特許異議申立
2022-700170
ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート粒子及びその製造方法
- 審判番号
- 2022-700170
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2018-533073
- 登録番号
- 6929853
- 請求日
- 2022年02月28日
- 審決日
- 2022年10月07日
- 公報発行日
- 2023年01月27日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】ロッテ精密化學株式会社
- 【権利者代理人】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
- 【異議申立人】信越化学工業 株式会社
- 【異議申立人代理人】特許業務法人牛木国際特許事務所
- 審判長/審判官
- 審判長 阪野 誠司
- 審判官 関 美祝
- 審判官 冨永 保
- 分類
- P1652.851-YAA(C08B) / P1652.857-YAA(C08B) / P1652.113-YAA(C08B) / P1652.121-YAA(C08B) / P1652.536-YAA(C08B) / P1652.537-YAA(C08B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条第4項第1号、特許法第120条の5第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第120条の5第9項、特許法第36条第6項第2号、特許法第120条の5第4項、特許法第126条第5項、特許法第29条第1項第3号、特許法第120条の5第5項、特許法第126条第7項、特許法第29条第2項、特許法第36条第6項
- データ出所
- 審決公報(XML)
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特許第6929853号発明「ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート粒子及びその製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第6929853号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-8〕について訂正することを認める。
特許第6929853号の請求項5ないし6に係る特許を維持する。
特許第6929853号の請求項1ないし4に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第6929853号の請求項1~8に係る特許についての出願は、2016年11月4日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2015年12月24 韓国(KR))を国際出願日とする出願であって、令和3年8月13日にその特許権の設定登録がされ、同年9月1日にその特許公報が発行され、その後、令和4年2月28日に信越化学工業株式会社(以下「特許異議申立人」という。)により請求項1~6に係る特許について特許異議の申立てがされたものである。
その後の手続の経緯の概要は次のとおりである。
令和4年5月23日付け 取消理由通知
同年8月22日 意見書・訂正請求書の提出
なお、下記第2で述べるとおりであって、令和4年8月22日付けの訂正請求書による訂正の請求は、その内容が実体としては一部の請求項の削除のみということができ、実質的な判断に影響を与えるものではないから、特許法第120条の5第5項の規定により、特許異議申立人に意見書を提出する機会を与えなかった。
第2 訂正の適否
令和4年8月22日付け訂正請求は、本件特許の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~8について訂正することを求めるものである(以下、令和4年8月22日付け訂正請求書による訂正を「本件訂正」という。)。
1 訂正の内容
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1を削除する。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2を削除する。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3を削除する。
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項4を削除する。
(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項5の「請求項1に記載のヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート粒子の製造方法であって」との記載を、「多孔性の粒子形態を有し、平均直径比(短直径に対する長直径の比)が1.5~4であることを特徴とするヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート(hydroxypropyl methyl cellulose phthalate、HPMCP)粒子の製造方法であって」と訂正する。
請求項5を引用する請求項6~8も同様に訂正する。
2 本件訂正の適否
(1)一群の請求項について
本件訂正は、訂正前の請求項1~8についてのものであるところ、訂正前の請求項2~8は請求項1を引用するものであり、訂正前の請求項1~8は特許法第120条の5第4項に規定される一群の請求項である。
そして、本件訂正の請求は、訂正前の請求項1~8についてされているから、特許法第120条の5第4項の規定に適合する。
(2)訂正事項1~4について
ア 訂正の目的
訂正事項1~4による訂正は、それぞれ、請求項1~4を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正である。
イ 新規事項の追加の有無及び実質上の特許請求の範囲の拡張・変更の有無
訂正事項1~4による訂正は、請求項1~4を削除するものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件特許明細書等」という。)に記載した事項の範囲内においてするものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、訂正事項1~4による訂正は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
(3)訂正事項5について
ア 訂正の目的
訂正事項5による訂正について、本件訂正前の請求項5は、請求項1を引用し「請求項1に記載のヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート粒子の製造方法」とされていたところ、請求項1を引用しないものとし、かつ独立請求項とするに際し、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート粒子について、請求項1に記載されていた、「多孔性の粒子形態を有」し、「平均直径比(短直径に対する長直径の比)は、1.5~4であることを特徴とする」との事項を、実質的に同様に特定し、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレートについて「ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート(hydroxypropyl methyl cellulose phthalate、HPMCP)」とするものであり、請求項6~8も同様に訂正するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に掲げる他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とする訂正である。
イ 新規事項の追加及び実質上の特許請求の範囲の拡張・変更の有無の有無
