特許異議申立
2022-700278
材料設計システム、材料設計方法、及び材料設計プログラム
- 審判番号
- 2022-700278
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2021-534006
- 登録番号
- 6950119
- 請求日
- 2022年04月01日
- 審決日
- 2023年10月23日
- 公報発行日
- 2024年02月22日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】株式会社レゾナック
- 【権利者代理人】伊東 忠重
- 【権利者代理人】伊東 忠彦
- 【異議申立人】井上 雅恵
- 【異議申立人】日置 綾子
- 審判長/審判官
- 審判長 五十嵐 努
- 審判官 千葉 輝久
- 審判官 渡辺 努
- 分類
- P1651.113-YAA(G16C) / P1651.121-YAA(G16C) / P1651.537-YAA(G16C)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法120条の8第1項特許法135条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第120条の5第2項、特許法第126条第5項、特許法第29条第1項第3号、特許法第36条第6項第1号、特許法第29条、特許法第36条第6項、特許法第36条第6項第2号、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第6950119号発明「材料設計システム、材料設計方法、及び材料設計プログラム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第6950119号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-6〕、〔7、8〕、9、10について訂正することを認める。
特許第6950119号の請求項1-9に係る特許を維持する。
特許第6950119号の請求項10に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第6950119号の請求項1~10に係る特許についての出願は、2020年(令和2年)7月17日(優先権主張 令和元年7月23日)を国際出願日とする出願であって、令和3年9月27日にその特許権の設定登録がされ、令和3年10月13日に特許掲載公報が発行されたものである。
本件特許異議の申立ては、令和4年4月1日に特許異議申立人井上雅恵により請求項1~10に係る特許に対する特許異議の申立てがされ、令和4年4月12日に特許異議申立人日置綾子により請求項1~6、9、10に対する特許異議の申立てがされた。
当審は、令和4年7月12日付けで取消理由を通知し、令和4年9月12日に特許権者により意見書の提出及び訂正請求がされ、令和4年12月14日に特許異議申立人日置綾子により意見書が提出され、当審は、令和5年3月2日付けで訂正拒絶理由を通知し、令和5年4月5日に特許権者による意見書及び手続補正書が提出された。
さらに、当審は、令和5年5月22日付けで取消理由(決定の予告)を通知し、令和5年7月14日に特許権者により意見書の提出及び訂正請求がされ、令和5年8月23日に特許異議申立人日置綾子により意見書が提出された。
なお、令和5年7月14日に訂正請求がされたことにより、令和4年9月12日の先の訂正請求は取り下げられたものとみなす。
また、令和4年9月12日及び令和5年7月14日の訂正請求に対する特許異議申立人井上雅恵からの意見書の提出はなかった。
第2 令和5年7月14日の訂正請求による訂正の適否
1 一群の請求項1~8の訂正について
(1)訂正の内容
ア 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に
「複数の組成からなる材料・・(中略)・・材料設計システムであって、
前記設計対象材料の設計条件と、材料特性値との対応関係を入出力とするモデルの機械学習を行うためのモデル学習用インタフェイスを利用可能なエキスパート端末と、
特定の前記設計対象材料について、前記エキスパート端末により作成された前記特定の設計対象材料のための学習済みモデルを用いて、前記設計条件から前記材料特性値を、または、前記材料特性値から前記設計条件を推定するための材料設計用インタフェイスを利用可能な複数の汎用端末と、
を備える材料設計システム。」
と記載されているのを、
「複数の組成からなる材料・・(中略)・・材料設計システムであって、
前記設計対象材料の設計条件と、材料特性値との対応関係を入出力とするモデルであって、互いに異なる種類の前記設計対象材料についての複数のモデルの機械学習を行うためのモデル学習用インタフェイスを利用可能なエキスパート端末と、
特定の前記設計対象材料について、前記エキスパート端末により作成された前記特定の設計対象材料のための学習済みモデルを用いて、前記設計条件から前記材料特性値を、または、前記材料特性値から前記設計条件を推定するための材料設計用インタフェイスを利用可能な複数の汎用端末と、を備え、
前記エキスパート端末は、
作成した複数の学習済みモデルの中から、前記複数の汎用端末それぞれにおいて扱われる設計対象材料のための学習済みモデルを、前記特定の設計対象材料のための学習済みモデルとして、前記複数の汎用端末それぞれに送信する、材料設計システム。」
に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項3~6も同様に訂正する)。
イ 訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2に
「前記エキスパート端末により作成された前記学習済みモデルを保存する中間装置を備え、
前記複数の汎用端末は、前記中間装置に保存される前記学習済みモデルを利用して、前記設計条件から前記材料特性値を、または、前記材料特性値から前記設計条件を推定する、
請求項1に記載の材料設計システム。」
と記載されているのを、
「複数の組成からなる材料、または、複数の製造条件の組合せにより製造される材料を含む設計対象材料を設計するための材料設計システムであって、
前記設計対象材料の設計条件と、材料特性値との対応関係を入出力とするモデルであって、互いに異なる種類の前記設計対象材料についての複数のモデルの機械学習を行うためのモデル学習用インタフェイスを利用可能なエキスパート端末と、
特定の前記設計対象材料について、前記エキスパート端末により作成された前記特定の設計対象材料のための学習済みモデルを用いて、前記設計条件から前記材料特性値を、または、前記材料特性値から前記設計条件を推定するための材料設計用インタフェイスを利用可能な複数の汎用端末と、
前記エキスパート端末と前記複数の汎用端末との間において、ネットワーク回線を介して接続された中間装置であって、前記エキスパート端末により作成され、前記モデル学習用インタフェイスから転送された複数の前記学習済みモデルを保存する前記中間装置と、を備え、
前記複数の汎用端末は、自端末が有する材料設計用インタフェイスを介してアクセスすることで、前記中間装置に保存される前記複数の学習済みモデルのうち、アクセス権のある前記特定の設計対象材料のための学習済みモデルを利用して、前記設計条件から前記材料特性値を、または、前記材料特性値から前記設計条件を推定する、材料設計システム。」
に訂正する(請求項2の記載を引用する請求項3~6も同様に訂正する)。
ウ 訂正事項3
特許請求の範囲の請求項7に
「前記汎用端末は、・・(中略)・・を備える、請求項1~6のいずれか1項に記載の材料設計システム。」
と記載されているのを、
「複数の組成からなる材料、または、複数の製造条件の組合せにより製造される材料を含む設計対象材料を設計するための材料設計システムであって、
前記設計対象材料の設計条件と、材料特性値との対応関係を入出力とするモデルの機械学習を行うためのモデル学習用インタフェイスを利用可能なエキスパート端末と、
特定の前記設計対象材料について、前記エキスパート端末により作成された前記特定の設計対象材料のための学習済みモデルを用いて、前記設計条件から前記材料特性値を、または、前記材料特性値から前記設計条件を推定するための材料設計用インタフェイスを利用可能な複数の汎用端末と、を備え、
前記汎用端末は、・・(中略)・・を備える材料設計システム。」
に訂正する(請求項7の記載を引用する請求項8も同様に訂正する)。
(2)訂正の適否
ア 訂正事項1
(ア)目的
訂正事項1は、訂正前の請求項1の「モデル」を「互いに異なる種類の前記設計対象材料についての複数のモデル」に限定し、さらに、
「 前記エキスパート端末は、
作成した複数の学習済みモデルの中から、前記複数の汎用端末それぞれにおいて扱われる設計対象材料のための学習済みモデルを、前記特定の設計対象材料のための学習済みモデルとして、前記複数の汎用端末それぞれに送信する、」との発明特定事項を付加するものである。
したがって、訂正事項1は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
(イ)拡張・変更
訂正事項1は上記(ア)のとおり、特許請求の範囲を減縮するものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(ウ)新規事項
訂正事項1は、願書に添付した明細書の段落【0025】~【0028】及び【図1】に記載した事項に基づいて訂正したものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものである。
イ 訂正事項2
(ア)目的
訂正事項2は、訂正前の請求項1を引用する訂正前の請求項2の記載を、他の請求項を引用しないものとし、また、「モデル」を「互いに異なる種類の前記設計対象材料についての複数のモデル」に限定し、さらに、「前記エキスパート端末により作成された前記学習済みモデルを保存する中間装置」を「前記エキスパート端末と前記複数の汎用端末との間において、ネットワーク回線を介して接続された中間装置であって、前記エキスパート端末により作成され、前記モデル学習用インタフェイスから転送された複数の前記学習済みモデルを保存する前記中間装置」に限定し、また、
「前記複数の汎用端末は、前記中間装置に保存される前記学習済みモデルを利用して、前記設計条件から前記材料特性値を、または、前記材料特性値から前記設計条件を推定する」を「前記複数の汎用端末は、自端末が有する材料設計用インタフェイスを介してアクセスすることで、前記中間装置に保存される前記複数の学習済みモデルのうち、アクセス権のある前記特定の設計対象材料のための学習済みモデルを利用して、前記設計条件から前記材料特性値を、または、前記材料特性値から前記設計条件を推定する」と限定するものである。
したがって、訂正事項2は、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること、及び特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
(イ)拡張・変更
訂正事項2は上記(ア)のとおり、特許請求の範囲を減縮するものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(ウ)新規事項
訂正事項2は、願書に添付した明細書の段落【0025】~【0028】、【0033】~【0039】及び【図2】に記載した事項に基づいて訂正したものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものである。
ウ 訂正事項3
(ア)目的
訂正事項3は、訂正前の請求項1を引用する訂正前の請求項7の記載を、請求項1を引用しないものとするものである。
したがって、訂正事項3は、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。
(イ)拡張・変更
訂正事項3は上記(ア)のとおり、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(ウ)新規事項
訂正事項3は、願書に添付した請求項1、請求項7に記載した事項に基づいて訂正したものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものである。
(3)小括
以上のとおり、一群の請求項1~8の訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、同法同条第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。また、請求項7及び請求項7を引用する請求項8に係る訂正は、一群の請求項の他の請求項とは別途訂正することの求めにより、別の訂正単位とする。
2 請求項9の訂正について
(1)訂正の内容
特許請求の範囲の請求項9に
「前記設計対象材料の設計条件と、材料特性値との対応関係を入出力とするモデルの機械学習を行う学習ステップと、
特定の前記設計対象材料について、前記学習ステップにて作成された前記特定の設計対象材料のための学習済みモデルを用いて、前記設計条件から前記材料特性値を、または、前記材料特性値から前記設計条件を推定する推定ステップと、
を含む材料設計方法。」
と記載されているのを、
「モデル学習用インタフェイスを利用可能なエキスパート端末が、前記設計対象材料の設計条件と、材料特性値との対応関係を入出力とするモデルであって、互いに異なる種類の前記設計対象材料についての複数のモデルの機械学習を行う学習ステップと、
材料設計用インタフェイスを利用可能な複数の汎用端末が、特定の前記設計対象材料について、前記エキスパート端末により前記学習ステップにて作成された前記特定の設計対象材料のための学習済みモデルを用いて、前記設計条件から前記材料特性値を、または、前記材料特性値から前記設計条件を推定する推定ステップと、を含み、
前記エキスパート端末は、
作成した複数の学習済みモデルの中から、前記複数の汎用端末それぞれにおいて扱われる設計対象材料のための学習済みモデルを、前記特定の設計対象材料のための学習済みモデルとして、前記複数の汎用端末それぞれに送信する、材料設計方法。」
