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特許異議申立

2022-700228

コンベヤ装置

審判番号
2022-700228
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2017-042487
登録番号
6937592
請求日
2022年03月17日
審決日
2023年09月25日
公報発行日
2024年02月22日
結論
請求成立(取消)
当事者
  • 【権利者】トーヨーカネツ株式会社
  • 【権利者代理人】友野 英三
  • 【異議申立人】松永 裕吉
審判長/審判官
  • 審判長 平城 俊雅
  • 審判官 内田 博之
  • 審判官 久島 弘太郎
分類
P1651.113-ZDA(B65G) / P1651.121-ZDA(B65G)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条1項3号特許法113条2号特許法120条の8第1項特許法135条
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の5第2項、特許法第36条第6項第2号、特許法第36条第6項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第6937592号発明「コンベヤ装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第6937592号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-5〕について訂正することを認める。 特許第6937592号の請求項1に係る特許を取り消す。 特許第6937592号の請求項3及び4に係る特許を維持する。 特許第6937592号の請求項2及び5に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第6937592号(以下、「本件特許」という。)の請求項1~5に係る特許についての出願は、平成29年3月7日の出願であって、令和3年9月2日にその特許権の設定登録がされ、令和3年9月22日に特許掲載公報が発行された。本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。 令和4年 3月17日 :特許異議申立人松永裕吉(以下、「異議申立人」という。)による本件特許に対する特許異議の申立て 同年 6月24日付け:取消理由通知書 同年 8月26日 :特許権者による訂正請求書及び意見書の提出 同年10月26日付け:訂正拒絶理由通知書 同年11月30日 :特許権者による手続補正書及び意見書の提出 令和5年 2月27日付け:取消理由通知書(決定の予告) 同年 4月28日 :特許権者による訂正請求書(以下、この訂正請求書による訂正を「本件訂正」という。)及び意見書の提出 同年 8月 1日 :異議申立人による意見書の提出 なお、本件訂正により、令和4年8月26日にされた訂正請求は、特許法第120条の5第7項の規定により、取り下げたものとみなす。 異議申立人が提出した証拠方法は、以下のとおりである。 甲第1号証:特開2007-314328号公報 甲第2号証:実公昭59-43295号公報 第2 本件訂正の適否についての判断 1 本件訂正の内容 本件訂正は、以下の訂正事項1~5からなる(下線部が補正箇所である。以下、この項において同様。)。 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に、 「上方位置に設けられ第1の傾斜角度を持つ第1のコンベヤ機構と、下方位置に設けられ第2の傾斜角度を持つ第2のコンベヤ機構と、前記第1のコンベヤ機構と前記第2のコンベヤ機構とを傾斜をもって接続する第3のコンベヤ機構とを備えるコンベヤ装置であって、 前記第3のコンベア機構は前記第1のコンベア機構側から前記第2のコンベア機構側に向かった配列された複数のローラである第1のローラ、…、第Xのローラを有し、前記第1の傾斜角度から前記第2の傾斜角度まで、もしくは前記第2の傾斜角度から前記第1の傾斜角度まで、前記複数のローラの外周の包絡線がなす円弧のうち、前記第1のローラから前記第Xのローラに至るまでのそれぞれのローラにおける接線と水平線とのなす角度が順次増加する傾斜角度変化搬送部を備え、 前記第1のコンベヤ機構と前記第3のコンベヤ機構との間及び/又は前記第2のコンベヤ機構と前記第3のコンベヤ機構との間を搬送物が乗り移り搬送される場合に、前記搬送物に衝撃が生じないよう、前記第3のコンベア機構の一端における外周の包絡線の接線方向と前記第1のコンベア機構における前記一端側の延伸方向とが一致し、前記第3のコンベア機構の他端における外周の包絡線の接線方向と前記第2のコンベア機構における前記他端側の延伸方向とが一致することを特徴とするコンベヤ装置。」 