特許訂正審判
2022-390169
遊技機
- 審判番号
- 2022-390169
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 訂正審判(訂正の審決)
- 出願番号
- 特願2019-232650
- 登録番号
- 6941886
- 請求日
- 2022年10月21日
- 審決日
- 2023年04月10日
- 公報発行日
- 2023年07月28日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【請求人】京楽産業. 株式会社
- 【請求人代理人】古部 次郎
- 【請求人代理人】伊與田 幸穂
- 【請求人代理人】尾形 文雄
- 審判長/審判官
- 審判長 長井 真一
- 審判官 小林 俊久
- 審判官 藤澤 和浩
- 分類
- P141 .853-Y (A63F) / P141 .841-Y (A63F) / P141 .854-Y (A63F)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法126条1項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第126条第1項、特許法第126条第5項、特許法第126条第6項、特許法第131条の2第1項、特許法第126条第7項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第6941886号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。
結論
結 論
特許第6941886号の明細書及び特許請求の範囲を本件審判請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり訂正することを認める。
理由
理 由
1 手続の経緯
本件訂正審判の請求に係る特許第6941886号(以下「本件特許」という。)は、令和1年12月24日に出願され、令和3年9月9日に特許権の設定登録(請求項の数1)がされ、令和4年10月21日に本件訂正審判の請求(以下、この請求による訂正を「本件訂正」という。)がされ、当審より、令和5年1月10日付けで訂正拒絶理由(以下「本件訂正拒絶理由」という。)を通知したところ、同年2月10日に意見書、及び本件訂正審判に係る審判請求書(以下「本件審判請求書」という。)を補正する手続補正書が提出されたものである。
2 本件補正の内容
令和5年2月10日に提出された手続補正書による補正(以下「本件補正」という。)は、本件審判請求書の「6.請求の理由」について補正するものであり、その補正の内容は、次のとおりである(下線部は補正箇所を示す。)。
(補正事項1)
本件審判請求書の「(2)訂正事項」の「(ア)訂正事項1」の記載を、「特許請求の範囲の請求項1に「前記判定に基づく判定情報を保留記憶として記憶する記憶手段」および「前記判定情報の内容を示唆する情報表示を表示させることが可能であり」と記載されているのを、「前記判定に用いられる判定情報を保留記憶として記憶する記憶手段」および「前記判定情報に基づく内容を示唆する情報表示を表示させることが可能であり」に訂正する。」に補正する。
(補正事項2)
本件審判請求書の「(2)訂正事項」の「(イ)訂正事項2」の記載を、「明細書の段落【0006】に「前記判定に基づく判定情報を保留記憶として記憶する記憶手段(例えば、RAM203)」および「前記判定情報の内容を示唆する情報表示を表示させることが可能であり」と記載されているのを、「前記判定に用いられる判定情報を保留記憶として記憶する記憶手段(例えば、RAM203)」および「前記判定情報に基づく内容を示唆する情報表示を表示させることが可能であり」に訂正する。」に補正する。
3 本件補正についての判断
(1)補正事項1について
補正事項1は、本件特許の設定登録時の請求項1に記載の「前記演出制御手段は、前記判定情報の内容を示唆する情報表示を表示させることが可能であり」における「前記判定情報の内容を示唆する」を「前記判定情報に基づく内容を示唆する」(下線は当審で付した。)とするもので実質的に新たな訂正事項を追加するものであって、実質的な内容変更を伴わないものとはいえないし、減縮的に変更するものともいえないことから、補正の前後で訂正事項1の同一性を変更するものであることは明らかである。
したがって、補正事項1は、審判請求書の要旨を変更するものであるから、特許法第131条の2第1項の規定に適合しない。
