株式会社製XL75)を用い、耐候試験(ブラックパネル温度:63±2℃、相対湿度:50±5%、照射方法:120分中18分降雨(水噴射)、照射時間:1250時間、照射度:波長300nm~400nm 60W/m2・S、光学フィルター:(内)石英、(外)ボロシリケイト♯275)を行った。耐候試験前後のシボ平板について、東京電色社製分光測色計TC-1500SXを用いてL、a、b値を測定し、色差ΔEを算出した。
暴露試験後の成形品表面外観(強化材露出の有無):
○:強化材の露出が認められない。×:強化材の露出が認められる。
暴露試験後の成形品表面のシボ状態:
○:シボの模様がはっきり見える。×:シボの模様が確認されない。
[0038]・ポリアミド樹脂(A)
(A1)相対粘度RV=1.9のポリアミド6、東洋紡社製「ナイロンT-860」
(A2)相対粘度RV=2.4のポリアミド66、ローディア社製「スタバミド23AE」
・非晶性ポリアミド樹脂(B)
(B1)相対粘度RV=2.0のポリアミド6T6I、エムス社製「グリボリーG21」、
(B2)相対粘度RV=1.8のポリアミド6T6I、エムス社製「グリボリーG16」
[0039]・アクリル系樹脂(C)
ポリメタクリル酸メチル、クラレ社製「パラペットGF」
・マイカ(D)
Repco社製「S-325」
・ガラス繊維(E)
日本電気硝子社製「T-275H」(円形断面ガラス繊維チョップドストランド:直径11μm)
・カーボンブラック(F)
マスターバッチ:住化カラー社製「EPC-840」:ベース樹脂 LDPE樹脂、カーボンブラック含有量43%
・銅化合物(G)
臭化第二銅:和光純薬社製 純度99.9%
[0040]・使用した他の成分
ワラストナイト:NYCO MINERAL社製「NYGLOS8」(繊維径8μm、繊維長136μm)
光安定剤:クラリアント社製 ナイロスタブS-eed
[0041]<実施例1~9、比較例1~9>
表1及び表2に示す配合割合で、マイカ(D)、ガラス繊維(E)、ワラストナイト以外の成分をドライブレンドし、コペリオン社製ベント式2軸押出機「STS35mm」(バレル12ブロック構成)を用いてシリンダー温度280℃、スクリュウ回転数250rpmの押出条件で溶融混合し、次いでマイカ(D)、ガラス繊維(E)、ワラストナイトをサイドフィード方式で供給し溶融混練を行った。押出機から押出されたストランドを急冷してストランドカッターでペレット化した。得られたペレットを100℃で12時間乾燥した後、射出成形機(東芝機械株式会社製、IS80)でシリンダー温度280℃、金型温度90℃にてシボ平板を成形して評価に供した。評価結果も表1及び表2に記した。なお、表中のカーボンブラックマスターバッチ(F)の配合量は、マスターバッチとしての量である。
[0042][表1]
[図:0001393994000002.jpg]
[0043][表2]
[図:0001393994000003.jpg]
[0044] 表1から、実施例1~9の試験片は、暴露試験前後の色差ΔEが小さく、黒色の退色が抑制されていることがわかる。また、ガラス繊維の露出が抑制され、シボの状態も良好である。一方、表2から、比較例1~7の試験片は、暴露試験前後の色差ΔEが大きく、黒色の退色が大きく、シボ外観が損なわれること、比較例8,9の試験片は、いずれも色差ΔEは良好であるが、それぞれ耐候性、曲げ強度・曲げ弾性率に劣ることがわかる。」
(2)甲第2号証に記載された事項
甲第2号証には、以下の事項が記載されている。
(甲2a)「
[図:0001393994000004.jpg]
」
(3)甲第3号証に記載された事項
甲第3号証には、以下の事項が記載されている。
(甲3a)「
[図:0001393994000005.jpg]
」(頁1)
(4)甲第4号証に記載された事項
甲第4号証には、以下の事項が記載されている。
(甲4a)「
[図:0001393994000006.jpg]
」(1/1頁)
(5)甲第5号証に記載された事項
甲第5号証には、以下の事項が記載されている。
(甲5a)「
[図:0001393994000007.jpg]
」
(6)甲第6号証に記載された事項
甲第6号証には、以下の事項が記載されている。
(甲6a)「
[図:0001393994000008.jpg]
」
(7)甲第7号証に記載された事項
甲第7号証には、以下の事項が記載されている。
(甲7a)「【請求項1】
(A)ポリアミド(ただし、テレフタル酸を60~100モル%含有するジカルボン酸単位(a)と、1,9-ノナンジアミン単位(b-1)および2-メチル-1,8-オクタンジアミン単位(b-2)を60~100モル%含有するジアミン単位(b)からなる半芳香族ポリアミドは除く)(B)ポリフェニレンエーテル、(C)下式(I)で表されるホスフィン酸塩、下式(II)で表されるジホスフィン酸塩及びこれらの縮合物の中から選ばれる少なくとも1種のホスフィン酸塩類を含んでなる樹脂組成物であって、ここで(A)ポリアミドの粘度数(ISO307:1997で規定される96%硫酸中で測定)が50ml/g~250ml/gである事を特徴とする樹脂組成物。
【化1】
・・・
[式中、R1及びR2は、同一か又は異なり、直鎖状もしくは分岐状のC1~C6-アルキル及び/又はアリールもしくはフェニルであり、R3は、直鎖状もしくは分岐状のC1~C10-アルキレン、C6~C10-アリーレン、C6~C10-アルキルアリーレン又はC6~C10-アリールアルキレンであり、Mはカルシウム(イオン)、マグネシウム(イオン)、アルミニウム(イオン)、亜鉛(イオン)、ビスマス(イオン)、マンガン(イオン)、ナトリウム(イオン)、カリウム(イオン)及びプロトン化された窒素塩基から選ばれる1種以上であり、mは2又は3であり、nは1~3であり、xは1又は2である。]
【請求項2】
(A)ポリアミドの粘度数(ISO307:1997で規定される96%硫酸中で測定)が70ml/g以上、150ml/g以下である請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