前記アで述べたとおり、訂正事項5は、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とする訂正であり、実質的な内容を変更するものではないから、本件特許明細書等に記載された事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではなく、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、かつ、そのカテゴリー変更もないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、訂正事項5による訂正は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
ウ 独立特許要件
請求項7及び8は、特許異議の申立ての対象となっていない請求項であるところ、上記アで述べたとおり、請求項7及び8についての訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に掲げる事項を目的とするものであるから、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の規定についての判断を要しない。
3 まとめ
以上のとおりであるから、本件訂正は特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、令和4年8月22日付けの訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり訂正後の請求項〔1~8〕について訂正することを認める。
第3 本件発明
前記第2で述べたとおり、本件訂正後の請求項1~8について訂正することが認められるので、本件特許の請求項5~8に係る発明は、令和4年8月22日付けの訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲の請求項5~8に記載された事項により特定される次のとおりのもの(以下「本件発明5」などということがある。)である。
「【請求項1】
(削除)
【請求項2】
(削除)
【請求項3】
(削除)
【請求項4】
(削除)
【請求項5】
多孔性の粒子形態を有し、平均直径比(短直径に対する長直径の比)が1.5~4であることを特徴とするヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート(hydroxypropyl methyl cellulose phthalate、HPMCP)粒子の製造方法であって、
(1)ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート反応液を準備するステップと、
(2)撹拌装置が備えられた撹拌タンクの内部に前記撹拌装置が浸漬されるように水を投入するステップと、
(3)前記反応液を前記撹拌タンクの内部に落下させるステップと、
(4)落下された前記反応液が前記撹拌装置が作動している撹拌タンク内の水に投入されて、撹拌装置の機械的エネルギーにより多孔性の形態に粒子化するステップと、を含むことを特徴とする、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート粒子の製造方法。
【請求項6】
前記ステップ(1)で、前記反応液は、触媒の存在下、反応媒質内でヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)及び無水フタル酸をエステル化反応させて得られることを特徴とする、請求項5に記載のヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート粒子の製造方法。
【請求項7】
前記ステップ(3)で、前記反応液は、重力落下方式で前記撹拌タンクの内部に落下されることを特徴とする、請求項5に記載のヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート粒子の製造方法。
【請求項8】
前記ステップ(3)で、前記反応液の空間速度(space velocity、SV)は、1.2~3.5/hであることを特徴とする、請求項5に記載のヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート粒子の製造方法。」
第4 当審において通知した令和4年5月23日付け取消理由及び特許異議申立人が申し立てた理由の概要
1 特許異議申立人が申し立てた理由の概要
[申立理由1]訂正前の本件の請求項1~4に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明である、下記の甲第1号証に記載された発明であるから、訂正前の請求項1~4に係る特許は、特許法第29条第1項第3号の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。
[申立理由2]訂正前の本件の請求項1~6に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明である、下記の甲第1及び4号証に記載された発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、訂正前の請求項1~6に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。
記
甲第1号証:特表2004-527619号公報(以下「甲1」ともいう。)
甲第2号証:信越化学工業株式会社合成技術研究所、北口太志作成の実験成績証明書、作成日令和4年2月22日(以下「甲2」ともいう。)
甲第3号証:大韓薬典、第10改正版、食品医薬品安全処、告示日2012年12月27日、表紙、まえがき、目次、1481~1482頁(以下「甲3」ともいう。)
甲第4号証:特表2015-512456号公報(以下「甲4」ともいう。)
甲第5号証:IKA社、ホモジナイザー(分散機)、T50 digital ULTRA-TURRAX○R(決定注:○の中にR)、[online]、[令和4年2月18日検索]、インターネット、<URL、https://www.ika.com/ja/Products-Lab-Eq/Dispersers-Homogenizer-csp-177/T-50-digital-ULTRA-TURRAX-cpdt-3787000/>(以下「甲5」ともいう。)
[申立理由3]訂正前の本件の請求項1~6に係る特許は、発明の詳細な説明の記載が特許法第36条第4項第1号に適合しない。
よって、訂正前の請求項1~6に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、同法第113条第4号の規定により取り消されるべきものである。
[申立理由4]訂正前の本件の請求項1~6に係る特許は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に適合しない。
よって、訂正前の請求項1~6に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、同法第113条第4号の規定により取り消されるべきものである。
申立理由3及び4は同様の理由に基づくものであり、その具体的な理由の概要は次のとおりである。
訂正前の請求項1~6に係る発明の課題は、多孔性の粒子形態を有することで溶媒に対する溶解性が向上したHPMCP粒子を提供すること、また、HPMCP反応液を水に投入してHPMCP粒子を生成する過程で、前記反応液に機械的エネルギーを付与することで多孔性のHPMCP粒子を製造する方法を提供することである。
ここで、請求項1に係る発明では、(a)多孔性の粒子形態を有すること、(c)平均直径比(短直径に対する長直径の比)が1.5~4であることが規定されているのみである。
一方、本件明細書では、HPMC反応液が投入される撹拌タンクに備えられたインペラの撹拌速度を変更した実施例1~3が記載されているが、SEM写真により多孔性であることが確認され、また平均直径比の値が「2.4」であったと記載されているのは、いずれも実施例1のみであって、実施例2~3については得られた粒子の評価結果は具体的に記載されていない。
また、請求項3に係る発明の(e)アセトンで溶解時の溶解時間は、2分~4分であることについても、実施例1の結果が記載されているのみである。
