特許異議申立
2022-700266
皮膚用パッチ
- 審判番号
- 2022-700266
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2019-193216
- 登録番号
- 6961250
- 請求日
- 2022年03月28日
- 審決日
- 2023年06月09日
- 公報発行日
- 2023年09月29日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】コスメディ製薬株式会社
- 【権利者代理人】弁理士法人大阪フロント特許事務所
- 【異議申立人】下河 あい
- 審判長/審判官
- 審判長 瀬良 聡機
- 審判官 齊藤 真由美
- 審判官 冨永 保
- 分類
- P1651.113-YAA(A61K) / P1651.121-YAA(A61K) / P1651.537-YAA(A61K) / P1651.851-YAA(A61K)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項第3号、特許法第36条第6項第1号、特許法第120条の5第9項、特許法第29条第2項、特許法第36条第6項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第1項、特許法第120条の5第5項、特許法第120条の5第4項、特許法第29条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第6961250号発明「皮膚用パッチ」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
結 論
特許第6961250号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項[1~5]について訂正することを認める。
特許第6961250号の請求項[1~5]に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第6961250号の請求項1~5に係る特許についての出願は、2015年1月13日(優先権主張2014年1月27日、日本国)を国際出願日として出願した特願2015-558802号の一部を、令和元年10月24日に新たな特許出願としたものであって、令和3年10月15日に特許権の設定登録がされ、同年11月5日にその特許公報が発行され、令和4年3月28日に、その請求項1~5に係る発明の特許に対し、下河 あい(以下「申立人」という。)により特許異議の申立てがされたものである。
その後の手続の経緯は以下のとおりである。
令和 4年 8月 8日付け 取消理由通知
同年10月11日 意見書・訂正請求書の提出(特許権者)
同年11月11日付け 訂正拒絶理由通知
同年12月15日 意見書・手続補正書の提出(特許権者)
同年12月26日付け 特許法第120条の5第5項の規定に
基づく通知書
令和 5年 2月 3日 意見書の提出(申立人)
第2 手続補正について
1 補正の内容
令和4年12月15日提出の手続補正書による補正(以下「本件補正」という。)は、同年10月11日提出の訂正請求書を補正するものであって、「明細書の[発明の名称]において、「皮膚用パッチ」とあるのを、「コンシーラパッチ」に訂正する(訂正部分は下線部)。」ことを内容とする訂正事項3を削除する補正のみからなるものである。
2 補正の適否
本件補正は、訂正事項3を削除するためのものであって、審理対象の拡張変更を伴わないため、令和4年10月11日提出の訂正請求書の要旨を変更するものでなく、認められる。
第3 訂正の適否について
1 訂正の内容
前記第2のとおり、本件補正は認められるから、令和4年10月11日提出の訂正請求書による訂正(以下「本件訂正」という。)の「請求の趣旨」は、「特許第6961250号の特許請求の範囲を、本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~5について訂正することを求める。」ものであり、その内容は、以下の訂正事項1~2からなるものである。なお、下線は、訂正による変更箇所を示す。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「前記支持体フィルムが、紫外線吸収剤及び/又は紫外線散乱剤を含むことを特徴とする皮膚用パッチ(但し、前記支持体フィルムと前記粘着剤層との合計の厚みが20μm以下である皮膚用パッチを除く)。」とあるのを、「前記支持体フィルムが、紫外線吸収剤及び/又は紫外線散乱剤を含み、前記支持体フィルムの少なくとも一方側の表面に肌色の着色を有することを特徴とするコンシーラパッチ(但し、前記支持体フィルムと前記粘着剤層との合計の厚みが20μm以下であるコンシーラパッチを除く)。」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2~5も同様に訂正する)。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2~5において、「皮膚用パッチ」とあるのを、「コンシーラパッチ」に訂正する。
なお、訂正前の請求項1~5について、請求項2~5は、それぞれ請求項1の記載を直接引用しており、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。したがって、訂正前の請求項1~5に対応する訂正後の請求項1~5に係る本件訂正の請求は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項に対してなされたものである。
2 訂正の適否
(1)訂正事項1について
ア 訂正の目的の適否
(ア)訂正事項1に係る訂正は、
a 訂正前の請求項1において、「前記支持体フィルム」が、「紫外線吸収剤及び/又は紫外線散乱剤を含むことを特徴とする」ものであったところ、訂正後に「紫外線吸収剤及び/又は紫外線散乱剤を含み、前記支持体フィルムの少なくとも一方側の表面に肌色の着色を有することを特徴とする」ものという、「前記支持体フィルムの少なくとも一方側の表面に肌色の着色を有する」という記載を付加すると共に、
b 訂正前の請求項1において、「皮膚用パッチ」(決定注:下線は当審合議体が付与。以下同様。)と記載されていたものを、訂正後に「コンシーラパッチ」に訂正するものである。
c 同様に、訂正後の請求項2~5は訂正後の請求項1の記載を引用しているから、訂正後の請求項1の訂正と同様に訂正するものである。
(イ)a 訂正事項1の前記(ア)aについては、訂正前の請求項1における「前記支持体フィルム」が、「紫外線吸収剤及び/又は紫外線散乱剤を含むことを特徴とする」ものであったところ、訂正後「前記支持体フィルムの少なくとも一方側の表面に肌色の着色を有する」という特徴を更に付加することにより、「前記支持体フィルム」を限定するものである。
b 訂正事項1の前記(ア)bの「コンシーラ」について、「コンシーラ」の意味を検討すると、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件明細書等」という。)には、以下の事項が記載されている。
なお、以下、引用箇所等に付した下線は、いずれも当審合議体によるものである。
「【技術分野】
【0001】
本発明は、肌の欠点を隠し、肌を白く美しく見せるためのコンシーラパッチに関する。さらに、紫外線吸収剤、美容成分を配合し肌自身の美白を実現するコンシーラパッチに関する。」
「【背景技術】
【0002】
コンシーラとは、肌トラブルのカバー用ファンデーションであり、シミ、ソバカス、ほくろ、にきび跡や不健康な印象を与える目の下のクマなどをスポット的に修正する化粧品である。」
「【発明の効果】
【0030】
コンシーラをスティックタイプ、クリームタイプやリキッドタイプではなくパッチタイプとしたので、皮膚への貼付が容易となった。熟練者でなくても容易にシミ、そばかす跡等の肌の欠点を覆い、自然な肌の風合いを感じさせることができる。・・・」
上記背景技術の記載(【0002】)より、本件明細書等においては、「コンシーラ」とは、「肌トラブルのカバー用ファンデーションであり、シミ、ソバカス、ほくろ、にきび跡や不健康な印象を与える目の下のクマなどをスポット的に修正する化粧品」であると記載され、そのように理解されていたといえる。
そして、段落【0001】の技術分野についての、「肌の欠点を隠し、肌を白く美しく見せるためのコンシーラパッチに関する」ものとの記載、及び、段落【0030】の発明の効果についての、「コンシーラをスティックタイプ、クリームタイプやリキッドタイプではなくパッチタイプとしたので、皮膚への貼付が容易とな」り、「熟練者でなくても容易にシミ、そばかす跡等の肌の欠点を覆い、自然な肌の風合いを感じさせることができる」との記載より、本件明細書等においては、上記「コンシーラ」をパッチタイプとしたことが記載されているといえる。
以上のことを総合すると、本件明細書等において、「コンシーラ」とは、皮膚用というだけでなく肌のトラブルのカバー用ファンデーションを意味すると理解される。
そうすると、前記(ア)bについては、訂正前の請求項1における「皮膚用パッチ」を、訂正後「コンシーラパッチ」という、「皮膚用」パッチを更に限定するものである。
c 訂正事項1の前記(ア)cについては、請求項1を引用するものであり、前記述べたとおりである。
(ウ)したがって、本件訂正の訂正事項1に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
イ 新規事項の追加の有無
訂正事項1の前記ア(ア)aについては、本件明細書等の段落【0007】に、「・・・本発明に係るコンシーラパッチは、透明若しくは半透明の柔軟な支持体フィルムと、前記支持体フィルム上に積層された粘着剤層とを備え、前記支持体フィルムの少なくとも一方側の表面に肌色の着色を有することを特徴とする。」と記載されている。
訂正事項1の前記ア(ア)bについては、本件明細書等の段落【0001】に、「本発明は、肌の欠点を隠し、肌を白く美しく見せるためのコンシーラパッチに関する。さらに、紫外線吸収剤、美容成分を配合し肌自身の美白を実現するコンシーラパッチに関する。」と記載されている。
訂正事項1の前記(ア)cについては、請求項1を引用するものであり、前記述べたとおりである。
そうすると、本件訂正の訂正事項1に係る訂正は、本件明細書等に記載した事項の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではなく、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合する。
ウ 実質上の特許請求の範囲の拡張又は変更の存否
前記ア及びイで述べたとおり、訂正事項1は、本件明細書等に記載した事項の範囲内で特許請求の範囲を減縮するものであるとともに、訂正の前後で特許請求の範囲に記載された発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲の拡張又は変更するものではない。
したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。
(2)訂正事項2について
ア 訂正の目的の適否
訂正事項2に係る訂正は、前記(1)アで述べたことと同様に、訂正前の請求項2~5における「皮膚用パッチ」を、訂正後「コンシーラパッチ」という、「皮膚用」パッチをさらに限定するものである。
したがって、本件訂正の訂正事項2に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
イ 新規事項の追加の有無
訂正事項2に係る訂正は、前記(1)イで述べたことと同様に、本件明細書等に記載した事項の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではなく、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合する。
ウ 実質上の特許請求の範囲の拡張又は変更の存否
前記ア及びイで述べたとおり、訂正事項2は、本件明細書等に記載した事項の範囲内で特許請求の範囲を減縮するものであるとともに、訂正の前後で特許請求の範囲に記載された発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲の拡張又は変更するものではない。
したがって、訂正事項2は、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。
(3)申立人の主張について
申立人は、令和5年2月3日付け意見書の4頁下から2行~5頁9行において、「また、本件は、特願2015-558802を親出願とする分割出願であり、上記親出願は「コンシーラパッチ」の発明として出願及び権利化しており、その分割出願である本件は「皮膚用パッチ」として分割出願をし、その権利化を図っている。すなわち、特許権者は本件の分割出願時において、「コンシーラパッチ」に係る発明が記載された親出願から「皮膚用パッチ」部分の権利化を目的として分割出願したことは明白であり、当該分割出願の目的に鑑みると「皮膚用パッチ」を「コンシーラパッチ」に補正することは、明らかに特許請求の範囲の拡張又は変更に該当する。よって、「皮膚用パッチ」と記載されていたものを「コンシーラパッチ」とする補正は認められず」と主張している。
