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特許異議申立

2018-700339

精製魚油の製造方法

審判番号
2018-700339
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2013-248898
登録番号
特許第6219147号(P6219147)
請求日
2018年04月23日
審決日
2019年01月16日
公報発行日
2019年04月26日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】花王株式会社
  • 【権利者代理人】特許業務法人アルガ特許事務所
  • 【異議申立人】谷口 真魚
審判長/審判官
  • 審判長 冨士 良宏
  • 審判官 日比野 隆治
  • 審判官 天野 宏樹
分類
P1651.113-YAA(C11B) / P1651.121-YAA(C11B) / P1651.536-YAA(C11B) / P1651.537-YAA(C11B)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第120条の5第3項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第4項第1号、特許法第36条第6項第2号
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特許第6219147号発明「精製魚油の製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

【結 論】 特許第6219147号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~6〕、7について訂正することを認める。 特許第6219147号の請求項1~7に係る特許を維持する。

理由

【理 由】 第1 手続の経緯 特許第6219147号の請求項1~7に係る特許についての出願は、平成25年12月2日に出願され、平成29年10月6日にその特許権の設定登録がされ、同年10月25日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許について、平成30年4月23日に特許異議申立人である谷口真魚により特許異議の申立てがされ、当審は、同年7月25日付けで取消理由を通知した。特許権者である花王株式会社は、その指定期間内である同年9月25日に意見書の提出及び訂正の請求を行い、その訂正の請求に対して、特許異議申立人は、同年11月7日に意見書を提出した。 第2 訂正の適否についての判断 平成30年9月25日になされた訂正の請求は、特許法第120条の5第3項及び第4項の規定に従い、一群の請求項を構成する請求項1~6及び請求項7を訂正の単位としてなされたものであり、当該訂正(以下、「本件訂正」という。)は、以下のとおり、適法になされたものと認められる。 1 訂正の内容(訂正事項) (1) 訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に「魚油」と記載されているのを、「イワシ、ニシン、サンマ、サバ及びマグロから選択される魚から採取された魚油」と訂正する。 (2) 訂正事項2 特許請求の範囲の請求項1に「3質量%以上」と記載されているのを、「3~10質量%」と訂正する。 (3) 訂正事項3 特許請求の範囲の請求項1に「水蒸気」と記載されているのを、「2~60分水蒸気」と訂正する。 (4) 訂正事項4 特許請求の範囲の請求項7に「150℃~230℃の魚油に」の前に、「イワシ、ニシン、サンマ、サバ及びマグロから選択される魚から採取された魚油中の3-モノクロロプロパンジオール脂肪酸エステルの生成抑制方法であって、」との記載を付加する。 (5) 訂正事項5 特許請求の範囲の請求項7に「3質量%以上」と記載されているのを、「3~10質量%」と訂正する。 (6) 訂正事項6 特許請求の範囲の請求項7に「水蒸気」と記載されているのを、「2~60分水蒸気」と訂正する。 2 訂正の目的の適否、新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否 (1) 訂正事項1について 訂正事項1に係る訂正は、明細書の【0010】の記載に基づいて、魚油の魚の種類を限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 (2) 訂正事項2、5について 訂正事項2、5に係る訂正は、明細書の【0018】の記載に基づいて、活性白土の使用量を限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 (3) 訂正事項3、6について 訂正事項3、6に係る訂正は、明細書の【0023】の記載に基づいて、水蒸気を接触させる時間を限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 (4) 訂正事項4について 訂正事項4に係る訂正は、明細書の【0010】の記載に基づいて、実質的に、魚油の魚の種類を限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 3 小括 上記のとおり、訂正事項1~6に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。 したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~6〕、7について訂正することを認める。 第3 本件訂正後の本件訂正発明 本件訂正後の請求項1~7に係る発明(以下、「本件訂正発明1」~「本件訂正発明7」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1~7に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。 「【請求項1】 イワシ、ニシン、サンマ、サバ及びマグロから選択される魚から採取された魚油に、魚油中の遊離脂肪酸の中和当量に対して1.25倍以上のアルカリを接触させる処理を行った後に、当該魚油に対して3~10質量%の活性白土を接触させる処理を行い、次いで、150℃~230℃の魚油に2~60分水蒸気を接触させる脱臭処理を行う工程を含む、精製魚油の製造方法。 【請求項2】 魚油とアルカリの接触温度が20~150℃であり、接触時間が0.1~180分である請求項1記載の精製魚油の製造方法。 【請求項3】 魚油と活性白土の接触温度が20~150℃であり、接触時間が3~180分である請求項1又は2記載の精製魚油の製造方法。 【請求項4】 アルカリを接触させる処理に供する魚油が、搾油後脱ガム処理した魚油である請求項1~3のいずれか1項記載の精製魚油の製造方法。 【請求項5】 アルカリを接触させる処理の前に、活性白土を接触させる処理を行う、請求項1~4のいずれか1項に記載の精製魚油の製造方法。 【請求項6】 得られる精製魚油中の3-モノクロロプロパンジオール脂肪酸エステルの含有量が3ppm以下である請求項1~5のいずれか1項記載の精製魚油の製造方法。 【請求項7】 イワシ、ニシン、サンマ、サバ及びマグロから選択される魚から採取された魚油中の3-モノクロロプロパンジオール脂肪酸エステルの生成抑制方法であって、150℃~230℃の魚油に2~60分水蒸気を接触させる脱臭処理を行う前に、魚油に、魚油中の遊離脂肪酸の中和当量に対して1.25倍以上のアルカリを接触させる処理を行い、次いで、当該魚油に対して3~10質量%の活性白土を接触させる処理を行う、魚油中の3-モノクロロプロパンジオール脂肪酸エステルの生成抑制方法。」 第4 取消理由の概要 平成30年7月25日付けで通知した取消理由の概要は、次のとおりである。 1 新規性・進歩性に関する取消理由 本件訂正前の請求項1、3、4、6、7に係る発明は、甲1又は甲2に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、また、本件訂正前の請求項1~7に係る発明は、甲1~甲4に記載された発明、及び甲1~4に記載の事項、さらに必要に応じて他の各甲号証に記載の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件訂正前の請求項1~7に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである(各証拠については後記第5を参照)。 2 サポート要件・実施可能要件に関する取消理由 本件訂正前の請求項1~7に係る特許は、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第1号の規定に適合していない特許出願に対してされたものであると共に、発明の詳細な説明の記載が、特許法第36条第4項第1号の規定に適合していない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。 そして、具体的な指摘事項は、おおよそ次のとおりである。 (1) サポート要件について 本件の発明が解決しようとする課題は、明細書の【0005】の記載などからみて「3-MCPDEが少ない精製魚油を製造する方法、及び魚油中の3-MCPDEの生成抑制方法を提供することにある」といえ、また、本件訂正前の請求項1~7に係る発明は、(i)魚油の種類、及び、(ii)活性白土量の上限値を特定するものではなく、例えば、同【0010】の「本発明の方法に供する魚油とは、水産動物油脂であり、例えば、イワシ、ニシン、サンマ、サバ、マグロ、イカ、たら肝臓等の原料から採取することができる。」との記載からみて、当該発明における魚油とは、鯨、海獣、イカである場合などを広く含むものとも解されるし、活性白土を過剰に添加する場合をも包含するものといえるところ、このような場合についてまで、本件明細書の発明の詳細な説明の記載及び技術常識を考慮したとしても、上記課題を解決することができるとは言い難い。 したがって、当該発明は、総じて、上記課題を解決することができるとはいえず、本件明細書の発明の詳細な説明の記載及び技術常識に基づいて当業者が上記課題を解決することができると認識できる範囲を超えるものであるから、発明の詳細な説明に記載したものとはいえない。 (2) 実施可能要件について 上記のとおり、本件訂正前の請求項1~7に係る発明は、(i)魚油の種類、及び、(ii)活性白土量の上限値を特定するものではなく、当業者は、本件明細書の発明の詳細な説明及び技術常識を参酌しても、広範な魚油の種類に応じて、精製条件に関する過度の試行錯誤を要するし、活性白土を過剰に添加した場合には、精製魚油自体製造が困難となることから、本件明細書の発明の詳細な説明は、当業者が当該発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものとはいえない。 第5 新規性・進歩性に関する取消理由についての当審の判断 1 証拠一覧 新規性・進歩性に関する取消理由において参照した証拠は、次のとおりである。 なお、書証及びその記載事項について旧字体が使用されている箇所については、当審で適宜新字体として記載した。