2022-390107
映写黒板およびその製造方法
- 審判番号
- 2022-390107
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 訂正審判(訂正の審決)
- 出願番号
- 特願2006-195970外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 登録番号
- 4771880
- 請求日
- 2022年06月17日
- 審決日
- 2022年08月30日
- 公報発行日
- 2022年11月25日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【請求人】JFE建材 株式会社
- 【請求人代理人】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
- 【請求人代理人】太田 顕学
- 分類
- P141 .852-Y (B43L)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第126条第1項、特許法第126条第5項、特許法第126条第6項
- データ出所
- 審決公報(XML)
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結論
理由
目次 ▾ 6項目
第1 手続の経緯
特許第4771880号の請求項1乃至7に係る特許についての出願は、平成18年7月18日(優先権主張平成17年9月2日)の特許出願であって、平成23年7月1日にその特許権の設定登録がなされ、同年9月14日に特許掲載公報が発行されたものである。
その後、令和4年6月17日に本件訂正審判の請求(以下、「本件訂正請求」という。)がされた。
第2 訂正請求の趣旨及び訂正事項
本件訂正請求は、その請求の趣旨を「特許第4771880号の明細書を本件審判請求書に添付した訂正明細書のとおり訂正することを認める、との審決を求める。」とするものである。
そして、その訂正の内容は、以下のとおりである。
1 訂正の内容
本件訂正請求による訂正(以下「本件訂正」という。)の内容は以下のとおりである。(注:下線部分は訂正箇所を示す。)
(1)訂正事項1
願書に添付した明細書の段落【0018】及び【0041】に「標準白板(完全拡散板:硫酸マグネシウムを焼き付けた純白板)」とあるのを、「標準白板(完全拡散板:硫酸バリウムを焼き付けた純白板)」に訂正する。(以下「訂正事項1」という。)
(2)訂正事項2
願書に添付した明細書の段落【0024】に「TiO2として」とあるのを、「TiO2として」に訂正する。(以下「訂正事項2」という。)
(3)訂正事項3
願書に添付した明細書の段落【0030】に「TiO2を」とあるのを、「TiO2を」に訂正する。(以下「訂正事項3」という。)
(4)訂正事項4
願書に添付した明細書の段落【0030】に「10 ~30%含有し」とあるのを、「10~30%含有し」に訂正する。(以下「訂正事項4」という。)
第3 当審の判断
1 訂正の目的の適否、特許請求の範囲の拡張・変更の存否、新規事項の有無について
(1)訂正事項1について
ア 訂正の目的について
(ア)「完全拡散」との事項は、光源から照射された入射光は全方向に均等な強さ(反射輝度)となるように反射される特性(ランバートの余弦則)を意味する。
このため、願書に添付した明細書に記載の「標準白板(完全拡散板)」とは、上述の特性を有し、入射光は純白板の面によりすべて反射されることが要求される板である。
「標準白板(完全拡散板)」は、訂正前の明細書の【0041】に「ピークゲインとは、標準白板(完全拡散板:硫酸マグネシウムを焼き付けた純白板)に光を当てたときの反射輝度に対する、同一条件で測定したサンプル黒板の反射輝度の比率を、ピークゲインとした。」と記載されているように、「反射特性」測定の基準板として用いられるものである。
このように入射光はすべて反射されることは、白色を有し、「反射特性」測定の基準板として用いられる「標準白板(完全拡散板)」に固有の特性であることが理解できる。
したがって、本件特許明細書に記載の実施例においては、「標準白板(完全拡散板)」を被測定板Sとすると、訂正前の明細書の段落【0018】及び【0041】、並びに図2に示されるように、被測定板Sの中心に垂直方向に光源10から入射光1を照射し、中心点から同一円弧上を左右に各75°の範囲で5°ずつ移動したポイントでの反射光2の大きさ(反射輝度)を輝度計11で測定した時、入射光はすべて反射され、かつ各ポイントの反射輝度は均等となることが理解できる。
(イ)他方、「硫酸マグネシウム」は、その用途として製紙工業の充てん剤や、染色の媒染材等が例示されているだけで、硫酸マグネシウムの水和物および無水和物の結晶は無色である。白色ではなく反射率が低い硫酸マグネシウムを焼き付けた板は、純白板ではないので、「標準白板(完全拡散板)」のような入射光はすべて反射される特性を有さないことは明白である。
このため、当該「硫酸マグネシウムを焼き付けた板」が、光源から照射された入射光は全方向に均等な強さ(反射輝度)となるように反射される特性(ランバートの余弦則)を有しかつ入射光はすべて反射される「標準白板(完全拡散板)」ではないことは、本件特許の優先日前の技術常識であると認められる。
したがって、本件特許の技術分野の当業者であれば「硫酸マグネシウム」の記載が誤記であることは明らかである。
(ウ)本件特許の請求項1及び4には「JIS Z 8721-1993に規定される明度V」、「JIS B 0601-2001に規定される表面粗さRz」、「JIS Z 8741-1997に規定される75度鏡面光沢度Gs(75°)」が規定されている。