しかしながら、本件訂正の訂正事項1及び2について、実質上特許請求の範囲の拡張又は変更の存否の判断は、前記(1)及び(2)で述べたとおりであり、分割出願と親出願との発明特定事項の相違の関係とにかかわらず、実質上の特許請求の範囲の拡張又は変更するものとは認められない。
したがって、申立人の前記主張は採用できない。
3 まとめ
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5及び6項の規定に適合するので、訂正後の 請求項[1~5]についての訂正を認める。
第4 本件発明
本件訂正により訂正された請求項1~5に係る発明(以下「本件発明1」~「本件発明5」といい、まとめて「本件発明」ということがある。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1~5に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。
「【請求項1】
透明若しくは半透明の柔軟な支持体フィルム(但し、2層以上からなる支持体フィルムを除く)と、
前記支持体フィルム上に積層された粘着剤層とを備え、
前記支持体フィルムが、紫外線吸収剤及び/又は紫外線散乱剤を含み、
前記支持体フィルムの少なくとも一方側の表面に肌色の着色を有することを特徴とするコンシーラパッチ(但し、前記支持体フィルムと前記粘着剤層との合計の厚みが20μm以下であるコンシーラパッチを除く)。
【請求項2】
前記粘着剤層が、美容成分及び/又は皮膚用薬物を含むことを特徴とする請求項1に記載のコンシーラパッチ。
【請求項3】
前記支持体フィルムの素材が、ポリウレタン、ポリエチレン及びポリプロピレンからなる群より選ばれる少なくとも1種の素材であることを特徴とする請求項1又は2に記載のコンシーラパッチ。
【請求項4】
前記支持体フィルムが、2-ヒドロキシベンゾフェノンを2重量%で含むことを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載のコンシーラパッチ。
【請求項5】
前記支持体フィルムの素材が、ポリウレタンであり、
前記支持体フィルムの厚さが、3~100μmであることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載のコンシーラパッチ。」
第5 特許異議申立理由及び取消理由の概要
1 特許異議申立理由の概要
申立人は、証拠方法として以下の甲第1号証~甲第6号証を提出して、以下の申立理由を主張している。
(証拠方法)
甲第1号証:国際公開第2001/68061号(以下「甲1」という。)
甲第2号証:特表2008-510713号公報(以下「甲2」という。)
甲第3号証:特表2004-512286号公報(以下「甲3」という。)
甲第4号証:特開平4-317654号公報(以下「甲4」という。)
甲第5号証:国際公開第2009/041121号(以下「甲5」という。)
甲第6号証:特開平10-23923号公報(以下「甲6」という。)
(申立理由の概要)
申立理由A(新規性、進歩性)
訂正前の本件発明1~5は、本件特許優先日前に日本国内又は外国において、頒布された甲1に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、訂正前の本件発明1~5に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。
また、訂正前の本件発明1~5は、本件特許優先日前に日本国内又は外国において、頒布された甲1に記載された発明、及び、甲4に記載された技術的事項に基いて、本件特許優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、訂正前の本件発明1~5に係る特許は、同法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。
申立理由B(新規性、進歩性)
訂正前の本件発明1~3、5は、本件特許優先日前に日本国内又は外国において、頒布された甲2に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、訂正前の本件発明1~3、5に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。
また、訂正前の本件発明1~5は、本件特許優先日前に日本国内又は外国において、頒布された甲2に記載された発明、並びに、甲1及び甲4に記載された技術的事項に基いて、本件特許優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、訂正前の本件発明1~5に係る特許は、同法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。
申立理由C(進歩性)
訂正前の本件発明1~5は、本件特許優先日前に日本国内又は外国において、頒布された甲3に記載された発明、並びに、甲1及び甲4に記載された技術的事項に基いて、本件特許優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、訂正前の本件発明1~5に係る特許は、同法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。
申立理由D(サポート要件)
訂正前の本件発明1~5は、特許請求の範囲の記載が以下(1)~(3)の点で、特許法第36条第6項第1号に適合するものではないから、訂正前の本件発明1~5に係る特許は、同法第36条第6項に規定する要件を満たしていない特許に対してなされたものであり、同法第113条第4号の規定により取り消されるべきものである。
(1)本件明細書等に記載されている発明は支持体フィルムに肌色の着色を施すことを特徴としており、本件明細書等の実施例にも肌色に着色した例しか開示されていないが、訂正前の本件発明1~5は、肌色の着色を施すことについて何ら限定されていないから、訂正前の本件発明1~5は、発明の詳細な説明に記載した範囲を超えておりサポート要件を満たしていない。
(2)訂正前の本件発明1において、課題を解決するためには紫外線吸収剤及び/又は紫外線錯乱剤の含有量がある一定以上の量必要になるはずであるが、どの程度の含有量であれば課題を解決できるかは本件明細書等に記載されておらず、訂正前の本件発明4及び例9に「2-ヒドロキシベンゾフェノン2%配合」が記載されているだけであるから、訂正前の本件発明1~3、5は、発明の詳細な説明に記載した範囲を超えておりサポート要件を満たしていない。
(3)訂正前の本件発明1では、支持体フィルムが紫外線吸収剤及び/又は紫外線錯乱剤を含むと規定するが、このような構成の支持体フィルムを用いて効果を立証しているのは、本件明細書等の表1に記載された例9のみである。この例9には支持体フィルムとして図1(c)に示すような肌色に網目状印刷されたウレタンフィルム(厚さ10μm)に、紫外線吸収剤としてp-ヒドロキシベンゾフェノン(2%配合)を含み、粘着剤(厚さ15μm)にはHiPAS10という特定の粘着剤を使用したことが記載されており、例9以外の構成は開示されていない。したがって、訂正前の本件発明1~2は、発明の詳細な説明に記載した範囲を超えておりサポート要件を満たしていない。
2 当審合議体が通知した取消理由の概要
訂正前の本件発明1~5に対して、令和4年8月8日付けで当審合議体が特許権者に通知した取消理由の概要は、以下のとおりである。
(1)取消理由1(新規性)
訂正前の本件発明1~3、5は、本件特許優先日前に日本国内又は外国において頒布された甲2に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、訂正前の請求項1~3、5に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。
なお、取消理由1(新規性)は、申立理由B(新規性、進歩性)のうち、新規性の場合に対応するものである。
(2)取消理由2(進歩性)
訂正前の本件発明1~5は、本件特許優先日前に日本国内又は外国において、頒布された甲1~3に記載された発明及び周知技術に基いて、本件特許優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、訂正前の本件発明1~5に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
刊行物4:特開2000-86496号公報(周知技術を示す文献である。以下「刊4」という。)
なお、取消理由2(進歩性)は、申立理由A~Bの進歩性の場合に対応するもの、及び、申立理由Cに対応するものである。
(3)取消理由3(サポート要件)
本件特許は、訂正前の特許請求の範囲の請求項1~5の記載が、特許法第36条第6項第1号に適合するものではないから、訂正前の請求項1~5に係る特許は、特許法第36条第6項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
発明の詳細な説明の記載および本件出願当時の技術常識を考慮しても、コンシーラパッチ以外の訂正前の本件発明1~5の「皮膚用パッチ」に含まれる皮膚用パッチにおいて、本件発明1~5の課題を解決できると当業者は認識することができず、また、そのような記載や示唆がなくとも、当業者が上記課題を解決できるといえる技術常識は存在しない。
したがって、訂正前の本件発明1~5は、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものとはいえず、発明の詳細な説明に記載された発明とはいえない。
なお、取消理由3(サポート要件)は、訂正前の本件発明1~5に関し、申立理由D(サポート要件)のうち(1)に対応するものである。
第6 当審合議体の判断
当審合議体は、請求項1~5に係る特許は、当審合議体が通知した取消理由及び申立人が申し立てた理由によっては、取り消すことはできないと判断する。
理由は以下のとおりである。
1 当審合議体が通知した取消理由についての判断
なお、当審合議体が通知した取消理由1及び2において、副引例として用いていない文献(甲1~甲6)についても、ここで、副引例として検討した上での判断を、併せ記載する。
(1)甲1~甲6及び刊行物4の記載事項
ア 甲1
甲1a「請求の範囲
1.紫外線遮蔽加工を施した支持体を有することを特徴とする貼付剤。
2.前記支持体が、前記貼付剤が有する唯一の支持体であることを特徴とする請求の範囲第1項記載の貼付剤。
3.紫外線遮蔽加工が、有機系紫外線吸収剤及び/または無機系紫外線遮蔽剤を用いることを特徴とする請求の範囲第1または2項記載の貼付剤。
4.有機系紫外線吸収剤がベンゾトリアゾール誘導体、p-アミノ安息香酸誘導体、アントラニル酸誘導体、サリチル酸誘導体、桂皮酸誘導体、ベンゾフェノン誘導体、クマリン酸誘導体、シアノアクリレート誘導体及びアミノ酸系化合物より選ばれる1種または2種以上であることを特徴とする請求の範囲第3項記載の貼付剤。
・・・・・
7.光安定性の悪い薬物を基剤中に含有することを特徴とする請求の範囲第1~6項のいずれか記載の貼付剤。
・・・・・
10.前記基剤が該基剤総量基準でさらにスチレン-イソプレン-スチレンプロック共重合体10~50質量%、ポリイソブチレン1~20質量%、粘着付与剤5~50質量%及び可塑剤10~70質量%を含有する粘着性基剤であり、これを前記支持体上に展延してなる請求の範囲第9項記載の貼付剤。」(請求の範囲 請求項1~4、7、10)
甲1b「本発明は上記の問題点を解決すべくなされたものであって、その目的とするところは、単層からなる支持体を用いて薬物の光安定性を向上させることにより、治療効果の確保と皮膚安全性に優れた貼付剤を提供することにある。
発明の開示
本発明者らは上記目的を達成すべく鋭意検討を重ねた結果、貼付剤の単層からなる支持体を紫外線遮蔽加工することによって、貼付部位である皮膚を紫外線の影響から保護したり、また、貼付剤の基剤中に薬物が含まれているのであれば、薬物の紫外線による分解を顕著に抑制できることが分かった。支持体に有機系紫外線吸収剤を付着、吸収若しくは固定しまたは無機系紫外線遮蔽剤を添加若しくは練り込ませたものを用いると、粘着性基剤の成分が該基剤と支持体との間からしみ出したり、あるいは支持体内部に深く浸透したりするのを防ぐことができる。よって、従来の様に基剤中に紫外線吸収剤等の安定剤を添加したりまたは支持体を複層で形成することなく、単層なる支持体の機能を十分に活用することにより、薬物の光分解による含量低下や光分解生成物による新たな皮膚アレルギーの惹起を防ぐことが可能であることを見いだし、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の貼付剤は、紫外線遮蔽加工を施した単層からなる支持体を有することを特徴とする。ここで言う貼付剤とは、絆創膏、創傷用テープ剤、硬膏剤(テープ剤)、湿布用剤(パップ剤)、リザーバー型貼付剤、化粧用パックシート剤及びテーピング剤を含むものである。
・・・・・
本発明で用いられる有機系紫外線吸収剤として、より具体的には以下の化合物が挙げられる。
・・・・・
ベンゾフェノン誘導体としては、・・・、2-ヒドロキシ-4-メ卜キシベンゾフェノン、・・・、2-ヒドロキシベンゾフェノン・・・等が挙げられる。
