2022-700313
外用組成物、化粧料、経皮吸収促進用組成物、外用組成物における有効成分の経皮吸収性を高める方法、経皮投与型医薬及び点眼用組成物
- 審判番号
- 2022-700313
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2015-130996外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 登録番号
- 6975516
- 請求日
- 2022年04月14日
- 審決日
- 2023年03月13日
- 公報発行日
- 2023年06月30日
- 結論
- 訂正認容
- 分類
- P1652.161-YAA(A61K)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第9項、特許法第29条の2、特許法第120条の5第4項
- データ出所
- 審決公報(XML)
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結論
理由
目次 ▾ 16項目
第1 手続の経緯
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特許第6975516号(以下「本件特許」という。)に係る出願(特願2015-130996号)は、平成27年6月30日(優先権主張 平成26年6月30日(以下「優先日」という。))の特許出願であって、令和3年11月10日にその特許権の設定登録がされ(請求項の数:6)、同年12月1日に特許掲載公報が発行された。
その後、令和4年4月14日(受付日)に、特許異議申立人である 加藤三千代 (以下「申立人」という。)により、本件特許の請求項1、4~6に係る特許に対して特許異議の申立てがされた。
その後の本件特許異議申立事件の主な手続の経緯は、次のとおりである。
同年10月 6日 :訂正請求書及び意見書の提出(特許権者)
なお、申立人は、令和4年10月21日付けの訂正請求があった旨の通知に対して、指定した期間内に何ら応答をしなかった。
第2 訂正請求について
1 訂正の内容
令和4年10月6日提出の訂正請求書による訂正の請求(以下「本件訂正請求」といい、本件訂正請求による訂正を「本件訂正」という。)は、上記訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~6について訂正することを求めるものであり、その内容は、以下の訂正事項1~3のとおりである(下線部は訂正箇所を示す。)。
(1) 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1において、「0.05重量%以上である、外用組成物」の後に、「(但し、前記(A)成分を0.5重量%~0.6重量%含有し、かつ前記(C)成分としてのアスコルビン酸を5重量%~10重量%含有する外用組成物を除く)」を追記し、同項に記載の「外用組成物」から「前記(A)成分を0.5重量%~0.6重量%含有し、かつ前記(C)成分としてのアスコルビン酸を5重量%~10重量%含有する外用組成物」を除く訂正を行う。
請求項1の記載を引用する請求項4及び5も同様に訂正する。
(2) 訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2において、訂正前の請求項1の内容である、
「(A)下記式(1)で表される脂質ペプチド及び/又はその薬学的に許容される塩と、(B)多価アルコール及び/又はグリコールエーテル類と、(C)アスコルビン酸、3-Oエチルアスコルビン酸、テルビナフィン及びミノキシジル、並びにそれらの塩からなる群から選ばれる少なくとも一種の有効成分と、を含む外用組成物であって、該外用組成物における前記(A)成分の含有量が0.05重量%以上である外用組成物:【化2】[図:0001398248000001.jpg](式中、R1は炭素原子数9乃至23の脂肪族基を表し、R2は、水素原子、R3は、-(CH2)n-X基を表し、且つ、nは1であり、Xは窒素原子を2個有する5員環基を表し、mは1である。)。」
を組み入れ、請求項1との引用関係を解消して独立形式の請求項とする。
請求項2の記載を引用する請求項3~5も同様に訂正する。
(当審注:訂正請求書には、「請求項3も同様に」と記載されているが、当該記載は「請求項3~5も同様に」の明らかな誤記と認める。)
(3) 訂正事項3
特許請求の範囲の請求項6において、「0.05重量%以上である、外用組成物」の後に、「(但し、前記(A)成分を0.5重量%~0.6重量%含有し、かつ前記(C)成分としてのアスコルビン酸を5重量%~10重量%含有する外用組成物を除く)」を追記し、同項に記載の製造方法における「外用組成物」から「前記(A)成分を0.5重量%~0.6重量%含有し、かつ前記(C)成分としてのアスコルビン酸を5重量%~10重量%含有する外用組成物」を除く訂正を行う。
2 一群の請求項について
訂正事項1に係る訂正前の請求項1、4~5について、請求項4~5は、請求項1を直接又は間接的に引用する関係にあり、訂正事項1によって訂正される請求項1に連動して訂正されるから、請求項1、4~5は、特許法第120条の5第4項に規定する「一群の請求項」を構成するものである。
訂正事項2に係る訂正前の請求項2~5について、請求項3~5は、請求項2を直接又は間接的に引用する関係にあり、訂正事項2によって訂正される請求項2に連動して訂正されるから、請求項2~5は「一群の請求項」を構成するものである。
そして、共通する請求項4~5を有する、「一群の請求項」である請求項1、4~5と、「一群の請求項」である請求項2~5は、特許法施行規則第45条の4に規定されるとおり、一の請求項の記載を他の請求項が引用する関係が、当該関係に含まれる請求項を介して他の一の請求項の記載を他の請求項が引用する関係と一体として特許請求の範囲の全部又は一部を形成するように連関している関係を有するものであるから、組み合わされて、1つの「一群の請求項」を構成するものである。
したがって、本件訂正のうち、訂正事項1及び訂正事項2による訂正は、特許法第120条の5第4項に規定する「一群の請求項」である請求項1~5に対してされたものである。
3 訂正事項についての訂正要件の判断
(1) 訂正事項1について
ア 訂正の目的の適否
訂正事項1は、請求項1に記載の「外用組成物」から、同項に記載した事項の表現を残したままで、「前記(A)成分を0.5重量%~0.6重量%含有し、かつ前記(C)成分としてのアスコルビン酸を5重量%~10重量%含有する外用組成物」を除くものであるから、当該「外用組成物」を限定するものである。
したがって、訂正事項1による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