(A)ポリアミドの粘度数(ISO307:1997で規定される96%硫酸中で測定)が100ml/g以上、150ml/g以下である請求項1に記載の樹脂組成物。
・・・
【請求項15】
請求項13又は14のいずれかに製造方法より得られるペレット。
【請求項16】
請求項1~12のいずれかに記載の樹脂組成物から得られる成形品。
【請求項17】
請求項1~12のいずれかに記載の樹脂組成物から得られる表面実装技術に対応する成形部品。」
(甲7b)「【背景技術】
【0002】
従来より、ポリアミドは、機械的強度、耐熱性、耐薬品性などに優れる事から、自動車部品、機械部品、電気・電子部品など数多くの分野で使用されている。
中でも特に、自動車のエンジンルーム内に設置されるリレーブロックには、従来、ポリアミド6,6が使用されていたが、吸水時の寸法変化が大きくなるという問題点があった。このため、最近では次第にポリアミド/ポリフェニレンエーテルアロイへ置き換わってきている。自動車部品、機械部品、電気・電子部品は、その形状が複雑化する傾向にあり、さらには小型、薄肉化していく流れに有るのが現状である。
また、最近の傾向として車両火災を未然に防止するという観点から、リレーブロック等の車両部品に対し、難燃化という新たな要求特性が挙げられている。
・・・
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、難燃性、耐衝撃性に優れ、薄肉部品での優れた成形性と、表面外観に優れた成形品を得る事のできる樹脂組成物を提供する事にある。詳しくは、優れた流動性を有し、更には加工時のガスの発生を大幅に抑制する事ができ、射出成形時の金型への付着物(以下モールドデポジットと称する事がある)の生成を大幅に抑制する事ができる樹脂組成物を提供する事にある。」
(甲7c)「【0027】
本発明で使用されるポリアミドはISO307:1994に準拠し96%硫酸で測定した粘度数が50ml/g~250ml/gである必要がある。ポリアミドの粘度数を50ml/g以上とする事により、押出し等の加工性が向上するとともに、難燃性が向上し、成形時のガスの発生が大幅に抑制される。また、モールドデポジットの発生が少ないので、射出成形時の正常な成形が可能なショット数を飛躍的に増やす事ができ、成形性の大幅な改善につながる。また、粘度数を250ml/g以下とする事により、上述した効果に加え、薄肉成形品の成形性の向上といった新たな効果が発現できるようになる。
好ましい下限値は70ml/gであり、更に好ましい下限値は100ml/gである。また、好ましい上限値は、200ml/gであり、最も好ましい上限値は150ml/gである。」
(甲7d)「【0089】
本発明の(F)成分の無機充填材とは、ガラス繊維、チタン酸カリウム繊維、石膏繊維、黄銅繊維、ステンレス繊維、スチール繊維、セラミックス繊維、ボロンウィスカ繊維、マイカ、タルク、シリカ、炭酸カルシウム、カオリン、焼成カオリン、ウォラストナイト、ゾノトライト、アパタイト、ガラスビーズ、ガラスフレーク、酸化チタン、着色用カーボンブラック等の繊維状、粒状、板状、あるいは針状の無機質強化材が挙げられる。これら無機充填材は2種以上組み合わせて用いても構わない。これらの中でもより好ましい無機充填材としては、タルク、ウォラストナイト、ガラス繊維が挙げられる。また、無機充填材はシランカップリング剤等の表面処理剤を用いて公知の方法で表面処理した物を用いても構わない。
【0090】
本発明における無機充填材の好ましい量は、無機充填材を含む樹脂組成物すべての質量を100質量%とした際に1~70質量%である。より好ましい量としては5~50質量%であり、最も好ましくは10~45質量%である。・・・」
(8)甲第8号証に記載された事項
甲第8号証には、以下の事項が記載されている。
(甲8a)「【請求項1】
下記の成分(A)~(D)を、組成物を構成する全成分の合計100重量%に対して、それぞれ下記の比率で含有してなる自動車外装部品製造用熱可塑性樹脂組成物。
成分(A):ISO-307に準拠して測定される粘度数が80~120ml/gの範囲内であるポリアミド6樹脂:35~77重量%
成分(B):ビニル芳香族化合物重合体ブロックと共役ジエン系化合物重合体ブロックとのブロック共重合体の水素添加物、並びに、不飽和酸及び/又はその誘導体でグラフト変性された、ビニル芳香族化合物重合体ブロックと共役ジエン系化合物重合体ブロックとのブロック共重合体の水素添加物:1~20重量%
成分(C):炭素繊維:21~40重量%
成分(D):エチレンビニルアルコール樹脂:1~5重量%
【請求項2】
成分(A)のポリアミド6樹脂において、末端カルボキシル基濃度(単位:μeq/g)と末端アミノ基濃度(単位:μeq/g)の比率が、6≧末端カルボキシル基濃度/末端アミノ基濃度≧2の範囲内であることを特徴とする請求項1に記載の自動車外装部品製造用熱可塑性樹脂組成物。
【請求項3】
成分(B)が、下記の成分(B-1)及び成分(B-2)を、成分(B-1)の重量/成分(B-2)の重量=1/9~9/1の範囲内の比率で含有してなる請求項1又は2に記載の自動車外装部品製造用熱可塑性樹脂組成物。
成分(B-1):ビニル芳香族化合物重合体ブロックと共役ジエン系化合物重合体ブロックとのブロック共重合体の水素添加物
成分(B-2):無水マレイン酸でグラフト変性された、ビニル芳香族化合物重合体ブロックと共役ジエン系化合物重合体ブロックとのブロック共重合体の水素添加物であり、かつ、当該ブロック共重合体の水素添加物100重量%に対して、2.6~5.0重量%の範囲内の無水マレイン酸でグラフト変性されたもの
【請求項4】
成分(C)がPAN系の炭素繊維で、かつ平均繊維径が、5~8μmの範囲内であることを特徴とする請求項1~3の何れか1項に記載の自動車外装部品製造用熱可塑性樹脂組成物。
【請求項5】
成分(B)のビニル芳香族化合物含有率が、成分(B)100重量%に対して、15~25重量%の範囲内であることを特徴とする請求項1~4の何れか1項に記載の自動車外装部品製造用熱可塑性樹脂組成物。
【請求項6】
成分(D)のエチレン共重合比率が、40~50mol%の範囲内であることを特徴とする請求項1~5の何れか1項に記載の自動車外装部品製造用熱可塑性樹脂組成物。