・・・・・
これら有機系紫外線吸収剤を用いた紫外線遮蔽加工としては、単層からなる貼付剤用支持体の材料である繊維または布帛に該吸収剤を付着、吸収または固着させる方法が用いられる。
これら有機系紫外線吸収剤は単層からなる支持体中に1種または2種以上配合することができ、その配合量は支持体全体(吸収剤を含む)の質量に対し、好ましくは0.01~20質量%、より好ましくは0.05~5質量%である。これらの配合割合にすることにより紫外線が十分に遮蔽され、その結果貼付剤は薬物の光安定性が向上しさらに皮膚安全性も大きく改善される。
・・・・・
本発明の貼付剤に使用される支持体の材質は特に限定されるものではなく、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブタジエン、ポリエステル、ナイロン、ポリウレタン、 ポリ塩化ビニル、ウール、レーヨン、綿が挙げられる。これらを織布、編み布、不織布あるいはフィルム等に加工して、支持体として用いることができる。特に、伸縮性支持体が好ましい。
本発明の貼付剤には1種以上の薬物を配合することができる。薬物の種類は限定されるものではなく・・・特に非ステロイド系消炎鎮痛剤のケトプロフェン・・・が挙げられる。
・・・・・
また、本発明の貼付剤の一形態である化粧用パックシート剤は、主に肌の美容を目的として使用される。このシート剤には、美容効果を促進させる目的でビ夕ミンC、それを含む果汁エキス(例えば、エイジツエキス、オレンジエキス、オレンジ果汁、キイチゴエキス、キューカンバーエキス、クチナシエキス、グレープフルーツエキス、サンザシエキス、サンショウエキス、セイヨウサンザシエキス、セイヨウネズエキス、夕イソウエキス、 デュークエキス、トマトエキス、ブドウエキス、へチマエキス、ライム果汁、リンゴエキス、リンゴ果汁、レモンエキス、レモン果汁)、薬草エキス、ビタミンE及びビタミンD類並びに美白作用を有するコウジ酸、アルブチン、その誘導体及びホルモン類等を1種以上配合することができる。・・・」(2頁2~20行、3頁8~9行、4頁10~17行、5頁1~8行、6頁10~15行、7頁6~7行、17~26行)
甲1c「本貼付剤に用いる基剤は特に限定されるものではなく、常温で皮膚に対する粘 着性を有するものであればよく、例えばパップ剤や化粧用パックシート剤に用いられている水溶性高分子を用いた従来の基剤や、テープ剤に用いられている従来のアクリル系基剤、ゴム系基剤、シリコーン系基剤等が挙げられる。
・・・・・
アクリル系基剤の主ポリマー成分としては、特に、炭素数4~18の脂肪族アルコールと(メタ)アクリル酸から得られる(メタ)アクリル酸アルキルエステルと、ビニルピロリドンまたはその他の官能性モノマーとの共重合体が好適である。この共重合体の配合量は、基剤総量基準で好ましくは60~99質量%、より好ましくは75~98質量%である。
上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸-n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、アクリル酸へキシル、(メ夕)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メ夕)アクリル酸ステアリル、アクリル酸-2-エチルへキシルが挙げられる。
・・・・・
・・・また、これらの支持体の目付(単位面積当たりの質量)は70~130g/cm2であることが好ましく、その厚さは0.1~2mmであることが好ましい。支持体の目付または厚さが前記下限値未満である場合は、身体への貼付時に貼付剤(支持体と基剤との積層体)にシワが寄ったり絡み付いたりして良好な使用感が得られにくくなる向にあり、他方、前記上限値を超えると貼付剤(積層体)は柔軟性が不十分となり、貼付時に引きつれ感等の違和感を生じる傾向にある。」(8頁1~4行、9頁14~23行、15頁10~16行)
甲1d「処方例7
アクリル酸2-エチルへキシルエステル55質量部、アクリル酸メトキシエチルエステル26質量部、酢酸ビニル14.7質量部、アゾビスイソブチロニトリル0.3質量部及び酢酸エチル100質量部を反応容器に入れ、窒素雰囲気下にて65℃に昇温して重合を開始させ、10時間反応を続けた後、さらに80℃で2時間熟成して共重合体溶液を得た。得られた共重合体溶液にケトプロフェン4質量部を添加混合し、均一な混合溶液とし、テープ剤用基剤溶液とした。
・・・・・
実施例12
処方例7で得られた基剤溶液を乾燥後に70cm2あたり0.5gとなるように、シリコーン処理したポリエステルフィルムに展延した。一方、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン0.1質量部をポリ塩化ビニルフィルム99.9質量部に均一に配合して、 紫外線遮蔽加工した支持体を得た。上記フィルム上の展延基剤をこの支持体で覆って圧着転写させ、所望の大きさに裁断しテープ剤とした。
・・・・・
光透過試験1
実施例1~7、10、12、14及び15並びに比較例3~5で作製した支持体について光透過試験をした。
すなわち、第1図に示す人工気象装置1に設置した紫外線強度計2の測定部3上を、10cm×10cm角に切り取った各実施例及び比較例で用いた支持体11で覆い、人工気象装置1の蛍光灯4及び陽光ランプ5を照射したとき、紫外線強度計2が示す紫外線強度を測定し、支持体で覆わない状態において示される紫外線強度を光透過率100%として、それぞれの支持体11の光透過率を算出した(装置内環境:温度=25℃、紫外線強度=約0.14mW/hr/cm2)。表1の試験結果において、本発明の実施例の支持体は光透過率1.8~25.8%を示し、比較例の支持体よりも明らかに低い値であった。
表1
支持体 光透過率(%)
・・・ ・・・
実施例12 25.8
・・・ ・・・
・・・・・
光安定性試験2
実施例1、3、6、7、10、12、14及び15並びに比較例1及び3~5の製剤について第2の薬物光安定性試験をした。すなわち、比較例1のゲル剤は 透明なガラス容器に入れ、また貼付剤は支持体側を上にして、直射日光が十分照射する場所に放置し、1日、3日、5日後の基剤の着色の度合いを観察した。その結果を表3に示す。
[図:0001401609000001.jpg]
」(20頁3~9行、23頁下から5行~24頁2行、26頁9行~27頁表1、28頁3行~29頁表3)
イ 甲2
甲2a「【請求項1】
a)放出可能に貯蔵された投与量の薬学的に活性な物質を含むリザーバー;及び
b)前記リザーバーの少なくとも一部に関連する半透明フィルム;
を含む経皮薬物送達デバイスであって、
前記半透明フィルムが少なくとも1種類の無機紫外線吸収化合物を含有する、前記経皮薬物送達デバイス。
【請求項2】
前記リザーバーが圧感接着剤である、請求項1に記載の経皮薬物送達デバイス。」
甲2b「【課題を解決するための手段】
【0004】
しかしながら、半透明バッキングは、紫外線曝露に対して保護するその能力が限られている。特定の薬物は、紫外線曝露を受けやすく、特に露出領域に装着されている場合には患者に装着されている間、分解を受ける。医薬製剤を保護するために、デバイスの保護フィルムバッキングに比較的少量の無機紫外線吸収化合物を添加することによって、経皮薬物送達デバイスを製造することができることが現在、見出されている。
【0005】
無機紫外線吸収化合物は半透明フィルムからの拡散に対して耐性であり、したがって、リザーバー中に存在する薬物との実質的な接触が防止され、紫外線吸収添加剤によって誘導される化学的劣化の可能性が低減されることから、本発明のデバイスは有利である。
【0006】
さらに、医薬製剤と不利に相互作用し得る添加剤を導入することなく、製剤(formulation)が紫外線から保護される。
・・・・・
【0013】
図1で示される実施形態において、経皮薬物送達デバイス100は、薬学的に活性な物質、対向する圧感接着剤を含むリザーバー110を有する。半透明フィルムバッキング120は、リザーバー110に直接接触する。デバイス100はさらに、患者に貼り付ける前に皮膚接触面を保護するために、リザーバー110の対向面に隣接する剥離ライナー130を有する。これは、「接着剤内薬物」パッチと呼ばれる。
・・・・・
【0017】
リザーバー110に含有される、例示的な薬学的に活性な物質(「薬物」とも呼ばれる)は、皮膚に投与された場合に、局所または全身に作用することができる。一部の例としては、クロニジン、エストラジオール、ニコチン、ニトログリセリン、スコポラミン、およびフェンタニルが挙げられ、経皮デバイスの形で市販されている。
・・・・・
・・・紫外線感受性薬物の例としては、ニコチン、抗生物質、カルシウムチャネル遮断薬(つまり、イフェジピン(ifedipine)、フェロジピン、およびラシジピン)、ビタミン(つまり、B12)、およびプロゲスチン(つまり、ノルゲスティメート、およびレボノルゲストレル)が挙げられる。
・・・・・
【0030】
本発明に有用である、従来のテープバッキングとして使用される可撓性フィルムの一般的な例としては、ポリプロピレン;ポリエチレン、・・・ポリウレタン・・・などのポリマーフィルムから製造されたフィルムが挙げられる。・・・
・・・・・
【0031】
一実施形態において、半透明フィルム厚は、10μmを超え、一般に20μmを超え、通常40μmを超える。他の実施形態において、半透明フィルム厚は、150μm未満、一般に125μm未満、通常100μm未満である。
・・・・・
【0038】
本発明の経皮薬物送達デバイスは、テープ、パッチ、シート、包帯または当業者に公知の他の形状などの物品の形態で製造することができる。」
甲2c「【実施例】
【0042】
実施例1
経皮薬物送達デバイスで使用するのに適した半透明フィルムは、以下の一般的手順に従って製造された。公称クリスタリットサイズ15ナノメートルを有する、酸化アルミニウムおよびステアリン酸でコーティングされた二酸化チタン(ドイツ,デュースブルクのザハトレーベン社(Sachtleben Chemie GmbH,Duisburg,Germany))から市販のHombitec(登録商標)RM 130F)を無機紫外線吸収化合物として使用した。この材料は、ポリエチレン中に分散された20重量%二酸化チタン濃縮物として購入した。
【0043】
20%二酸化チタン濃縮物を低密度ポリエチレン(イリノイ州モリスのエクイスター社(Equistar,Morris,Illinoi)から市販のLDPE,NA964-085 NT)と1:39の比で一軸スクリュー押出機で混合し、艶消仕上げを有する厚さ3ミル(76μm)のフィルムに押出し成形した。得られたフィルムは、二酸化チタン濃度0.5重量%を有した。
・・・・・
【0049】
実施例5
実施例1の一般手順に従って半透明ポリエチレンフィルムを製造した。イソプロパノール、レボノルゲストレル、エストラジオール、アクリレートコポリマー接着剤、およびコリドン(Kollidon)(登録商標)VA64を混合することによって、経皮接着剤配合物を製造した。得られた接着剤配合物をフルオロポリマーコートポリエステル剥離ライナー(ScotchPak(登録商標)1022)上にナイフ塗布し、乾燥させて、塗布量約10mg/cm2を有する接着剤層を提供した。薬物濃度を高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)によって測定し、重量-重量ベースで薬物と接着剤配合物全体との比として報告する。紫外線に曝露されていない試料中のエストラジオールの平均濃度は、接着剤1g当たり20.45mgであった。紫外線に曝露されていない試料中のレボノルゲストレルの平均濃度は、接着剤配合物1g当たり6.59mgであった。剥離ライナーに対向する接着剤層の面を半透明ポリエチレンフィルム(またはバッキング)にラミネートし、経皮薬物送達デバイスとして使用するのに適した3層ラミネート(バッキング-接着剤-ライナー)を製造した。」
ウ 甲3
甲3a「【請求項1】
活性物質を含有するポリマーマトリックス、および基材層を含む構造を有し、ならびに少なくとも1種の感光性活性物質を含有する経皮治療システム(TTS)であって、UV領域の光を吸収し、固有の薬理学的作用を有さず、TTSのポリマーマトリックス中に分散または溶解され、および/または均一にTTSの基材層に分配される無色物質を該TTSが少なくとも1種含むことを特徴とする、前記経皮治療システム。
【請求項2】
基材層として好ましくは、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン、酢酸エチレンビニル、またはかかるポリマーの混合物が、用いられる透明基材層を備えていることを特徴とする、請求項1に記載の前記TTS。
【請求項3】
基材層が無色透明であることを特徴とする、請求項1または2に記載のTTS。
・・・・・
【請求項9】
UV領域の光を吸収する物質が・・ならびにベンゾフェノンまたはベンゾフェノン誘導体・・を含む群から選択されることを特徴とする、請求項1~8のいずれかに記載のTTS。」
甲3b「【0011】
従って、本発明の目的は、上記の難点を生じることなしに光の影響に対する耐性を増大させた、感光性活性物質を含有する経皮適用可能な医薬製剤を提供することである。
【0012】