更に、請求項2及び4に係る発明の、(d)平均空隙率が5~80%であること、(f)メタノール及び塩化メチレンの混合溶媒(重量比=1:1)に溶解させた10重量%の混合溶液の粘度は、32~66cStであることについては、実施例1の結果すら開示されていない。
したがって、本件明細書に記載された実施例1~3から、請求項1~4に係る発明が前記実施例の作用効果を奏するとはいうことができないだけでなく、その技術的根拠が十分に記載されているとも認められない。請求項1を直接又は間接的に引用する請求項5~6に係る発明についても同様である。
[申立理由5]訂正前の本件の請求項3に係る特許は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に適合しない。
よって、訂正前の請求項3に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、同法第113条第4号の規定により取り消されるべきものである。
申立理由5の具体的な理由の概要は次のとおりである。
訂正前の請求項3に係る発明の「アセトンで溶解時の溶解時間」について、本件明細書の記載内容を考慮しても、該溶解時間の測定方法は、標準的に使用されているものでもなく、当業者に慣用されているものではないことは明らかであり、当業者に理解できたとしても、測定環境や測定者によるものであるから、定量的に決定できるとは言い難い。
2 当審が通知した令和4年5月23日付け取消理由の概要
[理由1]本件の請求項3に係る特許は、特許を受けようとする発明が明確でないから、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に適合しない。
したがって、本件の請求項3に係る特許は、特許法第36条第6項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
[理由2]本件の請求項2、4に係る特許は、発明の詳細な説明が、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものでないから、特許法第36条第4項第1号に適合しない。
したがって、本件の請求項2、4に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
[理由3]本件の請求項2、4に係る特許は、特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものでないから、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に適合しない。
したがって、本件の請求項2、4に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
[理由4]本件の請求項1~4に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明である、下記甲第1号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
したがって、本件の請求項1~4に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。
記
甲第1号証:特表2004-527619号公報
甲第2号証:信越化学工業株式会社合成技術研究所、北口太志作成の実験成績証明書、作成日令和4年2月22日
甲第3号証:大韓薬典、第10改正版、食品医薬品安全処、告示日2012年12月27日、表紙、まえがき、目次、1481~1482頁
ここで、理由1は申立理由5と、理由2及び3は訂正前の請求項2に記載の平均空隙率、請求項4に記載の粘度に関する申立理由3及び4と、理由4は申立理由1と同じである。
第5 当審合議体の判断
当審合議体は、本件発明5及び6に係る特許は、当審合議体が通知した取消理由及び特許異議申立人が申し立てた理由により取り消すべきものではないと判断する。
理由は以下のとおりである。
1 甲各号証について
(1)甲各号証の記載事項
甲1:
1a)「【請求項1】
ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アルカリ酢酸塩、フタル酸無水物及びアルカリ塩素酸塩を酢酸溶媒下で攪拌反応させて得られたヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート反応生成混合物からヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレートを精製する方法において、
前記反応が完了した後、反応に使用したヒドロキシプロピルメチルセルロース1重量%に対し水または炭素水1~5の低級アルコールの中から選択された流動化溶媒2~4重量%を添加して攪拌し、その生成物を空気または窒素の加圧速度が3~8リットル/分であるスプレーノズルを通じて10~20重量%の水に噴射させ、その後攪拌、濾過及び乾燥させるヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレートの精製方法。」
1b)「【0005】
このような不純物を効果的に除去するためには、粒子間に存在するフタル酸と酢酸などの不純物が水に接触でき、洗浄除去可能となるように、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート粒子間の凝集現象を防止することが必要である。
【0006】
従来のヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレートを調製する方法では、不純物を除去するために、反応後反応生成物に冷たい水が注がれた。しかしながら、この方法からは、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート粒子間の凝集現象がかなり強いために、微粉末状または顆粒状のヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレートを得ることができない。粒子間の凝集現象は水が粒子間に浸透するのを防ぎ、フタル酸と酢酸を効果的に除去することが困難となる。また、顆粒状の製品を得るために、追加の粉砕工程が必要となる。
【0007】
上述のように、従来のヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレートの調製方法で、効果的な不純物除去のために粉砕工程が必要となるが、このような粉砕工程は現実的に問題である。従って、このような粉砕工程を無理のない方法で後処理方法に導入することが要求されている。
【発明のまとめ】
【0008】
後処理工程での粒子間凝集現象とこれによる不純物除去の問題点を改善するために、反応生成混合物の流動性を高めるために反応生成混合物に適量の流動化溶媒が加えられる。この後、不純物除去のため、流動性を有する反応生成混合物がスプレーノズルを通じて水に噴射される。
【0009】
従って、本発明の目的は、粒子間凝集現象を防止するために微細な顆粒状の粒子を形成し、製品中の遊離フタル酸と酢酸溶媒を効果的に除去することによって、高純度なヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレートの調製方法を提供することである。」
1c)「【0016】
・・・上記のスプレーノズルとしては、0.5~1.5mmの内径を有し、空気または窒素の加圧速度が3~8リットル/分であるものが望ましい。スプレーノズルの内径が0.5mm未満であると、単位時間当たり処理できる反応生成混合物の量が少なすぎて生産性が劣る。そうでなく、1.5mmを超過すると、空気または窒素の加圧速度を高めなければならない。また、空気または窒素の加圧速度が3リットル/分未満であると、粒子サイズが大きくなり、不純物が粒子間に保持されてしまう。そうでなく、8リットル/分を超過すると、過量の窒素を使用しなければならず、反応器内壁にヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレートが付着して、大量の生成物が失われる。」
1d)「【0020】
(実施例1)