に訂正する。
(2)訂正の適否
ア 目的
上記訂正は、訂正前の請求項9の「前記設計対象材料の設計条件と、材料特性値との対応関係を入出力とするモデルの機械学習を行う学習ステップ」を「モデル学習用インタフェイスを利用可能なエキスパート端末が、前記設計対象材料の設計条件と、材料特性値との対応関係を入出力とするモデルであって、互いに異なる種類の前記設計対象材料についての複数のモデルの機械学習を行う学習ステップ」に限定し、また、「特定の前記設計対象材料について、前記学習ステップにて作成された前記特定の設計対象材料のための学習済みモデルを用いて、前記設計条件から前記材料特性値を、または、前記材料特性値から前記設計条件を推定する推定ステップ」を「材料設計用インタフェイスを利用可能な複数の汎用端末が、特定の前記設計対象材料について、前記エキスパート端末により前記学習ステップにて作成された前記特定の設計対象材料のための学習済みモデルを用いて、前記設計条件から前記材料特性値を、または、前記材料特性値から前記設計条件を推定する推定ステップ」に限定し、さらに、
「前記エキスパート端末は、
作成した複数の学習済みモデルの中から、前記複数の汎用端末それぞれにおいて扱われる設計対象材料のための学習済みモデルを、前記特定の設計対象材料のための学習済みモデルとして、前記複数の汎用端末それぞれに送信する、」
との発明特定事項を付加するものである。
したがって、訂正事項1は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 拡張・変更
上記訂正は上記アのとおり、特許請求の範囲を減縮するものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
ウ 新規事項
上記訂正は、願書に添付した明細書の段落【0025】~【0028】及び【図1】に記載した事項に基づいて訂正したものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものである。
(3)小括
以上のとおり、請求項9の訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、同法同条第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。
3 請求項10の訂正について
請求項10の訂正は、特許請求の範囲の請求項10を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものである。
したがって、請求項10の訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、同法同条第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。
4 訂正の適否のまとめ
以上のとおりであるから、訂正後の請求項〔1-6〕、〔7、8〕、9、10について訂正することを認める。
第3 本件発明
本件特許の請求項1~10に係る発明(以下、「本件発明1」~「本件発明10」という。)は、訂正された特許請求の範囲の請求項1~10に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
【請求項1】
複数の組成からなる材料、または、複数の製造条件の組合せにより製造される材料を含む設計対象材料を設計するための材料設計システムであって、
前記設計対象材料の設計条件と、材料特性値との対応関係を入出力とするモデルであって、互いに異なる種類の前記設計対象材料についての複数のモデルの機械学習を行うためのモデル学習用インタフェイスを利用可能なエキスパート端末と、
特定の前記設計対象材料について、前記エキスパート端末により作成された前記特定の設計対象材料のための学習済みモデルを用いて、前記設計条件から前記材料特性値を、または、前記材料特性値から前記設計条件を推定するための材料設計用インタフェイスを利用可能な複数の汎用端末と、を備え、
前記エキスパート端末は、
作成した複数の学習済みモデルの中から、前記複数の汎用端末それぞれにおいて扱われる設計対象材料のための学習済みモデルを、前記特定の設計対象材料のための学習済みモデルとして、前記複数の汎用端末それぞれに送信する、材料設計システム。
【請求項2】
複数の組成からなる材料、または、複数の製造条件の組合せにより製造される材料を含む設計対象材料を設計するための材料設計システムであって、
前記設計対象材料の設計条件と、材料特性値との対応関係を入出力とするモデルであって、互いに異なる種類の前記設計対象材料についての複数のモデルの機械学習を行うためのモデル学習用インタフェイスを利用可能なエキスパート端末と、
特定の前記設計対象材料について、前記エキスパート端末により作成された前記特定の設計対象材料のための学習済みモデルを用いて、前記設計条件から前記材料特性値を、または、前記材料特性値から前記設計条件を推定するための材料設計用インタフェイスを利用可能な複数の汎用端末と、
前記エキスパート端末と前記複数の汎用端末との間において、ネットワーク回線を介して接続された中間装置であって、前記エキスパート端末により作成され、前記モデル学習用インタフェイスから転送された複数の前記学習済みモデルを保存する前記中間装置と、を備え、
前記複数の汎用端末は、自端末が有する材料設計用インタフェイスを介してアクセスすることで、前記中間装置に保存される前記複数の学習済みモデルのうち、アクセス権のある前記特定の設計対象材料のための学習済みモデルを利用して、前記設計条件から前記材料特性値を、または、前記材料特性値から前記設計条件を推定する、材料設計システム。
【請求項3】
前記モデル学習用インタフェイスと前記材料設計用インタフェイスとの間の通信はネットワーク回線を介して行われる、
請求項1または2に記載の材料設計システム。
【請求項4】
前記モデル学習用インタフェイスと、前記材料設計用インタフェイスとは、クラウドサーバに搭載され、前記モデル学習用インタフェイスと前記材料設計用インタフェイスとの間の通信は前記クラウドサーバ内の通信で行われる、
請求項1または2に記載の材料設計システム。
【請求項5】
前記モデル学習用インタフェイスと、前記材料設計用インタフェイスとは、互いに互換性のある別個のソフトウェアに搭載される、
請求項1または2に記載の材料設計システム。
【請求項6】
前記エキスパート端末は、
前記モデルの機械学習の各種条件を設定する学習条件設定部と、
前記各種条件に基づき前記モデルの機械学習を行うモデル学習部と、
前記学習済みモデルを出力するモデル出力部と、
を備える、
請求項1~5のいずれか1項に記載の材料設計システム。
【請求項7】
複数の組成からなる材料、または、複数の製造条件の組合せにより製造される材料を含む設計対象材料を設計するための材料設計システムであって、
前記設計対象材料の設計条件と、材料特性値との対応関係を入出力とするモデルの機械学習を行うためのモデル学習用インタフェイスを利用可能なエキスパート端末と、
特定の前記設計対象材料について、前記エキスパート端末により作成された前記特定の設計対象材料のための学習済みモデルを用いて、前記設計条件から前記材料特性値を、または、前記材料特性値から前記設計条件を推定するための材料設計用インタフェイスを利用可能な複数の汎用端末と、を備え、
前記汎用端末は、
前記設計対象材料の設計条件の指定範囲を設定する設計条件設定部と、
前記設計条件設定部により設定された指定範囲内で複数の網羅予測点を生成する網羅予測点生成部と、
前記網羅予測点生成部により生成された網羅予測点を前記学習済みモデルに入力して算出した材料特性値を、前記網羅予測点の各点と紐づけたデータセットを記憶する設計条件-材料特性テーブルと、
前記設計対象材料の要求特性の指定範囲を設定する要求特性設定部と、
前記要求特性設定部により設定された要求特性を満たすデータセットを前記設計条件-材料特性テーブルから抽出する設計条件抽出部と、
を備える材料設計システム。
【請求項8】
前記汎用端末は、
前記設計条件抽出部により抽出されたデータセットの設計条件の範囲を調整する設計条件調整部を備え、
前記設計条件抽出部は、前記抽出したデータセットから、前記設計条件調整部により調整された設計条件を満たすデータセットをさらに絞り込む、
請求項7に記載の材料設計システム。
【請求項9】
複数の組成からなる材料、または、複数の製造条件の組合せにより製造される材料を含む設計対象材料を設計するための材料設計方法であって、
モデル学習用インタフェイスを利用可能なエキスパート端末が、前記設計対象材料の設計条件と、材料特性値との対応関係を入出力とするモデルであって、互いに異なる種類の前記設計対象材料についての複数のモデルの機械学習を行う学習ステップと、
材料設計用インタフェイスを利用可能な複数の汎用端末が、特定の前記設計対象材料について、前記エキスパート端末により前記学習ステップにて作成された前記特定の設計対象材料のための学習済みモデルを用いて、前記設計条件から前記材料特性値を、または、前記材料特性値から前記設計条件を推定する推定ステップと、を含み、
前記エキスパート端末は、
作成した複数の学習済みモデルの中から、前記複数の汎用端末それぞれにおいて扱われる設計対象材料のための学習済みモデルを、前記特定の設計対象材料のための学習済みモデルとして、前記複数の汎用端末それぞれに送信する、材料設計方法。
【請求項10】(削除)
第4 令和5年5月22日に通知した取消理由(決定の予告)の概要
1 (新規性)下記の請求項に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、その特許は、特許法第29条の規定に違反してされたものである。
請求項1 引用文献1または2
請求項2 引用文献1
請求項3 引用文献1または2
請求項9 引用文献1、2または4
2 (進歩性)下記の請求項に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、その特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
請求項1 引用文献1または2
請求項2 引用文献1
請求項3~6、9 引用文献1または2
3 (サポート要件)請求項9に係る発明は発明の詳細な説明に記載したものではないから、その特許は、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
[引用文献一覧]
引用文献1:特許第6509303号公報(特許異議申立人井上雅恵が提出した甲第1号証)
引用文献2:特開2019-86817号公報(特許異議申立人日置綾子が提出した甲第2号証)
引用文献4:再公表特許WO98/06550号(特許異議申立人 日置綾子が提出した甲第1号証)
第5 当審の判断
1 取消理由通知書に記載した取消理由1(特許法第29条第1項第3号)、取消理由2(特許法第29条第2項)について
(1)本件発明1について
ア 引用文献1
引用文献1には、以下の事項が記載されている。なお、下線は当審により付したものである。
「【0020】
(システム構成)
図1は、本発明の一実施形態の全体のシステム構成図である。本実施形態では、図1に示すように、本システムの各種処理を実行する情報処理装置である配合設計支援サーバ101には、本システムで使用する各種マスターを備えたマスターデータ群102および配合設計データなどを格納する配合設計データベース103が接続されている。また、配合設計支援サーバ101は、各種クライアント端末111~113とネットワーク104を介して接続し、各種クライアント端末からの要求等により、各種データベースにアクセスして配合設計支援を実行する。
【0021】
本実施形態では、図3の機能ブロック図に示すように1つの配合設計支援サーバ101で、各種処理、例えばマスター管理モジュール301によるマスター管理処理、配合処理モジュール302による配合設計処理、配合検索モジュール303による配合検索処理、シミュレーション処理モジュール304によるシミュレーション処理などを実行するが、これに限られず、さらに多くの処理を実行することができる。ここで、少なくとも以上4つの処理は配合設計支援サーバ101で実行するように記載したが、これとは別に複数のサーバを用意して以上の各種処理の機能を分担させることもできる。
【0022】
また、マスターデータ群102には、ユーザの各グループを管理するためのグループマスターおよびユーザマスター、製品の組成についての各情報を管理するための組成マスター、製品の成分についての各情報を管理するための成分マスター、製品の製造プロセスについての各情報を管理するためのプロセスマスター、製品に対する実験等により得られる評価内容である物性についての各情報を管理するための物性マスターなどを含むが、これに限られず各種のデータをマスターとして整理して格納することができる。」
「【0026】
クライアント端末111~113は、例えば、各種ユーザがシステム管理、マスター管理等の管理業務に使用したり、配合設計支援に使用したりするが、ネットワーク104を介して配合設計支援サーバ101と通信できるものであればパソコンに限られず、いずれかの端末装置を使用することができ、タブレット等の移動端末を使用することもできる。また、例えばタブレット端末とする場合、本実施形態でネットワーク104との接続は、例えば携帯電話の回線や、Wi-fi、BLUETOOTH(登録商標)等の無線ネットワークにより行うことができる。」
「【0031】
図3は、本実施形態のシステムの機能ブロック図であり、図4は、本実施形態の配合登録処理の一例を示すフローチャートである。以下に詳述するように、配合設計支援サーバ101の配合処理モジュール302は、図4に示すフローチャートに沿って配合設計データの入力処理の支援を行い、所定の製品について組成データ、成分データ、プロセスデータを入力していき、そのような配合で製造される物性を入力して、配合設計データの入力は終了する(ステップ401~408)。」
「【0034】
本実施形態では、以上のようにして配合設計データを入力し、配合設計データベース103に格納することにより、配合設計データを管理する。上記では、配合設計データの入力について説明したが、検索等により所望の配合設計データを抽出して、さらに新たな実験結果を加えて新たなデータとすることもできるし、修正削除など本技術分野で知られたいずれのデータベースの処理も適用することができる。