また、請求項1の上記訂正に連動する請求項4~5の訂正も、同様の理由により、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
イ 新規事項の追加の有無
訂正事項1による訂正は、上記アのとおり、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正であって、請求項1に記載の「外用組成物」から、同項に記載した事項の表現を残したままで、「前記(A)成分を0.5重量%~0.6重量%含有し、かつ前記(C)成分としてのアスコルビン酸を5重量%~10重量%含有する外用組成物」を除くものであり、本件特許の願書に添付した明細書(以下「本件明細書」という。)には、「前記(A)成分を0.5重量%~0.6重量%含有し、かつ前記(C)成分としてのアスコルビン酸を5重量%~10重量%含有する外用組成物」に該当する具体的な態様の外用組成物は記載されていないから、当該特定の事項を除外することによって、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項に何らかの変更を生じさせるものではなく、このようにして導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項の導入をするものとはいえない。
したがって、訂正事項1による訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものであり、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。
ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項1による訂正は、上記アのとおり、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正であり、発明のカテゴリーや対象を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
よって、訂正事項1による訂正は、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。
エ 訂正事項1についてのまとめ
上記ア~ウのとおり、訂正事項1による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、同法同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。
(2) 訂正事項2について
訂正事項2による訂正は、訂正前の請求項1の記載を引用する訂正前の請求項2について、請求項1との引用関係を解消し、独立形式の請求項とするものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に掲げる「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものである。
そして、訂正事項2による訂正後の請求項2は、訂正前の請求項1を引用する訂正前の請求項2に対して、何ら実質的な内容の変更を伴うものでないから、訂正事項2による訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは明らかであり、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。
(3) 訂正事項3について
ア 訂正の目的の適否
訂正事項3は、請求項6に記載の「外用組成物の製造方法」における「外用組成物」から、同項に記載した事項の表現を残したままで、「前記(A)成分を0.5重量%~0.6重量%含有し、かつ前記(C)成分としてのアスコルビン酸を5重量%~10重量%含有する外用組成物」を除くものであるから、当該「外用組成物」を限定するものである。
したがって、訂正事項3による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
イ 新規事項の追加の有無
訂正事項3による訂正は、上記アのとおり、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正であって、請求項6に記載の「外用組成物の製造方法」における「外用組成物」から、同項に記載した事項の表現を残したままで、「前記(A)成分を0.5重量%~0.6重量%含有し、かつ前記(C)成分としてのアスコルビン酸を5重量%~10重量%含有する外用組成物」を除くものであり、本件明細書には、「前記(A)成分を0.5重量%~0.6重量%含有し、かつ前記(C)成分としてのアスコルビン酸を5重量%~10重量%含有する外用組成物」に該当する具体的な態様の外用組成物は記載されていないから、当該特定の事項を除外することによって、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項に何らかの変更を生じさせるものでなく、このようにして導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項の導入をするものとはいえない。
したがって、訂正事項3による訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものであり、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。
ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項3による訂正は、上記アのとおり、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正であり、発明のカテゴリーや対象を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
よって、訂正事項3による訂正は、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。
エ 訂正事項3についてのまとめ
上記ア~ウのとおり、訂正事項3による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、同法同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。
(4) 独立特許要件について
本件特許異議申立事件においては、訂正前の請求項1、4~6に係る特許に対して特許異議の申立てがされているから、訂正事項1及び3による訂正は、いずれも特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるが、訂正後の請求項1、4~6に係る発明については、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項に規定する要件(いわゆる「独立特許要件」)は課されない。