本発明により、この目的は、活性物質を含有するポリマーマトリックス、および基材層を含む構造を有し、ならびに少なくとも一つの感光性活性物質を含有し、UV領域の光を吸収する少なくとも一つの無色物質が、活性物質を含有するマトリックス中に均一に、例えば溶解されたまたは分散された形態で分配され、および/またはかかる物質が、均一にその基材層(カバーフィルム)に分配されている経皮治療システム(TTS)によって達成される。UV領域の光を吸収する物質は、固有の薬理学的作用を有さず、すなわち、それ自体は治療的に活性でない。
【0013】
感光性活性物質は、例えば、ニコチン、またはジヒドロピリジン誘導体の群からの活性物質、例えば、ニフェジピンもしくはラシジピン、またはゲスターゲン、ビタミンB12、および抗生物質、ならびにかかる感光性活性物質の塩である。
【0014】
UV-吸収性無色物質の存在により、透明な基材層および/または透明な活性物質マトリックスを有し、それにも関わらず、光誘起分解に対する感光性活性物質の保護を確実にする、TTSを製造することが可能となる。完全に透明で、従って皮膚につけた場合に、ほとんど目立たないTTSを、この方法で製造することが可能であることが、特に有利である。これは特に、更なる好ましい態様により、TTSが透明かつ無色であるように構成される場合、つまり、基材層(カバーフィルム)とポリマーマトリックスの両方、場合によっては更なる層も透明かつ無色である場合である。
【0015】
本発明のTTSの被覆フィルムのための物質として、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン、酢酸エチレンビニル、ポリエチレンテレフタレート(PET)またはかかるポリマーの混合物の透明フィルムを用いるのが好ましい。
【0016】
本発明によるTTSの活性物質を含有するポリマーマトリックスは、単層または多層であってもよく、好ましくは、感圧粘着性を有する。それは固定的に基材層(カバー層)に結合されるか、またはそれと積層を形成する。ポリマーマトリックスの皮膚に対向する感圧粘着表面は、適用の前に取り外す剥離可能な保護層または保護フィルムで通常覆われている。この保護フィルムも、光に不透性であるように適応させることができる。」
甲3c「【0024】
例:
一方の製剤(B)が、UV吸収剤を10wt.%含むのに対して、もう一方の製剤(A)は、UV吸収剤を含まないということ以外は同じ組成である限りにおいて組成が異なる、ゲスターゲンの群からの感光性活性物質の製剤(A、B)を調製した。感圧粘着剤、活性物質の両方を含有する積層にPETの透明カバーフィルムを施し、「TTS」が調製された。
【0025】
製剤(B)の組成は、以下のとおりである:
(すべての表示は、重量パーセント)
2.0% ゲスターゲン
87.6% アクリレートポリマー
0.4% 架橋剤
10.0% Eusolex(登録商標)6300
Eusolex(登録商標)6300(メルク、ダルムシュタット)は、油溶性UV-B吸収剤(3-(4-メチレンベンジリデン)-カンフル)である。
【0026】
光保護作用をテストするために、PETフィルムで覆われた両方のTTS製剤を、ICH指針「新規活性物質および医薬品の光安定性テストに関する指針書」(CPMP/ICH/279/95)により照射した。照射時間は7時間で、照射源としてキセノンランプを用いた。その構造のため、利用した光源は放射基準D65/ID65に匹敵する光の放射を発生する。その後、TTS中の活性物質含量を決定した。
【0027】
UV吸収剤を含有するTTS製剤(B)の場合、用いられた感光性活性物質の約95%を、再び検出することができたが、UV吸収剤を含まないTTS製剤(A)においては、活性物質の初期存在量の46%しか、照射後に検出できないことが判明した。
このことは、本発明に提案されているUV吸収剤の添加が、活性物質の光化学的分解を防止し、従って、感光性活性物質を含有するTTSを透明TTSとして製造し、その結果、許容またはコンプライアンスを改善することを可能とすることを示している。」
エ 甲4
甲4a「【請求項1】 ポリウレタン樹脂を製膜してなるフィルムと伸縮性を有する不織布との積層体からなり、ポリウレタンフィルム又は不織布には抗菌剤を含有させ、かつ、少なくともポリウレタンフィルムには開孔が形成されていることを特徴とする創傷被覆材。」
甲4b「【0015】・・・・・更に、本発明のポリウレタン樹脂の耐久性を向上させる目的でヒンダードフェノール系酸化防止剤,ベンゾフェノン系またはベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤,ヒンダードアミン系安定剤を1種または2種以上を予め含有させてもよい。この場合、各添加剤はポリウレタン固形分に対し0.05~3重量%加えるが、少量で良好な効果を得るには0.2~1重量%が好ましい。・・・・・」
オ 甲5
甲5a「[1] 基材層の片面に粘着剤層が設けられた層構成を有する化粧補助貼付材であって、
(1)該基材層が、ガラス転移温度が0℃以下のポリウレタンエラストマー層であり、
(2)該粘着剤層が、炭素数8~12のアルキル基を有するアクリル酸アルキルエステル及びメタクリル酸アルキルエステルからなる群より選ばれる少なくとも一種の単量体単位を70重量%以上の割合で含有する共重合体からなるアクリル粘着剤層であり、並びに
(3)該基材層の厚みが1~10μm、該粘着剤層の厚みが1~15μm、及びこれら両層の合計厚みが2~20μmである
ことを特徴とする化粧補助貼付材。
・・・・・
[5] 該基材層または該粘着剤層若しくはこれらの両層が、着色剤によって黄色系またはオレンジ色系の色調に着色されているものである請求項1記載の化粧補助貼付材。」
甲5b「[0033]1.基材層:
・・・・・
[0050] ポリウレタンエラストマーには、顔料や染料などの着色剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、滑剤、充填剤、軟化剤などの各種添加剤を、所望により含有させることができる。着色剤は、化粧補助貼付材の色調を肌色に合わせるのに利用することができるが、損傷等のある肌の貼付部位の外観が目立たないようにするために、着色剤は、黄色系、オレンジ色系等が好ましい。
[0051]2.粘着剤層:
・・・・・
[0061] 粘着剤層には、必要に応じて、顔料や染料などの着色剤などの各種添加剤を添加することができる。着色剤は、化粧補助貼付材の色調を肌色に合わせるのに利用することができるが、損傷等のある肌の貼付部位の外観が目立たないようにするために、着色剤は、黄色系、オレンジ色系等が好ましい。」
カ 甲6
甲6a「【請求項1】カバー材、基材フィルム、粘着剤層、剥離ライナーが、順に積層されてなる隠蔽シールであって、基材フィルムと粘着剤層のいずれか一方、または両方が着色されていて、且つ、各層間の接着力が、基材フィルム・粘着剤層間>カバー材・基材フィルム間>粘着剤層・剥離ライナー間の順に調整されていることを特徴とする隠蔽シール。」
甲6b「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、隠蔽用のシールに関し、更に詳しくは、肌のしみ、あざ、傷、そばかすなどを隠すために用いる化粧用の隠蔽シールに関する。」
甲6c「【0013】
【発明の実施の形態】先にも説明したように、本発明は、基本的に、肌のしみ、あざ、傷、そばかすなどを隠すための化粧の際に、補助部材として用いる隠蔽シールであって、肌色に着色され、薄くて伸縮性がよく、表面がマットで水分透過性のよいフィルムを基材フィルムに用い、これを貼着しやすいように粘着シール状に加工したものであり、これを隠したい皮膚の部分に貼着し、その上から仕上げの化粧を行う方法で用いるものである。・・・・・
・・・・・
【0017】(5)基材フィルムの着色は、隠蔽性を高めるために必要であり、基本的には肌色に着色することが好ましく、例えば、隠蔽性の高い酸化チタンを主体に、他の着色顔料を添加して調色し、マスターバッチを作成した後、これを更に樹脂と混合して押し出して製膜してもよく、また、樹脂の溶液に調色した着色剤を分散させて塗布液を作成し、これをカバー材などに塗布する方法で製膜してもよい。・・・・・」
キ 刊4
刊4a「【請求項1】 ジェランガムと少なくとも1種の他の親水コロイドとを組合せてなる親水性ゲル化系を水相中に含有する組成物(P)から形成される基質を有する化粧品用、製薬用又は皮膚用パッチ。」
刊4b「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は化粧品用、製薬用又は皮膚病用のパッチに関する。本発明の目的は、本質的にトリートメント、リフレッシュ又はリラックス効果を有するパッチを提供することにある。このようなパッチは、基質中に分散された少なくとも1種の活性物質を皮膚と接触させることにより、皮膚に美容及び/又は薬理作用をもたらすものである。」
(2)取消理由1(新規性)及び取消理由2(進歩性)について
ア 甲1を主引例とする場合
(ア)甲1に記載された発明
甲1は、「紫外線遮蔽加工を施した支持体を有することを特徴とする貼付剤」(甲1a 請求項1)に関し記載するものであって、上記「貼付剤」の具体例として、甲1の実施例12には、「処方例7で得られた基剤溶液を乾燥後に70cm2あたり0.5gとなるように、シリコーン処理したポリエステルフィルムに展延した。一方、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン0.1質量部をポリ塩化ビニルフィルム99.9質量部に均一に配合して、紫外線遮蔽加工した支持体を得た。上記フィルム上の展延基剤をこの支持体で覆って圧着転写させ、所望の大きさに裁断したテープ剤とした。」(甲1d)ことが記載されている。
ここで、「処方例7で得られた基剤溶液」について、実施例の処方例7には、「アクリル酸2-エチルへキシルエステル55質量部、アクリル酸メトキシエチルエステル26質量部、酢酸ビニル14.7質量部、アゾビスイソブチロニトリル0.3質量部及び酢酸エチル100質量部を反応容器に入れ、窒素雰囲気下にて65℃に昇温して重合を開始させ、10時間反応を続けた後、 さらに80℃で2時間熟成して共重合体溶液を得、得られた共重合体溶液にケトプロフェン4質量部を添加混合し、均一な混合溶液とし、テープ剤用基剤溶液とした。」(甲1d)ことが記載されている。
さらに、実施例の「光透過試験1」には、上記実施例12で作製した「紫外線遮蔽加工した支持体」の「光透過率」が「25.8%」であることが記載されている(甲1d)。
そうすると、甲1には、
「アクリル酸2-エチルへキシルエステル55質量部、アクリル酸メトキシエチルエステル26質量部、酢酸ビニル14.7質量部、アゾビスイソブチロニトリル0.3質量部及び酢酸エチル100質量部を反応容器に入れ、窒素雰囲気下にて65℃に昇温して重合を開始させ、10時間反応を続けた後、さらに80℃で2時間熟成して共重合体溶液を得、得られた共重合体溶液にケトプロフェン4質量部を添加混合し、均一な混合溶液とし、テープ剤用基剤溶液とし、得られた基剤溶液を乾燥後に70cm2あたり0.5gとなるように、シリコーン処理したポリエステルフィルムに展延し、一方、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン0.1質量部をポリ塩化ビニルフィルム99.9質量部に均一に配合して、紫外線遮蔽加工した支持体(光透過率25.8%)を得、上記フィルム上の展延基剤をこの支持体で覆って圧着転写させ、所望の大きさに裁断したテープ剤」
の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されているといえる。
(イ)本件発明1について
a 甲1発明との対比
(a)甲1発明の「2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン0.1質量部をポリ塩化ビニルフィルム99.9質量部に均一に配合して、紫外線遮蔽加工した支持体(光透過率25.8%)」について、この「紫外線遮蔽加工した支持体」は、「2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン0.1質量部をポリ塩化ビニルフィルム99.9質量部に均一に配合して」得られたものであって、この「2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン0.1質量部」は、紫外線吸収剤であり(甲1b)、支持体の材質は「ポリ塩化ビニルフィルム99.9質量部」であるといえ、「ポリ塩化ビニル」は、一般に透明若しくは半透明の柔軟なフィルムである。そして、上記「支持体」は、積層されたものではないから、単層である。
そうすると、甲1発明の「2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン0.1質量部をポリ塩化ビニルフィルム99.9質量部に均一に配合して、紫外線遮蔽加工した支持体(光透過率25.8%)」は、本件発明1の「透明若しくは半透明の柔軟な支持体フィルム(但し、2層以上からなる支持体フィルムを除く)」「前記支持体フィルムが、紫外線吸収剤及び/又は紫外線散乱剤を含み、前記支持体フィルムの少なくとも一方側の表面に肌色の着色を有する」とは、「透明若しくは半透明の柔軟な支持体フィルム(但し、2層以上からなる支持体フィルムを除く)」「前記支持体フィルムが、紫外線吸収剤及び/又は紫外線散乱剤を含」む点で共通する。