と記載されているのを、 「上方位置に設けられ第1の傾斜角度を持つ第1のコンベヤ機構と、下方位置に設けられ第2の傾斜角度を持つ第2のコンベヤ機構と、前記第1のコンベヤ機構と前記第2のコンベヤ機構とを傾斜をもって接続する第3のコンベヤ機構とを備えるコンベヤ装置であって、 前記第3のコンベヤ機構は前記第1のコンベヤ機構側から前記第2のコンベヤ機構側に向かって配列された複数のローラである第1のローラ、…、第Xのローラを有し、前記第1の傾斜角度から前記第2の傾斜角度まで、もしくは前記第2の傾斜角度から前記第1の傾斜角度まで、前記複数のローラの外周の包絡線がなす円弧のうち、前記第1のローラから前記第Xのローラに至るまでのそれぞれのローラにおける接線と水平線とのなす角度が変動角度を一定として順次増加する傾斜角度変化搬送部を備え、 前記第1のコンベヤ機構と前記第3のコンベヤ機構との間及び/又は前記第2のコンベヤ機構と前記第3のコンベヤ機構との間を搬送物が乗り移り搬送される場合に、前記搬送物に衝撃が生じないよう、前記第3のコンベヤ機構の一端における外周の包絡線であって前記第1のローラの外周にある包絡線の接線方向と前記第1のコンベヤ機構における前記一端側の延伸方向とが一致し、前記第3のコンベヤ機構の他端における外周の包絡線であって前記第Xのローラの外周にある包絡線の接線方向と前記第2のコンベヤ機構における前記他端側の延伸方向とが一致することを特徴とするコンベヤ装置。」に訂正する(請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項3及び4も同様に訂正する。)。 (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項2を削除する。 (3)訂正事項3 特許請求の範囲の請求項3に、 「前記第1のコンベヤ機構及び前記第3のコンベヤ機構を連接せずに一体化し該一体化された形状を前記搬送物の前記接触を良好とするための略円弧状形状としたことを特徴とする請求項1もしくは2に記載のコンベヤ装置。」 と記載されているのを 「前記第1のコンベヤ機構及び前記第3のコンベヤ機構を連接せずに一体化し該一体化された形状を前記搬送物の接触を良好とするための略円弧状形状としたことを特徴とする請求項1に記載のコンベヤ装置。」 に訂正する。 (4)訂正事項4 特許請求の範囲の請求項4に、 「前記傾斜角度変化搬送部が2以上に分割されていることを特徴とする請求項1~3のうちいずれか1項記載のコンベヤ装置。」 と記載されているのを 「前記傾斜角度変化搬送部が2以上に分割されていることを特徴とする請求項1もしくは3に記載のコンベヤ装置。」 に訂正する。 (5)訂正事項5 特許請求の範囲の請求項5を削除する。 2 一群の請求項について 訂正前の請求項1~5について、請求項2~5は請求項1を引用しているものであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。したがって、訂正前の請求項1~5に対応する訂正後の請求項1~5は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。 3 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否 (1)訂正事項1 ア 訂正事項1の「コンベア」との記載を「コンベヤ」に改める訂正は、同じものを表記するにあたって「コンベヤ」及び「コンベア」の両方の表記が混在していたものを、「コンベヤ」の表記に統一するものであるから、この訂正は、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 そして、願書に添付した特許請求の範囲、明細書又は図面(以下、「本件特許明細書等」という。)の請求項1~5には、「コンベヤ装置」との記載があるから、この訂正は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。 イ 訂正事項1の「順次増加する」を「変動角度を一定として順次増加する」とする訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 そして、本件特許明細書等の段落【0027】には、 「例えば、水平コンベヤ2と傾斜コンベア3が、20度の角度を有しており、ローラ6本が、その外周の包絡線が円弧状に配置されているとすれば、ローラ間の乗り継ぎの際の、傾斜角度の変動は、約4度(20÷(6-1))となる。