(2)補正事項2について
補正事項2は、本件特許の設定登録時の明細書の段落【0006】の記載について、補正事項1と同様に補正するものであるから、上記(1)で検討したのと同様の理由により審判請求書の要旨を変更するものであり、特許法第131条の2第1項の規定に適合しない。
(3)小括
上記(1)、(2)より、本件補正は、特許法第131条の2第1項の規定に適合しないから、本件補正を採用することができない。
4 本件訂正の内容
上記のとおり、本件補正は認められないから、本件訂正審判の請求の趣旨は、本件特許の明細書及び特許請求の範囲を本件審判請求書に添付された訂正明細書、特許請求の範囲のとおり訂正することを認める、との審決を求めるものであり、その訂正の内容は、次のとおりである(下線部は訂正箇所を示す。)。
(1)訂正事項1
本件特許の特許請求の範囲の請求項1に「前記判定に基づく判定情報を保留記憶として記憶する記憶手段」と記載されているのを、「前記判定に用いられる判定情報を保留記憶として記憶する記憶手段」に訂正する。
(2)訂正事項2
本件特許の明細書の段落【0006】に「前記判定に基づく判定情報を保留記憶として記憶する記憶手段(例えば、RAM203)」と記載されているのを、「前記判定に用いられる判定情報を保留記憶として記憶する記憶手段(例えば、RAM203)」に訂正する。
5 本件訂正拒絶理由の概要
(1)訂正事項1
ア 訂正の目的について 本件特許の設定登録時の請求項1に別途記載のある「前記判定情報の内容を示唆する」について、訂正前の「前記判定に基づく判定情報」であれば、特別遊技を行うか否かの判定結果等を示唆することと解し得たのに、「前記判定に用いられる判定情報」と訂正することで、特別遊技を行うか否かの判定に用いられる乱数値等の内容を示唆すると解されることとなり、当該判定に供される前の乱数値自体は内容を有しないと考えられることに鑑みると不合理であるにもかかわらず、「判定情報の内容」について本件審判請求書には一切説明がない。
したがって、訂正事項1に係る訂正は、特許法第126条第1項ただし書第3号に掲げる、明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当しない。
また、訂正事項1に係る訂正は、特許法第126条第1項ただし書第1、2、4号に掲げるいずれの事項を目的とするものにも該当しない。
イ 新規事項の追加の有無について
訂正事項1は、上記アで検討したとおり、本件特許の設定登録時の請求項1に別途記載のある「前記判定情報の内容を示唆する」について、訂正前の「前記判定に基づく判定情報」を「前記判定に用いられる判定情報」と訂正することで、特別遊技を行うか否かの判定に用いられる乱数値等の内容を示唆すると解されることとなるところ、当該判定に供される前の乱数値自体の内容を示唆することは、本件特許の明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「特許明細書等」という。)に記載されておらず、自明のこととも認められない。
したがって、訂正事項1は、特許明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入しないものとはいえない。
よって、訂正事項1に係る訂正は、特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものとはいえず、特許法第126条第5項の規定に適合しない。
ウ 特許請求の範囲の拡張又は変更について
訂正事項1は、上記アで検討したとおり、本件特許の設定登録時の請求項1に別途記載のある「前記判定情報の内容を示唆する」について、訂正前の「前記判定に基づく判定情報」を「前記判定に用いられる判定情報」と訂正することで、特別遊技を行うか否かの判定に用いられる乱数値等の内容を示唆すると解されることとなるところからみて、実質上、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないものとはいえない。
よって、訂正事項1に係る訂正は、特許法第126条第6項の規定に適合するものとはいえない。
(2)訂正事項2
訂正事項2に係る訂正は、上記(1)で検討したのと同様の理由により、特許法第126条第1項ただし書に掲げるいずれの事項を目的とするものではなく、同条第5、6項の規定にも適合しない。
6 本件訂正についての判断
(1)訂正の目的
ア 訂正事項1は、本件特許の特許請求の範囲の請求項1における、