(b)甲1発明の「アクリル酸2-エチルへキシルエステル55質量部、アクリル酸メトキシエチルエステル26質量部、酢酸ビニル14.7質量部、アゾビスイソブチロニトリル0.3質量部及び酢酸エチル100質量部を反応容器に入れ、窒素雰囲気下にて65℃に昇温して重合を開始させ、10時間反応を続けた後、さらに80℃で2時間熟成して共重合体溶液を得、得られた共重合体溶液にケトプロフェン4質量部を添加混合し、均一な混合溶液とし、テープ剤用基剤溶液とし、得られた基剤溶液を乾燥後に70cm2あたり0.5gとなるように、シリコーン処理したポリエステルフィルムに展延し」たものについて、上記「テープ剤用基剤溶液」は、「アクリル酸2-エチルへキシルエステル55質量部」を主に含む、貼付剤に用いる基剤溶液で(甲1c)、非ステロイド系消炎鎮痛剤である「ケトプロフェン」(甲1b)を含むものである。そして、この「テープ剤用基剤溶液」を「乾燥後に70cm2あたり0.5gとなるように、シリコーン処理したポリエステルフィルムに展延し」ていることから、これは粘着剤層を形成したものといえる。
さらに、甲1発明は、この「上記フィルム上の展延基剤をこの支持体で覆って圧着転写させ」ており、これは、上記(a)で述べた「紫外線遮蔽加工した支持体」に、上記「展延し」た「基剤」である粘着剤層を圧着転写させていることから、「紫外線遮蔽加工した支持体」上に当該粘着剤層は積層されているといえる。
そうすると、甲1発明の「アクリル酸2-エチルへキシルエステル55質量部、アクリル酸メトキシエチルエステル26質量部、酢酸ビニル14.7質量部、アゾビスイソブチロニトリル0.3質量部及び酢酸エチル100質量部を反応容器に入れ、窒素雰囲気下にて65℃に昇温して重合を開始させ、10時間反応を続けた後、さらに80℃で2時間熟成して共重合体溶液を得、得られた共重合体溶液にケトプロフェン4質量部を添加混合し、均一な混合溶液とし、テープ剤用基剤溶液とし、得られた基剤溶液を乾燥後に70cm2あたり0.5gとなるように、シリコーン処理したポリエステルフィルムに展延し」「上記フィルム上の展延基剤をこの支持体で覆って圧着転写させ」たものは、本件発明1の「前記支持体フィルム上に積層された粘着剤層」に相当する。
(c)甲1発明の「テープ剤」は、本件発明1の「コンシーラパッチ」と、貼付剤である点で共通する。
(d)そうすると、本件発明1と甲1発明とは、
「透明若しくは半透明の柔軟な支持体フィルム(但し、2層以上からなる支持体フィルムを除く)と、
前記支持体フィルム上に積層された粘着剤層とを備え、
前記支持体フィルムが、紫外線吸収剤及び/又は紫外線散乱剤を含むことを特徴とする貼付剤」である点で一致し、以下の点で相違する。
相違点甲1-CL1-1:貼付剤について、本件発明1は、「コンシーラパッチ」であるのに対し、甲1発明は、テープ剤であって、「コンシーラパッチ」か明らかでない点。
相違点甲1-CL1-2:支持体フィルムについて、本件発明1は、支持体フィルムの少なくとも一方側の表面に肌色の着色を有するものであるのに対し、甲1発明は、そのような肌色の着色を有するものとはされていない点。
相違点甲1-CL1-3:貼付剤の厚みについて、本件発明1は、支持体フィルムと粘着剤層との合計の厚みが20μm以下であるのを除くものであるのに対し、甲1発明は、支持体フィルムと粘着剤層との合計の厚みは明らかでない点。
b 判断
(a)相違点について
事案に鑑み、相違点甲1-CL1-1及び相違点甲1-CL1-2を纏めて、まず検討する。
甲1には、「支持体」「フィルム」の「少なくとも一方側の表面に肌色の着色を有する」「コンシーラパッチ」については、記載も示唆もされていない。
なお、甲1には、甲1発明の「テープ剤」がその具体例の一つである「貼付剤」は、「絆創膏、創傷用テープ剤、硬膏剤(テープ剤)、湿布用剤(パップ剤)、リザーバー型貼付剤、化粧用パックシート剤及びテーピング剤を含むもの」(甲1b)であることが記載されているが、これらはいずれも「コンシーラパッチ」とは異なるものと理解される。
甲1発明は、単層からなる支持体を用いて薬物の光安定性を向上させることにより、治療効果の確保と皮膚安全性に優れた貼付剤を提供することを課題として(甲1b)、貼付剤の単層からなる支持体を紫外線遮蔽加工することによって、上記課題を解決したものであり(甲1b)、当該甲1発明において、「テープ剤」を、肌トラブルのカバー用ファンデーションの貼付剤である「コンシーラパッチ」に変更し、かつ、「支持体フィルムの少なくとも一方側の表面に肌色の着色を有する」ことには、動機付けがない。
また、甲2~甲6及び刊4に記載された事項を検討しても、甲1発明において、「テープ剤」を「コンシーラパッチ」にし、かつ、「支持体フィルムの少なくとも一方側の表面に肌色の着色を有する」ことを、動機付ける記載や示唆はないし、本件優先日当時の技術常識からも動機付けられるものでもない。
したがって、甲1発明において、「テープ剤」を「コンシーラパッチ」とし、かつ、「支持体フィルムの少なくとも一方側の表面に肌色の着色を有する」ようにすることは、当業者といえども、甲1~甲6及び刊4に記載された技術的事項から容易に想到し得たとはいえない。
(b)小括
以上のとおりであるから、本件発明1は、相違点甲1-CL1-3及び本件発明1の効果を検討するまでもなく、甲1に記載された発明並びに甲1~甲6及び刊4に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(ウ)本件発明2~5について
本件発明2~5は、本件発明1を技術的に更に限定した発明であるから、本件発明1と同様の理由により、本件発明2~5も、甲1に記載された発明並びに甲1~甲6及び刊4に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
イ 甲2を主引例とする場合
(ア)甲2に記載された発明
甲2は、「a)放出可能に貯蔵された投与量の薬学的に活性な物質を含むリザーバー;及び b)前記リザーバーの少なくとも一部に関連する半透明フィルム;を含む経皮薬物送達デバイスであって、前記半透明フィルムが少なくとも1種類の無機紫外線吸収化合物を含有する、前記経皮薬物送達デバイス」(甲2a 請求項1)に関し記載するものであって、その具体例として、甲2の実施例5には、「実施例1の一般手順に従って半透明ポリエチレンフィルムを製造した。イソプロパノール、レボノルゲストレル、エストラジオール、アクリレートコポリマー接着剤、およびコリドン(Kollidon)(登録商標)VA64を混合することによって、経皮接着剤配合物を製造した。得られた接着剤配合物をフルオロポリマーコートポリエステル剥離ライナー(ScotchPak(登録商標)1022)上にナイフ塗布し、乾燥させて、塗布量約10mg/cm2を有する接着剤層を提供した。・・・剥離ライナーに対向する接着剤層の面を半透明ポリエチレンフィルム(またはバッキング)にラミネートし、経皮薬物送達デバイスとして使用するのに適した3層ラミネート(バッキング-接着剤-ライナー)を製造した。」(甲2c)ことが記載されている。
ここで、「実施例1の一般手順に従って半透明ポリエチレンフィルムを製造した」について、実施例1には、「経皮薬物送達デバイスで使用するのに適した半透明フィルムは、以下の一般的手順に従って製造された。公称クリスタリットサイズ15ナノメートルを有する、酸化アルミニウムおよびステアリン酸でコーティングされた二酸化チタン(ドイツ,デュースブルクのザハトレーベン社(Sachtleben Chemie GmbH,Duisburg,Germany))から市販のHombitec(登録商標)RM 130F)を無機紫外線吸収化合物として使用した。この材料は、ポリエチレン中に分散された20重量二酸化チタン%濃縮物として購入した。
20%二酸化チタン濃縮物を低密度ポリエチレン(イリノイ州モリスのエクイスター社(Equistar,Morris,Illinoi)から市販のLDPE,NA964-085 NT)と1:39の比で一軸スクリュー押出機で混合し、艶消仕上げを有する厚さ3ミル(76μm)のフィルムに押出し成形した。得られたフィルムは、二酸化チタン濃度0.5重量%を有した。」(甲2c)ことが記載されている。
そうすると、甲2には、
「公称クリスタリットサイズ15ナノメートルを有する、酸化アルミニウムおよびステアリン酸でコーティングされた二酸化チタン(ドイツ,デュースブルクのザハトレーベン社(Sachtleben Chemie GmbH,Duisburg,Germany))から市販のHombitec(登録商標)RM 130F)を無機紫外線吸収化合物として使用し、この材料は、ポリエチレン中に分散された20重量%二酸化チタン濃縮物として購入し、この20%二酸化チタン濃縮物を低密度ポリエチレン(イリノイ州モリスのエクイスター社(Equistar,Morris,Illinoi)から市販のLDPE,NA964-085 NT)と1:39の比で一軸スクリュー押出機で混合し、艶消仕上げを有する厚さ3ミル(76μm)のフィルムに押出し成形して、経皮薬物送達デバイスで使用するのに適した半透明ポリエチレンフィルムを製造し、イソプロパノール、レボノルゲストレル、エストラジオール、アクリレートコポリマー接着剤、およびコリドン(Kollidon)(登録商標)VA64を混合することによって、経皮接着剤配合物を製造し、得られた接着剤配合物をフルオロポリマーコートポリエステル剥離ライナー(ScotchPak(登録商標)1022)上にナイフ塗布し、乾燥させて、塗布量約10mg/cm2を有する接着剤層を提供し、剥離ライナーに対向する接着剤層の面を半透明ポリエチレンフィルム(またはバッキング)にラミネートして製造した、経皮薬物送達デバイスとして使用するのに適した3層ラミネート(バッキング-接着剤-ライナー)」
の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されているといえる。
(イ)本件発明1について
a 甲2発明との対比
(a)甲2発明の「経皮薬物送達デバイスで使用するのに適した半透明ポリエチレンフィルム」は、フィルムであるから「柔軟な」ものといえ、このフィルムにラミネートした「接着剤層」にとって、当該半透明ポリエチレンフィルムは支持体といえる。
また、この「半透明フィルム」は、支持体としては単層といえ、さらに、「二酸化チタン」を「無機紫外線吸収化合物」として含んでいるものである。
そうすると、甲2発明の「半透明フィルム」「前記半透明フィルムが少なくとも1種類の無機紫外線吸収化合物を含有する」は、本件発明1の「透明若しくは半透明の柔軟な支持体フィルム(但し、2層以上からなる支持体フィルムを除く)」「前記支持体フィルムが、紫外線吸収剤及び/又は紫外線散乱剤を含み、前記支持体フィルムの少なくとも一方側の表面に肌色の着色を有する」とは、「透明若しくは半透明の柔軟な支持体フィルム(但し、2層以上からなる支持体フィルムを除く)」「前記支持体フィルムが、紫外線吸収剤及び/又は紫外線散乱剤を含」む点で共通する。
(b)甲2発明は、「経皮接着剤配合物・・をフルオロポリマーコートポリエステル剥離ライナー(・・)上に・・塗布し、乾燥させて、・・接着剤層を提供し、剥離ライナーに対向する接着剤層の面を半透明ポリエチレンフィルム(またはバッキング)にラミネートして製造した、経皮薬物送達デバイスとして使用するのに適した3層ラミネート(バッキング-接着剤-ライナー)」である。
上記「経皮接着剤配合物」は、「イソプロパノール、レボノルゲストレル、エストラジオール、アクリレートコポリマー接着剤、およびコリドン(Kollidon)(登録商標)VA64を混合」したものであって、本件明細書等の「【0026】コンシーラパッチの粘着剤層には、アクリル系粘着剤・・を使用できる」という記載を踏まえると、甲2発明の「アクリレートコポリマー接着剤」は、アクリル系粘着剤といえる。
そうすると、甲2発明における、「経皮接着剤配合物」を「塗布し、乾燥させて」得られた「接着剤層」は、「半透明ポリエチレンフィルム(またはバッキング)」に積層された粘着剤層といえる。
したがって、上記(a)で述べたことを踏まえると、甲2発明の「接着剤層」は、本件発明1の「前記支持体フィルム上に積層された粘着剤層」に相当する。
(c)甲2発明の「経皮薬物送達デバイスとして使用するのに適した3層ラミネート(バッキング-接着剤-ライナー)」は、「経皮薬物送達デバイス」で、皮膚に密着して用いるものであるから、皮膚用といえ、また、「3層ラミネート(バッキング-接着剤-ライナー)」は、「剥離ライナーに対向する接着剤層の面を半透明ポリエチレンフィルム(またはバッキング)にラミネートして製造した」ものであり、「剥離ライナー」を剥がして「接着剤層」を皮膚に密着させて用いるものと理解されるから、パッチといえる。
そうすると、甲2発明の「経皮薬物送達デバイスとして使用するのに適した3層ラミネート(バッキング-接着剤-ライナー)」は、本件発明1の「コンシーラパッチ」とは、皮膚用パッチである点で共通する。
(d)甲2発明の「経皮薬物送達デバイスとして使用するのに適した3層ラミネート(バッキング-接着剤-ライナー)」は、「剥離ライナーに対向する接着剤層の面を半透明ポリエチレンフィルム(またはバッキング)にラミネートして製造した」ものであり、この「半透明ポリエチレンフィルム(またはバッキング)」は、「厚さ3ミル(76μm)のフィルム」であるから、甲2発明の「接着剤層」の厚さは明らかではないものの、当該「半透明ポリエチレンフィルム」と「接着剤層」との合計の厚みは、「3ミル(76μm)」を超えることは明らかである。