また、訂正事項2による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に掲げる「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものであり、同第1号又は第2号に掲げる事項を目的とするものではないから、訂正後の請求項2~3に係る発明についても、同法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項に規定する要件(いわゆる「独立特許要件」)は課されない。
4 訂正請求についてのまとめ
以上のとおり、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号又は第4号に掲げる事項を目的とするものであり、同法同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。
よって、本件特許の特許請求の範囲を、令和4年10月6日提出の訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~5〕、6について訂正することを認める。
第3 本件訂正後の本件特許に係る発明
上記第2のとおり、本件訂正は認められるので、本件訂正後の請求項1~6(以下、請求項の番号順に「本件請求項1」等という。)の記載は、令和4年10月6日提出の訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1~6に記載された以下のとおりのものである(なお、本件請求項1~6に係る発明を、以下、請求項の番号順に「本件発明1」等ということがある。下線は本件訂正による訂正箇所を示す。)。
「【請求項1】(A)下記式(1)で表される脂質ペプチド及び/又はその薬学的に許容される塩と、(B)多価アルコール及び/又はグリコールエーテル類と、(C)アスコルビン酸、3-Oエチルアスコルビン酸、テルビナフィン及びミノキシジル、並びにそれらの塩からなる群から選ばれる少なくとも一種の有効成分と、続きを表示(全30行)を含む外用組成物であって、該外用組成物における前記(A)成分の含有量が0.05重量%以上である、外用組成物(但し、前記(A)成分を0.5重量%~0.6重量%含有し、かつ前記(C)成分としてのアスコルビン酸を5重量%~10重量%含有する外用組成物を除く):【化1】[図:0001398248000002.jpg](式中、R1は炭素原子数9乃至23の脂肪族基を表し、R2は、水素原子、R3は、-(CH2)n-X基を表し、且つ、nは1であり、Xは窒素原子を2個有する5員環基を表し、mは1である。)。【請求項2】(A)下記式(1)で表される脂質ペプチド及び/又はその薬学的に許容される塩と、(B)多価アルコール及び/又はグリコールエーテル類と、(C)アスコルビン酸、3-Oエチルアスコルビン酸、テルビナフィン及びミノキシジル、並びにそれらの塩からなる群から選ばれる少なくとも一種の有効成分と、さらに(D)テルペン類と、を含む外用組成物であって、該外用組成物における前記(A)成分の含有量が0.05重量%以上である外用組成物:【化2】[図:0001398248000003.jpg](式中、R1は炭素原子数9乃至23の脂肪族基を表し、R2は、水素原子、R3は、-(CH2)n-X基を表し、且つ、nは1であり、Xは窒素原子を2個有する5員環基を表し、mは1である。)。【請求項3】前記テルペン類(D)がメントールである、請求項2に記載の外用組成物。【請求項4】前記(B)成分の外用組成物中の含有量が0.0001~75重量%である、請求項1~3のいずれかに記載の外用組成物。【請求項5】請求項1~4のいずれかに記載の、化粧料である外用組成物。【請求項6】(C)アスコルビン酸、3-Oエチルアスコルビン酸、テルビナフィン及びミノキシジル、並びにそれらの塩からなる群から選ばれる少なくとも一種の有効成分と(B)多価アルコール及び/又はグリコールエーテル類とを含む外用組成物に、(A)下記式(1)で表される脂質ペプチド及び/又はその薬学的に許容される塩を配合し、該外用組成物における前記(A)成分の含有量が0.05重量%以上である、外用組成物(但し、前記(A)成分を0.5重量%~0.6重量%含有し、かつ前記(C)成分としてのアスコルビン酸を5重量%~10重量%含有する外用組成物を除く)の製造方法:【化3】[図:0001398248000004.jpg](式中、R1は炭素原子数9乃至23の脂肪族基を表し、R2は、水素原子、R3は、-(CH2)n-X基を表し、且つ、nは1であり、Xは窒素原子を2個有する5員環基を表し、mは1である。)。」
第4 当審において通知した取消理由の概要
本件訂正前の請求項1、4~6に係る発明の特許について、当審において令和4年8月5日付けの取消理由通知書により特許権者に通知した取消理由の概要は、次のとおりである。
[取消理由1](拡大先願)
本件特許の下記の請求項に係る発明は、本件特許の優先日前の他の特許出願であって、本件特許の出願後に当該他の特許出願を優先権主張の基礎とする日本語特許出願の国際公開がされた下記の特許出願の願書に最初に添付された明細書又は特許請求の範囲に記載された発明と同一であり、しかも、本件特許発明の発明者が上記他の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、また本件特許の出願の時において、その出願人が上記他の特許出願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができないものであるから(同法第184条の15第2項の規定により読み替えて適用される同法第41条第3項の規定を参照)、下記の請求項に係る特許は、同法第29条の2の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
記 (引用文献等については<引用文献等一覧>を参照)
取消理由1(拡大先願)について
・請求項 1、4~6
<引用文献等一覧>
範囲、要約書
(出願日:平成26年(2014年)5月15日)
(当審注:申立人が提出した「甲第1号証」)
(国際公開日:2015年(平成27年)11月19日)
(国際出願番号:PCT/JP2015/063933)
(当審注:申立人が提出した「甲第1-1号証」。対応する
日本出願番号は「特願2016-519393号」。)
第5 取消理由についての当審の判断
当審合議体は、本件訂正後の請求項1、4~6に係る発明の特許は、上記取消理由通知書に記載した取消理由及び証拠によっては、取り消すことはできないものと判断する。
その理由の詳細は、以下のとおりである。