また、甲第1号証を「甲1」などと略記した。 ・甲1:「油脂・脂質の基礎と応用」編集委員会編、「油脂・脂質の基礎と応用-栄養・健康から工業まで-」(改訂第2版)、社団法人 日本油化学会、平成21年3月31日、第215~224頁 ・甲2:Aidos, I.「Production of High-Quality Fish Oil from Herring Byproducts」(2002)Ph.D.Thesis, Wageningen University, The Netherlands.p.163~181 ・甲3:兼松弘 他著「食用油脂の精製,加工工程における微量成分の挙動について(第1報)精製工程によるPCB,有機塩素系農薬の除去」、油化学 第25巻 第1号(1976)、第38~41頁 ・甲4:国際公開第2010/126136号 ・甲5:特開2006-45274号公報 ・甲6:国際公開第2011/138957号 ・甲7:国際公開第2013/031333号 ・甲8:東秀雄著、「魚粉及魚油 水産技術叢書第3冊」、朝倉書店、昭和24年9月20日、第234~235頁 ・甲9:大谷武夫著「魚油」、日産水産研究所、昭和12年6月10日、第91~92頁 ・甲10:食品製造、1950年11月号、第32~33頁 ・甲11:西川良一著「食用油脂の製造及加工」、株式会社雄山閣、昭和23年7月25日、第216~230頁 ・甲12:B. E. Bailey編、「BULLETIN NO.89 Marine Oils With Particular Reference to Those of Canada」(1952) p.215~241 ・甲13:特開昭62-172097号公報 ・甲14:特公昭27-5286号公報 ・甲15:島田哲夫著「総説 食用油脂の精製技術の進歩」、日本食品工業学会誌 第15巻 第2号、1968年2月、第88~94頁 ・甲16:Bertrand Matthaus et al.,「Final Results from the German FEI Research Project Concerning 3-MCPD Esters and Related Compounds - Mitigation Strategies」Euro Fed Lipid Congress 2011, Rotterdam発表資料 (2011年9月19日の9th Euro Fed Lipid Congressで発表された資料、参考URL:http://aocs.files.cms-plus.com/ResourcesPDF/Vortrag-Rotterdam-1.pdf 日程及び演題についての参考URL:http://www.eurofedlipid.org/meetings/archive/rotterdam/programme_5874.htm) ・甲17:ILSI Europe Report Series「MCPD and Glycidyl Esters in Food Products」ILSI Europe(2012) ・甲18:国際公開第2012/107230号 ・甲19:中国特許出願公開第103382413号 ・甲20:国際公開第2010/063450号 ・甲21:Musfirah Zulkurnain et al., 「The effects of physical refining on the formation of 3-monochloropropane-1,2-diol esters in relation to palm oil minor components」Food Chemistry, 135, (2012) p.799~805 ・甲22:DGF Standard Methods Section C-Fats C-III 18(09) ・甲23:DGF Standard Methods Section C-Fats C-VI 18(10) ・甲24:Hans-Jochen Fiebig「Determination of ester-bound 3-chloro-1,2-propanediol and glycidol in fats and oils-a collaborative study」European Journal of Lipid Science and Technology, Vol. 113,(2011)abstract p393~399 ・甲25:特開2012-136655号公報 ・甲26:加藤保春著「入門講座 油脂製造技術」オレオサイエンス 第1巻 第7号(2001)第779~784頁 2 各証拠に記載された事項 甲2、甲3(Fig.-1)、甲16については、原文及び異議申立人による対応箇所の訳文を記載したが、それ以外の外国文献については、原文の対応箇所の訳文のみを記載した。 (1) 甲1に記載の事項 甲1には、以下の記載がある。 (1ア)「11.2 植物油脂の精製 採油工程で得られた粗油は不純物を含み,精製の後に製品となる。主な精製工程は,脱ガム工程,脱酸工程,脱色工程,脱ろう工程,脱臭工程である。 ・・・ a.アルカリ法による精製 脱酸工程は遊離脂肪酸を除去することが目的である。遊離脂肪酸は油溶性で水には溶けないが,強アルカリで石けんにすることで水溶性に変えることができる。・・・ 代表的な,脱酸方法はガムコンディショニング後に,約10%の濃度のアルカリ水溶液を添加,接触させた後,遠心分離機でアルカリフーツとして石けんを除去する方法である。アルカリフーツを除去した後は,温水でよく洗い,油中の石けんを極力除去して,乾燥する。 アルカリ添加量は,遊離脂肪酸の量によって決定される。酸価を測定して,遊離脂肪酸量を算出し,遊離脂肪酸を中和するのに必要なアルカリ量を求め,過剰量を考慮して決定する。アルカリが大過剰だと油脂がけん化分解し,余分な石けんができ,アルカリフーツの分離が悪くなり,収量の低下を招く。過剰量は,中和等量に対して最大40%程度までである。」(第215頁第1~3行・・・第216頁右欄第25行~第217頁左欄第6行) (1イ)「11.3 動物油脂の採油と精製 動物油脂を分類すると,(1)バター脂,ギーバター等の乳脂,(2)魚油,鯨油,肝油等の海産動物油脂,(3)豚脂,牛脂,羊脂等の陸産動物油脂の3つに分類される。これら動物油脂のうち,現在,食用あるいは工業用として利用されている代表的な油脂としてラード,牛脂,魚油がある。これらの動物油脂は,植物油脂と同様,採油,精製(脱臭等)の工程を経て利用されるが,原料資源の違いにより,植物油脂とは採油方法が異なる。ラードや牛脂の採油法は,脂肉,皮,内臓,骨などを加熱処理して油脂を溶出させるレンダリングと呼ばれる方法で採油され,魚油は,魚体を蒸煮圧搾するクッカープレス法で採油される。」(第220頁第1~9行) (1ウ)「11.3.2 精製 搾油された原油には,リン脂質,遊離脂肪酸,色素および微量金属等が含有されており,これが,異臭,風味の劣化,発煙,保存性の低下を引き起こす。精製は,これらの残留物を除去する目的で脱ガム,脱酸,脱色,脱臭の工程から成っている。 a.脱ガム工程 牛脂,ラード,魚油中にタンパク質分解物や粘性物を多く含有しているとアルカリ精製を行う際,乳濁化して精製困難となり歩留まりが低下してしまう。従って,あらかじめこれらのガム質を除去しておく必要があり,これを脱ガム(Degumming)と呼ぶ。」(第222頁右欄第9行~第223頁左欄第1行) (1エ)「b.脱酸工程 アルカリ精製は,油中の脂肪酸を除去するため,炭酸ナトリウムや水酸化ナトリウムの水溶液を加えて攪拌し,脂肪酸石けんの形にして分離する操作であり,同時に脱ガム工程で充分除去できなかった不純物や微量金属,色素も除去できる。」(第223頁左欄第11~16行) (1オ)「c.脱色工程 脱色は,油脂に脱色剤として活性白土を1~3%添加し,減圧下で105~110℃,約15~20分加熱し,50~80℃に冷却後,フィルタープレスで濾過して脱色剤を分離する。色素物質であるキサントフィルやクロロフィルは,白土に吸着され,脱色され,さらに色素だけでなく残留石けん分,ガム質,微量金属も除かれる。」(第223頁右欄第2~8行) (1カ)「d.脱臭工程 脱臭は,真空水蒸気蒸留の一種であり,トリアシルグリセロールと有臭成分の蒸気圧の差を利用して高温高真空下で油中の揮発性の高い有臭成分を除去し,風味良好,安定性の高い油にする工程である。有臭成分としては,低級脂肪酸,アルデヒド,ケトン,アミン類があるが,その他に遊離脂肪酸,ロウ,ステリン,トコフェロール,モノアシルグリセロール,一部の酸化生成物,カロテンなどもこの工程で除去される。脱臭効果は,加熱温度,真空度,脱臭時間,水蒸気の吹き込み量に影響される。 脱臭装置は,バッチ式と連続式がある。バッチ式は,1.0×103Pa以下の真空下で180℃~220℃に加熱し,水蒸気を吹き込みながら5~8時間で脱臭を行う。連続式に比べると効率が悪いが,比較的低温で脱臭したい場合や品種の切り替え,条件の設定が容易である。」(第223頁右欄第23行~第224頁左欄第10行) (2) 甲2に記載の事項 甲2には、以下の記載がある。なお、訳文は、当審の注釈がある箇所以外は、異議申立人が提出した訳文による。 (2ア)「Preliminary comparison between herring oil and commercially available oil1 Our studies show that valuable oil can be extracted from the byproducts from herring production. To evaluate the commercial attractiveness of this type of byproducts valorization, a study comparing the initial composition and stability of the oil extracted from herring byproducts relative to fish oil commercially available(menhaden oil)was performed.・・・ These two crude oils have also been refined.・・・The fish oil refining process comprised phospholipids removal during the degumming stage and FFA removal during the neutralization stage. The elimination of other material, that may have an effect on the stability of the refined oil, was achieved during the soda silicate boil stage. Residual soaps and pigments were removed during the bleaching stage and finally all the off-flavors and odors were excluded during the deodorization stage. All the steps were carried out under a nitrogen atmosphere. More details concerning the refining stage are given in Appendix 2.」