(本実施形態のシミュレーション処理)
以上説明したように、配合設計データベース103により、過去の実験データが配合設計データという態様で管理され、所望のデータを検索して、必要なデータ、例えば所定の組成で何種類かの工程で製造した製品がどのような物性を有するか等を容易に知ることができる。しかし、データベース上に存在しない組み合わせ、例えば未採用の配合割合により配合されて製造したり、未採用のプロセス条件を適用して製造されたりした場合に得られるであろう製品の物性は通常の検索では発見することができない。
【0035】
本実施形態では、シミュレーションを行うことで、物性等の予測を行う。シミュレーションによる予測としては、上記のように配合データおよびプロセスデータから得られるであろう物性データを予測する物性予測、および所望の物性からそのような製品を製造するための配合又はプロセスを予測する配合予測がある。物性予測も配合予測も基本的には同様であるが、以下、先ず物性予測について説明する。
【0036】
物性予測を実行する場合、まず近い製品の配合設計データを検索し、得られた配合設計データに基づいて、所望の配合比率を入力したり、プロセスの条件を変更したりすることにより、新たな配合データおよびプロセスデータの組合せについて、シミュレーションを行い、得られるであろう製品の物性を予測する。本実施形態では、重回帰モデルによりシミュレーションを行うが、これに限らず本技術分野で知られたいずれかの多変量解析を用いてシミュレーションを行なうことができる。
【0037】
図8~11を参照して、物性シミュレーションの処理を説明する。図8は、本実施形態のシミュレーションの対象となる製品の配合設計データの画面の一例を示す図であり、図9は、本実施形態の重回帰モデルの画面の例を示す図である。図10は、本実施形態の配合設計データの物性予測のシミュレーション画面の一例を示す図であり、図11は、本実施形態の物性シミュレーション処理のフローチャートである。
【0038】
本実施形態の配合設計支援サーバ101のシミュレーション処理モジュール304は、対象となる製品の配合設計データが選択されると(ステップ1101)、各データをX軸801、Y軸802に割り振る(ステップ1102)。図8に示すようにX軸:予測に使うデータ(組成データ、プロセスデータ)およびY軸:予測したいデータ(物性データ)として重回帰モデルを作成することにより、X軸の値を変更した場合におけるY軸の値が予測できるようになる。このデータに基づいて、重回帰モデルを生成する(ステップ1103)。本実施形態の重回帰モデルは、対象製品の実績データをもとに、シミュレーションをするための予測式であり、具体的にはY=a+bX1+cX2+dX3・・・である。本式において、aは切片の係数であり、b、c、d・・・は、予測に使うデータの回帰係数である。すなわち、図8に示すX軸、Y軸に割り振ったデータに基づいて、重回帰分析を行い、切片の係数および回帰係数を求める。ここで、切片の係数および重回帰係数は、本技術分野で知られたいずれかの方法により取得するものとし、ここでは詳細には言及しない。
【0039】
図9を参照すると、Y軸の列901には図8で割り振った物性データが並び各物性データごとに換算係数902が設定される。ここで換算係数は、上記で得られた重回帰分析の各係数から各組成材料の量の単位などを換算して計算した係数であり、基本的に組成の量を設定していけばその配合により製造される製品の物性の値(Y値)が得られる。具体的には、図10に示すようなシミュレーション入力画面1001で各組成の項目に数値を入力することにより、物性の値が計算されて物性出力画面1004に出力される(ステップ1104)。例えば、No.38の組成データ1002を、予測入力フィールド1003にコピーし、カーボンCの値を62.5から65に変えて、このデータでシミュレーションをすると、予測物性データ1006が得られる。No.38の組成データ1002に対応するNo.38の物性データ1005と予測物性データ1006を比較すると、カーボンCの値を変えただけであるが、物性データは全般的に変化しているのが理解できる。
【0040】
以上により、本実施形態では重回帰モデルを用いて、配合を変化させた場合の物性の変化をシミュレーションで取得することができる。なお、上述の説明では、基本的に選択された配合データの全組成について回帰係数を求める方法を説明したが、これに限られることなく、あらかじめ指定した組成だけについて重回帰モデルを作成して、シミュレーションを行うことができる。理論的には、変化しない組成はモデルに含めなくても類似の結果が予想されるが、製品や組成の特性、その他の条件でより的確なシミュレーションとなることもあり、また、因子を減らせるので効率的なシミュレーションも可能となる。また、同様に対象となる物性を限定する、予測データ限定機能を指定して物性予測をすることもでき、同様の効果を得ることができる。
【0041】
次に、配合予測について説明すると、基本的には同様である。物性予測の場合と同様に、対象となる配合設計データを選択した後、上記の物性予測とは逆に、X軸に物性を、Y軸に組成を割り振り、重回帰モデルを生成する。モデルが生成されれば、上記の物性予測と同様に予測式を算出して、換算係数を求め、設定された物性の値に対して、組成を予測する。ただし、ここで、物性データは、それぞれ独立している点が物性予測の場合と異なる。すなわち、例えば強度の実験と耐久性の実験とは相互に関連はないので、物性予測の場合は強度の実験結果が耐久性の実験結果に影響を及ぼすことはなく、それぞれ独立した結果を得ることができる。しかし、配合予測の場合、組成原料の配合割合を規定することになる配合データは、その配合割合自体が物性に影響するので、所定の物性データとなる組成の組合せは無限になり特定できない可能性がある。
【0042】
例えば、A、B、Cという材料を使用するような3種類以上の材料の組合せの場合、理論的には重回帰モデルでシミュレーションが可能だが、実際にはそれぞれの材料の配合割合が相互に影響を受けるので、最も確からしい組合せになる保証はなく、精度の高い予測は容易ではない。したがって、組成予測を行う場合は材料の種類を1種類あるいはある程度限定した数とすることにより、精度の高い配合予測が可能となる。本実施形態のシステムは、上記した予測データ限定機能を有するので、配合予測シミュレーションの際に予測すべき組成を限定しておくことができる。具体的に、図12を参照して説明すると、配合予測シミュレーション画面の物性設定画面1201に所望の物性を設定した後、予測データ限定設定1203で対象となる配合データのうち、特に予測したい組成のみを指定しておけば、その組成に限定して予測することができる。その結果は予測表示画面1202に表示される。上記したように設定データの種類も設定データ限定設定1204を使用することにより、限定することができる。
【0043】
(グループマスターおよびユーザマスター処理)
本実施形態のシステムを使用するユーザは、使用目的や会社内の組織などにより、様々な属性を有する。グループマスターおよびユーザマスターは、そのようなユーザおよび属性を管理するマスターデータである。グループマスターおよびユーザマスターに登録することにより、各ユーザは自己が属するグループごと、および個人ごとに使用権限などを定められ、権限のない者の不用意なアクセスを防止することができる。例えば、図13に示すユーザマスターでは、各ユーザごとに各種データの閲覧や各種機能の使用を規定している。
【0044】
以上のように、グループマスターおよびユーザマスターは、ユーザの使用の確保と、セキュリティの確保のために主に使用されるが、本実施形態では、同一のマスターを使用しながら、ユーザグループを分割して、各グループが使用しないデータはアクセスできないようにすることができる。これにより、誤入力を防止して、使用時の煩雑さを軽減させながら、管理者は1つのマスターを横断的に管理するようにすることができる。例えば、1つのマスターでゴム製品を扱うユーザ、樹脂製品を扱うユーザなどを設定して、1つのマスターで管理する組成材料のうちゴム製品担当のユーザと樹脂製品担当のユーザとで扱うことができる材料を規定することができる。具体的には、原料・社員・配合・物性などに権限を持たせ、グループマスターにゴム製品担当のグループ(事業部1)および樹脂製品担当のグループ(事業部2)を登録しておく。ここで、ユーザマスターでユーザにグループ(権限)を設定し、グループにはゴム、樹脂、プラスチック、化粧品等を割り当てる。作業はグループ毎に管理されており、本実施形態のシステムにログインしたユーザは、そのユーザに設定されたグループの作業に関するデータしか参照できないので、配合を例えば作業やグループに紐付けておけば、ゴム製品にしか使用しない配合を樹脂製品担当のユーザが参照することができないようにすることができる。逆に、樹脂製品にしか使用しない配合はゴム製品の担当のユーザには参照できないようにすることができる。」
以上の記載の特に下線部によれば、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。
(引用発明1)
システムの各種処理を実行する情報処理装置である配合設計支援サーバ101には、システムで使用する各種マスターを備えたマスターデータ群102および配合設計データなどを格納する配合設計データベース103が接続され、また、配合設計支援サーバ101は、各種クライアント端末111~113とネットワーク104を介して接続し、各種クライアント端末からの要求等により、各種データベースにアクセスして配合設計支援を実行する、システムであって、(【0020】)
クライアント端末111~113は、例えば、各種ユーザがシステム管理、マスター管理等の管理業務に使用したり、配合設計支援に使用したりするが、ネットワーク104を介して配合設計支援サーバ101と通信できるものであればパソコンに限られず、いずれかの端末装置を使用することができ、(【0026】)
配合設計支援サーバ101の配合処理モジュール302は、配合設計データの入力処理の支援を行い、所定の製品について組成データ、成分データ、プロセスデータを入力していき、そのような配合で製造される物性を入力して、配合設計データの入力は終了し、(【0031】)
シミュレーションによる予測としては、配合データおよびプロセスデータから得られるであろう物性データを予測する物性予測、および所望の物性からそのような製品を製造するための配合又はプロセスを予測する配合予測があり、(【0035】)
物性予測を実行する場合、まず近い製品の配合設計データを検索し、得られた配合設計データに基づいて、所望の配合比率を入力したり、プロセスの条件を変更したりすることにより、新たな配合データおよびプロセスデータの組合せについて、シミュレーションを行い、得られるであろう製品の物性を予測し、(【0036】)
配合設計支援サーバ101のシミュレーション処理モジュール304は、対象となる製品の配合設計データが選択されると、各データをX軸801、Y軸802に割り振り、X軸:予測に使うデータ(組成データ、プロセスデータ)およびY軸:予測したいデータ(物性データ)として重回帰モデルを作成することにより、X軸の値を変更した場合におけるY軸の値が予測できるように、このデータに基づいて、重回帰モデルを生成し、重回帰モデルは、対象製品の実績データをもとに、シミュレーションをするための予測式であり、具体的にはY=a+bX1+cX2+dX3・・・であり、本式において、aは切片の係数であり、b、c、d・・・は、予測に使うデータの回帰係数であり、(【0038】)
シミュレーション入力画面1001で各組成の項目に数値を入力することにより、物性の値が計算されて物性出力画面1004に出力され、(【0039】)
次に、配合予測について説明すると、物性予測の場合と同様に、対象となる配合設計データを選択した後、上記の物性予測とは逆に、X軸に物性を、Y軸に組成を割り振り、重回帰モデルを生成し、モデルが生成されれば、上記の物性予測と同様に予測式を算出して、換算係数を求め、設定された物性の値に対して、組成を予測し、(【0041】)
システムを使用するユーザは、使用目的や会社内の組織などにより、様々な属性を有し、グループマスターおよびユーザマスターは、そのようなユーザおよび属性を管理するマスターデータであり、グループマスターおよびユーザマスターに登録することにより、各ユーザは自己が属するグループごと、および個人ごとに使用権限などを定められ、権限のない者の不用意なアクセスを防止することができ、(【0043】)
例えば、1つのマスターでゴム製品を扱うユーザ、樹脂製品を扱うユーザなどを設定して、1つのマスターで管理する組成材料のうちゴム製品担当のユーザと樹脂製品担当のユーザとで扱うことができる材料を規定することができ、具体的には、原料・社員・配合・物性などに権限を持たせ、グループマスターにゴム製品担当のグループ(事業部1)および樹脂製品担当のグループ(事業部2)を登録しておき、ここで、ユーザマスターでユーザにグループ(権限)を設定し、グループにはゴム、樹脂、プラスチック、化粧品等を割り当てる、(【0044】)
システム。
イ 引用文献2
引用文献2には、以下の事項が記載されている。なお、下線は当審により付したものである。
「【技術分野】
【0001】
本発明は、化学品や食品等の製造において、製品の設計を支援するための設計支援装置及び設計支援方法に関する。」
「【0023】
本実施形態における設計支援装置の処理は、基礎データ登録フェーズと、予測モデル構築フェーズと、探索フェーズとに分けられ、順に処理される。以下に一連の処理の流れをフェーズごとに説明する。
【0024】
基礎データ登録フェーズでは、基礎データとして、過去に原料を組み合わせて所定の製品(化学品)を生成する実験を行った際のデータであって、所定の特性を有する製品に対応する(1)製品(化学品)の原料組み合わせ、(2)原料のコスト(単位コスト)ならびに、原料の、分子量などの組成、(3)光沢や流動性など、製品(化学品)の物性に関する各種の基礎データをデータベースに登録する。
【0025】