1 本件特許出願と甲1出願の関係等について
甲1に係る特許出願(特願2014-101441号)の出願日は、平成26年5月15日であり、本件特許の優先日である平成26年6月30日よりも前である。
甲1に係る特許出願を優先権主張の基礎とする日本語特許出願(PCT/JP2015/063933)の国際公開(国際公開第2015/174500号:甲1-1)の国際公開日は、2015年(平成27年)11月19日であり、本件特許の出願日である平成27年6月30日よりも後である。
本件特許発明の発明者は、本件特許の特許掲載公報の記載によれば、羽賀雅俊、小山田景子及び林裕也の3名であるのに対し、甲1に係る特許出願に係る発明をした者は、甲1に係る特許出願の願書の記載によれば、井本鷹行(1名)であるから、両発明者は同一でない。
本件特許の出願の時において、その出願人は、ロート製薬株式会社であるのに対し、甲1に係る特許出願の出願人は、同出願の願書の記載によれば、日産化学工業株式会社であり、本件特許の出願の時まで名義変更等がなされた事実は確認できないから、本件特許の出願の時において、両出願の出願人は同一でない。
2 本件発明1、4~6と甲1に記載された発明との同一性について
(1) 甲1の記載事項
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甲1には、以下の事項が記載されている(甲1に係る特許出願を優先権主張の基礎とする日本語特許出願の国際公開である甲1-1には、甲1の記載と同一の記載があるところ、対応する段落番号等を当審注で併記し、甲1とは異なる記載も当審注で示す。また、申立人が提出した甲1に記載された化学構造式及び表は、不鮮明であり、記載内容を視認しづらいところ、内容が同一であることを確認した甲1-1に記載の化学構造式及び表を摘記した。なお、下線はいずれも当審合議体が付したものである。)。
<摘記甲1a>
「【請求頂1】(当審注:甲1-1の[請求項1])多価アルコール、水および有機酸と、下記式(1)乃至式(3)で表される化合物又はその薬学的に使用可能な塩のうちの少なくとも一種からなる脂質ペプチド型化合物とを含む増粘性組成物。【化1】[図:0001398248000005.jpg]続きを表示(全21行)(式中、R1は炭素原子数9乃至23の脂肪族基を表し、R2は水素原子、又は・・・を表し、R3は-(CH2)n-X基を表し、nは1乃至4の数を表し、Xは・・・、又は窒素原子を1乃至3個有し得る5員環・・・を表す。)【化2】[図:0001398248000006.jpg](・・・。)【化3】[図:0001398248000007.jpg](・・・。)【請求項2】(当審注:甲1-1の[請求項2])少なくとも一種の脂肪酸を更に含む、請求項1に記載の増粘性組成物。【請求項3】(甲1-1の[請求項3])少なくとも一種の界面活性剤を更に含む、請求項1又は請求項2に記載の増粘性組成物。【請求項4】(当審注:甲1-1の[請求項4])前記脂肪酸が、ステアリン酸である、請求項2に記載の増粘性組成物。【請求項5】(当審注:甲1-1の[請求項5])前記界面活性剤が、エチレングリコールルアルキルエーテルからなる群から選択される1種類以上の化合物である、請求項3に記載の増粘性組成物。【請求項6】(当審注:甲1-1の[請求項6])前記有機酸が、アスコルビン酸である請求項1~5のいずれか1項に記載の増粘性組成物。」
<摘記甲1b>
「【0001】(当審注:甲1-1の[0001])本発明は、脂質ペプチド型化合物を含有する増粘性組成物、特に皮膚外用増粘性組成物に関する。【背景技術】【0002】(当審注:甲1-1の[0002])医用材料或いは化粧品の皮膚外用組成物には、保湿剤、脱色剤、アミノ酸、ビタミンとして種々の塩が配合される場合がある。そこで化粧料の分野で利用するために、これらの塩の存在下でも粘性を失わない、耐塩性を有する増粘性組成物を開発する必要がある。・・・。一方、組成物の粘度を上げた場合にも、化粧品の使用感(製品の伸び易さ)を損なわずに増粘できるゲル化剤として、低分子ゲル化剤が近年注目を集めている(・・・)。しかしながら、・・・、耐塩性に対する議論は行われていない。・・・【発明が解決しようとする課題】【0004】(当審注:甲1-1の[0004])本発明は上記の事情に基いてなされたものであり、その解決しようとする課題は、アスコルビン酸等の有機酸およびそれらの塩の存在下でも粘性を失わない増粘性組成物を提供することである。」
<摘記甲1c>
「【課題を解決するための手段】【0005】(当審注:甲1-1の[0005])本発明者らは、・・・、低分子脂質ペプチド又はその薬学的に使用可能な塩からなる脂質ペプチド型化合物、水、多価アルコール及び有機酸を組み合わせることで、従来の既存増粘剤では増粘出来ない高い濃度の有機酸およびそれらの塩の存在下でも増粘ができる組成物を見出し、本発明を完成させた。【0006】(当審注:甲1-1の[0006])続きを表示(全18行)すなわち本発明は、第1観点として、多価アルコール、水および有機酸と、下記式(1)・・・で表される化合物又はその薬学的に使用可能な塩・・・からなる脂質ペプチド型化合物とを含む増粘性組成物に関する。【0007】(当審注:甲1-1の[0006])【化1】[図:0001398248000008.jpg]【0008】(当審注:甲1-1の[0006])(式中、R1は炭素原子数9乃至23の脂肪族基を表し、R2は水素原子、又は・・・を表し、R3は-(CH2)n-X基を表し、nは1乃至4の数を表し、Xは・・・、又は窒素原子を1乃至3個有し得る5員環・・・を表す。)・・・【発明の効果】【0013】(当審注:甲1-1の[0007])本発明は、従来の既存増粘剤では増粘出来ない高い濃度の有機酸およびそれらの塩の存在下でも増粘ができる組成物を提供できる。【0014】(当審注:甲1-1の[0007])・・・。さらに本発明の増粘性組成物において添加剤として含まれる各種成分は食品や化粧品、医薬品の添加剤として汎用の添加剤である。【0015】(当審注:甲1-1の[0007])すなわち、本発明の増粘性組成物は生体安全性が高く、特に、医用材料、或いは化粧品用材料等において要求される高い安全性の観点からみて、上記用途において非常に有用である。」
<摘記甲1d>
「【0017】(当審注:甲1-1の[0008]~[0009])以下、各構成成分について説明する。[脂質ペプチド型化合物]本発明の増粘性組成物において用いる脂質ペプチド型化合物としては、下記式(1)・・・で表される化合物(脂質ペプチド)又はその薬学的に使用可能な塩(・・・)を用いることができる。続きを表示(全13行)【0018】(甲1-1の[0010])【化4】[図:0001398248000009.jpg]・・・【0028】(当審注:甲1-1の[0014])上記式(1)で表される化合物において、脂質ペプチド型化合物として特に好適な脂質ペプチドとしては、以下の脂質部とペプチド部(アミノ酸集合部)から形成される化合物である。・・・(当審注:甲1-1には、「脂質ペプチド型化合物としての、上記式(1)で表される化合物における特に好適な脂質ペプチドとしては、以下の脂質部とペプチド部(アミノ酸集合部)から形成される化合物である。・・・」と記載されている。)【0029】(甲1-1の[0015])最も好ましいものとして、・・・、パルミトイル-Gly-His、・・・が挙げられる。」