(第173頁第9~末行) (当審注:当審で訳文を補った。) 「ニシン油と市販油の予備的比較1 我々の研究は、貴重な油が、ニシン製造からの副産物から抽出できることを示す。この種の副産物の価値の魅力を評価するために、ニシンの副産物から抽出された油の初期の組成と油の安定性を、商業的に利用されている魚油(メンヘーデン油)と比較する研究を行った。・・・ これら二つの原油を精製した。・・・魚油の精製工程は、脱ガム工程の間のリン脂質の除去、中和工程の間の遊離脂肪酸の除去からなる。精製油の安定性に影響するであろう、他の物質の除去は、ケイ酸ナトリウムで加熱する工程の間に達成される。残留石けんと顔料は、脱色工程の間に除去され、最終的に全ての臭気成分が、脱臭工程の間に除去される。全ての工程は窒素雰囲気下で実行される。精製段階に関する詳細は、付録2に記載されている。」 (2イ)「Appendix 2- Description of the refining process performed in the oils. 1. Degumming Phosphoric acid(0.25% of 50% solution)is added slowly to the stirred oil at 85℃. After 5min fast stirring the oil is settled and water washed. 2. Neutralization The oil is heated to 90℃ and neutralized with 4N NaOH(50% excess on FFA) with slow stirring. After settling and washing the still oil with water the soapstock is run off. After a further water wash and 0.1 NaOH wash on the stirred oil, the remainder of the soap is washed out with hot water. 3. Drying The oil is heated to 95℃. 6N sodium carbonate(4% vol/wt on oil)and 30% sodium silicate solution(4% vol/wt on oil)are added to the oil with fast stirring. The temperature is then raised to 100℃ by sparging with live steam and sparging continued for 20-30 min. The oil is cooled to 95℃ and settled for 30 minutes. The still oil is washed with water and allowed to settle. The aqueous layer is run off. The stirred oil is then washed until neutral and dried under vacuum. 4. Bleaching The oil is bleached under vacuum for 30 min at 90℃ with 4% activated bleaching earth Tonsil Standard FF. The oil is cooled to 50℃ and filtered and collected under N2 and transferred to a deodorizer. 5. Deodorization The oil is deodorized for 5 hours at 180-185℃ and 3-5 mbar. During heating and cooling 50 mg/kg citric acid is added to the oil as 50% solution. Steam sparging is discontinued at ~110℃ and replaced with N2 sparging while cooling the oil to < 40℃ under high vacuum. The oil leaves the deodorizer via a polishing filter and is collected in polypropylene containers.」 (第181頁) 「付録2-油脂で行われる精製プロセスの説明。 1.脱ガム リン酸(50%溶液の0.25%)を撹拌した油に85℃でゆっくりと添加する。5分間の高速攪拌の後、油を沈降させ、水で洗浄する。 2.中和 油を90℃に加熱し、ゆっくりと撹拌しながら4N NaOH(遊離酸に対して50%過剰)で中和する。沈降および静置油の水洗浄後、石けんを流出させる。攪拌された油の更なる水洗および0.1NaOH洗浄の後、石けんの残りは温水で洗い流される。 3.乾燥 油を95℃に加熱する。6N炭酸ナトリウム(油に対して4%v/w)および30%ケイ酸ナトリウム溶液(油に対して4%v/w)を素早く攪拌しながら油に加える。その後、生蒸気を吹込むことにより温度を100℃に上げ、吹込みを20~30分間続けた。油を95℃に冷却し、30分間静置する。静止油を水で洗浄し、沈降させる。水層を流出させる。次いで、撹拌した油を中性になるまで洗浄し、真空下で乾燥する。 4.脱色 油は、4%活性白土Tonsil Standard FFを用いて90℃で30分間真空下で脱色する。油を50℃に冷却し、濾過し、N2下で回収し、脱臭器に移す。 5.脱臭 油を180~185℃、3~5mbarで5時間脱臭する。加熱および冷却の間、50mg/kgのクエン酸を50%溶液として油に添加する。蒸気の吹込みは~110℃で中止され、高真空下で油を<40℃に冷却しながらN2吹込みで置換される。油は、精製フィルターを介して脱臭器から出て、ポリプロピレン容器に集められる。」 (3) 甲3に記載の事項 甲3には、以下の記載がある。なお、(3ウ)の訳文は、異議申立人が提出した訳文による。 (3ア)「1 緒言 ・・・ そこで,さらに明確な挙動を調べる目的で有機塩素系農薬およびPCBを原油に添加し,一定条件で精製を行った場合のこれらの挙動と,併せて前報1)において有機塩素系農薬の顕著な減少をもたらした脱臭工程についてさらに詳細に工程条件差による影響を検討しいくらかの知見を得たので報告する。」(第38頁左欄第1行~第39頁左欄第11行) (3イ)「2 試料および実験方法 2・1 試料 大豆(米国産),パーム(インドネシア産),牛(米国産)および魚(日本沿岸産)の各原油にβ,γ-BHC,pp’-DDE,pp’-DDTおよびディルドリンをおのおの約1ppm,PCBとしてKC-200~600の5種等量混合物を約5ppmになるように添加,溶解し,Fig.-1に示した精製工程条件および順序によって精製を行い各工程直後の油脂を試料とした。」(第39頁左欄第12行~右欄第1行) (3ウ)「Fig.-1 」(第39頁) 「 」 (3エ)「2・2精製方法 脱酸:上記添加原油6kgを10lビーカーに入れ60℃に加熱し,羽根型かくはん機を用いて約250rpmの速度でかくはんしながら20°BeのNaOH液を所定量(Fig.-1参照)だけ滴下し,滴下終了後5minかくはんを続けた。つぎに63℃まで昇温し速度を100rpmに落としてさらに10minかくはんを続けたのち,その温度で30min静置してフーツを沈降させた。デカンテーションにより上澄み液を別の10lビーカーに移し,油の20%量の温水を加え70℃,5minかくはん,洗浄した油脂を脱酸油とした。なおNaOH液所定量は原油の酸価より求めた中和に要するNaOH理論量に対する%として示した。 脱色:脱酸油をビーカーに入れ110℃に加熱して吸着剤を加え10minかくはんした後,ろ紙でろ過してそのろ液を脱色油とした。なお吸着剤として活性白土(水沢化学製,N3)と活性炭(武田薬品製,白鷺)を使用した(Fig.-1参照)。 脱臭:脱色油500gを1l脱臭フラスコに入れ2mmHg減圧下に水蒸気を吹き込んでかくはんしながら加熱し,所定温度に到達後1hr脱臭を行った。なお所定温度における水蒸気吹き込み量は油に対し3%とした。」(第39頁右欄第4~31行) (3オ)「水添:試料のうち魚油のみについては,脱色と脱臭の工程間において水添処理を行った。脱色油1kgを2l四つ口フラスコに入れH2を吹き込みながら170℃まで加熱し,Ni-触媒(日揮化学製,N122ARS;Ni分20%)を0.5%加え,300rpmでかくはんしながら170℃±5℃で油脂の融点が34℃(I.V.は72.5)に達するまで反応させた。つぎに110℃まで冷却しろ紙でろ過して触媒を除去し,活性白土0.1%を加え前述のように処理して再脱色した。」(第39頁右欄第32~41行) (4) 甲4に記載の事項 甲4には、以下の記載がある。 (4ア)「[0007]・・・ 発明が解決しようとする課題 [0008]本発明は、グリセリド油脂中のクロロプロパノール類である3-クロロプロパンジオールや3-クロロプロパンジオール脂肪酸エステル及びそれらの形成物質であるグリシドール脂肪酸エステルなどの生成を抑制する方法を提供することを目的とする。 課題を解決するための手段 [0009]本発明者らは、グリセリド油脂中のクロロプロパノール類及びその形成物質は、通常の油脂の精製工程である脱色工程、とりわけ脱臭工程を経ると増加すること、フライ調理やオーブン調理などの加熱処理によっても増加するという知見を得た。かかる知見から、上記課題に対し、鋭意研究を重ねた結果、加熱処理以前に、グリセリド油脂を吸着剤処理及び/又はアルカリ処理しておく、あるいは、油脂中のジグリセリド含量を低減させておくことで、グリセリド油脂中のクロロプロパノール類及びその形成物質であるグリシドール脂肪酸エステルなどの生成を抑制することができるという知見を見出し、本発明を完成させるに至った。」 (4イ)「[0013]本発明の方法を適用することができるグリセリド油脂としては、大豆、菜種、サフラワー、コーン、ひまわり、綿実、米、オリーブ、パーム、ヤシ、パーム核、ゴマ、牛、豚、魚などの原料を搾油、抽出して得られる未精製油脂や、未精製油脂をろ過、遠心分離した粗精製油脂、また、脂肪酸とグリセリンとのエステル化反応により得られるグリセリド油脂等が挙げられる。」 (4ウ)「[0017]本発明の方法において、グリセリド油脂が100℃以上、さらには150℃以上に加熱される処理としては、グリセリド油脂を精製する際の、脱色、脱臭といった工程、又はグリセリド油脂を水素添加し硬化油脂を製造するといった加工工程、あるいはグリセリド油脂を化学触媒を用いエステル交換油脂を製造する際の工程、さらには加熱調理に用いた際の、炒める、揚げる、あるいはスプレー油として用いオーブン加熱するといった調理工程などが挙げられる。 [0018]本発明の方法は、100℃以上とりわけ150℃以上に加熱されるグリセリド油脂に対し、加熱される処理以前に、グリセリド油脂を吸着剤処理しておくことにより、クロロプロパノール類及びその形成物質であるグリシドール脂肪酸エステルなどの生成の原因物質と考えられる塩素化合物やジグリセリド等を、グリセリド油脂中から低減させることを特徴とするが、吸着剤としては、活性白土、酸性白土、活性炭、珪藻土、シリカゲル等を例示することができ、これら吸着剤のなかでも、シリカゲル、ヤシ殻活性炭を用いることが好ましい。また、上記吸着剤として、化学賦活処理を行っていない活性炭を使用することが好ましい。 [0019]吸着剤処理の方法としては、グリセリド油脂に吸着剤を0.1~5重量%添加し、一定時間、50~80℃の加温、好ましくは50~110℃の加温、0.5~100Torrの減圧下で、撹拌接触させる方法などが挙げられる。 上記吸着剤処理は、グリセリド油脂の精製工程における脱臭工程前の脱色工程で、脱色処理と同時に吸着剤処理を行うことにより、処理工程を簡略化することができる。 [0020]また、本発明の方法は、100℃以上とりわけ150℃以上に加熱されるグリセリド油脂に対し、加熱前に、グリセリド油脂をアルカリ処理しておくことが好ましく、アルカリ剤としては、アルカリ金属若しくはアルカリ土類金属の水酸化物、及び炭酸塩を用いることができ、具体的には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム等を用いることができる。 [0021]アルカリ処理の方法としては、グリセリド油脂に水酸化ナトリウムを遊離脂肪酸の中和当量の0.8~1.2倍量添加し、攪拌後、遠心分離し、フーツを除去し、さらに水洗し、攪拌後、遠心分離し、水層を除去後、加温減圧下で脱水する方法などが挙げられる。 [0022]本発明の方法である、吸着剤処理及び/又はアルカリ処理は、グリセリド油脂中のクロロプロパノール類及びその形成物質が、高温で生成することから、グリセリド油脂品温が150℃未満、より好ましくは100℃未満、さらに好ましくは60~95℃で行うことが好ましい。」 (4エ)「[0025]グリセリド油脂は通常の精製工程において、脱色工程や、とりわけ脱臭工程中に、油脂は80~270℃の高い温度で加熱されるため、油脂中のクロロプロパノール類及びその形成物質が増加しやすいことが分かっており、本発明の方法は、100℃以上とりわけ150℃以上に加熱される、上記脱色工程及び/又は脱臭工程の前に行っておくことで、油脂中のクロロプロパノール類及びその形成物質であるグリシドール脂肪酸エステルの生成を抑制することができる。」 (4オ)「[0028]なお、上記方法は、ドイツ(Deutsche Gesellschaftfur Fettwissenschaft:DGF)の、3-クロロプロパンジオール脂肪酸エステル及びその形成物質であるグリシドール脂肪酸エステルの測定方法として採用されているものであるが、この方法では、グリセリド油脂中の3-クロロプロパンジオール脂肪酸エステル及びその形成物質であるグリシドール脂肪酸エステルを加水分解し、グリセリド油脂中に存在する3-クロロプロパンジオール脂肪酸エステル及びその形成物質であるグリシドール脂肪酸エステルを全て3-MCPDとして測定している。 ・・・ [0029]本発明の方法により、グリセリド油脂の精製工程でのクロロプロパノール類及びその形成物質の生成が効果的に抑制され、CPO(粗パーム油)を脱ガム、脱色、脱臭処理して得られる、ヨウ素価50~55、上昇融点33~39℃であるRBDPO(精製パーム油)中のクロロプロパノール類及びその形成物質の含量は3.5ppm以下に抑えることができ、さらには3ppm以下に抑えることができる。」 (4カ)「[0033]・・・ 実施例3 [0034]粗パーム油(CPO/酸価=7.8)を脱ガム処理した原料パーム油に水酸化ナトリウムを6.7重量%添加し、3000rpmで3分間攪拌後、遠心分離し、フーツを除去後、さらに水を20重量%添加し、3000rpmで3分間攪拌後、遠心分離し、水層を除去後、110℃、20Torrで10分間脱水処理を行った。アルカリ処理後、白土1重量%添加し、110℃、20Torrで10分間脱色し、さらに250℃、2Torrで90分間脱臭処理を行った。得られた精製パーム油(RBDPO/IV:52.2、上昇融点:36.5℃)のクロロプロパノール類及びその形成物質の含量は2ppmであった。」 (4キ)「請求の範囲 [請求項1]グリセリド油脂が100℃以上に加熱される処理以前に、吸着剤処理及び/又はアルカリ処理することを特徴とするグリセリド油脂中のクロロプロパノール類及びその形成物質の生成を抑制する方法。 [請求項2]当該グリセリド油脂の加熱処理温度が150℃以上である、請求項1記載の方法。 [請求項3]吸着剤処理及び/又はアルカリ処理をグリセリド油脂の品温150℃未満で行う、請求項2記載の方法。 [請求項4]吸着剤処理及び/又はアルカリ処理をグリセリド油脂の品温60~95℃で行う、請求項3記載の方法。」 (5) 甲5に記載の事項 甲5には、以下の記載がある。 (5ア)「【0004】 これまで、通常食用油脂の精製は魚油・動物油・植物油に関わらず、脱ガム・脱酸・脱色・脱臭の順に行われている。脱ガムとは、油脂に溶存するリン脂質などのガム質をリン酸などの酸処理により水和し、沈殿したガム質を遠心分離機で除去する工程である。油脂にガム質が存在すると加熱による着色など品質劣化の原因となる。脱酸とは、油脂に含まれる遊離脂肪酸を苛性ソーダなどのアルカリで中和して、生じたセッケンを遠心分離などで除去する工程である。遊離脂肪酸は油脂の劣化である加水分解によって生じ、酸価(AV)として遊離脂肪酸の残存量が示される。脱色とは、脱ガムや脱酸で除去されなかった色素成分や他の微量成分を、活性白土等で吸着除去する工程である。脱臭とは、油脂を高真空下で200℃以上に加熱して水蒸気を吹き込むことにより臭気の原因となる揮発性成分を蒸留除去する工程である。この工程は、水蒸気蒸留とも呼ばれ、食用油脂の精製の最終工程である。」 (6) 甲6に記載の事項 甲6には、以下の記載がある。 (6ア)「[0002]食用油脂の精製は、その起源に関係なく、通常は、脱ガム工程、脱酸工程、脱色工程、脱臭工程の順に行なわれる。これらの油脂の精製工程により、不純物が少なく、酸価が低く、着色がなく、臭いのない食用油脂が得られる。」 (6イ)「[0011]さらに、特許文献3、4に記載の方法は、油脂に応用する場合は、精製された油脂に再びアルカリ溶液を添加する必要があり、その場合、アルカリによる油脂の着色や分解がおきるため、再び、脱色・脱臭を行わねばならないという問題がある。」 (7) 甲7に記載の事項 甲7には、以下の記載がある。 (7ア)「[0026]油脂の精製工程を例示すると、一般に、(抽出油)原油→脱ガム油→脱酸油→脱色油→脱臭油(精製油)の順に不純物が除かれる。それぞれの間の操作である「脱ガム処理」、「脱酸処理」、「脱色処理」、「脱臭処理」の工程は、それ自体としては一般的な、脱ガム処理、脱酸処理、脱臭処理などが採用される。」 (8) 甲8に記載の事項 甲8には、以下の記載がある。 (8ア)「1.アルカリ精製法 アルカリ精製法は魚油をアルカリで処理し遊離脂肪酸を石鹸となし此処に生成せる石鹸に不純物を吸着或は溶解せしめて除去する方法である。」(第234頁第9~11行) (8イ)「2.蒸気吹込法 油脂の臭気はアルカリ精製後,減圧下に過熱蒸気を吹込むことにより除去することが出来る。」(第234頁末行~第235頁第2行) (8ウ)「3.吸着法 油脂の脱色,精製のため,活性炭,酸性白土等の吸着剤が使用せられる。これらの吸着剤による脱色,精製は多くの場合,アルカリ精製後行うのが常である」(第235頁第10~13行) (9) 甲9に記載の事項 甲9には、以下の記載がある。 (9ア)「(二)アルカリ精製 ・・・ 油は約24℃に温め、アルカリ液を加えつつある間は此温度を保ち、アルカリ液を添加したる後約半時間激しく攪拌したる後温度を43~46℃に高める。」(第91頁下から5行・・・第92頁第1~3行) (9イ)「(三)漂白 油の漂白には普通に酸性白土、Fuller's earthが用いられ、其他活性炭素も僅かに使用されている。 ・・・ 使用する白土の量は白土の種類及び油中の色素量によって異なっているが大体3~8%である。脱色する時の温度も亦白土の種類によって異なっているが、本邦産イワシ油を越後産白土にて脱色する場合には120℃附近に加熱する。」(第92頁第9~15行) (9ウ)「(四)脱臭 ・・・ 魚油の脱臭法には種々の特許があるが、最もよい方法は真空中にて過熱蒸気を魚油中に吹き込む方法である。即ち魚油を高圧蒸気又は過熱蒸気にて175~235℃に加熱する。」(第92頁第16~20行) (10) 甲10に記載の事項 甲10には、以下の事項が記載されている。 (10ア)「五.脱酸 ・・・ 次に四〇度-六〇度に加温しながら、三〇分-一時間撹拌後、一昼夜静置する。」(第32頁) (10イ)「六.脱色 ・・・ 先づ原油を脱色機に入れ、八〇-一〇〇度に加熱し、脱水したのち、乾燥した白土を一-五%位混合する。」(第33頁) (10ウ)「七.脱臭 ・・・ 先づ脱酸し、脱色した原料油を脱臭缶に仕込み一三〇-一五〇度に間接に加熱し、三〇〇-三五〇度の過熱蒸気を吹込み、三-七時間蒸気蒸留を行い、臭気物質を除去したのち、同圧の冷却タンクに移し、冷却の後、濾過し製品とする。」(第33頁) (11) 甲11に記載の事項 甲11には、以下の事項が記載されている。 (11ア)「3.脱酸 ・・・ 脱酸の主要な設備は 原油計量タンク アルカリタンク 中和タンク(攪拌機、アルカリパイプ、加熱コイル附で開放、円筒下部円錐形) 油滓タンク 濾過機 等でまず原油を中和槽に仕込み撹拌しつつ15~22%濃度のアルカリ液を遊離酸を中和するに必要な計算量より1~2%過剰に加へる,魚油等の場合は5~10%過剰に加へることもある。次に40~60°に1~2時間処理し油滓の粒が形成されたら攪拌を止めて保温しつつ静置し油滓は下部より抜き出し精製油は数回水洗したのち濾過する。」(第219頁第16行・・・第221頁第6~17行) (11イ)「4.脱色 ・・・ (1)吸着脱色 脱酸した油脂に酸性白土,活性白土,活性炭素等を加へ色素を吸着させる方法で 白土乾燥機及濾過器 真空脱色槽(密閉円筒型撹拌機、加熱コイル付) 等が主要設備である。先ず原油を脱色槽に入れ80~100°に加熱し脱水したのち乾燥した白土を(或は活性炭素との混合物を)着色度合により1~10%混合して約80°に1時間真空中で攪拌し後濾過する。」(第223頁第14行~第224頁第1行) (11ウ)「6.脱臭 ・・・ 圧力 6mm 油 20,000封度 水蒸気量 300封度/時 温度     脱臭時間時(時)   温度    脱臭時間 400°F   4.9      475°F   0.9 425°E   2.7      500°F   0.5 450°F   1.5 」(第224頁下から3行・・・第228頁第4~8行) (12) 甲12に記載の事項(訳文) 甲12には、以下の事項が記載されている。 (12ア)「(c)脱色 ・・・ この方法による油脂の脱色において、3%~5%の活性白土が油脂に添加され、その後150~260°F(65~130℃)に加熱され、撹拌し続けながら15~60分間温度が維持され、次いで濾過される。」