「遊技の進行を制御する主制御手段と、
前記主制御手段から送信されたコマンドに応じた演出を制御する演出制御手段と、を備え、
前記主制御手段は、
始動条件の成立に基づいて、特別遊技を行うか否かを判定する判定手段と、
前記判定に基づく判定情報を保留記憶として記憶する記憶手段と、
前記判定の結果に応じて特別図柄を変動表示させてから停止表示させる変動表示手段と、を有し、
前記演出制御手段は、
前記判定情報の内容を示唆する情報表示を表示させることが可能であり・・・」との記載において、「前記判定に基づく判定情報を保留記憶として記憶する記憶手段」とあるのを、「前記判定に用いられる判定情報を保留記憶として記憶する記憶手段」に訂正するものである(下線は当審で付した。以下同様。)。
イ 訂正事項2は、本件特許の明細書の段落【0006】における、
「上記の目的を達成する本発明は、次のような遊技機として実現される。この遊技機(例えば、パチンコ遊技機100)は、遊技の進行を制御する主制御手段(例えば、遊技制御部200)と、前記主制御手段(例えば、遊技制御部200)から送信されたコマンドに応じた演出を制御する演出制御手段(例えば、演出制御部300)と、を備え、前記主制御手段(例えば、遊技制御部200)は、始動条件の成立に基づいて、特別遊技を行うか否かを判定する判定手段(例えば、特別図柄判定部234)と、前記判定に基づく判定情報を保留記憶として記憶する記憶手段(例えば、RAM203)と、前記判定の結果に応じて特別図柄を変動表示させてから停止表示させる変動表示手段(例えば、特別図柄変動制御部233)と、を有し、前記演出制御手段(例えば、遊技制御部200)は、前記判定情報の内容を示唆する情報表示を表示させることが可能であり・・・」との記載において、「前記判定に基づく判定情報を保留記憶として記憶する記憶手段(例えば、RAM203)」とあるのを、「前記判定に用いられる判定情報を保留記憶として記憶する記憶手段(例えば、RAM203)」に訂正するものである。
ウ 訂正の目的の検討
(1)訂正事項1について訂正事項1について検討するに、訂正前の請求項1に記載の「前記判定に基づく判定情報」における「前記判定」は、当該記載の直後に記載の「前記判定の結果に応じて特別図柄を変動表示させてから停止表示させる変動表示手段」と同様、「特別遊技を行うか否かを判定する判定手段」における「判定」を指し、「特別遊技を行うか否かを判定する判定手段」でなされ、その「結果に応じて図柄の変動表示」がされる「特別遊技を行うか否か」の「判定」に基づく「判定情報」が、「保留記憶」として記憶されることとなる。
しかし、遊技機の分野における技術常識からは、「保留記憶」として記憶されるのは、「特別遊技を行うか否か」の「判定」に用いられる乱数値等の情報であるところ、訂正前の「前記判定に基づく判定情報」との記載では、「保留記憶」として記憶される「判定情報」にどのような情報が含まれるのか明瞭でなく、「特別遊技を行うか否か」の「判定」に用いられる乱数値等の情報が含まれるのか判然としない。
そうすると、訂正事項1は、「前記判定に基づく判定情報」を「前記判定に用いられる判定情報」と訂正することで、「保留記憶」として記憶される「判定情報」が、「特別遊技を行うか否か」の「判定」に用いられる乱数値等の情報であることを明瞭にするものといえ、本件特許の明細書の段落【0062】の「取得された乱数値は、特別図柄判定部234による判定に用いられる」、段落【0063】の「特別図柄判定部234は、取得した乱数値に基づいて、遊技者にとって有利な特別遊技(大当たり遊技等)を行うか否かを判定する」との記載とも整合する。
ここで、本件訂正拒絶理由で指摘した本件特許の設定登録時の請求項1に別途記載の「前記判定情報の内容を示唆する」ことについて検討する。
本件特許の明細書には、段落【0062】に「取得された乱数値は、特別図柄判定部234による判定に用いられる。詳しくは後述するが、特別図柄抽選に用いられる乱数としては、大当たりか否かを示す大当たり乱数、・・・等が有る。」ことが記載され、段落【0089】に「ここにいう乱数値としては、大当たり、小当たりまたははずれを決定する大当たり乱数値・・・、等が含まれる。」ことが記載され、段落【0094】に「この乱数値により後の特別図柄処理において特別図柄抽選の結果が確定される。」ことが記載されている。