<摘記甲1e>
「【0040】(当審注:甲1-1の[0024])・・・[多価アルコール]本発明の増粘性組成物において使用される多価アルコールとして、分子内に2個以上の水酸基を有する化合物であり、これら多価アルコールを単独で、或いは二種以上を組み合わせて用いることができる。多価アルコールとしては、例えばグリセリン、1,2-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、・・・、1,3-ブチレングリコール、プロピレングリコール、・・・、ジプロピレングリコール、・・・が挙げられる。・・・。さらに好ましくは、1,2-ペンタンジオール又は1,2-ヘキサンジオールである。」
<摘記甲1f>
「【0040】(当審注:甲1-1の[0025])・・・[有機酸]有機酸としては、アスコルビン酸、クエン酸、乳酸、・・・が挙げられる。好ましくは、アスコルビン酸、クエン酸、乳酸が挙げられる。より好ましくは、アスコルビン酸、クエン酸が挙げられる。」
<摘記甲1g>
「【0040】(当審注:甲1-1の[0026])・・・[脂肪酸]本発明の増粘性組成物は脂肪酸をさらに含んでいてもよい。・・・、例えば脂肪酸としては・・・、ステアリン酸が挙げられる。・・・。続きを表示(全12行)・・・【0043】(当審注:甲1-1の[0027])・・・[界面活性剤]本発明の増粘性組成物において使用される界面活性剤として、・・・或いは、エチレングリコールアルキルエーテルを好適に用いることができる。・・・【0047】(当審注:甲1-1の[0029])上記エチレングリコールアルキルエーテルとしては、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、・・・等が挙げられる。・・・」
<摘記甲1h>
「【0049】(当審注:甲1-1の[0031])・・・[その他添加剤]本発明の皮膚外用固形基材(・・・)には、必要に応じて一般的に化粧品用添加剤及び医薬部外品用添加剤として使用可能な添加剤を配合することができる。化粧品又は医薬部外品等の皮膚外用剤に配合される生理活性物質及び機能性物質等の添加成分としては、例えば・・・、上記以外の界面活性剤、・・・、美白剤、ビタミン類及びその誘導体類、育毛用薬剤・・・、・・・、清涼剤、・・・、香料、・・・等が挙げられる。続きを表示(全17行)・・・【0063】(当審注:甲1-1の[0045])美白剤としては、・・・;アスコルビン酸、・・・、アスコルビン酸エチルエーテル等のアスコルビン酸アルキルエーテル、・・・等のアスコルビン酸誘導体;・・・が好ましいものとして挙げられる。【0064】(当審注:甲1-1の[0046])ビタミン類及びその誘導体類としては、・・・;アスコルビン酸及び・・・等のビタミンC類;・・・が好ましいものとして挙げられる。【0065】(当審注:甲1-1の[0047])育毛用薬剤・血行促進剤・刺激剤としては、・・・、ミノキシジルが好ましいものとして挙げられる。・・・【0071】(当審注:甲1-1の[0053])清涼剤としては、メントール、・・・等が挙げられる。・・・【0075】(当審注:甲1-1の[0057])香料としては、・・・、メントール、L-メントール、・・・が好ましいものとして挙げられる。」
<摘記甲1i>
「【0079】(当審注:甲1-1の[0062])・・・[増粘性組成物の製造方法]本発明の増粘性組成物は、前記式(1)・・・で表される化合物又はその薬学的に使用可能な塩・・・からなる脂質ペプチド化合物と、多価アルコール、水および有機酸とを含み、所望に応じて、脂肪酸、界面活性剤、その他添加剤とを用いて、加熱しながら混合、撹拌した後、静置放冷することによって製造され得る。続きを表示(全11行)【0080】(当審注:甲1-1の[0063])例えば本発明の増粘性組成物は、一例として、下記工程により製造される。a)上記脂質ペプチド化合物と、多価アルコールを混合し、加熱して溶解液又は分散液(プレミックス相)を調製する工程b)上記溶解液又は分散液(プレミックス相)を室温以上100℃未満の温度で加熱する工程c)多価アルコール、水および有機酸を混合し、加熱して溶解液又は分散液(水相)を調製する工程d)上記溶解液又は分散液(水相)を室温以上100℃未満の温度で加熱する工程e)上記加熱されたプレミックス相と、上記加熱された水相とを混合し、上記加熱工程における温度よりも低い温度になるまで撹拌しながら冷却し、その後静置放冷し、増粘性組成物を形成する工程」
<摘記甲1j>
「【実施例】【0085】(当審注:甲1-1の[0067]~[0069])以下、本発明を実施例及び試験例を例に挙げて詳しく説明するが、本発明がこれらの例に限定されるものではない。[合成例1:脂質ペプチド(N-パルミトイル-Gly-His)の合成]続きを表示(全32行)本実施例においてゲル化剤として用いた脂質ペプチドを以下に示す方法で合成した。【0086】(当審注:甲1-1の[0068]~[0069])・・・。ここで得られた固体を水120gで洗浄し、ろ過後に減圧乾燥を行いN-パルミトイル-Gly-Hisフリ-体(以下、単にPal-GHとも称する)の白色の結晶、26.9g(収率65%)を得た。(当審注:甲1-1には、「(以下、単にPal-GHとも称する)」の記載がない。)[実施例1乃至実施例11](アスコルビン酸増粘液の調製方法1)(当審注:甲1-1では、表題が「(アスコルビン酸増粘性組成物の調製1)」と記載されている。)プレミックス相を、サンプル管No.5(マルエム社製)に表1に従い秤量した。また、水相は、表1に従って、300mLトールビーカー秤量した。プレミックス相と水相を加熱し、70℃以上にする。プレミックス相および水相を混合した後、攪拌放冷をする。液温が40℃となったところで攪拌停止し、サンプルを調製した。調製したサンプルを、粘度計(・・・)を用いて測定した。・・・。(当審注:甲1-1には、「プレミックス相の成分を、表1に示す配合量に従いサンプル管No.5(マルエム社製)に秤取した。また、水相の成分を、表1に示す配合量に従い、300mLトールビーカー秤取した。次にプレミックス相と水相を加熱し、それぞれ70℃以上にした。続いてプレミックス相および水相を混合した後、攪拌放冷した。液温が40℃となったところで攪拌停止し、組成物サンプルとして調製した。調製したサンプルの粘度を、粘度計(・・・)を用いて測定した。