次に、予測モデル構築フェーズでは、基礎データ登録フェーズ(実験データ登録フェーズ)でデータベースに登録された基礎データに基づいて、原料の組成比率から物性を予測する予測モデル(シミュレータ)を構築する。
【0026】
組成比率とは、その物質を構成する元素や化合物などの化学成分、ビタミン、カルシウム、タンパク質、糖分等の栄養成分、効能、効果等を含む。また、熱処理等によって化学反応が起こる場合はその反応前後の情報を含めてもよい。
【0027】
探索フェーズでは、まず製品の設計者であるユーザが望む物性情報を表すクエリデータ、ならびに、どの程度要求に対して食い違いを許すかをあらわすパラメータを受け付ける。次に、製品(化学品)の物性を満足する製品の組成比率の探索を、前記予測モデルを用いて実行する。」
「【0033】
<システム構成>
次に、図1を用いて、本実施形態における設計支援装置1の構成を説明する。図1は、本実施形態におけるシステム構成ならびに機能構成を示す構成図である。
図1において、本実施形態における設計支援装置1では、データ管理や物性の予測、原料の組み合わせの探索を行う計算サーバ11と、ユーザがデータの入出力を行う操作端末12を少なくとも備える。計算サーバ11は、データ登録部111、予測モデル構築部112、探索部113、データ管理部114を有する。
【0034】
操作端末12は、操作部121を有する。設計支援装置1の各構成要素は相互にLAN(Local Area Network)等のネットワーク13で接続される。なお、本実施形態では、各構成要素がLANで接続されるとしたが、WWW(World Wide Web)経由で接続されていてもかまわない。また、計算サーバ11、操作端末12の要素数は2以上であってもよい。」
「【0093】
<処理フロー>
次に、図13を用いて、本実施形態における設計支援装置1の基礎データ登録フェーズの処理フローを説明する。図13は、本実施形態における基礎データ登録フェーズ(実験データ登録)の処理フローを示すフローチャートである。この処理は、CPU1H101が、データ登録プログラムとして機能するデータ登録部111を起動することによって開始される。
【0094】
まず、データ登録部111が、操作端末12の操作部121を介してユーザより入力される実験レシピデータ1D1を、データベースとしてのデータ管理部114に登録する(1F101)。
【0095】
次に、データ登録部111が、操作端末12の操作部121を介してユーザより入力されるコスト組成データ1D2を、データ管理部114に登録する(ステップ1F102)。
【0096】
最後に、データ登録部111が、操作端末12の操作部121を介してユーザより入力される実験物性データ1D3を、データ管理部114に登録し、本処理を終了する(ステップ1F103)。この際、データ管理部114は、登録された各種データ(情報)を管理対象として管理する管理手段として機能する。
【0097】
次に、図14を用いて、本実施形態における設計支援装置1の予測モデル構築フェーズの処理フローを説明する。図14は、本実施形態における予測モデル学習の処理フローを示すフローチャートである。この処理は、CPU1H101が、予測モデル構築プログラムとして機能する予測モデル構築部112を起動することによって開始される。
【0098】
まず、予測モデル構築部112が、基礎データ登録フェーズでデータ管理部114に登録された実験レシピデータ1D1と、コスト組成データ1D2を用いて、各実験における組成比率(原料の組成比率)を算出する(ステップ1F201)。
【0099】
次に、予測モデル構築部112が、前述の各実験における組成比率と、基礎データ登録フェーズでデータ管理部114に登録された実験物性データ1D3を用いて予測モデル(シミュレータ)を学習する(ステップ1F202)。
【0100】
本実施形態では、予測モデルとしてCGAN(Conditional Generative Adversarial Nets)を用いるものとする。すなわち、ある組成比率の条件下での物性の生成モデルをニューラルネットワークで構築する。後述の探索フェーズでは、CGANから例えば100点のサンプルを生成し、その平均や分散を使うことができる。
【0101】
なお、本実施形態ではCGANを用いるものとしたが、他の統計や機械学習のモデルを用いることができる。例えば、線形回帰モデル、サポートベクトル回帰、決定木、その他のニューラルネットワークなどを必要に応じて1つもしくは複数を組み合わせて用いることができる。なお、組成比率を探索する際は、予測モデルが軽量である(処理時間が早い)ことが有効となる場合がある。
【0102】
そういった場合には、組成比率探索の終盤のみ、もしくは、最終的なばらつき(分散など)の評価を除いて、線形回帰モデルなどを使うなど、複数の予測モデルを適宜使い分けてもよい。
【0103】
また、本実施形態では各種の実験データから予測モデルを学習によって構築する方法を取り扱っているが、第一原理的手法により予測結果を計算できる場合には、予測モデルとしてその計算式を採用してもよい。
【0104】
ただし、本実施形態では実験データから予測モデルを学習によって構築するものとし、さらに、簡単のため1つの予測モデルのみを取り扱った場合を記載するものとする。また、本実施形態では、製造条件などを予測モデルに含んでいないが、必要に応じてそれを条件(condition)として入力してもよい。
【0105】
次に、図15を用いて、本実施形態における設計支援装置1の探索フェーズの処理フローを説明する。図15は、本実施形態における原料組み合わせ探索の処理フローを示すフローチャートである。この処理は、CPU1H101が、探索プログラムとして機能する探索部113を起動することによって開始される。
【0106】
まず、探索部113が、操作端末12の操作部121を介してユーザより入力されるクエリデータ1D4(物性情報を含む特性要求情報)と、原料フィルタデータ1D5を受付け、データ管理部114に登録する(ステップ1F301)。
【0107】
次に、探索部113が、操作端末12の操作部121を介してユーザより入力される組成食い違いパラメータ1D6を受付け、データ管理部114に登録する(ステップ1F302)。
【0108】
次に、探索部113が、クエリデータ1D4で指定された物性を満足する組成比率(製品の組成比率)を探索する(ステップ1F303)。探索には多目的最適化手法の標準的な手法であるNSGA-II(Non-dominated Sorting Genetic Algorithm II)を用いる。
【0109】
多目的最適化手法を採用することによって、特定の物性や、2つ以上の物性を重み付けした合成値に単目的最適化する場合に比べ多様性を維持した解候補を得ることができる。これは、最終的にレシピ(原料組合せ)の多様性を維持する上で有効である。
【0110】
また、クエリデータ1D4において、探索タイプ1D403で以下、以上、範囲などで指定した条件に関しては、解候補作成時に指定条件に合致しない解候補は生成しないようにすることで対応する。
【0111】
例えば、曲げ剛性が170~220の範囲となるように制約が与えられている状況で、差分進化などで生成された解候補の曲げ剛性が230となるような場合、その解候補は採用せず、制約を満たす解候補が見つかるまで解候補生成を繰り返すようにする。なお、本実施形態では多目的最適化手法であるNSGA-IIを採用するものとしたが、他の最適化手法を用いても良い。
【0112】
また、前記の予測モデルでは、各物性のサンプルが得られているので、予測値を示す平均値(期待値)だけでなく、ブレ具合・ばらつき(分散等)も評価可能であるが、本実施形態では平均値(期待値)だけを用いるものとするが、必要に応じて、たとえば予測にブレ具合・ばらつきが大きい場合にはペナルティをかけるといったことをすることも可能である。
【0113】
次に、探索部113が、組成比率(製品の組成比率)が組成食い違いパラメータ1D6で指定された食い違い(組成食い違いパラメータ1D6で指定された許容範囲内)に収まり、かつ、原料フィルタデータ1D5で指定された原料(使用する原料)のみを用いて、コストが小さくなるレシピ(原料組合せ)を探索する(ステップ1F304)。探索には、線形計画法を用いる。
【0114】
すなわち、製品の組成比率の範囲(例えば、12.1-5<組成「1」<12.1+5)を制約条件とし、コストを最小化するような問題を設定し、最良な解を探索する。なお、「12.1」は、組成「1」の組成比率を示し、「5」は、許容食い違い(%)を示す。
【0115】
線形計画法は高速に計算可能なソルバーが商用、非商用でも多数存在しているため、このように定式化することでクエリを満足する低コストなレシピを高速に発見することができる。なお、不使用とした原料に関しては、決定変数に組み込まないようにしておく。また、使用する原料の種類は一般的に少ないほうが好まれる。そこで、2種、3種、4種といった形で使用する原料を絞った結果を作成する。
【0116】
また、探索した結果、実行可能な解が見つからない場合は、製品の組成比率の範囲の制約を段階的に緩和していく。例えば、組成「1」の組成比率の目標値が10%で、許容食い違いが1%の場合、最初は組成「1」の組成比率が11%より小さい、組成「1」の組成比率が9%より大きい、という2つの制約が課されている状況であるが、自動緩和がOKであれば、組成「1」の組成比率が11.5%より小さい、組成「1」の組成比率が8.5%より大きい、といった具合に0.5%ずつ制約を緩和していく。なお、本実施形態は、コストが各原料の使用量に関して線形であることを仮定している。
【0117】
もし、製造費などが、その仮定を崩すような場合、例えば、量が一定未満になるとコストが一定になるような場合、を考慮する必要がある場合などでは、線形計画法以外の探索手法を用いることもできる。
【0118】
また、制約の緩和方法も、0.5%ずつ緩和するという方法は一例にすぎず、別の方法で緩和してもよい。つまり、所定の制約条件に対応するレシピである解が得られない場合に、段階的に条件を緩和するように設定してもよい。
【0119】
次に、探索部113が、ステップ1F304で得られた探索結果である、探索結果物性データ1D7、探索結果組成比率データ1D8、探索結果レシピデータ1D9、探索結果食い違いデータ1D10を、データ管理部114に登録する(ステップ1F305)。
【0120】
ステップ1F305の処理において、2種、3種、4種といった形で使用する原料を絞った結果を作成する方法は、単純には、2種類の原料を選ぶすべての組合せ、3種類の原料を選ぶすべての組合せで問題を設定し、設定された問題を解く。ただし、原料の総数が多い場合などにより、レシピ探索の計算負荷が問題となる場合は、交換モンテカルロ法などを使って使用する原料の組合せも探索するようにしてもよい。
【0121】
最後に、操作部121が、各種探索結果と、関連する過去実績(物性の近い実験レシピデータ1D1、コスト組成データ1D2、実験物性データ1D3)をユーザに提示し、処理を終了する(ステップ1F306)。つまり、これらの情報を操作部121の画面上に表示する。
【0122】
上記したように、原料の組成比率に対する物性の予測モデルを構築しておき、第一段階目の探索では、製品の物性に関する目的関数ならびに制約条件を構成し、製品の組成比率を決定変数として探索する。
【0123】
次に、第二段階目の探索では、原料のコスト(単位コスト)と製品の組成比率を使って目的関数ならびに制約条件を構成し、原料組合せを決定変数として探索することで原料(原料の組み合わせ)を得ることができる。」
「
[図:0001406664000001.jpg]
」
「
[図:0001406664000002.jpg]
」
「
[図:0001406664000003.jpg]
」
以上の記載の特に下線部によれば、引用文献2には、次の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。なお、【0034】には、「操作端末12の要素数は2以上であってもよい」と記載されているから、操作端末の要素数が2以上である場合を引用発明2として認定した。
(引用発明2)
化学品や食品等の製造において、製品の設計を支援するための設計支援装置であって、(【0001】)
データ管理や物性の予測、原料の組み合わせの探索を行う計算サーバ11と、ユーザがデータの入出力を行う操作端末12を少なくとも備え、計算サーバ11は、データ登録部111、予測モデル構築部112、探索部113、データ管理部114を有し、(【0033】)
操作端末12は、操作部121を有し、設計支援装置1の各構成要素は相互にLAN等のネットワーク13で接続され、計算サーバ11、操作端末12の要素数は2以上であり、(【0034】)
設計支援装置1の基礎データ登録フェーズの処理フローは、(【0093】)
まず、データ登録部111が、操作端末12の操作部121を介してユーザより入力される実験レシピデータ1D1を、データベースとしてのデータ管理部114に登録し(1F101)、次に、データ登録部111が、操作端末12の操作部121を介してユーザより入力されるコスト組成データ1D2を、データ管理部114に登録し(ステップ1F102)、最後に、データ登録部111が、操作端末12の操作部121を介してユーザより入力される実験物性データ1D3を、データ管理部114に登録し、本処理を終了する(ステップ1F103)ものであり、(【0094】-【0096】、図3-図5)
設計支援装置1の予測モデル構築フェーズの処理フローは、(【0097】)
まず、予測モデル構築部112が、基礎データ登録フェーズでデータ管理部114に登録された実験レシピデータ1D1と、コスト組成データ1D2を用いて、各実験における組成比率(原料の組成比率)を算出し(ステップ1F201)、(【0098】)
次に、予測モデル構築部112が、前述の各実験における組成比率と、基礎データ登録フェーズでデータ管理部114に登録された実験物性データ1D3を用いて予測モデル(シミュレータ)を学習する(ステップ1F202)ものであり、予測モデルとして、ある組成比率の条件下での物性の生成モデルをニューラルネットワークで構築し、製造条件などを必要に応じて条件として入力してもよく、(【0099】-【0100】、【0104】)
設計支援装置1の探索フェーズの処理フローは、(【0105】)