なお、傾斜コンベヤの角度は、20度に限定されず、また、コンベヤ間乗り継ぎ機構1を構成するローラの数も、6本に限定されず、いずれも、適宜、選択すればよい。」 と記載されており、傾斜についての変動角度を一定とすることが実質的に記載されていると認められるから、この訂正は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。 ウ 訂正事項1の「一端における外周の包絡線の接線方向」を「一端における外周の包絡線であって前記第1のローラの外周にある包絡線の接線方向」とする訂正及び「他端における外周の包絡線の接線方向」を「他端における外周の包絡線であって前記第Xのローラの外周にある包絡線の接線方向」とする訂正は、それぞれの「包絡線の接線方向」を限定する訂正であり、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正であって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 そして、本件特許明細書等の段落【0026】には、 「ここで、コンベヤ間乗り継ぎ装置1の両端では、ローラの外周の包絡線がなす円弧の接線方向と、水平コンベヤ2及び傾斜コンベヤ3の延伸方向とが一致するように構成される。」 と記載されており、段落【0026】に記載された「両端」の「ローラの外周の包絡線」は「第1のローラの外周にある包絡線」及び「第Xのローラの外周にある包絡線」のことであるから、この訂正に係る「包絡線の接線方向」の限定は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであるといえる。 (2)訂正事項2 訂正事項2は、請求項2を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものといえ、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてされたものといえる。 また、請求項2は削除されることで、発明のカテゴリーや対象、目的は変更されないので、訂正事項2は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (3)訂正事項3 訂正事項3は、訂正事項2によって削除される請求項2の記載を引用する「請求項1もしくは2に記載のコンベヤ装置。」との記載を「請求項1に記載のコンベヤ装置。」に改めるとともに、「接触」が前記されていないのに「前記接触」と記載されているところを「接触」に改めるものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。 (4)訂正事項4 訂正事項4は、訂正事項2によって削除される請求項2を引用する「請求項1~3のうちのいずれか1項記載のコンベヤ装置。」との記載を「請求項1もしくは3に記載のコンベヤ装置。」に改める訂正であるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。 (5)訂正事項5 訂正事項5は、請求項5を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものといえ、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてされたものといえる。 また、請求項5は削除されることで、発明のカテゴリーや対象、目的は変更されないので、訂正事項5は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 4 小括 以上のとおりであるから、本件訂正は特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 したがって、特許第6937592号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-5〕について訂正することを認める。 