・・・。」と記載されている。また、この後に続けて「結果を表1に示す。表1中、Pal-GHは合成例1で得られた脂質ペプチド(N-パルミトイル-Gly-Hisフリ-体)を意味し、BGは3-ブチレングリコールを意味する。」との記載がある。)【0087】(当審注:甲1-1の[0069][表1])100gのアスコルビン酸増粘液を調製する場合の配合量(当審注:甲1-1の[表1]の表題は、「表1:アスコルビン酸増粘性組成物の100g中の成分配合量(実施例1乃至実施例11)」。)【0088】(当審注:甲1-1の[0069][表1])【表1】[図:0001398248000010.jpg]【0089】(当審注:甲1-1の[0070])[実施例12乃至実施例21](アスコルビン酸増粘液の調製方法2)(当審注:甲1-1では、表題が「(アスコルビン酸増粘性組成物の調製2)」と記載されている。)プレミックス相を、サンプル管No.5(マルエム社製)に表2に従い秤量した。また、水相は、表2に従って、300mLトールビーカー秤量した。プレミックス相と水相を加熱し、70℃以上にする。プレミックス相および水相を混合した後、攪拌放冷をする。液温が40℃となったところで攪拌停止し、サンプルを調製した。調製したサンプルを、粘度計(・・・)を用いて測定した。・・・。(当審注:甲1-1には、「プレミックス相の成分を、表2に示す配合量に従いサンプル管No.5(マルエム社製)に秤取した。また、水相の成分を、表2に示す配合量に従い、300mLトールビーカー秤取した。次にプレミックス相と水相を加熱し、それぞれ70℃以上にした。プレミックス相および水相を混合した後、攪拌放冷した。液温が40℃となったところで攪拌停止し、組成物サンプルとして調製した。調製したサンプルを、粘度計(・・・)を用いて測定した。・・・。」と記載されている。また、この後に続けて「結果を表2に示す。表2中、Pal-GHは合成例1で得られた脂質ペプチド(N-パルミトイル-Gly-Hisフリー体)を意味し、BGは3-ブチレングリコールを意味する。」との記載がある。)【0090】(当審注:甲1-1の[0070][表2])100gのアスコルビン酸増粘液を調製する場合の配合量(当審注:甲1-1の[表2]の表題は、「表2:アスコルビン酸増粘性組成物の100g中の成分配合量(実施例12乃至実施例21)」。)【0091】(当審注:甲1-1の[0070][表2])【表2】[図:0001398248000011.jpg]」
(2) 甲1に記載された発明
上記(1)に摘記した甲1の記載事項によれば、甲1には、アスコルビン酸等の有機酸(塩)の存在下でも粘性を失わない化粧品等の皮膚外用増粘性組成物を提供するという課題(<摘記甲1b>)について、式(1)で表される化合物からなる脂質ペプチド型化合物と、多価アルコール、水及び有機酸(塩)とを組み合わせて含む増粘性組成物としたことによって解決したことが記載されており(<摘記甲1c>、<摘記甲1a>)、式(1)で表される化合物の最も好ましいものとして、「パルミトイル-Gly-His」が挙げられており(<摘記甲1d>)、「多価アルコール」として、「グリセリン」、「1,2-ヘキサンジオール」、「1,3-ブチレングリコール」等が挙げられており(<摘記甲1e>)、増粘性組成物を実際に製造した例として、実施例1~21の組成物が記載されている(<摘記甲1i>、<摘記甲1j>)。
そして、上記実施例1~21の組成物のうち、
実施例1、2、4の組成物は、「Pal-GH」(当審注:「N-パルミトイル-Gly-Hisフリー体」を意味する(<摘記甲1j>【0086】参照)。以下、同じ。)を0.6%、「1,2-ヘキサンジオール」を2%、「グリセリン」を50%、「アスコルビン酸」を5%(実施例2、4)又は10%(実施例1)、含有するものであり、
実施例3、5の組成物は、「Pal-GH」を0.6%、「1,2-ヘキサンジオール」を2%、「グリセリン」を20%、「アスコルビン酸」を5%(実施例3)又は10%(実施例5)、含有するものであり、
実施例8、10の組成物は、「Pal-GH」を0.6%、「1,2-ヘキサンジオール」を2%、「BG」を20%、「アスコルビン酸」を5%(実施例8)又は10%(実施例10)、含有するものであり、
実施例9、11の組成物は、「Pal-GH」を0.6%、「1,2-ヘキサンジオール」を0.2%、「BG」を10%、「アスコルビン酸」を5%(実施例9)又は10%(実施例11)、含有するものであり、
実施例12、14の組成物は、「Pal-GH」を0.5%、「1,2-ヘキサンジオール」を0.2%、「グリセリン」を50%、「アスコルビン酸」を5%(実施例12)又は10%(実施例14)、含有するものであり、
実施例13、15の組成物は、「Pal-GH」を0.5%、「1,2-ヘキサンジオール」を0.2%、「グリセリン」を20%、「アスコルビン酸」を5%(実施例13)又は10%(実施例15)、含有するものであり、
実施例18、20の組成物は、「Pal-GH」を0.5%、「1,2-ヘキサンジオール」を0.2%、「BG」を20%、「アスコルビン酸」を5%(実施例18又は10%(実施例20)、含有するものであり、
実施例19、21の組成物は、「Pal-GH」を0.5%、「1,2-ヘキサンジオール」を0.2%、「BG」を10%、「アスコルビン酸」を5%(実施例19)又は10%(実施例21)、含有するものである。
そうすると、甲1には、化粧品である皮膚外用増粘性組成物の実施例1~5、同実施例8~11、同実施例12~15、同実施例16~21として、次の発明(「甲1A発明」~「甲1D発明」)が記載されていると認められる。
≪甲1A発明≫
「(A)Pal-GHを0.6%と、(B)1,2-ヘキサンジオールを2%、グリセリンを20%又は50%と、(C)アスコルビン酸を5%又は10%と、を含む、化粧品である皮膚外用増粘性組成物。」
≪甲1B発明≫
「(A)Pal-GHを0.6%と、(B)1,2-ヘキサンジオールを2%、BGを10%又は20%と、(C)アスコルビン酸を5%又は10%と、を含む、化粧品である皮膚外用増粘性組成物。」
≪甲1C発明≫
「(A)Pal-GHを0.5%と、(B)1,2-ヘキサンジオールを0.2%、グリセリンを20%又は50%と、(C)アスコルビン酸を5%又は10%と、を含む、化粧品である皮膚外用増粘性組成物。」
≪甲1D発明≫
「(A)Pal-GHを0.5%と、(B)1,2-ヘキサンジオールを0.2%、BGを10%又は20%と、(C)アスコルビン酸を5%又は10%と、を含む、化粧品である皮膚外用増粘性組成物。」
また、上記<摘記甲1i>及び<摘記甲1j>からみて、甲1には、上記の甲1A発明~甲1D発明の組成物の製造方法として、次の発明(「甲1A’発明」~「甲1D’発明」)も記載されていると認められる。
≪甲1A’発明≫