(第233頁下から8行・・・第234頁第22~25行) (13) 甲13に記載の事項 甲13には、以下の記載がある。 (13ア)「次に、同様にN2ガスを還流させたグラスライニング反応釜中に海亀油を仕込み、80~85℃の温度の下に、10%活性炭を混ぜた活性白土5~6%を加え2時間攪拌後、減圧濾過する。次に5%カセイソーダ液にて中和脱酸後、温湯にて洗浄後、脱水、過熱水蒸気脱臭を行い、減圧脱水後、活性炭5%を加えて仕上げ脱色を行い活性炭を減圧濾過する。」(第2頁右上欄第5~13行) (14) 甲14に記載の事項 甲14には、以下の記載がある。 (14ア)「第2例 青大豆から得た暗色の圧搾油100部に対して5%の稀硫酸3部と10%の硫酸亞鉛溶液3部との混合液を加へ50℃に加温しながら20分間攪拌した後活性白土3部を加へ90℃に30分間加熱攪拌して脱色を行つた後濾過する」(第1頁左欄第27~31行) (14イ)「更に食用油を得る為には前記の精製油を更にアルカリその他の方法で脱酸し再び白土脱色を行えば淡黄色で遊離酸のない優良な食用油を得ることが出来る。」(第1頁右欄末行~第2頁左欄第3行) (15) 甲15に記載の事項 甲15には、以下の記載がある。 (15ア)「(4) その他の脱ガム ガム質の少ない油脂に有効な方法として活性白土,活性炭などの吸着剤を使用する法,魚鯨油を2%程度の塩化ナトリウム,塩化カルシウムなどの塩類水溶液で洗浄する法,その他ギ酸アミド,グリセリン,グリコール,第三リン酸ナトリウムなどの薬品を用いる法などがある。」(第89頁左欄第23~29行) (16) 甲16に記載の事項 甲16には、以下の記載がある。 (16ア)「 」 「 」 (16イ)「 」 「 」 (17) 甲17の記載事項(訳文) 甲17には、以下の事項が記載されている。 (17ア)「注目された軽減方法は、原材料からの前駆物質の除去、精製プロセスの変更、および生成物からのエステルの除去であった。240℃で2時間加熱した後、粗パーム、トウモロコシおよびヤシ油は、オリーブ油、パーム核および他のいくつかの油より多量の3-MCPDエステルおよび関連化合物を生成した。・・・このプロジェクトは脱臭がエステルの形成にとって最も重要なステップであることを示した。高温、特に240℃より高い脱臭は、グリシジルエステル形成の大きな増加をもたらした一方で、形成された3-MCPDエステルの量は、比較的脱臭温度の影響を受けなかった。これは、脱臭が高温で3-MCPDエステルの問題よりもグリシジルエステルの問題を引き起こすことを示す。したがって、脱臭の間により低い温度を使用できるように、フィジカル精製ではなくケミカル精製を使用することが推奨される。他の精製方法は、脱臭の間に油が3-MCPDおよびグリシジルエステルを形成する能力を低下させる。」(第10頁第15~28行) (18) 甲18の記載事項(訳文) 甲18には、以下の事項が記載されている。 (18ア)「理論に拘泥されることは望まないが、アルカリ精製段階は3-MCPDエステルおよび/またはグリシジルエステル前駆体を粗精製または部分精製油から除去し得、それ故さらなる処理の間(例えば、脱臭の間)に生成される3-MCPDエステルおよび/またはグリシジルエステルの全体量を減少するであろうと考えられる。したがって、このタイプのアルカリ処理工程は、使用される場合、好ましくは、第1の脱臭工程の前に、より好ましくは第1の脱色工程の前に実施される。」(第8頁第27~32行) (19) 甲19の記載事項(訳文) 甲19には、以下の記載がある。 (19ア)「(57)要約 本発明は-茶種油精製方法におけるクロロプロパノール脂肪酸エステルの含有量を効果的に低減する精製方法、ここで、クロロプロパノール脂肪酸エステルは、通常、3-クロロ-1,2-プロパンジオール(3-MCPD)脂肪酸エステル(3-MCPDエステルと称する)、および2-クロロ-1,3-プロパンジオール(2-MCPD)脂肪酸エステル(2-MCPDエステルと称する)を含み、これらは総称してMCPDエステルと呼ばれる、に関する。該方法は、以下の工程を含む:(A)脱ガム工程;(B)工程(A)で得られた油相の脱酸;(C)工程(B)で得られた油相の水洗、および油相の分離;(D)工程(C)で得られた油相の乾燥;(E)工程(D)で得られた油相に白土を加えてpH7で脱色;(F)水蒸気を通して脱臭。本発明はまた、実施が容易で工業化されている精製方法パラメータを最適化することによってMCPDエステル含有量を減少させる方法に関する。」(要約) (19イ)「脱酸工程(B)は、ケン化のために脱ガム油(A)に強アルカリを添加し、次いで水で洗浄することにより遊離脂肪酸を除去することであり、添加塩基はNaOHまたはKOHであり、理論アルカリ量は7.13×10-4×原料油総量×原料油酸価、アルカリの使用量は理論アルカリ量の1.0,1.1,1.2,1.5倍である。最終的に、理論アルカリ量の1.2倍量のNaOH溶液を使用して脱酸した。」(段落[0023]) (20) 甲20に記載の事項(訳文) 甲20には、以下の記載がある。 (20ア)「油脂の工業生産では、汚濁、変色、あるいは酸化作用物質の除去のために漂白土が使用される。吸着洗浄により、油脂の色や保存安定性を大幅に向上させることができる。精製のために、様々なクラスの漂白土が使用される。第1のグループは、高度に活性な、主としてモンモリロナイトベースの漂白土(HPBE=高性能漂白土)のクラスである。特に、この群は、酸活性化モンモリロナイトを含み、酸活性化は、高温、通常は沸騰熱、で濃酸で粗白土を脱アルミニウムすることによる、複雑なプロセスで行われる。この方法では、非常に大きな比表面積および大きな細孔容積を有する漂白土製品が得られる。この高活性な漂白土は少量の使用でさえ、原料油脂の有意な精製につながる。漂白工程での使用が少ないことは、廃白土に残留油分が結合して収率が低下すること、廃白土が適用される規制に従って処分されなければならないこと、等から望ましい。」(第1頁第16行~第2頁第3行) (20イ)「脱ガム油は、80~100℃、好ましくは90~98℃の範囲、好ましくは約95℃の温度に加熱される。過度の漂白温度は、精製油中の3-MCPD量を増加させることが分かっている。したがって、油の過熱を避ける必要がある。次いで、漂白土を加熱した脱ガム油に添加する。脱ガム中に形成された3-MCPDまたは3-MCPD前駆体の濃度は、あまりにも少量の漂白土では十分に低減できないことが分かっている。したがって、漂白土は、加熱された脱ガム油に、粗油に対して1.5重量%を超える量、好ましくは2.0~3.0重量%の量で添加される。発明者らは、漂白土は、3-MCPDまたはその前駆体の吸着力が低いと仮定している。油中の3-MCPDまたはその前駆体は、ppm範囲の量でのみ含有されることが見出されている。しかしながら、漂白に使用される漂白土量を1.5重量%を超えて増加させると、精製油中の3-MCPDの量は著しく減少する。」(第10頁第17行~第11頁第5行) (21) 甲21に記載の事項(訳文) 甲21には、以下の記載がある。 (21ア)「油脂精製における3-MCPDエステルの形成は、主として脱臭工程中の高温処理に関連する。しかしながら、3-MCPDエステル前駆体は、脱臭の前の、精製の他の段階でも形成され得る。酸を用いる、脱ガムプロセスは、3-MCPDエステル前駆体の形成を活性化し得る(Schurz, 2010)。他方で、酸活性化白土での脱色は、アシルグリセロールなどの有機化合物の3-MCPDエステル前駆体へのプロトン化を引き起こし得る。これはパーム油精製中の白土の酸性度と3-MCPDエステル形成との間に強い相関を与えることとなる(Ramli et al., 2011)。しかしながら、多量の活性白土は、油からの3-MCPDエステル前駆体のいくつかを吸着することができる(Schurz, 2010)。」(第799頁右欄下から5行~第800頁左欄第7行)」 (22) 甲22に記載の事項(訳文) 甲22には、以下の記載がある。 (22ア)「エステル結合3-クロロプロパン1,2-ジオール(3-MCPDエステル)および3-MCPD形成物質 GC-MSによる油脂の測定」(表題) (23) 甲23に記載の事項(訳文) 甲23には、以下の記載がある。 (23ア)「脂肪酸結合3-クロロプロパン1,2-ジオール(3-MCPDエステル)および2,3-エポキシ-プロパン-1-オール(グリシドール) GC-MSによる油脂の測定(示差測定法)」(表題) (24) 甲24に記載の事項(訳文) 甲24には、以下の記載がある。 (24ア)「要約 2009年には、油脂、油脂製品、関連製品および原材料の分析のためのDINおよびDGFの共同委員会(GA FETT)が、ドイツ標準法C-III 18(09)-エステル結合3-クロロプロパン1,2-ジオール(3-MCPDエステル)および3-MCPD形成物質-GC-MSによる脂肪および油中の測定を公表した。この方法は、連邦リスクアセスメント研究所(BfR)によって組織された共同試験で検証された。3-MCPD-エステルの可能性のある前駆体としての結合2,3-エポキシ-1-プロパノール(グリシドール)のさらなる研究に続いて、2009年にドイツ標準法を改変して、エステル結合3-クロロ-1,2-プロパンジオールおよび2,3-エポキシ-1-プロパノールを測定するために改変された。」(要約の第1~7行) (25) 甲25に記載の事項 甲25には、以下の記載がある。 (25ア)「【0004】 WHO/FAOの発表では、3-MCPDの一日許容摂取量(TDI)は2μg/kg(体重)とされ、体重60kgの人では、一日平均油脂摂取量を12.5gとすると油脂中の3-MCPDの許容濃度は9.6ppmとなり、3-MCPD及びその脂肪酸エステルの合計モル数にすると油脂中の許容濃度は8.74×10-5mol/kgとなる。」 (26) 甲26の記載事項 甲26には、以下の記載がある。 (26ア)「以上説明してきたアルカリ精製法には,パーム油,ヤシ油やこめ油のように,粗油の酸価が高いときは,脱酸工程で中性油の乳化が起こったり,乳化した中性油のけん化分解が進行したりして精製歩留りが大幅に低下するという欠点があり,通常,脂肪酸含有量が数%以上になると,アルカリ精製は極めて困難となる。そこで,中性油の歩留まりを上げるために,アルカリと反応させてセッケンとして脂肪酸を回収するのではなく,水蒸気蒸留をして脂肪酸を蒸留分離する方法が開発された。この方法を,蒸留脱酸法あるいはスチームリファイニングプロセス,もしくはフィジカルリファイニングプロセス(PR法)という。」(第784頁左欄第3~14行) 3 甲1ないし甲4に記載の発明 (1) 甲1発明 甲1の上記(1イ)には、代表的な油脂として魚油を含む動物油脂が採油、精製の工程を経て利用されることが記載され、上記(1ウ)には、この精製は、搾油された原油を、脱ガム、脱酸、脱色、脱臭する工程から成ることが記載され、上記(1エ)には、上記脱酸が、油中の脂肪酸を除去するため、炭酸ナトリウムや水酸化ナトリウムの水溶液を加えて攪拌する工程であることが記載され、上記(1オ)には、上記脱色が、油脂に活性白土を1~3%添加し、減圧下で105~110℃、約15分~20分加熱する工程であることが記載され、上記(1カ)には、上記脱臭が、バッチ式で、1.0×103Pa以下の真空下で180℃~220℃に加熱し、水蒸気を吹き込みながら5~8時間で脱臭を行うものであることが記載されている。 