そして、「判定情報」が「特別遊技を行うか否か」の「判定」に用いられる乱数値等の情報と解した場合、本件特許の明細書の段落【0062】、段落【0089】、段落【0094】の上記記載によれば、「判定情報」としての乱数値は、「大当たり」や「はずれ」などの特別図柄抽選の結果と対応付けられており、特別図柄抽選に供されて結果が確定されるものであるから、乱数値それ自体が、特別遊技を行うか否かの決定のために必要な内容を有しているということができる。
そうすると、本件特許の設定登録時の請求項1に別途記載の「前記判定情報の内容を示唆する」も、当該乱数値に対応付けられた特別遊技を行うか否かの判定結果を示唆することを意味するものと理解できるから、本件訂正拒絶理由で指摘したような不合理はない。
したがって、訂正事項1に係る訂正は、特許法第126条第1項ただし書第3号に掲げる、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
(2)訂正事項2について
訂正事項2は、本件特許の明細書の段落【0006】に記載の「前記判定に基づく判定情報を保留記憶として記憶する記憶手段(例えば、RAM203)」を「前記判定に用いられる判定情報を保留記憶として記憶する記憶手段(例えば、RAM203)」に訂正するものである。
そして、訂正事項2に係る訂正は、本件特許の特許請求の範囲の訂正に伴い、特許請求の範囲と整合させるために行う明細書の訂正であるので、特許法第126条第1項ただし書第3号に掲げる、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
(3)特許法第126条第5項に規定する要件
訂正事項1に係る「前記判定に用いられる判定情報」との技術的事項は、上記(1)で検討した本件特許の明細書の段落【0062】及び【0063】の記載に基づくものといえ、「前記判定に用いられる判定情報を保留記憶として記憶する記憶手段」との技術的事項は、特許明細書の段落【0179】の「図22(a)に示すように、RAM203は、大当たり乱数抽選により取得した大当たり乱数を記憶する特別図柄保留記憶領域としての記憶領域204を備えている。」との記載に基づくものといえるから、特許明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入しないものである。
したがって、訂正事項1は、特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、特許法第126条第5項の規定に適合する。
訂正事項2も、訂正事項1と同様の理由により、特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、特許法第126条第5項の規定に適合する。
(4)特許法第126条第6項に規定する要件
訂正事項1に係る訂正は、前記(1)で検討したとおり、訂正前の「前記判定に基づく判定情報」との記載では、「保留記憶」として記憶される「判定情報」にどのような情報が含まれるのか明瞭でなかったのを、「特別遊技を行うか否か」の「判定」に用いられる乱数値等の情報であることを明瞭にするものである。
したがって、訂正事項1は、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでなく、特許法第126条第6項の規定に適合する。
訂正事項2も、訂正事項1と同様の理由により、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでなく、特許法第126条第6項の規定に適合する。
(5)特許法第126条第7項に規定する要件
訂正事項1及び2に係る訂正は、特許法第126条第1項ただし書第3号に掲げる、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであるから、訂正後の請求項1に係る発明について、特許法第126条第7項の規定に適合するか否かについての判断を要しない。
7 むすび
以上のとおり、本件訂正審判の請求に係る訂正事項1及び2は、特許法第126条第1項ただし書第3号に掲げる事項を目的とし、かつ、同条第5、6項の規定に適合するものである。
したがって、本件訂正審判の請求に係る訂正は適法にされたものであるから、本件特許の明細書及び特許の特許請求の範囲を、本件審判請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり訂正することを認める。
よって、結論のとおり審決する。
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