特許異議申立
2022-700305
油組成物および製造方法
- 審判番号
- 2022-700305
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2018-516573
- 登録番号
- 6947370
- 請求日
- 2022年04月13日
- 審決日
- 2023年07月06日
- 公報発行日
- 2023年10月27日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】ディーエスエム アイピー アセッツ ビー.ブイ.
- 【権利者代理人】池田 成人
- 【権利者代理人】清水 義憲
- 【権利者代理人】酒巻 順一郎
- 【権利者代理人】阿部 寛
- 【権利者代理人】田村 明照
- 【異議申立人】白井 雅恵
- 審判長/審判官
- 審判長 関根 裕
- 審判官 門前 浩一
- 審判官 亀ヶ谷 明久
- 分類
- P1652.853-XA (C11B) / P1652.857-XA (C11B) / P1652.856-XA (C11B) / P1652.121-XA (C11B) / P1652.537-XA (C11B)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法120条の8第1項特許法135条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第9項、特許法第126条第6項、特許法第126条第5項、特許法第126条第7項、特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第4項、特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第2号、特許法第120条の2第2項、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第6947370号発明「油組成物および製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第9647370号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-19〕について訂正することを認める。
特許第9647370号の請求項1~4、6~16、19に係る特許異議の申立てを却下する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本件特許に係る出願は、2016年(平成28年)10月5日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理2015年10月5日 米国)を国際出願日とする出願であって、令和3年9月21日に特許権の設定登録(請求数19)がされ、同年10月13日に特許掲載公報が発行され、その後、令和4年4月12日に特許異議申立人 白井 雅恵(以下「申立人」という。)により、請求項1~4、6~16、19に係る特許に対して特許異議の申立てがされたものである。
以下の経緯は、次のとおりである。
令和4年 9月 7日付 取消理由通知
令和4年12月 1日 特許権者から意見書及び訂正請求書の提出
令和4年12月 7日付 当審から申立人に通知書
令和4年12月19日 申立人から上申書の提出(期間延長)
令和5年 1月10日付 当審から申立人に通知書(期間延長の許可)
令和5年 1月17日 申立人から意見書の提出
第2 本件訂正について
1 令和4年12月1日にされた訂正請求(以下「本件訂正請求」といい、訂正の内容を「本件訂正」という。)の請求の趣旨は、「特許第6947370号の特許請求の範囲を、本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~19について訂正することを求める。」というものである。
2 訂正事項
本件訂正は、次の訂正事項からなるものである。当審が訂正箇所に下線を付した。
(1)訂正事項1-1
訂正前の請求項1に「少なくとも1つの蒸留ステップ」とあるのを、「少なくとも2つの蒸留ステップ」と訂正する。(請求項1の記載を引用する請求項2~5、18、19も同様に訂正する。)
(2)訂正事項1-2
訂正前の請求項1に「少なくとも5%のエイコサペンタエン酸(EPA)が、前記第1蒸留ステップの留出物中に除去され、」とあるのを、「蒸留前のエイコサペンタエン酸(EPA)の少なくとも5%が、前記第1蒸留ステップの留出物中に除去され、」と訂正する。(請求項1の記載を引用する請求項2~5、18、19も同様に訂正する。)
(3)訂正事項1-3
訂正前の請求項1に「前記少なくとも1つの装置が薄膜エバポレーターに取り付けられた分留塔を含む方法。」と記載されているのを、「前記少なくとも1つの装置が薄膜エバポレーターに取り付けられた分留塔を含み、
前記油が1重量%以下の異性体値を有する方法。」と訂正する。(請求項1の記載を引用する請求項2~5、18、19も同様に訂正する。)
(4)訂正事項2
訂正前の請求項3に「少なくとも10%のEPAが、前記第1蒸留ステップの留出物中に除去される」と記載されているのを、「蒸留前のEPAの少なくとも10%が、前記第1蒸留ステップの留出物中に除去される」と訂正する。(訂正前の請求項3の記載を引用する請求項4、5、18、19も同様に訂正する。)