ヒドロキシプロピルメチルセルロース(2%水溶液粘度:4.25cps)25gを100gの酢酸溶媒に加えてゆっくりと溶かした。ヒドロキシプロピルメチルセルロースが酢酸に均一に広がると25gの酢酸ナトリウム、32.5gのフタル酸無水物、0.25gの塩素酸カリウムを加えた。温度を80~85℃に上げた後、混合物を5時間ゆっくりと攪拌した。反応が完了した後、80~85℃の温度を維持しながら100gの水を加えて30分間攪拌した。反応生成混合物を流動化した後、それをスプレーノズルを通じて500gの水に噴射させた。噴射が完了した後で反応生成混合物をさらに5分間攪拌し、純水で濾過した。生成物を60~75℃の温度で4~6時間乾燥させて、純粋な乾燥顆粒状のヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレートを得た。
【0021】
上記調製されたヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレートを韓国薬局方(KP7)、米国薬局方(USP24)、ヨーロッパ薬局方(EP348)に告示された方法により分析した結果、フタリル含有量は33.4%であって、遊離フタル酸は0.07%として微量含有されていることが確認された。」
甲2:
2a)「
[図:0001393101000001.jpg]
[図:0001393101000002.jpg]
[図:0001393101000003.jpg]
[図:0001393101000004.jpg]
[図:0001393101000005.jpg]
[図:0001393101000006.jpg]
[図:0001393101000007.jpg]
[図:0001393101000008.jpg]
[図:0001393101000009.jpg]
[図:0001393101000010.jpg]
[図:0001393101000011.jpg]
」
甲3(訳文で示す。):
3a)「ヒプロメロースフタル酸エステル
ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタル酸エステル」(1481頁右欄30~31行)
3b)「粘度 あらかじめ105℃で1時間乾燥させたヒプロメロースフタル酸エステル10gと、等質量比のメタノールとジクロロメタンの混合液90gとを混合し、振り混ぜて溶かす。20±0.1℃で粘度決定の第1法により粘度を決定する。:表示単位の80%以上であり、120%以下である。」(1482頁左欄19~25行)
甲4:
4a)「【請求項1】
反応生成混合物からエステル化されたセルロースエーテルを沈殿させる方法であって、
前記反応生成混合物は、(c)脂肪族カルボン酸の存在下で、(a)セルロースエーテルを、(b)脂肪族モノカルボン酸無水物、若しくは、ジ-若しくはトリ-カルボン酸無水物、又は、脂肪族モノカルボン酸無水物、及び、ジ-若しくはトリ-カルボン酸無水物の組合せと反応させて得られ、
前記方法は、反応生成混合物を水に接触させ、水と反応生成混合物との組合せを、少なくとも800s-1のせん断速度に供する工程を含む方法。
【請求項2】
前記反応生成混合物が、(c)脂肪族カルボン酸と、(d)アルカリ金属カルボン酸塩との組合せの存在下で、(a)セルロースエーテルを、(b)脂肪族モノカルボン酸無水物、若しくは、ジ-若しくはトリ-カルボン酸無水物、又は、脂肪族モノカルボン酸無水物、及び、ジ-若しくはトリ-カルボン酸無水物の組合せと反応させて得られた、請求項1に記載の方法。」
4b)「【0008】
米国特許出願公開US2004/0152886号では、粒子間に存在するフタル酸、及び酢酸のような不純物が、水と接触でき、除去されるように、HPMCP粒子の凝集を防ぐことの必要性を言及している。US2004/0152886号では、後処理工程として流動化溶媒の付加し、それを、スプレーノズルを通して水の中に噴霧することによって、反応生成混合物の流動性を増加させることを提言している。あいにく、この浄化方法は、スプレーノズルが要求され、確実な噴霧を可能にするために高圧力のポンプが必要とされるため、極めて複雑である。この反応生成混合物は、スプレーノズルの目詰まりを引き起こす傾向が高い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って、本発明の目的は、沈殿した後のエステル化されたセルロースエーテル粒子の多くの凝集を、スプレーノズルを通して反応生成混合物を噴霧する必要なく防ぐことができる、セルロースエーテルのエステルの製造方法を提供することである。
【0010】
本発明の他の目的は、エステル化されたセルロースエーテル粒子の多くの凝集を、エステル化されたセルロースエーテルを洗浄する間、その洗浄性を改良することで防ぐことができる、セルロースエーテルのエステルの製造方法を提供することである。
【0011】
さらに、本発明の他の目的は、スプレーノズルを通して反応生成混合物を噴霧する必要なく、非粘性の微粉化されたセルロースエーテルのエステルが得られる、セルロースエーテルのエステルの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
驚くべきことに、エステル化されたセルロースエーテルを含む反応生成混合物が水と接触され、水と、反応生成混合物との混合物が、少なくとも800s-1のせん断速度に供されるとき、i)沈殿の間、又は後の、エステル化されたセルロースエーテルの粒子の多くの凝集を防ぐことができ、ii)エステル化されたセルロースエーテルの洗浄の間、エステル化されたセルロースエーテルの粒子の多くの凝集を防ぐことができ、それによって洗浄性が改良され、iii)非粘着性の微細に粉末化されたセルロースエーテルのエステルを得ることができる、ことが見出された。」
4c)「【0015】
・・・
【図2A】図2Aは、高いせん断速度での発明の方法において、水中に反応混合物を移動することによる、実施例1に記載される同じ反応混合物からのHPMCASの沈殿物を示す図である。当該HPMCASは、微細に分散した沈殿物を形成した。
・・・
【図4A】図4Aは、高いせん断速度での発明の方法において、水中に反応混合物を移動することによる、実施例2に記載される同じ反応混合物からのHPMCASの沈殿物を示す図である。当該HPMCASは、微細に分散した沈殿物を形成した。」
4d)「【0017】
エステル化反応に出発物質として使用されるセルロースエーテル(a)は、好ましくはアルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、又はヒドロキシアルキルアルキルセルロースである。ヒドロキシアルコキシ基は、典型的には、ヒドロキシメトキシ基、ヒドロキシエトキシ基、及び/又はヒドロキシプロポキシ基である。ヒドロキシエトキシ基、及び/又はヒドロキシプロポキシ基が、好ましい。好ましくは、単一種のヒドロキシアルコキシ基、より好ましくはヒドロキシプロポキシ基がセルロースエーテルに含まれる。アルコキシ基は、典型的にはメトキシ、エトキシ、及び/又は、プロポキシ基である。メトキシ基が好ましい。先に示したセルロースエーテルを例示すると、メチルセルロース、エチルセルロース、及びプロピルセルロース;ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシメチルエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルエチルセルロース、ヒドロキシブチルメチルセルロース、及びヒドロキシブチルエチルセルロースである。セルロースエーテルは、ヒドロキシプロピルメチルセルロースがより好ましい。」
4e)「【0019】
無水グルコース単位に対して、メトキシ基のようなアルコキシ基に置換されたヒドロキシル基の平均数は、アルコキシ基の置換度(DS)として表される。上記のDSの定義において、「アルコキシ基に置換されたヒドロキシル基」との用語は、セルロース骨格の炭素原子に直接結合される、アルキル化されたヒドロキシル基だけではなく、セルロース骨格に結合されるヒドロキシアルコキシ置換基のアルキル化されたヒドロキシル基も含む。セルロースエーテルは、DSmethoxylが1.1~2.1、より好ましくは1.75~2.05、及びMShydroxypropoxylが0.05~1.1、より好ましくは0.15~0.4である、ヒドロキシプロピルメチルセルロースが最もこのましい。DSmethoxyl、及びMShydroxypropoxylは、米国薬局方、及び国民医薬品集、ヒプロメロース(ヒドロキシプロピルメチルセルロース)に従って求められる。
【0020】
