特許異議申立
2022-700290
積層体
- 審判番号
- 2022-700290
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2017-137233
- 登録番号
- 6944656
- 請求日
- 2022年04月06日
- 審決日
- 2023年03月22日
- 公報発行日
- 2023年06月30日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】大日本印刷株式会社
- 【権利者代理人】宮嶋 学
- 【権利者代理人】堀田 幸裕
- 【権利者代理人】岡村 和郎
- 【権利者代理人】高田 泰彦
- 【権利者代理人】柏 延之
- 【異議申立人】早川 いづみ
- 審判長/審判官
- 審判長 久保 克彦
- 審判官 稲葉 大紀
- 審判官 石田 智樹
- 分類
- P1652.121-YAA(B32B)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法120条の8第1項特許法135条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第5項、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第2項、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第6944656号発明「積層体」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第6944656号の特許請求の範囲を令和4年12月16日の訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔3~11〕について訂正することを認める。
特許第6944656号の請求項4~11に係る特許を維持する。
特許第6944656号の請求項3に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第6944656号(以下「本件特許」という。)の請求項1~11に係る特許についての出願は、平成29年7月13日の出願であって、令和3年9月15日にその特許権の設定登録がされ(特許掲載公報 令和3年10月6日発行)、その請求項3~11に係る特許について、令和4年4月6日に特許異議申立人早川いづみ(以下「申立人」という。)により特許異議の申立てがされた。以降の経緯は次のとおりである。
令和4年 6月14日付け 取消理由通知書
令和4年 8月 5日 訂正請求書及び意見書(特許権者)
令和4年 9月30日 意見書(申立人)
令和4年10月25日付け 取消理由通知書(決定の予告)
令和4年12月16日 訂正請求書及び意見書(特許権者)(以下「本件訂正請求」といい、訂正自体を「本件訂正」という。)
なお、令和4年12月26日付けで当審から申立人に対して訂正請求があった旨の通知(特許法第120条の5第5項)を、期間を指定して行ったが、当該期間内に申立人から応答はなかった。
また、令和4年8月5日にされた訂正請求は、本件訂正請求がされたから、特許法第120条の5第7項の規定により取り下げられたものとみなす。
第2 訂正の請求について
1.訂正の内容
本件訂正請求は、「特許第6944656号の特許請求の範囲を本件訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項3~11について訂正することを求める。」ものであり、本件訂正の内容は、次の訂正事項を含むものである。なお、下線は、当審が訂正箇所に付したものである。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項3を削除する。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項4に「前記透明蒸着層は、酸化アルミニウムまたは酸化ケイ素の蒸着層である、請求項3に記載の積層体。」と記載されているのを、
「少なくとも、基材層(但し、下記の基材層Aを除く。)と、バリア層と、接着剤層と、シーラント層とをこの順に備える積層体であって、
前記基材層は、エチレングリコールをジオール単位とし、テレフタル酸とイソフタル酸とをジカルボン酸単位とするリサイクルポリエチレンテレフタレートを含み、
前記バリア層は、前記基材層に設けられ、一種の酸化物からなる透明蒸着層と、前記透明蒸着層の面上に設けられたガスバリア性塗布膜と、を含み、
前記基材層Aは、バイオマス由来のエチレングリコールをジオール単位とし、化石燃料由来のジカルボン酸をジカルボン酸単位とするバイオマスポリエステル樹脂を含んでなり、
前記透明蒸着層は、酸化ケイ素からなる、積層体。」に訂正する。
(請求項4の記載を直接的又は間接的に引用する請求項5~11も同様に訂正する。)
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項6に「請求項1乃至5のいずれか一項に記載の積層体。」と記載されているのを、
「請求項1乃至2及び4乃至5のいずれか一項に記載の積層体。」に訂正する。
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項10に「請求項1乃至9のいずれか一項に記載の積層体。」と記載されているのを、
「請求項1乃至2及び4乃至9のいずれか一項に記載の積層体。」に訂正する。
(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項11に「請求項1乃至10のいずれか一項に記載の積層体。」と記載されているのを、
請求項1乃至2及び4乃至10のいずれか一項に記載の積層体。」に訂正する。
2 訂正要件についての判断
(1)訂正事項1について
訂正事項1は、本件訂正前の請求項3を削除するものであり、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