(5)訂正事項3-1
訂正前の請求項6に「少なくとも1つの蒸留ステップ」と記載されているのを、「少なくとも2つの蒸留ステップにかける工程」と訂正する。(訂正前の請求項6の記載を引用する請求項18、19も同様に訂正する。)
(6)訂正事項3-2
訂正前の請求項6に「分離および濃縮の後の前記油が、エステル画分中に少なくとも90%の所望のPUFAを含む方法。」と記載されているのを、「分離および濃縮の後の前記油が、エステル画分中に少なくとも90%の所望のPUFAを含み、
前記油が1重量%以下の異性体値を有する方法。」と訂正する。(訂正前の請求項6の記載を引用する請求項18、19も同様に訂正する。)
(7)訂正事項4-1
訂正前の請求項7に「少なくとも1つの蒸留ステップ」と記載されているのを、「少なくとも2つの蒸留ステップにかける工程」と訂正する。(訂正前の請求項7の記載を引用する請求項8~16、18、19も同様に訂正する。)
(8)訂正事項4-2
訂正前の請求項7に「前記少なくとも1つの装置が薄膜エバポレーターに取り付けられた分留塔を含む方法。」と記載されているを「前記少なくとも1つの装置が薄膜エバポレーターに取り付けられた分留塔を含み、
前記油が1重量%以下の異性体値を有する方法。」と訂正する。(訂正前の請求項7の記載を引用する請求項8~16、18、19も同様に訂正する。)
(9)訂正事項5
請求項17を削除する。
(10)訂正事項6
請求項18に記載された「請求項1~17のいずれか一項」という記載を、「請求項1~16のいずれか一項」と訂正する。(請求項18の記載を引用する請求項19も同様に訂正する。
(11)訂正事項7
請求項17に記載された「請求項1~18のいずれか一項」という記載を、「請求項1~16、18のいずれか一項」と訂正する。
3 訂正要件についての判断
(1)一群の請求項について
ア 訂正前の請求項2~5、17~19は、請求項1を直接又は間接的に引用するものであったから、本件訂正前の請求項1~5、17~19は、一群の請求項であった。
イ 訂正前の請求項17~19は、請求項6を直接又は間接的に引用するものであったから、本件訂正前の請求項6、17~19は、一群の請求項であった。
ウ 訂正前の請求項8~19は、請求項7を直接または間接的に引用するものであったから、本件訂正前の請求項8~19は、一群の請求項であった。
エ 前記ア~ウを総合すると、本件訂正前の請求項1~19は、一群の請求項であると把握できる。そうすると、本件訂正は、請求項1~19からなる一群の請求項ごとにされた訂正であって、特許法第120条の5第4項に適合する。
(2)訂正事項1-1
ア 訂正の目的要件
訂正前の「少なくとも1つの蒸留ステップ」について、当審からの取消理由通知において、本件発明1においては、蒸留ステップが少なくとも2つが必須であって、「1つ」であることはあり得ないという指摘に応じて、「少なくとも2つの蒸留ステップ」と訂正するものであるから、特許法第120の5第2項ただし書第3号の明瞭でない記載の釈明を目的とするものと解される。
イ 実質上の拡張・変更の有無
訂正事項1-1は、「少なくとも1つの蒸留ステップ」を「少なくとも2つの蒸留ステップ」と訂正するものであるところ、訂正前も「第1蒸留ステップ」及び「第2蒸留ステップ」の2つの蒸留ステップが少なくともあることから、実質上、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものといえる。
ウ 新規事項の追加の有無
訂正前の特許請求の範囲の請求項1には、「第1蒸留ステップ」及び「第2蒸留ステップ」が特定されており、合わせて「少なくとも2つの蒸留ステップ」となることから、訂正事項1-1は、新規事項を追加するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものといえる。
エ 独立特許要件について
訂正事項1-1は、前記アのとおり、特許法第120の5第2項ただし書第3号の明瞭でない記載の釈明を目的とするものであるから、特許法第120の5第9項の規定により、読み替えて準用される特許法第126条第7項に規定される独立特許要件は課されない。
(3)訂正事項1-2について
ア 訂正の目的要件
訂正事項1-2は、訂正前においては「少なくとも5%のエイコサペンタエン酸(EPA)が、前記第1蒸留ステップの留出物中に除去され、」と記載されており、何に対して少なくとも5%であるのか明瞭でなかったところ、訂正後は、「蒸留前のエイコサペンタエン酸(EPA)の少なくとも5%」と訂正されることにより、蒸留前のEPAの量が基準となることが特定されたものであるから、訂正事項1-2は、特許法第120の5第2項ただし書第3号の明瞭でない記載の釈明を目的とするものと解される。
イ 実質上の拡張・変更の有無
本件特許の明細書の【0079】には「・・・好ましい実施形態においては、エイコサペンタエン酸(EPA)の少なくとも一部は、留出物中に除去される。いくつかの実施形態においては、EPAの少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%は、第1蒸留ステップの留出物中にある。」と記載され、訂正前の「少なくとも5%のエイコサペンタエン酸(EPA)」とは、留出物中に除去される前のEPAと解され、蒸留前のEPAの量が基準となることは明らかであるから、実質上、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものといえる。