第3 本件発明 上記第2のとおり、本件訂正は認められるから、本件特許に係る発明は、本件訂正後の特許請求の範囲の請求項1~5に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 「【請求項1】 上方位置に設けられ第1の傾斜角度を持つ第1のコンベヤ機構と、下方位置に設けられ第2の傾斜角度を持つ第2のコンベヤ機構と、前記第1のコンベヤ機構と前記第2のコンベヤ機構とを傾斜をもって接続する第3のコンベヤ機構とを備えるコンベヤ装置であって、 前記第3のコンベヤ機構は前記第1のコンベヤ機構側から前記第2のコンベヤ機構側に向かって配列された複数のローラである第1のローラ、…、第Xのローラを有し、前記第1の傾斜角度から前記第2の傾斜角度まで、もしくは前記第2の傾斜角度から前記第1の傾斜角度まで、前記複数のローラの外周の包絡線がなす円弧のうち、前記第1のローラから前記第Xのローラに至るまでのそれぞれのローラにおける接線と水平線とのなす角度が変動角度を一定として順次増加する傾斜角度変化搬送部を備え、 前記第1のコンベヤ機構と前記第3のコンベヤ機構との間及び/又は前記第2のコンベヤ機構と前記第3のコンベヤ機構との間を搬送物が乗り移り搬送される場合に、前記搬送物に衝撃が生じないよう、前記第3のコンベヤ機構の一端における外周の包絡線であって前記第1のローラの外周にある包絡線の接線方向と前記第1のコンベヤ機構における前記一端側の延伸方向とが一致し、前記第3のコンベヤ機構の他端における外周の包絡線であって前記第Xのローラの外周にある包絡線の接線方向と前記第2のコンベヤ機構における前記他端側の延伸方向とが一致することを特徴とするコンベヤ装置。 【請求項2】(削除) 【請求項3】 前記第1のコンベヤ機構及び前記第3のコンベヤ機構を連接せずに一体化し該一体化された形状を前記搬送物の接触を良好とするための略円弧状形状としたことを特徴とする請求項1に記載のコンベヤ装置。 【請求項4】 前記傾斜角度変化搬送部が2以上に分割されていることを特徴とする請求項1もしくは3に記載のコンベヤ装置。 【請求項5】(削除)」 第4 取消理由通知に記載した取消理由について 当審が令和5年2月27日付けの取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由の概要は、次のとおりである。 [取消理由1](新規性) 本件の請求項1に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された下記の引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであり、請求項1に係る特許は取り消すべきものである。 [取消理由2](進歩性) 本件の請求項1に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された下記の引用文献1に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、請求項1に係る特許は取り消すべきものである。 [取消理由3](明確性要件) 本件特許は、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないから、特許法第36条第6項の規定に違反してされたものである。 記 引用文献1:特開2007-314328号公報(異議申立人の甲第1号証) 第5 当審の判断 1 新規性及び進歩性について (1)引用文献1に記載された事項 取消理由通知において引用した引用文献1には、図面とともに次のア~ウの事項が記載されている(下線は当審が付した。以下同様。)。 ア「【0022】 以下、本発明に係る傾斜搬送装置の一例である傾斜ベルトコンベヤ装置の実施の形態を図面に基づいて説明する。 [実施の形態1] この傾斜ベルトコンベヤ装置は、図1,図2に示すように、物品(被搬送物品)Mを水平方向に搬送する下位水平経路部Aと、物品Mを水平方向に搬送する上位水平経路部Cと、下位水平経路部Aと上位水平経路部Cの間に配置されて物品Mを傾斜方向に搬送する傾斜経路部Bとを具備し、傾斜経路部Bと上位水平経路部Cとを接続経路部Dにより接続したものである。そして実線の矢印で示すように、下位水平経路部Aに搬入された物品Mを傾斜経路部Bから接続経路部Dを介して上位水平経路部Cに搬送したり、また仮想線の矢印で示すように、上位水平経路部Cに搬入された物品Mを接続経路部Dから傾斜経路部Bを介して下位水平経路部Aに搬送する。 【0023】 前記傾斜経路部Bと接続経路部Dと上位水平経路部Cには、物品Mを載せて搬送する第1エンドレスベルト(無端状ベルト)1が循環移動自在に配設され、前記下位水平経路部Aに、物品Mを載せて搬送する第2エンドレスベルト2が循環移動自在に配設されている。また上位水平経路部Cに、第1エンドレスベルト1を駆動する駆動ユニット3が設けられ、下位水平経路部Aと傾斜経路部Bの接続部に、第1エンドレスベルト1の動力を第2エンドレスベルト2に伝達する動力伝達装置4が設けられている。また傾斜経路部Bの復路側に第1エンドレスベルト1の蛇行を防止する蛇行防止装置5が設けられている。」 イ「【0033】 (接続経路部) 接続経路部Dを含む接続部フレーム41は、図3,図4に示すように、左右両側に配置された接続部サイド部材42と、これら左右の接続部サイド部材42を連結する複数の接続部中間ステー材43とで構成されている。