また、本件特許明細書の【0015】には「本発明でいう明度Vは、JIS Z 8722-2000に規定される色の測定方法に準拠して測定し」と記載され、請求項1に規定される明度VがJIS Z 8722-2000に規定される色の測定方法に準拠して測定されることが記載されている。
そうすると、本件特許の技術分野に属する当業者は、JISを参考にして「標準白板」を想定するのが合理的である。
そして、添付資料4(JIS Z 8722-2000「色の測定方法-反射及び透過物体色」、5頁)には「5.3.6標準白色面標準白色面は、硫酸バリウム粉末を成形したもので、分光立体角反射率が目盛定めされているものとする。」との記載がある。
したがって、訂正前の明細書において、「標準白板(完全拡散板:硫酸バリウムを焼き付けた純白板)」を用いて反射特性が測定されることが客観的に認められる。
また、添付資料2(照明学会誌(中川靖夫著)、第93卷、第3号、2009年、171頁左欄下から9行下~9行および下から5行~下から3行)には「硫酸バリウム…などの粉末を容器に入れて圧縮した面が、反射測定の(参照)標準や測色の白色標準に用いられる。…硫酸バリウムなどを適当な溶剤(ポリビニルアルコールなど)に拡散させた塗料を金属面などに塗布した拡散面は、測定・測色の積分球の内面に広く使用されている。」と記載されている。
さらに、添付資料5(東京都立産業技術研究所研究報告第7号(2004)、87頁右欄1~3行)には「白色拡散板としては、主に可視域の測定の場合、一般に、硫酸バリウム(BaSO4)が用いられる」と記載されている。
さらに、添付資料3(世界大百科事典29(下中弘編集発行人)、平凡社、1988年4月28日初版発行、644頁)には、「硫酸バリウム」は用途として白色顔料が明記されており、硫酸バリウムを焼き付けた板は、反射率が高く、「標準白板:完全拡散板」として要求される特性を満足するものである。
このため、本件特許出願当時、標準白板(完全拡散板)(白色拡散板とも称する)として、一般的に用いられていたのは「硫酸バリウム」であることは明らかといえる。
したがって、本件特許の優先日前の技術常識を参酌しても、訂正前の「標準白板(完全拡散板:硫酸マグネシウムを焼き付けた純白板)」は誤記であり、「標準白板(完全拡散板:硫酸バリウムを焼き付けた純白板)」と訂正されるべきことは明らかである。
(エ)したがって、訂正事項1は、特許法第126条第1項ただし書き第2号に規定する、誤記の訂正を目的とする訂正である。
イ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるか否か
訂正事項1は、訂正前の明細書の段落【0018】および【0041】の「標準白板(完全拡散板:硫酸マグネシウムを焼き付けた純白板)」とあるのを、「標準白板(完全拡散板:硫酸バリウムを焼き付けた純白板)と訂正する、誤記の訂正である。
出願当初明細書の実施例1(【0036】~【0048】)は、訂正前の明細書の実施例1(【0036】~【0048】)と同一である。また、上記アに記載したように、訂正前の明細書の実施例1の反射特性は「標準白板(完全拡散板:硫酸バリウムを焼き付けた純白板)」を用いて測定されていることが客観的に認められる。
したがって、訂正前の明細書の段落【0018】および【0041】の「標準白板(完全拡散板:硫酸マグネシウムを焼き付けた純白板)」とあるのを、「標準白板(完全拡散板:硫酸バリウムを焼き付けた純白板)」とする誤記の訂正は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第126条第5項に適合するものである。
ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものであるか否か
訂正事項1は、訂正前の明細書の段落【0018】および【0041】の「標準白板(完全拡散板:硫酸マグネシウムを焼き付けた純白板)」とあるのを、「標準白板(完全拡散板:硫酸バリウムを焼き付けた純白板)」と訂正する、誤記の訂正である。
上記アに記載したように、訂正前の明細書の実施例1の反射特性は「標準白板(完全拡散板:硫酸バリウムを焼き付けた純白板)」を用いて測定されていることが客観的に認められる。
したがって、訂正事項1に係る誤記の訂正は、特許請求の範囲に記載された映写黒板の反射特性を変更するものでなく、カテゴリーや対象、目的を変更するものでもないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当せず、特許法第126条第6項に適合するものである。
(2)訂正事項2について
ア 訂正の目的について
訂正事項2は、訂正前の明細書の段落【0024】に、「TiO2として」とあるのを、「TiO2として」と訂正するものである。
TiO2に続いて下付きとされている「として」は明白な誤記であり、訂正事項2に係る訂正は「として」を通常の文字の大きさに正すものであり、文字の大きさ以外に実質的な変更はなされていない。このため、訂正前の記載が当然に訂正後の記載と同一の意味を表示するものと客観的に認められる。
したがって、訂正事項2は、特許法第126条第1項ただし書き第2号に規定する、誤記の訂正を目的とする訂正である。
イ 願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項2に係る訂正内容は、出願当初明細書の段落【0024】の記載「TiO2として」に対して単に文字の大きさを変更するものであり、「TiO2として」の記載と実質的に同じ意味を有する。