セルロースエーテル(a)は、(b)脂肪族モノカルボン酸無水物と、若しくは、ジ-若しくはトリ-カルボン酸無水物と、又は、脂肪族モノカルボン酸無水物、及びジ-若しくはトリ-カルボン酸無水物の組合せと反応される。好ましい脂肪族モノカルボン酸無水物は、無水酢酸、酪酸無水物、及びプロピオン酸無水物からなる群から選択される。好ましいジカルボン酸無水物は、無水コハク酸、無水マレイン酸、及び無水フタル酸からなる群から選択される。好ましいトリカルボン酸無水物は、無水トリメリット酸である。好ましい脂肪族モノカルボン酸無水物は、単独で用いることができ;又は好ましいジ-若しくはトリ-カルボン酸無水物は、単独で用いることができ;又は好ましい脂肪族モノカルボン酸無水物は、好ましいジ-若しくはトリ-カルボン酸無水物と組み合わせて用いることができる。
【0021】
上記のセルロースエーテル、脂肪族モノカルボン酸無水物、及びジ-又はトリカルボン酸無水物からの、エステル化されたセルロースエーテルの生成物は、以下のものが特に好ましい:
i)HPMC-XY、及びHPMC-X(式中、HPMCがヒドロキシプロピルメチルセルロースであり、XがA(酢酸塩)、又は、XがB(酪酸塩)若しくはXがPr(プロピオン酸塩)及びYがS(コハク酸塩)、YがP(フタル酸塩)、YがM(マレイン酸塩)若しくはYがT(トリメリット酸塩)である。)例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートフタレート(HPMCAP)、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートトリメリッテート(HPMCAT)、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートマレート(HPMCAM)、若しくはヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート(HPMCAS);又は、
ii)ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート(HPMCP);ヒドロキシプロピルセルロースアセテートサクシネート(HPCAS)、ヒドロキシブチルメチルセルロースプロピネートサクシネート(HBMCPrS)、ヒドロキシエチルヒドロキシプロピルセルロースプロピオネートサクシネート(HEHPCPrS);及びメチルセルロースアセテートサクシネート(MCAS)。」
4f)「【0041】
図7Cは、本発明の沈殿工程の別の実施形態に関するフローチャートを表す。反応物質(a)セルロースエーテル、(b)脂肪族モノカルボン酸無水物、ジ-若しくはトリ-カルボン酸無水物、又はこれらの組合せ、(c)脂肪族カルボン酸、及び典型的には(d)エステル化触媒、好ましくはカルボン酸アルカリ金属塩は、まとめて、又は別々に注入口導管(17)を通って反応容器(11)に供給され、及びそこから転送パイプ(16)を通って、水(13)が満たされた、隔てられた沈殿容器(12)に供給される。沈殿容器(12)は、高せん断装置(14)、好ましくは回転軸に高せん断ミキサーを備える。懸濁液は、沈殿容器(12)から除去され、さらに、図7Aに関して記載されるように処理される。」
4g)「【0045】
実施例1
ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート(HPMCAS)を含む反応生成混合物の製造
250.0gの氷酢酸、60.0gの無水酢酸、51.67g(乾燥成分96.82%)のヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、20.0gの無水コハク酸、及び50.0gの酢酸ナトリウム(非含水)は、内径147mmのガラス反応器に導入され、外径120mmのMIG(商標)撹拌機(2枚刃軸流羽根車、EKATO社,Schopfheim,ドイツ)を使用して、強力に混合した。HPMCは、20℃で2%水溶液として測定される粘度が約3.1mPa・sであり、米国薬局方、及び国民医薬品集、ヒプロメロース(ヒドロキシプロピルメチルセルロース)に従って求められる、メトキシ基置換度DS(methoxyl)が1.92、及びヒドロキシプロポキシ基の置換度MS(hydroxypropoxyl)が0.26であった。混合物は、85℃で加熱され、3時間の撹拌により強力に混合され、エステル化された。米国特許第4,226,981号のサンプルNo.4、実施例1に記載の通りに、反応は実施された。」
4h)「【0049】
本発明によるHPMCASの沈殿
実施例1の加熱された反応生成混合物は、転送される反応生成混合物の量の約10倍の量の蒸留水で満たされた、直径170mmの5リッターのガラスビーカーに、3分間に亘って、連続的に加えられた。加熱された反応生成混合物を加えている間、5200rpm、及び先端速度9.8m/sで動作する、Ultra-Turrax撹拌機S50-G45(ローター直径36mm、内部ステーター直径38mm)を使用して、ガラスビーカーの内容物を撹拌した。結果として、せん断速度は9800s-1だった。
【0050】
図2Aに示すように、HPMCASは微細に分散された沈殿物を形成した。分離による、沈殿に利用された水の排出、及び3.7Lの水への再懸濁後、生成物の懸濁液は、5200rpm、及び先端速度9.8m/sで動作する、Ultra-Turrax撹拌機S50-G45を使用して再び撹拌された。結果として、せん断速度は9800s-1だった。
【0051】
撹拌が終了した後、図2Bに示されるように、HPMCASの微細な沈殿物が、粘着性の態様を示さず、形成された。水からの、再懸濁された生成物の分離、及び単離後、良好な流動性を示し、粘着性の塊が形成されることなく、微細な粒子として水に分散可能である、図2Cに示すような、白色の粒状であり、非粘着性のHPMCASフィルターケーキが得られた。HPMCASは50~55℃で10時間乾燥され、微粒子径である、非粘着性の生成物が得られた。
【0052】
実施例2
HPMCASを含む反応生成混合物の製造
314.7gの氷酢酸が、MIG(商標)撹拌機を備え、85℃に調整されたオイルバスに設置されるガラス反応器に導入された。31.1gの実施例1と同じHPMC、及び30.32gの酢酸ナトリウム(非含水)が加えられ、溶解される。一度、HPMCの完全な溶解がなされると、3.55gの無水コハク酸の添加、及び2.5時間の反応がなされ、124.09gの無水酢酸の添加、及び追加の21時間の反応がなされた。その反応は、HPMCASポリマーの合成が概ね記載される、国際特許出願WO2005/115330号、51頁で述べられている通りに行われた。」
4i)「【0057】
本発明によるHPMCASの沈殿
加熱された、実施例2の反応生成混合物は、2.1Lの蒸留水が満たされた直径170mmの5リッターのガラスビーカーに、3分間に亘って、連続的に加えられた。加熱された反応生成混合物を加えている間、5200rpm、及び先端速度9.8m/sで動作する、実施例1で述べたものと同じUltra-Turrax攪拌機を使用して、ガラスビーカーの内容物を撹拌した。結果として、せん断速度は9800s-1だった。図4Aに示すように、HPMCASは微細に分散された沈殿物を形成した。
【0058】
分離による、沈殿に使用された水の排出、及び2.1Lの水への再懸濁後、製造物の懸濁液は、5200rpm、及び先端速度9.8m/sで動作する、Ultra-Turrax撹拌機S50-G45を使用して再び撹拌された。結果として、せん断速度は9800s-1だった。
【0059】
撹拌が終了した後、図4Bに示すように、HPMCASの微細な沈殿物が、粘着性の態様を示さず、形成された。
【0060】
水からの、再懸濁された製造物の分離、及び単離後、良好な流動性を示し、粘着性の塊が形成されることなく微細な粒子として水に分散可能である、図4Cに示すような、白色の粒状であり、非粘着性のHPMCASフィルターケーキが得られた。HPMCASは、50~55℃で、10時間乾燥され、微粒子径である、非粘着性の製造物が得られた。」
4j)「
【図7C】
[図:0001393101000012.jpg]
」
4k)「
[図:0001393101000013.jpg]
」
4l)「
[図:0001393101000014.jpg]
」
甲5:
5a)「
[図:0001393101000015.jpg]
[図:0001393101000016.jpg]
[図:0001393101000017.jpg]
」
(2)引用発明