【請求項7】
上記樹脂組成物の成分(D)のペレットを、成分(A)、成分(B)及び成分(C)の溶融混練により得られたペレットと、ドライブレンドにて配合したことを特徴とする請求項1~6の何れか1項に記載の自動車外装部品製造用樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1~7の何れか1項に記載の自動車外装部品製造用熱可塑性樹脂組成物を射出成形し、得られた射出成形体に静電塗装を施してなる自動車外装部品。」
(甲8b)「【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車外装部品製造用熱可塑性樹脂組成物に関する。さらに詳しくは、流動性、耐衝撃性、寸法安定性、耐熱剛性、導電性、塗装密着性、外観等の、静電塗装を施す自動車外装部品を製造するのに必要な、各特性を高度に均衡させた樹脂組成物、及び、この樹脂組成物からなる成形体に静電塗装を施してなる自動車外装部品に関するものである。
・・・
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、かかる状況にあって、自動車外装部品を製造するための材料として必要な(1)流動性(2)耐衝撃性(3)寸法安定性(4)耐熱剛性(5)導電性(6)塗装密着性(7)外観、の全てに関して、高度に均衡した物性を有する樹脂組成物を見出したものであり、この樹脂組成物により得られる成形体はプライマー処理せずに、静電塗装により優れた品質の自動車外装部品を製造することができる。すなわち、本発明の目的は、優れた品質を有する静電塗装可能な自動車外装部品製造用樹脂組成物及び、この組成物を用いた自動車外装部品を提供することにある。
・・・
【発明の効果】
【0010】
本発明は、次のような特別に有利な効果を奏し、その産業上の利用価値は極めて大である。
1.本発明の自動車外装部品製造用樹脂組成物は、流動性、耐衝撃性、寸法安定性、耐熱剛性、導電性、塗装密着性、外観が何れにおいても優れ、高度に均衡されている。
2.本発明の製造用樹脂組成物から得られる成形品は、鋼板と同様に静電塗装技術を適用し自動車外装部品を製造することができる。」
(甲8c)「【0011】
以下本発明を詳細に説明する。
成分(A)ポリアミド6樹脂
本発明において、成分(A)として用いるポリアミド6樹脂は、ISO-307に定められた手法、つまり96%濃硫酸溶媒及び該溶媒中0.5重量%濃度のポリアミド溶液について、23℃で測定された粘度から計算された粘度数(以下、単に「ISO粘度数」と略称することもある。)が、80~120ml/g以下のものであり、好ましくは80~110ml/gの範囲内のものである
成分(A)のポリアミド6樹脂のISO粘度数が120ml/gを超えると流動性が低下するので、また80ml/gに満たないと耐衝撃性が低下するので好ましくない。
なお、成分(A)のポリアミド樹脂6としてISO粘度数が異なる複数種のポリアミド6樹脂の配合物を使用する場合は、それぞれ単独には、ISO粘度数が前記所定の範囲外であっても、範囲内であっても差し支えないが、それらの配合物であるポリアミド6樹脂(成分(A))のISO粘度数は前記所定の範囲内であることが必要である。」
(甲8d)「【0031】
その他の成分
本発明に係る自動車外装部品製造用熱可塑性樹脂組成物には、上記の各成分のほかに、本発明の効果を損なわない種類と量の、他の各種樹脂添加剤を配合する(含有させる)ことができる。
そのような各種樹脂添加剤としては、例えば、銅系、リン系等の熱安定剤、ヒンダードフェノール系等の酸化防止剤、耐候性改良剤、造核剤、発泡剤、難燃剤、耐衝撃改良剤、滑剤、可塑剤、流動性改良剤、染料、顔料、有機充填剤、補強剤、分散剤、無機充填剤(タルクやワラストナイト等)、カーボンブラック(導電性カーボンブラック等)等が挙げられる。」
第6 当審の判断
当審は、当審が通知した取消理由A~B及び申立人が申し立てた申立理由1~2によっては、いずれも、本件発明1~10に係る特許を取り消すことはできないと判断する。
その理由は以下のとおりである。
1 取消理由について
取消理由A(新規性)と申立理由1(新規性)は同旨であるので、甲第1号証を主引用文献とする取消理由A(新規性)、取消理由B(進歩性)及び申立理由1(新規性)を併せて検討する。
(1)甲第1号証に記載された発明
甲第1号証の(甲1f)の実施例1に着目すると、
「ポリアミド6(A1)(相対粘度RV=1.9、東洋紡社製「ナイロンT-860」) 23.5質量部
非晶性ポリアミド樹脂(B1)(相対粘度RV=2.0のポリアミド6T6I、エムス社製「グリボリーG21」) 14.5質量部
アクリル系樹脂(C)(ポリメタクリル酸メチル、クラレ社製「パラペットGF」) 4質量部
マイカ(D)(Repco社製「S-325」) 20質量部
ガラス繊維(E)(日本電気硝子社製「T-275H」(円形断面ガラス繊維チョップドストランド:直径11μm)) 35質量部
カーボンブラックマスターバッチ(F)(住化カラー社製「EPC-840」:ベース樹脂 LDPE樹脂、カーボンブラック含有量43%) 3質量部
銅化合物(G)(臭化第二銅:和光純薬社製 純度99.9%) 0.02質量部
を含むガラス繊維強化ポリアミド樹脂組成物」の発明(以下「甲1発明1A」という。)が記載されているといえる。
同様に、実施例2に着目すると、
「ポリアミド6(A1)(相対粘度RV=1.9、東洋紡社製「ナイロンT-860」) 21.5質量部
非晶性ポリアミド樹脂(B1)(相対粘度RV=2.0のポリアミド6T6I、エムス社製「グリボリーG21」) 14.5質量部
アクリル系樹脂(C)(ポリメタクリル酸メチル、クラレ社製「パラペットGF」) 6質量部
マイカ(D)(Repco社製「S-325」) 20質量部
ガラス繊維(E)(日本電気硝子社製「T-275H」(円形断面ガラス繊維チョップドストランド:直径11μm)) 35質量部
カーボンブラックマスターバッチ(F)(住化カラー社製「EPC-840」:ベース樹脂 LDPE樹脂、カーボンブラック含有量43%) 3質量部