また、訂正事項1は、請求項を削除するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、また、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「本件明細書等」という。)に記載した事項の範囲内においてするものである。
(2)訂正事項2について
訂正事項2は、本件訂正前の請求項4について、訂正事項1によって削除された請求項3を引用しない独立請求項形式に改めると共に、本件訂正前の請求項4に記載の「透明蒸着層」について、「酸化アルミニウムまたは酸化ケイ素の蒸着層である」とあったものを、「一種の酸化物かなる」と共に「酸化ケイ素からなる」と限定する訂正であるから、特許請求の範囲の減縮及び明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
また、訂正事項2は、訂正事項1によって削除された請求項3を引用しないものとすると共に、発明特定事項を限定するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、また、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。
(3)訂正事項3~5について
訂正事項3~5は、本件訂正前の請求項6、10、11について、訂正事項1によって削除された請求項3を引用しないものとする訂正であるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
また、訂正事項3~5は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、また、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。
3 一群の請求項について
本件訂正前の請求項4~11は、本件訂正前の請求項3を直接的又は間接的に引用するものであり、本件訂正は、訂正前の請求項〔3~11〕という一群の請求項について請求されたものであるから、特許法第120条の5第4項の規定に適合するものである。
4 むすび
したがって、本件訂正の訂正事項1~5は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第3号又は第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項に適合するから、訂正後の請求項〔3~11〕について訂正することを認める。
第3 訂正発明
上記第2の2のとおり、本件訂正は認められるから、本件訂正後の請求項3~11に係る発明(以下「訂正発明3」等といい、まとめて「訂正発明」という。)は、本件訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項3~11に記載された事項により特定される次のとおりのものである。なお、請求項3~11には、本件異議申立の対象ではない請求項1、2を引用するものもあるので、請求項1及び2も以下に摘記する。
「【請求項1】
少なくとも、基材層(但し、下記の基材層Aを除く。)と、接着剤層(但し、下記の接着剤層A及び接着剤層Bを除く。)と、バリア層と、シーラント層とをこの順に備える積層体であって、
前記基材層は、エチレングリコールをジオール単位とし、テレフタル酸とイソフタル酸とをジカルボン酸単位とするリサイクルポリエチレンテレフタレートを含み、
前記バリア層は、前記シーラント層に設けられた蒸着層を含み、
前記基材層Aは、バイオマス由来のエチレングリコールをジオール単位とし、化石燃料由来のジカルボン酸をジカルボン酸単位とするバイオマスポリエステル樹脂を含んでなり、
前記接着剤層Aは、1分子中に2個以上の水酸基を有する樹脂(A)と、2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート(B)とを含有してなるガスバリア性接着剤用樹脂組成物であって、ポリイソシアネート(B)が、芳香族環を分子内に有する3価以上のポリイソシアネート化合物(b1)と、芳香族環を分子内に有しないポリイソシアネート化合物(b2)との混合物であるガスバリア性接着剤用樹脂組成物からなり、
前記接着剤層Bは、オルト配向芳香族ジカルボン酸又はその酸無水物を必須の成分とする酸成分と多価アルコールとの反応物を含有するポリエステルポリオール(A)であって、多価アルコールが、2価アルコールと3価アルコールを含有するものであり、前記ポリエステルポリオール(A)のガラス転移点が5~40℃、水酸基価が150~300mgKOH/gである、ポリエステルポリオール(A)と、ポリイソシアネート化合物(B)との反応物を含有する樹脂組成物からなる、
積層体。
【請求項2】
前記蒸着層は、金属蒸着層である、請求項1に記載の積層体。
【請求項3】
(削除)
【請求項4】
少なくとも、基材層(但し、下記の基材層Aを除く。)と、バリア層と、接着剤層と、シーラント層とをこの順に備える積層体であって、
前記基材層は、エチレングリコールをジオール単位とし、テレフタル酸とイソフタル酸とをジカルボン酸単位とするリサイクルポリエチレンテレフタレートを含み、
前記バリア層は、前記基材層に設けられ、一種の酸化物からなる透明蒸着層と、前記透明蒸着層の面上に設けられたガスバリア性塗布膜と、を含み、
前記基材層Aは、バイオマス由来のエチレングリコールをジオール単位とし、化石燃料由来のジカルボン酸をジカルボン酸単位とするバイオマスポリエステル樹脂を含んでなり、
前記透明蒸着層は、酸化ケイ素からなる、積層体。
【請求項5】
前記ガスバリア性塗布膜は、一般式R1nM(OR2)m(ただし、式中、R1、R2は、炭素数1~8の有機基を表し、Mは、金属原子を表し、nは、0以上の整数を表し、mは、1以上の整数を表し、n+mは、Mの原子価を表す。)で表される少なくとも一種以上のアルコキシドと、ポリビニルアルコ-ル系樹脂および/またはエチレン・ビニルアルコ-ル共重合体とを含む、請求項4に記載の積層体。