そして左右の接続部サイド部材42は、上辺部が傾斜部サイド部材32の上辺に続く下直線部42aと、上辺部が上位水平部サイド部材12の上辺に続く上直線部42bと、上辺部が前記上直線部42bと下直線部42aとに接続される凸状の円弧形状に形成された円弧部42cからなり、接続部サイド部材42の側面視が扇形(カマボコ型)に形成される。そして前記円弧部42cに対応して接続経路部Dが形成される。 【0034】 左右の接続部サイド部材42の下直線部42aに接続端キャリアローラ45aが配設され、上直線部42bに接続端キャリアローラ45bが配設され、円弧部42cに複数の接続部キャリアローラ45cが所定ピッチで配設されている。そして、これら接続部キャリアローラ45cに案内される第1エンドレスベルト1により凸状でかつ円弧形状の搬送面が形成される。また左右の接続部サイド部材42間の中間位置下部に第1エンドレスベルト1の復路を案内する接続部リターンローラ46が回転自在に支持されている。前記接続部中間ステー材43は接続端キャリアローラ45a,45bと接続部キャリアローラ45c列の間にそれぞれに配置されている。この接続部中間ステー材43は、下面が開放されて両連結端が閉鎖された箱形に形成されており、十分な強度を確保して接続部フレーム41の捩れなどを防止し、第1エンドレスベルト1の蛇行を防止している。 【0035】 前記接続経路部Dには、図12(a)に示すように、接続経路部Dの搬送面の円弧中心Oと、この円弧中心Oを中心とする円弧半径Rとが予め設定されており、また傾斜経路部Bの傾斜角θに対応して、接続経路部Dの範囲を示す円弧角α(=傾斜角θ)が設定され、これにより接続経路部Dにおける鉛直方向の上下変位量hと水平距離mが決まっている。 【0036】 たとえば接続部フレーム41は、傾斜経路部Bの傾斜角θに対応して円弧角αの異なる製品ユニットを予め用意しておく。図12(a)~(c)に示すように、円弧半径Rを一定とし、傾斜経路部Bの傾斜角θに対応して複数のパターンを設定し、これら各パターンごとに円弧角αの異なる接続部フレーム41を製造する。前記接続部フレーム41の製品ユニットの具体例として、4個の円弧角α=6°、10°、14°、18°のものを用意することにより、これら4つの製品ユニットにより、傾斜経路部Bの傾斜角θが4°~20°の傾斜搬送装置に対応することができる。すなわち、円弧角α=6°の接続部フレーム41を傾斜経路部Bの傾斜角θが4°以上で8.0°未満の傾斜搬送装置に対応させ、円弧角α=10°の接続部フレーム41を傾斜経路部Bの傾斜角θが8°以上で12°未満の傾斜搬送装置に対応させ、円弧角α=14°の接続部フレーム41を傾斜経路部Bの傾斜角θが12°以上で16°未満の傾斜搬送装置に対応させ、円弧角α=18°の接続部フレーム41を傾斜経路部Bの傾斜角θが16°以上で20°以下の傾斜搬送装置に対応させる。ここで、上位水平部フレーム11と接続部フレーム41と連結角、および接続部フレーム41と傾斜部フレーム31との連結角は、後述のフレーム連結装置51により調整される。 【0037】 またこの接続経路部Dの連結端で、第1エンドレスベルト1が折れ曲がることなく連続するので、第1エンドレスベルト1によるスラスト荷重が接続端キャリアローラ45a,45bと接続部キャリアローラ45c列にそれぞれ均等に分散される。したがって、接続端キャリアローラ45a,45bに従来のような大きいスラスト荷重に耐える高価なプーリを使用する必要がなく、部品コストを削減することができる。」 ウ「【0050】 上記実施の形態によれば、傾斜経路部Bから上位水平経路部Cに搬送される時に、接続経路部Dにおいて、凸状の円弧形状に沿うように接続部キャリアローラ45cを介して第1エンドレスベルト1が配置され搬送面が形成されているので、傾斜経路部Bから接続経路部Dへの移動と接続経路部Dから上位水平経路部Cへの移動に際して、物品Mがゆっくりとかつ滑らかに傾動されてスムーズな乗り移りができる。また接続経路部Dの搬送面では、物品Mが半径Rの円弧に沿って移動されて物品Mがゆっくりと姿勢変更されることから、物品Mが揺動したりガタついて転倒するのを確実に防止することができる。したがって、傾斜角θが大きい傾斜経路部Bであっても、物品Mをスムーズかつ高速で搬送することができる。」 (2)引用発明 上記(1)のア~ウの記載事項から、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 [引用発明] 「物品Mを水平方向に搬送する上位水平経路部Cと、下位水平経路部Aと上位水平経路部Cとの間に配置された傾斜角θの傾斜経路部Bと、上位水平経路部Cと傾斜経路部Bとを接続する接続経路部Dとを備える傾斜ベルトコンベヤ装置であって、 接続経路部Dは、案内される第1エンドレスベルトが凸状でかつ円弧形状の搬送面を形成するように複数の接続部キャリアローラ45cが所定ピッチで配設され、 傾斜経路部Bから接続経路部Dへの移動と接続経路部Dから上位水平経路部Cへの移動に際して、物品Mがゆっくりとかつ滑らかに傾動されてスムーズな乗り移りができるよう、接続経路部Dの範囲を示す円弧角αがα=θとなるよう設定されていて、接続経路部Dの連結端で、第1エンドレスベルト1が折れ曲がることなく連続する、傾斜ベルトコンベヤ装置。」 (3)対比及び判断 ア 対比 本件発明1と引用発明とを対比する。 引用発明の「水平方向に搬送する」場合の「水平」となる角度は、本件発明1の「第1の傾斜角度」に相当するから、引用発明の「物品Mを水平方向に搬送する上位水平経路部C」は、本件発明1の「第1の傾斜角度を持つ第1のコンベヤ機構」に相当し、 引用発明の「傾斜角θ」は本件発明1の「第2の傾斜角度」に相当するから、引用発明の「傾斜角θの傾斜経路部B」は本件発明1の「第2の傾斜角度を持つ第2のコンベヤ機構」に相当し、 引用発明の「接続経路部D」は本件発明1の「第3のコンベヤ機構」に相当し、 引用発明の「複数の接続部キャリアローラ45c」は本件発明1の「複数のローラである第1のローラ、・・・、第Xのローラ」に相当し、 引用発明の「傾斜ベルトコンベヤ装置」は本件発明1の「コンベヤ装置」に相当する。 引用発明の「傾斜経路部B」は、「下位水平経路部Aと上位水平経路部Cとの間に配置された」ものであるため、上位水平経路部Cは傾斜経路部Bより上方の位置に配置され、傾斜経路部Bは、上位水平経路部Cより下方の位置に配置されることから、引用発明の「上位水平経路部C」は、本件発明1の「上方位置に設けられ」る構成を有し、引用発明の「傾斜経路部B」は、本件発明1の「下方位置に設けられ」る構成を有するといえる。 引用発明の「接続経路部D」は、「上位水平経路部Cと傾斜経路部Bとを接続」して「物品Mがゆっくりとかつ滑らかに傾動され」るものであるから、引用発明の「接続経路部D」は、本件発明1の「傾斜を持って接続する」構成を有するといえる。 引用発明の「複数の接続部キャリアローラ45c」は、「上位水平経路部Cと傾斜経路部Bとを接続する接続経路部D」にあって「所定ピッチで配設され」ているから、本件発明1の「前記第1のコンベヤ機構側から前記第2のコンベヤ機構側に向かった配列された」構成を有するといえる。 引用発明の「複数の接続部キャリアローラ45c」は、「接続経路部Dの範囲を示す円弧角αがα=θとなるよう設定されていて、接続経路部Dの連結端で、第1エンドレスベルト1が折れ曲がることなく連続する」構成であり、この構成は接続部キャリアローラ45cが高い位置から低い位置に向かって円弧状に配列されるとともに、各接続部キャリアローラ45cと複数の接続部キャリアローラ45cの包絡線との接線の傾斜角度が高い位置から低い位置に向かって「水平方向に搬送する」場合の「水平」となる角度から「傾斜角θ」へ順次増加する構成でもあるから、「複数の接続部キャリアローラ45c」は、本件発明1の「前記第1の傾斜角度から前記第2の傾斜角度まで、もしくは前記第2の傾斜角度から前記第1の傾斜角度まで、前記複数のローラの外周の包絡線がなす円弧のうち、前記第1のローラから前記第Xのローラに至るまでのそれぞれのローラにおける接線と水平線とのなす角度が」「順次増加する傾斜角度変化搬送部を備え」ているといえる。 引用発明の「傾斜経路部Bから接続経路部Dへの移動と接続経路部Dから上位水平経路部Cへの移動に際して、物品Mがゆっくりとかつ滑らかに傾動されてスムーズな乗り移りができる」ことは、本件発明1の「前記第1のコンベヤ機構と前記第3のコンベヤ機構との間及び/又は前記第2のコンベヤ機構と前記第3のコンベヤ機構との間を搬送物が乗り移り搬送される場合に、前記搬送物に衝撃が生じない」ことに相当する。 引用発明は、「接続経路部Dの範囲を示す円弧角αがα=θとなるよう設定されていて、接続経路部Dの連結端で、第1エンドレスベルト1が折れ曲がることなく連続する」ので、引用発明の接続経路部Dのうち、最も上位水平経路部C側の接続部キャリアローラ45cの外周の包絡線の接線方向は、上位水平経路部Cが延伸する方向と同じ水平方向となるものが含まれるし、引用発明の接続経路部Dのうち、最も傾斜経路部B側の接続部キャリアローラ45cの外周の包絡線の接線方向は、傾斜経路部Bが延伸する方向と同じ傾斜角θを持つ方向となるものが含まれるから、引用発明は、本件発明1の「前記第3のコンベヤ機構の一端における外周の包絡線であって前記第1のローラの外周にある包絡線の接線方向と前記第1のコンベヤ機構における前記一端側の延伸方向とが一致し、前記第3のコンベヤ機構の他端における外周の包絡線であって前記第Xのローラの外周にある包絡線の接線方向と前記第2のコンベヤ機構における前記他端側の延伸方向とが一致する」構成を有するといえる。 