そして、上記の工程は、当業者であれば、精製された、動物油脂として代表的な魚油の製造方法と把握できるから、甲1には、 「搾油された魚油を、脱ガムし、魚油中の脂肪酸を除去するため、炭酸ナトリウムや水酸化ナトリウムの水溶液を加えて攪拌する工程である脱酸を行い、油脂に活性白土を1~3%添加し、減圧下で105~110℃、約15分~20分加熱する工程である脱色を行い、バッチ式で、1.0×103Pa以下の真空下で180℃~220℃に加熱し、水蒸気を吹き込みながら5~8時間で脱臭を行う、精製された魚油の製造方法」(以下、「甲1発明」という。)が記載されているといえる。 (2) 甲2発明 甲2の上記(2ア)には、ニシン油などの魚油の精製工程が、リン脂質を除去する脱ガム工程、遊離脂肪酸を除去する中和工程、精製油の安定性に影響するであろう、他の物質を除去する、ケイ酸ナトリウムで加熱する工程、残留石けんと顔料を除去する脱色工程、最終的に全ての臭気成分を除去する脱臭工程からなることが記載され、さらなる詳細が記載されている上記(2イ)には、中和工程について、油を90℃に加熱し、ゆっくりと撹拌しながら4N NaOH(遊離酸に対して50%過剰)で中和すること、脱色工程について、4%活性白土Tonsil Standard FFを用いて90℃で30分間真空下で脱色すること、脱臭工程について、加熱および冷却の間、50mg/kgのクエン酸を50%溶液として油に添加し、110℃(技術常識として、冷却した際の温度であるといえる。)になるまで蒸気の吹き込みが行われ、油を180~185℃、3~5mbarで5時間脱臭することが記載されている。 そして、上記の工程は、当業者であれば、精製された魚油の製造方法と把握できるから、甲2には、 「ニシン油などの魚油に、リン脂質を除去する脱ガム工程、90℃に加熱し、ゆっくりと撹拌しながら4N NaOH(遊離酸に対して50%過剰)で中和し遊離脂肪酸を除去する中和工程、精製油の安定性に影響するであろう、他の物質を除去する、ケイ酸ナトリウムで加熱する工程、4%活性白土Tonsil Standard FFを用いて90℃で30分間真空下で脱色し残留石けんと顔料を除去する脱色工程、加熱および冷却の間、50mg/kgのクエン酸を50%溶液として油に添加し、110℃(技術常識として、冷却した際の温度であるといえる。)になるまで蒸気の吹き込みが行われ、油を180~185℃、3~5mbarで5時間脱臭する脱臭工程を行う、精製された魚油の製造方法」(以下、「甲2発明」という。)が記載されているといえる。 (3) 甲3発明 甲3は、「食用油脂の精製,加工工程における微量成分の挙動について(第1報)精製工程によるPCB,有機塩素系農薬の除去」と題する文献であって、上記(3ア)の記載によれば、甲3の目的自体は、原油を一定条件下で精製を行った場合、添加した有機塩素系農薬およびPCBの挙動を明らかにすることであるが、上記(3イ)に上記原油として、「魚」の原油が記載され、上記(3エ)に上記「精製」における「精製方法」が記載されていることからすると、当業者であれば、甲3の記載から、添加した有機塩素系農薬およびPCBの挙動を明らかにする上で前提となる、魚の原油の精製方法、すなわち、精製魚油の製造方法も把握することができるといえる。 そして、上記の「精製方法」は、上記(3エ)の記載によれば、「脱酸」、「脱色」、「脱臭」、さらに上記(3オ)の記載によれば、試料が魚油の場合については、脱色と脱臭の工程の間に行われる水添処理からなるものであるといえる。 ここで、上記(3エ)の記載によれば、上記脱酸は、添加原油を60℃に加熱し、所定量のNaOH液を添加し、5minかくはんし、63℃まで昇温し10minかくはんし、その温度で30min静置してフーツを沈降させる処理を行うことが分かり、上記(3ウ)の記載によれば、上記の所定量が、原油の酸価より求めた中和に要するNaOH理論量に対する%として、125%であることが分かり、 上記脱色は、110℃に加熱して吸着剤として活性白土を加え10minかくはんした後、ろ紙でろ過した処理であることが分かり、 上記脱臭は、2mmHg減圧下に水蒸気を吹き込んでかくはんしながら加熱し、所定温度に到達後1hr脱臭を行う処理であることが分かり、上記(3ウ)の記載によれば、上記の所定温度は、160℃、200℃及び230℃であることが分かる。 上記の甲3の記載事項をまとめると、甲3には、 「魚の原油を、60℃に加熱し、原油の酸価より求めた中和に要するNaOH理論量に対する%として、125%のNaOH液を添加し、5minかくはんし、63℃まで昇温し10minかくはんし、その温度で30min静置してフーツを沈降させる脱酸を行い、110℃に加熱して吸着剤として活性白土を加え10minかくはんした後、ろ紙でろ過する脱色を行い、水添処理を行い、2mmHg減圧下に水蒸気を吹き込んでかくはんしながら加熱し、160℃、200℃及び230℃の温度に到達後1hr脱臭を行う精製魚油の製造方法」(以下、「甲3発明」という。)が記載されているといえる。 (4) 甲4発明 甲4の上記(4キ)の[請求項1]~[請求項3]を直列的に引用する[請求項4]には、「グリセリド油脂が150℃以上に加熱される処理以前に、グリセリド油脂の品温60~95℃で、吸着剤処理及び/又はアルカリ処理するグリセリド油脂中のクロロプロパノール類及びその形成物質の生成を抑制する方法」が記載されている。 ここで、上記(4ウ)の段落[0017]の記載によれば、上記「グリセリド油脂が150℃以上に加熱される処理」として、脱色、脱臭工程があり、上記(4カ)の具体的な実施例においても、脱色工程、さらに脱臭処理が行われ、脱色については、白土を添加する工程であることが記載されている。そして、工程の順序としては、上記の吸着剤処理及び/又はアルカリ処理の後に、上記脱色工程、さらに脱臭処理が行われることになる。 さらに、上記(4ウ)の段落[0021]の記載によれば、上記「アルカリ処理」として、グリセリド油脂に水酸化ナトリウムを遊離脂肪酸の中和当量の0.8~1.2倍量添加し、攪拌後、遠心分離し、フーツを除去し、さらに水洗し、攪拌後、遠心分離し、水層を除去後、加温減圧下で脱水する方法が記載されている。 また、「グリセリド油脂中のクロロプロパノール類及びその形成物質の生成を抑制する」のは、上記(4ア)の段落[0009]の記載によれば、油脂の精製工程(脱色工程、とりわけ脱臭工程)での、クロロプロパノール類及びその形成物質の生成を抑制するものであるから、当業者であれば、甲4から、グリセリド油脂中のクロロプロパノール類及びその形成物質の生成を抑制した、グリセリド油脂の精製方法、さらには、精製されたグリセリド油脂の製造方法を把握することができるといえる。 上記の甲4の記載事項をまとめると、甲4には、 「グリセリド油脂の品温60~95℃で、吸着剤処理、及び/又は、グリセリド油脂に水酸化ナトリウムを遊離脂肪酸の中和当量の0.8~1.2倍量添加し、攪拌後、遠心分離し、フーツを除去し、さらに水洗し、攪拌後、遠心分離し、水層を除去後、加温減圧下で脱水するアルカリ処理の後に、白土を添加する脱色工程、さらに脱臭処理を行う、グリセリド油脂中のクロロプロパノール類及びその形成物質の生成を抑制した、精製されたグリセリド油脂の製造方法」(以下、「甲4発明」という。)が記載されているといえる。 4 甲1発明に基づく新規性・進歩性の検討 (1) 本件訂正発明1について ア 対比 本件訂正発明1と甲1発明を対比する。 甲1発明の「魚油中の脂肪酸」は、油中で脂肪酸として存在しているものであるから、本件訂正発明1の「遊離脂肪酸」に相当し、甲1発明の「精製された魚油」は、本件訂正発明1の「精製魚油」に相当する。 甲1発明の「魚油中の脂肪酸を除去するため、炭酸ナトリウムや水酸化ナトリウムの水溶液を加えて攪拌する工程である脱酸」は、本件訂正発明1の「魚油に」「アルカリを接触させる処理」に相当する。 甲1発明の活性白土の添加量は、本件訂正発明1の活性白土の添加量と3%(質量%)で重複しているから、甲1発明の「油脂に活性白土を1~3%添加し、減圧下で105~110℃、約15分~20分加熱する工程である脱色」は、本件訂正発明1の「当該魚油に対して3~10質量%の活性白土を接触させる処理」と、「当該魚油に対して3質量%の活性白土を接触させる処理」である点で一致している。 甲1発明の「(魚油を)バッチ式で、1.0×103Pa以下の真空下で180℃~220℃に加熱し、水蒸気を吹き込みながら5~8時間で(行う)脱臭」は、本件訂正発明1の「150℃~230℃の魚油に・・・水蒸気を接触させる脱臭処理」に相当する。 そうすると、本件訂正発明1と甲1発明は、「魚油に、アルカリを接触させる処理を行った後に、当該魚油に対して3質量%の活性白土を接触させる処理を行い、次いで、150℃~230℃の魚油に水蒸気を接触させる脱臭処理を行う工程を含む、精製魚油の製造方法」の点で一致し、以下の点で相違しているといえる。 <相違点1> 脱臭処理を行う工程について、本件訂正発明1では、「150℃~230℃の魚油に2~60分水蒸気を接触させる脱臭処理を行う工程」と特定しているのに対して、甲1発明では、「バッチ式で、1.0×103Pa以下の真空下で180℃~220℃に加熱し、水蒸気を吹き込みながら5~8時間で脱臭を行う」としている点。 <相違点2> アルカリの使用量について、本件訂正発明1では、「魚油中の遊離脂肪酸の中和当量に対して1.25倍以上」と特定しているのに対し、甲1発明では、アルカリの使用量に関する特定がない点。 <相違点3> 魚油について、本件訂正発明1では、「イワシ、ニシン、サンマ、サバ及びマグロから選択される魚から採取された魚油」と特定しているのに対し、甲1発明では、魚油の種類に関する特定がない点。 イ 相違点1についての検討 脱臭時間について、甲3及び甲16には、1時間(60分)の脱臭を行ったことが記載されている(上記2において摘記した、甲3の(3エ)、甲16の(16ア)、(16イ)参照)。 しかしながら、甲3及び甲16には、当該脱臭時間を採用した理由については何ら開示されていない。その上、甲1並びに甲3及び甲16の記載を仔細にみても、甲1発明における脱臭時間に代えて、わざわざ甲3及び甲16記載の脱臭時間を採用することを動機付ける記載ないし示唆は見当たらない。さらにその他の証拠をみても当該動機付けとなる事実を見い出すことはできない。 そして、本件明細書の【0023】には、「接触時間は、3-MCPDEの生成抑制、風味の点から、0.5~120分が好ましく、1~90分がより好ましく、2~60分が更に好ましい。」と記載されていることから、本件訂正発明1における脱臭時間は、3-MCPDEの生成抑制の観点から設定されたものであることが分かり、また、同【0043】【表1】には、当該脱臭時間をはじめとする、本件訂正発明1が規定する条件をすべて満足する処理を施すことにより、当該3-MCPDEの生成を抑制することができたことが示されているから、本件訂正発明1は、当該脱臭時間による脱臭処理を含む一連の処理を採用することにより、3-MCPDEの生成抑制という顕著な効果を奏し得ているものと認められる。 