【請求項6】
前記接着剤層は、ポリエステルポリオールと脂肪族イソシアネート化合物との硬化物を有する、請求項1乃至2及び4乃至5のいずれか一項に記載の積層体。
【請求項7】
前記ポリエステルポリオールは、官能基として1分子中に水酸基を2個以上有し、
前記イソシアネート化合物は、官能基として1分子中にイソシアネート基を2個以上有する、請求項6に記載の積層体。
【請求項8】
前記ポリエステルポリオールは、官能基として1分子中に水酸基を2個以上有し、
前記イソシアネート化合物は、官能基として1分子中にイソシアネート基を2個以上有し、
前記ポリエステルポリオールは、下記の一般式(1)で表される化合物であり、
【化1】
[図:0001398246000001.jpg]
一般式(1)において、R1、R2、R3は、各々独立に、H又は下記の一般式(2)で表される化合物であり、
【化2】
[図:0001398246000002.jpg]
式(2)において、nは1~5の整数を表し、Xは、置換基を有してもよい1,2-フェニレン基、1,2-ナフチレン基、2,3-ナフチレン基、2,3-アントラキノンジイル基、及び2,3-アントラセンジイル基から成る群から選ばれるアリーレン基を表し、Yは炭素原子数2~6のアルキレン基を表す)で表される基を表し、但し、R1、R2、R3のうち少なくとも一つは、一般式(2)で表される基を表す、
請求項6に記載の積層体。
【請求項9】
前記ポリエステルポリオールは、官能基として1分子中に水酸基を2個以上有し、
前記イソシアネート化合物は、官能基として1分子中にイソシアネート基を2個以上有し、
前記ポリエステルポリオールは、イソシアヌル環を有する、請求項6に記載の積層体。
【請求項10】
前記イソフタル酸の含有量は、前記ポリエチレンテレフタレートを構成する全ジカルボン酸単位に対して、0.5モル%以上5.0モル%以下である、請求項1乃至2及び4乃至9のいずれか一項に記載の積層体。
【請求項11】
前記ポリエチレンテレフタレートの極限粘度は、0.58dl/g以上0.80dl/g以下である、請求項1乃至2及び4乃至10のいずれか一項に記載の積層体。」
第4 取消理由通知の概要
当審において令和4年10月25日付けで特許権者に通知した取消理由(決定の予告)の概要は、次のとおりである。
取消理由1(進歩性)
本件特許の請求項3~11に係る発明は、下記の甲第1号証に記載された発明及び甲2号証~甲第5号証に記載された事項に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
記
<甲各号証>
甲第1号証:特開2017-7175号公報
甲第2号証:特開2015-101057号公報
甲第3号証:特開2012-96469号公報
甲第4号証:特許第5765510号公報
甲第5号証:特許第4892801号公報
(以下、上記「甲第1号証」ないし「甲第5号証」は、申立人が本件特許異議申立書に添付した、「甲第1号証」等である。以降、それぞれ「甲1」ないし「甲5」という。)
第5 当審の判断
1 甲各号証について
(1)甲1について
ア 甲1の記載事項
甲1には、次の記載がある(下線は強調のため当審が付した。以下同様。)。
「【請求項1】
基材フィルムの少なくとも一方の表面に、無機薄膜層及びシーラント層が、この順に積層された積層フィルムであって、前記基材フィルムが、ペットボトルからリサイクルされたポリエステル樹脂を50重量%以上95重量%以下含有し、二軸延伸されてなるポリエステルフィルムであり、以下の要件を満足することを特徴とする積層フィルム。
(1)基材フィルムを構成する全ポリエステル樹脂中の全ジカルボン酸成分に対するイソフタル酸成分の含有率が0.5モル%以上5.0モル%以下
(2)基材フィルムを構成している樹脂の極限粘度が0.58dl/g以上0.70dl/g以下
(3)積層フィルムの水蒸気透過度が5.0g/m2・day以下であり、かつ、酸素透過度が40.0ml/m2・day・MPa以下」
「【請求項4】
無機薄膜層が、酸化ケイ素と酸化アルミニウムからなることを特徴とする請求項1又は2に記載の積層フィルム」
「【0001】
本発明は、ペットボトルからリサイクルされたポリエステル樹脂を用いた積層フィルムに関する。更に詳しくは、ペットボトルからリサイクルされたポリエステル樹脂を用い、低熱収縮性、厚みムラが小さいことにより無機薄膜層およびシーラント層を備えたガスバリア性積層フィルムとした際、良好なガスバリア性を発現する積層フィルムに関する。」
「【0053】
本発明の積層フィルムにおいては、ガスバリア性を付与するという目的のために、基材となるポリエステルフィルムの一方の面に無機薄膜層を積層する必要があり、その上に、接着層を介して又は介しないでシーラント層が積層される。
【0054】
無機薄膜層は金属または無機酸化物からなる薄膜である。無機薄膜層を形成する材料は、薄膜にできるものなら特に制限はないが、加工性及びガスバリア性の観点から、アルミニウムを含む材料を使用することが好ましい。アルミニウムを含む材料としては、例えば純度の高いアルミニウム(99.9mol%以上)や他の添加元素を含むアルミニウム合金、酸化アルミニウムなどの無機酸化物などが挙げられ、複数の金属や金属と無機酸化物の併用、複数の無機酸化物の組み合わせでも良い。無機薄膜層を形成する材料の組み合わせとしては特に限定されないが、例えば、2種の金属、2種の無機酸化物、あるいは1種の金属と1種の無機酸化物からなる材料の組合せなどが採用できる。例えば、高純度アルミニウムとアルミニウム合金、添加元素が異なる2種のアルミニウム合金(マグネシウム、シリコン、チタン、カルシウム、マンガン等の添加元素)、アルミニウム合金と酸化アルミニウム、酸化アルミニウムと酸化チタン、酸化ケイ素と酸化アルミニウムなどが挙げられるが、薄膜層の柔軟性と緻密性を両立できる点からは、酸化ケイ素(シリカ)と酸化アルミニウム(アルミナ)との複合酸化物が好ましい。」