まず、探索部113が、操作端末12の操作部121を介してユーザより入力されるクエリデータ1D4(物性情報を含む特性要求情報)と、原料フィルタデータ1D5を受付け、データ管理部114に登録し(ステップ1F301)、次に、探索部113が、操作端末12の操作部121を介してユーザより入力される組成食い違いパラメータ1D6を受付け、データ管理部114に登録し(ステップ1F302)、次に、探索部113が、クエリデータ1D4で指定された物性を満足する組成比率(製品の組成比率)を探索し(ステップ1F303)、次に、探索部113が、組成比率(製品の組成比率)が組成食い違いパラメータ1D6で指定された食い違い(組成食い違いパラメータ1D6で指定された許容範囲内)に収まり、かつ、原料フィルタデータ1D5で指定された原料(使用する原料)のみを用いて、コストが小さくなるレシピ(原料組合せ)を探索し(ステップ1F304)、次に、探索部113が、ステップ1F304で得られた探索結果である、探索結果物性データ1D7、探索結果組成比率データ1D8、探索結果レシピデータ1D9、探索結果食い違いデータ1D10を、データ管理部114に登録し(ステップ1F305)、最後に、操作部121が、各種探索結果と、関連する過去実績(物性の近い実験レシピデータ1D1、コスト組成データ1D2、実験物性データ1D3)をユーザに提示し、処理を終了し(ステップ1F306)、(【0106】-【0108】、【0113】、【0119】、【0121】)
上記したように、原料の組成比率に対する物性の予測モデルを構築しておき、第一段階目の探索では、製品の物性に関する目的関数ならびに制約条件を構成し、製品の組成比率を決定変数として探索し、次に、第二段階目の探索では、原料のコスト(単位コスト)と製品の組成比率を使って目的関数ならびに制約条件を構成し、原料組合せを決定変数として探索することで原料(原料の組み合わせ)を得ることができる、(【0122】-【0123】)
設計支援装置。
ウ 本件発明1と引用発明1との対比
(ア)材料設計システム
引用発明1は、「配合設計支援サーバ101は、各種クライアント端末111~113とネットワーク104を介して接続し、各種クライアント端末からの要求等により、各種データベースにアクセスして配合設計支援を実行する、システム」(【0020】)であって、「所定の製品について組成データ、成分データ、プロセスデータを入力していき」(【0031】)、「配合データおよびプロセスデータから得られるであろう物性データを予測する物性予測、および所望の物性からそのような製品を製造するための配合又はプロセスを予測する配合予測」(【0035】)を行うシステムである。
引用発明1の上記のような所定の製品は、本件発明1の「複数の組成からなる材料、または、複数の製造条件の組合せにより製造される材料を含む設計対象材料」に相当するから、本件発明1と引用発明1は、「複数の組成からなる材料、または、複数の製造条件の組合せにより製造される材料を含む設計対象材料を設計するための材料設計システム」である点で一致する。
(イ)エキスパート端末
引用発明1は、「配合設計支援サーバ101のシミュレーション処理モジュール304は、対象となる製品の配合設計データが選択されると、各データをX軸801、Y軸802に割り振り、X軸:予測に使うデータ(組成データ、プロセスデータ)およびY軸:予測したいデータ(物性データ)として重回帰モデルを作成することにより、X軸の値を変更した場合におけるY軸の値が予測できるように、このデータに基づいて、重回帰モデルを生成」(【0038】)するものである。
また、生成される重回帰モデルは、「ゴム製品」や「樹脂製品」などの互いに異なる複数の製品(【0044】)についての複数のモデルである。
本件発明1における「機械学習」とは、明細書の段落【0059】によれば、「回帰」が含まれており、引用発明1の上記「重回帰モデルを作成」することは、本件発明1でいう「機械学習」といえるから、引用発明1の「X軸:予測に使うデータ(組成データ、プロセスデータ)およびY軸:予測したいデータ(物性データ)として重回帰モデルを作成」することは、本件発明1の「前記設計対象材料の設計条件と、材料特性値との対応関係を入出力とするモデルであって、互いに異なる種類の前記設計対象材料についての複数のモデルの機械学習を行う」ことに相当する。
また、引用発明1における、そのような重回帰モデルの作成を含む「配合設計支援」は、【0020】によれば、「各種クライアント端末からの要求等により」実行されるものであり、重回帰モデルの作成を実行する「各種クライアント端末111~113」が、重回帰モデルの作成を行うためのインタフェイスを利用可能であることは明らかである。
したがって、本件発明1と引用発明1は、「前記設計対象材料の設計条件と、材料特性値との対応関係を入出力とするモデルであって、互いに異なる種類の前記設計対象材料についての複数のモデルの機械学習を行うためのモデル学習用インタフェイスを利用可能な」端末を備える点で共通する。
しかしながら、「モデル学習用インタフェイスを利用可能な端末」が、本件発明1では、「エキスパート端末」であるのに対し、引用発明1では、各種クライアント端末111~113である点で両者は相違する。
(ウ)複数の汎用端末
引用発明1は、「重回帰モデルは、対象製品の実績データをもとに、シミュレーションをするための予測式であり、具体的にはY=a+bX1+cX2+dX3・・・であり、本式において、aは切片の係数であり、b、c、d・・・は、予測に使うデータの回帰係数であり」(【0038】)、「シミュレーション入力画面1001で各組成の項目に数値を入力することにより、物性の値が計算されて物性出力画面1004に出力され」(【0039】)るものである。
引用発明1のそのようなシミュレーションの動作は、本件発明1の「特定の前記設計対象材料について、端末により作成された前記特定の設計対象材料のための学習済みモデルを用いて、前記設計条件から前記材料特性値を、」「推定する」ことに相当する。
また、引用発明1は、「次に、配合予測について説明すると、物性予測の場合と同様に、対象となる配合設計データを選択した後、上記の物性予測とは逆に、X軸に物性を、Y軸に組成を割り振り、重回帰モデルを生成し、モデルが生成されれば、上記の物性予測と同様に予測式を算出して、換算係数を求め、設定された物性の値に対して、組成を予測する」(【0041】)ものであるから、引用発明1のそのような動作は、本件発明1の「特定の前記設計対象材料について、端末により作成された前記特定の設計対象材料のための学習済みモデルを用いて、」「前記材料特性値から前記設計条件を推定する」ことに相当する。
また、引用発明1において、上記のようなシミュレーションや予測を行う「各種クライアント端末111~113」が、そのためのインタフェイスを利用可能であることは明らかである。
したがって、本件発明1と引用発明1とは、「特定の前記設計対象材料について、端末により作成された前記特定の設計対象材料のための学習済みモデルを用いて、前記設計条件から前記材料特性値を、または、前記材料特性値から前記設計条件を推定するための材料設計用インタフェイスを利用可能な複数の」端末を備える点で共通する。
しかしながら、「材料設計用インタフェイスを利用可能な複数の端末」が、本件発明1では、「汎用端末」であるのに対し、引用発明1では、各種クライアント端末111~113である点で両者は相違する。
(エ)エキスパート端末の送信
本件発明1では、「前記エキスパート端末は、作成した複数の学習済みモデルの中から、前記複数の汎用端末それぞれにおいて扱われる設計対象材料のための学習済みモデルを、前記特定の設計対象材料のための学習済みモデルとして、前記複数の汎用端末それぞれに送信する」のに対し、引用発明1では、各種クライアント端末111~113は、そのようなものではない点で両者は相違する。
(オ)一致点、相違点
以上をまとめると、本件発明1と引用発明1とは、次の一致点、相違点があるといえる。
(一致点)
複数の組成からなる材料、または、複数の製造条件の組合せにより製造される材料を含む設計対象材料を設計するための材料設計システムであって、
前記設計対象材料の設計条件と、材料特性値との対応関係を入出力とするモデルであって、互いに異なる種類の前記設計対象材料についての複数のモデルの機械学習を行うためのモデル学習用インタフェイスを利用可能な端末と、
特定の前記設計対象材料について、端末により作成された前記特定の設計対象材料のための学習済みモデルを用いて、前記設計条件から前記材料特性値を、または、前記材料特性値から前記設計条件を推定するための材料設計用インタフェイスを利用可能な複数の端末と、
を備える材料設計システム。
(相違点1-1)
「モデル学習用インタフェイスを利用可能な端末」、「材料設計用インタフェイスを利用可能な複数の端末」が、それぞれ、本件発明1では、「エキスパート端末」、「汎用端末」であって、「前記エキスパート端末は、作成した複数の学習済みモデルの中から、前記複数の汎用端末それぞれにおいて扱われる設計対象材料のための学習済みモデルを、前記特定の設計対象材料のための学習済みモデルとして、前記複数の汎用端末それぞれに送信する」のに対し、引用発明1では、各種クライアント端末111~113は、そのようなものではない点。
エ 相違点1-1についての検討
引用発明1における「各種クライアント端末111~113」は、配合設計支援に使用するものではあるものの、組成データ、成分データ、プロセスデータなどの配合設計データの入力や重回帰モデルの生成(本件発明1でいう「モデルの機械学習」)は、配合設計支援サーバ101の配合処理モジュール302やシミュレーション処理モジュール304で行われ、また、物性予測や配合予測(本件発明1でいう「推定」)も、配合設計支援サーバ101のシミュレーション処理モジュール304で行われるから、重回帰モデルは、常に配合設計支援サーバ101内にあるものであって、各種クライアント端末111~113のいずれかから他のクライアント端末へ送信するものではない。
また、引用文献1には、各種クライアント端末111~113のいずれかで複数の重回帰モデルを生成し、生成した複数の重回帰モデルの中の特定の重回帰モデルを他のクライアント端末へ送信することは記載も示唆もされていないから、引用発明1において、そのように構成する動機があるとはいえない。
したがって、引用発明1において、各種クライアント端末111~113のいずれかで生成した複数の重回帰モデルの中から、他の各種クライアント端末111~113に、そこで扱われる特定のモデルを送信するようにすること、すなわち、本件発明1の「前記エキスパート端末は、作成した複数の学習済みモデルの中から、前記複数の汎用端末それぞれにおいて扱われる設計対象材料のための学習済みモデルを、前記特定の設計対象材料のための学習済みモデルとして、前記複数の汎用端末それぞれに送信する」ことが当業者に容易に想到し得るとはいえない。
よって、本件発明1は、引用文献1に記載された発明ではない。
また、本件発明1は、引用発明1に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
オ 本件発明1と引用発明2との対比
(ア)材料設計システム
引用発明2は、「製品の設計を支援するための設計支援装置」(【0001】)であり、「実験物性データ1D3を用いて予測モデル(シミュレータ)を学習する(ステップ1F202)ものであり、予測モデルとして、ある組成比率の条件下での物性の生成モデルをニューラルネットワークで構築し、製造条件などを必要に応じて条件として入力」(【0099】-【0100】、【0104】)するものであるから、本件発明1と引用発明2は、「複数の組成からなる材料、または、複数の製造条件の組合せにより製造される材料を含む設計対象材料を設計するための材料設計システム」である点で一致する。
(イ)エキスパート端末
引用発明2は、「2以上の操作端末12」(【0033】、【0034】)を備え、「基礎データ登録フェーズ」(【0093】)で、「操作端末12の操作部121を介してユーザより入力される実験レシピデータ1D1・・・コスト組成データ1D2・・・実験物性データ1D3を・・・登録し」(【0094】-【0096】、図3-図5)、「予測モデル構築フェーズ」(【0097】)で、「登録された実験レシピデータ1D1と、コスト組成データ1D2を用いて、各実験における組成比率(原料の組成比率)を算出し」(【0098】)、「予測モデル構築部112が、前述の各実験における組成比率と、・・・登録された実験物性データ1D3を用いて予測モデル(シミュレータ)を学習するもの」(【0099】)であり、「操作端末12」が、上記のような予測モデル(シミュレータ)を学習するためのインタフェイスを利用可能であることは明らかであるから、本件発明1と引用発明2は、「前記設計対象材料の設計条件と、材料特性値との対応関係を入出力とするモデルの機械学習を行うためのモデル学習用インタフェイスを利用可能な」端末を備えるといえる点で共通する。
しかしながら、「モデル学習用インタフェイスを利用可能な端末」が、本件発明1では、「互いに異なる種類の前記設計対象材料についての複数のモデルの機械学習を行うためのモデル学習用インタフェイスを利用可能なエキスパート端末」であるのに対し、引用発明2では、2以上の操作端末12は、そのようなものではない点で両者は相違する。
(ウ)複数の汎用端末
引用発明2は、「2以上の操作端末12」(【0033】、【0034】)を備え、「探索フェーズ」(【0105】)で、「操作端末12の操作部121を介してユーザより入力されるクエリデータ1D4(物性情報を含む特性要求情報)・・・を受付け、・・・登録し、・・・探索部113が、クエリデータ1D4で指定された物性を満足する組成比率(製品の組成比率)を探索し、・・・レシピ(原料組合せ)を探索し・・・、探索結果組成比率データ1D8・・・をユーザに提示し、・・・上記したように、原料の組成比率に対する物性の予測モデルを構築しておき、・・・原料組合せを決定変数として探索することで原料(原料の組み合わせ)を得ることができる」(【0106】-【0108】、【0113】、【0119】、【0121】-【0123】)ものであり、「操作端末12」が、上記のような探索をするためのインタフェイスを利用可能であることは明らかであるから、本件発明1と引用発明2は、「特定の前記設計対象材料について、端末により作成された前記特定の設計対象材料のための学習済みモデルを用いて、前記設計条件から前記材料特性値を、または、前記材料特性値から前記設計条件を推定するための材料設計用インタフェイスを利用可能な複数の」端末を備えるといえる点で共通する。