ウ 新規事項の追加の有無
前記イのとおり、訂正前の「少なくとも5%のエイコサペンタエン酸(EPA)」とは、蒸留前のEPAの量が基準となることは明らかであるから、訂正事項1-2は、新規事項を追加するものではなく、訂正事項1は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものといえる。
エ 独立特許要件について
訂正事項1-2は、前記アのとおり、特許法第120の5第2項ただし書第3号の明瞭でない記載の釈明を目的とするものであるから、特許法第120の5第9項の規定により、読み替えて準用される特許法第126条第7項に規定される独立特許要件は課されない。
(4)訂正事項1-3について
ア 訂正の目的要件
訂正事項1-3は、実質的に、訂正前の請求項1を引用する請求項17の引用関係を解消し、訂正後の請求項17を新たに請求項1としたものといえるから、特許法第120条の5第2項ただし書第4号の引用関係を解消することを目的としていると解される。
また、訂正後の請求項1を引用するものであって、訂正事項1-3により訂正された請求項2~5、18、19についても同様に訂正前の請求項17との引用関係が解消されている。
イ 実質上の変更・拡張の有無
訂正事項1-3によって、訂正前の請求項1を引用する請求項17は、内容的な訂正をされているとはいえないから、訂正事項1-3は、実質上、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものといえる。
ウ 新規事項の追加の有無
訂正事項1-3によって、訂正前の請求項1を引用する請求項17は、内容的な訂正をされているとはいえないから、訂正事項1-3は、新規事項を追加するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものといえる。
エ 独立特許要件について
訂正事項1-3は、前記アのとおり、特許法第120の5第2項ただし書第4号の引用関係の解消を目的とするものであるから、特許法第120の5第9項の規定により、読み替えて準用される特許法第126条第7項に規定される独立特許要件は課されない。
(5)訂正事項2について
ア 訂正の目的要件
訂正事項2は、訂正前においては「少なくとも10%のEPAが、前記第1蒸留ステップの留出物中に除去される」と記載されており、何に対して少なくとも10%であるのか明瞭でなかったところ、訂正後は、「蒸留前のEPAの少なくとも10%」と訂正されることにより、蒸留前のEPAの量が基準となることが特定されたものであるから、訂正事項2は、特許法第120の5第2項ただし書第3号の明瞭でない記載の釈明を目的とするものと解される。
イ 実質上の拡張・変更の有無
訂正前の「少なくとも5%のエイコサペンタエン酸(EPA)」とは、蒸留前のEPAの量が基準となることは明らかであるから、実質上、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものといえる。
ウ 新規事項の追加の有無
前記イのとおり、訂正前の「少なくとも5%のエイコサペンタエン酸(EPA)」とは、蒸留前のEPAの量が基準となることは明らかであるから、訂正事項2は、新規事項を追加するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものといえる。
エ 独立特許要件について
訂正事項1-2は、前記アのとおり、特許法第120の5第2項ただし書第3号の明瞭でない記載の釈明を目的とするものであるから、特許法第120の5第9項の規定により、読み替えて準用される特許法第126条第7項に規定される独立特許要件は課されない。
(6)訂正事項3-1について
ア 訂正の目的要件
訂正前の「少なくとも1つの蒸留ステップ」について、当審からの取消理由通知において、本件発明6においては、蒸留ステップが少なくとも2つが必須であって、「1つ」であることはあり得ないという指摘に応じて、「少なくとも2つの蒸留ステップ」と訂正するものであるから、特許法第120の5第2項ただし書第3号の明瞭でない記載の釈明を目的とするものと解される。
イ 実質上の拡張・変更の有無
訂正事項3-1は、「少なくとも1つの蒸留ステップ」を「少なくと2つの蒸留ステップ」と訂正するものであるところ、訂正前も「第1蒸留ステップ」及び「第2蒸留ステップ」の2つの蒸留ステップが少なくともあることから、実質上、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものといえる。
ウ 新規事項の追加の有無
訂正前の特許請求の範囲の請求項1には、「第1蒸留ステップ」及び「第2蒸留ステップ」が特定されており、合わせて「少なくと2つの蒸留ステップ」となることから、訂正事項3-1は、新規事項を追加するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものといえる。
エ 独立特許要件について
訂正事項3-1は、前記アのとおり、特許法第120の5第2項ただし書第3号の明瞭でない記載の釈明を目的とするものであるから、特許法第120の5第9項の規定により、読み替えて準用される特許法第126条第7項に規定される独立特許要件は課されない。