「【0056】
無機薄膜層を形成する方法としては、特に制限はなく、例えば真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法などの物理蒸着法(PVD法)、あるいは化学蒸着法(CVD法)など、公知の蒸着法を適宜採用すればよい。」
「【0063】
本発明の積層フィルムにおいては、基材となるポリエステルフィルムの一方の面に無機薄膜層を積層し、その上に、接着層を介して又は介しないでシーラント層が積層されるが、接着層を介してシーラント層を積層する場合には、接着剤層を形成する際に使用されるコート剤は、公知のものが使用される。例えば、イソシアネート系、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリエチレンイミン系、ポリブタジエン系、ポリオレフィン系、アルキルチタネート系等のコート剤が挙げられる。これらの中で密着性、耐熱性、耐水性などの効果を勘案すると、イソシアネート系、ポリウレタン系、ポリエステル系のコート剤が好ましく、イソシアネート化合物、ポリウレタンおよびウレタンプレポリマーの1種または2種以上の混合物および反応生成物、ポリエステル、ポリオールおよびポリエーテルの1種または2種以上とイソシアネートとの混合物および反応生成物、またはこれらの溶液または分散液が好ましく使用される。」
「【0068】
以上のような本発明の積層フィルムは、積層フィルムの構成中に無機薄膜層を有することにより、酸素バリア性および水蒸気バリア性に優れたガスバリア性積層フィルム(積層体)となる。」
「【0082】
(実施例1)
(ペットボトルからリサイクルされたポリエステル樹脂の調整)
飲料用ペットボトルから残りの飲料などの異物を洗い流した後、粉砕して得たフレークを押出機で溶融し、順次目開きサイズの細かなものにフィルタを変えて2回更に細かな異物を濾別し、3回目に50μmの最も小さな目開きサイズのフィルタで濾別して、ポリエステル再生原料を得た。得られた樹脂の構成は、テレフタル酸/イソフタル酸//エチレングリコール=97.0/3.0//100(モル%)で、樹脂の極限粘度は0.70dl/gであった。これをポリエステルAとする。
【0083】
(フィルムの作製)
ポリエステルBとしてテレフタル酸//エチレングリコール=100//100(モル%)からなる極限粘度0.62dl/gのポリエチレンテレフタレート樹脂を、ポリエステルCとして、ポリエステルBに平均粒子径1.5μmの不定形シリカを0.3%含有するマスターバッチとしてものを作製した。各原料は、33Paの減圧下、125℃で8時間乾燥した。それらをA/B/C=70/20/10(重量比)となるよう混合したものを、一軸押出機に投入した。押出機から、メルトライン、フィルタおよびT-ダイまでは樹脂の温度が280℃となるように温度設定した。ただし、押出機のスクリューの圧縮部の開始点から30秒間は樹脂の温度が305℃となるように設定し、その後は再び、280℃となるようにした。
【0084】
T-ダイから押し出された溶融物を冷却ロールに密着させ、未延伸シートとし、それを引き続き118℃に加熱した周速差のあるロールにて縦方向に1.41倍延伸し(MD1)、さらに128℃に加熱した周速差のあるロールにて縦方向に2.92倍延伸(MD2)した。その縦延伸したシートをテンターに導き、121℃で予熱した後に、131℃で4.3倍横延伸した。引き続き熱固定として、180℃、リラックスなし(0%)で2.5秒行った(TS1)後に引き続き231℃、リラックス5%、3.0秒行った(TS2)後に引き続き222℃、リラックスなしで2.5秒行った(TS3)。引き続き、同じテンター内で、120℃で6.0秒間の冷却を行い、最終的にワインダーで巻き取ることで厚さ18μmの二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。
【0085】
(無機薄膜層の形成)
次に、得られた二軸延伸ポリエステルフィルムの片面に、無機薄膜層として二酸化ケイ素と酸化アルミニウムの複合無機酸化物層を電子ビーム蒸着法で形成した。蒸着源としては、3mm~5mm程度の粒子状SiO2(純度99.9%)とA12O3(純度99.9%)を用いた。ここで複合酸化物層の組成は、SiO2/A12O3(質量比)=60/40であった。またこのようにして得られたフィルム(無機薄膜層/二軸延伸ポリエステルフィルム)における無機薄膜層(SiO2/A12O3複合酸化物層)の膜厚は13nmであった。
【0086】
(シーラント層の形成)
次に、得られた無機薄膜層を備えた積層フィルムと厚さ40μmのポリエチレンフィルム(東洋紡株式会社製「L4102」)をウレタン系の接着剤(東洋モートン社製、TM569、CAT10L、酢酸エチルを33.6:4.0:62.4(重量比))を用いてドライラミネート法により基材フィルムの無機薄膜層の面に貼り合わせ、40℃にて4日間エージングを施すことにより、積層体を得た。尚、貼り合わせ条件は、ライン速度20m/min、ドライヤー温度80℃、乾燥後の塗布量3g/m2となるように実施した。
【0087】
以上のようにして、二軸延伸ポリエステルフィルムの上に無機薄膜層およびシーラント層をこの順に備えた本発明の積層フィルムを得た。得られた積層フィルムについて、上記の通り、酸素透過度、水蒸気透過度を評価した。」