「(C)アスコルビン酸を5%又は10%と、(B)1,2-ヘキサンジオールを2%、グリセリンを20%又は50%と、を含む、化粧品である皮膚外用増粘性組成物において、(A)Pal-GHを0.6%を配合する、化粧品である皮膚外用増粘性組成物の製造方法。」
≪甲1B’発明≫
「(C)アスコルビン酸を5%又は10%と、(B)1,2-ヘキサンジオールを2%、BGを10%又は20%と、を含む、化粧品である皮膚外用増粘性組成物において、(A)Pal-GHを0.6%を配合する、化粧品である皮膚外用増粘性組成物の製造方法。」
≪甲1C’発明≫
「(C)アスコルビン酸を5%又は10%と、(B)1,2-ヘキサンジオールを0.2%、グリセリンを20%又は50%と、を含む、化粧品である皮膚外用増粘性組成物において、(A)Pal-GHを0.5%を配合する、化粧品である皮膚外用増粘性組成物の製造方法。」
≪甲1D’発明≫
「(C)アスコルビン酸を5%又は10%と、(B)1,2-ヘキサンジオールを0.2%、BGを10%又は20%と、を含む、化粧品である皮膚外用増粘性組成物において、(A)Pal-GHを0.5%を配合する、化粧品である皮膚外用増粘性組成物の製造方法。」
(3) 本件発明1について
ア 対比
本件発明1と、甲1A発明~甲1D発明とを、対比する。
甲1A発明~甲1D発明における「Pal-GH」は、「N-パルミトイル-Gly-Hisフリー体」を意味するものであり(<摘記甲1j>【0086】)、本件発明1における「(A)成分」の式(1)で表される脂質ペプチドにおいて、R1がペンタデシル基(炭素原子数15の直鎖飽和脂肪族基)であり、R2が水素原子であり、R3が-(CH2)n-X基であり、nが1であり、Xがイミダゾール-4-イル(窒素原子を2個有する5員環基)を表し、mが1であるものに該当する。また、甲1A発明及び甲1B発明において、「Pal-GH」の含有量が「0.6%」であり、甲1C発明及び甲1D発明において、「Pal-GH」の含有量が「0.5%」であることは、本件発明1における「該外用組成物における前記(A)成分の含有量が0.05重量%以上である」との条件を満たすものである。
甲1A発明~甲1D発明における「1,2-ヘキサンジオール」並びに甲1A発明及び甲1C発明における「グリセリン」は、本件発明1における(B)成分の「多価アルコール」に相当し、また、甲1B発明及び甲1D発明における「BG」は、「1,3-ブチレングリコール」を意味するものであるから、本件発明1における(B)成分の「多価アルコール」に相当する。
甲1A発明~甲1D発明における「アスコルビン酸」は、本件発明1における(C)成分の「アスコルビン酸」に該当するものである。
甲1A発明~甲1D発明における「化粧品である皮膚外用増粘性組成物」は、本件発明1における「外用組成物」に相当する。
そして、甲1A発明及び甲1B発明の組成物は、Pal-GHを0.6%含み、アスコルビン酸を5%又は10%含むものであり、甲1C発明及び甲1D発明の組成物は、Pal-GHを0.5%含み、アスコルビン酸を5%又は10%含むものであるから、甲1A発明~甲1D発明の組成物は、本件発明1において「除く」とされている「前記(A)成分を0.5重量%~0.6重量%含有し、かつ前記(C)成分としてのアスコルビン酸を5重量%~10重量%含有する外用組成物」に該当する。
そうすると、本件発明1と、甲1A発明~甲1D発明の間には、次の一致点及び相違点があるものと認められる。
<一致点>
「(A)下記式(1)で表される脂質ペプチド及び/又はその薬学的に許容される塩と、(B)多価アルコール及び/又はグリコールエーテル類と、(C)アスコルビン酸、3-Oエチルアスコルビン酸、テルビナフィン及びミノキシジル、並びにそれらの塩からなる群から選ばれる少なくとも一種の有効成分と、を含む外用組成物であって、該外用組成物における前記(A)成分の含有量が0.05重量%以上である、外用組成物:【化1】[図:0001398248000012.jpg](式中、R1は炭素原子数9乃至23の脂肪族基を表し、R2は、水素原子、R3は、-(CH2)n-X基を表し、且つ、nは1であり、Xは窒素原子を2個有する5員環基を表し、mは1である。)。」
<相違点>
本件発明1の外用組成物は、「前記(A)成分を0.5重量%~0.6重量%含有し、かつ前記(C)成分としてのアスコルビン酸を5重量%~10重量%含有する外用組成物」を「除く」ものであるのに対して、甲1A発明~甲1D発明は、「前記(A)成分を0.5重量%~0.6重量%含有し、かつ前記(C)成分としてのアスコルビン酸を5重量%~10重量%含有する外用組成物」に該当するものである点。
イ 判断
甲1A発明~甲1D発明の各組成物は、本件発明1の外用組成物から「除く」とされている「前記(A)成分を0.5重量%~0.6重量%含有し、かつ前記(C)成分としてのアスコルビン酸を5重量%~10重量%含有する外用組成物」に完全に包含されるものであるから、上記相違点は実質的な相違点である。
ウ 小括
したがって、本件発明1は、甲1A発明~甲1D発明と、実質的に同一であるとはいえないから、甲1に記載された発明と同一であるとはいえない。
(4) 本件発明4について
本件発明4は、引用する本件発明1の外用組成物において、更に「(B)成分の外用組成物中の含有量が0.0001~75重量%である」と特定するものである。
そして、上記(3)で説示したとおり、本件発明1は、甲1に記載された発明であるとはいえないのであるから、本件発明1をさらに特定した本件発明4も、甲1に記載された発明と同一であるとはいえない。
(5) 本件発明5について
本件発明5は、引用する本件発明1~本件発明4のいずれかの外用組成物について、更に「化粧料である」ことを特定するものである。
そして、上記(3)及び(4)で説示したとおり、本件発明1及び本件発明4は、甲1に記載された発明であるとはいえないのであるから、本件発明1又は本件発明4をさらに特定した本件発明5も、甲1に記載された発明と同一であるとはいえない。
(6) 本件発明6について
ア 対比
本件発明6と、甲1A’発明~甲1D’発明とを、対比する。
上記(3)アの本件発明1と甲1A発明~甲1D発明との対比の結果を踏まえると、甲1A’発明~甲1D’発明における「Pal-GH」は、本件発明6における(A)成分である式(1)で表される脂質ペプチドに該当し、また、甲1A’発明及び甲1B’発明において、「Pal-GH」の含有量が「0.6%」であり、甲1C’発明及び甲1D’発明において、「Pal-GH」の含有量が「0.5%」であることは、本件発明6における「該外用組成物における前記(A)成分の含有量が0.05重量%以上である」との条件を満たすものである。
同じく上記(3)アの対比の結果を踏まえると、甲1A’発明~甲1D’発明における「1,2-ヘキサンジオール」、甲1A’発明及び甲1C’発明における「グリセリン」、並びに、甲1B’発明及び甲1D’発明における「BG」は、本件発明6における(B)成分の「多価アルコール」に相当する。