したがって、当該相違点1は、実質的な相違点であるから、甲1発明に基づいて、本件訂正発明1の新規性を否定することはできないし、当該相違点1に係る本件訂正発明1の構成は、当業者が容易に想到し得る事項であるともいえないから、本件訂正発明1の進歩性を否定することもできない。 ウ 以上のとおりであるから、上記相違点2、3について検討するまでもなく、本件訂正発明1は、甲1発明に基づいて、新規性及び進歩性を否定することはできない。 エ なお、特許異議申立人は、平成30年11月7日付け意見書に添付して、甲第27号証(国際公開第2013/018412号、以下「甲27」という。)及び甲第28号証(特開2011-144343号公報、以下「甲28」という。)を提出し、上記相違点1に係る本件訂正発明1の構成(上記脱臭時間に係る事項)の容易想到性を主張するので、ここで検討する。 確かに、甲27の [0033]及び[0034]には、脱臭工程について次のように記載され、同[0046]記載の実施例2(摘記省略)において、230℃で1時間の脱臭処理を行った具体例も記載されている。 「[0033](脱臭工程) 本発明の精製グリセリド組成物の製造方法においては、上記アルカリ白土処理工程を経たグリセリド組成物の脱臭工程を含んでもよい。この場合、上記アルカリ白土処理工程は、グリセリド組成物の脱色工程に相当する。脱臭は、通常の油脂の製造方法で用いられる100~260℃の温度条件下で行ってもよく、より低い100~250℃の温度条件にて行ってもよい。脱臭工程において好ましい温度条件は150~230℃であり、より好ましくは180~220℃である。通常の油脂の製造方法で用いられる温度条件よりも低い温度条件下でグリセリド組成物の脱臭を行うことにより、精製グリセリド組成物中の3-MCPD及び/又は3-MCPDの脂肪酸エステルの生成抑制効果、及びこれらの含有量の低減効果が大きくなることが期待できる。 [0034] 脱臭工程におけるその他の条件は、特に限定されるものではないが、減圧又は水蒸気吹込を行うことが好ましく、減圧及び水蒸気吹込を行うことがより好ましい。また、脱臭時間は、15~150分であることが好ましく、20~100分であることがより好ましい。」 また、甲28にも同様に、本件訂正発明1が規定する条件を満たす、水蒸気接触処理の具体例が、実施例として記載されている(摘記省略)。 そして、特に、甲27の上記[0033]には、精製グリセリド組成物中の3-MCPDの脂肪酸エステルの生成抑制効果の観点から、脱臭温度を選択することまで記載されている。 しかしながら、これらの証拠にも、甲1発明における脱臭時間に代えて、わざわざ甲3、甲16、甲27、甲28などに記載された脱臭時間を採用することを動機付ける記載ないし示唆は見い出すことはできないし、甲1発明は、3-MCPDの脂肪酸エステルの生成抑制効果を狙ったものではないから、当該生成抑制効果を動機付けとして、甲1発明と甲27(甲28)記載の技術を組み合わせることもできない。 したがって、上記特許異議申立人の主張を採用して、上記相違点1に係る本件訂正発明1の構成(上記脱臭時間に係る事項)を容易想到の事項とすることはできない。 (2) 本件訂正発明2~6について 本件訂正発明2~6は、本件訂正発明1の発明特定事項をすべて具備するものであるから、本件訂正発明2~6についても、上記(1)と同様の理由により、その新規性及び進歩性を否定することはできない。 (3) 本件訂正発明7について 本件訂正発明7は、実質的に、上記相違点1に係る本件訂正発明1の構成と同様の事項を、発明特定事項として具備するものであるから、本件訂正発明7についても、上記(1)と同様の理由により、その新規性及び進歩性を否定することはできない。 5 甲2発明に基づく新規性・進歩性の検討 (1) 本件訂正発明1について ア 対比 本件訂正発明1と甲2発明を対比する。 甲2発明における「ニシン油などの魚油」は、本件訂正発明1における「イワシ、ニシン、サンマ、サバ及びマグロから選択される魚から採取された魚油」に相当する。 甲2発明の「遊離酸」あるいは「遊離脂肪酸」、及び「精製された魚油」は、それぞれ、本件訂正発明1の「遊離脂肪酸」、及び「精製魚油」に相当する。 甲2発明の「NaOH」は、本件訂正発明1の「アルカリ」に相当し、甲2発明での上記NaOHの添加量は、本件訂正発明1のアルカリの添加量の範囲に含まれるものであるから、甲2発明の「(魚油を)90℃に加熱し、ゆっくりと撹拌しながら4N NaOH(遊離酸に対して50%過剰)で中和し遊離脂肪酸を除去する中和工程」は、本件訂正発明1の「魚油に、魚油中の遊離脂肪酸の中和当量に対して1.25倍以上のアルカリを接触させる処理」に相当する。 甲2発明の「活性白土Tonsil Standard FF」は、本件訂正発明1の「活性白土」に相当し、甲2発明での上記活性白土の添加量は、本件訂正発明1の活性白土の添加量の範囲に含まれるものであるから、甲2発明の「4%活性白土Tonsil Standard FFを用いて90℃で30分間真空下で脱色し残留石けんと顔料を除去する脱色工程」は、本件訂正発明1の「当該魚油に対して3~10質量%の活性白土を接触させる処理」に相当する。 甲2発明の「加熱および冷却の間、50mg/kgのクエン酸を50%溶液として油に添加し、110℃(技術常識として、冷却した際の温度であるといえる。)になるまで蒸気の吹き込みが行われ、油を180~185℃、3~5mbarで5時間脱臭する脱臭工程」は、本件訂正発明1の「150℃~230℃の魚油に・・・水蒸気を接触させる脱臭処理」に相当する。 そうすると、本件訂正発明1と甲2発明は、「イワシ、ニシン、サンマ、サバ及びマグロから選択される魚から採取された魚油に、魚油中の遊離脂肪酸の中和当量に対して1.25倍以上のアルカリを接触させる処理を行った後に、当該魚油に対して3~10質量%の活性白土を接触させる処理を行い、次いで、150℃~230℃の魚油に水蒸気を接触させる脱臭処理を行う工程を含む、精製魚油の製造方法」の点で一致し、以下の点で相違しているといえる。 <相違点4> 脱臭処理を行う工程について、本件訂正発明1では、「150℃~230℃の魚油に2~60分水蒸気を接触させる脱臭処理を行う工程」と特定しているのに対して、甲2発明は、「油を180~185℃、3~5mbarで5時間脱臭する」としている点。 イ 相違点4についての検討 当該相違点4は、上記4(1)イにおいて検討した相違点1と実質的に同じであり、甲2発明を主引用発明とした場合についても当該検討結果が当てはまるから、甲2発明に基づいて、本件訂正発明1の新規性及び進歩性を否定することはできない。 (2) 本件訂正発明2~6及び本件訂正発明7について 本件訂正発明2~6は、本件訂正発明1の発明特定事項をすべて具備するものであるし、本件訂正発明7も、実質的に、上記相違点4に係る本件訂正発明1の構成と同様の事項を、発明特定事項として具備するものであるから、本件訂正発明2~7についても、上記(1)と同様の理由により、その新規性及び進歩性を否定することはできない。 6 甲3発明に基づく進歩性の検討 (1) 本件訂正発明1について ア 対比 本件訂正発明1と甲3発明を対比する。 甲3発明の「魚の原油」は、本件訂正発明1の「魚油」に相当する。 甲3発明の「原油の酸価より求めた中和に要するNaOH理論量に対する%として、125%のNaOH液を添加し・・・フーツを沈降させる脱酸」について、「原油の酸価」は、原油に含まれる結合していない単独の脂肪酸(遊離脂肪酸)によりもたらされるものであることは技術的な常識であるから、甲3発明の上記の記載は、本件訂正発明1の「魚油中の遊離脂肪酸の中和当量に対して1.25倍以上のアルカリを接触させる処理」と、「魚油中の遊離脂肪酸の中和当量に対して1.25倍のアルカリを接触させる処理」である点で一致している。 甲3発明の「110℃に加熱して吸着剤として活性白土を加え10minかくはんした後、ろ紙でろ過する脱色」は、本件訂正発明1の(当該魚油に対して)「3~10質量%の活性白土を接触させる処理」と、「魚油に対して活性白土を接触させる処理」である点で共通している。 甲3発明の「2mmHg減圧下に水蒸気を吹き込んでかくはんしながら加熱し、160℃、200℃及び230℃の温度に到達後1hr脱臭を行う」は、本件訂正発明1の「150℃~230℃の魚油に2~60分水蒸気を接触させる脱臭処理」に相当する。 そうすると、甲3発明と本件訂正発明1は、「魚油に、魚油中の遊離脂肪酸の中和当量に対して1.25倍のアルカリを接触させる処理を行った後に、活性白土を接触させる処理を行い、150℃~230℃の魚油に60分水蒸気を接触させる脱臭処理を行う工程を含む、精製魚油の製造方法」の点で一致し、以下の点で相違しているといえる。 <相違点5> 魚油に接触させる活性白土について、本件訂正発明1では、魚油に対して3~10質量%と特定しているのに対し、甲3発明では、魚油に接触させる活性白土量が明らかでない点。 <相違点6> 魚油について、本件訂正発明1では、「イワシ、ニシン、サンマ、サバ及びマグロから選択される魚から採取された魚油」と特定しているのに対し、甲3発明では、魚油の種類に関する特定がない点。 イ 相違点5についての検討 活性白土を接触させる処理における活性白土量について、甲1の上記(1オ)には、活性白土量が1~3%であること、甲2の上記(2イ)「4.脱色」には、活性白土量が4%であること、甲10の上記(10イ)には、活性白土量が1~5%であること、甲11の上記(11イ)には、活性白土量が1~10%であること、甲12の上記(12ア)には、活性白土量が3~5%であること、甲13の上記(13ア)には、10%活性炭を混ぜた活性白土量が5~6%であること、甲20の上記(20ア)及び(20イ)には、活性な漂白土量が2~3%であることが、それぞれ記載されている。 このように、活性白土を接触させる処理においては、種々の活性白土量が採用されていることが分かるし、確かに、本件訂正発明1が規定する量と重複する量の開示も認められる。 しかしながら、本件訂正発明1は、上記のとおり従来から種々の活性白土量が採用されるなか、3-MCPDEの生成抑制効果の点及び濾過速度が早く生産性が良好である点から、その数値を特定の範囲に設定したものであり(明細書【0019】などを参照した。)、これにより、所期する効果を発揮し得たものであるから(明細書【0043】【表1】に掲載された実施例1と比較例7の結果を比較するなどして判断した。)、当該数値設定に係る事項、すなわち、上記相違点3に係る本件訂正発明1の構成は、有意なものというべきである。そうである以上、従来から採用されている種々の活性白土量のなかに、本件訂正発明1と重複する数値が存在するからといって、そのことのみを理由に、甲3発明において、当該数値設定を行うことが容易想到の事項であるということはできない。 また、いずれの証拠をみても、甲3発明において、当該数値設定を行うことを動機付けるほどの事実は見当たらない。確かに、甲16の上記(16イ)には、粗パーム油の精製における脱色の際の漂白土(ただし、活性白土であるかは不明。)の量を、1%と3%とした場合に、3%の方が3-MCPDエステル量が低減することが示され、甲20の上記(20イ)には、「脱ガム中に形成された3-MCPDまたは3-MCPD前駆体の濃度は、あまりにも少量の漂白土では十分に低減できないことが分かっている。