上記甲1の段落【0054】には「無機薄膜層を形成する材料は、薄膜にできるものなら特に制限はないが、加工性及びガスバリア性の観点から、アルミニウムを含む材料を使用することが好ましい。アルミニウムを含む材料としては、例えば純度の高いアルミニウム(99.9mol%以上)や他の添加元素を含むアルミニウム合金、酸化アルミニウムなどの無機酸化物」とあり、「無機薄膜層」を形成する材料として、「純度の高いアルミニウム」、「他の添加元素を含むアルミニウム合金」及び「酸化アルミニウムなどの無機酸化物」が列挙されていることに加え、「複数の金属や金属と無機酸化物の併用、複数の無機酸化物の組み合わせでも良い。」との記載からみて一種のみからなる無機酸化物でもよいことが示唆されているといえるから、甲1の段落【0054】には、無機薄膜層を形成する材料として、酸化アルミニウムなどの一種の無機酸化物を用いるものが記載されているといえる。
イ 甲1発明
上記アから、甲1には以下の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
「二軸延伸ポリエステルフィルムと、無機薄膜層と、接着剤層と、シーラント層とをこの順に備える積層フィルムであって、
前記二軸延伸ポリエステルフィルムは、エチレングリコール、テレフタル酸及びイソフタル酸から構成されるリサイクルポリエチレンテレフタレートを含み、
前記無機薄膜層は、前記二軸延伸ポリエステルに蒸着法で形成された酸化アルミニウムなどの一種のみからなる無機酸化物層からなる、
積層フィルム。」
(2)甲2について
ア 甲2の記載
甲2には、次のような記載がある。
「【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエステルフィルムに関し、より詳細には、バイオマス由来のポリエステル樹脂と、包装材料等から回収して再度使用できるようにしたリサイクルポリエステル樹脂とをフィルムの原材料として用いたポリエステルフィルムに関する。」
「【0075】
また、本実施形態においては、積層フィルム20が、ポリエステルフィルム10およびシーラント層21を備えた構成としているが、これに限定されるものではなく、これらの層を備えていれば、積層フィルム20は、ポリエステルフィルム10およびシーラント層21以外に、その他の層を少なくとも一層有してもよい。例えば、積層フィルム20は、ポリエステルフィルム10とシーラント層21との間、シーラント層21のポリエステルフィルム10が積層されている面とは反対側の面、またはポリエステルフィルム10のシーラント層21が積層されている面側とは反対側の面などに、包装体の形態に応じて、他の層を有していてもよい。
【0076】
その他の層としては、例えば、バリア層、支持体、樹脂層、印刷層などを挙げることができる。その他の層を二層以上有する場合、それぞれが、同一の組成であってもよいし、異なる組成であってもよい。これら他の層は、ドライラミネーション法により接着層を介して、あるいは溶融押出しラミネーション法により接着樹脂層を介して互いに積層することができる。
【0077】
バリア層は、酸素ガスなどガスの透過を阻止するガスバリア性、あるいは水蒸気などの透過を阻止する水蒸気バリア性を有する層として機能する。バリア層としては、例えば、アルミニウム箔など金属を圧延して得られた金属箔からなる層、アルミニウムなどの金属の蒸着膜からなる層、アルミナなどの無機酸化物の蒸着膜からなる層、ガスバリア性塗布膜からなる層、エチレン-酢酸ビニル共重合体のケン化物(EVOH)などを使用することもできる。また、バリア層が、アルミナなどの無機酸化物の蒸着膜からなる層で形成される場合、ガスバリア性を付与ないし向上させるため、前記ガスバリア性塗布膜からなる層を前記無機酸化物の蒸着膜からなる層の少なくとも何れか一方の面に設けてもよい。バリア層は、従来公知の方法により形成することができ、その組成および形成方法は、特に限定されない。バリア層を構成する金属箔、蒸着膜としては、具体的には、例えば、特開2012―96469号公報に記載のものを使用することができる。ガスバリア性塗布膜は、1種以上のアルコキシドと、ポリビニルアルコ-ル系樹脂および/またはエチレン・ビニルアルコ-ル共重合体とを含有し、ゾルゲル法によって重縮合して得られる膜であり、具体的には、例えば、特開2012―96469号公報に記載のものを使用することができる。バリア層を構成するEVOHとしては、具体的には、例えば、特開2008―307847号公報に記載のものを使用することができる。なお、バリア層は二層以上設けられてもよい。バリア層を二層以上有する場合、それぞれが、同一の組成であってもよいし、異なる組成であってもよい。また、バリア層は、ポリエステルフィルム10の両面にそれぞれ一層以上設けられてもよい。」
イ 甲2に記載された事項
上記アから、甲2には以下の事項(以下「甲2記載事項」という。他の甲各号証についても同様。)が記載されていると認められる。
「ポリエステルフィルム10、バリア層、シーラント層21、をこの順に積層してなる積層フィルム20において、バリア層を、無機酸化物の蒸着膜からなる層とガスバリア性塗布膜からなる層で構成すること。」
(3)甲3について
ア 甲3の記載
甲3には、次の記載がある。
「【0001】
本発明は、植物由来の原料から得られたバイオマスポリエステル樹脂組成物からなる基材層を有するバリア性フィルムおよびそれを用いた積層体に関し、より詳細には、バイオマス由来のエチレングリコールをジオール成分として用いたポリエステルを含む樹脂組成物からなる基材層を有するバリア性フィルムおよびそれを用いた積層体に関する。」
「【0085】
ガスバリア性塗布膜としては、一般式R1nM(OR2)m(ただし、式中、R1、R2は、炭素数1~8の有機基を表し、Mは、金属原子を表し、nは、0以上の整数を表し、mは、1以上の整数を表し、n+mは、Mの原子価を表す。)で表される少なくとも1種以上のアルコキシドと、ポリビニルアルコ-ル系樹脂及び/又はエチレン・ビニルアルコ-ル共重合体とを含有し、さらに、ゾルゲル法触媒、酸、水、および、有機溶剤の存在下に、ゾルゲル法によって重縮合するガスバリア性組成物を調製する工程、基材フィルムの一方の面に設けた無機酸化物からなるバリア性薄膜層の上に、必要ならば、酸素ガスによるプラズマ処理面を介して、上記のゾルゲル法によって重縮合するガスバリア性組成物を塗工して塗工膜を設ける工程、上記の塗工膜を設けた基材フィルムを、20℃~180℃で、かつ、上記の基材フィルムの融点以下の温度で10秒~10分間加熱処理して、上記の基材フィルムの一方の面に設けた無機酸化物からなるバリア性薄膜層の上に、要すれば、酸素ガスによるプラズマ処理面を介して、上記のガスバリア性組成物によるガスバリア性塗布膜を形成する工程等を包含する製造工程により製造することができる。