(7)訂正事項3-2について
ア 訂正の目的要件
訂正事項3-2は、実質的に、訂正前の請求項6を引用する請求項17の引用関係を解消し、訂正後の請求項17を新たに請求項6としたものといえるから、特許法第120条の5第2項ただし書第4号の引用関係を解消することを目的としていると解される。
また、訂正後の請求項6を引用するものであって、訂正事項3-2により訂正された請求項17、19についても同様に訂正前の請求項18との引用関係が解消されている。
イ 実質上の変更・拡張の有無
訂正事項3-2によって、訂正前の請求項6を引用する請求項17は、内容的な訂正をされているといえないから、訂正事項3-2は、実質上、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものといえる。
ウ 新規事項の追加の有無
訂正事項3-2によって、訂正前の請求項6を引用する請求項17は、内容的な訂正をされているといえないから、訂正事項3-2は、新規事項を追加するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものといえる。
エ 独立特許要件について
訂正事項3-2は、前記アのとおり、特許法第120の5第2項ただし書第4号の引用関係の解消を目的とするものであるから、特許法第120の5第9項の規定により、読み替えて準用される特許法第126条第7項に規定される独立特許要件は課されない。
(8)訂正事項4-1について
ア 訂正の目的要件
訂正前の「少なくとも1つの蒸留ステップ」について、当審からの取消理由通知において、本件発明6においては、蒸留ステップが少なくとも2つが必須であって、「1つ」であることはあり得ないという指摘に応じて、「少なくとも2つの蒸留ステップ」と訂正するものであるから、訂正事項4-1は、特許法第120の5第2項ただし書第3号の明瞭でない記載の釈明を目的とするものと解される。
イ 実質上の拡張・変更の有無
訂正事項4-1は、「少なくとも1つの蒸留ステップ」を「少なくと2つの蒸留ステップ」と訂正するものであるところ、訂正前も「第1蒸留ステップ」及び「第2蒸留ステップ」の2つの蒸留ステップが少なくともあることから、実質上、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものといえる。
ウ 新規事項の追加の有無
訂正前の特許請求の範囲の請求項1には、「第1蒸留ステップ」及び「第2蒸留ステップ」が特定されており、合わせて「少なくと2つの蒸留ステップ」となることから、訂正事項4-1は、新規事項を追加するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものといえる。
エ 独立特許要件について
訂正事項4-1は、前記アのとおり、特許法第120の5第2項ただし書第3号の明瞭でない記載の釈明を目的とするものであるから、特許法第120の5第9項の規定により、読み替えて準用される特許法第126条第7項に規定される独立特許要件は課されない。
(9)訂正事項4-2について
ア 訂正の目的要件
訂正事項4-2は、実質的に、訂正前の請求項7を引用する請求項17の引用関係を解消し、訂正後の請求項17を新たに請求項7としたものといえるから、特許法第120条の5第2項ただし書第4号の引用関係を解消することを目的としていると解される。
また、訂正後の請求項7を引用するものであって、訂正事項4-2により訂正された請求項8~16、18、19についても同様に訂正前の請求項17との引用関係が解消されている。
イ 実質上の変更・拡張の有無
訂正事項4-2によって、訂正前の請求項7を引用する請求項17は、内容的な訂正をされているとはいえないから、訂正事項4-2は、実質上、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものといえる。
ウ 新規事項の追加の有無
訂正事項4-2によって、訂正前の請求項6を引用する請求項17は、内容的な訂正をされているとはいえないから、訂正事項4-2は、新規事項を追加するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものといえる。
エ 独立特許要件について
訂正事項3-2は、前記アのとおり、特許法第120の5第2項ただし書第4号の引用関係の解消を目的とするものであるから、特許法第120の5第9項の規定により、読み替えて準用される特許法第126条第7項に規定される独立特許要件は課されない。
(10)訂正事項5について
ア 訂正の目的要件
訂正事項5は、訂正前の請求項17を削除するというものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 実質上の変更・拡張の有無
訂正事項5は、請求項を削除するものであるから、実質上、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものといえる。
ウ 新規事項の追加の有無
訂正事項5は、請求項を削除するものであるから、新規事項を追加するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものといえる。