そうすると、甲2発明の「経皮薬物送達デバイスとして使用するのに適した3層ラミネート(バッキング-接着剤-ライナー)」は、上記(c)で述べたことを踏まえると、本件発明1の「(但し、前記支持体フィルムと前記粘着剤層との合計の厚みが20μm以下であるコンシーラパッチを除く)」とは、(但し、前記支持体フィルムと前記粘着剤層との合計の厚みが20μm以下である皮膚用貼付剤を除く)ものである点で共通する。
(e)したがって、本件発明1と甲2発明とは、
「透明若しくは半透明の柔軟な支持体フィルム(但し、2層以上からなる支持体フィルムを除く)と、
前記支持体フィルム上に積層された粘着剤層とを備え、
前記支持体フィルムが、紫外線吸収剤及び/又は紫外線散乱剤を含むことを特徴とする皮膚用パッチ(但し、前記支持体フィルムと前記粘着剤層との合計の厚みが20μm以下である皮膚用貼付剤を除く)」である点で一致し、以下の点で相違する。
相違点甲2-CL1-1:皮膚用貼付剤について、本件発明1は、コンシーラパッチであるのに対し、甲2発明は、経皮薬物送達デバイスとして使用するのに適した3層ラミネート(バッキング-接着剤-ライナー)である点。
相違点甲2-CL1-2:支持体フィルムについて、本件発明1は、支持体フィルムの少なくとも一方側の表面に肌色の着色を有するものであるのに対し、甲2発明は、そのような肌色の着色を有するものとはされていない点。
b 判断
(a)相違点について
事案に鑑み、相違点甲2-CL1-1及び相違点甲2-CL1-2を纏めて検討する。
i 新規性について
(i)本件発明1における「コンシーラ」パッチは、「肌トラブルのカバー用ファンデーションであり、シミ、ソバカス、ほくろ、にきび跡や不健康な印象を与える目の下のクマなどをスポット的に修正する化粧品」のパッチであり、甲2発明における「経皮薬物送達デバイスとして使用するのに適した」パッチである「3層ラミネート(バッキング-接着剤-ライナー)」とは、パッチの用途が異なるものといえる。
(ii)さらに、甲2発明における「経皮薬物送達デバイスで使用するのに適した半透明ポリエチレンフィルム」は、前記a(a)で述べたように、支持体フィルムといえるものであるが、これは少なくとも一方側の表面に肌色の着色を有するものではない。
(iii)そうすると、相違点甲2-CL1-1及び相違点甲2-CL1-2は、実質的な相違点といえる。
したがって、本件発明1は、甲2に記載された発明であるとはいえない。
ii 進歩性について
甲2には、支持体フィルムといえる「半透明ポリエチレンフィルム」「の少なくとも一方側の表面に肌色の着色を有する」「コンシーラパッチ」については、記載も示唆もされていない。
甲2発明は、薬学的に活性な物質を含むリザーバー及び半透明フィルムを含む経皮薬物伝達デバイスにおいて、半透明フィルムが無機紫外線吸収化合物を含有することによって、無機紫外線吸収化合物が半透明フィルムからの拡散に対して耐性であることから、リザーバー中に存在する薬物との実質的な接触が防止され、紫外線吸収添加剤によって誘導される化学的劣化の可能性が低減され、さらに、医薬製剤と不利に相互作用し得る添加剤を導入することなく、製剤(formulation)が紫外線から保護される、薬物伝達デバイスを提供するものである(甲2b)。
このような甲2発明において、「経皮薬物送達デバイスとして使用するのに適した」パッチである「3層ラミネート(バッキング-接着剤-ライナー)」を、肌トラブルのカバー用ファンデーションの貼付剤である「コンシーラパッチ」に変更することには、動機付けがない。
さらに、「経皮薬物送達デバイスとして使用する」目的のパッチである「3層ラミネート(バッキング-接着剤-ライナー)」において、支持体フィルムとして「半透明ポリエチレンフィルム」という半透明であることを前提としたフィルムを用いているものに、敢えて肌色の着色を有するようにして覆い隠してしまう構成とする動機付けがあるとはいえない。
また、甲1、甲3~甲6及び刊4に記載された事項を検討しても、甲2発明において、「経皮薬物送達デバイスとして使用するのに適した3層ラミネート(バッキング-接着剤-ライナー)」を「コンシーラパッチ」にし、かつ、支持体フィルムである「経皮薬物送達デバイスで使用するのに適した半透明ポリエチレンフィルム」「の少なくとも一方側の表面に肌色の着色を有する」ことを、動機付ける記載や示唆はないし、本件優先日当時の技術常識からも動機付けられるものでもない。
したがって、甲2発明において、「経皮薬物送達デバイスとして使用するのに適した3層ラミネート(バッキング-接着剤-ライナー)」を「コンシーラパッチ」にし、かつ、支持体フィルムである「経皮薬物送達デバイスで使用するのに適した半透明ポリエチレンフィルム」「の少なくとも一方側の表面に肌色の着色を有する」ようにすることは、当業者といえども、甲1~甲6及び刊4に記載された技術的事項から容易に想到し得たとはいえない。
(b)小括
以上のとおりであるから、本件発明1は、本件発明1の効果を検討するまでもなく、甲2に記載された発明並びに甲1~甲6及び刊4に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(ウ)本件発明2~5について
本件発明2~5は、本件発明1を技術的に更に限定した発明であるから、本件発明1と同様の理由により、本件発明2、3及び5は、甲2に記載された発明であるとはいえず、また、本件発明2~5は、甲2に記載された発明並びに甲1~甲6及び刊4に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
ウ 甲3を主引例とする場合
(ア)甲3に記載された発明
甲3は、「活性物質を含有するポリマーマトリックス、および基材層を含む構造を有し、ならびに少なくとも1種の感光性活性物質を含有する経皮治療システム(TTS)であって、UV領域の光を吸収し、固有の薬理学的作用を有さず、TTSのポリマーマトリックス中に分散または溶解され、および/または均一にTTSの基材層に分配される無色物質を該TTSが少なくとも1種含むことを特徴とする、前記経皮治療システム」(甲3a請求項1)に関し記載するものであって、請求項2及び3には、「【請求項2】基材層として好ましくは、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン、酢酸エチレンビニル、またはかかるポリマーの混合物が、用いられる透明基材層を備えていることを特徴とする、請求項1に記載の前記TTS。」及び「【請求項3】基材層が無色透明であることを特徴とする、請求項1または2に記載のTTS。」(甲3a)と記載されている。
そうすると、請求項3に係る発明において、請求項1及び請求項2の発明特定事項を備えた発明として、甲3には、
「活性物質を含有するポリマーマトリックス、および基材層を含む構造を有し、ならびに少なくとも1種の感光性活性物質を含有する経皮治療システム(TTS)であって、UV領域の光を吸収し、固有の薬理学的作用を有さず、TTSのポリマーマトリックス中に分散または溶解され、および/または均一にTTSの基材層に分配される無色物質を該TTSが少なくとも1種含むことを特徴とし、基材層として好ましくは、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン、酢酸エチレンビニル、またはかかるポリマーの混合物が、用いられる透明基材層を備えていることを特徴とし、基材層が無色透明であることを特徴とする、前記経皮治療システム」
の発明(以下「甲3発明」という。)が記載されているといえる。
(イ)本件発明1について
a 甲3発明との対比
(a)甲3発明の「基材層」は、甲3に「基材層(カバーフィルム)」、「基材層(カバー層)」(甲3b)と記載されていることから、「経皮治療システム(TTS)」をカバーするフィルムであり、支持体フィルムといえる。
この「基材層」は、「無色透明である」。
そして、甲3発明は、「UV領域の光を吸収し、固有の薬理学的作用を有さず、TTSのポリマーマトリックス中に分散または溶解され、および/または均一にTTSの基材層に分配される無色物質を該TTSが少なくとも1種含むことを特徴と」するものであることから、甲3発明は、その「基材層」に、「UV領域の光を吸収し、固有の薬理学的作用を有さ」ない「無色物質」を「均一に分配」しているものを含むものといえる。
この「無色物質」は、「UV領域の光を吸収し、固有の薬理学的作用を有さ」ないものであるから、紫外線吸収剤といえる。
そうすると、甲3発明の「基材層」は、本件発明1の「透明若しくは半透明の柔軟な支持体フィルム(但し、2層以上からなる支持体フィルムを除く)」「前記支持体フィルムが、紫外線吸収剤及び/又は紫外線散乱剤を含む」と、透明若しくは半透明の柔軟な支持体フィルムで、前記支持体フィルムが、紫外線吸収剤及び/又は紫外線散乱剤を含む点で共通する。
(b)甲3発明の「経皮治療システム(TTS)」は、皮膚に貼り付ける等密着させて用いるものであるから、皮膚用パッチといえる。
そうすると、甲3発明の「経皮治療システム(TTS)」は、本件発明1の「コンシーラパッチ」が皮膚用パッチといえることから、本件発明1の「コンシーラパッチ」とは、皮膚用パッチである点で共通する。
(c)そうすると、本件発明1と甲3発明とは、
「透明若しくは半透明の柔軟な支持体フィルムを備え、
前記支持体フィルムが、紫外線吸収剤及び/又は紫外線散乱剤を含むことを特徴とする皮膚用パッチ(但し、前記支持体フィルムと前記粘着剤層との合計の厚みが20μm以下である皮膚用パッチを除く)。」
である点で一致し、以下の点で相違する。
相違点甲3-CL1-1:皮膚用パッチについて、本件発明1は、コンシーラパッチであるのに対し、甲3発明は、経皮治療システム(TTS)である点。
相違点甲3-CL1-2:支持体フィルムについて、本件発明1は、支持体フィルムの少なくとも一方側の表面に肌色の着色を有するものであるのに対し、甲3発明は、そのような肌色の着色を有するものとはされていない点。
相違点甲3-CL1-3:支持体フィルムについて、本件発明1は、2層以上からなる支持体フィルムを除くものであるのに対し、甲3発明は、2層以上からなる支持体フィルムを除くものであるのか明らかでない点。
相違点甲3-CL1-4:皮膚用パッチについて、本件発明1は、前記支持体フィルム上に積層された粘着剤層とを備えているものであるのに対し、甲3発明は、前記支持体フィルム上に積層された粘着剤層とを備えているものであるか明らかでない点。
相違点甲3-CL1-5:皮膚用パッチの厚みについて、本件発明1は、支持体フィルムと粘着剤層との合計の厚みが20μm以下であるのを除くものであるのに対し、甲3発明は、支持体フィルムと粘着剤層との合計の厚みは明らかでない点。
b 判断
(a)相違点について
事案に鑑み、相違点甲3-CL1-1及び相違点甲3-CL1-2を纏めて、まず検討する。
甲3には、支持体フィルムといえる「基材層」の「少なくとも一方側の表面に肌色の着色を有する」「コンシーラパッチ」については、記載も示唆もされていない。
甲3発明は、光の影響に対する耐性を増大させた、感光性活性物質を含有する経皮適用可能な医薬製剤を提供することを課題とするもの(甲3b【0011】)であり、活性物質を含有するポリマーマトリックス、及び基材層を含む構造を有し、並びに少なくとも一つの感光性活性物質を含有し、UV領域の光を吸収する少なくとも一つの無色物質が、活性物質を含有するマトリックス中に均一に溶解又は分散された形態で分配され、かかる物質が均一にその基材層(カバーフィルム)に分配されている経皮治療システム(TTS)とすることにより、上記課題を解決したものである(甲3b【0012】)。
このような甲3発明において、「経皮治療システム(TTS)」を、肌トラブルのカバー用ファンデーションの貼付剤である「コンシーラパッチ」に変更することには、動機付けがない。
さらに、甲3には「UV-吸収性無色物質の存在により、透明な基材層および/または透明な活性物質マトリックスを有し、それにも関わらず、光誘起分解に対する感光性活性物質の保護を確実にする、TTSを製造することが可能となる。完全に透明で、従って皮膚につけた場合に、ほとんど目立たないTTSを、この方法で製造することが可能であることが、特に有利である。これは特に、更なる好ましい態様により、TTSが透明かつ無色であるように構成される場合、つまり、基材層(カバーフィルム)とポリマーマトリックスの両方、場合によっては更なる層も透明かつ無色である場合である。」(甲3b【0014】)と記載されている。この記載より、基剤層(カバーフィルム)とポリマーマトリックスは、透明かつ無色であることが好ましい態様と理解されることから、甲3では、基剤層の着色は好まれないことが理解される。
そうすると、甲3では、甲3発明において、支持体フィルムといえる「基材層」を着色しようという動機付けがあるとはいえないから、甲3発明において、「基材層」に、肌色の着色を有するようにしようという動機付けがあるとはいえない。
また、甲1、甲2、甲4~甲6及び刊4に記載された事項を検討しても、甲3発明において、「経皮治療システム(TTS)」を「コンシーラパッチ」にし、かつ、支持体フィルムといえる「基材層」「の少なくとも一方側の表面に肌色の着色を有する」ことを、動機付ける記載や示唆はないし、本件優先日当時の技術常識からも動機付けられるものでもない。