しかしながら、「材料設計用インタフェイスを利用可能な複数の端末」が、本件発明1では、「汎用端末」であるのに対し、引用発明2では、2以上の操作端末12である点で両者は相違する。
なお、引用発明2には、「前記設計条件から前記材料特性値を推定する」ことについては記載されていないが、本件発明1は、「前記設計条件から前記材料特性値を、または、前記材料特性値から前記設計条件を推定する」もの、すなわち、2方向の推定を“または”で択一的にするものであると解釈し得るから、上記のように共通点を認定できる。
(エ)学習済みモデルの送信
本件発明1は、「前記エキスパート端末は、作成した複数の学習済みモデルの中から、前記複数の汎用端末それぞれにおいて扱われる設計対象材料のための学習済みモデルを、前記特定の設計対象材料のための学習済みモデルとして、前記複数の汎用端末それぞれに送信する」のに対し、引用発明2は、そのようなものではない点で両者は相違する。
(オ)一致点、相違点
以上によれば、本件発明1と引用発明2とは、次の一致点、相違点があるといえる。
(一致点)
複数の組成からなる材料、または、複数の製造条件の組合せにより製造される材料を含む設計対象材料を設計するための材料設計システムであって、
前記設計対象材料の設計条件と、材料特性値との対応関係を入出力とするモデルの機械学習を行うためのモデル学習用インタフェイスを利用可能な端末と、
特定の前記設計対象材料について、端末により作成された前記特定の設計対象材料のための学習済みモデルを用いて、前記設計条件から前記材料特性値を、または、前記材料特性値から前記設計条件を推定するための材料設計用インタフェイスを利用可能な複数の端末と、
を備える材料設計システム。
(相違点1-2(1))
「モデル学習用インタフェイスを利用可能な端末」、「材料設計用インタフェイスを利用可能な複数の端末」が、本件発明1では、「互いに異なる種類の前記設計対象材料についての複数のモデルの機械学習を行うためのモデル学習用インタフェイスを利用可能なエキスパート端末」、「汎用端末」であるのに対し、引用発明2では、2以上の操作端末12である点。
(相違点1-2(2))
本件発明1は、「前記エキスパート端末は、作成した複数の学習済みモデルの中から、前記複数の汎用端末それぞれにおいて扱われる設計対象材料のための学習済みモデルを、前記特定の設計対象材料のための学習済みモデルとして、前記複数の汎用端末それぞれに送信する」のに対し、引用発明2は、そのようなものではない点。
カ 相違点1-2(1)、(2)についての検討
引用発明2における2以上の操作端末12は、製品の設計の支援に使用するものではあるものの、予測モデルの学習・構築(本件発明1でいう「モデルの機械学習」)は、計算サーバ11の予測モデル構築部112で行われ、また、原料の組合せを得る探索(本件発明1でいう「推定」)も、計算サーバ11の探索部113で行われるから、予測モデルは、常に計算サーバ11内にあるものであって、2以上の操作端末12のいずれかから他の操作端末12へ送信するものではない。
また、引用文献2には、2以上の操作端末12のいずれかで互いに異なる種類の設計対象についての複数の予測モデルを生成し、生成した複数の予測モデルの中の特定の予測モデルを他の操作端末12へ送信することは記載も示唆もされていないから、引用発明2において、そのように構成する動機があるとはいえない。
したがって、引用発明2において、2以上の操作端末12のいずれかで生成した複数の予測モデルの中から、他の操作端末12に、そこで扱われる特定のモデルを送信するようにすること、すなわち、本件発明1の「前記エキスパート端末は、作成した複数の学習済みモデルの中から、前記複数の汎用端末それぞれにおいて扱われる設計対象材料のための学習済みモデルを、前記特定の設計対象材料のための学習済みモデルとして、前記複数の汎用端末それぞれに送信する」ことが当業者に容易に想到し得るとはいえない。
よって、本件発明1は、引用文献2に記載された発明ではない。
また、本件発明1は、引用発明2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(2)本件発明2について
ア 本件発明2と引用発明1との対比
(ア)材料設計システム
引用発明1は、「配合設計支援サーバ101は、各種クライアント端末111~113とネットワーク104を介して接続し、各種クライアント端末からの要求等により、各種データベースにアクセスして配合設計支援を実行する、システム」(【0020】)であって、「所定の製品について組成データ、成分データ、プロセスデータを入力していき」(【0031】)、「配合データおよびプロセスデータから得られるであろう物性データを予測する物性予測、および所望の物性からそのような製品を製造するための配合又はプロセスを予測する配合予測」(【0035】)を行うシステムである。
引用発明1の上記のような所定の製品は、本件発明2の「複数の組成からなる材料、または、複数の製造条件の組合せにより製造される材料を含む設計対象材料」に相当するから、本件発明2と引用発明1は、「複数の組成からなる材料、または、複数の製造条件の組合せにより製造される材料を含む設計対象材料を設計するための材料設計システム」である点で一致する。
(イ)エキスパート端末
引用発明1は、「配合設計支援サーバ101のシミュレーション処理モジュール304は、対象となる製品の配合設計データが選択されると、各データをX軸801、Y軸802に割り振り、X軸:予測に使うデータ(組成データ、プロセスデータ)およびY軸:予測したいデータ(物性データ)として重回帰モデルを作成することにより、X軸の値を変更した場合におけるY軸の値が予測できるように、このデータに基づいて、重回帰モデルを生成」(【0038】)するものである。
また、生成される重回帰モデルは、「ゴム製品」や「樹脂製品」などの互いに異なる複数の製品(【0044】)についての複数のモデルである。
本件発明2における「機械学習」とは、明細書の段落【0059】によれば、「回帰」が含まれており、引用発明1の上記「重回帰モデルを作成」することは、本件発明2でいう「機械学習」といえるから、引用発明1の「X軸:予測に使うデータ(組成データ、プロセスデータ)およびY軸:予測したいデータ(物性データ)として重回帰モデルを作成」することは、本件発明2の「前記設計対象材料の設計条件と、材料特性値との対応関係を入出力とするモデルであって、互いに異なる種類の前記設計対象材料についての複数のモデルの機械学習を行う」ことに相当する。
また、引用発明1における、そのような重回帰モデルの作成を含む「配合設計支援」は、【0020】によれば、「各種クライアント端末からの要求等により」実行されるものであり、重回帰モデルの作成を実行する「各種クライアント端末111~113」が、重回帰モデルの作成を行うためのインタフェイスを利用可能であることは明らかである。
したがって、本件発明2と引用発明1は、「前記設計対象材料の設計条件と、材料特性値との対応関係を入出力とするモデルであって、互いに異なる種類の前記設計対象材料についての複数のモデルの機械学習を行うためのモデル学習用インタフェイスを利用可能な」端末を備える点で共通する。
しかしながら、「モデル学習用インタフェイスを利用可能な端末」が、本件発明2では、「エキスパート端末」であるのに対し、引用発明1では、各種クライアント端末111~113である点で両者は相違する。
(ウ)複数の汎用端末
引用発明1は、「重回帰モデルは、対象製品の実績データをもとに、シミュレーションをするための予測式であり、具体的にはY=a+bX1+cX2+dX3・・・であり、本式において、aは切片の係数であり、b、c、d・・・は、予測に使うデータの回帰係数であり」(【0038】)、「シミュレーション入力画面1001で各組成の項目に数値を入力することにより、物性の値が計算されて物性出力画面1004に出力され」(【0039】)るものである。
引用発明1のそのようなシミュレーションの動作は、本件発明2の「特定の前記設計対象材料について、端末により作成された前記特定の設計対象材料のための学習済みモデルを用いて、前記設計条件から前記材料特性値を、」「推定する」ことに相当する。
また、引用発明1は、「次に、配合予測について説明すると、物性予測の場合と同様に、対象となる配合設計データを選択した後、上記の物性予測とは逆に、X軸に物性を、Y軸に組成を割り振り、重回帰モデルを生成し、モデルが生成されれば、上記の物性予測と同様に予測式を算出して、換算係数を求め、設定された物性の値に対して、組成を予測する」(【0041】)ものであるから、引用発明1のそのような動作は、本件発明2の「特定の前記設計対象材料について、端末により作成された前記特定の設計対象材料のための学習済みモデルを用いて、」「前記材料特性値から前記設計条件を推定する」ことに相当する。
また、引用発明1において、上記のようなシミュレーションや予測を行う「各種クライアント端末111~113」が、そのためのインタフェイスを利用可能であることは明らかである。
したがって、本件発明2と引用発明1とは、「特定の前記設計対象材料について、端末により作成された前記特定の設計対象材料のための学習済みモデルを用いて、前記設計条件から前記材料特性値を、または、前記材料特性値から前記設計条件を推定するための材料設計用インタフェイスを利用可能な複数の」端末を備える点で共通する。
しかしながら、「材料設計用インタフェイスを利用可能な複数の端末」が、本件発明2では、「汎用端末」であるのに対し、引用発明1では、各種クライアント端末111~113である点で両者は相違する。
(エ)中間装置
引用発明1の「配合設計支援サーバ101」は、「各種クライアント端末111~113とネットワーク104を介して接続し、各種クライアント端末からの要求等により、各種データベースにアクセスして配合設計支援を実行する」(【0020】)ものであり、上述したように複数の製品について重回帰モデルを生成して物性予測、配合予測をする(【0036】、【0038】、【0041】)ものであるから、配合設計支援サーバ101には、生成した複数の重回帰モデルが保存されており、本件発明2における、複数の端末にネットワーク回線を介して接続された、複数の学習済みモデルを保存する中間装置に対応するものである。
また、前記(イ)、(ウ)で述べたように、「各種クライアント端末111~113」は、モデル学習用インタフェイス、材料設計用インタフェイスを利用可能な複数の端末である。
したがって、本件発明2と引用発明1とは、「前記モデル学習用インタフェイス、前記材料設計用インタフェイスを利用可能な複数の端末にネットワーク回線を介して接続された中間装置であって、複数の前記学習済みモデルを保存する前記中間装置」を備えるといえる点で共通する。
しかしながら、「前記モデル学習用インタフェイス、前記材料設計用インタフェイスを利用可能な複数の端末にネットワーク回線を介して接続された中間装置であって、複数の前記学習済みモデルを保存する前記中間装置」が、本件発明2では、「前記エキスパート端末と前記複数の汎用端末との間において、ネットワーク回線を介して接続された中間装置であって、前記エキスパート端末により作成され、前記モデル学習用インタフェイスから転送された複数の前記学習済みモデルを保存する前記中間装置」であるのに対し、引用発明1では、配合設計支援サーバ101は、そのようなものではない点で両者は相違する。
(オ)複数の汎用端末のアクセス、推定
引用発明1のシステムを使用する各ユーザは、「自己が属するグループごと、および個人ごとに使用権限などを定められ、権限のない者の不用意なアクセスを防止することができ」(【0043】)、各ユーザは、「ゴム製品担当のグループ(事業部1)」や「樹脂製品担当のグループ(事業部2)」などに属しており(【0044】)、グループ(事業部)は、独自のアクセス権のある端末を有することが普通であるから、引用発明1の各種クライアント端末111~113にはアクセス権があり、引用発明1は、該アクセス権を用いて、配合設計支援サーバ101にアクセスして、重回帰モデルによりシミュレーション、予測を行うものであるといえる。
したがって、本件発明2と引用発明1とは、「前記材料設計用インタフェイスを利用可能な複数の端末は、自端末が有する材料設計用インタフェイスを介してアクセスすることで、前記中間装置に保存される前記複数の学習済みモデルのうち、アクセス権のある前記特定の設計対象材料のための学習済みモデルを利用して、前記設計条件から前記材料特性値を、または、前記材料特性値から前記設計条件を推定する」点で共通するといえる。
しかしながら、「前記材料設計用インタフェイスを利用可能な複数の端末」が、本件発明2では「前記複数の汎用端末」であるのに対し、引用発明1ではそうではない点で両者は相違する。
(カ)一致点、相違点
以上をまとめると、本件発明2と引用発明1とは、次の一致点、相違点があるといえる。
(一致点)
複数の組成からなる材料、または、複数の製造条件の組合せにより製造される材料を含む設計対象材料を設計するための材料設計システムであって、
前記設計対象材料の設計条件と、材料特性値との対応関係を入出力とするモデルであって、互いに異なる種類の前記設計対象材料についての複数のモデルの機械学習を行うためのモデル学習用インタフェイスを利用可能な端末と、
特定の前記設計対象材料について、前記エキスパート端末により作成された前記特定の設計対象材料のための学習済みモデルを用いて、前記設計条件から前記材料特性値を、または、前記材料特性値から前記設計条件を推定するための材料設計用インタフェイスを利用可能な複数の端末と、
前記モデル学習用インタフェイス、前記材料設計用インタフェイスを利用可能な複数の端末にネットワーク回線を介して接続された中間装置であって、複数の前記学習済みモデルを保存する前記中間装置と、を備え、
前記材料設計用インタフェイスを利用可能な複数の端末は、自端末が有する材料設計用インタフェイスを介してアクセスすることで、前記中間装置に保存される前記複数の学習済みモデルのうち、アクセス権のある前記特定の設計対象材料のための学習済みモデルを利用して、前記設計条件から前記材料特性値を、または、前記材料特性値から前記設計条件を推定する、材料設計システム。