エ 独立特許要件について
訂正事項5は、訂正前の請求項17を削除するものであるから、独立特許要件の検討対象がないから、特許法第120の5第9項の規定により、読み替えて準用される特許法第126条第7項に規定される独立特許要件に適合しないということができない。
(11)訂正事項6及び7について
ア 訂正の目的要件
訂正事項6及び7は、訂正事項5により削除された請求項17を引用する請求項から除外するための訂正であるから、特許法第120の5第2項ただし書第3号の明瞭でない記載の釈明を目的とするものと解される。
イ 実質上の拡張・変更の有無
訂正事項6及び7は、削除された請求項17を引用する請求項から除外するための訂正であるから、実質上、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものといえる。
ウ 新規事項の追加の有無
訂正事項6及び7は、削除された請求項17を引用する請求項から除外するための訂正であるから、新規事項を追加するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものといえる。
エ 独立特許要件について
訂正事項6及び7は、前記アのとおり、特許法第120の5第2項ただし書第3号の明瞭でない記載の釈明を目的とするものであるから、特許法第120の5第9項の規定により、読み替えて準用される特許法第126条第7項に規定される独立特許要件は課されない。
4 訂正要件についての判断のむすび
以上のとおりであるから、本件特許の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~19〕について訂正することを認める。
第3 本件発明
前記第2のとおり、本件訂正は認められるから、本件発明は次のとおりのものである。また、各請求項に記載された「油」は、「油由来の成分」を意味すると解して以下審理する。
「【請求項1】
ポリ不飽和脂肪酸のエステルを含む油の分離および濃縮方法であって、前記方法が、前記油を少なくとも1つの蒸留ステップにかける工程を含み、ここで、第1蒸留ステップが前記油を少なくとも1つの装置に供給する工程と、低沸点化合物を留出物中に除去するための条件に前記油をさらす工程とを含み、
蒸留前のエイコサペンタエン酸(EPA)の少なくとも5%が、前記第1蒸留ステップの留出物中に除去され、
第2蒸留ステップが、エイコサペンタエン酸(EPA)である1つの長鎖ポリ不飽和脂肪酸(LC-PUFA)の少なくとも一部をドコサヘキサエン酸(DHA)である第2LC-PUFAの少なくとも一部から分離するための条件に前記油をさらす工程を含み、
前記少なくとも1つの装置が薄膜エバポレーターに取り付けられた分留塔を含み、
前記油が1重量%以下の異性体値を有する方法。
【請求項2】
第3蒸留ステップが、1つの長鎖ポリ不飽和脂肪酸(LC-PUFA)の少なくとも追加部分を第2LC-PUFAから分離するための条件に前記油をさらす工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
蒸留前のEPAの少なくとも10%が、前記第1蒸留ステップの留出物中に除去される請求項1~2のいずれか一項に記載の方法。
【請求項4】
第2および/または第3蒸留ステップにかけられる前記油は残留物エンドで集められ、残留物エンドで集められる前記油は、少なくとも10%重量のEPAを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
第2および/または第3蒸留ステップにかけられる前記油は留出物エンドで集められ、留出物エンドで集められる前記油は、少なくとも10%のDHAを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
ポリ不飽和脂肪酸のエステルを含む油の分離および濃縮方法であって、前記方法が、前記油を少なくとも2つの蒸留ステップにかける工程を含み、ここで、第1蒸留ステップが前記油を少なくとも1つの装置に供給する工程と、低沸点化合物を留出物中に除去するための条件に前記油をさらす工程とを含み、
第2蒸留ステップが、エイコサペンタエン酸(EPA)である1つの長鎖ポリ不飽和脂肪酸(LC-PUFA)の少なくとも一部をドコサヘキサエン酸(DHA)である第2LC-PUFAの少なくとも一部から分離するための条件に前記油をさらす工程を含み、
前記少なくとも1つの装置が薄膜エバポレーターに取り付けられた分留塔を含み、
分離および濃縮の後の前記油が、エステル画分中に少なくとも90%の所望のPUFAを含み、
前記油が1重量%以下の異性体値を有する方法。
【請求項7】
ポリ不飽和脂肪酸のエステルを含む微生物油の分離および濃縮方法であって、前記方法が、前記微生物油を少なくとも2つの蒸留ステップにかける工程を含み、ここで、第1蒸留ステップが前記微生物油を少なくとも1つの装置に供給する工程と、低沸点化合物を留出物中に除去するための条件に前記微生物油をさらす工程とを含み、
第2蒸留ステップが、エイコサペンタエン酸(EPA)である1つの長鎖ポリ不飽和脂肪酸(LC-PUFA)の少なくとも一部をドコサヘキサエン酸(DHA)である第2LC-PUFAの少なくとも一部から分離するための条件に前記微生物油をさらす工程を含み、
前記少なくとも1つの装置が薄膜エバポレーターに取り付けられた分留塔を含み、