【0086】
なお、本発明において、本発明に係るバリア性フィルムを形成するガスバリア性塗布膜としては、一般式R1nM(OR2)m(ただし、式中、R1、R2は、炭素数1~8の有機基を表し、Mは、金属原子を表し、nは、0以上の整数を表し、mは、1以上の整数を表し、n+mは、Mの原子価を表す。)で表される少なくとも1種以上のアルコキシドと、ポリビニルアルコ-ル系樹脂及び/又はエチレン・ビニルアルコ-ル共重合体とを含有し、さらに、ゾルゲル法触媒、酸、水、および、有機溶剤の存在下に、ゾルゲル法によって重縮合するガスバリア性組成物を調製し、これを使用し、基材フィルムの一方の面に設けた無機酸化物からなるバリア性薄膜層の上に、2層以上重層し、上記のガスバリア性組成物によるガスバリア性塗布膜を2層以上重層した複合ポリマー層を形成して製造することもできる。」
イ 甲3記載事項
上記アから、甲3には以下の甲3記載事項が記載されていると認められる。
「バイオポリエステル樹脂組成物からなる基材層を有するバリア性フィルムにおいて、無機酸化物層からなるバリア性薄膜層の上に形成されるガスバリア性塗布膜が、一般式R1nM(OR2)m(ただし、式中、R1、R2は、炭素数1~8の有機基を表し、Mは、金属原子を表し、nは、0以上の整数を表し、mは、1以上の整数を表し、n+mは、Mの原子価を表す。)で表される少なくとも1種以上のアルコキシドと、ポリビニルアルコ-ル系樹脂及び/又はエチレン・ビニルアルコ-ル共重合体とを含有するものである。」
(4)甲4について
ア 甲4の記載
甲4には、次の記載がある。
「【請求項1】
1分子中に2個以上の水酸基を有する樹脂(A)と、2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート(B)とを含有してなるガスバリア性接着剤用樹脂組成物において、
樹脂(A)の主骨格がポリエステル又はポリエステルポリウレタン構造であって、ポリエステル構成モノマー成分の多価カルボン酸全成分に対して、オルト配向芳香族ジカルボン酸又はその無水物の使用率が70~100質量%であり、
ポリイソシアネート(B)が、芳香族環を分子内に有する3価以上のポリイソシアネート化合物(b1)と、芳香族環を分子内に有しないポリイソシアネート化合物(b2)との混合物であるガスバリア性接着剤用樹脂組成物。
・・・
【請求項9】
樹脂(A)が、一般式(1)で表されるポリエステルポリオール(A3)である請求項1~3の何れかに記載のガスバリア性接着剤用樹脂組成物。
【化1】
[図:0001398246000003.jpg]
(式(1)中、R1~R3は、各々独立に、水素原子、又は一般式(2)
【化2】
[図:0001398246000004.jpg]
(式(2)中、nは1~5の整数を表し、Xは、置換基を有してもよい1,2-フェニレン基、1,2-ナフチレン基、2,3-ナフチレン基、2,3-アントラキノンジイル基、及び2,3-アントラセンジイル基から成る群から選ばれるアリーレン基を表し、Yは炭素原子数2~6のアルキレン基を表す)で表される基を表す。但し、R1~R3のうち少なくとも一つは、一般式(2)で表される基を表す。)
・・・
【請求項13】
樹脂(A)が、一般式(3)で表されるイソシアヌル環を有するポリエステルポリオール(A5)である請求項1~3の何れかに記載のガスバリア性接着剤用樹脂組成物。
【化3】
[図:0001398246000005.jpg]
(一般式(3)中、R1~R3は各々独立して、-(CH2)n1-OH(但しn1は2~4の整数を表す)、又は一般式(4)
【化4】
[図:0001398246000006.jpg]
(一般式(4)中、n2は2~4の整数を表し、n3は1~5の整数を表し、Xは1,2-フェニレン基、1,2-ナフチレン基、2,3-ナフチレン基、2,3-アントラキノンジイル基、及び2,3-アントラセンジイル基から成る群から選ばれ、置換基を有していてもよいアリーレン基を表し、Yは炭素原子数2~6のアルキレン基を表す。)で表される基を表す。但しR1、R2及びR3の少なくとも1つは前記一般式(4)で表される基である。)
・・・
【請求項15】
芳香族環を分子内に有しないポリイソシアネート化合物(b2)が、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート及びメタキシレンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、メチルフェニルエタンジイソシアネート、ナフタレン-1,5-ジソシアナートの水素添加物から選ばれる少なくとも一種のジイソシアネート、一価のアルコールとの反応性生物(アロファネート基含有のポリイソシアネート)と2個の水酸基を有するアルコールとの反応生成物からなる群から選ばれる請求項1~14の何れかに記載のガスバリア性接着剤用樹脂組成物。
・・・
【請求項19】
請求項1~18に記載のガスバリア性接着剤用樹脂組成物を用いた接着剤。
【請求項20】
請求項19に記載の接着剤を用いたガスバリア性フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスバリア性接着剤用樹脂組成物、該樹脂組成物を用いた接着剤、及びガスバリア性フィルムに関する。」
イ 甲4記載事項
上記アから、甲4の特に請求項1を引用する請求項9をさらに引用する請求項15の記載から以下の甲4-1記載事項が、甲4の特に請求項1を引用する請求項13をさらに引用する請求項15から以下の甲4-2記載事項が記載されていると認められる。