(相違点2-1(1))
「モデル学習用インタフェイスを利用可能な端末」、「材料設計用インタフェイスを利用可能な複数の端末」が、それぞれ、本件発明2では、「エキスパート端末」、「汎用端末」であるのに対し、引用発明1では、各種クライアント端末111~113である点。
(相違点2-1(2))
「前記モデル学習用インタフェイス、前記材料設計用インタフェイスを利用可能な複数の端末にネットワーク回線を介して接続された中間装置であって、複数の前記学習済みモデルを保存する前記中間装置」が、本件発明2では、「前記エキスパート端末と前記複数の汎用端末との間において、ネットワーク回線を介して接続された中間装置であって、前記エキスパート端末により作成され、前記モデル学習用インタフェイスから転送された複数の前記学習済みモデルを保存する前記中間装置」であり、「前記複数の汎用端末は、自端末が有する材料設計用インタフェイスを介してアクセスすることで、前記中間装置に保存される前記複数の学習済みモデルのうち、アクセス権のある前記特定の設計対象材料のための学習済みモデルを利用して、前記設計条件から前記材料特性値を、または、前記材料特性値から前記設計条件を推定する」のに対し、引用発明1では、配合設計支援サーバ101は、そのようなものではない点。
イ 相違点2-1(1)、(2)についての検討
引用発明1は、各種クライアント端末111~113からの要求等により、配合設計支援を実行するシステムであって、配合設計支援である、重回帰モデルの生成、及び、該重回帰モデルによる物性予測、配合予測(シミュレーション)は、各種クライアント端末111~113のうちのあるクライアント端末からの要求により、配合設計支援サーバ101で実行される(【図11】を参照)。すなわち、あるクライアント端末を操作することで、配合設計支援サーバ101で1つのモデルを生成し、続けて同じクライアント端末でそのモデルによる予測(シミュレーション)を実行するものである。
したがって、引用発明1において、あるクライアント端末で異なる種類の複数のモデルを生成してサーバに転送して保存し、(上記あるクライアント端末と異なる端末も含む)複数のクライアント端末でそれぞれ特定のモデルにアクセスして予測を行う(本件発明2でいう「前記エキスパート端末により作成され、前記モデル学習用インタフェイスから転送された複数の前記学習済みモデルを保存する」、「前記複数の汎用端末は、自端末が有する材料設計用インタフェイスを介してアクセスすることで、前記中間装置に保存される前記複数の学習済みモデルのうち、アクセス権のある前記特定の設計対象材料のための学習済みモデルを利用して、前記設計条件から前記材料特性値を、または、前記材料特性値から前記設計条件を推定する」)ようにする動機は見当たらない。
よって、本件発明2は、引用文献1に記載された発明ではない。
また、本件発明2は、引用発明1に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(3)本件発明3~6について
本件発明3~6は、本件発明1または2にさらに発明特定事項を付加した発明であり、それぞれ引用発明1と対比すると、少なくとも、上記「相違点1-1」または「相違点2-1(1)及び相違点2-1(2)」を有する。また、引用発明2と対比すると、少なくとも、上記「相違点1-2」を有する。
これらの相違点についての検討は上述のとおりである。
よって、本件発明3は、引用文献1に記載された発明ではなく、引用文献2に記載された発明でもない。
また、本件発明3~6は、引用発明1または引用発明2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(4)本件発明9について
ア 引用文献1、2に記載された発明との対比・判断
本件発明9は、システムの発明である本件発明1の発明を方法としたものである。
したがって、上記「(1)本件発明1について」の本件発明1と引用文献1、2に記載された発明との対比・判断と同様に、本件発明9と引用文献1、2に記載された発明との対比・判断をすることができる。
該対比・判断によれば、本件発明9は、引用文献1に記載された発明ではなく、引用文献2に記載された発明でもない。
また、本件発明9は、引用文献1または引用文献2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
イ 引用文献4
引用文献4には、以下の事項が記載されている。なお、下線は当審により付したものである。
「技術分野
本発明は、多成分系材料の設計方法、最適化解析装置及び多成分系材料の最適化解析プログラムを記録した記録媒体にかかり、特に、多成分から構成される多成分系材料の材料設計、例えばタイヤ用ゴム配合設計に用いることが可能な多成分系材料の設計方法、最適化解析装置及び多成分系材料の最適化解析プログラムを記録した記録媒体に関する。」(第8頁第4-9行)
「発明を実施するための最良の形態
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。本実施の形態は、最適なゴム配合を求める最適化装置に本発明を適用したものである。第1実施の形態の最適化装置では、高等動物の神経回路網が工学的にモデル化された非線形予測技術である学習後のニューラル・ネットワークを変換系として最適化計算によって多成分材料の最適な配合を求めている。
図1には、本発明である材料最適化の実施をするための最適化装置30の概略を示した。この最適化装置30は、データ等を入力するためのキーボード10、予め記憶されたプログラムに従って非線形化予測手法によるニューラルネットワークを用いて多成分から構成される多成分系材料の構成材料の構成比率等からその機械的挙動を予測すると共に制約条件を満たしかつ目的関数を最適(例えば、最大または最小)にする設計変数を演算するコンピュータ本体12、及びコンピュータ本体12の演算結果等を表示するCRT14から構成されている。」(第19頁第24行-第20頁第8行)
「次に、非線形演算部32におけるニューラルネットワークの学習の処理の詳細を図6を参照して説明する。本実施の形態では、多成分系材料の構成比率及び製造条件の各値によってゴム部材を形成すると共に、形成されたゴム部材の機械的挙動を表す各値を予め測定する。このゴム部材を異なる構成比率及び製造条件の複数について形成し測定することによって、これらの多成分系材料の構成比率及び製造条件の各値と、その機械的挙動を表す各値との対応を実験データとし、学習時に用いる複数の教師データとしている。なお、複数の教師データのうち所定数(例えば、全体の90%)の実験データを学習データとすると共に、それ以外(例えば、残り10%)の実験データをテストデータとしている。これは実験データを、ニューラルネットワークの学習時に用いるデータと、学習が終了したニューラルネットワークが最適に学習がなされたかを確認するデータとに用いるためである。また、これら構成比率及び製造条件の各値を入力教師データとすると共に、ゴム部材の機械的挙動を表す各値を出力教師データとしている。
まず、ステップ200では、予め求めた、学習データ及びテストデータを読み取る。次のステップ202では、ニューラルネットワークにおける各ユニットのの結合係数(重み)及びオフセット値を予め定めた値に設定することによって初期化する。次のステップ204では、構成比率及び製造条件が既知の複数の学習データを用いてニューラルネットワークを学習させるため、中間層及び出力層の各々のユニットの誤差を求める。
出力層の誤差は学習データの機械的挙動に対する差を誤差とすることができる。各結合係数及びオフセット値の少なくとも1つを僅かづつ変化させることによって出力層の誤差、すなわちユニットの誤差が最小になるようにすることができる。また、中間層の誤差は、出力層の誤差を用いて誤差逆伝搬法等の逆計算により求めることができる。
次のステップ206では、上記求めた各結合係数及びオフセット値を更新(書換え)して、次のステップ208においてその更新された各結合係数及びオフセット値によるニューラルネットワークによってテストデータの各々をテストしてテスト結果の値としてゴム部材の機械的挙動を表すデータを得る。次のステップ210では、上記ステップ208で求めたテスト結果の値が収束判定の基準である所定範囲内の値か否かを判別することにより収束したか否かを判断するか、または上記の処理を所定回数繰り返ししたか否かを判断し、肯定判断の場合には本ルーチンを終了する。一方、否定判断の場合にはステップ204へ戻り、上記処理を繰り返す。これによって、学習データを入力した場合に、中間層及び出力層の各々のユニットの誤差が最小になるように各結合係数及びオフセット値が定まる。
このようにして、構成比率及び製造条件が既知の複数の実験データを用いてニューラルネットワークを学習させる。すなわち、教師信号に対するニューラルネットワークの出力層からの出力値の誤差が最小となるように学習される。このように、学習することによって非線形演算部32では、構成比率及び製造条件の値が入力されると、ゴム部材の機械的挙動を表す値を出力することになる。」(第24頁第5行-第25頁第16行)
以上の記載の特に下線部によれば、引用文献4には、次の発明(以下、「引用発明4」という。)が記載されていると認められる。
(引用発明4)
多成分から構成される多成分系材料の材料設計、例えばタイヤ用ゴム配合設計に用いることが可能な多成分系材料の設計方法であって、
高等動物の神経回路網が工学的にモデル化された非線形予測技術である学習後のニューラル・ネットワークを変換系として最適化計算によって多成分材料の最適な配合を求めており、
構成比率及び製造条件が既知の複数の実験データを用いてニューラルネットワークを学習させ、すなわち、教師信号に対するニューラルネットワークの出力層からの出力値の誤差が最小となるように学習され、このように、学習することによって非線形演算部32では、構成比率及び製造条件の値が入力されると、ゴム部材の機械的挙動を表す値を出力することになる、
多成分系材料の設計方法。
ウ 本件発明9と引用発明4との対比
(ア)材料設計方法
引用発明4は、「多成分から構成される多成分系材料の材料設計、例えばタイヤ用ゴム配合設計に用いることが可能な多成分系材料の設計方法」であって、「構成比率及び製造条件が既知の複数の実験データを用いてニューラルネットワークを学習」させる方法である。
したがって、本件発明9と引用発明4は、「複数の組成からなる材料、または、複数の製造条件の組合せにより製造される材料を含む設計対象材料を設計するための材料設計方法」である点で一致する。
(イ)学習ステップ
引用発明4は、「高等動物の神経回路網が工学的にモデル化された非線形予測技術である学習後のニューラル・ネットワークを変換系」とするものであり、「構成比率及び製造条件が既知の複数の実験データを用いてニューラルネットワークを学習させ、すなわち、教師信号に対するニューラルネットワークの出力層からの出力値の誤差が最小となるように学習され、このように、学習することによって非線形演算部32では、構成比率及び製造条件の値が入力されると、ゴム部材の機械的挙動を表す値を出力する」ものである。
したがって、本件発明9と引用発明4は、「前記設計対象材料の設計条件と、材料特性値との対応関係を入出力とするモデルの機械学習を行う学習ステップ」を含む点で共通する。
しかしながら、該学習ステップが、本件発明9は、「モデル学習用インタフェイスを利用可能なエキスパート端末」が、「互いに異なる種類の前記設計対象材料についての複数のモデルの機械学習を行う」のに対し、引用発明4は、そのようなものではない点で両者は相違する。
(ウ)推定ステップ
引用発明4は、「学習することによって非線形演算部32では、構成比率及び製造条件の値が入力されると、ゴム部材の機械的挙動を表す値を出力する」ものである。
したがって、本件発明9と引用発明4とは、「特定の前記設計対象材料について、前記学習ステップにて作成された前記特定の設計対象材料のための学習済みモデルを用いて、前記設計条件から前記材料特性値を、または、前記材料特性値から前記設計条件を推定する推定ステップ」を含む点で共通する。
しかしながら、該推定するステップが、本件発明9は、「材料設計用インタフェイスを利用可能な複数の汎用端末」が、「エキスパート端末」により作成された学習済みモデルを用いて推定するのに対し、引用発明4はそうではない点で両者は相違する。
(エ)学習済みモデルの送信
本件発明9は、「前記エキスパート端末は、作成した複数の学習済みモデルの中から、前記複数の汎用端末それぞれにおいて扱われる設計対象材料のための学習済みモデルを、前記特定の設計対象材料のための学習済みモデルとして、前記複数の汎用端末それぞれに送信する」のに対し、引用発明4はそうではない点で両者は相違する。
(オ)一致点、相違点
以上をまとめると、本件発明9と引用発明4とは、次の一致点、相違点があるといえる。
(一致点)
複数の組成からなる材料、または、複数の製造条件の組合せにより製造される材料を含む設計対象材料を設計するための材料設計方法であって、
前記設計対象材料の設計条件と、材料特性値との対応関係を入出力とするモデルの機械学習を行う学習ステップと、
特定の前記設計対象材料について、前記学習ステップにて作成された前記特定の設計対象材料のための学習済みモデルを用いて、前記設計条件から前記材料特性値を、または、前記材料特性値から前記設計条件を推定する推定ステップと、を含む、
材料設計方法。
(相違点9-4(1))
「前記設計対象材料の設計条件と、材料特性値との対応関係を入出力とするモデルの機械学習を行う学習ステップ」が、本件発明9は「モデル学習用インタフェイスを利用可能なエキスパート端末」が、「互いに異なる種類の前記設計対象材料についての複数のモデルの機械学習を行う」のに対し、引用発明4は、そのようなものではない点。
(相違点9-4(2))
「特定の前記設計対象材料について、前記学習ステップにて作成された前記特定の設計対象材料のための学習済みモデルを用いて、前記設計条件から前記材料特性値を、または、前記材料特性値から前記設計条件を推定する推定ステップ」が、本件発明9は、「材料設計用インタフェイスを利用可能な複数の汎用端末」が、「エキスパート端末」により作成された学習済みモデルを用いて推定するのに対し、引用発明4はそうではない点。