前記油が1重量%以下の異性体値を有する方法。
【請求項8】
前記微生物油が微生物によって産生され、前記微生物が、微細藻類、バクテリア、真菌類および原生生物を含む群から選択される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記微生物が微細藻類である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記微細藻類が属クリプテコジニウム(Cryptochodinium)のものである、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記微細藻類が種クリプテコジニウム・コーニー(Cryptochodinium cohnii)のものである、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記微細藻類が属トラウストキトリウム(Thraustochytrium)のものである、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
前記微細藻類が種シゾキトリウム種(Schizochytrium sp.)のものである、請求項9に記載の方法。
【請求項14】
前記微生物が真菌類である、請求項8に記載の方法。
【請求項15】
前記微生物が属モルティエラ(Mortierella)のものである、請求項14記載の方法。
【請求項16】
前記微生物が種モルティエラ・アルピナ(Mortierella alpina)のものである、請求項14記載の方法。
【請求項17】
(削除)
【請求項18】
前記油が遺伝子組み換え生物によって産生される、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記油をエステル交換して前記油中のエステル画分の少なくとも一部をトリグリセリド画分に転化する工程をさらに含む、請求項1~16、18のいずれか一項に記載の方法。」
第4 申立人の主張及び証拠方法
1 申立人の提示した証拠方法は次のとおりである。なお、甲第1号証を甲1などという。
(1)特許異議の申立てと同時に提出された証拠方法
甲1:特開平11-246888号公報
甲2:財団法人日本水産油脂協会、魚介類の脂肪酸組成表(1989)、252~253及び260~261頁
甲3:山村隆治外1名、高度不飽和脂肪酸の高度精製技術、日本油化学会誌、Vol.47、No.5(1998)、449~456頁
甲4:国際公開第2015/083806号
甲5:特開2015-2743号公報
甲6:特開平5-331105号公報
甲7:特開平7-267898号公報
(2)令和5年1月17日提出の意見書と共に提出された証拠方法
甲8:国際公開第2016/043251号の再公表公報
甲9:国際公開第2014/054435号の再公表公報
甲10:特開平10-95744号公報
甲11:特開平9-263787号公報
2 申立人は、前記1の証拠方法を提示し、次のように主張する。
(1)本件発明1~4、6~16、19は、甲第1号証に記載された発明及び甲2~11に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
(2)本件発明1~4、6~16、19に係る記載は不明確であるから、特許法第36条第6項第2号に規定される要件を満たさないものである。
第5 当審の判断
1 前記第2、3(4)において検討したように、本件発明1は、訂正前の請求項1を引用する請求項17に係る発明であり、本件発明1を引用する本件発明2~5、18、19は、訂正前の請求項1を引用する請求項17に係る発明を引用する発明である。
2 前記第2、3(7)において検討したように、本件発明6は、訂正前の請求項6を引用する請求項17に係る発明であり、本件発明6を引用する本件発明18、19は、訂正前の請求項6を引用する請求項17を引用する発明である。
3 前記第2、3(9)において検討したように、本件発明7は、訂正前の請求項7を引用する請求項17に係る発明であり、本件発明7を引用する本件発明8~16、18、19は、訂正前の請求項7を引用する請求項17を引用する発明である。
4 以上から、本件発明1~16、18、19は、実質的に訂正前の請求項17に係る発明において、請求項の引用関係を解消するとともに、明瞭でない記載の釈明を行ったものであって、申立の対象でなかった請求項17に係る発明については、特許法第120条の2第2項の規定によって、当審は審理することができない。
5 申立人の主張について
申立人は、令和5年1月17日に提出された意見書において、るる主張するが、当審に権限のない行為を求めるものであり、そもそも採用できない。
第6 むすび
特許異議の申立ての対象であった訂正前の請求項1~4、6~16、19に係る発明は、特許異議の申立てがされていない請求項に係る発明となったため、本件特許異議の申立ては、不適法なものである。したがって、特許法第120条の8第1項により準用する同法第135条の規定により、却下すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
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2022-700305