したがって、本件発明1と引用発明とは 「上方位置に設けられ第1の傾斜角度を持つ第1のコンベヤ機構と、下方位置に設けられ第2の傾斜角度を持つ第2のコンベヤ機構と、前記第1のコンベヤ機構と前記第2のコンベヤ機構とを傾斜をもって接続する第3のコンベヤ機構とを備えるコンベヤ装置であって、 前記第3のコンベヤ機構は前記第1のコンベヤ機構側から前記第2のコンベヤ機構側に向かって配列された複数のローラである第1のローラ、…、第Xのローラを有し、前記第1の傾斜角度から前記第2の傾斜角度まで、もしくは前記第2の傾斜角度から前記第1の傾斜角度まで、前記複数のローラの外周の包絡線がなす円弧のうち、前記第1のローラから前記第Xのローラに至るまでのそれぞれのローラにおける接線と水平線とのなす角度が順次増加する傾斜角度変化搬送部を備え、 前記第1のコンベヤ機構と前記第3のコンベヤ機構との間及び/又は前記第2のコンベヤ機構と前記第3のコンベヤ機構との間を搬送物が乗り移り搬送される場合に、前記搬送物に衝撃が生じないよう、前記第3のコンベヤ機構の一端における外周の包絡線であって前記第1のローラの外周にある包絡線の接線方向と前記第1のコンベヤ機構における前記一端側の延伸方向とが一致し、前記第3のコンベヤ機構の他端における外周の包絡線であって前記第Xのローラの外周にある包絡線の接線方向と前記第2のコンベヤ機構における前記他端側の延伸方向とが一致するコンベヤ装置。」の点で一致し、次の相違点1で相違する。 [相違点1] 本件発明1の傾斜角度変化搬送部は、「前記第1のローラから前記第Xのローラに至るまでのそれぞれのローラにおける接線と水平線とのなす角度が変動角度を一定として順次増加する」構成であるのに対し、引用発明の接続経路部Dは、「案内される第1エンドレスベルトが凸状でかつ円弧形状の搬送面を形成するように複数の接続部キャリアローラ45cが所定ピッチで配設され」る構成である点。 イ 判断 上記相違点1について検討する。 引用発明において、第1エンドレスベルトが凸状でかつ円弧形状の搬送面を形成するよう、「接続経路部Dの範囲を示す円弧角α」(引用文献1の段落【0035】参照。)において、複数の接続部キャリアローラ45cを所定ピッチで配設する構成は、所定ピッチが一定のピッチの意味であるならば、接続部キャリアローラ45cの総数がn個の場合、隣接する2つの接続部キャリアローラ45cと第1エンドレスベルトとの接点と、接続経路部Dの搬送面の円弧形状の中心Oとのなす角はα/(n-1)で一定となる構成でもある。 ここで、α/(n-1)=α’(隣接する前記接点間の円弧における前記円弧中心Oに対する中心角)とすると、前記接点のうち、最も上位水平経路部C側に位置する接点における接線の傾斜角は0°、その次に上位水平経路部Cに近い接点の接線の傾斜角はα’、さらにその次に上位水平経路部Cに近い接点の接線の傾斜角は2α’、・・・となる(下の参考図参照)。 そうすると、円弧形状の搬送面を形成するように複数の接続部キャリアローラ45cが一定のピッチで配設される構成は、接続部キャリアローラ45cと第1エンドレスベルトとの接点の接線と水平線とのなす角度が、変動角度をα’の一定として順次増加する構成であるといえる。 参考図 [図:0001406663000001.jpg] そうであれば、上記相違点1は実質的な相違点ではないから、本件発明1は、引用発明である。 また、仮に引用発明の所定ピッチが一定のピッチの意味でないとしても、引用発明の所定ピッチを一定のピッチとすることは当業者であれば容易に想到し得ることと認められ、上記相違点1に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易になし得た事項であるから、本件発明1は、引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。 (4)特許権者の主張について 特許権者は、令和5年4月28日付け意見書において 「引用文献1において、接線角度が一致するのは、たとえばその図3におけるローラ17と接続端キャリアローラ45bである。引用発明において角度が変動する「円弧角α(=傾斜角θ)」が設定されるのは接続経路部Dである(第0035段落)であるところ、接続経路部Dは円弧部42Cに対応して形成される(第0033段落)から、接続端キャリアローラ45bは円弧部42Cに含まれず(図3)、よって、引用発明において、「変動角度を一定として順次増加する」といえるのは、複数の接続部中間ステー材43、43に挟まれて配置されるローラ45C、・・・、ローラ45Cについてであり、接続部中間ステー材43の外側に配置される接続端キャリアローラ45bについてではない。 