甲1A’発明~甲1D’発明における「アスコルビン酸」は、本件発明6における(C)成分の「アスコルビン酸」に該当するものである。
甲1A’発明~甲1D’発明における「化粧品である皮膚外用増粘性組成物において、(A)Pal-GH」を「配合」するとの工程は、本件発明6における「外用組成物に、(A)下記式(1)で表される脂質ペプチド及び/又はその薬学的に許容される塩」を「配合」するとの工程に相当する。
甲1A’発明~甲1D’発明における「化粧品である皮膚外用増粘性組成物の製造方法」は、本件発明6における「外用組成物の製造方法」に相当する。
そして、甲1A’発明及び甲1B’発明の製造方法における「皮膚外用増粘性組成物」は、Pal-GHを0.6%含み、アスコルビン酸を5%又は10%含むものであり、甲1C’発明及び甲1D’発明の製造方法における「皮膚外用増粘性組成物」は、Pal-GHを0.5%含み、アスコルビン酸を5%又は10%含むものであるから、甲1A’発明~甲1D’発明の製造方法における「皮膚外用増粘性組成物」は、本件発明6において「除く」とされている「前記(A)成分を0.5重量%~0.6重量%含有し、かつ前記(C)成分としてのアスコルビン酸を5重量%~10重量%含有する外用組成物」に該当する。
そうすると、本件発明6と、甲1A’発明~甲1D’発明の間には、次の一致点及び相違点があるものと認められる。
<一致点>
「(C)アスコルビン酸、3-Oエチルアスコルビン酸、テルビナフィン及びミノキシジル、並びにそれらの塩からなる群から選ばれる少なくとも一種の有効成分と(B)多価アルコール及び/又はグリコールエーテル類とを含む外用組成物に、(A)下記式(1)で表される脂質ペプチド及び/又はその薬学的に許容される塩を配合し、該外用組成物における前記(A)成分の含有量が0.05重量%以上である、外用組成物の製造方法:【化3】[図:0001398248000013.jpg](式中、R1は炭素原子数9乃至23の脂肪族基を表し、R2は、水素原子、R3は、-(CH2)n-X基を表し、且つ、nは1であり、Xは窒素原子を2個有する5員環基を表し、mは1である。)。」
<相違点>
本件発明6の製造方法における外用組成物は、「前記(A)成分を0.5重量%~0.6重量%含有し、かつ前記(C)成分としてのアスコルビン酸を5重量%~10重量%含有する外用組成物」を「除く」ものであるのに対して、甲1A’発明~甲1D’発明の製造方法における皮膚外用増粘性組成物は、「前記(A)成分を0.5重量%~0.6重量%含有し、かつ前記(C)成分としてのアスコルビン酸を5重量%~10重量%含有する外用組成物」に該当するものである点。
(2) 判断
甲1A’発明~甲1D’発明の製造方法における各皮膚外用増粘性組成物は、本件発明6の製造方法における外用組成物から「除く」とされている、「前記(A)成分を0.5重量%~0.6重量%含有し、かつ前記(C)成分としてのアスコルビン酸を5重量%~10重量%含有する外用組成物」に完全に包含されるものであるから、上記相違点は実質的な相違点である。
(3) 小括
したがって、本件発明6は、甲1A’発明~甲1D’発明と、実質的に同一であるとはいえないから、甲1に記載された発明と同一であるとはいえない。
3 取消理由についての当審の判断のまとめ
以上のとおりであるから、本件発明1、4~6は、本件特許の優先日前の他の特許出願であって、本件特許の出願後に当該他の特許出願を優先権主張の基礎とする日本語特許出願の国際公開(甲1-1)がされた特許出願の願書に最初に添付された明細書又は特許請求の範囲(甲1)に記載された発明と同一であるとはいえない。
よって、本件請求項1、4~6に係る特許は、特許法第29条の2の規定に違反してされたものであるとはいえず(同法第184条の15第2項の規定により読み替えて適用される同法第41条第3項の規定を参照)、同法第113条第2号に該当するものではないから、取消理由1によって取り消すことはできない。
第6 特許異議の申立ての理由について
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1 特許異議の申立ての理由の概要
申立人は、証拠方法として、上記第4の<引用文献一覧>に記載した甲1及び甲1-1を提出し、以下に概要を示す特許異議の申立ての理由(以下「申立理由」という。)を主張しているものと認められる。なお、申立人が提出した特許異議申立書の記載には、特許法の規定の引用が正確でない点が含まれているため、当審合議体が適切な表記に修正した。
[申立理由](拡大先願)
本件特許の請求項1、4~6に係る発明は、本件特許の優先日前の他の特許出願であって、本件特許の出願後に当該他の特許出願を優先権主張の基礎とする日本語特許出願の国際公開(甲1-1)がされた特許出願の願書に最初に添付された明細書又は特許請求の範囲(甲1)に記載された発明と同一であり、しかも、本件特許発明の発明者が上記他の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、また本件特許の出願の時において、その出願人が上記他の特許出願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができないものであるから(同法第184条の15第2項の規定により読み替えて適用される同法第41条第3項の規定を参照)、本件特許の請求項1、4~6に係る特許は、同法第29条の2の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
2 申立理由についての当審の判断
申立理由は、上記第4の当審において通知した取消理由1と同旨であると認められる。
そして、上記第5にて詳説したとおり、本件発明1、4~6は、取消理由1によって取り消すことはできないから、申立理由によって取り消すことはできない。
第7 むすび
以上のとおり、本件訂正請求は、適法なものであるから、本件特許の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~6について訂正することを認める。そして、取消理由通知書に記載した取消理由及び証拠、並びに/又は、申立人による特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、本件特許の請求項1、4~6に係る発明の特許を取り消すことはできない。
また、その他に本件特許の請求項1、4~6に係る発明の特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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2022-700313