したがって、甲3発明において、「経皮治療システム(TTS)」を「コンシーラパッチ」とし、かつ、支持体フィルムといえる「基材層」「の少なくとも一方側の表面に肌色の着色を有する」ようにすることは、当業者といえども、甲1~甲6及び刊4に記載された技術的事項から容易に想到し得たとはいえない。
(b)小括
以上のとおりであるから、本件発明1は、相違点甲3-CL1-3~相違点甲3-CL1-5及び本件発明1の効果を検討するまでもなく、甲3に記載された発明並びに甲1~甲6及び刊4に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(ウ)本件発明2~5について
本件発明2~5は、本件発明1を技術的に更に限定した発明であるから、本件発明1と同様の理由により、本件発明2~5も、甲3に記載された発明並びに甲1~甲6及び刊4に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
エ 申立人の主張について
(ア)申立人は、令和5年2月3日付け意見書の3.(1)において、
a 本件発明2において「前記粘着剤層が、美容成分及び/又は皮膚用薬物を含む」と特定していることを鑑みると、本件発明1においても「専ら治療効果を目的とする発明である」ことを包含していることは明らかである、
b 支持体フィルムの表面に肌色の着色を有することは、本件特許出願時における周知技術である(甲5、甲6)。
したがって、本件発明1~4は、甲1~甲3に記載された発明及び本件出願時における周知技術により、当業者が容易に想到し得たものである旨を主張している。
(イ)しかしながら、上記aについては、本件発明1~5は、皮膚のトラブルをカバーするためのファンデーションのパッチである「コンシーラパッチ」であり、それが「皮膚用薬物を含む」場合があるとしても、あくまでもファンデーションのパッチである「コンシーラパッチ」である。
そして、前記ア(イ)b、イ(イ)b及びウ(イ)bで述べたように、甲1発明~甲3発明において、治療効果を目的とするパッチを、皮膚のトラブルのカバー用ファンデーションのパッチである「コンシーラパッチ」にしようとする動機付けがあるとはいえず、当業者が容易に想到し得たものとは認められない。
また、上記bについては、甲1発明~甲3発明について前記検討したように、甲1発明において、基剤を構成する貼付剤の単層からなる支持体フィルムである「テープ剤」を、着色しようという動機付けがあるとはいえず、甲2発明について、「経皮薬物送達デバイスとして使用する」目的のパッチにおいて、支持体フィルムとして半透明フィルムを用いているものに、敢えて肌色の着色を有するようにしようという動機付けがあるとはいえず、また、甲3発明においても、支持体フィルムといえる「基材層」を着色しようという動機付けがあるとはいえない。
したがって、甲1発明~甲3発明において、支持体フィルムに該当するものの表面に肌色の着色を有するようにすることは、当業者が容易に想到し得たものとも認められない。
したがって、申立人の前記主張は採用できない。
オ まとめ
以上より、本件発明1~5に係る特許は、特許法第29条1項第3号に該当し特許を受けることができないものではなく、また、同法同条第2項の規定に違反してなされたものでもないから、同法第113条第2項の規定により取り消されるべきものではなく、取消理由1及び2は解消している。
(3)取消理由3(サポート要件)について
ア 特許法第36条第6項第1号の判断の前提について
特許法第36条第6項は、「第二項の特許請求の範囲の記載は、次の各号に適合するものでなければならない。」と規定し、その第1号において「特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものであること。」と規定している。同号は、明細書のいわゆるサポート要件を規定したものであって、特許請求の範囲の記載が明細書のサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものとされている。
以下、この観点に立って、判断する。
イ 特許請求の範囲の記載
前記第3に記載したとおりである。
ウ 発明の詳細な説明の記載
本件明細書等の発明の詳細な説明には、次のような記載がなされている。
(ア)技術分野、背景技術に関する記載
「【技術分野】
【0001】
本発明は、肌の欠点を隠し、肌を白く美しく見せるためのコンシーラパッチに関する。さらに、紫外線吸収剤、美容成分を配合し肌自身の美白を実現するコンシーラパッチに関する。
【背景技術】
【0002】
コンシーラとは、肌トラブルのカバー用ファンデーションであり、シミ、ソバカス、ほくろ、にきび跡や不健康な印象を与える目の下のクマなどをスポット的に修正する化粧品である。スティックタイプ、クリームタイプ及びリキッドタイプのコンシーラがよく用いられている。
【0003】
コンシーラは、カバー力を出すために、通常のファンデーションよりも密着性・エモリエント性に加え、顔料が多めに含まれている。コンシーラを用いる際は、ファンデーションと同様に下地・乳液などをたっぷりぬり、ベースを整えておく必要がある。下地を塗った後、絵の具をポツポツと置くように塗り、指の腹または化粧用コットンや綿棒など繊維残りが出ない素材で、軽く叩いてぼかしながらのばす。このコンシーラ使用法は一見簡単ではあるが、実際にやってみると自然な肌の風合いを出すのが難しく、素人が自宅でやってもうまくいかない場合が多い。また従来のコンシーラはシミ、ソバカスを隠すことのみを機能としおり、製品中に美容成分をも配合し積極的にシミなどの美白をもその機能としている製品はない。
【0004】
コンシーラ効果を有する素材として、これまで、ワックス、揮発性油分及び非揮発性油分(特許文献1)、チタンコート顔料、金属石鹸コート顔料及び高被覆顔料(特許文献2)、揮発性シリコーン油、水性成分、白色顔料、光輝性粉体など(特許文献3)、タルク、隠蔽性粉体、チタンマイカ、液体脂及び固形脂(特許文献4)など、が報告されている。また、ある種のペプチド(特許文献5)、ポリアルケンベ-スの超分子ポリマーや(特許文献6)やフィルム形成性のポリヒドロキシスチレンポリマー(特許文献7)などが提案されている。
・・・・・」
(イ)発明が解決しようとする課題に関する記載
「【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、現在市販されているスティックタイプ、クリームタイプやリキッドタイプのコンシーラの使いにくさを解消し、誰でも簡単にシミ、ソバカス、ニキビ跡やクマなどを簡単に隠せる新しいパッチタイプのコンシーラ化粧品を提供することである。さらにパッチの支持体フィルムや粘着剤に紫外線吸収剤、美容成分を配合し肌の美白をも実現する化粧品を提供することである。」
(ウ)課題を解決するための手段、及び、コンシーラパッチの意味に関する記載
「【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するためになされた本発明に係るコンシーラパッチは、透明若しくは半透明の柔軟な支持体フィルムの表面に肌色の着色を有し、粘着剤層を備えることを特徴とする。
すなわち、本発明に係るコンシーラパッチは、透明若しくは半透明の柔軟な支持体フィルムと、前記支持体フィルム上に積層された粘着剤層とを備え、前記支持体フィルムの少なくとも一方側の表面に肌色の着色を有することを特徴とする。」、及び、
「【0011】
コンシーラパッチは着色により顔面のシミやニキビ等を隠ぺいするものであるが、一様に着色しない方が望ましい。顔面のシミ、ソバカス、ニキビ跡やクマは局部的であるため、ある程度濃い色でないと隠すことができない反面、一様な濃い色だとコンシーラパッチの存在自体が不自然な印象を与えるためである。」
(エ)コンシーラパッチにおける、支持体フィルムの表面への着色に関する記載
「【0009】
本発明の特徴は、コンシーラパッチの支持体フィルム表面に、印刷技術を用いて着色を施す点にある。
【0010】
コンシーラパッチは、その色が一様でよければ、支持体フィルム原料に色素か顔料を混和してフィルム化すれば製造できる。しかし、部分的に肌色を変化させたいときは、この方法では製造できない。例えば、中央部を濃い肌色、周辺部を薄い肌色とし、中央部から周辺部に向かって次第に肌色が薄くなるように、すなわちグラデーションを付して着色したコンシーラパッチはこの方法では製造できない。部分的に肌色を変化させたコンシーラパッチは、本発明のように、支持体フィルム上に着色を印刷して初めて製造可能となる。
従って、本発明に係るコンシーラパッチの製造方法は、透明若しくは半透明の柔軟な支持体フィルムの表面を、印刷技術を用いて肌色に着色する工程と、前記支持体フィルム上に粘着剤層を形成する工程とを備える。
【0011】
コンシーラパッチは着色により顔面のシミやニキビ等を隠ぺいするものであるが、一様に着色しない方が望ましい。顔面のシミ、ソバカス、ニキビ跡やクマは局部的であるため、ある程度濃い色でないと隠すことができない反面、一様な濃い色だとコンシーラパッチの存在自体が不自然な印象を与えるためである。そのため、中央部分をやや濃い肌色とし、周辺部をより薄い自然な風合いとすることが望ましい。
【0012】
支持体フィルム表面の着色を一様としないため、あるいは着色にグラデーションを付すための印刷方法はいろいろ考えられる。本発明では3つの方法を試みた。
(1)平面的に着色する。平面的な肌色着色とは、支持体フィルムの表面に、少なくとも1つの肌色に着色された領域が設けられていることをいう。ほぼ平面的に一様な着色面を有する構成であってもよく、色の濃さが場所により変化してもよい。
(2)直線状、曲線状、波線状若しくは折れ線状の肌色線を用いる。
(3)多数のドットを用い、ドットの大きさや密度を変化させる。
当然ながら、この3方法のうち2つあるいは3つを組み合わせてもよい。
【0013】
平面的な肌色着色を用いる場合、場所により着色の濃さを変化させることが好ましい。特に中心部の着色を濃く、周辺部の着色を薄くし、グラデーションを付すことが好ましい。
コンシーラパッチの周辺部を無色とし、地肌を透けて見えるようにすればより一層コンシーラパッチの存在が目立たなくすることができる。
【0014】
肌色の線を用いる場合、2本の肌色線を直角に交差させることができる。あるいは3本の肌色線を互いに60°ずらして交差させてもよい。肌色線の方向数をより増やしてもよい。このように、肌色線が複数設けられていてもよく、その場合には、複数の肌色の線のうち少なくとも2本の線が、交差していることが好ましい。
ここで線の形状は直線、曲線、波線、折れ線などを選ぶことができ、またこれらに限定されない。なお、単に肌色の線若しくは肌色線というときは、直線、曲線、波線、折れ線などを含む。
【0015】
また、円形や楕円形などの閉鎖曲線を組み合わせてもよい。中心を合わせて同心円状としても、閉鎖曲線を互いに交差させてもよい。
【0016】
肌色線の間隔や太さは、一様でなくてもよい。また、グラデーションを付すには、肌色線の着色を中心部で濃く、周辺部で薄くすればよい。
【0017】
線の組み合わせを用いれば無色の部分を設けることができ、これにより地肌が透けて見え、コンシーラパッチの存在をより目立たなくすることができる。
【0018】
多数のドットを用いる場合、ドットの大きさや密度を変化させ、あるいは肌色の濃さを変化させることによりグラデーションの効果を得ることができる。例えば、多数の肌色のドットのうち少なくとも1つのドットの大きさ若しくは肌色の濃さが、他のドットと異なっていてもよい。また、多数の肌色のドットが、密度が相対的に高い領域と、密度が相対的に低い領域とを有するように配置されていてもよい。
なお、ドットの形状は円、楕円、四角、三角等いかなる形状をも用いることができる。また、ドットの形状は必ずしも同一である必要はなく、ドットの分布は必ずしも規則的である必要もない。なお、単に多数のドットというときは、円、楕円、四角、三角等いかなる形状のドットをも含むものとする。
【0019】
多数のドットを用いれば、当然無色の部分をも設けることができる。
【0020】
コンシーラパッチの肌色にグラデーションを付すには、平面的な肌色着色(肌色の領域)と交差する肌色線とを組み合わせてもよい。この際、平面的な肌色着色(肌色の領域)を、中央部を濃く周辺部を薄くするのが好ましい。また平面的着色(肌色の領域)における肌色を白に近い肌色とすれば、交差する肌色線とよく釣り合い全体としては目立たないようにできる。
【0021】
コンシーラパッチの肌色にグラデーションを付す際、平面的な肌色着色(肌色の領域)と多数のドットとを用いてもよい
【0022】
支持体フィルムの肌色を印刷する面と粘着剤層を備える面は、フィルムの同じ表面でも異なる表面でもよい。あるいは肌色をフィルムの両表面に印刷してもよい。」
(オ)コンシーラパッチにおける、支持体フィルムの素材及び厚さに関する記載
「【0023】
柔軟な透明もしくは半透明の支持体フィルムとしては、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィンフィルム、またはエチレン酢ビ共重合体、ポリウレタン若しくはナイロンのフィルムを用いることができる。これらは、単独で用いてもよく、複数を併用してもよい。