銅化合物(G)(臭化第二銅:和光純薬社製 純度99.9%) 0.02質量部
を含むガラス繊維強化ポリアミド樹脂組成物」の発明(以下「甲1発明2A」という。)が記載されているといえる。
同様に、実施例4に着目すると、
「ポリアミド66(A2)(相対粘度RV=2.4、ローディア社製「スタバミド23AE」) 23.5質量部
非晶性ポリアミド樹脂(B2)(相対粘度RV=1.8のポリアミド6T6I、エムス社製「グリボリーG16」) 14.5質量部
アクリル系樹脂(C)(ポリメタクリル酸メチル、クラレ社製「パラペットGF」) 4質量部
マイカ(D)(Repco社製「S-325」) 20質量部
ガラス繊維(E)(日本電気硝子社製「T-275H」(円形断面ガラス繊維チョップドストランド:直径11μm)) 35質量部
カーボンブラックマスターバッチ(F)(住化カラー社製「EPC-840」:ベース樹脂 LDPE樹脂、カーボンブラック含有量43%) 3質量部
銅化合物(G)(臭化第二銅:和光純薬社製 純度99.9%) 0.02質量部
を含むガラス繊維強化ポリアミド樹脂組成物」の発明(以下「甲1発明3A」という。)が記載されているといえる。
同様に、実施例7に着目すると、
「ポリアミド6(A1)(相対粘度RV=1.9、東洋紡社製「ナイロンT-860」) 23.5質量部
非晶性ポリアミド樹脂(B1)(相対粘度RV=2.0のポリアミド6T6I、エムス社製「グリボリーG21」) 14.5質量部
アクリル系樹脂(C)(ポリメタクリル酸メチル、クラレ社製「パラペットGF」) 4質量部
マイカ(D)(Repco社製「S-325」) 16質量部
ガラス繊維(E)(日本電気硝子社製「T-275H」(円形断面ガラス繊維チョップドストランド:直径11μm)) 41質量部
カーボンブラックマスターバッチ(F)(住化カラー社製「EPC-840」:ベース樹脂 LDPE樹脂、カーボンブラック含有量43%) 1質量部
銅化合物(G)(臭化第二銅:和光純薬社製 純度99.9%) 0.02質量部
を含むガラス繊維強化ポリアミド樹脂組成物」の発明(以下「甲1発明4A」という。)が記載されているといえる。
同様に、比較例1に着目すると、
「ポリアミド6(A1)(相対粘度RV=1.9、東洋紡社製「ナイロンT-860」) 42質量部
マイカ(D)(Repco社製「S-325」) 20質量部
ガラス繊維(E)(日本電気硝子社製「T-275H」(円形断面ガラス繊維チョップドストランド:直径11μm)) 35質量部
カーボンブラックマスターバッチ(F)(住化カラー社製「EPC-840」:ベース樹脂 LDPE樹脂、カーボンブラック含有量43%) 3質量部
を含むガラス繊維強化ポリアミド樹脂組成物」の発明(以下「甲1発明5A」という。)が記載されているといえる。
(2)本件発明1について
ア 対比
(ア)本件発明1と甲1発明1Aとの対比
まず、本件発明1と甲1発明1Aとを対比する。
甲1発明1Aの「ポリアミド6(A1)(相対粘度RV=1.9、東洋紡社製「ナイロンT-860」)」及び「非晶性ポリアミド樹脂(B1)(相対粘度RV=2.0のポリアミド6T6I、エムス社製「グリボリーG21」)」は、本件発明1の「ポリアミド樹脂」に相当する。
甲1発明1Aの「ガラス繊維(E)(日本電気硝子社製「T-275H」(円形断面ガラス繊維チョップドストランド:直径11μm))」は、本件発明1の「ガラス繊維」に相当する。
また、甲1発明1Aにおいて、「ガラス繊維(E)(日本電気硝子社製「T-275H」(円形断面ガラス繊維チョップドストランド:直径11μm))」は、「ポリアミド6(A1)(相対粘度RV=1.9、東洋紡社製「ナイロンT-860」)」及び「非晶性ポリアミド樹脂(B1)(相対粘度RV=2.0のポリアミド6T6I、エムス社製「グリボリーG21」)」の合計の38質量部(23.5質量部+14.5質量部)に対して35質量部含んでいるから、本件発明1と同様に、「(A)ポリアミド樹脂100質量部に対して」92質量部(=35/38×100)、すなわち、「0~150質量部」の範囲内で含んでいるといえる。
甲1発明1Aの「マイカ(D)(Repco社製「S-325」)」は、本件発明1の「(C)非繊維状無機充填材」である「マイカ」に相当するといえる。
そして、甲1発明1Aにおいて、「マイカ(D)(Repco社製「S-325」)」は、「ポリアミド6(A1)(相対粘度RV=1.9、東洋紡社製「ナイロンT-860」)」及び「非晶性ポリアミド樹脂(B1)(相対粘度RV=2.0のポリアミド6T6I、エムス社製「グリボリーG21」)」の合計の38質量部(23.5質量部+14.5質量部)に対して20質量部含んでいるから、本件発明1と同様に、「(A)ポリアミド樹脂100質量部に対して」55質量部(=20/38×100)、すなわち、「10~200質量部」の範囲で含んでいるといえる。
また、甲1発明1Aの「ガラス繊維強化ポリアミド樹脂組成物」は、「無機充填材」である「ガラス繊維」及び「マイカ」を含むものであるから、本件発明1の「無機充填材強化ポリアミド樹脂組成物」に相当するといえる。
そうすると、本件発明1と甲1発明1Aとは、
「(A)ポリアミド樹脂100質量部に対して、(B)ガラス繊維および/または炭素繊維0~150質量部、(C)非繊維状無機充填材10~200質量部含む無機充填材強化ポリアミド樹脂組成物であって、
前記(C)非繊維状無機充填材が、タルク、マイカ、カオリンおよびワラストナイトの中から選ばれる1種以上である、
無機充填材強化ポリアミド樹脂組成物。」
である点で一致し、以下の点で相違する。
相違点1:「C)非繊維状無機充填材」の「水蒸気吸着によるBET比表面積S水蒸気と窒素ガス吸着によるBET比表面積S窒素との比(S水蒸気/S窒素)」について、本件発明1では、「0.45以上0.80以下」であるのに対し、甲1発明1Aでは、「BET比表面積S窒素との比(S水蒸気/S窒素)」が明らかでない点。
(イ)本件発明1と甲1発明2~5Aとの対比
本件発明1と甲1発明2~5Aとを、上記「(ア)本件発明1と甲1発明1Aとの対比」での検討を踏まえて対比する。