甲1には、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート(以下「HPMCP」ともいう。)の精製方法についての記載があるところ(摘示1a~1d)、実施例1として、具体的にHPMCPを得たことが記載されている。
したがって、甲1の実施例1の記載からみて、甲1には以下の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認める。
「ヒドロキシプロピルメチルセルロース(2%水溶液粘度:4.25cps)25gを100gの酢酸溶媒に加えてゆっくりと溶かし、ヒドロキシプロピルメチルセルロースが酢酸に均一に広がると25gの酢酸ナトリウム、32.5gのフタル酸無水物、0.25gの塩素酸カリウムを加え、温度を80~85℃に上げた後、混合物を5時間ゆっくりと攪拌し、反応が完了した後、80~85℃の温度を維持しながら100gの水を加えて30分間攪拌し、反応生成混合物を流動化した後、それをスプレーノズルを通じて500gの水に噴射させ、噴射が完了した後で反応生成混合物をさらに5分間攪拌し、純水で濾過し、生成物を60~75℃の温度で4~6時間乾燥させる、純粋な乾燥顆粒状のヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレートの製造方法。」
2 当審が通知した令和4年5月23日付け取消理由について
令和4年5月23日付け取消理由(理由1~4)は、本件訂正前の請求項1~4に係る発明に関するものであるところ、本件訂正により請求項1~4は削除されたので、当該理由はない。
3 取消理由通知で採用しなかった特許異議申立理由について
(1)申立理由2について
本件訂正により請求項1~4は削除されたから、本件発明5及び6について検討する。
ア 対比・判断
(ア)本件発明5について
本件発明5と甲1発明とを対比する。
甲1発明の生成物であるヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレートが「乾燥顆粒状」であることは、本件発明5の「粒子形態を有し」、「粒子」であることに相当する。
甲1発明において、「ヒドロキシプロピルメチルセルロース(2%水溶液粘度:4.25cps)25gを100gの酢酸溶媒に加えてゆっくりと溶かし、ヒドロキシプロピルメチルセルロースが酢酸に均一に広がると25gの酢酸ナトリウム、32.5gのフタル酸無水物、0.25gの塩素酸カリウムを加え、温度を80~85℃に上げた後、混合物を5時間ゆっくりと攪拌し、反応が完了した後、80~85℃の温度を維持しながら100gの水を加えて30分間攪拌し、反応生成混合物を流動化」することは、本件発明5の「(1)ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート反応液を準備するステップ」に相当する。
したがって、本件発明5と甲1発明とは、
「粒子形態を有することを特徴とするヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート(hydroxypropyl methyl cellulose phthalate、HPMCP)粒子の製造方法であって、
(1)ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート反応液を準備するステップ、を含むことを特徴とする、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート粒子の製造方法。」である点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点1>
粒子形態について、本件発明5は、「多孔性の」と特定し、粒子について、本件発明5は「平均直径比(短直径に対する長直径の比)が1.5~4であることを特徴とする」と特定しているのに対し、甲1発明はそのような特定をしていない点。
<相違点2>
製造方法について、本件発明5は、「(2)撹拌装置が備えられた撹拌タンクの内部に前記撹拌装置が浸漬されるように水を投入するステップ」を含むのに対し、甲1発明はそのようなステップを含まない点。
<相違点3>
製造方法について、本件発明5は、「(3)前記反応液を前記撹拌タンクの内部に落下させるステップ」を含むのに対し、甲1発明はそのようなステップを含まない点。
<相違点4>
製造方法について、本件発明5は、「(4)落下された前記反応液が前記撹拌装置が作動している撹拌タンク内の水に投入されて、撹拌装置の機械的エネルギーにより多孔性の形態に粒子化するステップ」を含むのに対し、甲1発明はそのようなステップを含まない点。
事案にかんがみて、相違点1、3、4の順に検討する。
前記相違点1について検討する。
まず、甲2には、甲1の実施例1の再現実験とされる試験1についての記載があるので、試験1を再現実験とする妥当性について検討する。
甲2の1頁、5.(1)の「試験1」に記載された試験の方法は、甲1の実施例1に記載された方法とは、甲1の実施例1ではスプレーノズルについてその直径、空気の加圧速度が記載されていないのに対して、甲2の試験1は、スプレーノズルについて直径1mmとし、空気の加圧速度について7.1リットル/分としている点でのみ異なり、その他は全く同じである(なお、原料のヒドロキシプロピルセルロースについて、甲1の実施例1には、2%水溶液粘度が4.25cpsであることのみが記載されており、その置換度は不明であるところ、甲2の試験1では、2%水溶液粘度が4.25cpsのものを用いている点で甲1の実施例1と同じである。)。
この点について、甲1の実施例1の再現実験を行うには、スプレーノズルの直径及び空気の加圧速度について何らかの設定が必要であるところ、甲1には、スプレーノズルについて、内径が0.5~1.5mmを有し、空気又は窒素の加圧速度が3~8リットル/分であるものが望ましいことが記載されている(摘示1c)から、これらの範囲内に設定した甲2の試験1は甲1の実施例1の再現実験として妥当なものであるといえる。
また、甲2には、得られたHPMCPのフタリル基含有量、遊離フタル酸含有量について、試験1が33.6%、0.02%であったことが記載されている(6頁表1)一方、甲1には、33.4%、0.07%であることが記載されており(摘示1d)、それらの値が一致しないが、その相違はごく僅かで、複数の試験間における誤差程度であるといえ、この点をもって甲2の試験1が甲1の実施例1の再現実験として妥当でないとはいえない。
したがって、甲2の試験1は、甲1の実施例1の再現実験として妥当であるといえるから、甲1発明の生成物である粒子は、甲2の試験1で得られたHPMCP粒子の特性を有するといえる。
次に、試験1で得られたHPMCP粒子の特性について検討する。
甲2に記載のSEM分析の結果(7頁図1A、図1B)から、試験1で得られたHPMCP粒子は、多孔性であるといえる。
甲2に記載の平均直径比を複数回測定した結果は、2.26(8頁表2)、2.26、2.69、2.13、2.58、2.31、2.61(9頁表3)であり、試験1で得られたHPMCP粒子の平均直径比は、本件発明5の「1.5~4」の範囲内であるといえる(なお、測定については、本件明細書の【0068】、【0069】の記載に従ったものであるといえる。)。
してみると、甲1発明の生成物である粒子は、「多孔性」であり、「粒子の平均直径比(短直径に対する長直径の比)が1.5~4である」といえるから、本件発明5は甲1発明と前記相違点1において相違するとはいえない。
したがって、相違点1は実質的な相違点ではない。
前記相違点3及び4を併せて検討する。
甲1発明は、反応生成混合物を流動化した後、それをスプレーノズルを通じて500gの水に噴射させるものであって、水に対して落下させるものではないから、反応液を撹拌タンクの内部に落下させるものではない。
甲1には、「本発明の目的は、粒子間凝集現象を防止するために微細な顆粒状の粒子を形成し、製品中の遊離フタル酸と酢酸溶媒を効果的に除去することによって、高純度なヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレートの調製方法を提供することである」との記載があるところ(摘示1b)、当該目的を、「生成物を空気または窒素の加圧速度が3~8リットル/分であるスプレーノズルを通じて10~20重量%の水に噴射させ」ることを含む方法により解決したものといえる(摘示1a)。