【0024】
ポリウレタンフィルムが通気性及び柔軟性の点から最も好ましい。厚さは3~100μmがよい。3μmより小さいと機械的強度が不足することがあり製造や皮膚への貼り付けに不便となる場合があり、100μmより大きいと厚すぎて皮膚に違和感を生じることがあるからである。より好ましくは厚さ5~20μmがよい。
【0025】
ポリウレタンフィルムは裏打ちすると、加工や使用の際取扱がより一層容易となる。裏打ちフィルムは、工程紙、キャリアーあるいは台紙などと呼ばれる。」
(カ)コンシーラパッチにおける、粘着剤層に関する記載
「【0026】
コンシーラパッチの粘着剤層には、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、ウレタン系粘着剤、シリコン系粘着剤を使用できる。必要に応じて乳酸オクチルドデシル、グリセリン、のような可塑剤を添加してもよい。
【0027】
粘着剤層の厚さは5~100μmが好ましい。5μmより薄いと粘着力が不足することがあり、100μmより厚いと通気性が低くなることがあり長時間貼付に不適当であることがある。より好ましい粘着剤層厚さは5~30μmである。」
(キ)コンシーラパッチにおける、紫外線吸収剤及び紫外線錯乱剤に関する記載
「【0028】
コンシーラパッチの支持体フィルム及び/又は粘着剤層中に紫外線吸収剤、紫外線散乱剤、美容成分又は皮膚用薬物を含ませ、コンシーラパッチの適応性を拡大してもよい。なお、これらは単独で用いてもよく、複数を併用してもよい。
紫外線吸収剤としては、2-ヒドロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ4メトキシベンゾフェノンのようなベンゾフェノン誘導体、パラアミノ安息香酸及びその誘導体、サリチルホモネンチルのような酸誘導体、等の有機物紫外線吸収剤、紫外線散乱剤としては、酸化チタン、酸化亜鉛、等の紫外線散乱剤が使用できる。
美容成分の例としてはビタミンCやその誘導体(例えば、リン酸L-アスコルビルマグネシウム、テトラヘキシルデカン酸アスコルビル、パルミチン酸アスコルビルリン酸3Na)、コウジ酸、レチノイン酸、及びその誘導体、ハイドロキノン等の美白成分、ビタミンAやその誘導体、αリボ酸、アデノシン、α-ヒドロキシ酸等の抗シワ成分、を挙げることができる。また、サリチル酸、等のニキビ治療成分、グリチルレチン酸(塩)等の抗炎症成分を配合してもよい。さらに安定剤として、BHT,ビタミンE、及びその誘導体(例えば酢酸トコフェロール)、などを配合してもよい。」
(ク)本件発明1~5の実施例に関する記載
「【0035】
(実施例1)
図1に示す4種のコンシーラパッチを試作した。図1(a)に示す例1は全面印刷パッチであり、全面に肌色が印刷されている。図1(b)に示す例2は部分印刷パッチであり、中心部には濃い肌色が印刷されているが周辺部は無色である。印刷上グラデーションは設けられていない。図1(c)に示す例3は網目状印刷パッチであり、肌色の互いに交差する直線群が網目状に印刷されている。色合いは、中心部が濃く、周辺に行くに従い薄く、グラデーションが付されている。図1(d)に示す例4はドット状印刷パッチであり、円形ドットを中心部では密に周辺部では疎に印刷することにより、全体的なグラデーションを有する。これらのコンシーラパッチは直径15mmの円形である。
【0036】
これらのコンシーラパッチは4層からなっている。皮膚に貼り付ける方向を下として、上から順に(1)工程紙(厚さ40μmのOPP)、(2)ウレタン支持体フィルム(厚さ7μm)、(3)粘着剤層(HiPAS10粘着剤、コスメディ製薬(株)製)、厚さ15μm)、(4)離型紙(目付量100g/m2、シリコーン塗布)より構成されている。ウレタン支持体フィルムの片面に肌色の印刷が施されている。
・・・・・
【0043】
(実施例3)
図1(c)の例3のコンシーラパッチの基本構成をもとに、紫外線吸収剤や美容成分等の有価成分を含ませて、表1に示すような機能性コンシーラパッチを作成した。
【0044】
支持体フィルムにはウレタンフィルム(コスメディ製薬製)を、粘着剤にはHiPAS10(コスメディ製薬製)を用いた。有価成分は、表に示すように、支持体フィルム若しくは粘着剤層に含有させ、その配合量を重量%で示している。
・・・・・
【0038】
4種コンシーラパッチ(図1(a)~(d))各1枚を5名のボランティアの下腕皮膚に貼り、“目立たなさ試験”を実施した。試験は、4種のコンシーラパッチを5名のボランティアに貼付し、50cmの距離から目視により認識できるか否かにより判定した。
【0039】
全面印刷パッチ(a)は、5名分全て50cmの距離から明瞭に認識できた。部分印刷パッチ(b)は、5名分全て、貼付部位を指摘されて初めて認識できた。網目状印刷パッチ(c)及びドット状印刷パッチ(d)は、5名のうち2名分は貼付部位を指摘されて初めて認識できたが、残りの3名分は貼付部位を指摘されても認識できなかった。この試験により、網目状、ないしドット状に印刷したものが他の2種より目立ちにくく、“目立たなさ”性が優れると結論できる。
・・・・・
【0047】
【表1】
[図:0001401609000002.jpg]
エ 判断
(ア)本願発明1~5が解決しようとする課題について
発明の詳細な説明の、技術分野の記載(【0001】)、背景技術の記載(【0002】~【0005】)、発明が解決しようとする課題の記載(【0006】)、及び、実施例の記載(【0035】~【0050】)からみて、特に「【技術分野】【0001】本発明は、肌の欠点を隠し、肌を白く美しく見せるためのコンシーラパッチに関する。さらに、紫外線吸収材、美容成分を配合し肌自身の美白を実現するコンシーラパッチに関する」と記載されていることから、本件発明1~5の解決しようとする課題は、誰でも簡単にシミ、ソバカス、ニキビ跡やクマなどを簡単に隠すことができ、さらに紫外線吸収剤又は紫外線散乱剤、美容成分を配合し、肌の美白をも実現するコンシーラパッチを提供することであると認める。
(イ)本件訂正により、訂正前の本件発明1~5における「皮膚用パッチ」は、「コンシーラパッチ」に訂正された。
発明の詳細な説明の実施例には、実施例9に、本件発明1及び3~5の発明特定事項を有するコンシーラパッチを作成したこと、そのコンシーラパッチは、紫外線吸収能が強化され肌の色素沈着を防ぐことができ、肌の美白を実現し得ることを具体的に確認したことが記載されている。
また、実施例10~12に、本件発明2の発明特定事項の一つである「粘着剤層が、美容成分又は皮膚用薬物を含む」コンシーラパッチを作成し、そのコンシーラパッチは、シミ、ニキビ跡を目立ちにくくさせることを具体的に確認したことが記載されている。
さらに、発明の詳細な説明には、本件発明1~5の発明特定事項である、コンシーラパッチにおける、支持体フィルム、支持体フィルムの少なくとも一方側の表面への肌色の着色、粘着剤層、紫外線吸収剤、紫外線錯乱剤及び美容成分に関する実施の態様が詳細に記載されており、これらの記載に沿って実施すれば、誰でも簡単にシミ、ソバカス、ニキビ跡やクマなどを簡単に隠すことができ、さらに紫外線吸収剤又は紫外線散乱剤、美容成分を配合し、肌の美白をも実現するコンシーラパッチを提供し得ると理解され、そのことも、実施例の評価結果より理解できるといえる。
そうすると、本件発明1~5の発明特定事項を有するコンシーラパッチは、誰でも簡単にシミ、ソバカス、ニキビ跡やクマなどを簡単に隠すことができ、さらに紫外線吸収剤又は紫外線散乱剤、美容成分を配合し、肌の美白をも実現するコンシーラパッチを提供できると、当業者は理解できるといえ、本件発明1~5の前記課題を解決し得ると認識できるといえる。
(ウ)まとめ
したがって、本件発明1~5は発明の詳細な説明に記載したものであるといえ、特許法第36条第6項第1号に適合するものである。
よって、本件発明1~5に係る特許は、特許法第36条第6項に規定する要件を満たすものであるから、同法第113条第4号の規定により取り消されるべきものではなく、取消理由3は解消している。
2 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立の理由についての判断
(1)申立理由A(新規性)について
ア 本件発明1について
本件発明1と甲1発明との相違点は、前記1(2)ア(イ)aで述べたとおりであり、その判断については、前記1(2)ア(イ)bで検討したとおりであり、相違点甲1-CL1-1及び相違点甲1-CL1-2は、実質的な相違点と認められる。
したがって、本件発明1は、甲1に記載された発明であるとはいえないから、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものとはいえない。
イ 本件発明2~5について
本件発明2~5は、本件発明1を技術的に更に限定した発明を含むものであるから、本件発明1と同様の理由により、本件発明2~5も、甲1に記載された発明であるとはいえず、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものとはいえない。
ウ まとめ
以上より、本件発明1~5に係る特許は、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものではないから、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものではない。
(2)申立理由D(サポート要件)の(2)及び(3)について
ア 申立理由D(サポート要件)の(2)について
(ア)本件発明1~5における「紫外線吸収剤及び/又は紫外線散乱剤」について、発明の詳細な説明の実施例9には、紫外線吸収剤である「2-ヒドロキシベンゾフェノン」を「2重量%」支持体フィルムに配合したコンシーラパッチを作成したこと、その効果として「UVA96.2%遮蔽、UVB96.1%遮蔽」したことを具体的に確認し、これにより紫外線吸収能を強化でき肌の色素沈着を防ぐことができると理解し得ることが記載されている。
(イ)本件発明1~5における「紫外線吸収剤及び/又は紫外線散乱剤」について、発明の詳細な説明には、一般的な実施の態様の記載として、「【0028】コンシーラパッチの支持体フィルム及び/又は粘着剤層中に紫外線吸収剤、紫外線散乱剤・・・を含ませ、コンシーラパッチの適応性を拡大してもよい。なお、これらは単独で用いてもよく、複数を併用してもよい。
紫外線吸収剤としては、2-ヒドロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ4メトキシベンゾフェノンのようなベンゾフェノン誘導体、パラアミノ安息香酸及びその誘導体、サリチルホモネンチルのような酸誘導体、等の有機物紫外線吸収剤、紫外線散乱剤としては、酸化チタン、酸化亜鉛、等の紫外線散乱剤が使用できる。」と、使用し得る紫外線吸収剤及び紫外線散乱剤の種類が例示されているにとどまり、それらの含有量については特段記載されていない。それ故、紫外線吸収剤又は紫外線散乱剤の含有量については、特に限定されるものではなく、本件発明に係る特許の出願時の技術常識を勘案し、当業者が適宜決定し得るものと理解される。
(ウ)そうすると、本件発明1~5における「紫外線吸収剤及び/又は紫外線散乱剤」の含有量については、実施例9で実施している含有量を参考に、本件発明に係る特許の出願時の技術常識を勘案し、それらの含有量を適宜決定し、支持体フィルムに配合させてコンシーラパッチを作成すれば、紫外線吸収能を強化して肌の色素沈着を防ぐことができ、肌の美白を実現し得るコンシーラパッチを得ることができると、当業者は理解できるといえ、本件発明1~5の前記課題を解決し得ると認識できるといえる。
イ 申立理由D(サポート要件)の(3)について
本件明細書等の実施例において、例9以外に本件発明の実施例はない。
しかしながら、前記1(3)エで述べたように、発明の詳細な説明には、本件発明1~5の発明特定事項である、コンシーラパッチにおける、支持体フィルム、支持体フィルムの少なくとも一方側の表面への肌色の着色、粘着剤層、紫外線吸収剤、紫外線錯乱剤及び美容成分に関する実施の態様が詳細に記載されており、実施例の記載を考慮しこれらの記載に沿って実施すれば、当業者は、誰でも簡単にシミ、ソバカス、ニキビ跡やクマなどを簡単に隠すことができ、さらに紫外線吸収剤又は紫外線散乱剤、美容成分を配合し、肌の美白をも実現するコンシーラパッチを提供し得ると理解することができるといえる。
そうすると、本件発明1~5の発明特定事項を有するコンシーラパッチであれば、本件発明1~5の前記課題を解決し得ると認識できるといえる。
ウ まとめ
したがって、本件発明1~5は発明の詳細な説明に記載したものであるといえるから、特許法第36条第6項第1号に適合するものである。
よって、本件発明1~5に係る特許は、特許法第36条第6項に規定する要件を満たすものであるから、同法第113条第4号の規定により取り消されるべきものではない。
第7 むすび
以上のとおりであるから、本件発明1~5に係る特許は、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によって、取り消すことはできない。
また、ほかに本件発明1~5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2022-700266