甲1発明2A、甲1発明4A及び甲1発明5Aの「ポリアミド6(A1)(相対粘度RV=1.9、東洋紡社製「ナイロンT-860」)」、甲1発明2A、甲1発明4Aの「非晶性ポリアミド樹脂(B1)(相対粘度RV=2.0のポリアミド6T6I、エムス社製「グリボリーG21」)」、甲1発明3Aの「ポリアミド66(A2)(相対粘度RV=2.4、ローディア社製「スタバミド23AE」)」及び「非晶性ポリアミド樹脂(B2)(相対粘度RV=1.8のポリアミド6T6I、エムス社製「グリボリーG16」)」は、いずれも本件発明1の「ポリアミド樹脂」に相当する。
甲1発明2~5Aにおける「(A)ポリアミド樹脂100質量部に対」する「ガラス繊維」の割合について、甲1発明2Aは97質量部(=35/36×100)、甲1発明3Aは92質量部(=35/38×100)、甲1発明4Aは108質量部(=41/38×100)、甲1発明5Aは83質量部(=35/42×100)であるから、いずれも本件発明1と同様に、「(A)ポリアミド樹脂100質量部に対して」「0~150質量部」の範囲内で含んでいるといえる。
また、甲1発明2~5Aにおける「(A)ポリアミド樹脂100質量部に対」する「マイカ」の割合について、甲1発明2Aは56質量部(=20/36×100)、甲1発明3Aは55質量部(=20/38×100)、甲1発明4Aは42質量部(=16/38×100)、甲1発明5Aは47質量部(=20/42×100)であるから、いずれも本件発明1と同様に、「(A)ポリアミド樹脂100質量部に対して」「10~200質量部」の範囲内で含んでいるといえる。
そうすると、本件発明1と甲1発明2~5Aとは、
「(A)ポリアミド樹脂100質量部に対して、(B)ガラス繊維および/または炭素繊維0~150質量部、(C)非繊維状無機充填材10~200質量部含む無機充填材強化ポリアミド樹脂組成物であって、
前記(C)非繊維状無機充填材が、タルク、マイカ、カオリンおよびワラストナイトの中から選ばれる1種以上である、
無機充填材強化ポリアミド樹脂組成物。」
の点で一致し、上記相違点1と同じ点で相違する。
イ 判断
上記相違点1について検討する。
甲1発明1A~甲1発明5Aにおける「マイカ(D)(Repco社製「S-325」)」は、甲第4号証~甲第6号証(特に甲第6号証を参照)を参酌すると、「比表面積(試験方法:N2ガス吸着法)」が「3.792m2/g」であり、「比表面積(試験方法:H2O吸着法)」が「3.92m2/g」であるから、「比表面積(試験方法:H2O吸着法)/比表面積(試験方法:N2ガス吸着法)」の値は1.03(=3.92/3.79)となり、本件発明1において特定される「0.45以上0.80以下」の範囲外であるといえる。
したがって、本件発明1は、甲1発明1A~甲1発明5Aと実質的に相違するから、本件発明1は、甲第1号証に記載された発明であるとはいえない。
次に、相違点1について、甲1発明1A~甲1発明5A及び甲第1~8号証に記載された事項から容易に発明をすることができたか否かについて検討する。
甲第1号証には、(甲1d)の段落【0021】~【0022】に「マイカ」に関する記載があるものの、「マイカ」の「BET比表面積S窒素との比(S水蒸気/S窒素)」の記載はなく、また、「マイカ」の親水性やポリアミド樹脂との親和性に関する記載さえもないから、甲1発明1A~甲1発明5Aにおいて、「マイカ」として、「マイカ(D)(Repco社製「S-325」)」に代えて、「BET比表面積S窒素との比(S水蒸気/S窒素)」が「0.45以上0.80以下」のものを用いることが動機づけられるとはいえない。
また、甲第2~8号証(特に、「第5 本件明細書及び各甲号証に記載された事項」「2 各甲号証に記載された事項」を参照)をみても、甲1発明1A~甲1発明5Aにおいて、「マイカ」として、「マイカ(D)(Repco社製「S-325」)」に代えて、「水蒸気吸着によるBET比表面積S水蒸気と窒素ガス吸着によるBET比表面積S窒素との比(S水蒸気/S窒素)」が「0.45以上0.80以下」のものを用いることを動機づける記載はない。
そうすると、本件発明1は、甲1発明1A~甲1発明5A及び甲第1~8号証に記載された技術的事項から当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
ウ 小括
以上のとおり、本件発明1には、甲第1号証に記載された発明とはいえないし、また、甲第1号証に記載された発明及び甲第1~8号証に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。
(3)本件発明2、5~6について
本件発明2、5~6は、本件発明1を直接的又は間接的に引用して限定した発明であるから、本件発明2、5~6は、上記「(2)本件発明1について」「イ 判断」で示した理由と同じ理由により、甲第1号証に記載された発明とはいえないし、また、甲第1号証に記載された発明及び甲第1~8号証に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(4)取消理由A~B、申立理由1についてのまとめ
以上のとおりであるから、取消理由A(新規性)、取消理由B(進歩性)及び申立理由1(新規性)によって、本件発明1~2、5~6に係る特許を取り消すことはできず、取消理由A、取消理由B及び申立理由1は理由がない。
2 特許異議申立書に記載された申立理由について
申立理由1(新規性)については、上記「1 取消理由について」において検討されたので、以下、申立理由2(サポート要件)について検討を行う。
(1)申立理由2(サポート要件)の概要
申立理由2(サポート要件)の概要は、以下のとおりである。
(a)本件訂正前の本件発明1において、「(C)非繊維状無機充填材」の「水蒸気吸着によるBET比表面積S水蒸気と窒素ガス吸着によるBET比表面積S窒素との比(S水蒸気/S窒素)」については、「0.45以上」と下限のみ特定されており、上限は特定されていない。