したがって、漂白土は、加熱された脱ガム油に、粗油に対して1.5重量%を超える量、好ましくは2.0~3.0重量%の量で添加される。発明者らは、漂白土は、3-MCPDまたはその前駆体の吸着力が低いと仮定している。油中の3-MCPDまたはその前駆体は、ppm範囲の量でのみ含有されることが見出されている。しかしながら、漂白に使用される漂白土量を1.5重量%を超えて増加させると、精製油中の3-MCPDの量は著しく減少する。」との記載がある。 しかしながら、甲3発明は、そもそも3-MCPDの脂肪酸エステルの生成抑制効果を狙ったものではないから、仮に、甲16及び甲20に、活性白土量と当該生成抑制効果との関係が記載されているとしても、このことを、甲3発明において上記数値設定を行うことの動機付けの根拠とすることはできない。また、甲16の漂白土は、活性白土であるか否かが不明である上、対象油は粗パーム油であって、魚油に関するものではないし、甲20において低減の対象とされるものは、3-MCPDまたはその前駆体であって、3-MCPDの脂肪酸エステルではないから、これらの証拠は、もとより、本件訂正発明1の上記の効果(魚油の精製における活性白土量と上記生成抑制効果との関係)を直接示すものではない。 そうすると、上記相違点5に係る本件訂正発明1の構成は、甲3発明及び上記の証拠の記載から、当業者が容易に想到し得る事項であるとはいえない。 ウ 以上のとおりであるから、上記相違点6について検討するまでもなく、本件訂正発明1は、甲3発明に基づいて、進歩性を否定することはできない。 (2) 本件訂正発明2~6及び本件訂正発明7について 本件訂正発明2~6は、本件訂正発明1の発明特定事項をすべて具備するものであるし、本件訂正発明7も、実質的に、上記相違点5に係る本件訂正発明1の構成と同様の事項を、発明特定事項として具備するものであるから、本件訂正発明2~7についても、上記(1)と同様の理由により、その進歩性を否定することはできない。 7 甲4発明に基づく進歩性の検討 (1) 本件訂正発明1について ア 対比 本件訂正発明1と甲4発明を対比する。 本件訂正発明1の「魚油」は、「グリセリド油脂」に含まれるものであるから、甲4発明の「グリセリド油脂」と本件訂正発明1の「魚油」は、「グリセリド油脂」である点で共通し、同様に、甲4発明の「精製されたグリセリド油脂」と本件訂正発明1の「精製魚油」は、「精製グリセリド油脂」である点で共通する。 甲4発明の「グリセリド油脂に水酸化ナトリウムを遊離脂肪酸の中和当量の0.8~1.2倍量添加し、攪拌後、遠心分離し、フーツを除去し、さらに水洗し、攪拌後、遠心分離し、水層を除去後、加温減圧下で脱水するアルカリ処理」は、本件訂正発明1の「魚油に、魚油中の遊離脂肪酸の中和当量に対して1.25倍以上のアルカリを接触させる処理」と、「グリセリド油脂に、アルカリを接触させる処理」である点で共通している。 甲4発明の(グリセリド油脂に対して)「白土を添加する脱色工程」は、本件訂正発明1の(当該魚油に対して)「3~10質量%の活性白土を接触させる処理」と、「グリセリド油脂に対して活性白土を接触させる処理」である点で共通している。 甲4発明の「脱臭処理」は、本件訂正発明1の「150℃~230℃の魚油に・・・水蒸気を接触させる脱臭処理」と、「脱臭処理」である点で共通している。 そうすると、甲4発明と本件訂正発明1は、「グリセリド油脂に、アルカリを接触させる処理を行った後に、当該グリセリド油脂に対して白土を接触させる処理を行い、次いで、脱臭処理を行う工程を含む、精製グリセリド油脂の製造方法」の点で一致し、以下の点で相違しているといえる。 <相違点7> アルカリの添加量について、本件訂正発明1では、魚油(グリセリド油脂)中の遊離脂肪酸の中和当量に対して1.25倍以上であると特定しているのに対し、甲4発明では、グリセリド油脂中の遊離脂肪酸の中和当量に対して0.8~1.2倍量としている点。 <相違点8> 魚油について、本件訂正発明1では、「イワシ、ニシン、サンマ、サバ及びマグロから選択される魚から採取された魚油」と特定しているのに対し、甲4発明では、魚油の種類に関する特定がない点。 <相違点9> 魚油に接触させる活性白土について、本件訂正発明1では、魚油に対して3~10質量%と特定しているのに対し、甲4発明では、魚油に接触させる活性白土量が明らかでない点。 イ 相違点7についての検討 甲4発明の要旨は、甲4の上記(4ア)の[0009]の記載によれば、グリセリド油脂中のクロロプロパノール類及びその形成物質は、通常の油脂の精製工程である脱色工程、とりわけ脱臭工程を経ると増加するため、加熱処理(脱色工程、とりわけ脱臭工程)以前に、グリセリド油脂を吸着剤処理及び/又はアルカリ処理しておくことにあると解されるが、上記(4ウ)の[0020]~[0022]に記載されたアルカリ処理に関する記載中には、[0022]に「本発明の方法である、吸着剤処理及び/又はアルカリ処理は、グリセリド油脂中のクロロプロパノール類及びその形成物質が、高温で生成することから、グリセリド油脂品温が150℃未満、より好ましくは100℃未満、さらに好ましくは60~95℃で行うことが好ましい。」との記載があるものの、当該グリセリド油脂品温以外に、クロロプロパノール類及びその形成物質の生成との関連を示唆する記載は見当たらないから、同段落に記載される甲4発明のアルカリ処理自体は、グリセリド油脂品温を除き、グリセリド油脂の精製において通常行われているアルカリ処理(脱酸)と同様の処理であるということができる。そして、甲4発明のアルカリ処理での水酸化ナトリウムの、遊離脂肪酸の中和当量の0.8~1.2倍量という添加量についても、同アルカリ処理(脱酸)でのアルカリ添加量の一例を示したものと解することができる。 また、油脂の精製におけるアルカリ処理(脱酸)において採用されている、一般的なアルカリの使用量についてみると、確かに、本件訂正発明1の範囲に重複する範囲の添加量でアルカリを使用することは、甲1の上記(1ア)、甲2の上記(2イ)「2.中和」、甲3の上記(3ウ)などに記載され、また、甲19の(19ア)及び(19イ)には、茶種油精製方法におけるクロロプロパノール脂肪酸エステル(3-MCPDエステル)の含有量を効果的に低減する精製方法において、脱酸工程でのアルカリの使用量を、理論アルカリ量の1.0、1.1、1.2、1.5倍などとすることが記載されている(ただし、アルカリの使用量と3-MCPDEの生成抑制効果との関係までを教示する記載はない。)。 しかしながら、甲19を含め、これらの証拠には、アルカリの使用量を、3-MCPDEの生成抑制効果と直接関連付ける記載は見当たらない。さらにその他の証拠をみても同じである。 これに対し、本件訂正発明1におけるアルカリの使用量は、3-MCPDEの生成抑制効果の点から、その数値を特定の範囲に設定したものであり(明細書【0013】などを参照した。)、これにより、所期する効果を発揮し得たものであるから(明細書【0043】【表1】に掲載された実施例1と比較例5の結果を比較するなどして判断した。)、当該数値設定に係る事項、すなわち、上記相違点7に係る本件訂正発明1の構成は、有意なものというべきである。そうである以上、上記のとおり、通常のアルカリ使用量に本件訂正発明1と重複するところが存在するからといって、そのことのみを理由に、当該構成を容易想到の事項ということはできない。 したがって、上記相違点7に係る本件訂正発明1の構成は、甲4発明及び上記の証拠の記載から、当業者が容易に想到し得る事項であるとはいえない。 ウ 以上のとおりであるから、上記相違点8、9について検討するまでもなく、本件訂正発明1は、甲4発明に基づいて、進歩性を否定することはできない。 (2) 本件訂正発明2~6及び本件訂正発明7について 本件訂正発明2~6は、本件訂正発明1の発明特定事項をすべて具備するものであるし、本件訂正発明7も、実質的に、上記相違点7に係る本件訂正発明1の構成と同様の事項を、発明特定事項として具備するものであるから、本件訂正発明2~7についても、上記(1)と同様の理由により、その進歩性を否定することはできない。 第6 サポート要件・実施可能要件に関する取消理由についての当審の判断 上記第4の2に記載したサポート要件・実施可能要件に関する取消理由は、端的にいえば、(i)本件訂正前の請求項1などに記載された魚油の範ちゅうが定かでない点、及び、(ii)活性白土量の上限値が規定されていない点に依拠するものであった。 本件訂正により、上記(ii)に係る活性白土量の上限値は明示されることとなったから、この点に起因するサポート要件及び実施可能要件に関する取消理由は解消されたといえる。 また、(i)に係る魚油の範ちゅうについてみても、一般に「魚油」とは、「イワシ・ニシンなどの魚類を煮て採った油」として認識されているところ(株式会社岩波書店の広辞苑第六版を参照した。)、本件訂正により、本件訂正発明1~7における魚油は、「イワシ、ニシン、サンマ、サバ及びマグロから選択される魚から採取された魚油」と特定されたことから、その範ちゅうは、一般に魚油として認識されている範ちゅうのものに収まったと理解するのが相当である。また、確かに、本件明細書に記載された実施例は、使用された魚油の種類を特定するものではないが、上記の一般認識に照らせば、「イワシ・ニシンなどの魚類を煮て採った油」と同等のものが使用されていると解するのが合理的であるから、この実施例を含む本件明細書の発明の詳細な説明の記載に接した当業者は、本件訂正発明1~7であれば、本件明細書の【発明が解決しようとする課題】(【0005】)の欄に記載された「3-MCPDEが少ない精製魚油を製造する方法、及び魚油中の3-MCPDEの生成抑制方法を提供すること」という課題を解決することができると認識でき、さらに、当該本件訂正発明1~7を実施することも可能であると考えるのが相当である。 したがって、本件特許請求の範囲及び発明の詳細な説明の記載に、サポート要件及び実施可能要件に違反するところは認められない。 第7 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について 特許異議申立人は、特許異議申立書において、本件訂正前の特許請求の範囲に関し、請求項1などに記載された魚油の範ちゅうが定かではなく、特許を受けようとする発明が不明確であるから、本件訂正前の請求項1~7に係る特許は、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第2号の規定に適合していない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである旨主張する。 しかしながら、上記第6において検討したとおり、本件訂正により、当該魚油の範ちゅうは明確になったものと解されるから、当該主張を採用することはできない。 第8 むすび 以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1~7に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件請求項1~7に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2018-700339

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