一方、甲4には、背景技術として、甲1に係る特許出願のパテントファミリーに相当する米国特許出願の公開公報であるUS2004/0152886号に記載されたスプレーノズルを用いる方法を挙げた上で、「本発明の目的は、沈殿した後のエステル化されたセルロースエーテル粒子の多くの凝集を、スプレーノズルを通して反応生成混合物を噴霧する必要なく防ぐことができる、セルロースエーテルのエステルの製造方法を提供すること」であることが記載され、当該課題を解決するための手段として、「エステル化されたセルロースエーテルを含む反応生成混合物が水と接触され、水と、反応生成混合物との混合物が、少なくとも800s-1のせん断速度に供されるとき」に当該目的が達成できることが記載されている(摘示4a~4b)。
さらに甲4には、図2Aとして、水中に反応混合物を移動することによる、実施例1に記載される同じ反応混合物からのHPMCASの沈殿物を示す図(摘示4c、4k)、図4Aとして、水中に反応混合物を移動することによる、実施例2に記載される同じ反応混合物からのHPMCASの沈殿物を示す図(摘示4c、4l)、反応容器(11)からの物質が転送パイプ(16)を通って、水(13)が満たされた、隔てられた沈殿容器(12)に供給されること(摘示4f、4j)、目的とする生成物として、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート(HPMCP)が(摘示4e)、それぞれ記載されているところ、それらの記載をみても、反応液を容器の内部に落下させているかは明らかではない。
また、そもそも、甲1発明は、粒子間凝集現象を防止するために微細な顆粒状の粒子を形成し、製品中の遊離フタル酸と酢酸溶媒を効果的に除去することによって、高純度なヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレートの調製方法を提供するという目的(摘示1b)について、その特許請求の範囲に記載のとおり、「生成物を空気または窒素の加圧速度が3~8リットル/分であるスプレーノズルを通じて10~20重量%の水に噴射させ」ることにより、その目的を達成したものであるから、当業者がそのような技術的特徴をほかの構成に代えることは考えにくい。
したがって、甲1に記載の発明と甲4に記載の発明がともに、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート(HPMCP)を含むセルロースエーテルのエステルの粒子の凝集を防ぐという共通の目的を有するとしても、甲1発明に甲4に記載の技術的事項を組み合わせて、反応液を水が入っている撹拌タンクに落下させることを含む、「(3)前記反応液を前記撹拌タンクの内部に落下させるステップ」及び「(4)落下された前記反応液が前記撹拌装置が作動している撹拌タンク内の水に投入されて、撹拌装置の機械的エネルギーにより多孔性の形態に粒子化するステップ」を含む方法とすることが当業者が容易になし得た事項であるとはいえない。
さらに、仮に、甲1発明において、スプレーノズルを通じた噴射に代えて、反応液を撹拌タンクの内部に落下させた場合には、粒子の製造方法が異なるものとなることにより、得られる粒子の性状が同一であるとはいえないから、前記相違点1として検討した事項が実質的に相違しないとはいえなくなるところ、甲1及び4のいずれにも、相違点1に係る多孔性、平均直径比についての記載・示唆は一切ないから、相違点1に係る技術的事項について当業者が容易になし得た事項であるとはいえない。
甲5には、甲4に記載の高せん断装置に関する商品の記載があるにすぎないからその記載をみても、前記判断は変わらない。
そして、本件発明5は、多孔性の粒子形態を有することで溶媒に対する溶解性が向上したヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート粒子の製造方法を提供するという効果を奏するものである(本件明細書の実施例等)。
したがって、相違点2について検討するまでもなく、本件発明5は、甲1及び4に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(イ)本件発明6について
本件発明6は、本件発明5を引用するものであり、本件発明5の発明特定事項を全て備えるから、本件発明5と同様に、甲1及び4に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。
イ まとめ
以上のとおりであるから、申立理由2は理由がない。
(2)申立理由3について
ア 判断の前提
特許法第36条第4項第1号は、発明の詳細な説明のいわゆる実施可能要件を規定したものであって、物の製造方法の発明では、その物を製造すること、その方法により生産した物の利用について具体的な記載が発明の詳細な説明にあるか、そのような記載がない場合には、明細書及び図面の記載及び出願時の技術常識に基づき、当業者が過度の試行錯誤や複雑高度な実験等を行う必要なく、その物を製造することができる程度にその発明が記載されていなければならないとないと解される。
イ 判断
本件発明5は「多孔性の粒子形態を有し、平均直径比(短直径に対する長直径の比)が1.5~4であることを特徴とするヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート(hydroxypropyl methyl cellulose phthalate、HPMCP)粒子の製造方法であって、
(1)ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート反応液を準備するステップと、
(2)撹拌装置が備えられた撹拌タンクの内部に前記撹拌装置が浸漬されるように水を投入するステップと、
(3)前記反応液を前記撹拌タンクの内部に落下させるステップと、
(4)落下された前記反応液が前記撹拌装置が作動している撹拌タンク内の水に投入されて、撹拌装置の機械的エネルギーにより多孔性の形態に粒子化するステップと、を含むことを特徴とする、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート粒子の製造方法。」を、本件発明6は「前記ステップ(1)で、前記反応液は、触媒の存在下、反応媒質内でヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)及び無水フタル酸をエステル化反応させて得られることを特徴とする、請求項5に記載のヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート粒子の製造方法。」をそれぞれ発明特定事項とするものである。
発明の詳細な説明及び図面には、従来、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレートは、腸溶性カプセル原料及び各種錠剤のコーティング剤として用いられており、これ以外にも医薬用賦形剤、結合剤、徐放性製剤など多様な用途に用いられてきたこと(【0002】~【0009】)、解決しようとする課題に関すること(【0011】~【0012】)、前記課題を解決するために本発明は、多孔性の粒子形態を有するヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート(hydroxypropyl methyl cellulose phthalate、HPMCP)粒子を提供すること、本発明は当該粒子及びその製造方法に関すること(【0013】、【0025】)、平均空隙率に関すること(【0014】、【0026】~【0027】)、粒子の平均直径比(短直径に対する長直径の比)は、1.5~4であってもよいこと、本発明によるHPMCP粒子は、多孔性の粒子形態に形成するために、粒子化する過程で機械的エネルギーを受けるので、従来の方法によって製造される球形のHPMCP粒子に比べて粒子の長直径と短直径の長さ差が大きい、すなわち、従来の球形HPMCP粒子の場合、平均直径比(短直径に対する長直径の比)が約1.4を超過しない一方、本発明によって製造された多孔性HPMCP粒子の場合、平均直径比が1.5以上の範囲を有するようになること(【0015】、【0028】)、本発明は、(1)~(4)のステップを含むHPMCP粒子の製造方法を提供すること(【0018】、【0034】)、ステップ(1)で、前記反応液は、触媒の存在下、反応媒質内でヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)及び無水フタル酸をエステル化反応させて得られること、反応に用いる触媒、媒質等に関すること(【0019】、【0036】~【0041】)、ステップ(2)に用いる撹拌タンク、水等に関すること(【0042】~【0046】)、ステップ(3)で、前記反応液は、重力落下方式で前記撹拌タンクの内部に落下されることができ、このとき、1時間当りの単位体積を通過する反応液の流速を示す空間速度(space