本件発明は、自動車部品や小型精密部品等に好適な、機械的強度や外観に優れた無機充填材強化ポリアミド樹脂組成物および成形体を提供することを課題とするものであり、かかる課題の下、非繊維状無機充填材の「水蒸気吸着によるBET比表面積S水蒸気と窒素ガス吸着によるBET比表面積S窒素との比(S水蒸気/S窒素)」 (以下、単に「比表面積比」ということがある。)を所定範囲とすることで、上記特性に優れた無機充填材強化ポリアミド樹脂組成物を得るために有効であることを見出し、本発明に到達したものである。
しかしながら、ポリアミド樹脂は極性があり親水性の官能基の割合が高いものだとしても、本件特許明細書の実施例で使用されているポリアミド6、ポリアミド66等の汎用のポリアミド樹脂は、脂肪鎖を構造の主骨格とするものであり、そして脂肪鎖は疎水性部位なのであるから、自ずと親水性のものとの親和性が限定されることは技術常識である。すなわち、非繊維状無機充填材表面の親水性が極めて高い場合にも、構造的に 疎水性部位を有しているポリアミド樹脂と上記非繊維状無機充填材の親和性が増大するとは、技術常識的には考えられず、自ずと限界があるといえる。
一方、本件明細書の実施例において、用いられた無機充填材であるタルクの比表面積比は、それぞれ0.58及び0.35の2つの値だけのものであり、さらに、本件特許明細書の段落【0096】の【表1】において、比表面積比が0.58のタルクを用いた実施例7と比表面積比が0.35のタルクを用いた比較例1を対比すると、比較例1の方が、引張強度及びシャルピー衝撃強度が実施例7よりも優れ、外観は共にA評価であることから、比較例1の方が実施例7よりも優れている、すなわち、実施例7は、本件発明の課題が解決できでいないと判断できる。
そうすると、比表面積比が0.45以上であれば、本件発明の課題を解決することは、本件特許明細書の発明の詳細な説明における記載だけでは、本件出願時の技術常識を参酌しても、当業者において認識できるとは到底いえない。
(b)本件訂正前の本件発明1においては、「(C)非繊維状無機充填材」について「タルク、マイカ、カオリンおよびワラストナイトの中から選ばれる1種以上」とされている。「(C)非繊維状無機充填材」として挙げられているものは、鉱物系であるが、それらの物理的、化学的な構造、例えば、粒子径、表面積、表面に存在する官能基等がポリアミド樹脂との親和性、混和性に関与することが技術常識である以上、比表面積比が所定範囲内の上記非繊維状無機充填材であれば、いずれのものであっても本願発明の課題が解決できるとするに足る根拠はない。
また、本件特許明細書の実施例及び比較例を参酌すると、実施例2~7、比較例2~6のものは、「非繊維状無機充填材」として表面処理剤で処理したタルクを用いている。ここで、上記表面処理剤は、その化学構造から、親水性基を有するものであり、かかる処理材で処理したタルクは、当然に親水性が増すこととなるのであるから、本件特許明細書の段落【0042】の記載からすれば、比表面積比は増大しているといえるところ、実施例及び比較例の記載では、親水性が増し、比表面積比が増大したタルクを用いているにもかかわらず、本件発明の課題が解決できているとは理解できないことから、上記比表面積比が本件発明の課題を解決する大きな要因であるとは到底認めることができない。
してみると、本件特許明細書にはタルクの実施例しか記載されていないことも加味すれば、本件特許明細審の発明の詳細な説明における記載だけでは、本件出願時の技術常識を参酌しても、上記非繊維状無機充填材であれば、いずれのものであっても本願発明の課題が解決できることが、当業者において認識できるとは到底いえない。
(2)判断
ア 特許法第36条第6項第1号の考え方について
特許法第36条第6項は、「第二項の特許請求の範囲の記載は、次の各号に適合するものでなければならない。」と規定し、その第1号において「特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものであること。」と規定している。同号は、明細書のいわゆるサポート要件を規定したものであって、特許請求の範囲の記載が明細書のサポート要件に適合するか否かは特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載又はその示唆により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。
以下、この観点から検討する。
イ 判断
(ア)本件発明の課題について
本件発明の課題は、本件明細書の(本a)の段落【0006】の記載からみて、「自動車部品や小型精密部品等に好適な、機械的強度や外観に優れた無機充填材強化ポリアミド樹脂組成物および成形体を提供すること」であるといえる。
(イ)判断
上記(ア)で述べた本件発明の「機械的強度や外観に優れた無機充填材強化ポリアミド樹脂組成物」に関して、本件明細書には、以下の記載がある。
・「本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討を重ねた結果、非繊維状無機充填材の水蒸気吸着によるBET比表面積S水蒸気と窒素ガス吸着によるBET比表面積S窒素との比(S水蒸気/S窒素)を所定範囲とすることが、これら特性に優れた無機充填材強化ポリアミド樹脂組成物を得るために有効であることを見出し、本発明に到達した。」((本a)の段落【0007】)
・「本発明において、(A)ポリアミド樹脂は、ISO 307に準拠し、質量分率96%の硫酸で測定されるした粘度数(VN)が、80~180ml/gであることが、機械的強度、射出成形時の流動性、外観の観点から好ましい。」((本b)の段落【0029】)
・「本発明で用いられる(A)ポリアミド樹脂の配合量は、流動性と外観の観点から、ポリアミド樹脂組成物100質量%に対して30~90質量%であることが好ましい。」((本b)の段落【0030】)