甲4-1記載事項
「1分子中に2個以上の水酸基を有する樹脂(A)と、2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート(B)とを含有してなり、
樹脂(A)の主骨格がポリエステル又はポリエステルポリウレタン構造であって、ポリエステル構成モノマー成分の多価カルボン酸全成分に対して、オルト配向芳香族ジカルボン酸又はその無水物の使用率が70~100質量%であり、
ポリイソシアネート(B)が、芳香族環を分子内に有する3価以上のポリイソシアネート化合物(b1)と、芳香族環を分子内に有しないポリイソシアネート化合物(b2)との混合物であり、
芳香族環を分子内に有しないポリイソシアネート化合物(b2)が、ヘキサメチレンジイソシアネートであり、
樹脂(A)が、一般式(1)で表されるポリエステルポリオール(A3)である、ガスバリア性接着剤用樹脂組成物を用いた、ガスバリア性フィルム用接着剤。
【化1】
[図:0001398246000007.jpg]
(式(1)中、R1~R3は、各々独立に、水素原子、又は一般式(2)
【化2】
[図:0001398246000008.jpg]
(式(2)中、nは1~5の整数を表し、Xは、置換基を有してもよい1,2-フェニレン基、1,2-ナフチレン基、2,3-ナフチレン基、2,3-アントラキノンジイル基、及び2,3-アントラセンジイル基から成る群から選ばれるアリーレン基を表し、Yは炭素原子数2~6のアルキレン基を表す)で表される基を表す。但し、R1~R3のうち少なくとも一つは、一般式(2)で表される基を表す。)」
甲4-2記載事項
「1分子中に2個以上の水酸基を有する樹脂(A)と、2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート(B)とを含有してなり、
樹脂(A)の主骨格がポリエステル又はポリエステルポリウレタン構造であって、ポリエステル構成モノマー成分の多価カルボン酸全成分に対して、オルト配向芳香族ジカルボン酸又はその無水物の使用率が70~100質量%であり、
ポリイソシアネート(B)が、芳香族環を分子内に有する3価以上のポリイソシアネート化合物(b1)と、芳香族環を分子内に有しないポリイソシアネート化合物(b2)との混合物であり、
芳香族環を分子内に有しないポリイソシアネート化合物(b2)が、ヘキサメチレンジイソシアネートであり、
樹脂(A)が、一般式(3)で表されるイソシアヌル環を有するポリエステルポリオール(A5)である、ガスバリア性接着剤用樹脂組成物を用いた、ガスバリア性フィルム用接着剤。
【化3】
[図:0001398246000009.jpg]
(一般式(3)中、R1~R3は各々独立して、-(CH2)n1-OH(但しn1は2~4の整数を表す)、又は一般式(4)
【化4】
[図:0001398246000010.jpg]
(一般式(4)中、n2は2~4の整数を表し、n3は1~5の整数を表し、Xは1,2-フェニレン基、1,2-ナフチレン基、2,3-ナフチレン基、2,3-アントラキノンジイル基、及び2,3-アントラセンジイル基から成る群から選ばれ、置換基を有していてもよいアリーレン基を表し、Yは炭素原子数2~6のアルキレン基を表す。)で表される基を表す。但しR1、R2及びR3の少なくとも1つは前記一般式(4)で表される基である。)」
(5)甲5について
ア 甲5の記載
甲5には、次の記載がある。
「【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、生分解性フィルム積層体に関するものであり、より特定的には、透明無機薄膜層を設けた生分解性ポリ乳酸フィルム積層体に関する。さらには、本発明により得られた生分解性フィルム積層体を用いた袋状物に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年の環境問題に対する意識の高まりから、天然素材または生分解性構成素材を利用した商品の開発が盛んに行われている。
【0003】
このような世の中の流れから、包装材料用など様々な分野でポリL乳酸フィルムの検討が実施されている。包装材料のうち、特に食品包装の分野では内容物を酸素による酸化に起因する風味の変化から守るため、ガスバリア性持つフィルムが用いられることが多い。また、近年内容物が見えるように酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化珪素/アルミニウム混合膜を施した透明無機膜が提案されている。」
「【0029】
さらに、アンカー剤がコートされたフィルムには透明無機膜層が施される。
透明無機膜層としては、無機酸化物の蒸着膜が好ましい。蒸着膜の無機酸化物としては、酸化珪素薄膜、酸化アルミニウム薄膜、酸化珪素と酸化アルミニウムの2元系の薄膜などが好ましい。」
「【0035】
このようにして得られた、無機薄膜膜を設けた生分解性フィルム積層体は、高い酸素遮断性能、高い水分遮断性能を持ち、かつ透明であり、加えて高い生分解性を持つだけでなく、無機薄膜と基材との間にアンダーコート層を設けているために高い層間接着力を持ち、皺や折り曲げなどによっても基材フィルムと無機薄膜層とが剥離することないため、様々な取り扱い後も高度のバリア性を保持する。」
「【0037】
【実施例】
ポリエステルの製造例1
DLラクチド1000部、重合度が10であるポリクリセリン(ダイセル化学PGL10:水酸基濃度850KOHmg/g)10部、開環重合触媒として、アルミニウムアセチルアセトナート1部を4つロフラスコに仕込み、窒素雰囲気下、180℃で3時間加熱溶融させることにより開環重合させ、残留ラクチドを減圧下留去させることにより、ポリエステル(I)を得た。
・・・
【0049】
実施例および比較例
各種フィルムを用いて下記に示す方法でフィルム上に各種の透明無機蒸着膜層を設けた。
・・・
【0051】
酸化アルミニウム系膜の製造