(相違点9-4(3))
本件発明9は、「前記エキスパート端末は、作成した複数の学習済みモデルの中から、前記複数の汎用端末それぞれにおいて扱われる設計対象材料のための学習済みモデルを、前記特定の設計対象材料のための学習済みモデルとして、前記複数の汎用端末それぞれに送信する」のに対し、引用発明4はそうではない点。
エ 相違点9-4(1)、(2)、(3)についての検討
引用発明4は、多成分から構成される多成分系材料の材料設計、例えばタイヤ用ゴム配合設計に用いることが可能な多成分系材料の設計方法であって、ニューラルネットワークを学習させ、学習することによって、構成比率及び製造条件の値が入力されると、ゴム部材の機械的挙動を表す値を出力するものである。
引用発明4において、「モデル学習用インタフェイスを利用可能なエキスパート端末」が、「互いに異なる種類の前記設計対象材料についての複数のモデルの機械学習を行う」ようにし、「材料設計用インタフェイスを利用可能な複数の汎用端末」が、「エキスパート端末」により作成された学習済みモデルを用いて推定」するようにし、「前記エキスパート端末は、作成した複数の学習済みモデルの中から、前記複数の汎用端末それぞれにおいて扱われる設計対象材料のための学習済みモデルを、前記特定の設計対象材料のための学習済みモデルとして、前記複数の汎用端末それぞれに送信する」ようにすることについて、引用文献4には、記載も示唆もされていない。
また、他に、引用発明4において、そのようにすることが容易に想到し得るといえる理由も見当たらない。
よって、本件発明9は、引用文献4に記載された発明ではない。
また、本件発明9は、引用発明4に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
2 取消理由通知書に記載した取消理由3(特許法第36条第6項第1号)について
(1)本件発明9について
本件発明の課題は、発明の詳細な説明の段落【0006】によれば、「機械学習のパラメータ設定においては、操作や設定手順が簡略されたとしても、材料設計者などの機械学習に関する非熟練者が行う難易度は依然として高いと考えられ、やはり統計学、機械学習、計算機科学、情報科学などに精通したデータサイエンティストなどの熟練者によって機械学習を行うほうが、より適切な設定が可能であり依然として有利であるが、材料設計分野においてはデータサイエンティストのマンパワーが少なく、各材料設計システムの周囲に機械学習の専門家が必ずしもいるとは限らない。」というものであり、段落【0007】によれば、「少数の機械学習の熟練者のノウハウを活用して、広範囲で高品質な機械学習の学習結果を利用できる材料設計システム、材料設計方法、及び材料設計プログラムを提供することを目的とする」ものである。
上記課題を解決する手段は、発明の詳細な説明の段落【0024】~【0032】、【図1】によれば、モデル学習用インタフェイスを利用可能なエキスパート端末を利用して、複数種類の設計対象材料について複数の学習済みモデルを作成し、作成した複数種類の学習済みモデルを、それぞれ、特定の設計対象材料について、材料設計用インタフェイスを利用可能な複数の汎用端末に送信し、複数の汎用端末で学習済みモデルを用いて材料特性値や設計条件を推定するというものである。
請求項9の記載は、令和5年7月14日の訂正請求による訂正により、学習ステップが、「モデル学習用インタフェイスを利用可能なエキスパート端末が、前記設計対象材料の設計条件と、材料特性値との対応関係を入出力とするモデルであって、互いに異なる種類の前記設計対象材料についての複数のモデルの機械学習を行う学習ステップ」(下線部は訂正により変更された部分を示す。以下、同様である。)と訂正され、推定ステップが、「材料設計用インタフェイスを利用可能な複数の汎用端末が、特定の前記設計対象材料について、前記エキスパート端末により前記学習ステップにて作成された前記特定の設計対象材料のための学習済みモデルを用いて、前記設計条件から前記材料特性値を、または、前記材料特性値から前記設計条件を推定する推定ステップ」と訂正され、さらに、「前記エキスパート端末は、作成した複数の学習済みモデルの中から、前記複数の汎用端末それぞれにおいて扱われる設計対象材料のための学習済みモデルを、前記特定の設計対象材料のための学習済みモデルとして、前記複数の汎用端末それぞれに送信する、」との事項が付加された。
これらの訂正により、請求項9の記載は、上記の課題を解決するための手段が反映され、本件発明9は、発明の詳細な説明に記載した上記課題を解決するものとなった。
したがって、本件発明9は、発明の詳細な説明に記載したものである。
3 取消理由通知(決定の予告)において採用しなかった特許異議申立理由について
(1)異議申立人井上雅恵の本件請求項7、8に係る特許に対する上記引用文献1を主たる引用文献とした特許法第29条第2項について
引用文献1には、本件発明7の発明特定事項である「前記汎用端末は、前記設計対象材料の設計条件の指定範囲を設定する設計条件設定部と、前記設計条件設定部により設定された指定範囲内で複数の網羅予測点を生成する網羅予測点生成部と、前記網羅予測点生成部により生成された網羅予測点を前記学習済みモデルに入力して算出した材料特性値を、前記網羅予測点の各点と紐づけたデータセットを記憶する設計条件-材料特性テーブルと、前記設計対象材料の要求特性の指定範囲を設定する要求特性設定部と、前記要求特性設定部により設定された要求特性を満たすデータセットを前記設計条件-材料特性テーブルから抽出する設計条件抽出部と、を備える」ことについて、記載も示唆もされていないし、その他の文献や周知技術を勘案しても、引用文献1に記載された発明において、上記発明特定事項を導くことが当業者に容易に想到し得たといえる理由を発見しない。
したがって、本件発明7及び本件発明7を引用し、さらに発明特定事項を付加する本件発明8は、引用文献1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(2)異議申立人日置綾子の本件請求項1~6に係る特許に対する上記引用文献4を主たる引用文献とした特許法第29条第2項について
ア 本件発明1について
本件発明1は、方法の発明である本件発明9の発明をシステムとしたものである。
したがって、上記「第5 1(4)本件発明9について」の本件発明9と引用文献4に記載された発明との対比・判断と同様に、本件発明1と引用文献4に記載された発明との対比・判断をすることができる。
該対比・判断によれば、本件発明1は、引用文献4に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
イ 本件発明2について
引用文献4には、本件発明2の発明特定事項である「前記設計対象材料の設計条件と、材料特性値との対応関係を入出力とするモデルであって、互いに異なる種類の前記設計対象材料についての複数のモデルの機械学習を行うためのモデル学習用インタフェイスを利用可能なエキスパート端末と、
特定の前記設計対象材料について、前記エキスパート端末により作成された前記特定の設計対象材料のための学習済みモデルを用いて、前記設計条件から前記材料特性値を、または、前記材料特性値から前記設計条件を推定するための材料設計用インタフェイスを利用可能な複数の汎用端末と、
前記エキスパート端末と前記複数の汎用端末との間において、ネットワーク回線を介して接続された中間装置であって、前記エキスパート端末により作成され、前記モデル学習用インタフェイスから転送された複数の前記学習済みモデルを保存する前記中間装置と、を備え、
前記複数の汎用端末は、自端末が有する材料設計用インタフェイスを介してアクセスすることで、前記中間装置に保存される前記複数の学習済みモデルのうち、アクセス権のある前記特定の設計対象材料のための学習済みモデルを利用して、前記設計条件から前記材料特性値を、または、前記材料特性値から前記設計条件を推定する」ことについて、記載も示唆もされていないし、その他の文献や周知技術を勘案しても、引用文献4に記載された発明において、上記発明特定事項を導くことが当業者に容易に想到し得たといえる理由を発見しない。
したがって、本件発明2は、引用文献4に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
ウ 本件発明3~6について
本件発明3~6は、本件発明1または2を引用し、さらに発明特定事項を付加するものであるから、上記イ、ウと同じ理由により、本件発明3~6は、引用文献4に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(3)異議申立人日置綾子の本件請求項1~6に係る特許に対する特許法第36条第6項第2号について
ア 申立人の主張する理由
異議申立人は、請求項1~6における「エキスパート端末」とは、どのような端末であるのか明確でなく、「汎用端末」と区別できるものではないから、請求項1~6に係る発明は明確でない旨を主張している。(令和4年4月12日付け特許異議申立書第25頁第2行-第28頁第下から6行、第35頁第12行-第17行、第39頁下から2行-第40頁第4行、第43頁下から1行-第44頁第5行、第55頁第3行-第8行)
イ 判断
請求項1の記載は、令和5年7月14日の訂正請求による訂正により、エキスパート端末が、「前記設計対象材料の設計条件と、材料特性値との対応関係を入出力とするモデルであって、互いに異なる種類の前記設計対象材料についての複数のモデルの機械学習を行うためのモデル学習用インタフェイスを利用可能なエキスパート端末」、「前記エキスパート端末は、作成した複数の学習済みモデルの中から、前記複数の汎用端末それぞれにおいて扱われる設計対象材料のための学習済みモデルを、前記特定の設計対象材料のための学習済みモデルとして、前記複数の汎用端末それぞれに送信する、」と訂正された。
また、請求項2の記載は、同訂正請求により、エキスパート端末が、「前記設計対象材料の設計条件と、材料特性値との対応関係を入出力とするモデルであって、互いに異なる種類の前記設計対象材料についての複数のモデルの機械学習を行うためのモデル学習用インタフェイスを利用可能なエキスパート端末と、
特定の前記設計対象材料について、前記エキスパート端末により作成された前記特定の設計対象材料のための学習済みモデルを用いて、前記設計条件から前記材料特性値を、または、前記材料特性値から前記設計条件を推定するための材料設計用インタフェイスを利用可能な複数の汎用端末と、
前記エキスパート端末と前記複数の汎用端末との間において、ネットワーク回線を介して接続された中間装置であって、前記エキスパート端末により作成され、前記モデル学習用インタフェイスから転送された複数の前記学習済みモデルを保存する前記中間装置と、を備え、
前記複数の汎用端末は、自端末が有する材料設計用インタフェイスを介してアクセスすることで、前記中間装置に保存される前記複数の学習済みモデルのうち、アクセス権のある前記特定の設計対象材料のための学習済みモデルを利用して、前記設計条件から前記材料特性値を、または、前記材料特性値から前記設計条件を推定する」と訂正された。
訂正された請求項1、2によれば、「エキスパート端末」は、その記載通りに当業者が明確に理解できるものであり、汎用端末との区別も明確である。
したがって、本件発明1、2及び本件発明1または2を引用する本件発明3~6は明確である。
(4)異議申立人日置綾子の本件請求項4、6に係る特許に対する特許法第36条第6項第1号について
ア 申立人の主張する理由
異議申立人は、請求項4の記載によれば、本件発明4は、モデル学習用インタフェイスによる情報の入力をクラウドサーバで行い、その入力された情報に基づくモデルの学習は、エキスパート端末で行われるものであるが、発明の詳細な説明には、そのような態様でのモデルの学習については記載されておらず、出願時の技術常識に照らしても、本件発明4の範囲まで発明の詳細な説明に開示された内容を拡張できるとはいえないから、請求項4及び請求項4を引用する請求項6に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものではない旨、主張している。(令和4年4月12日付け特許異議申立書第44頁第6行-第45頁第6行、第55頁第9行-第12行)
イ 判断
請求項4が引用する請求項1には、「前記エキスパート端末により作成された前記特定の設計対象材料のための学習済みモデル」と記載され、請求項4が引用する請求項2には、「前記エキスパート端末により作成された前記特定の設計対象材料のための学習済みモデル」と記載されている。
また、請求項4には、「前記モデル学習用インタフェイスと、前記材料設計用インタフェイスとは、クラウドサーバに搭載され」と記載されている。
請求項1と2の上記記載によれば、学習済みモデルはエキスパート端末により作成されるものであるということはいえる。しかしながら、請求項4の上記記載によれば、本件発明4では、モデル学習用インタフェイスがクラウドサーバに搭載されることは特定されているものの、申立人が主張する、モデル学習用インタフェイスによる情報の入力をクラウドサーバで行うことまでは特定されていないから、申立人の主張は、その前提において理由を欠くものである。
したがって、請求項4及び請求項4を引用する請求項6に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものではないとはいえない。
第6 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1~8、9に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1~8、9に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
さらに、本件請求項10に係る特許は訂正により削除され、請求項10についての特許異議の申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
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2022-700278