・「本発明のポリアミド樹脂組成物は、(B)ガラス繊維および/または炭素繊維を含んでいてもよい。ガラス繊維および/または炭素繊維を含有することにより、優れた機械的強度、耐衝撃性、剛性が得られる。ガラス繊維や炭素繊維のうち、優れた機械的強度をポリアミド樹脂組成物に付与できる観点から、ポリアミド樹脂組成物中において、数平均繊維径が3~30μmであり、重量平均繊維長が100~750μmであり、および重量平均繊維長と数平均繊維径とのアスペクト比(重量平均繊維長を数平均繊維径で除した値)が10~100であるものがさらに好ましい。」((本c)の段落【0031】~【0032】)
・「本発明で用いられるガラス繊維および/または炭素繊維の配合量は、機械的強度、耐衝撃性や外観の観点から、ポリアミド樹脂100質量部に対し、0~150質量部である。」((本c)の段落【0040】)
・「本発明のポリアミド樹脂組成物は、(C)非繊維状無機充填材を含んでいる。非繊維状無機充填材を含有することにより、優れた機械的強度、外観と剛性が得られる。」((本d)の段落【0041】)
・「非繊維状無機充填材は、優れた機械的特性と外観をポリアミド樹脂組成物に付与できるという観点から、数平均粒子径が0.1~50μmであるものが好ましい。・・・また、非繊維状無機充填材の中でも、優れた機械的特性をポリアミド樹脂組成物に付与できるという観点から、ポリアミド樹脂組成物中において、数平均繊維径が3~20μmであり、重量平均繊維長が10~300μmであり、およびアスペクト比が3~20である針状無機充填材がさらに好ましい。」((本d)の段落【0043】~【0044】)
・「本発明で用いられる非繊維状無機充填材は、水蒸気吸着によるBET比表面積S水蒸気と窒素ガス吸着によるBET比表面積S窒素の比(S水蒸気/S窒素)が、0.45以上であり、好ましくは0.45以上0.8以下であり、より好ましくは0.5以上0.7以下である。ここで、S水蒸気/S窒素は、非繊維状無機充填材表面が親水性か疎水性かの指標となる値で、この値が大きい程親水性の傾向が強いことを意味している。S水蒸気/S窒素を上記範囲とすることで、極性があり親水性の官能基の割合が高いポリアミド樹脂との親和性が増すので、機械的強度や耐衝撃性が向上する傾向にある。」((本d)の段落【0046】)
・「本発明で用いられる非繊維状無機充填材の配合量は、機械的強度、耐衝撃性や外観の観点から、ポリアミド樹脂100質量部に対し、10~200質量部である。」((本d)の段落【0052】)
以上の記載を踏まえると、「無機充填材強化ポリアミド樹脂組成物」について「機械的強度や外観に優れた」ものを得るには、「ガラス繊維および/または炭素繊維の配合量」を「0~150質量部」とすること、「(C)非繊維状無機充填材」を「ポリアミド樹脂100質量部に対し、10~200質量部」とすること、「非繊維状無機充填材の水蒸気吸着によるBET比表面積S水蒸気と窒素ガス吸着によるBET比表面積S窒素との比(S水蒸気/S窒素)」を所定範囲「0.45以上」とすることが必要であり、本件発明1~10の発明特定事項を満たせば、本件発明の課題を解決できることが示されている。
さらに、より「機械的強度や外観に優れた」ものを得るには、「(A)ポリアミド樹脂」について「ISO 307に準拠し、質量分率96%の硫酸で測定される」「粘度数(VN)」を「80~180ml/g」とすること、「ガラス繊維および/または炭素繊維を含有する」こと、「(B)ガラス繊維および/または炭素繊維」の「数平均繊維径」を「3~30μm」、「重量平均繊維長」を「100~750μm」、「重量平均繊維長と数平均繊維径とのアスペクト比(重量平均繊維長を数平均繊維径で除した値)」を「10~100」の値にすること、「非繊維状無機充填材」の「数平均粒子径」を「0.1~50μm」の値にすることが好ましいと理解できる。
そして、本件明細書の(本f)の実施例・比較例をみると、本件発明1の発明特定事項を満たす実施例1~7は、本件発明1の発明特定事項を満たさない比較例1~8と比べて、全体として「機械的強度」が一定以上のものとなり、外観に優れたものとなっている。また、組成物の組成として、「無機充填材」である「タルク」のみが異なる実施例1との比較例1、同様に、実施例2と比較例2、実施例3と比較例3、実施例4と比較例4、実施例5と比較例5、実施例7と比較例6とをそれぞれ比べると、「水蒸気吸着によるBET比表面積S水蒸気と窒素ガス吸着によるBET比表面積S窒素との比(S水蒸気/S窒素)」が「0.58」である「タルク」を用いた実施例1~5、7は、「水蒸気吸着によるBET比表面積S水蒸気と窒素ガス吸着によるBET比表面積S窒素との比(S水蒸気/S窒素)」が「0.35」である「タルク」を用いた比較例1~6と比べて、「機械的強度」及び「外観」がより優れたものになっていることが確認できる。
そうすると、本件発明1、3、7~8の発明特定事項を満たす「無機充填材強化ポリアミド樹脂組成物」は、本件明細書の記載から、本件発明の上記課題を解決できることが、当業者であれば理解できるといえる。本件発明1、3、7~8を直接的又は間接的に引用する本件発明2、4~6、9~10についても同様である。
(ウ)申立理由2について
上記「(1)申立理由2(サポート要件)の概要」に記載した申立理由2の(a)(b)について、以下に検討する。
a 申立理由2(a)について
申立理由2(a)の「(C)非繊維状無機充填材」の「水蒸気吸着によるBET比表面積S水蒸気と窒素ガス吸着によるBET比表面積S窒素との比(S水蒸気/S窒素)」については、「0.45以上」と下限のみ特定されており、上限は特定されていない点について、本件発明1及び本件発明1を引用する本件発明2、5~6については、「0.45以上0.80以下」と特定されたが、本件発明3~4、7~10については、上限は特定されていないので、検討する。
上記「(イ)判断」で述べたとおり、本件明細書の(本d)の段落【0046】には、「S水蒸気/S窒素は、非繊維状無機充填材表面が親水性か疎水性かの指標となる値で、この値が大きい程親水性の傾向が強いことを意味している。S水蒸気/S窒素を上記範囲とすることで、極性があり親水性の官能基の割合が高いポリアミド樹脂との親和性が増すので、機械的強度や耐衝撃性が向上する傾向にある」ことが記載され、また、本件明細書の(本f)の実施例・比較例において、「水蒸気吸着によるBET比表面積S水蒸気と窒素ガス吸着によるBET比表面積S窒素との比(S水蒸気/S窒素)」が「0.58」である「タルク」を用いた実施例1~5、7の方が、「0.35」である「タルク」を用いた比較例1~6と比べて、「機械的強度」及び「外観」がより優れたものになっていることが確認されているので、「S水蒸気/S窒素」の値がより高い方が、極性があり親水性の官能基の割合が高いポリアミド樹脂との親和性が増すので、機械的強度や耐衝撃性が向上する傾向にある」ことが裏付けられているといえる。