蒸着源として、3-5mm程度の大きさの粒子状のAl2O3(純度99.9%)を用い、電子ビーム蒸着法で、前記アンカーコートフィルム上に酸化アルミニウム系ガスバリア薄膜の形成を行った。加熱源として、電子銃(以下EB銃)を用い、エミッション電流を1.3Aとした。フィルム送り速度は、80m/minとし、200nm厚の酸化アルミニウム系膜を作った。又、蒸気圧は酸素ガスの供給量を調整し、1×10-5Torrとした。」
イ 甲5記載事項
上記アから、甲5には以下の甲5記載事項が記載されていると認められる。
「ポリエステルフィルム上に電子ビーム蒸着法で、透明な酸化アルミニウム系ガスバリア薄膜が得られること。」
2 対比・判断
(1)訂正発明4について
ア 対比
訂正発明4と甲1発明とを、その機能、構造または技術的意義を考慮して対比する。
甲1発明の「二軸延伸ポリエステルフィルム」は訂正発明4の「基材層」に相当し、以下同様に、「無機薄膜層」は甲1の段落【0053】~【0054】の記載からみて「バリア層」に、「接着剤層」は「接着剤層」に、「シーラント層」は「シーラント層」に、「積層フィルム」は「積層体」に、「エチレングリコール、テレフタル酸及びイソフタル酸から構成されるリサイクルポリエチレンテレフタレート」は「エチレングリコールをジオール単位とし、テレフタル酸とイソフタル酸とをジカルボン酸単位とするリサイクルポリエチレンテレフタレート」に、それぞれ相当する。
甲1発明の「二軸延伸ポリエステルフィルムと、無機薄膜層と、接着剤層と、シーラント層とをこの順に備える積層フィルム」と訂正発明4の「少なくとも、基材層(但し、下記の基材層Aを除く。)と、バリア層と、接着剤層と、シーラント層とをこの順に備える積層体」は、「少なくとも、基材層と、バリア層と、接着剤層と、シーラント層とをこの順に備える積層体」という限りにおいて一致する。
甲1発明の「蒸着法で形成された酸化アルミニウムなどの一種のみからなる無機酸化物層」と訂正発明4の「一種の酸化物からなる」と共に「酸化ケイ素からなる」「透明蒸着層」は、「一種のみの酸化物からなる蒸着層」である限りにおいて一致する。
そうすると、訂正発明4と甲1発明は、以下の点で一致する一方、以下の各点で相違する。
<一致点>
「少なくとも、基材層と、バリア層と、接着剤層と、シーラント層とをこの順に備える積層体であって、
前記基材層は、エチレングリコールをジオール単位とし、テレフタル酸とイソフタル酸とをジカルボン酸単位とするリサイクルポリエチレンテレフタレートを含み、
前記バリア層は、前記基材層に設けられ、一種のみの酸化物からなる蒸着層を含む、
積層体。」
<相違点1>
基材層に関して、訂正発明4では、「バイオマス由来のエチレングリコールをジオール単位とし、化石燃料由来のジカルボン酸をジカルボン酸単位とするバイオマスポリエステル樹脂を含んでな」る「基材層Aを除く」のに対し、甲1発明では、そのような基材層を除いているのか否かが不明な点。
<相違点2>
一種のみの酸化物からなる蒸着層に関して、訂正発明4では、「一種の酸化物からなる」と共に「酸化ケイ素からなる」「透明蒸着層」であるのに対し、甲1発明では、「蒸着法で形成された酸化アルミニウムなどの一種のみからなる無機酸化物層」である点。
<相違点3>
バリア層に関して、訂正発明4では「透明蒸着層と、前記透明蒸着層の面上に設けられたガスバリア性塗布膜と、を含」むのに対し、甲1発明では、ガスバリア性塗布膜を有することが特定されていない点。
イ 判断
事案に鑑み、相違点2について検討する。
<酸化ケイ素>について
甲1には、酸化物からなる蒸着層を構成する材料に関して、「・・・無機薄膜層を形成する材料は、薄膜にできるものなら特に制限はないが、加工性及びガスバリア性の観点から、アルミニウムを含む材料を使用することが好ましい。・・・。無機薄膜層を形成する材料の組み合わせとしては特に限定されないが、・・・、酸化ケイ素(シリカ)と酸化アルミニウム(アルミナ)との複合酸化物が好ましい。」(【0054】)と記載されており、酸化アルミニウムのみに限らず、酸化ケイ素と酸化アルミニウムとの複合酸化物についても記載されている。しかしながら、甲1においては、無機薄膜層を形成する材料として酸化アルミニウムを必須の材料としており、酸化ケイ素も併用することが記載されているとしても、酸化ケイ素のみからなるものとすることは、記載も示唆もされておらず、酸化ケイ素のみからなるものとすることには、むしろ阻害要因があるといえる。また、他の証拠にも、この点については記載も示唆もされていない。
そうすると、甲1発明において、上記相違点2に係る訂正発明4の構成を備えたものとすることは、当業者が容易に想到し得たことではない。
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、訂正発明4は、甲1~5に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(2)訂正発明5~11について
訂正発明5~11は、訂正発明4の特定事項を全て含み、さらに限定を加えるものであるから、上記(1)で検討したのと同じ理由により、訂正発明5~11は、当業者が甲1~5に基いて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
第6 むすび
以上のとおり、取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由によっては、請求項4~11に係る特許を取り消すことはできない。また、他に請求項4~11に係る特許を取り消すべき理由は発見しない。
また、請求項3に係る特許は、上記のとおり、本件訂正により削除された。これにより、申立人による特許異議の申立てについて、請求項3に係る申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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2022-700290