velocity、SV)は、1.2~3.5/hであることが好ましいこと(【0020】、【0047】~【0049】)、ステップ(4)で、前記反応液は、撹拌装置の機械的エネルギーにより多孔性の形態に粒子化することができ、前記撹拌装置の撹拌速度は、500~2000rpmであることが好ましいこと(【0021】、【0050】~【0056】)、発明の効果が、本発明によるHPMCP粒子は、内部に空隙を含む多孔性の粒子形態を有するので、溶媒が粒子の内部に容易に浸透し、溶媒/粒子間の接触表面積が広くなり溶媒に対する溶解性が向上することであること、また、本発明のHPMCP粒子の製造方法によると、撹拌装置が作動中の撹拌タンク内部の水にHPMCP反応液を投入して粒子化することで、粒子の形態を多孔性に変更することができる。このように本発明では、従来の設備を変更することなく生産工程条件のみを変更して製品を生産することができるので経済的であること(【0022】~【0023】)、本発明の一実施例によるHPMCP粒子の製造設備の模式図、実施例1及び比較例1によって製造されたHPMCP粒子の無倍率写真及び前記写真を50倍拡大したSEM写真、実施例1及び比較例1によって製造されたHPMCP粒子の溶解傾向を示した光学顕微鏡写真(【0024】、図1~3)、HPMCP粒子の各置換体の含量及び分子量に関すること(【0030】~【0032】)が記載されている。
また、具体的な製造例として、(1)~(4)のステップを含む多孔性のHPMCP粒子の製造方法である実施例1~3、比較例1が記載されており、実施例1~3の方法は、撹拌タンクに備えられたインペラの撹拌速度が、それぞれ500、1000、2000rpmであり、比較例1の方法は、インペラが回転していないこと、HPMCP粒子を所定のアセトンに投入したときに、実施例1~3の粒子は完全溶解するのに対し、比較例1の粒子は未溶解粒子が存在すること、粒子の平均直径比について、実施例1が2.4である一方、比較例1は1.3であること、実施例1の粒子は、多孔性の構造を有している一方、比較例1の粒子は、非多孔性の球形粒子形態を有していることが確認できること等が記載されている(【0058】~【0074】、図2、3)。
これらの発明の詳細な説明の記載によれば、本件発明5及び6の製造方法により、本件発明5及び6の多孔性の粒子形態を有するHPMCP粒子を製造することができるといえる。
また、発明の詳細な説明には、本発明によるHPMCP粒子は、多孔性の粒子形態に形成するために、粒子化する過程で機械的エネルギーを受けるので、従来の方法によって製造される球形のHPMCP粒子に比べて粒子の長直径と短直径の長さ差が大きい、すなわち、従来の球形HPMCP粒子の場合、平均直径比(短直径に対する長直径の比)が約1.4を超過しない一方、本発明によって製造された多孔性HPMCP粒子の場合、平均直径比が1.5以上の範囲を有するようになる旨の記載(【0028】)があるところ、具体的な製造例として記載され、インペラが所定の撹拌速度で回転する実施例1の粒子は多孔性で、平均直径比が2.4であるのに対し、インペラが回転していない比較例1の粒子は非多孔性で、平均直径比が1.3であることは前記記載を裏付けるものといえる。
さらに、前記記載から、粒子化の過程における機械的エネルギーにより平均直径比を大きくするといえるから、当該機械的エネルギー、たとえばインペラの回転速度を調節することにより、実施例1の粒子の平均直径比2.4に限られず、本件発明5及び6で特定される1.5~4程度の範囲の粒子を製造できるといえる。
そして、本件発明5及び6の粒子の利用について具体的な記載が発明の詳細な説明にあるといえる。
してみると、本件発明5及び6について、その物を製造すること、その方法により生産した物の利用について具体的な記載が発明の詳細な説明にあるか、そのような記載がない場合には、明細書及び図面の記載及び出願時の技術常識に基づき、当業者が過度の試行錯誤や複雑高度な実験等を行う必要なく、その物を製造することができる程度にその発明が記載されているといえる。
なお、前記のとおりの発明の詳細な説明の記載、特に【0065】~【0066】の溶解速度に関する試験結果、【0073】~【0074】の溶解傾向に関する記載からみて、本件発明5及び6の製造方法により製造される粒子は溶解性が向上したものであるといえる。
したがって、本件発明5及び6について、発明の詳細な説明の記載は実施可能要件を満たすといえる。
ウ 特許異議申立人の主張について
申立理由3は、訂正前の請求項1の発明特定事項である(a)多孔性の粒子形態を有すること、(c)平均直径比(短直径に対する長直径の比)が1.5~4であることのほか、請求項2~4の発明特定事項に基づく理由であるところ、請求項1~4は削除されており、また、請求項5及び6の前記(a)及び(c)に対応する点については、前記イで述べたとおり、発明の詳細な説明には、多孔性の粒子形態を有し、平均直径比(短直径に対する長直径の比)が1.5~4であるHPMCP粒子の製造方法及び当該粒子の利用について記載があるといえる。
したがって、特許異議申立人の主張を採用することはできない。
エ まとめ
以上のとおりであるから、申立理由3は理由がない。
(3)申立理由4について
ア 判断の前提
特許請求の範囲の記載が明細書のサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載又はその示唆により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。
イ 判断
本件明細書及び図面の全体の記載事項からみて、本件発明5及び6の解決しようとする課題は、「HPMCP反応液を水に投入してHPMCP粒子を生成する過程で、前記反応液に機械的エネルギーを付与することで多孔性のHPMCP粒子を製造する方法を提供すること」(【0012】)であると認める。
そして、当該課題を解決する方法は、本件発明5及び6の発明特定事項に全て含まれるものであるところ、前記(2)イで述べたとおり、本件発明5及び6に係る粒子の製造方法することについての記載が発明の詳細な説明にあるから、本件発明5及び6は、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載又はその示唆により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえ、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえる。
なお、本件発明5及び6の製造方法により製造される粒子は溶解性が向上したものであるといえることも前記(2)イで述べたとおりである。
したがって、本件発明5及び6について、特許請求の範囲の記載はサポート要件を満たすといえる。
ウ 特許異議申立人の主張について
申立理由4は、申立理由3と同様の理由に基づくものであり、前記イで述べたとおりであるから、前記(2)ウで述べたのと同様に、特許異議申立人の主張を採用することはできない。
エ まとめ
以上のとおりであるから、申立理由4は理由がない。
第6 むすび
以上のとおりであるから、請求項5及び6に係る特許は、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によっては、取り消すことができない。
また、ほかに請求項5及び6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
特許異議申立の対象であった請求項1~4は、訂正請求により削除されたので、請求項1~4に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
よって、結論のとおり決定する。
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2022-700170