したがって、訂正前の明細書の段落【0024】の「TiO2として」とあるのを、「TiO2として」とする誤記の訂正は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第126条第5項に適合するものである。
ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正でないこと
訂正事項2に係る訂正内容は、出願当初明細書の段落【0024】の記載「TiO2として」に対して単に文字の大きさを変更するものであり、「TiO2として」の記載と実質的に同じ意味を有する。
したがって、訂正事項2に係る誤記の訂正は、特許請求の範囲を変更するものではなく、カテゴリーや対象、目的を変更するものでもないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当せず、特許法第126条第6項に適合するものである。
(3)訂正事項3について
ア 訂正の目的について
訂正事項3は、訂正前の明細書の段落【0030】に、「TiO2を」とあるのを、「TiO2を」と訂正するものである。
TiO2に続いて下付きとされている「を」は明白な誤記であり、訂正事項3に係る訂正は「を」を通常の文字の大きさに正すものであり、文字の大きさ以外に実質的な変更はなされていない。このため、訂正前の記載が当然に訂正後の記載と同一の意味を表示するものと客観的に認められる。
したがって、訂正事項3は、特許法第126条第1項ただし書き第2号に規定する、誤記の訂正を目的とする訂正である。
イ 願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項3に係る訂正内容は、出願当初明細書の段落【0030】の記載「TiO2を」に対して単に文字の大きさを変更するものであり、「TiO2を」の記載と実質的に同じ意味を有する。
したがって、訂正前の明細書の段落【0030】の「TiO2を」とあるのを、「TiO2を」とする誤記の訂正は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第126条第5項に適合するものである。
ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正でないこと
訂正事項3に係る訂正内容は、出願当初明細書の段落【0030】の記載「TiO2を」に対して単に文字の大きさを変更するものであり、「TiO2を」の記載と実質的に同じ意味を有する。
したがって、訂正事項3に係る誤記の訂正は、特許請求の範囲を変更するものではなく、カテゴリーや対象、目的を変更するものでもないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当せず、特許法第126条第6項に適合するものである。
(4)訂正事項4
ア 訂正の目的について
訂正事項4は、訂正前の明細書の段落【0030】に、「10 ~30%含有し」とあるのを、「10~30%含有し」と訂正するものである。
「10 ~30%」の記載中に存在するスペースは明白な誤記であり、訂正事項4に係る訂正はスペースとして存在していた部分を削除するものであり、スペースの削除以外に実質的な変更はなされていない。このため、訂正前の記載が当然に訂正後の記載と同一の意味を表示するものと客観的に認められる。
したがって、訂正事項4は、特許法第126条第1項ただし書き第2号に規定する、誤記の訂正を目的とする訂正である。
イ 願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項4に係る訂正内容は、出願当初明細書の段落【0030】の記載「10 ~30%含有し」に対して単にスペースの部分を削除するものであり、「10~30%含有し」の記載と実質的に同じ意味を有する。
したがって、訂正前の明細書の段落【0030】の「10 ~30%含有し」とあるのを、「10~30%含有し」とする誤記の訂正は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第126条第5項に適合するものである。
ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正でないこと
訂正事項4に係る訂正内容は、出願当初明細書の段落【0030】の記載「10 ~30%含有し」に対して単にスペースの部分を削除するものであり、「10~30%含有し」の記載と実質的に同じ意味を有する。
したがって、上記訂正事項4に係る誤記の訂正は、特許請求の範囲を変更するものではなく、カテゴリーや対象、目的を変更するものでもないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当せず、特許法第126条第6項に適合するものである。
(4)特許出願の際に独立して特許を受けることができること
本件訂正後の特許請求の範囲の請求項1乃至7に記載された事項により特定される発明は,拒絶すべき理由を有しない特許発明であるから,特許出願の際独立して特許を受けることができない発明でないことは明らかである。
したがって,本件訂正後の特許請求の範囲の請求項1乃至7に記載された事項により特定される発明は,同法126条7項の規定に適合する。
第4 むすび
以上のとおりであって、令和4年6月17日に特許権者が行った本件訂正は、特許法第126条第1項ただし書第2号に掲げる誤記の訂正を目的とするものに該当するものであり、かつ同条第5項ないし第7項に規定する要件に適合する。
よって、上記結論のとおり審決する。
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