確かに、申立人の主張する「非繊維状無機充填材表面の親水性が極めて高い場合にも、構造的に 疎水性部位を有しているポリアミド樹脂と上記非繊維状無機充填材の親和性が増大するとは、技術常識的には考えられず、自ずと限界があるといえる」ことについて、極端に親水性の高い物質の場合にその物質と「構造的に 疎水性部位を有しているポリアミド樹脂」との親和性が増大しないことは理解できるものの、本件発明1~10において、「(C)非繊維状無機充填材」は「タルク、マイカ、カオリンおよびワラストナイトの中から選ばれる1種以上」に特定されており、「タルク、マイカ、カオリン」、「ワラストナイト」として「ポリアミド樹脂」と混和できなくなるほど「S水蒸気/S窒素」の値が極端に高いものが存在することを具体的に想定できないし、また、申立人は、そのような「タルク、マイカ、カオリン」、「ワラストナイト」を具体的に示しておらず、また、そのような「タルク、マイカ、カオリン」、「ワラストナイト」を用いた「無機充填材強化ポリアミド樹脂組成物」が本件発明の課題を解決できないことを具体的に示していない。
次に、比較例1の方が実施例7よりも優れている点については申立人が指摘するとおりであるものの、上記「(イ)判断」で検討したとおり、本件発明1の特定事項を満たす実施例1~7は、本件発明特定事項を満たさない比較例1~8と比べて、全体として「機械的強度」が一定以上のものとなり、外観に優れたものとなっていると確認できる。さらに、組成物の組成として、「無機充填材」である「タルク」のみが異なる実施例1との比較例1、実施例7と比較例6を比較すれば、「0.58」である「タルク」を用いた実施例1、7の方が、「0.35」である「タルク」を用いた比較例1、6と比べて「機械的強度」及び「外観」がより優れたものになっていることが確認できるから、組成物の組成として「非繊維状無機充填材」の種類以外が同じ場合に、「S水蒸気/S窒素」の値が「0.45」以上であれば、「0.45」より小さいものに比べて、「機械的強度」及び「外観」がより優れるものになることは、本件明細書の実施例・比較例の結果から当業者であれば理解できるといえる。
したがって、申立理由2(a)の理由を採用することはできない。
b 申立理由2(b)について
申立理由2(b)の「(C)非繊維状無機充填材」について「タルク、マイカ、カオリンおよびワラストナイトの中から選ばれる1種以上」とされているが、それらの物理的、化学的な構造、性質は大きく異なるものであり、比表面積比が所定範囲内の上記非繊維状無機充填材であれば、いずれのものであっても本願発明の課題が解決できるとするに足る根拠はない点について、本件明細書の(本f)の実施例においては、「タルク」及び特定の「表面処理剤」で処理した「タルク」の実施例しか示されていない。
しかしながら、「(C)非繊維状無機充填材」である「タルク、マイカ、カオリン」、「ワラストナイト」は「ポリアミド樹脂」をはじめとする樹脂に配合する無機充填材としていずれも汎用のものである。そして、上記「申立理由2(a)について」で検討したように、本件明細書には「S水蒸気/S窒素」の値がより高い方が極性があり親水性の官能基の割合が高いポリアミド樹脂との親和性が増すので、機械的強度や耐衝撃性が向上する傾向にある」ことが裏付けられているといえる。
そうすると、「(C)非繊維状無機充填材」が「タルク」ではなく、「マイカ」、「カオリン」、「ワラストナイト」であっても、「S水蒸気/S窒素」の値がより高い方が機械的強度や耐衝撃性が向上することは当業者であれば理解できるといえる。
次に、「実施例2~7、比較例2~6のものは、「非繊維状無機充填材」として表面処理剤で処理したタルクを用いている。ここで、上記表面処理剤は、その化学構造から、親水性基を有するものであり、かかる処理材で処理したタルクは、当然に親水性が増すこととなるのであるから、・・・比表面積比は増大しているといえるところ、実施例及び比較例の記載では、親水性が増し、比表面積比が増大したタルクを用いているにもかかわらず、本件発明の課題が解決できているとは理解できない」点について、本件明細書の(本f)の、例えば、表面処理されていない「タルク」を用いた実施例1と、「0.3質量%のアミノ基含有アルコキシシラン化合物で表面処理されたタルク」を用いた実施例2と、「1.0質量%のアミノ基含有アルコキシシラン化合物で表面処理されたタルク」を用いた実施例3とを比較すると、表面処理がなされた実施例2~3は、実施例1に比べて「引張強度」や「シャルピ-衝撃強度」が高くなっていると評価できるし、より多くの表面処理がなされた実施例3は、実施例2に比べて、若干ではあるが「引張強度」や「シャルピ-衝撃強度」が高くなっていると評価できる。また、実施例1、実施例4、実施例5との比較でも同様のことがいえる。
したがって、申立理由2(b)の理由も採用することはできない。
d 小括
以上のとおりであるから、本件発明1~10は、本件明細書の発明の詳細な説明に記載したものであるといえる。
(3)申立理由2(サポート要件)のまとめ
したがって、申立理由2も、理由がない。
第7 むすび
特許第6893132号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-10〕について訂正することを認める。
当審が通知した取消理由および申立人が申立てた申立理由によっては、本件発明1-10に係る特許を取り消すことはできない。
また、ほかに本件発明1-10に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
J-PlatPat 審決検索を開く
2021-701229