したがって、本願訂正後の請求項1に係る、「前記第3のコンベア機構の一端における外周の包絡線であって前記第1のローラの外周にある包絡線の接線方向と前記第1のコンベヤ機構における前記一端側の延伸方向とが一致し、前記第3のコンベア機構の他端における外周の包絡線であって前記第Xのローラの外周にある包絡線の接線方向と前記第2のコンベヤ機構における前記他端側の延伸方向とが一致」し、かつ、「前記第1のローラから前記第Xのローラに至るまでのそれぞれのローラにおける接線と水平線とのなす角度が変動角度を一定として順次増加する傾斜角度変化搬送部を備え」るとの点は引用発明には記載されているとはいえない。」(第3頁7~24行)旨主張する。 しかしながら、上記(3)アで検討したとおり、引用発明の「接続経路部D」が、本件発明1の「第3のコンベア機構」に相当するものであり、引用発明の「接続経路部D」には「接続端キャリアローラ45b」は含まれないので、特許権者の主張は採用できない。 (5)小括 上記(3)に示すように、本件発明1は、引用発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないか、又は、引用発明から当業者が容易に発明をすることができたものであるから特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 2 明確性要件について (1)上記第2 1(1)のとおり、請求項1の「コンベア」との記載は「コンベヤ」に改められ、請求項1の記載は明確になったため、請求項1に係る発明が不明確である旨の取消理由は解消した。 (2)上記第2 1(2)及び(5)のとおり、請求項2及び5は削除されたため、「接続部」が記載された請求項2及び5に係る発明が不明確である旨の取消理由は解消した。 (3)上記第2 1(3)のとおり、請求項3の「前記接触」との記載は「接触」に改められ、請求項3の記載は明確になったため、請求項3に係る発明が不明確である旨の取消理由は解消した。 第6 取消理由通知(決定の予告)で採用しなかった特許異議申立理由について 1 甲第1号証に基づく請求項3に係る発明の新規性についての主張について 本件特許の請求項3には「前記第1のコンベヤ機構及び前記第3のコンベヤ機構を連接せずに一体化し該一体化された形状を前記搬送物の接触を良好とするための略円弧状形状とした」との特定事項があるが、甲第1号証の「上位水平経路部C」(接続経路部Dに相当)は、明らかに円弧状形状ではないから、「上位水平経路部C」と「接続経路部D」とを一体化してものは、略円弧形状となり得ない。そうであれば、本件特許の請求項3は甲第1号証に記載された発明である旨の異議申立人の主張は採用できない。 2 甲第2号証に基づく請求項4に係る発明の新規性についての主張ついて 異議申立人の甲第2号証には、本件特許の請求項1の「前記第1のローラから前記第Xのローラに至るまでのそれぞれのローラにおける接線と水平線とのなす角度が変動角度を一定として順次増加する傾斜角度変化搬送部」に相当する構成が記載も示唆もされていないから、本件特許の請求項1の記載を引用する請求項4に係る発明は、甲第2号証に記載された発明である旨の異議申立人の主張は採用できない。 第7 結論 以上のとおりであるから、請求項1に係る特許は、特許法第29条第1項第3号ないし第2項の規定に違反してされたものであり、法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 一方、本件発明3及び4に係る特許は、特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては取り消すことはできない。さらに、他に本件請求項3及び4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 そして、請求項2及び5は、上記第2に示すとおり、訂正により削除された。これにより、本件異議申立ての請求項2及び5に係る申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。 よって、結論のとおり決定する。

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2022-700228

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